JP2011079990A - 注入材 - Google Patents
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Abstract
【課題】施工時の温度によらず従来のセメント系注入材の浸透性能を確保しつつ、注入後は速やかに硬化し、初期強度発現性に優れる強固な地盤に改質できる注入材を提供する。
【解決手段】(A)スラグ粉末 70〜99重量部、
(B)ポルトランドセメント 1〜30重量部、
(C)減水剤 0.1〜5重量部、
(D)非水溶性硫酸塩(セメント中の石膏を含む) 0.02〜0.45重量部(SO3換算)、及び
(E)水溶性硫酸塩を含有し、
成分(D)及び(E)がSO3換算で合計0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5であることを特徴とする注入材。
【選択図】なし
【解決手段】(A)スラグ粉末 70〜99重量部、
(B)ポルトランドセメント 1〜30重量部、
(C)減水剤 0.1〜5重量部、
(D)非水溶性硫酸塩(セメント中の石膏を含む) 0.02〜0.45重量部(SO3換算)、及び
(E)水溶性硫酸塩を含有し、
成分(D)及び(E)がSO3換算で合計0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5であることを特徴とする注入材。
【選択図】なし
Description
本発明は、砂質地盤や微細な亀裂を有する岩盤等を不透水・強固なものに改良したり、建設物の基礎強化や止水などに用いる注入材に関する。
地盤や岩盤をより強固・堅牢なものにしたり、液状化を防ぐために、水硬性物質を主成分とする注入材が水性スラリー化した上で地盤の土壌粒子間隙や岩盤の亀裂などに注入使用されている。このような注入材として、セメント及びスラグを粉砕して最大粒径をかなり小さくすることにより地盤への浸透性が向上した、所謂超微粒子系の注入材が知られている。(特許文献1参照)
また、スラリー注入時の浸透性を改善するために、セメントクリンカ10〜50重量部、スラグ50〜90重量部、石膏をSO3換算で0.5〜3.0重量部、減水剤0.1〜5重量部、可溶性硫酸塩等0.1〜5重量部を含有し、注入材構成粒子の粒径を特定の範囲に調整した注入材が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、このような注入材の浸透性や初期強度発現性が、施工される温度によって大きく影響を受けることは知られていない。
また、スラリー注入時の浸透性を改善するために、セメントクリンカ10〜50重量部、スラグ50〜90重量部、石膏をSO3換算で0.5〜3.0重量部、減水剤0.1〜5重量部、可溶性硫酸塩等0.1〜5重量部を含有し、注入材構成粒子の粒径を特定の範囲に調整した注入材が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、このような注入材の浸透性や初期強度発現性が、施工される温度によって大きく影響を受けることは知られていない。
このような注入材は、施工される温度によっては、水性スラリー中においてセメント粒子の水和反応の進行による粒子の粗大化やセメント分散剤の分散性能の温度依存性により浸透性が低下し、期待した注入効果を得られないことがあった。
このような欠点に対処するため、水セメント比を高めたり、分散剤を多く添加することが考えられるが、硬化時間が大幅に遅延するため、施工効率が低下したり、湧水によって施工後に注入材が流失しやすくなる等の問題点があった。
従って、本発明の課題は、施工時の温度によらず、地盤への浸透性が良好で、初期強度発現性の高い注入材を提供することにある。
このような欠点に対処するため、水セメント比を高めたり、分散剤を多く添加することが考えられるが、硬化時間が大幅に遅延するため、施工効率が低下したり、湧水によって施工後に注入材が流失しやすくなる等の問題点があった。
従って、本発明の課題は、施工時の温度によらず、地盤への浸透性が良好で、初期強度発現性の高い注入材を提供することにある。
本発明者らは前記課題解決のため鋭意検討を重ねた結果、組成物含有量を特定したセメント−スラグ系地盤注入材において、非水溶性硫酸塩の含有量を特定の範囲とし、非水溶性硫酸塩と水溶性硫酸塩のSO3換算で合計含有量、及び両者の重量比を特定したものを、水性スラリー化することによって、施工時の温度によらず、水性スラリー中のセメント粒子の過度な水和反応が抑制でき、セメント分散剤の分散性能も安定するため、浸透性・施工性に優れ、しかも初期強度発現性が高まり、早期に強固な地盤に改質できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(A)スラグ粉末 70〜99重量部、
(B)ポルトランドセメント 1〜30重量部、
(C)減水剤 0.1〜5重量部、
(D)非水溶性硫酸塩(セメント中の石膏を含む) 0.02〜0.45重量部(SO3換算)、及び
(E)水溶性硫酸塩を含有し、
成分(D)及び(E)がSO3換算で合計0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5であることを特徴とする注入材を提供するものである。
(A)スラグ粉末 70〜99重量部、
(B)ポルトランドセメント 1〜30重量部、
(C)減水剤 0.1〜5重量部、
(D)非水溶性硫酸塩(セメント中の石膏を含む) 0.02〜0.45重量部(SO3換算)、及び
(E)水溶性硫酸塩を含有し、
成分(D)及び(E)がSO3換算で合計0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5であることを特徴とする注入材を提供するものである。
本発明により、施工時の温度によらず従来のセメント系注入材の浸透性能を確保しつつ、注入後は速やかに硬化し、初期強度発現性に優れる強固な地盤に改質できる注入材が得られた。
本発明の注入材に含有する(A)スラグ粉末は、特に限定されず、例えば、高炉スラグ、下水汚泥溶融スラグ、都市ゴミ溶融スラグ等を挙げることができる。好ましくは反応活性が高いことから高ガラス化率のスラグが良く、例えば急冷した高炉水砕スラグなどが適当である。本発明注入材中のスラグ含有量は、70〜99重量部が好ましく、75〜97重量部がさらに好ましい。スラグ粉末の含有量が70重量部未満では浸透性が低下するので好ましくなく、また99重量部を超えると凝結固結能力が低下するので適当でない。
本発明の注入材に含有する(B)ポルトランドセメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、あるいはそのクリンカ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメント、エコセメント等の特殊セメントを挙げることができ、2種以上を併用しても良い。本発明注入材中のポルトランドセメント含有量は、1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がさらに好ましい。ポルトランドセメントの含有量が1重量部未満では凝結が遅延し過ぎるため好ましくなく、30重量部を超えると浸透性が著しく低下するので好ましくない。
本発明の注入材は(C)減水剤を含有する。減水剤の使用により水性スラリー中でのセメント粒子やスラグ粒子の凝集を防ぎ、特に透水係数の低い地盤などへの浸透性を高めることができる。本発明で使用する減水剤は特に限定されず、何れもモルタルやコンクリートに使用できる高性能減水剤、高性能AE減水剤、分散剤、流動化剤と称されるものでもよく、また液体でも可溶性粉体からなる減水剤でも良い。このような減水剤の成分としては、例えば、ナフタレンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミンスルホン酸系減水剤等が挙げられ、2種類以上を併用しても良い。この中でも、スラリー中の粒子凝集抑制時間を延長させる作用が高く、凝結遅延性が少ないことからナフタレンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤を使用するのが好ましい。
本発明注入材中の減水剤含有量は(固形分として)0.1〜5重量部が好ましく、特に0.2〜3重量部が好ましい。減水剤の含有量が0.1重量部未満ではスラリー中の微粒子凝集抑制効果がほとんど得られず、浸透性が低下するので好ましくなく、また5重量部を超えると凝結時間が遅延し、強度発現性が低下することがあるので好ましくない。
本発明注入材中の減水剤含有量は(固形分として)0.1〜5重量部が好ましく、特に0.2〜3重量部が好ましい。減水剤の含有量が0.1重量部未満ではスラリー中の微粒子凝集抑制効果がほとんど得られず、浸透性が低下するので好ましくなく、また5重量部を超えると凝結時間が遅延し、強度発現性が低下することがあるので好ましくない。
本発明の注入材に含有する(D)非水溶性硫酸塩は、例えば、無水石膏、二水石膏等の天然石膏の他、化学石膏、硫酸バリウム、硫酸銀等を挙げることができ、2種類以上を併用しても良い。好ましくは無水石膏を使用する。非水溶性硫酸塩は、専らエトリンガイト生成による初期強度発現性増進作用を付与するため使用される。なお、本発明において非水溶性硫酸塩には、成分(B)ポルトランドセメント中の石膏も含まれる。
本発明注入材中の非水溶性硫酸塩含有量は、SO3換算で0.02〜0.45重量部が好ましく、特に0.03〜0.45重量部が好ましい。非水溶性硫酸塩の含有量が0.02重量部未満では、配合効果が殆ど得られず、0.45重量部を超えると、凝結遅延を起こし、初期強度の低下や注入成分が流失する虞がある。
本発明の注入材に含有する(E)水溶性硫酸塩は、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等を挙げることができ、2種以上を併用しても良い。水溶性硫酸塩は、常温付近では水に溶解し、水性スラリー中のセメント粒子やスラグ粒子の擬凝結を抑制し、またこれら粒子の分散性を高めて地盤への浸透性向上に寄与する他、注入材ゲル化後の初期強度発現性を大幅に高める作用を有する。
本発明の注入材に含有する(E)水溶性硫酸塩は、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等を挙げることができ、2種以上を併用しても良い。水溶性硫酸塩は、常温付近では水に溶解し、水性スラリー中のセメント粒子やスラグ粒子の擬凝結を抑制し、またこれら粒子の分散性を高めて地盤への浸透性向上に寄与する他、注入材ゲル化後の初期強度発現性を大幅に高める作用を有する。
本発明において、(D)非水溶性硫酸塩と(E)水溶性硫酸塩はSO3換算の合計が0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5の範囲で使用する。(D)非水溶性硫酸塩の含有量を前記特定の範囲とし、かつ成分(D)と(E)をこのような合計量及び重量比とすることにより、施工時の温度によらず、スラリー中の粒子凝集抑制が極めて高くなるため、透水係数の低い地盤への浸透性が大幅に向上し、注入ゲル化後の初期強度発現性を高めることが可能となる。成分(D)及び(E)の合計の重量が0.2重量部未満では含有効果が殆ど得られず、また3.5重量部を超えると、浸透性を低下させずに初期〜中期強度発現性を向上することが困難となることがあるので好ましくない。重量比(D)/(E)が0.005未満では、施工時が高温の場合、硬化促進作用が過大となり、粒子の粗大化により、浸透性の低下を引き起こすので好ましくない。また、低温の場合、分散剤によるスラリー中の粒子凝集抑制効果を阻害するため、浸透性の低下を引き起こすので適当でない。重量比が2.5を超えると、スラリー中の粒子の分散性が低下し、十分な初期強度発現性を得ることが困難となるので好ましくない。より好ましい成分(D)と(E)の合計量は0.4〜3.3重量部であり、重量比((D)/(E))は、0.008〜2.3である。
本発明の注入材には前記以外の成分を浸透性や強度発現性等の性状に支障を及ぼさない範囲で適宜含有することができる。含有可能な成分例を示すと、フライアッシュ、シリカフューム、ベントナイト等のポゾラン反応性物質、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
本発明の注入材は、(C)減水剤及び(E)水溶性硫酸塩以外の全無機粒子の粒度構成が、全無機粒子に占める体積割合で、好ましくは粒径10.5μm以下の粉末粒子が92体積%以上であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が45体積%以下からなる注入材である。このような粒度構成とすることにより、透水係数が低い地盤に対して良好な浸透性を示す注入材が得られる。粒径10.5μm以下の粒子の含有量が92体積%未満では、粗粒分が多く含まれる可能性があり、土壌粒子間隙を粗粒分で閉塞し易くなって浸透性が低下することがあるので好ましくない。また粒径2.2μm以下の粒子含有量が45体積%を超えると、スラリー中での粒子凝集化が生じ易くなり、浸透性が低下することがあるので好ましくない。より好ましい粒度構成は、粒径10.5μm以下の粉末粒子が93体積%以上であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が40体積%以下であり、さらに好ましい粒度構成は、粒径10.5μm以下の粉末粒子が95体積%以上であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が35体積%以下である。
本発明の注入材は、前記成分を水性スラリー化したものである。スラリー化には水を使用する。水の配合量は、減水剤及び水溶性硫酸塩を除く全無機粒子の合計量100重量部に対して、概ね50〜1500重量部が望ましい。約50重量部未満の水量では浸透性が乏しくなるので適当ではなく、1500重量部を超えると注入しても地盤改良効果が殆ど得られないことがあるので適当ではない。スラリー化の方法は特段限定されるものではなく、一例を示すとグラウトミキサー等に注入材と水を投入し、適度に混練を行なえば良い。また、本発明の注入材は、一材化のスラリーとしての使用に適しているが、例えば、水ガラスやシリカゾルを有効成分とするスラリー等と併用して、二材型の注入材スラリーとしても使用しても良い。
普通ポルトランドセメント用クリンカ(太平洋セメント株式会社製)、高炉水砕スラグ(新日本製鉄株式会社製)、無水石膏(セントラル硝子株式会社製)、中性無水ボウ硝(市販試薬)、硫酸リチウム(市販試薬)、ナフタレンスルホン酸系減水剤(商品名「マイティ150R」、花王株式会社製)、ポリカルボン酸系減水剤(商品名「コアフローNP55R」、太平洋マテリアル株式会社製)から選定される材料と水を用い、表1に示す含有量及び含有無機粒子の粒度分布となる水性スラリーを作製した。尚、粒度分布の調整は、普通ポルトランドセメント用クリンカ、高炉水砕スラグ、無水石膏を表1の配合量となるようチューブミルに入れて粉砕し、レーザー回折式粒度分布測定装置を併用して粒度確認を行いながら遠心分離機により分級を行った。また、水性スラリーは、減水剤及び水溶性硫酸塩を除く粒度調整を施した粉砕物100重量部に対して、水300重量部としてグラウトミキサーで混合・混練して作液した。
5℃、20℃、40℃として作液した水性スラリーは、地盤工学会基準「薬液注入による安定処理土の供試体作製方法」JGS0831に準拠して作製した供試体を、JIS A1218「土の透水試験方法」に準じて試験を行った。具体的には、φ5×100cmのアクリル円筒管に、硅砂7号(関東ベントナイト鉱業社製、平均粒子径150μm)を間隙率40%で充填させた供試体を作製し、攪拌機能が付与された加圧タンクに投入した水性スラリーを垂直に設置した供試体の底部から98kPaの圧力で注入した。水性スラリーが供試体の砂層間隙を通過し上部から流出したスラリー量をスラリー注入量として測定し、この値をもって浸透性を評価した。注入完了は注入開始から20分とした。尚、各供試体は、注入に先立ち、水で飽和充填し、透水係数を測定した結果、約9×10-3cm/秒であった。水性スラリーを注入してから24時間放置した後、アクリル管内で固結した充填物を抜き取り、φ5×10cmに成形した固結体の一軸圧縮試験を、JIS A1216「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した。尚、注入性が不良であったものは供試体を固結化できず、一軸圧縮強度の測定が不能であった。以上の各評価・測定結果は、表1に纏めて表す。
表1より本発明の5℃、20℃、40℃の水性スラリーは、何れも良好な浸透性を示し、注入した固結体の初期強度発現性も良好であることがわかる。これに対し、本発明から外れる水性スラリーは、十分な浸透性が得られなかったり、浸透性が良好であっても十分な初期強度発現性が得られなかったり、初期強度発現性が良好であっても十分な浸透性が得られないものとなった。
Claims (2)
- (A)スラグ粉末 70〜99重量部、
(B)ポルトランドセメント 1〜30重量部、
(C)減水剤 0.1〜5重量部、
(D)非水溶性硫酸塩(セメント中の石膏を含む) 0.02〜0.45重量部(SO3換算)、及び
(E)水溶性硫酸塩を含有し、
成分(D)及び(E)がSO3換算で合計0.2〜3.5重量部、かつ重量比((D)/(E))が0.005〜2.5であることを特徴とする注入材。 - 成分(C)及び(E)以外の全無機粒子の粒度構成が、粒径10.5μm以下の粉末粒子が92体積%以上であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が45体積%以下である請求項1記載の注入材。
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