JP2011072570A - 医療用マニピュレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】マニピュレータを電気メスとして使用する場合であっても、基端側から先端動作部への通電経路を確実に確保することが可能な医療用マニピュレータを提供する。
【解決手段】マニピュレータ10は、中空の連結シャフト18と、連結シャフト18内に挿通されるワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bと、連結シャフト18の一端側に設けられ、ワイヤ80aやロッド82aを軸線方向に進退駆動するプーリ70a、70b及びトリガレバー36と、連結シャフト18の他端側に設けられ、ワイヤ80aやロッド82aの進退駆動によって動作される関節部114を基端側に設けた先端動作部12とを備える。先端動作部12は、高周波電源23から、第1通電経路E1を介して通電されることにより生体に通電可能なグリッパ部材308、309を有し、第1通電経路E1は関節部114の外周に配置された導電性部材を有する。
【選択図】図8
【解決手段】マニピュレータ10は、中空の連結シャフト18と、連結シャフト18内に挿通されるワイヤ80a、80b及びロッド82a、82bと、連結シャフト18の一端側に設けられ、ワイヤ80aやロッド82aを軸線方向に進退駆動するプーリ70a、70b及びトリガレバー36と、連結シャフト18の他端側に設けられ、ワイヤ80aやロッド82aの進退駆動によって動作される関節部114を基端側に設けた先端動作部12とを備える。先端動作部12は、高周波電源23から、第1通電経路E1を介して通電されることにより生体に通電可能なグリッパ部材308、309を有し、第1通電経路E1は関節部114の外周に配置された導電性部材を有する。
【選択図】図8
Description
本発明は、動力伝達部材を介して先端動作部を動作させる医療用マニピュレータに関する。
内視鏡下外科手術(又は腹腔鏡下手術とも呼ばれる。)においては、患者の腹部等に複数の孔を開け、器具の通過ポートとしてトラカール(筒状の器具)を挿入した後、シャフトを有する鉗子の先端部をトラカールを通じて体腔内に挿入して患部の手術を行っている。鉗子の先端部には、作業部として、生体組織を把持するためのグリッパや、鋏、電気メスのブレード等が取り付けられている。
トラカールから挿入される鉗子として、先端の作業部に関節を持たない一般的な鉗子に加えて、作業部に複数の関節を有する鉗子、いわゆるマニピュレータの開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。このようなマニピュレータによれば、体腔内で自由度の高い動作が可能であり、手技が容易となり、適用可能な症例が多くなる。
マニピュレータは、細長いシャフトの先端に設けられた先端動作部(エンドエフェクタとも呼ばれる。)を備える作業部を有し、ワイヤによって当該先端動作部を駆動するアクチュエータが本体部(操作部)に設けられている。ワイヤは基端側でプーリに巻き掛けられている。
ところで、腹腔鏡下手術等に用いる鉗子を電気メスとして利用する場合には、操作部近傍に設けられた端子に電源を接続し、導線(電線)を延ばして先端部のグリッパ、ブレードやフック等の作用部に通電して所望の処置を行っている。
一方、上記のようなマニピュレータを電気メスとして利用する場合においても、通常の鉗子の場合と同様に、操作部側から先端動作部側へと所定の高電圧を通電する必要がある。ところが、マニピュレータの先端動作部は、患者への低侵襲を達成するために可能な限り細径に構成することが望まれており、その内部は関節部等を動作させるための構造部材が多数配設されている。このため、電源からの導線を先端動作部内を通して最先端のグリッパ等の電極部材へと配線することが難しい場合があり、また先端動作部の各種動作により導線がねじれ等を生じる可能性もある。特に、マニピュレータをバイポーラ電気メスとして利用する場合に、例えば先端のグリッパ間で生体を把持して通電する用途等では、各グリッパへの2本の通電経路を互いに絶縁した状態で設置する必要があり、配線が一層難しくなっている。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、マニピュレータを電気メスとして使用する場合であっても、基端側から先端動作部への通電経路を確実に確保することが可能な医療用マニピュレータを提供することを目的とする。
本発明に係る医療用マニピュレータは、中空のシャフトと、前記シャフト内に挿通される複数の動力伝達部材と、前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される関節部を基端側に設けた先端動作部とを備え、前記先端動作部は、前記駆動機構部側に接続される電源から、第1通電経路を介して通電されることにより、生体に通電可能な電極部材を有し、前記第1通電経路は、前記関節部の外周に配置された導電性部材を有することを特徴とする。
このような構成によれば、先端動作部の関節部の外周に配置された導電性部材を有する第1通電経路を介して電源から電極部材へと通電することにより、該電極部材への通電経路を容易に確保することができ、しかも関節部での先端動作部の円滑な動作を確保しておくことができる。このため、当該医療用マニピュレータを電気メスとして適切に機能させることができる。
この場合、前記先端動作部は、前記動力伝達部材と、該動力伝達部材が接続されることで前記電極部材を動作させる回転体とを含み、前記導電性部材は、前記回転体を支持する前記先端動作部の外装部材の周囲に配置され、前記電極部材と前記電源との間を通電可能に接続すると、電源からの通電経路を一層容易に確保することができる。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材とを備えてもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材とを備えてもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、前記配線部材は、前記基端部材に接続される第1当接端部及び前記回転部材に接続される第2当接端部のみが、少なくとも前記関節部を覆う絶縁カバーから露出した状態で、該絶縁カバーの内部に配設されていてもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、前記配線部材は、前記先端動作部の前記外装部材の周囲に巻回されたコイルばね形状であってもよい。
前記第1通電経路に前記シャフトを含むと、通常、長尺且つ細径に構成されるシャフト内に別途電線等による配線を施すことが不要となり、シンプルな構造にすることができる。
前記シャフトは、半径方向で3層以上の構成であり、少なくとも最内層及び最外層が絶縁性を有し、その間に導電性を有する中間層が設けられてもよい。
前記電極部材の少なくとも一部を除く前記先端動作部の全体を外側から覆う絶縁カバーを備えてもよい。
また、本発明に係る医療用マニピュレータは、中空のシャフトと、前記シャフト内に挿通される複数の動力伝達部材と、前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される関節部を基端側に設けた先端動作部とを備え、前記先端動作部は、前記駆動機構部側に接続される電源から、第1通電経路及び第2通電経路を介してそれぞれ通電されることにより、その間で生体に通電可能な一対の電極部材を有し、前記第2通電経路は、前記第1通電経路に対して絶縁された構造部材を含み、前記第1通電経路は、前記第2通電経路の外周に配置されることを特徴とする。
このような構成によれば、構造部材を含んで第1通電経路及び第2通電経路を構成すると共に、一方の第1通電経路を他方の第2通電経路の外周に配置することにより、一対の電極部材への通電経路を容易に確保することができ、しかも関節部での先端動作部の円滑な動作を確保しておくことができる。このため、当該医療用マニピュレータをバイポーラ電気メスとして適切に機能させることができる。すなわち、当該医療用マニピュレータの基端側から先端側へと電線等の配線のみで通電経路を確保する場合には、細径のシャフト内やプーリ等の各種回転体が配設された先端動作部内にその配線スペースを確保する必要があり、また先端動作部の揺動や回転等の各動作に対応するために余裕を持った配線が必要となるが、本発明の場合には、構造部材を通電経路として有効に活用することで、上記の配線スペース確保等の問題を解消することができる。
前記第2通電経路の前記構造部材は、前記動力伝達部材と、該動力伝達部材が接続されることで一方の前記電極部材を動作させる回転体とを含んでもよい。
前記第1通電経路は、前記回転体を支持する前記先端動作部の外装部材の周囲に配置され、他方の前記電極部材と前記電源との間を通電可能に接続する導電性部材を有してもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材とを備えれば、先端動作部に設けられる関節部での揺動動作等の動作状態に係わらず通電経路での良好な通電を一層確実に確保することができる。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材とを備えてもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、前記配線部材は、前記基端部材に接続される第1当接端部及び前記回転部材に接続される第2当接端部のみが、少なくとも前記関節部を覆う絶縁カバーから露出した状態で、該絶縁カバーの内部に配設されていてもよい。
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、前記配線部材は、前記先端動作部の前記外装部材の周囲に巻回されたコイルばね形状である構成としてもよい。
なお、前記一対の電極部材は、前記第1通電経路に接続される他方の前記電極部材が前記回転部材に接続された軸部材によって軸支され、前記第2通電経路に接続される一方の前記電極部材が絶縁筒体を介して前記軸部材によって軸支されることにより、互いに開閉可能であると、生体組織を電極部材、例えばグリッパで確実に挟み込んで通電することができる。従って、通電による凝固能を高めることができ、他の組織への損傷を可及的に低減することができる。
前記第1通電経路は、前記シャフトを含んでもよい。また、前記シャフトは、半径方向で3層以上の構成であり、少なくとも最内層及び最外層が絶縁性を有し、その間に導電性を有する中間層が設けられていると、シャフト自体を通電経路に容易に使用することができ、しかもシャフト内を挿通するワイヤ等の動力伝達部材との間での絶縁も容易に確保することができる。
また、前記一対の電極部材の少なくとも一部を除く前記先端動作部の全体を外側から覆う絶縁カバーを備えると、関節部の外周に配置される第1通電経路を構成する構造部材の外側を簡単に絶縁することができ、例えば手術中、該構造部材が処置する必要のない生体部位に接触して通電してしまうことを有効に回避することができる。
本発明によれば、先端動作部の関節部の外周に配置された導電性部材を有する第1通電経路を介して電源から電極部材へと通電することにより、該電極部材への通電経路を容易に確保することができ、しかも関節部での先端動作部の円滑な動作を確保しておくことができる。このため、当該医療用マニピュレータを電気メスとして適切に機能させることができる。
以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るマニピュレータ(医療用マニピュレータ)10は、連結シャフト18の先端に設けられた先端動作部12で生体の一部を把持し又は生体に触れて、所定の熱処置を行うための医療用の電気メスであり、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる医療用器具を電気メスとして構成したものである。
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向及び、連結シャフト18の延在方向をZ方向と規定する。また、先端側から見て右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向と規定し、さらに、連結シャフト18の前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。なお、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が基準姿勢(中立姿勢)である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることは勿論である。
マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを有し、グリップハンドル26の下端から延びたケーブル28がコントローラ29に接続されてマニピュレータシステムを構成している。
このようなマニピュレータ10は、操作部14側から突出した電極プラグ21とが所定の高周波電源23に接続され、電極プラグ21から延びた第1通電経路E1及び第2通電経路E2を介して先端動作部12側へと通電することで患部の熱処置を行うことができるバイポーラ電気メス(バイポーラ把持鉗子)として機能する。
図1及び図2に示すように、操作部14は、Z1方向及びY2方向に延びた略L字状に構成されると共に、Z方向に略対称に分割された一対の上部カバー25a、25bを筐体として、その内部に駆動部(アクチュエータ部)30等が収納されると共に、基端側でY2方向に延びた部分が人手によって把持されるグリップハンドル26として構成されている。グリップハンドル26は、人手によって把持されるのに適した長さであり、上部の傾斜面26aに複合入力部24が設けられている。
操作部14のY1方向頂部近傍には、上部カバー25bから露出してマスタスイッチ34が設けられ、マスタスイッチ34のZ1方向で視認しやすい箇所にLED35が設けられ、操作部14のZ1方向端近傍で電極プラグ21がY1方向に突出している。
作業部16は、作業を行う先端動作部12と、該先端動作部12を先端に設けた長尺且つ中空の連結シャフト(シャフト)18と、該連結シャフト18の基端側が固定されるプーリボックス32と、プーリボックス32のZ2方向端から延びたトリガレバー支持部33に軸支されるトリガレバー36とを有する。作業部16は、Z方向で略対称に分割された一対の下部カバー37a、37bを筐体として、その内部にプーリボックス32を収納している。トリガレバー支持部33は、プーリボックス32のZ2側端面からZ2方向に平行に延びた一対のプレートであり、該プレート間に渡ったトリガ軸39により、トリガレバー36を回動可能に軸支している(図3参照)。
このような作業部16は、操作部14に設けられた左右一対の着脱レバー40、40によって当該操作部14と連結・固定されると共に、着脱レバー40の開放操作によって操作部14から分離可能であり、特別な器具を用いることなく、手術現場で容易に交換作業等を行うことができる。
図1に示すように、先端動作部12及び連結シャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、複合入力部24及びトリガレバー36の操作によって体腔22内で患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができ、さらに高周波電源23からの通電による熱処置が可能となっている。
複合入力部24及びトリガレバー36の操作に基づいて動作する先端動作部12は、その間で生体を把持し通電可能な一対の電極部材として機能する一対のグリッパ部材308、309を備えたグリッパ300を備え(図8及び図10参照)、Y軸を基準に傾動するヨー軸動作(ピッチ軸動作)、先端を指向する軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール軸動作、及び、開閉可能なグリッパ軸動作からなる3軸の動作が可能である。本実施形態の場合、ヨー軸及びロール軸は、複合入力部24の操作に基づいて電気的に駆動され、グリッパ軸はトリガレバー36の操作に基づいて機械的に駆動される。ここで機械的とは、ワイヤ、チェーン、タイミングベルト、リンク、ロッド、ギア等を介して駆動する方式であり、主に、動力伝達方向に非弾性な固体の機械部品を介して駆動する方式である。ワイヤやチェーン等は、張力により不可避的な多少の伸びが発生する場合があるが、これらは非弾性な固体の機械部品とする。
次に、互いに着脱可能な駆動部30及びプーリボックス32について説明する。
図1及び図2に示すように、駆動部30は、X方向に並んだ2つのモータ(アクチュエータ)50a、50bと、該モータ50a、50bを支持するブラケット52と、モータ50a、50bの回転方向を変換して作業部16側に伝達するギア機構部54とを有する。
モータ50a、50bは円柱形状であり、図示しない減速機によって減速される出力軸56a、56bがブラケット52の一面を貫通し、該出力軸56a、56bに対してギア機構部54を構成する駆動傘歯車58a、58bが固定されている。モータ50a、50bは、例えばDCモータであり、図示しない角度センサとしてロータリエンコーダ等が設けられる。
図2に示すように、ギア機構部54は、ブラケット52内の空間に設けられ、X方向に並んだ2本の駆動シャフト(駆動軸)60a、60bと、各駆動シャフト60a、60bに固定され、駆動傘歯車58a、58bと噛み合う2つの従動傘歯車62a、62bとを有する。モータ50a、50bの出力軸56a、56b、駆動シャフト60a、60b等は図示しないベアリングによってブラケット52に軸支されている。
図2に示すように、駆動シャフト60a(60b)の下端側はブラケット52の下面から突出しており、その先端には、例えば断面波形六角形状で先細りのテーパ形状からなる係合凸部64a(64b)が設けられている。
図2及び図3に示すように、プーリボックス32は、X方向両側が開口した空洞部66と、該空洞部66に収納されたプーリ(従動軸)70a、70b及びワイヤガイド部72a、72bとを有し、空洞部66のZ1側に貫通した孔部で連結シャフト18が固定・支持されている。
プーリ70a、70bは、駆動シャフト60a、60bに対して同軸であり、その上端側には、駆動シャフト60a、60b側の係合凸部64a、64bと係合可能な係合凹部74a、74bが設けられている。係合凹部74a、74bは、前記係合凸部64a、64bが係合(嵌合)可能であり、例えば断面波形六角形状で奥細りのテーパ形状の凹部を有する。
従って、操作部14と作業部16との装着時、係合凸部64a(64b)と係合凹部74a(74b)とが係合し、これにより、駆動シャフト60a(60b)からの回転駆動力をプーリ70a(70b)へと伝達することができる。この際、例えば操作部14には、操作部14と作業部16の着脱を検出する着脱検出センサ(図示せず)や、駆動シャフト60aの位相を検出する位相検出センサ(図示せず)等を設けてもよく、さらに、係合凸部64aや係合凹部74aの係合構造は他の構造であってもよい。
図2及び図3から諒解されるように、ワイヤガイド部72a(72b)は、プーリ70a(70b)のZ1側に配設されると共に、その間隔が狭く設定されており、プーリ70a(70b)と先端動作部12の歯車体126(図10及び図12参照)等との間に巻き掛けられたワイヤ(動力伝達部材)80a(80b)をガイドして、連結シャフト18内へと円滑に導く機能を有する。このようなワイヤガイド部72a、72bを用いることにより、連結シャフト18は、モータ50a、50bの径やプーリ70a、70bの軸間距離に依存することなく十分に細くすることができ、例えば、トラカール20に挿入するのに適した5mm〜10mm程度の外径に容易に設定することができる。
図2に示すように、プーリボックス32のZ1方向上端からは、電極プラグ21が装着される電極棒71がY1方向に突出し、上部カバー25bに形成された貫通孔73を挿通可能に設けられている。電極棒71は導電板75によって一方のワイヤガイド部72bに電気的に接続されており、これにより、ワイヤガイド部72bに接触するワイヤ80bを介して高周波電源23から先端動作部12側へと通電することができる。すなわち、これら電極プラグ21、電極棒71、導電板75、ワイヤガイド部72b及びワイヤ80bを含む構造部材が、一方の通電経路となる第2通電経路E2の基端側部分を構成している。
プーリボックス32を構成する空洞部66には、さらに、棒状又は線状の動力伝達部材である2本のロッド82a、82bがY方向に並んで、Z方向に貫通している。ロッド82a、82bは、例えば、十分に強く且つ細いステンレスパイプ又は中実ロッドあり、Z1方向は空洞部66を貫通して連結シャフト18内へと延び、ワイヤ252a、252b(図7参照)を介して先端動作部12内のアイドルプーリ140a(図12参照)等に巻き掛けられており、Z2方向はプーリボックス32を貫通してトリガレバー支持部33へと延び、ロッド85及びワイヤ87(図7参照)を介してトリガレバー36に接続されている。
図2及び図3に示すように、プーリボックス32のZ2側には、Z方向を基準として対称な一対のピン穴84、84が形成されている。各ピン穴84、84には、作業部16と操作部14との装着時、ブラケット52の底面からY1方向に突出した一対のガイドピン86、86が挿入され、これにより、操作部14と作業部16とが位置決めされ且つ高い剛性で装着される。
このような作業部16では、ワイヤ80a、80bは、それぞれプーリ70a、70b側と先端動作部12側との間で往復していることから、連結シャフト18の中空空間内には、延べ4本のワイヤ80a、80bと2本のロッド82a、82bとが挿通される。例えば、ロッドに代えてワイヤのみで全ての動力伝達機構を構成してもよい。
ワイヤ80a、80bは、それぞれ同種又は異種、同径又は異径のものを用いることができ、可撓性を有する湾曲可能な線材で構成される。ワイヤ80a、80bにおいて、連結シャフト18内を通過する部分であって可撓性を要しない直線部分には、図示しない高剛性の補強ロッドを囲繞して、補強することもできる。
このようなマニピュレータ10では、複合入力部24が操作されてモータ50a、50bが駆動されることにより、駆動シャフト60a、60bからプーリ70a、70bを介してワイヤ80a、80bが往復駆動され、先端動作部12にロール方向及びヨー方向の動作が付与される。さらに、トリガレバー36が回動操作されることにより、ロッド82a、82bが機械的に往復駆動され、先端動作部12のグリッパ300に開閉動作が付与される。
すなわち、プーリ70a、70b(モータ50a、50b)及びトリガレバー36は、動力伝達部材であるワイヤ80a、80b(補強ロッド81a、81b)及びロッド82a、82bに駆動力を付与し、先端動作部12を動作させる駆動機構部として機能する。より詳細には、プーリ70a、70b(モータ50a、50b)は、ワイヤ80a、80bに駆動力を付与し、先端動作部12にロール方向及びヨー方向の動作を付与する電動機構部として機能する。また、トリガレバー36は、ロッド82a、82bに駆動力を付与し、先端動作部12にグリッパ開閉動作を付与する手動機構部として機能する。
図4に示すように、先端動作部12を電気的に駆動する複合入力部24は、Z軸(Y軸)を中心としてX1及びX2方向に対称な構造であり、先端動作部12に対してロール方向(軸回転方向)及びヨー方向(左右方向)の回転指令を与える複合的な入力部である。
複合入力部24は、傾斜面26aに配置されたセンサホルダ88によって支持されており、傾斜面26aのZ1側(Y1側)の回転操作部90と、そのZ2側(Y2側)に設けられた傾動操作部92と、傾動操作部92の下部側面にそれぞれ配設された3つのスイッチ操作子94a〜94cとを有する。これら回転操作部90等への入力は、センサホルダ88内に設けられたスイッチ基板(図示せず)等によってその操作量が検出され、モータ50a、50bがコントローラ29の制御下に適宜駆動制御される。
図2及び図3に示すように、長尺且つ中空の連結シャフト18は、その半径方向で3層構造とされており、最内層の第1層18a及び最外層の第3層18cが絶縁性を有するエポキシ樹脂及びPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)等の樹脂性材料やセラミック等によって構成され、中間層である第2層18bが導電性を有するカーボンや金属性材料等によって構成されている。従って、連結シャフト18は、電源23が第2層18bに接続されることで、基端側から先端側へと高周波電源23からの電流を通電する第1通電経路E1の基端側部分を構成している。
導電性の第2層18bは、絶縁性の第1層18aと第3層18cの間に設けられていることにより、第1通電経路E1を構成する第2層18bと、連結シャフト18内を通過する第2通電経路E2を構成するワイヤ80bとの間の絶縁や、第2層18bと連結シャフト18の外部の生体組織等との間の絶縁が確保されている。当然、連結シャフト18は3層構造以外であってもよく、最内層及び最外層に絶縁性を有し、その間に導電性を有していれば4層以上、例えば外層がエポキシ樹脂による2層、中間層がカーボンによる3層及び内層がエポキシ樹脂による1層とした構成であってもよく、例えば連結シャフト18の外周に絶縁チューブ(図示せず)を囲繞した場合には、内側から順に絶縁層及び導電層となる2層構造であってもよい。
次に、本実施形態に係るマニピュレータ10の先端で所定の作業を行う先端動作部12について説明する。
以下、先端動作部12の最先端で作業を行うエンドエフェクタとしてグリッパ300を採用した構造を例示して先端動作部12を説明する。なお、エンドエフェクタとしては、グリッパ300のような電極部材を備えた電気メスを構成可能なものであればよく、例えば、はさみ等のバイポーラ電気メスや、モノポーラ電気メスでもよい。また、マニピュレータ10では、上記のように、先端動作部12を連結シャフト18の先端に設けた作業部16が操作部14に着脱可能であることから、エンドエフェクタの種類(グリッパやはさみ)を容易に変更することができる。
先端動作部12では、連結シャフト18(第2層18b)からの第1通電経路E1と、電極プラグ21及びワイヤ80bからの第2通電経路E2とが、当該先端動作部12を構成する構造部材によって互いに絶縁された状態で形成され、それぞれグリッパ300を構成する一対のグリッパ部材(電極部材)308、309に接続される。このため、先端動作部12では、グリッパ開閉動作、ヨー方向動作及びロール方向動作の作動状態にかかわらずグリッパ部材308、309間での通電を確保することができる。なお、第1通電経路E1は、連結シャフト18を用いず、該連結シャフト18の内側(又は外側)に所定の電気配線を設けて高周波電源23と電極部材(グリッパ部材308)とを通電可能に構成してもよい。
先ず、先端動作部12での通電構造の説明に先立ち、先端動作部12にグリッパ開閉動作、ヨー方向動作及びロール方向動作を付与する基本的な構造について説明する。
図5に示すように、先端動作部12には、ロッド82a、受動ワイヤ252a、アイドルプーリ140a、ガイドプーリ142a、受動プーリ156aを含む第1グリッパ駆動機構(第1エンドエフェクタ駆動機構)320aと、これに対応した第2グリッパ駆動機構(第2エンドエフェクタ駆動機構)320bが設けられている。第1グリッパ駆動機構320a及び第2グリッパ駆動機構320bは、グリッパ300を開閉させる基本的な構成である。
第1グリッパ駆動機構320aにおける構成要素には符号にaを付し、第2グリッパ駆動機構320bにおける構成要素には符号にbを付して区別する。第1グリッパ駆動機構320aにおける構成要素と第2グリッパ駆動機構320bにおける構成要素で同じ機能のものについては、煩雑とならないよう、代表的に第1グリッパ駆動機構320aについてのみ説明する場合がある。
図5及び図6では、理解の容易のため、第1グリッパ駆動機構320aと第2グリッパ駆動機構320bとを紙面上で並列して図示しているが、実際のマニピュレータ10に適用する場合には、図7に示すように、各プーリの軸方向(つまりY方向)に並列させ、アイドルプーリ(回転体、円柱部材)140a及び140bと、ガイドプーリ(回転体、円柱部材)142a及び142bの回転軸は、それぞれ同軸上に配置するとよい。つまり、アイドルプーリ140a及び140bは軸110(図7参照)に共通的に軸支することができ、ガイドプーリ142aと142bは軸112に共通的に軸支することができる。ガイドプーリ142a及びガイドプーリ142bを同軸構成とすることにより、軸112を回転軸(揺動軸)とするヨー軸動作機構が簡便な構成となる。
図8〜図10に示すように、先端動作部12は、ワイヤ受動部100と、複合機構部102と、グリッパ300とを有し、Y方向の第1回転軸Oyを中心にして、それよりも先の部分がヨー方向に揺動(回動)する第1自由度と、第2回転軸Orを中心にしてロール方向に回転する第2自由度と、第3回転軸Ogを中心として先端のグリッパ300を開閉させる第3自由度とを有する合計3自由度の機構となっている。
第1回転軸Oyによるヨー方向動作の機構は、連結シャフト18の延在方向に沿う軸線に対して交差する方向に揺動可能に設定され、例えば±90°又はそれ以上の稼動範囲を有する揺動機構(傾動機構)である。第2回転軸Orによるロール方向動作の機構は、先端動作部12における先端部(つまりグリッパ300)の延在方向の軸線を中心として該先端部を回転可能に設定され、例えば±180°又はそれ以上の稼動範囲を有する回転機構である。第3回転軸Ogによるグリッパ開閉動作の機構(グリッパ300)は、例えば40°又はそれ以上開くことのできる開閉機構である。
グリッパ300は、手術において実際の作業を行う部分であり、第1回転軸Oy及び第2回転軸Orは、作業を行い易いようにグリッパ300の姿勢を変えるための姿勢変更機構を構成する姿勢軸である。一般に、ヨー方向に揺動させる第1回転軸Oyはヨー軸とも呼ばれ、ロール方向に回転させる第2回転軸Orはロール軸とも呼ばれ、グリッパ300を開閉させる第3回転軸Ogはグリッパ軸とも呼ばれる。
図10及び図12〜図14に示すように、ワイヤ受動部100は、段付き円筒状の基端カバー116の先端側に突出した一対の舌片部159の間に設けられており、ワイヤ80a、80bのそれぞれの往復動作を回転動作に変換して複合機構部102に伝達する部分である。ワイヤ受動部100は、軸孔160a、160aに挿入される軸110と、軸孔160b、160bに挿入される軸112とを有する。軸110及び112は、軸孔160a、160bに対して、例えば圧入もしくは溶接により固定される。舌片部159の先端側の軸112は、ヨー軸となる第1回転軸Oyの軸上に配置される。つまり、軸112が、先端動作部12の基端側の関節部114の支軸となる。
関節部114を構成する軸112のY方向両端には、Y方向に対称形状の歯車体126及び歯車体130がそれぞれ設けられている。歯車体126は、筒体132と、該筒体132の上部に同心状に設けられた歯車134とを有する。歯車体130は、歯車体126と略同形状であって、筒体136と、該筒体136の下部に同心状に設けられた歯車138とを有する。歯車134及び歯車138は、それぞれ後述するギア体146のフェイスギア165の上端部及び下端部に噛合する。
筒体132及び筒体136は、略同径で同形状である。筒体136及び筒体132には、ワイヤ80a及び80bが所定の固定手段によって一部が固定されて巻き掛けられている。ワイヤ80a及び80bの巻き掛けられる角度は、例えば1.5回転(540°)である。
そこで、ワイヤ80b及び80aを往復動作(進退動作)させることにより、歯車体126及び歯車体130を軸112に対して回転させることができる。歯車体126と歯車体130を同方向に同速度で回転させると、ギア体146は軸112(第1回転軸Oy)を基準として揺動し、ヨー方向動作が行われる。歯車体126と歯車体130を逆方向に同速度で回転させると、ギア体146は第2回転軸Orを基準として回転し、ロール回転動作が行われる。歯車体126と歯車体130を異なる速度で回転させると、ギア体146は軸112を基準として揺動すると同時に第2回転軸Orを基準として回転し、ヨー方向動作とロール回転動作の複合動作が行われる。
すなわち、歯車体126、歯車体130及びギア体146は差動機構(例えば、特開2008−253463号公報における図23に示される構成に相当する。)を構成している。先端動作部12の機構は差動機構に限らず、例えば、ワイヤ80bが歯車134を介してフェイスギア165を駆動するのに対して、ワイヤ80aは主軸部材144を直接的に回転駆動する形式(例えば、特開2008−253463号公報における図7に示される構成に相当する。)としてもよい。
軸110の略中央部にはアイドルプーリ(回転体、円柱部材)140a、140bが回転自在に軸支されており、軸112の略中央部にはガイドプーリ(回転体、円柱部材)142a、142bが回転自在に軸支されている。アイドルプーリ140a、140bは、ガイドプーリ142a、142bに巻きかける受動ワイヤ(可撓性部材、伝達部材)252a、252bの巻き掛け角度を常に一定(両側あわせて約180°)に保つためのものである。アイドルプーリ140a、140bの代わりに、ガイドプーリ142a、142bに受動ワイヤ252a、252b(図7及び図16参照)を1巻き以上してもよい。アイドルプーリ140aやガイドプーリ142aは、受動ワイヤ252aに対する滑り、及び摩擦による摩耗を低減するために、表面を滑らかにし、又は摩擦の少ない材質を用いるとよい。ガイドプーリ142a、142bは、姿勢変更機構におけるヨー軸となる第1回転軸Oyに設けられている。
図10及び図12に示すように、ヨー軸を構成する軸112において、歯車体126と歯車体130の間には、ガイドプーリ142a、142bを2枚の補助板144b、144b間に挟んだ主軸部材144が回転自在に軸支されている。主軸部材144は、複合機構部102に向けて突出する筒部を有する(図10参照)。主軸部材144の軸心部には方形の孔144aが設けられている。主軸部材144のZ2方向端部には、ガイドプーリ142aのY方向上面及びガイドプーリ142bのY方向下面を保持すると共に、軸112が挿通する孔を有する2枚の補助板144bが設けられている。補助板144bはZ1方向に向かって幅広となる山形であって、大きく開いた関節部114(図8参照)からの糸等の異物の侵入を防止することができる。
複合機構部102は、グリッパ300の開閉動作機構と、該グリッパ300の姿勢を変化させる姿勢変更機構とを含む複合的な機構部である。
図10及び図12〜図14に示すように、複合機構部102は、主軸部材144の筒部周面に対して回転自在に嵌挿されたギア体146と、主軸部材144の先端ねじ部に締結されるナット体148と、Z2方向端部が主軸部材144の孔144aに挿入される断面四角の伝達部材152と、伝達部材152のZ2方向端部に対してピン154により回転自在に軸支される受動プーリ(回転体、円柱部材)156aと、両端がZ2方向に突出した平板状の受動板158と、略中央部が拡径した円筒状の先端カバー161とを有する。
主軸部材144におけるギア体146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材144cが設けられている。ナット体148におけるギア体146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材148aが設けられている。スラスト軸受部材144c、148aは低摩擦材であって、当接部分の摩擦及びトルクを低減すると共に、フェイスギア165に負荷が直接的にかかることを防止する。スラスト軸受部材144c、148aは、いわゆる滑り軸受であるが、転がり軸受を設けてもよい。これにより、グリッパ300を強く閉じた場合や開いた場合、すなわちギア体146が主軸部材144に強く当接する場合でも、ロール回転動作を円滑に行うことができる。
ギア体146は、段付き筒形状であって、Z2方向の大径部162と、Z1方向の小径部164と、大径部162のZ2方向端面に設けられたフェイスギア165とを有する。フェイスギア165は、歯車134及び歯車138に噛合する。ギア体146は、ナット体148により主軸部材144に対する抜け止めがなされている。大径部162の外周には、ねじが設けてある。
受動板158は、Z2方向の凹部166と、該凹部166の底面に設けられた係合部168と、Y方向両面にそれぞれ設けられた軸方向のリブ170、170と、リンク孔172とを有する。係合部168は、伝達部材152の先端に設けられたきのこ状の突起174に係合する形状である。この係合により、受動板158と伝達部材152は、相対的なロール軸の回転が可能になる。受動板158の幅は先端カバー161の内径に略等しい。
先端カバー161は、複合機構部102の略全体を覆う大きさであり、複合機構部102に異物(生体組織、薬剤、糸等)が入り込むことを防止している。図10及び図13に示すように、先端カバー161の内面には、受動板158の2つのリブ170が嵌る軸方向の2本の溝175、175が対向して設けられている。溝175にリブ170が嵌ることにより受動板158が軸方向にガイドされる。受動板158の係合部168には、伝達部材152先端の突起174が係合することから、受動プーリ156aは主軸部材144の孔144a内において、受動板158及び伝達部材152と共に軸方向に進退可能であり、且つ伝達部材152を基準としてロール回転が可能である。先端カバー161は、ギア体146の大径部162に対して螺入、圧入等の手段により固定されている。
図12に示すように、先端カバー161は、その基端部がギア体146に外嵌されて結合(螺合、圧入等)されており、先端カバー161及びグリッパ300は、ギア体146の回転と共にロール回転動作を行う。
グリッパ300において、一方のグリッパ部材308の基端側のレバー部310と受動板158は、グリッパリンク220により連接されており、他方のグリッパ部材309の基端側のレバー部310と受動板158は、グリッパリンク221により連接されている。つまり、各グリッパリンク220、221の一端の孔220aは、レバー部310の孔218と共にピン222が挿入され、他端の孔220bは、受動板158のリンク孔172と共にピン224が挿入されて連接されている。
詳細は後述するが、グリッパ部材308、309には、それぞれ第2通電経路E2及び第1通電経路E1が接続されるため、各レバー部310間は、樹脂等により形成されて絶縁性を有する段付き円筒形状の絶縁筒体400を挟んで絶縁されている(図10及び図12参照)。
図15に示すように、アイドルプーリ140aは、同軸上の第1層アイドルプーリ232と第2層アイドルプーリ234の2枚が並列して構成されており、ガイドプーリ142aは、同軸上の第1層ガイドプーリ236と第2層ガイドプーリ238の2枚が並列して構成されている。
図16に示すように、ロッド82aのZ1方向端部は、ワイヤ係合部250aによって受動ワイヤ(可撓性部材)252aの両端部に接続されている。
図17及び図18に示すように、ワイヤ係合部250aは、ロッド82aの先端部260にローラ262が設けられ、該ローラ262に受動ワイヤ252aが巻き掛けられている。ローラ262はピン264に軸支されており回転自在である。これにより、受動ワイヤ252aはローラ262に巻きかけられながら適度に進退し、ロッド82aをZ2方向に引くときに、特にヨー軸が屈曲しないような状態でも、受動ワイヤ252aをX方向にバランスよく引くことができる。先端部260は、ロッド82aに螺設されている。この実施例では、受動ワイヤ252aのY方向一対の張力が均一となり、長寿命化を図ることができると共に、上下両方のY方向一対の平行化を図ることができる。
図15及び図16に戻り、受動ワイヤ252aは、一部がワイヤ係合部250aに接続された環状の可撓性部材であり、ワイヤ以外にもロープ、樹脂線、ピアノ線及びチェーン等を用いることができる。ここで、環状とは広義であり、必ずしも全長にわたって可撓性部材が適用されている必要はなく、少なくとも各プーリに巻き掛けられる箇所が可撓性部材であればよく、直線部は剛体で接続されていてもよいことはもちろんである。
受動ワイヤ252aは、駆動部材のロッド82aから、アイドルプーリ140aのX1方向(第1の側方)を通り、X2方向(第2の側方)に向かい、ガイドプーリ142aのX2方向の面を通り受動プーリ156aのX2方向の面に至る。受動ワイヤ252aは、さらに、受動プーリ156aのZ1方向の面に半周巻き掛けられてX1方向の面に至り、ガイドプーリ142aのX1方向の面を通り、X2方向に向かいアイドルプーリ140aのX2方向を通りワイヤ係合部250aに至る経路で配設されている。
つまり、受動ワイヤ252aは、ワイヤ係合部250aを基点及び終点とする一巡の経路を構成し、アイドルプーリ140aの両側方を通り、受動プーリ156aに巻き掛けられ、アイドルプーリ140aとガイドプーリ142aとの間で交差して、略8字形状をなす。これにより、ワイヤ係合部250a及び受動ワイヤ252aは、ロッド82aを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
アイドルプーリ140a、ガイドプーリ142a及び受動プーリ156aは略同径であり、受動ワイヤ252aがあまり屈曲しないように、レイアウト上の可能な範囲で適度に大径にしている。ワイヤ係合部250aは、受動ワイヤ252aが過度に屈曲しないように、アイドルプーリ140aよりも適度に離れた位置に設けられており、受動ワイヤ252aの両端部はワイヤ係合部250aを頂部として鋭角を形成している。アイドルプーリ140aとガイドプーリ142aとの間は狭く、例えば、受動ワイヤ252aの幅と略等しい隙間が形成されている。
アイドルプーリ140a、ガイドプーリ142a及び受動プーリ156aには、受動ワイヤ252aの抜け止めのために、上面及び下面に小さいフランジを設け、又は側面を凹形状にしてもよい。
図16から諒解されるように、第1グリッパ駆動機構320aでは、基端側から先端側に向かって、受動ワイヤ252a、アイドルプーリ140a、ガイドプーリ142a及び受動プーリ156aが中心線に沿って配置されている。なお、図10及び図12に示すように、グリッパ300は、伝達部材152等を介して受動プーリ156aに連結されている。
このように構成される第1グリッパ駆動機構320aでは、ロッド82a(図16参照)をZ2方向に引き寄せると、平面視で、第1層アイドルプーリ232及び第2層ガイドプーリ238は反時計方向に回転し、第2層アイドルプーリ234及び第1層ガイドプーリ236は時計方向に回転する。このように、アイドルプーリ140a及びガイドプーリ142aは、それぞれ同軸上で2枚のプーリが並列する構成であることから、当接する受動ワイヤ252aの動きに従って逆方向に回転可能であり、動作がスムーズである。
図10及び図12〜図14に示すように、グリッパ300は、一対の把持部302が動作をするいわゆる両開き型である。グリッパ300は、先端カバー161に形成された一対のグリッパベース304、304と、該グリッパベース304に設けられた軸孔305に挿入されるピン196を基準にして動作する一対のグリッパ部材308、309と、一対のグリッパリンク220、221とを有する。
各グリッパ部材308、309は、多少屈曲してZ1方向に延在した最先端の把持部302と、把持部302に対して略35°に曲がって延在するレバー部310とを有する。各レバー部310の把持部302寄りには、孔216が設けられ、レバー部310の端部近傍には孔218が設けられている。図12に示すように、孔216にピン196が挿入されることにより、一対のグリッパ部材308、309は第3回転軸Ogを中心として揺動自在となる。なお、一方のグリッパ部材308の孔216は、他方のグリッパ部材309の孔216よりも多少大径であり、ピン196との間に絶縁筒体400が介在している。
各グリッパ部材308、309は、各グリッパリンク220、221と共に受動板158のリンク孔172に嵌挿されるピン224、224に連接されている。グリッパ300を開閉するリンクとして機能する受動板158では、リンク孔172が図14のY方向対称位置に2つ設けられており、一対のグリッパリンク220、221は側面視で交差する配置である。
図7、図10及び図12に示すように、第2グリッパ駆動機構320bは、第1グリッパ駆動機構320a(図16参照)に対して、基本的には、折り返しプーリ350が付加された構成である。受動プーリ156a及び受動プーリ156bは同軸構成となっている。
図10及び図12に示すように、主軸部材144には、ピン352が挿入及び固定される径方向の軸孔354が設けられている。軸孔354は、孔144aを経由して主軸部材144の筒部を貫通している。
伝達部材152には、ピン352が挿通可能な幅で軸方向に延在する長孔356が設けられている(図10参照)。図12に示すように、伝達部材152は、基端カバー116(連結シャフト18)の軸心よりY1方向にややオフセットした位置に設けられるが、先端の突起174だけは軸心に配置させるとよい(図12参照)。もちろん、伝達部材152は中心に配置してもよい。
ピン154は、伝達部材152を通り抜けてY2方向に突出し受動プーリ156bを軸支する。受動プーリ156bは、受動ワイヤ252bが2巻き可能な幅を有する。主軸部材144の孔144aは、受動プーリ156a、156b及び伝達部材152が挿入可能な高さを有する。受動プーリ156a及び156bは、孔144a内でピン154によって同軸に軸支されており、独立的に回転自在である。
ピン352は、孔144a内でY1方向からY2方向に向かって、長孔356及び折り返しプーリ350の中心孔に挿入されて、伝達部材152と受動プーリ156a及び156bが軸方向に進退可能である。折り返しプーリ350はピン352に軸支されて回転自在であり、位置は固定である。折り返しプーリ350は受動ワイヤ252bが2巻き可能な幅を有する。また、折り返しプーリ350を2層化することにより、開閉動作のときに反対方向に回転できる構成となり、受動ワイヤ252bとプーリの摩擦を低減させることができる。
図19〜図21に示すように、第2グリッパ駆動機構320bにおいては、受動プーリ156bよりも先端側に折り返しプーリ350が設けられ、受動ワイヤ252bは、受動プーリ156bと折り返しプーリ350とに渡って巻き掛けられている。つまり、受動ワイヤ252bは、駆動部材のロッド82bのワイヤ係合部250b(図7参照)から、アイドルプーリ140bのX1方向を通り、X2方向に向かい、ガイドプーリ142bのX2方向を通り受動プーリ156bのX2方向の面に至る。受動ワイヤ252bはそのままZ1方向に向かって延在し、折り返しプーリ350のX2方向の面に達し、該折り返しプーリ350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。
受動ワイヤ252bは受動プーリ156bのZ2方向の面に半回転巻き付けられてX2側を通って再度折り返しプーリ350に至り、再び該折り返しプーリ350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。この後、受動ワイヤ252bはガイドプーリ142bのX1方向からアイドルプーリ140bのX2方向に至り、ロッド82bのワイヤ係合部250bに接続される。ワイヤ係合部250a及び受動ワイヤ252aは、ロッド82aを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
先端動作部12の構造について理解を容易にするために、その模式図を図7に示す。
このように構成される先端動作部12では、図5に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に引くと、ロッド82aは受動ワイヤ252aを引き寄せ、受動プーリ156a、伝達部材152をZ2方向に移動させることからグリッパ300を閉じさせることができる。つまり、ロッド82aや受動ワイヤ252a、受動プーリ156a等の伝達部材が牽引されることによりグリッパ300が閉じられる。
この場合、第2グリッパ駆動機構320bについては、ロッド82bは、押し出されるように配置されているため、伝達部材152の動作を阻害しない。
また、図6に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に押し出すと、伝達部材152及び受動プーリ156aは先端側にZ1方向に移動してグリッパ300を開くことができる。
グリッパ300には、トリガレバー36を人手によって押し出す力が第2グリッパ駆動機構320bによって機械的に直接伝えられることから、弾性体のような所定の力ではなく任意の強い力で開くことができる。したがって、グリッパ300の外側面を用いて生体組織を剥離させ、又は孔部を拡開させるような手技に対して好適に用いることができる。
また、グリッパ300の外側面に対象物が接触した場合には、受動ワイヤ252b、ロッド82b及びトリガレバー36もそれ以上Z1方向に動かなくなり、操作者はグリッパ300の外側面が対象物に接触したこと、及び該対象物の硬さ等を指先で知覚することができる。
先端動作部12は、ヨー軸動作及びロール軸動作が可能である。図9に示すように、先端動作部12では、ヨー軸動作をする場合、ガイドプーリ142a及びガイドプーリ142bの軸(図7参照)を中心にして、それよりも先端の複合機構部102及びグリッパ300がヨー方向に揺動する。先端動作部12は、非干渉機構であることから、ヨー軸動作をしてもグリッパ300の開度が変化することはなく、逆にグリッパ300の開度を変化させてもヨー軸が動作することはない。グリッパ300とロール軸の関係についても同様である。
そこで、次に、このような先端動作部12に設けられる第1通電経路E1と第2通電経路E2の構造について説明する。
上記したように、先端動作部12では、一対の電極部材として機能する各グリッパ部材308、309に対し、それぞれ連結シャフト18(第2層18b)からの第1通電経路E1と、電極プラグ21及びワイヤ80bからの第2通電経路E2とが接続され、これにより高周波電源23からの電流を生体に通電する。
基本的に、第2通電経路E2は、先端動作部12を動作させる複数の駆動系の構造部材によって構成され、ワイヤ80bからの電流を、例えば歯車体126、軸112、主軸部材144、伝達部材152、受動板158及びグリッパリンク220等を介して、グリッパ部材308へと通電する。一方、第1通電経路E1は、前記駆動系の構造部材を支持する外装部材(基端カバー116や先端カバー161)の周囲に配置された複数の導電性部材(筐体系の構造部材)によって構成され、連結シャフト18からの電流をグリッパ部材309へと通電する。
先ず、第2通電経路E2について説明する。
図1及び図2に示すように、第2通電経路E2の基端側部分は、高周波電源23の一方の極から、電極プラグ21、電極棒71、導電板75及びワイヤガイド部72bを介してワイヤ80bへと接続される経路で構成されている。
図10及び図12に示すように、第2通電経路E2の先端側部分は、連結シャフト18内を挿通したワイヤ80bから、該ワイヤ80bが接続されることで先端動作部12に各方向の動作を付与する回転体(プーリ)等、つまり歯車体126の筒体132(歯車134)、軸112(ギア体146)、主軸部材144、伝達部材152、受動板158、ピン224、グリッパリンク220及びピン222を介して、一方のグリッパ部材308のレバー部310へと接続される経路で構成されている。
これら第2通電経路E2を構成する各構造部材は、アルミ、チタン及びステンレス等の金属やカーボン等の導電性を有する材質によって形成される。これにより、マニピュレータ10の基端側から先端側へと特別に配線等を施すことなく、所定の構造部材を用いて一方のグリッパ部材308に通電する第2通電経路E2を構成することができる。
次に、第1通電経路E1について説明する。なお、第1通電経路E1は、高周波電源23の他方の極を他方のグリッパ部材309に接続するための経路であり、第2通電経路E2を構成する各構造部材とは互いに絶縁されている。
図1及び図2に示すように、第1通電経路E1の基端側部分は、高周波電源23の他方の極から、連結シャフト18の第2層18bへと接続される経路で構成されている。従って、連結シャフト18の第2層18bは、カーボンやアルミ等の導電性を有する材質によって構成されている。
図11は、第1通電経路E1を構成する構造部材及びその周辺部材の分解斜視図である。図8〜図11に示すように、第1通電経路E1の先端側部分を構成する構造部材は、基端カバー116の外周側に絶縁カバー部材402を挟んで外嵌される基端部材404と、先端カバー161の略中央の拡径部161aの基端側に対して順に外嵌される回転部材406、波形座金(ウェーブワッシャ)408及び揺動部材410とを有する。絶縁カバー部材402は、連結シャフト18が固着される基端カバー116の縮径部116a以外の略全体を覆うカバーであり、PEEK等の樹脂やセラミック等の絶縁性を有する材質によって構成される。
基端部材404は、絶縁カバー部材402によって基端カバー116との間が絶縁された状態で配置され、基端側の円環部404aが連結シャフト18の第2層18bに接続され(図12参照)、先端側の一対の突出片404b、404bが基端カバー116の舌片部159、159に対応して延びている。突出片404bの先端は、板厚方向が二股に分割された連結部412を形成している。連結部412には、舌片部159の軸孔160bと同軸の軸孔412aが貫通形成されている。すなわち、軸孔412aは、ヨー軸となる第1回転軸Oy上に配置されている(図8参照)。
揺動部材410は、先端カバー161の基端側に周方向に摺動可能に外嵌される円環部410aと、円環部410aから基端部材404側に突出した薄板状の一対の突出片410b、410bとを有する。図8及び図12に示すように、突出片410bは、基端部材404の連結部412に挿入され、その端部の軸孔414にピン416が嵌合されることで軸孔412aと連接される。揺動部材410は、ピン416を介して基端部材404に揺動可能に連結されることにより、基端部材404との通電可能な接触状態を維持しつつ、第1回転軸Oyを軸心とした先端カバー161のヨー方向への揺動動作に伴って、該先端カバー161と共に揺動可能である(図9参照)。
回転部材406は、先端カバー161に一体的に外嵌されて拡径部161aの基端側側面に当接する円環部406aと、円環部406aから先端側に突出した一対のピン406b、406bとを有する。図8及び図12に示すように、ピン406bは、先端カバー161の拡径部161aに形成されたZ方向の貫通孔418を挿通し、グリッパ部材308、309の開閉軸(第3回転軸Og)となるピン196に接続される。回転部材406は、第2回転軸Orによるロール回転動作に対し、先端カバー161と一体的に回転する。このような構成にすることにより、ピン406b、ピン196は、先端カバー161内(樹脂内部分)に配置されるため、外周面の凹凸をなくすことができ、体内の組織等への引っかかり等を防止することができる。なお、ピン406bは1本のみでもよく(例えば、図22参照)、その形状も細径な円柱体以外の形状、例えば細い板状等であってもよい。
揺動部材410の円環部410aと回転部材406の円環部406aとの間には、先端カバー161に摺動可能に外嵌された波形座金408が挟持される。波形座金408は、揺動部材410及び回転部材406を互いに軸線方向(Z方向)で離間する方向に付勢するものであり、ばね座金(スプリングワッシャ)等を用いてもよい。
従って、図9や図12から諒解されるように、波形座金408の付勢力によって揺動部材410は基端側に押圧され、先端動作部12の動作状態に係わらず、突出片410b(軸孔414)、ピン416及び連結部412(軸孔412a)の接触状態が維持され、その通電が確保される。同様に、波形座金408が突っ張ることにより、揺動部材410の円環部410aと回転部材406の円環部406aとの間の電気的な接触状態も先端動作部12の動作状態に係わらずに維持される。すなわち、先端カバー161がロール方向に回転するのに伴って回転部材406も一体的に回転するが、波形座金408を挟んで回転部材406と揺動部材410とが摺接し、その電気的な接触状態が維持される。
このように、第1通電経路E1は、連結シャフト18の第2層18bに接続される基端部材404と、ピン416によって連結部412と連接されることで基端部材404と通電可能な揺動部材410と、波形座金408を介して揺動部材410と通電可能な回転部材406と、回転部材406のピン406bが接続されるピン196とを有し、ピン196が他方のグリッパ部材309のレバー部310へと接続される経路で構成されている(図12参照)。
これら第1通電経路E1を構成する各構造部材は、アルミやチタン、ステンレス等の金属やカーボン等の導電性を有する材質によって形成され、これにより、マニピュレータ10の基端側から先端側へと特別に配線等を施すことなく、所定の構造部材を用いて他方のグリッパ部材309に通電する第1通電経路E1が構成される。
次に、先端動作部12に形成される第1通電経路E1と第2通電経路E2との間を絶縁する絶縁構造について説明する。
図12では、絶縁性を有する部材の断面ハッチングとして、樹脂性材料の断面を例示する細線及び太線を交互に記した斜線模様を用いて図示している。勿論、当該絶縁構造を構成する各絶縁部材には、PEEK等の樹脂以外にも、セラミック等を用いることもできる。
図12から諒解されるように、連結シャフト18及び基端部材404と、基端カバー116との間は、絶縁カバー部材402で絶縁される。ピン416、揺動部材410、波形座金408及び回転部材406と、ギア体146や主軸部材144との間は、先端カバー161を絶縁性を有する樹脂等によって形成することで絶縁される。一方のグリッパリンク220と、他方のグリッパリンク221との間は、グリッパリンク221を絶縁性を有する樹脂等によって形成すると共に、受動板158とグリッパリンク221との間に、側面視略L字状の平板からなり、絶縁性を有する樹脂等によって形成される絶縁板420(図10も参照)を挟持することで絶縁される。一方のグリッパ部材308と、他方のグリッパ部材309との間は、レバー部310、310間にピン196の周囲も囲繞可能な絶縁筒体400を挟持し、該絶縁筒体400を絶縁性を有する樹脂等によって形成することで絶縁される。
このような絶縁構造により、先端動作部12における第1通電経路E1と第2通電経路E2との間が確実に絶縁されると共に、この絶縁構造が先端動作部12のヨー方向動作やロール方向動作、グリッパ開閉動作によっても維持されることは、図9や図12等から明らかである。また、回転体である歯車体126等を支持する先端動作部12の外装部材(例えば、基端カバー116や先端カバー161)の周囲に第1通電経路E1を配置することにより、前記外装部材の内部に形成される第2通電経路E2との間の絶縁構造を一層簡便に構成することが可能である。
図8に示すように、先端動作部12には、グリッパ部材308、309の把持部302が少なくとも露出した状態で、その他の部位全体を外側から覆うチューブ状の絶縁カバー(絶縁チューブ)422を装着することもできる。
絶縁カバー422は、絶縁性を有する材質、例えばゴム製のチューブであり、このような絶縁カバー422を装着することにより、手術中、先端動作部12の外側に配置された基端部材404や揺動部材410、回転部材406等が処置する必要のない生体部位に接触して通電してしまうことを有効に回避することができる。また、絶縁カバー422は、先端動作部12の関節部114等の各開口部から異物(生体組織、薬剤、糸等)が入り込むことを防止する効果もある。なお、図12等では、図示の簡略化のため、絶縁カバー422を省略しており、他の図面でも同様である。
このような絶縁構造を用いたことにより、第1通電経路E1と第2通電経路E2との間が確実に絶縁され、当該マニピュレータ10をバイポーラ電気メスとして適切に使用することができる。
この場合、本実施形態に係るマニピュレータ10では、高周波電源23の両極からの通電経路として第1通電経路E1及び第2通電経路E2を設けることにより、電極部材(一対の電極部材)を構成する各グリッパ部材308、309にそれぞれ通電可能である。さらに、これら第1通電経路E1及び第2通電経路E2は、それぞれ互いに絶縁された構造部材(ワイヤ80b、歯車体126、連結シャフト18及び基端部材404等)を利用して構成されると共に、第1通電経路E1は先端動作部12の関節部114の外周に配置されている。
従って、マニピュレータ10の基端側から先端側へと別途電線等を配線することなく、構造部材による確実な通電が可能となると共に、関節部114等での先端動作部12の円滑な動作(ヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作)を確保した状態で最先端のグリッパ300へと確実に通電することができ、当該マニピュレータ10をバイポーラ電気メスとして適切に機能させることができる。すなわち、マニピュレータ10の操作部14側から先端動作部12側へと電線等を配線する場合には、細径の連結シャフト18内や各種回転体(プーリ)等が配設された先端動作部12内にその配線スペースを確保する必要があり、また先端動作部12での各動作に応じて余裕を持った配線が必要となるが、本実施形態の場合には、構造部材を有効に配線として活用しているため、上記の配線スペース確保等の問題を一挙に解消することができ、しかも先端動作部12でのヨー方向やロール方向への動作によって通電経路が切断されることを確実に回避することができる。
また、電極部材としてグリッパ300を備えたことにより、生体組織をグリッパ300で確実に挟み込んで通電することができる。従って、通電による凝固能を高めることができ、他の組織への損傷を可及的に低減することができる。
次に、本実施形態に係るマニピュレータ10に適用される先端動作部12の変形例として、第1通電経路E1の他の構成例を順に説明する。以下の説明では、図1〜図21に示される参照符号を付した構成要素と同一又は同様な構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図22は、第1変形例に係る先端動作部12aの断面側面図である。
図22に示すように、先端動作部12aでは、図12等に示す先端動作部12から波形座金408を省略し、揺動部材410の円環部410aと回転部材406の円環部406aとを、互いの対向した側面同士が摺接するように配置することで第1通電経路E1を構成している。なお、先端動作部12aでは、回転部材406から先端側に突出してピン196に接続されるピン406bを1本とした構成を例示しており、以下の各変形例に係る先端動作部12b〜12fについても同様である。
従って、先端動作部12aが第2回転軸Orを中心としたロール回転動作を行う場合には、回転部材406の円環部410aが回転しつつ、該円環部410aと円環部406aとが互いに摺接し、その接触状態が維持される。つまり、各円環部410a、406aが互いに摺接するスリップリングとして機能し、これにより、先端動作部12aの動作状態に係わらず、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。
なお、先端動作部12aでは、回転部材406が回転した場合であっても、該回転部材406と揺動部材410との接触状態が維持されればよい。そこで、円環部は、相対的に回転して摺接する回転部材406と揺動部材410の少なくとも一方に設けられていればよく、例えば、回転部材406の円環部406aに代えて、ピン406bの基端が連結されて円環部410aに摺接可能な図示しない小型のブロック体(図30のブロック体472と略同様なもの)を先端カバー161の外周面に設置した構成等にしてもよく、勿論、揺動部材410側に該ブロック体を設けてもよい。
図23は、第2変形例に係る先端動作部12bの第1通電経路E1を構成する構造部材及びその周辺部材の分解斜視図であり、図24は、図23に示す先端動作部12bの断面側面図である。
図23及び図24に示すように、先端動作部12bでは、図11や図12に示す先端動作部12から波形座金408を省略し、基端部材404、揺動部材410及び回転部材406に代えて、基端部材430、揺動部材432及び回転部材434を有することで第1通電経路E1を構成している。
基端部材430は、各突出片404bの先端側の外面に形成された円形の凹部430aを有する。回転部材434は、円環部434aの外周面を1周した断面円弧状の溝部である環状凹部434bを有しているが、これに限定されず、溝がない回転部材であってもよい。
揺動部材432は、基端側側面から一対の弾性片436、436が突出し、先端側側面から弾性片438が突出している。一対の弾性片436は、例えば板ばねで構成され、その対向する内面側に、基端部材430の凹部430aに挿入可能且つ摺接可能な当接部436aが設けられている。同様に、弾性片438は、例えば板ばねで構成され、その内面側に、回転部材434の環状凹部434bに挿入可能且つ摺接可能な当接部438aが設けられている。当接部436a、438aは、例えば先端に球面を設けたピンである。
図24から諒解されるように、揺動部材432の各弾性片436、438は、該揺動部材432(先端動作部12b)の軸心方向(先端動作部12の内側に向かう方向)への付勢力を有し、各当接部436a、438aは、各弾性片436、438の付勢方向に突出している。
弾性片436の付勢作用下に、当接部436aは、基端部材430の凹部430aの底面に接触して押さえ付けられる。従って、先端カバー161の第1回転軸Oyを基準としたヨー方向への揺動に伴って揺動部材432が揺動した場合にも、当接部436aと凹部430aとの接触状態が確実に維持されるため、基端部材430と揺動部材432の通電可能な接触状態が維持される。同様に、弾性片438の付勢作用下に、当接部438aは、回転部材434の環状凹部434bの底面に接触して押さえ付けられる。従って、先端カバー161の第2回転軸Orを基準としたロール方向での回転に伴って回転部材434が回転しても、当接部438aと環状凹部434bとの接触状態が確実に維持されるため、揺動部材432及び回転部材434の通電可能な接触状態が維持される。
これにより、先端動作部12bの動作状態に係わらず、基端部材430、揺動部材432及び回転部材434の通電可能な接触状態を維持することができ、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。
なお、弾性片436及び当接部436aは基端部材430に設けてもよく、この場合には揺動部材432に当接部436aが接触する凹部等を設ければよい。同様に、弾性片438及び当接部438aは回転部材434に設けてもよく、この場合には揺動部材432に当接部438aが接触する環状凹部等を設ければよい。また、先端動作部12aの場合と略同様に、先端動作部12bでも、揺動部材432と回転部材434の少なくとも一方に円環部を設ければよく、例えば揺動部材432を弾性片436、438が突出形成された小型のブロック体(図示せず)等で構成してもよい。さらに、当接部436aや当接部438aを省略し、弾性片436や弾性片438を直接的に基端部材430や回転部材434に対して摺接させてもよい。
図25は、第3変形例に係る先端動作部12cの断面側面図である。
図25に示すように、先端動作部12cでは、図12等に示す先端動作部12の波形座金408に代えて、揺動部材410に一端が連結されたコイルばね(弾性体)440と、該コイルばね440の他端が連結された当接部材442とを有することで第1通電経路E1を構成している。
当接部材442は、回転部材406の基端側で先端カバー161に外嵌された円環状に構成されている。コイルばね440は、揺動部材410と当接部材442との間で突っ張り、これら揺動部材410と当接部材442との間を互いに離間させる方向に付勢すると共に、揺動部材410と当接部材442との間を通電可能に接続する。
従って、先端動作部12cが第2回転軸Orを中心としたロール回転動作を行う場合に回転部材406の円環部410aが回転すると、コイルばね440の付勢作用下に該円環部410aに対して当接部材442が接触状態を維持しながら互いに摺接する。これにより、先端動作部12cの動作状態に係わらず、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。
なお、先端動作部12cでは、回転部材406が回転した場合であっても、該回転部材406と揺動部材410との間の通電が維持されればよい。そこで、円環部は、回転部材406と、揺動部材410からコイルばね440を介してオフセット配置された当接部材442の少なくとも一方に設ければよく、例えば、回転部材406の円環部406aに代えて、ピン406bの基端が連結され且つ当接部材442に摺接可能な図示しない小型のブロック体(図30のブロック体472と略同様なもの)を先端カバー161の外周面に設けた構成等にしてもよく、勿論、当接部材442を円環状ではなく該ブロック体として構成してもよい。また、コイルばね440及び当接部材442は、揺動部材410側ではなく、回転部材406側に連結し、当接部材442がコイルばね440の付勢作用下に揺動部材410(円環部410a)に摺接するように構成してもよい。
図26は、第4変形例に係る先端動作部12dの第1通電経路E1を構成する構造部材及びその周辺部材の分解斜視図であり、図27は、図26に示す先端動作部12dの断面側面図である。
図26及び図27に示すように、先端動作部12dでは、図11や図12に示す先端動作部12から波形座金408を省略し、基端部材404及び揺動部材410に代えて、基端部材450、揺動部材452及び配線部材454を有することで第1通電経路E1を構成している。
基端部材450は、実質的に基端部材404(図11参照)の円環部404aのみからなる構成であり、連結シャフト18の第2層18bに接続される円環状部材である。同様に、揺動部材452は、実質的に揺動部材410(図11参照)の円環部410aのみからなる構成であり、先端カバー161に外嵌される円環状部材である。
基端部材450と揺動部材452との間は、関節部114を跨ぎ、柔軟性を有する導電体からなる一対の配線部材454、454を介して電気的に接続されている。配線部材454は、第1回転軸Oy(関節部114)での揺動動作に追従して屈曲可能な柔軟な電線等で構成され、その両端がそれぞれ基端部材450及び揺動部材452に溶接等で接合される。配線部材454は、1本のみ又は3本以上としてもよい。
先端動作部12dでは、回転部材406と揺動部材452とがスリップリングとして機能して互いに摺接し、基端部材450と揺動部材452との間は配線部材454によって接続されている。従って、先端動作部12dの動作状態に係わらず、基端部材450、揺動部材452及び回転部材406の間を通電可能に接続しておくことができ、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。
なお、回転部材406と揺動部材452との接触状態をより良好に維持するため、例えば、揺動部材452のZ方向位置を固定しておくストッパ部材(図示せず)や、揺動部材452を回転部材406側に付勢する弾性体(図示せず)等を用いてもよい。また、図22に示す先端動作部12aの場合と略同様に、相対的に回転して摺接する回転部材406と揺動部材452は、少なくとも一方が円環状であればよい。さらに、基端部材450も円環状以外の形状であっても当然よい。
図28は、第5変形例に係る先端動作部12eの第1通電経路E1を構成する構造部材及びその周辺部材の分解斜視図であり、図29は、図28に示す先端動作部12eの断面側面図である。
図28及び図29に示すように、先端動作部12eでは、図11や図12に示す先端動作部12から波形座金408及び揺動部材410を省略し、基端部材404及び回転部材406に代えて、基端部材460、回転部材462及び配線部材464を有することで第1通電経路E1を構成している。
基端部材460は、連結シャフト18の第2層18bに接続された円環状部材であり、外周面を1周した断面円弧状の溝部である環状凹部460aを有しているが、これに限定されることなく、溝がない円環状部材であってもよい一方、回転部材462は、円環部462aの外周面を1周した断面円弧状の溝部である環状凹部462bを有する。
基端部材460と回転部材462との間は、関節部114を跨ぎ、柔軟性を有する導電体からなる一対の配線部材464、464を介して電気的に接続される。配線部材464は、第1回転軸Oy(関節部114)での揺動動作に追従して屈曲可能な柔軟な電線等で構成される。配線部材464は、当該先端動作部12eの略全体又は少なくとも関節部114を覆う絶縁カバー422(図8も参照)の内部に埋め込まれている。
上記したように、絶縁カバー422は、例えばゴム製のチューブである。そこで、配線部材464は、その略全体が絶縁カバー422内に埋め込まれると共に、両端側に接続された第1当接部464a及び第2当接部464bのみが絶縁カバー422の内周側から露出している。第1当接部464a及び第2当接部464bは、例えば先端に球面を設けたピンで構成される。
図29に示すように、絶縁カバー422が先端動作部12eの外周に装着されることにより、第1当接部464a及び第2当接部464bは、それぞれ基端部材460の環状凹部460a及び回転部材462の環状凹部462bの底面に接触して押さえ付けられる。
このため、先端カバー161の第1回転軸Oyを基準としたヨー方向への揺動に伴って回転部材462が揺動しても、配線部材464を介して基端部材460と回転部材462の通電可能な接続状態が維持される。また、先端カバー161の第2回転軸Orを基準としてロール方向への回転に伴って回転部材462が回転しても、第2当接部464bと環状凹部462bとの接触状態を維持することができる。従って、先端動作部12eの動作状態に係わらず、基端部材460及び回転部材462の通電可能な接続状態を維持することができ、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。
また、上記したように、ピン406b、ピン196等は先端カバー161内(樹脂内部分)に配置されていることにより、外周面に凹凸が生じないため、絶縁カバー422は必ずしも先端部まで覆う必要はなく、少なくとも第2通電経路E2の露出部分のみを覆えばよい。
図30は、第6変形例に係る先端動作部12fの第1通電経路E1を構成する構造部材及びその周辺部材の分解斜視図であり、図31は、図30に示す先端動作部12fの断面側面図である。
図30及び図31に示すように、先端動作部12fでは、図11や図12に示す先端動作部12から波形座金408及び揺動部材410を省略し、基端部材404及び回転部材406に代えて、基端部材470、回転部材472及びコイルばね(配線部材、弾性体)474を有することで第1通電経路E1を構成している。
基端部材470は、連結シャフト18の第2層18bに接続される小型のブロック体であり、同様に、回転部材472は、先端カバー161の外面に設置される小型のブロック体である。基端部材470と回転部材472の間は、関節部114を跨ぐように先端動作部12fの外周に巻回されたコイルばね474により通電可能に接続されている。コイルばね474は、第1回転軸Oy(関節部114)での揺動動作や第2回転軸Orでの回転部材472の回転動作に対し、伸縮及び屈曲しながら柔軟に対応することができる。
従って、先端動作部12fの動作状態に係わらず、基端部材470と回転部材472との通電可能な接続状態を維持することができ、常に第1通電経路E1を確保しておくことができる。なお、基端部材470と回転部材472は、コイルばね474の端部を連結可能であればよく、前記小型のブロック体以外の形状、例えば基端カバー116(絶縁カバー部材402)や先端カバー161に外嵌される円環部材等を用いてもよい。
本発明は、例えば、図32に示すような手術用ロボットシステム500に適用することもできる。
手術用ロボットシステム500は、多関節型のロボットアーム502と、コンソール504とを有し、ロボットアーム502の先端には前記のマニピュレータ10と同じ機構が設けられている。ロボットアーム502の先端部508には、操作部14に代えて、内部に駆動部30を収納した基部14aが固定され、該基部14aに対して作業部16が着脱可能に取り付けられる。ロボットアーム502は、作業部16を移動させる手段であればよく、据置型に限らず、例えば自律移動型でもよい。コンソール504は、テーブル型、制御盤型等の構成を採り得る。
ロボットアーム502は、独立的な6以上の関節(回転軸やスライド軸等)を有すると、作業部16の位置及び向きを任意に設定できて好適である。先端のマニピュレータ10を構成する基部14aは、ロボットアーム502の先端部508と一体化している。
ロボットアーム502は、コンソール504の作用下によって動作し、プログラムによる自動動作や、コンソール504に設けられたジョイスティック506に倣った操作、及びこれらの複合的な動作をする構成にしてもよい。コンソール504は、前記のコントローラ29の機能を含んでいる。作業部16には、前記の先端動作部12や先端動作部12a〜12fが設けられている。
コンソール504には、操作指令部としての2つのジョイスティック506と、モニタ510が設けられている。図示を省略するが、2つのジョイスティック506により、2台のロボットアーム502を個別に操作することが可能である。2つのジョイスティック506は、両手で操作し易い位置に設けられている。モニタ510には、軟性鏡による画像等の情報が表示される。
ジョイスティック506は、上下動作、左右動作、捻り動作、及び傾動動作が可能であり、これらの動作に応じてロボットアーム502を動かすことができる。ジョイスティック506はマスターアームであってもよい。ロボットアーム502とコンソール504との間の通信手段は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組合せでよい。ジョイスティック506には、トリガレバー36が設けられており、該トリガレバー36を操作することにより、図示しないモータ(人手によって操作する入力部に連動するアクチュエータ)を介して2本のロッド82a、82b(図2参照。図32中には図示せず)が進退駆動することができる。
このような手術用ロボットシステム500においても、上記の第1通電経路E1及び第2通電経路E2を設けた構成を備えることにより、容易にマニピュレータ10をバイポーラ電気メスとして使用することができる。
また、本発明の構成は全て先端が多極となっているバイポーラの構成で説明しているが、これに限らず、先端が単極となっているモノポーラに適用してもよい。その場合、電極部材であえるグリッパ部材308を上記の第2通電経路E2の導電性部材である構造部材、動力伝達部材と絶縁することで、グリッパ部材308とグリッパ部材309との間は絶縁しない構造とすることができる。そのような構成とすることで、電極部への通電経路は、第1通電経路E1のみとなり、露出している関節部に通電させる必要がなくなるため、関節部の絶縁カバーが不要となる。また、グリッパが開いた状態でも、グリッパ部材308、309のどちらかの通電も可能となる。
なお、本発明での絶縁カバーは必ずしも、カバー部分の完全な絶縁状態を保つものではなく、構造部材、動力伝達部材である第2通電経路E2と、体内組織との直接的な接触による通電を避けることを目的とするカバーでもよい。
また、電極部材は、グリッパ形状のみならず、はさみ形状とすることで、凝固・止血を行いながらのはさみによる切断も可能となる。
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
10…マニピュレータ 12、12a〜12f…先端動作部
14…操作部 16…作業部
18…連結シャフト 30…駆動部
80a、80b…ワイヤ 82a、82b…ロッド
300…グリッパ 308、309…グリッパ部材
404、430、450、460、470…基端部材
406、434、462、472…回転部材
410、432、452…揺動部材 422…絶縁カバー
14…操作部 16…作業部
18…連結シャフト 30…駆動部
80a、80b…ワイヤ 82a、82b…ロッド
300…グリッパ 308、309…グリッパ部材
404、430、450、460、470…基端部材
406、434、462、472…回転部材
410、432、452…揺動部材 422…絶縁カバー
Claims (20)
- 中空のシャフトと、
前記シャフト内に挿通される複数の動力伝達部材と、
前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、
前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される関節部を基端側に設けた先端動作部と、
を備え、
前記先端動作部は、前記駆動機構部側に接続される電源から、第1通電経路を介して通電されることにより、生体に通電可能な電極部材を有し、
前記第1通電経路は、前記関節部の外周に配置された導電性部材を有することを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項1記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記先端動作部は、前記動力伝達部材と、該動力伝達部材が接続されることで前記電極部材を動作させる回転体とを含み、
前記導電性部材は、前記回転体を支持する前記先端動作部の外装部材の周囲に配置され、前記電極部材と前記電源との間を通電可能に接続することを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、
前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材と、
を備えることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、
前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材と、
を備えることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、
前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、
前記配線部材は、前記基端部材に接続される第1当接端部及び前記回転部材に接続される第2当接端部のみが、少なくとも前記関節部を覆う絶縁カバーから露出した状態で、該絶縁カバーの内部に配設されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項2記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、
前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、
前記配線部材は、前記先端動作部の前記外装部材の周囲に巻回されたコイルばね形状であることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項3〜6のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記第1通電経路は前記シャフトを含むことを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項2〜7のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シャフトは、半径方向で3層以上の構成であり、少なくとも最内層及び最外層が絶縁性を有し、その間に導電性を有する中間層が設けられていることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記電極部材の少なくとも一部を除く前記先端動作部の全体を外側から覆う絶縁カバーを備えたことを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 中空のシャフトと、
前記シャフト内に挿通される複数の動力伝達部材と、
前記シャフトの一端側に設けられ、前記動力伝達部材を軸線方向に進退駆動する駆動機構部と、
前記シャフトの他端側に設けられ、前記動力伝達部材の前記進退駆動によって動作される関節部を基端側に設けた先端動作部と、
を備え、
前記先端動作部は、前記駆動機構部側に接続される電源から、第1通電経路及び第2通電経路を介してそれぞれ通電されることにより、その間で生体に通電可能な一対の電極部材を有し、
前記第2通電経路は、前記第1通電経路に対して絶縁された構造部材を含み、
前記第1通電経路は、前記第2通電経路の外周に配置されることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項10記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記第2通電経路の前記構造部材は、前記動力伝達部材と、該動力伝達部材が接続されることで一方の前記電極部材を動作させる回転体とを含むことを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項11記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記第1通電経路は、前記回転体を支持する前記先端動作部の外装部材の周囲に配置され、他方の前記電極部材と前記電源との間を通電可能に接続する導電性部材を有することを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項12記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、
前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材と、
を備えることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項12記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であり、且つ、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられた揺動部材と、
前記揺動部材の前記電極部材側に配置され、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能であり、且つ、前記揺動部材と通電可能に設けられた回転部材と、
を備えることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項12記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、
前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、
前記配線部材は、前記基端部材に接続される第1当接端部及び前記回転部材に接続される第2当接端部のみが、少なくとも前記関節部を覆う絶縁カバーから露出した状態で、該絶縁カバーの内部に配設されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項12記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記導電性部材は、前記電源と通電可能に接続された基端部材と、
前記基端部材の前記電極部材側に配置され、前記関節部でのヨー方向乃至ピッチ方向への揺動動作に伴って一体的に揺動可能であると共に、前記先端動作部の軸線方向に沿ったロール方向への回転動作に伴って一体的に回転可能な回転部材とを備え、
前記回転部材は、前記関節部を跨いだ可撓性を有する配線部材を介して前記基端部材と通電可能に設けられ、
前記配線部材は、前記先端動作部の前記外装部材の周囲に巻回されたコイルばね形状であることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項13〜16のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記一対の電極部材は、前記第1通電経路に接続される他方の前記電極部材が前記回転部材に接続された軸部材によって軸支され、前記第2通電経路に接続される一方の前記電極部材が絶縁筒体を介して前記軸部材によって軸支されることにより、互いに開閉可能であることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項12〜17のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記第1通電経路は、前記シャフトを含むことを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項11〜18のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記シャフトは、半径方向で3層以上の構成であり、少なくとも最内層及び最外層が絶縁性を有し、その間に導電性を有する中間層が設けられていることを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 請求項10〜19のいずれか1項に記載の医療用マニピュレータにおいて、
前記一対の電極部材の少なくとも一部を除く前記先端動作部の全体を外側から覆う絶縁カバーを備えたことを特徴とする医療用マニピュレータ。
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