JP2011057172A - タイヤ昇温装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、タイヤの温度を高め、その高めた温度を維持する熱効率に優れ、エンジン等の原動機に対して余分な負担を掛けることなく自動車の燃費を確実に向上させることができるタイヤ昇温装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のタイヤ昇温装置A1は、原動機排熱を伴った走行風Wをインナフェンダ6の外周に前後方向の所定の長さに亘って導き、前記インナフェンダ6の前後方向の複数箇所から前記走行風WをホイールハウスH内に導入することを特徴とする。このタイヤ昇温装置A1は、ホイールハウスH内に滞留させた原動機排熱によってタイヤTの温度を高める。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車のタイヤの温度を高めるタイヤ昇温装置に関する。
昨今、省エネルギや低環境負荷の要請から従来よりも増して自動車の燃費の向上が求められている。そして、タイヤに係る技術分野においては、自動車の燃費の向上を目的としたタイヤ昇温装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
このタイヤ昇温装置は、タイヤの表面に温風を噴き付けるように構成されており、タイヤの温度を高めることでタイヤの転がり抵抗を低減するようになっている。
特開平7−290916号公報 実開平4−31605号公報
ところが、タイヤ周りにおいては、走行風と、高速で回転するタイヤに引っ張られてタイヤの表面で回転方向に流れる表面気流とが存在する。
したがって、従来のタイヤ昇温装置では、噴射した温風がタイヤ周りの走行風や表面気流に抗してタイヤに到達するように、ファンや圧縮装置を使用して温風を加速しなければならない。その結果、ファンや圧縮装置の駆動に費やされる電力を供給するためにエンジンに余分な負荷を掛けることとなって、却って燃費が悪化する恐れがある。
また、従来のタイヤ昇温装置では、主にタイヤのトレッド部の表面に温風を噴き付けることでタイヤの表面の温度を高めているために、タイヤの表面の熱は路面やタイヤ周りの雰囲気に逃げ易い。言い換えれば、従来のタイヤ昇温装置では、タイヤの温度を高める加熱効率が悪い。
そこで、本発明の課題は、タイヤの温度を高め、その高めた温度を維持する熱効率に優れ、エンジン等の原動機に対して余分な負担を掛けることなく自動車の燃費を確実に向上させることができるタイヤ昇温装置を提供することにある。
前記課題を解決した本発明のタイヤ昇温装置は、原動機排熱を伴った走行風をインナフェンダの外周に前後方向の所定の長さに亘って導き、前記インナフェンダの前後方向の複数箇所から前記走行風をホイールハウス内に導入することを特徴とする。
このタイヤ昇温装置は、原動機排熱を伴った走行風をホイールハウス内に、インナフェンダの前後方向の複数箇所から導入する。その結果、このタイヤ昇温装置は、原動機排熱を伴った走行風を、ホイールハウス内の前方から後方の広範囲に亘って効率よく導き入れることができ、ホイールハウス内の広範囲に亘って安定して原動機排熱を滞留させる。
そして、このタイヤ昇温装置は、ホイールハウス内で滞留させた原動機排熱によってタイヤの温度を高める。つまり、本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)のようにタイヤの表面に温風を噴き付けてタイヤの温度を高めるものと異なって、温風をタイヤの表面に噴き付けるためのファンや圧縮装置を必要としない。
したがって、本発明のタイヤ昇温装置によれば、ファンや圧縮装置の駆動による余分な負荷を原動機に掛けることがない。
また、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)は、前記したように、温風を噴き付けることでタイヤの表面の温度を高めているために、タイヤの表面の熱が路面やタイヤ周りの雰囲気に逃げ易い。これに対して、本発明のタイヤ昇温装置によれば、ホイールハウス内に滞留させた原動機排熱によってタイヤの温度を高めるので、タイヤに付与する総熱量が大きく、かつタイヤに熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができる。その結果、高めたタイヤの温度を維持することができる。
以上のように、本発明のタイヤ昇温装置は、ホイールハウス内に滞留した原動機排熱でタイヤの温度を高め、そして、高めたタイヤの温度を維持するという2つの機能を発揮することによってタイヤの転がり抵抗を低減する。
本発明のタイヤ昇温装置においては、前記インナフェンダを上から覆うように設けられて前記走行風が供給される閉空間と、この閉空間と前記ホイールハウス内とを連通させるように前記インナフェンダの前後方向に複数設けられた開口部と、を備える構成とするのがよい。
このタイヤ昇温装置は、原動機排熱を伴った走行風を、インナフェンダを上から覆う閉空間を介してホイールハウス内導入する。これにより、このタイヤ昇温装置は、インナフェンダに設けられた複数の開口部のそれぞれから走行風を満遍なくホイールハウス内に導入する。したがって、このタイヤ昇温装置は、ホイールハウス内の前方から後方の広範囲に亘って走行風を、より効率よく導き入れる。
本発明のタイヤ昇温装置においては、前記閉空間は、前記インナフェンダと、このインナフェンダの車幅方向内側で立ち上がる車体フレームの側面と、この側面に対向する車体外板とによって囲まれる空間の前後が、それぞれ仕切り板で塞がれて形成された構成とするのがよい。
このタイヤ昇温装置は、車体フレームや車体外板のような自動車の既存の部材を利用して閉空間を形成するので、簡単な構成で閉空間を形成する。また、閉空間を区画するために新たに自動車に組み付ける部材点数が少なくなるので、その分、製造コスト及び車重の増加を小さくすることができる。
本発明のタイヤ昇温装置においては、前記閉空間は、前記インナフェンダと、このインナフェンダの車幅方向内側で立ち上がる車体フレームの側面と、この側面に対向する車体外板と、前記車体フレームの側面と前記車体外板との間で前記インナフェンダを覆うように配置された第1の仕切り板とによって囲まれる空間の前後が、それぞれ第2の仕切り板で塞がれて形成された構成とするのがよい。
このタイヤ昇温装置は、車体フレームの側面と車体外板との間でインナフェンダ上に形成される空間が、第1の仕切り板の配置によって仕切られて、走行風が通過する閉空間の断面積が狭められる。これにより、第1の仕切り板がない場合よりも閉空間を流れる走行風の動圧が高められるので、このタイヤ昇温装置は走行風をインナフェンダの開口部からホイールハウス内に、より効率よく導入する。
本発明のタイヤ昇温装置においては、前記インナフェンダの前後方向にルーバーを形成して複数の前記開口部を設け、前記ルーバーをダクト状部材で覆って前記閉空間を形成した構成とするのがよい。
このタイヤ昇温装置は、インナフェンダをダクト状部材で覆って閉空間を形成し、インナフェンダにルーバーを形成して複数の開口部を設けることで、より一層効率よく走行風をホイールハウス内に導入する。
本発明のタイヤ昇温装置においては、前記インナフェンダ上で前後方向に延設された前記走行風の供給ダクトと、前記供給ダクトから複数に分岐して前記ホイールハウス内に連通する分岐ダクトと、を備える構成とすることができる。
このタイヤ昇温装置は、ダクトのみでインナフェンダの前後方向の複数箇所から走行風をホイールハウス内に導入する構造を形成することができるので、簡素な構成になると共に、自動車の既存の構成に加える変形を最小限に止める。
本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置と異なって温風を加速する必要がなくエンジンに余分な負荷を掛けることがないので、自動車の燃費を確実に向上させることができる。また、本発明のタイヤ昇温装置は、タイヤに寄与する総熱量が大きく、かつタイヤに熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができるので、タイヤの温度を高め、その高めた温度を維持するための熱効率に優れる。
本発明の第1実施形態に係るタイヤ昇温装置を搭載する自動車の前側を部分的に示す斜視図であり、自動車の左斜め前方から自動車の前側を見下ろした図である。なお、図1中、車両のフロントフェンダパネルは、仮想線(二点鎖線)で示している。 本発明の第1実施形態に係るタイヤ昇温装置を構成し、車両の左右にそれぞれ配置される集熱カバーのうち、右側に配置される集熱カバーの斜視図であり、(a)は集熱カバーを左斜め前方から見た図、(b)は左斜め後方から見た図、(c)は集熱カバーの分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係るタイヤ昇温装置を搭載する自動車の前側を部分的に示す平面図である。 (a)は、走行する自動車のタイヤ周りにおける気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、(b)は、走行する自動車のホイールハウス内における気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、(c)は、ホイールハウス内における気流の分布を模式的に示す図であって、図1のIV−IV断面に対応する断面図である。 本発明の第2実施形態に係るタイヤ昇温装置の要部拡大斜視図である。なお、図5中、車両のフロントフェンダパネルは、仮想線(二点鎖線)で示している。 本発明の第3実施形態に係るタイヤ昇温装置の要部拡大斜視図である。 (a)は、図6におけるインナフェンダを上方から見下ろした平面図、(b)は、(a)のVIIb−VIIb断面図、(c)は、(a)のVIIc−VIIc断面図である。 本発明の第4実施形態に係るタイヤ昇温装置の要部拡大斜視図である。
本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)と異なって、温風をタイヤにアクティブ(能動的)に噴き付けるためのファンや圧縮装置を使用せずに原動機排熱(エンジン排熱、電動機排熱等)をホイールハウス内に導くように構成されている。更に具体的に説明すると、本発明のタイヤ昇温装置は、ホイールハウスの位置よりも前方の位置で集めた原動機排熱を走行風によってパッシブ(受動的)にホイールハウス内に導くと共に滞留させるように構成されている。
以下に、本発明のタイヤ昇温装置の第1実施形態から第4実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右の方向は自動車の前後上下左右の方向に一致させた図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A1は、原動機排熱を伴った走行風Wをインナフェンダ6の外周に前後方向の所定の長さに亘って導き、インナフェンダ6の前後方向の複数箇所から走行風WをホイールハウスH内に導入するように構成されている。
さらに具体的に説明すると、このタイヤ昇温装置A1は、インナフェンダ6を上から覆うように設けられた閉空間4aと、この閉空間4aに原動機排熱を伴った走行風Wを案内する走行風案内手段3と、インナフェンダ6の前後方向に複数設けられた開口部6aと、を備えている。
前記閉空間4aは、インナフェンダ6と、車体フレーム7と、フロントフェンダパネル9と、前後一対の仕切り板12,12とで囲まれて形成されている。ここでフロントフェンダパネル9は、特許請求の範囲にいう「車体外板」に相当する。
本実施形態でのインナフェンダ6は、広義のインナフェンダを意味しており、タイヤTが配置されるホイールハウスHを区画している。このインナフェンダ6は、タイヤTの外周を覆うように略円弧状に形成されている。図1に示すインナフェンダ6は、作図の便宜上一体に描かれているが、ホイールハウスHを区画しているものであれば、複数の部材が組み合わされて形成されたものであってもよい。インナフェンダ6の開口部6aについては後で詳しく説明する。
本実施形態で閉空間4aを区画する前記車体フレーム7は、バルクヘッドアッパサイドフレーム7aの後端部と、ホイールハウスロアメンバ7bの後端部と、ホイールハウスアッパメンバ7cとで主に構成されている。
バルクヘッドアッパサイドフレーム7aは、自動車Mの前部中央で車幅方向に延設されるバルクヘッドアッパセンタフレーム(図示省略)の端から後方に向かって延在し、その後端はホイールハウスアッパメンバ7cの前端に接続されている。
ホイールハウスロアメンバ7b及びホイールハウスアッパメンバ7cは、インナフェンダ6の車幅方向内側でインナフェンダ6と共にホイールハウスHを区画する部材である。
ホイールハウスロアメンバ7bは、フロントサイドフレーム7dの先端で車幅方向の外側に張り出したフロントロアエクステンション7eから後斜め上方に延在し、その後端とホイールハウスアッパメンバ7cの前端とが一体となっている。
ホイールハウスアッパメンバ7cは、ホイールハウスロアメンバ7bの後端から後方に延在し、その後端は図示しないダッシュボードアッパサイドエクステンションやインナロアピラーに接続されている。
これらのバルクヘッドアッパサイドフレーム7aの後端部、ホイールハウスロアメンバ7bの後端部、及びホイールハウスアッパメンバ7cは、インナフェンダ6の車幅方向内側でインナフェンダ6から立ち上がる側面8を有することとなる。この側面8は、特許請求の範囲にいう「インナフェンダの車幅方向内側で立ち上がる車体フレームの側面」に相当する。
前記フロントフェンダパネル9は、車体フレーム7の側面8と対向するように配置されると共に、円弧形状を呈したその下側の端縁は、インナフェンダ6における車幅方向外側の円弧形状の端縁と相互に接合されている。
そして、フロントフェンダパネル9の上側の端縁は、バルクヘッドアッパサイドフレーム7a及びホイールハウスアッパメンバ7cの上面に沿って設けられたガーニッシュフレーム7fを介してバルクヘッドアッパサイドフレーム7a及びホイールハウスアッパメンバ7cに取り付けられている。
つまり、フロントフェンダパネル9が覆う車幅方向内側には、車体フレーム7の側面8と、インナフェンダ6の上面と、フロントフェンダパネル9の裏面とで囲まれた空間15が形成されることとなる。
そして、前記閉空間4aは、この空間15の前後が、それぞれ一対の仕切り板12,12で塞がれて形成されている。
前記走行風案内手段3は、ラジエータ10の後方に配置される集熱カバー1と、集熱カバー1に接続されるダクト2とを備えている。
前記集熱カバー1は、ラジエータ10の後面側に取り付けられたシュラウドの開口11aの略上半分に対して向き合うように配置されている。
集熱カバー1は、図2(a)に示すように、ラジエータ10(図1参照)の裏側を覆うようにフード状に形成されている。
本実施形態でのフード状の集熱カバー1は、図1に示すように、ラジエータ10の裏側(シュラウドの開口11a)を部分的に覆うので、原動機排熱を効率よく集めることができると共に、ラジエータ10による放熱を良好に維持することができる。
ちなみに、本実施形態では、図2(a)に示すように、集熱カバー1の上縁に複数の放熱孔5が形成されている。この放熱孔5は、例えば、走行中の自動車M(図1参照)が停止した際に、ラジエータ10(図1参照)から放散される原動機排熱が集熱カバー1内で篭ることを、より確実に防止するものである。
前記ダクト2は、図1に示すように、集熱カバー1から閉空間4aを区画する前側の仕切り板12に向かって延在している。
更に詳しく説明すると、ダクト2は、図2(b)及び(c)に示すように、集熱カバー1のダクト接続部1eにダクト2の一端が嵌め入れられることで、図2(a)に示すように、集熱カバー1内と連通するようになっている。
図3に示すように、集熱カバー1から車幅方向の外側に延びたダクト2は、なだらかに円弧を描いて後方に向かって延びている。
そして、後方に延びたダクト2の端部は、図1に示すように、閉空間4aを区画する仕切り板12に形成された開口12aの周囲に接続されている。
次に、インナフェンダ6に形成された開口部6aについて説明する。
図1に示すように、インナフェンダ6の開口部6aは、閉空間4aとホイールハウスH内とを連通するように、インナフェンダ6の前後方向に複数設けられている。
本実施形態での開口部6aは、図3に示すように、一つのインナフェンダ6に対して3つ形成されており、その形状は、平面視で矩形を呈している。ちなみに、開口部6aの数は、複数であればよく、4以上であってもよい。また、開口部6aの形状は、矩形以外の他の多角形、円形、楕円形であっても構わない。
そして、開口部6aの面積は、閉空間4aの前側から後側に掛けて次第に大きくなるように設定されている。つまり、本実施形態では、原動機排熱を伴った走行風Wが閉空間4aの前側から後側に向かって流れていく際のその圧損を考慮し、より後側の開口部6aほどその面積を大きくすることによって、走行風Wが3つの開口部6aのそれぞれから略均等にホイールハウスH内に導入されるようになっている。
なお、図3中、符号3は走行風案内手段であり、符号7は車体フレームであり、符号10はラジエータであり、符号Mは自動車である。
次に、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A1の作用効果について説明する。
図1に示すように、タイヤ昇温装置A1を搭載した自動車Mが走行すると、自動車Mの前側で受ける走行風の一部は、ラジエータ10を通過する。そして、ラジエータ10を通過した走行風Wは、原動機排熱を伴うと共にシュラウドの開口11aから流速を速めて集熱カバー1に向かう。
そして、このタイヤ昇温装置A1では、図3に示すように、ダクト2が、集熱カバー1からなだらかに円弧を描いて後方に向かって延びているので、原動機排熱を伴った走行風Wは、集熱カバー1からダクト2の延設方向に案内されて閉空間4a内に導かれる。
その後、走行風Wは、閉空間4aの前側から後側に向かって流れる間に、インナフェンダ6の前後方向の複数箇所に設けられた開口部6aからホイールハウスH(図1参照)内に導入される。
一方、図4(a)に示すように、走行する自動車MのタイヤT周りにおいては、原動機排熱を伴わない走行風Wが流入する。また、タイヤT周りには、高速で回転するタイヤTに引っ張られてその表面で回転方向に流れる表面気流Sが存在する。つまり表面気流Sは、前方からの走行風Wに対して逆流する。
これに対して、図4(b)に示すように、ホイールハウスH内においては、ハブ20の車幅方向の内側で、走行風Wが図示しないバンパ下部や床下から流入する。
しかしながら、走行中の自動車Mであっても、ホイールハウスHの上部(後記する気流領域C3(図4(c)参照))における気流Fは、その速度が著しく小さく、流れる方向も無秩序な渦流に似た流れを形成することを本発明者らは確認している。具体的には、本発明者らが行ったシミュレーションによる計測では、30km/hで走行する自動車のホイールハウスH内の上部における気流の速度は、1.0〜2.0m/s程度であり、90km/hで走行する自動車のホイールハウスH内の上部における気流の速度は、3.0〜5.0m/s程度であった。
つまり、図4(c)に示すように、ホイールハウスH内においては、主に、タイヤT周りに形成される気流領域C1と、ハブ20の内側で走行風W(図4(b)参照)が流れ込む気流領域C2と、気流の速度が著しく小さい気流領域C3とに分れている。
なお、図4(c)中、符号21はタイヤTを装着するホイールを示し、符号22はドライブシャフトを示し、符号23はナックルを示し、符号24はロアアームを示し、符号25はアッパアームを示し、符号26はダンパを示している。
そして、前記したように、開口部6aは、気流の速度が著しく小さい気流領域C3に臨むように形成されている。
その結果、図3に示すように、ダクト2によって案内された原動機排熱を伴う走行風Wは、閉空間4aからインナフェンダ6に形成された開口部6aを介して図4(c)に示す気流領域C3に流れ込む。そして、原動機排熱は気流の速度が著しく低い気流領域C3で滞留する。
以上のようなタイヤ昇温装置A1によれば、原動機排熱を伴った走行風Wを、閉空間4aを介してインナフェンダ6の前後方向の所定の長さに亘って導き、インナフェンダ6の前後方向の複数箇所に設けられた開口部6aから走行風WをホイールハウスH内に導入するので、ホイールハウスH内の前方から後方の広範囲に亘って満遍なく走行風Wを効率よく導き入れることができる。これにより、タイヤ昇温装置A1によれば、ホイールハウスH内の広範囲に亘って安定して原動機排熱を滞留させることができる。
つまり、インナフェンダ6の前後方向の複数箇所に開口部6aを有するタイヤ昇温装置A1は、例えばインナフェンダ6の前方にのみ開口部6aを設けたものと異なって、ホイールハウスH内の構造物(サスペンションのアッパアーム等)で原動機排熱の後方への伝達が妨げられることもなく、ホイールハウスH内の前方に原動機排熱が偏在することが防止される。また、このタイヤ昇温装置A1は、前方にのみ開口部6aを設けたものと異なって、表面気流Sの存在下においてもホイールハウスH内の前後方向に満遍なく原動機排熱を滞留させることができる。また、このタイヤ昇温装置A1は、前方にのみ開口部6aを設けたものと異なって、ホイールハウスH内の後部へ原動機排熱を供給するまでに要する時間が短く、しかも原動機排熱の供給量が多くなる。
そして、このタイヤ昇温装置A1は、ホイールハウスH内で滞留させた原動機排熱によってタイヤTの温度を高める。つまり、このタイヤ昇温装置A1は、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)のようにタイヤTの表面に温風を噴き付けてタイヤTの温度を高めるものと異なって、温風をタイヤTの表面に噴き付けるためのファンや圧縮装置を必要としない。したがって、タイヤ昇温装置A1によれば、ファンや圧縮装置の駆動による余分な負荷を原動機に掛けることがない。また、タイヤ昇温装置A1は特別な熱源を要しない。
また、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)は、前記したように、温風を噴き付けることでタイヤTの表面の温度を高めているために、タイヤTの表面の熱が路面やタイヤ周りの雰囲気に逃げ易い。これに対して、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A1によれば、ホイールハウスH内に滞留させた原動機排熱によってタイヤTの温度を高めるので、タイヤTに付与する総熱量が大きく、かつタイヤTに熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができる。その結果、高めたタイヤの温度を維持することができる。
以上のように、このタイヤ昇温装置A1は、ホイールハウスH内に滞留した原動機排熱でタイヤTの温度を高め、そして高めたタイヤTの温度を維持するという2つの機能を発揮することによってタイヤTの転がり抵抗を低減する。
つまり、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A1では、図4(c)に示すように、気流領域C3に滞留した原動機排熱がタイヤTの温度を高める。特に、タイヤTの内側面(車両の幅方向内側のサイドウォール部)が効率的に加熱される。ちなみに、トレッド部よりもゴム厚が薄いサイドウォール部は、熱容量を大きく確保できるタイヤ空気室内に対する熱移動を容易にしている。そして、気流領域C3に滞留した原動機排熱は、高めたタイヤTの温度を維持する。
また、このタイヤ昇温装置A1によれば、車体フレーム7やフロントフェンダパネル9(車体外板)のような自動車の既存の部材を利用して閉空間4aを形成するので、簡単な構成で閉空間4aを形成することができる。
また、このタイヤ昇温装置A1によれば、閉空間4aを区画するために新たに自動車Mに組み付ける部材点数を低減することができるので製造コスト及び車重の増加を小さくすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について主に図5を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図5に示すように、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A2は、閉空間4bが前記第1実施形態での閉空間4aと比較して上下方向の高さが狭められて形成されている。
更に詳しく説明すると、本実施形態での閉空間4bは、インナフェンダ6と、車体フレーム7と、フロントフェンダパネル9(車体外板)と、第1の仕切り板14と、前後一対の第2の仕切り板13,13とで囲まれて形成されている。
前記第1の仕切り板14は、インナフェンダ6を上から覆うように、バルクヘッドアッパサイドフレーム7aの後端部及びホイールハウスアッパメンバ7cの側面8から車幅方向外側に延出し、フロントフェンダパネル9の裏面に接続されている。
つまり、閉空間4bは、車体フレーム7の側面8と、第1の仕切り板14と、フロントフェンダパネル9の裏面と、インナフェンダ6の上面とで囲まれた空間15の前後が、それぞれ一対の第2の仕切り板13,13で塞がれて形成されている。
そして、走行風案内手段3を構成するダクト2の後端部は、閉空間4bを区画する第2の仕切り板13に形成された開口13aの周囲に接続されている。
本実施形態に係るタイヤ昇温装置A2は、インナフェンダ6に形成された開口部6aに導風板16を備えている。
この導風板16は、開口部6aへの走行風Wの導入を促進するものである。この導風板16は、開口部6aにおける走行風Wの下流側寄りの開口周縁に立設されている。また、導風板16は、その上端が走行風Wの上流側に向かって倒れこむように湾曲して、走行風Wを受け入れ易くしている。
ちなみに、本実施形態での導風板16は、3つの開口部6aのうち、前方寄りの2つの開口部6aにのみ取り付けられているが、最も前方寄りの開口部6aにのみ取り付けられていてもよいし、全ての開口部6aに取り付けられていてもよい。
以上のようなタイヤ昇温装置A2は、前記第1実施形態に係るタイヤ昇温装置A1と同様の効果を奏すると共に、更に次のような作用効果を奏することができる。
本実施形態に係るタイヤ昇温装置A2によれば、車体フレーム7の側面8とフロントフェンダパネル9(車体外板)との間でインナフェンダ6上に形成される空間15が、第1の仕切り板14の配置によって仕切られて、原動機排熱を伴う走行風Wが通過する閉空間4bの断面積が狭められる。これにより、第1の仕切り板14がない場合よりも閉空間4bを流れる走行風Wの動圧が高められるので、このタイヤ昇温装置A2はインナフェンダ6の開口部6aから走行風WをホイールハウスH内に、より効率よく導入することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A2によれば、開口部6aに導風板16を備えているので、原動機排熱を伴う走行風WをホイールハウスH内に、より効率よく導入することができる。
なお、図5中、符号1は集熱カバーであり、符号3は走行風案内手段であり、符号7bはホイールハウスロアメンバであり、符号10はラジエータであり、符号Hはホイールハウスであり、符号Tはタイヤである。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について主に図6及び図7を参照しながら説明する。なお、この第3実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A3は、インナフェンダ6に形成された後記するルーバー17を覆うように閉空間4cが形成されている。
本実施形態での閉空間4cは、断面視で略U字状を呈した長尺の湾曲部材18がインナフェンダ6上で前後方向に配置されることによってダクト形状を呈している。この湾曲部材18は、特許請求の範囲にいう「ダクト状部材」に相当する。そして、湾曲部材18の前端が仕切り板27で塞がれ、後端が先窄まりとなって閉塞している。
走行風案内手段3を構成するダクト2の後端部は、仕切り板27に形成された開口27aの周囲に接続されている。
なお、図6中、符号1は集熱カバーであり、符号7は車体フレームであり、符号10はラジエータであり、符号Hはホイールハウスであり、符号Tはタイヤである。
ルーバー17は、図7(a)に示すように、インナフェンダ6の前後方向に複数の羽板17aが並ぶように形成されている。そして、羽板17a同士の間にスリット状に開口部6aが形成されている。
ちなみに、本実施形態でのルーバー17は、インナフェンダ6の前後方向に延びるように形成された、上方(図6参照)に凸となるビードBに形成されている。つまり、ルーバー17は、ビードBの延設方向(インナフェンダ6の周方向)に対してスリット状の開口部6aが傾斜するように、更に具体的には後方に向かって下り勾配となるように形成されている。
そして、このように形成されたルーバー17は、図7(b)に示すように、ビードBの凸部に形成された羽板17a部分と、図7(c)に示すように、インナフェンダ6のベース面に形成された羽板17a部分との間に高低差が形成されている。
なお、図7(b)及び(c)中、符号4cは湾曲部材18で区画された閉空間であり、符号6はインナフェンダである。
以上のようなタイヤ昇温装置A3は、前記第1実施形態に係るタイヤ昇温装置A1と同様の効果を奏すると共に、更に次のような作用効果を奏することができる。
本実施形態に係るタイヤ昇温装置A3によれば、閉空間4cをインナフェンダ6上でダクト状に形成し、インナフェンダ6にルーバー17を形成して複数の開口部6aを設けることで、一層効率よく走行風WをホイールハウスH内に導入することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A3によれば、ルーバー17がインナフェンダ6に形成されたビードBに沿って形成されており、ビードBの凸部に形成された羽板17a部分と、インナフェンダ6のベース面に形成された羽板17a部分との間に高低差が形成されているので、より一層効率よく走行風WをホイールハウスH内に導入することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A3によれば、閉空間4cが後方に向かうほど先窄まりとなって、走行風Wの動圧が高まるので、ホイールハウスH(図6参照)内の後部にも効率よく走行風Wが導入される。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について主に図8を参照しながら説明する。なお、この第4実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態に係るタイヤ昇温装置A4は、走行風案内手段3のダクト2を延長してインナフェンダ6上で前後方向に延在させ、このダクト2から複数に分岐してホイールハウスH内に連通する分岐ダクト19を備えている。そして、ダクト2の先端は、インナフェンダ6の後方でホイールハウスH内に連通している。ここでのダクト2は、特許請求の範囲にいう「供給ダクト」に相当する。
なお、図8中、符号1は集熱カバーであり、符号3は走行風案内手段であり、符号7は車体フレームであり、符号10はラジエータであり、符号Tはタイヤである。
以上のようなタイヤ昇温装置A4は、前記第1実施形態に係るタイヤ昇温装置A1と同様の効果を奏すると共に、更に次のような作用効果を奏することができる。
本実施形態に係るタイヤ昇温装置A4によれば、ダクト材料のみでインナフェンダ6の前後方向の複数箇所から走行風WをホイールハウスH内に導入する構造を形成することができるので、簡素な構成になると共に、自動車の既存の構成に加える変形を最小限に止める。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態においては、第2実施形態に係るタイヤ昇温装置A2にのみ、その開口部6aに導風板16を設けているが、第1実施形態に係るタイヤ昇温装置A1においても、その開口部6aに導風板16を設けてもよい。
また、前記第1実施形態及び第2実施形態においては、閉空間4a及び閉空間4bを区画する車体フレーム7の側面8は、バルクヘッドアッパサイドフレーム7aの後端部、ホイールハウスロアメンバ7bの後端部、及びホイールハウスアッパメンバ7cで形成されているが、前側の仕切り板12及び前側の第2の仕切り板13を後退させて、ホイールハウスアッパメンバ7cの側面8だけで閉空間4a及び閉空間4bを区画するように構成してもよい。
また、前記実施形態においては、第3実施形態に係るタイヤ昇温装置A3にのみ、その開口部6aがルーバー17を設けることによって形成されているが、第1実施形態及び第2実施形態での開口部6aがルーバー17を設けることによって形成されてもよい。
また、本発明は、タイヤTの直前に配置される空力デバイスであるストレーキ(図示省略)を更に備えていてもよい。タイヤTの直前で下垂する板状体で形成されるストレーキは、本来、タイヤTのトレッド部に走行風が直接当たることによって生じるドラッグ(Cd値)を低減するものとして知られている。しかしながら、このストレーキは、本発明に適用することで、この作用に加えて原動機排熱を伴わない走行風がタイヤTの前方及びタイヤTの内側方部(ホイールハウスH内のタイヤTが存在しないゾーン)からホイールハウスH内に流入する風量を減少させる。その結果、ストレーキは、原動機排熱をホイールハウスH内に、より安定して滞留させることができる。
また、前記実施形態に係るタイヤ昇温装置A1,A2,A3,A4は、エンジン自動車のほか、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む)に適用することができる。
1 集熱カバー
2 ダクト(供給ダクト)
3 走行風案内手段
4a 閉空間
4b 閉空間
4c 閉空間
6 インナフェンダ
6a 開口部
7 車体フレーム
7a バルクヘッドアッパサイドフレーム
7b ホイールハウスロアメンバ
7c ホイールハウスアッパメンバ
7d フロントサイドフレーム
7e フロントロアエクステンション
7f ガーニッシュフレーム
8 側面(車体フレームの側面)
9 フロントフェンダパネル(車体外板)
12 仕切り板
13 第2の仕切り板
14 第1の仕切り板
16 導風板
17 ルーバー
17a 羽板
18 湾曲部材
19 分岐ダクト
A1 タイヤ昇温装置
A2 タイヤ昇温装置
A3 タイヤ昇温装置
A4 タイヤ昇温装置
H ホイールハウス
M 自動車
T タイヤ
W 走行風

Claims (6)

  1. 原動機排熱を伴った走行風をインナフェンダの外周に前後方向の所定の長さに亘って導き、前記インナフェンダの前後方向の複数箇所から前記走行風をホイールハウス内に導入することを特徴とするタイヤ昇温装置。
  2. 前記インナフェンダを上から覆うように設けられて前記走行風が供給される閉空間と、
    この閉空間と前記ホイールハウス内とを連通させるように前記インナフェンダの前後方向に複数設けられた開口部と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ昇温装置。
  3. 前記閉空間は、前記インナフェンダと、このインナフェンダの車幅方向内側で立ち上がる車体フレームの側面と、この側面に対向する車体外板とによって囲まれる空間の前後が、それぞれ仕切り板で塞がれて形成されたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ昇温装置。
  4. 前記閉空間は、前記インナフェンダと、このインナフェンダの車幅方向内側で立ち上がる車体フレームの側面と、この側面に対向する車体外板と、前記車体フレームの側面と前記車体外板との間で前記インナフェンダを覆うように配置された第1の仕切り板とによって囲まれる空間の前後が、それぞれ第2の仕切り板で塞がれて形成されたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ昇温装置。
  5. 前記インナフェンダの前後方向にルーバーを形成して複数の前記開口部を設け、
    前記ルーバーをダクト状部材で覆って前記閉空間を形成したことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ昇温装置。
  6. 前記インナフェンダ上で前後方向に延設された前記走行風の供給ダクトと、
    前記供給ダクトから複数に分岐して前記ホイールハウス内に連通する分岐ダクトと、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ昇温装置。
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WO2014078421A3 (en) * 2012-11-13 2015-07-16 Compagnie Generale Des Etablissements Michelin Fender skirt and tire thermal control system
US11377156B2 (en) 2020-01-15 2022-07-05 Honda Motor Co., Ltd. Wheel well vent assembly

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