JP2011047021A - 塗膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属微粒子分散体を用いて電気伝導性や金属色調を有する塗膜をレーザー照射により簡便に作製する。
【解決手段】有機化合物を粒子表面に有する金属微粒子と溶媒とを少なくとも含む分散体を基材に塗布して塗布膜を作製後、大気中でレーザーを照射する。この方法では、低抵抗かつ金属色調を有する塗膜を形成することができ、特に銅、ニッケル等の卑金属にも適用でき、プラスチック等の低耐熱性基材にも適用することができる。この塗膜はプリント配線基板等の微細電極及び回路配線パターンの形成、塗膜の金属色調を活用した意匠・装飾用途等に用いられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、金属微粒子分散体を用いた塗膜の製造方法に関する。また、その方法により製造した、塗膜を有する装飾物品、抗菌性物品、電極、配線パターンに関する。
金属微粒子を配合した分散体は、金属微粒子を溶媒に分散し、必要に応じてバインダーや分散剤、粘度調整剤などの添加剤を更に配合した、一般にコーティング剤、塗料、インク、ペースト、分散体などの組成物を含む総称である。このような分散体は、その金属的性質を活用して、例えば電気的導通を確保するため、あるいは帯電防止、電磁波遮蔽又は金属光沢、抗菌性等を付与するためなどの種々の用途に用いられている。しかも、近年になって、配合する金属微粒子として平均粒子径が1〜200nm程度のナノサイズの金属微粒子が用いられるようになってきたため、その用途は多方面に拡大し、例えば、微細な電極、回路配線パターンを形成する技術が提案されている。これは、金属微粒子を配合した分散体を、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の塗装手法で基板上に電極や回路配線パターン状に塗布した後、比較的低温で加熱して金属微粒子を融着させるもので、特に、プリント配線基板の製造に応用されつつある。更に、金属微粒子はナノオーダーになると、そのサイズ効果によりバルク材の融点よりも低い温度においても容易に粒子の融着が進行するため、簡便な金属色調面の作製技術が、意匠・装飾用途においても注目されている。
金属微粒子を用いた回路配線パターンの製造方法として、レーザー照射による方法が提案されている。例えば特許文献1には、20℃における比抵抗が20μΩcm以下である金属又は複合金属からなり、かつ平均粒子サイズが1〜100nmであるコロイド粒子が分散されているインクの液滴を基板上に供給し、該基板上に塗布パターンを描画する工程と、前記塗布パターンが描画された基板にレーザー光を照射して熱を発生させ、該熱によって該コロイド粒子の少なくとも一部を溶融させることにより塗膜に導電性を付与する工程とを含む導電パターンの形成方法であって、一連の工程を不活性ガスの雰囲気下で行う導電パターンの形成方法が開示されている。また、特許文献2には(a)溶媒中に金属粒子が分散した液体により、基板の表面上に塗布パターンを形成する工程と、(b)前記工程(a)で形成された塗布パターンが配置されていない領域には光ビームが入射しないように制御して、該塗布パターンに光ビームを入射させ、溶媒を蒸発させるとともに、光ビームの照射によって金属粒子の少なくとも表層部を溶融させて、相互に接する金属粒子同士を一体化させる工程とを有する導電パターンの形成方法が開示されている。
特開2004−143571号公報 特開2007−273533号公報
前記の特許文献1に記載の配線パターンの形成方法は、不活性ガス雰囲気下でレーザー光をインク液滴に照射させることにより導電パターンを形成するため、雰囲気制御のための大掛かりな設備が必要となる。また、特許文献2では、該塗布パターンに光ビームを入射させ、溶媒を蒸発させるとともに、光ビームの照射によって金属微粒子の少なくとも表層部を溶融させて、相互に接する金属微粒子同士を一体化させることから、表層部以外は金属微粒子が直接融着していないため、電気的導通の確保が不十分である。また、該文献ではミクロンオーダーの金属粒子を用いているが、近年検討されているようなナノオーダーの金属微粒子を使用する場合には、金属微粒子の分散性を確保するために各種の有機化合物が分散体に配合されているため、溶媒を蒸発させる程度のエネルギーでは有機化合物が塗膜中に残存し、電気的導通の確保が不十分となりやすい。
さらに近年、用途の広がりやコストの点から、使用される材料が広範に検討されるようになってきた。例えば、金属微粒子分散体に使用される金属種としては主として、Au、Ag、Pt、Pdなどの貴金属と、Ni、Cuなどの卑金属がある。これらのなかでも卑金属は、材料が安価であるとともに、優れた電気伝導性及び熱伝導性を有しているため高い信頼性を得ることができるなどのメリットがある。しかしながら、卑金属微粒子は環境中で酸化し易く、抵抗値の増大につながると同時に金属色調も喪失してしまうという問題がある。塗膜が形成される基材としても、プラスチックなどの低耐熱性基材が検討されているが、その低耐熱性ゆえに製造工程における加熱に制約がかかってしまう。
このレーザー照射による回路配線パターンの製造方法においては、電気的導通確保のためにはバインダー等の有機物を分解/揮発させる必要があるが、酸素存在下では銅、ニッケル等の卑金属微粒子であれば酸化してしまい、酸素不存在下では大きなエネルギーが必要となり発熱が大きいため、プラスチック等の基材の耐熱性が低い場合には基材の変質も生じる。卑金属微粒子の酸化及び低耐熱性基材の変質を抑制するためにレーザー光の出力を弱めると、金属微粒子同士の融着が不十分となり、電気抵抗の低減ができず、金属色調も得られない。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、大気中でレーザー光を照射しても低抵抗でかつ金属色調を有する塗膜を形成すること、特に卑金属や低耐熱性基材にも適用ができる方法及び該方法によって作製された金属塗膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粒子表面に有機化合物を有する金属微粒子分散体を基材に塗布した塗布膜に対し、表面有機化合物によりレーザー光照射前の金属微粒子の酸化を防止するとともに、大気中でレーザー照射を行うことによって熱を発生させ、熱によって塗布膜中の有機化合物を分解除去すると同時に金属微粒子を溶融接着させることにより低抵抗でかつ金属色調を有する塗膜が得られること、加えて本製造方法は、卑金属微粒子にも適用できること、低耐熱性基材にも適用ができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(1)有機化合物を粒子表面に有する金属微粒子と溶媒とを少なくとも含む分散体を基材に塗布して塗布膜を作製する工程(a)と、前記塗布膜の全領域又は一部領域にレーザーを大気中で照射する工程(b)とを備えることを特徴とする塗膜の製造方法であり、(2)照射するレーザー光の波長が赤外域の波長であり、レーザーの出力が1〜140Wの範囲内であることを特徴とする(1)の塗膜の製造方法であり、(3)照射するレーザーが連続波であることを特徴とする(1)又は(2)の塗膜の製造方法であり、(4)前記工程(b)において、レーザーの照射により金属微粒子同士を少なくとも一部を融着させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの塗膜の製造方法であり、(5)前記工程(b)の後にレーザー照射を行わなかった領域の塗膜を除去する工程(c)を備えることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの塗膜の製造方法であり、(6)レーザーの照射により、塗膜のX線回折における金属のメインピーク強度を100としたときに当該金属の酸化物のメインピーク強度を5以下とすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの塗膜の製造方法であり、(7)前記の方法で形成した塗膜を有することを特徴とする装飾物品、抗菌性物品、電極、配線パターンである。
本発明のように、表面に有機化合物を有する金属微粒子を配合した分散体を、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の塗装手法で基板上に電極、回路配線、意匠や装飾の塗布膜を塗布した後、該塗布部にレーザー光の照射を特定の条件で行うことによって、製造時の雰囲気を制御することなく大気中で低抵抗かつ金属色調を有する金属塗膜を形成することができる。そのため、雰囲気制御のための大掛かりな設備導入とその維持管理が不要となるため簡便であり、コストも削減できる。また、卑金属を用いた場合、特に銅やニッケルを用いた場合であっても、酸化を抑制して低抵抗かつ金属色調を有する金属塗膜を形成することができること、基材がプラスチック等の低耐熱性基材の場合、特にポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)から選ばれる少なくとも一種であっても、基材にダメージを与えることなく低抵抗かつ金属色調を有する金属塗膜を形成することができることから、電気的導通を確保する材料、帯電防止、電磁波遮蔽、金属光沢、抗菌性等を付与する材料などに用いられ、特に、塗膜の導電性を活用したプリント配線基板等の微細電極及び回路配線パターンの形成、塗膜の金属色調を活用した複雑な模様の意匠・装飾用途に幅広く用いられる。
試料1のレーザー照射前の銅塗膜表面のSEM像 試料1のレーザー照射後の銅塗膜表面のSEM像 試料5のレーザー照射後の銅塗膜のXRDプロファイル
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、有機化合物を粒子表面に有する金属微粒子と溶媒とを少なくとも含む分散体を基材に塗布して塗布膜を作製する工程(a)と、前記塗布膜の全領域又は一部領域にレーザーを大気中で照射する工程(b)とを備えることを特徴とする。
まず有機化合物を粒子表面に有する金属微粒子と溶媒とを少なくとも含む分散体について説明する。
(1)金属微粒子
本発明で用いる金属微粒子は、その構成成分、粒子径等には特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。構成成分としては、1種の金属であっても、合金にしたり積層するなど2種以上の金属で構成されても良い。その金属成分としては周期表VIII族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及びIB族(銅、銀、金)からなる群より選ばれる少なくとも1種であれば、導電性が高いので好ましく、中でも、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム及び白金から選ばれる少なくとも一種が金属色調の表面が得られ易いため好ましい。これらのなかでも銅、ニッケルといった卑金属は、材料が安価であるとともに、優れた電気伝導性及び熱伝導性を有しているため高い信頼性を得ることができるためさらに好ましい。金属微粒子には、製法上不可避の酸素、異種金属等の不純物を含有していても良い。
金属微粒子の粒子径は、入手し易いことから1nm〜1μm程度の平均粒子径を有する金属微粒子を適宜用いるのが好ましく、1〜200nmの範囲の平均粒子径を有する金属微粒子がより好ましく、多方面の用途に用いることができることから1〜100nm程度の平均粒子径を有する金属微粒子が更に好ましく、より微細な電極、回路配線パターンや優れた金属色調の表面を得るためには、1〜50nmの範囲の平均粒子径を有する金属微粒子を用いるのが更に好ましい。本発明では1種の金属微粒子を用いても良いし、2種以上の金属微粒子を混合して用いても良く、例えば平均粒子径が異なる2種以上の金属微粒子、構成成分が異なる2種以上の金属微粒子を混合して用いても良い。金属微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真にて1000個の粒子の粒子サイズをそれぞれ測定し、個数平均を算出して求めた。
金属微粒子は、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、(1)金属を真空中で蒸発させて、気相中から金属微粒子を凝結させる方法、(2)金属化合物の溶液又はスラリーに還元剤を添加して、液相中から金属微粒子を析出させる方法などを用いることができ、(2)の方法では廉価に金属微粒子が得られるため、より好ましい方法である。(2)の方法において、金属微粒子を製造するための原料である金属化合物は、例えば、前記金属の塩化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等を用いることができる。金属化合物を溶解する媒液には、水又はアルコール等の有機溶媒、あるいはこれら2種以上の混合溶媒を用いることができる。金属化合物の媒液中の濃度は、金属化合物が溶解する範囲であれば特に制約はないが、工業的には5ミリモル/リットル以上とすることが好ましい。金属化合物が水に難溶のものであれば、金属成分と可溶性の錯体を形成する化合物を加えて用いることもできる。
必要に応じて用いる錯化剤は、金属化合物から金属イオンが溶出するか、又は金属化合物が還元されて金属原子が生成する過程で作用すると考えられ、これが有する配位子のドナー原子と金属イオン又は金属原子と結合して金属錯体化合物を形成し得る化合物を言い、ドナー原子としては、例えば、窒素、酸素、硫黄等が挙げられる。具体的には、
(1)窒素がドナー原子である錯化剤としては、(a)アミン類(例えば、ブチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等の1級アミン類、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及び、ピペリジン、ピロリジン等のイミン類等の2級アミン類、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の3級アミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンの1分子内に1〜3級アミンを2種以上有するもの等)、(b)窒素含有複素環式化合物(例えば、イミダゾール、ピリジン、ビピリジン等)、(c)ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等)及びシアン化合物、(d)アンモニア及びアンモニウム化合物(例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等)、(e)オキシム類等が挙げられる。
(2)酸素がドナー原子である錯化剤としては、(a)カルボン酸類(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のオキシカルボン酸類、酢酸、ギ酸等のモノカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸等のジカルボン酸類、安息香酸等の芳香族カルボン酸類等)、(b)ケトン類(例えば、アセトン等のモノケトン類、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のジケトン類等)、(c)アルデヒド類、(d)アルコール類(1価アルコール類、グリコール類、グリセリン類等)、(e)キノン類、(f)エーテル類、(g)リン酸(正リン酸)及びリン酸系化合物(例えば、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等)、(h)スルホン酸又はスルホン酸系化合物等が挙げられる。
(3)硫黄がドナー原子である錯化剤としては、(a)脂肪族チオール類(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルメルカプタン等)、(b)脂環式チオール類(シクロヘキシルチオール等)、(c)芳香族チオール類(チオフェノール等)、(d)チオケトン類、(e)チオエーテル類、(f)ポリチオール類、(g)チオ炭酸類(トリチオ炭酸類)、(h)硫黄含有複素環式化合物(例えば、ジチオール、チオフェン、チオピラン等)、(i)チオシアナート類及びイソチオシアナート類、(j)無機硫黄化合物(例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素等)等が挙げられる。
(4)2種以上のドナー原子を有する錯化剤としては、(a)アミノ酸類(ドナー原子が窒素及び酸素:例えば、グリシン、アラニン等の中性アミノ酸類、ヒスチジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸類、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類)、(b)アミノポリカルボン酸類(ドナー原子が窒素及び酸素:例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、エチレンジアミンジ酢酸(EDDA)、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDA)等)、(c)アルカノールアミン類(ドナー原子が窒素及び酸素:例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(d)ニトロソ化合物及びニトロシル化合物(ドナー原子が窒素及び酸素)、(e)メルカプトカルボン酸類(ドナーが硫黄及び酸素:例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸、チオ酢酸、チオジグリコール酸等)、(f)チオグリコール類(ドナーが硫黄及び酸素:例えば、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール等)、(g)チオン酸類(ドナーが硫黄及び酸素)、(h)チオ炭酸類(ドナー原子が硫黄及び酸素:例えば、モノチオ炭酸、ジチオ炭酸、チオン炭酸)、(i)アミノチオール類(ドナーが硫黄及び窒素:アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン等)、(j)チオアミド類(ドナー原子が硫黄及び窒素:例えば、チオホルムアミド等)、(k)チオ尿素類(ドナー原子が硫黄及び窒素)、(l)チアゾール類(ドナー原子が硫黄及び窒素:例えばチアゾール、ベンゾチアゾール等)、(m)含硫黄アミノ酸類(ドナーが硫黄、窒素及び酸素:システイン、メチオニン等)等が挙げられる。
(5)上記の化合物の塩や誘導体としては、例えば、クエン酸トリナトリウム、酒石酸ナトリウム・カリウム、次亜リン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム等のそれらのアルカリ金属塩や、カルボン酸、リン酸、スルホン酸等のエステル等が挙げられる。
このような錯化剤のうち、少なくとも1種を用いることができる。錯化剤の使用量は錯化剤の種類により最適量が異なるため、その種類に応じて適宜設定する。錯化剤の使用量を少なくすると、金属微粒子の一次粒子を小さくすることができ、使用量を多くすると、一次粒子を大きくすることができる。
本発明では、窒素、酸素から選ばれる少なくとも1種をドナー原子として含む錯化剤であれば、本発明の効果が得られ易いので好ましい。具体的には、アミン類、窒素含有複素環式化合物、ニトリル類及びシアン化合物、カルボン酸類、ケトン類、リン酸及びリン酸系化合物、アミノ酸類、アミノポリカルボン酸類、アルカノールアミン類、又はそれらの塩又は誘導体から選ばれる少なくとも1種であればより好ましく、カルボン酸類の中ではオキシカルボン酸類が、ケトン類の中ではジケトン類が、アミノ酸類の中では塩基性及び酸性アミノ酸類が好ましい。更に、錯化剤が、ブチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、イミダゾール、クエン酸又はそのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、次亜リン酸又はそのアルカリ金属塩、ヒスチジン、アルギニン、エチレンジアミンテトラ酢酸又はそのアルカリ金属塩、エタノールアミン、アセトニトリルから選ばれる少なくとも1種であれば好ましい。これらの酸素系又は窒素系の錯化剤の使用量は、前記のように金属化合物1000重量部に対し0.01〜200重量部の範囲が好ましく、0.1〜200重量部の範囲がより好ましく、0.5〜150重量部の範囲が更に好ましい。
また、本発明では、ドナー原子の少なくとも一つが硫黄である錯化剤を用い、この錯化剤を、金属化合物1000重量部に対し0.01〜2重量部の範囲で用いると、一層微細な金属微粒子の生成を制御し易くなる。硫黄を含む錯化剤としては、前記のメルカプトカルボン酸類、チオグリコール類、含硫黄アミノ酸類、脂肪族チオール類、脂環式チオール類、芳香族チオール類、チオケトン類、チオエーテル類、ポリチオール類、チオ炭酸類、硫黄含有複素環式化合物、チオシアナート類及びイソチオシアナート類、無機硫黄化合物、チオン酸類、アミノチオール類、チオアミド類、チオ尿素類、チアゾール類又はそれらの塩又は誘導体等が挙げられる。中でもメルカプトカルボン酸類、メルカプトエタノール等のチオグルコール類、含硫黄アミノ酸類が効果が高いので好ましく、分子量が200以下であるのがより好ましく、180以下であれば一層好ましい。そのようなメルカプトカルボン酸として、例えば、メルカプトプロピオン酸(分子量106)、メルカプト酢酸(同92)、チオジプロピオン酸(同178)、メルカプトコハク酸(同149)、ジメルカプトコハク酸(同180)、チオジグリコール酸(同150)、システイン(同121)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。より好ましい使用量は、0.05〜1重量部の範囲であり、0.05重量部以上0.5重量部未満であれば更に好ましい。
液相での反応に用いる還元剤としては公知のものを用いることができ、例えば、(1)ヒドラジン又はその水和物、(2)ヒドラジン系化合物(例えば、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等)、(3)アルデヒド類((a)脂肪族アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等)、(b)芳香族アルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド等)、(c)複素環式アルデヒド類等)、(4)アミン類((a)1級アミン類(例えば、ブチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等)、(b)2級アミン類(例えば、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等)、(c)3級アミン類(例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等)等)、(5)アミノアルデヒド類(例えば、アミノアセトアルデヒド等)、(6)アルカノールアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(7)還元糖(例えば、ショ糖、トレパース、マルトース、ラクトース等)、(8)水素化合物(例えば、水素化ホウ素ナトリウム等)、(9)低次無機酸素酸(例えば、亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等)及びその水化物(例えば、亜硫酸水素)又はそれらの塩(例えば、ナトリウム等のアルカリ金属塩)、(10)1分子中に水酸基を3個有するフェノール化合物及び/又はその酸化体(例えば、没食子酸、ピロガロール、フロログルシノール)、(11)フェノール化合物の酸化重合物及び/又はその酸化体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いても良い。
フェノール化合物の酸化重合物としては、前記のとおりフェノール化合物分子の一部を酸化しながら分子2個以上が結合し重合して生成した炭素縮合多環性化合物を用いることができ、例えば、下記の(a)〜(d)から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いられる。
(a)水酸基の置換位置が1〜4位から選ばれる2ヶ所であり、カルボニル基の置換位置が5〜8位から選ばれる2ヶ所であるジヒドロキシ−ジベンゾフラン−ジオン及びそれらの誘導体、例えば1,2−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオン、2,4−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−5,7−ジオン、1,2−ジヒドロキシ−4,5−ジカルボキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオンなど、
(b)水酸基の置換位置が1〜3位から選ばれる2ヶ所、4位の1ヶ所、及び6位、7位から選ばれる1ヶ所であるテトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オン及びそれらの誘導体、例えば2,3,4,6−テトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オン(一般名プルプロガリン)など、
(c)(a)又は(b)の化合物を更に酸化重合した化合物、
(d)(a)〜(c)から選ばれる少なくとも一種の化合物と2価及び3価のフェノール化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種の化合物とを酸化重合した化合物。ここで、誘導体とは、酸化重合物の分子内の小部分の変化によって生成する化合物をいい、例えば、酸化重合物に含まれる水素原子をアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基等で置換したものである。
還元反応は任意の温度で行うことができ、水性媒液中で行う場合には、5〜90℃の範囲の温度であれば、反応が進み易いので好ましい。
還元剤の添加量は金属に還元できる範囲であれば適宜設定することができ、金属原子1モルに対して、0.2〜50モルであることが好ましい。添加量が0.2モル未満では還元反応が十分に進行し難いため好ましくなく、50モルを超えると生成した金属微粒子の分散が不安定になり易いため好ましくない。
金属化合物と還元剤の混合液のpHを3〜14の範囲に調整すると、金属化合物が媒液中に均一に分散し、還元反応が生じ易いので好ましい。更に好ましいpHの範囲は8〜13であり、8〜12であれば一層好ましい。具体的には、例えば、金属化合物を含む媒液のpHを調整した後、金属化合物を還元しても良く、あるいは、還元剤を混合した後、pHを調整しても良い。pH調整には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニア等のアンモニウム化合物、アミン類等の塩基性化合物を用いることができる。
(2)有機化合物を表面に有する金属微粒子の作製
前記の金属微粒子は、表面に、金属微粒子同士の凝集を抑制する機能をもつ有機化合物を有する。有機化合物には、前記機能をもつものであれば公知のものを適宜用いることができ、一般に保護コロイド、高分子分散剤、配位化合物などと称されるものや、還元剤として用いた有機化合物なども含む。還元剤の項(段落0020)で述べた(3)〜(7)、(10)、(11)に挙げた還元力を有する有機化合物を用いた場合には、その還元剤が金属微粒子表面に付着する場合もある。例えば、フェノール化合物の酸化重合物は還元力があって、金属化合物を還元するとともに、還元反応等で酸化されたものや過剰なものが、配位や吸着して、生成した金属微粒子の表面に存在する。有機化合物としては金属微粒子の酸化防止の観点からゼラチン等の保護コロイドが好ましい。
保護コロイドとしては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系、デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ等の天然高分子や、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム等のアクリル酸系、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ポリエチレングリコール等の合成高分子、クエン酸等の多価カルボン酸、アニリン又はそれらの誘導体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いても良い。高分子の保護コロイドは分散安定化の効果が高いので、これを用いるのが好ましく、水系媒液中で反応させる場合、水溶性のものを用いるのが好ましく、特にゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールが好ましい。なかでも、石灰処理ゼラチンは金属微粒子の分散能力と酸化防止力が高いため好ましい。ゼラチンは金属微粒子100重量部に対し、0.1〜15重量部程度の範囲で存在していれば、所望の効果が得られるので好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜10重量部程度である。
高分子分散剤としては公知のものを用いることができ、例えば、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩などの塩基性基を有する高分子が挙げられる。また、アクリル系ポリマー、アクリル系共重合物、変性ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸等の高分子のアルキルアンモニウム塩、アミン塩、アミドアミン塩などが挙げられる。このような高分子分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。
上記市販品としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)―101、DISPERBYK―111、DISPERBYK―112、DISPERBYK―130、DISPERBYK―140、DISPERBYK―145、DISPERBYK―160、DISPERBYK―161、DISPERBYK―162、DISPERBYK―163、DISPERBYK―2155、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、DISPERBYK―180、DISPERBYK―2000、DISPERBYK―2025、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、BYK―9076、BYK―9077、TERRA−204、TERRA−U(以上ビックケミー社製)、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−15BHFS、 フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17HF、フローレンTG−662C、フローレンKTG−2400(以上共栄社化学社製)、ED−117、ED−118、ED−212、ED−213、ED−214、ED−216、ED−350、ED−360(以上楠本化成社製)等を挙げることができる。
高分子分散剤の配合量は金属微粒子100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲であれば微粒子の分散効果が得られるので好ましく、この範囲より少なすぎると効果が得られ難いため好ましくなく、多すぎると電極材料用途では導電性を阻害し、装飾用途では白濁などを生じ仕上り外観が低下する場合があるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.1〜10重量部である。
高分子分散剤の分子量には制限がないが、GPC法で測定した重量平均分子量が2,000〜1,000,000の範囲が好ましい。2,000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1,000,000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり易い。より好ましくは4,000〜1,000,000の範囲であり、更に好ましくは10,000〜1,000,000の範囲である。
また、高分子分散剤にはリン、ナトリウム、カリウムの元素が少ないものが好ましく、それらの元素が含まれていないものがより好ましい。高分子分散剤にリン、ナトリウム、カリウムの元素が含まれていると、加熱して電極や配線パターン等を作製した際に、灰分として残存するため好ましくない。
金属微粒子表面の有機化合物にゼラチンを用いる場合には、高分子分散剤のアミン価と酸価の差(アミン価−酸価)は0〜50であることが好ましい。アミン価は、遊離塩基、塩基の総量を示すものであり、酸価は、遊離脂肪酸、脂肪酸の総量を示すものである。アミン価、酸価はJIS K 7700あるいはASTM D2074に準拠した方法で測定する。
配位化合物としては、硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物又はカルボキシル基を有する化合物を用いることができる。硫黄、窒素、リンのそれぞれの元素は金属微粒子の表面に配位し化学結合するため、これらの元素を介して金属微粒子の表面に配位する。これらの元素の中でも硫黄が金属微粒子との化学結合力が強いので好ましい。
硫黄化合物としては例えば、(a)メルカプトカルボン酸類(例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸、チオ酢酸、チオジグリコール酸等)、(b)チオグリコール類(例えば、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール等)、(c)アミノチオール類(アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン等)、(d)チオアミド類(例えば、チオホルムアミド等)、(e)含硫黄アミノ酸類(例えば、システイン、メチオニン等)が挙げられる。中でも、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にメルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプトエタノールは、金属微粒子、とりわけ金属コロイド粒子に分散安定性を付与する効果が高くより好ましい。
また、窒素化合物としては、(a)アミノ酸類(例えば、グリシン、アラニン等の中性アミノ酸類、ヒスチジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸類、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類)、(b)アミノポリカルボン酸類(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、エチレンジアミンジ酢酸(EDDA)、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDA)等)、(c)アルカノールアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(d)アミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノトリエチルアミン等)が挙げられる。
また、リン化合物としては、アルキルホスフィン(−PR3:Rはアルキル基)などが挙げられる。配位化合物の添加量は、その種類により最適量が異なるため、その種類に応じて適宜設定する。
金属微粒子の表面に、前記の有機化合物を予め付着させるには、金属微粒子を分散した媒液中に有機化合物を添加し混合するか、あるいは、前記の金属化合物と還元剤とを液相中で反応させる際に有機化合物を存在させても製造することができる。後者の方法では、還元反応の際に前記の化合物が存在しており、より高度に分散した金属微粒子が得られ、特に微細な金属コロイド粒子が得られるため好ましい方法である。このことから、金属化合物と有機化合物とを媒液に溶解した溶液と還元剤とを混合して還元する方法、金属化合物と有機化合物とを媒液に溶解した溶液に還元剤を添加して還元する方法などがより好ましい方法である。
金属化合物と還元剤とを混合する際のそれぞれの原材料の添加順序には制限はなく、例えば、(1)有機化合物を含む溶媒に、金属化合物と還元剤とを同時並行的に添加する方法、(2)有機化合物、金属化合物を含む溶媒に、還元剤を添加する方法等が挙げられる。また、還元の際に錯化剤を添加しても良く、その場合は例えば、(3)有機化合物、金属化合物を含む溶媒に、錯化剤と還元剤とを同時並行的に添加する方法、(4)有機化合物、金属化合物を含む溶媒に、錯化剤と還元剤の混合液を添加する方法等が挙げられる。中でも(3)、(4)の方法が反応を制御し易いので好ましく、(4)の方法が特に好ましい。金属化合物、還元剤、有機化合物、錯化剤は還元反応に用いる前に予め溶媒に懸濁あるいは溶解して用いても良い。なお、「同時並行的添加」とは、反応期間中において金属化合物と還元剤あるいは錯化剤と還元剤とをそれぞれ別々に同時期に添加する方法をいい、両者を反応期間中継続して添加する他に、一方あるいは両者を間欠的に添加することも含む。
次いで、有機化合物を表面に有する金属微粒子を固液分離し、洗浄して、その固形物を得る。固液分離する手段は特に制限はなく、重力濾過、加圧濾過、真空濾過、吸引濾過、遠心濾過、自然沈降などの手段をとり得るが、工業的には加圧濾過、真空濾過、吸引濾過が好ましく、脱水能力が高く大量に処理できるので、フィルタープレス、ロールプレス等の濾過機を用いるのが好ましい。なお、金属微粒子を固液分離するとき、媒液のpHを5以下にすると金属微粒子は媒液中で容易に凝集するので、吸引ろ過、沈降分離等の比較的簡単な操作でろ別できる。より好ましいpHの範囲は0〜5である。ろ別した有機化合物を表面に有する金属微粒子は常法により洗浄することができ、可溶性塩類や残存する還元剤を十分に除去できる。pH調整には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸等の酸性化合物を用いることができる。必要に応じて、金属微粒子の固形物を通常の方法により乾燥しても良い。特に卑金属微粒子は酸化され易いので、酸化を抑制するために、乾燥は窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。
(3)溶媒
金属分散体に配合する溶媒は、水及び/又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒には、通常使用される有機溶媒を適宜選択して用いることができる。有機溶媒としては、具体的にはトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、ノルマルプロピルアルコール、2−ブタノール、TBA(ターシャリーブタノール)、ブタンジオール、エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系容媒、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、ブチルカルビトール等のエーテル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、フルフラール等のアミド系溶媒から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
有機溶媒は、金属微粒子分散体の低粘度化に適応するために、低粘度のものが好ましく、1〜20mPa・sの範囲のものが好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン、ブチルカルビトール、ブタノール、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブ、テトラデカン等が好適に用いられる。
(4)その他の成分
本発明の金属微粒子分散体には、その他の成分として、硬化性樹脂、増粘剤、バインダー、架橋剤、表面調整剤(レベリング剤)、消泡剤、界面活性剤、非界面活性型分散剤、可塑剤、防カビ剤等の添加剤を、必要に応じて適宜配合することもできる。硬化性樹脂は、塗布物と基材との密着性を一層向上させることができる。硬化性樹脂としては、低極性非水溶媒に対する溶解型、エマルジョン型、コロイダルディスパージョン型等を制限なく用いることができる。また、硬化性樹脂の樹脂種としては、公知のタンパク質系高分子、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース等を制限無く用いることができる。硬化性樹脂成分の配合量は、金属微粒子100重量部に対し0.01〜10重量部程度の範囲が好ましく、より好ましい範囲は0.01〜8重量部程度であり、0.01〜5重量部程度であれば更に好ましい。増粘剤は分散体の粘度を調整するものであり、ポリエーテル系化合物が挙げられる。バインダーは金属微粒子と基材との密着性を向上させるためのものであり、ポリエステル、ポリケトン等を用いることができる。架橋剤は、膜を作製した際に架橋反応を行い得るものであって、基材と塗膜との密着性がより一層向上するため必要に応じて配合することができる。架橋剤としては、メラミンなどが挙げられる。表面調整剤は金属微粒子分散体の表面張力をコントロールして、ハジキ、クレーター等の欠陥を防止するものであり、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤等が挙げられる。また、消泡剤は、金属微粒子分散体に配合する各成分を混合する際に生じる気泡の発生量を抑制するためのものであって、シリコーン系消泡剤等を用いることができる。界面活性剤は金属微粒子の分散安定性を更に高める作用や、金属微粒子分散体のレオロジー特性を制御し、塗工性を改良する作用を有するので好ましく、具体的には、第4級アンモニウム塩等のカチオン系、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン系、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等のノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができ、これらから選ばれる1種以上を用いることができる。表面調整剤(レベリング剤)、消泡剤、界面活性剤等のその他の成分の配合量は、金属微粒子分散体組成に応じて適宜設定することができるが、一般的には金属微粒子100重量部に対し、0.01〜5重量部程度の範囲が好ましい。
(5)金属微粒子分散体の作製
次いで、表面に有機化合物を有する金属微粒子の固形物あるいは乾燥物を水又は有機溶媒又はその混合物に混合して分散させる。有機溶媒、その他配合物は前記のものを用いることができる。高分子分散剤はこの段階で混合することもできる。混合方法としては湿式混合機を用い、例えば、撹拌機、らせん型混合機、リボン型混合機、流動化型混合機等の固定型混合機、円筒型混合機、双子円筒型混合機等の回転型混合機、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル等の湿式粉砕機、ペイントシェーカー等の振とう機、超音波分散機等の分散機などを用いることができる。このようにして、金属微粒子を有機溶媒に分散した分散液が得られる。また、混合の前に必要に応じて、圧縮粉砕型、衝撃圧縮粉砕型、せん断粉砕型、摩擦粉砕型等の粉砕機を用いて、金属微粒子を粉砕しても良く、また、粉砕の際に同時に混合しても良い。金属微粒子径や該表面の有機化合物、有機溶媒及びその他配合物の種類は塗布方法や目的、用途に応じて適宜選択できる。
金属微粒子分散体に配合する金属微粒子及び溶媒及び/又はその他配合物の濃度は塗布方法や目的、用途など、所望の分散体粘度や得られる膜の性能等に応じて適宜設定することができる。金属微粒子の含有量が多いほど分散体粘度は高くなり、塗膜の金属色調、導電性も良好になる。具体的には金属微粒子の含有量は金属微粒子分散体に対して10重量%以上90重量%以下が好ましく、20重量%以上80重量%以下がより好ましく、40重量%以上70重量%以下が更に好ましい。金属微粒子の含有量が10重量%より少ないと金属微粒子分散体の粘度や形成後の塗膜の金属色調や導電性が低くなりすぎるため好ましくない。一方、金属微粒子の含有量が90%よりも多いと、分散体粘度が高くなりすぎ、印刷性、塗装性が阻害される。
次に、配線パターンの作製を例に実施方法を説明する。
工程(a)
まず、本発明の金属微粒子分散体を基材に塗布して塗布膜を作製する。金属微粒子分散体の塗布には、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷又はオフセット印刷等の汎用の印刷方法や転写方法、スプレー、スリットコーター、カーテンコーター、バーコーター、刷毛、筆又はスピンコーター等を使用した汎用の塗装法を用いることができる。塗布層の厚みについては特に規制は無く、目的、用途により適宜設定することができる。例えば、基板上への微細配線パターンや電極用途であれば、厚みは0.005〜50μm程度、PETへの意匠塗布膜であれば0.01〜20μm程度である。このときの塗布パターンは、基材の全面に塗布することも、配線パターン状に塗布することもできる。
インクジェット法とは、分散体の液滴を微細な孔から吐出して基材に着弾させることで、所定の形状の塗布パターンを形成する方法である。この方法を用いると、インクジェットプリンタとパソコン等のコンピューターを接続することにより、コンピューターに入力された図形情報により、金属分散体の吐出口であるノズルと、基材との相対的な位置を変化させて任意の場所に分散体を吐出でき、それにより配線塗布パターンを基材上に描くことができる。また、ノズル径、分散体の吐出量、及びノズルと吐出物が形成される基材との移動速度の相対的な関係によって、形成する塗膜の厚さや太さを調整できる。このため、微細な塗膜を作製することができるし、一辺が1〜2mを超えるような大面積の基材上においても、所望の箇所に塗布膜を精度よく吐出形成することができる。また、隣り合う膜パターンとの不整合が生じないため、歩留まりを向上させることができ、また、必要部分にのみ分散体を塗着することができるため、基材全面に塗布膜を作製するよりも材料のロスを減らすことができる。インクジェット法にはインクの吐出方式により各種のタイプがあり、例えば、圧電素子型、バブルジェット(登録商標)型、空気流型、静電誘導型、音響インクプリント型、電気粘性インク型、連続噴射型などがあるが、本発明にはいずれでも使用することができ、塗布パターンの形状や厚さ、金属分散体の種類などにより適宜選択することができる。
インクジェット法においては、分散体の粘度は100mPa・s以下が好ましく、1〜20mPa・s以下がより一層好適であるが、これは、前述の吐出口ノズルが目詰まりすることなく分散体を円滑に吐出できるようにするためである。金属微粒子の粒径は、ノズルの径や所望の配線パターン形状などに依存するが、ノズルの目詰まり防止や高精細なパターン作製のため1〜200nmが好ましく、1〜100nmがより好ましい。
基材としては、無アルカリガラス、石英ガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア等のガラスなどのガラス類、Al、MgO、BeO、ZrO、Y、CaO、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)等の無機材料、ポリイミド、PET、PEN、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の有機材料、その有機材料に直径数nmの無機粒子が分散された複合材料で形成される基板、シリコンウエハ、金属板等を用いることができる。用途に応じてこれらの材料から適宜選択して、フィルム状等の可撓性基材又は剛性のある基材とすることがきる。なお、その大きさについては制限はなく、形状も円盤状、カード状、シート状などいずれの形状であってもよく、基板の表面も平面である必要はなく、凹凸又は曲面を有するものでもよい。本発明のパターン形成方法を用いれば、特にプラスチックなどの耐熱性の低い基材であっても用いることができる。
前記基材上には、前記基材表面の平面性の改善、接着力の向上及び塗膜の変質防止などの目的で、下地層が設けられていてもよい。該下地層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、熱硬化性又は光・電子線硬化樹脂、カップリング材などの表面改質剤等が挙げられる。前記下地層の材料としては、基材と塗膜の密着性に優れている材料が好ましく、具体的には、熱硬化性又は光・電子線硬化樹脂、及びカップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ゲルマニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)などの表面改質剤、コロイダルシリカ等が好ましい。
前記下地層は、上記材料を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調整し、該塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコートなどの塗布方法を利用して基材表面に塗布することにより形成することができる。前記下地層の層厚(乾燥時)は、一般に0.001〜20μmが好ましく、0.005〜10μmがより好ましい。
金属分散体の基材への塗布後、必要に応じて、塗布膜を適当な温度で加熱することができる。加熱により溶媒(種類によってはその他低沸点配合物)を蒸発除去することができる。加熱温度は金属種や基材種に応じて適宜設定することができる。例えば、金属微粒子に銅を用いる場合や、基材にPETを用いる場合などには150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。時間も適宜設定することができる。雰囲気も適宜設定することができ、不活性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下、酸素含有雰囲気下(大気中など)で実施することもできる。不活性ガスにはNガス、Arガス、Heガス等を用いることができる。有機溶媒等の蒸発除去は、加熱に限定されるわけではなく、自然乾燥法や減圧乾燥法を用いてもよい。減圧乾燥の場合は大気圧よりも低い圧力下で行い、具体的には真空圧下、超真空圧下で行っても良い。
工程(b)
塗布膜の作製後又は乾燥後、大気中でのレーザーの照射により配線パターンを描画する。レーザー発振器で発振したレーザー光をレンズ集光し、照射径を適宜設定し、塗布膜にレーザー照射しながら、レーザー搭載部又は基材を移動させて基材上にパターンを描く。レーザー光は塗布膜に吸収され、発生する熱で金属微粒子表面や分散体に配合した有機化合物が分解及び/又は気化されるとともに金属微粒子の融着が起き、結果、塗膜のレーザー照射部の電気抵抗の低減や金属色調の向上を図ることができる。ナノサイズの微粒子はサイズ効果によりバルクと比較して融点が低いため、比較的低いエネルギーで、かつ高速で描画することができる。
大気中でも金属微粒子の酸化を抑制しながらレーザー照射パターン部の十分な電気抵抗の低減と金属色調の発現を図るためには、照射するレーザー光を赤外域の波長の連続波とし、レーザーの出力は1〜140Wの範囲内とすることが好ましく、10〜100Wとするとより好ましく、20〜50Wとするとより一層好ましい。レーザーの照射径は描画するパターンや模様にあわせて適宜設定できるが、10μm〜5mmが好適である。走査速度も、その他のバラメータや必要精度、製造能力等に応じて適宜設定できる。
上記の範囲にレーザー照射のパラメータを設定し、レーザー照射後の塗膜のX線回折における金属相のメインピーク強度を100としたときに当該金属の酸化物のメインピーク強度を20以下となるように調整する。
特に金属微粒子として銅を用いる場合には、レーザーの照射により、塗膜を、X線回折におけるCuの(111)面のメインピーク強度を100としたときにCuOの(111)面のメインピーク強度を20以下となるように調整することが好適である。
さらに、数1の関係を満足する照射条件とするとより好ましく、基材に低耐熱性基材を用いる場合にはより一層好ましい。
(数1)0.5≦100W/(T・S・V)≦2.5
ここで、Tは基材の耐熱温度(K)、Wはレーザーの出力(W)、Sはレーザーの照射径(cm)、Vはレーザーの走査速度(cm/s)
基材の耐熱温度とは基材の耐熱性であり、基材に変質が起こる温度である。基材の種類、有機物であれば基材を構成するモノマーなどにより異なるが、ポリイミドであれば400℃程度、PETであれば150℃程度、PENであれば180℃程度である。この温度は、例えば示差熱分析による発熱又は吸熱ピークの測定により確認できる。
金属種、平均粒子径、塗布膜の厚み、有機物種、配合量なども塗膜の仕上がりに影響するが、特に走査速度、出力、レーザー光照射面積の各種パラメータを、数1を満たす範囲に設定するのが好ましい。
前記の方法により、レーザー光照射時の雰囲気を大気雰囲気とすることができる。本発明のパターン形成方法により、空気中でも塗布膜中の金属微粒子が酸化することなく有機化合物を分解及び/又は気化させることができ、低抵抗かつ金属色調に優れた塗膜を製造することができる。
工程(c)
さらに、必要に応じて、塗膜のうち不必要な部分、あるいはレーザー光を照射していない部分は適当な溶媒を用いるなどして除去してもよい。溶媒には、アルコール系、グリコールエーテル系、芳香族系、など種々の溶媒を使用することができる。このような溶媒に基材を浸漬したり、溶媒を浸した布や紙で拭き取るなどして除去することができる。
上記の方法により、配線パターンの他、電極を製造することができ、それらはコンデンサ、バリスタ等の電子部品、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、パーソナルコンピューター、携帯電話、カメラなどの電子機器に用いることができる。
本発明の装飾物品、抗菌性物品は、基材の表面の少なくとも一部に、前記の塗膜を形成したものであって、前述の配線パターンの作製と同様の方法で金属微粒子の金属色調、あるいは抗菌性を基材表面に付与したものである。基材表面の全面にわたって着色し金属色調や抗菌性を付与することができるほか、基材表面の一部分に意匠、標章、ロゴマークを形成したり、その他の文字、図形、記号を形成したりすることもできる。基材としては、金属、ガラス、セラミック、コンクリートなどの無機質材料、ゴム、プラスチック、紙、木、皮革、布、繊維などの有機質材料、無機質材料と有機質材料とを併用あるいは複合した材料を用いることができる。それらの材質の基材を使用物品に加工する前の原料基材に塗膜を形成して装飾を施し、抗菌性を付与することもでき、あるいは、基材を加工した後のあらゆる物品に装飾を施し、抗菌性を付与することもできる。また、それらの基材表面に予め塗装したものの表面に装飾を施し、抗菌性を付与することも含まれる。
装飾を施し、あるいは抗菌性を付与する物品の具体例としては、(1)自動車、トラック、バスなどの輸送機器の外装、内装、バンパー、ドアノブ、サイドミラー、フロントグリル、ランプの反射板、表示機器等、
(2)テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、パーソナルコンピューター、携帯電話、カメラなどの電化製品の外装、リモートコントロール、タッチパネル、フロントパネル等、
(3)家屋、ビル、デパート、ストアー、ショッピングモール、パチンコ店、結婚式場、葬儀場、神社仏閣などの建築物の外装、窓ガラス、玄関、表札、門扉、ドア、ドアノブ、ショーウインド、内装等、
(4)照明器具、家具、調度品、トイレ機器、仏壇仏具、仏像などの家屋設備、
(5)金物、食器などの什器、
(6)飲料水、タバコなどの自動販売機、
(7)合成洗剤、スキンケア、清涼飲料水、酒類、菓子類、食品、たばこ、医薬品などの容器、
(8)表装紙、ダンボール箱などの梱包用具、
(9)衣服、靴、鞄、メガネ、人口爪、人口毛、宝飾品などの衣装・装飾品、
(10)野球のバット、ゴルフのクラブなどのスポーツ用品、つり具などの趣味用品、
(11)鉛筆、色紙、ノート、年賀はがきなどの事務用品、机、椅子などの事務機器、
(12)書籍類のカバーやオビ等、人形、ミニカーなどのおもちゃ、定期券などのカード類、CD、DVDなどの記録媒体、などが挙げられる。また、人間の爪、皮膚、眉毛、髪の毛などを基材とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1
工業用酸化第二銅(エヌシーテック社製 N−120)24g、保護コロイドとしてゼラチン2.8gを150ミリリットルの純水に添加、混合し、15%のアンモニア水を用いて混合液のpHを11に調整した後、20分かけて室温から90℃まで昇温した。昇温後、撹拌しながら、錯化剤として1%の3−メルカプトプロピオン酸溶液0.24gと、80%のヒドラジン一水和物10gを150ミリリットルの純水に混合した液を添加し、1時間かけて酸化銅と反応させ、ゼラチンで被覆した銅微粒子を生成させた。その後、濾液比導電率が100μS/cm以下になるまで濾過洗浄し、窒素ガスの雰囲気で60℃の温度で10時間かけて乾燥し、ゼラチンで被覆した金属銅粒子を得た。
上記方法にて合成したゼラチンで被覆した平均粒子径50nmの金属銅粒子20gと高分子分散剤としてED−212を銅100重量部に対し5重量部溶解したトルエン20gを混合・懸濁し、ペイントシェーカーにて1時間分散させ、金属銅分散体を得た。
次いで、上記で作製した金属銅分散体を用いて回路配線パターンの作製を試みた。
まず、金属銅分散体をポリイミド基材(東レデュポン株式会社製 カプトン(登録商標)フィルム 300Vタイプ 75μm厚)上に垂らし、バーコーター(#6)により金属銅分散体が均一厚み(約14μm)になるように基材上に広げた後、N2雰囲気中、80℃で1時間の乾燥を行い、塗布膜を作製した。
次に、大気中で、半導体レーザーを塗布膜に照射し、エネルギーを塗布膜に印加しながら半導体レーザーを載せたステージを移動させてパターン状に描画した(ファインデバイス社製レーザー加工装置FD−200使用。)レーザーは、波長940nmの連続波、照射径は2.16mmとした。レーザー出力及び走査速度は、表1に記載の条件とし、配線幅は、試料1〜3は約0.6cm、試料4は約0.2cm、試料5〜8は約1.2cmとした。
そして、照射後の塗膜について、トルエンを含浸させた不織布でレーザー未照射部分の塗布膜を除去し、回路配線パターンを完成した。
レーザー光照射前後の試料1の塗膜表面の走査電子顕微鏡像を図1、図2に示す。また、得られた各種試料について体積抵抗値を測定するとともに、塗膜の外観を目視観察した。体積抵抗値は、三菱化学社製ロレスタ−GP型低抵抗率計を用いて測定した。塗膜の外観については金属色調を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2011047021
図3に試料5の塗膜のXRDプロファイルを示す。測定にはRIGAKU製RINT2200 X線回折装置(CuKα線)を用いた。認められた回折ピーク(2θ)は43.3°、50.4°、74.1°でいずれも金属銅に帰属されるピークであり、銅の酸化物は確認されない、つまりCuOの(111)面のメインピーク強度は、Cuの(111)面のメインピーク(43.3°)強度を100としたとき20以下である。
本発明のレーザー照射条件を適用することにより、大気中でのレーザー照射であっても卑金属である銅の酸化を起こすことなく、金属色調を有しかつ低抵抗の回路配線パターンを作製できることがわかった。
実施例2
次いで、基材にPET(東レ社製 ルミラー(登録商標) T−60 厚み75μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてレーザー照射を行い、パターンを形成した。結果を表2に示す。
Figure 2011047021
本発明のレーザー照射条件を適用することにより、PETのような低融点材料を基材として使用した場合であっても、基材の変質を起こすことなく、金属光沢を有しかつ低抵抗の回路配線パターンを作製できることがわかった。
本発明のレーザー照射条件を適用することで、大気中でのレーザー照射という簡易で低コストな設備により、電気的導通を確保する材料、帯電防止、電磁波遮蔽、金属色調、抗菌性等を付与する材料などに幅広く用いられ、特に、従来困難であった卑金属微粒子や低耐熱性の基材を用いた場合であっても、近年活発に開発が進められている電極、回路配線パターンの形成といったナノテクノロジーの新規用途にも適用でき、また、金属色調による意匠性、装飾性の付与、抗菌性の付与などのメッキ技術の代替用途にも適用できる。

Claims (17)

  1. 有機化合物を粒子表面に有する金属微粒子と溶媒とを少なくとも含む分散体を基材に塗布して塗布膜を作製する工程(a)と、前記塗布膜の全領域又は一部領域にレーザー光を大気中で照射する工程(b)とを備えることを特徴とする塗膜の製造方法。
  2. 照射するレーザー光の波長が赤外域の波長であり、出力が1〜140Wの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の塗膜の製造方法。
  3. 照射するレーザー光が連続波であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗膜の製造方法。
  4. 前記工程(b)において、レーザー光の照射により金属微粒子同士の少なくとも一部を融着させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜の製造方法。
  5. 前記工程(b)の後にレーザー照射を行わなかった領域の塗布膜を除去する工程(c)を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗膜の製造方法。
  6. レーザー光の照射により、塗膜のX線回折における金属のメインピーク強度を100としたときに当該金属の酸化物のメインピーク強度を20以下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗膜の製造方法。
  7. 前記金属微粒子が卑金属であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗膜の製造方法。
  8. 前記卑金属微粒子がCu又はNiであることを特徴とする請求項7記載の塗膜の製造方法。
  9. レーザーの照射により、塗膜を、X線回折におけるCuの(111)面のメインピーク強度を100としたときにCuOの(111)面のメインピーク強度を20以下とすることを特徴とする請求項8記載の塗膜の製造方法。
  10. 前記基材が低耐熱性基材であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗膜の製造方法。
  11. 前記基材がプラスチックであることを特徴とする請求項10記載の塗膜の製造方法。
  12. 前記プラスチックがポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項11記載の塗膜の製造方法。
  13. 少なくとも基材の表面の一部に請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で製造した塗膜を有することを特徴とする装飾物品。
  14. 少なくとも基材の表面の一部に請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で製造した塗膜を有することを特徴とする抗菌性物品。
  15. 少なくとも基材の表面の一部に請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で製造した塗膜を有することを特徴とする電極。
  16. 少なくとも基材の表面の一部に請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で製造した塗膜を有することを特徴とする配線パターン。
  17. 請求項15に記載の電極又は請求項16に記載の配線パターンを備えた電子機器。
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