JP2011045301A - チロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母 - Google Patents

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Abstract

【課題】高いチロシナーゼ活性を有する上に、継代培養により活性が低下せず、メラニン前駆体の工業的生産が可能な酵母を提供する。
【解決手段】以下の工程A〜Eを含む方法により製造されるチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母:(A) 宿主酵母に変異処理を施しウラシル要求性を付与する工程、
(B) 工程Aで得られた酵母にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与する工程、(C) 工程Bで得られた酵母を、チロシナーゼ遺伝子を含みウラシル要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、(D) 工程Cで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、並びに(E) 工程Dで得られた酵母からリジン要求性であるホモ型発現株を選択する工程。
【選択図】なし

Description

本発明はチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母、並びに当該酵母を用いたチロシナーゼの製造方法及びメラニン前駆体の製造方法に関する。
メラニンは、動物及び植物に広く存在する黄色〜黒色の色素であり、紫外線吸収機能、ラジカル捕獲機能、酸化防止機能などを有することが知られている。メラニンは、生体由来の物質であり安全性が高いことから、化粧品、食品等の添加剤として広く使用されている。
例えば、メラニンは、日焼け防止クリーム、サングラス等に配合することにより、これらに紫外線吸収機能を持たせるために用いられている。また、食品やプラスティックの酸化防止剤としても使用されている。さらに、色素として白髪染めなどにも添加されている。
このように、メラニンは非常に有益な物質であるため、その製造方法が種々検討されてきた。
図1に示すように、生体内において、メラニンは、メラニン生成酵素であるチロシナーゼが、基質であるチロシン又は3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)の酸化を触媒することによりドーパキノンを経て生成するメラニン前駆体(ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸など)が重合することにより生合成される。このようにして生成するメラニンは、皮膚や髪等のメラニン産生細胞内に小粒となって存在しており、水に不溶で、熱濃硫酸や強アルカリを用いなければ溶解しない高分子化合物であり、その構造は明らかになっていない。
このようにメラニンは水に不溶であるため、繊維や皮革などの染料として利用する場合、組織に浸透することができず、対象を染めることはできない。
特許文献1には、水溶性であるメラニン前駆体(メラニンの構成モノマーの混合物)の効率的な製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、チロシン、DOPA及びこれらの類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の基質化合物を、カテコールオキシダーゼ活性を示す細胞を用いて酸化して、メラニン前駆体に変換する酸化工程と、得られた反応液からメラニン前駆体を回収する回収工程とを含むメラニン前駆体の製造方法が開示されている。
かくして調製されるメラニン前駆体は水溶性であるため、染色対象物に浸透しやすく、メラニン前駆体を染色対象物内に浸透させた後に重合させてメラニンを生成することにより効率良く対象物を染色することができる。
特許文献1の実施例ではチロシナーゼ遺伝子の一種であるmelB遺伝子が1コピー組み込まれたベクターで酵母を形質転換している。
しかしながら、この酵母ではメラニン前駆体の工業的生産を行うためにはチロシナーゼ活性が十分ではない。そのため、メラニン前駆体の工業的生産が可能となるようなより高いチロシナーゼ活性を有する酵母を開発することが必要である。
特開2006−158304号公報
本発明は、高いチロシナーゼ活性を有する上に、継代培養により活性が低下せず、メラニン前駆体の工業的生産が可能な酵母を提供することを目的とする。
本発明者らは、ウラシル要求性のみを付与した酵母を、チロシナーゼ遺伝子が複数コピー導入されたベクターで形質転換したが、この酵母は、継代培養によりチロシナーゼ活性が低下するという問題があった。また、変異処理によるウラシル要求性と変異処理によるリジン要求性を付与した酵母をチロシナーゼ遺伝子を有するベクターで形質転換したが、この酵母も高濃度培養が可能でないという問題があった。
そこで、本発明者らは、宿主酵母に変異処理を施してウラシル要求性を付与した後に、ジーンターゲッティングを施してリジン要求性を付与した酵母に対して、チロシナーゼ遺伝子を含むベクターで形質転換することによって上記目的を達成することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母、チロシナーゼの製造方法、及びメラニン前駆体の製造方法を提供すものである。
酵母
(1-1) 以下の工程A〜Eを含む方法により製造されるチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母:
(A) 宿主酵母に変異処理を施しウラシル要求性を付与する工程、
(B) 工程Aで得られた酵母にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与する工程、
(C) 工程Bで得られた酵母を、チロシナーゼ遺伝子を含みウラシル要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、
(D) 工程Cで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、及び、
(E) 工程Dで得られた酵母からリジン要求性が生じたホモ型発現株を選択する工程。
(1-2) 更に以下の工程Fを含む方法により製造される、請求項1に記載の酵母:
(F) 工程Eで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程。
(1-3) 前記宿主酵母が清酒酵母である、(1-1)又は(1-2)に記載の酵母。
(1-4) 前記清酒酵母が「きょうかい9号」である、(1-3)に記載の酵母。
(1-5) 導入されたチロシナーゼ遺伝子のコピー数が3〜8であることを特徴とする、(1-1)〜(1-4)のいずれか1項に記載の酵母。
(1-6) チロシナーゼ遺伝子のコピー数が6〜16であることを特徴とする、(1-1)〜(1-5)のいずれか1項に記載の酵母。
(1-7) 前記変異処理がEMS処理である、(1-1)〜(1-6)のいずれか1項に記載の酵母。
(1-8) 前記形質転換ベクターがSED1プロモーターを含む、(1-1)〜(1-7)のいずれか1項に記載の酵母。
(1-9) 前記チロシナーゼ遺伝子がアスペルギルス属糸状菌のチロシナーゼ遺伝子である、(1-1)〜(1-8)のいずれか1項に記載の酵母。
(1-10) 前記チロシナーゼ遺伝子がmelB遺伝子である、(1-9)に記載の酵母。
チロシナーゼの製造方法
(2-1) (1-1)〜(1-10)のいずれか1項に記載の酵母を培養し、培養物からのチロシナーゼを利用する ことを特徴とするチロシナーゼの製造方法。
メラニン前駆体(メラニンの構成モノマーの混合物)の製造方法
(3-1) 反応液中で、(1-1)〜(1-10)のいずれか1項に記載の酵母の存在下で、DOPA及びこれらの類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の基質化合物を酸化してメラニン前駆体に変換する酸化工程と、
反応液からメラニン前駆体を回収する回収工程と
を含むメラニン前駆体の製造方法。
本発明の酵母は、高いチロシナーゼ活性を有する上に、継代培養により活性が低下せず、メラニン前駆体の工業的生産が可能という優れた特性を有している。そして、当該酵母を使用することによりメラニン前駆体の生産性を向上させることができる。
メラニンの生合成経路を示す図である。 GRI-117U株のウラシル要求性を相補する形質転換ベクターを示す図である。 GRI-117U株及びGRI-117UK株のウラシル要求性を相補する形質転換ベクターを示す図である。 GKT-1001株をpK199-8で形質転換した株のURA3遺伝子座位にリジン要求性を相補する選択マーカー遺伝子を形質転換するためのベクターを示す図である。 GKT-1001株のウラシル要求性を相補する形質転換ベクターを示す図である。 GKT-1001株をpK199-8で形質転換し、次にpURA3-UTRで形質転換し、さらにリジン要求性が生じることにより得られたホモ型発現株のリジン要求性を相補する形質転換ベクターを示す図である。 TY2株とTY6株の培養試験結果を示す図である。 TY3株の培養試験結果を示す図である。 TY3株の培養試験結果を示す図である。
以下、本発明のチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母及びメラニン前駆体の製造方法について詳細に説明する。
チロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母
本発明のチロシナーゼ遺伝子が組み込まれた酵母は、以下の工程A〜Eを含む方法により製造されることを特徴としている:
(A) 宿主酵母に変異処理を施しウラシル要求性を付与する工程、
(B) 工程Aで得られた酵母にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与する工程、
(C) 工程Bで得られた酵母を、チロシナーゼ遺伝子を含みウラシル要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、
(D) 工程Cで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、及び
(E) 工程Dで得られた酵母からリジン要求性が生じたホモ型発現株を選択する工程。
また、本発明のチロシナーゼ遺伝子が組み込まれた酵母は、更に以下の工程Fを含む方法により製造されることを特徴としている:
(F) 工程Eで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程。
本発明の酵母は、導入されたチロシナーゼ遺伝子のコピー数が3〜8であり、また、本発明の酵母の他の態様は、上記の形質転換された酵母にLOH(ヘテロ接合性の消失)が生じることによって得られる、その酵母自体のチロシナーゼ遺伝子のコピー数が6〜16であることを特徴とする酵母である。ここで「導入されたチロシナーゼ遺伝子のコピー数」とは、 ウラシル要求性を相補する形質転換ベクターが有するチロシナーゼ遺伝子の合計数を意味する。
LOHは、ある座位において、対立染色体の一方の情報が失われることであり、自然に生じるものであり(酵母遺伝子実験マニュアル、丸善株式会社、平成14年12月10日発行、pp31-39)、LOHが起った株を効率よく検出することもできる。2倍体の酵母は、それ自体でLOHが通常自然に生じる。LOHが生じることにより、2倍体の一方の核に導入されたプラスミドが他方の核と組み換えられ、核が均一化するために、チロシナーゼ遺伝子のコピー数が最大2倍になる。
以下、各工程について説明する。
・(A)工程
工程Aでは、宿主酵母に変異処理を施しウラシル要求性を付与する。
宿主酵母は、好ましくは清酒酵母であり、特に好ましくは「きょうかい9号」である。清酒酵母は2倍体であるため、ベクターが2コピー導入される可能性がある。「きょうかい9号」は、財団法人日本醸造協会(東京都北区滝野川2丁目6番30号)から入手可能である。
ウラシル要求性を付与するための変異処理は、例えば突然変異誘発物質や紫外線により処理することにより行うことができる。突然変異誘発物質としてはアルキル化剤やアクリジン色素が挙げられ、好ましくはEMS(エチルメタンスルホン酸)である。ウラシル要求性が付与された株は、5−フルオロオロチジン酸を含む培地を用いるポジティブ選別法又はウラシル欠損培地を使用したネガティブ選別法により選択することができる。EMS処理は常法に従い行うことができる(酵母遺伝子実験マニュアル、丸善株式会社、平成14年12月10日発行、pp9-17;Can. J. Genet. Cytol., 7:491-499 (1965);生物工学実験書、培風館、2002年4月10日改訂版発行、pp139-140)。
・(B)工程
工程Bでは、工程Aで得られた酵母にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与する。
ジーンターゲッティングとは、細胞レベルで特定遺伝子座のみに目的とした変異を導入することであり、相同組換えを行った後に標的遺伝子組換え体を選別することにより行う。
ジーンターゲッティングは常法に従い行うことができ、例えば、Methods in Enzymology, vol.194, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, 1991 by Academic Press, Inc., pp281-301やMol. Gen. Genet., 193: 557 (1984)の記載に従い行なうことができる。
ジーンターゲッティングでは、特定の遺伝子座のみを目的とするので、変異処理を行うのに比べて目的とする変異以外の不特定の変異が入る可能性がない。
・(C)工程
工程Cでは、チロシナーゼ遺伝子を含みウラシル要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する。
チロシナーゼは、L-DOPAに対して親和性が高いために天然型メラニン前駆体を効率よく製造できる。チロシナーゼは、どのような生物に由来する酵素であってもよいが、特に、発現効率がよく、かつ宿主細胞内で安定であることから、糸状菌由来のチロシナーゼが好ましい。このような糸状菌としては、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌、ニューロスポラ(Neurospora)属糸状菌、リゾムコール(Rhizomucor)属糸状菌、トリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌、ペニシリウム(Penicillium)属糸状菌などが挙げられる。中でも、熱に対して比較的安定であり、かつ安全性が確かめられている点で、アスペルギルス属糸状菌のチロシナーゼが好ましく、具体的には、アスペルギルス・オリゼのmelB遺伝子(特開2002-191366号公報)、melD遺伝子(特開2004-201545号公報)及びmelO遺伝子(Molecular cloning and nucleotide sequence of the protyrosinase gene, melO, from Aspergillus oryzae and expression of the gene in yeast cells.Biochim Biophys Acta. 1995 Mar 14;1261(1):151-154.)にコードされるチロシナーゼ又はかかるチロシナーゼと実質的に同一である酵素を挙げることができる。
なお、上記チロシナーゼと「実質的に同一」とは、これらの遺伝子(melB遺伝子、melD遺伝子又はmelO遺伝子)によってコードされるチロシナーゼのアミノ酸配列と、70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上が同一のアミノ酸配列を有し、チロシナーゼ活性を有している酵素をいう。
このようなチロシナーゼ遺伝子の取得に際しては、PCR法(Science, 230, 1350-1354 (1985))によるDNA増幅法が好適に利用できる。かかるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、配列情報に基づいて適宜設定することができ、これは常法に従い合成することができる。
尚、増幅させたDNA断片の単離精製は常法に従うことができ、例えばゲル電気泳動法などによればよい。
上記で得られるチロシナーゼ遺伝子の塩基配列の決定も、常法に従うことができ、例えばジデオキシ法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463-5467 (1977))やマキサム-ギルバート法(Method in Enzymology, 65, 499 (1980))などにより行なうことができる。かかる塩基配列の決定は、市販のシークエンスキットなどを用いても容易に行ない得る。
形質転換に用いるベクターとしては、例えばpRS406(GenBank Accession no.U03446)などを利用できる。形質転換ベクターは、ウラシル要求性を相補する配列(例えば、URA3(YEL021W)(SGD:S000000747))を有するものを使用する。
ウラシル要求性を相補するベクターに存在するチロシナーゼ遺伝子のコピー数は、少なくとも1、好ましくは1〜8である。
形質転換ベクターのチロシナーゼ遺伝子の上流に位置するプロモーターは、SED1プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、TDH1プロモーター、PHO5プロモーター、GAL4プロモーター、GAL10プロモーター、CUP1プロモーターなどが挙げられる。中でも、SED1プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、及びGAPDHプロモーターが好ましく、SED1プロモーターがより好ましい。
形質転換ベクターによる酵母の形質転換方法としては、酢酸リチウム法(J. Bacteriol., 153: 163-168 (1983))、スフェロプラスト法やエレクトロポレーション法などの一般的な各種方法を採用でき、一方の核のURA3座位に相同組み換えにより形質転換を行う。
・(D)工程
工程Dでは、工程Cで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する。この場合、工程Cで形質転換ベクターを形質転換したURA3座位と対のURA3座位に、リジン要求性を相補する形質転換ベクターを相同組み換えにより形質転換する。
形質転換に用いるベクターとしては、例えばpRS406(GenBank Accession no.U03446)などを利用できる。形質転換ベクターは、リジン要求性を相補する配列(例えばLYS2(YBR115C, SGD:S000000319), LYS5(YGL154C, SGD:S000003122))を有するものを使用する。
形質転換ベクターによる酵母の形質転換方法としては、酢酸リチウム法(J. Bacteriol., 153: 163-168 (1983))、スフェロプラスト法やエレクトロポレーション法などの一般的な各種方法を採用できる。
・(E)工程
工程Eでは、工程Dで得られた酵母からLOHでリジン要求性が生じたホモ型発現株を選択する。
工程Dで得られた酵母は、2倍体の一方の核のURA3の座位にチロシナーゼ遺伝子とウラシル要求性を相補する遺伝子を有し、他方の核の同じ座位にリジン要求性を相補する遺伝子を有するため、ウラシル要求性とリジン要求性の栄養要求性が回復している。
工程Dで得られた酵母を培養し、LOHが生じたリジン要求性を示す株を選択することにより、チロシナーゼ遺伝子が存在する一方の核の座位がリジン要求性を相補する遺伝子が存在する他方の核の座位と組み換えられ、核が均一化するために、チロシナーゼ遺伝子のコピー数が最大2倍になるホモ型発現株が得られる。
リジン要求性が生じたホモ型発現株の選択は、例えばα−アミノアジピン酸(α-AA)を含有する培地での選択により行うことができる。
・(F)工程
工程Fでは、工程Eで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する。
形質転換に用いるベクターとしては、例えばpRS406(GenBank Accession no.U03446)などを利用できる。形質転換ベクターは、リジン要求性を相補する配列(例えばLYS2(YBR115C, SGD:S000000319), LYS5(YGL154C, SGD:S000003122))を有するものを使用する。当該形質転換ベクターにはチロシナーゼ遺伝子が含まれていてもよく、チロシナーゼ遺伝子は複数コピー含まれていてもよい。当該チロシナーゼ遺伝子は前述する工程Cで記載されているものが使用される。また、前記形質転換ベクターの挿入される染色体上の座位は問わない。
形質転換ベクターによる酵母の形質転換方法としては、酢酸リチウム法(J. Bacteriol., 153: 163-168 (1983))、スフェロプラスト法やエレクトロポレーション法などの一般的な各種方法を採用できる。
得られる形質転換酵母は、常法に従い培養でき、該培養によりチロシナーゼが生産、発現される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主酵母に応じて慣用される各種のものを適宜選択利用でき、その培養も宿主酵母の生育に適した条件下で実施できる。
上記により、形質転換酵母の細胞内、細胞外又は細胞膜上に目的とする組換え蛋白が発現、生産、蓄積又は分泌される。
チロシナーゼは、所望により、その物理的性質、化学的性質などを利用した各種の分離操作〔「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274-8277 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313-321 (1987) など参照〕により分離、精製できる。該方法としては、具体的には例えば通常の再構成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。
メラニン前駆体の製造方法
本発明のメラニン前駆体の製造方法は、反応液中で、本発明の酵母の存在下で、DOPA及びこれらの類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の基質化合物を酸化してメラニン前駆体に変換する酸化工程と、反応液からメラニン前駆体を回収する回収工程とを含むことを特徴とする。
本発明の製造方法が対象とするメラニン前駆体は、DOPA及びその類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物から、酵素を用いた酸化反応により製造される化合物またはそれらの化合物群である。これらの化合物または化合物群は、空気中の酸素ですみやかに酸化重合しメラニンを形成するため、メラニン前駆体と総称される。具体的には、メラニンの構成モノマー(例えば、ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸)、並びにこれらのモノマーが2〜5分子程度重合してなる水溶性オリゴマーを挙げることができる。好ましくはドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール、および5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸である。
以下、各工程について説明する。
・基質化合物の酸化工程
<基質化合物>
基質化合物としては、DOPA及びDOPA類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用する。DOPA及びDOPA類縁体は、L体又はD体のいずれであってもよい。DOPA類縁体としては、ドーパミン(Dopamine)、DOPAメチルエステル、DOPAエチルエステル、α−メチルDOPA等が挙げられ、これらの異性体であってもよい。基質化合物として、中でも、天然型メラニン前駆体が得られる点、酵素に対する親和性の点でL-DOPAを用いることが好ましい。
これらの基質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基質化合物にシステイン又はグルタチオンのようなチオール化合物、コウジ酸などの異種化合物を添加しておいてもよい。かかる異種化合物を添加することにより、前述したメラニン前駆体にこれらの異種化合物が結合するか、又は/及び、これらの異種化合物が混在するメラニン前駆体が得られる。これらの異種化合物は、酸化反応の途中又はその後、又は、後述するメラニン前駆体の変換の途中又はその後に反応液に添加することもできる。上記基質化合物(DOPA又はDOPA類縁体)に加えて、DOPA又はDOPA類縁体のいずれにも該当しない異種化合物を用いることにより得られる修飾されたメラニン前駆体も、本発明のメラニン前駆体に含まれる。
<反応>
反応開始時の基質の濃度は、通常10〜60 mM程度とすることが好ましく、15〜40 mM程度とすることがより好ましい。
また反応液のpHは、前述する酵母から産生される酵素が基質の酸化反応を触媒できる範囲であればよく、特に限定されないが、通常4〜9程度に調整することが好ましく、5〜7程度に調整することがより好ましい。余りに低pHであると基質の酸化が進行せず、逆に余りに高pHであると生成したメラニンが蓄積せずに重合してしまうが、上記範囲であれば、メラニンの生成を抑えて反応液中に効率よくメラニン前駆体を蓄積させることができる。
反応液のpHは、反応液として緩衝液を用いることにより上記範囲に維持することもできるが、塩濃度が高いとメラニン前駆体の重合によるメラニンの生成が促進される場合がある。このため、KOH、NaOHのような強アルカリ及びH2SO4、HClのような強酸を少量添加することにより、反応液中のpHを上記範囲に調整しコントロールすることが好ましい。
反応液中の酵素産生酵母の量は、1molのL-DOPAを基質とした場合のチロシナーゼ活性が、5×105U/mol以上となる範囲内で、少なければ少ないほど良い。尚、チロシナーゼ活性は実施例に記載の方法で測定することができる。反応液への酵母投入量は、通常反応液の体積に対して20容量%以下が好ましく、10容量%以下がより好ましい。上記の範囲内であれば、反応後の菌体分離を容易に行えること、また菌体へのメラニンにより、メラニン前駆体の収率を高くすることができる。
反応温度は、酵素が基質の酸化反応を触媒できる範囲であればよく、特に限定されないが、通常15〜35℃程度に調整することが好ましく、20〜30℃程度に調整することがより好ましい。上記範囲内であれば、十分に酸化反応が進行するとともに、酵素が失活し難く、またメラニン化が進行し難い。
反応開始直後は、酸化反応に大量の酸素が必要であるため、大量に通気することが好ましい。但し、攪拌速度が速すぎると酵母が損傷するため、反応液中の酸素濃度を監視し、酸素濃度が低下しなくなれば通気量および攪拌速度を減少することが好ましい。反応液中の酸素濃度は0.1〜8 ppm程度に調整することが好ましく、1〜2 ppm程度に調整することがより好ましい。通気や撹拌により反応液中に大量の泡が生じる場合は、シリコーン樹脂のような消泡剤を添加してもよい。
反応は、バッチ式又は連続式の何れであってもよい。未反応の基質と生成物を分離できる点でバッチ式が好ましい。バッチ式の場合の反応時間は、通常10分〜2時間程度とするのが好ましく、30分〜1時間程度とするのがより好ましい。余りに長時間反応させると生成したメラニン前駆体の重合反応(メラニン化)が進行してしまうため収率が低下するが、上記程度の反応時間であれば、基質化合物を十分メラニン前駆体に変換できるとともに、メラニン化を最小限に抑えることができる。
連続式の場合は、酵母を含む反応容器に、基質化合物の濃度が10〜60 mM程度、特に15〜25 mM程度になるように基質を供給しつつ反応を行い、反応と生成物の分離を連続的に行えばよい。あるいは酵母を固定化した担体を充填したカラムに1〜10 mM程度、特に3〜6 mM程度になるような基質化合物を、電子供与体として基質の2倍濃度の過酸化水素とともに添加しても実施することができる。
基質化合物としてDOPAを用いる場合は、上記酵素反応により基質化合物が酸化されてドーパクロムが生成する。この反応を静置すれば酵母中に含まれるドーパクロムトートメラーゼにより、あるいは非酵素的な異性化によりドーパクロムから5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸が生成し、続いて脱炭酸により5,6-ジヒドロキシインドールが生成する。これにより、ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含むメラニン前駆体が得られる。
かくして得られる反応液(反応終了液)は、必要に応じて、酵母を除去する工程に供してもよい。ここで酵母の除去は遠心分離やろ過などの定法の固液分離法を用いて行うことが出来る。除去した酵母は、前述する酸化反応に再利用することができる。
なお、前述の方法で得られる反応終了液を保存しておく場合は、下記(i)〜(iii)の方法で保存することが好ましい。
(i)塩の存在下での保存
(ii)酸素非存在下pH3〜5、酸素非存在下pH5〜10、又は酸素存在下pH5〜7に維持した状態での保存
(iii)水溶性有機溶媒の存在下での保存
かかる各保存は特開2000-158304号公報(特許文献1)の[0066]〜[0077]の記載に従って実施することが出来る。かかる条件で保存することにより保存時にメラニン前駆体が重合してメラニン化することを抑制することができる。酸化反応終了後は、酸化を防止するため、反応液は酸素を遮断した状態とするのが望ましい。
・メラニン前駆体の回収工程
反応終了液には、通気及び撹拌により酵母が破損して生じたタンパク質又は酵母から流出したタンパク質が含まれている場合がある。従って、限外ろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー等の公知の方法で除タンパクを行うことが好ましい。
また、反応終了液中には、通常メラニン前駆体の他にこれらが重合したメラニンも含まれる。従って、限外ろ過などの方法でメラニンを除去することが好ましい。
さらに、逆浸透濃縮、スプレードライ、凍結濃縮、減圧濃縮などの公知の方法で水分を除去してメラニン前駆体を濃縮することが好ましい。
逆浸透濃縮装置は海水から純水を製造するのに用いられており、大量の溶液の処理が可能であることから、工業的にメラニン溶液を濃縮するのに適している。逆浸透濃縮装置にはバッチ型とクロスフロー型の2種類があるが、酸素が存在するとメラニン前駆体の化学的酸化が徐々に進んでしまうため、バッチ型を使用する場合は容器に空気が入らないように工夫することが望ましい。また圧力源となる窒素は出来る限り酸素含有量の少ないものを使用した方が良い。クロスフロー型装置は通常ポンプにより加圧するが、非透過液を循環させる必要があるので、あらかじめメラニン前駆体溶液を高純度窒素などにより置換し、液受けタンクも密閉型にすることが望ましい。
回収工程では、メラニン前駆体溶液を密閉容器に入れ、又はさらに上部気体を窒素、希ガス、二酸化炭素ガス等で置換することにより、酸素を遮断することが好ましい。これにより、メラニン前駆体の酸化の進行を抑えることができ、所望の組成のメラニン前駆体とすることができる。
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例及び試験例を挙げる。しかし、本発明はこれら実験例等になんら限定されるものではない。
試験例で使用した酵母の調製方法
1.使用菌株
下記の試験例1−3で使用した菌株とその原ホスト酵母の一覧を以下の表1に示す。
Figure 2011045301
ホスト酵母の由来は次の通りである。
・GRI-117U株:グルコース資化能力○/エタノール資化能力○
市販の「きょうかい9号」酵母に、EMS変異処理を施し、ウラシル要求性を付与した酵母である。
・GRI-117UK株:グルコース資化能力○/エタノール資化能力×
ウラシル要求性のGRI-117U株にEMS変異処理を施し、リジン要求性を付与した酵母である。
・GKT-1001株:グルコース資化能力○/エタノール資化能力○
ウラシル要求のGRI-117U株にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与した酵母である。
EMS処理とジーンターゲッティングは以下に示すように行った。
・EMS処理 -GRI-117U,UK株の取得-
EMS処理は常法に従い行った。詳しくは、きょうかい9号を5 ml YPD培地に接種し、30℃で細胞濃度2×108 cells/mlまで増殖させ、2.5 mlを遠心集菌した。菌体を50 mMリン酸カルシウムバッファー(pH7.0)で2回洗浄し、10 mlの同じバッファーに懸濁した。この懸濁液に300μlのEMSを加え、激しく混合した後、30℃で30分振とうした。3 mlの10%チオ硫酸ナトリウムを加えよく混合し、その後遠心集菌し、滅菌水で2回洗浄した。洗浄菌体を細胞濃度2×105 cells/mlとなるように滅菌水にて希釈し、100〜200μlを5-FOA寒天培地にまいた。30℃にて5〜7日間静置し、ウラシル要求性を付与したGRI-117U株を取得した。
GRI-117Uを親株としてさらにEMS処理を行い、今度は 20 g/l ウラシルを含むα-AA寒天培地にまいた。30℃にて5〜7日間静置し、ウラシル要求性に加えてリジン要求性を付与したGRI-117UK株を取得した。
・ジーンターゲッティング -GKT-1001株の取得-
相同組換えに用いるDNA断片をジャンクションPCRで合成した。表2に示すプライマー(配列番号1〜8)を用い、酵母X21801A株ゲノムDNAをテンプレートとし、5’末端側の相同組換え配列としてLYS2(-250〜220)、ループアウト形成配列としてLYS2(1881〜2380)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてLYS2(1381〜1880)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号1)および4R(配列番号8)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより2,602 bpの遺伝子置換用DNA断片lys2-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GRI-117-U(ウラシル要求性)を形質転換し、片方の染色体のLYS2がlys2-URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、1.0×10-4の頻度でコロニーが出現した。コロニーを形成する菌体は、染色体からURA3マーカー遺伝子が除去されたものである。5'- AAATACGCTGTCGCTTTGAGTGTATGGGCT -3'(配列番号9)及び5'-GACCTCACCTTGAGATGATCCACCCGATGA-3'(配列番号10)の2つのプライマーを用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が2.6 kbと0.9 kbの2種類である株をLYS2遺伝子とマーカー遺伝子URA3とがループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をLYS2へテロ破壊株GKT-1000とした。GKT-1000は、相同染色体の一方のみにLys2遺伝子を有する。このGKT-1000をYPDで3日間培養し、α-AAプレートに塗布すると、1.1×10-4の頻度でコロニーが出現した。出現したコロニーは、選択マーカーURA3がLOHにより消失し(ウラシル要求性を示し)、かつリジン要求性を示したため、これをLYS2ホモ破壊株GKT-1001とした。
Figure 2011045301
2.形質転換ベクターの調製
各形質転換ベクターの調製方法を以下に示す。
・チロシナーゼ遺伝子のコピー数が1つのウラシル要求性を相補するベクター
酵母ベクターpRS406(STRATAGENE社より販売)(GenBank Accession no.U03446)を基にして、発現プラスミド(pGEK11, 図2)を作製した。
・チロシナーゼ遺伝子のコピー数が3のウラシル要求性を相補するベクター
上記のプラスミド(pGEK11)を基にして、目的とする発現プラスミド(pGEK13, 図3)を作製した。
・リジン要求性を相補する遺伝子を染色体上のURA3遺伝子座位に導入するベクター
pRS406を基にして、目的とするプラスミド(pURA3-UTR, 図4)を作製した。
・チロシナーゼ遺伝子のコピー数が8のウラシル要求性を相補するベクター
pRS406を基にして、目的とするプラスミド(pK199-8, 図5)を作製した。
・リジン要求性を相補するベクター
pRS406を基にして、目的とするプラスミド(pAKK1, 図6)を作製した。
3.形質転換の方法
プラスミドを制限酵素にて消化した後、常法どおり酢酸リチウム法(J. Bacteriol.,153: 163-168 (1983))にて宿主とする酵母に導入し、形質転換した。
尚、ウラシル要求性を相補する発現プラスミドを導入した形質転換体を取得する際は0.67% Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco社)、0.077% CSM-URA(MPBIO社)、及び2%グルコースを含むSD-U寒天培地で培養し、生育してきた酵母を選択した。リジン要求性を相補するプラスミドを導入した形質転換体を取得する際は0.67% Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco社)、0.067% CSM-LYS-URA(MPBIO社)、及び2%グルコースを含むSD-UK寒天培地で培養し、生育してきた酵母を選択した。
各ホスト酵母の形質転換法を以下に示す。
・TY1株:
酵母GRI-117Uを宿主として、StuI消化したpGEK11を導入した。
・TY2株:
酵母GRI-117Uを宿主として、StuI消化したpGEK13を導入した。
・TY3株:
酵母GRI-117UKを宿主として、StuI消化したpGEK13を導入した株で、ウラシル要求性を示さず、リジン要求性を示す。
・TY6株:
酵母GKT-1001を宿主として、StuI消化したpK119-8を2倍体の一方の核のURA3座位に1コピー導入しTY5株を得た。このTY5株に、HpaI消化したpURA3-UTRを、TY5の2倍体のpK119-8を含まない他方の核のURA3座位に導入し、リジン要求性が回復した株としてTY5マーキング株を得た。TY5マーキング株に対して、YPD培地で培養した後、リジン要求性を選択するためにα-AAプレートへ塗布し、生育してきた酵母TY5-HOM株を選択した。TY5-HOM株は、TY5マーキング株のpK119-8が存在する一方のURA3座位が、TY5マーキング株のpURA3-UTRが存在する他方のURA3座位とLOHが生じて組み換えが起こり、リジン要求性が復帰したホモ型発現株として選択されたものである。さらに、TY5-HOM株を、stuI消化したpAKK1を導入してTY6株を取得した。TY6株は、ウラシル要求性を示さず、リジン要求性を示さない。
チロシナーゼ活性測定
菌体のチロシナーゼ活性の測定は次のようにして行った。すなわち、回収した菌体の一部を水に懸濁し、その0.1 mlに対して30℃に保温しておいた10 mM L-DOPA(0.005Nの塩酸に溶解)0.8 ml及び1 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)0.1 mlを添加し、30℃で5分間反応させた後、15,000 rpmで30秒間遠心分離を行うことにより菌体を取り除き、DOPAの吸収極大波長である475 nmにおける吸光度を測定した。菌体の懸濁量は、実験の便宜上、反応の後の反応液の475 nmにおける吸光度が0.1〜0.3に収まるように調整した。
本発明において、チロシナーゼ活性(U/mg)は、菌体の湿重量1mg当たりのチロシナーゼの活性(U)として記載した。前記チロシナーゼの活性である1Uは0.8μmolのL-DOPAを含む溶液1 mlを30℃で5分間反応させた場合の475 nmにおける吸光度を1増加させる活性とした。
グルコース濃度の測定方法
(株)アークレイファクトリー製、グルコース分析装置(アダムスグルコース GA-1152)により測定した。
エタノール濃度の測定方法
理研計器(株)製、簡易アルコール分析器(アルコメイトAL-3)により測定した。
試験例1 各菌株の継代試験
YNB+2% グルコース平板培地、またはYPD+2% グルコース平板培地に種菌を植菌した(この株を初代とする)。コロニーが十分生育した数日後、任意のコロニーを1つ選び、次の平板培地に植菌した(この株を2代目とする)。同様に継代を繰り返した。
チロシナーゼ活性の測定は、各継代で共通の次の条件で実施した。
平板培地のコロニーを、YNB+2% グルコース液体培地に植菌し、30℃で2日間培養し、得られた菌体の活性測定を行った。
得られた結果を以下の表に示す。
Figure 2011045301
Figure 2011045301
Figure 2011045301
上記結果から、TY6株は、1種類のベクターで形質転換されたTY1、TY2と比較してチロシナーゼ活性が高い上に、継代培養しても種々の条件で活性の低下が無いことが分かる。
試験例2 TY2株とTY6株の培養試験
30 L培養槽に基本培地10 Lを入れ、以下の条件でTY2株とTY6株の培養試験を行った。
30 L培養槽用培地組成
Figure 2011045301
Figure 2011045301
培養20時間〜28時間: 50%グルコースを50 mL/hでフィード
培養28時間〜44時間: 50%グルコースを150 mL/hでフィード
培養44時間〜52時間: 50%グルコースを300 mL/hでフィード
培養52時間〜68時間: 50%グルコースを150 mL/hでフィード
培養の結果を図7に示す。図7に示されているように、TY6株を1種類のベクターで形質転換されたTY2株と同じ条件の培養を行った場合、TY6株とTY2株で増殖性能に顕著な差は認められない。
試験例3 TY3株の培養試験
10L培養槽に基本培地3 L入れ、培養試験を行った。ただし、TY3株はエタノール資化能力を欠損していることがわかっていたため、グルコース蓄積を避けるため、指数的にグルコースのフィード速度変化させた(グルコース濃度が高いと、エタノール蓄積することが知られている)。
培養の結果を図8及び図9に示す。
グルコースのフィード速度変化を変化させた結果、グルコースは常時低濃度に抑えることができたが、エタノールの蓄積は回避できなかった(図8)。
また、TY2株やTY6株は図7に示すように増殖能を示すOD600が250以上であったが、TY3株はOD600が100以下であり、菌体収量が大幅に低いことが分かる(図9)。
この培養特性から、TY3株は工業利用に適さないことがわかる。
結果
上記試験例1−3の結果をまとめると以下の表5のようになる。
Figure 2011045301
a)OD600>250を高濃度培養が可能、OD600≦250を高濃度培養が不可能とした。
b) チロシナーゼ活性は初代活性のものである。
c) すべての培養条件で活性残存数が90%以上の場合を極めて良好、80%以上の場合を良好、一つでも活性残存数が70%未満の場合を悪いとした。
尚、TY1株、TY2株及びTY6株は、いずれも同程度の生育性能を示し、菌体湿重量当たりのタンパク量も同程度である。
各酵母の特徴は以下の通りである。
・TY1株:
melB遺伝子のコピー数が1コピーであるベクターを用いて形質転換を行うことにより作製した特開2006-158304号公報で開示された菌株である。
・TY2株:
染色体に組み込むmelB遺伝子のコピー数を3に増加することにより、活性の高いTY2株を作製した。TY2株は、継代培養によりチロシナーゼ活性が低下する欠点を持っていた。
・TY3株:
EMS処理によりウラシル要求性とリジン要求性を付与した酵母はエタノール資化能力を失っており、これにmelB遺伝子を組み込んだTY3株は高濃度培養ができなかった。
・TY6株:
栄養要求性マーカーを2つ持ちエタノール資化できる株にmelB遺伝子を組み込んだTY6株について、培養試験と活性確認を行った。その結果、TY6株は高活性で、且つ、継代によりチロシナーゼ活性が低下せず、高濃度培養が可能であるという優れた特徴を持つ。
以上の結果を総括すると、本発明に係る酵母であるTY6株は、高いチロシナーゼ活性を有し、更に継代により活性が低下せず、また高濃度培養も可能であるためメラニンの工業的生産も可能である。この結果から、本発明による変異処理の次にジーンターゲッティングを施した宿主酵母を使用することで、チロシナーゼ遺伝子のコピー数に関わらず、形質転換された酵母は継代培養によりチロシナーゼ活性が低下せず、高濃度培養も可能という効果を有することが分かる。これに対して、ウラシル要求性変異のみを有する酵母をチロシナーゼ遺伝子を複数コピー有するベクターで形質転換したTY2株は継代することで活性が低下する。また、変異処理によりウラシル要求性とリジン要求性変異を付与された酵母を1種類のベクターで形質転換したTY3株は、高濃度培養を行うことができない。

Claims (8)

  1. 以下の工程A〜Eを含む方法により製造されるチロシナーゼ遺伝子が染色体に組み込まれた酵母:
    (A) 宿主酵母に変異処理を施しウラシル要求性を付与する工程、
    (B) 工程Aで得られた酵母にジーンターゲッティングを施し、リジン要求性を付与する工程、
    (C) 工程Bで得られた酵母を、チロシナーゼ遺伝子を含みウラシル要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、
    (D) 工程Cで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程、及び
    (E) 工程Dで得られた酵母からリジン要求性が生じたホモ型発現株を選択する工程。
  2. 更に以下の工程Fを含む方法により製造される、請求項1に記載の酵母:
    (F) 工程Eで得られた酵母を、リジン要求性を相補する形質転換ベクターにより形質転換する工程。
  3. 前記宿主酵母が清酒酵母である、請求項1又は2に記載の酵母。
  4. 前記清酒酵母が「きょうかい9号」である、請求項3に記載の酵母。
  5. 導入されたチロシナーゼ遺伝子のコピー数が3〜8であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵母。
  6. チロシナーゼ遺伝子のコピー数が6〜16であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵母。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵母を培養し、培養物からのチロシナーゼを利用することを特徴とするチロシナーゼの製造方法。
  8. 反応液中で、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵母の存在下で、DOPA(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン)及びこれらの類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の基質化合物を酸化してメラニン前駆体に変換する酸化工程と、
    反応液からメラニン前駆体を回収する回収工程と
    を含むメラニン前駆体の製造方法。
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