以下、添付図面を参照して、本発明に係るガソリンスタンドのキャノピー灯を実施するための形態について詳細に説明する。
図1は、ガソリンスタンドの敷地内の構成を簡易的に示した外観図である。同図に示すようにガソリンスタンド50の敷地内には、略中央部に車にガソリン等の燃料を給油するための給油機52、52、・・・が配置され、その上方にキャノピー54と呼ばれる屋根が支柱56、56に支持されて5〜6m程度の高さに設置されている。
また、敷地内には、従業員や来客者が利用するスタッフルーム、サービスルーム等が設けられる建屋58等が配置され、敷地の外周部には、車両等の出入口となる道路に面した部分を除き防火塀60が設けられている。尚、防火塀60は、ガソリンスタンド50の内部、又は、外部において火災が発生した場合に延焼を防止することを主目的としている。
更に、キャノピー54の下面側には、キャノピー54の下側を照明するキャノピー灯70、70、・・・が設置されている。本実施の形態では、そのキャノピー灯70として、LEDを光源とするLED照明装置が用いられている。LED照明装置の構成については後述するが、キャノピー灯として一般的に使用されているHIDランプ等に比べて、熱が発生し難い、低消費電力、薄型、軽量等の利点がある。特に、後述のLED照明装置によれば、所望の配光を光源であるLEDと保護カバーを兼ねた1枚の薄型レンズのみで光学系が構成されており、構成が簡易であるとともに小型化が実現されている。尚、LEDに限らず、レーザーダイオード(LD)等の他の種類の半導体発光素子を光源としてもよい。
本実施の形態のキャノピー灯70、70、…(LED照明装置)により照明されるキャノピー54下部の照度分布を図2に示す。同図に示すようにキャノピー54の真下中央が最も明るく、600Lux程度となっており、周辺になるほど徐々に照度が低くなるように配光されている。
そして、同図では示されていないが、キャノピー灯70、70、…からの光が図1の防火塀60の外側に漏れないようにキャノピー灯70、70、…の照明範囲が制限されている。
図3は、図1のようなガソリンスタンド50において、防火塀60との水平距離が最短となるキャノピー灯70の位置と、その距離が最短となる防火塀60の位置とを含む鉛直断面を示した断面図である。同図に示すように、キャノピー灯70の地面からの高さをH、防火塀60の地面からの高さをh、キャノピー灯70と防火塀60までの水平距離(最短水平距離)をLとする。また、キャノピー灯70と防火塀60の上端とを結ぶ直線が鉛直方向の直線となす角をθ(最大許容照射角度θという)とすると、θは次式(1)、
θ=arctan{(H−h)/L} …(1)
により求められる。
これに基づき、各キャノピー灯70は、指向角Θが上式(1)により算出される最大許容照射角度θとなるように、又は、その最大許容照射角度θ以下となるように設計される。指向角Θは、正面の光度に対して光度が半減する角度(半値角)を示す。これにより、キャノピー灯70からの光が防火塀60の外側に漏れないようになっている。
尚、上式(1)の最大許容照射角度θは、ガソリンスタンドによって異なるため、各ガソリンスタンドの最大許容照射角度θに応じて適切な指向角Θのキャノピー灯(LED照明装置)を製造するようにしてもよいし、指向角Θが異なる数種類のキャノピー灯(LED照明装置)を製品化し、各ガソリンスタンドにおける最大許容照射角度θに応じて、各ガソリンスタンドで使用するキャノピー灯の種類を最適なものに選択できるようにしてもよい。
次に、上記キャノピー灯70等に使用されるLED照明装置(水冷式LED照明装置)の構成について説明する。図4は本実施の形態の水冷式LED照明装置の斜視図、図5は図4の矢視A方向の図、図6は図4の矢視B方向の図、図7は図6のC−C線断面図、図8は図6のD−D線断面図、図9は図6のE−E線断面図、図10は本実施の形態の水冷式LED照明装置の分解斜視図、図11は本実施の形態の水冷式LED照明装置の水冷ユニットの基本構成図である。
本実施の形態に係る水冷式LED照明装置1(以下、LED照明装置1という)は、図7〜図10に示すように、矩形ボックス状のハウジング2の内部に光源ユニット3と制御回路ユニット4及び水冷ユニット5を組み込んで構成されている。
上記ハウジング2は、PC等の樹脂或いはアルミニウム等の金属で構成されており、図4に示すように、その周面には縦方向の長い複数のスリットから成る吸気口6が形成され、上面には扇形の複数のスリットから成る排気口7が形成されている。そして、このハウジング2の下面は開口しており、この開口部には前記光源ユニット3が嵌め込まれて固定されている。
上記光源ユニット3は、図7〜図10に示すように、光源であるLED8(図11参照)を実装して成る複数{図示例では9枚}のメタル基板9と、これらのメタル基板9を取り付ける矩形プレート状のベース10及びハウジング2の下面開口部に嵌め込まれる矩形プレート状の透明な樹脂製のレンズ11を含んで構成されている。尚、図10において、12はケーブルコネクタである。
本実施の形態では、LED8を実装して成る9枚のメタル基板9は縦横3列のマトリックス状に配置されており、これに対応してアルミダイキャスト製のベース10にもLED8と同数の台座10a(図7及び図9参照)が縦横3列のマトリックス状に一体に突設されている。そして各メタル基板9は、矩形の熱伝導シート13を介してベース10の各台座10aのネジ止めによって固定されている。尚、各熱伝導シート13は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコンなどによって構成されている。
また、前記制御回路ユニット4は、図10に示すように、下面が開口する矩形ボックス状の回路ケースの内部に不図示の各種電子部品が実装された回路基板15を組み込み、回路ケース14の下面開口部を矩形プレート状のカバー16によって覆うことによって構成されている。ここで、回路ケース14は熱伝導率の高いアルミダイキャスト等によって成形されており、その上面には放熱部を構成する多数の放熱ピン17が一体に突設されている。そして、この回路ケース14の内部正面には回路基板15が絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等から成る矩形の熱伝導シート18を介して密着されている。尚、回路ケース14とカバー16との接合部にはOリング19が介装されており、このOリング19のシール作用によって回路ケース14内が密封され、外部から回路ケース14内への水等の浸入が防止されている。
前記水冷ユニット5は、図7〜図11に示すように、熱交換器である水冷ジャケット20と、該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を外気(冷却風)との熱交換によって冷却するラジエータ21と、該ラジエータ21に冷却風を供給するファン22と、冷却水を閉ループの循環経路内で循環させる循環ポンプ23及び冷却水を貯留するリザーブタンク24を備えており、ファン22はラジエータ21と対向してこれの上方に配置されている。
ところで、上記水冷ジャケット20は、中空の矩形板状に成形されており、図7〜図9に示すように、その内部には冷却水通路が形成されている。そして、この水冷ジャケット20の一端上には、図8及び図10に示すように、ラジエータ21において外気(冷却風)との熱交換によって冷却されて冷却水が流入する入口パイプ25と、当該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を排出する出口パイプ26が立設されている。
そして、本実施の形態では、図7及び図9に示すように、ハウジング2内下部の底部に水冷ジャケット20が水平に配置されており、この水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に制御回路ユニット4と光源ユニット3が配置されている。ここで、水冷ジャケット220の下面側に配されて光源ユニット3は、そのベース10が矩形の熱伝導シート27を介して水冷ジャケット20の下面に密着している。尚、本実施の形態では、熱伝導シート27は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等によって構成されている。
また、制御回路ユニット4は、そのカバー16が水冷ジャケット20の上面に密着する状態で該水冷ジャケット20の上面側に配置されている。尚、本実施の形態では、冷却水として水にプロピレングリコールを混合して成る不凍液が使用されている。
他方、図7及び図9に示すように、ハウジング2内の水冷ジャケット20から離間した上部には前記ラジエータ21とファン22が配置されており、水冷ジャケット20とラジエータ21との間には空間部Sが形成され、この空間部Sに制御回路ユニット4と前記循環ポンプ23及び前記リザーブタンク24が配置されている。具体的には、水冷ジャケット20上には門型のシャーシ28が立設されており、このシャーシ28によって囲まれる空間に制御回路ユニット4が配され、シャーシ28上に循環ポンプ23とリザーブタンク24が設置されている。
ここで、図8及び図11に示すように、水冷ジャケット20の出口パイプ26から上方へ立ち上がる配管(ゴムホース)29は、ラジエータ21の入口パイプ30に連結されており、ラジエータ21の出口パイプ31から延びる配管(ゴムホース)32は、下方に延びた後に略直角に曲げられて循環ポンプ23の吸入側に接続されている。そして、循環ポンプ23の吐出側から延びる配管(ゴムホース)33は、図11に示すようにリザーブタンク24の入口側に接続されており、リザーブタンク24の出口側から下方に延びる配管(ゴムホース)34は水冷ジャケット20の入口パイプ25に接続されている。このように水冷ジャケット20、ラジエータ21、循環ポンプ23及びリザーブタンク24は配管(ゴムホース)29、32〜34によって連結されて開ループを成す循環経路が形成されており、この循環経路を冷却水が循環することによって所要の冷却作用がなされる。
そして、以上のように構成されたLED照明装置1が起動されて光源ユニット3と制御回路ユニット4及び水冷ユニット5に電源が供給されると、光源ユニット3の複数(本実施の形態では9個)のLED8が発光し、その光はレンズ11を透過して図4の下方に向かって照射されることによって前方を照明するが、光源ユニット3のLED8及び制御回路ユニット4の各種電子部品(不図示)が発熱し、そのままでは光源ユニット3と制御回路ユニット4が加熱されて温度が上昇する。
然るに、本実施の形態では、水冷ユニット5が同時に駆動され、光源ユニット3と制御回路ユニット4は、前述のように図8に示す循環経路を循環する冷却水によって強制冷却されてその温度上昇が抑えられる。
即ち、循環ポンプ23によって循環経路を循環する冷却水は、水冷ジャケット20において光源ユニット3及び制御回路ユニット4において発生する熱を受熱して光源ユニット3及び制御回路ユニット4を冷却し、受熱して温度の高くなった冷却水は、配管29を通ってラジエータ21へと導入される。
他方、ファン22が不図示のモータによって回転駆動されると、外気がハウジング2の周面に形成された吸気口6から冷却風としてハウジング2内に側方から吸引され、この冷却風は水冷ジャケット20とラジエータ21との間に形成された空間部Sを上方に向かって流れ、その過程でラジエータ21を通過し、ハウジング2の上面に開口する排気口7から外部に排出される。そして、ラジエータ21においては、ここを通過する冷却風によって冷却水の熱が外部に放熱されて該冷却水が冷却され、温度の下がった冷却液水は、配管32を通って循環ポンプ23に吸引される。
循環ポンプ23に吸引された冷却水は昇圧された後に循環ポンプ23から配管33を通ってリザーブタンク24へと送り出され、その一部はリザーブタンク24に貯留され、残りの冷却水はリザーブタンク24から配管34を通って水冷ジャケット20へと導入されて光源ユニット3と制御回路ユニット4の冷却に供される。そして、以上の作用(冷却サイクル)が連続的に繰り返されて光源ユニット3と制御回路ユニット4が水冷ジャケット20を流れる冷却水によって強制冷却され、それらの温度上昇が一定値以下に抑えられる。
そして、本実施の形態では、水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に制御回路ユニット4と光源ユニット3を配置したため、循環ポンプ23によって冷却水が閉ループの循環経路を循環することによって、水冷ジャケット20の両側に配された光源ユニット3と制御回路ユニット4が冷却水によって同時に強制冷却される。この結果、これらの光源ユニット3と制御回路ユニット4の温度上昇が抑えられて当該LED照明装置1の高出力化が実現される。
また、本実施の形態では、制御回路ユニット4の下面を水冷ジャケット20に密着させ、上面に放熱部を構成する多数の放熱ピン17を突設したため、制御回路ユニット4が冷却水によって強制冷却されると同時に放熱ピン17から自然放熱されるため、該制御回路ユニット4が効率良く冷却されてその温度上昇が一層効率的に抑えられる。
更に、本実施の形態では、光源ユニット3はその全面が熱伝導率の高い熱伝導シート27を介して水冷ジャケット20の下面に密着するため、光源ユニット3の全面が伝熱面となって該光源ユニット3が水冷ジャケット20を流れる冷却水によって効率良く冷却される。
また、本実施の形態では、水冷ユニット5の水冷ジャケット20とラジエータ21との間に形成された空間部Sに制御回路ユニット4を配置したため、ファン22によってハウジング2内に導入された冷却風が空間部Sを流れることによって制御回路ユニット4が強制冷却され、冷却水によっても強制冷却される制御回路ユニット4が一層効率良く冷却されてその温度上昇が効果的に抑えられるという効果も得られる。
次に上記LED照明装置1の光源ユニット3におけるレンズの形状の設計(算出)方法について詳説する。上記のように光源ユニット3の光学部は、図7〜図10に示すように、光源であるLED8(図11参照)が縦横3列のマトリックス状に配置され、それらの前方に矩形プレート状の透明な樹脂製のレンズ11が配置される。レンズ11には、縦横3列のマトリックス状に配置された各LED8の位置に対応して、各LED8から出射された光を集めて所定の配光パターン(照度分布)の光を出射する照明用レンズ11Aが形成されている。
以下、図12に示すように任意の1つのLED8を光源100、そのLED8に対向して配置された照明用レンズ11Aをレンズ102として、レンズ102の形状の算出方法について説明する。尚、光源100は、LEDに限らず、レーザーダイオード(LD)等の他の種類の半導体発光素子であってもよい。
まず、本実施の形態では、説明を容易にするために、光源100の照度分布等の光学的特性が光軸Oを回転軸とする任意角度の回転に対して対称であり、レンズ102を介して形成される配光パターンや、レンズ102の形状も光軸Oを回転軸とする任意角度の回転に対して対称であるものとする。そして、互いに直交するX、Y、Z軸(座標軸)から成る3次元空間において、光源100の位置をXYZ座標の原点の位置とするとともに、光軸OをZ軸とし、XZ平面における光学部の断面を図示しながら、主にX座標が0以上となる範囲に関してのみ説明する。
図12に示すようにレンズ102は、凸面形状に形成された表面OLと、複数の面IL1〜IL3、RL1、RL2の組合せで構成された裏面BLとから構成されている。
図13の一部拡大図に示すように光源100から出射される光(光線r)と、Z軸(光軸O)との成す角を光源出射角度というものとし、その角度をαとすると、裏面BLは、光源100から出射された光のうち、光源出射角度αが角度範囲α1L(=0°)≦α<α1Hとなる光をレンズ102内に入射(透過)させる第1透過面IL1と、角度範囲α2L≦α<α2Hとなる光をレンズ102内に入射させる第2透過面IL2と、角度範囲α3L≦α<α3Hとなる光をレンズ102内に入射(透過)させる第3透過面IL3とから形成されている。尚、α1H=α2L、α2H=α3Lである。
図12に示すように第1透過面IL1からレンズ102内に入射した光(光線r1)は、レンズ102内において直進し(反射せず)、表面OLから直接出射される。一方、第2透過面IL2と第3透過面IL3からレンズ102内に入射した光(光線r2、r3)は、各々、裏面BLを構成する第1反射面RL1と第2反射面RL2によりレンズ102内部で一回反射した後、表面OLから出射されるようになっている。尚、第1反射面RL1と第2反射面RL2には、内部で光が全反射するような表面処理が施されている。
このようなレンズ102を使用することにより、光源100から略180°の角度範囲で出射される光がリフレクタ等のレンズ102以外の部材を使用することなく照明光として利用されるため構成及び製造が容易であり、また、光源100とレンズ102とが近接して配置されるとともに、レンズ102が薄型であるため、LED照明装置1の光学部を小型化することができ、LED照明装置1全体としての小型化も可能となる。
尚、第1反射面RL1や第2反射面RL2のような反射面の数は変更可能であり、図12のように2つの反射面を有する場合に限らない。
続いて、上記レンズ102の形状の算出方法について説明する。レンズ102の形状の算出にはパーソナルコンピュータ等の演算処理装置が用いられ、事前にインストールされた本実施の形態に係るレンズ設計用のソフト(プログラム)を起動することによってレンズ102の形状を算出するための演算処理が行われるようになっている。
パーソナルコンピュータ150は、図14に示すように,CPU(Central Processing Unit)152と,ROM(Read OnlyMemory)154と,RAM(Random AccessMemory)156と,ホストバス158と,ブリッジ160と,外部バス162と,インタフェース164と,入力装置166と,出力装置168と,ストレージ装置(HDD)170と,ドライブ172等を備える。
CPU152は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って動作し、PC150内の各部を制御する。このCPU152は、ROM154に記憶されているプログラム、或いは、ストレージ装置170からRAM156にロードされたプログラムに従って、各種の処理を実行する。ROM154は、CPU152が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するとともに、CPU152からストレージ装置170へのアクセスを軽減するためのバッファーとしても機能する。RAM156は、CPU152の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス158により相互に接続されている。ホストバス158は、ブリッジ160を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス162に接続されている。
入力装置166は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、レバー等の操作手段と、入力信号を生成してCPU152に出力する入力制御回路などから構成されている。出力装置168は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、CRT(Cathode RayTube)ディスプレイ装置、ランプ等の表示装置と、スピーカ等の音声出力装置などで構成される。
ストレージ装置170は、パーソナルコンピュータ150の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置であり、例えば、HDD(Hard DiskDrive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置170は、CPU152が実行するプログラムや各種データを格納する。
ドライブ172は、記憶媒体用リーダライタであり、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体174に記録されている情報を読み出して、RAM156に出力する。また、ドライブ172は、装着されている書込可能なリムーバブル記録媒体174に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体174は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア、Blu−rayメディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、メモリースティック、または、SDメモリカード(SecureDigital memorycard)等である。
このように構成されたパーソナルコンピュータ150において、設計者は、本実施の形態に係るレンズ設計用のプログラムの起動を入力装置166を使用して起動させると、CPU152はそのプログラムをストレージ装置170から読み出し、そのプログラムに従った下記のレンズ設計の処理を実行する。
続いて、レンズ102の形状を算出するための上記パーソナルコンピュータ150のCPU152による処理手順を図15及び図16のフローチャートに従って説明する。
CPU152は、図12のようにX、Y、Z軸(座標軸)から成る3次元空間において、光源100の位置をXYZ座標の原点の位置に設定するとともに、光軸OをZ軸として設定する。また、レンズ102の表面OLの形状は設計者が決めて入力装置166からの入力によって指定し、CPU152がその指定された表面OLの形状をXYZ座標上に設定する(図15のステップS10)。尚、表面OLの形状のデータのように、設計者等の操作者が入力装置166から入力してCPU152に指定するものは、CPU152の演算処理時において設計者が入力装置166から直接入力するのではなく、事前に作成されてストレージ装置170やリムーバブル記録媒体174に記録保存されているデータをそれらのストレージ装置170やリムーバブル記録媒体174から取得するようにしてもよい。以下においても、設計者が指定するデータは、入力装置166、ストレージ装置170、リムーバブル記録媒体174など、CPU152がデータを取得することができる手段であればどのような手段から与えられるものであってもよく、どのような手段から与えられるものかは特に明記しないものとする。
次に、CPU152は、設計者の指定に基づき光源出射角度αとレンズ出射角度βとの関係を示す制御曲線β(α)を設定する(図15のステップS12)。
ここで、図13のように光源100からある方向に出射された光(光線r)と、Z軸(光軸O)との成す角を光源出射角度αと称し、光源100からその光源出射角度αの方向に出射された光又は光線を光源出射角度αの光又は光線と称する。また、レンズ102の表面OLからある方向に出射された光(光線r′)と、Z軸(光軸O)との成す角をレンズ出射角度βと称し、レンズ102の表面OLからそのレンズ出射角度βの方向に出射された光又は光線をレンズ出射角度βの光又は光線と称する。
制御曲線β(α)は、光源出射角度αの光をレンズ102による屈折や反射によって何度のレンズ出射角度βの光に変換するかを表した曲線であり、この制御曲線β(α)の関係を満たすようにレンズ102の形状が算出される。設計者は、レンズ102から出射される光によってLED照明装置1としての所望の配光(配光パターン)が得られるように制御曲線β(α)を決めて、その制御曲線β(α)をCPU152に指定する。尚、制御曲線β(α)を決める際の手順について後に例示する。
次に、CPU152は、設計者の指定に基づきレンズ102の裏面BLを形成する面として形状を算出する予定の算出面の数(Nmax)と、各算出面に入射する光源100からの光の光源出射角度αに関する角度範囲を設定する(図15のステップS14)。ここで、X軸に関して原点に近い側の算出面から第1算出面BL1、第2算出面BL2、・・・とし、N番目(1≦N<Nmax)の算出面を第N算出面BLNで表すものとする。そして、第N算出面BLNに入射する光の光源出射角度αに関する角度範囲をαNL≦α<αNHで表すものとする。
図12、図13に示したような形状の裏面BLを形成する場合、算出面として、第1透過面IL1、第1反射面RL1、第2反射面RL2が第1算出面BL1、第2算出面BL2、第3算出面BL3に相当し、設計者は算出面の数Nmaxとして3を指定する。尚、本実施の形態では、算出面の数Nmaxにかかわらず、N=1の第1算出面B1のみを常に第1透過面IL1のような透過面とし、N≧2の算出面は、第1反射面RL1、第2反射面RL2のような反射面であるものとする。
一方、図12、図13において、光源100からの光が第1反射面RL1(第2算出面BL2)や第2反射面RL2(第3算出面BL3)に入射する前に通過する第2透過面IL2、第3透過面IL3は、算出面として設定しないものとする。即ち、算出面として設定する透過面は第1透過面IL1(第1算出面BL1)のみとし、他の透過面(光源100からの光が所定の反射面に入射する前に通過する透過面)は算出面として設定しない。第1透過面IL1以外の透過面は、光源100からの光を対応する反射面へと屈折させる面であり、反射面の形成が困難な方向に光源100からの光を屈折させるような面や、反射面に入射する光源出射角度αの光を無意味に収束させるような面でなければよく、比較的自由に設計することができる(例えば、第1透過面BL1以外の透過面はXZ平面において単に直線形状となる面であってもよい)。そのため、それらの透過面の形状の情報が必要となった段階で適宜設定するものとし、それらの形状に関しては詳細を説明せず、設計者が指定してもよいし、CPU152が自動的に設定してもよいし、両方の組合せで設定してもよいものとする。
また、第N算出面BLNに入射する光の光源出射角度αに関する角度範囲αNL≦α<αNHは、光源100から各角度方向に出射される光のうち、有効に利用する光の角度範囲0°〜αmaxを算出面の数Nmaxで分割することによって第1算出面BL1〜第Nmax算出面BLNmaxまでの各算出面に入射させる光の光源出射角度αに関する角度範囲を定めたもので、αNH=α(N+1)L(ただし、NがNmaxの場合を除く)の関係を有する。
図12、図13に示したような形状の裏面BLを形成する場合、図13に示すように第1算出面BL1に入射する光の光源出射角度αの角度範囲は図中の0°(α1L)≦α<α1Hで示す範囲であり、第2算出面BL2に入射する光の光源出射角度αの角度範囲は、図中のα2L≦α<α2Hの範囲であり、第3算出面BL3に入射する光の光源出射角度αの角度範囲は、図中のα3L≦α<α3Hの範囲である。
本実施の形態では、これらの角度範囲は、算出面の数Nmaxとともに設計者が初期の段階で指定するものとするが、ある算出面に関して、設計者が指定した角度範囲の光に対して制御曲線β(α)の関係を満たすように形状を形成することが不可能となる可能性がある。また、初期の段階で全ての算出面についての角度範囲を設定しておく必要もないため、以下の処理において、算出面の形状を第1算出面BL1から第Nmax算出面BLNmaxまで順に算出していく仮定において、適宜、必要となる角度範囲の情報を設定し、又は、修正できるようにしてもよい。このとき、算出面の数Nmaxも、設定又は修正された角度範囲に応じて修正できるようにするか、又は、算出面の数Nmaxの指定自体を不要とすることができる(ある算出面の形状を算出した後、必要であれば算出面を1つ追加していく等の方法では算出面の数Nmaxの指定は不要)。
尚、上記のように本実施の形態では、レンズ102はZ軸(光軸O)を回転軸とする任意角度の回転に対して対称となる形状を有していることを前提としているため、XZ平面においてX≧0の範囲におけるレンズ102の裏面BLの形状(線形状)を求めれば、その線形状をZ軸に対して回転させて形成される面がレンズ102の裏面BL全体の形状として求まる。従って、本実施の形態では、XZ平面においてX≧0の範囲における裏面BLの形状のみを算出する手順のみを示している。仮にレンズ102がこのような対称性を有していない場合であっても、例えば、本実施の形態と同様の手順で任意断面でのレンズ102の裏面BLの形状(線形状)を求め、それを3次元的につなぎ合わせて裏面BLの3次元形状を求めることができる。
次に、CPU152は、図17に示すようにレンズ102の表面OLよりも後側(光源100側)の全体がレンズ102の媒質であると仮定し(大気中から表面OLを介してレンズ102内に進入した光は永続的にレンズ媒質内を進行するものと仮定する)、Z軸(光軸O)との成す角が角度βとなる平行光を前面側(Z軸の正側)から表面OLに入射させたときの焦点(結像点)の位置(座標)を光線追跡等の手法を用いて求める(図15のステップS16)。ここで、Z軸に対して角度βで入射した平行光の焦点の座標をS(β)とし、仮想焦点S(β)と称するものとする。
仮想焦点S(β)は、レンズ出射角度βの光をレンズ102の表面OLから出射する仮想光源でもあり、図17に示すようにレンズ102の表面OLにレンズ102内から入射する光線rの軌跡の延長線上に仮想焦点S(β)が存在する場合、即ち、仮想焦点S(β)の位置に仮想光源を配置したときにその仮想光源から出射されるいずれかの光線の軌跡と光線rの軌跡とが一致する場合には、その光線rは、レンズ出射角度βの光としてレンズ102の表面OLから外部(大気中)に出射される。
このように仮想焦点S(β)は、レンズ102内に入射した光をレンズ出射角度βの光としてレンズ102の表面OLから出射させる場合に、その光がレンズ102内において通るべき軌跡を与えるもので、後述のようにレンズ102の裏面BLから入射した光を制御曲線β(α)に従ったレンズ出射角度βの光として出射させる場合に、その光がレンズ102内で通過すべき軌跡を求める際に参照される。
また、角度βの値を変えて仮想焦点S(β)の位置(座標)を求めると、図17に示すような凸面形状の表面OLに対して、XZ平面上において略楕円形の線ls上に仮想焦点S(β)が検出され、略楕円形の線lsを描く仮想焦点群が形成される。従って、角度βの値を微少量ずつ変更しながら仮想焦点S(β)の位置を離散的に求めておいてもよいが、複数の仮想焦点S(β)の位置に基づいて、任意の角度βに対する仮想焦点S(β)の位置を示す近似曲線の曲線式ls(β)を求めておき、必要時において任意の角度βに対する仮想焦点S(β)の位置を曲線式ls(β)を用いて求めるようにしてもよい。
以上の初期設定の処理が終了すると、CPU152は、算出面の形状を実際に算出するための処理に移行する。まず、算出面の番号を示すNを1として、N≦Nmax(Nmaxは算出面の数)の条件を満たすか否かの判定処理を行う(図15のステップS18)。N=1の場合には、この条件を常に満たすため、ステップS20に移行して、第1算出面BL1の形状を算出する。尚、形状を算出するための具体的な処理内容については後述する。第1算出面BL1の形状を算出すると、続いてNをN=N+1(Nを1増加)として(ステップS22)、ステップS18の判定処理に戻る。
このような処理がN=1からN=Nmaxとなるまで実行され、Nが算出面の数Nmaxを越えてNmax+1になると、ステップS18においてNOと判定されて、全ての処理が終了する。
続いて、所定値Nにおける第N算出面BLNの形状を算出する図15のステップS20の処理内容について、図16のフローチャートを用いて具体的に説明する。まず、CPU152は、設計者の指定に従って、光源出射角度αNLの光が第N算出面BLNに入射する位置として初期入射点BLN(αNL)の位置(座標)を設定する(ステップS30)。光源出射角度αNLは、第N算出面BLNに入射する光の光源出射角度αに関する角度範囲αNL≦α<αNHのうち最小の角度を示す。
例えば、N=1の場合、図18に示すように光源出射角度0°の光が第1算出面BL1に入射する位置を初期入射点BL1(0°)として指定する。尚、同図には、図12等に示した第1算出面BL1の形状が点線で示されているが、この段階では第1算出面BL1の形状は全く決まっておらず、この形状に基づいて初期入射点BL1(0°)の位置を指定するのではなく、設計者がレンズ102の厚みなどを考慮して指定する。ただし、任意の値Nにおいて、初期入射点BLN(αNL)の位置は、少なくとも光源出射角度αNLの光が表面OLに到達する前に通過する位置という条件を満たす必要があり、N=1の場合もこの条件を満たす位置を初期入射点BLN(αNL)として指定する必要がある。
また、例えば、N=2の場合、図18に示すように光源出射角度α2Lの光が第2算出面BL2に入射する位置として初期入射点BL2(α2L)を設定する。このとき、光源出射角度α2Lの光は、第2算出面BL2に入射する前に、第2透過面IL2からレンズ102内に入射する際に屈折する。従って、初期入射点BL2(α2L)の位置は第2透過面IL2での屈折の仕方によって設定し得る位置が制限されるが、例えば、初期入射点BL2(α2L)の位置を設計者が指定した後、その初期入射点BL2(α2L)に光源出射角度α2Lの光が入射するように第2透過面IL2の形状を設定するようにしてもよいし、第2透過面IL2の形状を設定した後、その第2透過面IL2によって屈折した光源出射角度α2Lの光が通過する位置を算出し、その通過位置のいずれかに初期入射点BL2(α2L)の位置を設計者の指示に従って設定するようにしてもよい。尚、N=3の場合もN=2の場合と同様に、第3透過面IL3での屈折を考慮して、図18に示すように光源出射角度α3Lの光が第3算出面BL3に入射する位置として初期入射点BL3(α3L)を設定し、N≧4の場合もN=2、3と同様に初期入射点BLN(αNL)を設定する。
このようにして第N算出面BLNの初期入射点BLN(αNL)を設定すると、次にCPU152は、まず、光源出射角度αの値α0としてα0=αNLに設定し、その光が第N算出面BLNに入射する位置を示す入射点BLN(α0)を初期入射点BLN(αNL)に設定する(ステップS32)。
そして、CPU152は、ステップS34〜ステップS42の処理を繰り返す。これによって、光源出射角度α0をαNLからΔαずつ増加させながら、各光源出射角度α0の光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α0)を順次求め、それらの入射点BLN(α0)の位置によって第N算出面BLNの形状を最終的に算出する。
今、所定の光源出射角度α0の光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α0)が求まった状態であるとする。図19は、N=1の場合において、所定の光源出射角度α0の光が第1算出面BL1に入射する入射点BL1(α0)が求まった状態を例示している。CPU152は、まず、入射点BLN(α0)と、光源出射角度α0に対して制御曲線β(α)で対応付けられたレンズ出射角度β(α0)=β0に対応する仮想焦点S(β0)を通る直線M0を求める(ステップS34)。直線M0は、入射点BLN(α0)に入射した光線r1が、レンズ出射角度β(α0)で出射されるためのレンズ102内での光線の軌跡を示している。
次に、CPU152は、光源出射角度α0の光が第N算出面BLNの入射点BLN(α0)に入射した後、その光が直線M0の方向に(直線M0に一致する軌跡となるように)屈折(N=1の場合)又は反射(N≧2の場合)するように、入射点BLN(α0)における第N算出面BLNの面方向(本実施の形態では法線方向γ(α0))を算出する(ステップS36)。即ち、入射点BLN(α0)において第N算出面BLNに接する接平面P(α0)を求める。第N算出面BLNが入射点BLN(α0)において、ここで算出される面方向を有するものとすれば、光源出射角度α0の光を制御曲線β(α)に従ったレンズ出射角度β(α0)の光としてレンズ102から出射させることができる。
具体的に説明すると、光源出射角度α=α0の光が第N算出面BLNの入射点BLN(α0)に入射する際の入射角θ1と、第N算出面BLNの入射点BLN(α0)に入射して直線M0の方向に屈折又は反射した光の屈折角θ2(N=1の場合)又は反射角θ2(N≧2の場合)とが、入射角θ1と屈折角θ2又は反射角θ2との関係を規定する所定の光学的条件を満たすように、入射点BLN(α0)における第N算出面BLNの法線方向γ(α0)(接平面P(α0))を求める。法線方向γ(α0)は、例えば、入射点BLN(α0)における第N算出面BLNの法線とZ軸(光軸O)との成す角とする。
N=1の場合、図19に示すよう入射点BL1(α0)において法線方向γ(α0)が未知の接平面P(α0)を想定し、光源出射角度α=α0の光線r1が入射点BL(α0)においてその接平面P(α0)に入射する際の入射角θ1と、入射点BL1(α0)に入射して直線M0の方向に屈折した光線r2の屈折角θ2とが次式のスネルの法則、
sinθ1/sinθ2=n2/n1(ただし、n1、n2は、各々、真空に対する大気の屈折率(n1)とレンズ媒質の屈折率(n2)を示す)
を満たすように、接平面P(α0)の法線方向γ(α0)を算出する。これによって算出された法線方向γ(α0)は入射点BL1(α0)における第1算出面BL1の法線方向であり、接平面P(α0)は入射点BL1(α0)における第1算出面BL1の接平面である。
N=2の場合、図20に示すように入射点BL2(α0)において法線方向γ(α0)が未知の接平面P(α0)を想定し、光源出射角度α=α0の光線r1が入射点BL2(α0)においてその接平面P(α0)に入射する際の入射角θ1と、入射点BL2(α0)に入射して直線M0の方向に反射した光線r2の屈折角θ2とが、次式の反射の法則、
θ1=θ2
を満たすように、接平面P(α0)の法線方向γ(α0)を算出する。これによって算出された法線方向γ(α0)は入射点BL2(α0)における第2算出面BL2の法線方向であり、接平面P(α0)は入射点BL2(α0)における第2算出面BL2の接平面である。尚、光源出射角度α=α0の光線r1が入射点BL2(α0)において接平面P(α0)に入射する際の入射角θ1は、第2透過面IL2によって屈折作用を受けた光線の入射角となる。
Nが3以上の場合には、N=2の場合と同様にして入射点BLN(α0)における第N算出面BLNの法線方向γ(α0)(接平面P(α0))が算出される。
次に、CPU152は、上記のようにしてステップS36で求めた入射点BLN(α0)における第N算出面BLNの接平面P(α0)を、入射点BLN(α0)の近傍での第N算出面BLNの形状であると仮定し、光源出射角度α0を微小角度Δα分だけ増加させた光源出射角度α0+Δαの光線L1が接平面P(α0)に入射する入射点を求める。そして、その入射点を、光源出射角度α0+Δαの光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α0+Δα)として設定する(ステップS38)。
このようにして光源出射角度α0+Δαの光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α+Δα)が求まると、光源出射角度αの値α0をα0+Δαと置き換えるとともに、光源出射角度α0の光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α0)の座標を入射点BLN(α0+Δα)の値に置き換える(ステップS40)。そして、上記ステップS34からの処理を繰り返す。ステップS40において新たに設定した光源入射角度α0の値が、第N算出面BLNに入射する光の光源出射角度α0の範囲、即ち、αNL≦α0<αNHの範囲を超えた場合にはステップS42の判定処理によってステップS34〜ステップS42の反復処理が終了する。尚、初期入射点BLN(α0)を光源出射角度αNLの光の入射点BLN(αNL)として、α0の値を徐々に大きくして入射点BLN(α0)の値を求めているため、第N算出面BLNに入射する光の光源出射角度α0の範囲αNL≦α0<αNHのうち、αNL≦α0の条件は常に満たされる。従って、ステップS42では、α0<αNHの条件を満たすか否かの判定処理のみが行われている。
以上のようにして、光源出射角度αの光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α)が、第N算出面BLNに入射する光源出射角度αに関する角度範囲αNL≦α<αNHの全体に対して求められると、CPU152は、それらの入射点BLN(α)をαの大きさ順に接続する。このとき各入射点を接続した線形状が滑らかな曲線を描くように、且つ、各入射点でのその線形状の接線方向がステップS36で求めた各入射点に接する接平面のXZ平面での断面方向(接平面の法線方向に直交する方向)となるように、スプライン曲線やビジエ曲線などを使用して各入射点を接続する。これにより、第N算出面BLNの形状(XZ平面での線形状)が連続した1つの曲線として求められる(ステップS44)。この処理が終了すると、図15のステップS22に移行する。
尚、最終的には、上記のようにしてXZ平面(X≧0)の範囲で求められた第N算出面BLNや、第N算出面BLN(N≧2)に光源100からの光を導く第N入射面(図12、図13等に示した第2反射面RL2、第3反射面RL3、・・・)の線形状をZ軸(光軸O)を中心にして回転させてそれらの線形状が描く面を求めることによって、レンズ102の裏面BL全体の形状が求められる。
以上の処理において、ステップS30で設定した初期入射点は、必ずしも光源出射角度αNLの光が第N算出面BLNに入射する位置でなくてもよい。上記実施の形態では、初期入射点として各算出面の端点(各算出面に入射する光のうち最小の光源出射角度αの光が入射する入射点)を設計者が指定し、その位置を基点として、光源出射角度αが大きくなる方向に光線を変化させて算出面上の点(入射点)及び面方向を順次求めるようにしたが、例えば、算出面上の任意の点を初期入射点として指定できるようにし、その場合には、その位置を基点として、光源出射角度αが大きくなる方向と小さくなる方向の両方向に光線を変化させて算出面上の点(入射点)を求めるようにすればよい。
また、上記のステップS38において、光源出射角度α0+Δαの光が第N算出面BLNに入射する入射点を、光源出射角度α0の光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α0)における接平面P(α0)に入射(交差)する点として設定したが、任意の光源出射角度においてその光が第N算出面BLNに入射する入射点を初期入射点BLN(αNL)と同様に設計者が指定できるようにしてもよい。また、第N算出面BLNの基調とする面形状(XZ平面における線形状)を設計者が事前に指定しておき、光源出射角度αの光線がその基調とする線形状と交差する点を入射点として設定するようにしてもよい。
次に、光源出射角度αとレンズ出射角度βとの関係を表す制御曲線β(α)の一例について説明する。設計者は、レンズ102から出射される光によって所望の配光(配光パターン)が得られるように、光源100から出射された各光源出射角度αの光(光線)を何度のレンズ出射角度βでレンズ102から出射させるかを制御曲線β(α)によって設定する。この制御曲線β(α)に基づいてレンズ102の形状を上記のように算出し、形成することによって、その制御曲線β(α)に従った目的の配光制御がレンズ102によって行われるため、多様な配光制御を容易に実現することができる。
まず、図21は、LEDの光源100のXZ平面における光源出射角度α(α≧0)に対する光度分布(指向性分布)の一例を示す。同図に示す光度分布は、正面となる0°の出射角度方向の光度が最も高い値を示し、光源出射角度αが大きくなるに従って光度が徐々に減少する一般的な特性を示している。
これのような特性の光源100における光源出射角度α(α≧0)の光に対して、例えば、レンズ102から出射される光のレンズ出射角度βを所定範囲0°〜βmax内に制限するとともに、レンズ出射角度βが大きくなる程、徐々に光度が低くなるような光度分布による配光を形成するものとする。例えば、このような配光は、図1〜図3で説明したガソリンスタンドのキャノピー灯70に使用するLED照明装置1に有効である。
この場合の制御曲線β(α)の決め方の一例として、まず、光源出射角度αに関して複数の角度範囲に分割したときの各角度範囲を積分区間として光度を積分したときに、それらの積分値が同じになるように、各角度範囲を決定する。図21には、光源出射角度α(α≧0)の範囲をこのようにして分割した場合に、光源出射角度αの0°側から0°、α1、α2、α3、α4、・・・の境界角度によって複数の角度範囲0°〜α1、α1〜α2、α2〜α3、α3〜α4、・・・に分割された様子が示されている。
このとき、例えば、図22の制御曲線β(α)に示すように、光源出射角度αの角度範囲として隣接する2つずつ角度範囲0°〜α1とα1〜α2、α2〜α3とα3〜α4、・・・を1組とする。そして、同じ組の角度範囲の光は、レンズ出射角度βに関して同一角度範囲の光に変換するとともに、同じ組の2つの角度範囲のうち一方の角度範囲の光は、光源出射角度αが大きくなるほど、レンズ出射角度βも大きくなるようにし、他方の範囲の光は、光源出射角度αが大きくなるほど、レンズ出射角度βが小さくなるようにして、光源出射角度αの小さい光と、大きい光とを重ね合わせてレンズ出射角度範囲βに関して同一角度の光を形成するようにする。これによって光源100が有する輝度ムラなどが軽減される。
また、図22の制御曲線β(α)に示すように、1組目の角度範囲0°〜α1、α1〜α2の光を、レンズ出射角度βの最大の角度範囲0°〜βmaxの光に変換し、第2組目の角度範囲α2〜α3、α3〜α4の光を、レンズ出射角度βの角度範囲0°〜β1(<βmax)の光に変換し、第3組目移行の角度範囲の光についても同様に、レンズ出射角度βの範囲を0°側に狭めていくことにより、レンズ出射角度βの角度範囲0°に近い範囲ほど、多くの組の角度範囲からの光が重ね合わせられる。従って、上記のようにレンズ102から出射される光のレンズ出射角度βが所定範囲0°〜βmax内に制限され、レンズ出射角度βが大きくなる程、徐々に光度が低くなるような光度分布が、これによって形成される。このように光源出射角度αの角度範囲が異なる光を重ね合わせることによって光源100の輝度ムラなどが軽減されるとともに、光度の積分量が等しい各組の光を重ね合わせる量によってレンズ102から出射される光の光度分布を形成することができるため、所望の配光を容易に作ることができる。尚、ここで説明した制御曲線β(α)の決め方は一例であって、どのような方法で決めてもよい。特に図15、16のフローチャートのようにレンズ102の形状を求めることで、多様な制御曲線β(α)に対応したレンズ102を容易に設計することができため、設計者が制御曲線β(α)を決める際の自由度が高い。
以上、上記の実施の形態では、説明を容易にするために、光源100の照度分布等の光学的特性が光軸Oを回転軸とする任意角度の回転に対して対称であり、レンズ102を介して形成される配光パターンや、レンズ102の形状も光軸Oを回転軸とする任意角度の回転に対して対称であるものとしたが、このような対称性を有していない場合にも上記処理手順と同様の処理手順でレンズ102の裏面BLの形状を算出することができる。対称性を考慮しない場合においても適用可能なレンズ102の形状を算出するための処理手順の概要を、図15、図16のフローチャートに対応させて説明する。ただし、図15、図16と略同様の処理が行われる工程については説明を省略する。
まず、光源100とレンズ102の表面OLの形状(座標)をXYZ座標上に設定する(ステップS10に相当)。そして、光源出射方向αとレンズ出射方向βとの関係を示す配光制御データβ(α)を設定する(ステップS12に相当)。ここで、上記実施の形態では光源100から出射された光とZ軸(光軸O)との成す角である光源出射角度αによって光源100から出射された光の出射方向を表していたが、ここでは、光源100から出射された光の3次元的な出射方向を光源出射方向αとして表す。αは具体的には3次元ベクトルに相当する。レンズ出射方向βについても光源出射方向αと同様にレンズ102の表面OLから出射された光の3次元的な出射方向をレンズ出射方向βとして表す。そして、配光制御データβ(α)は、設計者が所望の配光制御を行うために、光源出射方向αとレンズ出射方向βを対応付けるデータであり、上記実施の形態のように2次元に限定した場合の制御曲線β(α)に相当する。このとき配光制御データβ(α)は、光源出射方向αの光線とレンズ出射方向βの光線とが同一面内となる関係で対応付けるものではなく、3次元的に全く異なる方向のαとβとを対応付けることも可能である。
次に、算出面の個数Nmaxと第N算出面BLN(N=1、2、…、Nmax)に入射する光源出射方向αに関する範囲を設定する(ステップS14に相当)。そして、レンズ出射方向βに対応する仮想焦点S(β)の位置を求める(ステップS16に相当)。即ち、表面OLを大気とレンズ102の媒質との境界とし、大気中で所定方向γと反対方向に進行する平行光が大気中から表面OLを介してレンズ102の媒質内に入射した後、レンズ102内を永続的に進行すると仮定した場合にその平行光が収束する焦点位置を示す仮想焦点S(γ)を算出する。このとき、表面OLからレンズ出射方向βに光を出射するためのレンズ102内での光の軌跡は方向γをレンズ出射方向βとしたときの仮想焦点S(β)によって決まるため、レンズ出射方向βに対応する仮想焦点をS(β)としている。
続いて、ステップS18〜ステップS22に相当する処理により、各算出面の形状を順次算出する。ステップS20における第N算出面BLNにおいて、光源100から所定の光源出射方向αに出射された光が第N算出面BLNに入射する入射点BLN(α)と、その光源出射方向αに対して配光制御データβ(α)で対応付けられたレンズ出射方向βに対する仮想焦点S(β)とを結ぶ直線M0を求める(ステップS34に相当)。そして、入射点BLN(α)に入射した光をその直線M0の方向に屈折させる屈折面、又は、反射させる反射面の面方向(入射点BLN(α)における接平面P(α))を求める(ステップS36に相当)。
そして、光源出射方向αを少しずつ異なる方向に変更しながら、上記のようにしてその方向の光が第N算出面BLNに入射する入射点における面方向を算出する。このとき、各光源出射方向の光が第N算出面BLNに入射する入射点は、各光源出射方向の光が通過する位置の近傍において既に算出されている入射点の接平面と交差する位置として設定する。即ち、光源出射方向が最も近い光の入射点の接平面と交わる位置に設定する(ステップS38に相当)。また、少なくとも入射点の1つは初期入射点として設計者が指定する(ステップS30に相当)。
以上のようにして第N算出面BLNの各点(入射点)の位置と、各点における面方向(接平面)を算出すると、それらの各点を通る面であって、各点において算出した面方向となる面を求めて第N算出面BLNの形状を算出する(ステップS44に相当)。
尚、各算出面に光源100からの光が入射する入射点の位置を、一点のみでなく複数の入射点の位置を設計者が指定するようにしてもよい。また、各算出面の基調とする面形状を設計者が事前に指定しておき、光源出射角度αの光線がその基調とする面と交差する点を入射点として設定するようにしてもよい。このとき、各入射点に対して求められた面方向の面を各入射点の近傍での局所面とし、各入射点での局所面を連結して算出面全体の面を形成するようにしてもよいし、上記のように各入射点の面方向が算出した面形状となるような曲面を形成するようにしてもよい。
以上、上記のように形成されたレンズ102と光源100とからなる光学部を有する照明装置は、任意の用途に使用することができるもので、図1等に示したガソリンスタンドのキャノピー灯に限らない。また、図4〜図11に示したような構成のLED照明装置1の光学部として適用されるものではなく、半導体発光素子である光源と、光源からの光は配光制御する照明用レンズとを備えた照明装置の照明用レンズとして上記のように形成されたレンズ102を適用することができる。