JP2011028865A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜電極接合体への燃料供給量のばらつきを低減することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【解決手段】アノード13と、カソード16と、アノード13とカソード16との間に配置された電解質膜17と、を有する膜電極接合体2と、燃料が注入される燃料注入口32と、断面積が一定である主流路34を介して燃料注入口32と接続された燃料分配部35と、アノード13側の面に開口した複数の燃料排出口33と、燃料分配部35と燃料排出口33の各々とを接続する複数の流路36と、を有する燃料分配板31Aと、を備え、流路36の各々は、燃料分配部35と燃料排出口33との間に、燃料分配部35と接続されるとともに一定の第1断面積S1を有する第1流路部36Aと、燃料排出口33と接続されるとともに第1断面積S1より小さい一定の第2断面積S2を有する第2流路部36Bと、を有し、燃料分配部35と燃料排出口33との間の流路長が一定である。
【選択図】図3

Description

この発明は、燃料電池を用いた燃料電池の技術に関する。
近年、小型の燃料電池が注目を集めている。特に、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は、小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、有望視されている。
DMFCは、アノードとカソードとの間に電解質膜を挟持させた構造の膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と、膜電極接合体にメタノールを供給する燃料供給機構と、を備えている。このようなDMFCのアノードでは、導入されたメタノールが酸化分解され、プロトン、電子および二酸化炭素が生成される。一方、カソードでは、空気中の酸素とアノード側から移動してきたプロトンとアノードから外部回路を通じて供給される電子とが反応して水が生成される。また、外部回路を通る電子によって電力が供給される。
このようなDMFCにおいて、燃料分配機構が燃料収容部から供給通路を介して液体燃料が流入する燃料注入口と、燃料注入口から一様に連続する所定の流路断面を有する主流路と、燃料極と対向するように開口する複数の排出口と、主流路から燃料排出口までの間において上流側から下流側に移行するに従って流路断面形状および分岐構造がそれぞれ調整された分岐通路とを有する構成が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、燃料供給板として、燃料タンクから液体燃料が供給される入口および複数の発電部に各々対応する複数の出口との間に複数の流路を有し、複数の流路が少なくとも一本に曲線を含むとともに全て等距離である構成が開示されている(例えば、特許文献2)。
さらに、電池本体の燃料極に積層された燃料供給ユニットが燃料供給室および燃料供給口を有しており、複数の燃料供給口がそれらから燃料供給室へ供給される液体燃料が燃料供給室から燃料極の全体にわたり均一上に供給されるように供給口分布およびそれぞれの供給口サイズが定められた構成が開示されている(例えば、特許文献3)。
さらに、第1流路と第2流路とが壁によって分離されており、第1流路が燃料極の拡散層に対向して配置されると共に、液体燃料が流れる方向に向かって先細り形状を呈し、合流先および分流先が無い分岐流路を有する流路板の構成が開示されている(例えば、特許文献4)
燃料注入口から燃料排出口までの間の流路が分岐する構成において、例えば液体燃料をポンプで送液する場合において、流路が分岐する部分で圧力が損失してしまい、燃料排出口まで十分な液体燃料を導くことができないことがある。さらに、燃料注入口から燃料排出口までの間の流路が分岐する構成において、1箇所の流路が詰まると、その先の流路に液体燃料が導かれず、複数の燃料排出口に液体燃料を導くことができないことがある。
特開2009−76272号公報 特開2008−226583号公報 特開2006−4793号公報 特開2008−226527号公報
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、膜電極接合体への燃料供給量のばらつきを低減することが可能な燃料電池を提供することにある。
この発明の態様による燃料電池は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質膜と、を有する膜電極接合体と、燃料が注入される燃料注入口と、断面積が一定である主流路を介して前記燃料注入口と接続された燃料分配部と、前記アノード側の面に開口した複数の燃料排出口と、前記燃料分配部と前記燃料排出口の各々とを接続する複数の流路と、を有する燃料分配板と、を備え、前記流路の各々は、前記燃料分配部と前記燃料排出口との間に、前記燃料分配部と接続されるとともに一定の第1断面積を有する第1流路部と、前記燃料排出口と接続されるとともに第1断面積より小さい一定の第2断面積を有する第2流路部と、を有し、前記燃料分配部と前記燃料排出口との間の流路長が一定であることを特徴とする。
この発明によれば、膜電極接合体への燃料供給量のばらつきを低減することが可能な燃料電池を提供することができる。
図1は、この発明の一実施の形態に係る燃料電池の構造を概略的に示す断面図である。 図2は、図1に示した燃料電池における膜電極接合体の一部を概略的に示す斜視図である。 図3は、本実施の形態に係る燃料電池の燃料分配板の構造の一部を概略的に示す平面図である。 図4は、図3に示した燃料分配部および流路の構造の一部を概略的に示す平面図である。 図5は、図3に示した燃料分配板の流路の構造の一部を概略的に示す平面図である。 図6は、本実施の形態に係る燃料電池の燃料分配板の他の構造を概略的に示す平面図である。 図7は、本実施の形態に係る燃料分配板を備えた燃料電池による効果の検証するためのサンプル1乃至サンプル4の条件を示す。 図8は、本実施の形態に係る燃料分配板を備えたことによる効果の検証結果を示す。 図9は、サンプル3に係る燃料分配板を備えた燃料電池の詰まり燃料排出口数と流量変動率との関係を示す。 図10は、比較例に係る燃料分配板を備えた燃料電池の詰まり燃料排出口数と燃料変動率との関係を示す。
以下、この発明の一実施の形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。図1に示すように、燃料電池1は、起電部を構成する膜電極接合体(MEA)2と、膜電極接合体2に燃料を供給する燃料供給機構3と、から主として構成されている。
すなわち、燃料電池1において、膜電極接合体2は、アノード触媒層11およびアノード触媒層11の上に配置されたアノードガス拡散層12を有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14およびカソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15を有するカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17とを備えて構成されている。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11には、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14には、PtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒は、これらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。また、触媒は、炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜17は、これらに限られるものではない。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電機能を有するものである。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤(空気あるいは酸素)を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電機能を有するものである。アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は、例えばカーボンペーパーなどの導電性を有する多孔質基材によって構成されている。
上述した膜電極接合体2は、集電体18によって挟持されている。この集電体18は、膜電極接合体2に備えられたアノード13と同数のアノード集電体、および、膜電極接合体2に備えられたカソード16と同数のカソード集電体を有している。アノード集電体は、アノード13のアノードガス拡散層12に積層されている。また、カソード集電体は、カソード16のカソードガス拡散層15に積層されている。
アノード集電体およびカソード集電体としては、例えば金(Au)、ニッケル(Ni)などの金属材料からなる多孔膜(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などをそれぞれ使用することができる。
膜電極接合体2は、電解質膜17のアノード13側およびカソード16側にそれぞれ配置されたゴム製のOリング等のシール部材19によってシールされており、これにより、膜電極接合体2からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。
膜電極接合体2のカソード16側には、絶縁材料によって形成された板状体20が配置されている。この板状体20は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体20は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カソード触媒層14への空気の取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。この板状体20は、例えば多孔質構造の部材で構成され、具体的な構成材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質体などが挙げられる。
上述した膜電極接合体2は、燃料供給機構3とカバープレート21との間に配置されている。カバープレート21は、外観が略矩形状のものであり、例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている。また、カバープレート21は、酸化剤である空気を取入れるための複数の開口部(空気導入孔)21Aを有している。
燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード13に対して燃料を供給するように構成されているが、特に、特定の構成に限定されるものではない。以下に、燃料供給機構3の一例について説明する。
燃料供給機構3は、例えば、箱状に形成された容器30を備えている。この燃料供給機構3は、液体燃料を収容する燃料収容部4と燃料供給路5を介して接続されている。燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード13の面方向に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料供給部31を備えている。燃料供給部31は、燃料分配板31Aを備えている。
燃料分配板31Aは、1つの燃料注入口32と、燃料注入口32と接続された主流路34と、アノード13の面方向に開口した複数の燃料排出口33と、を有している。燃料分配板31Aは、流路を介して燃料注入口32と燃料排出口33とを接続した構成である。燃料注入口32は、容器30の燃料導入口30Aと連通している。燃料排出口33は、例えば、128箇所にあり、燃料分配板31Aの面内に均一に形成されている。
膜電極接合体2は、そのアノード13が上述したような燃料分配板31Aの燃料排出口33に対向するように配置されている。カバープレート21は、燃料供給機構3との間に膜電極接合体2を保持した状態で容器30に対してカシメあるいはネジ止めなどの手法により固定されている。これにより、燃料電池(DMFC)1の発電ユニットが構成されている。
燃料供給部31は、燃料分配板31Aと膜電極接合体2との間に燃料拡散室31Bとして機能する空間を形成するような構成であることが望ましい。この燃料拡散室31Bは、燃料排出口33から液体燃料が排出されたとしても気化を促進するとともに、面方向への拡散を促進する機能を有している。
膜電極接合体2と燃料供給部31との間には、膜電極接合体2をアノード13側から支持する支持部材を配置しても良い。
また、膜電極接合体2と燃料供給部31との間には、少なくとも1つの多孔体を配置しても良い。
燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料は、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料が収容される。
さらに、燃料供給路5には、ポンプ6が介在していても良い。ポンプ6は、燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給部31に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。燃料供給部31から膜電極接合体2に供給された燃料は、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。
この実施の形態の燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ6を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。図1に示す燃料電池1は、例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
この実施の形態の燃料電池1においては、ポンプ6を用いて燃料収容部4から燃料供給部31に液体燃料が間欠的に送液される。ポンプ6で送液された液体燃料は、燃料供給部31を経て膜電極接合体2のアノード13の全面に対して均一に供給される。
すなわち、複数の単セルCの各アノード13の平面方向に対して均一に燃料が供給され、これにより発電反応が生起される。燃料供給用(送液用)のポンプ6の運転動作は、燃料電池1の出力、温度情報、電力供給先である電子機器の運転情報等に基づいて制御することが好ましい。
上述したように、燃料供給部31から放出された燃料は、膜電極接合体2のアノード13に供給される。膜電極接合体2内において、燃料は、アノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は、集電体18を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体18を経由してカソード16に導かれる。(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には、酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせるとともに、膜電極接合体2の電極全体に均一に燃料を供給し、電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。
この実施の形態においては、図2に示すように、膜電極接合体2は、単一の電解質膜17の一方の面において間隔をおいて配置された複数のアノード13と、電解質膜17の他方の面においてアノード13のそれぞれと対向するように間隔をおいて配置された複数のカソード16と、を備えている。ここでは、アノード13およびカソード16がそれぞれ4個である場合を示している。
これらのアノード13とカソード16との各組み合わせは、それぞれ電解質膜17を挟持し、単セルCをなしている。ここでは、単セルCのそれぞれは、同一平面上において、その長手方向と直交する方向に間隔をおいて並んで配置されている。なお、膜電極接合体2の構造は、この例に限らず他の構造であっても良い。
図2に示したような複数の単セルCを有する膜電極接合体2においては、各単セルCは、図示しない集電体によって電気的に直列に接続されている。
ところで、図3に示すように、燃料分配板31Aは、燃料分配部35を有する。燃料分配部35は、主流路34を介して燃料注入口32と接続されている。燃料分配部35から延出した流路36を介して燃料分配部35と燃料排出口33とが接続されている。流路36の本数は、燃料排出口33の個数と同数である。各流路36の燃料分配部35と燃料排出口33との間の流路長は略同一である。
流路36は、燃料分配部35から放射状に延出し、それぞれ独立している。つまり、流路36は、燃料分配部35と燃料排出口33との間で分岐することなく、単一の燃料分配部35と燃料排出口33の各々とに接続されている。各流路36は、曲線状または線状に形成されている。図3に示した例では、単一の燃料分配部35に対して16個の燃料排出口33が形成され、各燃料排出口33に対応して1本ずつ流路36が形成されており、合計16本の流路36が形成されている。
燃料注入口32から燃料排出口33までの間の分岐点は、燃料分配部35の1箇所のみである。つまり、燃料注入口32から注入された液体燃料は、主流路34に供給された後に燃料分配部35で複数の流路36に分配され、その後は分配されることなく各燃料排出口33まで供給される。
流路36は、燃料分配部35の周囲35Eに等間隔に接続されている。図4に示した例では、燃料分配部35は、円形状である。この燃料分配部35の構成は、例えば、中央に円柱があるサークル状であってもよい。流路36は、燃料分配部35の周囲35Eである円周上に等間隔に接続されている。各隣接した流路36のなす角θが等しい。ここで、角θとは、隣接した流路36の燃料分配部35の中心Oに向かって延出した流路36の延長線のなす角である。ここでは、燃料分配部35が円形状の例を説明したが、この例に限らず、燃料分配部35は、例えば多角形状であってもよい。
図5に示すように、流路36の各々は、燃料分配部35と接続された第1流路部36Aと、燃料排出口33と接続された第2流路部36Bと、を有する。図5に示した例では、第1流路部36Aと第2流路部36Bとが直接繋がっている。
第1流路部36Aは、一定の第1断面積S1を有している。第2流路部36Bは、一定の第2断面積S2を有している。第1断面積S1は、第2断面積S2より大きい(S1>S2)。第1流路部36Aの第1断面積S1と第2流路部36Bの第2断面積S2との比(S1/S2)は、2〜4であることが望ましい。
なお、第2流路部36Bは、燃料排出口33に向かってL字形に屈曲しているが、燃料排出口33の近傍においても一定の第2断面積S2を有している。また、図5に示した例では、各流路36が第1流路部36A及び第2流路部36Bによって構成された場合について説明したが、第1流路部36Aと第2流路部36Bとの間に、第2断面積S2より大きく第1断面積S1より小さい一定の断面積を有する流路部が介在していても良い。
主流路34の断面積S3は、第1流路部36Aの第1断面積S1より大きい(S1<S3)。また、燃料分配部35の断面積S4は、第1流路部36Aの第1断面積S1より大きい(S1<S4)。
また、第1流路部36Aの燃料分配部35と第2流路部36Bとの間の第1流路長L1は、第2流路部36Bの第1流路部36Aと燃料排出口33との間の第2流路長L2と同じ若しくは第2流路長L2より長い(L1≧L2)。第1流路部36Aの第1流路長L1と第2流路部36Bの第2流路長L2との比(L1/L2)は、1〜11であることが望ましい。
各流路36の燃料分配部35と燃料排出口33との間の流路長Lは、一定である。つまり、各流路36について、第1流路部36Aの第1流路長L1および第2流路部36Bの第2流路長L2の総和(L1+L2)は、一定である。つまり、各流路36は、燃料分配部35と燃料排出口33とを結ぶ直線距離に関係なく、流路長Lが一定となるように形成されている。なお、各流路36の第1流路長L1も一定であり、各流路36の第2流路長L2も一定である。
断面積sが一定である流路長lの流路において、断面積sと流路長lとの関係は、次のとおりである。
s=(32μQ/ΔP)×l
ここで、μが流体粘度であり、Qが流量であり、ΔPが流路において、液体燃料が注入された部分での圧力と、液体燃料が排出された部分での圧力との差である。
このような燃料分配板31Aを有する燃料電池1において、燃料注入口32から注入された液体燃料は、主流路34を介して燃料分配部35に導かれる。そして、燃料分配部35から各流路36を介して燃料排出口33にそれぞれ導かれる。
本実施の形態において、流路36が燃料分配部35から放射状に延出し、流路36が分岐していないため、例えば液体燃料をポンプ6で送液する場合において、圧力の損失を低減することが可能であり、燃料排出口33まで十分な液体燃料を導くことが可能である。つまり、ポンプ6の圧力を小さくしても燃料排出口33まで燃料を導くことが可能となり、ポンプ6を小型化することが可能となる。
また、流路36が燃料分配部35から放射状に延出し、それぞれ独立しているため、一つの流路36が詰まってしまっても、その先の燃料排出口33は、一つであるため、他の燃料排出口33に与える影響は非常に小さくなる。これにより、膜電極接合体2への燃料供給量のばらつきを低減することが可能となる。
また、本実施の形態において、燃料分配部35と接続された第1流路部36Aの第1断面積S1が大きいため、例えば液体燃料をポンプ6で送液する場合において、圧力の損失を低減することが可能であり、燃料排出口33まで十分な液体燃料を導くことが可能である。また、燃料排出口33と接続された第2流路部36Bの第2断面積S2が第1流路部36Aの第1断面積S1より小さいため、ポンプ6によって過度な液体燃料が送液された場合においても、燃料排出口33の付近の抵抗によって、過度の液体燃料が燃料排出口33に導かれることを防止することができる。
さらに、本実施の形態において、流路36の流路長Lの長さが一定であるため、複数の燃料排出口33にほぼ同じタイミングで液体燃料が導かれ、膜電極接合体2にほぼ同じタイミングで液体燃料を供給することが可能となる。
また、本実施の形態において、第1流路部の第1流路長L1が第2流路部36Bの第2流路部L2より長いため、圧力損失低下の維持および急激な燃料流入防止という効果を得ることが可能となる。
よって、各燃料排出口33における液体燃料の供給量のばらつきを低減することが可能となる。したがって、膜電極接合体2の面内における発電反応の均一性をより高めることが可能となる。
なお、液体燃料が主流路34内および流路36内でレイノルズ数Reが2000以下の層流状態で流れるように、主流路34および流路36が形成されることが望ましい。レイノルズ数Re=(u×D)/(μ/ρ)と表すことができる。ここで、uが流速であり、Dが直径であり、ρが流体密度であり、μが流体粘度である。
ここでは、燃料分配部35が1つである例を説明したが、この例に限らず、燃料分配部35は、2つ以上あってもよい。図6に示した例において、燃料分配板31Aが2つの燃料分配部35を有している。この場合において、燃料注入口32と一方の燃料分配部35とが1つの主流路34によって接続され、また、主流路34がさらに延びて一方の燃料分配部35と他方の燃料分配部35とが接続されている。なお、燃料排出口33と一方の燃料分配部35との間の主流路34が途中で分岐して他方の燃料分配部35と接続されても良いし、燃料排出口32と一方の燃料分配部35及び他方の燃料分配部35のそれぞれとを独立して接続した2本の主流路34を設けても良い。このような構成においても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
また、ここでは、全ての流路36が燃料分配部35から放射状に延出し、全ての流路36が独立している例を説明したが、少なくとも流路の90%以上が燃料分配部35から放射状に延出し、独立していれば、本実施の形態と同様の効果が得られる。
次に、本実施の形態に係る燃料分配板31Aを備えた燃料電池1の効果を検証した。
比較例において、燃料分配板31Aは、1つの燃料分配部35を有し、128個の燃料排出口33を有する。流路36は、燃料注入口から燃料排出口まで6回分岐し、それぞれ燃料排出口33に接続されている。
サンプル1乃至サンプル4において、燃料分配板31Aは、1つの燃料分配部35を有し、128個の燃料排出口33を有する。各流路36は、燃料分配部35から放射状に延出し、分岐せずに、それぞれ燃料排出口33に接続されている。つまり、燃料分配部と排出口との間で分岐は1回である。
図7に示すように、サンプル1において、各流路36の第1流路部36Aは、縦aの長さが50μm、横bの長さが100μm、第1断面積S1が5000μmである。また、第2流路部36Bは、縦aの長さが50μm、横bの長さが50μm、第2断面積S2が2500μmである。また、第1流路部36Aは、第1流路長L1が51.45mmである。また、第2流路部36Bは、第2流路長L2が5mmである。
サンプル2において、各流路36の第1流路部36Aは、縦aの長さが100μm、横bの長さが100μm、第1断面積S1が10000μmである。また、第2流路部36Bは、縦aの長さが100μm、横bの長さが50μm、第2断面積S2が5000μmである。また、第1流路部36Aは、第1流路長L1が51.45mmである。また、第2流路部36Bは、第2流路長L2が5mmである。
サンプル3において、各流路36の第1流路部36Aは、縦aの長さが75μm、横bの長さが100μm、第1断面積S2が7500μmである。また、第2流路部36Bは、縦aの長さが75μm、横bの長さが50μm、第2断面積S2が3750μmである。また、第1流路部36Aは、第1流路長L1が51.45mmである。また、第2流路部36Bは、第2流路長L2が5mmである。
サンプル4において、各流路36の第1流路部36Aは、縦aの長さが100μm、横bの長さが200μm、第1断面積S1が20000μmである。また、第2流路部36Bは、縦aの長さが100μm、横bの長さが50μm、第2断面積S2が5000μmである。また、第1流路部36Aは、第1流路長L1が51.45mmである。また、第2流路部36Bは、第2流路長L2が5mmである。
比較例およびサンプル1乃至サンプル4の燃料分配板31Aを備えた燃料電池において、燃料の流量Qinは250μl/min、出力圧力Poutは相対圧力を0に固定し、管長Wは全長88.4mmと設定してモデル化し、流体シミュレーションにより、圧力を算出した。ここで、管長Wとは、主流路34の燃料注入口32と燃料分配部35との間の流路長Mと流路36の流路長Lの総和(M+L)の長さである。その結果を図8に示す。図8において、縦軸は圧力損失(△P)、横軸は管長Wに対する圧力損失を算出した流路の位置(mm)を示している。ここで、圧力損失ΔPとは、管長Wの0mmにおける圧力と、管長Wmmにおける圧力との差である。
図8に示すように、サンプル1乃至サンプル4の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPは、比較例の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPと比較して小さいことが分かる。つまり、流路36が燃料分配部35から放射状に延出することにより、圧力損失ΔPが小さくなることが分かる。
サンプル2およびサンプル3の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPは、サンプル1の燃料分配板31Aの圧力損失と比較して小さいことが分かる。これにより、第1流路部36Aおよび第2流路部36Bの縦aの長さを大きくすることによって圧力損失ΔPがさらに小さくなることが分かる。つまり、第1流路部36Aの第1断面積S1および第2流路部36Bの第2断面積S2を大きくすることによって圧力損失ΔPがさらに小さくなることが分かる。
サンプル4の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPは、サンプル1乃至サンプル3の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPと比較して、小さいことが分かる。これにより、第1流路部36Aの第1断面積S1を第2流路部36Bの第2断面積S2より大きくすることによって圧力損失ΔPがさらに小さくなることが分かる。
また、第1流路部36Aの第1断面積S1と第2流路部36Bの第2断面積S2との比(S1/S2)が2〜4であるとき、比較例の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPと比較して小さくなることが確認された。
さらに、第1流路部36Aの第1流路長L1と第2流路部36Bの第2流路長L2との比が1〜11であるとき、比較例の燃料分配板31Aの圧力損失ΔPと比較して小さくなることが確認された。
次に、燃料排出口33の詰まり数に対する燃料供給量の変動率を測定した。ここで、燃料供給量とは、燃料排出口33が詰まっていないときの膜電極接合体2への燃料供給量の総量に対して、燃料排出口33が詰まったときの膜電極接合体2への燃料供給量の総量の減少量である。サンプル3の燃料分配板31Aにおける測定結果を図9に示す。また、比較例の燃料分配板31Aにおける測定結果を図10に示す。
図9および図10に示すように、比較例の燃料分配板31Aと比較して、サンプル3の燃料分配板31Aの燃料供給量の変動率のばらつきが小さいことが分かる。これにより、流路36が燃料分配部35から放射状に延出することによって、液体燃料の燃料供給量の変動率が小さくなることが分かる。つまり、燃料分配部35と燃料排出口33とが直接接続され、分岐しているため、燃料分配板31Aにおいて、どこの燃料排出口33がつまっても液体燃料の燃料供給量の変動率が変化しなく、燃料供給量の変動率のばらつきを小さく抑えることができる。
上述した本実施形態の燃料電池1は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料供給部31は、特に燃料濃度が濃い場合に有効である。このため、各実施形態の燃料電池1は、濃度が80wt%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。したがって、各実施形態は、メタノール濃度が80wt%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池1に好適である。
さらに、上述した各実施形態は、本発明をセミパッシブ型の燃料電池1に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、内部気化型の純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したりする等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
13…アノード 16…カソード 17…電解質膜 2…膜電極接合体 32…燃料注入口 34…主流路 35…燃料分配部 33…燃料排出口 36…流路 36A…第1流路部 S1…第1断面積 36B…第2流路部 S2…第2断面積 L…流路長

Claims (8)

  1. アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質膜と、を有する膜電極接合体と、
    燃料が注入される燃料注入口と、断面積が一定である主流路を介して前記燃料注入口と接続された燃料分配部と、前記アノード側の面に開口した複数の燃料排出口と、前記燃料分配部と前記燃料排出口の各々とを接続する複数の流路と、を有する燃料分配板と、を備え、
    前記流路の各々は、前記燃料分配部と前記燃料排出口との間に、前記燃料分配部と接続されるとともに一定の第1断面積を有する第1流路部と、前記燃料排出口と接続されるとともに第1断面積より小さい一定の第2断面積を有する第2流路部と、を有し、前記燃料分配部と前記燃料排出口との間の流路長が一定であることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記第1流路部の第1流路長は、前記第2流路部の第2流路長と同じ若しくは第2流路長より長いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記第1流路部の第1断面積S1と前記第2流路部の第2断面積S2との比(S1/S2)は、2〜4であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  4. 前記第1流路部の第1流路長L1と前記第2流路部の第2流路長L2との比(L1/L2)は、1〜11であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
  5. 前記流路は、前記燃料分配部の周囲に等間隔に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  6. 前記燃料分配板が有する前記燃料分配部は、1つであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  7. 前記燃料注入口から前記燃料排出口までの間の分岐点が1箇所であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
  8. 前記燃料分配部は、2つ以上あることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
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