JP2011028067A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 液晶表示装置における液晶表示パネルの駆動電圧を低くする。
【解決手段】 第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板に挟持された液晶層と、前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された画素電極および共通電極とを有し、前記画素電極および前記共通電極のいずれかが櫛歯状の液晶表示装置であって、前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上である液晶表示装置。
【選択図】 図10

Description

本発明は、液晶表示装置に関するものである。
液晶表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)やPDP(Plasma Display Panel)などに代表される自発光型の表示装置と異なり、光源からの光の透過光量または外光の反射光量あるいはその両方を調節することで映像や画像を表示する非発光型の表示装置である。
また、液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力といった特長を有し、近年、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ用の液晶ディスプレイ、携帯電話端末などの携帯型電子機器の液晶ディスプレイなどに広く用いられている。
液晶表示装置は、液晶表示パネルと、当該液晶表示パネルを駆動させる駆動回路とを有する。液晶表示パネルは、一対の基板の間に液晶材料が封入された表示パネルであり、多数の画素の集合で構成される表示領域を有する。このとき、それぞれの画素は、画素電極、共通電極、および液晶層を有し、画素電極と共通電極との電位差によって液晶層(液晶分子)の配向を変化させることで、透過光量または反射光量あるいはその両方が変化する。またこのとき、画素電極と共通電極との配置方法は、画素電極と共通電極とを異なる基板に配置する方法と、同じ基板に配置する方法とに大別される。
画素電極と共通電極とを同じ基板に配置した液晶表示パネルは、一般に、IPS(In-Plane Switching)方式と呼ばれており、液晶分子を面内方向で回転させることで、実効的な光軸を面内で回転させ、透過光量または反射光量あるいはその両方を調節する。このIPS方式を適用した液晶表示パネルを有する液晶表示装置は、液晶層の配向方向が水平に近いので、視野角変化による液晶層のリタデーション変化が小さい。そのため、IPS方式の液晶表示装置は、広視野角を達成できることが知られている。
IPS方式の液晶表示パネルにおける画素電極と共通電極との配置方法は、絶縁層の同一面に対向させて配置する方法と、絶縁層を介して積層させて配置する方法とに大別される。画素電極と共通電極とを絶縁層の同一面に配置する方法では、画素電極および共通電極の平面形状を櫛歯状にし、たとえば、画素電極の歯の部分と共通電極の歯の部分とが交互に並ぶように配置する。また、画素電極と共通電極とを積層させて配置する方法では、たとえば、液晶層に近いほうの電極の平面形状を櫛歯状にし、他方の電極の平面形状を平板状にする。
IPS方式の液晶表示パネルにおける画素の具体的な構成については、種々の構成が知られている。また、IPS方式の液晶表示装置の駆動方法についても、種々の方法が知られている。そのため、本明細書では、従来のIPS方式の液晶表示装置の具体的な構成や駆動方法に関する先行技術文献の例示は省略する。また、本明細書の以下の説明で参照する先行技術文献は、下記の通りである。
特開平11-183931号公報
チャンドラセカール著、「液晶の物理学」、吉岡書店、1995年9月25日、p.235 T. Takahashi, et.al. Jpn. J. Appl. Phys. Vol.37, 1998, p.1865.
本発明の目的は、液晶表示パネルの駆動電圧を低くすることが可能な液晶表示装置を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
(1)第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板に挟持された液晶層と、前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された画素電極および共通電極とを有し、前記画素電極および前記共通電極のいずれかが櫛歯状の液晶表示装置であって、前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上である液晶表示装置。
(2)第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板に挟持された液晶層と、前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された画素電極および共通電極とを有し、前記画素電極および前記共通電極の両方が櫛歯状の液晶表示装置であって、前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上である液晶表示装置。
本発明の液晶表示装置によれば、輝度の低下を抑えつつ駆動電圧を低くすることができる。
本発明に関わる液晶表示パネルにおける画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。 図1のA−A’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。 図1のB−B’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。 画素電極の平面形状に関する第1の変形例を示す模式平面図である。 画素電極の平面形状に関する第2の変形例を示す模式平面図である。 液晶層の配向とフレクソ分極との関係の一例を示す模式図である。 液晶表示パネルに生じる電界とフレクソ分極との関係の一例を示す模式断面図である。 フレクソ分極と液晶分子の配向との関係の一例を示す模式平面図である。 フレクソ分極を考慮した場合の液晶層の配向の計算に使用したモデルを示す模式断面図である。 駆動電圧と透過率との関係のフレクソ係数依存性を示す模式図である。 実施例1の液晶表示装置における透過率の時間変化の一例を示す模式図である。 フレクソ係数とフリッカ強度との関係の一例を示す模式図である。 画素電極の歯の幅Lおよび間隙の寸法Sとフリッカ強度との関係の一例を示す模式図である。 液晶層のフレクソ係数と透過率の面内分布との関係の一例を示す模式図である。 櫛歯ピッチと最適なL/(L+S)との関係の一例を示す模式図である。 実施例1の液晶表示パネルを駆動させたときの透過率の時間変化の一例を示す模式図である。 交流電圧の周波数とフリッカ強度との関係のフレクソ係数依存性を示す模式図である。
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1乃至図5は、本発明に関わる液晶表示パネルの概略構成の一例を説明するための模式図である。
図1は、本発明に関わる液晶表示パネルにおける画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。図2は、図1のA−A’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。図3は、図1のB−B’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。図4は、画素電極の平面形状に関する第1の変形例を示す模式平面図である。図5は、画素電極の平面形状に関する第2の変形例を示す模式平面図である。
実施例1では、本発明に関わる液晶表示装置の一例として、IPS-Pro(IPS-Provectus)方式の液晶表示装置を挙げる。また、実施例1では、液晶表示装置の一例として、液晶表示パネルおよび駆動回路に加え、バックライトユニット(照明装置)を有する透過型の液晶表示装置を挙げる。なお、このような液晶表示装置の構成については、種々の構成が提案されている。そのため、実施例1では、このような液晶表示装置の全体の構成についての説明は省略し、本発明と関係がある液晶表示パネルの構成のみについて説明する。
液晶表示パネルは、第1の基板および第2の基板の一対の基板と、第1の基板と第2の基板に挟持された液晶層とを有する。また、液晶表示パネルは、多数の画素からなる表示領域を有する。このとき、それぞれの画素は、たとえば、TFT素子、画素電極、共通電極、および液晶層を有する。IPS-Pro方式の液晶表示パネルの場合、それぞれの画素は、たとえば、図1乃至図3に示すような構成になっている。
第1の基板1および第2の基板2は、それぞれ、たとえば、透明性と平坦性に優れ、かつ、イオン性不純物の含有が少ないホウケイサンガラスでなる。
このとき、第1の基板1は、液晶層3(第2の基板2)と対向する面に、ブラックマトリクス4、カラーフィルタ5、平坦化膜6、および第1の配向膜7などが形成されている。また、第1の基板1は、液晶層3と対向する面とは反対側の面に、たとえば、帯電防止用の裏面電極8が形成されており、当該裏面電極8の上に、第1の偏光板9が貼り付けられている。なお、本発明に関わる液晶表示パネルは、裏面電極8を設けていなくてもよい。
一方、第2の基板2は、液晶層3(第1の基板1)と対向する面に、走査信号線10、第1の絶縁膜11、映像信号線12、TFT素子13の半導体層、TFT素子13のソース電極13s、第2の絶縁層14、共通電極15、第3の絶縁層16、画素電極17、および第2の配向膜18などが形成されている。また、第2の基板2は、液晶層3と対向する面とは反対側の面に、第2の偏光板19が貼り付けられている。
またこのとき、共通電極15および画素電極17のうちの、液晶層3から近い位置にある画素電極17は、平面形状が櫛歯状になっており、コンタクトホールCHによりソース電極13sと接続している。なお、図1に示した平面構成の一例では、1つの画素電極17が、y方向に延びる細長い部分(以下、歯という)を6本有し、当該6本の歯がx方向に並んだ櫛歯形状になっている。また、液晶層3から遠い位置にある共通電極15は、複数の画素で共有される電極であり、平面形状が平板状または帯状になっている。
液晶層3は、たとえば、誘電率異方性が正の液晶材料でなり、画素電極17と共通電極15との電位差がゼロのときにホモジニアス配向になる。なお、実施例1では、誘電率異方性が正の液晶材料を用いたときの構成および作用効果のみを説明するが、誘電率異方性が負の液晶材料でも同様の効果が得られる。
また、画素電極17の歯の部分の長手方向が、図1に示したように映像信号線12の延びる方向(y方向)と概略平行の場合、基板平面で見た液晶分子3Mの配向方向は、たとえば、走査信号線10の延びる方向(x方向)となす角αが約82.5度になるようにする。また、液晶分子3Mは、たとえば、図3に示したように、基板平面に対して数度傾いた状態で配向させる。このとき、液晶分子3Mの配向方向は、第1の配向膜7および第2の配向膜18に施す配向処理(ラビング処理)によって制御する。
図1乃至図3に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルの製造方法は、同様の構成の画素を有する従来のIPS-Pro方式の液晶表示パネルの製造方法のいずれかであればよい。そのため、本明細書では、液晶表示パネルの形成方法に関する説明は省略する。
なお、図1乃至図3に示した画素の構成は、IPS-Pro方式の場合の構成の一例であり、たとえば、TFT素子13や画素電極17の平面形状などが適宜変更可能であることはもちろんである。このとき、画素電極17の平面形状は、図1に示したように複数の歯がx方向に並んでいる櫛歯形状に限らず、たとえば、図4または図5に示すように、複数の歯がy方向に並んでいる櫛歯形状であってもよい。
図4に示した画素電極17は、平板状の電極の内部に、概略くの字型のスリットを複数形成ことにより、複数の歯を設けている。このとき、1つの画素電極17は、x方向に対する歯(スリット)の延伸方向が反時計回りに角度βだけ傾いている第1の領域と、時計回りに角度βだけ傾いている第2の領域とを有し、当該2つの領域が、x方向に並んでいる。
一方、図5に示した画素電極17は、平板状の電極の内部に、第1の方向に延びる歯が複数設けられている第1の領域と、第2の方向に延びる歯が複数設けられている第2の領域とを有し、当該2つの領域が、y方向に並んでいる。
図4および図5に示したような平面形状の画素電極17を設ける場合、電界無印加時の液晶分子3Mの配向方向は、たとえば、走査信号線10の延びる方向(x方向)と概略平行になるようにする。こうすると、電界を印加したときに、第1の領域の液晶分子と第2の領域の液晶分子とは、互いに逆の方向に回転する。すなわち、一方の領域の液晶分子が時計回りに回転する場合、他方の領域の液晶分子は反時計回りに回転する。このとき、1つの画素には、ある視角方向から見たときに黄色い着色を示す領域と、水色の着色を示す領域とが生じるが、両者が重なって観察されるので、視角方向での着色が低減される。そのため、このような画素電極17を有する液晶表示装置は、視角方向において、より無着色の表示が得られ、かつ、より広い色再現範囲が確保される。
ところで、液晶表示パネルの駆動電圧は、主として、液晶層3の誘電率異方性、弾性定数、粘性係数、および界面でのアンカリングエネルギーによって決まり、特に重要なのが誘電率異方性の値である。液晶表示パネルの駆動電圧を低下させるためには、液晶層3の誘電率異方性を大きくする必要がある。しかしながら、液晶層3の誘電率異方性の大きさは、液晶層としての機能(振る舞い)を示す温度範囲や粘性係数、屈折率異方性などに影響を及ぼす。そのため、液晶層3の誘電率異方性を簡単に大きくすることができない。
本願発明者らは、上記のような点を鑑み、液晶表示パネルの駆動電圧を低下させる方法について検討している際に、IPS-Pro方式の液晶表示装置における電界印加時の液晶層3の配向がフレクソ分極の影響も受けていることを見いだした。また、本願発明者らは、検討を進めた結果、液晶層3のフレクソ分極を決定づけているフレクソ係数を最適化することで、従来よりも駆動電圧を低くできることを見出した。
図6乃至図8は、IPS-Pro方式の液晶表示装置で発生するフレクソ分極による液晶層の配向変化を説明するための模式図である。
図6は、液晶層の配向とフレクソ分極との関係の一例を示す模式図である。図7は、液晶表示パネルに生じる電界とフレクソ分極との関係の一例を示す模式断面図である。図8は、フレクソ分極と液晶分子の配向との関係の一例を示す模式平面図である。
液晶分子3Mは、構成原子の電気陰性度の違いにより、何らかの分極を有する。したがって、液晶層3のような液晶分子3Mの集合体においては、各液晶分子3Mの分極を相殺するように配向したほうがエネルギー的に安定する。また、ネマティック相では、配向方向に対する液晶分子3Mの前後の区別がないため、液晶層3の全体において分極が現れない。しかしながら、急激な配向変化が生じた場合には、各液晶分子3Mの分極が相殺されずに顕在化することがある。このような配向変化に起因する分極は、フレクソ分極と呼ばれており、その詳細については、たとえば、非特許文献1に記載されている。なお、非特許文献1では、配向変化に起因する分極(flexoelectricity)を撓電性と訳しているが、本明細書では今日においてより一般的なフレクソ分極という名称を用いる。
フレクソ分極が生じる例としては、液晶分子3Mの形状が楔形であり、楔形の先端を尾、その反対側を頭としたときに、分極方向が尾または頭の一方である場合が挙げられる。このような楔形の液晶分子3Mの集合体でなる液晶層3において、配向変形が生じていない場合は、たとえば、図6の(a)に示すように、分極方向が右方向の分子と、左方向の分子とが概ね同じ割合で存在している。そのため、個々の液晶分子3Mの分極は相殺され、巨視的な分極が現れない。
これに対して、配向変形が生じた場合には、個々の液晶分子3Mの形状の非対称性とその排除体積効果により、配向方向を向く頭と尾の割合が異なるようになる。すなわち、液晶層3に、たとえば、図6の(b)に示すような、右側から左側に向けて扇形に広がる急峻なスプレイ変形が生じた場合は、分極方向が右方向の分子の割合が、左方向の分子の割合よりも高くなる。その結果、個々の液晶分子3Mの分極が相殺されずに顕在化し、スプレイ変形が生じている部分には、巨視的な分極(フレクソ分極FP)が現れる。
IPS-Pro方式の液晶表示装置において、画素電極17と共通電極15との間に電位差が生じると、たとえば、図7に示すように、液晶層3を通るアーチ状の電気力線EFが生じる。このとき、液晶層3が正の誘電率異方性を有すると、電気力線EFが生じる部分の液晶分子の配向方向は、基板平面内で回転するとともに、電気力線EFの方向に近づくように変化しようとする。
またこのとき、液晶層3の、第2の配向膜18との界面では、第2の配向膜18の配向規制力により液晶分子の配向方向を配向処理方向に固定するような力が働く。
このように、液晶層3の、第2の配向膜18との界面およびその近傍(図7の領域BL1)では、相反する2つの効果が競合するため、第2の配向膜18の界面から電界の存在する部分に向けて急激な配向変化(スプレイ変形)が生じる。またこのとき、画素電極17の2本の隣接する歯の間には、図7に示したように、それぞれ逆向きのスプレイ変形が生じる。したがって、液晶層3には、図7に白抜きの矢印で示したような方向のフレクソ分極FPが生じる。
なお、図7から明らかなように、液晶層3では、厚さ方向の中央付近から第1の配向膜7との界面にかけての領域BL2にもスプレイ変形が生じる。しかし、この領域BL2のスプレイ変形は、領域BL1に比べて配向変形が比較的緩やかであり、なおかつ電界が集中している第2の基板2(第2の配向膜18)からより離れている。そのため、領域BL2のスプレイ変形は、領域BL1のスプレイ変形に比較して重要ではないので、以下の説明では、領域BL2のスプレイ変形を考慮しないことにする。
液晶層3にフレクソ分極FPが生じた場合は、フレクソ分極自体が電界(電気力線EF)に応答して配向変化を引き起こし、誘電率異方性による配向変形に重畳する。画素電極17の電位を共通電極15の電位よりも高くしたとき電界(電気力線EF)の方向とフレクソ分極FPの方向との関係は、たとえば、図8の(a)に示すような関係になる。なお、図8の(a)では、誘電率異方性による配向変形と、フレクソ分極FPによる配向変形とを分離することにより、後者の効果を明らかにすることを試みている。そのため、図8の(a)におけるフレクソ分極FPは、誘電率異方性による配向変形のみを考慮した配向状態におけるフレクソ分極としており、フレクソ分極自身の電界応答を考慮していない状態のものである。
電圧印加時における液晶層3の配向方向の変化は、フレクソ分極FPを考慮しない場合には、図8の(a)における時計回りの回転で表される。
これに対してフレクソ分極FPによる配向変化は、フレクソ分極が電界方向に対して平行となる状態に近づくような回転で表される。したがって、図8の(a)に示すように、時計回りの回転が生じる部分と、反時計回りの回転が生じる部分が交互に現れる。図8の(a)では、画素電極17の隣接する2本の歯の間隙部分(スリット上)において反時計回りの回転が生じている。この場合、画素電極17のスリット上にある液晶分子の配向は、電圧無印加時の状態に戻る方向の変化になり、透過率が変化する。このとき、画素電極17上では時計回りの回転が生じるために、同様に透過率が変化する。
また、画素電極17の電位を共通電極15の電位よりも低くしたときには、図8の(b)に示したように、画素電極17の歯の間隙部分(スリット上)で時計回りの回転が生じ、画素電極上で反時計回りの回転が生じる。この場合にもフレクソ分極FPの電界応答により、前述と同様にして透過率が変化する。
すなわち、画素の極性、すなわち画素電極17の電位と共通電極15の電位との高低の関係を、あらかじめ定められたフレーム期間毎に反転させながら液晶表示パネルを駆動させる場合、そのいずれのフレーム期間(極性)においても透過率の変動が観測されることになり、光利用効率はそれぞれのフレーム期間における透過率の和によって決定されることがわかった。
以上をまとめると、IPS-Pro方式の液晶表示パネルでは、電圧印加にともない急峻なスプレイ変形が発生するので、たとえば、分子形状が楔形でその頭または尾の方向に分極を示す液晶分子を液晶層3に含む場合などには、フレクソ分極FPが発生する。また、フレクソ分極FPが発生すると、フレクソ分極自体が電界に応答して、電圧無印加時の状態に半ば戻るような配向変化を引き起こし、その結果として透過率が印加される電圧の極性によって変化する。
そこで、本願発明者らは、上記のフレクソ分極FPによる透過率の変化がどの程度影響するかについて調べた。液晶層3の配向は、下記数式1で表されるフランクの弾性自由エネルギーから求めることができることがよく知られている。
Figure 2011028067
なお、数式1において、nは配向ベクトルであり、K11、K22、およびK33は、それぞれスプレイ変形、ツイスト変形、およびベンド変形に対応した弾性定数である。
液晶層3の配向を求めるときにフレクソ分極FPを考慮する場合は、フレクソ分極FPによって誘起される電気分極Pを組み込めばよい。電気分極Pと配向ベクトルnの歪みの間には、下記数式2で表される関係がある。
Figure 2011028067
なお、数式2において、e11およびe33は、それぞれスプレイ変形およびベンド変形に対するフレクソ係数である。
フレクソ係数は、液晶材料によって異なり、たとえば、非特許文献2に記載された方法を使用することで測定することができる。したがって、数式2から得られる電気分極Pを数式1に組み込むことにより、フレクソ分極(フレクソエレクトリック効果)を導入した液晶層3の配向を計算することができる。また、非特許文献2にも記載されているように、フレクソ係数e11,e33を測定する場合は、一般的に、e11とe33の和もしくは差の形で測定される。そのため、以下の説明では、フレクソ係数をE(=e11=e33)とする。また、フレクソ係数e11,e33は、正負のいずれの値もとりうるので、以下の説明では、特別な断りがない場合でも、フレクソ係数Eの値を絶対値とする。
図9は、フレクソ分極を考慮した場合の液晶層の配向の計算に使用したモデルを示す模式断面図である。
数式1および数式2により液晶層3の配向を計算するにあたり、本願発明者らは、図9に示すような、平板状の共通電極15、第3の絶縁膜16、および櫛歯状の画素電極17が積層された第2の基板2と、第1の基板1との間に液晶層3を配置したモデルを使用した。このとき、画素電極17の歯の幅L(電極幅)は4μmとし、歯の間隙Sは5μmとした。また、第3の絶縁膜16の厚さD1は400μmとし、液晶層3の厚さD2は3.5μmとした。また、液晶層3は、誘電率異方性Δεが6.5、リタデーションΔn・dが380μmの液晶材料でなるとし、プレチルト角を2度にした。
また、液晶層3の配向の計算には、2次元シミュレーションが可能であり、かつ、数式2で表される電気分極Pを組み込むことが可能なシミュレーターの1つであるLCD-Master(Shintech製)を使用した。
図10は、駆動電圧と透過率との関係のフレクソ係数依存性を示す模式図である。
なお、図10の(a)は、横軸が画素電極17に印加する交流電圧の振幅Vpx(単位はボルト)、縦軸が透過率TP(単位は任意)のグラフである。また、図10の(a)には、フレクソ係数E(=e11=e33)を0pC/mにした場合、5pC/mにした場合、10pC/mにした場合、および20pC/mにした場合の交流電圧の振幅Vpxと透過率TPとの関係を示している。また、図10の(b)は、横軸がフレクソ係数E(単位はpC/m)、縦軸が印加する交流電圧の電圧比RoV(単位は%)のグラフである。また、図10の(b)のグラフにおける電圧比RoVは、フレクソ係数を0pC/mにしたときに透過率TPが最大になる振幅Vpxと、それぞれのフレクソ係数において透過率TPが最大になる振幅Vpxとの比である。
本願発明者らが、上記のシミュレーターを用いた計算で得られた液晶層3の配向に基づき、画素電極17に所定の交流電圧を印加したときの透過率を算出したところ、図10の(a)に示すような結果が得られた。なお、図10の(a)に示した結果は、周波数が30Hzの交流電圧を、振幅Vpxを変えながら画素電極17に加えたときの、振幅Vpxの大きさと透過率TPとの関係である。
図10の(a)を見ると、フレクソ係数Eが大きくなるにつれて、透過率Tpが最大になる交流電圧の振幅Vpxが低くなることがわかる。液晶表示パネルの駆動電圧は、通常、0ボルトと透過率Tpが最大になる振幅Vpxとの間であり、かつ、透過率Tpが最大になる振幅Vpxよりも若干低い値に設定される。そのため、液晶層3のフレクソ係数Eを大きくすれば、液晶表示パネルの駆動電圧を低くすることができる。
また、図10の(a)に示したような結果に基づいて、フレクソ係数Eと、透過率TPが最大になる振幅Vpxとの関係を調べると、たとえば、図10の(b)に示すような結果が得られた。
図10の(b)を見ると、フレクソ係数Eに大きくするにつれて液晶表示パネルの駆動電圧を低くできることがより詳細にわかる。このとき、フレクソ係数Eと電圧比RoVの関係は、7pC/mに変極点があり、フレクソ係数Eが7pC/mより大きくなると、電圧比RoVが急激に低減する。すなわち、液晶層3のフレクソ係数E(=e11=e33)を7pC/mよりも大きくすると、液晶表示パネルの駆動電圧を大幅に低くすることができる。
一方、非特許文献2からもわかるように、一般的なフレクソ係数E(=e11=e33)は、絶対値がおよそ0から3pC/m程度であるとされる。したがって、一般的な液晶材料を使用している従来の液晶表示パネルでは、この効果を得ることができない。
また、図10の(b)を見ると、フレクソ係数Eと電圧比RoVの関係は、フレクソ係数Eが5pC/mの付近にも変曲点があり、フレクソ係数Eが5pC/mから7pC/mの範囲では、電圧比RoVの変化(減少)が少ない。また、フレクソ係数Eが5pC/mのときの電圧比RoVは約98%であり、フレクソ係数Eが0から3pC/mの区間の電圧比RoV(100%から約99.5%)との間に有意な差がある。したがって、液晶層3のフレクソ係数Eの絶対値を5pC/mよりも大きくすれば、液晶表示パネルの駆動電圧を従来よりも低くすることができると言える。
またさらに、液晶層3のフレクソ係数Eを大きくした場合、電圧比RoV(駆動電圧)を低くできる反面、図10の(a)からわかるように、透過率TPの最大値が徐々に低くなる。そのため、画素の輝度の低下を抑えつつ駆動電圧を低くするには、液晶層3のフレクソ係数Eの絶対値を5pC/m乃至7pC/mにすればよいと言える。
また、結果は示していないが、上記のような効果はフレクソ係数E(=e11=e33)の絶対値によって影響に違いが生じるものの、フレクソ係数Eが負であって同様な効果が得られる。
以上説明したように、実施例1の液晶表示パネルによれば、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を5pC/m以上にすることで、駆動電圧を低減することができる。また、実施例1の液晶表示パネルは、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を7pC/m以上にすることで、さらに大幅に駆動電圧を低減することができる。
また、実施例1の液晶表示パネルは、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を5pC/m乃至7pC/mにすることで、輝度の低下を抑えつつ、駆動電圧を低くすることができる。
また、実施例1では、本発明を適用する液晶表示パネルの一例として、IPS-Pro方式の液晶表示パネルを挙げたが、実施例1の構成は、これに限らず、AS-IPS(Advanced Super-IPS)方式のように、画素電極17と共通電極15とが絶縁層の同一面に配置されている液晶表示パネルにも適用できる。AS-IPS方式の液晶表示パネルの場合、一般に、画素電極17および共通電極15がともに櫛歯形状であり、画素電極17の歯と共通電極15の歯が交互に並んでいる。そのため、AS-IPS方式の液晶表示パネルを駆動する場合にも、図7に示したようなアーチ状の電気力線EFが生じ、液晶層3にフレクソ分極FPが生じる。したがって、AS-IPS方式の液晶表示パネルの液晶層3のフレクソ係数の絶対値を5pC/m以上にすることで、輝度の低下を抑えつつ、駆動電圧を低くすることができる。
実施例1では、液晶層3のフレクソ係数E(=e11=e33)の絶対値を大きくすることで、液晶表示パネルの駆動電圧を低くしている。しかしながら、液晶層3のフレクソ係数Eを大きくした場合、フレクソ分極FPが大きくなる。特許文献1によると、IPS方式の液晶表示装置では、フレクソ分極によって残像が発生する可能性が示唆されている。そのため、実施例1の液晶表示装置のように、液晶層3のフレクソ係数Eの絶対値を大きくした場合、フリッカや残像が発生する可能性がある。
図11は、実施例1の液晶表示装置における透過率の時間変化の一例を示す模式図である。
なお、図11は、横軸が駆動開始時刻からの経過時間Time(単位は秒)、縦軸が透過率TP(単位は任意)のグラフである。
実施例1の液晶表示装置においてフリッカが観測される要因としては、次のようなことが考えられる。本願発明者らが、実施例1で挙げたシミュレーター(LCD-Master)を用いた計算で得られた液晶層3の配向に基づき、画素電極17に所定の交流電圧を印加したときの透過率TPの時間変化を算出したところ、図11に示すような結果が得られた。なお、図11において、実線はフレクソ係数E(=e11=e33)を10pC/mにしたときの透過率TPの時間変化であり、点線はフレクソ係数Eを0pC/mにしたときの透過率TPの時間変化である。また、図11において、破線の矩形波は、画素電極17に印加する交流電圧であり、±5ボルトの交流電圧を30Hzで印加していることを示している。すなわち、図11に示した透過率TPの時間変化は、駆動周波数が60Hzであり、極性(画素電極17の電位と共通電極15の電位との高低の関係)を1フレーム期間毎に反転させる液晶表示装置における時間変化に相当する。
図11からわかるように、フレクソ分極を考慮せずに計算した場合の透過率TPには、画素電極17に印加する電圧の極性の変化に応じた透過率TPの変動が観測されない。これに対し、フレクソ分極を考慮した場合の透過率TPには、画素電極17に印加する電圧の極性の変化に応じた透過率TPの変動が観測される。つまり、フレクソ分極がある場合は、透過率TPに時間変動があり、この時間変動がフリッカとして観測される。
また、透過率TPは1フレーム期間内の平均値として算出することができ、正極性印加時と負極性印加時の比を取ることでフリッカ強度を算出することもできる。
図12は、フレクソ係数とフリッカ強度との関係の一例を示す模式図である。
なお、図12は、横軸がフレクソ係数E(単位はpC/m)、縦軸がフリッカ強度IFL(単位は%)のグラフである。
本願発明者らが、図9に示したモデルの画素を±5ボルトの交流電圧で駆動させたときのフレクソ係数Eとフリッカ強度IFLとの関係をシミュレーションしたところ、たとえば、図12に示すような結果が得られた。液晶表示装置におけるフリッカ強度IFLは、3%以内が許容範囲であり、1%以内が望ましい。したがって、図12によると、フリッカ強度IFLを許容範囲内に納めるには、液晶層3のフレクソ係数E(=e11=e33)の絶対値を7pC/m以下にする必要がある。またさらに、フリッカ強度IFLを1%以内に納めるには、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を5pC/m以下にする必要がある。
これに対し、実施例1の液晶表示装置では、フレクソ係数の絶対値を5pC/m以上にして駆動電圧を低くしている。すなわち、実施例1の液晶表示装置において、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を5pC/m以上7pC/mにした場合は、フリッカ強度IFLを許容範囲内(3%以内)に抑えることができるが、その強度は1%以上である。また、実施例1の液晶表示装置において、液晶層3のフレクソ係数の絶対値を7pC/mにした場合は、フリッカ強度IFLが許容範囲よりも大きくなる。したがって、実施例1の液晶表示装置においてフリッカ強度を小さくするには、別の対策が必要になる。
そこで、実施例2では、液晶層3のフレクソ係数Eの絶対値を大きくしてもフリッカが観測されないようにする方法の一例を説明する。具体的には、たとえば、図9に示した画素電極17の歯の幅Lと、間隙の寸法Sとの関係を最適化することによって、上記の透過率TPの時間変動をフリッカとして観測できなくなる程度、つまりフリッカ強度IFLが1%以内になるまで小さくする。
図13は、画素電極の歯の幅Lおよび間隙の寸法Sとフリッカ強度との関係の一例を示す模式図である。
なお、図13は、横軸がL/(L+S)、縦軸がフリッカ強度IFL(単位は任意)のグラフである。
本願発明者らが、図9に示したモデルにおいて画素電極17の歯の幅Lと間隙の寸法Sとの比(実施例2ではL/(L+S)とする)を変えたときに、フリッカ強度IFLがどのように変化するかを調べたところ、たとえば、図13に示すような結果が得られた。なお、図13は、液晶層3のフレクソ係数を10pC/mとし、印加電圧を±5ボルトの交流電圧としている。また、図13には、画素電極17の櫛歯ピッチ(L+S)を5μmにした場合のフリッカ強度の変化(実線)と、10μmにした場合のフリッカ強度の変化(点線)を示している。
図13を見ると、櫛歯ピッチが5μmのときはL/(L+S)を約0.35、櫛歯ピッチが10μmのときはL/(L+S)を約0.40にすると、フリッカ強度IFLが最小値になっていることがわかる。
また、フレクソ分極が液晶層3の配向に影響を及ぼす場合、液晶層3に印加される電圧の極性によって透過率TPが変動する。そこで、本願発明者らは、この透過率TPの変動を観測するために、透過率の面内分布を算出した。
図14は、液晶層のフレクソ係数と透過率の面内分布との関係の一例を示す模式図である。
なお、図14の(a)および(b)は、横軸が図9に示したxp=0からxp=Xの区間におけるx方向の位置、縦軸が透過率TP(単位は任意)のグラフである。
本願発明者らが、実施例1で挙げたシミュレーター(LCD-Master)を用いて、図9に示したxp=0からxp=Xの区間における透過率TPの面内分布を計算しところ、図14に示すような結果が得られた。なお、図14の(a)は、画素電極17に正電圧(5ボルト)を印加したときの透過率TPの面内分布を示しており、実線がフレクソ係数を10pC/mにしたときの面内分布である。また、図14の(b)は、画素電極17に負電圧(-5ボルト)を印加したときの透過率TPの面内分布を示しており、実線がフレクソ係数を10pC/mにしたときの面内分布である。また、図14の(a)および(b)に示した点線の分布は、それぞれ、フレクソ係数を0pC/mにしたときの透過率TPの面内分布である。
図14の(a)および(b)からわかるように、フレクソ係数を0pC/mにした場合、すなわちフレクソエレクトリック効果を無視した場合の透過率TPの面内分布は、画素電極17に印加する電圧の極性によらず、概ね同じ分布になる。
これに対し、フレクソ係数を10pC/mにした場合は、画素電極17に印加される電圧の極性に応じて面内での透過率TPの変動が観測された。正電圧を印加したときには、図14の(a)に示したように、画素電極17の歯の上における透過率TPが低くなり、歯の間隙の上における透過率TPが高くなる。また、負電圧を印加したときには、図14の(b)に示したように、画素電極17の歯の上における透過率TPが高くなり、歯の間隙の上における透過率TPが低くなる。
以上の結果から、実施例2の液晶表示装置における最適なL/(L+S)は、画素電極17に印加される電圧の極性が変化したときの、画素電極17の歯の上における透過率と歯の間隙の上における透過率とが概ね等しくなるような値であることがわかる。
図15は、櫛歯ピッチと最適なL/(L+S)との関係の一例を示す模式図である。
なお、図15は、横軸が櫛歯ピッチP=L+S(単位はμm)、縦軸がL/(L+S)の最適値(L/P)OPのグラフである。
本願発明者らが、櫛歯ピッチPが5μmの場合、10μmの場合、および12μmの場合のそれぞれにおいて、フリッカ強度IFLが最小になるL/P、すなわちL/(L+S)の最適値(L/P)OPを算出したところ、図15に示すような結果が得られた。なお、図15において、四角の点はシミュレーションにより算出された結果であり、曲線F(P)はシミュレーションの結果から求めた回帰曲線である。このとき、曲線F(P)は、下記数式3で表される。
F(P)=0.072×loge(P)+0.234 ・・・(数式3)
すなわち、画素を設計する際に、画素電極17の歯の幅LとピッチP(=L+S)との関係が数式3を満たすように設定して実施例1の液晶表示パネルを製造すれば、液晶層3のフレクソ係数Eが大きくても、フリッカ強度を小さくすることができる。
なお、図13のフリッカ強度IFLは、画素電極17の歯が無限に続く場合を仮定して算出した結果である。実際の液晶表示装置では、図13のフリッカ強度IFLが0.2以下であることが望ましく、0.3以下が許容範囲である。したがって、その範囲におけるL/(L+S)は、およそ最適値から±0.05が望ましく、±0.10が許容範囲であると言える。
すなわち、実施例1の液晶表示装置においてフリッカが観測されないようにするには、0.05≧F(P)−0.072×loge(P)+0.234≧−0.05を満たす画素構成にすることが望ましい。また、フリッカ強度が許容範囲内におさまる画素構成は、0.10≧F(P)−0.072×loge(P)+0.234≧−0.10となる。つまり、実施例2の液晶表示装置は、画素電極17の歯の幅Lと間隙Sとの関係がこのような条件を満たす画素構成にすることで、駆動電圧を低くするとともに、フリッカ強度を低減させる。
以上説明したように、実施例2の液晶表示装置によれば、IPS-Pro方式の液晶表示パネルにおける液晶層3のフレクソ係数E(=e11=e33)の絶対値が5pC/m以上であっても、フリッカ強度を低減させることができる。また、実施例2の液晶表示装置は、フリッカが軽減することで透過率向上の効果も得られる。
また、実施例2では、実施例1と同様にIPS-Pro方式の液晶表示パネルを例に挙げているが、実施例2の構成は、IPS-Pro方式に限らず、AS-IPS方式の液晶表示パネルにも適用できることはもちろんである。AS-IPS方式の液晶表示パネルの場合は、画素電極17および共通電極15がともに櫛歯形状であり、画素電極17の歯と共通電極15の歯とが交互に並ぶ。そのため、AS-IPS方式の液晶表示パネルでは、櫛歯のピッチに対して発生する電界の数がIPS-Pro方式の場合の半分になる。したがって、AS-IPS方式の液晶表示パネルの場合、数式3は、下記数式4に書き換えられる。
F(P)=0.072×loge(2P)+0.234 ・・・(数式4)
なお、数式4の櫛歯ピッチP(=L+S)において、間隙Sは画素電極17の歯と共通電極15の歯との間隙である。また、幅Lについては、画素電極17の歯の幅、共通電極の歯の幅のどちらでもよい。
また、AS-IPS方式の液晶表示パネルの場合も、フリッカ強度の許容範囲についてはIPS-Pro方式とおなじことが言える。そのため、AS-IPS方式の場合は、0.05≧F(P)−0.072×loge(2P)+0.234≧−0.05を満たす画素構成にすることが望ましい。また、フリッカ強度が許容範囲内におさまる画素構成は0.10≧F(P)−0.072×loge(2P)+0.234≧−0.10となる。
実施例3では、液晶層3のフレクソ係数Eの絶対値を大きくしてもフリッカが観測されないようにする方法の別の一例を説明する。具体的には、液晶表示パネルの駆動周波数を高くすることで透過率TPの時間変動を抑制し、フリッカ強度が3%以下(望ましくは1%以下)になるようにする。
フレクソ分極が発生した液晶表示パネルの場合、液晶層3の応答速度は、フレクソ分極分極が生じている分、高速化する。これは従来の液晶層3の応答は誘電応答のみであったのに対して、フレクソ分極の効果が重畳するためである。この現象について図16を用いて説明する。
図16は、実施例1の液晶表示パネルを駆動させたときの透過率の時間変化の一例を示す模式図である。
なお、図16は、図11の一部分を拡大した図であり、横軸が駆動開始時からの経過時間Time(単位は秒)、縦軸が透過率TP(単位は任意)のグラフである。
実施例1の液晶表示パネルを、たとえば、一般的な駆動周波数(60Hz)で駆動させた場合、透過率TPの時間変化は、図16に示したようになる。すなわち、電圧の極性が変わった直後に透過率TPが急激に上昇して極大値をとった後、徐々に透過率TPが低下する。このとき、電圧の極性が変わった直後の透過率TPが上昇する区間Taは、フレクソ分極による光学応答が起こる区間であり、その後の透過率TPが低下する区間Tbは、誘電応答および弾性的な緩和過程による光学応答が起こる区間である。
このように、実施例1の液晶表示パネルの画素電極17周波数が30Hzの交流電圧を印加した場合、透過率TPの変動幅が大きくなるので、フリッカとして観測されやすい。すなわち、実施例1の液晶表示パネルは、たとえば、駆動周波数を60Hzとし、極性(画素電極17の電位と共通電極15の電位との高低の関係)を1フレーム期間毎に反転させながら駆動すると、フリッカが観測されやすい。
ところで、実施例1の液晶表示パネルに交流電圧を印加する場合、正電圧を印加したときの透過率の極大値と、負電圧を印加したときの透過率の極大値との差ΔTPは、交流電圧の周波数によらず概ね一定の値になる。したがって、印加する交流電圧の周波数を高くして区間Tbを短くすれば、透過率の変動幅が小さくなる。
実施例1の液晶表示パネルにおける区間Taは、およそ3ミリ秒である。したがって、液晶表示パネルに印加する交流電圧の周波数を約166.7(=1000/3×2)Hzにすると、区間Tbがほぼ0になり、透過率TPの変動幅を最小にすることができる。なお、図16からわかるように、区間Tbを完全に0にしなくても、区間Tbにおける透過率の変動量(減少量)が、上記の差ΔTPよりも小さくなれば、透過率の変動幅が最小になる。そのため、液晶表示パネルに印加する交流電圧の周波数を約150Hzにすれば、透過率の変動幅を最小にすることができる。
液晶表示装置におけるフリッカ強度は、前述のように3%以内が許容範囲であり、1%以内が望ましい。そのため、図16からフリッカ強度が1%になる透過率TPの変動幅を決定し、そこから交流電圧の周波数を算出したところ、約100Hzとなった。また、同様にフリッカ強度が3%になる透過率の変動幅を決定し、そこから交流電圧の周波数を算出したところ、約60Hzとなった。すなわち、実施例1の液晶表示パネルにおいて液晶層3のフレクソ係数E(=e11=e33)を10pC/mにした場合、たとえば、駆動周波数を120Hz以上にし、極性を1フレーム期間毎に反転させながら駆動すると、フリッカ強度が3%以下になり、フリッカが観測されにくくなる。また、駆動周波数を200Hz以上にし、極性を1フレーム期間毎に反転させながら駆動すると、フリッカ強度が1%以下になり、フリッカをさらに低減することができる。
図17は、交流電圧の周波数とフリッカ強度との関係のフレクソ係数依存性を示す模式図である。
なお、図17の(a)は、横軸が交流電圧の周波数Q(単位はHz)、縦軸がフリッカ強度IFL(単位は%)のグラフである。また、図17の(b)は、横軸がフレクソ係数E(単位はpC/m)、縦軸が交流電圧の周波数Q(単位はHz)のグラフである。
本願発明者らが、液晶層3のフレクソ係数Eの値を変えて、交流電圧の周波数Qとフリッカ強度IFLとの関係を調べたところ、たとえば、図17の(a)に示すような結果が得られた。なお、図17の(a)には、フレクソ係数Eを5pC/mにした場合、10pC/mにした場合、および20pC/mにした場合の交流電圧の周波数Qとフリッカ強度IFLとの関係を示している。なお、図17の(a)の曲線における周波数Qとフリッカ強度IFLは、図16に示したような応答波形のピーク差によって求めている。たとえば、フリッカ強度1%を示す周波数Qは、輝度ピーク(透過率TPの最大値)から輝度が1%変化する時間を求め、その逆数(1/Q)としている。
図17(a)からわかるように、液晶層3のフレクソ係数Eを大きくするにつれて、フリッカ強度が許容範囲(3%以内)になる交流電圧の周波数Qが高くなる。
このような結果に基づき、フリッカ強度が3%になるフレクソ係数と交流電圧の周波数との関係を求めると、図17の(b)に示した曲線F(E)のようになる。同様に、フリッカ強度が1%になるフレクソ係数と交流電圧の周波数との関係を求めると、図17の(b)に示した曲線F(E)のようになる。このとき、曲線F(E)および曲線F(E)は、それぞれ、下記数式5および数式6で表される。
(E)= 116.8×loge(E)−165.7 ・・・(数式5)
(E)= 61.5×loge(E)−91.5 ・・・(数式6)
したがって、実施例1の液晶表示パネルを有する液晶表示装置において、フリッカ強度が1%以内になるようにするには、液晶表示パネルに印加する交流電圧の周波数Qを、下記数式7を満たすようにすればよい。また、フリッカ強度が3%以内になるようにするには、液晶表示パネルに印加する交流電圧の周波数Qを、下記数式8を満たすようにすればよい。
Q > 116.8×loge(E)−165.7 ・・・(数式7)
Q > 61.5×loge(E)−91.5 ・・・(数式8)
つまり、実施例3の液晶表示装置は、実施例1のような構成の液晶表示パネルを有する液晶表示装置を、数式7または数式8を満たす条件で駆動させることで、フリッカ強度を低減させる。
以上説明したように、実施例3の液晶表示装置によれば、画素電極に加える交流電圧の周波数を30Hz以上にすることで、液晶層3のフレクソ係数が7pC/m以上であってもフリッカ強度を3%以内または1%以内に抑えることができ、フリッカが観測されないようにすることができる。また、液晶表示パネルの駆動周波数を高くすることで、動画性能にも優れた液晶表示装置を提供することができる。
また、実施例3の構成(駆動方法)は、IPS-Pro方式の液晶表示パネルに限らず、AS-IPS方式の液晶表示パネルにも適用できる。
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
たとえば、前記実施例1乃至実施例3では、透過型の液晶表示パネルを例に挙げているが、本発明は、これに限らず、半透過型、反射型の液晶表示パネルにも適用できることはもちろんである。
1 第1の基板
2 第2の基板
3 液晶層
3M 液晶分子
4 ブラックマトリクス
5 カラーフィルタ
6 平坦化膜
7 第1の配向膜
8 裏面電極
9 第1の偏光板
10 走査信号線
11 第1の絶縁層
12 映像信号線
13 TFT素子
13s ソース電極
14 第2の絶縁層
15 共通電極
16 第3の絶縁層
17 画素電極
18 第2の配向膜
19 第2の偏光板
EF 電気力線
FP フレクソ分極

Claims (17)

  1. 第1の基板と、第2の基板と、
    前記第1の基板と前記第2の基板に挟持された液晶層と、
    前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された画素電極および共通電極とを有し、
    前記画素電極および前記共通電極のいずれかが櫛歯状の液晶表示装置であって、
    前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上であることを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が7pC/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上7pC/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  4. 前記画素電極および前記共通電極は、絶縁層を介して積層されており、かつ、前記液晶層に近いほうの電極が櫛歯状であり、
    前記液晶層に近いほうの電極の歯の幅をL、歯の間隙をS、前記幅Lと前記間隙Sの和をPとしたときに、
    0.10 ≧ (L/P)−0.072×loge(P)+0.234 ≧ −0.10
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  5. 前記液晶層に近いほうの電極は、前記幅L、前記間隙S、前記幅Lと前記間隙Sの和Pと間に、
    0.05 ≧ (L/P)−0.072×loge(P)+0.234 ≧ −0.05
    の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
  6. 第1の基板と、第2の基板と、
    前記第1の基板と前記第2の基板に挟持された液晶層と、
    前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された画素電極および共通電極とを有し、
    前記画素電極および前記共通電極の両方が櫛歯状の液晶表示装置であって、
    前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上であることを特徴とする液晶表示装置。
  7. 前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が7pC/m以上であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  8. 前記液晶層は、フレクソ係数e11,e33の両方の絶対値が5pC/m以上7pC/m以下であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  9. 前記画素電極および前記共通電極は、絶縁層の同一面に配置され、かつ、前記画素電極の歯と前記共通電極の歯が交互に並んでおり、
    前記画素電極の歯の幅をL、前記画素電極と前記共通電極の間隙をS、前記幅Lと前記間隙Sの和をPとしたときに、
    0.10 ≧ (L/P)−0.072×loge(2P)+0.234 ≧ −0.10
    を満たすことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  10. 前記画素電極および前記共通電極は、前記幅L、前記間隙S、および前記幅Lと前記間隙Sの和Pの間に、
    0.05 ≧ (L/P)−0.072×loge(2P)+0.234 ≧ −0.05
    の関係を有することを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
  11. 前記画素電極および前記共通電極は、絶縁層の同一面に配置され、かつ、前記画素電極の歯と前記共通電極の歯が交互に並んでおり、
    前記共通電極の歯の幅をL、前記画素電極と前記共通電極の間隙をS、前記幅Lと前記間隙Sの和をPとしたときに、
    0.10 ≧ (L/P)−0.072×loge(2P)+0.234 ≧ −0.10
    を満たすことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  12. 前記画素電極および前記共通電極は、前記幅L、前記間隙S、前記幅Lと前記間隙Sの和Pの間に、
    0.05 ≧ (L/P)−0.072×loge(2P)+0.234 ≧ −0.05
    の関係を有することを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
  13. 前記液晶層のフレクソ係数をE、前記画素電極に印加される電圧の周波数をQとしたときに、当該周波数Qが、
    Q > 61.5×loge(E)−91.5
    を満たすことを特徴とする請求項1または請求項6に記載の液晶表示装置。
  14. 前記画素電極に印加される電圧の周波数Qが、
    Q > 116.8×loge(E)−165.7
    を満たすことを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
  15. 前記画素電極に印加される電圧の周波数が、60Hz以上150Hz未満であることを特徴とする請求項1または請求項6に記載の液晶表示装置。
  16. 前記液晶層は、誘電率異方性が正の値であることを特徴とする請求項1または請求項6に記載の液晶表示装置。
  17. 前記液晶層は、誘電率異方性が負の値であることを特徴とする請求項1または請求項6に記載の液晶表示装置。
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