JP2011026202A - 徐放性薬物包接担体及びそれを含む医薬組成物 - Google Patents

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雅之 石原
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聡子 岸本
Yasuhiro Kanetani
泰宏 金谷
Hirofumi Yura
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Abstract

【課題】注射器やカテーテルなどを介する投与に適した粘性を持ち、FGF−2等の薬物を担持できるとともに担持した薬物を徐放できる薬物包接担体を提供する。
【解決手段】低分子ヘパリンとプロタミンとから構成される平均粒径が10μm未満の微粒子からなる薬物包接担体及びそれを用いた医薬組成物に関する。薬物包接担体は、特に塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)等のヘパリン結合性を持つ薬物を良好に担持でき、当該薬物の活性を外的刺激から保護しつつ徐放させるためのキャリアとして有効である。特に、薬物としてFGF−2を担持させた担体を含む医薬組成物は、注入した部位において血管新生及び肉芽形成を促進する。
【選択図】図8

Description

本発明は、注入可能な形態で使用できる薬物包接担体に関する。より詳細には、本発明は、低分子ヘパリンとプロタミンとから構成される微粒子からなる薬物包接担体(マイクロキャリア)及び当該担体に担持された薬物を含有する医薬組成物に関する。
近年、盛んに研究されている再生医療としての血管新生療法は、外部から血管新生を促す因子を目的部位へ注入して血管を新たに誘発することを狙う方法である。高度で複雑な手技を伴う既存の方法と比べて非常に簡便で、適応症例は広いと考えられる。血管新生を促す因子には、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor : VEGF)の遺伝子 や血管内皮前駆細胞( endothelial progenitor cell : EPC )などが用いられている。しかし、これらの方法は有効な方法として研究成果は挙がっているものの、安全性に対する懸念や費用対効果の問題があり、なかなか実用化には至っていない。
ところで、生体に元来存在する血管新生促進因子の一つである塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor :FGF-2 )は、その組み換え体タンパク質が褥瘡・皮膚潰瘍治療剤(商品名:フィブラスト、科研製薬株式会社)として医薬品となっており、安全性に対する懸念がほとんど無い。また、動物実験において血管新生効果も確認されている。したがって、血管新生療法において使い勝手が良く、効率的に臨床応用出来るものと考えられる。
しかし、FGF−2は熱やタンパク質分解酵素などの影響を受けやすく活性半減期が非常に短いことから、短期間の繰り返し投与を実施する必要がある。
本発明者等は、光硬化性キトサンハイドロゲル(特許文献1)や糖鎖含有キトサンと6-O-位脱硫酸化ヘパリンの複合ハイドロゲル(特許文献2)が、FGF−2などの様々な成長因子の活性を保護し、それを徐放するキャリアとして有効であることを報告してきた。これらの特許文献に記載された実験結果により、上記ハイドロゲル内で保護され活性を保持したFGF−2が、ハイドロゲルの生分解に伴い周辺部位へ徐放され、生体内での血管新生や肉芽形成の促進に寄与することが実証されている。
WO03/090765号パンフレット WO2005/025538号パンフレット
しかし、これらのハイドロゲルは、例えば褥創などの外傷部位に適用することを意図したものであり、液だれ等を防止するために高い粘性を有するように設計されていた。従って、注射器やカテーテルを通して投与した場合に、注射針やチューブに目詰まりが発生するという問題を生じることがあった。また、単にキトサン等の濃度を下げて粘度を低下させたのでは、担持させることのできる薬物量が限定され、所望の効果が得られない可能性があった。
本発明者等は、低分子ヘパリンとプロタミンとの組み合わせを用いることにより、簡便に微粒子状の薬物包接担体を作成できることを見出し、本発明をなすに至った。即ち、本発明は、低分子ヘパリンとプロタミンとから構成される平均粒径が10μm未満の微粒子からなる薬物包接担体を提供する。
本発明の低分子ヘパリンとプロタミンとを組み合わせた薬物包接担体は、例えばFGF−2等の薬物を担持することができ、担持された薬物を熱やトリプシンによる不活化要因から保護して活性を維持延長することが確認された。これは、成長因子類と結合することによって発揮される天然のヘパリンが有する特徴的な機能と同等である。
本発明の薬物放出担体は、平均粒径がミクロン単位の微粒子状であるため、適当な媒体に分散させた組成物は粘性が低く、極細針を装着したシリンジでも容易に取り扱う事が出来、操作性が非常に優れている。また、本発明の薬物包接担体は生体内で生分解されるため、その生分解に伴ってFGF−2等の担持薬物を生体内で徐放することができる。
本発明で使用するダルテパリンなどの低分子ヘパリンやプロタミンは医薬品として市販されている材料であり、それらの安全性は確保されている。同様に医薬品として使用が許可されているFGF−2を担持させた本発明の薬物包接担体は、下肢虚血治療などを対象とした血管新生療法のための、安全で新しいバイオマテリアルとして有望である。また、低分子ヘパリンとプロタミンによるミクロ微粒子は、FGF−2以外にもHGFなどを代表とする多くのヘパリン結合性タンパク質の薬剤包接担体としても応用できる他、ミクロ微粒子の形成に影響するものでなければ、ヘパリンと結合しない医薬品でも使用できるものと考えられる。即ち、本発明の薬物包接担体に担持させる薬物にヘパリン結合性が必須というわけではない。低分子ヘパリンとプロタミンによるミクロ微粒子の形成は、相互の陰性電荷と陽性電荷によるポリイオンコンプレックスによるものであると考えられるので、例えば、著しい高分子物質でなければ、陰性電荷や陽性電荷を帯びた医薬品なども包接薬として使用できる。
上記したように、本発明の薬物包接担体は、低分子ヘパリンとプロタミンとから構成され微粒子からなり、その平均粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満、さらに好ましくは1μm未満である。粒径の下限は特に限定されないが、一般には約0.01μm以上程度とされる。
本発明の薬物包接担体を構成する低分子ヘパリン(Low Molecular Weight Hepalin)は、一般に天然ヘパリン(分子量15000〜20000程度)を解重合して得られる低分子量のヘパリンである。その分子量範囲は、プロタミンと混合することにより微粒子状の薬物包接担体を形成できる程度のものであればよく、一般的には約10,000、好ましくは約9,000、より好ましくは約7,500、さらに好ましくは約6,000未満の平均分子量を有するものが用いられる。また、平均分子量において通常(天然)のヘパリンと区別できれば十分であり、例えば、10,000以上、あるいは20,00以上の分子量を持つ分画を含んでいても、全体として平均分子量が約10,000未満であれば本発明における低分子ヘパリンとして使用できる。
例えば、ブタの小腸粘膜由来のヘパリンを亜硝酸分解して得られる解重合ヘパリン(ダルテパリン)は、フラグミン(商品名)として市販されており、約3000〜5000の平均分子量を有する。同様に、ブタの小腸粘膜由来のヘパリンを亜硝酸分解して得られる解重合ヘパリン(レビパリン)はローモリン(商品名)として、ウシ又はブタ腸粘膜由来のヘパリンを過酸化水素と酢酸第二銅により分解して得られる解重合ヘパリン(パルナパリン)はローヘパ(商品名)として市販されており、これらは何れも本発明における低分子ヘパリンとして使用できる。
ヘパリンは単独では抗凝固作用を持たず、血漿中のATIIIと結合することによってその作用を発揮し、第IIa因子、第XIIa因子、第XIa因子、第Xa因子、第IXa因子などの凝固系酵素を阻害、不活化する。一方、本発明で使用する低分子ヘパリンは抗第XIIa、抗第Xa因子活性を持つものの、第IIa因子、第XIa因子、第IXa因子に対する阻害活性は軽微であることが医薬品として明らかにされているので、創傷部位に注入しても当該部位における出血傾向を助長することなく使用できる。
本発明の低分子ヘパリンは、上記の市販されているものを使用してもよいが、例えば、過ヨウ素酸酸化により低分子化したヘパリン、あるいは特異的脱硫酸化ヘパリンも好適に用いることができる。
本発明の低分子ヘパリンは、一般的には約10,000未満の平均分子量を有する。このような低分子量のヘパリンを使用することにより、プロタミンと混合した際に微粒子状のマイクロキャリアを得ることができる。
一方、本発明の薬物包接担体を構成するプロタミンは、脊椎動物の精子の核中でDNAと結合して存在する塩基性の高いタンパク質として知られている。一般的には、27〜65残基からなる低分子量タンパク質であり、分子の40〜70%をアルギニンが占めると言われている。プロタミンも医薬品として市販されており、本発明では市販のプロタミンをそのまま使用することができる。
本発明の薬物包接担体は、例えば、ダルテパリン等の低分子ヘパリンの水溶液と、プロタミン水溶液とを適当な割合で混合し、ボルテックスで攪拌するだけで作製することができる。
低分子ヘパリンとプロタミンとの重量比は、特に限定されないが、プロタミンに対する低分子ヘパリンの重量を過剰にした場合に、得られる微粒子の収率が向上する。従って、低分子ヘパリン/プロタミンの重量比を、1/1〜50/1、より好ましくは1/1〜10/1の範囲とする。
最近、ヘパリンと同様にグリコサミノグリカン類の一つであるヒアルロン酸とプロタミンとの組み合わせにインターロイキン11を混合した三成分系で、インターロイキン11徐放性医薬組成物を作製することが提案されている(特開2006−96751)。しかし、この文献で使用されているヒアルロン酸は60000〜2000000の分子量を持つのが好ましいとされ、ヒアルロン酸に代えて使用できるとされているカルボキシメチルデキストランも20000〜80000の分子量を有している。
このような高分子量のヒアルロン酸とプロタミンとを組み合わせたのでは、本発明で得られるような微粒子状(μmオーダー)のマイクロキャリアを得ることは困難であり、実際に、前記文献では、ヒアルロン酸とプロタミン及びIL−11の混合物を凍結乾燥させて粉末状にし、それを圧縮成型したペレットをラット背部の皮下に埋め込んでいる。一方、静脈注射するための組成物においてはヒアルロン酸(及びIL−11)のみが用いられ、プロタミンは添加されていない。
後述の比較例1において実証されるように、低分子ヘパリンに代えて高分子量ヘパリン、ヒアルロン酸、又はコンドロイチン硫酸を用いた場合には、本発明で得られるような微粒子を得ることはできなかった。即ち本発明は、低分子ヘパリンとプロタミンという特定の組み合わせを採用することにより、μmオーダーの微粒子状のマイクロキャリアを得ることができたのである。
本発明の薬物包接担体(マイクロキャリア)は、μmオーダーの微粒子状という形態的特徴を有するので、特に注射器やカテーテルなどを介して体内に注入する医薬組成物として使用するのに適している。
よって、本発明は、本発明の薬物包接担体に担持された薬物及び媒体を含んでなる医薬組成物も提供する。
本発明の医薬組成物に含有させる薬物は特に限られないが、本発明の薬物包接担体に担持されやすく、体内における徐放が望まれる物とするのが好ましい。
本発明の薬物包接担体は低分子ヘパリン及びプロタミンから構成されている。従って、本発明の医薬組成物は、構成成分である低分子ヘパリン又はプロタミンとの親和性が高い薬物を含有するのが好ましい。
従って、本発明においては、例えば、ヘパリン結合性増殖因子又はサイトカインから選択される薬物を含有させるのが好ましい。特に、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)を用いるのが好ましい。
本発明の薬物包接担体は、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子の薬物包接担体を含有し、当該担体に担持された薬物、例えばFGF−2を含み、さらにこれらを分散させる媒体を含んでいる。本発明の医薬組成物における媒体は、特に限られないが、水性媒体が好ましく使用される。
本発明の薬物包接担体は、担持さえた薬物を良好に保護する効果がある。例えば、FGF−2を担持させた医薬組成物では、FGF−2活性の経時的な低下、温度変化や酵素による分解などの外的刺激による活性の体低下が防止され、FGF−2の活性が長期間維持された。
さらに、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子は生体内で生分解されるため、それに伴って担持されたFGF−2などを徐放することが可能である。従って、従来のキトサンハイドロゲルのような外傷部位のみならず、本発明の医薬組成物を用いることによって体内深部における目的部位にFGF−2等の薬物をデリバリーし、当該部位で徐放することができ、血管新生療法を実施することが可能となる。
以下、実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
薬物包接担体の作製
低分子ヘパリンとして、市販のダルテパリンであるフラグミン(商品名)(6.4 mg/ml, 1000 IU/ml, キッセイ薬品工業株式会社)を使用した。この低分子ヘパリンに対して、市販のプロタミン(10 mg/ml; 持田製薬株式会社) を様々な割合でボルテックスにより混合した。得られた微粒子分散物の外観を図1(A)に示す。
図1(A)の表に示した割合で混合した場合の低分子ヘパリン(フラグミン)/プロタミンの重量比は次の通りである:(a)0.07;(b)0.27;(c)0.64;(d)1.49;(e)5.76。
図1(A)に示されるように、プロタミンに対して低分子ヘパリン(フラグミン)を過剰に用いた場合((d)及び(e))において、微粒子が均一に分散した白濁液が得られた。特に、重量比は1.49となる条件(d)において、得られた微粒子の収率が最も高かった。この条件で作製された分散物を顕微鏡で観察したところ、微粒子の大きさは約1μm以下と非常に小さいものであった(図1(B)及び(C))。以下の実験では、この条件(d)で作製した分散物を用いた。
(比較例1)
実施例1(条件(d))における低分子ヘパリンを、通常のヘパリン(分子量15,000~20,000 程度)、ヒアルロン酸(分子量 500,000~1,000,000 程度)、又はコンドロイチン硫酸(分子量 50,000~100,000 程度)に代えて同様の操作を行った。
得られた分散物の顕微鏡写真を図2に示す。低分子ヘパリンを用いた本発明(A)では、約1μm以下の微粒子が得られたのに対し、(高分子量)ヘパリン(B)、ヒアルロン酸(C)及びコンドロイチン硫酸(D)を用いた場合には、均一な分散物は得られず、巨大な塊状の形成が見られた。即ち、低分子ヘパリンとプロタミンという特定の組み合わせを採用することによって注射器等で注入可能な微粒子が得られるが、その他の材料では得られないことが明らかになった。
(実施例2)
本発明の薬物包接担体による出血傾向の検討
本発明の薬物包接担体である低分子ヘパリン/プロタミン微粒子について、ラット末梢血を用いて活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を調べた。
ネンブタール麻酔下(50 mg /kg ; 大日本住友製薬株式会社) のラット腹部大動脈( 8 週齢、雄性SDラット;日本SLC 株式会社)から、3 . 8%クエン酸ナトリウム入り採血管を使用して採血を行った。採取した血液500 μ l に対して直ちに低分子ヘパリン/ プロタミン微粒子分散液1 μl (14.96 μg/ml、1.4 IU/ml) を添加し、遠心により血漿を分離してAPTTとPTの測定を行った(株式会社エスアールエル) 。
また、実際の出血傾向を確認するために、低分子ヘパリン/ プロタミン微粒子分散液をマウス ( 8 週齢, 雄性C57Bl/6jマウス; 日本SLC 株式会社) の背部に皮下注射し(100 μ l)、翌日剖検を行って肉眼的に観察した。超音波処理で作製した高分子量ヘパリン/ プロタミン微粒子分散物(16.76 μg/ml, 1.4 U/ml) についても同様に検討した。また、コントロール群として、低分子ヘパリン単独使用群(8.96 μg/ml, 1.4 IU/ml)、高分子量ヘパリン単独使用群(10.76 μg/ml、1.4 U/ml)、生理食塩水使用群を設定した。
高分子量ヘパリン/プロタミン微粒子(H/P)では、低分子ヘパリン/ プロタミン微粒子(F/P)と比べてAPTT値が有意に延長した(図3(A))。また、各試料をマウスの背部皮下組織に注射したところ、高分子ヘパリン/プロタミン微粒子注入群では血腫を含む激しい出血が確認できた(図3(B))。一方、低分子ヘパリン/ プロタミン微粒子注入群では出血痕はほとんど無く(図3(C))、コントロール群である生理食塩水注入群(図3(F))とほぼ同様であった。
即ち、本発明の薬物包接担体は、高分子量ヘパリンで生じるような出血傾向を誘発しないことが確認された。
(実施例3)
本発明の薬物包接単体へのFGF−2の結合特性
実施例1(条件(d))で作製した低分子ヘパリン/プロタミン微粒子をリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、PBS中に再懸濁させた。既知濃度の125I−FGF−2(特異的活性、187 μCi/μg; PerkinElmer Life Sci.)及びFGF−2(フィブラスト; 科研製薬株式会社)を含有しグロブリンを含まないウシ血清アルブミン(和光純薬工業)を添加して結合を開始させた。特異的結合を、1 mg/mlのウシ血清アルブミンの存在下で測定した。結合反応は室温で30分間継続させた。微粒子に結合した125I−FGF−2の放射活性をシンチレーションカウンター(Auto Well Gamma System, AKC-2000; Aloka Co.)で測定した。微粒子に対するFGF−2の特異的結合についての解離定数(Kd値)は、放射性リガンド結合及びScatchard分析を用いて決定した。
放射性リガンド結合阻害アッセイにおいて、125I−FGF−2(187 μCi/μg)は、80〜90%の比率で微粒子(1 mg)に結合し、その結合は2mg/mlまでウシ血清アルブミン(BSA)添加の影響を受けなかった。それに対して、FGF−2を添加すると、200μg/mlまで濃度依存的に結合性が有意に低下した。即ち、微粒子に対するFGF-2の結合は特異的であるため、BSAによっては阻害されないことが示された。125I−FGF−2が担持された微粒子を培地(DMEM)中、37℃でインキュベートしたところ、最初の1日でFGF-2の約15%が放出され、これは分子の拡散によるものと思われる。一方、残りの大部分(約85%)のFGF-2は微粒子に良好に担持されており、その後徐々に放出された(図4)。飽和曲線(図5(A))及びScatchardプロット(図5(B))から、微粒子に対するFGF−2の結合の解離定数(Kd)は2.08×10−9Mと算出された。この値は、FGF−2との親和性が高いとされている(高分子量の)ヘパリンの値(8.6×10−9M)に匹敵するものである。即ち、本発明の薬物包接担体は、FGF-2のキャリアとして特に適していることが明らかになった。
(実施例4)
低分子ヘパリン/プロタミン微粒子のFGF-2 活性に及ぼす影響
実施例1で作製した微粒子にFGF- 2 (フィブラスト; 科研製薬株式会社)を加え、下記の実験条件下でプレインキュベートを行った。その後、プレインキュベートしたサンプルを終濃度1 0μg/ml となるように調製してFGF-2 感受性細胞 (human dermal micro-vascular endothelial cells; hMVEC)の培養系に添加した。添加後3日間の培養(1 0% FBS/DMEM培地、37℃, 5% CO2 雰囲気下)を行い、hMVECの細胞増殖度を調べることでFGF- 2の活性について評価を行った。
本実験におけるプレインキュベートの条件は、FGF- 2 活性の維持効果を調べる実験では、FGF -2 含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子を37℃において0,1,5,7日間それぞれインキュベートした。また、FGF- 2 活性の熱からの保護効果を調べる実験では、37 , 44, 51 , 58 , 65 , 72 ℃ でそれぞれ3 0分間のインキュベートを行った。さらに、分解酵素からの保護効果を調べる実験では、トリプシン溶液(0.05%トリプシン溶液; シグマ社)を添加して10, 20, 30, 50, 60, 90, 120分間それぞれ37℃でインキュベートを行った。本実験のコントロール群には、FGF-2にPBS、低分子ヘパリン、あるいはプロタミンを各々単独で併用した群を設定した。
低分子ヘパリン/プロタミン微粒子による経時的なFGF-2活性の維持延長効果を検討した。結果を図6(A)に示す。PBS 併用群とプロタミン単独併用群では、プレインキュベート時間を増やすに従って細胞数が著しく減少し、これらの群ではFGF-2の活性が経時的に低下していくことが分かった。一方、FGF-2を低分子ヘパリン/プロタミン微粒子又は低分子ヘパリン単独と併用した場合、FGF-2の活性は7日間のプレインキュベートを経ても維持されていた。
次に、温度度変化とFGF-2の活性に関して検討した。結果を図6(B)に示す。PBSとの併用群では37 ℃から温度上昇するに従ってFGF-2活性が著しく低下することが分かった。一方、プロタミン又は低分子ヘパリンとの単独併用群は、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子併用群とほぼ同様の傾向を示したが、70℃を超えた段階で低分子ヘパリン/プロタミン微粒子併用群がやや高いFGF-2活性を示した。
タンパク質分解酵素の一種であるトリプシンによる処理に対する保護効果を検討した。結果を図6(C)に示す。低分子ヘパリン/プロタミン微粒子又は低分子ヘパリン単独と併用した場合にのみFGF-2の活性が保持されていた。
なお、低分子ヘパリン及びプロタミンは完全可溶性であるため、本発明が意図するFGF- 2の担体としては機能しない。したがって、薬物包接担体としては、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子のみが、FGF-2を熱やタンパク質分解酵素から保護して活性を維持延長させることができる。
(実施例5)
低分子ヘパリン/プロタミン微粒子の生体内での血管新生に及ぼす影響
低分子ヘパリン/プロタミン微粒子にFGF-2(10 μg)を添加し、マウス(8週齢, 雄性C57Bl/6jマウス; 日本SLC株式会社)の背部皮下組織へ27-G針付きシリンジ(ニプロ社) により注入(100 μL)した。注入後3, 7, 10, 14日目に剖検を行い、HE 染色標本を作製して光学顕微鏡観察を行った。コントロール群には、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子単独使用群、FGF-2単独使用群を設定した。結果を図7に示す。
注入したFGF- 2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子は、およそ1週間で分解され消失していた。注入を実施した部位の周囲では、多数の毛細血管と肉芽形成の促進を観察することができた(図7(A)及び(B))。これらの所見は、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子単独注入群(図7(C))、あるいはFGF-2単独注入群(図7(D))では観察することが出来なかった。また、顕微鏡観察一視野あたりの毛細血管数を調べたところ、コントロール群と比べてFGF-2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子注入群では血管数が有意に増加しており、その作用は約2週間に渡って継続された(図8)。以上のことから、FGF-2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子を使用することにより、血管新生を有効に誘導することが可能であることが明らかになった。
(A)は、実施例1において種々の割合(条件(a)から(e))で低分子ヘパリン/プロタミン微粒子を作製したときの、得られた分散物の外観を示す写真である。(B)及び(C)は前記条件(d)で作製した分散物の顕微鏡写真である。 比較例1において、実施例1で作製した本発明の低分子ヘパリン/プロタミン微粒子の分散物(A)、低分子ヘパリンに代えて高分子量ヘパリン(B)、ヒアルロン酸(C)又はコンドロイチン硫酸(D)を使用して得られた分散物の同倍率での顕微鏡写真である。 実施例2において、(A)は、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子(F/P)、高分子量ヘパリン/プロタミン微粒子(H/P)、低分子ヘパリン単独(フラグミン)、高分子量ヘパリン単独(ヘパリン)、あるいは生理食塩水を注入した場合のAPTTを示すグラフであり、(B)〜(F)は注入部位の出血状態を示す写真である。高分子量ヘパリン/プロタミン微粒子注入群では激しい出血が見られ(B)、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子注入群(C )及び生理食塩水注入群(F)では出血痕は見られなかった。 実施例3において、FGF−2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子からのFGF−2の放出プロフィールを示すグラフである。37℃で培地中に放出されたFGF−2量(○)、微粒子内に残っているFGF−2量(●)及び合計のFGF−2量(□)を示す。各データは3回の測定の平均である。 実施例3における低分子ヘパリン/プロタミン微粒子への125I-FGF−2の結合に関する飽和曲線(A)及びScatchardプロット(B)を示すグラフである。非特異的結合(●)は0.1%BSAの添加により得た。特異的結合(○)は全結合から非特異的結合を差し引くことにより算出した。各データは3回の測定の平均である。 実施例4における低分子ヘパリン/プロタミン微粒子によるFGF−2活性の保護効果を示すグラフである。各グラフの縦軸はFGF−2感受性細胞(hMVEC)の増殖度を示しており、FGF−2の活性を表す。(A)FGF−2活性の経時変化を示す。(B)温度によるFGF−2活性の変化を示す。(C)トリプシン処理に対するFGF−2活性の変化を示す。 実施例5におけるFGF−2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子による血管新生を示す写真である。具体的には、各サンプル注入後1週目のマウス当該部位のHE染色像を示す。FGF−2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子注入群 (A及びB)では、低分子ヘパリン/プロタミン微粒子単独注入群(C)又はFGF−2単独注入群(D)と比較して多数の血管(黒矢印)が見られた。これらの血管は内皮細胞((B)の白矢印) が存在し、赤血球((B)の矢頭)を含む成熟した血管であった。 実施例5における血管数の経時的変化を示すグラフである。FGF−2含有低分子ヘパリン/プロタミン微粒子を注入した群では、コントロール群と比べて有意に血管数が増えていた。その効果はおよそ2週間に渡り持続した。* P < 0.001 、* * P < 0.01

Claims (7)

  1. 低分子ヘパリンとプロタミンとから構成される平均粒径が10μm未満の微粒子からなる薬物包接担体。
  2. 前記微粒子の平均粒径が5μm未満である、請求項1に記載の薬物包接担体。
  3. 低分子ヘパリンが、約10,000未満の平均分子量を有する、請求項1に記載の薬物包接担体。
  4. 低分子ヘパリンとプロタミンとの重量比が、1/1〜10/1の範囲である、請求項1に記載の薬物包接担体。
  5. 請求項1に記載の薬物包接担体に担持された薬物及び媒体を含んでなる医薬組成物。
  6. 前記薬物がヘパリン結合性増殖因子及びサイトカインから選択される、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記ヘパリン結合性増殖因子が、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)である、請求項6に記載の組成物。
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