以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは必ずしも一致しない。また、以降の実施形態及び実施例において、同一の要素部材には同一符号を付し、適宜その説明を省略する。
[実施形態1]
図1に、本実施形態1に係る顕微鏡装置の一例を示す模式的説明図を示す。顕微鏡装置100は、図1に示すように、ステージ1、鏡柱2、鏡筒3、調節ハンドル4、接眼レンズ5、レボルバ6、対物レンズ7、撮像装置8、画像処理装置9、給電端子15、光源装置として機能する面状光源シート20等を備える。
ステージ1は、観察試料を載置する台として機能する。プレパラートやシャーレ等の観察試料載置具50を載置可能なように構成されている。本実施形態1に係るステージ1は、鏡脚としても機能する。ステージ1は、案内レール(不図示)等により前後左右に移動し得るスライドテーブル機構を備えていてもよい。また、ステージ1を回動可能なように構成してもよい。また、斜め傾斜機能などの機能を備えていてもよい。ステージ1には、面状光源シート20を固定可能な係合部、又は固設部等を備えるようにすることが好ましい。
鏡柱2は、ステージ1に取り付けられている。そして、鏡柱2の上部に対物レンズ7及び接眼レンズ5を保持する鏡筒3が取り付けられている。鏡筒3の高さは、調節ハンドル4により調節可能となっている。これにより、観察試料50と対物レンズ7との距離を変化させ、ピントを合わせることができる。レボルバ6には、複数の対物レンズ7が取り付けてある。レボルバ6を回転することにより、使用する対物レンズ7を切り替えることができる。
撮像装置8は、例えば、CCDカメラなどであり、CCDカメラを画像処理部9に接続することにより、コンピュータを用いた画像処理を実施することが可能となる。
なお、ステージ1の下部に鏡脚を別体に設け、鏡柱2を鏡筒3と固設させ、ステージ1を鏡柱2に対して上下させることにより、ピントを合わせるように構成してもよい。ステージ1を移動させる構造は、鏡筒3に撮像装置などの光学的付加部品を取り付ける場合に有利である。
本実施形態1に係る面状光源シート20は、観察試料に光を照射して、照明する光源としての役割を担う。本実施形態1においては、白色光を出射する。面状光源シート20は、ステージ1上の最表面にステージ1と着脱自在に取り付けられている。面状光源シート20をステージ1の最上部に設置する構成を採用し、かつ、ステージ1に対して、面状光源シート20を着脱自在とすることにより、照射光線の種類を変更したい場合や寿命・故障の際に、新しい面状光源シート20に容易に交換することができる。
観察試料載置具50は、面状光源シート20の直上に、これと当接するように載置されている。本実施形態1においては、観察試料載置具50として、観察試料を載せたスライドガラスを用いた。スライドガラスに変えて、マイクロチャンバや、マイクロサイズの流路などを有するマイクロチャネルアレイ、各種電気泳動ゲルを密着させたガラス板等に適用することもできる。観察試料載置具50の全面に、面状光源シート20が当接している例を示しているが、面状光源シート20の発光領域30が観察対象領域に照射可能なように観察試料載置具50が設置されていればよく、面状光源シート20と観察試料載置具50とのサイズは問わない。
なお、本実施形態1においては、面状光源シート20がステージ1に固定されているところに、観察試料載置具50を載せることによって、観察試料をセットする例を挙げたが、これに代えて、以下の構成としてもよい。すなわち、面状光源シート20を観察試料載置具50に一体的に取り付け、光源装置付き観察試料載置具をステージ1に載置するようにしてもよい。観察試料載置具50に対して面状光源シート20を着脱自在に構成することにより、繰り返し面状光源シート20を適用することができる。また、昨今においては、面状光源シートを比較的安価に入手可能となっているので、ディスポーザブル用途の光源装置付き観察試料載置具としても利用可能である。
次に、本実施形態1に係る光源装置として機能する面状光源シート20について詳述する。面状光源シート20の厚みは、特に限定されるものではなく、用途や目的に応じて選定可能であるが、例えば、0.2mm〜1.2mm程度である。面状光源シート20には、有機エレクトロルミネッセンス(EL;Electro Luminescence)素子からなる有機ELシート、無機EL素子からなる無機ELシート、LED素子からなるLEDシートを好適に適用することができる。
ELシートは、発光する化合物(発光材料)を含有する発光層を、陰極層と陽極層で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子を生成させる。そして、この励起子を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光、燐光)を利用して発光する素子である。EL素子の層構成は、特に限定されるものではなく、公知のものを制限なく用いることができる。例えば、陽極、発光層、電子輸送層、陰極の層構成からなるものや、陽極と発光層の間に正孔輸送層などを備えるものなどを挙げることができる。発光層は、電極、又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は、発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。無機ELシートは、特に安価に提供することができるので、低コスト化に有利である。従って、ディスポーザブル用途の光源としての利用用途もある。
LEDシートは、p型半導体とn型半導体を接合し、そこに通電することで接合面から光が発生する素子である。素子に電極が接続され、樹脂などによって封止されている。LEDシートは、特に、寿命が長い点において優れている。
本実施形態1においては、面状光源シート20として、無機ELシートを適用した具体例について述べる。無機ELシートとしては、例えば、ルミネシート(有限会社ルミテクノ)(非特許文献3参照)などを適用することができる。
図2(a)に、本実施形態1に係る面状光源シート20の一例を示す模式的平面図を、図2(b)に、図2(a)のIIB-IIB切断部断面図を示す。図2(b)は、図2(a)の点線で示される発光領域30における切断部断面図である。
本実施形態1に係る面状光源シート20は、図2に示すように、透光性基板21、無機エレクトロルミネッセンス層(以下、「無機EL層」と称する)22、保護層23を備える。換言すると、透光性基板21と保護層23の間に無機EL層22が挟持された構造となっている。面状光源シート20は、透光性基板21側から発光するように構成されている。
透光性基板21は、図2(a)に示すように、平面視上、長方形状をしており、光透過性及び絶縁性の基板により構成されている。透光性基板21としては、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックや、硝子等を挙げることができる。変形特性、機械的強度、生産性の観点からは、プラスチック材料が好ましい。なお、透光性基板21の平面視上の形状は、一例であって、これに限定されるものではない。観察試料載置具50の形状等に応じて、適宜設計することも可能である。保護層23は、保護機能を有するフィルム状、若しくはシート状のフィルムであればよく、PETフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを好適に適用することができる。
無機EL層22は、発光領域30において、図4に示すように、第1電極層24、発光層25、誘電体層26、第2電極層27等を備える。なお、上記例は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の構成をとることができる。
第1電極層24は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜により構成する。第2電極層27は、反射性金属等の反射性導電膜(例えば、Ag,Al)等により構成することが好ましい。これにより、発光層25で発する光を金属面等の反射性導電膜で反射させて、透光性基板21側からの発光効率を高め、観察試料をより明るく照明することが可能となる。なお、第2電極層27も透明導電膜により構成し、保護層23の最表面等に、ポリエステルフィルムにアルミ箔を張り合わせた複合材や、アルミ板などの反射特性に優れる材料を貼りつけたりしてもよい。また、このような反射特性の付与は、必須ではなく、用途や目的に応じて反射特性を有していなくてもよい。
第1電極層24は、図2(a)に示すように、第1接続導体31を介して第1端子32に接続されている。同様にして、第2電極層27は、第2接続導体33を介して第2端子34に接続されている。
第1電極層24の上層には、発光層25、誘電体層26がこの順に積層されている。発光層25は、電界印加により、発光する層であり、例えば、ZnS,Cuなどを構成成分として含む。誘電体層26は、例えば、BaTiO3を構成成分とする。
保護層23は、保護機能を有するフィルム状、若しくはシート状のフィルムであればよく、PETフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルム、メジウム等を成分とする薄膜を好適に適用することができる。
面状光源シート20は、必要に応じて、透光性基板21の主面に光学フィルムを配設することができる。光学フィルムとしては、例えば、拡散フィルム、プリズムシート、偏光フィルム等の光学フィルム、その他の指向性機能フィルム等を挙げることができる。また、透光性基板21の材料に色素を含有させることにより着色した基板としてもよい。また、透光性基板21表面を、印刷により着色したり、表面に貼り付けたフィルムの表面に、印刷により着色したりしてもよい。
上記のように構成された面状光源シート20は、第1端子32及び第2端子34に、電力を供給するための給電端子15を接続する等によって、電力が供給される。より詳細には、第1端子32、第2端子34には、インバーター(不図示)を介して電源電圧(交流電源電圧)が供給されるように構成されている。これによって、発光層25が発光し、透光性基板21の表面から発光した光が出射する。従って、透光性基板21の表面側21Aは、発光面として機能する。
なお、面状光源シート20を1つ備える例について述べたが、縦及び横方向に複数、面状光源シート20をマトリクス状に配置するようにしてもよい。例えば、面状光源シート20を縦方向に2つ、横方向に2つの計4つ備えるようにし、4つの全ての照明をオンさせる態様の他、ユーザの選択により、所望ユニットの照明をオン/オフ可能なように構成してもよい。
面状光源シート20の主面は、必要に応じて、曲面を有するものであってもよい。例えば、観察試料載置具50の光照射側の外周形状が、アール形状等の曲率を有するものであっても、この形状に沿って、面状光源シート20を当接させることができる。
面状光源シート20は、用いる顕微鏡の種類等に応じて、若しくは用途に応じて、発光領域の面積等を適宜設計することができる。また、輝度についても、適宜、設計可能である。高輝度が必要な場合には、面状光源シート20自体を複数枚積層したものを用いてもよい。また、顕微鏡装置100において、観察試料の上側、若しくは側面側にも、面状光源シートを併設するようにしてもよい。例えば、鏡柱2の側壁部に沿って、若しくは鏡筒3の下部面に面状光源シートを取り付けてもよい。面状光源シート20は、薄さに優れ、可撓性を備えさせることも容易なため、観察試料の上部側、側面側に位置する顕微鏡装置本体に取り付けることも容易である。
図3に、本実施形態1に係る面状光源シートの発熱状態を検討した結果の一例を示す。ルミネシート(有限会社ルミテクノ社製)を面状光源シートとして用い、これを断熱材(発泡スチロール)上に載置した。測定用温度計は、面状光源シートとその下層に配置された断熱材により挟持した。この面状光源シートに対し、12Vの直流電圧をインバータ電源に入力し、出力された電圧100〜240V、周波数600〜2000Hzの電流を面状光源シートに供給したときの面状光源シート表面の温度を測定した。図3中の横軸は時間(min)を、縦軸は観測温度を示す。同図より、面状光源シートの連続オン時間が120分に及んでも、温度上昇範囲は3℃以内であり、発熱量が僅かであることがわかる。従って、面状光源シート20に対して、放熱機能を有する部材を当接しなくても、実用化可能である
無論、用途やニーズに応じて、面状光源シート20に放熱機能を付与してもよい。例えば、面状光源シート20を載置するステージ自体に放熱機能を付与するようにしてもよい。この場合、本実施形態1によれば、面状光源シートをステージと当接する構造を採用しているので、スペースを取らずに放熱機能を付与することもできる。ステージの材料としては、放熱機能を有する材料として、例えば、熱伝導性の高い金属材料などを用いることができる。また、面状光源シート20の裏面側に放熱機能を有するシートを設置してもよい。
本実施形態1によれば、光源として面状光源シートを用いているので、薄型化を実現できる。しかも、観察試料載置具50に対して、光源である面状光源シート20を当接する態様を採用しているので、光源のためのスペースを最小限に抑制することができる。従って、顕微鏡装置、及び光源装置の小型化を実現することができる。また、面状光源シート20を観察試料載置具50に直接当接する態様を採用しているので、輝度や省電力の点においても優れている。
また、本実施形態1によれば、面状光源シート20は、発光領域30全体が発光する。蛍光灯などによる照明では、面にムラが生じやすかったが、面状光源シート20によれば面全体が均一に発光するので、優れた照明特性を有する。また、面状光源シート20の発光面側に、特段の光学フィルムを挿入しなければ、発光光は、無指向性となり、ほぼ180度の視野で同一の輝度が得られる。指向性を付与したい場合には、所望の光学フィルムを挿入して、指向性のある光を得ることも可能である。
なお、本発明は、面状光源シートのみを光源として使用することにより、十分に顕微鏡装置として機能し得るものであるが、面状光源シート以外の光源を補助光源等として利用することを排除するものではない。
また、顕微鏡装置100は、上記構成の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の構成要素を備えていてもよい。顕微鏡装置100の観察方法としては、明視野法の他、位相差法、微分干渉法、暗視野法、偏光法など特に限定されない。また、上記顕微鏡装置100の構成は、一例であって、上記構成に限定されるものではないことは言うまでもない。また、面状光源シートとして、無機ELシートの例を挙げたが、有機ELシートやLEDシートを適用してもよい。LEDシートとしては、例えば、CL-435Sシリーズ(シチズン電子株式会社)を適用することができる。
(変形例1)
次に、面状光源シートとして有機ELシートを用いた場合の具体例について説明する。図4に、面状光源シート20として有機ELシートを適用した場合の切断部断面図を示す。
透光性基板21z、有機エレクトロルミネッセンス層(以下、「有機EL層」と称する)22z、保護層23zを備える。換言すると、透光性基板21zと保護層23zの間に有機EL層22zが挟持された構造となっている。変形例1に係る面状光源シート20zは、透光性基板21z側から発光するように構成されている。
透光性基板21zは、上記実施形態1と同様に選定することができる。有機EL層22zは、発光領域において、図4に示すように第1電極層24z、正孔輸送層25z、発光層26z、電子輸送層27z、第2電極層28z等を備えている。なお、各層の機械的強度を高めたり、湿度などから保護したりする等のために、面状光源シート20zは、上述以外の構成要素を備えていてもよいことは言うまでもない。
第1電極層24zは、陽極層として、第2電極層28zは、陰極層として機能する。第1電極層24zをITO等の透明導電膜により構成し、第2電極層28zを、反射性金属等の反射性導電膜(例えば、Ag,Al)により構成することが好ましい。これにより、発光層26zで発する光を金属面等の反射性導電膜で反射させて、透光性基板21z側からの発光効率を高め、観察試料をより明るく照明することが可能となる。なお、第2電極も透明導電膜により構成し、保護層23zの最表面等に、ポリエステルフィルムにアルミ箔を張り合わせた複合材や、アルミ板などの反射特性に優れる材料を貼りつけたりしてもよい。
第1電極層24zは、第1接続導体(不図示)を介して第1端子(不図示)に接続されている。同様にして、第2電極層28zは、第2接続導体(不図示)を介して第2端子(不図示)に接続されている。
第1電極層24zの上層には、正孔輸送層25z、発光層26z、電子輸送層27zがこの順に積層されている。正孔輸送層25zの材料としては、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系化合物や芳香族アミン系化合物等を挙げることができる。
発光層26zの材料は、低分子化合物による蒸着薄膜材料、高分子系のポリマー薄膜材料を挙げることができる。低分子化合物による発光層は、芳香族環化合物、複素環化合物、特殊元素含有化合物等に大別される。白色光の取り出し方は、特に限定されず、公知の方法を制限なく適用することができる。例えば、1つの発光層26zから出た光を次の層に設置した蛍光体で色変換することで白色光を得ることができる。また、異なる波長の光を発する発光層を複数重ねて白色光を得るようにしてもよい。
電子輸送層27zの材料は、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体等を挙げることができる。正孔輸送層25z、発光層26z、及び電子輸送層27zは、封止材(不図示)によって、封止されている。封止材としては、シリコーン樹脂等の絶縁性の材料を用いることができる。
なお、上記構成は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形を行うことができることは言うまでもない。
[実施形態2]
次に、上記実施形態1とは異なる顕微鏡装置の一例について説明する。なお、以降の図において、上記実施形態1と同一の要素部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
本実施形態2に係る顕微鏡装置は、以下の点を除く基本的な構成は、上記実施形態1と同様である。すなわち、上記実施形態1に係る顕微鏡装置は、観察試料に対して磁力発生手段を備えていなかったのに対し、本実施形態2に係る顕微鏡装置は、観察試料に対して磁力発生手段を備えている点において相違する。
図5に、本実施形態2に係る顕微鏡装置の一例を示す模式的説明図を示す。顕微鏡装置100aは、上記実施形態1の構成に加えて、物理的刺激発生手段として磁力発生手段40を備える。磁力発生手段40は、ステージ1aに設けられた収容部10の内部に収容されている。
磁力発生手段40は、観察試料載置具50の少なくとも観察領域に磁気を照射する機能を有する。図5に示すように、磁力発生手段40は、観察試料載置具50と面状光源シート20を介して対向配置されている。図6に、実施形態2に係る磁力発生手段40の分解斜視図を、図7に、磁力発生手段40の外観を示す模式的斜視図を示す。面状光源シート20と磁力発生手段40は、本実施形態2のように当接するように配置してもよいし、近接位置に配置するようにしてもよい。顕微鏡装置の小型化の観点からは、面状光源シート20と磁力発生手段40を当接配置することが好ましい。面状光源シート20と磁力発生手段40を当接配置することにより、磁力の減衰の低減をより効果的に抑制することができるというメリットも有する。
磁力発生手段40は、図6及び図7に示すように磁石41、シールド手段42等を具備する。シールド手段42は、磁力遮蔽部材により構成する。これにより、磁石41の磁力線に指向性を付与させることが可能となる。なお、磁力発生手段40としては、磁石41を有していればよく、磁石41に指向性を付与する必要がない場合には、シールド手段42を具備していなくてもよい。
磁石41は、その種類や形状は特に限定されない。例えば、電磁石、超電導磁石、永久磁石を用いることができる。電磁石を用いて電圧、若しくは電流を可変させることにより磁場を変化させてもよい。また、磁気勾配を付与する工夫を施してもよい。磁力発生手段40として、面状光源シート20と略同一サイズ及び形状のものを用い、ステージの上に磁力発生手段、面状光源シート、観察試料載置具をこの順に載置する構成としてもよい。
磁力発生手段40の小型化を実現する観点からは、永久磁石を用いることが好ましい。永久磁石の種類は、特に限定されるものではないが、一例として、フェライト、Ne−Fe−B合金、サマリウム−コバルト合金を挙げることができる。また、顕微鏡装置。自体の少なくとも一部をゴム磁石などの磁石で構成してもよい。強力な磁力を要する場合には、Ne−Fe−B合金が好ましい。磁石41の形状は、特に限定されないが、本実施形態2においては、図7に示すように円柱体とした。また、磁石41として、電磁石を用い、電気のオン、オフにより、磁力線の発生をオン、オフ可能なように構成してもよい。
シールド手段42は、前述したように、磁石41の磁界発生方向に指向性を付与するためのシールド機能を有する。本実施形態2に係るシールド手段42は、ヨーク(継鉄)により構成した。無論、シールド機能を有する材料であればこれに限定されるものではない。本実施形態2においては、磁石41の図7中の円柱体の軸方向の上側(上面41a)に強い磁力が発生するように、シールド手段42であるヨークは、磁石41の側面及び底面を被覆するような凹部形状の円筒体からなる。シールド手段42を設けることにより、磁石41の図6中の上面からの磁力を増強し、他の部分の磁力の大幅な減衰を実現することができる。
従来の顕微鏡装置においては、光源を介して観察試料載置具と磁力発生手段を設置すると、磁力が弱くなってしまい、所望の条件での観察ができないという問題点があった。磁力は、距離の3乗に比例して減衰するためである。すなわち、観察試料載置具50と磁石の間に従来の光源を入れた場合、磁力の減衰が著しく、リアルタイムの顕微鏡観察を行うことが難しかった。
一方、本実施形態2に係る顕微鏡装置によれば、厚みの非常に薄い面状光源シートを光源として用いることにより、磁力発生手段40と観察試料載置具50との間に光源を入れても、磁気の減衰をほとんど無視することができる。また、顕微鏡装置100aの光路が磁力発生手段40により遮断されないので、磁気照射領域におけるリアルタイムの挙動を観察することができる。しかも、構成が簡便であり、磁力発生手段を搭載しても小型化を実現することもできる。
本実施形態2によれば、例えば、磁力環境場での遺伝子−磁性微粒子複合体の細胞表面への吸着、細胞内への食作用、飲作用などによる取り込み、すなわちトランスフェクションのリアルタイムの挙動を、容易に観察することができる。
なお、上記実施形態2においては、磁力発生手段40と面状光源シート20を顕微鏡装置内に配設する態様について述べたが、上記実施形態1で述べたように、面状光源シート20を観察試料載置具50と一体的に配設し、光源装置付き観察試料載置具としてもよい。また、磁力発生手段40、面状光源シート20、観察試料載置具50を一体的に配設し、磁力発生手段及び光源装置付きの観察試料載置具としてもよい。磁力発生手段を面状構造とすれば、ステージにそのまま磁力発生手段及び光源装置付きの観察試料載置具を載置することにより、顕微鏡観察を行うことも可能である。
また、上記実施形態2においては、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に、磁力発生手段40を配設する例を述べたが、これに代えて、他の物理的刺激発生手段を配設してもよい。他の物理的刺激発生手段としては、特に限定されるものではないが、一例としては、以下のものを挙げることができる。
例えば、物理的刺激発生手段として衝撃波発生装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、衝撃波照射下におけるマイクロチャンバ内の培養細胞への高分子・遺伝子導入のリアルタイムの観察等を行うことができる。また、物理的刺激発生手段として超音波発生装置(小型の圧電素子)を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、超音波照射下におけるマイクロチャンバ内の培養細胞への高分子・遺伝子導入のリアルタイムの観察等を行うことができる。
また、物理的刺激発生手段としてレーザ光装置などの光照射装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、活性光線などの特定の光線照射下におけるマイクロチャンバ内の培養細胞への高分子・遺伝子導入のリアルタイムの観察(photochemical internalization)等を行うことができる。
また、物理的刺激発生手段として一重項酸素発生装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、一重項酸素発生条件下におけるマイクロチャンバ内の培養細胞への高分子・遺伝子導入のリアルタイムの観察(photodynamic therapy)等を行うことができる。なお、一重項酸素発生装置は、特定の光線を照射する光照射装置により構成することができる。光感受性物質に励起光を照射することによって、光感受性物質周辺の酸素分子(三重項酸素)を一重項酸素に変換することを利用するものである。例えば、光感受性物質を取り込んだ細胞に励起光を照射することにより、細胞が破壊される様子を観察することができる。これにより、例えば、癌治療、眼科の網膜症治療において有用な知見を提供し得る。
さらに、物理的刺激発生手段として電界印加装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、例えば、電気穿孔(エレクトロポレーション)を用いた高分子・遺伝子導入のリアルタイムの観察等を行うことができる。
また、物理的刺激発生手段として放射能照射装置(密封小線源)を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、例えば、細胞毒性のリアルタイムの観察等を簡便に行うことができる。
なお、物理的刺激発生手段は、単独で用いる場合の他、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、磁力発生手段と超音波発生装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配置し、ガス封入磁性ナノ粒子の挙動をリアルタイムで観察することも可能である。また、磁力発生手段と光照射手段を用い、光感受性物質含有磁性ナノ粒子の挙動をリアルタイムで観察することも可能である。
上記実施形態2においては、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に磁力発生手段40を配設する例を述べたが、これに代えて、観察試料、若しくはその周辺の情報を検知する検出手段を配設してもよい。観察試料、若しくはその周辺からの情報を検知する検出手段としては、特に限定されるものではないが、一例としては、以下のものを挙げることができる。
例えば、検出手段として磁気検出装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、マイクロチャンバ内の培養細胞への磁性体の取り込みのリアルタイムの観察等を行うことができる。若しくは、マイクロ流路内の磁性体通過量などを定量することができる。また、検出手段として温度検出装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、マイクロチャンバ内の温度変化のリアルタイムの観察や、観察試料周辺の厳密な温度管理等を行うことができる。
また、検出手段として放射能検出装置を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができる。これにより、マイクロチャンバ内の培養細胞への放射能の取り込みのリアルタイムの観察等を行うことができる。若しくは、マイクロ流路内の放射能通過量などを定量することができる。その他、公知の各種センサ等を配置することができる。
また、検出手段は、単独で用いる場合の他、複数を組み合わせて用いてもよい。さらに、単独、若しくは複数の検出手段は、単独、若しくは複数の物理的刺激発生手段と組み合わせて用いてもよい。
[実施形態3]
次に、上記実施形態1及び2とは異なる顕微鏡装置の一例について説明する。本実施形態3に係る顕微鏡装置は、以下の点を除く基本的な構成は、上記実施形態2と同様である。すなわち、上記実施形態2に係る顕微鏡装置は、出射光として、白色光を用い、出射光をいわゆる照明光として利用していたのに対し、本実施形態3に係る顕微鏡装置は、出射光として、観察試料に含まれた蛍光物質を励起する特定の励起光を用い、蛍光顕微鏡装置として利用している点において相違する。
本実施形態3に係る顕微鏡装置は、いわゆる蛍光顕微鏡装置である。蛍光顕微鏡装置は、観察試料から発せられる蛍光を観察する装置である。試料の固有の自発蛍光を観察する場合の他、観察試料を蛍光色素による染色を行った上で観察することもできる。また、遺伝子組み換えにより蛍光性タンパク質を発現させて観察を行うこともできる。
蛍光顕微鏡装置においては、観察試料に応じて、ある特定の励起光を発光する面状光源シートを選定して、ステージにセットする。面状光源シートによれば、特定の波長を発光するシートを選定するだけなので、取り扱いが簡便である。前述の方法に代え、若しくは前述の方法と併用して、試料が発する蛍光の波長を取り出すために、適切なフィルタフィルムを設置してもよい。
図8に、本実施形態3に係る面状光源シートの構成を示す模式的な分解斜視図に示す。同図に示すように、特定波長を出射する面状光源シートを複数枚積層したものを用いてもよい。具体的には、第1の面状光源シート20b(1)、第2の面状光源シート20b(2)、第3の面状光源シート20b(3)をこの順に積層することにより、面状光源シート20bを構成してもよい。第1の面状光源シート20b(1)、第2の面状光源シート20b(2)、第3の面状光源シート20b(3)の発光する光を互いに異ならしめ、それぞれ独立にオン、オフ可能な構成とすることにより、ユーザの選択によって、所望の波長の励起光を簡便に発光させることができる。1枚当たりの面状光源シートの厚みは、非常に薄いので、磁力発生手段を面状光源シート20bの裏面側に設けた場合であっても、磁力を十分に観察試料に照射することが可能である。また、レボルバ6に対物レンズを複数取り付けるように、回動ステージに複数の励起波長の異なる面状光源シートを複数セットしておき、回動ステージを回転させることにより、観察試料に照射する面状光源シートを適宜選択可能なように構成してもよい。
本実施形態3に係る顕微鏡装置によれば、上記実施形態2と同様に、磁場環境下におけるリアルタイムの挙動を、大掛かりな装置を用いずに、小型化を実現しつつ観察することができる。本実施形態3に係る顕微鏡装置によれば、例えば、蛍光標識された磁性微粒子の経時的分布の様子を容易に観察することができる。また、CCDカメラを併用することにより、例えば、標的物質の細胞内での分布状況等を画像処理することもできる。
[実施形態4]
次に、上記実施形態1〜3とは異なる光源装置付きの観察試料載置具の一例について説明する。本実施形態4に係る顕微鏡装置は、以下の点を除く基本的な構成は、上記実施形態1と同様である。すなわち、上記実施形態1に係る顕微鏡装置は、面状光源シートが観察試料載置具50の下面側で当接していたのに対し、本実施形態4においては、面状光源シートが観察試料載置具の上面側で当接している点において相違する。また、実施形態4においては、倒立顕微鏡装置を適用している点において相違する。
倒立顕微鏡は、対物レンズが観察対象物の下側に位置する顕微鏡である。培養細胞を培養容器ごと観察したり、マイクロマニピュレーションを行ったりするのに特に適している。
図9に、本実施形態4に係る観察試料載置具50cと面状光源シート20cとステージ1cの配置を説明するための模式的な分解斜視図を示す。同図に示すように、ステージ1cの上に観察試料載置具50cを直接載置し、その直上に、観察試料載置具50cと当接するように面状光源シート20cを設置する。観察試料載置具50cは、例えば、マイクロチャネルアレイや、細胞培養ウェルである。勿論、スライドガラスなどにも適用できることは言うまでもない。
本実施形態4に係る顕微鏡装置によれば、光源である面状光源シート20cを観察試料載置具50cの直上に設置することができるので、倒立顕微用等において好適に適用することができる。また、光源として、面状光源シート20cを適用しているので、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態4に係る態様においても、物理的刺激発生手段や、観察試料、若しくはその周辺の情報を検知する検出手段を、面状光源シートを介して観察試料載置具と対向する位置に配設することができることは言うまでもない。すなわち、観察試料載置具の上層に、これと当接するように面状光源シートを配設し、さらに、面状光源シートと当接、若しくは近接するように、物理的刺激発生手段や、観察試料、若しくはその周辺の情報を検知する検出手段を配設することが可能である。
[実施形態5]
次に、上記実施形態とは異なる光源装置付きの観察試料載置具の一例について説明する。本実施形態4に係る光源装置付きの観察試料載置具は、以下の点を除く基本的な構成は、上記実施形態2と同様である。すなわち、上記実施形態2においては、観察試料載置具50が、スライドガラスであったのに対し、本実施形態5においては、観察試料載置具が、内部流路を有した細胞培養装置である点において相違する。
図10に、観察試料載置具50d、面状光源シート20、磁力発生手段40の配置を説明するための模式的な分解断面図を示す。観察試料載置具50dは、細胞培養装置である。観察試料載置具50dは、図10に示すように、循環手段52に接続されている。本発明に係る観察試料載置具50dは、例えば、遺伝子や薬剤等の標的物質を細胞内に導入する細胞培養器として利用可能である。
観察試料載置具50dは、図10に示すように、2つの接続部53と、内部流路54を備える。2つの接続部53は、流体を導入、若しくは流出するポートとして機能する。内部流路54は、2つの接続部53間を連通するように構成されている。内部流路54の構造は、後述する循環手段52により流体が移動可能であればよく、その構造は特に限定されない。内部流路54の壁面のうち、少なくとも後述する磁気照射領域に細胞が固定可能な培地領域を有する。内部流路54の壁面全面を、細胞の固定化可能な領域としてもよい。
観察試料載置具50dの筐体の材料は、透明な樹脂材料等により構成する。細胞を固定化する内部流路54内には、通常、細胞が培養可能なように表面処理を予め実施しておく。当該表面処理は、公知の方法を制限なく利用することができる。細胞付着性コーティングが施された市販品を適用してもよい。
循環手段52は、流体を内部流路54内で循環させる役割を担う。図10の例においては、2つの接続部53に接続されるチューブ55を有する。循環手段52を用いることにより、観察試料載置具50dよりも多い容積の流体を循環させることが可能となる。
観察試料載置具50dの直下層には、面状光源シート20及び磁力発生手段40が配設されている。
なお、図10の観察試料載置具50dは一例であって、種々の変形が可能である。例えば、2つの接続部53に代えて、3つ以上の接続部を有する構成としてもよい。また、接続部53の位置は、観察試料載置具50dの上面に限定されるものではなく、底面や側面に設けてもよい。
また、内部流路54のサイズや流路幅等は、用途やニーズに応じて設計すればよい。図10の例においては、一直線上の内部流路の例を示しているが、分岐構造を有する内部流路や、螺旋構造を有する内部流路であってもよい。
本実施形態5によれば、厚みの非常に薄い面状光源シート20を光源として用いることにより、磁力発生手段40と観察試料載置具50dとの間に光源を入れても、磁気の減衰をほとんど無視することができる。また、顕微鏡装置100の光路を磁力発生手段40により遮断しないので、磁気照射領域におけるリアルタイムの挙動を観察することができる。しかも、構成が簡便であるため、小型化を実現することもできる。
なお、上記実施形態1〜5は、適宜組み合わせて適用することができる。また、上記実施形態1〜5以外の構成の顕微鏡装置に、本発明に係る光源装置、及び光源装置付き観察試料載置具を適用することができることは言うまでもない。また、顕微鏡装置として、透過型の顕微鏡装置、蛍光顕微鏡装置の例を挙げたが、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の顕微鏡装置も含む。また、無機ELシート、有機ELシートと、LEDシートなどの種類の異なる面状光源シートを積層、若しくは組み合わせて使用することにより、光源装置を構成してもよい。