JP2011016898A - 潤滑油の設定方法及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油の開発に関する手間やコストを削減しつつ、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油の設定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基油と該基油に添加される添加剤とを有する潤滑油の設定方法であって、基油の蒸発特性及び添加剤の第2蒸発特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する設定工程を有するという方法を採用する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、基油と該基油に添加される添加剤とを有する潤滑油の設定方法であって、基油の蒸発特性及び添加剤の第2蒸発特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する設定工程を有するという方法を採用する。
【選択図】なし
Description
本発明は、潤滑油の設定方法及び製造方法に関するものである。
従来から、エンジンやターボチャージャ等の駆動装置には、装置の作動に伴い擦動する箇所が存在するため、この擦動箇所を潤滑するための潤滑油が上記装置に供給されている。
潤滑油は、基油と、基油に添加される各種の添加剤とを有している。添加剤の種類としては、潤滑油の潤滑性能に関係する摩擦調整剤や粘度指数向上剤、潤滑油の酸化劣化を防止するための酸化防止剤、エンジン内部や油流路内を清浄に保つための清浄分散剤等が挙げられる。
潤滑油は、基油と、基油に添加される各種の添加剤とを有している。添加剤の種類としては、潤滑油の潤滑性能に関係する摩擦調整剤や粘度指数向上剤、潤滑油の酸化劣化を防止するための酸化防止剤、エンジン内部や油流路内を清浄に保つための清浄分散剤等が挙げられる。
ところで、上記装置の内部は高温(例えば、300℃等)となっているため、供給された潤滑油は熱によって変質・炭化し、コーキングと呼ばれる炭化物が生成される。このコーキングは、装置の性能を低下させ、安全な運転を妨げることから、その生成量を抑制することが求められている。
ここで、特許文献1には、コーキングの生成量を抑制することのできる粘度指数向上剤及び潤滑油が開示されている。
ここで、特許文献1には、コーキングの生成量を抑制することのできる粘度指数向上剤及び潤滑油が開示されている。
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
現在、新たな潤滑油を開発する場合には、未だ試行錯誤の方法によることが一般的である。そのため、基油及び添加剤の種類や配合割合を様々に変えたテスト用の潤滑油を用いて、コーキング生成に関する検証試験を行い、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を開発している。したがって、潤滑油の開発には、多くの手間及びコストが生じてしまうという課題があった。
現在、新たな潤滑油を開発する場合には、未だ試行錯誤の方法によることが一般的である。そのため、基油及び添加剤の種類や配合割合を様々に変えたテスト用の潤滑油を用いて、コーキング生成に関する検証試験を行い、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を開発している。したがって、潤滑油の開発には、多くの手間及びコストが生じてしまうという課題があった。
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、潤滑油の開発に関する手間やコストを削減しつつ、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油の設定方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、基油と該基油に添加される添加剤とを有する潤滑油の設定方法であって、基油の蒸発特性と添加剤の第2蒸発特性との差に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する設定工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性と第2蒸発特性との差と、潤滑油のコーキング性能との間には所定の相関関係が存在しているため、蒸発特性と第2蒸発特性との差に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を設定することが可能となる。
本発明は、基油と該基油に添加される添加剤とを有する潤滑油の設定方法であって、基油の蒸発特性と添加剤の第2蒸発特性との差に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する設定工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性と第2蒸発特性との差と、潤滑油のコーキング性能との間には所定の相関関係が存在しているため、蒸発特性と第2蒸発特性との差に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を設定することが可能となる。
また、本発明は、蒸発特性を計測する工程と、第2蒸発特性を計測する工程とを有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、予め蒸発特性及び第2蒸発特性を計測し、それらの特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する。
このような方法を採用する本発明では、予め蒸発特性及び第2蒸発特性を計測し、それらの特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する。
また、本発明は、設定工程では、蒸発特性と第2蒸発特性との差と、添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合とに基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合が設定されるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性と第2蒸発特性との差及び添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合と、潤滑油のコーキング性能との間には所定の相関関係が存在しているため、蒸発特性と第2蒸発特性との差及び上記各含有割合に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を設定することが可能となる。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性と第2蒸発特性との差及び添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合と、潤滑油のコーキング性能との間には所定の相関関係が存在しているため、蒸発特性と第2蒸発特性との差及び上記各含有割合に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を設定することが可能となる。
また、本発明は、モリブデンの含有割合は、潤滑油におけるモリブデンの質量濃度であり、ポリメタクリレートの含有割合は、赤外分光法を用いて計測された添加剤に対するポリメタクリレートの吸光度比であるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、液体である潤滑油に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの含有割合を容易に計測することが可能となる。
このような方法を採用する本発明では、液体である潤滑油に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの含有割合を容易に計測することが可能となる。
また、本発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の潤滑油の設定方法を用いて設定された基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合に従って、基油と添加剤とを配合する工程を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性及び第2蒸発特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を製造することが可能となる。
このような方法を採用する本発明では、蒸発特性及び第2蒸発特性に基づいて、基油及び添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定することで、コーキングの生成量を想定しつつ潤滑油を製造することが可能となる。
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、コーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
本発明によれば、コーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
以下、本発明の潤滑油の設定方法及び製造方法に係る実施の形態を、図1Aから図5を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態における潤滑油は、内燃機関やターボチャージャ等の駆動装置における摺動箇所を潤滑するために供給されるものである。
潤滑油は、基剤となる基油と、該基油に添加される添加剤とを有している。
基油としては、石油を精製して得られる鉱物油、石油や天然ガスを化学的に分解し再合成して得られるポリアルファオレフィンやエステル等の化学合成油、及びそれらを混合して得られる部分合成油等が用いられる。また、ひまし油等の植物油を用いてもよい。
本実施形態における潤滑油は、内燃機関やターボチャージャ等の駆動装置における摺動箇所を潤滑するために供給されるものである。
潤滑油は、基剤となる基油と、該基油に添加される添加剤とを有している。
基油としては、石油を精製して得られる鉱物油、石油や天然ガスを化学的に分解し再合成して得られるポリアルファオレフィンやエステル等の化学合成油、及びそれらを混合して得られる部分合成油等が用いられる。また、ひまし油等の植物油を用いてもよい。
添加剤は、潤滑油の様々な性能を向上させるために基油に添加されるものである。添加剤としては、潤滑油の潤滑性能に向上させる摩擦調整剤や粘度指数向上剤、潤滑油の酸化劣化を防ぐための酸化防止剤、エンジン内部や油流路内を清浄に保つための清浄分散剤、低温時の潤滑油の凝固を防止するための流動点降下剤等が用いられ、一般的にはこれらの複数種類の添加剤が同時に添加されている。また、摩擦調整剤として、モリブデンを含有する添加剤が多く用いられ、粘度指数向上剤として、ポリメタクリレートが多く用いられている。
続いて、基油の蒸発特性と添加剤全体の第2蒸発特性との差と、潤滑油のコーキング性能との間の相関関係を説明する。
潤滑油について、基油の蒸発特性と添加剤全体の第2蒸発特性とを計測した。検証に用いた潤滑油は一般的に市販されているものであって、3社計6種類の潤滑油を用いた。以下、6種類の潤滑油を、A社製オイル1、A社製オイル2、B社製オイル1、B社製オイル2、C社製オイル1及びC社製オイル2と称する。
潤滑油について、基油の蒸発特性と添加剤全体の第2蒸発特性とを計測した。検証に用いた潤滑油は一般的に市販されているものであって、3社計6種類の潤滑油を用いた。以下、6種類の潤滑油を、A社製オイル1、A社製オイル2、B社製オイル1、B社製オイル2、C社製オイル1及びC社製オイル2と称する。
まず、上記6種類の潤滑油における、基油と添加剤とを分離した。この分離は、ゴム膜分離と溶剤抽出の2段階に分けて行った。ゴム膜分離では、分離前の潤滑油をゴム膜に入れソックスレー抽出器を用いて分離する。この工程では、潤滑油から粘度指数向上剤や清浄分散剤等の添加剤が分離される。
次に、溶剤抽出では、ゴム膜分離によって粘度指数向上剤等が分離された残りの潤滑油を、メタノールと混合して振とうし、油相とメタノール相とに分離させた後、それぞれを回収する。この工程では、基油と残りの添加剤とが分離される。
以上の工程により、基油と、基油に添加された全ての添加剤とが分離される。
次に、溶剤抽出では、ゴム膜分離によって粘度指数向上剤等が分離された残りの潤滑油を、メタノールと混合して振とうし、油相とメタノール相とに分離させた後、それぞれを回収する。この工程では、基油と残りの添加剤とが分離される。
以上の工程により、基油と、基油に添加された全ての添加剤とが分離される。
次に、基油の蒸発特性及び添加剤全体の第2蒸発特性を計測した。本実施形態では、蒸発特性及び第2蒸発特性として、基油及び添加剤全体をそれぞれ加熱したときの蒸発率を用いる。この蒸発率は、被計測物の蒸発前の全質量に対する、所定の温度で蒸発した気化分の質量の割合で表される。また、蒸発率は、示差熱天秤を用いた熱重量測定法(Thermo Gravimetry、以下「TG」と称する)を用いて計測した。TGの条件としては、被計測物を室温である20℃近傍から900℃まで昇温させ、且つ昇温の速度を分速10℃とした。なお、被計測物の周囲には、不活性ガスであるアルゴンを充填している。
TGの結果を図1Aから図1Fに示す。
図1Aは、A社製オイル1の基油及び添加剤の各蒸発率を示すグラフである。図1Bないし図1Fは、A社製オイル2、B社製オイル1、B社製オイル2、C社製オイル1及びC社製オイル2の基油及び添加剤の各蒸発率を各々示すグラフである。
図1Aから図1Fに示すように、いずれの温度においても基油の蒸発率が添加剤全体の蒸発率よりも高くなっている。これは、潤滑油を加熱した場合に、基油は加熱と共に蒸発して飛散するのに対し、添加剤は蒸発し難く長時間液体のままであるため、潤滑油における添加剤の含有割合が高温になるにつれて上昇することを表している。
図1Aは、A社製オイル1の基油及び添加剤の各蒸発率を示すグラフである。図1Bないし図1Fは、A社製オイル2、B社製オイル1、B社製オイル2、C社製オイル1及びC社製オイル2の基油及び添加剤の各蒸発率を各々示すグラフである。
図1Aから図1Fに示すように、いずれの温度においても基油の蒸発率が添加剤全体の蒸発率よりも高くなっている。これは、潤滑油を加熱した場合に、基油は加熱と共に蒸発して飛散するのに対し、添加剤は蒸発し難く長時間液体のままであるため、潤滑油における添加剤の含有割合が高温になるにつれて上昇することを表している。
次に、A社製オイル1の基油と添加剤全体との間の蒸発率差と、生成されるコーキング量との相関関係を検証した。
図1Aから図1Fまでに示すように、基油と添加剤全体との間の蒸発率差は、高温になるにつれて拡大する傾向を示している。そのため、潤滑油を所定の温度に加熱して維持することで、基油の蒸発率と添加剤全体の蒸発率との差すなわち蒸発率差を任意の値に維持することができる。そこで、潤滑油を加熱して蒸発率差を様々な値に維持しつつ、潤滑油から生成されるコーキングの生成量を計測した。なお、コーキングを生成する方法としては、パネルコーキング試験法(Fed Test Method Std.791-3462準拠)を用いた。この試験法は、加熱したパネルに潤滑油を間欠的に跳ねかけさせ、パネル上にコーキングを生成するものである。
図1Aから図1Fまでに示すように、基油と添加剤全体との間の蒸発率差は、高温になるにつれて拡大する傾向を示している。そのため、潤滑油を所定の温度に加熱して維持することで、基油の蒸発率と添加剤全体の蒸発率との差すなわち蒸発率差を任意の値に維持することができる。そこで、潤滑油を加熱して蒸発率差を様々な値に維持しつつ、潤滑油から生成されるコーキングの生成量を計測した。なお、コーキングを生成する方法としては、パネルコーキング試験法(Fed Test Method Std.791-3462準拠)を用いた。この試験法は、加熱したパネルに潤滑油を間欠的に跳ねかけさせ、パネル上にコーキングを生成するものである。
図2Aは、A社製オイル1の基油と添加剤全体との間の蒸発率差と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図2Aに示すように、A社製オイル1の蒸発率差と生成されるコーキング量との間には正比例の関係が見られ、A社製オイル1の温度を上昇させ蒸発率差を大きくするにつれて、生成されるコーキング量が多くなることが判明した。すなわち、基油と添加剤全体との間の蒸発率差を所定の値に設定することで、生成されるコーキング量を制御することが可能となる。
図2Aに示すように、A社製オイル1の蒸発率差と生成されるコーキング量との間には正比例の関係が見られ、A社製オイル1の温度を上昇させ蒸発率差を大きくするにつれて、生成されるコーキング量が多くなることが判明した。すなわち、基油と添加剤全体との間の蒸発率差を所定の値に設定することで、生成されるコーキング量を制御することが可能となる。
また、A社製オイル1を除く5種類の潤滑油において、基油と添加剤全体との間の蒸発率差と、生成されるコーキング量との相関関係を検証した。
複数の潤滑油においては一定の温度に維持しても、その基油と添加剤全体との間の蒸発率差が様々に異なる場合がある。これは、各潤滑油における基油及び添加剤の種類や配合割合が異なるためである。そこで、A社製オイル1を除く5種類の潤滑油を所定の温度に維持し、その温度に維持された潤滑油から生成されるコーキングの生成量をパネルコーキング試験法を用いて計測した。
複数の潤滑油においては一定の温度に維持しても、その基油と添加剤全体との間の蒸発率差が様々に異なる場合がある。これは、各潤滑油における基油及び添加剤の種類や配合割合が異なるためである。そこで、A社製オイル1を除く5種類の潤滑油を所定の温度に維持し、その温度に維持された潤滑油から生成されるコーキングの生成量をパネルコーキング試験法を用いて計測した。
図2Bは、複数の潤滑油における基油と添加剤全体との間の蒸発率差と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図2Bに示すように、所定の温度に維持したのみで各潤滑油における蒸発率差は様々に異なっている。さらに、それらの蒸発率差と生成されるコーキング量との間には正比例の関係が見られ、複数の潤滑油のうち蒸発率差が大きな潤滑油からは多量のコーキングが生成されることが判明した。すなわち、複数の潤滑油において、基油と添加剤との間の蒸発率差が小さな潤滑油を用いることで、生成されるコーキング量を抑制することが可能となる。
図2Bに示すように、所定の温度に維持したのみで各潤滑油における蒸発率差は様々に異なっている。さらに、それらの蒸発率差と生成されるコーキング量との間には正比例の関係が見られ、複数の潤滑油のうち蒸発率差が大きな潤滑油からは多量のコーキングが生成されることが判明した。すなわち、複数の潤滑油において、基油と添加剤との間の蒸発率差が小さな潤滑油を用いることで、生成されるコーキング量を抑制することが可能となる。
続いて、新たな潤滑油を開発するにあたり、潤滑油における基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定する方法、及びその設定に従って基油と添加剤とを配合し潤滑油を製造する方法について説明する。
まず、潤滑油に使用される可能性のある各種の基油及び各種の添加剤のそれぞれについて蒸発率を計測する。この蒸発率も、TGを用いて計測してよい。
まず、潤滑油に使用される可能性のある各種の基油及び各種の添加剤のそれぞれについて蒸発率を計測する。この蒸発率も、TGを用いて計測してよい。
次に、各種の基油から少なくとも一種類の基油を選択し、且つ各種の添加剤から潤滑油の各性能(潤滑性能、耐酸化性能、汚濁防止性能等)を満たすための少なくとも一種類の添加剤を選択する。このとき、先に計測したそれぞれの蒸発率を参照して、基油の蒸発率と、添加剤全体での蒸発率とがより近づくように、基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定する。もしくは、潤滑油に要求されるコーキング性能すなわち生成されるコーキング量を所定の値以下に抑制する等の条件がある場合には、基油と添加剤全体との間の蒸発率差がコーキング量に関する上記条件を満たすように、基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定する。
よって、新たな潤滑油を開発するにあたり、コーキングの生成量を想定しつつ、基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定することができる。
よって、新たな潤滑油を開発するにあたり、コーキングの生成量を想定しつつ、基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定することができる。
なお、基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定した後に、設定した種類及び配合割合に従って基油と添加剤とをそれぞれ配合し、確認のためにそれぞれの蒸発率を計測して蒸発率差を検証してもよい。さらに、設定した蒸発率差と、実測した蒸発率差とを比較し、その結果を用いて基油及び添加剤の種類と配合割合とを適宜調整してもよい。
最後に、設定した種類及び配合割合に従って基油と添加剤とをそれぞれ配合し、潤滑油を製造する。
よって、コーキングの生成量を想定しつつ、潤滑油を製造することができる。
よって、コーキングの生成量を想定しつつ、潤滑油を製造することができる。
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、コーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を、少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
本実施形態によれば、コーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量を抑制できる潤滑油を、少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
〔第2実施形態〕
本実施形態における潤滑油は、第1の実施形態と同じく、内燃機関やターボチャージャ等の駆動装置に供給されるものである。そのため、その構成についての説明は省略する。
続いて、基油の蒸発特性と添加剤全体の第2蒸発特性との差、及び添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合と、潤滑油のコーキング性能との間の相関関係を説明する。
本実施形態における潤滑油は、第1の実施形態と同じく、内燃機関やターボチャージャ等の駆動装置に供給されるものである。そのため、その構成についての説明は省略する。
続いて、基油の蒸発特性と添加剤全体の第2蒸発特性との差、及び添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合と、潤滑油のコーキング性能との間の相関関係を説明する。
潤滑油に含まれる有機化合物系の各添加剤と、潤滑油のコーキング性能との間の相関関係を検証した。なお、この検証には、第1の実施形態で用いた6種類の潤滑油を用いている。
まず、第1の実施形態で用いた分離法により、潤滑油における基油と全ての添加剤とを分離した。
まず、第1の実施形態で用いた分離法により、潤滑油における基油と全ての添加剤とを分離した。
次に、赤外分光法(Infrared Spectroscopy、以下、略称であるIRと称する)を用いて、潤滑油に含まれる各添加剤の、添加剤全体に対する含有割合を計測した。
各添加剤は、炭素と水素の共有結合(C−H結合)を多く有している。このC−H結合は、波長2880cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示すため、添加剤全体をIRにより分析すると波長2880cm-1における吸光度は十分に大きく、この吸光度を添加剤全体とみなすことができる。また、潤滑油に含まれる各添加剤は、それぞれが特徴的な分子構造を有しており、その分子構造に由来する赤外吸収スペクトルのピークは、各添加剤の存在を示すものとなる。
よって、波長2880cm-1での吸光度に対する所定の波長の吸光度の比は、添加剤全体に対する各添加剤の含有割合とみなすことができる。
各添加剤は、炭素と水素の共有結合(C−H結合)を多く有している。このC−H結合は、波長2880cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示すため、添加剤全体をIRにより分析すると波長2880cm-1における吸光度は十分に大きく、この吸光度を添加剤全体とみなすことができる。また、潤滑油に含まれる各添加剤は、それぞれが特徴的な分子構造を有しており、その分子構造に由来する赤外吸収スペクトルのピークは、各添加剤の存在を示すものとなる。
よって、波長2880cm-1での吸光度に対する所定の波長の吸光度の比は、添加剤全体に対する各添加剤の含有割合とみなすことができる。
そこで、6種類の潤滑油に関して、波長2880cm-1の吸光度に対する、波長860cm-1、1140cm-1、1170cm-1、1240cm-1、1370cm-1、1470cm-1及び1700cm-1での各吸光度の比を計測した。さらに、6種類の潤滑油におけるコーキング量を計測し、添加剤全体に対する各添加剤の含有割合(吸光度比)と、コーキング量との相関関係を検証した。
図3Aは、添加剤全体に対する波長860cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す添加剤の含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。図3Bないし図3Gは、添加剤全体に対する波長1140cm-1、1170cm-1、1240cm-1、1370cm-1、1470cm-1及び1700cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す添加剤の含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を各々示すグラフである。
図3A、図3Dないし図3Gに示すように、波長860cm-1、1240cm-1、1370cm-1、1470cm-1及び1700cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す添加剤と、生成されるコーキング量との間に特別な相関関係は確認できない。
一方、図3B及び図3Cに示すように、波長1140cm-1及び1170cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す添加剤と、生成されるコーキング量との間には正比例の関係が確認できる。
また、波長1170cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す代表的な添加剤としては、粘度指数向上剤としてのポリメタクリレートが挙げられる。これは、ポリメタクリレートが有するエステル結合が、波長1170cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示すためである。したがって、添加剤全体に対するポリメタクリレートの含有割合(吸光度比)は、生成されるコーキング量との間に正比例の関係を有することが判明した。
また、波長1170cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示す代表的な添加剤としては、粘度指数向上剤としてのポリメタクリレートが挙げられる。これは、ポリメタクリレートが有するエステル結合が、波長1170cm-1での赤外吸収スペクトルのピークを示すためである。したがって、添加剤全体に対するポリメタクリレートの含有割合(吸光度比)は、生成されるコーキング量との間に正比例の関係を有することが判明した。
次に、潤滑油に含まれる金属と、潤滑油のコーキング性能との間の相関関係を検証した。なお、この検証には、第1の実施形態で用いた6種類の潤滑油を用いている。
潤滑油を基油と添加剤とに分離せず、そのままの状態から潤滑油に含まれる金属の含有割合を計測するために、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析を使用したSOAP分析(Spectrometric Oil Analysis Program)を用いて計測した。なお、計測の対象となる金属は亜鉛及びモリブデンであり、この含有割合は潤滑油における亜鉛及びモリブデンの各質量濃度(単位ppm)である。
さらに、6種類の潤滑油におけるコーキング量を計測し、潤滑油全体に対する亜鉛及びモリブデンの含有割合と、コーキング量との相関関係を検証した。
さらに、6種類の潤滑油におけるコーキング量を計測し、潤滑油全体に対する亜鉛及びモリブデンの含有割合と、コーキング量との相関関係を検証した。
図4Aは、潤滑油に対する亜鉛の含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図4Bは、潤滑油に対するモリブデンの含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図4Aに示すように、亜鉛と、生成されるコーキング量との間に特別な相関関係は確認できない。
一方、図4Bに示すように、モリブデンと、生成されるコーキング量との間には正比例の関係が確認できる。したがって、潤滑油に対するモリブデンの含有割合(質量濃度)は、生成されるコーキング量との間に正比例の関係を有することが判明した。
図4Bは、潤滑油に対するモリブデンの含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図4Aに示すように、亜鉛と、生成されるコーキング量との間に特別な相関関係は確認できない。
一方、図4Bに示すように、モリブデンと、生成されるコーキング量との間には正比例の関係が確認できる。したがって、潤滑油に対するモリブデンの含有割合(質量濃度)は、生成されるコーキング量との間に正比例の関係を有することが判明した。
次に、潤滑油の基油と添加剤全体との蒸発率差、潤滑油に対するモリブデンの含有割合、及び添加剤全体に対するポリメタクリレートの含有割合と、生成されるコーキング量との相関関係を検証した。
第1の実施形態での検証結果と図3C及び図4Bとに示すように、潤滑油の基油と添加剤全体との蒸発率差、潤滑油に対するモリブデンの含有割合(質量濃度)、及び添加剤全体に対するポリメタクリレートの含有割合(吸光度比)は、生成されるコーキング量との間にそれぞれ相関関係を有していることが判明した。
そこで、6種類の潤滑油において、潤滑油の蒸発率差、潤滑油におけるモリブデンの質量濃度、及び添加剤全体を示す吸光度に対するポリメタクリレートを示す吸光度の比(吸光度比)を全て掛け合わせた値と、生成されるコーキング量との相関関係を検証した。
そこで、6種類の潤滑油において、潤滑油の蒸発率差、潤滑油におけるモリブデンの質量濃度、及び添加剤全体を示す吸光度に対するポリメタクリレートを示す吸光度の比(吸光度比)を全て掛け合わせた値と、生成されるコーキング量との相関関係を検証した。
図5は、蒸発率差、モリブデン質量濃度、及びポリメタクリレートの吸光度比を全て掛け合わせた値と、生成されるコーキング量との相関関係を示すグラフである。
図5に示すように、上記掛け合わせた値と、生成されるコーキング量との間には略正比例の相関関係が存在することが判明した。また、上記掛け合わせた値をXとし、生成されるコーキング量をYとし、各点を最小二乗法により直線近似した式は、Y=1.317X−35.077となった。
図5に示すように、上記掛け合わせた値と、生成されるコーキング量との間には略正比例の相関関係が存在することが判明した。また、上記掛け合わせた値をXとし、生成されるコーキング量をYとし、各点を最小二乗法により直線近似した式は、Y=1.317X−35.077となった。
よって、上記式に従い、蒸発率差、モリブデン質量濃度及びポリメタクリレートの吸光度比を掛け合わせた値Xを所定の値に設定することで、所定のコーキング生成量Yを持つ潤滑油を開発することができる。そのため、上記値Xを所定の値となるように、潤滑油における基油及び添加剤の種類と配合割合とを設定することで、所定のコーキング生成量Yを持つ潤滑油を開発及び製造することができる。
なお、具体的な潤滑油の設定方法及び製造方法は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
なお、具体的な潤滑油の設定方法及び製造方法は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加え、上記式に従いコーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量をより正確に予測できる潤滑油を、少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
本実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加え、上記式に従いコーキングの生成量を想定して潤滑油を設定できることから、コーキングの生成量をより正確に予測できる潤滑油を、少ない手間及びコストで開発できるという効果がある。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成物の諸性質や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの含有割合として、潤滑油におけるモリブデン質量濃度及び添加剤全体に対するポリメタクリレートの吸光度比を用いていたが、これに限定されるものではなく、モリブデン及びポリメタクリレートの含有割合を示し、且つコーキング量との相関関係を有する他の指標を用いてもよい。
また、上記実施形態では、潤滑油は内燃機関やターボチャージャ等の駆動装置に供給されるものであるが、これに限定されるものではなく、例えば焼き入れ処理や浸炭処理等を行う熱処理装置に供給される潤滑油であってもよい。
Claims (5)
- 基油と、該基油に添加される添加剤とを有する潤滑油の設定方法であって、
前記基油の蒸発特性と前記添加剤の第2蒸発特性との差に基づいて、前記基油及び前記添加剤のそれぞれの種類及び配合割合を設定する設定工程を有することを特徴とする潤滑油の設定方法。 - 請求項1に記載の潤滑油の設定方法において、
前記蒸発特性を計測する工程と、
前記第2蒸発特性を計測する工程とを有することを特徴とする潤滑油の設定方法。 - 請求項1又は2に記載の潤滑油の設定方法において、
前記設定工程では、前記蒸発特性と前記第2蒸発特性との差と、前記添加剤に含まれるモリブデン及びポリメタクリレートの各含有割合とに基づいて、前記基油及び前記添加剤のそれぞれの種類及び配合割合が設定されることを特徴とする潤滑油の設定方法。 - 請求項3に記載の潤滑油の設定方法において、
前記モリブデンの含有割合は、前記潤滑油における前記モリブデンの質量濃度であり、
前記ポリメタクリレートの含有割合は、赤外分光法を用いて計測された前記添加剤に対する前記ポリメタクリレートの吸光度比であることを特徴とする潤滑油の設定方法。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の潤滑油の設定方法を用いて設定された前記基油及び前記添加剤のそれぞれの種類及び配合割合に従って、前記基油と前記添加剤とを配合する工程を有することを特徴とする潤滑油の製造方法。
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-
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- 2009-07-08 JP JP2009161800A patent/JP2011016898A/ja active Pending
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