JP2011015747A - 装着状態における動き易さの評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつを対象とした場合に、そのおむつを装着した状態での装着者の下肢の動き易さを客観的に評価する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の評価方法は、パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度に基づき、該おむつを装着した状態での下肢の動き易さを評価する方法である。下肢の筋負担は、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋の程度に基づき評価する。
【選択図】図5

Description

本発明は、パンツ型おむつを装着した状態での装着者の下肢の動き易さを評価する方法に関する。
乳幼児のパンツ型使い捨ておむつは、這い歩き期の乳児から自由に走り回ることができる幼児までを主に着用の対象にしている。這い歩き期の幼児や、つかまり立ちやひとり歩きができ出した幼児に対しては、おむつを装着した状態での下肢の動き易さに関して直接意見を聞くことはできず、これまでは、そのおむつを装着した状態を外観で評価するしか方法がなかった。
下肢の動きに関し、これを下肢の筋負担と関連づけて検討する報告が知られている。例えば、非特許文献1では、新生児、乳児、幼児、成人の歩行から高齢者の歩行までの下肢の筋電図(EMG)を測定している。筋収縮に参加する筋線維の数が多いほど大きなEMGが観測されることから、EMGは筋負担の程度を示す指標となる。同文献では、EMGの測定結果から、成長の段階により筋の使い方が異なることが報告されている。また、非特許文献2には、タイトスカートをはいて大腿を拘束した状態で歩行させたときの下肢の筋電図を測定した結果が報告されている。このように、下肢の筋負担をEMGと関連づけて検討する試みは、これまでになされているが、パンツ型おむつが下肢の動き易さにどのような影響を与えるかについての検討は行われていない。
下肢の動き易さとは異なるが、筋電図の測定に基づいてパンツ型おむつの履き易さを評価する方法として、本出願人は先に、着用者の腕の筋負担の程度に基づいておむつの履き易さを評価する方法を提案した(特許文献1参照)。この評価方法によれば、筋電図の測定と主観的評価との相関が見られ、筋電図の測定によりおむつの履き易さについて信頼性の高い評価が可能となる。しかし、同文献に記載の評価方法は、腕の筋負担の程度に基づくものであり、腕以外の体の部位を対象としてまでは筋負担の測定は行っていない。
岡本勉、岡本香代子著,「筋電図からみた歩行の発達」,歩行開発研究所出版,2007年,p.56−59 猪又美栄子、加藤理子、清水薫著,「筋電図・関節角度からみた衣服による動作拘束」,日本家政学会誌,1992年,Vol.43,No.6,p.559−567
特開2008−200237号公報
したがって、本発明の課題は、特に乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつを対象とした場合に、そのおむつを装着した状態での装着者の下肢の動き易さを客観的に評価する方法を提供することにある。
本発明は、パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度に基づき、該おむつを装着した状態での下肢の動き易さを評価するパンツ型おむつを装着した状態での下肢の動き易さの評価方法を提供するものである。
本発明の評価方法によれば、パンツ型おむつを装着した状態での着用者の下肢の動き易さを客観的に評価することが可能となる。したがって、本発明の評価方法で得られた結果を、パンツ型おむつの設計にフィードバックすることで、這い歩き期の乳児から自由に走り回ることができ出すまでの幼児に適した、下肢の動き易いパンツ型おむつを設計できる。
図1は、本発明の評価の対象となるパンツ型使い捨ておむつの一例を示す斜視図である。 図2は、図1に示すおむつを組み立てる前の状態を示す分解斜視図である。 図3は、筋電図を測定する下肢の部位を示す図である。 図4は、被験者を歩行させるときの動作を経時的に示す模式図である。 図5(a)は、裸の状態及び吸水前のおむつを着用した状態で、立脚期において、大腿四頭筋の筋電測定で得られる相対積分値を示すグラフ、並びに裸の状態及び吸水前のおむつを着用した状態で、遊脚期において、大腿四頭筋の筋電測定で得られる相対積分値を示すグラフであり、図5(b)は、裸の状態及び吸水後のおむつを着用した状態で、立脚期において、大腿四頭筋の筋電測定で得られる相対積分値を示すグラフ、並びに裸の状態及び吸水後のおむつを着用した状態で、遊脚期において、大腿四頭筋の筋電測定で得られる相対積分値を示すグラフである。 図6(a)は、吸収性コアの形状を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)の吸収性コアを備えた吸収体の幅方向断面図である。 図7(a)は、立脚期において、おむつイ,ロ,ハ,ニを装着した状態での全筋負担の相対積分値を示すグラフであり、図7(b)は、遊脚期において、おむつイ,ロ,ハ,ニを装着した状態での全筋負担の相対積分値を示すグラフである。 図8は、おむつイ,ロ,ハ,ニを装着した状態における歩行時の一歩の相対筋電積分値を示すグラフである。 図9は、おむつイ,ホを装着した状態における歩行時の一歩の相対筋電積分値を示すグラフである。 図10(a)は、サイドシール部より腹側部側でのレッグギャザーの装着圧力を測定する部位を説明する図であり、図10(b)は、サイドシール部より背側部側でのレッグギャザーの装着圧力を測定する部位を説明する図である。 図11は、おむつ(イ)及び(ホ)を装着した状態での歩行時の装着圧力とサイドシール部からの距離との関係を示すグラフである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。図1には、本発明の評価方法の対象となるパンツ型使い捨ておむつ(以下、「パンツ型おむつ」ともいう)の一例が示されている。ここで留意すべきは、本発明の評価の対象となるおむつは、この図に示すものに限られないということである。パンツ型おむつとは、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有するパンツ形状のおむつを広く包含する。
図1及び図2に示すパンツ型おむつ1は、その基本構造として、股下部C並びに股下部Cから前後方向に延びる腹側部A及び背側部Bを有している。前記の腹側部Aの左右両側縁と背側部Bの左右両側縁とは、おむつの肌対向面が内側になるように互いに接合固定される。これによってパンツ型の形態が形成される。
おむつ1は、図1及び図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の裏面シート3及び両シート2、3間に介在配置された液保持性の吸収体4を有する実質的に縦長の吸収体本体10と、該吸収体本体10の裏面シート3側に配された外包材11とを備えている。外包材11は、その両側縁が、長手方向中央部において内方に括れた砂時計形の形状をしており、おむつの輪郭を画成している。外包材11はその長手方向に沿って順に、上述した腹側部A、股下部C及び背側部Bに区分される。外包材11における腹側部Aの両側縁と背側部Bの両側縁とが合掌状に互いに接合されて、おむつ1にはウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成される。この接合によって、おむつ1の左右両側縁には一対のサイドシール部Sが形成される。
外包材11は、図1及び図2に示すように、外層不織布12と、該外層不織布12の内面側に配された内層不織布13とを有している。外層不織布12はおむつ1の外面をなし、内層不織布13は外層不織布12の内面側に、ホットメルト粘着剤等の接着剤によって接合されている。
外包材11における前後端部には、前後端縁に沿って、複数のウエスト部弾性部材51、51がその幅方向に亘り伸長状態で配されている。これによって、図1に示すように、おむつ1のウエスト開口部5の付近には実質的に連続したリング状のウエストギャザーDが形成される。また、外包材11における左右両側の湾曲部には、湾曲部に沿って、レッグ部弾性部材61a、61bが伸長状態で配されている。これによって、図1に示すように、おむつ1のレッグ開口部6、6の付近には実質的に連続したリング状のレッグギャザーEが形成される。更に、おむつ1の腹側部A及び背側部Bそれぞれにおけるウエスト開口部5とレッグ開口部6との間の胴回り領域71には、おむつ1の幅方向に延びる複数の弾性部材が伸長状態で配されている。これによって、図1に示すように、おむつ1の腹側部A及び背側部(図示せず)における胴回り領域71には胴回りギャザーFがそれぞれ形成される。
本発明の評価方法においては、パンツ型おむつを装着した状態における着用者の下肢の筋負担を測定する。筋負担は、心電図と同原理で筋線維が収縮時に発する電気信号を皮膚表面から測定することで(筋電図測定)、定量的に測定することができる。筋電位は筋力に比例するからである。筋電図の測定から得られるパラメータには、IEMGと呼ばれる筋電積分がある。筋電図は、例えば、S&ME社製の無線筋電計のBioLogを用いて測定することができる。
本発明の評価方法においては、パンツ型おむつを装着した状態における着用者が歩行している間の下肢の筋負担を測定する。歩行動作においては大腿又は下腿を動かすことになるので、大腿又は下腿のいずれか一方の筋肉について筋負担を測定することが望ましい。大腿の筋肉としては、大腿四頭筋、大腿二頭筋、半腱様筋等があるところ、本発明においては、大腿四頭筋及び大腿二頭筋の少なくとも一つを測定対象とすることが、評価の精度向上の点から有利であることが判明した。一方、下腿の筋肉としては、前脛骨筋、腓腹筋、下腿三頭筋、長趾伸筋等があるところ、本発明においては、前脛骨筋及び腓腹筋の少なくとも一つを測定対象とすることが、評価の精度向上の点から有利であることが判明した。
本発明者らの詳細な検討の結果、大腿の筋肉のみを測定対象とする場合には、大腿四頭筋と大腿二頭筋との両方を測定対象とする方が好ましく、下腿の筋肉のみを測定対象とする場合には、前脛骨筋と腓腹筋との両方を測定対象とする方が好ましい。大腿及び下腿の両方の筋肉を測定対象とする場合には、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋を測定対象とする方が特に好ましい。
本発明の評価方法の対象となる着用者、すなわち被験者は、這い歩き期の乳児から歩くことができる幼児であり、体重で区分すると概ね6kg〜13kgの者である。また月齢で区分すると、概ね6〜48ヶ月のものである。
本発明の評価方法の具体的な適用例として、まずパンツ型おむつを着用していない裸の状態及びパンツ型おむつを着用した状態において歩行中の筋電図を測定した結果を説明する。この測定における被験者は、2歳から3歳8ヶ月までの女児8名と男児2名であった。被験者の平均年齢は2歳11ヶ月、平均身長は91.1cm、平均体重は13.1kgであった。
各被験者には、裸の状態で、大腿の大腿四頭筋及び大腿二頭筋に対応する部位、並びに下腿の前脛骨筋及び腓腹筋に対応する部位に筋電図測定用のセンサを取り付けた。この状態下に、5mの距離を自由歩行させた。そして、歩行中の立脚期及び遊脚期それぞれの時間帯での筋負担を筋肉毎に測定した。ここで、立脚期及び遊脚期とは、図4に示すそれぞれの動作の期間である。立脚期は1歩行周期のうち約60%の時間を占め、遊脚期は1歩行周期のうち約40%の時間を占める。以上と同様の測定を、パンツ型おむつ1を装着した状態でも行った。この場合、おむつ1は吸水前の乾燥状態にしておいた。
筋電図測定用のセンサは、各筋肉において2個一組で用いられる。図3に示すように、大腿の大腿四頭筋に対応する位置にセンサS1が粘着テープによって取り付けられ、大腿二頭筋に対応する位置にセンサS2が取り付けられる。下腿については、前脛骨筋に対応する位置にセンサS3が取り付けられ、腓腹筋に対応する位置にセンサ4が取り付けられる。
センサS1〜S4からは導線が延びており、該導線は送信機(図示せず)に接続されている。送信機の重さを被験者に感じさせないため、歩行に追随する実験者が送信機を持っている。センサS1〜S4で感知された電位は導線を通じて送信機に伝えられる。送信機に伝えられた信号は、別の場所に設置されている受信機(図示せず)に無線送信される。受信機によって受信された信号は、該受信機に接続された計算機等の処理装置によって処理される。送信機は被験者の身体に装着されていてもよい。
図5(a)は筋電図の測定結果である。同図には、立脚期における各被験者の大腿四頭筋の筋負担の測定値(筋電積分値)から算出された平均筋電積分値が示されている。また、同図には、同様にして測定された立脚期における平均筋電積分値も示されている。なお、図示していないが、測定対象とした筋肉のうち大腿四頭筋以外の筋肉である大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋についても同様の関係を示す結果が得られた。
図5(a)の結果から、乾燥したおむつ1を装着した状態では、裸の状態に比べ、平均筋電積分値に有意な差は観察されなかった。このことは、乾燥したおむつ1を装着した状態で歩行したとしても、裸の状態で歩行したときと歩きやすさに差がないことを示唆している。本発明者らの事前の予想では、おむつを装着した状態で歩行した方が、筋負担が多くなると考えていたが、裸の状態とで差が観察されないという結果が得られたことは、非常に意外なことであった。
なお、前記の測定においては、歩行中の動作を立脚期と遊脚期とに分けて別個に検討したが、これら両者の測定結果を合わせて一つの結果を得て、その結果に基づき下肢の動きやすさの評価を行うと、評価の精度が一層高まるので好ましい。立脚期と遊脚期の測定結果を合わせる場合には、両者を同じ重み付けで足し合わせて平均を求めてもよく、あるいは重み付けを異ならせてもよい。
本発明の評価方法の別の適用例として、次に尿を含んだ状態のパンツ型おむつを着用することによる筋負担の程度を評価した結果を説明する。この評価においては、乾燥したおむつ1を装着した状態と、尿の代替液としての生理食塩水を予め吸収させておいたおむつ1を装着した状態とで筋電図を測定した。評価方法は、前述した評価方法と同様とした。ただし、生理食塩水を予め吸収させたおむつにおける生理食塩水の吸収量は160gとした。吸収量として160gを選定した理由は、一般的に幼児はおむつに0〜160g程度の尿を含んだ状態で生活しているが、多い量の尿を含んだ状態で評価することにより、おむつに尿が含まれたことによる影響を明確にするためである。
このようにして得られた平均筋電積分値の測定結果を図5(b)に示す。なお、同図においては、大腿四頭筋に基づく平均筋電積分値の測定結果のみが示されているが、他の筋肉である大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋についても同様の関係を示す結果が得られた。
図5(b)に示す結果から明らかなように、吸水して重量が増したおむつを装着した状態で歩行させると、裸で歩行させたときに比べ、平均筋電積分値に有意差が観察された。この有意差は、立脚期及び遊脚期のいずれの時期においても観察された。このことは、吸水して重量が増したおむつを装着した状態で歩行した場合には、裸の状態で歩行した場合に比べ、歩きづらいことを示唆している。
図5(b)に示す結果が得られた理由を、被験者の歩行状態の目視観察の結果から考察すると、次の(A)及び(B)のとおりではないかと本発明者らは考えた。
(A)吸水した吸収体が幅方向に広がって変形することに起因して、おむつの股間部が着用者の鼠蹊部を圧迫することによって、歩きづらさが増した。
(B)吸水して重みが増した吸収体を支えるためにレッグ部弾性部材(図3のレッグ部弾性部材61a、61b参照)の締め付け力が増大し、着用者の大腿付け根を圧迫することによって、歩きづらさが増した。
そこで本発明者らは、次に、これらの考えが正しいか否かの検証を行った。まず、(A)の考えが正しいか否かを検証することを目的として、以下の構成を有する吸収体4を備えたパンツ型おむつを作製した。
具体的には、図6(a)に示す吸収性コア41を作製し、これを図6(b)に示すティッシュペーパー等の台紙45によって被覆して吸収体4を作製しておむつ1に組み込んだ。同図に示す吸収性コア41は、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの混合積繊物から構成されている。吸収性コア41は、その長手方向の中央域において、長手方向両側部から内方に離間した部位に、一対の欠落部44,44を有している。欠落部44は長手方向に沿って延びている。欠落部44は、その長手方向の各端部44a,44bが、吸収性コア41の前後端縁までは達していない長さを有している。吸収性コア41は、長手方向の中央域において、幅方向に沿って3つに分割されている。3つに分割された吸収性コア41は、図6(b)に示すように、中央に位置する中央コア41Mと、該中央コア41Mの左右に位置する側部コア41Sとに区分される。吸収体4は、中央コア41Mの位置でバックシート(図示せず)に接合固定されている。一方、吸収体4における側部コア41Sは、バックシートとは非接合状態になっている。
このように構成された吸収体4は、装着状態において、図6(b)に示すように、欠落部44が折り曲げの起点となり、各側部コア41Mが上方に折れ曲がる。その結果、おむつ1の股間幅が狭くなるので、吸収体4が吸水して幅方向に広がる力が着用者の鼠蹊部に作用しても、過度に鼠蹊部を圧迫しないようになる。
このような吸収体4を備えたパンツ型おむつ(イ)について、これを上述のように吸水させ、被験者に装着して、上述した手順と同じ手順で筋電図を測定した。また対照として、幅方向において分割がされていないおむつを用いた。パンツ型おむつを販売している主要メーカーの現在の製品は、殆どが、吸収体を幅方向に分割していないものである。そこで対照として、主要メーカーA、B及びCのパンツ型おむつ(ロ)、(ハ)及び(ニ)を用いた。股間部における吸収体の幅は、おむつ(イ)では135mm(中央コア41Mの幅は60mm)、おむつ(ロ)では85mm、おむつ(ハ)では110mm、おむつ(ニ)では135mmであった。
筋電図は、歩行動作を立脚期及び遊脚期に分けて測定した。また、立脚期及び遊脚期のそれぞれにおいて、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋それぞれの筋電図を測定した。そして、各筋肉について測定された平均筋電積分値を同じ重み付けで足し合わせ、平均値を算出し、立脚期全筋負担及び遊脚期の全筋負担を求めた。その結果を図7(a)及び(b)に示す。これらの図においては、おむつ(イ)の全筋負担を100として、他のおむつの全筋負担を相対値で示している。更に、立脚期全筋負担及び遊脚期全筋負担の結果を同じ重み付けで足し合わせ、平均値を算出し、1歩全筋負担を求めた。その結果を図8に示す。同図においても、おむつ(イ)の全筋負担を100として、他のおむつの全筋負担を相対値で示している。
図7(a)及び(b)並びに図8に示す結果から、分割によって股間幅が変化する吸収体4を備えたおむつ(イ)は、股間幅が変化しない他のおむつ(ロ)〜(ニ)に比べて、筋負担が低く、歩行し易いおむつであることが判明した。このように、本発明の評価方法によれば、種々のパンツ型おむつを装着した状態で筋負担を測定することにより、そのおむつ毎に着用者の下肢の動き易さを客観的に評価することができる。また本発明の評価方法を用いれば、パンツ型おむつの設計を効率的に行うことができる。具体的には、パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度と、該おむつの股間幅との関係に基づき、最適なおむつの股間幅を決定するパンツ型おむつの設計方法によって、パンツ型おむつの設計を効率的に行うことができる。例えば、分割した吸収性コア41の有する一対の欠落部41,41の配置位置や大きさを変更することによりパンツ型おむつの股間幅を変更し、その変更したおむつを装着させた状態で着用者の下肢の筋負担を測定することにより、適切なおむつの股間幅を決定することができる。
本発明者らは、次に、(B)の考えが正しいか否かを検証することを目的として、以下のように、レッグ部弾性部材61a、61bの締め付け力を改良したパンツ型おむつを作製した。
具体的には、図6(a)及び(b)に示す吸収体4を備えたおむつ(イ)のレッグギャザーEによる締め付け圧力を下げたパンツ型おむつ(ホ)を作製した。締め付け圧力を下げる手段として、おむつ(イ)のレッグ部弾性部材61a、61bとして、一般的に使用される平ゴムに代えて、糸状のポリウレタン系樹脂素材からなる糸ゴムを採用した。このようにして作製されたおむつを、パンツ型おむつ(ホ)とする。パンツ型おむつ(ホ)における締め付け圧力の程度は、レッグギャザーEにおいては1.3kPa、胴回りギャザーFを二等分したレッグ開口部6寄りの下部胴回りギャザーF1においては0.7kPaとなるように調整した。装着圧力は、本出願人の先の出願に係る特開2006−61680号公報の段落〔0028〕に記載の方法に準じて、直径15mmのエアパックを用い、レッグ開口部6の先端部にエアパックの中心が位置するようにセットし測定した。同様の方法で測定すると、パンツ型おむつ(イ)においては、レッグギャザーEの締め付け圧力が1.8kPa、下部胴回りギャザーF1の圧力が0.5kPaであり、おむつ(ホ)は、おむつ(イ)よりも、レッグギャザーEにおける締め付け圧力を大きく下げており、かつ下部胴回りギャザーF1の締め付け圧力を若干上げている。おむつ(ホ)において下部胴回りギャザーF1の締め付け圧力を上げた理由は、レッグギャザーEの締め付け圧力を下げた分だけおむつのずれ落ちが起こりやすくなるので、それを防止するためである。
なお、おむつ(イ)及びおむつ(ホ)におけるウエストギャザーD及び胴回りギャザーFのウエスト開口部5寄りの上部胴回りギャザーF2の締め付け圧力は同じ値に設定してある。具体的には、ウエストギャザーDの締め付け圧力は0.7kPa、胴回りギャザーFのウエスト開口部5寄りの上部胴回りギャザーF2の圧力は1.2kPaであった。
このように構成されたおむつ(ホ)は、吸収体4が吸水してその重みが増しても、レッグ部弾性部材61a,61の締め付け力が増大し難く、大腿付け根を圧迫し難いと考えられる。考えが正しいか否かを検証するために、パンツ型おむつ(ホ)について、これを上述のように吸水させ、被験者に装着して、上述した手順と同じ手順で筋電図を測定した。その結果を、先に測定したおむつ(イ)の結果と併せて図9に示す。同図に示す結果は、各筋肉について測定された平均筋電積分値を同じ重み付けで足し合わせ、平均値を算出し、立脚期全筋負担及び遊脚期全筋負担を求め、更に立脚期全筋負担及び遊脚期全筋負担の結果を同じ重み付けで足し合わせ、平均値を算出し、1歩全筋負担を求めたものである。また、おむつ(イ)の全筋負担を100として、おむつ(ホ)の全筋負担を相対値で示している。
図9に示す結果から、レッグギャザーEによる締め付け圧力を下げたパンツ型おむつ(ホ)は、それよりも高い締め付け圧力を有するおむつ(イ)よりも、歩行時の1歩の筋負担が低く、歩行し易いおむつであることが判明した。このように、本発明の評価方法によれば、種々のパンツ型おむつを装着した状態で筋負担を測定することにより、そのおむつ毎に着用者の下肢の動き易さを客観的に評価することができる。また本発明の評価方法を用いれば、パンツ型おむつの設計を効率的に行うことができる。具体的には、パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度と、着用者の大腿付け根におけるレッグギャザーの締め付け圧力との関係に基づき、おむつのレッグギャザーの最適な締め付け圧力を決定するパンツ型おむつの設計方法によって、パンツ型おむつの設計を効率的に行うことができる。
次に本発明者らは、レッグギャザーEによる締め付け圧力を下げることが、着用者の大腿の付け根にどのように作用しているのかを調べた。パンツ型おむつ(ホ)に関し、各被験者に、これを吸水した状態で装着させ、その状態で歩行させたときの締め付け圧力を測定した。締め付け圧力の測定方法は、本出願人の先の出願に係る特開2006−61680号公報の段落〔0028〕に記載の方法に準じた。すなわち、直径15mmのエアパックを用い、サイドシール部Sのレッグ開口部6側の先端部にエアパックの中心が位置するようにセットし、5mの距離を自由歩行させ、踏み出したとき、両足が揃ったとき、踵を上げたとき、それぞれの締め付け圧力を測定した。続いて、図10(a)に示すように、おむつ(ホ)のサイドシール部Sからレッグ開口部6に沿って、腹側部A側に10mmエアパックの中心を移動させ締め付け圧力を測定する。このように10mm毎に移動させ、サイドシール部Sから腹側部A側に70mmの位置までの10mm毎の締め付け圧力を測定した。続いて、図10(b)に示すように、おむつ(ホ)のサイドシール部Sからレッグ開口部6に沿って、背側部B側に10mmエアパックの中心を移動させ締め付け圧力を測定した。このように10mm毎に移動させ、サイドシール部Sから背側部B側に70mmの位置までの10mm毎の装着圧力を測定した。図11は、このようにして得られた、足を踏み出したときの締め付け圧力とサイドシール部Sからの距離との関係、両足が揃ったときの締め付け圧力とサイドシール部Sからの距離との関係、踵を上げたときの締め付け圧力とサイドシール部Sからの距離との関係、それぞれをプロットしたグラフである。これら3本の線で囲まれた領域は、歩行時の締め付け圧力とサイドシール部Sからの距離との関係を示している。同様の方法により、パンツ型おむつ(イ)についても、踏み出したとき、両足が揃ったとき、踵を上げたとき、それぞれの締め付け圧力とサイドシール部Sからの距離との関係を測定した。この測定結果も図11に併せて示されている。図11においては、右上がりの斜線の領域が、おむつ(イ)の結果を表し、左上がりの斜線の領域が、おむつ(ホ)の結果を表している。
図11に示す結果から明らかなように、レッグギャザーEによる大腿付け根への締め付け圧力は、大腿付け根の全周において均一ではなく、サイドシール部Sから腹側部A側の最も遠い位置において締め付け圧力が最も高いことが判る。また、該位置において、おむつ(イ)とおむつ(ホ)の締め付け圧力の差が最も顕著であることが判る。したがって、レッグギャザーEの締め付け圧力を下げたおむつにおいては、歩行時の1歩の筋負担の低下は、腹側部A側の締め付け圧力が支配的であることが判った。締め付け圧力が全周において大きな差があることは、これまで知られていなかった新たな知見であり、この知見に基づけば、下肢を動かせ易いパンツ型おむつをこれまでとは異なった視点から設計することができると期待される。
1 パンツ型おむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 吸収性コア
44 欠落部
44a,44b 長手方向の端部
5 ウエスト開口部
51 ウエスト部弾性部材
6 レッグ開口部
61a,61b レッグ開口部弾性部材
10 吸収体本体
11 外包材
12 外層不織布
13 内層不織布
71 胴回り領域
71a 胴回り領域の弾性部材

Claims (5)

  1. パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度に基づき、該おむつを装着した状態での下肢の動き易さを評価するパンツ型おむつを装着した状態での下肢の動き易さの評価方法。
  2. 大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋及び腓腹筋の筋負担の程度に基づき、下肢の動き易さを評価する請求項1に記載の評価方法。
  3. 160gの生理食塩水を吸収させた状態のおむつを装着した状態での下肢の動き易さを評価する請求項1又は2に記載の評価方法。
  4. パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度と、該おむつの股間幅との関係に基づき、おむつの股間幅を決定するパンツ型おむつの設計方法。
  5. パンツ型おむつを装着した状態で歩行させたときの着用者の下肢の筋負担の程度と、着用者の大腿付け根におけるレッグギャザーの締め付け圧力との関係に基づき、おむつのレッグギャザーの締め付け圧力を決定するパンツ型おむつの設計方法。
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