JP2011000750A - ロケットノズルとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層した繊維布のしわを抑えつつ、繊維布の層間剥離を防止できるロケットモータを提供する。
【解決手段】繊維強化複合材料10により形成されるロケットノズルであって、繊維強化複合材料10は、ロケットノズルの内表面21aに垂直な方向に積層された繊維布3と、複数層の繊維布3を貫通する繊維糸5と、繊維布3および繊維糸5の繊維間に充填されることで、繊維布3および繊維糸5と一体化した樹脂7と、を有する。
【選択図】図4
【解決手段】繊維強化複合材料10により形成されるロケットノズルであって、繊維強化複合材料10は、ロケットノズルの内表面21aに垂直な方向に積層された繊維布3と、複数層の繊維布3を貫通する繊維糸5と、繊維布3および繊維糸5の繊維間に充填されることで、繊維布3および繊維糸5と一体化した樹脂7と、を有する。
【選択図】図4
Description
本発明は、ロケットノズルとその製造方法に関する。
ロケットノズル(ロケットモータ20のノズル21)は、図1に示すように、燃焼室22で発生した燃焼ガス23を高速で噴出させるものである。そのため、燃焼ガス23による熱負荷、化学腐食、機械的摩耗に耐えつつ、燃焼ガス23を効率よく増速する機能が、ロケットノズル21に要求される。
上述機能を満足させるために、ロケットノズル21は、一般的に、繊維強化複合材料(FRP)を用いて製造されている。
繊維強化複合材料(特に、CFRP)は、比較的断熱性が高く、金属やセラミック系の材料と比べると密度が低い材料である。従って、このような繊維強化複合材料は、ロケットモータのノズルに適用されている。繊維強化複合材料は、液体ロケットのノズル形成にも使用されるが、特に、固体ロケットモータのノズル形成に適している。なぜなら、固体ロケットでは、液体ロケットに比べて、一般に、燃焼時間が短く(最長で、120秒の燃焼時間)、その分だけ、ロケットノズル内面が高温となるので、より高い断熱性が要求されるからである。
繊維強化複合材料を用いたロケットノズル21の製造方法としては、テープラップ方式、角度巻き方式、チョッププレス方式、ハンドレイアップ方式等の成形方法がある。これらのうち、テープラップ方式は、他の方式と比べて、より高い性能が要求される大型のロケットノズル21の成形(製造)に適している。
テープラップ方式では、次の手順で、ロケットノズル21を製造する。製造は、巻付過程、脱泡過程、加圧加熱過程の順で行われる。
巻付過程では、ロケットノズル21の型であるマンドレル(内型)に、プリプレグを巻き付ける。これにより、プリプレグをマンドレル上に積層する。プリプレグは、テープ状の繊維布に比較的高粘度の樹脂を含浸させたものである。なお、繊維布として、例えば、フェノール系紡績糸から形成されたものが使用され、樹脂として、フェノール系樹脂が使用される。
脱泡過程では、マンドレルに巻きつけたプリプレグに対し、真空減圧により脱泡を行う。
加圧加熱過程では、オートクレーブにより、プリプレグを加圧環境下で加熱する。これにより、プリプレグを硬化させる。なお、加圧加熱過程で形成された構造体に対し機械加工が行われる。
巻付過程では、ロケットノズル21の型であるマンドレル(内型)に、プリプレグを巻き付ける。これにより、プリプレグをマンドレル上に積層する。プリプレグは、テープ状の繊維布に比較的高粘度の樹脂を含浸させたものである。なお、繊維布として、例えば、フェノール系紡績糸から形成されたものが使用され、樹脂として、フェノール系樹脂が使用される。
脱泡過程では、マンドレルに巻きつけたプリプレグに対し、真空減圧により脱泡を行う。
加圧加熱過程では、オートクレーブにより、プリプレグを加圧環境下で加熱する。これにより、プリプレグを硬化させる。なお、加圧加熱過程で形成された構造体に対し機械加工が行われる。
図2は、図1の破線で囲んだ部分の拡大図である。従来では、図2に示すように、プリプレグ(樹脂33が含浸させられた繊維布31)の積層方向DLを、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向から、ある臨界角度以上だけ傾斜させている。これは、次の理由による。
繊維強化複合材料30は、繊維31と樹脂33から構成されているので、加熱されると、樹脂33は、加熱面であるロケットノズル内表面21aを起点として、熱分解反応する。従って、樹脂33は、ロケットノズル内表面21aの位置からその厚み方向へ炭化していく。この時、樹脂33から、熱分解ガスが発生する。この熱分解ガスが、効率的に、繊維強化複合材料30の内部からロケットノズル外表面21bの側へ抜けるようにしないと、繊維強化複合材料30の内部でガス圧が上昇し、その結果、積層された繊維布31の層間剥離が発生すると考えられている。このような熱分解ガスの流動抵抗は、繊維布表面に沿った方向では小さく、繊維布31の積層方向では大きい。従って、繊維強化複合材料30の内部において、熱分解ガスは、繊維布31の表面に沿って流動しやすい。そこで、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向から、ある臨界角度以上だけ傾斜させることにより、図2の矢印DEで示すように、熱分解ガスがロケットノズル外表面21bへ抜けやすくなる。
逆に、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向とした場合、当該垂直な方向では、熱分解ガスの流動抵抗が大きいので、繊維布31の層間剥離が発生しやすくなってしまう。
繊維強化複合材料30は、繊維31と樹脂33から構成されているので、加熱されると、樹脂33は、加熱面であるロケットノズル内表面21aを起点として、熱分解反応する。従って、樹脂33は、ロケットノズル内表面21aの位置からその厚み方向へ炭化していく。この時、樹脂33から、熱分解ガスが発生する。この熱分解ガスが、効率的に、繊維強化複合材料30の内部からロケットノズル外表面21bの側へ抜けるようにしないと、繊維強化複合材料30の内部でガス圧が上昇し、その結果、積層された繊維布31の層間剥離が発生すると考えられている。このような熱分解ガスの流動抵抗は、繊維布表面に沿った方向では小さく、繊維布31の積層方向では大きい。従って、繊維強化複合材料30の内部において、熱分解ガスは、繊維布31の表面に沿って流動しやすい。そこで、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向から、ある臨界角度以上だけ傾斜させることにより、図2の矢印DEで示すように、熱分解ガスがロケットノズル外表面21bへ抜けやすくなる。
逆に、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向とした場合、当該垂直な方向では、熱分解ガスの流動抵抗が大きいので、繊維布31の層間剥離が発生しやすくなってしまう。
しかし、図2のように繊維布31を積層した場合に、次のように、繊維布31にしわが発生しやすくなるという問題がある。
図2のように、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向から臨界角度以上傾けた場合、マンドレルに繊維布31を安定して巻き付けることが困難である。即ち、繊維布31の位置が安定しないので、上述の加圧加熱過程で、図3(図1のIII−III線断面図である)のように、繊維布31にしわが発生してしまう。このしわは、繊維布31の繊維間に隙間が存在すること、および、繊維自体の収縮は小さいことにも起因する。特に、フェノール系紡績糸による繊維布を用いた場合には、繊維の撚りが大きく繊維間に隙間が多く存在しているので、加圧加熱過程により、より大きいしわが発生してしまう。
このようなしわが発生する結果、図3のように、周方向において、ロケットノズル21の厚みにむらが生じてしまい、その結果、ノズル21の厚みが増加してしまう。
図2のように、繊維布31の積層方向を、ロケットノズル21の内表面21aと垂直な方向から臨界角度以上傾けた場合、マンドレルに繊維布31を安定して巻き付けることが困難である。即ち、繊維布31の位置が安定しないので、上述の加圧加熱過程で、図3(図1のIII−III線断面図である)のように、繊維布31にしわが発生してしまう。このしわは、繊維布31の繊維間に隙間が存在すること、および、繊維自体の収縮は小さいことにも起因する。特に、フェノール系紡績糸による繊維布を用いた場合には、繊維の撚りが大きく繊維間に隙間が多く存在しているので、加圧加熱過程により、より大きいしわが発生してしまう。
このようなしわが発生する結果、図3のように、周方向において、ロケットノズル21の厚みにむらが生じてしまい、その結果、ノズル21の厚みが増加してしまう。
そこで、本発明の目的は、積層した繊維布のしわを抑えつつ、繊維布の層間剥離を防止できるロケットモータを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によると、繊維強化複合材料により形成されるロケットノズルであって、
前記繊維強化複合材料は、
前記ロケットノズルの内表面に垂直な方向に積層された繊維布と、
複数層の前記繊維布を貫通する繊維糸と、
前記繊維布および前記繊維糸の繊維間に充填されることで、前記繊維布および前記繊維糸と一体化した樹脂と、を有する、ことを特徴とするロケットノズルが提供される。
前記繊維強化複合材料は、
前記ロケットノズルの内表面に垂直な方向に積層された繊維布と、
複数層の前記繊維布を貫通する繊維糸と、
前記繊維布および前記繊維糸の繊維間に充填されることで、前記繊維布および前記繊維糸と一体化した樹脂と、を有する、ことを特徴とするロケットノズルが提供される。
上述の本発明のロケットノズルでは、次のように、積層による繊維布のしわを抑えつつ、繊維布の層間剥離を防止できる。
本発明のロケットノズルでは、上述の繊維布が、前記ノズルの内表面に垂直な方向に積層されているので、繊維布の位置が安定し、積層による繊維布のしわを抑えることができる。
また、本発明のロケットノズルでは、繊維糸が、複数層の前記繊維布を貫通するので、樹脂から発生する熱分解ガスが、繊維糸に沿って繊維布の層間を通過しやすくなる。従って、熱分解ガスの圧力による繊維布の層間剥離が防止される。
本発明のロケットノズルでは、上述の繊維布が、前記ノズルの内表面に垂直な方向に積層されているので、繊維布の位置が安定し、積層による繊維布のしわを抑えることができる。
また、本発明のロケットノズルでは、繊維糸が、複数層の前記繊維布を貫通するので、樹脂から発生する熱分解ガスが、繊維糸に沿って繊維布の層間を通過しやすくなる。従って、熱分解ガスの圧力による繊維布の層間剥離が防止される。
本発明の好ましい実施形態によると、前記繊維布の熱伝導率は、前記繊維糸の熱伝導率よりも高い、ことを特徴とする請求項1に記載のロケットノズル。
この構成により、次のように、ロケットノズルの耐熱性を大幅に向上させることができる。
ロケットノズルの内表面に沿う方向に延びている前記繊維布の熱伝導率を、前記繊維糸の熱伝導率よりも高くすることで、ロケットノズルの内表面に沿って熱が伝わりやすくなる。従って、ロケットノズルの内表面において、高温となる箇所が局所的に発生することを防止できるので、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。
さらに、前記繊維糸の熱伝導率を、前記繊維布の熱伝導率よりも低くすることで、ロケットノズルの厚み方向(ロケットノズルの内表面と垂直な方向)に熱が伝わり難くなる。従って、ロケットノズルにおいて、樹脂が熱分解する厚み方向範囲を抑えることができるので、これによっても、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。
ロケットノズルの内表面に沿う方向に延びている前記繊維布の熱伝導率を、前記繊維糸の熱伝導率よりも高くすることで、ロケットノズルの内表面に沿って熱が伝わりやすくなる。従って、ロケットノズルの内表面において、高温となる箇所が局所的に発生することを防止できるので、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。
さらに、前記繊維糸の熱伝導率を、前記繊維布の熱伝導率よりも低くすることで、ロケットノズルの厚み方向(ロケットノズルの内表面と垂直な方向)に熱が伝わり難くなる。従って、ロケットノズルにおいて、樹脂が熱分解する厚み方向範囲を抑えることができるので、これによっても、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。
また、上記目的を達成するため、本発明によると、ロケットノズルの製造方法であって、
前記ロケットノズルの原型となる繊維構造体を、繊維強化複合材料により形成する繊維構造体形成ステップと、
前記繊維構造体に樹脂を含浸させる含浸ステップと、を有し、
前記繊維構造体形成ステップは、
前記ロケットノズルの内表面に垂直となる方向に繊維布を積層する積層ステップと、
複数層の繊維布を貫通するように繊維糸を配置する糸配置ステップと、を有する、ことを特徴とするロケットノズルの製造方法が提供される。
前記ロケットノズルの原型となる繊維構造体を、繊維強化複合材料により形成する繊維構造体形成ステップと、
前記繊維構造体に樹脂を含浸させる含浸ステップと、を有し、
前記繊維構造体形成ステップは、
前記ロケットノズルの内表面に垂直となる方向に繊維布を積層する積層ステップと、
複数層の繊維布を貫通するように繊維糸を配置する糸配置ステップと、を有する、ことを特徴とするロケットノズルの製造方法が提供される。
上述の本発明のロケットノズルの製造方法では、次のように、積層による繊維布のしわを抑えつつ、繊維布の層間剥離を防止できるロケットノズルを製造できる。
積層ステップにおいて、繊維布を、前記ノズルの内表面に垂直な方向に積層するので、繊維布を安定して積層することができる。従って、積層による繊維布のしわを抑えることができる。
また、糸配置ステップにおいて、繊維糸を、複数層の繊維布に通すので、樹脂から発生する熱分解ガスが、繊維糸に沿って繊維布の層間を通過しやすくなる。従って、熱分解ガスの圧力による繊維布の層間剥離が防止される。
積層ステップにおいて、繊維布を、前記ノズルの内表面に垂直な方向に積層するので、繊維布を安定して積層することができる。従って、積層による繊維布のしわを抑えることができる。
また、糸配置ステップにおいて、繊維糸を、複数層の繊維布に通すので、樹脂から発生する熱分解ガスが、繊維糸に沿って繊維布の層間を通過しやすくなる。従って、熱分解ガスの圧力による繊維布の層間剥離が防止される。
上述した本発明によると、積層した繊維布のしわを抑えつつ、繊維布の層間剥離を防止できる。
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図4は、本発明の実施形態のロケットノズルを形成する繊維強化複合材料10の構造を示す断面図である。なお、図4は、図1において破線で囲んだ部分の拡大図に相当する。以下、図4に基づいて、繊維強化複合材料10の構造(材料や配置や材料の数など)を説明する。
図4に示すように、繊維強化複合材料10は、繊維布3、繊維糸5および樹脂7からなる。
繊維布3は、ロケットノズルの内表面21aに垂直な方向(即ち、図4の方向DL)に積層される強化材である。従って、各層の繊維布3の面は、ロケットノズルの内表面21aに沿った方向(言い換えると、ロケットノズルの内表面21aの周方向と、該周方向と直交する内表面21aに沿った方向)に延びる。即ち、図4の断面図において、各層の繊維布3の面を示す実線は、ロケットノズルの内表面21aを示す破線と平行となっている。
繊維布3の熱伝導率は、好ましくは、繊維糸5の熱伝導率よりも高い。即ち、繊維布3は、高い熱伝導率を持つのがよい。例えば、高い弾性率を持つ連続糸は、一般に高い熱伝導率を持つので、繊維布3は、高い弾性率(即ち、高い熱伝導率)を持つPAN系やピッチ系の連続糸により形成されたものである。このように、繊維布3が、高い熱伝導率を持つことで、ロケットノズルの内表面21aに沿って燃焼ガス熱が伝達しやすくなり、ロケットノズルの内表面21aにおいて、高温となる箇所が局所的に発生することが防止される。
繊維布3の熱伝導率は、好ましくは、繊維糸5の熱伝導率よりも高い。即ち、繊維布3は、高い熱伝導率を持つのがよい。例えば、高い弾性率を持つ連続糸は、一般に高い熱伝導率を持つので、繊維布3は、高い弾性率(即ち、高い熱伝導率)を持つPAN系やピッチ系の連続糸により形成されたものである。このように、繊維布3が、高い熱伝導率を持つことで、ロケットノズルの内表面21aに沿って燃焼ガス熱が伝達しやすくなり、ロケットノズルの内表面21aにおいて、高温となる箇所が局所的に発生することが防止される。
繊維糸5は、複数層の繊維布3を貫通する。本実施形態では、多数の繊維糸5が、繊維強化複合材料10の全体にわたって適切な密度で(好ましくは、密に)配置される。各繊維糸5は、複数層の繊維布3を貫通するように、前記垂直な方向に延びている。好ましくは、各繊維糸5の一端は、最下層の繊維布3の位置にあるか、または、該繊維布3よりもロケットノズルの半径方向内側の位置にあり、各繊維糸5の他端は、最上層の繊維布3の位置にあるか、または、該繊維布3よりもロケットノズルの半径方向外側の位置にある。なお、ロケットノズルの半径方向は、ロケットノズルの軸と直交する方向である。また、好ましくは、繊維糸5は、前記垂直な方向に直線的にまたはほぼ直線的に延びている。
繊維糸5の熱伝導率は、好ましくは、繊維布3の熱伝導率よりも低い。即ち、繊維糸5は、低い熱伝導率を持つのがよい。例えば、低い熱伝導率を持つ繊維糸5は、ピッチ系のXN−05である。このように、繊維糸5が、低い熱伝導率を持つことで、前記垂直な方向に熱が伝達し難くなるので、前記垂直な方向(即ち、ロケットノズルの厚み方向)において、燃焼ガス熱による樹脂7が熱分解される範囲が小さく抑えられる。
繊維糸5の熱伝導率は、好ましくは、繊維布3の熱伝導率よりも低い。即ち、繊維糸5は、低い熱伝導率を持つのがよい。例えば、低い熱伝導率を持つ繊維糸5は、ピッチ系のXN−05である。このように、繊維糸5が、低い熱伝導率を持つことで、前記垂直な方向に熱が伝達し難くなるので、前記垂直な方向(即ち、ロケットノズルの厚み方向)において、燃焼ガス熱による樹脂7が熱分解される範囲が小さく抑えられる。
樹脂7は、繊維布3および繊維糸5の繊維間に充填されることで、繊維布3および繊維糸5と一体化される。後述するように、樹脂7は、繊維布3および繊維糸5で形成されたプリフォーム(繊維構造体)に含浸させられるので、プリフォームに含浸させる時(即ち、硬化前)の樹脂7の粘度は、プリフォームの内部全体に含浸する程度に低い。このような低粘度の樹脂7として、例えば、フラン樹脂を用いることができる。なお、図4において、破線は、樹脂7の表面を示し、下側の樹脂7の表面は、ロケットノズルの内表面21aでもある。
図5は、上述した構造を有する繊維強化複合材料10で形成されたロケットノズルの製造方法を示すフローチャートである。本発明の実施形態によるロケットノズルの製造方法は、繊維構造体形成ステップS1および含浸ステップS2を有する。
繊維構造体形成ステップS1では、ロケットノズルの原型となる繊維構造体(プリフォーム)を、繊維強化複合材料10により形成する。繊維構造体形成ステップS1は、積層ステップS11と糸配置ステップS12とからなる。
積層ステップS11では、ロケットノズルの内表面21aに垂直となる方向に繊維布3を積層する。具体的には、テープ状の長い繊維布3を、ロケットノズルの型となる切頭円錐状のコアに、周方向に複数重に巻きつけ、これにより、ロケットノズルの内表面21aに垂直となる方向に繊維布3を積層する。
糸配置ステップS12では、複数層の繊維布3を貫通するように繊維糸5を配置する。即ち、複数層の繊維布3を前記垂直な方向に繊維糸5が貫通した状態に繊維糸5を配置する。具体的には、多数本の繊維糸5を、所定の密度で、複数層の繊維布3を前記垂直な方向に貫通した状態に配置する。
積層ステップS11では、ロケットノズルの内表面21aに垂直となる方向に繊維布3を積層する。具体的には、テープ状の長い繊維布3を、ロケットノズルの型となる切頭円錐状のコアに、周方向に複数重に巻きつけ、これにより、ロケットノズルの内表面21aに垂直となる方向に繊維布3を積層する。
糸配置ステップS12では、複数層の繊維布3を貫通するように繊維糸5を配置する。即ち、複数層の繊維布3を前記垂直な方向に繊維糸5が貫通した状態に繊維糸5を配置する。具体的には、多数本の繊維糸5を、所定の密度で、複数層の繊維布3を前記垂直な方向に貫通した状態に配置する。
含浸ステップS2では、前記繊維構造体に樹脂7を含浸させて硬化させる。例えば、含浸ステップS2を、RTM等のLCM(Liquid Composite Molding)により行う。即ち、LCMでは、繊維構造体形成ステップS1で形成した繊維構造体(プリフォーム)を、バキュームバッグで密閉し、バキュームバッグ内を真空にし、この状態で、バキュームバッグ内へ樹脂7を流入させ繊維構造体に含浸させ、繊維構造体に含浸させられた樹脂7を加熱により硬化させる。これにより、ロケットノズルが製造される。
なお、図5に示す製造方法で使用される繊維布3、繊維糸5および樹脂7の材料や配置や数などは、図4を参照して上述したものと同じであってよい。
上述した本発明の実施形態によると以下の効果(1)〜(7)が得られる。
(1)積層による繊維布3のしわを抑えつつ、繊維布3の層間剥離を防止できる。本実施形態のロケットノズルでは、上述の繊維布3が、ロケットノズルの内表面21aに垂直な方向に積層されているので、繊維布3の位置が安定し、積層による繊維布3のしわを抑えることができる。また、本実施形態のロケットノズルでは、繊維糸5が、複数層の繊維布3を貫通するので、樹脂7から発生する熱分解ガスが、繊維糸5に沿って繊維布の層間を通過しやすくなる(即ち、熱分解ガスは繊維糸5に沿って流動する傾向がある)。従って、熱分解ガスの圧力による繊維布3の層間剥離が防止される。
(2)ロケットノズルの耐熱性を大幅に向上させることができる。ロケットノズルの内表面21aに沿う方向に延びている繊維布3の熱伝導率を、繊維糸5の熱伝導率よりも高くすることで、ロケットノズルの内表面21aに沿って熱が伝わりやすくなる。従って、ロケットノズルの内表面21aにおいて、高温となる箇所が局所的に発生することを防止できるので、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。さらに、繊維糸5の熱伝導率を、繊維布3の熱伝導率よりも低くすることで、ロケットノズルの厚み方向(ロケットノズルの内表面21aと垂直な方向)に熱が伝わり難くなる。従って、ロケットノズルにおいて、樹脂7が熱分解する厚み方向範囲を抑えることができるので、これによっても、ロケットノズルの耐熱性を高めることができる。
(3)ロケットノズルの内表面21aに沿って繊維布3の面が延びているので、内表面21aに沿って高速に流れる燃焼ガスによってロケットノズルが機械的に損耗する量を低減することができる。
(4)さらに、繊維糸5が、積層された繊維布3を貫通するように配置されているので、繊維糸5により、繊維布3の積層方向における繊維強化複合材料10の強度が高まる。
(5)上述のように、繊維布3を安定して積層できることで繊維布3のしわが防止されるので、ロケットノズルの厚みが大きくなることが防止される。即ち、従来の場合と比較して、プリフォームの厚みを小さくできる。その結果、ロケットノズルの軽量化が図れ、さらに、ロケットノズルの厚みが、ロケットノズルの製造上または設計上の制約となることが防止される。
(6)本実施形態では、ロケットノズルの原型となるプリフォームに含浸させる樹脂7として、低粘度の樹脂7を用いるので、プリフォームの内部全体に樹脂7を十分に含浸させることができる。
(7)LCMにより、プリフォームへの樹脂7含浸を行うので、製造コストのかさむオートクレーブ等の加圧硬化過程が不要になる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
3 繊維布、5 繊維糸、7 樹脂、
10 繊維強化複合材料
10 繊維強化複合材料
Claims (3)
- 繊維強化複合材料により形成されるロケットノズルであって、
前記繊維強化複合材料は、
前記ロケットノズルの内表面に垂直な方向に積層された繊維布と、
複数層の前記繊維布を貫通する繊維糸と、
前記繊維布および前記繊維糸の繊維間に充填されることで、前記繊維布および前記繊維糸と一体化した樹脂と、を有する、ことを特徴とするロケットノズル。 - 前記繊維布の熱伝導率は、前記繊維糸の熱伝導率よりも高い、ことを特徴とする請求項1に記載のロケットノズル。
- ロケットノズルの製造方法であって、
前記ロケットノズルの原型となる繊維構造体を、繊維強化複合材料により形成する繊維構造体形成ステップと、
前記繊維構造体に樹脂を含浸させる含浸ステップと、を有し、
前記繊維構造体形成ステップは、
前記ロケットノズルの内表面に垂直となる方向に繊維布を積層する積層ステップと、
複数層の繊維布を貫通するように繊維糸を配置する糸配置ステップと、を有する、ことを特徴とするロケットノズルの製造方法。
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