JP2010534461A - バイオセンサ細胞アッセイの表面および方法 - Google Patents

バイオセンサ細胞アッセイの表面および方法 Download PDF

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Abstract

リガンド誘導細胞活性を測定する装置が開示され、当該装置は適合化剤領域、任意に表面モディファイア領域、及び生細胞領域を含む接触面を有する光学バイオセンサからなる。さらに、当該装置を用いたリガンド誘導生細胞活性を測定するための装置および方法、及び当該装置の製造方法を提供する。

Description

先の米国出願の利益の主張
本出願は、2007年2月28日に出願の米国仮出願第60/904,129号の利益を主張する。この書面の内容、及びここで言及される公開、特許及び特許文献の開示は全て引用されたものとする。
本開示は、光学バイオセンサ、特に、生細胞検知などの細胞アッセイのための共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサ及び方法に関する。関連する開示としては、例えば、共有の、係属中のPCT出願である、「ラベルフリーバイオセンサ及び細胞」と題するY. ファン(Y.Fang)他のPCT/US2006/013539(公開番号WO 2006/108183)、2006年12月10日発行、を参照のこと。
目的細胞の生物学的な機能をよりよく理解し、創薬及び医薬品開発の成功についてより正確に評価するために、生来の又は生理学的に適切な状況から生細胞を調べる能力が望まれる。生化学的アッセイに比べてより複雑で明確ではないが、生細胞の活性及び健全性をモニタするセルベースアッセイは、セルベースアッセイは、生化学的アッセイにはない機能情報の抽出という重要な利益を提供するので、例えば、創薬及び医薬品開発において支持を得てきた。セルベースアッセイはまた、例えば、作用様式、パスウェイ活性化、毒性、フェノタイプ応答及び外因性刺激によって媒介された同様の応答などの測定を容易する。従来のセルベースアッセイは、二次メッセンジャ生成、蛍光性ラベルを付された特定の標的のトランスロケーション、リポータ遺伝子の形質発現、特定のフェノタイプの変化および同様のイベントなどの特定の細胞イベントを測定することができる。しかしながら、タンパクのような分離した生体高分子が直接分析される生化学的アッセイと比較して、現在のセルベースアッセイは、緑色蛍光性タンパクのような蛍光性分子などの読み出し標識を有する又は有しない標的の過剰発現などのより多くの操作を必要とし、このような操作は、対象とする標的の細胞生理に重大な問題を生起しうる。創薬及び医薬品開発またはバイオマーカ確認のために広く用いられている化合物ライブラリ・スクリーニングにとって、検出方法を妨げうる化合物の数は多く、多くの偽陽性すなわち陰性に導く。例えば、色のついた化合物は、蛍光ベースの検査法を妨げることがある。従って、例えば、無侵襲および操作フリーで高感度な細胞活性の検出を提供できるセルベースアッセイが極めて望ましい。
しかしながら、光学バイオセンサおよびその使用には問題が存在する。例えば、媒質の屈折率の僅かな変化に対する光学バイオセンサの高感度性や強化は、緩衝溶液およびサンプルをDMSOなどの極性溶媒に対して較正する必要がある創薬アッセイなどにおいて複雑さを生じさせる。例えば、E.ヒット(E. Hitt)の「無問題ではないラベルフリー(Label Free not without Problems)」、創薬及び開発(Drug Discovery & Development)(www.dddmag.com, 1/21/2005; http://cmliris.harvard.edu/news/2004/DrugDiscDev_Sep04.pdf)を参照のこと。他の問題は、光学バイオセンサを用いたラベルフリー又はラベル独立検出(LID)法は高スループット・スクリーニング(HTS)などにおいて高速であるが、再現性の問題を有していることである。
上述した従来の装置および方法の問題および関連した問題を克服するリガンド誘導生細胞活性を測定するロバスト光学バイオセンサ装置および方法が望まれている。
特許請求の範囲に係る発明は、一般に光学バイオセンサに関し、特に、生細胞検知などの細胞アッセイのための共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサおよび方法に関する。
本開示は、ここで規定されるリガンド誘導細胞活性を測定する装置を提供し、当該装置は、適合化剤領域を含む接触面を有する光学バイオセンサと、任意の表面モディファイア領域と、細胞領域と、を有する。本開示はまた、当該装置を製造ずる方法および当該装置を用いてリガンド誘導細胞活性を測定する方法を提供する。
本開示は、表面プラスモン共鳴(SPR)を含むエバネッセント波ベースの光学バイオセンサ及びRWGバイオセンサなどを含むバイオセンサを用いたセルベースアッセイの方法および表面を提供する。開示された表面は、適切な細胞成長および細胞付着、及びリガンド媒介細胞活性のアッセイを可能にする。実施例において、本開示は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および他の哺乳動物の株化細胞(cell line)など、広範な付着細胞用の無機材料薄層を有する表面を提供する。実施例において、本開示は、T細胞またはキラー細胞などのサスペンジョン細胞(懸濁細胞)と同様、人間の胎児の腎臓(HEK)細胞および設計されたHEK細胞などの弱付着細胞のための細胞アンカー物質または適合化剤を有する表面を提供する。実施例において、本開示はまた、サスペンジョン細胞のリガンド誘導細胞内活性を研究する方法を提供する。細胞懸濁ではなく、通常、付着細胞層の底部の薄い部分内における細胞内容物のリガンド誘導の動的再分布の測定を可能にするにすぎないので、当該細胞内活性は、従来の光学バイオセンサでは検出できない。実施例において、本開示は、多くの異なるタイプの表面を有するバイオセンサのマイクロタイタープレート装置、及び天然の株化細胞(細胞ライン)や過剰発現標的などの設計された株化細胞用のロバストなバイオセンサ・セルベースアッセイを可能にする最適な表面の識別及び高速スクリーニングのためのかかる装置の使用を提供する。本開示アッセイ法は、例えば、限られた検知体積を有するバイオセンサを用いては検出することができないリガンド誘導活性を有する弱付着細胞のおよびサスペンション細胞の用途に極めて適している。
図1A及び1Bは、本開示の実施例における、生細胞の検知に用いられるRWGバイオセンサの2つの例の断面構成を示している。 本開示の実施例における、図1Aの構成のCHO-KCNQ細胞から得られたアデノシン三リン酸(ATP)誘導光学シグナル結果を示している。 本開示の実施例における、図1Bの構成のCHO-KCNQ細胞から得られたアデノシン三リン酸(ATP)誘導光学シグナル結果を示している。 本開示の実施例における、RWGバイオセンサの表面上の細胞アンカー物質又は適合化剤のクラスタまたはアイランドを図示し、クラスタは、細胞付着および成長のアンカー点でありうる。 図4A及び4Bは、本開示の実施例における、生細胞の検知に用いられる表面修飾された2つのRWGバイオセンサの構成例を示し、当該バイオセンサは局所的質量又は質量密度の刺激誘導変化に対する異なる感度を有する。 本開示の実施例における、異なるゼラチン・コーティング濃度を有する3つの表面上で培養されたHEK293細胞から得られたATP誘導動的質量再分布シグナルを比較する図である。 本開示の実施例における、低濃度ゼラチン・コートの384ウエル・バイオセンサ・マイクロプレート(Epic(登録商標)セルプレート、コーニング社)上で培養されたHEK293細胞を用いたセルアッセイの再現性およびロバスト性を示す図である。 本開示の実施例における、低濃度ゼラチン・コートの384ウエル・バイオセンサ・マイクロプレート(Epic(登録商標)セルプレート、コーニング社)上で培養されたHEK293細胞を用いたセルアッセイの再現性およびロバスト性を示す図である。 本開示の実施例における、異なる表面結合トリペプチド濃度を有するRWG表面上で培養されたHEK293細胞についてのATP誘導光学シグナル標準活性アッセイ・プロットを示す図である。 本開示の実施例における、細胞浸透性ペプチド(擬RACK1)による刺激の前後においてJurkat細胞から得られた光学シグナルのプロットを示し、サスペンジョン細胞は異なるサーフェスプレパレーションおよび特性を有するバイオセンサ上に固定された。 本開示の実施例における、Jurkat細胞のリガンド誘導細胞イベント及びその検知結果の可能なメカニズムを図示している。
図面(もしある場合には、)を参照して本開示の様々な実施例について以下に詳細に説明する。様々な実施例に対する言及は本発明の範囲を限定するものではなく、本明細書に添付した特許請求の範囲のみによって制限される。さらに、本明細書に記載された例は限定することを目的とせず、単に特許請求の範囲に記載された発明の多くのあり得る実施例を記載しているにすぎない。
本実施例において、本開示はリガンド誘導細胞活性を測定するための装置を提供し、当該装置は、バイオセンサの表面と接触する適合化剤部を有する適合化剤領域、及び少なくとも1つの適合化剤と関連する少なくとも1つの細胞を有する細胞領域を含む接触面を有する光学バイオセンサと、を有し、当該適合化剤部は、孤立した1つの適合化剤片、2つ以上の適合化剤片からなるアイランド、複数の適合化剤片からなる不連続な薄膜、及びこれらの組合せの少なくとも1つを含んでいてもよい。本実施例において、本開示はまた、当該装置を製造する方法、及び当該装置を用いてリガンド誘導細胞活性を測定する方法を提供する。
[定義]
定義「アッセイ」、「アッセイする」又は同様の用語は、確定するための分析、例えば存在、非存在、量、範囲、キネティクス、ダイナミクス、またはリガンド候補化合物などの外因性刺激による刺激時の細胞の光学応答のタイプを確定するための分析をいう。
「付着する」、「付着」、「接着する」、「接着した」又は同様の用語は、例えば、本開示の表面モディファイア物質、適合化剤、細胞、リガンド候補化合物および同様の主体を、物理吸着、化学的結合および同様のプロセスまたはこれらの組合せによって表面に固定化するまたは不動化することを一般的にいう。特に、「細胞付着」、「細胞吸着」又は同様の用語は、培養による、又はアンカー物質、適合化剤または両者による細胞の表面への結合又は相互作用をいう。
「付着細胞」は、細胞培養の間、基体(サブストレート)の外部表面と接触、固定化された又は関連して存続する原核または真核細胞などの細胞または細胞ラインをいう。このようなタイプの培養後の細胞は、洗浄及び媒質交換プロセス、多くのセルベースアッセイに不可欠なプロセスに耐える又は存続する。「弱付着性細胞」は、細胞培養の間、基体(サブストレート)の表面と弱く相互作用する又は関連する又は接触する原核または真核細胞などの細胞または細胞ライン(セルライン)をいう。しかしながら、これらのタイプの細胞、例えばHEK細胞などは洗浄又は媒質交換などの物理的に乱す方法によって基体の表面から容易に分離される傾向がある。
「サスペンジョン細胞」は、培養の間、基体の表面に付着又は接着せずに、好ましくは媒質中で培養される細胞または細胞ラインをいう。「細胞培養する」又は「細胞培養」は、管理された条件下で原核か真核細胞のいずれかが成長されるプロセスをいう。「細胞培養」は、多細胞真核細胞、特に動物細胞から得られる細胞を培養することのみならず、複合組織および臓器を培養することもいう。
「適合化剤(コンパチビライザ、Compatibilizer)」、「細胞アンカー物質(cell anchoring material)」または同様の用語は、バイオセンサ表面に適用され、その後接触された又は培養された細胞に対しより受容的又は相互作用的にさせ、バイオセンサへの細胞の固定化を高める天然の又は合成された物質又は分子をいう。適合化剤は、細胞と直接相互作用してもよい。このような適合化剤は、例えば、ポリペチド、抗原、ポリクローナル抗体、単クローン抗体、単一連鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、ペプチド、タンパク、天然および変性された細胞接着ポリペチド、ポリマー、反応性分子、同様の物質又は分子であり、細胞の表面分子のいずれかの少なくとも1つと結合する又は相互作用する。実施例において、適合化剤は間接的に細胞と相互作用し、適合化剤は細胞接着分子を放出して細胞外マトリックス(ECM)の形成に至る。このような適合化剤は、例えば有機化合物、例えば小分子およびポリマー、例えばアミノシラン、ポリアルキレン・グリコール、又はこれらの混合物、および無機材料、水不溶解性の金属酸化物または混合金属酸化物、およびシリカなどの無機ポリマーを含んでもよい。さらに、ここで用いられるシリカ(二酸化ケイ素SiO2)材料および関連した金属酸化物材料の定義、説明および方法については、例えば、R. K. イラー(R. K. Iler)の「シリカの化学(The Chemistry of Silica)」、Wiley-Interscience社、1979年を参照のこと。
「適合化」、「適合化された」又は同様の用語は、バイオセンサ表面への適合化剤の適用の結果又は作用をいい、当該表面を細胞付着に関し適合的又は受容的にすることをいう。
「表面モディファイア」または同様の用語は、天然の又は合成された分子または物質であり、バイオセンサ表面に適用され、当該表面をその後適用される適合化剤に受容的又は相互作用させ、適合化剤のバイオセンサ表面への固定化を増強させるものをいう。
「細胞」または同様の用語は、小さく通常顕微鏡的な半透膜によって外的に結びつけられた原形質の質量であって、任意に1つ以上の核および様々な他の細胞小器官を含み、単独で、あるいは他の同様の質量と相互作用して生体の全ての基本的機能を実行でき、合成細胞構成、細胞モデル系および同様の人工細胞ラインを含む独立して機能しうる最小の生体構造単位を形成するものをいう。
「リガンド候補化合物」、「リガンド候補」、「候補」または同様の用語は、バイオセンサに付着した細胞と相互作用する可能性について興味深い、天然の又は合成された分子または物質をいう。リガンド候補物質は、例えば、化合物、生体分子、ペプチド、タンパク、生体試料、医薬品候補の小分子、医薬品候補の生物学的分子、医薬品候補の小分子−生物学的分子複合体(conjugate)および同様の物質又は分子の主体又はそれらの組合せを含んでもよく、それらは具体的には、タンパク、DNA、RNA、イオン、脂質または同様の生細胞の構造又は成分などの細胞標的の少なくとも1つと相互作用又は結合しうる。
「バイオセンサ」または同様の用語は、生物学的なコンポーネントを物理化学的な検出部コンポーネントと結合する検体の検出のためのデバイスをいう。当該バイオセンサは、通常3つの部分、すなわち、生物学的な成分または構成要素(例えば組織、微生物および細胞)と、検出部(ディテクタ)構成要素(例えば光学的、圧電、電気化学的、測熱法的、磁気などの物理化学的な方法で動作する)と、当該両要素と関連するトランスデューサと、から構成されている。当該生物学的な成分または構成要素は、例えば、生細胞であってもよい。実施例において、光学バイオセンサは、生細胞の分子識別または分子刺激イベントを数量化できるシグナルに変換する光学トランスデューサを有していてもよい。
従来技術における当業者にとって周知である略語(例えば、「h」は時間、「g」又は「gm」はグラム、「mL」はミリリットル、「rt」は室温、「nm」はナノメートル、及び同様の略語)が用いられている。
「含む」、「含んでいる」は、制限的ではなく含むことを意味する。
「約」は、本開示の実施例を記載する際に用いられる、例えば組成の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、同様の値および範囲を修飾し、例えば、化合物、組成物、濃度物、使用配合物を作るのに用いられる通常の測定又は取扱処理、これらの処理における偶然誤差や、これらの方法を実行する際に用いられる製造、ソースまたは出発物質または成分の純度の違い、及び同様の事項などにおいて生じうる数量の変動をいう。用語「約」はまた、特定の初期濃度または混合物を有する組成または調合の経年変化による違い、及び特定の初期濃度または混合物を有する組成または調合の混合又は処理による違いを包含する。用語「約」により修飾された添付の特許請求の範囲は、これらの量に等価な量を含む。
実施例における「本質的に構成されている」は、例えば、表面組成、表面組成を製造または用いる方法、調合、バイオセンサ表面上の組成、物、デバイス、又は本開示の装置をいい、特許請求の範囲に列挙の要素またはステップ、また組成、物品、装置及び本開示の製造または使用方法の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素またはステップ、を含み、例えば特定の反応物、特定の添加物又は成分、特定の前処理またはブロッキング作用剤、特定の細胞又は細胞系(セルライン)、特定の表面モディファイア、特定の適合化剤、特定の細胞又は細胞系、特定のリガンド候補物質、又は同様の構造、物質または選択されるプロセス変数である。例えば、実質的に本開示の要素またはステップの基本的な特性に影響を及ぼしてもよいかまたは望ましくない特性を現在の本開示に与えてもよいアイテムは、バイオセンサ表面に対する減少した親和性、リガンド候補物質の細胞に対する減少した親和性、リガンド候補物質に応答する異常な又は反する細胞活性、および同様の特性を含む。
ここで用いられる不定冠詞「a」又は「an」、及びその対応する定冠詞「the」は、特定されない限り、少なくとも1つの、又は1つ以上を意味する。
開示された反応物、成分、添加物の特定の又は好ましい値及びそれらの範囲は説明のみのためであり、定められた範囲内の他の値または他の定められた値を除外するものではない。本開示の組成、装置および方法は、ここに記載されている値、特定の値、より特定の値および好ましい値、のいかなる値またはいずれかの組合せを有するものを含む。
本開示の組成物の調製に用いられる組成及び成分および同様の組成は、適切な塩又はここに説明されたそれらの塩類を含んでもよい。ここで記載されている方法において用いられる出発物質は、市販されているか、文献において報告されるか、又は当該分野において知られている処理を用いて容易に利用可能な出発物質から準備されてもよい。実施例において、反応物の相対的な比率は、例えば気孔率、密度、表面領域カバレージ(被覆率)および表面モディファイア、適合化剤、細胞などのバイオセンサ表面組成から生じる望ましい特性およびそれらの組合せの同様の特性に従い変化してもよい。
実施例において、本開示は、リガンド誘導細胞活性を測定する装置を提供し、当該装置は、例えば、バイオセンサの表面と接触する適合化剤(compatibilizer)を有する適合化剤領域と、例えば少なくとも1つの適合化剤片に付着または固定化した関連する少なくとも1つの細胞を有する細胞領域とからなる接触面を有する光学バイオセンサを有する。実施例において、当該適合化剤領域は、バイオセンサの表面に直接または間接的に接続された適合化剤を含んでもよい。直接的に接続される場合には、介在する材料または物質がない。間接的に接続される場合には、介在する材料または物質、例えば表面モディファイア(改変剤)が存在する。実施例において、適合化剤は、例えば不均一な薄膜を有するが完全なバイオセンサ・カバレージを有するなど、連続的であるが不均一な薄膜又は層であってもよい。実施例において、適合化剤は、例えば不完全なバイオセンサ・カバレージを有する不連続な薄膜または層であってもよい。例えば、軽微な又は最小の、中間的な、又は大きな又はかなりのカバレージ・ギャップを有し、均一又は不均一な膜厚を有していてもよい。実施例において、適合化剤は、中間またはかなりのバイオセンサ表面領域カバレージ・ギャップを有する不連続な薄膜又は層であってもよく、例えば、分離したまたは単一の適合化剤片、パッチまたは2つ以上の適合化剤片のアイランド、複数の適合化剤片からなる薄い不連続な薄膜またはそれらの組合せの少なくとも1つからなっていてもよい。
実施例において、適合化剤領域は、例えば、バイオセンサ表面上の均一又は不均一な膜厚を有する連続的又は不連続な薄膜又は層としての表面モディファイア(改変剤)、及び適合化剤からなっていてもよい。実施例において、適合化剤領域は、例えば、均一又は不均一な膜厚を有するバイオセンサ上のまたはバイオセンサと接触する連続的な薄膜又は層としての表面モディファイアと、当該表面モディファイアの全てではないが表面モディファイアのいくつか又は多くと関連する適合化剤の不連続な薄膜又は層と、を有していてもよい。実施例において、当該適合化剤は均一、連続的な薄膜ではない。
実施例において、細胞は、例えば表面付着細胞、弱付着細胞、細胞サスペンジョンまたはそれらの組合せの少なくとも1つからなっていてもよい。
実施例において、適合化剤は、バイオセンサ上の低密度または低濃度の、例えばバイオセンサ表面上の表面カバレージが約0.01%ないし約10%、約0.1%ないし約10%、約0.1%ないし約5%、約0.1%ないし約2%、約0.1%ないし約1重量%、及び同様の表面カバレージを有する、例えばゼラチン、ペプチド、抗体、ナノパーティクルおよび同様の物質又はそれらの組合せからなっていてもよい。
当該適合化剤は、例えば、約1〜約1,000マイクロモル濃度、約1〜約500マイクロモル濃度、約1〜約250マイクロモル濃度のまたは同様の実効濃度などの実効濃度で、裸のバイオセンサ表面または表面モディファイア処理されたバイオセンサ表面に適用されてもよい。その後の洗浄、ストリッピングまたは同様の処理によって、適合化剤の表面濃度が、例えば上述の表面カバレージまたは同様のカバレージまで低減されてもよい。
実施例において、適合化剤領域は、例えば、適合化剤によって占められた、バイオセンサ表面および細胞間に位置する領域からなっていてもよい。実施例において、適合化剤領域は、例えば、バイオセンサ表面および適合化剤の間に位置する表面モディファイアによって占められる領域からなる表面モディファイア領域をさらに含んでいてもよい。実施例において、当該表面モディファイアは、例えば金属酸化物、混合金属酸化物、表面処理された金属酸化物、表面処理された混合金属酸化物、またはそれらの組合せの少なくとも1つのナノパーティクルからなり、例えば約1〜約1,000ナノメートル、約1〜約100ナノメートル、約1〜約50ナノメートル、約1〜約15ナノメートル、及び同様の大きさおよび範囲の層厚平均粒子直径を有していてもよい。実施例において、当該ナノパーティクルは、例えばナノパーティクル・シリカであってもよく、例えば約0.01%ないし約10%の表面カバレージ及び同様のカバレージでバイオセンサの表面に存在してもよい。実施例において、当該表面モディファイアまたは適合化剤は、例えば、ナノパーティクルまたは不連続な薄膜または層のゼラチンであってもよく、例えば約0.01%ないし約10%の表面カバレージ及び同様のカバレージでバイオセンサの表面に存在してもよい。
実施例において、本開示は上記の装置を製造する方法を提供する。実施例において、当該方法は、例えば光学又は同様のバイオセンサの表面を適合化剤で装飾し、適合化バイオセンサ接触面を形成し、当該適合化剤装飾バイオセンサ表面に細胞を付着させることを含む。当該装飾により、例えば、利用可能なバイオセンサ接触表面領域をベースとして約10〜約95パーセントの適合化剤カバレージを有するバイオセンサ表面が得られる。当該適合化剤装飾バイオセンサ表面に細胞を付着させることにより、例えば、有効な適合化剤表面または適合化剤サイトの約10〜約100パーセントが関連する細胞により被覆された検知表面が得られる。実施例において、当該装飾することは、バイオセンサ表面に適合化剤を接触させる以前にバイオセンサ表面に表面モディファイアを接触させることを更に含んでもよい。
実施例において、図示するようにまたここに示すように、細胞付着は、例えば、細胞を適合化剤装飾バイオセンサ表面に接触させることによって達成されてもよい。
実施例において、当該装置を製造する方法は、例えば、適合化バイオセンサ表面に細胞サスペンジョンを接触させる前に適合化バイオセンサ表面を遮断剤で処理することを更に含んでもよい。適切な遮断剤は、例えば、約0.01〜約10wt%、約0.1〜約5wt%、約0.1〜約1wt%または同様の濃度の水溶液で当該表面に適用される、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、チオエタノール、又は同様の化合物などのチオール化合物または親水性アミンおよびそれらの組合せであってもよい。
実施例において、本開示はリガンド誘導細胞活性を測定する方法を提供する。当該方法は、上記した表面適合化光学バイオセンサにリガンド候補を接触させ、例えば、適切な光学検出システムによりリガンド接触への細胞の光学応答を測定することを含む。
実施例において、当該リガンド候補は、ここに開示及び説明されているように、例えば、医薬品候補の小分子、医薬品候補の生物学的分子、医薬品候補の小分子−生物学的複合体、ウィルス、バクテリアおよび同様のリガンド候補物質の少なくとも1つ、又はそれらの組合せあってもよい。当該リガンド候補は、例えばコーティングしてないバイオセンサ表面、表面モディファイア処理したバイオセンサ表面、適合化剤処理したバイオセンサ表面、または表面モディファイアおよび適合化剤で処理したバイオセンサ表面と低親和性の又は親和性を有しないように、例えば実験室でのスクリーニングまたは同様の方法によって選択されてもよい。これとは逆に、表面モディファイア、適合化剤、又は両者が当該リガンドと低親和性の又は親和性を有しないように、例えば実験室でのスクリーニングまたは同様の方法によって選択されてもよい。
実施例において、リガンド接触に対する細胞の光学応答を測定することは、例えば、当業者によって理解される方法によって入射光および反射光の屈折率差を検出して確定することを含む。実施例において、リガンド接触に対する細胞の光学応答を測定することは、例えば、細胞活性度に対するDMRシグナルの相関をとることをさらに含む。
実施例において、本開示はリガンド誘導細胞活性を分析する方法を提供し、当該方法は、例えば、細胞表面分子と相互作用しうる官能基を有する適合化剤が付着された光学バイオセンサの表面に少なくとも1つの細胞をその中に有する媒質を接触させるステップと、細胞が当該光学バイオセンサ表面に付着するまで当該光学バイオセンサの当該表面で当該媒質をインキュベート(培養)するステップと、付着細胞を有するバイオセンサにリガンド候補または同様の化合物を接触させるステップと、付着していない細胞を任意に取り除き、任意に媒質を取り除くステップと、検出システムによりリガンド接触に対する細胞応答をモニタするステップと、を有している。実施例において、当該バイオセンサ表面に付着した適合化剤を有する当該バイオセンサ表面は、当該適合化剤及び当該バイオセンサ表面の間に位置する表面モディファイアを任意に含んでもよい。
実施例において、当該培養は、処理されたバイオセンサ表面から付着していない細胞を取り除き又は分離し、任意に媒質を取り除いた後に行われてもよい。実施例において、付着した適合化剤を有する当該バイオセンサ表面は、例えば、当該適合化剤及び当該バイオセンサ表面の間に位置する表面モディファイアを含んでもよい。
実施例において、本開示は細胞ベースのバイオセンサを製造する方法を提供し、当該方法は、例えば、
受容的な表面を有するバイオセンサを適切な適合化剤の溶液またはサスペンジョン(懸濁液)などの調合適合化剤に接触させるステップであって、当該適合化剤は、例えば、約1〜約1,000マイクロモル濃度、約1〜約500マイクロモル濃度、約10〜約250からマイクロモル濃度、約10〜約100マイクロモル濃度、又は同様の濃度および範囲の濃度を有し、当該適合化剤でコーティングされた表面を有するバイオセンサを形成するステップと、
得られた適合化剤コーティングされたバイオセンサ表面を適切な液体で洗浄および任意に乾燥を行い、非結合の適合化剤を取り除いて適合化剤で表面装飾された適合化バイオセンサを形成するステップと、
当該適合化バイオセンサ表面に細胞サスペンジョンを接触させ、当該適合化バイオセンサ表面に少なくとも1つ以上の付着した当該細胞サスペンジョンを有する当該適合化バイオセンサを形成するステップと、を有する。当該方法はさらに、細胞相互作用を達成する前に、例えば遮断剤で当該適合化バイオセンサ表面を処理する又は同様の処理を行うステップを含んでもよい。
実施例において、当該方法は、付着した又は固定化した細胞を有する適合化バイオセンサ表面にリガンド候補化合物を接触させ、及びその後任意に洗浄し、当該適合化バイオセンサ表面に関連する少なくとも1つの細胞に関連した又は結合した少なくとも1つ以上のリガンド候補物質を有する適合化バイオセンサを形成するステップを含んでもよい。
実施例において、上述した方法における、付着細胞を有する適合化バイオセンサ表面にリガンド候補物質を接触させるが少なくとも1つの付着細胞に関連又は結合しないことは、例えば、バイオセンサ結合細胞のレセプタのまたは同様の表面分子に対するリガンド候補物質の親和性、濃度、反応速度、又は同様の理由が当該特定のアッセイ状態下では不十分であることを示すという有用な負の結果が得られる。従って、当該方法は、例えば、スクリーニング・リード化合物または生物学的治療候補物質などの、リガンド候補の組合せライブラリの敏感な識別子として用いることができる。
実施例において、本開示はまた、リガンド誘導細胞活性をアッセイする方法を提供し、当該方法は、少なくとも1つの細胞をその中に有する媒質を細胞がバイオセンサ表面に付着するまで光学バイオセンサの接触面でインキューベートするステップと、ここで当該バイオセンサ表面はバイオセンサ表面に付着しているが完全には覆ってはいない適合化剤を有し、当該適合化剤は細胞表面分子と相互作用しうる官能基を有し、付着細胞を有するバイオセンサにリガンド候補を接触させるステップと、検出システムで当該リガンド接触に対する細胞応答をモニタするステップと、を有する。
実施例において、開示された表面修飾バイオセンサおよび表面修飾バイオセンサの製造及び使用方法は、多様な細胞タイプおよび細胞素因、例えば付着細胞、弱付着細胞、サスペンジョン細胞などの細胞素因、および同様の細胞素因又はそれらの組合せに対するバイオセンサ・セルベースアッセイの応用を可能にする。ほとんどのエバネセント波ベースの光学バイオセンサは、明確で特徴づけられた、センサー表面又はその近傍における検出領域、検知体積または侵入深度を有している。ここで、当該エバネセント波は、溶液又は細胞層内で短距離(通常約200nm未満)拡がるだけである。RWG及びおよび表面プラスモン共鳴(SPR)を含む、一般に利用可能な光学バイオセンサは短い検知体積を有するため、バイオセンサ・セルベースアッセイは、細胞のセンサー表面への近接さ、例えば数100ナノメートルの近接さを必要とする。さらに、細胞の表面付着および成長は、ロバストなバイオセンサ・セルベースアッセイでの成功を得る際の重要なファクタでありうる。実施例において、バイオセンサ接触面は、多種多様な細胞ラインの付着及び成長に関して生物学的に適合的でサポートするものでなければならない。実施例において、バイオセンサ接触面に付着した細胞は洗浄及び試薬調剤などの処理に耐えうる。
実施例において、本開示は、ゼラチンまたは適合化剤などの生物学的に適合的な物質によるバイオセンサ表面の低濃度コーティングを得る方法を提供する。得られたコーティングされた表面は、広範な細胞、特にHEK細胞などの弱く付着した細胞を当該コーティング表面に付着して成長させ、ロバスト・セルアッセイ、例えばバイオセンサに付着した細胞とリガンド候補物質との相互作用の検出及び分析を可能にする。
実施例において、本開示はまた、不完全な又は不連続な適合化剤、表面モディファイア、又はその両者のコーティングのコーティング表面を有し、細胞または細胞サスペンジョンが当該コーティング表面と相互作用するバイオセンサを提供する。さらに、本開示は、当該バイオセンサを用いて、細胞サスペンジョンのリガンド誘導細胞活性を検出および測定する方法を提供する。
実施例において、本発明は、過剰発現標的を有する設計された細胞ライン又は天然の細胞ラインなどについてのロバスト・バイオセンサ・セルベースアッセイを可能にする最適表面の高速なスクリーニングおよび識別のための様々な異なる表面の少なくとも1つを有するバイオセンサ・マイクロタイタープレート製品またはデバイス、及びかかるデバイスの使用を提供する。対象とする細胞タイプの多様性のため、既知でよく特徴づけられた細胞ラインにおける過剰発現標的の予想外のインパクトと同様、バイオセンサによる天然及び人工の細胞ラインの付着、成長およびアッセイは、最適な性能を得るために異なる界面化学を必要とする場合がある。従って、多くの界面化学への適応性及び能力を有する製品またはデバイスが、バイオセンサ・ベースのセルアッセイの最適表面をスクリーニング及び識別するために望まれる。かかるデバイスがここに開示され、説明されている。
[生細胞検出のための光学バイオセンサ]
歴史的に、光学バイオセンサは、生体分子相互作用の結合親和性およびキネティクスについて詳細な情報を提供する能力を有するので、ルーチンの生体分子相互作用解析に主に用いられた。従って、これらのデバイスは、しばしば親和性ベースのバイオセンサと称された。医薬品発見の生産性を向上させるために、創薬パラダイムは近年、標的指向アプローチからシステム生態学中心のアプローチにシフトしてきた。かかるパラダイム・シフトはテスト用および医薬品スクリーニングのための生細胞システムの使用を必要とし、医薬品発見のこのような必要性および可能な解決を生じた。
例えば熱量、音響、電気化学又は磁気トランスデューサを用いるバイオセンサなどの他のタイプと同様に、本開示の光学バイオセンサは、分子識別イベントまたはリガンド誘導細胞応答を数量化できるシグナル(光学シグナルと称される)に変換する光学トランスデューサを有している。
生細胞の検知のため、細胞、例えば生細胞、組織、腫瘍、血液又は同様の体液、バクテリアおよび同様の検体を含む細胞システムまたは生物システムが本開示のバイオセンサの表面に接触され、例えばバイオフィルム、細胞層、又は細胞システムまたは生物システムの同様の装飾を適合化剤装飾バイオセンサ表面に形成する。標的検体、すなわち医薬品候補化合物のようなリガンド候補とバイオセンサ表面上の細胞システムまたは生物システムの層との間の相互作用は反射光の光学的内容に変化を生じさせる。かかる変化はトランスデューサによって検出され、バイオセンサの表面に関連する細胞システムまたは同様の生物システムの層の標的分子誘導変化を確定するのに用いることができる。
過去の数十年の間に、様々な光学バイオセンサ、例えば、表面プラスモン共鳴(SPR)、共鳴導波路グレーティング(RWG)および共鳴鏡、及び同様の光学バイオセンサが開発されてきた。これらの光学バイオセンサのほとんどは、エバネセント波を活用してセンサー表面又はその近傍の細胞システムまたは生物システムの層の分子の相互作用又は変化を評価するものである。エバネセント波は、溶液−表面界面での光の全反射によって生成され、例えば数100ナノメータの短距離だけ溶液中に拡がる、侵入深度又は検知体積または検出領域と呼ばれる特性深度を有する電磁場である。実施例の表面モディファイア領域、適合化剤領域、及び関連する細胞又細胞領域の少なくとも一部、又は同様の生物システムは検出領域内に存在する。本開示は、全細胞検知のためのこれらのエバネセント波ベースの光学バイオセンサに適用できる。
具体的には、RWGバイオセンサは、回折格子による光の導波路内への共鳴結合を利用する。例えば波長および角度インターロゲーション・システムなど、多くのタイプの検出方式がある。
波長インターロゲーション・システムにおいては、入射波長範囲をカバーする偏光が導波路を直接照射するために用いられ、特定の波長の光が結合され、導波路に沿って伝搬する。最大結合(in-coupling)効率が得られる共鳴波長は、センサー表面又はその近傍の局所屈折率の関数として得られる。サンプルの標的分子が細胞標的に結合し、その後細胞システムまたは生物システムの層の底部(すなわち、光学バイオセンサの検出領域又は検知体積内で)の細胞内容の動的再配置又は再分布を引き起こすとき、共鳴波長のシフトが伴う。理論によって制限される必要はないが、細胞内容の動的再配置または再分布は、例えばリガンドによる細胞システムの刺激によって誘起される細胞システムの形態の変化(細胞を丸くまたは平らにする、あるいは細胞骨格のリモデリングのような)、いかなる細胞標的の動的再配置、及びその両者に起因するであろう。
共鳴波長法を具現化している商用の機器の例は、例えば温度制御された環境および液体取り扱いシステムを含むRWG検出部を有するコーニングEpic(登録商標)システム(www.corning.com/lifesciences)である。当該検出システムは、反射光のリガンド誘導波長シフトを測定する統合ファイバ光学系を有する。光ファイバ及びマイクロプレートの底部を通して名目上垂直に入射するコリメートレンズで生成される広帯域光源は、回折格子表面の小さい領域を照射するために用いることができる。反射光を記録するための検出ファイバは、照射ファイバと束ねられている。一連の照射/検出ヘッドは線形に配されており、反射スペクトルは、384ウエル・マイクロプレートの同一のカラム内のサブセットウエルから同時に集められる。プレート全体が照射/検出ヘッドによって走査され、各センサーが複数回アドレスされ、各カラムが順番にアドレスされてもよい。反射光の波長が集められ、解析に用いられる。温度制御ユニットが温度変動を最小にする。
別の角度インターロゲーション・システムにおいては、入射角度範囲をカバーする偏光が導波路を直接照射するために用いられ、特定の角度で光が導波路に結合され、導波路に沿って伝搬する。最大結合効率が得られる共鳴角度は、センサー表面又はその近傍の局所屈折率の関数である。サンプルの標的分子が生細胞システムの細胞標的に結合し、その後、細胞システムまたは生物システム層の底部内の細胞応答を引き起こすとき、共鳴角度がシフトする。かかるシステムは、例えば、米国特許公開第US-2004-0263841号、米国特許出願第11/019,439号(2004年12月21日出願)および米国特許公開第US-2005-0236554号に記載されている。
本開示のセルベースアッセイに関して、生細胞は、例えば培養によってバイオセンサの適合化表面によって接触されてもよい。細胞接着は、例えば3つのタイプの接触、すなわち局所接触、近接接触および細胞外マトリックス(ECM)接触によって仲介されてもよい。接触の各タイプは、表面からの各々の特性分離距離を有する。その結果、細胞形質膜は基体表面から約10〜約100nm離れており、比較的短い侵入深度の光学バイオセンサはそれでもバイオセンサ表面近傍の細胞の底部を検知することが可能である。多くの刺激誘導細胞応答に共通の現象は、特定の細胞内容の動的再配置又は再配列である、すなわち、その幾つかは、バイオセンサ表面近傍の細胞の底部内で生じる。細胞内容の動的再配置又は再配列は、例えば、付着度の変化、膜ラフリング、細胞の表面又はその近傍での活性化されたレセプタに対する細胞内タンパクの加入、レセプタ・エンドサイトーシスおよび同様の現象を含んでもよい。検知体積内の細胞内容の変化はセンサー表面近くでの局所屈折率の変化につながり、バイオセンサから光学シグナルとして現れる。
生細胞検知のRWGバイオセンサの重要な特性は侵入深度又は検知体積である。RWGバイオセンサは、回折格子による導波路への光の共鳴結合によって生成されるエバネセント波を利用する。導波された光は、基体−薄膜及び媒質−薄膜界面での全反射による閉じ込めのために、全てが導波路に平行な伝播方向を有する1つ以上のモードの光として観察される。導波された光モードは全ての層をカバーする横振幅プロファイルを有するので、各モードの実効屈折率Nは、全ての層の重み付けした屈折率の和である。すなわち、
Figure 2010534461
ここで、nF、nS、nCおよびnadはそれぞれ導波路、基体、カバー媒質および細胞の付加層の屈折率であり、dFおよびdadは薄膜および細胞層のそれぞれの実効厚であり、λは用いられる光の真空波長であり、m = 0、1、2、… はモード数であり、σは、TEモード(横電界、又はs偏光)について1、TMモード(縦磁界、又はp偏光)について0に等しいモードタイプである。
導波された光モードは、平面導波路の表面に平行に伝搬し、薄膜の両側周囲の低屈折率媒質内に拡がる指数的に減衰する特性を有する電磁場(すなわちエバネセント波)を生成する。当該エバネセント波の振幅(Em)は、界面からカバー媒質または基体の方向に距離zだけ離れるに従い指数関数的に減衰する。すなわち、
Figure 2010534461
また、
カバー媒質(J = c)または基体(J = s)内に拡がる導波路モードのエバネセント・テイルの侵入深度は、次式である。
Figure 2010534461
用いられるバイオセンサの構成および細胞特性の特徴に基づくと、コーニングEpic(登録商標)RWGバイオセンサ・マイクロプレートのTM0モードの侵入深度は、例えば約150nmである。かかる比較的短い侵入深度又は検知体積は、従来のSPR及びRWGを含むラベル-フリーな光学バイオセンサ技術のほとんどのタイプに共通であり、本開示は他の光学バイオセンサベースの細胞検知に適用できる。
RWGバイオセンサ細胞検知について、センサー構成は、生細胞または細胞システムの大きなサイズの故に、古典的ではない3層システム、すなわち、基体と、グレーティング構造が埋め込まれている導波路薄膜と、細胞層(例えば、図1A、図1B、図4A、図4Bおよび図8Bに図示したように)とみなされる。 実効屈折率のリガンド誘導変化(すなわち、検出されたシグナルまたは光学シグナル)は、1次近似として、細胞層の底部の屈折率変化に正比例する。すなわち、
Figure 2010534461
ここで、S(C)は細胞層に対する感度である、そしてΔncはバイオセンサによって検知される細胞層の局所的屈折率のリガンド誘導変化である。
Δnc値は、検知体積内の分子アセンブリまたは細胞標的の局所的濃度の変化に正比例する。これは周知の細胞の物性のためである、すなわち、細胞内の所与の体積の屈折率は、主に生体分子(主にタンパク)の濃度によって確定され、それは細胞の光顕微鏡像の対照のためのベースである。
検出されたシグナルまたは光学シグナルは、センサー表面から離れた所で生じており、各々が全体的応答に同等ではない寄与を有する質量再分布の和である。これは、エバネセント波の指数関数的に減数する性質を原因として生じる。
重み付けファクタexp(-zi/ΔZc)を考慮すると、センサー表面に対して垂直方向に生じている検出シグナルは次式によって決定される。
Figure 2010534461
ここで、ΔZcは細胞層内への侵入深さであり、αは特定の比屈折率インクリメント(タンパクに対しては約0.0018)、ziは質量再分布が生ずる距離、dは細胞層内のスライスの仮想上の厚さである。ここで、細胞層は垂直方向に等しい間隔のスライスに分割されている。
理論的解析は、波長または角度シフトに関して、検出シグナルが主に垂直方向の質量再分布に敏感であることを示唆している。その動的な性質のため、それはまた、動的質量再分布(DMR)シグナルと称される。DMRシグナルの他に、バイオセンサはまた、細胞内容の水平方向(すなわちセンサー表面に対して平行)の再分布を検出する能力を有する。ジグザク理論に基づく理論的解析は、共鳴ピークのいかなる形状変化も、主にセンサー表面に平行な細胞内容のリガンド誘導不均質再分布によることを示す(Y.ファン他、「生細胞検知のための共鳴導波路グレーティングバイオセンサ」、2006年(Fang, Y., et al., (2006) “Resonant Waveguide Grating Biosensor for Live Cell Sensing,” Biophys. J.,91, 1925-1940)を参照のこと)。さらに、DMRシグナルは、検知体積内の全ての再分布イベントの和である。本これは、開示のバイオセンサによる全細胞検知が、上述した固定化されたレセプタに結合する検体量を直接測定する親和性ベースのアッセイとは異なっていることを示唆する。
[質量再分布セルアッセイ技術(MRCAT)]
共有に係る同時係属のPCT出願PCT/US2006/013539(2006年12月10日発行)において、無侵襲および操作フリーなセルアッセイ方法として再分布細胞アッセイ技術(MRCAT)が開示されている。MRCRTは、光バイオセンサ、特に共鳴導波路グレーティング(RWG)バイオセンサを用い、付着細胞の底の薄い部分内のリガンド誘導の動的な質量再分布をモニタする。得られたDMRシグナルは積分細胞応答を表し、細胞標的または分子アセンブリのリガンド誘導による動的な、定方向および方向再分布から生じたものである。MRCATは、シグナリングおよびそのネットワーク相互作用などの細胞活性の研究を可能にし、設計された細胞または細胞ラインの内因性レセプタ又は過剰発現レセプタに対するリガンド候補化合物の高スループットのスクリーニングをも可能にする。当該同時係属の出願において開示される細胞アッセイは、チャイニーズハムスター卵巣、人間表皮がんA431細胞、Cos7細胞、ヒーラ(HeLa)細胞、一次細胞、幹細胞及び同様な細胞を含む適度に粘着性の細胞を用いることによって実行された。細胞は、通常、RWGバイオセンサの修飾されていない表面上に直接培養された。これらの修飾されていない表面は適度に粘着性の細胞の自己付着および成長を可能にし、また、RWGバイオセンサにより、Gタンパク質結合受容体(GPCR)シグナリングなどのリガンド誘導細胞活性をモニタする方法を可能にした。しかしながら、これらの表面は、Jurkat(ジャーカット)細胞などのサスペンジョン細胞や人間の胎生期腎臓細胞などの弱付着細胞には適していない。弱く付着する細胞は自己付着し、これらの修飾されていない表面上で成長するが、これらの弱く付着する細胞は、洗浄又は媒質交換の間に、又は他の外部からの物理的な力によって脱離する(すなわち、細胞培地からアッセイ媒体または緩衝剤へ)ので光学バイオセンサ、特にRWGバイオセンサを用いたアッセイはうまく働かない。洗浄又は媒質交換工程は多くのタイプのセルベースアッセイにおいて共通に含まれる。対照的に、サスペンジョン細胞は概してこれらの修飾されていない表面に付着せず、通常、細胞培養を通じてそれらの球形の形状を保持する。RWGバイオセンサおよび表面プラスモン共鳴(SPR)などの光学バイオセンサは、センサー表面近傍(例えば、約200nm以内)の細胞の局所的質量、質量密度又はその両者の測定を可能にするのみなので、サスペンジョン細胞のリガンド誘導細胞活性を検出することは困難である。さらに、バイオセンサ表面との弱付着細胞の弱い接触またはサスペンジョン細胞の非接触は、リガンドによって誘起される細胞活性のいかなるロバスト測定も妨げる。なぜなら、バイオセンサ・システムの動きまたは試料溶液の追加工程の流体の動きなどのいかなる外的な物理的な力が検出領域内の細胞内容の分布を変え得るからである。
MRCATは、バイオセンサ表面と細胞の接触又は相互作用から開始し、通常、細胞はRWGバイオセンサの表面上に直接培養される。外因性シグナルは、特定の細胞シグナリングの活性化を媒介しうる。そして、多くの場合において、動的な質量再分布(DMR)に等価な細胞内容の動的再分布をもたらし得る。もし、シグナリングが検知体積(すなわち、エバネセント波の侵入深度)内で生ずる場合、DMRが現れ、RWGバイオセンサによってリアルタイムでモニタされる。バイオセンサは、マルチパラメータ測定の能力の故、細胞の高い情報内容を検知する可能性を提供する。これらのパラメータは、共鳴ピークの角度シフト(最も一般的なアウトプットのうちの1つ)、強度、半値幅(PWHM:peak-width-at-half-maximum)、領域および形状を含む。センサー全体に亘る位置感度の高い応答は、センサー全体の異なった位置の細胞の細胞応答の均一性のみならず、密度や付着力度などの細胞状態の均一性に関してもさらなる有用な情報を提供し得る。
DMRシグナルは、生細胞の新規な生理反応に関して価値ある情報を生じさせ得る。細胞層に侵入するエバネセント波のテイルの指数的減衰のため、特定の質量の標的または複合体は、当該標的または複合体がセンサー表面から離れているときと比べて、センサー表面により近いときに、より一層全体的な応答に寄与する。さらに、センサー表面に向けての標的または複合体の再配置はシグナルの増加をもたらすのに対し、センサー表面から離れる標的又は複合体の再配置はシグナルの低下につながる。特定の標的を介したDMRシグナルは、付着力の程度などの細胞状態、増殖および静止状態のような細胞状態に依存することがわかった。
一般に利用可能なRWGおよびSPRなどの光学バイオセンサの短い検知体積のため、バイオセンサ・ベースのセルアッセイはセンサー表面と細胞との近接さに依存する。加えて、細胞の付着、細胞生長又はその両者は、現在の細胞ベースのバイオセンサおよびそのアッセイ法の成功の重要なファクタであり得る。実施例において、開示の修飾(改変)されたバイオセンサ表面は、多種多様な細胞ラインの成長に生物学的に適合的であり、サポートしなければならない。実施例において、修飾されたバイオセンサ表面に対する細胞の付着は、洗浄および試薬調剤などの操作に耐えるものである。
[改善されたアッセイ・ロバスト性を有する付着細胞のための表面]
一般的なRWGバイオセンサは、ガラス基質および回折格子が埋め込まれる導波路薄膜から構成されている。導波路薄膜は、高屈折率(nF)材料および厚さdFを有し、より低い屈折率(例えば、nSはガラスの約1.50)の基板上に直接堆積される。例えば、比較のための実施例において、生細胞は導波路薄膜の裸の表面の上へ直接培養されてもよい。その導波路薄膜は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、A431細胞、HeLa細胞、Cos7細胞、人間の繊維芽細胞を含む一次細胞および同様の細胞を含む変換細胞ラインなどの付着細胞の付着および成長をサポートする。通常の導波路材料は、例えば、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、酸化チタン、窒化ケイ素、又は同様の材料およびこれらの組合せを含んでもよい。
実施例において、当該開示は、付着細胞に適し、改善されたアッセイ・ロバスト性を有する修飾(改変)されたバイオセンサ表面を提供する。実施例において、ベース層または適合化剤の特別な薄層、または約1ないし約15ナノメートルの厚さを有する材料(例えば無機材料)の適合化剤および表面修飾剤(モディファイア)が薄膜として導波路バイオセンサの表面上に直接堆積されてもよい。無機材料コーティングの厚さがあまりに厚い場合、RWGバイオセンサの感度にマイナスのインパクトを与え得る。本開示に従った適切なコーティング厚さは、例えば、蒸着法、スートガン(soot gun)法、ゾル−ゲル形成またはセルフアセンブリなどの溶液ベース法および同様の方法、又はこれらの組合せによって得ることができる。例えば、無機材料は、シリコン酸化物、タンタル酸化物、酸化チタン、窒化ケイ素、又は同様の材料およびこれらの組合せを含んでもよい。実施例において、無機物質のナノパーティクルが導波路薄膜上に直接堆積されてもよい。実施例において、適合化剤または適合化剤および表面モディファイアの特別な薄層またはベース層は、例えば、不連続あるいは不完全でもよく、例えば、適合化剤と適合化剤及び表面モディファイアとの組合せのアイランド、パッチ、孤立した粒子または同種のものに類似の装飾を形成していてもよい。
図面を参照すると、図1A及び1Bは生細胞の検知に用いられるRWGバイオセンサの2つの例の断面構成を示す。図1Aにおいては、細胞(10)は、基体(サブストレート)上に導波路グレーティングを有するRWGバイオセンサ(18)の導波路薄膜(15)の修飾されていない、すなわち裸の表面上に直接培養されている。図1Bにおいては、細胞(10)は、導波路薄膜(15)の表面上に以前に堆積されていた無機薄膜(19)の表面上に培養されている。ここで、約1nmないし約5nmのシリコン酸化物の薄膜が蒸着法によってニオブ酸化物の導波路薄膜の表面上に直接堆積されている。各々のバイオセンサに関連する細胞は、およその侵入深度(20)を有する。
図2A及び2Bは、上述した図1A及び1Bの構成のそれぞれのCHO-KCNQ細胞から得られたアデノシン三リン酸(ATP)−誘導光学シグナルまたはDMRシグナルの結果を示している。CHO-KCNQは、過剰発現されたカリウム・イオンチャネルKCNQ2を有する設計されたCHO細胞である。図2A及び2Bは、CHO-KCNQ細胞のATP-誘導DMRシグナルの時間対応答ユニットを比較する図である。図2Aの細胞は、コーニングEpic(登録商標)RWGバイオセンサの導波路薄膜の修飾されていない表面、すなわち裸のニオブ表面に培養されたものであり、図2Bの細胞は、例えば、二酸化ケイ素粒子の不連続な薄膜の修飾(改変)された導波路表面を有するバイオセンサ上に培養されたものである。図2Aの細胞は、7pmの標準偏差、6%の変動係数(CV)(アッセイ再現性の尺度)を有する115pmの平均シグナルを生成し、図2Bの細胞は、8pmの標準偏差、6%の変動係数(CV)(アッセイ再現性の尺度)を有する144pmの平均シグナルを生成した。従って、本開示の方法は高再現性すなわち低い変動性、例えば、約10%以下の変動係数(CV)、約8以下、約6%以下、約4%以下、及び同様のCVを有するアッセイを提供する。
[弱付着細胞のための表面]
実施例において、本開示は、細胞付着性および成長を促進することができる表面を有し、また、弱付着細胞のためのロバストなセルアッセイを可能にするRWGバイオセンサを提供する。実施例において、導波路薄膜の表面は、細胞付着性を促進する既知の細胞アンカー物質で修飾され、当該細胞アンカー物質は、センサー表面にランダムに分布する一連のクラスタ又はアイランドを形成していてもよい。細胞付着性を促進するとして知られている細胞アンカー物質は、生物物質、高分子材料または無機材料を含む。実施例において、上記された定義に従って、当該細胞アンカー物質は、適合化剤、表面モディファイアまたはこれらの組合せとして言及される。
実施例において、細胞アンカー物質は、生物物質であってもよい。当該生物物質は、例えば、細胞表面レセプタ−相互作用分子、細胞接着ポリペチド、細胞接着ペプチドまたは同様の物質を含む。当該細胞接着ポリペチドは、例えば、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブロネクチン・タンパク質分解フラグメント、コラーゲン、ポリ−D−リシン、又は同様の物質およびこれらの組合せを含む。当該細胞接着ペプチドは、Arg-Gly-Asp (RGD)、RGD を含むペプチドまたは同様の物質を含む。当該RGDは、フィブロネクチンの細胞付着領域に存在し、細胞結合シークエンスとして、精力的に研究された。細胞表面レセプタ−相互作用分子は、例えば、ポリクローナル抗体、単クローン抗体、単一連鎖抗体(scFv)、F(ab)フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、ペプチド、タンパクおよび同様の物質を含んでもよく、それは具体的には、例えば、インテグリンまたはインテグリン・レセプタ、免疫レセプタ、G蛋白質結合レセプタ(GPCR)、グリコプロテインまたは同様の物質などの細胞表面レセプタに結合する。
実施例において、細胞アンカー物質は、高分子物質であってもよい。当該高分子物質は、例えば、天然の又は合成の多糖を含んでもよい。実施例において、細胞アンカー物質は、無機物質であってもよい。当該無機物質は、例えば、シリカ、ケイ酸塩、同様のシリコン酸化物およびそれの派生物、例えば疎水性エーロシル(登録商標)又は同様の物質を含んでいてもよい。実施例において、細胞アンカー物質をバイオセンサ表面に適用し、直接的又は間接的なメカニズムによって、その後接触した又は培養された細胞に対してより受容的又は相互作用的にして、バイオセンサに対する細胞の固定性を高めるようにしてもよい。実施例において、当該細胞アンカー物質は、生物物質、高分子物質または無機物質の一つ以上の組合せであってもよい。
実施例において、細胞アンカー物質のアイランドは、各々のアイランドが、例えば、厚さ、領域被覆径又はその両者がおよそ10マイクロメートルのサイズの付着細胞より十分小さい大きさで、導波路薄膜の表面上にパターン化されてもよい。例えば、当該細胞アンカー物質アイランドは、矩形、円形、不規則および同様の形状又はこれらの組合せであってもよい。例えば、当該細胞アンカー物質アイランドの直径または幅は、100nm、500nm、1,000nm、2,000nmおよびこれらの中間の大きさ及びこれらの間の範囲であってもよい。実施例において、細胞アンカー物質のアイランドの密度は1つの細胞につき少なくとも1つのアイランドがあり、細胞が表面に付着するときに、細胞陥入領域など及び導波路表面に直接接触している領域以外の細胞表面領域に接触するように十分に高くされてもよい。AFM(原子間力顕微鏡)カンンチレバー・ベースの堆積、ナノプリンティングまたは同様の方法、及びこれらの組合せなどのマイクロパターン化またはナノパターン化の方法はまた、当該表面上にアイランドを形成又は分布させるために用いられる。
図3は、細胞付着及び成長のアンカー点でありうるRWGバイオセンサ表面上の生物物質のアイランド又はクラスタを図示している。図3は、共鳴導波路グレーティング・バイオセンサ(300)上の低濃度生物物質(305)のコーティングを示す。通常、開示の実施例の生物物質は、バイオセンサ基体の表面にランダムに分布する小さいクラスタを形成してもよい。これらの生物物質のクラスタまたはアイランドは、細胞付着、適切な細胞発育を促すアンカー点として機能し、ロバストなセルアッセイを可能にしうる。
図4A及び4Bは、生細胞の検知に用いられる表面修飾された2つのRWGバイオセンサの構成例を示し、当該バイオセンサは局所的質量又は質量密度の刺激誘導変化に対する異なる感度を有する。図4は、2つの異なる表面に付着した生細胞の局所的質量又は質量密度の刺激誘導変化(例えば質量再分布)に対する異なる感度を有するRWGバイオセンサを図示している。図4Aは、バイオセンサ(300)の頂部またはグレーティング表面にコーティングされた生物物質(410)の層または薄膜を有し、細胞はセンサー表面から隔てられている。センサーの限られた検出領域又は検知体積のため、当該バイオセンサは刺激によって誘起される細胞のいかなる応答にも比較的無反応であると期待される。図4Bは、対照的に、バイオセンサ表面(300)にコーティングされる低濃度の非薄膜または不連続な生物物質(420)を有し、図4Aの細胞と比較して細胞はバイオセンサ表面に非常に近く(それぞれの破線の想像線とグレーティング表面(300)との距離を比較すると)、細胞のDMR応答に高い感度をもたらす。ここで、構成の差、配向性の差及びその両者などによる生物物質アイランド(420)の2つのタイプが提示される。生物物質のアイランドまたはクラスタは、細胞をバイオセンサの接触表面(430)に保持するためのアンカー点として作用するが、そのメカニズムは異なっていてもよい。第1のものは細胞接着複合体の形成を促進するのに対し、第2のものは細胞表面の陥入領域と相互作用し、細胞付着性を高める特別な力を提供する。
[低密度ゼラチン表面コーティング]
低濃度ゼラチン表面を準備するのに用いられる1つの方法は、例えば、非常に希釈した、例えば重量濃度で0.000005−0.0025%の水性のゼラチン溶液を、例えば96ウエル・マイクロプレート、384ウエル・マイクロプレートまたは1,536-ウエル・マイクロプレートのマイクロタイタープレートに分配することを含む。当該溶液は室温及び低湿度(例えば、相対湿度20%)で、デシケータ内での低速蒸発によって、例えば1−10日間で、低密度ゼラチン装飾された表面を生成するまで乾燥される。
[低濃度ゼラチン・コーティングされた表面の解析]
仮想ウエルを有するガラス・スライドから、0.0015%の溶液の低速蒸発によって準備される低濃度ゼラチン表面について原子間力顕微鏡(AFM)および走査電子顕微鏡(SEM)画像が得られた(米国特許第6,908,760号;K. A. トンプソン、「仮想ウエル:組合せ生物学要求超高スループット・スクリーニング(K. A. Thompson, "Virtual Wells: Combinatorial Biology Demands Ultra-High-Throughput Screening)」、pp. 1-6、1998年1月8日、http://www.netsci.org/Science/Screening/feature04.html、参照)。当該SEM画像は、予想外であるが、ゼラチン・コーティングが薄い連続的な薄膜でなく、ナノパーティクルであることを示した。当該ナノパーティクルは、各側面が約80nmの大きさの立方構造を有していた。表面被覆率は、約1%未満であった。清浄なコーティングしてないガラスおよびゼラチン・コーティングされたガラスの接触角が測定され、著しく異なることがわかった。以下の表に要約されるように、ゼラチン・コーティングされたガラスは、コーティングしてないガラスより相当に親水性で湿潤性であった。
Figure 2010534461
SEM(5,000X)およびAFM(20,000X)測定については以下の表に要約される。
Figure 2010534461

[ゼラチン・コーティングされた表面はHEK293細胞に優れた付着性を提供する]
HEK293細胞がコーティングしてないコーニングのEpic(登録商標)センサー表面に培養されたとき、これらの表面はHEK293細胞の付着および成長をサポートした。しかしながら、これらの細胞は、例えば、血清フリーの培地、バッファ、又は両者で洗浄されると、低濃度ゼラチン・コーティングされた表面上の細胞よりも容易に変位された。
対照的に、本開示のゼラチン・コーティングされたセンサー表面を有するバイオセンサベースのセルアッセイ及び付着性はゼラチン・コーティング密度への明確な依存性を呈した。上述のように、バイオセンサ表面を覆う0.0015、0.1及び1.5重量%のゼラチン溶液の低速蒸発によって3つの表面密度が個別に準備された。その結果生じたゼラチン表面は、それぞれ、低密度、中間密度、高密度のゼラチン表面と称された。これらの表面上にHEK293細胞が別々に培養された。その結果は、これら3つのゼラチン・コーティングされた表面が全てHEK293細胞の付着および成長をサポートする一方、低濃度ゼラチン表面だけがこれらの細胞の強力な付着をサポートし、ロバスト・バイオセンサ・ベースのセルアッセイ可能にすることを示した(図5および図6)。光学顕微鏡像によって、HEK293細胞がこれらの低濃度ゼラチン・コーティングされた表面上に付着し適切なレートで成長する(すなわち、培養時のHEK細胞数の細胞増殖速度が約16時間と、これらの細胞が標準TCT(組織培養処理プレート)で培養される場合に観測される成長速度と同等である)ことがわかり、1x HBSS緩衝剤(1x Hankの均衡塩類溶液、20mMのHepes、ph7.0)で培養細胞を二回洗浄した後にこれらの培養細胞はほとんど完全に無傷で残った(データは示さない)。さらに、当該顕微鏡像は、ゼラチン・タイプ(例えば、シグマ(Sigma)、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)または他を含む異なるベンダーからなどの)、分子量およびブルーム数に無関係に、低濃度ゼラチン-コーティングされた表面がHEK293細胞の付着および成長をサポートすることを示した。
インデューサ(HEK293細胞の内因性P2Yレセプタのアゴニスト)として、アデノシン三リン酸(ATP)を用いてバイオセンサ・ベースのセルアッセイは、これらの低濃度ゼラチン表面上の培養細胞だけがロバスト・セルアッセイに至ることを示した。P2Yレセプタは、Gタンパク質結合受容体(レセプタ)に属する。HEK293細胞は内因的に、P2Yレセプタのいくつかのアイソフォームを表す。図5は、3つの異なるゼラチン密度のコーティング表面、すなわち低濃度(510)、中間密度(520)及び高密度のゼラチン・コーティングされた(530)表面上に培養されたHEK293細胞から得られるATP誘導光学シグナルの比較を示す。低濃度ゼラチン・コーティングされた表面だけがHEK293細胞のATP誘導DMRシグナルの検出を可能にした。矢印(540)は刺激、ATP溶液がいつ導入されたかを示している。
図6Aおよび6Bは、低濃度ゼラチン・コーティングされた384ウエルのEpic(登録商標)バイオセンサ・マイクロプレートに培養されたHEK293細胞を用いた本開示のセルアッセイの再現性およびロバスト性を示す。マイクロプレートのカラム15の選択されたウエルに10マイクロモル濃度のATP溶液が加えられた。1カラム(16ウエル)内のATP誘導DMR応答シグナルは、数秒ごとのリアルタイムで記録され、図6Aにプロットされた。ATP誘導DMRシグナルの初期のポジティブDMR(P-DMR)イベント(波長シフト)の振幅が、ウエル数1-16の関数として、図6Bにプロットされた。アッセイの変動係数(CV)、すなわち再現性は約4%であり、193ピコメートル(pm)の平均シグナルおよび8pmの標準偏差であり、比較的高い再現性を示した。
[GRGDS修飾された表面は、HEK293細胞の強い付着性を可能にする]
アルギニン−グリシン・アスパルテート(RGD)・シーケンス・モチーフを含む合成ペプチドは、細胞接着のアクティブなモジュレータである。このトリペプチド・モチーフは、細胞外マトリックスのタンパクに見られる。インテグリンは、このRGDモチーフを認識することによって細胞内の細胞骨格を細胞外マトリックスと連結する。バイオセンサの修飾表面に対するRGDペプチドの共有結合性吸着は、対象とする生体物質への細胞付着を制御するための有用な選択肢である。多くのアクティブRGDおよび同様のペプチドは市販されている。
バイオセンサ表面にRGD同様のペプチドを共有結合させるため、バイオセンサには、シリコン酸化物(約3nm)薄層、アミノプロピルシラン(約1-3nm)、ポリ(エチレン−アルト無水マレイン酸)(EMA)(高分子クラスタ形成)、そして、最後にRGD同様のペプチド(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser、GRGDS)が順次コーティングされた。具体的には、シリコン酸化物の薄層がコーニングEpic(登録商標)ニオブ酸化物導波路表面上に3nmになるまで堆積された。その後、バイオセンサは約0.1vol/vol%のアミノプロピルシラン溶液でコーティングされ、洗浄及び乾燥され、続いて、約0.01wt/vol %のEMA溶液との相互作用が行われ、洗浄及び乾燥された。最後に、GRGDS溶液がEMAバイオセンサ表面に適用された。結合反応の後、表面は洗浄及び乾燥された。異なる濃度の同一体積(約100マイクロリットル)の溶液を固定化(イモビライズ)することによって異なるGRGDS密度が得られた。コーニングEpic(登録商標)96ウエル・バイオセンサ・マイクロプレートが用いられた。ここで、GRGDSのアイランドの形成またはクラスタは、アミノ反応性ポリマー(例えば、EMA)を用い、最終的な結合ステップにおけるGRGDSの濃度を制御することによって得られる。その結果生じるGRGDS修飾されたプレートは、HEK293細胞の成長用及びセルアッセイ用として試験がなされた。その結果、GRGDS修飾された表面上のHEK293細胞がコーティングしてない表面上のそれらより著しく速く成長することが示された。GRGDS提示表面上の培養されたHEK細胞は、光学顕微鏡撮影で示されるように、洗浄又は媒質交換によっても残存する。刺激作用剤としてATPを用いることによって、GRGDS提示の表面上の培養されたこれらのHEK細胞についてバイオセンサ・ベースのセルアッセイが調べられた。RGD表面結合はEMAのカルボキシ群と化学反応するトリペプチド、ペンタペプチドまたは同様の物質のN末端アミンで得られた。
図7は、表面結合又は表面調整されたトリペプチド適合化剤の異なる濃度を有し、個別の適合化されたRWG表面上に培養されたHEK293細胞についてのATP誘導DMRシグナルの標準活性アッセイ・プロットの例を示している。GRGDS−誘導体化されたEMA RWG表面上に培養されたHEK293細胞のDMRシグナルを誘起するためにATP(20マイクロモル濃度)が用いられた。4つの異なる濃度のGRGDSペプチド(10、30、100および250マイクロモル濃度;参照番号はそれぞれ(710)、(720)、(730)、(740))が個別の表面誘導体化処理において用いられた。その結果、培養されたHEK細胞についてATPによって誘起される応答強度の増加がGRGDS適合化剤の濃度の増加とよい相関を有することが示された。
[サスペンジョン細胞のための表面]
実施例において、本開示は、適合化されたRWG表面とサスペンジョン細胞のロバスト相互作用を可能にし、サスペンジョン細胞のプローブ・リガンド誘導活性の探査を可能にする適合化された表面及び方法を提供する。実施例において、適合化させられた表面は、反応種を呈する、例えば、アミン反応の官能基(例えばN-オキシ-サクシンイミド・エステル、N-ヒドロキシ-サクシンイミド(NHS)およびN-ヒドロキシスルホサクシンイミド(スルホNHS))またはチオール反応の官能基(例えば、メタンチオスルホン酸)である。サスペンジョン細胞、例えばJurkat細胞の細胞表面のアミンを呈する分子(例えば、タンパク、脂質)は、これらの反応性の官能基と相互作用し、共有性結合を形成してもよい。従って、サスペンジョン細胞は、例えば、適合化された表面と共有結合性の関連を有するようになる。しかしながら、サスペンジョン細胞は通常、溶液中において球形形状を維持する。
実施例において、適合化されたRWG表面は、官能基を有するバイオ相互作用分子を提供又は呈する。ここで、適合化剤表面分子は、細胞の表面分子のいくらか、例えば、抗原、レセプタ、脂質及び同様の細胞成分または細胞表面分子を認識し、相互作用し、バイオセンサ表面へのサスペンジョン細胞の付着を可能にする。適合化剤のバイオ相互作用分子は、例えば、特に細胞の表面分子または作られた細胞表面分子に結合しうる抗体又は同様のリガンドまたは分子体を含んでもよい。実施例において、マイクロパターニング又はナノパターニング法が、RWGバイオセンサの適合化された表面上に機能性又は反応性の群を有する物質を沈着させるために用いられ、これらの物質のマイクロドメイン又はナノドメインを形成させ、細胞が付着したときに1細胞あたり少なくとも1つのドメインができるようにしてもよい。
実施例において、本開示はまた、適合化された光学バイオセンサを用いてサスペンジョン細胞のリガンド誘導細胞活性を分析する方法を提供する。かかる方法は、通常、サスペンジョン細胞は従来の基体の表面上によく付着されないので、うまくいかないと信じられていた。
Jurkat細胞は、急性のT細胞性白血病およびT細胞シグナリングなどの研究に用いられるTリンパ球細胞の不死化細胞ラインである。Jurkat細胞は、また、インターロイキン2を生成する能力のために有用である。しかしながら、それらの主たる使用は、癌の医薬品および 放射線に対しての異なる感受性のメカニズムを確定することである。Jurkat細胞ラインは、1970年代後半において、T細胞性白血病の14歳の少年の末梢血から確立された。現在、Jurkat細胞ラインの異なる派生物は、特定の遺伝子を欠く故に変化した細胞培養バンク(例えば、ATCC 2)から得ることができる。Jurkat細胞は、培養が媒質内で行われ、細胞が基体の表面に非接触で成長するサスペンジョンタイプの細胞である。
細胞の表面に抗原を提示するJurkat細胞は、4つの異なる表面タイプと接触された。すなわち、シリコン酸化物の薄層を有する裸の導波路基体(すなわち、SiOx/Nb2O5、コーティングしてないバイオセンサ基体)(810)、抗ヒトCD(抗CD3)3を有するSiOx/Nb2O5表面(820)、アミノ反応性ポリマーEMAコーティング(EMA)を有するSiOx/Nb2O5表面(830)、及び共有性結合抗ヒトCD3(すなわち、抗CD3-EMA)を有するSiOx/Nb2O5表面(840)である。抗CD3表面は、裸のSiOx/Nb2O5表面上で1時間、抗ヒトCD3抗体を含む溶液(25μg/ml)を培養した後、洗浄および乾燥することによって得られた。EMA表面は上記したように、すなわち、裸のSiOx/Nb2O5表面をアミノプロピルシランおよびEMAで連続してコーティングすることによって準備された。抗CD3/EMA表面は、EMA表面で1時間、抗ヒトCD3(25μg/ml)を培養した後、1%のエタノールアミンで1時間ブロッキングして準備された。Jurkat細胞は、アッセイの前に約2時間、いずれの表面において培養された。擬RACK1(pseudo-RACK1)を加える前後において、動的応答がリアルタイムで記録された。
図8Aは、異なるサーフェスプレパレーションおよび特性を有する様々なバイオセンサ上で細胞浸透性のペプチド(擬RACK1)などの刺激によって媒介されたときにJurkat細胞から得られた光学シグナルのプロットを示す。擬RACK1は、ペプチド(OH-lys-lys-trp-lys-met-arg-arg-asn-gln-phe-trp-ile-lys-ile-gln-arg-cys----cys-ser-val-glu-ile-trp-asp-OH)であり、細胞内蛋白質キナーゼC(PKC)を活性化する。その結果、裸のSiOx/Nb2O5上のペプチド擬RACK1では何ら検出可能な光学シグナルに至らなかったが、他の3つのタイプの表面上では9μMの擬RACK1の刺激に続いて有意な光学シグナルが得られた。興味深いことに、振幅およびキネティクスにはいくらか違いがあったが、動的なプロファイルはこれらの3つの表面上のJurkat細胞と同様であった。
図8Bは、本開示の表面修飾バイオセンサ及び方法を用いたJurkat細胞刺激及び検知の1つのシナリオの概略図を示す図である。表面抗原CD3(855)を有するJurkat細胞(850)は、適合化された抗CD3提示の光学バイオセンサ表面(860)に接触された。しかしながら、接触された細胞は、刺激の前には一般的な球形の形状を維持するように光学顕微鏡によって見えた。例えば、擬RACK1による化学的刺激イベント(870)の後、細胞(850)は細胞膜(880)を含む形態学的変化又は変形、他の細胞内標的(865)の変化、例えば、擬RACK1によって誘起されるPKCの活性化などの同様の変化を受ける。かかる形態学的は、他の同様の細胞表面抗原(855)を抗CD3提示(860)センサー表面と相互作用させうる、そして、おそらく、他の細胞内成分(867)をバイオセンサの検知体積または侵入深度領域(895)内に集める又は集合させる。おそらく、「ローリング」運動または動きによって、光学顕微鏡撮影(データ示さず)によって確かめられるように、細胞(880)は誘導されない細胞(850)と比較してより平たくなり、細胞とバイオセンサ表面との接触領域が増加する。細胞「ローリング」は、大まかには、例えば、各細胞のバイオセンサ表面との接触がバイオセンサ表面との追加の又は更なる細胞接触のカスケードに至る又は促進する、例えば、酵素活性の鍵と鍵穴(lock and key)プロセスとの類推により説明される。破線矢印(890)は、表面抗原相互作用およびその後の刺激の結果としての細胞のローリング運動の起こりうる方向を模式的に示す。これ及び同様の方向的な質量再分布イベントに関連する現象は、本開示の実施例において容易に検出され、分析される(例えば、文献1、Fang 他、47ページ以降を参照)。
フィブロネクチンがコラーゲンへの懸濁された細胞の付着を促進し、組織培養基体への直接の懸濁細胞の付着を促進することは既知である。例えば、米国特許第4,517,686号は、フィブロネクチンの細胞付着活性を有する108のアミノ酸ポリペチドまたはその生物学的に活性なフラグメント、及びポリペチドが細胞の付着を促進する基体を準備するために用いられることに言及している。また、Li他、生体分子(Biomolecules)誌、2006年、7、1112-1123、「GRGDS結合 キトサン表面上のMC3T3-E1 細胞の行動の調査(“Investigation of MC3T3-E1 Cell Behavior on the Surfaces of GRGDS-Coupled Chitosan.”)」を参照のこと。
[他の光学バイオセンサへの適用性]
本開示はまた、電気インピーダンス・ベースのバイオセンサなどの他のバイオセンサのみならず、SPRなどの他の光学バイオセンサを改変する方法、そして、細胞がこれらの表面に付着して成長でき、付着した細胞の分析を可能にする方法を提供する。具体的には、SPRは基体として金の薄膜の層を用いる。当該金の表面は、上記したのと同様のプロトコルを用いて修飾されてもよい。また、生物物質またはナノパターン化された生物物質の低濃度コーティングが準備されてもよい(例えば、米国特許第6,893,705号を参照のこと)。これらの表面上で培養された細胞は、付着した又は弱く付着した細胞の両者のリガンド誘導細胞活性を分析するために用いることができる。実施例において、また、例えば、反応性種またはバイオ相互作用分子を有するバイオセンサ表面が、金の基体上に作られてもよい。これらの修飾されたバイオセンサ表面は、また、サスペンジョン細胞のアッセイ・リガンド誘導細胞活性に適用されてもよい。
本開示は、様々な特定の実施例および技術に関して記載された。しかしながら、本開示の範囲内において多くの変形及び改変が可能であると理解されなければならない。

Claims (10)

  1. リガンド誘導細胞活性を測定する装置であって、
    バイオセンサの表面に直接または間接的に接続された適合化剤を有する適合化剤領域、及び少なくとも1つの適合化剤片と関連する少なくとも1つの細胞を有する細胞領域を含む接触面を有する光学バイオセンサを有し、
    前記適合化剤は、孤立した1の適合化剤片、2以上の適合化剤アイランド、複数の適合化剤片からなる不連続な薄膜、及びこれらの組合せのうち少なくとも1つからなることを特徴とする装置。
  2. 前記細胞は表面付着細胞、弱付着細胞、サスペンジョン細胞またはそれらの組合せの少なくとも1つからなり、前記適合化剤領域は適合化剤によって占められた前記バイオセンサの表面および細胞の間に位置する領域を含み、前記適合化剤は、約1ないし約1,000マイクロモル濃度の適用時濃度を有する、バイオセンサ上のゼラチン、ペプチド、抗体、金属酸化物、混合された金属酸化物またはこれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記適合化剤は、前記バイオセンサ上の表面被覆率が約0.01%ないし約10%である、ゼラチン、金属酸化物、混合された金属酸化物、ペプチド、又はこれらの混合物をナノパーティクルとして含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
  4. 前記適合化剤領域は、前記バイオセンサの表面および前記適合化剤の間に位置する表面モディファイアによって占められた領域からなる表面モディファイア領域をさらに含み、前記表面モディファイアは金属酸化物、混合された金属酸化物、表面処理された金属酸化物、表面処理された混合金属酸化物、ゼラチン、又はこれらの組合せからなる約1ないし約15ナノメートルの粒子径を有するナノパーティクルを含み、前記表面モディファイアは前記バイオセンサの表面全体の表面領域カバレージが約0.01%ないし約10%であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
  5. 請求項1に記載の装置を製造する方法であって、
    前記バイオセンサの表面を適合化剤で装飾して適合化バイオセンサ接触面を形成するステップと、
    生細胞を当該適合化剤装飾バイオセンサ表面に付着させるステップと、を有し、
    前記装飾は、前記バイオセンサ接触面の利用可能な面積を基準として約10〜約95パーセントのバイオセンサ表面を生じさせ、当該適合化剤装飾バイオセンサ表面への前記生細胞の前記付着は、利用可能な適合化剤被覆表面又はサイトの約10ないし約100パーセントが関連する細胞によって被覆された検知表面を生じさせることを特徴とする方法。
  6. 前記装飾するステップは、前記バイオセンサ表面に少なくとも1つの適合化剤片を含む溶液または懸濁液を接触させるステップを有し、前記付着させるステップは、当該適合化剤装飾バイオセンサ表面に細胞を接触させるステップを有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記装飾するステップは、前記バイオセンサ表面に適合化剤を接触させる前に前記バイオセンサ表面に表面モディファイアを接触させるステップをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 当該適合化バイオセンサ表面に細胞懸濁液を接触させる前に当該合化バイオセンサ表面を遮断剤で処理するステップを有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
  9. リガンド誘導細胞活性を測定する方法であって、
    請求項1の光学バイオセンサにリガンド候補物質を接触させるステップと、
    検出システムにより、当該リガンド接触に対する細胞の光学応答を測定するステップと、を有し、
    前記リガンド候補物質は、医薬品候補小分子、医薬品候補生物学的分子、医薬品候補小分子−生物学的複合体、バクテリア、ウィルス、又はそれらの組合せ、のうち少なくとも1つからなり、
    前記リガンド候補物質は、コーティングしてないバイオセンサ表面、表面モディファイア処理されたバイオセンサ表面、適合化剤処理されたバイオセンサ表面、または適合化剤および表面モディファイアで処理されたバイオセンサ表面、に対して低親和性の又は親和性を有せず、
    前記リガンド接触に対する細胞の光学応答を測定するステップは、入射光および反射光間の屈折率の差を検出し確定するステップと、前記細胞の活性度に対するDMRシグナルの相関をとることを含むことを特徴とする方法。
  10. リガンド誘導細胞活性をアッセイする方法であって、
    少なくとも1つの細胞をその中に有する媒質を前記細胞がバイオセンサ表面に付着するまで光学バイオセンサの接触面でインキューベートするステップ、を有し、
    前記バイオセンサ表面は前記バイオセンサ表面に付着しているが完全には覆ってはいない適合化剤を有し、前記適合化剤は細胞表面分子と相互作用しうる官能基を有し、
    付着細胞を有する当該バイオセンサにリガンド候補を接触させるステップと、
    検出システムで当該リガンド接触に対する細胞応答をモニタするステップと、を有する方法。
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