JP2010533719A - 還元的アミノ化によるn−アルキル化オピエートの調製 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源の存在下における、モルフィナンのN−イミン部分もしくはヘミアミナール部分の還元を対象とする。本発明は、N−アルキル化モルフィナン、それらの塩、中間体、および類似体の調製のための改善された合成方法を対象とする。本発明の一態様において、当該合成方法は、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源を用いて、モルフィナンのN−イミン部分またはヘミアミナール部分を対応するアルキル基に還元する。

Description

(発明の分野)
本発明は、概して、中間体または最終生成物モルフィナンの合成プロセスに関する。より詳細には、本発明は、不斉水素移動を用いた還元的アミノ化によるN−アルキル化オピエートの合成を対象としている。
(発明の背景)
N−アルキル化モルフィナンは、鎮痛剤、オピエートアゴニスト、およびオピエートアンタゴニストとして一般的に使用される重要な医薬品である。これらの薬剤の使用が増加する中で、これらの化合物の実用的で効果的な調製方法は、様々なN−アルキル化置換モルフィナンを合成する上で極めて重要である。
N−アルキル化モルフィナンを調製するためには、主に3つの方法がある。第1の方法は、塩基の存在下においてハロゲン化アルキル(または他の適正な脱離基)を使用したS2手法により、モルフィナン窒素をアルキル化する。通常、モノアルキル化モルフィナンとジアルキル化モルフィナンとの混合物が得られる。ジアルキル化モルフィナンは、通常、窒素原子の過剰なアルキル化の結果として生じる。3−フェノール基を有するオピエートの場合、3−フェノール基のアルキル化も結果として生じる。通常、高次アルキル化種からモノアルキル化種を分離するためには、複雑な単離が用いられる。したがって、モノアルキル化された生成物を十分な収率で調製するためには、注意深い反応条件が必要である。
N−アルキル化モルフィナンを合成するための第2の方法は、還元的アルキル化から成る。この種の反応では、アミンの遊離塩基を、イミンまたはシッフ塩基を形成するアルデヒドと反応させる。当該シッフ塩基の還元は、通常、ヒドリド移動剤の使用により達成される。一般的に、この手法は、「還元的アルキル化」として知られている。この反応のための一般的な還元試薬としては、ホウ化水素試薬(例えば、水素化ホウ素ナトリウム試薬、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)、ボラン、および水素化アルミニウム試薬(例えば、水素化リチウムアルミニウム)が挙げられる。例えば、非特許文献1を参照のこと。これらの試薬は、完全な還元を達成するために化学量論的な量において使用する必要がある。この合成方法における問題点としては、生成物からのホウ素塩またはアルミニウム塩の放出が挙げられる。改善法は、この還元を達成するために金属触媒的手法を用いることである。例えば、特許文献1(N.Goodwin,et al.)を参照のこと。さらに、遷移金属触媒の存在下における水素ガスも、この還元を達成するために使用されている。
N−アルキル化モルフィナンを調製するための第3の方法は、アシル化還元手法から成る。通常、この合成プロセスにおいて、アミンはアシル同等物と反応し、次いで、ボランまたは主族元素の水素化物種(例えば、水素化アルミニウムリチウム)を用いて還元される。アシル同等物の加水分解を防ぐために、反応条件を注意深く制御しなければならない。
したがって、高収率が得られる、N−アルキル化モルフィナンの調製のための迅速で効果的な合成方法が、依然として求められている。
国際公開第2006/035195号パンフレット
A.F.Abdel−Magid,et al.,Reductive Amination of Aldehydes and Ketones by Using Sodium Triacetoxyborohydride,Tet.Lett.31(39),pp.5595−98(1990)
(発明の要旨)
本発明の様々な態様では、N−アルキル化モルフィナンの調製のためのプロセスが提供される。特に、モルフィナンのN−イミン部分もしくはヘミアミナール部分を、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源の存在下において還元する。次いで、所望であれば、結果として得られるN−アルキル化モルフィナンを1つ以上のさらなる段階において誘導体化して、他のモルフィナンを形成する。
したがって、簡潔に言えば、本発明は、以下の式を有するN−アルキル化モルフィナン(II)の調製のためのプロセスを対象としている。
Figure 2010533719
この場合、当該プロセスは、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源の存在下において、N−イミンモルフィナンまたはモルフィナンのヘミアミナール部分を還元する工程を含み、当該N−イミンモルフィナンまたはヘミアミナールモルフィナン(I)は、以下の式を有する:
Figure 2010533719
式中、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロ、または−OR111であり、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロ、または−OR211であり、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR311であり、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR611であり、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR711であり、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR811であり、
14は、水素またはヒドロキシであり、
111は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
211は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
311は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
611は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
711は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
811は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
は、>NCH(OH)(R)または>N=CH(R)であり、
は、>NCH(R)であり、並びに
は、水素、アシル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または複素環である。
他の目的および特徴は、一部については明らかであり、一部については本明細書の以下において指摘する。
(発明の詳細な説明)
本発明は、N−アルキル化モルフィナン、それらの塩、中間体、および類似体の調製のための改善された合成方法を対象とする。本発明の一態様において、当該合成方法は、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源を用いて、モルフィナンのN−イミン部分またはヘミアミナール部分(本明細書において、一括して「N−イミン/ヘミアミナールモルフィナン」と呼ぶ場合もある)を対応するアルキル基に還元する。
モルフィナン化合物
議論のために、本発明のモルフィナンの環原子を、以下のように番号付けする。モルフィナン骨格構造内に、4個のキラル炭素、すなわち、C−5、C−13、C−14、およびC−9が存在し得る。
Figure 2010533719
さらに、図解のため、関連部分において、本発明のモルフィナンのN−イミン部分およびヘミアミナール部分は、それぞれ式(Ia)および式(Ib)に相当する。
Figure 2010533719
加えて、本明細書において使用される場合、記号「>」は、イミン窒素原子およびヘミアミナール窒素原子に接続して使用され、当該窒素原子をモルフィナンに結合させる2個の共有結合を表す。
本発明の一実施形態において、当該モルフィナンは、式(Ia)に相当し、この場合、Rは、水素、あるいは置換もしくは非置換のC1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、アリール、複素環、またはアシルである。典型的なアシル基として、エステル、アミド、およびカルバメートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。式(Ia)を有する当該モルフィナンの光学活性は、偏光の回転に関して、(+)または(−)であり得る。さらに、式(Ia)化合物のキラル炭素C−5、C−13、C−14、およびC−9の立体配置は、それぞれ、RRRR、RRSR、RRRS、RRSS、RSRR、RSSR、RSRS、RSSS、SRRR、SRSR、SRRS、SRSS、SSRR、SSSR、SSRS、またはSSSSであり得るが、ただし、C−15炭素およびC−16炭素は、両方とも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。
この実施形態の一例において、Rは、水素、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、アリール、複素環、エステル、アミド、またはカルバメートである。より限定的な例において、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロブチルメチル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、シクロプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、シクロブチルカルボニル、またはアリルであり、好ましくは、水素、メチル、エチル、シクロプロピルまたはシクロブチルである。好ましい一例において、Rはシクロプロピルである。別の好ましい例において、Rはシクロブチルである。
別の実施形態において、当該モルフィナンは式(Ib)に相当し、式中、Zは>NCH(OH)(R)であり、この場合、Rは、水素、あるいは置換もしくは非置換のC1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、アリール、複素環、またはアシルである。一般的なアシル基としては、エステル、アミド、およびカルバメートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。式(Ib)を有するモルフィナンの光学活性は、(+)または(−)であり得る。Rが水素またはヒドロキシである実施形態において、キラル炭素C−5、C−13、C−14、およびC−9の立体配置は、それぞれ、RRRR、RRSR、RRRS、RRSS、RSRR、RSSR、RSRS、RSSS、SRRR、SRSR、SRRS、SRSS、SSRR、SSSR、SSRS、またはSSSSであり得るが、ただし、C−15炭素およびC−16炭素は、両方とも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。Rが水素またはヒドロキシではない実施形態では、N−17に結合している炭素(C−18)もキラルであり、したがって、C−5、C−13、C−14、C−9、およびC−18の立体配置は、それぞれ、RRRRR、RRRRS、RRSRR、RRSRS、RRRSR、RRRSS、RRSSR、RRSSS、RSRRR、RSRRS、RSSRR、RSSRS、RSRSR、RSRSS、RSSSR、RSSSS、SRRRR、SRRRS、SRSRR、SRSRS、SRRSR、SRRSS、SRSSR、SRSSS、SSRRR、SSRRS、SSSRR、SSSRS、SSRSR、SSRSS、SSSSR、またはSSSSSであり得るが、ただし、C−15炭素およびC−16炭素は、両方とも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。
この実施形態の一例において、Rは、水素、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、アリール、複素環、エステル、アミド、またはカルバメートである。より限定的な例において、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロブチルメチル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、シクロプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、シクロブチルカルボニル、またはアリルであり、好ましくは、水素、メチル、エチル、シクロプロピル、またはシクロブチルである。好ましい一例において、Rはシクロプロピルである。別の好ましい例において、Rはシクロブチルである。
N−イミン/ヘミアミナールモルフィナンが式(I)に相当し、かつZが>NCH(OH)(R)または>N=CH(R)である上記の実施形態のいずれに対しても、Rは、通常、−OR311であり、この場合、R311は、水素、アルキル、アシル、アルカリール、アリール、またはヒドロキシ保護基である。この実施形態の一例において、R311は、水素、C1〜8アルキル、アリール、C1〜8アルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、C1〜8アルキル−OC(O)−、またはアリール−OC(O)−である。他の例において、R311は、水素またはC1〜8アルキルであり、好ましくは、水素またはメチルである。好ましい例において、R311は水素である。
当該モルフィナンが式(I)に相当する一実施形態において、Rは、水素、あるいは置換もしくは非置換のC1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、フェノール、または−OR611である。この実施形態の一例において、Rは、−OR611であり、この場合、R611は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、水素、またはヒドロキシ保護基である。より限定的な例において、R611は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、水素、またはヒドロキシ保護基であり、好ましくは、メチル、エチル、水素、またはヒドロキシ保護基であり、より好ましくは、水素またはヒドロキシ保護基である。
当該モルフィナンが式(I)に相当する別の実施形態において、R、R、R、R、およびRは水素である。代替的実施形態において、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つは、水素以外であり、例えば、Rは、ヒドロカルビル、ハロ、または−OR111であってもよく、この場合、R111は、水素、アルキル、アシル、アルカリール、アリール、またはヒドロキシ保護基である。別の例において、Rは、置換ヒドロカルビル基であり、例えば、3,3−ジメチルブタン−2−オールである。
式(I)に相当するモルフィナンを、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、またはイリジウム不斉触媒および水素源の存在下において、本発明のプロセスに従って還元する場合、得られるモルフィナンは、式(II)に相当する:
Figure 2010533719
式中、R、R、R、R、R、R、R11、およびR14は、式(I)に対して先に定義した通りであり、Zは、>NCH(R)である。式(II)を有するモルフィナンの光学活性は、(+)または(−)であり得、キラル炭素C−5、C−13、C−14、およびC−9の立体配置は、それぞれ、RRRR、RRSR、RRRS、RRSS、RSRR、RSSR、RSRS、RSSS、SRRR、SRSR、SRRS、SRSS、SSRR、SSSR、SSRS、またはSSSSであり得るが、ただし、C−15炭素およびC−16炭素は、両方とも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。
例示的モルフィナン(II)生成物としては、以下のブプレノルフィン、6−ケタールナルトレキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナルブフィン、およびジプレノルフィンが挙げられる。
Figure 2010533719
ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、またはイリジウム不斉触媒
一般的に、本発明のルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、またはイリジウム不斉触媒は、ヘミアミナール(Z=>NCH(OH)(R))部分および/またはイミン(Z=>N=CH)(R))部分の還元を促進する。一般的に、これらの不斉触媒は、(a)ルテニウム錯体、ロジウム錯体、イリジウム錯体、またはそれらの組み合わせからなる金属源、並びに(b)1つ以上のキラル配位子、を含む。通常、金属とキラル配位子の比率は、約1:1である。一例において、当該金属源は、ルテニウム錯体またはロジウム錯体である。別の実施例において、当該金属源は、ジクロロ(アレーン)Ru(II)二量体、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Rh(II)二量体、BINAP−Ru(II)ジアセテート、BINAP−Ru(II)ジクロリド、BINAP−Ru(II)ジブロミド、BINAP−Ru(II)ジヨージド、[RuCl((RまたはS)BINAP)(C)]Cl、またはジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)二量体である。
通常、本発明の不斉触媒は、例えば、米国特許第5,693,820号(Helmchen et al.)およびR.Noyori et al.,Asymmetric Catalysts by Architectural and Functional Molecular Engineering:Practical Chemo− and Stereoselective Hydrogenation of Ketones,Agew.Chem.Int.Ed.2001,40,pp.40−73においてより詳細に記載されているように、窒素、酸素、もしくはリン供与原子によって二座のキラル配位子で錯体化されたルテニウム、ロジウム、イリジウム、またはこれらの組み合せを含む。これらの触媒は、野依触媒と呼ばれる場合もある。一例において、本発明の不斉触媒のキラル配位子は、式(670)、(680)、(690)、または(700)に相当する。
Figure 2010533719
式中、R671、R672、R673、R681、R691、R692、R701、およびR702は、独立して、アルキルまたはアリールであり、式(690)のR691およびR692、並びに式(700)のR701およびR702、並びにそれらが結合している炭素原子は、必要に応じて、環式化合物または二環式化合物を形成していてもよい。上記の構造式において、「」は、キラル炭素原子を示す。当該不斉触媒のキラル炭素の立体配置は、RR、RS、SR、またはSSであり得る。
一実施形態において、当該配位子は、式(670)に相当し、かつR672およびR673は、それぞれフェニルであり、R671はアリールである。この実施形態の他の例において、R671は、トリル、メシチル、またはナフチルである。代替的実施形態において、当該配位子は、式(680)に相当し、かつR681は、トリル、メシチル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、またはナフチルである。他の例において、当該配位子は、式(690)に相当し、かつR691およびR692は水素であり、したがって、化合物アミノエタノールを形成している。代替的な例において、当該配位子は、式(690)に相当し、かつR691およびR692は、以下の化合物を形成するように選択される。
Figure 2010533719
他の実施形態において、当該配位子は、式(700)に相当し、かつR701およびR702は水素であり、したがって化合物エチレンジアミンを形成している。
好ましい例において、当該配位子は、(1S,2S)−(+)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン、(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン、dl−N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トシル−1,2−エチレンジアミン、またはN−トシル−1,2−ジアミノシクロヘキサンである。
本発明の活性なルテニウム不斉触媒およびロジウム不斉触媒の例としては、次のものが挙げられる
Figure 2010533719
Figure 2010533719
水素源
本方法の水素源は、当業者に既知の任意の水素源である。水素化のプロセスとしては、インサイチューでの水素移動および高圧水素化が挙げられる。一例において、当該水素源は水素ガスである。しかしながら、この供給源を使用して還元を達成するためには、特別な反応器が必要である。実験規模において、これは、安全面での問題を提起する。水素ガスの代替案は、水素移動法によりインサイチューで水素を生成する方法である。インサイチューで水素源を生成することにより、標準的な水素化の圧力(ときには、50atmのHの場合もある)が回避され、それにより、より安全な調製環境が可能になる。さらに、これらの反応は、非常に穏和な傾向にある。例えば、記載された水素移動手法を使用した場合、エステル、アミド、エーテル、アルケン、ヒドロキシルなどの官能基は、当該プロセスを通して損なわれないままである。
一般的に、本発明のプロセスのための水素源は、プロトン性化合物、典型的には、イソプロパノール、ギ酸、ギ酸の有機塩もしくは無機塩、またはそれらの組み合わせである。いくつかの例において、少量の塩基を使用して触媒を活性化してもよい。例えば、イソプロパノール中において、活性化剤としてKOHがしばしば使用される。他の例では、トリエチルアミンを使用してもよい。一例において、当該水素源は、ギ酸の有機または無機塩、好ましくは、ギ酸のトリエチルアミン塩を含む。好ましい例において、当該水素源は、ギ酸とトリエチルアミンの約5:2混合物である。
溶媒
通常、本発明のプロセスのための溶媒は、非プロトン性の極性溶媒である。一例において、当該溶媒は、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル)、テトラヒドロフラン(THF)、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、ハロゲン化炭素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、またはテトラクロロエチレンなどのクロロアルキル)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリジノン(NMP)、酢酸アルキル(例えば、酢酸エチルまたは酢酸プロピル)、トルエン、水、またはそれらの組み合わせである。より限定的な例において、当該溶媒は、アセトニトリル、DMAc、あるいはアセトニトリルおよびメタノールの組み合わせである。
一般的に、本発明の反応は、周囲温度(約20℃)〜約120℃の温度範囲において実施することができる。一例において、当該反応は、約0℃〜約80℃の温度範囲、好ましくはおよそ室温〜約40℃の温度範囲において実施される。
イミン/ヘミアミナールの形成
通常、本発明のN−イミンモルフィナンおよびヘミアミナールモルフィナンは、下記に示すように、ノル−モルフィナンを、式RCHOを有するアルデヒドと反応させることにより合成される。
Figure 2010533719
この場合、R、R、R、R、R、R、R、およびR14は、式(I)に相当するモルフィナンに対して先に定義した通りである。形成において、N−イミンモルフィナン(Ia)およびヘミアミナールモルフィナン(Ib)は平衡状態を形成する。当該アルデヒドは、通常、ノル−モルフィナン1当量に対してアルデヒド約1.0〜約1.25当量の範囲の量において導入される。この工程の溶媒系は、通常、有機溶媒、例えば、メタノール、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、またはそれらの組み合わせなど、を含む。当該反応は、例えば、およそ室温(25℃)〜およそ還流温度の温度範囲において実施することができる。好ましくは、当該反応は、約室温(25℃)において、約1時間〜約5時間、通常は約3時間の期間にわたって実施される。共沸蒸留工程を加えて、イミン形成の反応速度を高めてもよい。
N−アルキル化モルフィナンの形成
N−イミンモルフィナン(Ia)およびヘミアミナールモルフィナン(Ib)の形成がひとたび完了すると、以下の反応スキームに従ってN−アルキル化モルフィナン(II)の合成が生じ得る。
Figure 2010533719
通常、このタイプの反応に対して、N−イミンモルフィナン(Ia)およびヘミアミナールモルフィナン(Ib)は平衡状態にある。本明細書に記載されているように、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、またはイリジウム不斉触媒および水素源を用いて処理した場合、N−イミン部分は、対応する第3級アミノ基に変換され、並びにヘミアミナール部分のヒドロキシ基が除去され、その結果、N−アルキル化モルフィナン生成物(II)が形成される。いかなる特定の理論にも束縛されないが、生成物(II)は、全てではないにしても、その大部分がN−イミンモルフィナン(Ia)から形成されると考えられる。N−イミンモルフィナンの当該生成物への還元は、ヘミアミナールモルフィナンとによって形成される平衡状態と共に、この反応の背後にある原動力であるかもしれない。すなわち、N−イミンモルフィナンが生成物に還元されるほど、平衡状態の均衡を維持するためにヘミアミナールモルフィナンがN−イミンモルフィナンに変換される。しかしながら、この理論のための十分な証拠は、欠如している。N−イミンモルフィナンおよびヘミアミナールモルフィナンの混合物を、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源と反応させた場合、高い収率で最終生成物が形成されることは公知である。
一般的に、モルフィナン(Ia)および(Ib)の当該生成物(II)への還元に対して、当該基質と溶媒の比率は、約1:2〜約1:20であり、好ましくは約1:4〜約1:5である。水素源は、先に論じたもののいずれであってもよい。好ましい一例において、当該水素源は、トリエチルアミンおよびギ酸の2:5混合物(NEt/HCOH)の1〜5当量と、それに加えて、モルフィナン窒素と塩を形成するための追加の当量であり、当該当量はモルフィナンの溶解性を高める。使用することができる他の塩としては、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、および塩酸塩が挙げられる。しかしながら、これらの塩は、よりゆっくりした速度で反応し得る。当該触媒は、一般的に、モル濃度を基準として、約1/50〜約1/1000の装填比で装填される。通常、この反応は、室温〜約40℃の温度範囲において生じる。溶媒が希薄であるほど、室温での反応時間は長くなる。
別の典型的な例において、当該生成物(II)は、さらに反応して、所望のモルフィナンを形成する。例えば、当該生成物(II)を酸(例えば、ギ酸)と反応させて、保護基を除去することができる。
定義
本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有し得る。非対称的に置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性な形態またはラセミ体において単離され得る。本発明の化合物はシスおよびトランス幾何異性体として表現され、異性体の混合物として、または別々の異性体型として単離することができる。特定の立体化学または異性体型に対して特別に指示のない限り、構造の全てのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体、および全ての幾何異性体が意図される。本発明の化合物を調製するために使用される全てのプロセスおよびそこで作製される中間体は、本発明の一部とみなされる。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「アシル」なる用語は、有機カルボン酸の基COOHからヒドロキシ基を除去することにより形成される部分、例えばRC(O)−、を示し、この場合、Rは、R、RO−、RN−、またはRS−であり、Rは、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、または複素環であり、Rは、水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルである。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「アシルオキシ」なる用語は、酸素結合(O)を介して結合した上記に記載されたようなアシル基、例えばRC(O)O−を示し、この場合、Rは用語「アシル」に関して定義した通りである。
本明細書において使用される場合、「アルキル」なる用語は、好ましくは、1個〜8個の炭素原子を主鎖に含有する、20個までの炭素原子の低級アルキルである基を示す。それらは、直鎖状または分岐鎖状または環状であり得、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどを含み得る。
本明細書において使用される場合、「アルケニル」なる用語は、好ましくは、2個〜8個の炭素原子を主鎖に含有する、20個までの炭素原子の低級アルケニルである基を示す。それらは、直鎖状または分岐鎖状または環状であり得、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどを含み得る。
本明細書において使用される場合、「アルキニル」なる用語は、好ましくは、2個〜8個の炭素原子を主鎖に含有する、20個までの炭素原子の低級アルキニルである基を示す。それらは、直鎖状または分岐鎖状であり得、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどを含み得る。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「芳香族」なる用語は、必要に応じて置換されていてもよい同素環式もしくは複素環式芳香族の基を示す。これらの芳香族の基は、好ましくは、単環式、二環式、または三環式の基であり、環部分に6個〜14個の原子を含有する。「芳香族」なる用語は、下記で定義される「アリール」および「ヘテロアリール」基を包含する。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「アリール」または「Ar」なる用語は、必要に応じて置換されていてもよい同素環式芳香族基、好ましくは、環部分に6個〜12個の炭素を含有する単環式もしくは二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、または置換ナフチルなど、を示す。フェニルおよび置換フェニルが、より好ましいアリールである。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「ハロゲン」または「ハロ」なる用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を意味する。
「ヘテロ原子」なる用語は、炭素および水素以外の原子を意味する。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「複素環」または「複素環式」なる用語は、必要に応じて置換されていてもよく、少なくとも1個の環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、好ましくは各環中に5個または6個の原子を有する、完全飽和または不飽和の単環式もしくは二環式の芳香族基または非芳香族基を示す。複素環基は、好ましくは環中に1個もしくは2個の酸素原子および/または1個〜4個の窒素原子を有し、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合している。例示的複素環基は、下記に記載されるような複素芳香族を含む。例示的置換基は、次の基:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテル、の1つ以上を含む。
本明細書において単独で、または他の基の一部として使用される場合、「ヘテロアリール」なる用語は、必要に応じて置換されていてもよく、少なくとも1個の環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基、好ましくは各環中に5個または6個の原子を有する芳香族基を示す。ヘテロアリール基は、好ましくは、環中に1個もしくは2個の酸素原子および/または1個〜4個の窒素原子を有し、炭素を介して分子の残りの部分に結合している。例示的ヘテロアリールは、フリル、ベンゾフリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾピリジルなどを含む。例示的置換基は、以下の基:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテル、の1つ以上を含む。
本明細書において使用される場合、「炭化水素」および「ヒドロカルビル」なる用語は、炭素および水素元素のみからなる有機化合物またはラジカルを示す。これらの部分は、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分を含む。これらの部分はさらに、他の脂肪族または環式炭化水素基で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分、例えば、アルカリール、アルケンアリール、およびアルキンアリールを含む。特に明記されない限り、これらの部分は、好ましくは1個〜20個の炭素原子を含む。
本明細書において使用される場合、「ヒドロキシ保護基」なる用語は、遊離ヒドロキシ基を保護する能力があり(「保護されたヒドロキシ」)、保護を用いた反応の後で、分子の残りの部分に影響を与えることなく除去することができる基を示す。例示的なヒドロキシ保護基は、エーテル(例えば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、ベンジル、p−メトキシベンジル(PMB)、p−メトキシフェニル(PMP))、アセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2−メトキシ−2−プロピル(MOP)、2−トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(例えば、ベンゾエート(Bz)、アリルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカーボネート)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)などを含む。ヒドロキシ基のための様々な保護基およびそれらの合成については、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる、”Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,1999を見ればわかるであろう。
本明細書に記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素以外の少なくとも1個の原子で置換されているヒドロカルビル部分であり、炭素鎖の原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄またはハロゲン原子などのヘテロ原子で置換されている部分を含む。これらの置換基は、ハロゲン、複素環、アルコキシ、アルケンオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテルを含む。
本発明の要素またはその好ましい実施形態を紹介する場合、冠詞「1つの(”a”,”an”)」、「当該(”the”)」および「前記(”said”)」は、1つ以上の要素が存在することを意味すると意図される。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」なる用語は、包含的でありかつ列挙された要素以外のさらなる要素が存在し得ることを意味すると意図される。
本発明の詳細な説明により、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱せずに、改変および変更が可能であることが明らかであろう。
以下の非限定的実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
実施例1:ブプレノルフィンの合成
ノル−ブプレノルフィンからのブプレノルフィンの合成全体を、以下の反応スキームに示す。
Figure 2010533719
ノル−ブプレノルフィン(3.67g、8.87mmol)をアセトニトリル(30mL)に加えた。シクロプロパンカルボキシアルデヒド(1.25g、17.84mmol)を加え、当該スラリーを室温で1時間撹拌した。このとき、アセトニトリル10mL中の98%ギ酸/トリエチルアミンの5対2混合物[98%ギ酸(5.34g、116mmol)を、トリエチルアミン(4.70g、46.4mmol)に加えることにより調製した]を加えた。ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)二量体(27mg)を加え、続いて(1S,2S)−(+)−N−トシル−ジフェニルエチレンジアミン(32mg)を加えた。当該反応物を窒素で30分間パージし、この後、当該反応物は均一となった。窒素ガスを、一定の流量で当該反応物を通過させて流した。当該反応物を室温で36時間撹拌した。当該混合物をエバポレートして、濃厚な油状物(5.34g)を得た。アセトニトリル10mLを加え、室温で1時間撹拌すると、沈殿物が形成された。当該沈殿物を濾過により分離して、冷(5℃)アセトニトリル5mLで洗浄した。当該沈殿物を乾燥させ、標題の生成物(3.66g、収率88.5%)を得た。HPLC分析は、99.02%のブプレノルフィンであることを示した。
実施例2:ノルオキシモルホンからのナルトレキソンの合成
ノルオキシモルホンからのナルトレキソンの合成全体を以下の反応スキームに示す。
Figure 2010533719
実施例2(a):ノルオキシモルホンからの6−ケタールノルオキシモルホンの合成
Figure 2010533719
ノルオキシモルホン(3.30g、11.5mmol)をエチレングリコール(14.26g、230mmol、12.85mL)でスラリー化した。次いで、メタンスルホン酸(2.21g、23.0mmol、1.49mL)を滴下して加えた。当該反応物を室温で一晩(16時間)撹拌した。次に、当該反応物を、29%のNH/HO(50mL)中にゆっくり注ぎ、室温で2時間攪拌すると、白色沈殿物が生じた。当該反応混合物を濾過し、得られた固体を蒸留水(50mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて(48時間、25℃、1torr)、6−ケタールノルオキシモルホン(3.75g、収率98.5%)を単離した。HPLC分析は、99.0%の6−ケタールノルオキシモルホンであることを示した。
実施例2(b):6−ケタールノルオキシモルホンからの6−ケタールナルトレキソン の合成
Figure 2010533719
6−ケタールノルオキシモルホン(0.95g、3.0mmol)、シクロプロパンカルボキシアルデヒド(0.40g、6.0mmol、0.43mL)、およびアセトニトリル(5.0mL)を混合し、得られたスラリーを室温で2時間撹拌した。当該混合物を、エバポレートによって乾固させ、新鮮なアセトニトリル(5.0mL)に溶解させた。このとき、アセトニトリル10mL中の98%ギ酸/トリエチルアミンの5対2混合物[98%ギ酸(1.78g、38.7mmol、1.46mL)を、トリエチルアミン(1.45g、14.3mmol、2.0mL)に加えることにより調製した]を加えた。ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)二量体(19mg)を加え、続いて(1S,2S)−(+)−N−トシル−ジフェニルエチレンジアミン(26mg)を加えた。当該反応物を窒素ガス(アルゴン)で30分間パージした。窒素パージ後、窒素気流で反応物を通過させて流した。当該反応物を室温で24時間撹拌した。HPLC分析により、反応が完了したことを確認した。当該混合物をエバポレートして、濃厚な油状物を得た。当該濃厚なスラリーに、新鮮なアセトニトリル(5.0mL)を加えた。室温で2時間撹拌すると、白色固体が形成された。当該沈殿物を濾過により分離して、冷(5℃)アセトニトリル5mLで洗浄した。当該沈殿物を乾燥させ、標題の生成物(1.06g、収率92%)を得た。HPLC分析=99.0%。
実施例2(c):6−ケタールナルトレキソンからのナルトレキソンの合成
Figure 2010533719
6−ケタールナルトレキソン(1.06g、2.76mmol)を、88%HCOH(5.0mL)および蒸留水(1.0mL)の撹拌溶液に加えた。室温で2時間攪拌した後、反応は完了した。当該反応混合物を30mLの29%NH/HOにゆっくり加えると、白色沈殿物が形成された。当該白色沈殿物を濾過により単離し、蒸留水(5.0mL)で洗浄し、乾燥させて、ナルトレキソン(895mg、収率95%)を得た。HPLC分析=99.0%。
実施例3:(+)−ヒドロコドールの合成
以下の反応スキームに従って(+)−ヒドロコドンから(+)−ヒドロコドールを調製した。
Figure 2010533719
(+)−ヒドロコドン(0.31g、1.03mmol)およびアセトニトリル(CHCN;1mL)を、乾燥させたフラスコに入れた。トリエチルアミン(NEt;0.63g、6.21mmol、0.87mL)およびアセトニトリル(1mL)をこの溶液に加え、>96%ギ酸(CHOH;0.38g、8.24mmol、0.31mL)を当該溶液に滴下して加えた。当該溶液を室温で15分間撹拌した。次いで、ジクロロ(p−シメン)Ru(II)二量体(3mg、0.005mmol)および(1S,2S)−(+)−p−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(3mg、0.009mmol)を加え、追加量のアセトニトリル(3mL)をフラスコの壁をすすぐようにして加え、触媒が確実に混合物に導入されるようにした。当該反応物を室温で72時間撹拌した。HPLC分析により、反応が完了したことを確認した。当該反応溶液をエバポレートして、油状固体を得た。この油状固体を29%NH/HO(5mL)で溶解し、次いでクロロホルムで抽出した(10mLで3回)。当該抽出物を収集し、エバポレートして乾固させた。25%イソプロパノール/クロロホルムを溶離剤として使用したカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,5.0g)により、所望の画分をエバポレートして乾固させて、(+)−ヒドロコドール(0.21g、収率70%)を単離した。

Claims (56)

  1. 下記の式を有するN−アルキル化モルフィナン(II)を調製するプロセスであって、
    Figure 2010533719
    該プロセスが、ルテニウム不斉触媒、ロジウム不斉触媒、もしくはイリジウム不斉触媒および水素源の存在下でN−イミンモルフィナンまたはヘミアミナールモルフィナンを還元する工程を含み、該N−イミンモルフィナンまたはヘミアミナールモルフィナン(I)が、以下の式を有し、
    Figure 2010533719
    式中、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロ、または−OR111であり、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロ、または−OR211であり、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR311であり、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR611であり、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR711であり、
    は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または−OR811であり、
    14は、水素またはヒドロキシであり、
    111は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    211は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    311は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    611は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    711は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    811は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヒドロキシ保護基であり、
    は、>NCH(OH)(R)または>N=CH(R)であり、
    は、>NCH(R)であり、
    は、水素、アシル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または複素環である、
    プロセス。
  2. 前記触媒が、ルテニウム錯体またはロジウム錯体を含む、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記触媒が、ジクロロ(アレーン)Ru(II)二量体、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Rh(II)二量体、BINAP−Ru(II)ジアセテート、BINAP−Ru(II)ジクロリド、BINAP−Ru(II)ジブロミド、BINAP−Ru(II)ジヨージド、[RuCl((RまたはS)BINAP)(C)]Cl、またはジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)二量体を含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
  4. 前記触媒が、窒素、酸素またはリン供与原子を介して前記ルテニウム、ロジウムまたはイリジウム錯体によって錯体化された二座のキラル配位子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
  5. 前記触媒が、式(670)、式(680)、式(690)、または式(700)を有するキラル配位子を含み、
    Figure 2010533719
    式中、R671、R672、R673、R681、R691、R692、R701、およびR702が、独立して、アルキルまたはアリールであり、R691およびR692並びにそれらが結合している炭素原子が、必要に応じて、環式化合物または二環式化合物を形成していてもよい、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
  6. 前記配位子が前記式(670)を有し、R672およびR673がフェニルであり、R671がアリールである、請求項5に記載の方法。
  7. 671が、トリル、メシチル、またはナフチルである、請求項6に記載のプロセス。
  8. 前記配位子が前記式(680)を有し、R681が、トリル、メシチル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、またはナフチルである、請求項5に記載のプロセス。
  9. 前記配位子が前記式(700)を有し、R701およびR702が水素である、請求項5に記載のプロセス。
  10. 前記配位子が、(1S,2S)−(+)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン、(1R,2R)−(−)−N−4−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン、dl−N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トシル−1,2−エチレンジアミン、またはN−トシル−1,2−ジアミノシクロヘキサンである、請求項4〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
  11. 前記触媒が、以下の式から成る群から選択され、
    Figure 2010533719
    式中、Arはアリールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
  12. 前記触媒が野依触媒である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
  13. 前記水素源がプロトン性化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
  14. 前記水素源が、イソプロパノール、ギ酸、ギ酸の有機塩もしくは無機塩、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載のプロセス。
  15. 前記水素源が、ギ酸およびトリエチルアミンの混合物である、請求項13または請求項14に記載のプロセス。
  16. ギ酸とトリエチルアミンとの比率が約5:2である、請求項15に記載のプロセス。
  17. 前記プロセスが非プロトン性の極性溶媒中で実施される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
  18. 前記溶媒が、ニトリル、テトラヒドロフラン、アルコール、ハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、酢酸アルキル、トルエン、水、またはそれらの組み合わせである、請求項17に記載のプロセス。
  19. 前記溶媒が、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、またはそれらの組み合わせである、請求項18に記載のプロセス。
  20. が、水素または−OR111であり、R111が、水素、アルキル、アシル、アルカリール、アリール、またはヒドロキシル保護基である、請求項1〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
  21. が、水素または−OR211であり、R211が、水素、アルキル、アシル、アルカリール、アリール、またはヒドロキシ保護基である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
  22. が、水素または−OR311であり、R311が、水素、アルキル、アシル、アルカリール、アリール、またはヒドロキシ保護基である、請求項1〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
  23. 311が、水素またはアルキルである、請求項22に記載のプロセス。
  24. が、水素、あるいは置換もしくは非置換のC1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、フェニル、または−OR611であり、R611が、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、水素、またはヒドロキシ保護基である、請求項1〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
  25. が−OR611であり、R611が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、水素、またはヒドロキシ保護基である、請求項24に記載のプロセス。
  26. 611が、メチル、エチル、水素、またはヒドロキシ保護基である、請求項25に記載のプロセス。
  27. 611が、水素またはヒドロキシル保護基である、請求項26に記載のプロセス。
  28. が水素であり、
    が水素であり、
    が−OR311であり、
    311が水素またはC1〜8アルキルである、
    請求項1〜27のいずれか1項に記載のプロセス。
  29. が−OR611であり、R611が、水素、メチル、またはヒドロキシル保護基である、請求項1〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
  30. が水素である、請求項1〜29のいずれか1項に記載のプロセス。
  31. が、水素または3,3−ジメチルブタン−2−オールである、請求項1〜30のいずれか1項に記載のプロセス。
  32. が、>NCH(OH)(R)または>N=CH(R)であり、Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、ペンチル、又はシクロペンチルである、請求項1〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
  33. が、>NCH(OH)(R)または>N=CH(R)であり、Rがシクロプロピル又はシクロブチルである、請求項1〜32のいずれか1項に記載のプロセス。
  34. 前記N−アルキル化モルフィナン(II)が、下記の式のブプレノルフィン
    Figure 2010533719
    である、請求項1に記載のプロセス。
  35. 前記プロセスが、約0℃〜約120℃の温度範囲で実施される、請求項1〜34のいずれか1項に記載のプロセス。
  36. 前記プロセスが、約20℃〜約40℃の温度範囲で実施される、請求項1〜35のいずれか1項に記載のプロセス。
  37. 前記ヘミアミナールモルフィナン(I)が、下記の式を有するノル−モルフィナン(X)から調製され、
    Figure 2010533719
    前記プロセスが、前記ノル−モルフィナン(X)と式CH(O)Rのアルデヒドとを溶媒中において反応させて、下記の式を有するヘミアミナールモルフィナン(I)を形成させる工程を含み、
    Figure 2010533719
    式中、
    が>NCH(OH)(R)であり、
    が、ヒドロカルビル、アシル、置換ヒドロカルビル、または複素環である、
    請求項1に記載のプロセス。
  38. 前記ヘミアミナールモルフィナンが、対応する前記N−イミンモルフィナンと平衡状態にあり、該ヘミアミナールが、Zに対して>NCH(OH)(R)部分を有し、該N−イミンモルフィナンが、Zに対して>N=CH(R)部分を有する、請求項37に記載のプロセス。
  39. が−OR311であり、R311が水素である、請求項37または請求項38に記載のプロセス。
  40. が−OR611であり、R611がメチルである、請求項37〜39のいずれか1項に記載のプロセス。
  41. が置換アルキルである、請求項37〜40のいずれか1項に記載のプロセス。
  42. が、3,3−ジメチルブタン−2−オールである、請求項37〜41のいずれか1項に記載のプロセス。
  43. がシクロプロピルである、請求項37〜42のいずれか1項に記載のプロセス。
  44. 前記反応が、およそ室温で生じる、請求項37〜43のいずれか1項に記載のプロセス。
  45. 前記溶媒がアセトニトリルである、請求項37〜44のいずれか1項に記載のプロセス。
  46. 前記ノル−モルフィナン(X)がノル−ブプレノルフィンである、請求項37〜45のいずれか1項に記載のプロセス。
  47. 前記ヘミアミナールモルフィナン(I)が、下記の式(XI)を有する6−ケト−ノル−モルフィナンを、エチレングリコールおよび酸と反応させて、
    Figure 2010533719
    以下の式(XII)を有する6−ケタールノル−モルフィナンを形成することによって調製される、
    Figure 2010533719
    請求項1に記載のプロセス。
  48. 前記酸がメタンスルホン酸である、請求項47に記載のプロセス。
  49. 前記反応が、およそ室温で生じる、請求項47または請求項48に記載のプロセス。
  50. 前記6−ケト−ノル−モルフィナン(XI)がノルオキシモルホンであり、前記6−ケタールノル−モルフィナン(XII)が6−ケタールノルオキシモルホンである、請求項47〜49のいずれか1項に記載のプロセス。
  51. 前記6−ケタールノル−モルフィナン(XII)が、さらに、溶媒中で式CH(O)Rのアルデヒドと反応して、下記の式を有する前記ヘミアミナールモルフィナン(I)を形成し、
    Figure 2010533719
    式中、
    は、>NCH(OH)(R)であり、
    は、ヒドロカルビル、アシル、置換ヒドロカルビル、または複素環である、請求項47〜50のいずれか1項に記載のプロセス。
  52. 前記ヘミアミナールモルフィナンが、対応する前記N−イミンモルフィナンと平衡状態にあり、該ヘミアミナールモルフィナンが、Zに対して>NCH(OH)(R)部分を有し、該N−イミンモルフィナンがZに対して>N=CH(R)部分を有する、請求項51に記載のプロセス。
  53. が−OR311であり、R311が水素である、請求項51または請求項52に記載のプロセス。
  54. がシクロプロピルである、請求項51〜53のいずれか1項に記載のプロセス。
  55. 前記反応が、およそ室温で生じる、請求項51〜54のいずれか1項に記載のプロセス。
  56. 前記溶媒がアセトニトリルである、請求項51〜55のいずれか1項に記載のプロセス。
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