(A)概要)
免疫関連・炎症性疾患は、正常な生理において傷害または外傷に応答し、傷害または外傷からの修復を開始し、外来生物に対する先天的および後天的防御を開始するのに不可欠な相当に複雑な、多くの場合、多数の相互接続した生物学的経路の発現または結果である。これらの正常な生理的経路が、その応答の強度に直接関連して、異常な調節もしくは過剰な刺激の結果として、自己に対する反応として、またはこれらの組合せとして更なる傷害または外傷を引き起こす場合、疾患または病態が生じる。
これらの疾患の発生は、多段階経路および、多くの場合、多数の異なる生物学的システム/経路を含む場合が多いが、1つ以上のこれらの経路における臨界ポイントでの介入は改善または治療効果を有しうる。治療的介入は有害なプロセス/経路の拮抗または有益なプロセス/経路の刺激により生じうる。
多くの免疫関連疾患が公知であり、広範に研究されている。そのような疾患は、免疫介在性炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、免疫介在性腎疾患、肝胆道疾患、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、乾癬および喘息)、非免疫介在性炎症性疾患、感染症、免疫不全症、異常増殖などを含む。
Tリンパ球(T細胞)は哺乳動物免疫応答の重要な構成要素である。T細胞は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)内の遺伝子にコードされる自己分子と関連する抗原を認識する。抗原は、抗原提示細胞、ウイルス感染細胞、癌細胞、移植片などの表面上にMHC分子と共に提示されうる。T細胞系は宿主哺乳動物に健康被害をもたらす、これらの変性細胞を排除する。T細胞はヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞を含む。ヘルパーT細胞は抗原提示細胞上の抗原−MHC複合体の認識後に広範に増殖する。ヘルパーT細胞は、B細胞、細胞傷害性T細胞および免疫応答に関与する他の種々の細胞の活性化に中心的な役割を果たす種々のサイトカイン、すなわち、リンホカインも分泌する。
液性および細胞性免疫応答における中心的事象は、ヘルパーT細胞の活性化およびクローン増殖である。ヘルパーT細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)−CD3複合体と抗原提示細胞上の抗原−MHCとの相互作用によって開始される。この相互作用は、休止ヘルパーT細胞が細胞周期(G0からG1への移行)に入ることを誘導する一連の生化学的事象を媒介し、IL−2、時にはIL−4に対する高親和性受容体の発現をもたらす。活性化T細胞は周期を通じて進行し、増殖してメモリー細胞またはエフェクター細胞に分化する。
TCRを通じて媒介されるシグナルに加え、T細胞の活性化は、抗原提示細胞によって放出されるサイトカインにより、あるいは抗原提示細胞およびT細胞上の膜結合分子による相互作用によって誘導される更なる共刺激を含む。サイトカインIL−1およびIL−6は共刺激シグナルを付与することが示されている。さらに、抗原提示細胞の表面上に発現するB7分子とT細胞表面上に発現するCD−28およびCTLA−4分子との相互作用はT細胞の活性化をもたらす。活性化T細胞は、増加した数の細胞接着分子、例えば、ICAM−1、インテグリン、VLA−4、LFA−1、CD56などを発現する。
混合リンパ球培養または混合リンパ球培養反応(MLR)におけるT細胞増殖は、化合物の免疫系を刺激する能力の確立された指標である。多くの免疫応答において、炎症細胞は損傷または感染部位に浸潤する。移動細胞は、患部組織の組織学的検査によって判定されうるように、好中球、好酸球、単球またはリンパ球でありうる(Current Protocols in Immunology,John E.Coligan(編)、1994,John Wiley & Sons,Inc.)。
免疫関連疾患は免疫応答を抑制することによって処置されうる。免疫刺激活性を有する分子を阻害する可溶性受容体および/または中和抗体の使用は、免疫介在性および炎症性疾患の処置において有益でありうる。免疫応答を抑制し、したがって、免疫関連疾患を改善するため、免疫応答を抑制する分子を用いることができる(蛋白質を直接に、または抗体アゴニストの使用により)。
インターロイキン−17(IL−17A)は、Tリンパ球向性ヘルペスウイルスサイミリ(HSV)にコードされる蛋白質の細胞オルソログとして同定されている[Rouvierら、J.Immunol.,150(12):5445−5456(19993);Yaoら、J.Immunol.,122(12):5483−5486(1995)およびYaoら、Immunity,3(6):811−821(1995)を参照されたい]。続いての特徴づけでは、この蛋白質が多種多様の末梢組織において炎症促進反応を誘導するように作用する強力なサイトカインであることが示されている。IL−17Aは、CD4+活性化メモリーT細胞によってのみ合成・分泌される、約32kDaのジスルフィド結合ホモ二量体サイトカインである(Fossiezら、Int.Rev.Immunol.,16:541−551[1998]に概説されている)。具体的には、IL−17は、19〜23残基のN末端シグナル配列を有する155アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、ジスルフィド結合ホモ二量体糖蛋白質として分泌される。Il−17Aは、WO9518826(1995)、WO9715320(1997)およびWO9704097(1997)ならびに米国特許第6,063,372号に開示されている。
その限定された組織分布にかかわらず、IL−17Aは様々なタイプの細胞において多面的な生物学的活性を示す。IL−17Aは多くのサイトカインの産生を刺激することが見出されている。それは、線維芽細胞、角化細胞、上皮および内皮細胞のような接着細胞によるIL−6、IL−8、IL−12、白血病抑制因子(LIF)、プロスタグランジンE2、MCP−1およびG−CSFの分泌を誘導する。IL−17Aは、ICAM−1表面発現、T細胞の増殖ならびにCD34+ヒト前駆体の成長および好中球への分化を誘導する能力も有する。IL−17Aは、骨代謝にも関与しており、活性化T細胞の存在およびTNF−α産生を特徴とする病理的状態、例えば、関節リウマチおよび骨インプラントの緩みに重要な役割を果たすことが示唆されている(Van Bezooijenら、J.Bone Miner.Res.14:1513−1521[1999])。関節リウマチ患者由来の滑膜組織の活性化T細胞は、正常患者または骨関節炎患者由来のものより多い量のIL−17Aを分泌することが見出された(Chabaudら、Arthritis Rheum.42:963−970[1999])。この炎症促進性サイトカインが関節リウマチにおける滑膜炎症に活発に寄与することが示唆された。その炎症促進性役割は別として、IL−17Aは更に別のメカニズムによって関節リウマチの病理の原因となるように思われる。例えば、IL−17Aは骨芽細胞における破骨細胞分化因子(ODF)mRNAの発現を誘導することが示されている(Kotakeら、J.Clin.Invest.,103:1345−1352[1999])。ODFは骨吸収に関与する細胞である破骨細胞への前駆細胞の分化を刺激する。
IL−17Aの濃度が関節リウマチ患者の滑液において有意に上昇しているため、IL−17A誘導性破骨細胞形成が関節リウマチにおける骨吸収に重要な役割を果たすと思われる。IL−17Aは多発性硬化症のような他の特定の自己免疫障害に重要な役割を果たすとも考えられている(Matuseviciusら、Mult.Scler.,5:101−104[1999])。さらに、IL−17Aは細胞間シグナル伝達により、ヒトマクロファージにおいてCa2+流入および[cAMP]の減少を刺激することが示されている(Jovanovicら、J.Immunol.,160:3513[1998])。IL−17Aで処理された線維芽細胞はNF−κBの活性化を誘導するが[Yaoら、Immunity,3:811(1995)、上記Jovanovicら]、それで処理されたマクロファージはNF−κBおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼを活性化する(Shalom−Barekら、J.Biol.Chem.,273:27467[1998])。
さらにまた、IL−17Aは骨・軟骨成長に関与する哺乳動物サイトカイン様因子7と配列類似性を共有する。IL−17Aポリペプチドが配列類似性を共有する他の蛋白質は、ヒト胚由来インターロイキン関連因子(EDIRE)およびインターロイキン−20である。
IL−17Aの広範な作用と一致して、IL−17Aの細胞表面受容体は多くの組織および細胞型に広範に発現することが見出されている(Yaoら、Cytokine,9:794[1997])。ヒトIL−17A受容体(IL−17RA)のアミノ酸配列(866アミノ酸)は、単一膜貫通ドメインおよび長い525アミノ酸細胞内ドメインを有する蛋白質を予測させるが、その受容体配列は独特であり、サイトカイン/成長因子受容体ファミリー由来の受容体のいずれの配列とも類似していない。これは、IL−17A自体の他の既知の蛋白質との類似性の欠如と相まって、IL−17Aおよびその受容体がシグナル伝達蛋白質および受容体の新たなファミリーの一部でありうることを示す。IL−17A活性がその独特な細胞表面受容体への結合を通して媒介されることが示されており、従前の研究では、T細胞を可溶型のIL−17A受容体ポリペプチドに接触させると、PHA、コンカナバリンAおよび抗TCRモノクローナル抗体によって誘導されるT細胞増殖およびIL−2産生を阻害したことを示している(Yaoら、J.Immunol.,155:5483−5486[1995])。そのようなものとして、既知のサイトカイン受容体、特にIL−17A受容体との相同性を有する新規ポリペプチドを同定し、特徴づける大きな関心がある。
IL−17Fの発現パターンは、活性化CD4+ T細胞および単球のみを含むように、IL−17Aの発現パターンに類似しているように思われる(Starnesら、J.Immunol.167:4137−4140[2001])。IL−17Fは、線維芽細胞においてG−CSF,IL−6およびIL−8(Hymowitzら、EMBO J.20:5322−5341[2001])、また、内皮細胞においてTGF−b(Starnesら、J.Immunol.167:4137−4140[2001])を誘導することが示されている。樹状細胞によって産生されるサイトカインであるIL−23が、主にメモリーT細胞においてIL−17AおよびIL−17Fの産生を媒介しうることが最近になって報告されている(Aggarwalら、J.Biol.Chem.278:1910−1914[2003])。
さらに、IL−17AおよびIL−17Fの過剰発現またはアップレギュレーションが、関節炎および喘息患者において示されている(Moseleyら、CytokineGrowth Factor Rev 14:155−174[2003]に概説されている)。関節炎に関して、これらのサイトカインは関節リウマチおよび骨関節炎と関連する軟骨・関節破壊に特徴的な様態にて作用する。例えば、IL−17AおよびIL−17Fは、軟骨プロテオグリカン・グリコサミノグリカンおよびコラーゲン断片の放出により、関節軟骨外植片における基質分解を亢進すると同時に、新たなプロテオグリカンおよびコラーゲンの合成を阻害することが示されている(Caiら、Cytokine 16:10−21[2001];Atturら、Arthritis Rheum 44:2078−2083[2001])。
IL−17Aと同様に、マウスにおけるIL−17Fの過剰発現も肺における好中球動員を増加させ、IL−6,IFN−γ,IP−10およびMIGを含む肺内Th1関連サイトカインの発現増加を生じさせることが示されている(Starnesら、J.Immunol.167:4137−4140[2001])。さらに、IL−17Fはアレルゲン投与喘息患者由来のT細胞においてアップレギュレートされ(Kawaguchiら、J.Immunol 167:4430−4435[2001])、NHBEにおいてIL−6およびIL−8産生を誘導することが見出された。IL−17Aと対照的に、IL−17Fはインビトロにて血管新生を阻害するように思われる(Starnesら、J.Immunol.167:4137−4140[2001])。
IL−17F mRNAは種々のヒト組織においてノーザンブロット法により検出されなかったが、CD4+ T細胞および単球の活性化と同時に劇的に誘導された(同上)。マウスにおいて、Th2細胞および肥満細胞は活性化と同時にIL−17Fを発現することが見出された。Dumont,Expert Opin.Ther.Patents13(3)(2003)を参照されたい。IL−17Aと同様に、IL−17Fの発現もマウスにおいてIL−23によってアップレギュレートされることが見出された。
IL−17サイトカイン/受容体ファミリーは、免疫および炎症反応の操作への画期的な取り組みを提供する、サイトカインネットワーク内の独特なシグナル伝達系を表すように思われる。したがって、本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体に関する。
本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体(IL−17A/F抗体)ならびにIL−17A/F抗体を使用する方法を提供する。該抗体はアンタゴニストまたはアゴニストとして作用し、特に、哺乳動物細胞のインビトロ、インサイツまたはインビボでの診断または処置あるいはIL−17Aおよび/またはIL−17Fの存在(または非存在)と関連する病理的状態に有用性を見出しうる。
本発明の好ましい実施形態は、IL−17AおよびIL−17F(本明細書では「交差反応性抗体」、「A/F抗体」、「二重特異性抗体」、「IL−17A/F抗体」などと互換的に称される)に結合する抗体およびその任意の断片もしくは置換を含む。特に、そのような抗体は、ヒトIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合することができ、かつ/あるいはIL−17AとIL−17Fの一方もしくは両方および/またはそれらの受容体IL−17RA,IL−17RCと関連する生物学的活性を調節することができ、したがって、免疫関連疾患のような種々の疾患および病理的状態の処置に有用である。より具体的な実施形態では、IL−17A(配列番号2)およびIL−17F(配列番号4)に特異的に結合する抗体が提供される。任意に、該抗体はモノクローナル抗体である。
例えば、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上のエピトープに結合し、前記エピトープは、ヒトIL−17Fの以下の配列の残基Ile(23)、Lys(25)、Gly(27)、Thr(29)およびPro(34)ならびに以下に示されるヒトIL−17Aに見出される等価配列を含む。残基23,25,27,29および34は、IL−17AおよびIL−17Fの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能である。
hIL 17F(配列番号4のIle23−Pro34) IPKVGHTFFQKP
hIL 17A(配列番号2のIle20−Pro31) IVKAGITIPRNP
任意に、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上の別のエピトープに結合し、前記エピトープは、ヒトIL−17Fの以下の配列の残基Arg(67)、Ser(68)、Thr(69)、Ser(70)、Pro(71)、Trp(72)、Asn(73)ならびに以下に示されるヒトIL−17Aに見出される等価配列を含む。残基69,71および73は、生理活性サイトカインの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能である。
hIL 17F(配列番号4のArg67−Asn73) RSTSPWN
hIL 17A(配列番号2のArg69−Asn75) RSTSPWN
任意に、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上の別のエピトープに結合し、前記エピトープは、ヒトIL−17Fの以下の配列の残基Asp(79)、Pro(80)、Asn(81)、Arg(82)、Tyr(83)、Pro(84)およびSer(85)ならびに以下に示されるヒトIL−17Aに見出される等価配列を含む。このエピトープのすべての残基は、生理活性サイトカインの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能である。
hIL−17F(配列番号4のAsp79−Ser85) DPNRYPS
hIL−17A(配列番号2のAsp81−Ser87) DPERYPS
任意に、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上の別のエピトープに結合し、前記エピトープは、ヒトIL−17Fの以下の配列の残基Thr(146)、Pro(147)、Val(148)、Ile(149)、His(150)、His(151)、Val(152)ならびに以下に示されるヒトIL−17Aに見出される対応する配列を含む。これらの残基は、生理活性サイトカインの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能であると予測される。
hIL−17F(配列番号4のThr146−Vall52) TPVIHHV
hIL−17A(配列番号2のThr148−Val 154) TPIVHHV
任意に、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上の別のエピトープに結合し、前記エピトープは、以下に示されるヒトIL−17Fの別個のペプチド鎖由来の残基;または以下に示されるヒトIL−17Aに見出される等価配列を含む不連続エピトープである。具体的には、hIL−17Fの残基105〜109,147〜152およびhIL−17Aの107〜111,148〜154は、生理活性サイトカインの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能である。
hIL−17F配列(配列番号4のAsp105−Asn109[DISMN]およびPro147−Val152[PVIHHV])
hIL−17A配列(配列番号2のAsp107−Asn111[DYHMN]およびPro149−Val154[PIVHHV])
任意に、IL−17A/F抗体はIL−17AおよびIL−17F上の別のエピトープに結合し、前記エピトープは、以下に示されるヒトIL−17Fの2または3つの別個のペプチド鎖の残基;またはヒトIL−17Aに見出される等価配列を含む不連続エピトープである。具体的には、hIL−17Fの残基81,82,121,132,134およびhIL−17Aの83,84,123,134,136は、生理活性サイトカインの表面上にあると予測され、したがって、本発明の抗体または等価な蛋白質結合アンタゴニストの結合にアクセス可能である。
hIL−17F配列(配列番号4のAsp79−Ser85[DPNRYPS]およびVal119−Arg122[VVRR]およびSer130−Glu134[SFQLE])
hIL−17A配列(配列番号2のAsp81−Ser87[DPERYPS]およびVal121−Arg124[VLRR]およびSer132−Glu136[SFRLE])
特定の実施形態では、本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する二重特異性抗体を提供する。二重特異性抗体(BsAb)は、抗体が2つの異なる抗原に特異的に結合するように、2つの異なる抗原結合部位を有する抗体である。より高い結合価(すなわち、2つを超える抗原に結合する能力)を有する抗体も調製されうる。それらは多特異性抗体と称される。
二重特異性抗体はモノクローナル抗体(MAb)であることが好ましい。特定の実施形態では、該抗体はキメラまたはヒト化または完全ヒトである。完全ヒト抗体はトランスジェニックマウスの免疫化を含む手順によって作製され得、下述のように、ヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入されている。IL−17AおよびIL−17Fに結合する本発明の二重特異性抗体は、本明細書で二重特異性IL−17A/F抗体または二重特異性A/F MAbと称される。
更に他の特定の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系が提供される。別の実施形態では、IL−17A/F抗体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリオキシアルキレンからなる群より選択される1つ以上の非蛋白性重合体または細胞傷害性薬物もしくは酵素または放射性同位元素、蛍光化合物もしくは化学発光化合物に結合される。
本発明の典型的な方法は、IL−17AまたはIL−17Fの発現および/または活性の増大または亢進と関連し、あるいはこれから生じる哺乳動物における病理的状態または疾患を処置する方法を含む。該処置方法において、好ましくは、それぞれの受容体結合またはそれらの受容体(単数・複数)に対する活性化を阻止または低減するIL−17A/F抗体が投与されうる。任意に、該方法において用いられるIL−17A/F抗体は、IL−17AおよびIL−17Fの活性を阻止または中和することができ、例えば、IL−17AおよびIL−17Fの活性を阻止または中和する二重アゴニスト(すなわち、本明細書で述べる交差反応性IL−17A/F抗体)である。該方法では、単一の交差反応性抗体または2つ以上の抗体の組合せの使用を企図する。
本発明は、IL−17A/F抗体を含む組成物も提供する。任意に、本発明の組成物は医薬的に許容可能な担体または希釈剤を含む。好ましくは、該組成物は、病理的状態または疾患を処置するのに治療的に有効な量にて1つ以上のIl−17A/F抗体を含む。
そのようなものとして、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における免疫関連疾患の診断および処置に有用な組成物および方法に関する。本発明は、哺乳動物における免疫応答を刺激または阻害する、IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)の同定に基づく。免疫関連疾患は免疫応答を抑制または亢進することによって処置されうる。免疫応答を亢進する抗体は抗原に対する免疫応答を刺激または増強する。免疫応答を刺激する抗体は、免疫応答の亢進が有益でありうる場合に治療的に用いられうる。あるいは、免疫応答を抑制し、抗原に対する免疫応答を減弱または低減する抗体(例えば、中和抗体)は、免疫応答の減弱が有益でありうる場合(例えば、炎症)に治療的に用いられうる。
したがって、本発明のIL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体(本明細書でIL−17A/F、A/Fおよび/または交差反応性IL−17A,IL−17F抗体とも称される)は、例えば、全身性エリテマトーデス、関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、特発性炎症性筋疾患、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、真性糖尿病、免疫介在性腎疾患、中枢・末梢神経系の脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症、特発性脱髄性多発ニューロパシーまたはギラン・バレー症候群および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、肝胆道疾患、例えば、感染性自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎および硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病 グルテン過敏性腸症および内毒血症、水疱性皮膚症、多形性紅斑およびアトピー性・接触性皮膚炎、乾癬、好中球性皮膚病を含む自己免疫もしくは免疫介在性皮膚疾患、嚢胞性線維症、アレルギー疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーおよび蕁麻疹、嚢胞性線維症、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、成人呼吸器疾患(ARD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および炎症性肺損傷、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏性、慢性気管支炎、アレルギー性喘息および過敏性肺炎、移植片・臓器拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患、敗血症ショック、多臓器不全、癌ならびに血管新生を含む免疫関連および炎症性疾患の処置のための薬剤・薬物を調製するためにも有用である。
具体的な態様では、そのような薬剤・薬物は医薬的に許容可能な担体と共に治療有効量のIL−17A/F抗体を含む。その混合物は無菌であることが好ましい。
一態様では、本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する単離抗体に関する。別の態様では、抗体はIL−17AおよびIL−17Fの活性を模倣し(アゴニスト抗体)、あるいは逆に、抗体はIL−17AおよびIL−17Fの活性を阻害または中和する(アンタゴニスト抗体)。別の態様では、抗体は、好ましくは、非ヒト相補性決定領域(CDR)残基およびヒトフレームワーク領域(FR)残基を有するモノクローナル抗体である。
更なる実施形態では、本発明は、Il−17AおよびIL−17Fのアゴニストまたはアンタゴニスト抗体を同定する方法に関し、前記方法は、IL−17AおよびIL−17Fを候補分子に接触させるステップと、IL−17Aおよび/またはIL−17Fに媒介される生物学的活性をモニタリングするステップとを含む。別の実施形態では、本発明は、担体または賦形剤との混合物にて、IL−17AおよびIL−17Fに結合するIL−17A/Fアゴニストまたはアンタゴニスト抗体を含む物質組成物に関する。一態様では、該組成物は治療有効量のIL−17A/F抗体を含む。別の態様では、該組成物がそのようなアゴニストIL−17A/F抗体を含む場合、該組成物は、(a)それを必要とする哺乳動物の組織内への炎症細胞の浸潤を亢進し、(b)それを必要とする哺乳動物における免疫応答を刺激または亢進し、(c)抗原に応答して、それを必要とする哺乳動物におけるTリンパ球の増殖を増加させ、(d)Tリンパ球の活性を刺激し、または(e)血管透過性を増大させるのに有用である。更なる態様では、該組成物がそのようなアンタゴニストIL−17A/F抗体を含む場合、該組成物は、(a)それを必要とする哺乳動物の組織内への炎症細胞の浸潤を減少させ、(b)それを必要とする哺乳動物における免疫応答を阻害または低減し、(c)Tリンパ球の活性を低下させ、または(d)抗原に応答して、それを必要とする哺乳動物におけるTリンパ球の増殖を減少させるのに有用である。別の態様では、該組成物は、例えば、更なる抗体または細胞傷害性薬物もしくは化学療法剤でよい更なる活性成分を含む。該組成物は無菌であることが好ましい。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする哺乳動物における免疫関連障害を処置する方法に関し、該方法は、治療有効量のアゴニストまたはアンタゴニストIL−17A/F抗体を哺乳動物に投与するステップを含む。
好ましい態様では、免疫関連障害は、全身性エリテマトーデス、関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、特発性炎症性筋疾患、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、真性糖尿病、免疫介在性腎疾患、中枢・末梢神経系の脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症、特発性脱髄性多発ニューロパシーまたはギラン・バレー症候群および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、肝胆道疾患、例えば、感染性自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎および硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病 グルテン過敏性腸症および内毒血症、水疱性皮膚症、多形性紅斑およびアトピー性・接触性皮膚炎、乾癬、好中球性皮膚病を含む自己免疫もしくは免疫介在性皮膚疾患、嚢胞性線維症、アレルギー疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーおよび蕁麻疹、嚢胞性線維症、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、成人呼吸器疾患(ARD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および炎症性肺損傷、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏性、慢性気管支炎、アレルギー性喘息および過敏性肺炎、移植片・臓器拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患、敗血症ショック、多臓器不全、癌ならびに血管新生からなる群より選択される。
任意に、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体断片または単鎖抗体である。別の実施形態では、本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する抗体を提供する。抗体は標識され得、または固体支持体上に固定されうる。更なる態様では、抗体は、抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖抗体または抗イディオタイプ抗体である。
更に別の実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドに関し、前記ポリペプチドはIL−17AおよびIL−17Fに結合することができる。
更に別の実施形態では、本発明は、本発明の単離ポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはIL−17AおよびIL−17Fに結合することができる。
抗体を生成するプロセスも本明細書で述べられ、それらのプロセスは、前記抗体の発現に好適な条件下にて適切なコード化核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養するステップと、前記抗体を細胞培養物から採取するステップとを含む。
更に別の実施形態では、本発明は、医薬的に許容可能な担体との混合物にて抗IL−17A/F抗体を含む組成物を提供する。一態様では、該組成物は治療有効量の抗体を含む。該組成物は無菌であることが好ましい。該組成物は、長期間の保存安定性を得るように保存されうる液体医薬製剤の剤形にて投与されうる。あるいは、抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、ヒト化抗体または単鎖抗体である。
更なる実施形態では、本発明は、(a)IL−17A/F抗体あるいはIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する抗体を含む物質組成物;(b)前記組成物を含む容器;ならびに(c)免疫関連疾患の処置における前記IL−17A/F抗体の使用に関する前記容器に添付されたラベルまたは前記容器に含まれる添付文書を含む製造品に関する。該組成物は治療有効量のIL−17A/F抗体を含みうる。
更に別の実施形態では、本発明は、哺乳動物における免疫関連疾患を診断する方法に関し、該方法は、(a)哺乳動物から得られた組織細胞の被験試料中および(b)同じ細胞型の既知の正常組織細胞の対照試料中の、IL−17Aおよび/またはIL−17Fの一方または両方をコードする遺伝子の発現レベルを検出するステップを含み、対照試料と比べて被験試料における高く、または低い発現レベルが、被験試料が得られた哺乳動物における免疫関連疾患の存在を示す。
別の実施形態では、本発明は、哺乳動物における免疫疾患を診断する方法に関し、該方法は、(a)IL−17A/F抗体を哺乳動物から得られた組織細胞の被験試料に接触させるステップと、(b)被験試料中の該抗体とIL−17AおよびIL−17Fの一方または両方との複合体の形成を検出するステップとを含み、前記複合体の形成が前記疾患の存在または非存在を示す。その検出は定性的または定量的でよく、同じ細胞型の既知の正常組織細胞の対照試料中の複合体形成のモニタリングと比較して行われうる。被験試料中に形成される大量の複合体は、被験組織細胞が得られた哺乳動物における免疫疾患の存在または非存在を示す。抗体は検出可能な標識を保有することが好ましい。複合体形成は、例えば、光学顕微鏡法、フローサイトメトリー、蛍光定量法または当該技術分野において公知の他の手法によってモニタリングされうる。通常、被験試料は免疫系の欠損または異常を有する疑いのある患者から得られる。
別の実施形態では、本発明は、哺乳動物における免疫関連疾患を診断する方法に関し、該方法は、前記哺乳動物から得られた組織細胞の被験試料中のIL−17AおよびIL−17Fの存在または非存在を検出するステップを含み、前記被験試料中のIL−17AおよびIL−17Fの存在または非存在が、前記哺乳動物における免疫関連疾患の存在を示す。
一層更なる実施形態では、本発明は、炎症細胞の脈管構造から哺乳動物の組織内への浸潤を亢進する方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物に(a)IL−17A/Fアゴニスト抗体を投与するステップを含み、哺乳動物における脈管構造からの炎症細胞の浸潤が亢進される。一層更なる実施形態では、本発明は、炎症細胞の脈管構造から哺乳動物の組織内への浸潤を低減する方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物にアンタゴニストIL−17A/F抗体を投与するステップを含み、哺乳動物における脈管構造からの炎症細胞の浸潤が低減される。
一層更なる実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるTリンパ球の活性を高める方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物にIL−17A/Fアゴニスト抗体を投与するステップを含み、哺乳動物におけるTリンパ球の活性が増大される。
一層更なる実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるTリンパ球の活性を低下させる方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物にIL−17A/Fアンタゴニスト抗体を投与するステップを含み、哺乳動物におけるTリンパ球の活性が低下される。
一層更なる実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるTリンパ球の増殖を増大させる方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物にIL−17A/Fアゴニスト抗体を投与するステップを含み、哺乳動物におけるTリンパ球の増殖が増大される。
一層更なる実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるTリンパ球の増殖を低減する方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物に(a)IL−17A/Fアンタゴニスト抗体を投与するステップを含み、哺乳動物におけるTリンパ球の増殖が低減される。
本発明は、1つ以上のIL−17A/F抗体を含む製造品およびキットも提供する。
本発明は、ポリペプチドに結合する単離抗体または抗体断片を提供し、該ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列もしくはその断片または配列番号4のアミノ酸配列もしくはその断片を含み、該ポリペプチドは、a)クローン指定番号339.15.5.3(ATCC特許寄託物名称PTA−7987)のハイブリドーマ;b)クローン指定番号339.15.3.6(ATCC特許寄託物名称PTA−7988)のハイブリドーマ;およびc)クローン指定番号339.15.6.16(ATCC特許寄託物名称PTA−7989)のハイブリドーマから選択されるハイブリドーマによって産生される抗体に結合することができる。一実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号4のアミノ酸残基23,25,27,29および34を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号2のアミノ酸残基20,22,24,26および31を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基23,25,27,29および34あるいは配列番号2のアミノ酸残基20,22,24,26および31を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号4のアミノ酸残基23〜34を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号2のアミノ酸残基20〜31を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号4のアミノ酸残基67〜73を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号2のアミノ酸残基69〜75を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基87〜93または配列番号2のアミノ酸残基69〜75を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号4のアミノ酸残基79〜85を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号2のアミノ酸残基81〜87を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基79〜85または配列番号2のアミノ酸残基81〜87を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号4のアミノ酸残基147〜152を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は配列番号2のアミノ酸残基149〜154を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基147〜152または配列番号2のアミノ酸残基149〜154を含むエピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基105〜109および147〜152を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号2のアミノ酸残基107〜111および148〜154を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基105〜109および147〜152を含む不連続エピトープあるいは配列番号2のアミノ酸残基107〜111および148〜154を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基79〜85,119〜122および130〜134を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号2のアミノ酸残基81〜87,121〜124および132〜136を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号4のアミノ酸残基79〜85,119〜122および130〜134を含む不連続エピトープあるいは配列番号2のアミノ酸残基81〜87,121〜124および132〜136を含む不連続エピトープに結合する。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、ヒトまたは動物における非経口、経口、腹腔内、鼻腔内、皮下、エアロゾル化または静脈内投与に好適である。別の実施形態の範囲内にて、抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態の範囲内にて、モノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体およびヒトモノクローナル抗体からなる群より選択される。別の実施形態の範囲内にて、抗体はscFvである。別の実施形態の範囲内にて、抗体は二重特異性抗体または二価抗体である。別の実施形態の範囲内にて、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列もしくはその断片を含むポリペプチドに結合するか、または配列番号4のアミノ酸配列もしくはその断片を含むポリペプチドに結合する交差反応性モノクローナル抗体である。
本発明は、ポリペプチドに結合する抗体または抗体断片を含む単離抗血清を提供し、該ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列もしくはその断片または配列番号4のアミノ酸配列もしくはその断片を含み、該ポリペプチドは、a)クローン指定番号339.15.5.3(ATCC特許寄託物名称PTA−7987)のハイブリドーマ;b)クローン指定番号339.15.3.6(ATCC特許寄託物名称PTA−7988)のハイブリドーマ;およびc)クローン指定番号339.15.6.16(ATCC特許寄託物名称PTA−7989)のハイブリドーマから選択されるハイブリドーマによって産生される抗体に結合することができる。
本発明は、ATCC特許寄託物名称PTA−7987,ATCC特許寄託物名称PTA−7988またはATCC特許寄託物名称PTA−7989から選択されるハイブリドーマによって産生される単離抗体を提供し、該抗体は、配列番号2のアミノ酸配列もしくはその断片を含むポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列もしくはその断片を含むポリペプチドの炎症促進活性を低下させる。一実施形態の範囲内にて、該ポリペプチドはATCC特許寄託物名称PTA−7987のハイブリドーマによって産生される抗体に結合することができる。一実施形態の範囲内にて、該ポリペプチドはATCC特許寄託物名称PTA−7988のハイブリドーマによって産生される抗体に結合することができる。一実施形態の範囲内にて、該ポリペプチドはATCC特許寄託物名称PTA−7989のハイブリドーマによって産生される抗体に結合することができる。
本発明は、ATCC特許寄託物名称PTA−7987のハイブリドーマおよび該ハイブリドーマによって産生される抗体を提供する。本発明は、ATCC特許寄託物名称PTA−7988のハイブリドーマおよび該ハイブリドーマによって産生される抗体を提供する。本発明は、ATCC特許寄託物名称PTA−7989のハイブリドーマおよび該ハイブリドーマによって産生される抗体を提供する。
(B)定義)
以下の記述では、多くの用語が広範に用いられる。以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。
抗体」(Abs)および「免疫グロブリン」(Igs)は同じ構造特徴を有する糖蛋白質である。抗体は特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルにて、骨髄腫によって高レベルにて産生される。したがって、本明細書で用いるように、「抗体」または「抗体ペプチド(単数・複数)」という用語は、無傷抗体または特異的結合のために無傷抗体と競合するその断片を指し、キメラ、ヒト化、完全ヒトおよび二重特異性抗体を含む。一部の実施形態では、結合断片は組換えDNA技術によって生成される。更なる実施形態では、結合断片は無傷抗体の酵素的または化学的切断によって生成される。結合断片は、Fab,Fab’,F(ab’).sub.2,Fvおよび単鎖抗体を含むが、これに限定されない。通常、「天然抗体および免疫グロブリン」は二本の同一軽(L)鎖および二本の同一重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖蛋白質である。各軽鎖は1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間にて異なる。各重鎖および軽鎖は規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を、次に、複数の定常ドメインを有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を、その他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインとアラインメントし、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインとアラインメントしている。特定のアミノ酸残基が軽鎖・重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられている(Clothiaら、J.Mol.Biol.186:651(1985);NovotnyおよびHaber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985))。
本明細書で用いる「単離抗体」という用語は、同定され、その天然環境から分離および/または採取された抗体を指す。その天然環境の夾雑成分は、抗体の診断的または治療的使用を妨げうる物質であり、酵素、ホルモンおよび他の蛋白性もしくは非蛋白性溶質を含みうる。好ましい実施形態では、抗体は、(1)Lowry法により求められる抗体の95重量%超、最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を用いて少なくとも15残基のN末端もしくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは、好ましくは銀染色を用いた、還元もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性に至るまで精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離抗体は組換え細胞内原位置での抗体を含む。しかし、通常、単離抗体は少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
「変異体」抗IL−17Aおよび/またはIL−17Fおよび/またはIL−17A/F抗体とは、本明細書では、親抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換により、「親」抗IL−17Aおよび/またはIL−17Fおよび/またはIL−17A/F抗体アミノ酸配列とアミノ酸配列の点で異なる分子を指す。好ましい実施形態では、変異体は親抗体の1つ以上の超可変領域における1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、変異体は親抗体の1つ以上の超可変領域における少なくとも1個、例えば、約1から約10個、好ましくは約2から約5個の置換を含みうる。通常、変異体は親抗体重鎖または軽鎖可変ドメイン配列との少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、必要な場合、最大パーセント配列同一性を得るため、配列をアラインメントさせてギャップを導入した後、親抗体残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントと本明細書で定義される。抗体配列に対するN末端、C末端または内部の伸長、欠失もしくは挿入はいずれも、配列同一性または相同性に影響を与えるものと解釈されるべきではない。変異体はヒトIL−17Aおよび/またはIL−17Fに結合する能力を保持し、好ましくは親抗体より優れた特性を有する。例えば、変異体はより強い結合親和性、IL−17Aおよび/またはIL−17F誘導性炎症を阻害する向上した能力を有しうる。そのような特性を分析するため、抗IL−17Aおよび/またはIL−17Fおよび/またはIL−17A/F抗体の構成が、本明細書で開示される生物活性アッセイにおいてその活性に影響を及ぼすため、例えば、変異体のFab形態を親抗体のFab形態と、または変異体の完全長形態を親抗体の完全長形態と比較すべきである。本明細書で特に興味深い変異抗体は、親抗体と比べた場合、少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、最も好ましくは少なくとも約50倍の生物学的活性の向上を示す変異抗体である。
本明細書で用いる「親抗体」という用語は、変異体の調製に用いられるアミノ酸配列にコードされる抗体を指す。好ましくは、親抗体はヒトフレームワーク領域を有し、存在する場合、ヒト抗体定常領域(単数・複数)を有する。例えば、親抗体はヒト化またはヒト抗体でありうる。
「アゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化または機能を増大させる、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子または小分子(10kD未満)を含む任意の化合物を指す。
「アンタゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化または機能を低下させる、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子または小分子(10kD未満)を含む任意の化合物を指す。
「本発明のポリペプチドのリガンドへの結合」という用語は、本発明のリガンドポリペプチドの受容体への結合;本発明の受容体ポリペプチドのリガンドへの結合;本発明の抗体の抗原またはエピトープへの結合;本発明の抗原またはエピトープの抗体への結合;本発明の抗体の抗イディオタイプ抗体への結合;本発明の抗イディオタイプ抗体のリガンドへの結合;本発明の抗イディオタイプ抗体の受容体への結合;本発明の抗・抗イディオタイプ抗体のリガンド、受容体または抗体などへの結合を含むが、これに限定されない。
一部の実施形態における「多特異性」または「多機能性」抗体以外の「二価抗体」は、同一の抗原特異性を有する結合部位を含むと理解される。
「二重特異性」または「二機能性」抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、限定されないが、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合を含む種々の方法により生成されうる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann(1990)、Clin.Exp.Immunol.79:315−321;Kostelnyら(1992)、J.Immunol.148:1547−1553を参照されたい。
「キメラ抗体(単数)」または「キメラ抗体(複数)」という用語は、その軽鎖・重鎖遺伝子が、異なる種に属する免疫グロブリン可変・定常領域遺伝子から、通常、遺伝子操作によって構築された抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントは、γ1およびγ3のようなヒト定常セグメントに結合されうる。したがって、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変もしくは抗原結合ドメインおよびヒト抗体由来の定常ドメインからなるハイブリッド蛋白質であるが、他の哺乳動物種を用いてもよい。具体的には、キメラ抗体は、ヒンジのすべてもしくは一部および免疫グロブリン軽鎖、重鎖もしくは両方の定常領域が、別の動物の免疫グロブリン軽鎖または重鎖由来の対応する領域の代わりに置換された組換えDNA技術によって生成される。このようにして、親モノクローナル抗体の抗原結合部は別の種の抗体の骨格に接合される。Winterらの欧州特許第0239400号に述べられている一手法では、1つの種の相補性決定領域(CDR)の、別の種の相補性決定領域に代わる置換、例えば、ヒト重鎖・軽鎖免疫グロブリン可変領域ドメイン由来のCDRの、マウス可変領域ドメイン由来のCDRとの置換について述べている。これらの変性抗体は、次に、ヒト免疫グロブリン定常領域と結合され、抗原に特異的な置換マウスCDRを除いてヒトである抗体を形成しうる。抗体のCDR領域を接合する方法は、例えば、Riechmannら(1988)Nature332:323−327およびVerhoeyenら(1988)Science239:1534−1536に見出されうる。
本明細書で用いる「有効中和力価」という用語は、臨床的に有効であり(ヒトにおいて)または、例えば、コットンラットにおいて99%ウイルスを減少させることが示された、動物(ヒトまたはコットンラット)の血清に存在する量に対応する抗体の量を指す。99%の減少は、例えば、RSV(ラウス肉腫ウイルス)の103pfu,104pfu,105pfu,106pfu,107pfu,108pfuまたは109pfu)の特定の抗原投与により定義される。
本明細書で用いるように、「エピトープ」という用語は、モノクローナル抗体が特異的に結合する抗原の一部分を指す。したがって、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的結合が可能な任意の蛋白質決定基を含む。通常、エピトープ決定基は、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特定の三次元構造特徴および特定の電荷特性を有する。より具体的には、本明細書で用いる「IL−17Aエピトープ」、「IL−17Fエピトープ」および/または「IL−17A/Fエピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはマウスまたはヒトにおいて抗原活性または免疫原活性を有する、対応するポリペプチドの一部分を指す。免疫原活性を有するエピトープは、動物において抗体応答を誘導するIL−17Aおよび/またはIL−17Fポリペプチドの一部分である。抗原活性を有するエピトープは、当該技術分野において周知の任意の方法、例えば、イムノアッセイにより定量されるように、抗体が免疫特異的に結合するIL−17Aおよび/またはIL−17Fポリペプチドの一部分である。抗原性エピトープは必ずしも免疫原性である必要はない。そのようなエピトープは本質的に直鎖状であり得、または不連続エピトープでありうる。したがって、本明細書で用いるように、「立体構造エピトープ」という用語は、一連の切れ目のないアミノ酸以外の抗原のアミノ酸間の空間関係により形成される不連続エピトープを指す。より具体的には、エピトープという用語は、IL−17AおよびIL−17Fに適用されるため、本明細書で定義されるエピトープを包含する。
本明細書で用いる場合、「エピトープタグを付けた」という用語は、「エピトープタグ」に融合した抗IL−17Aおよび/またはIL−17Fおよび/またはIL−17A/F抗体を指す。エピトープタグポリペプチドは、それに対する抗体が作製されうるエピトープを付与するのに十分な残基を有するが、本発明の抗体の活性を妨げないほどに短い。好ましくは、エピトープタグはそれに対する抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないように十分に独特である。一般的に、好適なタグポリペプチドは少なくとも6個のアミノ酸残基を、通常、約8〜50アミノ酸残基(好ましくは約9〜30アミノ酸残基)を有する。その例には、flu HAタグポリペプチドとその抗体12CA5(Fieldら、Mol.Cell.Biol.8:2159−2165(1988));c−mycタグとそれに対する8F9,3C7,6E10,G4,B7および9E10抗体(Evanら、Mol.Cell.Biol.5(12):3610−3616(1985));ならびに単純ヘルペスウイルス糖蛋白質D(gD)タグとその抗体(Paborskyら、Protein Engineering 3(6):547−553(1990))が含まれる。一部の実施形態では、エピトープタグは「サルベージ受容体結合エピトープ」である。本明細書で用いるように、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清中半減期の増加に関与する、IgG分子(例えば、IgG1,IgG2,IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
本明細書で用いる「断片」という用語は、Il−17AもしくはIL−17FポリペプチドまたはIl−17AもしくはIL−17Fもしくは両IL−17A,IL−17Fポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の隣接アミノ酸残基、少なくとも10個の隣接アミノ酸残基、少なくとも15個の隣接アミノ酸残基、少なくとも20個の隣接アミノ酸残基、少なくとも25個の隣接アミノ酸残基、少なくとも40個の隣接アミノ酸残基、少なくとも50個の隣接アミノ酸残基、少なくとも60個の隣接アミノ酸残基、少なくとも70個の隣接アミノ酸残基、少なくとも80個の隣接アミノ酸残基、少なくとも90個の隣接アミノ酸残基、少なくとも100個の隣接アミノ酸残基、少なくとも125個の隣接アミノ酸残基、少なくとも150個の隣接アミノ酸残基、少なくとも175個の隣接アミノ酸残基、少なくとも200個の隣接アミノ酸残基もしくは少なくとも250個の隣接アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。
本明細書で用いるように、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子に実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなる蛋白質を指す。免疫グロブリンの一形態は抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、2つの同一の免疫グロブリン鎖対からなり、各対が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖・重鎖可変領域は共に抗原への結合に関与し、定常領域は抗体エフェクター機能に関与する。
完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端にて可変領域遺伝子(約110アミノ酸)に、COOH末端にてカッパまたはラムダ定常領域遺伝子にコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、同様に可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および前述の定常領域遺伝子のうちの1つ(約330アミノ酸)にコードされる。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはエプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG,IgM,IgA,IgDおよびIgEと定義する。軽鎖・重鎖内にて可変・定常領域は約12またはそれ以上のアミノ酸の“J”領域によって結合され、重鎖は約10以上のアミノ酸の“D”領域も含む(Fundamental Immunology(Paul,W.(編)、第二版、Raven Press社、N.Y.,1989)、第七章を全体的に参照されたい(あらゆる目的のためにその全体を参照して組み込まれる)。
免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、3つの超可変領域に割り込まれた「フレームワーク」領域からなる。したがって、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は「相補性決定領域」または“CDR”由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第五版、Public Health Service, National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917)を含む(共に参照して本明細書に組み込まれる)。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は種内に比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一(約85%またはそれ以上、通常、90〜95%またはそれ以上)であるフレームワーク領域である。構成軽鎖・重鎖の複合フレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、CDRを位置決めし、アラインメントさせる役割を果たす。CDRは、主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。
したがって、「ヒト化」免疫グロブリンという用語は、ヒトフレームワーク領域および非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つ以上のCDRを含む免疫グロブリンを指す。CDRを付与する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と称され、フレームワークを付与するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%またはそれ以上同一であらねばならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、おそらくCDRを除き、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」はヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、ヒト化抗体は上記に定義された典型的なキメラ抗体を包含しないであろうが、それは、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるためである。
本明細書で用いるように、「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または、例えば、米国特許第5,939,598号でのKucherlapatiらによって説明されているように、内因性免疫グロブリンを発現しない、1つ以上のヒト免疫グロブリンのトランスジェニック動物から単離された抗体を含む。
「遺伝子改変抗体」という用語は、アミノ酸配列が天然抗体のアミノ酸配列と異なっている抗体をいう。抗体の作製における組換えDNA技術の関連のため、天然抗体に見出されるアミノ酸の配列に限定される必要はなく、抗体は所望の特性を得るために再設計されうる。可能な変異は多く、わずか1個または数個のアミノ酸の変更から、例えば、可変または定常領域の完全な再設計までに及ぶ。概して、定常領域の変更は、補体結合、膜との相互作用および他のエフェクター機能のような特性を改善または改変するために行われる。可変領域の変更は抗原結合特性を向上させるために行われる。
抗体に加え、免疫グロブリンは、例えば、単鎖またはFv,Fabおよび(Fab’)2ならびに二重特異性抗体、直鎖状抗体、多価または多特異性ハイブリッド抗体(上記のように、また、Lanzavecchiaら、Eur.J.Immunol.17,105(1987)に詳細に)を含む種々の他の形態にて、また、単鎖(例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879−5883(1988)およびBirdら、Science,242,423−426(1988)。これらは参照して本明細書に組み込まれる)にて存在しうる(Hoodら、“Immunology”,Benjamin,N.Y.、第二版(1984)ならびにHunkapillerおよびHood,Nature,323,15−16(1986)を全体的に参照されたい。これらは参照して本明細書に組み込まれる)。
本明細書で用いるように、「単鎖Fv」、「単鎖抗体」、“Fv”または“scFv”という用語は、重鎖および軽鎖由来の可変領域を含むが、わずか単一ポリペプチド鎖内にて定常領域を欠く抗体断片を指す。一般的に、単鎖抗体は、抗原結合を可能にしうる所望の構造を形成することを可能にするVH,VLドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。単鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore(編)、Springer−Verlag社、New York、269〜315頁(1994)でのPluckthunによって詳細に考察されている。単鎖抗体を作製する種々の方法が既知であり、米国特許第4,694,778号および第5,260,203号;国際特許出願公開第WO88/01649号;Bird(1988)Science242:423−442;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883;Wardら(1989)Nature334:54454;Skerraら(1988)Science242:1038−1041に述べられている方法が含まれ、それらの開示内容は目的に応じて参照して組み込まれる。具体的な実施形態では、単鎖抗体は二重特異性および/またはヒト化でもよい。
「Fab断片」は1本の軽鎖ならびに1本の重鎖のCH1および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。
「Fab’断片」は1本の軽鎖と、鎖間ジスルフィド結合が2本の重鎖間に形成され、F(ab’)2分子を形成できるように、CH1,CH2ドメイン間により多くの定常領域を含む1本の重鎖とを含む。
「F(ab’)2断片」は2本の軽鎖と、鎖間ジスルフィド結合が2本の重鎖間に形成されるように、CH1,CH2ドメイン間に定常領域の一部分を含む2本の重鎖とを含む。
「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片を指し、その断片は同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成せざるを得なく、2つの抗原結合部位を生成する。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許第404,097号;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)により十分に述べられている。
「直鎖状抗体」という用語は、Zapataら、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に述べられている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は二重特異性または単一特異性でよい。
本明細書で用いる「免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片」という用語は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の少なくとも可変ドメインを含むポリペプチド断片を指す。本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、リガンドに結合し、リガンドのその受容体への結合を阻止し、受容体へのリガンド結合から生じる生物学的応答を妨害し、またはその任意の組合せを行うことが可能である。好ましくは、本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片はIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する。
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて生成される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物またはファージクローンを含む単一クローン由来の抗体を指し、それが生成される方法をいうのではない。
本明細書で用いるように、「核酸」または「核酸分子」は、ポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成される断片を指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例えば、DNAおよびRNA)である単量体または天然ヌクレオチド(例えば、α−エナンチオマー形態の天然ヌクレオチド)の類似体または両方の組合せからなりうる。修飾ヌクレオチドは糖部分および/またはピリミジンもしくはプリン塩基部分の変化を有しうる。糖修飾は、例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミンおよびアジド基への置換を含み、あるいは糖はエーテルまたはエステルとして官能化されうる。さらに、糖部分全体は、立体的かつ電子的に類似の構造、例えば、アザ糖および炭素環状糖類似体に置換されうる。塩基部分における修飾例は、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジンあるいは他の周知の複素環置換を含む。核酸単量体はホスホジエステル結合またはそのような結合の類似体によって結合されうる。ホスホジエステル結合の類似体は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどを含む。「核酸分子」という用語は、ポリアミド骨格に結合した天然または修飾核酸塩基を含む、いわゆる「ペプチド核酸」も含む。核酸は一本鎖または二本鎖でよい。
「核酸分子の補体」という用語は、基準ヌクレオチド配列と比べて相補的ヌクレオチド配列および逆方向性を有する核酸分子を指す。例えば、配列5’ATGCACGGG3’は5’CCCGTGCAT3’に相補的である。
「縮重ヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチドをコードする基準核酸分子と比べて1つ以上の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列を示す。縮重コドンは異なるヌクレオチドのトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットは各々Aspをコードする)。
「構造遺伝子」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次に、特定のポリペプチドの特徴を示すアミノ酸の配列に翻訳される核酸分子を指す。
「単離核酸分子」は生物のゲノムDNAに組み込まれていない核酸分子である。例えば、成長因子をコードし、細胞のゲノムDNAから分離されたDNA分子は単離DNA分子である。単離核酸分子の別例は生物のゲノムに組み込まれていない化学合成核酸分子である。特定の種から単離された核酸分子は、その種由来の染色体の完全DNA分子より小さい。
「核酸分子構築物」は、天然には存在しない配置にて結合・並置された核酸のセグメントを含むように、ヒトの介入によって修飾された一本鎖または二本鎖核酸分子である。
「直鎖DNA」は5’および3’自由端を有する非環状DNA分子を示す。直鎖DNAは酵素消化または物理的破壊によってプラスミドのような閉環状DNA分子から調製されうる。
「相補DNA(cDNA)」は逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成される一本鎖DNA分子である。通常、逆転写の開始にはmRNAの部分に相補的なプライマーが用いられる。当業者は、そのような一本鎖DNA分子とその相補DNA鎖からなる二本鎖DNA分子を指すのにも“cDNA”という用語を用いる。“cDNA”という用語はRNA鋳型から合成されるcDNA分子のクローンも指す。
「プロモーター」は構造遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。通常、プロモーターは構造遺伝子の転写開始部位の近位、遺伝子の5’非コード領域に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列エレメントは、コンセンサスヌクレオチド配列を特徴とする場合が多い。これらのプロモーターエレメントは、RNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSE;McGeheeら、Mol.Endocrinol.7:551(1993))、環状AMP応答エレメント(CRE)、血清応答エレメント(SRE;Treisman、Seminars in Cancer Biol.1:47(1990))、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)ならびにCRE/ATF(O’Reillyら、J.Biol.Chem.267:19938(1992))、AP2(Yeら、J.Biol.Chem.269:25728(1994))、SP1、cAMP応答エレメント結合蛋白質(CREB;Loeken、Gene Expr.3:253(1993))および八量体因子(Watsonら(編)、Molecular Biology of the Gene、第四版(Benjamin/Cummings Publishing Company,Inc.1987)ならびにLemaigreおよびRousseau、Biochem.J.303:1(1994)を全体的に参照されたい)のような他の転写因子の結合部位を含む。プロモーターが誘導性プロモーターである場合、転写速度は誘導物質に応答して増加する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターである場合、転写速度は誘導物質によって調節されない。抑制性プロモーターも既知である。
「コアプロモーター」は、TATAボックスおよび転写開始を含む、プロモーター機能に不可欠なヌクレオチド配列を含む。この定義により、コアプロモーターは、活性を亢進させ、または組織特異的活性を付与しうる特定の配列の非存在下、検出可能な活性を有し得、または有し得ない。
「調節エレメント」は、コアプロモーターの活性を調節するヌクレオチド配列である。例えば、調節エレメントは、特定の細胞、組織またはオルガネラにおいて排他的または選択的に転写を可能にする細胞因子に結合するヌクレオチド配列を含みうる。通常、これらのタイプの調節エレメントは、「細胞特異的」、「組織特異的」または「オルガネラ特異的」態様にて発現する遺伝子と関連する。
「エンハンサー」は、転写開始部位に対するエンハンサーの距離または方向性にかかわらず、転写の効率を高めることができるタイプの調節エレメントである。
「異種DNA」は所与の宿主細胞内に天然に存在しないDNA分子またはDNA分子集団を指す。特定の宿主細胞に対して異種であるDNA分子は、その宿主DNAが非宿主DNA(すなわち、外因性DNA)と組み合わせられる限り、その宿主細胞種に由来するDNA(すなわち、内因性DNA)を含みうる。例えば、転写プロモーターを含む宿主DNAセグメントに機能的に結合したポリペプチドをコードする非宿主DNAセグメントを含むDNA分子は、異種DNA分子であるとみなされる。逆に、異種DNA分子は外因性プロモーターに機能的に結合した内因性遺伝子を含みうる。もう一つの例として、野生型細胞に由来する遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子がその野生型遺伝子を欠損する変異細胞に導入される場合、異種DNAであるとみなされる。
「ポリペプチド」は、天然または合成的に生成されようが、ペプチド結合によって結合されるアミノ酸残基の多量体である。約10未満のアミノ酸残基のポリペプチドは、一般的に「ペプチド」と称される。
「蛋白質」は1つ以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。蛋白質は炭水化物基のような非ペプチド成分も含みうる。炭水化物および他の非ペプチド置換基は、蛋白質が産生される細胞によってその蛋白質に付加され得、また、細胞のタイプにより異なる。蛋白質は本明細書でそのアミノ酸骨格構造の点から定義される。概して、炭水化物基のような置換基は明示されないが、それでもなお存在しうる。
非宿主DNA分子にコードされるペプチドまたはポリペプチドは、「異種」ペプチドまたはポリペプチドである。
「クローニングベクター」は、宿主細胞において自己複製する能力を有するプラスミド、コスミドまたはバクテリオファージのような核酸分子である。通常、クローニングベクターは、ベクターの不可欠な生物学的機能を喪失することなく、核酸分子の挿入を確定的に可能にする1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位ならびにクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択に用いるのに好適なマーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む。通常、マーカー遺伝子はテトラサイクリン抵抗性またはアンピシリン抵抗性を付与する遺伝子を含む。
「発現ベクター」は宿主細胞において発現する遺伝子をコードする核酸分子である。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、および転写ターミネーターを含む。通常、遺伝子発現はプロモーターの制御下に置かれ、そのような遺伝子はプロモーターに「機能的に結合」していると言われる。同様に、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合、調節エレメントおよびコアプロモーターは機能的に結合している。
「組換え宿主」はクローニングベクターまたは発現ベクターのような異種核酸分子を含む細胞である。本発明の場合、組換え宿主の一例は発現ベクターからIL−17RAを産生する細胞である。対照的に、IL−17RAはIL−17RAの「天然源」であり、かつ発現ベクターを欠く細胞によって産生されうる。
「組込み形質転換体」は異種DNAが細胞のゲノムDNAに組み込まれた組換え宿主細胞である。
「融合蛋白質」は、少なくとも2個の遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子によって発現されるハイブリッド蛋白質である。例えば、融合蛋白質は、アフィニティーマトリックスに結合するポリペプチドと融合したIL−17RAポリペプチドの少なくとも一部を含みうる。そのような融合蛋白質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて大量のIL−17RAを単離する手段を提供する。
「受容体」という用語は、「リガンド」と呼称される生物活性分子に結合する細胞結合型蛋白質を指す。この相互作用は細胞に対するリガンドの作用を媒介する。受容体は、細胞質膜または核膜結合;単量体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、βアドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL−3受容体、GM−CSF受容体、G−CSF受容体、エリスロポエチン受容体およびIL−6受容体)でありうる。膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメインと、シグナル伝達に典型的に関与する細胞内エフェクタードメインとを含む多ドメイン構造を特徴とする。一部の膜結合受容体では、細胞外リガンド結合ドメインと細胞内エフェクタードメインとは、完全な機能的受容体を含む別個のポリペプチドに位置する。
一般的に、リガンドの受容体への結合は、細胞内でのエフェクタードメインと他の分子との相互作用を生じさせる受容体の立体構造変化をもたらし、次に、これは細胞の代謝の変化を引き起こす。受容体−リガンド相互作用に関連することが多い代謝事象は、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、環状AMP産生の増加、細胞内カルシウム動員、膜脂質動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解およびリン脂質の加水分解を含む。
「分泌シグナル配列」という用語は、より大きいポリペプチドの成分として、より大きいポリペプチドを、それが合成される細胞の分泌経路を通って移動させるペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を示す。より大きいポリペプチドは分泌経路を通って移動する際、一般的に切断されて分泌ペプチドを除去する。
「単離ポリペプチド」は、本来ポリペプチドと関連する炭水化物、脂質または他の蛋白性不純物のような夾雑細胞成分を本質的に含まないポリペプチドである。通常、単離ポリペプチドの調製物は、高度に精製された形態、すなわち、少なくとも約80%純度、少なくとも約90%純度、少なくとも約95%純度、95%超の純度、例えば、96%、97%もしくは98%またはそれ以上の純度あるいは99%超の純度のポリペプチドを含む。特定の蛋白質調製物が単離ポリペプチドを含むことを示す一つの方法は、蛋白質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルのクーマシーブリリアントブルー染色後の単一バンドの出現によるものである。しかし、「単離された」という用語は、二量体またはグリコシル化もしくは誘導体化形態のような別の物理的形態の同じポリペプチドの存在を排除しない。
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、本明細書でポリペプチド内の位置を指すために用いられる。文脈上許容される場合、これらの用語は近接または相対的位置を示すため、ポリペプチドの特定の配列または部分に関連して用いられる。例えば、ポリペプチド内にて基準配列のカルボキシル末端側に位置する特定の配列は、基準配列のカルボキシル末端の近位に位置するが、必ずしも完全ポリペプチドのカルボキシル末端にあるわけではない。
「発現」という用語は遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現は構造遺伝子のmRNAへの転写およびmRNAの1つ以上のポリペプチドへの翻訳を含む。
本明細書で用いるように、「免疫調節物質」という用語は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、共刺激分子、造血因子等およびこれらの分子の合成類似体を含む。
「相補体/抗相補体対」という用語は、適切な条件下にて非共有結合した安定な対を形成する非同一部分を示す。例えば、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)は相補体/抗相補体対の原型メンバーである。他の例示的な相補体/抗相補体対は、受容体/リガンド対、抗体/抗原(またはハプテンもしくはエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対などを含む。相補体/抗相補体対のその後の解離が望ましい場合、好ましくは、相補体/抗相補体対は109M−1未満の結合親和性を有する。
本明細書で用いるように、「治療剤」は、治療に有用なコンジュゲートを生成するために抗体部分にコンジュゲートされる分子または原子である。治療剤の例には、薬剤、毒素、免疫調節物質、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤または色素ならびに放射性同位元素が含まれる。
「検出可能な標識」は、診断に有用な分子を生成するために抗体部分にコンジュゲートされうる分子または原子である。検出可能な標識の例には、キレート剤、光活性剤、放射性同位元素、蛍光剤、常磁性イオンまたは他のマーカー部分が含まれる。
「アフィニティータグ」という用語は、本明細書では、第二のポリペプチドの精製または検出に備えるため、または第二のポリペプチドの基質に対する結合部位を付与するため、第二のポリペプチドに結合されうるポリペプチドセグメントを示すために用いられる。原則的に、抗体または他の特異的結合物質が利用可能な任意のペプチドまたは蛋白質がアフィニティータグとして用いられうる。アフィニティータグは、ポリヒスチジントラクト、プロテインA(Nilssonら、EMBO J.4:1075(1985);Nilssonら、Methods Enzymol.198:3(1991))、グルタチオンSトランスフェラーゼ(SmithおよびJohnson、Gene 67:31(1988))、Glu−Gluアフィニティータグ(Grussenmeyerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7952(1985))、サブスタンスP、FLAGペプチド(Hoppら、Biotechnology 6:1204(1988))、ストレプトアビジン結合ペプチドまたは他の抗原性エピトープもしくは結合ドメインを含む。Fordら、Protein Expression and Purification 2:95(1991)を全体的に参照されたい。アフィニティータグをコードするDNA分子は市販業者から入手可能である(例えば、Pharmacia Biotech社、Piscataway,NJ)。
「標的ポリペプチド」または「標的ペプチド」は、少なくとも1つのエピトープを含み、腫瘍細胞または感染病原体抗原を保有する細胞のような標的細胞上に発現するアミノ酸配列である。T細胞は、標的ポリペプチドまたは標的ペプチドに対して主要組織適合遺伝子複合体分子によって提示されるペプチドエピトープを認識し、通常、標的細胞を溶解し、または標的細胞部位に他の免疫細胞を動員し、これにより、標的細胞を死滅させる。
真核生物では、RNAポリメラーゼIIが構造遺伝子の転写を触媒してmRNAを生成する。核酸分子はRNAポリメラーゼII鋳型を含むように設計され得、そこでRNA転写物は特定のmRNAの配列と相補的な配列を有する。RNA転写物は「アンチセンスRNA」と呼称され、アンチセンスRNAをコードする核酸分子は「アンチセンス遺伝子」と呼称される。アンチセンスRNA分子はmRNA分子に結合することができ、mRNA翻訳の阻害をもたらす。
「IL−17AまたはIL−17Fに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド」は、(a)IL−17AまたはIL−17F遺伝子の一部分と安定な三重鎖を形成することができ、あるいは(b)IL−17AまたはIL−17F遺伝子のmRNA転写物の一部分と安定な二重鎖を形成することができる配列を有するオリゴヌクレオチドである。
「リボザイム」は触媒中心を含む核酸分子である。その用語は、RNA酵素、自己スプライシングRNA、自己切断RNAおよびこれらの触媒機能を行う核酸分子を含む。リボザイムをコードする核酸分子は「リボザイム遺伝子」と呼称される。
「外部ガイド配列」は、内因性リボザイムであるRNアーゼPを細胞内mRNAの特定の種に方向づけ、RNアーゼPによるmRNAの切断をもたらす核酸分子である。外部ガイド配列をコードする核酸分子は「外部ガイド配列遺伝子」と呼称される。
「アレル変異体」という用語は、本明細書では、同じ染色体座を占める遺伝子の任意の2つ以上の別の形態を示すために用いられる。アレル変異は突然変異によって自然に生じ、集団内の表現型多型を生じさせうる。遺伝子突然変異はサイレントであり得(コードされるポリペプチドの変化なし)、または変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしうる。アレル変異体という用語は、本明細書で遺伝子のアレル変異体にコードされる蛋白質を示すためにも用いられる。
「オルソログ」という用語は、異種由来のポリペプチドまたは蛋白質の機能的対応物である、1つの種から得られるポリペプチドまたは蛋白質を示す。オルソログ間の配列差異は種分化の結果である。
「パラログ」は、生物によって作製される、明らかに異なるが構造的に関連する蛋白質である。パラログは遺伝子重複によって生じると考えられる。例えば、α−グロビン、β−グロビンおよびミオグロビンは互いのパラログである。
標準的分析法の不正確さにより、高分子の分子量および分子長は近似値であると理解される。そのような数値が「約」Xまたは「およそ」Xと表される場合、Xの表示数値は±10%の正確度であると理解される。
(C)IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体)
本発明の抗体はIL−17AおよびIL 17Fに特異的に結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体は単量体型のIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体はホモ二量体型のIL−17AまたはIL−17Fに結合する。更に他の実施形態では、本発明の抗体は多量体型のIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する(例えば、ヘテロ二量体型)。本発明の好ましい抗体はIL−17AおよびIL−17Fの生物学的活性を阻止する。
好ましい抗体および本発明の方法に用いるのに好適な抗体は、例えば、完全ヒト抗体、ヒト抗体相同体、ヒト化抗体相同体、キメラ抗体相同体、Fab,Fab’,F(ab’)2およびF(v)抗体断片、単鎖抗体ならびに抗体重鎖または軽鎖またはその混合物の単量体または二量体を含む。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。
本発明の抗体は、IgA,IgG,IgE,IgD,IgMタイプ(およびそれらのサブタイプ)を含む任意のアイソタイプの無傷免疫グロブリンを含みうる。抗体は、好ましくは無傷IgG、より好ましくはIgG1を含む。免疫グロブリンの軽鎖はカッパまたはラムダでよい。好ましくは、軽鎖はカッパである。
本発明の抗体は、抗原結合特異性を保持する無傷抗体の部分、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、F(v)断片、重鎖単量体または二量体、軽鎖単量体または二量体、1本の重鎖および1本の軽鎖からなる二量体などを含む。したがって、上述の抗体由来の抗原結合断片および完全長二量体もしくは三量体ポリペプチドはそれら自体有用である。
齧歯動物モノクローナル抗体(MAb)のヒト治療剤としての直接使用は、ヒト抗齧歯動物抗体(「HARA」)(例えば、ヒト抗マウス抗体(「HAMA」))応答をもたらし、それは、齧歯動物由来抗体で処置された患者の有意数の患者において生じた(Khazaeliら(1994)Immunother.15:42−52)。より少ないマウスアミノ酸配列を含むキメラ抗体は、ヒトにおいて免疫応答を誘導する問題を回避すると考えられる。
HARA応答の問題を回避するための抗体の改良は「ヒト化抗体」の開発に至った。ヒト化抗体は組換えDNA技術によって生成され、そこでは、抗原結合に必要ではないヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖の少なくとも1個のアミノ酸が、非ヒト哺乳動物免疫グロブリン軽鎖または重鎖由来の対応するアミノ酸の代わりに置換されている。例えば、免疫グロブリンがマウスモノクローナル抗体である場合、抗原結合に必要ではない少なくとも1個のアミノ酸が、その位置において対応するヒト抗体に存在するアミノ酸を用いて置換される。特定の操作理論に制約されることを所望せずに、モノクローナル抗体の「ヒト化」は異質免疫グロブリン分子に対するヒト免疫学的反応性を抑制すると考えられる。
非限定例として、相補性決定領域(CDR)移植を行う方法は、標的抗原(例えば、IL−17AおよびIL−17F)に結合する対象抗体のマウス重鎖・軽鎖を配列決定し、CDR DNA配列を遺伝子操作し、部位特異的突然変異誘発により、これらのアミノ酸配列を対応するヒトV領域に付与することによって行われうる。所望のアイソタイプのヒト定常領域遺伝子セグメントが付加され、「ヒト化」重鎖・軽鎖遺伝子が哺乳動物細胞に同時発現して可溶性ヒト化抗体を産生する。典型的な発現細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。キメラ抗体を作製する好適な方法は、例えば、Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmann(1988)Nature 332:323−327;Queenら(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:10029;およびOrlandiら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833に見出されうる。
Queenら(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:10029−10033およびWO90/07861では、ヒト化抗体の調製について述べている。最適な蛋白質配列相同性のためにヒトおよびマウス可変フレームワーク領域が選択された。マウス可変領域の三次構造がコンピュータモデル化され、相同ヒトフレームワークに重ねられてアミノ酸残基のマウスCDRとの最適相互作用を示した。これにより、抗原に対する向上した結合親和性(通常、それはCDR移植キメラ抗体を作製すると同時に低下する)を有する抗体の開発に至った。ヒト化抗体を作製する別の手法が当該技術分野において公知であり、例えば、Tempest(1991)Biotechnology 9:266−271に述べられている。
本発明の抗体は、単独で、または細胞傷害性薬物との免疫複合体として用いられうる。一部の実施形態では、該薬物は化学療法剤である。一部の実施形態では、該薬物は、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨード−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨード−123、ヨード−125、臭素−77、インジウム−111およびホウ素−10もしくはアクチニドのような核分裂性核種を含むがこれに限定されない放射性同位元素である。他の実施形態では、該薬物は、リシン、改変PseudomonasエンテロトキシンA、カリチアマイシン、アドリアマイシン、5−フルオロウラシルなどを含むがこれに限定されない毒素または細胞傷害性薬物である。抗体および抗体断片のそのような薬物へのコンジュゲーションの方法は文献において既知である。
本発明の抗体は、例えば、共有結合が、抗体がそのエピトープに結合することを阻止しないように、任意のタイプの分子の抗体への共有結合によって修飾される誘導体を含む。好適な誘導体の例には、フコシル化抗体および断片、グリコシル化抗体および断片、アセチル化抗体および断片、ペグ化抗体および断片、リン酸化抗体および断片ならびにアミド化抗体および断片が含まれるが、これに限定されない。本発明の抗体およびその誘導体自体が、既知の保護/ブロッキング基、蛋白質切断、細胞リガンドまたは他の蛋白質への結合などによって誘導体化されうる。本発明の一部の実施形態では、抗体の少なくとも1本の重鎖がフコシル化される。一部の実施形態では、フコシル化はN結合型である。一部の好ましい実施形態では、抗体の少なくとも1本の重鎖はフコシル化N結合型糖鎖を含む。
本発明の抗体は、本発明の抗体の生物学的特性(例えば、IL−17Aおよび/またはIL−17Fのそれぞれの受容体への結合を阻止、IL−17AおよびIL−17Fの生物学的活性を阻止、結合親和性)を保持する、単一もしくは多重アミノ酸置換、欠失、付加または代替を有する変異体を含む。当業者は、単一もしくは多重アミノ酸置換、欠失、付加または代替を有する変異体を生成することができる。これらの変異体は、特に、(a)1個以上のアミノ酸残基が保存もしくは非保存アミノ酸に置換された変異体、(b)1個以上のアミノ酸がポリペプチドに付加され、もしくはこれから欠失された変異体、(c)1個以上のアミノ酸が置換基を含む変異体および(d)ポリペプチドが、例えば、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分などのような、ポリペプチドに有用な特性を付与しうる融合パートナー、蛋白質標識もしくは他の化学的部分のような別のペプチドもしくはポリペプチドと融合した変異体を含みうる。本発明の抗体は、保存または非保存位置において1つの種由来のアミノ酸残基が別の種における対応する残基の代わりに置換される変異体を含みうる。別の実施形態では、非保存位置におけるアミノ酸残基が保存または非保存残基に置換される。遺伝子的(抑制、欠失、突然変異)、化学的および酵素的手法を含む、これらの変異体を得る手法は当業者には公知である。本発明の抗体は抗体断片も含む。「断片」とは、好ましくは少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約50、より好ましくは少なくとも約60、より好ましくは少なくとも約70、より好ましくは少なくとも約80、より好ましくは少なくとも約90、より好ましくは少なくとも約100アミノ酸長であって、完全長配列の何らかの生物学的活性または免疫学的活性、例えば、IL−17Aおよび/またはIL−17Fのそれぞれの受容体への結合を阻止し、IL−17AおよびIL−17Fの生物学的活性を阻止する能力、結合親和性を保持するポリペプチド配列を指す。
本発明は、卵巣、乳房、腎臓、結腸直腸、肺、子宮内膜または脳癌患者の末梢血単核細胞由来のような完全ヒト抗体も包含する。そのような細胞は、例えば、IL−17AおよびIL−17Fに対する完全ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を形成するため、骨髄腫細胞と融合されうる。
本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する二重特異性抗体も包含する。
本発明の抗体は、例えば、インビボ毒性試験にて示されるように非毒性であることが好ましい。
本発明の抗体およびその誘導体は、1×10−2未満の解離定数(Kd)を含む結合親和性を有する。一部の実施形態では、Kdは1×10−3未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−4未満である。一部の実施形態では、Kdは1×10−5未満である。更に他の実施形態では、Kdは1×10−6未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−7未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−8未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−9未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−10未満である。更に他の実施形態では、Kdは1×10−11未満である。一部の実施形態では、Kdは1×10−12未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−13未満である。他の実施形態では、Kdは1×10−14未満である。更に他の実施形態では、Kdは1×10−15未満である。
(D)核酸)
本発明は、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸も含む。本発明の核酸は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の本発明の核酸との相同性を有する核酸を含む。特定の配列に言及する場合、「類似性パーセント」、「同一性パーセント」および「相同性パーセント」という用語は、University of Wisconsin GCGソフトウェアプログラムにおいて示されるように用いられる。本発明の核酸は相補的核酸も含む。一部の例では、アラインメントされると、配列は完全に相補的(ミスマッチなし)である。他の例では、配列において最大約20%のミスマッチがありうる。本発明の一部の実施形態では、本発明の抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸が提供される。
本発明の核酸は、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC,YAC)またはウイルスのようなベクターにクローニングすることができ、結合配列またはエレメントの複製を引き起こすように、その中に別の遺伝子配列またはエレメント(DNAまたはRNA)が挿入されうる。一部の実施形態では、発現ベクターは、構成的に活性なプロモーターセグメント(例えば、限定されないが、CMV、SV40、伸長因子またはLTR配列)またはステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen社)のような誘導性プロモーター配列を含み、核酸の発現が調節されうる。本発明の発現ベクターは、制御配列、例えば、内部リボソーム侵入部位を更に含みうる。発現ベクターは、例えば、トランスフェクションによって細胞内に導入されうる。
(E)IL−17AおよびIL−17Fに対する抗体を生成する方法)
本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する方法も提供する。本発明の抗体はインビボまたはインビトロにて生成されうる。IL−17AおよびIL−17Fに対する抗体を生成する1つの方策は、IL−17AおよびIL−17Fで動物を免疫化することを含む。一部の実施形態では、動物は単量体または多量体型のFR IL−17AおよびIL−17Fで免疫化される。そのように免疫化された動物は、IL−17AおよびIL−17Fに対する抗体ならびにIL−17AおよびIL−17Fに対する交差反応性抗体を産生する。ハイブリドーマ法(KohlerおよびMilstein、(1975)Nature 256:495−497を参照されたい);トリオーマ法;ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら(1983)Immunol.Today 4:72を参照されたい)およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ法(Coleら、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,1985、77〜96頁を参照されたい)を含むがこれに限定されないモノクローナル抗体を生成するための標準法が公知である。
IL−17AおよびIL−17Fは、蛋白質を単離・精製するための種々の周知の手法を用いて細胞または組換え系から精製されうる。例えば、限定するためではないが、IL−17AおよびIL−17Fは、蛋白質をSDS−PAGEゲル上に流し、蛋白質を膜にブロットすることにより、蛋白質の見かけ上の分子量に基づいて単離されうる。その後、いずれかの蛋白質に対応する適切なサイズのバンドが、直接に、または、まず、膜から蛋白質を抽出もしくは溶出することにより、膜から切断され、動物における免疫原として用いられうる。代替例として、蛋白質は、サイズ排除クロマトグラフィー単独により、または他の単離・精製手段を併用して単離されうる。
本発明は、ホモ二量体、ヘテロ二量体および/または多量体型のIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する方法も提供する。これらの異なる形態は、蛋白質を単離・精製するための種々の周知の手法を用いて細胞または組換え系から精製されうる。例えば、限定するためではないが、IL−17AおよびIL−17Fは、蛋白質をSDS−PAGEゲル上に流し、蛋白質を膜にブロットすることにより、蛋白質の見かけ上の分子量に基づいて単離されうる。その後、各々に対応する適切なサイズのバンドが、直接に、または、まず、膜から蛋白質を抽出もしくは溶出することにより、膜から切断され、動物における免疫原として用いられうる。代替例として、蛋白質は、サイズ排除クロマトグラフィー単独により、または他の単離・精製手段を併用して単離されうる。
他の精製手段は、Zola,Monoclonal Antibodies:Preparation And Use Of Monoclonal Antibodies And Engineered Antibody Derivatives(Basics:From Background To Bench)Springer−Verlag Ltd.,New York,2000;Basic Methods In Antibody Production And Characterization、第11章、“Antibody Purification Methods”,HowardおよびBethell(編)、CRC Press社、2000;Antibody Engineering(Springer Lab Manual.)、KontermannおよびDubel(編)、Springer−Verlag社、2001のような標準参考テキストにて得られる。
インビボ抗体生成では、一般的に、動物はIL−17AもしくはIL−17Fまたはいずれかの免疫原性部分(例えば、上述の共有エピトープ)で免疫化される。一般的に、抗原は免疫原性を促進するアジュバントと組み合わせられる。アジュバントは免疫化に用いられる種に従って異なる。アジュバント例には、Freundの完全アジュバント(“FCA”)、Freundの不完全アジュバント(“FIA”)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン)、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン(“KLH”)、ジニトロフェノール(“DNP”)ならびに潜在的に有用なヒト用アジュバント、例えば、Calmette−Guerin桿菌(“BCG”)およびコリネバクテリウムパルブムが含まれるが、これに限定されない。そのようなアジュバントは当該技術分野においても公知である。免疫化は周知の手順を用いて達成される。用量および免疫化レジメンは、免疫化される哺乳動物種、その免疫状態、体重および/または算出表面積などに依存する。通常、血清が免疫化動物からサンプリングされ、例えば、下述のような適切なスクリーニングアッセイを用いて抗IL−17AおよびIL−17F抗体についてアッセイされる。
ヒト化抗体を生成する一般的な方法は、MAb(齧歯動物宿主を免疫化することによって生成)由来のCDR配列をヒトIg骨格に移植し、そのキメラ遺伝子をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションし、次に、これはCHO細胞によって分泌される機能的Abを産生する(Shields,R.L.ら(1995)Anti−IgE monoclonal antibodies that inhibit allergen−specific histamine release.Int Arch.Allergy Immunol.107:412−413)。本出願内で述べる方法は、Ig遺伝子または、齧歯動物細胞系、植物、酵母および原核生物のような宿主細胞内にトランスフェクションされたキメラIg内に遺伝子変化を生じさせることにも有用である(Frigerio Lら(2000)Assembly,secretion,and vacuolar delivery of a hybrid immunoglobulin in plants.Plant Physiol.123:1483−1494)。
免疫化動物由来の脾細胞は、脾細胞(抗体産生B細胞を含む)を骨髄腫系のような不死細胞系と融合させることによって不死化されうる。通常、骨髄腫細胞系は脾細胞ドナーと同じ種に由来する。一実施形態では、不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培地(「HAT培地」)に対して感受性を示す。一部の実施形態では、骨髄腫細胞はEpstein−Barrウイルス(EVB)感染に対して陰性である。好ましい実施形態では、骨髄腫細胞は、HAT感受性、EVB陰性およびIg発現陰性である。任意好適な骨髄腫が用いられうる。マウスハイブリドーマはマウス骨髄腫細胞系を用いて作製されうる(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1,P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14骨髄腫系)。これらの骨髄腫系はATCCから入手可能である。これらの骨髄腫細胞は、ドナー脾細胞ポリエチレングリコール(“PEG”)、好ましくは1500分子量ポリエチレングリコール(“PEG1500”)に融合される。その融合から生じるハイブリドーマ細胞は、未融合および非生産的融合骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地において選択される。未融合脾細胞は培養物中にて短期間のうちに死滅する。一部の実施形態では、骨髄腫細胞は免疫グロブリン遺伝子を発現しない。
下述のようなスクリーニングアッセイによって検出される、所望の抗体を産生するハイブリドーマは、培養物中または動物において抗体を産生するために用いられうる。例えば、ハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ細胞がモノクローナル抗体を培地中に分泌することを可能にするのに十分な条件下および時間、栄養培地において培養されうる。これらの手法および培地は当業者には周知である。あるいは、ハイブリドーマ細胞は未免疫動物の腹膜に注入されうる。該細胞は腹腔にて増殖し、腹水として蓄積する抗体を分泌する。腹水はモノクローナル抗体の豊富な供給源としてシリンジを用いて腹腔から引き抜かれうる。
IL−17AおよびIL−17Fに対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマは、上述と同様の方法を用いて生成され、Budapest条約の下でAmerican Type Tissue Culture Collection(ATCC;Manassas VA)特許寄託機関に原寄託として寄託され、次のATCCアクセッション番号を付与された:クローン339.15.5.3(ATCC特許寄託物名称PTA−7987,2006年11月7日に寄託);クローン339.15.3.6(ATCC特許寄託物名称PTA−7988,2006年11月7日に寄託);およびクローン339.15.6.16(ATCC特許寄託物名称PTA−7989,2006年11月7日に寄託。
ヒト抗体を生成する別の非限定的方法が米国特許第5,789,650号に述べられており、これは、それ自体の内因性免疫グロブリン遺伝子が不活化された、別の種(例えば、ヒト)の抗体を産生するトランスジェニック哺乳動物について述べている。異種抗体の遺伝子はヒト免疫グロブリン遺伝子にコードされる。非再構成免疫グロブリンコード領域を含む導入遺伝子が非ヒト動物に導入される。その結果生じるトランスジェニック動物は、トランスジェニック免疫グロブリン配列を機能的に再構成し、かつヒト免疫グロブリン遺伝子にコードされる種々のアイソタイプの抗体レパートリーを産生することができる。トランスジェニック動物由来のB細胞は、その後、不死化細胞系(例えば、骨髄腫細胞)との融合を含む任意の種々の方法によって不死化される。
本発明の抗体は、当該技術分野において公知の様々な手法を用いてインビトロにて調製してもよい。例えば、限定することを目的としないが、IL−17AおよびIL−17Fに対する完全ヒトモノクローナル抗体が、インビトロにて予め刺激されたヒト脾細胞を用いて調製されうる(Boernerら(1991)J.Immunol.147:86−95)。
あるいは、例えば、本発明の抗体は、「レパートリークローニング」によって調製されうる(Perssonら(1991)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:2432−2436;ならびにHuangおよびStollar(1991)J.Immunol.Methods 141:227−236)。さらに、米国特許第5,798,230号では、Epstein−Barrウイルス核抗原2(EBNA2)を発現するEpstein−Barrウイルスによる感染によって不死化されるヒトB抗体産生B細胞由来のヒトモノクローナル抗体の調製について述べている。次に、不死化に必要なEBNA2は不活化され、抗体価の上昇をもたらす。
別の実施形態では、本発明の抗体は、末梢血単核細胞(“PBMC”)のインビトロ免疫化によって形成される。これは、当該技術分野において公知の任意の手段、例えば、文献に述べられている方法を用いて達成されうる(Zafiropoulosら(1997)J.Immunological Methods 200:181−190)。
具体的な実施形態では、IL−17AおよびIL−17Fに結合する二重特異性および単鎖抗体が作製される。本発明の一つの方法は二重特異性A/F抗体を生成する方法である。該方法は、IL−17Aに結合するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を、IL−17Fに結合するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞と融合させ、これにより、二重特異性A/Fモノクローナル抗体を分泌するハイブリッドハイブリドーマを調製するステップを含む。一実施形態では、該方法は、アンタゴニスト(またはアゴニスト)IL−17A MAbを分泌するハイブリドーマ細胞を、アンタゴニスト(またはアゴニスト)IL−17F MAbを分泌するハイブリドーマ細胞と融合させるステップを含む。そのような融合を行い、所望のハイブリッドハイブリドーマを単離するための従来の手法には、本明細書の別の箇所で述べる手法および以下の実施例において例示される手法が含まれる。
米国特許第6,060,285号は、第一の特異性を有する抗体の少なくとも軽鎖および重鎖可変部の遺伝子が、第二の特異性を有する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞にトランスフェクションされる、二重特異性抗体の生成のためのプロセスを開示している。トランスフェクションされたハイブリドーマ細胞が培養されると、二重特異性抗体が産生され、当該技術分野において公知の種々の手段によって単離されうる。
他の研究者らは、2つの異なる抗原に対する特異性を有する抗原結合分子を調製するため、抗体断片の化学的結合を用いている(Brennanら、Science 229:81 1985;Glennieら、J.Immunol.139:2367,1987)。米国特許第6,010,902号においても、例えば、GMBS(マレイミドブトリルオキシ・スクシンイミド(maleimidobutryloxy succinimide))またはSPDP(N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)のようなヘテロ二機能性架橋試薬の使用により、二重特異性抗体を調製することができる当該技術分野において公知の手法について述べている(例えば、Hardy,“Purification And Coupling Of Fluorescent Proteins For Use In Flow Cytometry”,Handbook Of Experimental Immunology、第四版、第一巻、Immunochemistry,Weirら(編)、31.4〜31.12頁、1986を参照されたい)。
組換えDNA技術によって抗体を生成する能力は、二重特異性抗体の生成を容易にしている。Kostelnyらは細胞表面分子CD3およびインターロイキン−2受容体に結合することができる二重特異性抗体を生成するため、fosおよびjun蛋白質(選択的にヘテロ二量体を形成する)由来のロイシンジッパー部分を用いた(J.Immunol.148:1547;1992)。
単鎖抗体は、アミノ酸架橋(短いペプチドリンカー)を介して重鎖および軽鎖可変領域(Fv領域)断片を結合することによって形成され得、単一ポリペプチド鎖を生じさせる。そのような単鎖Fv(scFv)は、2つの可変領域ポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることによって調製されている。その結果生じる抗体断片は、2つの可変ドメイン間の可動性リンカーの長さのような因子に依存し、二量体またはそれ以上のオリゴマーを形成することができる(Korttら、Protein Engineering 10:423,1997)。特定の実施形態では、2つ以上のscFvが化学架橋剤の使用によって結合される。
単鎖抗体の生成のために開発された技法は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する本発明の単鎖抗体を生成するように適合されうる。そのような技法には、米国特許第4,946,778号;Bird(Science 242:423,1988);Hustonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879,1988);およびWardら(Nature 334:544,1989)に述べられているものが含まれる。所望の単鎖抗体が特定されると(例えば、ファージ提示ライブラリーから)、当業者は単鎖抗体をコードするDNAを更に操作し、Fc領域を有する二重特異性抗体を含む二重特異性抗体を生成することができる。
IL−17AおよびIL−17Fに対する単鎖抗体は、いずれかの順序で鎖状体化されうる(すなわち、抗IL−17A−抗IL−17Fまたは抗IL−17F−抗IL−17A)。特定の実施形態では、二重特異性A/F抗体を調製するための出発物質は、IL−17Aに対するアンタゴニスト(もしくはアゴニスト)単鎖抗体およびIL−17Fに対するアンタゴニスト(もしくはアゴニスト)単鎖抗体を含む。
米国特許第5,582,996号は、二重特異性抗体の生成においてヘテロ二量体形成を容易にするため、相補的双方向性ドメイン(例えば、ロイシンジッパー部分または他の鍵・鍵穴双方向性ドメイン構造)の使用を開示している。相補的双方向性ドメインは、Fab断片と重鎖の別の部分(すなわち、重鎖のCH1またはCH2領域)との間に挿入されうる。選択的にヘテロ二量体化する2つの異なるFab断片および相補的双方向性ドメインの使用は、二重特異性抗体分子を生じさせる。相補的双方向性ドメイン間のジスルフィド結合を可能にし、その結果生じる二重特異性抗体を安定化するため、相補的双方向性ドメインにシステイン残基が導入されうる。
米国特許第5,959,083号に述べられているように、四価二重特異性分子は、抗体のF(ab’)2断片の重鎖をコードするDNAの、第二のF(ab’)2分子(CH1ドメインはCH3ドメインに置換されている)の重鎖をコードするDNAまたは抗体の単鎖Fv断片をコードするDNAとの融合によって調製することができる。対応する軽鎖の遺伝子と共に、哺乳動物細胞における、結果として得られる融合遺伝子の発現は、選択抗原に対する特異性を有する四価二重特異性分子を生じさせる。
二重特異性抗体は米国特許第5,807,706号(参照して本明細書に組み込まれる)に記載されているように生成することもできる。概して、その方法は、第一のポリペプチドにおける突起部および第二のポリペプチドにおける対応する空洞部、すなわち、ポリペプチド界面を導入するステップを含む。突起部および空洞部はヘテロ多量体形成を促進し、かつホモ多量体形成を妨害するように配置される。突起部は、小側鎖を有するアミノ酸をより大きい側鎖を有するアミノ酸に置換することによって生成される。空洞部は逆の手法、すなわち、比較的大きい側鎖を有するアミノ酸をより小さい側鎖を有するアミノ酸に置換することによって生成される。
突起部および空洞部は、ポリペプチドにおいてアミノ酸置換を行う従来の方法によって生成することができる。例えば、ポリペプチドをコードする核酸は従来のインビトロ突然変異誘発法によって改変されうる。あるいは、所望のアミノ酸置換を組み込むポリペプチドはペプチド合成によって調製されうる。置換に選択されるアミノ酸は第一および第二のポリペプチド間の界面に位置する。
(F)抗体特異性のスクリーニング)
IL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する抗体のスクリーニングは、マイクロタイタープレートがIL−17AおよびIL−17Fで被覆された酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて達成されうる。一部の実施形態では、陽性反応を示すクローン由来のIL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体は、他の形態のIL−17AおよびIL−17Fあるいは他のIL−17ファミリーメンバーで被覆されたマイクロタイタープレートを用いたELISAベースのアッセイにて、反応性に関して更にスクリーニングされうる。別の形態またはファミリーメンバーに反応を示す抗体を産生するクローンは除去され、IL−17AおよびIL−17Fに反応を示す抗体を産生するクローンは、更なる増殖および発現のために選択されうる。IL−17AおよびIL−17Fに対する抗体の反応性の確認は、例えば、卵巣、乳房、腎臓、結腸直腸、肺、子宮内膜もしくは脳癌細胞由来の蛋白質ならびに精製FR−αおよび他の葉酸受容体アイソフォームが、SDS−PAGEゲル上に流され、次に、膜上にブロットされるウエスタンブロットアッセイを用いて達成されうる。次に、膜は推定抗FR−α抗体でプロービングされうる。別のファミリーメンバーではなく、IL−17AおよびIL−17Fとの反応性は、IL−17AおよびIL−17Fに対する反応性の特異性を裏付ける。
一部の実施形態では、本発明の抗体の結合親和性が定量される。本発明の抗体は、好ましくは少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのIL−17AおよびIL−17Fの結合親和性を有する。本発明の好ましい抗体産生細胞は、少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのIL−17AおよびIL−17Fの結合親和性を有する抗体のみを実質的に産生する。本発明の好ましい組成物は、少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのIL−17AおよびIL−17Fの結合親和性を有する抗体のみを実質的に含む。
好ましくは、本発明の抗体は、IL−17RAおよびIL−17RC保有細胞において抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する。ADCCアッセイは当該技術分野において公知である。
(G)抗IL−17AおよびIL−17F抗体産生細胞)
本発明の抗体産生細胞は、任意の既知の昆虫発現細胞系、例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞を含む。発現細胞系は、酵母細胞系、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)および分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)細胞でもよい。発現細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ハイブリドーマ細胞(例えば、NS0細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎細胞、ヒト胎児由来腎系293、正常イヌ腎細胞系、正常ネコ腎細胞系、サル腎細胞、アフリカミドリザル腎細胞、COS細胞ならびに非腫瘍原性マウス筋芽G8細胞、線維芽細胞系、骨髄腫細胞系、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌細胞、バッファーローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳癌細胞、TRI細胞、MRC5細胞およびFS4細胞でもよい。
一部の好ましい実施形態では、本発明の抗体産生細胞はIL−17AおよびIL−17Fに特異的に結合する抗体を産生する。好ましくは、該細胞はIL−17AおよびIL−17F結合競合物を実質的に含まない。好ましい実施形態では、抗体産生細胞は、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約1重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満、最も好ましくは0重量%のIL−17AおよびIL−17F結合競合物を含む。一部の好ましい実施形態では、抗体産生細胞によって産生される抗体は、IL−17AおよびIL−17F競合物を実質的に含まない。好ましい実施形態では、抗体産生細胞によって産生される抗体は、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約1重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満、最も好ましくは0重量%のIL−17AおよびIL−17F結合競合物を含む。本発明の好ましい抗体産生細胞は、少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのIL−17AおよびIL−17Fの結合親和性を有する抗体のみを実質的に産生する。
一部の実施形態では、抗体産生細胞は、Budapest条約の下でAmerican Type Tissue Culture Collection(ATCC;Manassas VA)特許寄託機関に原寄託として寄託され、次のATCCアクセッション番号:クローン339.15.5.3(ATCC特許寄託物名称PTA−7987,2006年11月7日に寄託);クローン339.15.3.6(ATCC特許寄託物名称PTA−7988,2006年11月7日に寄託);およびクローン339.15.6.16(ATCC特許寄託物名称PTA−7989,2006年11月7日に寄託)を付与された、IL−17AおよびIL−17Fに対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマである。
(H)抗体精製)
抗体精製法は当該技術分野において公知である。本発明の一部の実施形態では、抗体精製法は、濾過、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィーおよび濃縮を含む。好ましくは、濾過ステップは、限外濾過、より好ましくは限外濾過およびダイアフィルトレーションを含む。濾過は、好ましくは少なくとも約5〜50回、より好ましくは10〜30回、最も好ましくは14〜27回行われる。アフィニティーカラムクロマトグラフィーは、例えば、PROSEPアフィニティークロマトグラフィー(Millipore,Billerica,Mass.)を用いて行われうる。好ましい実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーステップはPROSEP−VAカラムクロマトグラフィーを含む。溶出物は洗浄溶剤にて洗浄されうる。カチオン交換クロマトグラフィーは、例えば、SP−セファロースカチオン交換クロマトグラフィーを含みうる。アニオン交換クロマトグラフィーは、例えば、限定されないが、Q−セファロース高速アニオン交換を含みうる。アニオン交換ステップは好ましくは非結合性であり、これにより、DNAおよびBSAを含む夾雑物の除去を可能にする。好ましくは、抗体産物は、例えば、Pall DV 20ナノフィルターを用いてナノ濾過される。抗体産物は、例えば、限外濾過およびダイアフィルトレーションを用いて濃縮されうる。該方法は凝集物を除去するためのサイズ排除クロマトグラフィーのステップを更に含みうる。
(I)交差反応性IL−17AおよびIL−17F抗体の治療用途)
IL−17AおよびIL−17Fに対して交差反応性の抗体は、IL−17AおよびIL−17Fに結合し(単独または共に)、したがって、IL−17AのIL−17RAもしくはIL−17RCとの結合およびIL−17FのIL−17RCとの結合あるいはそれらが結合しうる他の任意の受容体、特にIL−17ファミリーメンバーとの結合を阻止することによって免疫系を調節するために用いられうる。本発明の抗体も、IL−17Aの内因性IL−17RAおよび/またはIL−17RC受容体との結合ならびにIL−17Fの内因性IL−17RC受容体との結合を阻害することによって免疫系を調節するために用いられうる。本発明の抗体は、過剰なIL−17Aおよび/またはIL−17Fを産生する患者を処置するためにも用いられうる。好適な患者はヒトのような哺乳動物を含む。例えば、本発明の抗体は、炎症および炎症性疾患、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、内毒血症、炎症性腸疾患(IBD)、IBS、大腸炎、喘息、同種移植片拒絶、免疫介在性腎疾患、肝胆道疾患、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、腫瘍増殖の促進または変性関節疾患ならびに本明細書で開示される他の炎症状態の処置において、IL−17AおよびIL−17F(単独または共に)の結合、阻止、阻害、低減、拮抗または中和に有用である。
好ましい実施形態の範囲内にて、本発明の抗体は、インビボにてIL−17AおよびIL−17F(個々または共に)に結合し、これを阻止、阻害、低減、拮抗、または中和する。
したがって、本発明の特定の実施形態は、炎症性・免疫疾患または症状、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎、炎症性皮膚症状、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、憩室症、喘息、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、膵癌、膵炎、グレーブス病、結腸・腸癌、自己免疫疾患、敗血症、臓器もしくは骨髄移植;内毒血症、外傷、手術もしくは感染に起因する炎症;アミロイドーシス;脾腫;移植片対宿主病;および炎症の抑制、免疫抑制、造血、免疫、炎症もしくはリンパ系細胞、マクロファージ、T細胞(Th1およびTh2を含む)の増殖の低減、病原体もしくは抗原に対する免疫応答の抑制の場合またはIL−17F,IL−17Aサイトカインの阻害が所望される他の場合における本発明の抗体のアンタゴニストとしての使用に関する。
さらに、本発明の抗体は以下のことを行うのに有用である。
(1)急性炎症、外傷、組織損傷、手術、敗血症もしくは感染の結果としての炎症および慢性炎症性疾患、例えば、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、IBS、慢性大腸炎、脾腫、関節リウマチ、再発性急性炎症性エピソード(例えば、結核)の処置ならびにアミロイドーシスおよびアテローム性動脈硬化症、キャッスルマン病、喘息および急性期応答の誘導と関連する他の疾患の処置において、IL−17AおよびIL−17Fを介するシグナル伝達を阻止、阻害、低減、拮抗または中和する。
(2)受容体(例えば、IL−17RAおよびIL−17RC)を介する免疫細胞(例えば、リンパ球、単球、白血球)におけるシグナル伝達を阻止または阻害するため、IDDM、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、関節リウマチ、IBSおよびIBDのような自己免疫疾患の処置において、IL−17AまたはIL−17Fを介するシグナル伝達を阻止、阻害、低減、拮抗または中和する。本発明の抗体を用いてIL−17RAおよびIL−17RCを介するシグナル伝達を阻止、阻害、低減または拮抗することは、膵臓、腎臓、下垂体および神経細胞の疾患にも役立ちうる。IDDM、NIDDM、膵炎および膵癌は恩恵を受けうる。糸球体硬化症、膜性ニューロパシー、アミロイドーシス(これは他の組織の中でも腎臓にも影響を及ぼす)、腎動脈硬化症、様々な原因の糸球体腎炎、腎臓の線維増殖性疾患のような腎症ならびにSLE、IDDM、II型糖尿病(NIDDM)、腎腫瘍および他の疾患と関連する腎機能障害を処置するのに、IL−17AおよびIL−17Fに対するMabも有用でありうる。
(3)IDDM、MS、SLE、重症筋無力症、関節リウマチ、IBSおよびIBDのような自己免疫疾患の処置において、IL−17AまたはIL−17F受容体を介するシグナル伝達を刺激、増強、増大または開始する。抗IL−17AおよびIL−17F中和・モノクローナル抗体は、リンパ球または他の免疫細胞に分化し、増殖を変更し、または自己免疫を改善するサイトカインもしくは表面蛋白質の産生を変更するようにシグナルを送りうる。特に、別のパターンのサイトカイン分泌に対するTヘルパー細胞応答の調節は、自己免疫を逸脱させて疾患を改善しうる(Smith JAら、J.Immunol.160:4841−4849,1998)。同様に、喘息、アレルギーおよびアトピー性疾患に関与する免疫細胞にシグナルを送り、これを激減・逸脱させるためにアゴニスト抗体が用いられうる。IL−17RAおよびIL−17RCを介するシグナル伝達は、膵臓、腎臓、下垂体および神経細胞の疾患にも役立ちうる。IDDM、NIDDM、膵炎および膵癌は恩恵を受けうる。
本明細書で述べる抗体は、上述のように、自己免疫疾患、アトピー性疾患、NIDDM、膵炎および腎機能障害の処置において、単独または共にIL−17FおよびIL−17A活性を束縛、阻止、阻害、低減、拮抗または中和するために用いられうる。本発明の抗体は、IL−17AまたはIL−17Fサイトカインのアンタゴニストとして有用である。そのような拮抗作用はIL−17AおよびIL−17Fの直接中和または結合によってなされうる。
炎症は侵入病原体を回避するための生物による防御反応である。炎症は多くの細胞性お液性メディエーターを伴うカスケード事象である。一方では、炎症反応の抑制は宿主を免疫無防備状態にさせうる。しかし、野放し状態にされた場合、炎症は、慢性炎症性疾患(例えば、乾癬、関節炎、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患など)、敗血症ショックおよび多臓器不全を含む重篤な合併症を引き起こしうる。重要なことに、これらの多様な病態は共通の炎症性メディエーターを共有する。炎症を特徴とする疾患の集合は、ヒトの罹患率および死亡率に対する大きな影響を有する。したがって、本発明の抗体が、喘息およびアレルギーから自己免疫および敗血症ショックに至る多数のヒトおよび動物疾患に対する重要な治療可能性を有しうることは明瞭である。
(1.関節炎)
骨関節炎、関節リウマチ、損傷の結果としての関節炎関節などを含む関節炎は、IL−17AおよびIL−17Fを拮抗・中和または阻止する抗体の治療的使用からから恩恵を受けうる一般的な炎症状態である。例えば、関節リウマチ(RA)は、全身に影響を及ぼす全身性疾患であり、最も一般的な形態の関節炎である。それは、疼痛、凝り、熱感、発赤および腫脹を引き起こす、関節を覆う膜の炎症を特徴とする。炎症細胞は骨および軟骨を消化しうる酵素を放出する。関節リウマチの結果として、炎症を起こした関節内層である滑膜は骨および軟骨に浸潤してこれを損傷させ得、他の生理的作用の中でも関節の変質および激痛をもたらす。罹患関節はその形状およびアラインメントを喪失し得、疼痛および動きの喪失をもたらす。
関節リウマチ(RA)は、特に、炎症とこれに続く組織損傷を特徴とする免疫介在性疾患であり、重度の障害および死亡率上昇をもたらす。リウマチ性関節において種々のサイトカインが局所的に産生される。2つの原型的炎症性サイトカインであるIL−1およびTNF−αが、滑膜炎症および進行性関節破壊に関与するメカニズムに重要な役割を果たすことを多くの研究が示している。実際に、RA患者におけるTNF−αおよびIL−1インヒビターの投与は、炎症の臨床および生物学的徴候の劇的な改善ならびに骨侵食および軟骨破壊の放射線学的徴候の低減をもたらしている。しかし、これらの有望な結果にかかわらず、有意な割合の患者はこれらの薬剤に反応せず、関節炎の病態生理に他のメディエーターも関与していることを示唆する(Gabay,Expert.Opin.Biol.Ther.2(2):135−149,2002)。それらのメディエーターの1つがIL−17AまたはIL−17Fである可能性があり、そのようなものとして、IL−17FまたはIL−17Aに結合するか、またはその活性を阻害する分子、例えば、可溶性IL−17RA,IL−17RAポリペプチドまたは抗IL−17RA抗体もしくは結合パートナーが、関節リウマチおよび他の疾患における炎症を低減する価値ある治療法として役立ちうる。
当該技術分野において公知の関節リウマチの複数の動物モデルがある。例えば、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルでは、マウスはヒト関節リウマチに酷似する慢性炎症性関節炎を発症する。CIAがRAと同様の免疫学的・病理的特徴を共有するため、これにより、それは潜在的ヒト抗炎症性化合物をスクリーニングするための理想的なモデルとなる。CIAモデルは、生じるために免疫応答および炎症反応に依存する、マウスでの周知のモデルである。免疫応答は、抗原として付与されるコラーゲンに応答するB細胞とCD4+ T細胞との相互作用を含み、抗コラーゲン抗体の産生をもたらす。炎症期は、マウスの天然コラーゲンと交差反応し、かつ補体カスケードを活性化するこれらの一部の抗体の結果としての、炎症のメディエーターからの組織応答の結果である。CIAモデルを用いることにおける利点は、発病の基本メカニズムが既知であることである。II型コラーゲン上の関連するT細胞およびB細胞エピトープが同定されており、免疫介在性関節炎に関連する種々の免疫(例えば、遅延型過敏および抗コラーゲン抗体)および炎症(例えば、サイトカイン、ケモカインおよび基質分解酵素)パラメータが決定されており、したがって、CIAモデルにおいて被験化合物の有効性を評価するために用いられうる(Wooley,Curr.Opin.Rheum.3:407−20,1999;Williamsら、Immunol.89:9784−788,1992;Myersら、Life Sci.61:1861−78,1997;およびWangら、Immunol.92:8955−959,1995)。
1グループは、予防的に導入された際に、または関節炎症状が既にモデルにおいて存在した後、単一マウスIL−17特異的ラット抗血清の投与が動物における関節炎症状を低減したため、抗マウスIL−17抗体が対照マウスに対してマウスCIAモデルにおける症状を低減することを示し、したがって、抗IL−17A抗体がヒト疾患を処置するのに有益でありうることを概念的に示した(Lubbertsら、Arthritis Rheum.50:650−9,2004)。したがって、関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、内毒血症、炎症性腸疾患(IBD)、IBS、大腸炎および本明細書で開示される他の炎症状態などの特定のヒト疾患の処置においてIL−17Aおよび/またはIL−17Fを中和するため、IL−17AおよびIL−17Fのそれぞれの受容体への結合を拮抗・中和または阻止する抗体が用いられうる。
本発明の抗体のこれらのCIAモデルマウスへの投与は、そのような抗体のIL−17AおよびIL−17Fのアンタゴニストとしての使用を評価するために用いられ、それは症状を改善し、疾患の経過を変更するために用いられうる。例として、限定されずに、1マウス当たり本発明の抗体10〜200ugの注入(皮下、腹腔内または筋肉内投与経路により、週1〜7回、限定されないが最長4週間)は、疾患スコア(足スコア、炎症の発生例または疾患)を有意に低下させることができる。抗体投与の開始に依存し(例えば、コラーゲン免疫前またはコラーゲン免疫時または疾患が既に進行している時点を含む、2回目のコラーゲン免疫後の任意の時点)、そのようなIL−17AおよびIL−17F抗体は関節リウマチを予防し、かつその進行を阻止するのに有効でありうる。
(2.内毒血症)
内毒血症は、細菌および他の感染症病原体のような感染病原体、敗血症、トキシックショック症候群から一般的に生じ、あるいは日和見感染に晒された免疫低下患者などにおける重度の疾患である。本発明の抗体のような治療上有用な抗炎症蛋白質は、ヒトおよび動物における内毒血症を予防・処置するのに役立ちうる。そのような抗体は、内毒血症における炎症および病理的作用を低減する価値ある治療法として役立ちうる。
リポ多糖(LPS)誘導性内毒血症は、感染症において病理的作用を生じさせる多くの炎症促進性メディエーターを関与させ、齧歯動物におけるLPS誘導性内毒血症は、潜在的な炎症促進または免疫調節物質の薬理学的作用を研究するための、広範に用いられ、受容されているモデルである。グラム陰性菌において産生されるLPSは敗血症ショックの病因の主要な原因物質である(Glausnerら、Lancet 338:732,1991)。実際、ショック様状態はLPSの動物への単回注入によって実験的に誘導されうる。LPSに応答する細胞によって産生される分子は、病原体を直接的または間接的に標的とすることができる。これらの生物学的応答が侵入病原体から宿主を保護するが、それらは損傷も生じさせうる。したがって、重度のグラム陰性菌感染の結果として生じる自然免疫の大規模な刺激は、サイトカインおよび他の分子の過剰産生ならびに、発熱、低血圧、播種性血管内凝固および多臓器不全を特徴とする致死性症候群である敗血症ショック症候群の発症をもたらす(Dumitruら、Cell 103:1071−1083,2000)。
LPSのこれらの毒性作用は、大部分が多数の炎症性メディエーターの放出を生じさせるマクロファージ活性に関連する。これらのメディエーターの中でもTNFは重要な役割を果たすように思われ、中和抗TNF抗体の投与によるLPS毒性の予防によって示されている通りである(Beutlerら、Science 229:869,1985)。E.coli LPS 1ugのC57B1/6マウスへの注入が、注入後約2時間にて循環IL−6,TNF−α,IL−1および急性期蛋白質(例えば、SAA)の有意な増加をもたらすことは十分に確立されている。これらのメディエーターに対する受動免疫が死亡率の低下をもたらしうるため、LPSの毒性はこれらのサイトカインに媒介されるように思われる(Beutlerら、Science 229:869,1985)。敗血症ショックの予防および/または処置のための免疫介入方策の可能性は、抗TNFmAb、IL−1受容体アンタゴニスト、LIF、IL−10およびG−CSFを含む。
本発明の抗体のこれらのLPS誘導モデルへの投与は、症状を改善し、LPS誘導性疾患の経過を変更するためのそのような抗体の使用を評価するために用いられうる。さらに、本発明の抗体によるIL−17AおよびIL−17Fの阻害を示す結果は、そのような抗体がLPS誘導モデルにおける症状を改善し、疾患の経過を変更するためにも用いられうるという概念立証を与える。該モデルは、LPS注入によるIL−17AおよびIL−17Fの誘導およびそのような抗体による疾患の処置の可能性を示す。LPSが、おそらく内毒血症の病理の原因となる炎症促進因子の産生を誘導するため、本発明の抗体によるIL−17AおよびIL−17F活性または他の炎症促進因子の中和は、内毒素ショックに見られるような内毒血症の症状を低減するために用いられうる。
(3.炎症性腸疾患 IBD)
米国では、約500,000人が結腸および直腸(潰瘍性大腸炎)の両方または一方、小腸および大腸(クローン病)を冒しうる炎症性腸疾患(IBD)を患っている。これらの疾患の病因は不明であるが、患部組織の慢性炎症を伴う。IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体は、IBDおよび関連疾患における炎症および病理的作用を低減する価値ある治療法として役立ちうる。
潰瘍性大腸炎(UC)は、一般的に結腸と称される大腸の炎症性疾患であり、結腸の粘膜および最内側層の炎症および潰瘍を特徴とする。この炎症は結腸が頻回に排出するようにさせ、下痢を引き起こす。その症状は便の緩みおよび関連する腹部疝痛、発熱ならびに体重減少を含む。UCの正確な原因は不明であるが、最近の研究は、身体の自然防御が、身体が異物であると考える体内蛋白質に対して作用していることを示唆している(自己免疫反応)。おそらく、これらの蛋白質が腸内細菌蛋白質に類似するため、それらは結腸の内層を破壊し始める炎症プロセスを扇動または刺激しうる。結腸の内層が破壊されると、潰瘍が形成され、粘液、膿汁および血液を放出する。通常、該疾患は直腸領域にて開始し、最終的に大腸全体を通して伸展しうる。炎症の反復エピソードは瘢痕組織を伴う腸・直腸壁の肥厚を生じさせる。重症では結腸組織の死滅または敗血症が生じうる。潰瘍性大腸炎の症状は重症度において異なり、その発症は漸進的または突発的でありうる。呼吸器感染またはストレスを含む多くの因子によって発病が誘発されうる。
現在、利用可能なUCの治癒法はないが、処置は結腸内膜における異常炎症プロセスを抑制することに重点が置かれる。コルチコステロイド免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリンおよびメトトレキサート)およびアミノサリチル酸を含む処置が、該疾患を処置するために利用可能である。しかし、コルチコステロイドおよびアザチオプリンのような免疫抑制剤の長期使用は、骨の薄化、白内障、感染および肝臓・骨髄作用を含む重篤な副作用をもたらしうる。現在の治療法が良好ではない患者では、手術が1つの選択肢である。手術は結腸・直腸全体の切除を含む。
慢性潰瘍性大腸炎を部分的に模倣しうる複数の動物モデルがある。最も広範に用いられている動物モデルは、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸/エタノール(TNBS)誘導性大腸炎モデルであり、それは、結腸において慢性炎症および潰瘍を誘発する。TNBSが直腸内点滴注入により感受性マウスの結腸に導入されると、それは結腸粘膜においてT細胞媒介性免疫応答を誘導し、この場合、大腸壁全体にわたるT細胞およびマクロファージの高密度の浸潤を特徴とする広範囲の粘膜炎をもたらす。さらに、この病理組織像は、進行性の体重減少(消耗性)、血性下痢、直腸脱および大腸壁肥厚の臨床像を伴う(Neurathら、Intern.Rev.Immunol.19:51−62,2000)。
別の大腸炎モデルでは、血性下痢、体重減少、結腸の短縮および好中球浸潤を伴う粘膜潰瘍に現れる急性大腸炎を誘導するデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いる。DSS誘導性大腸炎は、リンパ過形成、局所的陰窩損傷および上皮性潰瘍を伴う、炎症細胞の固有層への浸潤を組織学的特徴とする。これらの変化は、DSSの上皮に対する作用により、かつ固有層細胞の貪食ならびにTNF−αおよびIFN−γの産生によって発現すると考えられている。その一般的な使用にかかわらず、ヒト疾患との関連性に関するDSSのメカニズムに関するいくつかの問題は未解決のままである。DSSはSCIDマウスのようなT細胞欠損動物に認められるため、T細胞非依存性モデルとみなされる。
これらのTNBSまたはDSSモデルへの本発明の抗体の投与を用いて、症状を改善し、胃腸疾患の経過を変更するためのそのような抗体の使用を評価することができる。さらに、そのような抗体によるIL−17AおよびIL−17Fの阻害を示す結果は、本発明の抗体が大腸炎/IBDモデルにおける症状を改善し、疾患の経過を変更するためにも用いられうるという概念立証を与える。
(4.乾癬)
乾癬は700万人以上のアメリカ人を冒す慢性皮膚疾患である。乾癬は新生皮膚細胞が異常に増殖する場合に生じ、古い皮膚が十分に速く脱落していない部位で炎症性、膨張性および鱗状の皮膚斑を生じさせる。最も一般的な形態である尋常性乾癬は、銀白色鱗屑で覆われた炎症性皮膚斑(「病変」)を特徴とする。乾癬は数個のプラークに限定され、または中程度から広範な皮膚領域を含み得、最も一般的には、頭皮、膝、肘および体幹に出現する。乾癬は非常に目立つが、伝染病ではない。該疾患の発症機序は患部組織の慢性炎症を含む。IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体は、乾癬、他の炎症性皮膚疾患、皮膚・粘膜アレルギーおよび関連疾患における炎症および病理的作用を低減する価値ある治療法として役立ちうる。
乾癬は、相当な不快感を引き起こしうる皮膚のT細胞媒介性炎症障害である。それは治癒法がなく、あらゆる年齢層を冒す疾患である。乾癬は欧州および北米の約2パーセントの人口を冒す。軽度の乾癬患者は局所薬でその疾患を制御することができる場合が多いが、世界中で百万人以上の患者が紫外線または全身免疫抑制療法を必要としている。残念なことに、紫外線放射の不便性およびリスクならびに多くの治療法の毒性がそれらの長期的利用を制約する。さらに、通常、患者は乾癬を再発し、場合により、免疫抑制療法中止後まもなく逆戻りする。
IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体は、診断システム内にてIL−17FまたはIL−17Aの循環濃度の検出ならびに急性期炎症反応と関連するIL−17Aおよび/またはIL−17Fの検出にも用いられうる。リガンドまたは受容体ポリペプチドの濃度上昇または低下は、炎症または癌を含む病理的状態を示しうる。IL−17AおよびIL−17Fは関連する急性期炎症反応を誘導することが既知である。さらに、IL−17AまたはIL−17Fのような急性期蛋白質もしくは分子の検出は、一部の疾患状態(例えば、喘息、乾癬、関節リウマチ、大腸炎、IBD)における慢性炎症状態を示しうる。そのような状態の検出は、疾患の診断に役立ち、かつ医師が適切な治療法を選択するのに役立つ働きをする。
本明細書で述べる他の疾患モデルに加え、ヒト乾癬病変に由来する炎症組織に対する本発明の抗体の活性は、重症複合免疫不全(SCID)マウスモデルを用いてインビボにて測定することができる。ヒト細胞が免疫不全マウスに移植される複数のマウスモデルが開発されている(集合的に異種移植モデルと称される)。例えば、Cattan AR,Douglas E,Leuk.Res.18:513−22,1994およびFlavell,DJ,Hematological Oncology l4:67−82,1996を参照されたい。乾癬のインビボ異種移植モデルとして、ヒト乾癬皮膚組織がSCIDマウスモデルに移植され、適切なアンタゴニストで誘導される。さらに、本発明の抗体を評価するため、AGR129マウスモデルに移植されたヒト乾癬皮膚移植片のような当該技術分野における他の乾癬動物モデルが用いられ、適切なアンタゴニストで誘導される(例えば、参照して本明細書に組み込まれる、Boyman,O.ら、J.Exp.Med.Online publication #20031482,2004を参照されたい)。IL−17AおよびIL−17Fの活性を束縛、阻止、阻害、低減、拮抗または中和する抗IL−17AおよびIL−17F抗体が好ましいアンタゴニストである。同様に、本明細書で述べる本発明の抗体の抗炎症特性を評価するため、ヒト大腸炎、IBD、関節炎または他の炎症病変由来の組織または細胞をSCIDモデルにおいて用いることができる。
本発明の抗体を用いて炎症を消失、遅延または減少させるように設計された治療法は、ヒト炎症組織(例えば、乾癬病変など)を有するSCIDマウスまたは本明細書で述べる他のモデルへのそのような抗体の投与によって試験することができる。処置の有効性は、当該技術分野において周知の方法を用いて経時的に測定され、処置集団内の抗炎症作用の増大として統計学的に評価される。一部の例示的な方法は、例えば、乾癬モデルにおいて上皮厚、真皮上層における炎症細胞数および不全角化のグレードを測定するステップを含むが、これに限定されない。そのような方法は当該技術分野において公知であり、本明細書で述べられる。例えば、Zeigler,M.ら、Lab Invest 81:1253,2001;Zollner,T.M.ら、J.Clin.Invest.109:671,2002;Yamanaka,N.ら、Microbio.l Immunol.45:507,2001;Raychaudhuri,S.P.ら、Br.J.Dermatol.144:931,2001;Boehncke,W.Hら、Arch.Dermatol.Res.291:104,1999;Boehncke,W.Hら、J.Invest.Dermatol.116:596,2001;Nickoloff,B.J.ら、Am.J.Pathol.146:580,1995;Boehncke,W.Hら、J.Cutan.Pathol.24:1,1997;Sugai,J.,M.ら、J.Dermatol.Sci.17:85,1998;およびVilladsen L.S.ら、J.Clin.Invest.112:1571,2003を参照されたい。試料中に存在する炎症もしくは病変細胞の数、IBDスコア(体重減少、下痢、直腸出血、結腸長)、足疾患スコアおよびCIA RAモデルの炎症スコアを定量するため、フローサイトメトリー(またはPCR)のような周知の方法を用いて経時的に炎症をモニタリングしてもよい。
さらに、乾癬は、過形成表皮角化細胞ならびにCD4+メモリーT細胞、好中球およびマクロファージを含む浸潤単核細胞と関連する慢性炎症皮膚疾患である(Christophers,Int.Arch.Allergy Immunol.110:199,1996)。現在、環境抗原が該疾患の病理の開始およびそれへの寄与に重要な役割を果たすと考えられている。しかし、乾癬の病理を媒介すると考えられているのは、自己抗原に対する忍容性の喪失である。樹状細胞およびCD4+T細胞は、病態に至る免疫応答を媒介する抗原提示および認識に重要な役割を果たすと考えられている。最近、本発明者らは、CD4+CD45RB移植モデルに基づく乾癬モデルを開発した(Davenportら、Internat.Immunopharmacol.,2:653−672)。本発明の抗体はマウスに投与される。疾患スコア(皮膚病変、炎症性サイトカイン)の抑制は乾癬におけるそのような抗体の有効性を示す。
(5.アトピー性皮膚炎)
ADは、ヘルパーT細胞サブセット2(Th2)の活性化過剰サイトカインを特徴とする一般的な慢性炎症性疾患である。ADの正確な病因は不明であるが、活動亢進Th2免疫応答、自己免疫、感染、アレルゲンおよび遺伝的素因を含む多数の因子が関与している。該疾患の重要な特徴は、乾皮症(皮膚の乾燥)、掻痒(皮膚の痒み)、結膜炎、炎症性皮膚病変、Staphylococcus aureus感染、血中好酸球増加の上昇、血清IgEおよびIgG1の上昇ならびにT細胞、肥満細胞、マクロファージおよび好酸球浸潤を伴う慢性的皮膚炎を含む。S.aureusによる定着または感染は、ADを悪化させ、この皮膚疾患の慢性化を持続させると認識されている。
ADは喘息およびアレルギー性鼻炎患者に見出される場合が多く、高頻度にアレルギー疾患の初期徴候である。西欧諸国の人口の約20%がこれらのアレルギー性疾患を患っており、先進諸国におけるADの発生率は理由がわからずに上昇している。通常、ADは小児期に始まり、青年期から成人期まで持続しうる場合が多い。ADの現在の処置には、局所コルチコステロイド、経口シクロスポリンA、タクロリムス(軟膏剤形でのFK506)のような非コルチコステロイド免疫抑制剤およびインターフェロン−γが含まれる。ADに対する多様な処置にかかわらず、多くの患者の症状は改善せず、または患者は薬物に対する有害反応を有し、他のより有効な治療剤の探索を必要としている。本発明の抗ヒトIL−17AおよびIL−17F中和抗体を含む本発明の抗体は、アトピー性皮膚炎、炎症性皮膚疾患および本明細書で開示される他の炎症性疾患のような特定のヒト疾患の処置において、IL−17AおよびIL−17を中和するために用いることができる。
(6.喘息)
IL−17はアレルゲン誘導性T細胞活性化および好中球の気道流入に重要な役割を果たす。IL−17に対する受容体は気道内で発現し(Yaoら、Immunity 3:811(1995))、アレルギー性喘息におけるIL−17媒介性好中球動員は、大部分がIL−17刺激性気管支上皮細胞(HBEC)およびヒト気管支線維芽細胞によって産生される化学誘引物質IL−8,GRO−αおよびマクロファージ炎症性蛋白質−2(MIP−2)に誘導される(Yaoら、J Immunol 155:5483(1995));Moletら、J Allergy Clin Immunol 108:430(2001))。さらに、IL−17はHBECを刺激して好中球活性化因子であるIL−6を放出し(Fossiezら、J Exp Med 183:2593(1996)およびLindenら、Int Arch Allergy Immunol 126:179(2001))、TNF−αと協同してインビトロにてヒト好中球の生存を延ばすことが示された(Laanら、Eur Respir J 21:387(2003))。さらに、IL−17は、気道再構築に関与するサイトカイン、例えば、線維化促進サイトカインであるIL−6およびIL−11ならびに炎症性メディエーターである顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の分泌を亢進するその能力により、喘息における炎症反応を増幅することができる(Moletら、J Allergy Clin Immunol 108:430(2001))。
臨床的エビデンスは、喘息の重度の急性増悪が気道における好中球の動員および活性化と関連することを示しており、したがって、IL−17は喘息に重要な役割を果たすと思われる。軽症喘息患者は遊離可溶性IL−17A蛋白質の局所濃度の検出可能な上昇を示すが(Moletら、J Allergy Clin Immunol 108:430(2001))、豚舎に閉じ込められたことによって誘発された重度の気道炎症を有する健常ヒトボランティアは、気管支肺胞腔における遊離可溶性IL−17A蛋白質の濃度の著明な上昇を示す(Fossiezら、J Exp Med 183:2593(1996)およびLindenら、Int Arch Allergy Immunol 126:179(2001))。さらに、IL−17の喀痰中濃度は気道過敏性の上昇を有する患者と相関している(Barczykら、Respir Med 97:726(2003))。
気道過敏性の動物モデルにおいて、感作マウスによる卵白アルブミンの慢性吸入は、気管支好中球増多と共に、気管支好酸球性炎症および炎症性肺組織におけるIL−17 mRNA発現の早期誘導をもたらした(Hellingsら、Am J Respir Cell Mol Biol 28:42(2003))。抗IL−17モノクローナル抗体は気管支好中球流入を強力に低減したが、気管支肺胞洗浄液および血清中の有意に上昇したIL−5濃度ならびにアレルゲン誘導性気管支好酸球流入の悪化は、IL−17Aが抗原傷害後の好中球と好酸球との蓄積の均衡の決定に関与しうることを示唆する(同上)。
IL−17ファミリーメンバーの中でもIL−17FはIL−17Aと最も密接に関連する。IL−17Fによって媒介される生物学的活性はIL−17Aに類似し、IL−17FはIL−6,IL−8およびG−CSFの産生を刺激する(Hurstら、J Immunol 169:443(2002))。IL−17Fは内皮細胞におけるIL−2、形質転換増殖因子(TGF)−αおよび単球走化性蛋白質(MCP)の産生も誘導する(Starnesら、J Immunol 167:4137(2001))。同様に、アレルゲン投与はアレルギー性喘息患者における局所IL−17Fを増加させうる(Kawaguchiら、J Immunol 167:4430(2001))。マウス肺におけるIL−17Fの遺伝子送達は気管支肺胞腔における好中球を増加させるが、IL−17F遺伝子の粘膜送達はAg誘導性肺性好中球増多レベルおよびメタコリンに対する気道反応性を高める(Odaら、Am J Respir Crit Care Med 171:12(2005))。
喘息は別として、複数の慢性炎症性気道疾患が気道における好中球動員を特徴とし、IL−17が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、細菌性肺炎および嚢胞性線維症のような呼吸疾患の発病に重要な役割を果たすことが報告されている(Lindenら、Eur Respir J 15:973(2000)、Yeら、Am J Respir Cell Mol Biol 25:335(2001)、Rahmanら、Clin Immunol 115:268(2005))。抗IL−17Aおよび抗IL−17F抗体は、炎症のインビトロモデルにおいて慢性炎症性気道疾患に有効であることが示されうる。本発明の抗体のようなIL−17FおよびIL−17A活性に対するアンタゴニストの、培養HBECまたは気管支線維芽細胞から産生されるIL−17Aまたは およびIL−17F誘導性のサイトカインおよびケモカインを阻害する能力は、IL−17Aおよび/またはF刺激から直接生じる炎症性メディエーターの産生阻止における、そのようなアンタゴニストの有効性の尺度として用いられうる。本発明の抗体のようなIL−17FおよびIL−17A活性に対するアンタゴニストを加えることにより、炎症性メディエーターの産生および発現が著しく低下すれば、それは慢性気道炎症と関連する炎症的側面において有効であることが期待されうる。
(7.過敏性腸症候群(「IBS」))
過敏性腸症候群は、腹部疼痛もしくは不快感および不規則な排便習慣を特徴とする疾患を表す。IBS患者は排便習慣に基づいて3つの主要群:主に軟便もしくは頻回の便通を有する患者、主に固形便もしくは低頻度の便通を有する患者および不定もしくは正常便を有する患者に特徴づけられうる(Talleyら、2002)。腸運動の変化、上皮機能の異常、糞便およびガスの異常な通過ならびにストレスが症状に寄与しうるが、大部分の患者では内臓過敏性が重要な特徴である。疼痛シグナル伝達および求心性シグナルの中枢処理の障害に影響を及ぼす遺伝因子が、特定の環境暴露後に患者をIBSに罹患しやすくさせると想定される。結腸における炎症反応が平滑筋および腸神経の感受性増大に寄与し、したがって、腸における感覚・運動機能を乱しうることも諸研究は示している(Collinsら、2001)。IBSとIBDとの間には臨床的重複部分があり、IBDの診断前に患者においてIBS様症状が高頻度に報告され、確定IBDからの寛解期にある患者において予想以上のIBS症状が報告されている。したがって、IBSとIBDとが同じスペクトルの両端にあって、これらの疾患は予想以上の頻度で共存し得、または連続的に存在しうる。しかし、大部分のIBS患者では、大腸生検標本は正常に見えることに留意すべきである。しかし、IBSは極めて多数の患者を有意に冒し(2000年における米国の患者数は約千六百万人)、17億ドルの総コスト負担となる(2000年度)。したがって、最も蔓延し、コストのかかる胃腸疾患・障害の中でも、IBSは胃食道逆流症(GERD)に次いで2番目である。しかし、GERDと異なり、IBSに対する処置は依然として不十分であり(Talleyら、2002;Farhadiら、21001;Collinsら、2001)、IBSが満たされない医学的ニーズを明確に表すことを示している。
正常なホメオスタシスの中枢性(心理社会的)または末梢性(組織刺激、炎症、感染)撹乱に対する中枢神経系(CNS)または腸における神経、免疫または神経免疫回路の応答性向上を想定した収束疾患モデルが提案されている(Talleyら、2002)。この向上した応答性は、腸運動性、上皮機能(免疫、透過性)および内臓過敏性の調節不全をもたらし、次に、それはIBS症状を生じさせる。
IBSの発病に複数の異なる分子が果たす役割があり得、神経細胞を刺激する分子および炎症プロセスの開始に関与する分子の役割が含まれる。IL−17D,IL−17BおよびIL−31を含む複数の分子が、神経細胞における神経細胞によるその直接発現またはその受容体の発現により、神経細胞における可能な活性に関連していることが既知である。さらに、IL−17A,IL−17F,IL−23およびIL−31を含む複数のIL−17ファミリーメンバーおよび関連分子が腸内炎症と関連している。
これらの分子のインヒビター/アンタゴニストの有効性は、疾患の動物モデルにおいてインビボにて試験されうる。IBSの重要な特徴を模倣し、中枢標的刺激(ストレス)または末梢標的刺激(感染、炎症)を含む複数の動物モデルが提案されている。IBSの処置におけるインヒビターの有効性を判定するために用いることができるインビボ動物モデルの2例は、(i)CNSを標的としたIBSの主要な発症機序に重点を置いたモデル(ストレスモデル)および(ii)腸を標的としたストレス(すなわち、腸管炎症、感染または身体的ストレス)の誘導因子に重点を置いたモデルである。しかし、CNS内または胃腸(GI)管内の事象が孤立して生じるのではなく、IBSの症状がGIにおけるCNSからの(逆もまた同様)シグナル間の複雑な相互作用から生じる可能性が最も高いということに留意すべきである。
医薬用途のため、本発明の抗体は、従来の方法に従って非経口、特に静脈内または皮下送達用に製剤化される。静脈内投与は、例えば、ミニポンプまたは他の適切な技術を用いたボーラス注入、放出制御により、または1時間〜数時間の典型的な時間にわたる注入による。概して、医薬製剤は、医薬的に許容可能なビヒクル、例えば、生理食塩水、緩衝生理食塩水、5%ブドウ糖液などと組み合わせた造血蛋白質を含む。製剤は、1つ以上の賦形剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル面における蛋白質喪失を防止するためのアルブミンなどを更に含みうる。そのような併用療法を用いる場合、サイトカインは単一製剤にて組み合わせられ得、または別個の製剤にて投与されうる。製剤方法は当該技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro(編)、Mack Publishing Co.,Easton PA,1990(参照して本明細書に組み込まれる)に開示されている。治療量は、一般的に、1日当たり患者の体重の0.1〜100mg/kgの範囲内、好ましくは、1日当たり0.5〜20mg/kgであり、正確な用量は、処置対象疾患の性状および重症度、患者の体質などを考慮し、許容される基準に従って臨床医によって決定される。用量の決定は当業者のレベル範囲内にある。一般的に、蛋白質は、化学療法もしくは骨髄移植後に、または、20,000/mm3超、好ましくは50,000/mm3超の血小板数が得られるまで、最大28日間にわたって投与される。より一般的には、蛋白質は、1週間以下にわたり、多くの場合、1〜3日間にわたって投与される。概して、本発明の抗体の治療有効量は、成熟細胞(例えば、血小板または好中球)の循環濃度の上昇として現れる、リンパ系または骨髄系前駆細胞の増殖および/または分化の臨床的に有意な増加を生じさせるのに十分な量である。したがって、血小板障害の処置は、少なくとも20,000/mm3、好ましくは50,000/mm3の血小板数に達するまで継続される。本発明の抗体は、他のサイトカイン、例えば、IL−3,−6および−11;幹細胞因子;エリスロポエチン;G−CSFおよびGM−CSFと併用して投与することもできる。併用療法のレジメン範囲内にて、概して、他のサイトカインの1日用量は、EPO,150U/kg;GM−CSF,5〜15lg/kg;IL−3,1〜5lg/kg;およびG−CSF,1〜25lg/kgである。EPOを用いた併用療法は、例えば、低EPO濃度を有する貧血患者に適応とされる。
一般的に、投与抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身状態および過去の病歴のような因子に依存して異なる。通常、約1pg/kg〜10mg/kg(薬剤量/患者の体重)の範囲内の抗体投与量をレシピエントに与えることが望ましいが、状況に応じてより少なく、またはより多い用量を投与してもよい。
本発明の抗体の患者への投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、局部カテーテルによる灌流または直接病巣内注入でよい。注入によって治療用蛋白質を投与する場合、投与は持続注入または単回もしくは複数回ボーラスでよい。
更なる投与経路には、経口、粘膜、肺および経皮が含まれる。経口送達は、ポリエステルミクロスフェア、ゼインミクロスフェア、プロテイノイドミクロスフェア、ポリシアノアクリレートミクロスフェアおよび脂質ベース系に好適である(例えば、DiBaseおよびMorrel,“Oral Delivery of Microencapsulated Proteins”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、255〜288頁(Plenum Press社、1997)を参照されたい)。鼻腔内送達の実現可能性はインスリン投与のような様式により例示される(例えば、HinchcliffeおよびIllum,Adv.Drug Deliv.Rev.35:199(1999)を参照されたい)。本発明の抗体を含む乾燥または液体粒子を調製し、乾燥粉末分散器、液体エアロゾル発生器または噴霧器を用いて吸入することができる(例えば、PettitおよびGombotz,TIBTECH 16:343(1998);Pattonら、Adv.Drug.Deliv.Rev.35:235(1999))。この手法は、エアロゾル化インスリンを肺に送達する携帯型電子式吸入器であるAERX糖尿病管理システムにより例示される。低周波超音波を用いて48,000kDaもの大きさの蛋白質が治療濃度にて皮膚を超えて送達されたことが諸研究により示され、それは経皮投与の実現可能性を例示する(Mitragotriら、Science 269:850(1995))。電気穿孔を用いた経皮送達は、IL−17AおよびIL−17F結合活性を有する分子を投与する別の手段を提供する(Pottsら、Pharm.Biotechnol.10:213(1997))。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、医薬的に有用な組成物を調製する既知の方法に従って製剤化することができ、それによって治療用蛋白質は医薬的に許容可能な担体との混合物にて組み合わせられる。組成物は、その投与がレシピエント患者によって忍容性が示されうる場合、「医薬的に許容可能な担体」と言われる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬的に許容可能な担体の一例である。他の好適な担体は当業者には周知である。例えば、Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company 1995)を参照されたい。
治療を目的として、本発明の抗体および医薬的に許容可能な担体が治療有効量にて患者に投与される。本発明の治療用分子と医薬的に許容可能な担体との組合せは、投与量が生理的に有意である場合、「治療有効量」にて投与されると言われる。薬剤は、その存在がレシピエント患者の生理の検出可能な変化をもたらす場合、生理的に有意である。例えば、炎症を処置するために用いられる薬剤は、その存在が炎症反応を緩和する場合、生理的に有意である。有効な処置は様々な方法にて評価されうる。一実施形態では、有効な処置は炎症の低減により判定される。他の実施形態では、有効な処置は炎症の抑制を特徴とする。更に他の実施形態では、有効な治療は、体重増加、体力回復、疼痛の減少、良好な発育およびより健康な患者からの主観的指標のような徴候を含む、患者の健康増進により評価される。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、液体剤形、エアロゾルまたは固体剤形にて提供されうる。液体剤形は注射用溶液および経口懸濁液により例示される。例示的な固体剤形には、カプセル、錠剤および徐放剤形が含まれる。後者の剤形はミニ浸透圧ポンプおよびインプラントにより例示される(Bremerら、Pharm.Biotechnol.10:239(1997);Ranade,“Implants in Drug Delivery”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press社 1995);Bremerら、“Protein Delivery with Infusion Pupms”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press社 1997);Yeweyら、“Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、93〜117頁(Plenum Press社 1997))。
リポソームは、静脈内、腹腔内、髄腔内、筋肉内、皮下または経口投与、吸入もしくは鼻腔内投与により、治療用ポリペプチドを患者に送達する一手段を提供する。リポソームは、水性コンパートメントを取り巻く1つ以上の脂質二重層からなる微視的小胞である(Bakker−Woudenbergら、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.12(付録1):S61(1993)、Kim,Drugs 46:618(1993)ならびにRanade,“Site−Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、3〜24頁(CRC Press社 1995)を全体的に参照されたい)。リポソームは組成が細胞膜に類似し、その結果、リポソームは安全に投与され得、生分解性である。調製法によってリポソームは単層状または多層状でよく、リポソームは直径が0.02μm〜10μm超に及び、サイズが異なりうる。リポソームには種々の物質を封入することができる:二重層における疎水性物質区画および内部水性空間内の親水性物質区画(例えば、Machyら、Liposomes In Cell Biology And Pharmacology(John Libbey社 1987)およびOstroら、American J.Hosp.Pharm.46:1576(1989)を参照されたい)。さらに、リポソームのサイズ、二重層の数、脂質組成ならびにリポソームの電荷および表面特徴に変化を持たせることにより、封入物質の治療利用可能性を制御することが可能である。
リポソームは実質的に如何なるタイプの細胞にも吸着し、次に、封入物質を緩徐に放出することができる。あるいは、吸収されたリポソームは貪食性の細胞に取り込まれうる。エンドサイトーシスにはリポソーム脂質のリソソーム内分解および封入物質の放出が続く(Scherphofら、Ann.N.Y.Acad.Sci.446:368(1985))。静脈内投与後、通常、小リポソーム(0.1〜1.0μm)は主に肝臓および脾臓に存在する細網内皮系の細胞によって取り込まれ、一方、3.0μm超のリポソームは肺内に沈着される。細網内皮系の細胞によるより小さいリポソームのこの選択的取り込みは、マクロファージおよび肝臓の腫瘍に化学療法剤を送達するために用いられている。
細網内皮系は、高用量のリポソーム粒子による飽和または薬理学的手段による選択的マクロファージ不活化を含む複数の方法により回避されうる(Claassenら、Biochim.Biophys.Acta 802:428(1984))。加えて、糖脂質またはポリエチレングリコール誘導体化リン脂質のリポソーム膜への取り込みは、細網内皮系による取り込みの有意な減少をもたらすことが示されている(Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1068:133(1991);Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1150:9(1993))。
リポソームは、リン脂質組成を多様化することにより、または受容体もしくはリガンドをリポソームに挿入することにより、特定の細胞または臓器を標的とするように調製することもできる。例えば、高含量の非イオン性界面活性剤で調製されたリポソームは、肝臓を標的とするために用いられている(Hayakawaら、日本国特許04−244,018;Katoら、Biol.Pharm.Bull.16:960(1993))。これらの製剤は、大豆ホスファチジルコリン、α−トコフェロールおよびエトキシル化水素化ヒマシ油(HCO−60)をメタノール中に混合し、その混合物を真空下にて濃縮し、次に、その混合物を水で再構成することにより調製された。大豆由来ステリルグルコシド混合物(SG)およびコレステロール(Ch)を含むジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)のリポソーム製剤も肝臓を標的とすることが示されている(Shimizuら、Biol.Pharm.Bull.20:881(1997))。
あるいは、抗体、抗体断片、炭水化物、ビタミンおよび輸送蛋白質のような種々の標的化リガンドが、リポソームの表面に結合させうる。例えば、リポソームは、肝細胞の表面上のみに発現するアシアロ糖蛋白質(ガラクトース)受容体を標的とするように、分岐型ガラクトシル脂質誘導体で修飾されうる(KatoおよびSugiyama,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.14:287(1997);Murahashiら、Biol.Pharm.Bull.20:259(1997))。同様に、Wuら、Hepatology 27:772(1998)は、アシアロフェツインによるリポソームの標識化が、リポソームの短縮化血漿中半減期および、肝細胞によるアシアロフェツイン標識リポソームの大幅に亢進した取り込みをもたらすことを示した。一方、分岐型ガラクトシル脂質誘導体を含むリポソームの肝蓄積は、アシアロフェツインの事前注入によって阻害されうる(Murahashiら、Biol.Pharm.Bull.20:259(1997))。ポリアコニチル化ヒト血清アルブミンリポソームは、リポソームを肝細胞に標的化するための別の手法を提供する(Kampsら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 94:11681(1997))。さらに、Gehoら、米国特許第4,603,044号では、肝臓の特殊な代謝細胞と関連する肝胆道受容体に対する特異性を有する、肝細胞を標的としたリポソーム小胞送達系について述べている。
組織標的化のより一般的な手法では、標的細胞は、標的細胞によって発現されるリガンドに特異的なビオチン化抗体で事前に標識化される(Harasymら、Adv.Drug Deliv.Rev.32:99(1998))。遊離抗体の血漿消失後、ストレプトアビジン結合リポソームが投与される。別の手法では、標的化抗体がリポソームに直接結合させる(Harasymら、Adv.Drug.Deliv.Rev.32:99(1998))。
ポリペプチドおよび抗体は、蛋白質のマイクロカプセル化の標準的技法を用いてリポソーム内に封入することができる(例えば、Andersonら、Infect.Immun.31:1099(1981)、Andersonら、Cancer Res.50:1853(1990)およびCohenら、Biochim.Biophys.Acta 1063:95(1991)、Alvingら、“Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies”,Liposome Technology、第二版、第三巻、Gregoriadis(編)、317頁(CRC Press社 1993)、Wassefら、Meth.Enzymol.149:124(1987)を参照されたい)。上記のように、治療上有用なリポソームは種々の成分を含みうる。例えば、リポソームはポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含みうる(Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1150:9(1993))。
分解性ポリマーミクロスフェアは、治療用蛋白質の高い全身濃度を維持するように設計されている。ミクロスフェアは、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性酢酸エチルビニルポリマーのような分解性ポリマーから調製され、蛋白質がそのポリマーに封入される(GombotzおよびPettit,Bioconjugate Chem.6:332(1995);Ranade,“Role of Polymers in Drug Delivery”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、51〜93頁(CRC Press社 1995);RoskosおよびMaskiewicz,“Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、45〜92頁(Plenum Press社 1997);Bartusら、Science 281:1161(1998);PutneyおよびBurke,Nature Biotechnology 16:153(1998);Putney,Curr.Opin.Chem.Biol.2:548(1988))。ポリエチレングリコール(PEG)コーティングされたナノスフェアも治療用蛋白質の静脈内投与のための担体を提供する(例えば、Grefら、Pharm.Biotechnol.10:167(1997)を参照されたい)。
本発明は、IL−17AおよびIL−17F抗体のようなIL−17AおよびIL−17F結合活性を有する化学修飾ポリペプチドも企図し、上述のように、ポリペプチドはポリマーに結合される。
例えば、AnselおよびPopovich,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第五版(Lea & Febiger社 1990)、Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company 1995)ならびにRanadeおよびHollinger,Drug Delivery Systems(CRC Press社 1996)に示されるように、当業者によって他の剤形が考案されうる。
例示として、医薬組成物は本発明の抗体を含む容器を含むキットとして供給されうる。本発明の抗体は、単回または複数回投与のための注射用溶液の剤形にて、または注射前に再構成される滅菌粉末として提供することができる。あるいは、そのようなキットは、治療用ポリペプチドを投与するための乾燥粉末分散器、液体エアロゾル発生器または噴霧器を含みうる。そのようなキットは、医薬組成物の適応および使用に関する文書情報を更に含みうる。さらに、そのような情報は、抗体組成物がIL−17AおよびIL−17Fに対する既知の過敏性を有する患者には禁忌であるという記載を含みうる。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、液体剤形、エアロゾルまたは固体剤形にて供給されうる。液体剤形は、注射用溶液、エアロゾル、液滴、位相溶液および経口懸濁液により例示される。例示的な固体剤形には、カプセル、錠剤および徐放剤形が含まれる。後者の剤形はミニ浸透圧ポンプおよびインプラントにより例示される(Bremerら、Pharm.Biotechnol.10:239(1997);Ranade,“Implants in Drug Delivery”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press社 1995);Bremerら、“Protein Delivery with Infusion Pupms”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press社 1997);Yeweyら、“Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、93〜117頁(Plenum Press社 1997))。他の固体剤形には、クリーム、ペースト剤、他の位相的適用などが含まれる。
リポソームは、静脈内、腹腔内、髄腔内、筋肉内、皮下または経口投与、吸入もしくは鼻腔内投与により、治療用ポリペプチドを患者に送達する一手段を提供する。リポソームは、水性コンパートメントを取り巻く1つ以上の脂質二重層からなる微視的小胞である(Bakker−Woudenbergら、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.12(付録1):S61(1993)、Kim,Drugs 46:618(1993)ならびにRanade,“Site−Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、3〜24頁(CRC Press社 1995)を全体的に参照されたい)。リポソームは組成が細胞膜に類似し、その結果、リポソームは安全に投与され得、生分解性である。調製法によってリポソームは単層状または多層状でよく、リポソームは直径が0.02μm〜10μm超に及び、サイズが異なりうる。リポソームには種々の物質を封入することができる:二重層における疎水性物質区画および内部水性空間内の親水性物質区画(例えば、Machyら、Liposomes In Cell Biology And Pharmacology(John Libbey社 1987)およびOstroら、American J.Hosp.Pharm.46:1576(1989)を参照されたい)。さらに、リポソームのサイズ、二重層の数、脂質組成ならびにリポソームの電荷および表面特徴に変化を持たせることにより、封入物質の治療利用可能性を制御することが可能である。
リポソームは実質的に如何なるタイプの細胞にも吸着し、次に、封入物質を緩徐に放出することができる。あるいは、吸収されたリポソームは貪食性の細胞に取り込まれうる。エンドサイトーシスにはリポソーム脂質のリソソーム内分解および封入物質の放出が続く(Scherphofら、Ann.N.Y.Acad.Sci.446:368(1985))。静脈内投与後、通常、小リポソーム(0.1〜1.0μm)は主に肝臓および脾臓に存在する細網内皮系の細胞によって取り込まれ、一方、3.0μm超のリポソームは肺内に沈着される。細網内皮系の細胞によるより小さいリポソームのこの選択的取り込みは、マクロファージおよび肝臓の腫瘍に化学療法剤を送達するために用いられている。
細網内皮系は、高用量のリポソーム粒子による飽和または薬理学的手段による選択的マクロファージ不活化を含む複数の方法により回避されうる(Claassenら、Biochim.Biophys.Acta 802:428(1984))。加えて、糖脂質またはポリエチレングリコール誘導体化リン脂質のリポソーム膜への取り込みは、細網内皮系による取り込みの有意な減少をもたらすことが示されている(Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1068:133(1991);Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1150:9(1993))。
リポソームは、リン脂質組成を多様化することにより、または受容体もしくはリガンドをリポソームに挿入することにより、特定の細胞または臓器を標的とするように調製することもできる。例えば、高含量の非イオン性界面活性剤で調製されたリポソームは、肝臓を標的とするために用いられている(Hayakawaら、日本国特許04−244,018;Katoら、Biol.Pharm.Bull.16:960(1993))。これらの製剤は、大豆ホスファチジルコリン、α−トコフェロールおよびエトキシル化水素化ヒマシ油(HCO−60)をメタノール中に混合し、その混合物を真空下にて濃縮し、次に、その混合物を水で再構成することにより調製された。大豆由来ステリルグルコシド混合物(SG)およびコレステロール(Ch)を含むジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)のリポソーム製剤も肝臓を標的とすることが示されている(Shimizuら、Biol.Pharm.Bull.20:881(1997))。
あるいは、本発明の抗体、抗体断片、炭水化物、ビタミンおよび輸送蛋白質のような種々の標的化リガンドが、リポソームの表面に結合させうる。例えば、リポソームは、肝細胞の表面上のみに発現するアシアロ糖蛋白質(ガラクトース)受容体を標的とするように、分岐型ガラクトシル脂質誘導体で修飾されうる(KatoおよびSugiyama,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.14:287(1997);Murahashiら、Biol.Pharm.Bull.20:259(1997))。同様に、Wuら、Hepatology 27:772(1998)は、アシアロフェツインによるリポソームの標識化が、リポソームの短縮化血漿中半減期および、肝細胞によるアシアロフェツイン標識リポソームの大幅に亢進した取り込みをもたらすことを示した。一方、分岐型ガラクトシル脂質誘導体を含むリポソームの肝蓄積は、アシアロフェツインの事前注入によって阻害されうる(Murahashiら、Biol.Pharm.Bull.20:259(1997))。ポリアコニチル化ヒト血清アルブミンリポソームは、リポソームを肝細胞に標的化するための別の手法を提供する(Kampsら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 94:11681(1997))。さらに、Gehoら、米国特許第4,603,044号では、肝臓の特殊な代謝細胞と関連する肝胆道受容体に対する特異性を有する、肝細胞を標的としたリポソーム小胞送達系について述べている。
組織標的化のより一般的な手法では、標的細胞は、標的細胞によって発現されるリガンドに特異的なビオチン化抗体で事前に標識化される(Harasymら、Adv.Drug Deliv.Rev.32:99(1998))。遊離抗体の血漿消失後、ストレプトアビジン結合リポソームが投与される。別の手法では、標的化抗体がリポソームに直接結合させる(Harasymら、Adv.Drug.Deliv.Rev.32:99(1998))。
本発明の抗体は、蛋白質のマイクロカプセル化の標準的技法を用いてリポソーム内に封入することができる(例えば、Andersonら、Infect.Immun.31:1099(1981)、Andersonら、Cancer Res.50:1853(1990)およびCohenら、Biochim.Biophys.Acta 1063:95(1991)、Alvingら、“Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies”,Liposome Technology、第二版、第三巻、Gregoriadis(編)、317頁(CRC Press社 1993)、Wassefら、Meth.Enzymol.149:124(1987)を参照されたい)。上記のように、治療上有用なリポソームは種々の成分を含みうる。例えば、リポソームはポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含みうる(Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1150:9(1993))。
分解性ポリマーミクロスフェアは、治療用蛋白質の高い全身濃度を維持するように設計されている。ミクロスフェアは、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性酢酸エチルビニルポリマーのような分解性ポリマーから調製され、蛋白質がそのポリマーに封入される(GombotzおよびPettit,Bioconjugate Chem.6:332(1995);Ranade,“Role of Polymers in Drug Delivery”,Drug Delivery Systems,RanadeおよびHollinger(編)、51〜93頁(CRC Press社 1995);RoskosおよびMaskiewicz,“Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery”,Protein Delivery:Physical Systems,SandersおよびHendren(編)、45〜92頁(Plenum Press社 1997);Bartusら、Science 281:1161(1998);PutneyおよびBurke,Nature Biotechnology 16:153(1998);Putney,Curr.Opin.Chem.Biol.2:548(1988))。ポリエチレングリコール(PEG)コーティングされたナノスフェアも治療用蛋白質の静脈内投与のための担体を提供する(例えば、Grefら、Pharm.Biotechnol.10:167(1997)を参照されたい)。
例えば、AnselおよびPopovich,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第五版(Lea & Febiger社 1990)、Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company 1995)ならびにRanadeおよびHollinger,Drug Delivery Systems(CRC Press社 1996)に示されるように、当業者によって他の剤形が考案されうる。
本発明は、IL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体の組成物ならびに本明細書で述べるそのような抗体を含む方法および治療用途を企図する。そのような組成物は更に担体を含みうる。担体は従来の有機または無機担体でよい。担体例には、水、緩衝液、アルコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などが含まれる。
本発明は、次の非限定的実施例により更に例示される。
(実施例1)
(IL−17F mRNAはマウス喘息モデルにおいてアップレギュレートされる)
マウスでの感作・気道投与モデルにおいてIL−17F mRNA濃度を測定した。第零および七日目に50%Imject Alum(Pierce社)中、組換えヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)アレルゲン1(DerP1)(Indoor biotechnologies社、英国Cardiff)10ugの腹腔内注射により、8〜10週齢のマウス群を感作した。7日後、3日間連続して(第14,15および16日目)50ul PBS中DerP1 20ugをマウスに投与した。この群を表すのは4匹のマウスであった。陰性対照にはリン酸緩衝食塩水(PBS)感作、次に、PBS投与を受けた5匹のマウスが含まれた。加えて、3匹のマウスにDerP1感作を与え、次に、PBS投与を行った。アレルゲンまたは対照投与後48時間にて全肺組織を採取し、全RNAを単離した。
各対象由来の同量の全RNAを用いて第一鎖cDNAを調製した。Qiagen hotstarポリメラーゼ(Qiagen社、Valencia,CA)および製造業者の推奨を用いてIL−17F PCRを適用した。IL−17F PCRでは、センスプライマーzc46098(配列番号9)およびアンチセンスプライマーzc46099(配列番号10)による35サイクルの増幅を用いた。全対象間にて鋳型の質が均一となるように、IL−17F増幅に用いる各鋳型の同量にβアクチンPCRを適用した。BアクチンPCRは、センスプライマーzc44779(配列番号11)およびアンチセンスプライマーzc44776(配列番号12)による25サイクルのPCRを含んだ。
DerP1感作、DerP1投与処置群(喘息シミュレーション)の4匹のマウスはすべて、強力なIL−17F増幅を示した。対照的に、DerP1感作/PBS投与処置群を表す3匹の対象のうちの3匹およびPBS感作/PBS投与処置群の5匹の対象のうちの5匹を含む陰性対照からは微弱なIL−17F増幅が見られた。Bアクチン増幅は喘息模擬対象と少なくとも同程度に陰性対照で強力であり、微弱な陰性対照のIL−17F増幅が鋳型の問題に起因するものではないことを示した。
(実施例2)
(IL−17Aはヒト末梢血単核細胞においてIFN−γおよびTNF−αの濃度上昇を誘導する)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をficoll密度勾配遠心分離により精製し、次に、培地のみ、50ng/mlの抗ヒトCD3抗体または50ng/mlの抗ヒトCD3抗体と1 g/mlの抗ヒトCD28抗体との組合せにて、37℃で一晩インキュベートする。これらの条件の各々に対する同型培養を構築し、サイトカイン(無し)、25ng/mlのヒトIL−17Aまたは25ng/mlのヒトIL−17Fを与える。24時間のインキュベーション後、各培養物由来の上清を採取し、B−D Bioscience社のヒトTh1/Th2サイトメトリックビーズアレイ(CBA)を用いてサイトカイン含量に関してアッセイする。本発明者らは、抗CD3または抗CD3+抗CD28で刺激され、IL−17Aを補充された培養物が、サイトカインが加えられず、またはIL−17Fを受けた培養物に対して有意に上昇した濃度のIFN−γおよびTNF−αを含むことを見出した(各々3〜5倍の上昇)。抗CD3刺激を加えられなかった培養物はサイトカイン濃度の有意な変化を示さなかった。加えて、IL−17Aの添加は、IL−2,IL−4,IL−5およびIL−10を含む、CBAでアッセイされる他のサイトカインの有意な変化を誘導しなかった。このデータは、IL−17FではなくIL−17Aが、抗CD3または抗CD3+抗CD28で刺激されたPBMC培養物において、IFN−γおよびTNF−αの産生を増大させうることを示す。
(実施例3)
(抗IL−17AおよびIL−17F抗体は、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)マウスモデルにおいて疾患の発生率および進行を低下させる)
(A)コラーゲン誘導性関節炎(CIA)マウスモデル)
10週齢の雄DBA/1Jマウス(Jackson Labs社)を13マウス/群の3群に分類する。第21日目に完全フロイントアジュバントに配合された1mg/mlのニワトリII型コラーゲンの50〜100μlの皮内尾注射液をマウスに投与し(Chondrex社により調製、Redmond,WA)、3週間後の第零日目に不完全フロイントアジュバントにて調製されたことを除き、同じ注射液を投与する。第零日目から大部分のマウスが中等度の疾患症状を示す日に及ぶ異なる時点にて4週間、週3回の腹腔内注射として本発明の抗体(例えば、交差反応性抗体または二重特異性抗体)を投与する。投与群には一用量・マウス一匹当たり抗体10または100μgを投与し、対照群には対照ビヒクルであるPBS(Life Technologies社、Rockville,MD)を投与する。2回目のコラーゲン注射後、マウスは関節炎症状を示し始め、大部分のマウスが1.5〜3週間以内に炎症を発症する。カリパスを用いて足の厚みを測定することにより、かつ下述のように各足に臨床スコア(0〜3)を割り当てることにより(0=正常、0.5=足指炎症、1=軽度の足炎症、2=中等度の足炎症、および3=重度の足炎症)、各足における疾患の程度を評価する。
(B)疾患のモニタリング)
マウスは2回目のコラーゲン注射後まもなく足炎症の徴候を示し始め得、一部のマウスは2回目のコラーゲン注射前であっても足指炎症の徴候を有し始めうる。大部分のマウスはブースト注射の1.5〜3週間以内に関節炎を発症するが、一部はより長い期間を必要としうる。通常、このモデルにおける疾患の発生率は95〜100%であり、40匹のマウスを用いた試験では、通常、0〜2匹の非応答マウスが認められる(6週間の観察後に判定)。炎症が始まると、変動する低悪性度の足または足指の炎症の一般的な一過性の発生が起こりうることに留意されたい。この理由により、著明な持続性足膨張が発現するまで、マウスは疾患を確立したとはみなされない。
足における疾患の状態を評価するため、すべてのマウスを毎日観察し、これは、各足に定性的臨床スコアを割り当てることによって行われる。毎日、臨床疾患の状態に従って、各マウスの4本の足をスコアリングする。臨床スコアを求めるため、足は、足指、足自体(手もしくは足)および手もしくは足関節の3区域を有すると考えることができる。これらの区域に対する炎症の程度および重症度に留意し、それには、膨張に対する各足の観察;裂け爪もしくは足指の発赤;任意の足における浮腫もしくは発赤のエビデンスの徴候;腱もしくは骨の微細な解剖学的区分の喪失の徴候;浮腫もしくは発赤に対する手首もしくは足首の評価;ならびに炎症が脚の近位にまで伸展しているか否かの留意が含まれる。1、2または3の足スコアは、第一に、重症度の全体的印象に、第二に、どれほどの区域が関与しているかに基づく。臨床スコアリングに用いるスケールを以下に示す。
(C)臨床スコア)
0=正常
0.5=1本以上の足指が関与しているが、足指のみが炎症を起こしている
1=足(1区域)に関与する軽度の炎症であり、足指(単数または複数)を含みうる
2=足における中等度の炎症であり、一部の足指および/または手首/足首を含みうる(2区域)
3=足、手首/足首および一部もしくはすべての足指における重度の炎症(3区域)
確定疾患は、連続して2日間持続する順位2またはそれ以上の足炎症の定性的スコアと定義される。確定疾患が存在すると同時に、日付を記録し、「確定疾患」に関するそのマウスの最初の日として指定する。
抗コラーゲン抗体の血清濃度ならびに血清免疫グロブリンおよびサイトカイン濃度をモニタリングするため、試験全体にわたって血液を採取する。血清抗コラーゲン抗体は疾患の重症度と十分に相関する。第21日目にマウスを安楽死させ、血清およびCBCのために血液を採取する。各マウスから組織学的検査のために1本の患部足を10%NBF中に採取し、mRNA分析のために1本を液体窒素中に凍結し、−80℃で保存する。さらに、RNA分析のために、1/2脾臓、1/2胸腺、1/2腸間膜リンパ節、1つの肝臓葉および左腎をRNAlaterに採取し、組織学的検査のために、1/2脾臓、1/2胸腺、1/2腸間膜リンパ節、残りの肝臓および右腎を10%NBF中に採取する。免疫グロブリンおよびサイトカインアッセイのために血清を採取し、−80℃で保存する。
あらゆる時点で本発明の抗体を投与するマウス群は、足炎症の開始および/または進行の遅延を特徴とする。これらの結果は、IL−17AおよびIL−17F交差反応性および/または二重特異性抗体が、このモデルに関連する炎症ならびに疾患の発生率および進行を低減することができることを示す。これらの結果は、そのような抗体の投与が血清TNFa,IL−1bおよび抗コラーゲン抗体の濃度低下をもたらしたという観察によって更に支持される。
(実施例4)
(抗IL−17AおよびIL−17F抗体は、炎症性腸疾患(IBD)モデルにおいて疾患の発生率および進行を低下させる)
IBD患者由来の培養腸組織が健常対照由来の組織と比べて高い濃度の炎症性メディエーターを産生することを示すためにこのモデルを設計する。この亢進した炎症性メディエーター(IL−1b、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17AおよびF、IL−18、IL−23、TNF−a、IFN−g、MIPファミリーメンバー、MCP−1、G−およびGM−CSFなどを含むが、これに限定されない)の産生は、炎症経路および下流エフェクター細胞の活性化に対するその作用を経て、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)のようなIBDと関連する症状および病理の原因となる。次に、これらの経路および構成要素はインビボにて認められる組織・細胞の損傷/破壊をもたらす。したがって、このモデルはIBDのこの亢進した炎症性メディエーターの側面をシミュレートすることができる。さらに、健常対照またはヒト腸管上皮細胞(IEC)系由来の腸組織を、これらの炎症性構成要素の存在下で培養すると、炎症経路シグナル伝達および組織・細胞損傷のエビデンスを認めることができる。
インビボにてヒトIBDにおいて有効となりうる治療法は、炎症性メディエーターの産生および/または存在を阻害し、かつ/あるいは中和することにより、上記エキソビボまたはIECモデルにおいて奏功しうる。
このモデルにおいて、ヒト腸組織をIBD患者または腸生検、再切開を受けている健常対照または死後組織採取から採取し、Alexakisら(Gut 53:85−90;2004)の変形例を用いて処理する。無菌条件下にて多量のPBSで試料を穏やかに洗浄し、次に、完全組織培養培地(細菌の異常増殖を阻止するための抗生物質を加えて)の存在下、組織切片を培養する。組織切片の同じプール由来の試料を以下の1つで処理する:ビヒクル(PBS);組換えヒト(rh)IL−17A;rhIL−17F;またはrhIL−17A+rhIL−17F。加えて、これらを本発明の抗体(例えば、交差反応性抗体または二重特異性抗体)の有無にかかわらずに処理する。この実験的プロトコルは、細胞が既存のストックから継代されることを除き、ヒトIEC系に関する試験のために続けられる。培養時間を変えた後(1時間から数日間まで)、上清を採取し、上記一覧を含む炎症性メディエーターの濃度に関して分析する。IBD患者由来の試料あるいはrhIL−17Aおよび/またはFで処理された試料において、未処理健常対照組織試料と比べて炎症性サイトカインおよびケモカインの濃度は上昇する。本発明の抗体の添加は炎症性メディエーターの産生を著明に低下させ、したがって、ヒトIBDにおいて有効であることが期待されうる。
(実施例5)
(抗IL−17AおよびIL−17F抗体は、多発性硬化症(MS)モデルにおいて疾患の発生率および進行を低下させる)
多発性硬化症(MS)は、リンパ球細胞および単核細胞の炎症性浸潤ならびにCNS全体にわたる脱髄の存在を含む複数の因子によって媒介されると考えられている複雑な疾患である。ミクログリアは中枢神経系(CNS)に集合するマクロファージ様細胞であり、損傷または感染と同時に活性化する。ミクログリアはMSを含む種々のCNS疾患に重要な役割を果たすものとして関係づけられており、疾患の開始、進行のメカニズムおよび治療法を研究するために用いられうる(Nagaiら、Neurobiol Dis 8:1057−1068;2001;Olsonら、J Neurosci Methods 128:33−43;2003)。したがって、不死化ヒトミクログリア細胞系および/または樹立されたヒト星状膠細胞系は、これらの細胞型に対する炎症性メディエーターの作用の一部およびその中和の可能性を研究するために用いることができる。炎症性メディエーター(IL−1b、IL−6、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17AおよびF、IL−18、IL−23、TNF−a、IFN−g、MIPファミリーメンバー、RANTES、IP−10、MCP−1、G−およびGM−CSFなどを含むが、これに限定されない)は、炎症経路および下流エフェクター細胞の活性化に対するその作用を経て、MSと関連する症状および病理の原因となりうる。
IL−17AおよびIL−17Fの炎症促進作用ならびに本発明の抗体のこれらの作用を中和または低減する能力を評価するため、培養グリア細胞を以下の1つで処理する:ビヒクル;rhIL−17A;rhIL−17F;rhIL−17A+IL−17F。加えて、これらを本発明の抗体の有無にかかわらずに処理する。培養時間を変えた後(1時間から数日間まで)、上清および細胞を採取し、上記一覧を含む炎症性メディエーターの濃度および/または発現に関して分析する。ビヒクル単独で処理された培養物と比べて、rhIL−17Aおよび/またはIL−17Fの存在下では炎症性サイトカインおよびケモカインの濃度は上昇する。本発明の抗体の添加は炎症性メディエーターの産生および発現を著明に低下させ、したがって、ヒトMSと関連する炎症側面において有効であることが期待されうる。
(実施例6)
(抗IL−17AおよびIL−17F抗体は、関節リウマチ(RA)および骨関節炎(OA)モデルにおいて疾患の発生率および進行を低下させる)
RAおよびOA患者由来のヒト滑膜培養物(滑膜マクロファージ、滑膜線維芽細胞および関節軟骨細胞を含む)および外植片が、健常対照由来の培養物/外植片と比べて高い濃度の炎症性メディエーターを産生することを示すためにこのモデルを設計する。この亢進した炎症性メディエーター(オンコスタチンM、IL−1b、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17AおよびF、IL−18、IL−23、TNF−a、IFN−g、IP−10、RANTES、RANKL、MIPファミリーメンバー、MCP−1、G−およびGM−CSF、一酸化窒素などを含むが、これに限定されない)の産生は、炎症経路および下流エフェクター細胞の活性化に対するその作用を経て、RAおよびOAと関連する症状および病理の原因となる。次に、これらの経路および構成要素は、炎症性浸潤、軟骨および基質の喪失/破壊、骨量減少ならびにプロスタグランジンおよびシクロオキシゲナーゼのアップレギュレーションをもたらす。したがって、このモデルはインビトロおよびエキソビボ試験においてRAおよびOAの破壊的炎症側面をシミュレートすることができる。さらに、健常対照由来の外植片および滑膜培養物を、これらの複数の炎症性構成要素(例えば、オンコスタチンM,TNF−a,IL−1b,IL−6,IL−17AおよびF,IL−15など)の存在下で培養すると、炎症経路シグナル伝達を認めることができる。インビボにてヒトRAにおいて有効となりうる治療法は、炎症性メディエーターの産生および/または存在を阻害し、かつ/あるいは中和することにより、上記インビトロおよびエキソビボモデルにおいて奏功しうる。
このモデルにおいて、ヒト滑膜外植片をRA、OA患者または関節置換を受けている健常対照または死後組織採取から採取し、WooleyおよびTetlow(Arthritis Res 2:65−70;2000)ならびにvan‘t Hofら(Rheumatology 39:1004−1008;2000)の変形例を用いて処理する。滑膜線維芽細胞、滑膜マクロファージおよび関節軟骨細胞の培養物も検討する。同型試料を以下の1つ:ビヒクル(PBS);組換えヒト(rh)IL−17A;rhIL−17F;またはrhIL−17A+rhIL−17Fで処理し、一部の試料は、オンコスタチンM、TNF−a、IL−1b、IL−6、IL−17A、IL−17FおよびIL−15の様々な組合せを含む。加えて、これらを本発明の抗体の有無にかかわらずに処理する。培養時間を変えた後(1時間から数日間まで)、上清を採取し、上記一覧を含む炎症性メディエーターの濃度に関して分析する。RAまたはOA患者由来の試料あるいはrhIL−17Aおよび/またはF(単独または他の炎症性サイトカインと組み合わせて)で処理された試料において、未処理健常対照外植片または未処理細胞培養物と比べて炎症性サイトカインおよびケモカインの濃度は上昇する。本発明の抗体の添加は炎症性メディエーターの産生を著明に低下させ、したがって、ヒトRAおよびOAにおいて有効であることが期待されうる。
(実施例7)
(マウス疾患モデルにおけるIL−17AおよびIL−17Fの発現)
IL−17AおよびIL−17Fの発現に関して既知の技法を用いて、疾患(喘息、DSS大腸炎、アトピー性皮膚炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎)の4つのマウスモデルを分析した。
喘息モデルにおいて、IL−17AおよびIL−17Fは、罹患および非罹患マウスにおける肺、脾臓、肺流入領域リンパ節および肺浸潤細胞において、極めて低いレベルから検出不可能なレベルにて発現する。
喘息モデルに反して、IL−17AおよびIL−17FはDSS大腸炎モデルにおいて近位および遠位結腸にて罹患マウスにおいて高度にアップレギュレートされたが、正常マウスではアップレギュレートされなかった。いずれのサイトカインも腸間膜リンパ節において有意にアップレギュレートされなかった。さらに、急性DSS誘導性大腸炎の状況では両方のサイトカインのアップレギュレーションが見出されたが、慢性DSS誘導性大腸炎では見出されなかった。
アトピー性皮膚炎では、IL−17A mRNAは検出できなかった。IL−17Fは皮膚および皮膚流入領域リンパ節に発現することが見出されたが、疾患で有意に制御されるようには思われなかった。
実験的アレルギー性脳脊髄炎では、IL−17AおよびIL−17Fは罹患マウスにおける脊髄においてアップレギュレートされるように思われたが、健常マウスではそうではなかった。IL−17Fは脊髄に比べてリンパ節において高度に発現した可能性もあるが、リンパ節における発現は疾患で制御されなかった。しかし、これらの組織における全体的な発現レベルはかなり低かった。
要するに、IL−17AおよびIL−17Fの発現は、DSS誘導性大腸炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎モデルの状況では疾患で制御されるように思われるが、喘息またはアトピー性皮膚炎ではそのようではなかった。
(実施例8)
(ヒトIL−17AおよびFのE.coli発現ベクターの構築)
(IL−17A)
(pCHAN28の構築)
ヒトIL−17A発現構築物を以下のように作製した。2つのオリゴヌクレオチドプライマーzc48,686(配列番号13)およびzc48,685(配列番号14)を用いたPCR増幅により、未変性IL−17A配列を作製した。PCR条件は次の通りであった:94℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で1分間を25サイクル;次に、4℃で浸漬。DNA断片を2容積の無水エタノールで沈殿させた。ペレットを10μL H2O中に再懸濁させ、SmaI切断レシピエントベクターpTAP238への組換えに用い、ヒトIL−17Aをコードする構築物を生成した。その結果生じたクローンをpCHAN28と指定した。それらをNotI(10μL DNA,5μLバッファー3 New England BioLabs社、2μL Not I,33μL H2O 37℃で1時間)で消化し、T4 DNAリガーゼバッファー(7μLの前消化物、2μLの5倍バッファー、1μLのT4 DNAリガーゼ)で再連結した。このステップでは、ベクターを簡素化するために酵母配列CEN−ARSを除去した。酵母配列の非存在を確認するため、DNAのアリコートをPvu2およびPstIで消化した。ヒトIL−17A発現構築物をE.coli株W3110に形質転換させた。ヒトIL−17Aのポリヌクレオチド配列は配列番号5に示され、対応するコードされたIL−17Aポリペプチドは配列番号6に示される。
(IL−17F)
(pTAP419の構築)
ヒトIL−17F発現構築物を以下のように作製した。2つのオリゴヌクレオチドプライマーzc42,852(配列番号15)およびzc42,854(配列番号16)を用いたPCR増幅により、未変性IL−17F配列を作製した。PCR条件は次の通りであった:94℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で1分間を25サイクル;次に、4℃で浸漬。DNA断片を2容積の無水エタノールで沈殿させた。ペレットを10μL H2O中に再懸濁させ、SmaI切断レシピエントベクターpTAP238への組換えに用い、ヒトIL−17Fをコードする構築物を生成した。その結果生じたクローンをpTAP419と指定した。それらをNotI(10μL DNA,5μLバッファー3 New England BioLabs社、2μL Not I,33μL H2O 37℃で1時間)で消化し、T4 DNAリガーゼバッファー(7μLの前消化物、2μLの5倍バッファー、1μLのT4 DNAリガーゼ)で再連結した。このステップでは、ベクターを簡素化するために酵母配列CEN−ARSを除去した。酵母配列の非存在を確認するため、DNAのアリコートをPvu2およびPstIで消化した。ヒトIL−17F発現構築物をE.coli株W3110に形質転換させた。ヒトIL−17Fのポリヌクレオチド配列は配列番号7に示され、対応するコードされたIL−17Fポリペプチドは配列番号8に示される。
(実施例9)
(E.coliにおけるIL−17Aの発現)
ヒトIL 17A CH6および発現ベクターpZMP20を用いて相同組換えによってpIL 17A CH6を含む発現プラスミドを構築した。プライマーzc48895(配列番号17)およびzc48893(配列番号18)を用いたPCR増幅により、断片を生成した。PCR断片IL 17A CH6は、ヒトIL 17Aをテンプレートとして用いて作製された、C末端における6xHisタグに融合したIL 17Aコード領域を含む。該断片は、挿入ポイントにおいてpZMP20ベクター配列との5’重複部分およびpZMP20ベクターとの3’重複部分を含む。用いられたPCR条件は次の通りであった:94℃で5分間を1サイクル;94℃で1分間、次に55℃で2分間、次に72℃で3分間を35サイクル;72℃で10分間を1サイクル。PCR反応混合物を1%アガロースゲル上に流し、QIAquick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen社、カタログ番号28704)を用いてインサートのサイズに対応するバンドをゲル抽出した。
プラスミドpZMP20は、CMVプロモーター、コード配列の挿入のための多数の制限部位、otPAシグナルペプチド配列(この場合、組換えによって除去される);ポリオウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントおよび膜貫通ドメインのC末端において切断されたCD8の細胞外ドメイン;E.coli複製開始点;SV40プロモーター、エンハンサーおよび複製開始点、DHFR遺伝子およびSV40ターミネーターを含む哺乳動物選択可能マーカー発現ユニット;ならびにS.cerevisiaeにおける選択・複製に必要なURA3およびCEN−ARS配列を有する発現カセットを含む哺乳動物発現ベクターである。プラスミドpZMP20をBglIIで切断し(挿入ポイントを作製)、その後、PCR断片と共に酵母に組み換えた。100マイクロリットルのコンピテント酵母(S.cerevisiae)細胞を独立して10μlのインサートDNAおよび100ngの切断pZMP20ベクターと混合し、その混合物を0.2cm電気穿孔キュベットに移した。0.75kV(5kV/cm)、∞オームおよび25μFの電源(BioRad Laboratories社、Hercules,CA)設定を用いて酵母/DNA混合物に電気パルスを印加した。600μlの1.2Mソルビトールを該キュベットに加え、酵母を100μlおよび300μlアリコートにて2つのURA−Dプレート上に蒔き、30℃でインキュベートした。約72時間後、単一プレート由来のUra+酵母形質転換細胞を1ml H2O中に再懸濁させ、短時間回転させて酵母細胞をペレット化した。細胞ペレットを0.5mlの溶解緩衝液(2%Triton X−100、1%SDS、100mM NaCl、10mM Tris(pH8.0)、1mM EDTA)中に再懸濁させた。500マイクロリットルの溶解混合物を、250μl酸洗浄ガラスビーズおよび300μlフェノール−クロロホルムを含むEppendorfチューブに加え、3分間ボルテックスし、最速にてEppendorf遠心分離機において5分間回転させた。300マイクロリットルの水相を未使用チューブに移し、DNAを600μlエタノール(EtOH)で沈殿させ、次に、最速にて30分間遠心分離した。該チューブをデカントし、ペレットを1mLの70%エタノールで洗浄した。該チューブをデカントし、DNAペレットを30μl TE中に再懸濁させた。
5μlの酵母DNAプレップおよび50μlの細胞を用いてエレクトロコンピテントE.coli宿主細胞(DH12S)の形質転換を行った。2.0kV,25μFおよび400オームにて細胞に電気パルスを印加した。電気穿孔後、1ml SOC(2%Bacto(商標)トリプトン(Difco社、Detroit,MI)、0.5%酵母抽出物(Difco社)、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、10mM MgSO4、20mMグルコース)を加え、次に、50μlおよび200μlアリコートにて2つのLB AMPプレート(LBブロス(Lennox社)、1.8%Bacto(商標)寒天(Difco社)、100mg/Lアンピシリン)上に細胞を蒔いた。
構築物のための3つのクローンのインサートを配列解析に付し、正確な配列を含む各構築物のための1つのクローンを選択した。製造業者の使用説明書に従って市販キット(QIAGENプラスミドメガキット、Qiagen社、Valencia,CA)を用いて比較的大きいスケールのプラスミドDNAを単離した。
一過性トランスフェクションによってpIL 17A CH6の発現を達成した。6つの1000mLフラスコに250mLの293F細胞を1E6 c/mLにて播種し、傍らに置いた。20mLのOptiMEM(Invitrogen社、カタログ番号31985−070)を2つの50mL円錐チューブの各々に入れた。2mLのリポフェクタミン2000(Invtirogen社、カタログ番号11668−019)を、OptiMEM含有50mL円錐チューブの一方に混合し、1.5mgのIL 17A CH6 pZMP20発現プラスミドを他方のチューブに入れた。チューブを数回反転させ、室温で5分間インキュベートさせた。次に、2つのチューブを混合し、数回反転させ、室温で30分間インキュベートさせた。次に、細胞培養物を回転させながら、DNA−リポフェクタミン2000混合物を6つのフラスコの各々に均等に配分した。次に、37℃、6%CO2にてフラスコを振盪機上のインキュベーターに入れ、120RPMにて振盪した。96時間後に培養物を採取した。
(実施例10)
(E.coliにおけるIL−17Fの発現)
ヒトIL 17F CH6および発現ベクターpZMP20を用いて相同組換えによってpIL 17F CH6を含む発現プラスミドを構築した。プライマーzc48894(配列番号19)およびzc48892(配列番号20)を用いたPCR増幅により、断片を生成した。ヒトIL 17F CH6は、ヒトIL 17Fの従前に作製されたクローンをテンプレートとして用いて作製された、C末端における6xHisタグに融合したIL 17Fコード領域を含む。該断片は、挿入ポイントにおいてpZMP20ベクター配列との5’重複部分およびpZMP20ベクターとの3’重複部分を含む。用いられたPCR条件は次の通りであった:94℃で5分間を1サイクル;94℃で1分間、次に55℃で2分間、次に72℃で3分間を35サイクル;72℃で10分間を1サイクル。PCR反応混合物を1%アガロースゲル上に流し、QIAquick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen社、カタログ番号28704)を用いてインサートのサイズに対応するバンドをゲル抽出した。
プラスミドpZMP20は、CMVプロモーター、コード配列の挿入のための多数の制限部位、otPAシグナルペプチド配列(この場合、組換えによって除去される);ポリオウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントおよび膜貫通ドメインのC末端において切断されたCD8の細胞外ドメイン;E.coli複製開始点;SV40プロモーター、エンハンサーおよび複製開始点、DHFR遺伝子およびSV40ターミネーターを含む哺乳動物選択可能マーカー発現ユニット;ならびにS.cerevisiaeにおける選択・複製に必要なURA3およびCEN−ARS配列を有する発現カセットを含む哺乳動物発現ベクターである。
プラスミドpZMP20をBglIIで切断し(挿入ポイントを作製)、その後、PCR断片と共に酵母に組み換えた。100マイクロリットルのコンピテント酵母(S.cerevisiae)細胞を独立して10μlのインサートDNAおよび100ngの切断pZMP20ベクターと混合し、その混合物を0.2cm電気穿孔キュベットに移した。0.75kV(5kV/cm)、∞オームおよび25μFの電源(BioRad Laboratories社、Hercules,CA)設定を用いて酵母/DNA混合物に電気パルスを印加した。600μlの1.2Mソルビトールを該キュベットに加え、酵母を100μlおよび300μlアリコートにて2つのURA−Dプレート上に蒔き、30℃でインキュベートした。約72時間後、単一プレート由来のUra+酵母形質転換細胞を1ml H2O中に再懸濁させ、短時間回転させて酵母細胞をペレット化した。細胞ペレットを0.5mlの溶解緩衝液(2%Triton X−100、1%SDS、100mM NaCl、10mM Tris(pH8.0)、1mM EDTA)中に再懸濁させた。500マイクロリットルの溶解混合物を、250μl酸洗浄ガラスビーズおよび300μlフェノール−クロロホルムを含むEppendorfチューブに加え、3分間ボルテックスし、最速にてEppendorf遠心分離機において5分間回転させた。300マイクロリットルの水相を未使用チューブに移し、DNAを600μlエタノール(EtOH)で沈殿させ、次に、最速にて30分間遠心分離した。該チューブをデカントし、ペレットを1mLの70%エタノールで洗浄した。該チューブをデカントし、DNAペレットを30μl TE中に再懸濁させた。
5μlの酵母DNAプレップおよび50μlの細胞を用いてエレクトロコンピテントE.coli宿主細胞(DH12S)の形質転換を行った。2.0kV,25μFおよび400オームにて細胞に電気パルスを印加した。電気穿孔後、1ml SOC(2%Bacto(商標)トリプトン(Difco社、Detroit,MI)、0.5%酵母抽出物(Difco社)、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、10mM MgSO4、20mMグルコース)を加え、次に、50μlおよび200μlアリコートにて2つのLB AMPプレート(LBブロス(Lennox社)、1.8%Bacto(商標)寒天(Difco社)、100mg/Lアンピシリン)上に細胞を蒔いた。
構築物のための3つのクローンのインサートを配列解析に付し、正確な配列を含む各構築物のための1つのクローンを選択した。製造業者の使用説明書に従って市販キット(QIAGENプラスミドメガキット、Qiagen社、Valencia,CA)を用いて比較的大きいスケールのプラスミドDNAを単離した。
一過性トランスフェクションによってヒトIL 17F CH6の発現を達成した。6つの1000mLフラスコに250mLの293F細胞を1E6 c/mLにて播種し、傍らに置いた。20mLのOptiMEM(Invitrogen社、カタログ番号31985−070)を2つの50mL円錐チューブの各々に入れた。2mLのリポフェクタミン2000(Invtirogen社、カタログ番号11668−019)を、OptiMEM含有50mL円錐チューブの一方に混合し、1.5mgのIL 17F CH6 pZMP20発現プラスミドを他方のチューブに入れた。チューブを数回反転させ、室温で5分間インキュベートさせた。次に、2つのチューブを混合し、数回反転させ、室温で30分間インキュベートさせた。次に、細胞培養物を回転させながら、DNA−リポフェクタミン2000混合物を6つのフラスコの各々に均等に配分した。次に、37℃、6%CO2にてフラスコを振盪機上のインキュベーターに入れ、120RPMにて振盪した。96時間後に培養物を採取した。
(実施例11)
(IL−17AおよびIL−17Fに結合するモノクローナル抗体の特徴づけ)
各セットにおける最良の1回目のクローン由来の上清を含む抗体に関して2つのアッセイを行う。第一に、マウス−IgG ELISAキット(カタログ番号1 333 151(Roche Applied Science社)を用いて、中和アッセイにおいて用いられる各上清中のIgG濃度を定量する。これにより、各上清に対する特定の中和活性の定量が可能になり、したがって、最も強力な抗IL 17AおよびIL−17FならびにIL−17A+IL−17F中和mAbを産生しているハイブリドーマを特定した。この分析から最も強力なmAbを更なる特徴づけのために選択する。第二に、Biacore 1000表面プラズモン共鳴装置を用いて上清に関して予備的エピトープ特異性(「ビニング(binning)」)試験を行う。
(競合エピトープ結合)
IL−17AおよびIL−17Fに対するモノクローナル抗体の機能的結合特性を評価するため、エピトープビニング(binning)およびウエスタンブロット試験を行う。IL−17AまたはIL−17F上の異なるエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体を決定するため、ビニング(binning)試験を完結する。IL−17AまたはIL−17F上の同じまたは類似のエピトープに結合するモノクローナル抗体は、それぞれ、同時に結合することができず、単一のファミリーまたは「ビン(bin)」に機能上分類される。IL−17AまたはIL−17F上の異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体は、同時に結合することができ、別個のファミリーまたは「ビン(bin)」に分類される。Biacore 1000(商標)装置を用いて試験を行った。Biacoreは、ルーチンに用いられるモノクローナル抗体のエピトープビン(bin)パネルである種々のアッセイ形式の単に1つである。多くの参考文献(例えば、The Epitope Mapping Protocols,Methods in Molecular Biology、第六巻6 Glenn E.Morris(編))にモノクローナル抗体を「ビン(bin)」するために(当業者が)用いることができる代替方法が述べられており、IL−17AおよびIL−17Fに対するモノクローナル抗体の結合特性に関する一貫性のある情報を得ることが期待されうる。エピトープビニング(binning)試験は、可溶性未変性抗原、E.coli由来または哺乳動物由来の組換えIl−17AおよびIL−17Fを用いて行う。
(ウエスタンブロット)
ウエスタンブロット形式を用いて、ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体の、変性・減少/変性したIL−17Aおよび/またはIL−17Fに結合し、これを検出する能力も評価する。
(エピトープビニング(binning))
(A)材料および方法)
Biacore 1000(商標)システム(Biacore社、スウェーデンUppsalla)においてエピトープビニング(binning)試験を行う。方法は方法定義言語(Method Definition Language)(MDL)を用いてプラグラムされ、Biacore制御ソフトウェアv1.2を用いて実行される。ポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、West Grove,PA)をBiacore CM5センサーチップに共有結合的に固定化し、一連の試験の一次モノクローナル抗体を該チップに結合する(捕捉する)ために用いる。次に、ポリクローナルIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、West Grove,PA)を用いて該チップ上の非占有Fc結合部位をブロックする。次に、IL−17AまたはIL−17Fを注入し、捕捉された一次モノクローナル抗体に特異的に結合させる。Biacore装置はセンサーチップ表面に結合した蛋白質の質量を測定し、したがって、一次抗体およびIL−17AもしくはIL−17F抗原の結合を各サイクルについて検証する。一次抗体および抗原の該チップへの結合後、一連の試験のモノクローナル抗体を二次抗体として注入し、予め結合した抗原に結合させる。二次モノクローナル抗体が一次モノクローナル抗体と同時にIL−17AまたはIL−17F抗原に結合することができる場合、該チップの表面上の質量の増加、すなわち、結合が検出される。しかし、二次モノクローナル抗体が一次モノクローナル抗体と同時にIL−17AまたはIL−17F抗原に結合することができない場合、付加的質量、すなわち、結合は検出されない。バックグラウンド(結合がない)シグナルのレベルを確定するため、各モノクローナル抗体をそれ自体に対して試験し、陰性対照として用いる。
各精製モノクローナル抗体をパネル全体の選択モノクローナル抗体と組み合わせて一次抗体として試験する。すべての精製モノクローナル抗体を等濃度にて試験する。サイクル間において該チップ上のヤギ抗マウスIgG Fc捕捉抗体を20mM HClで再生させる。一次抗体または抗原の非存在下での二次抗体の応答の欠如を示すため、対照サイクルを実行する。BioEvaluation 3.2 RCIソフトウェアを用いてデータを編集し、データ処理のためにExcel(商標)にロードする。
(B)ウエスタンブロット)
ウエスタンブロット形式を用いて、各クローン由来のモノクローナル抗体の、変性・減少/変性した2つの供給源由来のIl−17AまたはIL−17Fを検出する能力を評価する。ウエスタンブロット形式においてIL−17Aおよび/またはIL−17Fを検出することが公知であるウサギポリクローナル抗体を陽性対照として用いる。
(材料および方法)
IL−17AおよびIL−17F抗原を2つの供給源から得る:IL−17AおよびIL−17FをE.coliまたは哺乳動物細胞、例えば、293細胞(本明細書で述べる)において産生させ、精製する。各抗原のアリコート(100ng/レーン)を分子量スタンダード(SeeBlue;Invitrogen社)と共に非還元または還元試料緩衝液(Invitrogen社)中の4〜12%NuPAGE Bis−Trisゲル(Invitrogen社、Carlsbad,CA)上にロードし、1倍MES泳動緩衝液(Invitrogen社)中にて電気泳動を行った。電気泳動後、蛋白質を該ゲルから0.2μmニトロセルロース膜(Invitrogen社)に移した。ニトロセルロースブロットをWestern Aバッファー(ZymoGenetics社、50mM Tris(pH7.4)、5mM EDTA、150mM NaCl、0.05% Igepal、0.25%ゼラチン)中2.5%脱脂粉乳中にて一晩ブロックし、次に、切片に切断し、各抗体(Western Aバッファー中0.2μg/mLの各モノクローナル抗体または0.5μg/mLのウサギポリクローナル抗体)に曝露させた。次に、西洋わさびペルオキシダーゼにコンジュゲートした二次抗体;ヒツジ抗マウスIgG−HRP(Amersham社:Piscataway,NJ)を用いてモノクローナル抗体を探り、ロバ抗ウサギIgG−HRP(Amersham社)を用いてポリクローナル抗体を探るためにブロットを探索する。次に、化学発光試薬(Lumi−Light Plus Reagent:Roche社、ドイツMannheim)を用いて結合した抗体を検出し、ブロット像をLumi−Imager(Mannheim−Boehringer社)またはX線フィルム(Kodak社)上に記録する。
(実施例12)
(293一過性細胞系由来のC末端His標識IL17A蛋白質の精製)
(マウスIL−17A)
固形物(それぞれ、Fluka社、JT Baker社)を加えることにより、供給された培地を25mMイミダゾール、500mM NaCl(pH7.5)に調整した(総容積1.41L)。ウエスタンブロット、RP−HPLC(1.11mg/L)によってhis標識標的の発現を分析した。調整した培地を4℃で一晩、Ni NTA His Bind Superflow(Novagen社)カラム(5mL,1cm径、Millipore社)上にロードした。IL 17A標的物質がないようにRP−HPLCおよびウエスタンブロットによって通過液を調べた。A280nmにおけるUVベースラインが安定化するまで、50mM NaPO4、25mMイミダゾール、0.5M NaCl(pH7.5)でNi NTAカラムを洗浄した。2ステップにてカラムを溶出した:500mMイミダゾールストックを用いて上記バッファーを45mMおよび500mMイミダゾールに調整した。銀染色分析によって溶出画分を調べ、プールされた標的物質を含む画分に関して調べた(500mMステップ溶出)。Ni NTAプールをRP−HPLCによって分析した。Ni NTAプールを10kD MWCO Ultracel膜(Millipore社)に対して2mLに濃縮し、1.02mL/分にて50mM NaPO4,109mM NaCl(pH7.3)で流れるSuperdex(登録商標)75カラム(GE Healthcare社、12/60mm)上に注入した。2つのピークが分離し、銀染色により分析した。マウスIL 17Aは残る夾雑蛋白質から良好に分離した。10kDa MWCO Ultracel膜(Millipore社)を用いてプールされた純粋標的物質を含む画分を再度2.0mLに濃縮し、0.22umにて濾過し、アリコートした。
(ヒトIL−17A)
固形物(それぞれ、Fluka社、JT Baker社)を加えることにより、供給された培地を25mMイミダゾール、500mM NaCl(pH7.5)に調整した(総容積1.41L)。A1022Gをスタンダードとして用いたウエスタンブロット、更にRP−HPLC(3.19mg/L)によってhis標識標的物質の発現を分析した。調整した培地を4℃で一晩、Ni NTA His Bind Superflow(Novagen社)カラム(5mL,1cm径、Millipore社)上にロードした。IL 17A標的物質がないようにRP−HPLCおよびウエスタンブロットによって通過液を調べた。A280nmにおけるUVベースラインが安定化するまで、50mM NaPO4、25mMイミダゾール、0.5M NaCl(pH7.5)でNi NTAカラムを洗浄した。2ステップにてカラムを溶出した:500mMイミダゾールストックを用いて上記バッファーを45mMおよび500mMイミダゾールに調整した。銀染色分析によって溶出画分を調べ、プールされた標的物質を含む画分に関して調べた(500mMステップ溶出)。A1022Fをスタンダードとして用いたRP−HPLCによってNi NTAプールを分析した。Ni NTAプールを10kD MWCO Ultracel膜(Millipore社)に対して5mLに濃縮し、2.71mL/分にて50mM NaPO4,109mM NaCl(pH7.3)で流れるSuperdex(登録商標)75カラム(GE Healthcare社、26/60mm)上に注入した。2つのピークが分離し、銀染色により分析した。マウスIL 17Aは残る夾雑蛋白質から良好に分離した。10kDa MWCO Ultracel膜(Millipore社)を用いてプールされた純粋標的物質を含む画分を再度9.0mLに濃縮し、0.22umにて濾過し、アリコートした。
(実施例13)
(293一過性細胞系由来のC末端His標識IL17F蛋白質の精製)
一過性発現からの293F培地におけるIMACアフィニティー捕捉。培地を25mMイミダゾール;25mM NaPhos;400mM NaClおよびpH7.5に調整した。このようにして調整した培地を、25mM NaPhos;25mMイミダゾール;500mM NaCl(pH7.5)にて平衡したQiagen NTA Superflow(1cm径)の5ml層上に1ml/分にてロードした。ロードの完了後、カラムを20CV平衡化緩衝液で洗浄し、その後、溶出緩衝液と25mM NaPhos;500mMイミダゾール;500mM NaCl(pH7.5)との間に形成された10CV勾配で溶出した。RP−HPLCによって産物に関して画分をアッセイし、プールし、SECステップのために濃縮した。IMACステップからの濃縮プールを、50mM NaPhos;109mM NaCl(pH7.2)にて平衡したPharmacia Superdex 75 SECカラム上に注入した。約0.5CVにて溶出する大きな対称ピークが産物を含む。アリコート化に備えて試料をプールし、0.2ミクロンまで無菌濾過した。
(実施例14)
(上皮性関門機能によるヒトIBD試料におけるIL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体の有効性)
上皮性関門の完全性維持は健康な胃腸管の保持において重要な因子である。実験的エビデンスは、腸における上皮性関門の漏出性がIBDの発症の原因となりうることを示唆している。通常、腸固有層にある免疫細胞は、細胞−細胞接触または可溶性因子の産生によって腸上皮細胞と相互作用し、免疫監視を維持して上皮性関門の完全性に寄与する。しかし、遷延性または調節不全の免疫介在性炎症は、上皮性関門の細胞の完全性および機能における障害の原因になりうる。以下の試験は、上皮性関門の完全性に対するT細胞由来IL−17Aおよび/またはIL−17Fの直接作用を測定するように設計したものである。
本実施例では、Caco−2細胞のような腸上皮細胞系を半透膜上に分化させ、IBD患者または正常患者からの生検由来のT細胞または単球と基底側において共培養する。経上皮電気抵抗または染料拡散に対する単層の抵抗性の評価を用いて、上皮単層の完全性を経時的にモニタリングする。共培養物における単層の経上皮抵抗性の低下は、共培養物におけるT細胞または単球の活性に誘導される単層の崩壊を示唆しうる。本発明の抗体のようなIL−17AおよびIL−17Fのインヒビターを用いて、上皮単層の崩壊に対するIL−17AおよびIL−17Fの相対的寄与度を求め、IL−17AおよびIL−17Fのインヒビターが上皮性関門の完全性を維持するのに有効でありうるかを試験することができうる。そのような分子による活性化T細胞に誘導される上皮単層の崩壊の阻止は、本発明の抗体がヒトにおけるIBDの治療に有効でありうることを示唆しうる。
IBD患者由来の一次上皮によって形成される単層を用いて共培養系を作製することもでき、これらの細胞が健常患者由来の上皮細胞と比べてIL−17AおよびIL−17Fに対してより感受性が高いかを判定する。そうであれば、これらのデータは、IL−17AおよびIL−17Fの阻害がIBDの治療に適した方策でありうることを示唆しうる。
(実施例15)
(正常およびヒトIBD試料由来の粘膜固有層T細胞および単球/マクロファージに対するIL−17AおよびIL−17Fの作用)
調節不全または持続性免疫介在性炎症は、組織損傷または不適切なまたは遷延性免疫応答に至る恒久的な歪みを経て、IBDと関連する症状および病理の原因になりうる。このモデルでは、腸組織の隣接環境のサイトカイン環境に存在しうるIL−17AおよびIL−17Fへの疾患関連T細胞および単球の曝露の下流の結果の可能性を判定することができる。
インビボにてヒトIBDにおいて有効となりうる治療法は、炎症性メディエーター(IL−1b、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17AおよびF、IL−18、IL−23、TNF−a、IFN−g、MIPファミリーメンバー、MCP−1、G−およびGM−CSFなどを含むが、これに限定されない)の産生および/または存在を阻害し、かつ/あるいは中和することにより、上記エキソビボモデルにおいて奏功しうる。
このモデルでは、HBSS中にてハサミを用いて慎重に生検試料を切り刻むことによってT細胞および単球/マクロファージを生検試料から単離し、コラゲナーゼおよびディスパーゼIIで処理し、振盪機内にて37℃で1時間インキュベートする。細胞懸濁液を、ナイロンメッシュを通して濾過して細片および細胞凝集塊を除去し、HBSS中にて多数回洗浄する。T細胞およびマクロファージ/単球は直接細胞選別またはビーズの枯渇/富化プロトコルを用いて単離することができる。IL−17AおよびIL−17Fの存在下にて単離細胞をインキュベートする。これにより、T細胞および単球/マクロファージによる炎症性メディエーターの産生が誘導され、あるいは引き続くT細胞応答を高度に炎症促進性の応答に歪めることになる。IBD患者由来の細胞によって産生される炎症性メディエーターのタイプと正常患者由来の細胞によって産生される炎症性メディエーターのタイプとの比較を行うことができ、IBD患者由来のT細胞および単球/マクロファージが、IL−17AおよびIL−17Fの存在下、より炎症促進性のプロファイルを生じさせることが示唆されうる。IL−17AおよびIL−17Fに誘導される下流炎症性メディエーターの産生を中和する本発明の抗体の添加は、そのような抗体がIBD患者の治療において有効でありうることを示唆する。
(実施例16)
(過敏性腸症候群(“IBS”):CNSに向けられた発病におけるIL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体の有効性)
IBSの特徴を示す症状を誘発するためにストレス刺激を用いる、一次性のCNSを標的とした発病に重点を置いたモデル。新生仔心理社会的ストレスモデルは、内臓痛覚過敏、下痢およびストレス感受性を含む、IBS患者に関連する臨床特徴の一部を模倣したものである。出生後4〜18日間、毎日180分間、同腹仔の母親からの連日の分離は、母親の行動の変化をもたらし、なめる/毛づくろい行動の時間を有意に減少させる。新生仔に対するストレスはCNSの恒久的変化をもたらし、ストレス誘発性の内臓痛および体性痛覚の感受性の変化を生じさせる。これらの動物においてストレスに応答する大腸運動機能が亢進し、予備的データは腸透過性亢進のエビデンスを示す(Mayerら、2002)。本発明の抗体による処置ならびに引き続いての大腸運動機能の分析、上皮透過性およびストレス刺激への応答により、このIBS動物モデルにおける有効性が判定されうる。これらのインヒビターによる処置後の症状の発生率の低下は、IBSの処置における有効性の可能性を示唆しうる。
(実施例17)
(過敏性腸症候群(“IBS”):一次性の腸に向けられたストレス誘発因子におけるIL−17AおよびIL−17Fに結合する抗体の有効性)
これは一次性の腸に向けられたストレス(すなわち、腸炎症、感染または身体的ストレス)誘発因子に重点を置いたモデルである。動物研究では、軽度の炎症または免疫活性化が、運動性および/または腸の求心性・上皮機能の変化の基礎でありうることが示されている(Mayerら、2002)。このモデルにおいて、連日のカラシ油の大腸内注射の形にて新生仔動物(8〜21日齢)において連日の大腸刺激を生じさせる。カラシ油は神経刺激剤であり、大腸内投与後に内臓痛覚過敏を誘発することが示されている。このモデルは内臓過敏および排便習慣の変化を含むIBSの重要な特徴を模倣したものである。動物はIBS患者の重要な特徴である下痢または便秘も示す(Mayerら、2002;Kimballら、2005)。このモデルに関連する症状の発症の変化を判定するため、本発明の抗体を送達しうる。本発明者らのインヒビターによる治療後の内臓過敏および腸運動変化の発生率または大きさの低減は、これらの分子がIBSの処置において有効である可能性を示唆しうる。
(実施例18)
(IL−17A/F抗体の作製)
(A)捕捉アッセイ)
捕捉ELISAアッセイを用いて、抗血清中の抗ヒトIL−17Fまたは抗ヒトIL−17A抗体の、IL−17Fおよび/またはIL−17Aに結合する能力を評価した。このアッセイでは、まず、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3(pH9.6))中1000ng/mLの濃度にて、96ウェルポリスチレンELISAプレートのウェルに100μL/ウェルのヤギ抗マウスIgG,Fc特異的抗体(Jackson Immunoresearch社)を被覆した。各リガンドに対して1つのプレートを調製した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、その後、非結合抗体を吸引し、300μL/ウェルの洗浄バッファー(0.137M NaCl,0.0027M KCl,0.0072M Na2HPO4,0.0015M KH2PO4,0.05%(v/v)ポリソルベート20(pH7.2)と定義されるPBS−Tween)でプレートを2回洗浄した。200μL/ウェルのブロッキングバッファー(PBS−Tween+1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA))でウェルを1時間ブロックし、その後、洗浄バッファーでプレートを2回洗浄した。最初の1:1000希釈から開始し、1:1,000,000に及ぶ血清の連続10倍希釈液(ブロッキングバッファー中)を調製した。次に、分子のFc部分を通じて血清中マウスIgGをアッセイプレートに結合するため、各希釈液の複製試料をアッセイプレート(100μL/ウェル)に移した。正常マウス血清は陰性対照として機能し、ヒトIL 17RC−Fc蛋白質を陽性アッセイ対照として加えた。注意:この対照に対する被覆はヤギ抗ヒトIgG,Fc特異的抗体(Jackson Immunoresearch社)であった。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを吸引し、上述のようにプレートを2回洗浄した。次に、500ng/mLの濃度にてビオチン化IL 17F(ビオチン:蛋白質のモル比6:1)またはビオチン化IL 17A(ビオチン:蛋白質のモル比10:1)をウェル(別個のプレート)(100μL/ウェル)に加えた。室温で1時間のインキュベーション後、非結合ビオチン化リガンドをウェルから吸引し、プレートを2回洗浄した。次に、500ng/mLの濃度にて西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Pierce社、Rockford,IL)を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。非結合HRP−SAの除去後、プレートを2回洗浄し、100μL/ウェルのテトラメチルベンジジン(TMB)(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)を各ウェルに加え、プレートを室温で2分間インキュベートした。450nm TMB反応停止剤(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)の100μL/ウェルの添加によって染色進行を停止し、Molecular Devices Spectra MAX 340装置において450nmにてウェルの吸光度値を読み取った。
(B)直接アッセイ)
直接ELISAアッセイを用いて、抗血清中の抗ヒトIL−17Fまたは抗ヒトIL−17A抗体の、IL−17Fおよび/またはIL−17Aに結合する能力を評価した。このアッセイでは、まず、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3(pH9.6))中1000ng/mLの濃度にて、96ウェルポリスチレンELISAプレートのウェルに100μL/ウェルのIL−17FまたはIL−17Aを被覆した。各リガンドに対して1つのプレートを調製した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、その後、非結合抗体を吸引し、300μL/ウェルの洗浄バッファー(0.137M NaCl,0.0027M KCl,0.0072M Na2HPO4,0.0015M KH2PO4,0.05%(v/v)ポリソルベート20(pH7.2)と定義されるPBS−Tween)でプレートを2回洗浄した。200μL/ウェルのブロッキングバッファー(PBS−Tween+1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA))でウェルを1時間ブロックし、その後、洗浄バッファーでプレートを2回洗浄した。最初の1:1000希釈から開始し、1:1,000,000に及ぶ血清の連続10倍希釈液(ブロッキングバッファー中)を調製した。次に、血清中の特定の蛋白質をアッセイプレートに結合するため、各希釈液の複製試料をアッセイプレート(100μL/ウェル)に移した。正常マウス血清は陰性対照として機能し、zcytor14(ロットA1034F)を陽性アッセイ対照として加えた。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを吸引し、上述のようにプレートを2回洗浄した。次に、1:5000の濃度にて西洋わさびペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG,Fc特異的抗体(Jackson Immunoresearch社)を両方のプレート(100μL/ウェル)に加えた。室温で1時間のインキュベーション後、非結合抗体をウェルから吸引し、プレートを2回洗浄した。テトラメチルベンジジン(TMB)(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)(100μL/ウェル)を各ウェルに加え、プレートを室温で2分間インキュベートした。450nm TMB反応停止剤(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)の100μL/ウェルの添加によって染色進行を停止し、Molecular Devices Spectra MAX 340装置において450nmにてウェルの吸光度値を読み取った。
(C)中和アッセイ)
プレートベースの中和アッセイを用いて、抗血清中の抗ヒトIL−17Fまたは抗ヒトIL−17A抗体の、その同族受容体を通したIL−17Fおよび/またはIL−17Aの刺激活性を阻害(中和)する能力を評価した。このアッセイでは、まず、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3(pH9.6))中1000ng/mLの濃度にて、96ウェルポリスチレンELISAプレートのウェルに100μL/ウェルのヒトIL 17RC−Fc蛋白質を被覆した。各リガンドに対して1つのプレートを調製した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、その後、非結合受容体を吸引し、300μL/ウェルの洗浄バッファー(0.137M NaCl,0.0027M KCl,0.0072M Na2HPO4,0.0015M KH2PO4,0.05%(v/v)ポリソルベート20(pH7.2)と定義されるPBS−Tween)でプレートを2回洗浄した。200μL/ウェルのブロッキングバッファー(PBS−Tween+1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA))でウェルを1時間ブロックし、その後、洗浄バッファーでプレートを2回洗浄した。最初の1:500希釈から開始し、1:500,000に及ぶ血清の連続10倍希釈液(ブロッキングバッファー中)を調製した。次に、200ng/mLの濃度にてビオチン化IL−17F(ビオチン:蛋白質のモル比6:1)またはビオチン化IL−17A(ビオチン:蛋白質のモル比10:1)を希釈プレート(別個のプレート)のウェル(100μL/ウェル)に加え、上下に数回ピペッティングすることによって十分に混合し、室温で1時間インキュベートした。注意:血清希釈液とビオチン化リガンドとの等容積での混合は、一連の希釈が1:1000から1:1,000,000になり、リガンド濃度は100ng/mlになる。次に、各血清希釈/ビオチン化リガンド溶液の複製試料をアッセイプレート(100μL/ウェル)に移した。正常マウス血清は陰性対照として機能し、ヒトIL−17RC−Fc蛋白質を陽性アッセイ対照として加えた。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを吸引し、上述のようにプレートを2回洗浄した。次に、500ng/mLの濃度にて西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Pierce社、Rockford,IL)を各ウェル(100μL/ウェル)に加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。非結合HRP−SAの除去後、プレートを2回洗浄し、100μL/ウェルのテトラメチルベンジジン(TMB)(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)を各ウェルに加え、プレートを室温で3分間インキュベートした。450nm TMB反応停止剤(BioFX Laboratories社、Owings Mills,MD)の100μL/ウェルの添加によって染色進行を停止し、Molecular Devices Spectra MAX 340装置において450nmにてウェルの吸光度値を読み取った。
(D)免疫化スキーム)
2週毎に6週間(3回接種)、腹腔内注射によってbalb/Cマウス5匹をIL−17F−BSA(各々50μg)で免疫化した。2週間後、腹腔内注射によってこれらのマウスをIL 17F−BSA(各々50μg)で追加免疫した。血清評価のため、最後の3つの追加免疫後、毎週血液を採取した。最後の追加免疫後約2カ月にて、皮下注射によってマウス5匹すべてをIL−17F−BSA(各々50μg)で追加免疫し、血清評価のため、最終的な血液を採取した。
(E)ELISAによる血清評価の結論)
捕捉ELISAアッセイも直接ELISAアッセイも、マウス5匹すべてがIL−17Fに対する有意な抗体反応を発現したことを示す。直接アッセイは、5匹のマウス中4匹がIL−17Aにも中程度に結合し、1匹のマウスがIL−17Aに微弱に結合することを示す。中和アッセイは、5匹のマウス中2匹がIL−17Fの結合を中程度に阻害し、他の2匹がIL−17Fの結合を微弱に阻害することを示す。1匹のマウスはIL−17Fの結合を全く阻害しない。このアッセイによって更に示されることは、5匹のマウス中2匹がIL−17Aの結合を微弱に阻害し、一方、他の3匹が結合を阻害しないことである。1匹のマウスは異なる程度にて両リガンドの結合を阻害する。
(F)融合手順)
最終免疫後の最低4週間後、最も有意なIL−17FおよびIL−17A中和力価を有するマウスを、皮下注射によってPBS中約50μgのIL−17A−BSAで最終的に免疫化した。通常の条件下であれば、5日後にこのマウスの脾臓およびリンパ節が採取され、単一細胞懸濁液中に調製され、標準的社内プロトコルを用いてPEG 1500によりリンパ系細胞:骨髄腫細胞比2:1にてAg8マウス骨髄腫細胞系に融合されていたであろう。この場合、マウスは注射後に死亡し、脾臓を採取し、単一細胞懸濁液中に調製し、−80℃で5日間凍結した。脾細胞懸濁液を迅速に解凍した後、上述のように融合を完了した。融合混合物を一連の96ウェル平底プレートに分配した。第四〜七日目に融合プレートのウェルに栄養を与えた(最低2回、最大3回)。融合物のプレーティングの8日後にウェルをアッセイした。
(G)融合物のスクリーニング)
ハイブリドーマの上清を培養プレートから希釈せずに試験したことを除き、上述のIL−17FおよびIL−17Aに対する捕捉ELISAおよび中和ELISAをスクリーニングに用いた。すべての「陽性」クローン(実施例19において詳述)を、複製した試料を用いた両アッセイを繰り返すことによって確認した。すべての「陽性」クローンを24ウェルプレートにおける培養に拡張した。24ウェル培養物の密度が約4〜6×105細胞/mLである場合、上清(約1.8mL)を個々に採取して各クローン用に保存し、各ウェル由来の細胞を凍結保存した。いずれのクローンが要求される試薬ニーズを満たすかを更に評価するために採取した上清を用いた。適切なクローンを1回および2回目のクローニングに付し、その後、精製のためにスケールアップした。
IL−17AおよびIL−17Fに対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを、Budapest条約の下で原寄託としてAmerican Type Tissue Culture Collection(ATCC;Manassas VA)特許寄託機関に寄託し、次のATCCアクセッション番号を付与された:クローン339.15.5.3(ATCC特許寄託物名称PTA−7987,2006年11月7日に寄託);クローン339.15.3.6(ATCC特許寄託物名称PTA−7988,2006年11月7日に寄託);およびクローン339.15.6.16(ATCC特許寄託物名称PTA−7989,2006年11月7日に寄託。
(実施例19)
(IL−17A/F mAb競合結合アッセイプロトコル)
(実施例18において開示されているように)本発明のIL−17A/F抗体の、リガンドIL−17AおよびIL−17Fに結合する能力を評価するため、フローサイトメトリーベースの競合結合アッセイを用いた。リガンドIL−17AもしくはIL−17Fおよびリガンドに結合するように標的化された本発明のIL−17A/F抗体の存在下、完全長IL−17RCを安定にトランスフェクションされたBHK細胞系のインキュベーションは、細胞表面に結合した(したがって、抗体に結合していない)リガンドの検出および相対的定量化を可能にする。リガンドのビオチン化は、二次性のストレプトアビジン結合フルオロフォアを用いてFACS検出を可能にする。抗体の滴定を超える細胞結合リガンドの減少は細胞の平均蛍光の低下として記録される。
100ul容積にて染色媒質(HBSS+1%BSA+0.1%NaAzide+10mM HEPES)中にてビオチン化リガンドを個々に1ug/mlにて滴定量の抗体と予め混合し、室温で15分間インキュベートする。完全長IL 17RCを安定にトランスフェクションされたBHK細胞系を、Versene(Invitrogen社 カタログ番号15040−066)での再懸濁、2×10e5細胞/100ulへの平衡化、ペレット化およびリガンド/抗体事前混合液中の再懸濁によってリガンド染色のために調製する。染色細胞を4℃で30分間インキュベートし、染色媒質中にて1回洗浄し、1:100の比率でストレプトアビジン−PE(BD Pharmingen社 カタログ番号554061)で染色する。細胞を4℃で30分間、暗室でインキュベートし、染色媒質中にて2回洗浄し、染色媒質とCytofix(BD Bioscience社 554655)との比率1:1で再懸濁させる。データ収集および解析のためにBD LSRIIフローサイトメーターまたは類似の器具を用いる。図に示すグラフは進行プロトコルを用いた典型的な分析結果を表す。Prizmソフトウェアプログラムを用いてグラフを作成した。Y値は、リガンドのみおよびリガンドなし/抗体なし対照ウェルに基づく最大および最小(100%および0%)に正規化されたMFI、したがって、リガンドの細胞への結合パーセントを表す。ソフトウェアが各曲線のIC50を計算する。
表1は、各IL−17A/F抗体に関して得られるIC50値を含む。
例示を目的として本発明の具体的な実施形態について本明細書で述べたが、前述から、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変が可能であることが理解されよう。