JP2010529458A - 腎疾患の予測診断 - Google Patents

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Abstract

本発明は、腎疾患のマーカーに関するものである。

Description

本発明は、腎疾患のマーカーに関するものである。
尿検査紙は、糸球体腎炎および糖尿病性glomerulerosisの診断のために、長い間タンパク質の測定を利用してきた。これらの炎症状態は末期腎疾患の主要原因である。タンパク質は、細胞への障害が起こった後に腎臓から溢流する。近年、微量アルブミン尿およびクレアチニン比が尿検査紙に加わって、この疾患プロセスの初期に、より小さな障害を検出できるようになった。尿中アルブミンの測定は、腎臓の糸球体基底膜への障害を反映する。障害の増大は、より高い糸球体濾過率を導き、腎不全へと進行し得る。しかしながら、プロ炎症性反応の際の血圧上昇もまた、より多くのアルブミンを尿中に溢流させ得る。したがって、アルブミン尿は血管透過性の指標でもあり、心血管疾患の独立した危険因子である。アルブミン尿は炎症の間接的指標であり、炎症反応において直接的な役割を果たしている訳ではないため、アルブミン尿の測定は、高血圧または全身性炎症の存在下での腎障害を過大評価することがある。当該測定が腎障害を正確に反映することを確実とするためには、3か月毎のアルブミン尿の連続測定が推奨される。より特異性の高い腎疾患マーカーに対するニーズが存在する。本発明はこれらのおよびその他のニーズに対処するものである。
本発明は特に、対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを特定する方法を提供するものである。
或る態様では、本発明の方法は、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し、そして、その生体試料中のビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルに基づき、対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを決定する工程を含む。
或る態様では、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルに対する腎細胞死マーカーのレベルの比率を決定し、この比率の数値が、その対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを示す。
さらに本発明は、特に、腎疾患を有する対象の処置戦略を決定する方法を提供する。その方法は、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し、そしてそのレベルに基づいた処置戦略を決定する工程を含む。或る態様では、対象から得られた生体試料におけるビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定する。
腎疾患の経過を測定する方法もまた提供される。これらの方法は、第一の時点で、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し;第二の時点で、その対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し;そして、第一の測定値と第二の測定値を比較する[ここで、この比較測定が腎疾患の経過を決定する]工程を含む。或る態様では、対象から得られた生体試料におけるビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定する。
或る態様では、本発明の方法は、対象が、ビクニンで誘発される炎症性腎細胞死を有するか否かを特定する。
或る態様では、本発明の方法は、対象が、非炎症性細胞死を有するか否かを特定する。
或る態様では、本発明の方法は、対象が、ビクニンで誘発される、細胞死を伴わない炎症を有するか否かを特定する。
生体試料中のアデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADBP−26)およびビクニンを測定する手段;ならびに場合により使用およびキット結果の解釈のための説明を含むキットもまた提供される。
ビクニン − ビクニンは、N末端上の阻害クニッツ1ドメインに連結した1個のN結合型グリコシド鎖(ウリスタチン2)および1個のO結合型グリコシドを含む。 ビクニンおよびウリスタチンの形成。図の上部分では、ビクニンはH1およびH2重鎖または単にH3鎖に結合しており;この二つの型は主として血漿中に見いだされる。図の下部分では、セリンプロテアーゼがビクニンを開裂させる。ビクニンはさらにウリスタチンへと断片化するため、尿中の量は血中に見いだされる量を上回る。 ビクニンへの腎細胞の暴露時の、腎細胞死およびADBP−26の放出を示すグラフ。
I.序
本発明者等は、ビクニンが腎細胞死を誘発すること、さらに、腎疾患を有するまたは腎疾患を発症するリスクが高い対象を適切に特定するためには、ビクニンおよび腎細胞死マーカーの両レベルを測定すべきであることを発見した。ビクニンおよび腎細胞死マーカーの両レベルを測定することにより、本発明者等は、対象を、ビクニン誘発性炎症性細胞死、非炎症性細胞死、または細胞死を伴わないビクニン誘発性炎症を有する対象にグループ分けできることを見いだした。その結果、炎症および/または細胞死の原因に応じて対象の処置レジメンを仕立てることができる。
本明細書に記載の発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生態系に限定されず、それらは無論変わり得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明するためのものであって、限定を意図するものでないこともまた理解されねばならない。本明細書および添付した請求項で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にこれに反する記載をしていない限り、複数の指示対象を包含する。
本明細書で使用される「約」という語は、量、持続期間などのような測定可能値を指す場合、その変動が、開示した方法の遂行に適切である限り、指定の値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、そしてさらに好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
本発明は、本発明に使用するための生体試料として体液を使用する。好ましくはこの体液は尿または血液であるが、他の体液も使用できる。対象から生体試料を得る方法は当分野で公知であり、本明細書に詳細を述べない。
指摘されている場合を除き、「対象」または「患者」という語は互換的に使用され、人間の患者およびヒト以外の霊長類といった哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、およびマウスのような実験動物、ならびにその他の動物を指す。
II.ビクニン(「Bik」)
ビクニンはbikとも呼ばれ、セリンプロテアーゼであるトリプシンファミリーの主要なインヒビターの一つである。特に、ビクニンは炎症の際セリンプロテアーゼを抑制する。循環中に存在するビクニンの多くはプロインヒビター(IαIおよびPαI)に結合している。炎症の際、プロテアーゼによるIαIの分解が起こり、ビクニンがこの複合体から遊離し、尿に移行する。尿中ビクニン濃度は、見かけ上健康な集団の99%で7.5mg/L未満であり、感染症を有する集団では約7.5mg/L〜約200mg/Lである。ビクニンは炎症性疾患に存在するプロテアーゼの作用を阻害することから、これは生得的免疫能の一部であると考えられる。炎症性セリンプロテアーゼの阻害は、一般に約0.03〜800μMの範囲で起こる。
ビクニンは、尿トリプシンインヒビター(uTi)、ミンギン、ヒトインヒビター30(HI−30)、ウリナスタチン(urinastatin)、ウリナスタチン(ulinastatin)、およびミラクリッドという多くの異なる名称で知られている。ビクニンとして3〜70kDaの範囲の分子量が観察されている。これらの異なる分子量は、異なった断片化および複合糖質化パターンの結果である。
ビクニンとは、短いペプチド鎖で連結しNおよびC末端ポリペプチド鎖により延長した1または2個のクニッツ型プロテイナーゼインヒビタードメインで構成されているタンパク質を意味する。このタンパク質は硫酸化コンドロイチン鎖およびオリゴ糖に連結し、約33kDa(約21〜約46kDaの範囲)の分子量を有する。
本明細書で使用するビクニンという語は、非断片化および断片化したビクニンの両者、ならびに異なる形態の複合糖質化ビクニンおよび複合糖質化断片化ビクニンを包含し、例えばα−1−ミクログロブリン/ビクニン前駆体タンパク質(AMBK)、ウリスタチン、ウリスタチン−1、およびウリスタチン−2を包含する。ビクニンのグリコシド鎖およびクニッツドメインを図1に示す。炎症の際、図2に示すように重要なフラグメントの幾つかが尿中に見いだされる。
ビクニンからのコンドロイチン硫酸鎖の開裂がウリスタチンを生成する。ウリスタチンは約17kDaのモノマー分子量(フラグメントおよび変異体については約11〜約22kDaの範囲)を有する。炎症の存在が、インターαインヒビターの分解を導き、ビクニンおよびウリスタチンを形成する。
ウリスタチン−1および−2とは、クニッツ型インヒビタードメイン1または2のいずれかを含むウリスタチンのタンパク質フラグメントを指す。ウリスタチン−1は約6kDaのモノマー分子量(フラグメントおよび変異体については約2〜約9kDaの範囲)を有する。ウリスタチン−2は約8.5kDaのモノマー分子量(フラグメントおよび変異体については約2〜約12kDaの範囲)を有する。
AMBKとは、3個の連結したタンパク質、即ちインヒビター画分(ビクニン)、α−1−ミクログロブリン、および25kDaの未確認タンパク質を有するプロインヒビターのタンパク質前駆体を指す。阻害セリンプロテアーゼの生合成におけるその機能の如何にかかわらず、これは本発明の目的のため、ビクニンの定義内にあると考えられる。
本発明の方法のためにビクニンを測定する場合、1以上の異なる形態のビクニンを一緒に測定する。
III.腎細胞死マーカー
本明細書で使用する「腎細胞死マーカー」という語は、腎細胞死の結果腎組織から尿中に放出される任意のマーカーを指す。或る態様では、腎細胞死は腎組織がビクニンに暴露されることによって引き起こされる。本発明の腎臓死細胞マーカーは腎臓の組織または細胞いずれかで高度に発現され、腎細胞死に関連しない疾病によって尿中に排出される有意な血中濃度を持たない。本発明の腎細胞死マーカーは、正常およびビクニンストレス期間の腎細胞のプロテオミクスおよび発現プロファイリングによって特定できる。
例示的腎細胞死マーカーには、糸球体および近位尿細管の細胞および組織に見いだされるタンパク質(例えば酵素)がある。これらのタンパク質は、典型的には細胞膜に結合しているか、刷子縁膜に結合しているか、または細胞質もしくはリソソームにあるような細胞内空間に入っている。結合し内包されているマーカーは、細胞死の際に膜が破壊されまたは溶解するため、放出される。
細胞膜に結合している腎細胞死マーカーの例には、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADBP−26)、カチオン交換輸送体(NHE3)、および腎損傷分子1(KIM−1)のような腎臓の膜貫通タンパク質がある。
刷子縁の細胞死マーカーの例には、アラニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、およびアルカリホスファターゼがある。
腎臓の細胞内タンパク質である細胞死マーカーの例には、グリタミルトランスフェラーゼ、N−アセチル−β−グルコサミニダーゼリゾチーム、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)およびL型脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)がある。
多数のタンパク質を尿中に見いだすことができる(Han and Bonventre, Current Opinion in Critical Care, 2004 10:476-842; Cheyron et al., American Journal of Kidney Disease, 2003 42(3):497-506; Jung et al., Clinical Chemistry 1986 32(10):1807-1811; Pang et al., Journal of Proteome Research, 2002 1:161-169; Trof et al., Shock 2006, 26(3):245-253)。腎細胞死の結果腎組織から尿中に放出される任意のタンパク質を、腎細胞死マーカーとして本発明で使用できる。本発明の腎細胞死マーカーは腎細胞死に特異的である。例えば、本発明の腎細胞死マーカーは、好ましくは腎細胞死について約90%以上、または約95%以上特異的である。特異性を決定する方法は当分野で周知である。例えば、疾病状態のバイオマーカーの特異性は、式TN/(TN+FP)[式中、TNは真陽性患者(その状態を有し本方法の使用によりその状態であると検出された患者)を表し、FPは偽陽性患者(使用された方法によりその状態であると検出された、その状態を有さない患者)を表す]で決定される。
A.膜結合腎細胞タンパク質
最も広く使用されている腎細胞死マーカーの例はアデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(「ADBP−26」)である。この膜結合腎細胞タンパク質は、腎臓の近位尿細管上皮細胞の刷子縁に見いだされる120000ダルトンの表面糖タンパク質である。これは、2型膜貫通糖タンパク質エクトペプチダーゼ、DPPIVジペプチジルペプチダーゼ、ADBP−26アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質としても知られている。この膜貫通糖タンパク質は、セリンジペプチジルペプチダーゼ活性(DPPIV)を示し、プロリン含有ペプチドの加水分解により腎臓におけるタンパク質再吸収の最終段階に参加している。したがってこれは正常な細胞機能において発現される。
ADBP−26は、適応免疫反応の際にTリンパ球上にCD−26としても発現され、さらに、癌細胞の浸潤および血管新生の際にアップレギュレートされる。血液のTリンパ球中に見いだされはするが、その高い分子量は、尿への放出が主に近位尿細管における腎細胞死によるものであって、腎前性の原因によるものではないことを確信させる。この試験は腎細胞死について>95%特異的である。近位尿細管細胞膜が死亡時に破壊されると、このタンパク質は膜から遊離し、尿中に溢流する。故にADBP−26は急性腎損傷のマーカーとして使用されてきた(Thompson et al., Toxicol. Pathol., Vol.14, p.232-237(1986))。例えばADBP−26は、急性尿細管壊死の患者(Goren, et al., Am. J. Clin. Pathol., Vol.86, p.780-783(1986))および腎移植拒絶の患者の尿に高濃度で放出される。
本明細書で使用するADBP−26という語は、非断片化および断片化ADBP−26の両者、ならびに異なる形態の複合糖質化ADBP−26および複合糖質化断片化ADBP−26を包含する。ADBP−26の配列およびグリコシル化パターンはAertgeerts et al., Protein Sci. 2004 Jan;13(1):145-54に見いだすことができ、この全内容を引用により、そして全ての目的のために本明細書の一部とする。ADBP−26の予想モノマーは約110kDaである。観察された可溶性型のバンドは例えば約110kDa、約77kDa、約50kDaおよび約45kDaに認められる。
細胞死に際して尿中に放出される細胞膜タンパク質である、その他多くの腎細胞死マーカーの例がある。一例は、尿細管に最も豊富にあるアピカルナトリウム輸送体である、カチオン交換輸送体(Na+/H+交換体イソ型3またはNHE3)である。NHE3は、重度の尿細管細胞損傷のある急性腎不全(ARF)を呈する患者の尿で増加することが示されている(du Cheyron D Am J Kidney Dis. 2003 Sep;42(3):497-506)。もう一つの例は、その発現が近位尿細管において著明にアップレギュレートする1型膜貫通タンパク質である、腎障害性分子1(KIM−1)である。KIM−1の外部ドメインは、細胞死を引き起こす虚血性イベントの際に細胞から放出される(Han WK Curr Opin Crit Care. 2004, 476-82)。
これらの細胞膜タンパク質は、腎臓の機能上の要求のため、腎臓で高度に発現される高分子量タンパク質である。このタンパク質は高分子量タンパク質であるため、腎臓以外の原因で尿中に存在することはあまりない。
B.刷子縁膜タンパク質
近位尿細管の刷子縁膜に存在するタンパク質もまた、本発明の腎細胞死マーカーとして利用できる。例示的タンパク質は、アラニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、およびアルカリホスファターゼを包含する。
C.腎臓の細胞内タンパク質
リソソームおよび腎臓の細胞内空間と共に存在するタンパク質もまた本発明の腎細胞死マーカーとして利用できる。例として、グリタミルトランスフェラーゼ、N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ、およびリゾチームといった酵素および機能性タンパク質がある(Jung Clin Chem 1986)。
尿細管間質タンパク質もまた本発明の腎細胞死マーカーとして利用できる。例として、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)およびL型脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)がある。NGALタンパク質は、虚血のようなストレスの後に主に近位尿細管でアップレギュレートされる。NGALの尿中排泄は近位尿細管細胞の死を反映する。L−FABPタンパク質は、タンパク尿の後に主に近位尿細管でアップレギュレートされる。L−FABPの尿中排泄は、低酸素症または過度のタンパク尿といったイベントによる近位尿細管細胞の死を反映する。このタンパク質の機能は、尿中アルブミンに結合した遊離脂肪酸を膀胱内腔からミトコンドリアへと輸送することである(Kamijo A. J Am Soc Nephrol 10:106A.1999)。
IV.検出方法
本発明に係るビクニンおよび腎細胞死マーカーを検出し測定する任意の方法を本発明で使用することができる。ビクニンおよび腎細胞死マーカーを検出するための様々なアッセイが当分野でよく知られており、例えば、酵素阻害アッセイ、抗体染色法、ラテックス凝集法、およびイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイが包含される。
生体試料中のタンパク質量を測定するイムノアッセイは、典型的には当該タンパク質に対する抗体の作製を含む。本明細書における「抗体」という語は最も広い意味で使用され、例えば無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および、所望の生物活性(例えば抗原結合)を示す抗体フラグメントを指す。抗体は、任意の型またはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってよい。
生体試料中のビクニン量を測定するイムノアッセイは、典型的にはビクニンに対する抗体の作製を含む。精製ビクニンを接種されたウサギから作製したポリクローナル抗体は、インターαインヒビターと交差反応性であり、様々な型のビクニンおよびウリスタチンフラグメントに特異的ではない。モノクローナル抗体は、様々な型のビクニンを分離し、複合糖質化していないウリスタチンを検出できる可能性がある。ビクニンおよび腎細胞死マーカーを検出するための抗体は当分野で周知であり、本明細書では論じない。例えば、Pugia et al., 2007, Glycocoj J 24;5-15 およびU.S. Publication 20070020683を参照されたい。
ラジオイムノアッセイおよび酵素結合イムノアッセイを包含するイムノアッセイが本発明の方法において有用である。例えば競合的および非競合的イムノアッセイフォーマット、抗原捕捉アッセイおよび二抗体サンドイッチアッセイを包含する種々のイムノアッセイフォーマットを本発明の方法に利用できる(Self and Cook, Curr. Opin. Biotechnol. 7:60-65(1996))。抗原捕捉アッセイでは、抗体を固相に結合させ、試料を添加して、検体、例えばビクニンまたは腎細胞死マーカーを当該抗体と結合させる。未結合タンパク質を洗浄により除去した後、所望により例えばラジオアッセイを用いて、結合した検体の量を定量できる(Harlow and Lane, Antibodies A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory: New York, 1988)。抗体過剰条件下で、または抗原競合としてイムノアッセイを実施して検体量を定量し、そのようにしてビクニンおよび/または腎細胞死マーカーのレベルを決定できる。
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が本発明の方法に利用できる。酵素イムノアッセイの場合、酵素は典型的には、一般にグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって第二の抗体とコンジュゲートさせる。ところが容易に理解できるように、当業者が容易に利用できる多岐にわたる様々なコンジュゲーション技術が存在する。一般的に使用される酵素には、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼがある。特異的酵素と共に使用される基質は一般に、対応する酵素による加水分解時に検出可能な色変化を生ずることで選択される。例えば蛍光生成物を産出する蛍光発生基質を使用することも可能である。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼまたはウレアーゼといった酵素は、本発明の方法における使用のために、例えば抗ビクニン抗体もしくは抗ADBP−26抗体またはその他の抗腎細胞死マーカー抗体もしくは二次抗体に結合させることができる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば色素生成基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に使用でき、これは過酸化水素存在下で450nmで検出可能な可溶性産物を生成する。その他の使い易い酵素結合系には、例えばアルカリホスファターゼ検出系があり、これは、例えば発色性基質p−ニトロフェニルホスファートと共に使用して、405nmで容易に検出可能な可溶性産物を産生することができる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、例えば発色性基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)と共に使用して、410nmで検出可能な可溶性産物を産生し、または、ウレアーゼ検出系を、例えば尿素−ブロモクレゾール紫(Sigma Immunochemicals, St. Louis, Mo.)のような基質と共に使用できる。有用な酵素結合一次および二次抗体を、Jackson Immuno-Research(West Grove, Pa)のような幾つかの商業的供給源から取得できる。
或る態様では、ビクニンおよび/または腎細胞死マーカーを化学ルミネセンス検出法を用いて検出および測定できる。例えば或る態様では、ビクニン特異的抗体を用いて生体試料中に存在するビクニンを捕捉し、そして、当該特異抗体に特異的で化学ルミネセンス標識で標識された抗体を用いて試料中に存在するビクニンを検出する。本発明の方法には任意の化学ルミネセンス標識および検出系を使用できる。化学ルミネセンス二次抗体は、Amershamのような様々な供給源から商業的に取得できる。化学ルミネセンス二次抗体を検出する方法は当分野で公知であり、本明細書には詳細を述べない。
蛍光検出法もまた本発明のビクニンおよび/または腎細胞死マーカーの検出に有用となり得る。有用な蛍光色素には、例えばDAPI、フルオレセイン、ランタニド金属、Hoechst 33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリスリン、R−フィコエリスリン、ローダミン、テキサスレッドおよびリサミンがある。蛍光化合物は、それらの結合能を変えることなく抗体と化学的にカップリングさせることができる。特定波長の光を当てることにより活性化させると、蛍光色素で標識した抗体はその光エネルギーを吸収し、その分子の励起状態を誘導し、その後光学顕微鏡で視覚的に検出できる特有の色の光を放出する。
本発明の或る方法にはラジオイムノアッセイ(RIA)が有用となり得る。このようなアッセイは当分野で周知である。ラジオイムノアッセイは、例えば125I標識化一次または二次抗体を用いて実施できる(Harlow and Lane、上記、1988)。
検出可能な試薬からのシグナルは、当分野で公知の任意の方法を用いて分析できる。例えば、発色性基質由来の色を検出する分光光度計;放射線を検出するための放射線測定器、例えば125Iの検出のためのガンマカウンター;または或る波長の光の存在下における蛍光を検出する蛍光光度計を使用して、シグナルを測定できる。酵素結合アッセイを利用する場合、ビクニンまたはADBP−27の量の定量分析は、EMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices; Menlo Park, Calif.)のような分光光度計を製造者の指示に従い使用して実施できる。本発明のアッセイは所望により自動化して、またはロボットにより実施でき、また、複数試料からのシグナルを同時に検出できる。
本発明の方法はさらに、キャピラリー電気泳動イムノアッセイ(CEIA)の使用をも包含し、これは所望により自動化することができる。例えばSchmalzing and Nashabeh, Electrophoresis 18:2184-93(1997)、およびBao, J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. 699:463-80(1997)に記載のように、レーザー誘起蛍光と組み合わせてイムノアッセイを利用することもできる。
本発明の或る方法ではサンドイッチ酵素イムノアッセイもまた有用である。二抗体サンドイッチアッセイでは、第一の抗体を固体支持体に結合させ、抗原をこの第一抗体に結合させる。それに結合する第二の抗体の量を測定することにより、検体量を定量できる。
定量的ウェスタンブロットを使用して、本発明におけるビクニンおよび/または腎細胞死マーカーのレベルを決定することもできる。
ビクニンおよび/または腎細胞死マーカーのレベルをタンパク質マイクロアレイを用いて測定することもできる。臨床試料中のタンパク質レベル検出に適合可能なタンパク質マイクロアレイを作製する方法は当分野で周知である。
或る態様では、バイオチップによって試料を分析する。バイオチップは一般に固体基質を含み、ほぼ平坦な表面を有し、それに捕捉試薬(吸着または親和試薬とも呼ばれる)を結合させる。バイオチップ表面はしばしば多数のアドレス可能な位置を含み、それらの各々が捕捉試薬をそこに結合させる。
タンパク質バイオチップは、ペプチド捕捉に適合させたバイオチップである。多くのタンパク質バイオチップが当分野で記載されている。これらには例えば、Ciphergen Biosystems, Inc.(Fremont, CA)、Packard BioScience Company(Meriden CT)、Zyomyx(Hayward, CA)、Phylos(Lexington, MA)およびBiacore(Uppsala, Sweden)によって製造されたタンパク質バイオチップがある。このようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または公開された特許出願:米国特許第6225047号;PCT国際公報第WO99/51773号;米国特許第6329209号、PCT国際公報第WO00/56934号および米国特許第5242828号に記載されており、引用によりこれらの全内容を、そして全ての目的について本明細書の一部とする。
本発明における使用のため、これらのアッセイ方法は、ビクニンおよび/または腎細胞死マーカーを固体基質上に捕捉することを含み得る。典型的にはこれらは生体特異的捕捉試薬、例えば抗体、そしてとりわけイムノアッセイで使用される抗体を用いて捕捉される。生体特異的捕捉試薬は、例えば少なくとも10−9M、10−10M、10−11Mまたは10−12Mの親和性で標的検体と結合する分子を包含する。これらの分子はクロマトグラフィー材料のような非特異的方法で捕捉することもできる。
本発明の或る態様では、ビクニンおよび/または腎細胞死マーカーを質量分析によって検出する。質量分析機の例は、飛行時間型、磁場偏向型、四重極フィルター、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電セクター分析機およびこれらのハイブリッドである。
本発明での使用にとって好ましい質量分析技術は、例えば米国特許第5719060号および第6225047号(共にHutchens and Yip。いずれも引用によりその全内容を、そして全ての目的について本明細書の一部とする)に記載の「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」である。これは、質量分析機のプローブインターフェースに携わるSELDIプローブ表面に検体が捕捉される脱離/イオン化気相イオン分光分析(例えばレーザー脱離/イオン化質量分析)の方法を指す。
或る態様では、酵素阻害法および/または動的酵素アッセイを用いてビクニンおよび腎細胞死マーカーを測定することもできる。
ビクニンを測定するための酵素阻害法の一例は、生体試料に既知量のトリプシンを添加し、次いでトリプシンが阻害された程度を測定することを含む。基質が生体試料に添加された時に検出可能な反応を引き起こすことのできる基質を使用し、この基質をトリプシンによって開裂させ、検出可能な副生成物を産生させる。トリプシンインヒビターが存在すると、利用できる基質のうち幾らかが開裂しないため、この反応が低下する。尿検査法、例えば尿試験紙法を、尿中トリプシンインヒビターの迅速検出のために利用できる(Pugia et al., Clin Chim Acta, 2004;341:73-81。引用によりその全内容を、そして全ての目的について本明細書の一部とする)。酵素阻害アッセイを用いるビクニン測定法は当分野で周知であり、例えば米国特許第6955921号、6770764号、7001737号およびPugia et al., 2002, Clinical Biochemistry, 32:105-11(それぞれ引用によりその全内容を、そして全ての目的について本明細書の一部とする)を参照されたい。
ADBP−26を測定するための動的酵素アッセイの一例は、例えばAla−Pro−p−ニトロアニリド、およびGly−Pro−p−ニトロアニリドといったペプチド基質の開裂を利用するジペプチジルペプチダーゼ活性の測定を含む。セリンペプチダーゼ活性は、発色性基質、例えばH−Gly−Pro−p−ニトロアニリドを用いて測定できる。酵素的ペプチド開裂アッセイは当分野で公知であり、よって本明細書に詳細を記載しない。
或る態様では、ビクニンをコードしている遺伝子の発現レベルを測定することによりビクニンを測定できる。核酸アッセイは当業者に知られており、例えばサザン分析、ノーザン分析、ドットブロット、S1分析、PCRのような増幅技術、およびin situハイブリダイゼーションを包含する。
V.腎疾患状態
腎疾患状態の決定は一般に、診断検査結果に基づき個体を2またはそれ以上の群のうちの一つに分類することを含む。この診断検査を利用して、例えば、幾つかの異なった状態、例えば腎疾患の発症に関して高リスクおよび低リスクに分類することができる。
本発明の或る態様では、ビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルを測定し、それらを特定のリスクレベルに関連するリファレンス量と比較する、即ち、その比率を腎疾患状態と相関させることにより、腎疾患発症リスクを決定する。或る態様では、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定し、その比率を、特定のリスクレベルに関連するリファレンス量と比較する。
或る態様では、本発明の方法を利用して、対象がビクニン誘発性炎症性細胞死、非炎症性細胞死、または細胞死を伴わないビクニン誘発性炎症を有するか否かを特定できる。ビクニン誘発性炎症性細胞死を有する対象は一般に、高レベルのビクニンおよび高レベルの細胞死マーカーを有する。或る側面では、7.8mg/Lより高い尿中ビクニン値が高レベルのビクニンを示し;50ng/mLより高い尿中ADBP−26値が高レベルのADBP−26を示し;そして1.4mg/Lより高い血中ビクニン値が高レベルのビクニンを示す。非炎症性細胞死を有する対象は、一般に正常レベルのビクニンおよび高レベルの腎細胞死マーカーを有する。腎細胞死を伴わないビクニン誘発性炎症を有する対象は、一般に高レベルのビクニンおよび正常レベルの腎細胞死マーカーを示す。
腎疾患のリスクがある対象においてビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルを測定することにより、その対象が当該疾患状態に進行しそうであるか否かを決定することができる。腎細胞死マーカーのカットオフは文献で容易に見いだされ、尿中マーカーが極めて低いまたは皆無である健康な患者と急性腎壊死の患者を比較することによって割り当てられる。対照の平均値より2〜3対象内標準偏差だけ高い値を陽性と考える。患者にとって適切な処置レジメンを、当該対象から取得した生体試料中のビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルに基づいて仕立てることができる。
或る態様では、本発明は、外科患者が急性腎不全を発症するリスクが高いか否かを決定する方法を提供する。急性腎不全(ARF)は、心バイパス手術を受けた患者のおよそ10%に起こる。術後期間における急性腎不全の発症は極めて高い死亡率に関連しており、例えばバイパス手術を受けた患者の透析を要するARF率は1.1%であり、関連する死亡はその63.7%である(Chertow et al., Am J Med 1998;4:343-348)。ARFはさらに、術後感染および敗血症とも関連している(Thakar et al. Kidney Int 2003;64:239-246)。臨床的変数およびバイオマーカーが、バイパス手術を受けた患者における増大したARFリスクを決定できる(Loef BG, et al. J Am Soc Nephrol 2005;16:195-20)。最高リスク群では患者の20−25%にARFが起こる。血清クレアチニン測定が急性腎不全を測定するための現在最も一般的な方法である。
本発明の或る態様では、当該対象が急性腎不全に進行するか否かを決定するために、対象、即ち外科患者のビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定する。ビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルを測定することにより、例えば、対象に腎炎および腎細胞死が無いかどうか、または対象が、ビクニン誘発性炎症性腎細胞死、非炎症性腎細胞死、もしくはビクニン誘発性炎症のうち1つを有するかどうかを決定できる。腎炎および腎細胞死の無い対象は急性腎不全に進行するリスクが極めて低いか無視できるが、ビクニン誘発性炎症性腎細胞死、非炎症性腎細胞死、またはビクニン誘発性炎症を有する患者は、急性腎不全に進行するリスクがより高い。ビクニン誘発性炎症を有する対象は、このビクニン誘発性炎症が腎細胞死と組み合わさる場合に腎不全に進行する可能性がより高い。さらに、ビクニンおよび腎細胞死マーカーの両レベルを測定することにより、適切な処置レジメンを決定することができる。ビクニン誘発性炎症性腎細胞死を有する対象を処置する方法はビクニンの有害作用を防ぎまたは中和する特異的治療法の使用を伴うが、一方でこのような治療法は非炎症性腎細胞死を有する対象には有効とならないであろう。
本発明の或る態様では、対象、例えば外科患者が急性腎不全に進行するかどうかを決定するために、ビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルの測定を、血清クレアチニンまたはその他の腎機能障害のバイオマーカーの測定と組み合わせることができる。例えば、腎機能不全(血清中クレアチニンレベルが1.7mg/dLより高値)および炎症により誘発された腎細胞死を有する対象は全て腎不全に進行し、急性腎不全発症について高リスクであると考えられ、一方、腎機能不全を持たないが炎症により誘発された幾らかの腎細胞死を有する対象は、より低リスクであると考えられる。
本発明の方法はさらに、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定することを包含する。高い比率は疾病を示唆する。例えば本発明の或る側面では、腎疾患を有するまたは腎疾患発症リスクが高い対象は、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率が、正常対照の比率より少なくとも5%、10%、15%、20%または25%高い。
腎細胞死マーカーがADBP−26である或る態様では、腎疾患を有する、または腎疾患発症リスクが高い対象は、ビクニンに対するADBP−26の比率が、ビクニン1gあたりのADBP−26が210ug、またはビクニン1gあたりのADBP−26が約340ugより大となるであろう。或る態様では、ビクニン1gあたり210ug未満のADBP−26という比率が正常対照の比率を示唆、即ち、それが腎疾患発症について低リスクまたは正常リスクレベルを示唆する。
VI.疾患の進行/退行
本発明は、対象の疾患の経過を決定する方法を提供する。疾患の経過とは、疾患の進行(悪化)および疾患の退行(改善)を包含する、経時的な疾患状態の変化を指す。時間と共にビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルは変化する。このレベルが上がりつつあるか下がりつつあるかが疾患の経過を示唆し得る。したがって本方法は、ビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルを経時的に、即ち少なくとも2つの異なる時点、例えば第一回目および第二回目において測定し、量的変化があればそれを比較することを含み得る。ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定する態様においては、その比率の数値の変化が疾患の進行または退行を示唆することができる。
VII.治療法
本発明は、腎疾患を有する対象の処置戦略を決定する、即ちその腎疾患状態に基づいて対象の処置を管理する方法を提供する。このような管理は、腎疾患状態を決定した後の医師または臨床医の行為を包含できる。例えば、医師が腎疾患の診断を行ったならば、その後何らかの処置レジメンが続くことになる。或る態様では、ビクニンに対するADBP−26の非常に高い比率は、この疾患が重篤な段階にあり積極的処置が正当であることを示す。より低い比率は、対象がより重篤度の低い段階にあり、よってより積極性の低い処置が正当とされることを示す。或る態様では、対象がビクニン誘発性炎症性腎細胞死を有するのか、それとも非炎症性腎細胞死を有するのかを決定することが、処置レジメンを決定づける。例えば、ビクニンの有害作用を防止する治療法は、ビクニン誘発性炎症性腎細胞死を有する対象には有用であろうが、非炎症性腎細胞死を有する対象には有用でない。ビクニンの有害作用を防止する処置は、例えば、ビクニンを代謝する酵素および/またはプロテアーゼ、細胞に及ぼすビクニンの影響を遮断する小分子、またはビクニン放出を防止する小分子を包含できる。
本発明は、医薬の治療効果を決定する方法を提供する。これらの方法は、薬物の臨床試験の実施および薬物を使用している患者の改善の監視において有用である。治療法または臨床試験は、特定のレジメンで薬物を投与することを含む。このレジメンは、単一用量の薬物または時間経過を伴う複数用量の薬物を含み得る。医師または臨床研究者は、患者または対象に対する投与の経過に沿った薬物の効果を監視する。例えば、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定する或る態様では、もしその薬物がその状態に対する薬理学的影響を有するならば、その比率の量または相対量(例えば、パターンまたはプロファイル)は、非疾患プロファイルの方向へと変化する。したがって或る態様では、この方法は、薬物療法を受けている対象においてビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を測定し、そしてその比率を対象の疾患状態に相関させることを含む。この方法の或る態様は、薬物療法の経過中に少なくとも2つの異なる時点、例えば第一回目および第二回目においてその比率を測定し、比率の変化があればそれを比較することを含む。例えばこの比率を、薬物投与の前後に、または薬物投与中の異なる2つの時点で測定できる。治療効果はこれらの比較に基づいて決定できる。処置が有効ならばその比率は正常化する傾向になり、処置が無効であるならば比率は疾患を示す傾向になるであろう。
VIII.腎疾患
炎症は腎損傷の特徴であり、典型的には感染症に関連している。ビクニンの作用メカニズムは腎疾患に関係しているが、ビクニンが腎疾患に特異的である訳ではない。本発明の腎細胞死マーカーは腎疾患に特異的である。特にADBP−26は、後期腎疾患の特異的指標であることが示されている。本発明者等は、ビクニンが腎細胞死を誘発し、したがってビクニンおよび腎細胞死マーカーの両レベルの決定が、腎疾患発症の相対的リスクに関する本質的な情報および適切な処置レジメンを提供できることを見出した。本発明者等はさらに、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率が、いずれか単独よりも、特定の状態のより良い適中率を提供できることを見出した。或る態様では、1以上のさらなるマーカーの評価を本明細書に記載の測定値と組み合わせて、分析の適中率を高めることができる。
これらのさらなるバイオマーカーは、例えば、腎疾患評価のために尿において一般的に測定されるが腎細胞死に特異的ではない腎マーカーを包含する。腎細胞死に特異的でないバイオマーカーは、一般に腎疾患について85%未満、80%未満、70%未満または60%未満の特異性を有する。例としては一般に、健康な対象の血液中に見出され、腎損傷後に尿中で上昇または低下するバイオマーカーである。糸球体または近位尿細管におけるような腎損傷は、血清成分の濾過および吸収に変化をもたらし、程度の差はあるが尿中へのそれらの溢流を惹起する。これらのバイオマーカーは、身体の他所の細胞から尿中に排出され、主に腎細胞から尿中へ排出される訳ではない。これらのバイオマーカーの尿中レベルの変化も、主に腎細胞死に起因する訳ではない。それらはしばしば感染症、自己免疫疾患、癌、心血管疾患などといった他の状態に起因するものである。したがってそれらは腎細胞死の特異的マーカーの定義には合致せず、腎臓の濾過および再吸収に依存する尿中マーカーである。
腎臓の濾過および再吸収に依存する尿中マーカーには、小分子、低分子量タンパク質、免疫反応成分、高分子量タンパク質および尿沈渣がある。小分子の例は、尿素、グルコース、アミノ酸、リン酸塩、プロスタグランジン、クレアチニンおよび尿濃度のマーカー、例えば比重、塩類または水である。低分子量タンパク質〜<30kDaの例は、α−1−ミクログロブリン、レチノール結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、アディポネクチン、およびβ−2−マクログロブリン、カルビンディンD、システインリッチタンパク質6、内皮/上皮成長因子および血清プロテオームに関連するその他のものを包含する。免疫反応成分免疫グロブリンおよび補体の例は、IgA、IgG、gG、IgE、IgD、IgM、尿細管刷子縁抗原、およびκ/λ軽鎖ならびにインターロイキン(IL−1、IL−6、IL−18)のようなサイトカイン/ケモカインを包含する。高分子量タンパク質の例は〜>45kDaと定義され、α−1−酸糖タンパク質、プレアルブミン、修飾アルブミン、アルブミン、トランスフェリン、α−1−リポタンパク質、α−1−アンチトリプシンマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、α−1−フェトプロテイン、Tamm Horsfallタンパク質およびα−1−糖タンパク質といった例を包含する。尿沈渣の例には、細胞、円柱細胞および結晶がある。
本明細書に記載の方法はさらに、疾患の診断、疾患の進行の決定、または処置の有効性の決定を助けるその他任意の検査、例えば腎臓の画像化と組み合わせて使用することもできる。
本明細書で使用する腎疾患という語は、腎臓を冒す任意の疾患、特に腎臓の炎症に関連する疾患の包含を意味する。例示的疾患には例えば、腎炎、腎毒性、腎不全、糖尿病性腎症、腎臓癌、糸球体腎炎がある。腎疾患は、例えば高血圧症、糖尿病、および自己免疫疾患、例えばループスを包含する他の状態に関連する腎疾患を包含する。
IX.ビクニンに対するADBP−26の比率を検出するためのキット
本発明は、腎疾患の状態を決定するためのキットを提供する。このキットは、生体試料中の腎細胞死マーカーおよびビクニンを測定する手段を含む。
さらにこのキットは、本発明の方法の実施のための指示(即ちプロトコル)を含む説明用資料を包含し得る。説明用資料は典型的には書かれたまたは印刷された資料を含むが、それらに限定される訳ではない。そのような説明を保存しそれらをエンドユーザーに伝えることのできる任意の媒体が本発明により企図される。このような媒体は、電子的記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ等)、光媒体(例えばCD ROM)等を包含するがそれらの限定されない。このような媒体は、そのような説明用資料を提供するインターネットサイトのアドレスを包含できる。
キットはさらに、例えば個体から生体試料を取得する手段を含む。個体から生体試料を取得するための手段は当分野で周知であり、例えばカテーテル、シリンジなどがあり、本明細書で詳細に述べることはしない。
X.実施例
実施例1 − ビクニンおよびADBP−26の相関
正常な腎細胞に及ぼすBik(12.5〜500mg/L)の影響を、同調培養した腎細胞をBikに暴露することにより測定した。暴露および分析は3回の個別試験で実施した。Bikへの暴露の24時間後に細胞を収穫した。図3に示すように細胞数は常にBik濃度の増加と共に減少し、これは細胞死の増加を示した(黒丸)。腎細胞死の増加を示すADBP−26量の変化の増大があった(白丸)。正常な腎細胞は、炎症の際に見出される濃度のBikを含有していなかった。この結果は、過度の炎症が細胞死およびADBP−26の放出を引き起こすという発見を支持するものである。Bikはさらに、免疫仲介性アポトーシスから細胞を防御しており、炎症反応に起因する細胞増殖を低下させた。Bikは細胞のシグナル伝達および腎臓によるタンパク質吸着に関与するセリンプロテアーゼを阻害した。
実施例2 − 入院患者におけるビクニンに対するADBP−26の比率
腎疾患のある患者と無い患者から一組の入院患者の試料を集めた。>1g/日のタンパク尿を常に呈する時、患者を腎機能不全と診断した。腎疾患における関係を立証するため、尿試料をADBP−26およびBikについて検査した。BikおよびADBP−26は、個別的に腎疾患の存在と相関する。ADBP−26およびBikの関係を同様に検査した。この実施例では、ADBP−26およびBikの比率を使用した。比率は、両方の結果を用いる測定基準の一例に過ぎない。以下のデータは、腎疾患に対するADBP−26/Bik比の相関を支持し、そしてこの比率は、二つの個別的マーカーよりも腎疾患に対する相関をさらに増大させた。34名の正常対照および4名の腎臓患者を検査した。正常者の尿中ADBP−26値は全て39ng/mLを下回った(この閾値は平均値に3SDを加えた値である)。ADBP−26陽性結果の閾値として>39ng/mLを用いると、正常者は全て陰性であり、4名の患者試料のうち1名だけが陽性であった。第一の患者は86ng/mLという高いADBP−26測定値であった。正常者の結果についての尿中Bikリファレンス範囲は文献によると<7.8mg/Lである。Bik陽性結果の閾値として≧7.8mg/Lを使用すると、正常対照のうち8名がBikについて陽性であり、4名の患者試料全てが陽性であった。Bikに対するADBP−26比を使用すると、4名の患者全員が21.0mg/gの比率で陽性であり、正常対照患者全員が<21.1mg/gの比率で陰性であった。尿中ADBP−26/Bik比は腎不全のリスクがある集団を明確にする。殆どの患者は210ug ADBP−26/g Bikを下回り、腎損傷(または血管損傷)のリスクが高い4名の患者では、340を超える該比率の大きな変化がある。
Figure 2010529458
全体としてのデータは、尿中ADBP−26およびBikの測定は、BikまたはADBP−26いずれかを単独で使用するよりも腎臓患者のリスク階層化に望ましいことを支持している。リスクレベルはADBP−26/Bikの比率として容易に表される。この実施例では、高い比率の患者が最高リスクである。
実施例3 − 外科患者におけるビクニンおよびADBP−26のレベル
心バイパス手術後の急性腎不全(血清クレアチニンの30%上昇により定義する)のリスクがある患者においてADBP−26およびビクニンの尿中出現の時間経過を決定するため、心バイパス手術を受ける患者群について臨床試験を実施し、手術の過程で少なくとも3日間測定した。Cleveland Clinic Foundation術前リスクスコア(Loef)に従い患者をリスク階層化し、腎不全に進行している患者の良好なパーセンテージを得た。ARFに進行している患者および正常腎機能を維持している患者についてADBP−26およびビクニンを血清クレアチニンと比較する。
全試料のバイオマーカーを調べ、尿中Bik、尿中ADBP−26および血清クレアチニンが正常ならば患者を低リスクとみなした。Bikのカットオフとして7.8mg/L;ADBP−26のカットオフとして50ng/mL、そして血清クレアチニンのカットオフとして1.7を使用した。患者が腎細胞死または腎機能不全を誘発していない炎症を有する場合(または、Bik>7.8mg/L、ADBP−26<50ng/mL、且つ血清クレアチニン≦1.7mg/dL)、その患者は正常範囲と考えた。患者が腎機能不全を伴わない炎症誘発性腎細胞死を有する場合(または、Bik>7.8mg/L、ADBP−26>50ng/mL、且つ血清クレアチニン≦1.7mg/dL)、その患者は低リスクではあるが正常範囲と考えた。これらの場合、患者の状態は3日の間に正常に戻ったか、または3日目にのみ注目した。患者が炎症誘発性腎細胞死(Bik>7.8mg/L、ADBP−26>50ng/mL)または腎細胞死を伴わない炎症(Bik>7.8mg/L、ADBP−26<50ng/mL)による腎機能不全(クレアチニン>1.7mg/dL)を有する場合、その患者は腎不全の可能性が極めて高いと考えた。非炎症性腎細胞死を有する患者は、腎機能不全を有するまたは腎不全に進行するリスクが中等度であった(Bik<7.8mg/L、ADBP−26>50ng/mL)。下の表でわかるように、腎不全に進行した全ての外科患者は、中等度または高リスクを示す診断関係を指摘されている。
Figure 2010529458
この表からわかるように、炎症誘発性腎細胞死を有する患者(23+29)のほぼ半数(23)が手術中に腎不全に進行した。一方、炎症があるが腎細胞死のない患者(45)の四分の一(15)が手術中腎不全に進行した。これは、腎細胞死が起こると腎不全の可能性が上がることを意味している。
同時に、非炎症性腎細胞死のある患者(24)のほぼ半数(12)が腎不全に進行した。これらの患者は、別の原因の腎細胞死が起こっているため、別途処置を受けることになる。Bik阻止療法は機能しないであろう。
腎細胞死マーカーのみの使用は、患者(12+15)および対照(29+6+6)についてBik誘発性腎細胞死を阻止する治療法を誤認するであろう。腎炎症のマーカーとしてBikのみを使用するならば、患者についてBik誘発性腎細胞死を阻止する治療法を誤認することはないが、多くの対照(29+30)について誤認するであろう。全体として、陰性はないが、腎細胞死マーカーより多くの偽陽性が出る。両者を使用すると患者(15)および対照(29)において治療法を誤認するであろう。両方のマーカーを使用したところ、腎細胞死マーカーのみを使用する場合よりも偽陽性および偽陰性が少なくなった。

Claims (24)

  1. 対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを特定する方法であって、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し、そして、その生体試料中のビクニンおよび腎細胞死マーカーのレベルに基づき、対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを決定することを含む方法。
  2. 腎細胞死マーカーが、腎細胞死の結果尿中に放出される、膜結合腎細胞タンパク質、刷子縁膜タンパク質もしくは腎臓の細胞内タンパク質、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
  3. 腎細胞死マーカーが、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質、アラニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、NGAL、L−FABP、NHE3、KIMまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
  4. 腎細胞死マーカーが、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  5. 対象が、ビクニン誘発性炎症性腎細胞死を有するか否かを特定するための、請求項1に記載の方法。
  6. 対象が、非炎症性腎細胞死を有するか否かを特定するための、請求項1に記載の方法。
  7. 対象が、腎細胞死を伴わないビクニン誘発性炎症を有するか否かを特定するための、請求項1に記載の方法。
  8. ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率を決定し、対象が腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かの決定が、この、ビクニンに対する腎細胞死マーカーの比率に基づいている、請求項1に記載の方法。
  9. 腎細胞死マーカーが、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質である、請求項8に記載の方法。
  10. 対象が、正常対照の比率に比してビクニンに対するADBP−26の比率が高いと特定し、それにより、その対象が腎疾患に罹患している、または腎疾患を発症するリスクが高いことを示す、請求項9に記載の方法。
  11. 生体試料が、尿である、請求項10に記載の方法。
  12. ビクニン1gに対して210ugを上回るADBP−26の比率が、腎疾患に罹患している、または腎疾患を発症するリスクが高いと対象を特定する、請求項11に記載の方法。
  13. ビクニン1gに対して340ugを上回るADBP−26の比率が、腎疾患に罹患している、または腎疾患を発症するリスクが高いと対象を特定する、請求項11に記載の方法。
  14. 対象が、腎不全を発症するリスクが高いことを特定するための、請求項1に記載の方法。
  15. 腎疾患の評価のために尿中で測定できるが腎細胞死に特異的ではないバイオマーカーのレベルを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  16. 腎機能障害のためのバイオマーカーのレベルを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  17. 対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し、その生体試料中のビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルに基づいた処置戦略を決定することを含む、対象の処置戦略を決定する方法。
  18. 対象が、外科患者である、請求項16に記載の方法。
  19. 対象が、ビクニン誘発性炎症性腎細胞死、非炎症性腎細胞死、または腎細胞死を伴わないビクニン誘発性炎症を有すると特定する、請求項16に記載の方法。
  20. 腎細胞死マーカーが、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質である、請求項16に記載の方法。
  21. 第一の時点で、対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し;
    第二の時点で、その対象から得られた生体試料におけるビクニンのレベルおよび腎細胞死マーカーのレベルを決定し;
    そして、第一の測定値と第二の測定値を比較する[ここで、この比較測定が腎疾患の経過を決定する]、
    ことを含む、腎疾患の経過を測定する方法。
  22. 生体試料におけるアデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADBP−26)およびビクニンを測定するための手段;ならびに場合により使用およびキット結果の解釈のための説明を含むキット。
  23. 対象が、腎疾患を有するか否か、または腎疾患を発症するリスクが高いか否かを特定するための、請求項22に記載のキット。
  24. 腎疾患を有する対象の処置戦略を決定するための、請求項22に記載のキット。
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