JP2010528364A - 間欠的故障の診断 - Google Patents

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Abstract

継続故障及び間欠的故障の任意の組み合わせを判断する方法及びシステム。被試験システムの挙動は1つ以上の特定の位置でシステムを測定又はプロービングすることにより取得される。被試験システムに対応するモデル化されたシステムの予測挙動は、少なくとも条件付き確率、事前の観察及びコンポーネントモデルに基づいて推論を引き出すことにより調査される。予測は被試験システムにおける対応する点と比較される。測定された挙動と予測挙動の間におけるコンフリクトの存否が決定され、更に正確に被試験システムの動作故障を反映すべく条件付き確率が調整される。取得された予測挙動と実際の挙動の間のコンフリクト又は偏差は、故障を生じるシステムコンポーネントを分離すべく利用される。

Description

本出願は、2007年5月24日に出願されたジョアン・デ・クリーア(Johan de Kleer)の米国仮出願第60/931,524号「間欠的故障の診断(Diagnosing Intermittent Faults)」、及び2007年5月24日に出願されたジョアン・デ・クリーア(Johan de Kleer)の米国仮出願第60/931,526号「組み合わせ論理回路における時間的挙動のトラブルシューティング(Troubleshooting Temporal Behavior in Combinational Circuit)」に対し優先権を主張し、その全開示内容を参照によって本明細書に援用する。
モデルベース診断(MBD)は、被試験システムのうちいくつかの(通常は機能的な)側面を記述するモデルから、テストケースの全部または一部が導出されるモデルベースに基づくテストに関する。モデルは、通常はテストにおいて望ましい(test−desired)挙動を示す際のシステムの抽象的且つ部分的な表現である。このモデルから導出されるテストケースは、モデルと同一の抽象化レベルの機能テストである。
モデルベース診断は診断的であり、システムによって管理される。特に、不正な挙動の観察から始め、故障の可能性のある下層コンポーネントへ向かって動作する。
モデルベース診断は、故障システム挙動の検知、故障コンポーネントの識別、システムの修復及びシステムの再構成を含む各種領域において利用可能である。MBDを適用可能な他の分野として、認識モデルのデバッグ、遺伝子経路の改良モデル構築実験の設計、電力網のトラブルシューティング、生産ラインのトラブルシューティング、宇宙機及び飛行機における欠陥の識別、及びプログラムのデバッグが挙げられる。
しかし、MBDの他に、「個別(ad hoc)」の、手でコード化されたルール、パターンの機械学習、Dアルゴリズム検索及び解析的冗長性の関係などの他のテスト方法を利用するシステム診断に関連した問題は、間欠的故障を正確に診断できない点にある。
自動車システム及び電子複写機の診断に関する経験から、間欠的故障は最も分離が困難な故障のうちの1つであることがわかった。このようなシステムは、多くのモデル化における複雑性を生む。間欠的故障を分離するアプローチは論理システムの文脈において提示される。しかし、本発明の概念は他の多くの環境中で利用できることを認識されたい。
現在、間欠的故障を発見する試みにおいて利用されている主なアプローチは、間欠的故障を継続故障に変換することを目的に被試験システムにストレスを付加し、次いでそれらの故障を判断するものである。しかし、これらのアプローチは、システム全体のシステム故障の増加を招く傾向がある。
従って、間欠的故障を発見し又は分離するが、被試験システムにストレスを付加せず、従ってシステム故障の増加を回避するシステム及び方法を利用することが望ましい。
XXXX年XX月XX日に出願されたジョアン・デ・クリーア(Johan de Kleer)の米国出願第XX/XXX,XXX号(代理人整理番号第20070320− US−NP/XERZ201587号)「組合わせ回路における時間的挙動のトラブルシューティング(Troubleshooting Temporal Behavior in Combinational Circuit)」、並びに2007年10月30日に出願されたジョアン・デ・クリーアの米国出願第11/925,444号(代理人整理番号第20070258−US−NP/XERZ201588号「メタ診断による動的ドメイン抽出(Dynamic domain abstraction through meta−analysis)」を参照によって本明細書に組み込む。
継続故障及び間欠的故障の任意の組み合わせを診断する方法及びシステムである。1つ又は複数の特定の位置においてシステムを測定又はプロービングすることにより被試験システムの挙動を取得する。被試験システムに対応するモデル化されたシステムの予測挙動は、少なくとも条件付き確率、事前の観察及びコンポーネントモデルに基づいて推論することにより調査される。予測は被試験システムにおける対応する点と比較される。測定された挙動と予測挙動との間におけるコンフリクトの存否について決定が行われ、被試験システムの動作故障を更に正確に反映させるべく事後確率が調整される。取得された予測挙動と実際の挙動との間のコンフリクト又は偏差は、故障を生じているシステムコンポーネントを分離するなどの最終結果を取得すべく利用される。
モデルベース診断エンジンの主な入力及び出力を示す図である。 単純なシステム及び複合システムにおいて間欠的故障を効率的に診断するためのシステム及び方法の概念に関する図である。 全加算器を示す図であり、この回路はc(キャリーイン)、a及びbの2値の和を計算し、qは、結果における最下位ビットであり、c(キャリーアウト)は上位ビットである。 経時的なコンポーネント故障の確率を示す表である。行0は間欠的に故障しているコンポーネントの先験的確率、行1は、システムに故障が発生していることの認識に関して条件付けられた確率、行2はc=1について条件付けられた確率を表し、以下同様である。 故障O1を分離するのに必要なプローブを示す表である。 図3の全加算器について診断コスト(DC)を評価するための1組の診断状況を示す表である。Xは無関係であることを表す。 例示的なANDゲート回路を示す図である。 学習を利用するプロービング戦略の結果を示す表であり、A1はi=11において故障し、最終の列は分布のエントロピーすなわち正確な診断がどの程度綿密に分離されたかの測定である。 例示的な2バッファ回路を示す図である。 単一の間欠的バッファを分離するコストをバッファ数に対してプロットしたグラフである。 よく知られているベンチマーク回路ISCAS−85について利用された場合の本発明の概念の平均診断コストを示す図である。 本出願の概念を組み込んだ診断デバイスの一実施形態を示す図である。 埋め込み診断デバイスの実施形態を示す図である。
図1は、モデルベース、コンポーネントベースの診断(MBD)エンジンアーキテクチャ10の主な入力及び出力を示している。コンポーネント形態(例えば、アナログ電子回路の概略)12a、コンポーネントモデル(例えば、レジスタはオームの法則に従う)12b、及び観察(例えば、レジスタR6に印加される電圧は4ボルトである)12cを所与とすると、モデルベース診断(MBD)エンジン14は、全ての観察12c説明する診断16を計算する。期待値と一致しない観察は、診断の発見につながる。モデルベース診断(MBD)エンジンが診断を発見できない場合、それは故障18を示唆する。
既存のモデルベース診断(MBD)アプローチは、診断中のシステムが非間欠的なMBDシステムの挙動を示すと仮定し、従ってシステムの少数(多くの場合1つ)の時刻における被試験挙動を解析する。以下の説明は、多くの時刻にわたって出現する間欠的故障を判断するためにモデルベース診断の既存のアプローチを如何に拡張できるかを示す。更に、故障により生成される徴候を最も適切に説明する間欠的故障を最も適切に識別するためにプローブ点をどこに挿入し、最小期待コストで当該故障を分離するかを以下に開示する。
間欠という概念は定義しにくい概念である。従って、正式な定義の前にまずは直観的な説明を行う。システムは1組のコンポーネントからなる。ひとつの故障コンポーネントが物理的に機能低下しており、必ずしも正確に機能していない。例えば、故障したレジスタは、規定電圧を印加しても予測された電流を伝達しない。プリンタの摩耗したローラは一貫して用紙を把持せず、結果として間欠的な紙詰まりを生じることがある。摩耗したローラの場合、通常は正常に機能するが、希にスリップし、紙詰まりを起こす。従って、本発明の概念は2つの確率、すなわち(1)実際のコンポーネントがその設計から逸脱し、故障を示す確率、及び(2)故障コンポーネントが観察時に誤動作する確率、のそれぞれの潜在的に間欠的なコンポーネントと関連付ける。例えば、ローラが摩耗する確率は10−5であるかもしれない。一方で摩耗したローラが実際に誤動作する確率は0.01であるかもしれない。このドキュメントでは、間欠的故障又は持続故障の任意の組み合わせが発生したデバイスのトラブルシュート方法を教示する。デバイスは、任意の数の故障を含みうる。当該アプローチは、観察後の事後確率を計算し、デバイスの1つ以上の故障を分離すべく更に必要な追加のプローブを実施する。
システムの動的挙動は経時的にモデル化されない。代わりに、システムは観察事象のシーケンスとして見られる。例えば、1枚の用紙をプリンタに供給し、紙詰まりが生じたことが観察されたとする。また、組み合わせデジタル回路にテストベクトルを適用し、続いて出力信号が観察されたとする。
定義1 間欠的故障コンポーネントとは、出力が入力の関数でないコンポーネントを指す。
間欠性は少なくとも2つの原因により発生しうる。更に詳細な(すなわち抽象)レベルにおいてシステムをモデル化できる場合、明白な間欠性は消失する場合がある。例えば、実際には、モデル化されておらず不都合なブリッジ接続があるにもかかわらず、2本のワイヤが短絡することにより、ゲートが間欠的であるように見えることがある。第2のタイプの間欠性は、何らかの確率的物理的プロセスから発生するため、どのような詳細レベルにおいても間欠的である。本議論はこの第2のタイプの間欠性に注目する。
1 間欠的故障を判断するためのフロー工程及びシステムの概観
ここで、本出願の概念を更に詳細に見てみる。複合システムにおいて間欠的故障を正確に特定することは極めて困難であることが知られている。その理由の一つに、故障や徴候は観察可能なパターンを有さずに出現したり消失したりしうる点が挙げられる。このような故障は技術者による分離が困難であることで知られ、このために診断に対するほぼ全てのアプローチについて問題を提起する。本発明の概念は、モデルベース診断(MBD)に基づくアプローチを提案する。MBDはシステムのモデル(例えば、コンポーネントの行動モデルの回路概略及び行動モデル)において作用し、故障コンポーネントを分離するためにモデルの挙動に対する実際の挙動の偏差を利用する。各段階において、潜在的な故障原因と関連付けられた、再計算された条件付き確率は、次の段階における観察及び測定に利用される。
従って、本発明の概念は、後続の測定が異なる値を生ずる可能性を許容しつつコンポーネントの確率を調整することによって相容れない矛盾を回避し続けるべく、間欠的故障の診断を行うことに注目する。
図2を参照すると、単純なシステム及び複合システムにおける間欠的故障を効率的に診断するためのシステム及び方法の概念に関する概括図が示されている。図2のモデルベース診断フローチャート20において、コンポーネントは条件付き確率24を有する。被測定システム又はデバイスのコンポーネントは2つの確率、すなわち(1)実際のコンポーネントがその設計から逸脱し、故障を示す確率、及び(2)(潜在的に間欠的な場合における)故障コンポーネントが観察時に誤動作する条件付き確率、のそれぞれと関連付けられる。ステップ26で、潜在故障を有する「現実世界の」システムについての観察及びそのシステムの対応するモデルが観察される。これらの「現実世界の」観察は、当該技術で知られているもの(例えば電圧計、現在の試験装置、ロジックアナライザ、高速度カメラ)などのプローブ装置によって回路を調査することにより取得可能である。
次に、MBDモデルに関して、一定の入力が認識されると、従来のMBD解析と同様の方法で推論を利用してモデルの予測が行われる。このプロセスの一環として、ステップ28で、予測と異なる観察はコンフリクトを生じる。ステップ30で、これらのコンフリクトは診断を計算する際に利用される。次いで、ステップ32に示されるように、モデルの挙動に対する実際の挙動の偏差を識別する、計算された診断30が故障コンポーネントを分離すべく利用される。従って、ステップ32で、後続の測定が別のあるいはより許容可能な値を生じ、相容れない矛盾を回避する可能性を許容し続けるように、モデルのコンポーネントと関連付けられた事後確率が調整される。
具体的には、ステップ34で、十分な観察(すなわち測定及び/又はプロービング)がなされたか否かに関して問い合わせが行われる。この「十分な観察がなされたか?」の問いは、実施されたプロービング又は測定操作の回数などの単純なものについて行うこともでき、あるいは、真の診断として最も確率の高い診断を許容すべく確率閾値が到達したか否かについて行うこともできる。例えば、レジスタ(例えばR4)がシステムの故障コンポーネントである確率が0.90であると推論される場合、また、ステップ34の問い合わせで、確率が0.80を超えるものは最終診断として許容できるという閾値を有する場合、プロセスはステップ36に移動し、最終診断に到達する。
他方、ステップ34が最大であると決定された測定又はプローブの数に到達しない場合、あるいは確率因子が決定された閾値ほど大きくない場合、プロセスはステップ38に移動し、測定又はプロービング位置の次の(間欠の場合、次のサンプルに同一のプローブを繰り返してもよい)配置が決定される。一例において、このことはプローブ装置を(例えばデバイスAの入力からデバイスBの出力へ)移動させることを単に意味する。新たな測定又はプロービング位置がステップ38で決定され、実際の測定が取得されると、プロセスはステップ28の入力へ戻り、プロセスが繰り返される。
図2には更にデータベース40が示されている。フローチャート20に示されるシステムは計算装置で実施可能であることを認識されたい。計算装置は、特に間欠的故障を診断するためのMBD動作用に設計されたものであっても、他の汎用計算装置であってもよい。このような装置は、データベース40により定義されるような記憶要素を有する。矢印42によって示されるように、各種モジュール又はフローチャート20のステップにより使用され生成される情報がデータベース40内のメモリに記憶できることを意図するものである。
同様に、ブロック44は、特にステップ44の関連付けられた条件付き確率のうちの1つ、特に、故障した状態にあるコンポーネントが正常に機能しているという条件付き確率g(c)に関する正確な値を学習及び提供することに関する学習ブロックである。一実施形態におけるこのような情報は、製造又は類似するシステムにおける当該コンポーネントに関する以前の経験から一般的に取得可能であるが、このような情報は広く変更される場合がある。従って、モジュール又はステップ44はこの条件付き確率情報を更新することができる。
図面からわかるように、ステップ32の概念、すなわち確率を計算又は再計算することは、以下の説明の、セクション2.2、3.0及び10.0において発展される。
次の測定のための「最良の」配置を計算する概念が以下の説明のセクション4.0及び8.0で議論される。更に第2の関連する可能性の学習の詳細は以下の説明のセクション5.0に発展される。
2 GDE確率フレームワーク
GDEフレームワークは、制約、述語論理もしくは従来のルールとして表現されるコンポーネントの挙動を有することを含む。GDEは、これらのモデルから導出される全ての結論及び観察を記録するために、仮説に基づく真理維持システム(Assumption−Based Truth Maintenance System:ATMS)を利用できる。
GDEは各候補診断について確率を算出する。コンポーネントの故障確率を所与とし、コンポーネントが独立して故障すると仮定して、GDEは各診断について事前確率を割り当てる。観察が蓄積すると、診断の(事後)確率はベイズ・ルールに従って変化する。証拠による論理上消去可能な候補診断の確率は0に定められる。GDEは(仮説的定義とは対照的な)一貫性に基づく診断定義を利用するが、ベイズ・ルールを適用することで、観察に対して単に一貫性を保つものと比較して、該観察を伴う診断の事後確率を高める。結果として、事後確率を更新するベイズ・ルールを適用することで、一貫性に基づく診断の特性と仮説に基づく診断の特性の合成を示すGDEが生成される。
システムに実際に生じた問題を決定するためには、通常は更なる測定値を取得する必要がある。一実施形態において、GDEは、次に実施すべき最良の測定を選択することで、順次診断を行う。GDEは、一般的に最小エントロピー(例えば、近視眼的最小エントロピー戦略)に基づいた1ステップの予測機能を利用する。多段階のルックアヘッドはよりよい測定を選択するが、一般的に計算上非実用的である。GDEは、正確な診断を局地化するための最小数の測定を平均して要求する、実施すべき1組の測定を提案する。
仮説に基づく真理維持システム(ATMS)及びハイブリッド真理維持システム(Hybrid−Truth Maintenance System:HTMS)のフレームワークは、複雑な検索空間を効率的に探索する問題解決法の構造を単純化すべく設計された命題推論エンジンを含む。ATMSは、問題の状態を、主要な二者択一型選択に対応する仮説と、真実が仮説の真実に依存する命題に対応するノードと、と共に表す。仮説とノードとの依存関係は、従来の推論エンジンなどの、ドメインに特有の問題解決法によって決定される。問題解決法は、これらの関係を、節及び根拠としてATMSに対して提示する。ATMSは、仮説のいずれの組み合わせが一貫性を有しているかを決定し、それらが導出する結論を識別する。
ATMSは、これまでは解決する問題に適した従来の推論エンジンと組み合わされて利用されていた。拡張は、命題推論と、推論エンジンから呼び出しを受けて命題推論へ引き渡し、結果を推論エンジンに戻すインタフェースとを含む。
定義2 システムは三つ組(SD,COMPS,OBS)である。
1.SD(システム記述)は1組の一次センテンスである。
2.COMPS(システムコンポーネント)は定数の有限集合である。
3.OBS(1組の観察)は1組の一次センテンスである。
定義3 2組のコンポーネントC及びCに対し、接続詞D(C,C)を以下により定義する。
Figure 2010528364
AB(x)はコンポーネントxに異常(故障)が発生していることを示す。
診断はシステムの可能な1つの状態を記述するセンテンスであり、この状態は各システムコンポーネントに対する正常又は異常のステータスの割り当てである。
定義4
Figure 2010528364
定義5
Figure 2010528364
定義6
Figure 2010528364
定義7
Figure 2010528364
本ドキュメントの大部分においては、「弱い」故障モデルを想定する。すなわち、異常挙動仮説を無視することを想定している。故障モデルは推定されない。セクション10の「多数の持続故障又は間欠的故障に対する拡張」は、この仮説を如何に緩和するかを示している。
2.1 時間の表現
時間は、前述の形式で容易に表現可能である。例えば、インバータのモデルは通常次のように記述される。
Figure 2010528364
本ドキュメントでは、時間tにおける変数xの値vを多義的にT(x=v,t)と表す。時間は時刻t0,t1,...のシーケンスである。時間tにおけるXの確率はp(X)と表す。
2.2 診断確率の更新
コンポーネントは各々独立して故障すると仮定される。従って、特定の診断D(C,C)が正しいという先験的確率は、次の通りである。
Figure 2010528364
式中、p(c)はコンポーネントcが故障しているという先験的確率である。
時間tにおいてxが値vを有するという観察後の診断Dの事後確率は、ベイズ・ルールにより与えられる。
Figure 2010528364
t−1(D)は先行する測定又は故障の先験的確率によって決定される。分母p(x=v)は、全てのp(D)について同一の正規化表現であり、従って直接計算する必要はない。方程式中で評価されるべき表現はp(x=v|D)のみである。すなわち、D,SD,OBS,T(x=v,t)が一貫しない場合、p(x=v|D)=0であり、D,SD,OBSよりT(x=v,t)が導かれる場合、p(x=v|D)=1である。
上記のいずれも適用されない場合は以下によって得られる。
Figure 2010528364
当該技術で知られている各種εポリシーが可能であり、変数x及び値v毎に異なるεを選択可能である。一般的に、εik=1/mが成り立つ。これは、xの範囲がm個の可能な値に及ぶ場合、各可能な値を等しく取りうるという直観に対応する。デジタル回路においてm=2であればε=0.5である。
従来のフレームワークでは、予測と相違する観察はコンフリクトを生じる。コンフリクトは診断の計算に利用される。ここで、図3の全加算器デジタル回路50について考察する。全加算器デジタル回路50はc(キャリーイン)、a及びbの2値の和を計算し、qは、結果における最下位ビットであり、c(キャリーアウト)は上位ビットである。回路への全ての入力(c,a,b)が0であると仮定すると、cの測定値は1である。このことは1つの最小限のコンフリクトを生じる。
Figure 2010528364
簡潔にするため、fが故障コンポーネントである場合、全ての診断を[f]として記述する。従って、単一故障診断は[A1]、[A2]、[O2]となる。
3 間欠的故障を支持する従来のフレームワークに対する拡張
従来のフレームワークでは、p(c)はコンポーネントcが故障しているという先験的確率である。新たなフレームワークでは、以下の2つの確率が各コンポーネントと関連付けられる。すなわち(1)p(c)は、コンポーネントに間欠的故障が発生しているという先験的確率を表す。(2)(潜在的に間欠的なコンポーネントについて)g(c)は、故障した場合に当該コンポーネントcが正常に機能している条件付き確率を表す。
間欠性が存在する場合、同一の連続する診断モデル及びベイズ・ルール更新が適用される。しかし、より高度なεポリシーが必要である。なお、εポリシーは特定の診断がx=vを予測せず、またそれと不一致でもない場合にのみ適用される。ここで、単一の故障が存在する場合について考察する。全ての入力が所与であると仮定すると、診断がxに対する値を予測できない唯一の理由は、故障コンポーネントが因果的にxに影響している時である。単一の故障診断[c]について考察すると、g(c)はcが故障している場合に当該コンポーネントが正確な出力を発している確率である。ここで、可能なケースは2つのみである。すなわち、(1)cは、確率g(c)で正確な値を出力している。(2)cは、確率1−g(c)で故障値を生じている。従って、D({},COMPS), SD;OBSからx=vが導かれ、コンフリクトを無視する場合、
Figure 2010528364
あるいは、
Figure 2010528364
である。
上記2つのε方程式は、(コンフリクトを無視する必要はない)と等価である。すなわち、
Figure 2010528364
例えば、図3中でc=1が観察されると、結果として3つの単一故障すなわち[O1]、[A1]、[A2]が生じる。全てのコンポーネントが等しく先験的に故障するならば、p([A1])、p([A2])、p([O1])=1/3である。次いでy=0が観察されると仮定する。従来のフレームワークでは、観察が予測と同じであることから、このことは因果関係を持たない。しかし、間欠性が存在する場合、このような「良い」観察は重要な診断情報を提供する。図4の表60は、cが最初に故障であると観察されると、全てのコンポーネントについてg(c)=0.9となる結果を示している。O1は実際の故障であり、yは連続的に観察される。表60では、行0は間欠的に故障するコンポーネントの先験的確率であり、行1はシステムに故障が発生したことを認識した場合に条件付けられる確率、行2はc=1である場合に条件付けられた確率であり、以下同様である。サンプリングが継続すると、p([A1])は低下し続ける(すなわち、行0〜12中の測定のより多くの時刻が作られる)。時間(行)4においてxの観察に切り替える知的なプロービングストラテジを使用してもよい。yが[O1]における任意の誤差に無反応であることから、誤差値は観察されることがない。
入力に近いコンポーネントの故障は容易に分離可能である。これは、疑惑のあるコンポーネントに到達する前に信号が伝搬しなくてはならない中間コンポーネントによる混同作用が少ないためである。図5の表62は、O1における故障を分離するためのプローブ(i)のシーケンスを示す。O1は確率1で故障しているとして識別することはできないが、表は観察を繰り返すことでO1の確率を漸近的に1とする(例えば0.998)ことを示している。
単一故障仮説が追加推論則を必要としないことに注目することは重要である。ベイズ・ルール更新方程式により必要な作業が全てなされる。例えば、c=1が観察される場合、単一故障診断[X1]及び[X2]はいずれもc=1を予測し、いずれも更新方程式によって考察から除去される。実施詳細として、単一故障は、全てのサンプルで発見される全てのコンフリクトの交差として効率的に計算できる。
4 単一故障用の単純化されたプロービングストラテジ
再び図3の例及び図4の表60について考察する。繰り返しy=0が測定されることは、故障しているA1の事後確率を単調に低下させる。コンポーネント故障の事後確率を低下させるプローブの選択は間欠的故障の効果的な分離の中心をなす。
ある故障の分離により適したプロービングストラテジは、他の故障に対し適切でないこともある。予測された診断コストによって提案されたストラテジを適正に比較するためには、以下の式を使用する。
Figure 2010528364
式中、Sは診断状況のセット、p(s)は特定の診断状況の確率、Dはデバイス、Aはプローブの選択に使用されるアルゴリズム、c(D、s、A)はアルゴリズムAにより診断コンテキストs中でデバイスDを診断する際のコストである。限られた場合において、DCは正確に計算される。一般的に、DCは、例えば故障fおよびDに徴候を出現させる1組のデバイス入出力対vの(f、v)からなるSにより推定されなくてはならない。例えば、前のセクションで説明した状況は、図6の表64に対応する。表より、f=「O1は1を出力する」及びv=(c=0、a=0、b=0、c=1)である。図6の表64は、図3の回路について予測された診断コストを評価すべく利用可能な1組の状況である。各行は故障コンポーネント、故障出力、入力ベクトル、及び故障に敏感な出力観察(すなわち、コンポーネントが正確な値を生ずれば、出力値が変更される)をリストしている。
図4の表60は、従って、最適な診断コスト(DC)の上界を計算することが可能な極めて単純なプロービングストラテジを示唆している。最も単純なストラテジは、事後確率が最も低いコンポーネントを選択し、故障が観察されるか、事後確率が所望の閾値以下に低下するまで、繰り返しその出力を測定する。
必要なサンプル数は許容可能な誤診断閾値eに依存する。ある診断の事後確率がp>1−eであることが発見されると、診断は停止される。上界を計算するために、(1)回路の内部構造を利用しない、(2)全ての測定は1つのコンポーネントのみを免責できるものと仮定する、(3)極限まで不運であり、他の正確でない出力を目撃しない。
nをコンポーネントcの数とし、p1([c])が事前(priors)から得られ、oをcの出力サンプル数とする。数式を短くするため、ベイズ・ルールは次のように記述される。
Figure 2010528364
式中、αは、事後確率の合計が1となるように選択される。コンポーネントcの出力が観察される際に、p(x=v|[c])=g(c)であることに注目されたい。tサンプル後は、
Figure 2010528364
誤診断閾値を全てのコンポーネントに平等に分割すると、oは次のように選択される。
Figure 2010528364
次いで、以下の式でoについて解くことが必要となる。
Figure 2010528364
Figure 2010528364
全加算器例の場合、全ての事前(priors)が等しくg=0.9及びe=0.1である。従って、前述の方程式により、o=28.1となる。従って、最も悪いケースストラテジは各点を29回測定するものである。しかし、ストラテジが故障を以前に識別しなかったことから、最後のプローブを実施する必要はない。従って、デバイスに故障があることから、最終プローブ点は当該故障となる。任意の単一故障に関する情報を提供しないことから、非徴候出力を測定する必要はない。従って、上界は58である。この最も悪いケースは、O1(例えば、0.900よりも上)を分離するために56回プロービングを行う、図5の表62において確証される。A1及びA2の故障は極めて少数のプロービングで検出される。
特定の診断アルゴリズム上の境界を整然と計算できることはまれである。ほとんどの場合、特定のアルゴリズムの診断コスト(DC)は単に経験的に評価できる。図6の表64のベクトル上の先行するDCアルゴリズムを適用し、全ての故障が等しく起こりうると仮定し、g=0.9、e=0.1であるならば、予想されるコストはDC=22.2であり、観察された誤差が0.05となる。極めて少数のプローブ及びDC中で評価されたA1とA2の故障が平均であることから、このDCは以前に計算された上限58より極めて小さい。間欠的故障の出現は本質的にはランダムであるため、誤診断の機会は常にある。0.05の観察された誤差は所望の0.1よりも良い。一般的に、観察された誤差は理論的誤差に近づくが、解析中の回路の特定の特性及びシミュレーション中に生成された乱数のシーケンスに応じて変わる。
5 g(c)の学習
コンポーネント故障の先験的確率は、製造業者又は類似システムにおける当該コンポーネントの経験により推測できるが、g(c)は一般的に広く変化する。従って、最初から何らかの特定値を有するものとして考えるのではなく、診断セッションの間にg(c)を学習することが有用である。
g(c)を推定することは、著しい付加的機構を必要とするため、単一故障の場合に限って説明する。g(c)の評価は、正常又は非正常に機能しているサンプルcの観察数を計数することにより行われる。次いで、cが正常に機能した回数としてG(c)を、非正常に機能した回数としてB(c)が定義される。cによる影響のない裏付けの免責は無視される(コンフリクトのある測定は、影響を及ぼしえない任意のコンポーネントを免責とする。その場合、g(c)は無関係となる)。g(c)は、次のように推定される(G(c)又はB(c)のいずれかが0、g(c)=0.5である場合)。
Figure 2010528364
cが非正常に機能している状況は容易に検出できる。これらは単にベイズの更新方程式がp(x=v|[d])=1−g(c)を利用する状況である。cが正確に機能している場合、付加的な推論機構が必要である。図3の回路509の例を再び考察すると、全ての入力が0であり、予測されたc=0が観察される。ORゲートO1は、入力が共に0であり、観察された出力が0であることから、不適切な挙動を示していない。ANDゲートA1は入力が共に0であり、O1が正常に機能しその出力が0であることが観察されているために、出力が0でなくてはならないことから、不適切な挙動を行っていない。同様に、ANDゲートA2は故障していない。しかし、X1が不適切に機能していればその出力は1となることから、X1が不適切に機能しているか否かについての証拠はないが、ANDゲートA2の他の入力が0であるので、このことは観察に影響しない。X2は因果的にcに影響しない場合がある。要約すると、全ての入力が0であるときにc=0と観察される場合、A1、A2及びO1が単独で誤動作することはありえないことが学習され、X1及びX2の故障については何ら学習されない。従って、G(A1)、G(A2)及びG(O1)はインクリメントされる。全ての他のカウンターは変更されない。要約すると、c=0が観察された結果、G(A1)、G(A2)及びG(O1)がインクリメントされる。正味の結果(net consequence)は、故障したものとしてA1、A2又はO1を除去するため、診断部(diagnostician)が(わずかに)多くのサンプルをとらなければならないということである。
ここで図7の例示的回路70について考察する。t=0で、入力は共に0であり、出力は、z=0であると観察される。単一故障A又はBはいずれもz=0に影響を及ぼさず、従って、A及びBに関するカウンターは変更されない。しかし、Cは出力に影響を及ぼす場合があり、従ってG(C)はインクリメントされる。より形式的には、xの異なる値が否定モデル−o(c)から論理上得られる場合、x=vが観察されたことに応答してG(C)がインクリメントされる。cは因果的に観察に影響を及ぼし、G(C)がインクリメントされる。
図8の表80は、プロービングストラテジ(図3の回路50用の)の結果を示す。表80において、A1はg=0.9で故障している。最終列(E)は、分布のエントロピー、すなわち正確な診断がどの程度綿密に分離されたかの基準である。表80は、A1の故障を分離すべく利用されるプローブのシーケンスを示す。A1の故障はi=11で出現する。図4の非学習ケースの表60と比較して、条件付き確率が異なってシフトする点に注目されたい。g(c)=0.5が証拠なしで仮定され、他の2つの診断と比較して、測定x=0がA2の確率を0.5まで直ちに低下させる。学習を利用する場合、最初のg(c)は診断に著しく影響を及ぼすことから、何らかの注意を伴って選択される必要がある。
6 ハイブリッド真理維持システム(HTMS)の実施考察
アプローチは全てGDE/HTMSアーキテクチャ上で実施された。セクション9は、各種ベンチマークに対するアプローチの実行を報知する。
ベイズ・ルール更新方程式が2つの反復されるチェックを要すること再考する。
Figure 2010528364
GDEアプローチでは、各コンフリクトはABリテラルに対応するATMS仮説の真理節で表される。しかし、このコンフリクト表現により、上記2つのチェックを効率的なATMS操作を通じて評価することが困難となる。例示的全加算器は、この問題を極めて単純に(全ての入力を0とし、以前観察されたc=0とする)示す。次のコンフリクト
Figure 2010528364
がATMS節として直接表示される場合、任意の後のサンプルにおいてcの値は推論できない。g(c)が3つのゲートにおいて異なる場合、cの測定は有用でありうる。この実施において、全てのGDEコンフリクトは、注目された時刻と共にATMS節として表示される。従って、図3に関するコンフリクトは次のように表される。
Figure 2010528364
ベイズ・ルール更新チェックは、時間仮説を考慮するATMSにおいて実施される。候補を挙げる目的で、これらの時間仮説はGDEには可視的でない。ベイズ・ルールチェックは、時間仮説を考慮するATMSにおいて実施される。このように、同一の効率的なGDE/シャーロック機構は間欠的故障の判断に利用できる。従って、コンフリクトのATMS表示は、ABリテラルの少なくとも1つが時刻iにおいて故障出力を生じているコンポーネントを示していることを指定する。同様に、全ての推論は時間仮説を含む。
Figure 2010528364
ベイズ・ルール更新及びチェックの両方によって必要とされる、G(c)のインクリメントの要否を決定するための更新テストは、著しく高速化されることが多い。x=vについて、この形態(時間仮説を除く)のプライムインプリケートが1つだけ存在する場合について考察する。x=vを支持する−ABの更に小さいセットがなく、ABコンポーネントが1−gのケースにおいて必ず異常な挙動を示しているとすると、これはx=vであるならば任意のマイナスからプラスに変更された任意のABによる結果はxと、vとが同値でない状況となる。一例において、c=0を支持するプライムインプリケートがちょうど1つ存在する。
Figure 2010528364
従って、単一故障[O1]、[A1]及び[A2]は観察を説明できない。このようなプライムインプリケートが1つ以上存在する場合、全ての先行するABセットを交差させる必要がある。このことはクラーク完成推論に類似する。z=0が観察される場合に、図5の例示的回路70について再度考察する。GDEはz=0(ここではインプリケーションとして記述される)を支持する2つのプライムインプリケートを発見する。
Figure 2010528364
単一故障仮説においては、先行するインプリケーションの共通項は正常に機能していなければならない。従って、G(C)はインクリメントされる。
7 診断のコストの調査
図9の非常に単純な2つのバッファ回路シーケンス90について考察する。A及びBが等しく故障しやすく、g=0.9であると仮定する。入力が与えられ、故障観察が観察されたと仮定すると、任意の有益情報を提供しうる測定点は1つのみ、すなわちAの出力が存在する。
この単純なケースでは、測定点の選択肢は存在しない。まずBが間欠的である場合について考察する。Aの出力は常に正常である。セクション4の発展と同一行に続く、ん回の測定後の単一故障の単純化されたプロービングストラテジは、次のようになる。
Figure 2010528364
e未満の誤診断確率を達成するためには、
Figure 2010528364
このとき、g=0.9及びe=0.01、n=43.7である。ここでAが故障している場合について考察する。故障が出現するまで、Aは正しい値を出力し、結果はBが故障している場合と同一に見える。故障は概ね1/(2−2g)=4.5サンプルにおいて出現する。従って、図9の診断回路90の期待コストは概ね24.1である。この実施では類似の結果が得られる。既述の如く、入力から間欠を更に分離することは、かなり高価であることがわかる。
8 プロービングストラテジ
故障した間欠コンポーネントを適切に分離するために、診断部(diagnoser)は測定を提案しなければならない。(当該技術で知られているように、近視眼的ストラテジに従って)従来のモデルベース診断において、次に実施すべき最良のプローブは次式を最小化するものである。
Figure 2010528364
p(c)の定義が従来のモデルベース診断における定義と異なっている場合でも、可能な間欠的故障同士を分別できる確率を最大化する変数をプロービングすることが望ましい。目的は同様、すなわち1つ以外の全てのコンポーネントについて故障の事後確率を低下させることにある。近視眼的最小エントロピーアプローチはこの目的のためのプロービングを支持する。
図10は、最小のエントロピーストラテジを利用して、バッファのシーケンスにおける単一の間欠的なバッファを分離する(1つのシミュレーションから得られる)診断コストをプロットしたグラフ100を示している。グラフは、持続故障の場合と同様に、コンポーネントグループが同時に免責され、よってDCが回路サイズで概ね対数となることを示している。最小エントロピーストラテジはセクション4の単純なアプローチと比べて著しく良くなっていることに注意されたい。
入力が変化すると、わずかに異なるアプローチが必要である。最も単純なデバイスを除く全てのデバイスにおいて、全ての可能なシステム入力について最大期待情報ゲインを提供する、次に測定すべき変数を発見することは計算上非実用的である。代わりに、疑惑の残るいくつかのコンポーネントに直接隣接している最も良い変数の測定を保証すべくヒューリスティックを利用してもよい。これにより、特定の新たな入力が、提案された測定を任意の故障(例えば、徴候的な値が既知の好適なANDゲートを通じて伝播したと推測し、また、故障が最初に観察された際にこのANDゲートの他の入力が1であり、後の入力において0だった場合、当該ANDゲートの出力を測定することはこれらの入力ベクトルについて無用であり、また故障コンポーネントを分離することは多くのサンプルを取る)に対し無感覚とする次善の状況を回避する。
9 ベンチマーク
このセクションは、モデルベース診断においていくつかの標準的なベンチマークに適用される本発明の概念の実施結果を提示する。これらの例は、ISCAS−85からの広く利用可能な組み合わせ論理テストスイートから得られる。
図11の表110を参照すると、第1列(回路)はISCAS−85の回路名である。第2列(コンポーネント)は回路の個々のゲート数である。残る2列は、1から0へ、0から1へ切り替えられた各故障コンポーネントを過程することで計算される。故障毎に、出力のうちの1つについて観察可能な徴候を生じさせる単一の(定数)テストベクトルが発見される。行毎に、すなわちコンポーネント毎に、2つのシミュレーションが行われる。次の列(非iコスト)は非間欠的故障コンポーネントを分離するための診断コストである。次の列(iコスト)は、誤診断確率p<1−eの間欠コンポーネントを分離する診断コストである。このとき、e=0.1、g−0.9および全てのコンポーネントに等しく先験的に起こりうるとする。最後の列(誤差)はシミュレーション中に観察された実際の誤差率である。ここでは実際の誤差率がe=0.1に接近することを期待する。
ISCAS−85ベンチマークショーにおける診断回路の平均コストをリストした図11を検討すると、驚くべきことではないが、間欠的故障を分離するために必要なサンプル数は非間欠的故障を識別するコストと比べて著しく大きい。
多数の間欠的故障に対する一般化は、セクション3「間欠的故障を支持する従来のフレームワークに対する拡張」のεポリシーの直接の一般化である。M(C,C,S,r,t)を述部とする。このとき、
Figure 2010528364
であり、S中の全てのコンポーネントが異常な値を出力している場合、時間tにおいてrが保持される。より形式的には、
Figure 2010528364
ここで、観察関数を次のように定義できる。
Figure 2010528364
rは任意の観察を表すことができるが、この議論中の全ての例において、rはx=vである。必要な計算は、コンポーネントの数ではなく故障の数における指数であり、p(x=v|D(C,C))は効率的に評価されうる。これらは、ATMS/HTMSフレームワークで直接評価することが可能である。
10 複数の持続性又は間欠的故障の拡張
コンポーネントcの持続故障は、g(c)=0.0の間欠的故障としてモデル化することができる。プロービングストラテジは非間欠的故障及び間欠的故障に対して同一であることから、両方のタイプの多数の同時故障を判断するためにアルゴリズム(g(c)以外は学習が困難である)を変更する必要はない。g(c)=0.0として持続故障をモデル化することには2つの欠点がある。(1)「強い」故障モデルである(すなわち、故障した場合、コンポーネントは常に非正常に機能する)、及び(2)単一のコンポーネントにおいて間欠的故障であるか非間欠的故障であるかを識別できない。従って、文献中で知られているように、故障モードを導入する。インバータは、出力が1に固定された状態、あるいは0に固定された状態で故障することがある。あるいは、インバータは間欠的に不適切な出力を生じることがある。
Figure 2010528364
U(x)は(前記AB(x)と同様に)間欠的故障として扱われる。診断の定義は各コンポーネントへのモードの割り当てとして一般化される。例えば、全加算器に関する診断[O1]は[U(O1)](Gモードを含まない)として表される。本出願のアプローチは1で固定されたインバータ、及び故障しているインバータ、例えば[SA1(X)]対[U(X)]を識別すべく利用できる。
11 関連する作業
モデルベース診断分野における間欠的故障に関する研究は比較的少ない。ここで提示されたアプローチは、免責に関する概念を利用する。すなわち、正常な挙動を示していると観察された場合に故障しているものとしてコンポーネントを除外する。このラインに沿った以前の研究は、(1)アリバイ概念、(2)確証、(3)組み合わせ論理の単純な単一故障間欠診断タスクのダイナミックプログラミングへの変換、である。別のアプローチは離散事象系に適用可能な間欠的な診断アプローチを提示する。
上記議論は、被試験システムの故障を診断する、改善されたシステム及び方法の提供に注目した。既述の如くこのような診断テストは様々な領域で実施可能である。例えば、図12に示されるように、本出願に示された概念は、本体132及びプローブ134を含む診断デバイス又はシステム130で具体化することができる。プローブ134は、被測定デバイス136に対し操作により関連する位置にあるように設計される。本体は入力138及び出力140を含むことができる。入力138は英数字のキーパッド、スタイラス、音声、あるいはデータ又は指示を入力するための既知の他の入力設計もしくはインタフェースを含むことが可能である。出力140は診断調査の結果を表示する任意の種類のディスプレイとすることができる。本体132は、更に第2のセットの入力142を含むことができる。この場合、プローブ184によって検出された情報は自動的に診断デバイス130に入力される。
本体132は、少なくともプロセッサ144、及び本明細書中に記載された概念を組み込んだコードを含むソフトウェアコードの処理を許可するメモリ146を含む計算能力を有することを理解されたい。更に、診断デバイス又はシステム130は、出力報告のハードコピーの印刷、出力報告の口頭での陳述、あるいは解析又は診断結果に関する出力デバイス150との通信を許可すべく出力デバイス150に接続される出力148を含むことができる。
上記説明はカスタマイズされた診断デバイス上で実行されてもよく、及び/又はハンドヘルドコンピュータ、ラップトップ、デスクトップ又は携帯情報端末を含む他の計算装置の一部として含まれてもよいことを認識されたい。更に、診断デバイス又はシステム130は、本出願の概念を実施する方法の一例であることが意図されている。
別の実施形態では、図12はプローブ134を含まず、診断は診断デバイス上で作動しあるいは計算能力を有する別のデバイスと関連付けられたコンピュータソフトウェア上で実施されてもよい。
図13に示される別の実施形態において、診断デバイス又はシステム160自体がより大きい総合システム162に一部として埋め込まれる。総合システム162は、例えば、操作により相互接続される、実線172で示されたコンポーネント164〜170を含むことができる。診断デバイス又はシステム160は、次いで、コンポーネント164〜170と操作により関連されることが点線174で示される。図13は、本出願による診断デバイス又はシステムを利用可能なシステムの高レベルの例であることが認識されよう。診断デバイス又はシステム160の目的は、総合システム162の欠陥を識別し、人間の介在なく修理を開始することにある。このような総合システムの例として、電子複写機、自動車、宇宙機及び飛行機が挙げられる。
上記及びその他の各種特徴及び機能、又はその代替物は、所望の組み合わせにより他の多くの別のシステムもしくは応用とすることができることを理解されたい。現時点で予知又は予測されない代替、修正、変更又は改良は、今後当業者により実施される確率があり、またこれらは以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。

Claims (21)

  1. システムにおける継続故障及び間欠的故障の任意の組み合わせ、あるいは間欠的故障を判断する方法であって、
    特定の点にてシステムを測定又はプロービングすることにより前記システムの挙動を取得し、
    少なくとも前記システムのシステムモデルの条件付き確率、事前の観察及びコンポーネントモデルに基づいて推論を導出することで、前記システムモデルの予測挙動を調査し、
    前記予測をシステム中の対応する点と比較し、
    前記測定された挙動と前記予測挙動との間のコンフリクト又は偏差の存否を判断し、
    後続の測定及び/又はプロービングが異なる値又は出力を生ずる可能性を許容すべく、前記システムにおける動作故障がより正確に反映されるように前記条件付き確率を調整し、
    新たな値又は出力に基づいて最終結果を取得すべく前記予測挙動と実際の挙動との間のコンフリクト又は偏差を利用する、
    ことを含む方法。
  2. 所定数の測定及び/又はプローブの間に前記最終結果に到達しない場合にエラー出力を生成することを更に含む請求項1記載の方法。
  3. 前記最終結果が1つ又は複数の故障を引き起こすコンポーネントを分離することを含む請求項1記載の方法。
  4. 測定及び/又はプローブを実施する次の位置及び/又は点を決定することを含む、次の段階の測定及び/又はプロービングを更に含む請求項1記載の方法。
  5. 前記システムモデルは、前記システムの動的挙動をモデル化する請求項1記載の方法。
  6. 前記システムの前記動的挙動は非時間的事象のシーケンスであると見なされる請求項5記載の方法。
  7. 間欠的故障は前記システムモデルの任意の抽象レベルにおいて間欠的な確率的物理的プロセスから発生する請求項1記載の方法。
  8. 多数のコンポーネントを有し、間欠的故障又は非間欠的故障の任意の組み合わせを含む、現実世界のシステムをトラブルシュートする方法であって、前記方法は、
    現実世界のシステムのモデルを生成し、前記システムモデルは多数のモデルコンポーネントを含み、
    前記システムモデルの各モデルコンポーネントを2つの確率、すなわち(1)前記現実世界のコンポーネントがその設計から逸脱し、故障を示している確率、及び(2)(潜在的に間欠的なコンポーネントについて)故障コンポーネントが観察時に誤動作している条件付き確率、と関連付け、
    次の段階の観察及び/又は測定を導くべく可能な故障原因と関連付けられた前記条件付き確率を再計算し、
    次の段階観察及び/又は測定を実施し、
    十分なデータが取得されたか否かを判断し、
    最終結果に到達する、
    ことを含む方法。
  9. 所定数の測定及び/又は観察の間に許容できる最終結果に到達しない場合にエラー出力を生成することを更に含む請求項8記載の方法。
  10. 前記最終結果に到達することは1つ又は複数の故障を引き起こすコンポーネントを分離することを含む請求項8記載の方法。
  11. 前記観察及び/又は測定の次の段階を実施するステップは、観察及び/又は測定を行うための次の位置を決定することを含む請求項1記載の方法。
  12. 前記システムモデルは、前記システムの前記動的挙動をモデル化する請求項8記載の方法。
  13. 前記システムの前記動的挙動は非時間的事象のシーケンスであると見なされる請求項12記載の方法。
  14. 間欠的故障は前記システムモデルの任意の抽象レベルにおいて間欠的な確率的物理的プロセスから発生する請求項8記載の方法。
  15. 計算デバイスと共に使用するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ製品は、
    システムにおける継続故障及び間欠的故障の任意の組み合わせ、あるいは間欠的故障を判断する方法であって、
    特定の点にてシステムを測定又はプロービングすることによりシステム挙動を取得し、
    少なくとも条件付き確率、事前の観察及びコンポーネントモデルに基づいて推論を引き出すことで、前記システムのシステムモデルの予測挙動を調査し、
    前記予測を前記システム中の対応する点と比較し、
    前記測定された挙動と前記予測挙動との間におけるコンフリクト又は偏差の存否を判断し、
    後続の測定が異なる値を生ずる可能性を許容すべく、前記システムにおける動作故障がより正確に反映されるように前記条件付き確率を調整し、
    新たな値又は出力に基づいて最終結果を取得すべく前記予測挙動と実際の挙動との間のコンフリクト又は偏差を利用する、
    ことを含む方法をコンピュータに実行させるために使用するコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータで使用可能な媒体を含む、コンピュータプログラム製品。
  16. 所定数の測定及び/又は観察の間に許容できる最終結果に到達しない場合にエラー出力を生成することを更に含む請求項15のコンピュータプログラム製品。
  17. 前記最終結果を取得することは1つ又は複数の故障を引き起こすコンポーネントを分離することを含む請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
  18. 前記観察及び/又は測定の次の段階を実施するステップは、観察及び/又は測定を行うための次の位置を決定することを含む請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
  19. 前記システムモデルは、前記システムの前記動的挙動をモデル化する請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
  20. 前記システムの前記動的挙動は非時間的事象のシーケンスであると見なされる請求項19記載のコンピュータプログラム製品。
  21. 間欠的故障は前記システムモデルの任意の抽象レベルにおいて間欠的な確率的物理的プロセスから発生する請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
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