JP2010524455A - タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および心臓血管疾患を予防するためのフィルターにおけるco2を捕捉する手段の使用 - Google Patents

タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および心臓血管疾患を予防するためのフィルターにおけるco2を捕捉する手段の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防するためにフィルター中にCOを捕捉する手段の使用を含む。

Description

本発明は、タバコの煙に曝露される対象の炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防するためのCOを捕捉する手段を含むフィルター組成物に関する。
これは、より特定すれば、タバコの燃焼からもたらされ、喫煙者によってまたはタバコの煙に曝露される対象によって吸入される気体からCOを選択的に吸着するように設計されたシガレットフィルターに関する。
喫煙が多くの肺癌および咽喉癌症例の原因であることはよく知られている。事実、シガレット、葉巻またはパイプにおけるタバコの燃焼は、タバコの葉に由来するまたはタバコが消費されるときの化学反応によって形成される多数の化学物質を含有する煙を発生させる。これらの物質の一部は発癌性または変異原性であるとして分類され、実際に咽喉におけるまたは肺における腫瘍の発生に関与する。
さらに、心筋梗塞のおよび冠状動脈疾患の発症におけるタバコの重要な役割は長年知られている[Ambrose JAら、The pathophysiology of cigarette smoking and cadiovascular diseases:更新版(2004年)J Am Coll Cardiol.5月19日;43巻(10号):1731−7頁]。しかし、これらの疾患に関与する作用機序は未だ大部分が不明である。
主要な、一次流れ中のタバコの煙、すなわち喫煙者がシガレットを通してまたはパイプを用いてタバコの燃焼を活発にするときに喫煙者によって直接吸入されるタバコの煙は、気体相および微粒子相から構成されるエアロゾルである。
この微粒子相は0.1−1μmの間の直径を有する微粒子を含み、これらの微粒子はサイズが小さいので肺胞に到達する。これらの微粒子は、肺胞膜に接触すると沈着して身体によって簡単には除去されない沈着物(タール)を形成する有毒な有機生成物または細胞の細胞質中に溶解する有毒な有機生成物を含有することが多く、様々な細胞成分(変異原性、細胞毒性など)と反応するフリーラジカルを形成する。
大部分の基本的なシガレットフィルターは一般にからみ合ったセルロースファイバーを含むフィルター組成物で構成されており、微細粒子を保持することを主目的とする。
80%までが大気圏空気からの窒素および酸素で構成されている気体相は、二酸化炭素(CO)12から15%、一酸化炭素(CO)3から6%、シアン化水素(CHN)0.1から0.2%および様々な揮発性有機化合物および特に窒素酸化物(NOx)1から3%を含む[Norman,V.An overview of the vapor phase、 semi volatile and non volatile components of cigarette smoke(1997年)Recent Advances in Tobacco Science、3巻:28−58頁]。
ここで、気体の量は気相を構成している全気体に対するモルパーセントで表現される。
窒素酸化物は、非常に刺激性であり、喘息発作を顕著に起こし得るフリーラジカルを形成する。シアン化水素および一酸化炭素は、血液中で酸素を輸送する赤血球に対して強い親和性を示し、貧血または窒息さえ起こし得る。
有害と見なされているこれら3つの気体の喫煙者による吸入を制限する試みにおいて、様々な種類のシガレットフィルター、特にゼオライト、活性炭、またはシリカビーズなどの多孔質の構造の表面に付着させたナノメートルサイズの金属粒子(国際公開第2004/110186号パンフレット)の形態の触媒を含むフィルター組成物が開発されてきた。これらの多孔質構造は、これらの気体との大きな接触面積を提供することができるので、これらの触媒の存在下では、気体は酸化によって二酸化炭素(CO)に転化される。したがって、多孔質構造またはシリカゲルは、シガレットフィルター中に組み入れられる前に、触媒の溶液を用いて処理される。
したがって、この種の既存のフィルターは、有害と見なされている一酸化炭素、窒素酸化物およびシアン化水素を酸化によってCOに転化させることによって除去する目的を有する。実際に、文献においてCOは喫煙者の健康に対する既知の影響はない気体と見なされている。
しかし、以下に記載するマウスについて実施された実験の結果として、本発明者らは、意外にも、COが肺における炎症反応を誘導することを実証した。実際に本発明者らは10%を超えるCO含有量(酸素の割合の低下はなく)を有する空気を吸入したマウスの肺組織においてβ−カテニンタンパク質およびNF−κBp65タンパク質の発現の非常に顕著な増加を見出した。肺細胞の炎症状態を反映するこの増加は、大気、すなわち2%未満のCOを含有する空気を吸入しているマウスでは見られなかった(下記の実施例1)。本発明者らは、マウスにおいて見られた炎症は、タバコの煙に含まれるCOを水酸化カリウム(KOH)の溶液を包含しているフィルターを用いて選択的に捕捉することによって部分的にまたは完全にさえ排除され得ることも示した(下記の実施例2)。
したがって、これまで文献において想定されてきたこととは反対に、タバコの燃焼によって放出されるCOは、咽喉の組織および肺の組織などの呼吸器の上皮組織の炎症において重要な役割を有すると思われる。
さらに、咽喉の癌および肺の癌などの呼吸器の癌は、喫煙されたシガレットの数と同様にある個人がタバコの煙に曝露されている年数とも相関があるので、組織の炎症が多くの癌症例における腫瘍の出現に先立つと想定されている[Schwartz L.らCancer:the role of extracellular disease.Med Hypotheses.(2002年)58巻(4号):340−6頁]。したがって、COに随伴する呼吸器の炎症は、幅広く発生するため、タバコの煙の中に含有される多数の発癌性物質の存在と同等にまたはそれ以上にタバコに関連する癌の発生において決定的な役割を有する現象であると本発明者は考える。
さらに、医学的には、組織の慢性炎症は肺線維症の出現および癌の発生を促進させることが認められている。
血管において、炎症の機序はシガレットの煙に応答して肺胞において観察される炎症の原因となる機序と酷似している。さらに、本発明者らによって実証されたシガレットの煙に対する炎症応答(特にインターロイキン−6およびTNF−αの分泌、白血球の動員)は、アテローム性動脈硬化症や心臓血管事象の発生における主要因子でもある。
したがって、COに関連する動脈の炎症は、この頻度を考慮して、タバコの煙に含有される多数の毒性物質の存在と同等にまたはそれ以上にタバコに関連する心臓血管事象の発生において決定的な役割を有する現象と本発明者らによって見なされている。
実際に、血管壁の慢性炎症はアテローム斑の出現および心臓血管疾患の発生を促進させることが医学的に認められている。
国際公開第2004/110186号パンフレット
Ambrose JAら、The pathophysiology of cigarette smoking and cadiovascular diseases:更新版(2004年)J Am Coll Cardiol.5月19日;43巻(10号):1731−7頁 Norman,V.An overview of the vapor phase、 semi volatile and non volatile components of cigarette smoke(1997年)Recent Advances in Tobacco Science、3巻:28−58頁 Schwartz L.らCancer:the role of extracellular disease.Med Hypotheses.(2002年)58巻(4号):340−6頁
これらのリスクを克服するために、本発明者らは、本出願によって、空気フィルター、特にシガレットフィルター中に、タバコの燃焼からもたらされるCOの割合を低減するための手段を組み入れることを提案する。これらの手段は、公共の場所を換気するためのフィルターなどの大きいフィルター中でまたはシガレットフィルターなどのより小さいフィルター中で実施することができる。
本発明は、より特定すれば、このような手段を収容し得る固定されたまたは取り外し可能なシガレットフィルターに関する。
「固定フィルター」は、シガレットの製造中に製造者によってシガレットの末端に挿入されるフィルターなどの使い捨てフィルターを意味する。
「取り外し可能なフィルター」は、数回使用し得るフィルターを意味し、このフィルターは、好ましい態様によれば、清浄化され得るまたは再生され得る。
縦座標は実施例1において記載する実験において使用されたBalb c/マウスについてプレスチモグラフィーによって測定されたPenh指数を示し、横座標は前記マウスによって吸入された空気中に2分毎に行われたCOの逐次注入(5、10および15%)を示すグラフである。 CO15%を含有する空気を10分間吸入した後犠牲にしたマウスおよび大気を吸入した対照マウスの肺からの細胞抽出物中のβ−カテニンタンパク質およびNF−κBp65タンパク質の相対的濃度を比較している2つの図である。 実施例2に記載する実験が行われたチャンバー内において測定されたCOまたはOの濃度を時間の関数としてmmHgで示す4つのグラフである。COおよびOそれぞれの濃度はグラフ3Aおよび3Cにおいてはシガレットからの出口で測定され、グラフ3Bおよび3Dにおいてはろ過カラムからの出口で測定される。測定は4つの状況で実行された:◆(対照/HO):水を収容しているカラムによってろ過された対照空気、■(対照/KOH):水酸化カリウムを収容しているカラムによってろ過された対照空気、▲(煙/HO):水を収容しているカラムによってろ過されたシガレットの煙、×(煙/KOH):水酸化カリウムを収容しているカラムによってろ過されたシガレットの煙。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスからの肺細胞2×10個を含有するウエル中のRANTESタンパク質産生細胞の数(SFCはスポット形成細胞(Spot Forming Cell)のこと、ELISPOT法)を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスからの肺細胞2×10個を含有するウエル中のIL−6タンパク質産生細胞の数(SFCはスポット形成細胞(Spot Forming Cell)のこと、ELISPOT法)を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスの肺から単離された細胞の20時間培養後の培地中のケモカインMIP−2の濃度(ELISA法)を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスの肺から単離された細胞の20時間培養後の培地中のTNF−αの濃度(ELISA法)を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスの肺からの細胞抽出物中のNF−κBp65タンパク質の活性を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。 空気またはシガレットの煙を38分間吸入後に犠牲にしたマウスの肺からの細胞抽出物中のホスファターゼPP2Aの活性を示す図である。前述の図3の注釈でまとめた4つの状況を示す。
したがって本発明は、タバコの燃焼からもたらされ喫煙者によって吸入されるCOの割合を低減するためのシガレットフィルターにおけるCOを捕捉する手段の使用に関する。
本発明はより特定すれば、タバコの煙に曝露される対象における癌または炎症および/または心臓血管疾患を予防することを意図するフィルターの調製のためのCOを捕捉するこれらの手段の1つまたは複数の使用に関する。
「補捉すること」はCOを分子支持体上に固定化することまたはCOの他の化学物質への転化のための任意の手段を意味する。
好ましくは、前記手段は喫煙者によって吸入されるはずであったCOの少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは喫煙者によって吸入されるはずであったCOの少なくとも60%を捕捉することを可能にする。ここで、補足されるCOの量は、タバコの燃焼によってもたらされる気体相中に存在するCOの量に対して表される。
ここで、捕捉されるCOの量は、フィルターのないシガレット中のタバコの燃焼によってもたらされる気体相中の主要な一次流れ中に存在するCOの合計量に対するCOの(モル)量のパーセンテージとして表現される。この計算結果は、分析用シガレット喫煙機によってシガレット中またはフィルター中に組み入れられたCOを捕捉するための手段の存在下においてまたは不在下において、現行の規格に適合する標準的な方法によって(標準化された条件は国際標準化機構(ISO)の標準3308標題「日常分析用シガレット喫煙機」において規定されている。)得た測定値の比較からもたらされる。
本発明によって想定されている手段は、好ましくはCOの吸着のための手段である。
これらの手段は、喫煙者によって吸入されたはずのCOの割合を低減または制限することを可能にする。
これらの手段は、当業者に知られており、シガレットフィルターに関係のない用途分野において使用されてきた。
本発明の手段は、粒子のまたはCO以外の有毒気体の放出を制限するために、他のろ過手段と組み合わせることができる。これらの手段だけでなく、シガレットフィルターの構造も当業者によく知られている[Davis D.L.およびNielsen M.T.編(1999年)Tobacco: Production,Chemistry and Technology、 Blackwell Science]。
本発明の別の主題は、タバコの煙に曝露される対象の炎症および/または癌および/または心臓血管疾患を予防するための、上記で定義した捕捉手段を含むフィルター組成物である。
「フィルター組成物」は、フィルター、すなわち固体粒子を保持するおよび/またはCOなどの気体形態の分子を捕捉する能力がある構造を形成する効果を有する固体および液体材料の任意の混合物を意味する。
COを捕捉する1つの好ましい手段はCOの吸着のための手段である。
本発明による好ましいCOの吸着のための手段は活性炭である。活性炭は例えば炭化ココナッツ殻から製造することができる。この原料は粉塵の形成を低減しつつ強い粒状構造を有する炭素を生成する。これは800−1000℃の過熱スチームを用いる処理によって「活性化され」、過熱スチームは極めて顕著に炭素の多孔性を増大させる効果を有し、したがって500−3500m/gの間の、一般には500−1500m/gの間の比表面積を与える。
本発明による活性炭、例えばSud Chemie(Lenbachplatz 6、80333 Munich、Germany)から市販されているものであり、この活性炭は1kg当たりにCO15%、N82%、およびO3%およびHO19cc/minの存在下で22℃、250psiにおいてCOを約4モル吸着する能力があり、またはKansai Coke Chemicals Co.Ltd.によってMAXSORB(登録商標)の商標で販売されている活性炭である[Otowa,T.らProduction and adsorption characteristics of MAXSORB:high−surface−area active carbon.(1993年)Active carbon and carbon molecular sieves 7巻(4号):241−245頁]。
本発明によるフィルター組成物は好ましくはシガレットフィルターを含む。
本発明によるシガレットフィルターは一般に、0.1−3gの間の、好ましくは0.2−2gの間の本発明による活性炭を含有する。
本発明による別の好ましいCO吸着の手段はゼオライトの使用を含む。ゼオライトは、天然起源(火山岩)または合成起源の水和されたアルミノケイ酸塩である。これらの化学構造は、水分子および正に荷電したイオン(特にKおよびCa)を収容している多数の空隙を有する複雑な結晶格子である。一旦水が加熱により除去されると、空隙は、分子のサイズおよびこれらの極性に応じてCO分子などの化合物によって占有され得る。
本発明による好ましいゼオライトは、高アルミニウムゼオライト、すなわち結晶中のケイ素/アルミニウムの比が1−5の間の、好ましくは2−5の間の、より好ましくは3−5の間のゼオライトである。
高ナトリウムゼオライトも好ましい。これらの種類のゼオライトは、実際にCOの吸着のためのより高い能力を示した。
ゼオライトは、例えば4Aおよび5Aタイプのゼオライト、すなわち一般に0.3nm−0.8nmの間の、好ましくは0.4−0.7nmの間の、より好ましくは0.5−0.7nmの間の細孔を有するゼオライトが特に適当であり、Xタイプの結晶構造を有するもの、すなわちゼオライト13Xなどの六角形のものも同様である。
Zeochem AG社は、この目的のために特に有用なゼオライト13Xを市販しており、このゼオライト13Xは1kg当たりにCO15%、N82%、O3%およびHO19cc/minの存在下22℃、250psiにおいてCOを約6−7モル吸着する能力がある。COの吸着のために使用され得る別のタイプのゼオライトは、CECA社によって販売されており、特に酸素濃縮装置MEDOX(Medical Oxygen Concentrator)において使用されるSiliporite(登録商標)である。
本発明による好ましいシガレットフィルターは、一般に0.1−3gの間、好ましくは0.2−2gの間の本発明によるゼオライトを含有する。本発明の好ましい態様によれば。ゼオライトは米国特許第6908497号明細書で述べられている通りにこれらの吸着能力を増大させるために、予め極性溶液、例えばアミンまたはエーテル化合物の溶液を用いて処理されてもよい。
本発明による好ましいCOの吸着のための手段は、MOF(金属−有機フレームワーク)の使用を含む。MOFは1,4−ベンゼンジカルボキシレートなどの有機分子によって一緒に繋がれた亜鉛単位および酸素単位で構成された低密度の結晶性材料である[Yaghi,O.、Science、295巻:469頁]。これらの結晶構造は、気体分子が結晶格子の内部にさえ貯蔵され得るようなものである。MOFは容易に合成され、吸着される気体分子との相互作用を可能にする化学基が結晶構造に備えられるように有機鎖の組成に対するある種の適合が可能である。有機鎖を修飾することによって結晶のサイズを変えてCO分子の吸着に最適のサイズを提供することも可能である。本発明によれば、使用されるMOFはより特定すれば以下のものから選択される:MOF−177、IRMOF−1、IRMOF−6、IRMOF−3、IRMOF−11、Cu(BTC)、MOF−74およびMOF−505[Millward A.R.ら(2005年)Metal−organic frameworks with exceptionally High Capacity for storage of carbon dioxide at room temperature、J.Am.Chem.Soc.、127巻:17998−999頁]。
本発明による好ましいシガレットフィルターは一般に0.1−3gの間の、好ましくは0.2−2gの間のMOFを含有する。
本発明によってCOを捕捉するために、より特定すれば吸着するために使用され得る上記の様々な手段は、一般的に厚さ数ミリメートルの横断する切片の形態の酢酸セルロースフィルター中に組み入れられて、喫煙者によって吸入される気体の流れの最大限の捕捉をもたらす。代替法として、これらの手段はフィルター中に均一にまたはこの流れと同じ方向のもしくは反対の方向の濃度勾配によって分散され得る。
本発明によるシガレットフィルターは、より一般的にはタバコの燃焼からもたらされ喫煙者によって吸入されるCOの割合の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%を捕捉し得るCOの吸着のための手段を含む。
本発明は前記で定義したフィルターを備えるシガレットにも関する。
本発明はタバコの燃焼によってもたらされるCOを本発明によるフィルター組成物によって、特に前記燃焼から生じる気体が喫煙者によって吸入される前に、選択的に捕捉することを含む段階を含むことを特徴とする、シガレットの煙をろ過する方法にも関する。
前記方法において、COは前記で定義したCOの吸着のための手段によって捕捉され得る。
前記で定義したフィルターまたはシガレットにおけるCOを捕捉する手段の使用は、より特定すればタバコの煙に曝露される対象の炎症の、癌のおよび/または心臓血管疾患の、より特定すれば呼吸器の炎症および癌の、特に肺のまたは咽頭の炎症および癌のリスクを制限することを目的とする。
心臓血管疾患に関して、本発明はより特定すればアテローム性動脈硬化症およびその結果を予防することを目的とする。
したがって、本発明は対象によって、より特定すれば喫煙者によって吸入されるCOの割合を制限することを特徴とする、炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防する方法に関する。この方法は、より特定すればタバコの煙に曝露される対象における呼吸器の癌または炎症だけでなく心臓血管疾患をも予防することを目的とする。より特定すれば、前記方法は本発明によるフィルターまたはフィルター組成物の調製のために、前記で定義したCOを捕捉する手段の1つまたは複数を使用する。
以下の実施例は本発明の原理を例示する目的のためのものであり、請求した保護の範囲を限定するものではない。
肺細胞に対するCOの炎症効果の実証
1/ BALB/cマウスを閉じたチャンバーに入れ、チャンバーのCOの割合を一定割合の酸素下に、1分おきにCOをチャンバーに注入することによって人工的に2(大気圏空気対照)、5、10および15%に高めた。これらの濃度のそれぞれにおいて、マウスについて非侵襲性の機能試験をHamelmannらによって記載された技法((1997年)Am J Respir Crit Care Med 156巻:766−775頁)に従って、プレスチモグラフィーによって行った。この技法は、マウスの呼吸困難をPenh(高められた一時停止)値を判定することによって評価することを含んでいる。Penh値は、特に呼気および吸気の大きさの比を測定し、これによって喘息発作の程度、すなわち気管支および細気管支の炎症状態を後者の直径の減少(呼吸抵抗)により評価することを可能にするパラメータである。
得られた結果は図1のグラフ中に提示されている。この実験からCOの割合が増大するとPenh値が増加することが分かる。この値はCOの割合が10から15%へ変化すると2倍になり、対照より6倍高いレベルに達する。したがって、タバコの燃焼からもたらされる割合と等価な13%のCOの平均割合は、呼吸系に対してかなりの影響を有して炎症を引き起こす。
2/ マウスを上で述べた様々なCO濃度にあるチャンバーに10分間保持した後、マウスを犠牲にして(実験開始から1時間後)これらの肺細胞の核の中のβ−カテニンタンパク質およびNF−κBp65タンパク質を求めた。
β−カテニンタンパク質は細胞周期に作用する転写因子であり、細胞増殖および肺癌に顕著に関与している[Lim J.H.(2006年)Cancer Res;66巻(22号);10677−82頁]。
NF−κBp65タンパク質はNF−κBファミリーに入る転写因子であり、極めて多くの癌遺伝子および炎症反応に関与する遺伝子の活性化に寄与している[Nishikori,M.(2005年)J.Clin.Exp.Hemathopathol.45巻(1号);15−18頁]。
これら2つのタンパク質は、炎症のおよび癌のマーカーとして認められている。これらは専用のキットを使用して光学濃度に基づいて判定した。β−カテニンはELISA(Catenin Enzyme Immunoassay Kit、Assay designs、Ann Arbor、MI)によって製造者の指示に従って判定した。NF−κBp65タンパク質は別のELISAアッセイ(TrasAM NF−κB p65 nuclear DNA based ELISA、Active Motif、Rixensart、Belgium)によって製造者の指示に従って判定した。図2の図に提示されている得られた値は、細胞核から抽出されたタンパク質の合計量と相対的に表現されている。
核中のβ−カテニンタンパク質およびNF−κBp65タンパク質の濃度の増加は、炎症のまたは細胞の脱制御の状態を反映しており、その状態は直接にCO濃度の増加に帰される。
シガレットの煙の中に含有されるCOに特約的に関連付けられるマウスにおける炎症応答の実証
以下の実験は、COの大部分が選択的に捕捉されたシガレットの煙をマウスに吸入させることを含んでいた。COは水酸化カリウムの溶液との反応によって(CO+HO ←→ HCO;HCO+2KOH←→KCO+2HO)選択的に捕捉された。水の溶液は負の制御として働く。このためには、シガレットの煙をこれらの溶液を含有するろ過カラムに通過させることによって水または水酸化カリウムと接触させた。
この実験のために使用された装置は、シガレットを消費するために特別に適合させた吸引ポンプを含む。こうして得られた煙は250mlの封止されたチャンバーへ送られる。このチャンバーは1MのKOH溶液またはpH=7の蒸留水で半分満たされたカラムを介して1600mlの容量を有する第2のチャンバーに接続されている。Oの濃度およびCOの濃度の測定を行うための1対のセンサーがそれぞれのチャンバーに配置されている。測定は38分間について毎分行い、得られた結果は図3に示してある。KOH溶液はシガレットの煙中に存在するCOの濃度のかなりの低減を確実にし、この濃度は酸素の濃度を顕著に変えることなく50から70%減少する(図3を参照されたい。)。
実験はインビボ条件下において6から7週齢のBALB/cマウスについて行った。使用したマウスの数は雄32匹であり、8匹ずつの4つのグループに分けた。マウスを装置の第2のチャンバー(1600mlのチャンバー)に入れ、2つのチャンバーの間を接続しており蒸留水または1MのKOH溶液を収容しているカラムを通した空気(対照群)またはシガレットの煙を呼吸させた。それぞれの実験は38分間、すなわち通常は喫煙者による5本のシガレットの消費と等価な時間持続した。
マウスを上記の4つの状況において(図3の注釈も参照されたい。)38分間空気を吸入後に犠牲にし、肺を直ちに分析のために取り出した。
肺を知られている炎症のマーカーである6つのタンパク質の活性または分泌を測定するために分析した。これらのタンパク質の一部は、また、ある種の癌およびアテローム性動脈硬化症のマーカーであることが知られている(NF−κB、PP2A)。これらのタンパク質は次の通りである:RANTES、IL−6、TNF−α、MIP−2、PP2AおよびNF−κBp65。最初の3つのタンパク質はサイトカインファミリーに属する。MIP−2は好中球の動員を可能にするマクロファージによって分泌されるケモカインである。PP2Aはアポトーシス促進性経路または抗アポトーシス性経路の抑制または活性化によるアポトーシスの誘導におけるその役割で知られているホスファターゼである。これの活性の脱制御は癌、特に肺癌に結びつく[Van Hoof C.およびGoris J.PP2A fulfills its promises as tumor suppressor: which subunits are important?(2004年)Cancer Cell、5巻(2号):105−6頁]。最後に、NF−κBp65は、炎症反応に関与するタンパク質、例えばTNF−αの遺伝子の活性化において重要な役割を果たす転写因子である。このタンパク質は特にアテローム性動脈硬化症に関係している[Valen G.ら、Nuclear factor kappa−B and the heart.(2001)J.Am.Coll.Cardiol.38巻(2号):307−14頁]。これらのタンパク質の活性のまたは相対的濃度の測定は次の市販キットを使用して実行された:Mouse TNF−alpha/TNFSF1A DuoSet(TNF−αの濃度のためのELISAアッセイ);Mouse CXCL2/MIP−2 DuoSet(MIP−2の濃度のためのELISAアッセイ)、Mouse CCL5/RANTES ELISpot Kit(RANTESの分泌のためのELISpotアッセイ);Mouse IL−6 ELISpot Kit(IL−6の分泌のためのELISpotアッセイ)、すべてR&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から。
得られた結果は図4から9に示す。
これらの結果は、シガレットの煙の中のCOの濃度が低減されると、分析されたマーカーに基づく肺細胞の炎症がより少ないことを示している。したがって、タバコの煙の中に存在するCOの大きな割合が除去されたならば、タバコの煙は刺激がより少なく、また呼吸器の癌および心臓血管疾患の原因になりにくいと考えられる。

Claims (14)

  1. タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防するためのCOを捕捉する手段を含むフィルター組成物。
  2. 呼吸器の炎症を予防するための、請求項1に記載の組成物。
  3. 呼吸器の癌を予防するための、請求項1に記載の組成物。
  4. アテローム性動脈硬化症を予防するための、請求項1に記載の組成物。
  5. 呼吸器の癌が、肺癌または咽喉癌であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
  6. COを捕捉する手段が、COの吸着のための手段であることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
  7. 前記COの吸着のための手段が、活性炭、ゼオライトまたはMOFを含むことを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記COの吸着のための手段が、タイプ4A、5Aまたは13Xのゼオライトを含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の組成物。
  9. 前記組成物が、タバコの燃焼からもたらされ喫煙者によって吸入されるCOの割合を少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%低減することを可能にすることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の組成物。
  10. シガレットフィルターを構成することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防することを意図するフィルターの調製のためのCOを捕捉する手段の使用。
  12. フィルターが、呼吸器の炎症を予防することを意図することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
  13. COを補捉する手段が、活性炭、ゼオライトまたはMOFなどの吸着のための手段であることを特徴とする、請求項11または12に記載の使用。
  14. タバコの燃焼からもたらされるCOを捕捉することを含むことを特徴とする、タバコの煙に曝露される対象における炎症、癌および/または心臓血管疾患を予防する方法。
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