JP2010524434A - Kcnh2の統合失調症関連アイソフォームおよび抗精神病薬の開発 - Google Patents

Kcnh2の統合失調症関連アイソフォームおよび抗精神病薬の開発 Download PDF

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Abstract

本発明は、カリウムチャネルKCNH2の新規な霊長類特異的脳アイソフォーム、および統合失調症のリスクとの遺伝学的関連に関する。

Description

本発明は、カリウムチャネルKCNH2の新規な霊長類特異的脳アイソフォームおよび統合失調症のリスクとの遺伝学的関連性に関する。
本願は、2007年3月26日に出願された米国仮特許出願第60/920,220号の利益を主張するものであり、前記仮特許出願は参照によってその全体が本願に明らかに組み込まれる。
近代医療における主な挑戦は、複雑な遺伝的決定因子および環境的決定因子が関与する、統合失調症のような一般的な精神病の根底にある細胞機構および分子機構を理解することである。最近の証拠から、各々は集団全体に対して比較的影響の小さい多数の遺伝子が統合失調症のリスクに寄与することが示されている(非特許文献1)。有力な病因仮説は、そのような遺伝的要因どうしの相互作用および遺伝的要因と環境との相互作用が、後年に病気を起こしやすい神経発達異常をもたらすとしている(非特許文献2)。この複雑さに、考えうる遺伝的および対立遺伝子上の不均一性、上位性効果、検出されない個体群層化、ならびに不正確かつ様々な表現型の定義を加えて前提とすれば、統合失調症の推定リスク遺伝子を同定するための統計的関連研究が合意の反響を得られていないことは驚くにはあたらない。原因遺伝子を立証する統計的証拠における上記の問題点を考慮して、統合失調症のような複雑な多遺伝子性疾患に関する遺伝子同定の終局には、種々のリスクが、その病気の重要な生物学的特徴に収束するかたちで遺伝子の生物学に影響を及ぼすことを実証する必要があるだろうという議論がなされてきた(非特許文献3)。このことから、統合失調症に関連する中間的な生物学的表現型に対する潜在的な統合失調症感受性遺伝子の影響を検討する努力が導かれた(非特許文献4,5)。
最も有望な中間的表現型は、前前頭皮質(PFC)を仲介する実行機能、および海馬体(HF)を仲介する記憶機能であり、これらの機能はいずれも統合失調症の患者および該患者の健康な血縁者において低下している(非特許文献6)。海馬皮質および前前頭皮質における生物学的異常も、統合失調症の患者で頻繁に報告されており、また該患者の健康な血縁者においても高頻度で見られ、感受性遺伝子に関係した遺伝性の形質であることが示唆される。例えば、統合失調症患者および該患者の健康な血縁者は、HF容積の低下(非特許文献7,8)、ならびにニューロン活動およびシナプス存在度の尺度であるN−アセチルアスパラギン酸(NAA)のレベルの低下(非特許文献9)を示し、これは恐らく剖検で観察される神経網の縮小と関係する(非特許文献10)。統合失調症の患者および該患者の健康な血縁者における皮質の活動の様々な生理学的調査から、HFおよびPFCにおける無秩序な活性化が明らかになっている(非特許文献11〜19)。ヒト以外の霊長類およびその他の動物モデルでの研究から、皮質ネットワークにおける異常な活性化および無秩序な高頻度の発火が記憶能力障害の根底にあるかもしれないことが示されている(非特許文献20)。しかしながら、統合失調症に関連した異常なニューロン活動に寄与する分子レベルおよび遺伝子レベルの因子は、これまでのところ特定されていない。
P.J.Harrison and D.R.Weinberger 2005 Mol Psychiatry 10:40 D.A.Lewis and P.Levitt 2002 Annu Rev Neurosci 25:409 K.M.Weiss and J.D.Terwilliger 2000 Nat Genet 26:151 A.Meyer−Lindenberg and D.R.Weinberger 2006 Nat Rev Neurosci 7:818 M.F.Egan et al.2004 Proc Natl Acad Sci USA 101:12604 D.R.Weinberger 1999 Biol Psychiatry 45:395 L.J.Seidman et al.2003 Schizophr Bull 29:803 M.D.Nelson et al.1998 Arch Gen Psychiatry 55:433 R.G.Steen et al.2005 Neuropsychopharmacology 30:1949 P.J.Harrison 1999 Brain 122:593 J.H.Callicott et al.2003 Am J Psychiatry 160:709 C.S.Carter 2006 Biol Psychiatry 60:1169 G.Winterer et al.2004 Am J Psychiatry 161:490 E.Bramon et al.2004 Schizophr Res 70:315 S.Frangou et al.1997 Schizophr Res 23:45 R.Freedman et al.1991 Schizophr Res 4:233 S.Heckers et al.1998 Nat Neurosci 1:318 A.M.Achim and M.Lepage 2005 Br J Psychiatry 187:500 D.Ongur et al.2006 Arch Gen Psychiatry 63:356 P.S.Goldman−Rakic 1995 Neuron 14:477
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
本発明は、電位依存性カリウムチャネルKCNH2の新規な霊長類特異的脳アイソフォーム、および統合失調症のリスクとの遺伝的関連、ならびに関連する核酸分子、ポリペプチド、抗体、スクリーニングアッセイおよび診断法に関する。
いくつかの実施形態は、配列番号5のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を含んでなる、単離核酸分子に関する。別の実施形態は、上記の単離核酸分子であって、前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)で置換されていることを特徴とする核酸分子に関する。さらに別の実施形態は、配列番号3を有するcDNAと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を含んでなる上記核酸分子に関する。
望ましい実施形態では、上記の単離核酸分子は、配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸である。いくつかの実施形態では、上記の単離核酸分子は、配列番号5のポリペプチドであって前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)で置換されているポリペプチドをコードする核酸である。さらに別の実施形態は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記の核酸分子にハイブリダイズする単離核酸分子であって、ハイブリダイズする前記核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A残基のみまたはT残基のみで構成されるヌクレオチド配列を有する核酸分子にはハイブリダイズしないことを特徴とする核酸分子に関する。
別の実施形態は、配列番号5のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、単離ポリペプチドに関する。いくつかの態様では、上記の単離ポリペプチドは、前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)に置き換えられているという点で修飾されている。別の実施形態では、前記ポリペプチドは配列番号5のアミノ酸配列を含んでなり、さらに別の実施形態では、上記の単離ポリペプチドは、前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)で置換されるように修飾される。
本発明のいくつかの態様はさらに、上述の単離核酸分子のうちのいずれかをベクターに挿入することを含んでなる組換えベクターの製造方法に関する。上記方法によって生産された組換えベクター、およびこのベクターを宿主細胞に導入することを含んでなる組換え宿主細胞の製造方法も、意図される実施形態である。これらの方法によって生産された組換え宿主細胞も実施形態である。さらに、本発明のいくつかの態様は、前記組換えポリペプチドが発現される条件下で上記の宿主細胞を培養することを含んでなる、組換えポリペプチドの製造方法に関する。上述のポリペプチドのうちのいずれか1つに特異的に結合することができる単離抗体も、意図される実施形態である。
別の実施形態は、ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、試験化合物を上述のポリペプチドのうちのいずれか1つと接触させること;および前記ポリペプチドへの前記試験化合物の結合を検出すること、からなる方法に関する。
さらに別の実施形態は、ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、(a)上述のポリペプチドのうちのいずれか1つの活性を、第1の濃度の試験化合物のもとで、または前記試験化合物の不在下で測定すること、(b)前記ポリペプチドの活性を、第2の濃度の試験化合物のもとで測定すること、ならびに条件(a)および(b)の下での前記ポリペプチドの活性を、既知の調節因子の存在下におけるポリペプチドの活性と比較すること、からなる方法に関する。いくつかの実施形態では、活性は電流である。別の実施形態は、ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、試験化合物を、上述のポリペプチドのうちのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子と接触させること、および前記ポリヌクレオチドへの前記試験化合物の結合を検出すること、からなる方法に関する。
さらに、本発明のいくつかの態様は、ヒトの神経系疾患の治療に有用な医薬組成物の調製方法であって、上述のポリペプチドのうちのいずれか1つの調節因子を同定すること、前記調節因子が前記ヒトの神経系疾患の症状を改善するかどうか測定すること、および前記調節因子を許容可能な製薬担体と組み合わせること、からなる方法に関する。いくつかの実施形態では、前記調節因子が小分子、RNA分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、またはリボザイムである上記方法が実行される。
さらなる実施形態は、個体が統合失調症に罹患するか、または統合失調症に関連した症状をより多く有するようになる可能性を予測する方法であって、評価すべき個体からDNA試料を得ること、およびマーカーM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14、M15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24、M25、M26、M27、M28、M29、M30、M31、M32、M33、M34、M35、M36、M37、M38、M39、M40、M41、M42、またはM43から選択された一塩基変異多型(SNP)に存在するヌクレオチドを測定することからなり、SNPにリスク対立遺伝子由来のヌクレオチドが存在することは、該個体が、そのSNPに保護的対立遺伝子由来のヌクレオチドを有する個体よりも統合失調症に罹患する可能性が高いか、または統合失調症に関連した症状をより多く有する可能性があることを示すことを特徴とする方法に関する。
HERG Kチャネルの膜貫通トポロジーを示す図。 KCNH2(上、配列番号6)および光活性黄色タンパク質(下、配列番号7)のeagドメインの配列アラインメントを示す図。 図3A乃至図3Eは、ヒトのKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のタンパク質およびcDNAの配列を示す図。KCNH2−1Aタンパク質(配列番号2)、KCNH2−1A cDNA(配列番号1);アイソフォーム3.1タンパク質(配列番号4)、アイソフォーム3.1 cDNA(配列番号3)。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、その結果配列番号5となるタンパク質として定義される。 図3A乃至図3Eは、ヒトのKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のタンパク質およびcDNAの配列を示す図。KCNH2−1Aタンパク質(配列番号2)、KCNH2−1A cDNA(配列番号1);アイソフォーム3.1タンパク質(配列番号4)、アイソフォーム3.1 cDNA(配列番号3)。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、その結果配列番号5となるタンパク質として定義される。 図3A乃至図3Eは、ヒトのKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のタンパク質およびcDNAの配列を示す図。KCNH2−1Aタンパク質(配列番号2)、KCNH2−1A cDNA(配列番号1);アイソフォーム3.1タンパク質(配列番号4)、アイソフォーム3.1 cDNA(配列番号3)。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、その結果配列番号5となるタンパク質として定義される。 図3A乃至図3Eは、ヒトのKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のタンパク質およびcDNAの配列を示す図。KCNH2−1Aタンパク質(配列番号2)、KCNH2−1A cDNA(配列番号1);アイソフォーム3.1タンパク質(配列番号4)、アイソフォーム3.1 cDNA(配列番号3)。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、その結果配列番号5となるタンパク質として定義される。 図3A乃至図3Eは、ヒトのKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のタンパク質およびcDNAの配列を示す図。KCNH2−1Aタンパク質(配列番号2)、KCNH2−1A cDNA(配列番号1);アイソフォーム3.1タンパク質(配列番号4)、アイソフォーム3.1 cDNA(配列番号3)。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、その結果配列番号5となるタンパク質として定義される。 KCNH2および新規なアイソフォーム3.1のドメイン配置の概略を示す図。 7q36.1と統合失調症のリスクとの遺伝的関連を示す図。 リスクSNPと、(A)認知の尺度、(B)脳構造上の容積、および(C)記憶に基づいたタスクの際の領域別脳活動との関連を示す図。 リスクSNPと、(A)認知の尺度、(B)脳構造上の容積、および(C)記憶に基づいたタスクの際の領域別脳活動との関連を示す図。 リスクSNPと、(A)認知の尺度、(B)脳構造上の容積、および(C)記憶に基づいたタスクの際の領域別脳活動との関連を示す図。 (A)領域別遺伝子発現および(B)リスク遺伝子型との関連を示す図。 (A)領域別遺伝子発現および(B)リスク遺伝子型との関連を示す図。 アイソフォーム3.1のmRNAおよびタンパク質の検出および定量について示す図。(A)組織特異的なPCR;(B)組織特異的なQPCR;(C)タンパク質発現;ならびに(D)トランスフェクションおよび細胞内局在化。 アイソフォーム3.1のmRNAおよびタンパク質の検出および定量について示す図。(A)組織特異的なPCR;(B)組織特異的なQPCR;(C)タンパク質発現;ならびに(D)トランスフェクションおよび細胞内局在化。 アイソフォーム3.1のmRNAおよびタンパク質の検出および定量について示す図。(A)組織特異的なPCR;(B)組織特異的なQPCR;(C)タンパク質発現;ならびに(D)トランスフェクションおよび細胞内局在化。 アイソフォーム3.1のmRNAおよびタンパク質の検出および定量について示す図。(A)組織特異的なPCR;(B)組織特異的なQPCR;(C)タンパク質発現;ならびに(D)トランスフェクションおよび細胞内局在化。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1を発現するHEK293T細胞におけるKCNH2電流の特性解析について示す図。(A)ドメイン構造の図解;(B)電圧ステップによって喚起された電流;(C)末尾電流に対する影響;(D)活性化曲線;(E)電圧ステップによって喚起された末尾電流;および(F)脱活性化時定数。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 皮質ニューロンにおけるKCNH2電流および発火パターンに対するアイソフォーム3.1の影響を示す図。(A)GFPでトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(B)アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおける末尾電流;(C)脱活性化時定数;(D)活動電位発射;(E)スパイク頻度;および(F)スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響。 SNP、転写物、QPCRアッセイ、PCRプライマー、および再度配列決定を行った領域の物理的地図を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 (A1〜A3)CBDB、(B1〜B3)NIMHGI−C、(C1〜C3)NIMHGI−AA、および(D)ドイツのDNAコレクションに関する単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果を示す図。 希少なSNPであるM25を有する8家族の系図およびこれらの家族を除いた関連表を示す図。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M30の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−12および−22mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M30の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−12および−22mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M31の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9および−24mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M31の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9および−24mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M33の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9および−24mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 最適化VBMを使用して得られた、SNP M33の遺伝子型に基づいた右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9および−24mm)の差を示す図。A)灰白質容積のプロット図、B)閾値を設定した統計的tマップ。 陳述記憶タスクの際の、SNP M31の遺伝子型に基づいた海馬の関与の差を示す図。A)左海馬後部におけるタスクの符号化状態の際の血中酸素レベル依存的(BOLD)なシグナルの変化(%)。B)閾値を設定した統計的tマップ。 陳述記憶タスクの際の、SNP M31の遺伝子型に基づいた海馬の関与の差を示す図。A)左海馬後部におけるタスクの符号化状態の際の血中酸素レベル依存的(BOLD)なシグナルの変化(%)。B)閾値を設定した統計的tマップ。 陳述記憶タスクの際の、SNP M33の遺伝子型に基づいた海馬の関与の差を示す図。A)左海馬後部におけるタスクの符号化状態の際の血中酸素レベル依存的(BOLD)なシグナルの変化(%)。B)閾値を設定した統計的tマップ。 陳述記憶タスクの際の、SNP M33の遺伝子型に基づいた海馬の関与の差を示す図。A)左海馬後部におけるタスクの符号化状態の際の血中酸素レベル依存的(BOLD)なシグナルの変化(%)。B)閾値を設定した統計的tマップ。 神経弛緩薬で処理されたラットの前頭皮質におけるNOS3およびKCNH2−1Aの発現を示す図。 PCRおよびQPCRを用いたアイソフォーム3.1およびKCNH2−1Aの組織差を示す図。 霊長類および霊長類以外の生物種のアイソフォーム3.1の5’−UTR配列のアラインメントおよび該配列の保存について示す図。(A)エキソン3の上流領域のDNA塩基配列のアラインメント。ヒト(Human)(配列番号8);アカゲザル(Rhesus)(配列番号9);マウス(Mouse)(配列番号10);ラット(Rat)(配列番号11)。(B)hERG−1aエキソン3の上流の予測される最長のORF。ヒト(配列番号12);アカゲザル(配列番号13);マウス(配列番号14);ラット(配列番号15)。 霊長類および霊長類以外の生物種のアイソフォーム3.1の5’−UTR配列のアラインメントおよび該配列の保存について示す図。(A)エキソン3の上流領域のDNA塩基配列のアラインメント。ヒト(Human)(配列番号8);アカゲザル(Rhesus)(配列番号9);マウス(Mouse)(配列番号10);ラット(Rat)(配列番号11)。(B)hERG−1aエキソン3の上流の予測される最長のORF。ヒト(配列番号12);アカゲザル(配列番号13);マウス(配列番号14);ラット(配列番号15)。
定義
別途定義されないかぎり、本明細書中で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Singleton P and Sainsbury D.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,J.Wiley and Sons,Chichester,New York,2001を参照されたい。
移行用語(transitional term)「含んでなる(comprising)」は、「備えている(including)」、「含んでいる(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包含的すなわちオープンエンドであって、列挙されていない追加の要素または方法ステップを除外しない。
移行句(transitional phrase)「〜のみで構成される(consisting of)」は、クレームにおいて特定されていないあらゆる要素、ステップまたは成分を除外するが、その発明とは無関係な、その発明に通常伴う不純物のような追加の構成要素またはステップは除外しない。
移行句「〜のみで実質的に構成される(consisting essentially of)」は、クレームの範囲を、特定された材料またはステップ、およびクレームに記載された発明の基本的かつ新規な特性に物質的に影響を及ぼさないものに限定する。
概観
本明細書に記載されるように、本発明者らは、電位依存性カリウムチャネルKCNH2の新規なアイソフォームの発見および特性解析に結びつく広範囲な一連の基礎実験および臨床実験について報告する。ヒト脳における該アイソフォームの発現は、統合失調症では統合失調症リスク一塩基変異多型(SNP)と有意に相関して顕著に増加し、かつ細胞培養物における発現はニューロンの興奮性を劇的に変化させる。
近代医療の究極の目標は、糖尿病および精神病のような、一般的であるが複雑なヒト疾病の根底にある根本的な機構を理解することである。従来の遺伝学的な連鎖および相関の研究は、これらの疾病に複数の遺伝子が関与し、各遺伝子が集団全体にわたって及ぼす影響は比較的小さいため、決定的とは言い難かった。さらに、遺伝的要因の複雑さおよび該要因と環境との相互作用から、遺伝学的知見を病気の重要な生物学的または機構的態様に結び付けて考えるのは難しい場合が多い。これらの障害を克服するために、本発明者らは、統合失調症の複雑な現象を神経系および分子レベルの構成要素まで詳細に分析し、これらの多様なレベルの分析に遺伝的関連をマッピングする、強力かつトランスレーショナルな手法をとってきた。本研究に上記手法を使用して、本発明者らは、新しい種類の統合失調症感受性遺伝子であるKCNH2カリウムチャネルを同定し、さらに重要なことには、霊長類および脳に特異的であり統合失調症においては2.5倍に増加する、この種の電位依存性カリウムチャネルの新規なアイソフォームを同定する。さらに、本発明者らは、KCNH2のこの新規アイソフォームの電気生理学的特性を解析し、ニューロンにおける高発現が、統合失調症の生理的相関現象である無秩序なニューロン活性化パターンをもたらすことを明らかにする。これらの集中的な知見は、統合失調症および関連障害の根底にある分子機構に対して、劇的な新しい洞察を提供する。
該研究の主な知見および潜在的な影響力は以下のとおりである。第1に、統合失調症の脳組織からの差次的遺伝子発現データに基づき、本発明者らはKCNH2を含む7q36の領域を特定したが、該領域では3kbのイントロン領域内のSNPが統合失調症に有意に関連している。より重要なことに、上記の遺伝的関連は、アフリカ系アメリカ人を起原とするものを含む4つの独立した臨床試料において再現することができたが、このことは、程度が異なるとはいえ、この遺伝子が世界的に統合失調症のリスクに影響を与えることを示唆している。本発明者らの遺伝的関連研究の整合性は、KCNH2を統合失調症のリスク遺伝子として強力に関係付けている。
第2に、本発明者らは、独立した一組の健康な対照者群において、リスクSNPと、最も一貫して報告される中間的な生物学的表現型のうちのいくつかにおける統合失調症様の変化、すなわち:記憶力およびIQ/認知処理速度の低下、MRIによって計測されるような海馬容積の縮小、ならびにfMRIによって計測されるような記憶タスクの際の海馬の生理的関与の低下、との有意な関連を示した。これらの、脳の構造および機能における変異との独立した関連性は、遺伝子機能および既知の認知機能と、統合失調症に関連する神経生物学的現象との間をさらに結び付ける。
第3に、本発明者らは、KCNH2との遺伝的関連の根底にあるかもしれない基本的な機構を解明するために臨床を越えて研究を拡張した。本発明者らは、死後のヒト脳におけるKCNH2 mRNAの発現を解析することから始めた。予想外にも、本発明者らは、霊長類に特異的で脳内に極めて豊富であるKCNH2の新規アイソフォーム(3.1)を同定した。典型的なKCNH2−1A型とは異なり、この新規アイソフォーム3.1は心臓では微量しか発現を示さない。特に、このアイソフォームの発現は、統合失調症の患者の海馬内で著しく増加し(完全長型に対して2.5倍の増加)、またリスク対立遺伝子を有する正常な個体でも増加している。したがって、遺伝的関連は、特にこの新規アイソフォームに、主としてその発現の調節に関して、関係があるように見える。さらに構造分析から、新規アイソフォームが、KCNH2の特徴的な緩徐な脱活性化に重要であることが知られているPASドメインの、大部分を欠くことが明らかにされている。次に本発明者らはげっ歯動物の錐体ニューロンにおいてこの新規アイソフォームを過剰発現させ、該アイソフォームが急速に脱活性化するK電流および高頻度の順応しない発火パターンを生じることを見出した。これらの結果は、正常な高次認知について、さらに統合失調症で見られる認知障害についても重要な意味合いを持つ。持続的な順応しない発火パターンが、霊長類における高次の認識タスクおよび記憶タスクの根底にある皮質の情報処理にとって重要であると考えられてきたように、正常な生理的レベルの3.1アイソフォームは、このパターンのニューロンの活動を支えるための、霊長類における重要な進化論的発展であるのかもしれない。しかしながら、統合失調症において見られるように、このアイソフォームの発現上昇は、皮質回路における制御されていない非同期性の発火を引き起こし、その結果、統合失調症患者およびリスク対立遺伝子を有する正常な被験者にも見られる複雑な認知機能の遂行の異常、ならびに皮質の生理活性のパターン異常をもたらす可能性が考えられる。実際に、無秩序な生理活性は、統合失調症患者に関する最近の神経生理学的研究の特徴である。
総合すると、これらの集中的な知見は、新規なKCNH2アイソフォームが統合失調症の病因および病態生理において役割を果たしているとみなす、説得力のある証拠を提供している。多くの利用可能な抗精神病薬がKCNH2−1Aにも結合し(Kongsamut et al.,Eur J Pharmacol.2002 Aug 16;450(1):37−41を参照)、その心臓への副作用の原因となっていること、およびアイソフォーム3.1は比較的脳特異的であり、ニューロンの発火を制御する際に主要な役割を果たすことを考えれば、本発明者らの結果はさらに、他の抗精神病薬に一般的に伴う心臓への副作用を回避する可能性のある、有望な新しい治療ターゲットをも提示している。
HERGおよびPASドメインの説明
HERG(ヒトeag関連遺伝子)は、eag(エーテルアゴーゴー)Kチャネルファミリーのメンバーである(Warmke,J.W.et al.1991 Science 252:1560−1562;Warmke,J.W.and Ganetzky,B 1994 Proc Natl Acad Sci USA 91:3438−3442)。ヒトの心臓および神経系で見つかったこれらのチャネルは、家族性の心不整脈および突然死を引き起こす遺伝的条件である、QT延長症候群の1形態のLQT2の基礎をなしている(Curran,M.E.et al.1995 Cell 80:795−803)。他の電位依存性K+チャネルと同様に、HERGは膜を貫通する6つのストレッチでできたサブユニット・トポロジーを有する(図1)。4つのこれらサブユニットが、中心にイオン伝達細孔を備えた四量体を形成する。細孔の電位依存的なゲート制御または開閉は、この電位依存性カチオンチャネルファミリーの全メンバーに存在するS4「電圧センサ」(アルギニンに富んだ4番目の膜貫通ストレッチ)によって与えられる(Sigworth,F.J.1994 Rev Biophys 27:1−40)。
図1を参照すると、HERGチャネルのモノマーはS1〜S6と呼ばれる6つの膜貫通セグメントを有し;S4は電圧センサであって、+記号で示すように6つの正に荷電したアミノ酸を含んでいる。該チャネルは、いずれも細胞質側にある大きなC末端および特徴的なN末端eagドメインを有し;細孔領域はS5とS6との間に位置している。機能的チャネルは中心にイオン伝達路を備えた四量体である。
HERGは、2つの異なる生理学上重要なゲート制御特性、すなわち迅速な不活性化および緩徐な脱活性化を示す(Trudeau,M.C.et al.1995 Science 269:92−95;Smith,et al.1996 Nature 379:833−836;Spector,P.S.et al.1996 J Gen Physiol 107:611−619)。迅速な不活性化が存在するということは、チャネルが細胞膜の脱分極とともに開くと、外向きの電流をほとんど通過させずに非常に迅速に不伝導(不活性化)状態に入ることを意味している。膜が−80mV近くの正常な静止膜電位に戻ると、チャネルはその立体配座上のステップを明らかに逆戻りして、閉止形態に戻る途中で開放状態を通過する。脱活性化プロセスと呼ばれる閉止状態への復帰は、HERGチャネルでは非常に遅く、従って大きな内向きの「末尾」K電流が電圧固定実験中に観察される。この緩徐型のHERGチャネル脱活性化は、活動電位の長さを支配することにより、心臓の電気興奮性に重要な役割を果たす(Sanguinetti.M.C.et al.1995 Cell 81:299−307)。
HERGの細胞質側にあるアミノ末端の欠失は、脱活性化の速度に大きく影響することが示されている(Schoenherr,R.and Heinemann,S.H.1996 J Physiol 493:635−642;Spector,P.S.et al.,1996 J Gen Physiol 107:611−619;Terlau et al.1997 J Physiol 502:537−543)。この知見は非常に興味深い、というのも、HERGのアミノ末端は、高度に保存されているだけでなくeagKチャネルファミリーの特徴を規定していると考えるのに十分な独自性を有する、約135アミノ酸の配列を含んでいる(Warmke,J.W.and Ganetzky,B.1994 Proc Natl Acad Sci USA 91:3438−3442)からである。eagドメインは、Kチャネルの主要部と、おそらくはその表面の疎水性パッチを介して緊密に結合することにより、脱活性化を制御する。該ドメインの三次元構造は、PASドメインファミリーの最初の真核生物由来のメンバーを明らかにしている。PAS(Per、Arnt、およびSimの遺伝子産物の頭文字)(Reppert,S.M.1998 Cell 21:1−4;Sassone−Corsi,P.1998 Nature 392:871−874)ドメインは、哺乳動物における概日リズム、ホルモン分泌の周期的パターン、繁殖および自発運動、ならびに植物における光合成の周期的変動に関与するタンパク質に見出される。原核細胞では、PASドメインは光センサおよび化学センサとして役立つことにより様々な生化学的プロセスを調節する。
図2を参照すると、KCNH2(上)および光活性黄色タンパク質(PYP)(下)のeagドメインが、重ね合わせ構造モデルに従ってアラインメントされている。eagドメインおよびPYPが極めて類似した三次元構造を有することは明らかである。破線のボックスは、位置が一致した残基が両方の構造に共通の二次構造要素の同じ部位を占めている配列のストレッチを示している。二次構造要素は対応する配列の上方および下方に、αへリックスは矢印として、βストランドは塗りつぶした長方形として、310へリックスは白抜きの長方形として示されている。eagドメイン構造の構造要素には名前が付されている。実線のボックスは、eagドメイン構造中の不規則な残基を示している。残基番号はそれぞれの配列の上方および下方に示されている。
eagドメインは、コイルから成る長い規則的な「つる(vine)」および310ヘリックス(α’A)の単一ターンを背景にして集まった5本鎖逆平行βシート(βA〜βE)を備えたα+βタンパク質である。シートは両側にαヘリックス(αA〜αC)が施されている。該構造は、そのN末端およびC末端が並行して配置されて、βシートの中心の2本の鎖を形成する。
2つのタンパク質の間の主な違いは、αCヘリックスおよび関連する「つる」がβシートをパックする方法にある。eagドメインおよびPYPの構造に基づいた配列アラインメントは、際立った配列保存がないことを示している。これらのタンパク質の関連性は三次元構造の比較を通じてのみ明白である。
HERGおよびeag K+チャネルファミリーの他のメンバーは、その細胞質側N末端にPASドメインを含んでいる。カブラルら、1998年(Cabral et al.1998 Cell 95:649−655)は、HERGのアミノ酸2−135を欠くN末端短縮型タンパク質(HERGΔ2−135)を人為的に作出した。この研究者らは、PASドメインの除去によりHERGにおける生理学的に重要なゲート制御の推移が変化すること、また短縮型HERGを発現する細胞の細胞質に単離ドメインを添加すると野生型のゲート制御が再構成されることを究明した。要約すると、カブラルら、1998年は、eagドメインがPASドメインファミリーのメンバーであり、その役割はK+チャネルのゲート制御を修正することである、と結論した。
核酸分子
KCNH2のcDNA配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を図3に示し;概略的なドメイン配置を図4に示す。
アイソフォーム3.1のcDNA配列(配列番号3)および推定アミノ酸配列(配列番号4)を図3に示し;概略的なドメイン配置を図4に示す。
本発明は、ここでHERGΔ2−102として定義されるアイソフォーム3.1をコードすることが確認されたポリヌクレオチド配列を含んでなる、単離核酸分子を提供する。HERGΔ2−102は、HERG(配列番号2)のアミノ酸2−102を欠き、従ってPASドメインの大半が欠けているが二次構造要素βDおよびβEシートを保持し、配列番号5となっているN末端短縮型ポリペプチドであって、いくつかの実施形態では、第1番目のアミノ酸が、ヒトのアイソフォームに特有の6アミノ酸(M S S H S A;配列番号16)、サルのアイソフォームに特有の6アミノ酸(M F S H S T;配列番号17)、またはその他の生物種のアイソフォームに特有の6アミノ酸で置換されているポリペプチドを意味する。本発明はさらに、アイソフォーム3.1をコードするmRNA分子から決定されるヌクレオチド配列を提供し、該ヌクレオチド配列は、アイソフォーム3.1をコードするcDNA、例えばアイソフォーム3.1に特有の1.1kbの5’非翻訳領域(配列番号3)を含む。
Figure 2010524434
用語「単離(される)」とは、物質がその本来の環境(例えば該物質が天然に存在する場合の自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生命体中に存在する天然の状態の核酸分子またはポリヌクレオチドは単離されていないが、同じ核酸分子またはポリヌクレオチドであっても自然環境において共存する物質のうちの一部または全部から分離されたものは、単離されている。そのような核酸分子はベクターの一部であってもよく、かつ/またはそのようなポリヌクレオチドは組成物の一部であってもよいが、この場合も、そのようなベクターまたは組成物が核酸分子またはポリヌクレオチドの自然環境の一部ではないという点で、該核酸分子またはポリヌクレオチドは単離されている。
核酸分子またはポリヌクレオチドの「ヌクレオチド配列」とは、DNA分子またはポリヌクレオチドについてはデオキシリボヌクレオチドの配列を意図し、またRNA分子またはポリヌクレオチドについては、対応するリボヌクレオチド(A、G、CおよびU)の配列であって、所定のデオキシリボヌクレオチド配列中のチミジンデオキシリボヌクレオチド(T)がそれぞれリボヌクレオチドのウリジン(U)に置き換えられているものを意図している。
配列表に示すヌクレオチド配列のような、本明細書中に提供される情報を使用して、ポリペプチドをコードする本発明の核酸分子を、標準的なクローニング法およびスクリーニング法、例えば出発物質としてmRNAを使用するcDNAクローニング用の手法などを使用して入手することができる。例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3rd edition,Sambrook et al.2001 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New YorkおよびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.eds.,John Wiley and Sons,1994を参照されたい。
本発明の核酸分子は、mRNAのようなRNAの形であってもよいし、例えば、クローニングにより得られたかまたは合成的に生産されたcDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形であってもよい。DNAは二本鎖であってもよいし一本鎖であってもよい。一本鎖のDNAまたはRNAは、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、アンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖であってもよい。
アイソフォーム3.1をコードする核酸分子に加えて、本発明の単離核酸分子は、上述の配列とは事実上異なる配列を含んでなるが、遺伝子コードの縮重により配列表に示したタンパク質をなおコードするDNA分子を含む。当然ながら、遺伝子コードおよび種特異的なコドン優先度は当分野においてよく知られている。したがって、当業者であれば、例えば特定の宿主に合わせてコドン発現を最適化する(例えばヒトのmRNA中のコドンを大腸菌のような細菌宿主が好むコドンに変更する)ために上述の縮重バリアントを生成させるのは通常の作業である。
本発明は、上記配列のうちの1つに相補的な配列を有する核酸分子をさらに提供する。そのような単離分子(特にDNA分子)は、染色体を用いたin situハイブリダイゼーションによる遺伝子地図作製、および例えばノーザンブロット解析によるヒト組織中の対応遺伝子の発現検出のための、プローブとして有用である。
本発明はさらに、本明細書中に記載のヌクレオチド配列の一部をコードする核酸分子、ならびに本明細書中に記載の単離核酸分子のフラグメントに関する。単離核酸分子の「フラグメント」とは、診断用プローブおよびプライマーとして有用な、長さが少なくとも約15nt、より好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、さらにより一層好ましくは少なくとも約40ntのフラグメントを意味する。当然ながら、より大きな長さ50〜500ntのフラグメントも、アイソフォーム3.1をコードしている全てではないにしてもほとんどの核酸分子に対応するフラグメントとして、本発明において有用である。「長さが少なくとも20nt」のフラグメントとは、例えば、アイソフォーム3.1をコードする核酸分子由来の20個以上連続した塩基を含むフラグメントを意味する。本発明の一部の核酸フラグメントは、アイソフォーム3.1に特有の1.1kbの5’非翻訳領域を含む。
別の態様では、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上述の本発明の核酸分子の一部にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含んでなる、単離核酸分子を提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性させた断片化サケ精子DNA、を含んでなる溶液中にて42℃で一晩インキュベートした後に、フィルタを約65℃の0.1×SSCで洗浄することを意味する。
ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、参照ポリヌクレオチドのうち少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、より好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、さらにより一層好ましくは約30〜70(例えば50)nt、もしくは50〜500ntの長さに、または参照ポリヌクレオチドの全てではないにしてもほとんどに相当するフラグメントにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)を意味する。
例えば「長さが少なくとも20nt」のポリヌクレオチドの一部とは、参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列由来の20個以上連続したヌクレオチドを意味する。当然ながら、ポリA配列(任意のcDNA3’末端ポリ(A)域など)、または相補的な一続きのT(もしくはU)残基にのみハイブリダイズするポリヌクレオチドは、本発明の核酸の一部にハイブリダイズさせるために用いられる本発明のポリヌクレオチドには含まれない、というのも、そのようなポリヌクレオチドは一続きのポリ(A)またはその相補物を含む全ての核酸分子(例えば事実上全ての二本鎖cDNAクローン)にハイブリダイズしてしまうからである。
本発明の核酸によってさらにコードされるのは、本発明のアミノ酸配列に加えて、付加的な非コード配列、例えば、限定するものではないがイントロンならびに5’および3’非コード配列、例えば転写されるが翻訳されない配列であって、転写、mRNAのプロセシング(スプライシングおよびポリアデニル化シグナル、例えばリボソームへの結合およびmRNAの安定を含む)に役割を果たす配列;ならびに追加の官能性を提供するアミノ酸のような追加のアミノ酸をコードする付加的なコード配列である。
したがって、ポリペプチドをコードする配列は、融合ポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列のような、マーカー配列に融合されてもよい。本発明のこの態様の特定の好ましい実施形態では、マーカーのアミノ酸配列はヘキサヒスチジンペプチド、例えば多くが市販されているが中でもpQEベクター(キアゲン社(QIAGEN Inc.)、米国カリフォルニア州91355、バレンシア、スタンフォードアベニュー28159)に提供されるタグなどである。Gentz et al.1989 Proc Natl Acad USA 86:821−824に記載されているように、例えば、ヘキサヒスチジンは融合タンパク質の精製を好都合にする。「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに相当する、精製に役立つ別のペプチドであり、Wilson et al.1984 Cell 37:767−778に記載されている。
バリアントおよび突然変異体のポリヌクレオチド
本発明はさらに、アイソフォームの一部、類縁体または誘導体をコードする、本発明の核酸分子のバリアントに関する。バリアントは、天然の対立遺伝子バリアントのように、自然に生じる場合もある。「対立遺伝子バリアント」とは、生物体の染色体上のある遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態のうちの1つを意味する(Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley and Sons,New York(1985))。天然に存在しないバリアントを、当分野で既知の突然変異誘発技術を使用して生産することもできる。
そのようなバリアントには、ヌクレオチドの置換、欠失または付加によって生じたものが含まれる。置換、欠失または付加は、1以上のヌクレオチドが関与するものであってよい。バリアントは、コード領域、非コード領域、または両方のいずれが変化してもよい。コード領域の変化は、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を生じる可能性がある。中でも特に好ましいのは、サイレントな置換、付加および欠失であって、チャネルタンパク質またはその一部の特性および活性を変化させないものである。同様にこの点で特に好ましいのは、保存的置換である。
最も好ましいのは、配列番号5のアミノ酸配列を有するアイソフォーム3.1をコードする核酸分子、および配列番号3を有するcDNAのヌクレオチド配列である。さらなる実施形態には、本発明のポリヌクレオチドと少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含んでなる、またはそのようなポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含んでなる、単離核酸分子が挙げられる。このハイブリダイズするポリヌクレオチドは、A残基のみ、またはT残基のみで構成されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしない。本発明のさらなる核酸実施形態は、アイソフォーム3.1に特有の1.1kbの5’非翻訳領域を含むポリヌクレオチドを含んでなる単離核酸分子に関する。
参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、該ポリヌクレオチド配列が参照ポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり最大で5個の点突然変異を含む可能性があるという点を除いて、参照配列と同一であることを意味する。言いかえれば、参照ヌクレオチド配列に少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中の5%以内のヌクレオチドを欠失させるかまたは別のヌクレオチドで置換してもよいし、参照配列中の全ヌクレオチドの5%以内にあたる数のヌクレオチドを参照配列に挿入してもよい。このような参照配列の突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端の部位に生じてもよいし、これら末端部位の間の任意の場所に生じてもよく、参照配列のヌクレオチドの間に個々に、または参照配列内の1つ以上の連続した基として組み込まれてもよい。
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、例えば配列番号5のアミノ酸配列を有するアイソフォーム3.1をコードするヌクレオチド配列、および配列番号3のcDNAのヌクレオチド配列と、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)のような既知のコンピュータプログラムを使用して従来どおりに判定することができる。Bestfitは、2つの配列の間の最も相同性の高いセグメントを見つけるために、Smith and Waterman 1981 Advances in Applied Mathematics 2:482−489の局地的相同性アルゴリズムを使用する。ある特定の配列が本発明の参照配列と例えば95%同一であるどうかを判断するためにBestfitまたは他の任意の配列アラインメントプログラムを使用する場合、当然ながら、同一性の割合(%)が参照ヌクレオチド配列の全長にわたって計算され、かつ参照配列中のヌクレオチド総数の5%以内の相同性ギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
ベクター、宿主細胞およびタンパク質生産
本発明は、本発明の単離DNA分子を含むベクター、該組換えベクターで遺伝子組換えされた宿主細胞、および組換え技術によるポリペプチドまたはそのフラグメントの生産に関する。ベクターは、例えばファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスのベクターであってよい。レトロウイルスベクターは複製能を有していてもよいし、複製不能であってもよい。後者の場合、一般にウイルスの増殖は補完性を有する宿主細胞においてのみ生じることになる。
ポリヌクレオチドは、宿主内での増殖のための選択可能なマーカーを含むベクターに連結されてもよい。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿のような沈殿物として、または荷電脂質との複合体として導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を使用してin vitroでパッケージングさせてから宿主細胞に形質導入することができる。
DNA挿入断片は、適切なプロモータ、いくつか名前を挙げればλファージPLプロモータ、大腸菌のlac、trp、phoAおよびtacプロモータ、SV40の初期および後期プロモータ、ならびにレトロウイルスLTRのプロモータなどに作動可能なように連結されなければならない。他の適切なプロモータは当業者には周知であろう。発現構築物は、転写の開始、終結のための部位、および転写される領域には翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含むことになる。構築物によって発現される転写物のコード部分は、翻訳されるポリペプチドの最初に翻訳開始コドン、および翻訳されるポリペプチドの最後に適切に配置された終止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含むことが好ましい。
既述のように、発現ベクターは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むことが好ましい。そのようなマーカーには、真核細胞培養物についてはジヒドロ葉還元酵素、G418またはネオマイシン耐性、大腸菌および他の細菌中で培養するためにはテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性の遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例としては、限定するものではないが、細菌細胞、例えば大腸菌、ストレプトマイセス属細菌およびサルモネラ・ティフィムリウムの細胞;真菌細胞、例えば酵母の細胞;昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2細胞およびスポドプテラSf9細胞;動物細胞、例えばCHO細胞、COS細胞および293細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。上記宿主細胞のための適切な培地および培養条件は、当分野において周知である。
細菌で使用するための入手可能なベクターには、キアゲン社(既述)から入手可能なpQE70、pQE60およびpQE−9;ストラタジーン・クローニング・システムズ社(Stratagene Cloning Systems,Inc.)から入手可能なpBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;ならびにファルマシアバイオテク社(Pharmacia Biotech,Inc.)から入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5が挙げられる。適切な真核生物のベクターには、ストラタジーンから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG;ならびにファルマシアから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLが挙げられる。他の適切なベクターは、当業者にはすぐに明らかとなるであろう。
宿主細胞内への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション法、DEAEデキストランを用いたトランスフェクション法、カチオン性脂質を用いたトランスフェクション法、エレクトロポレーション、形質導入、感染またはその他の方法によって行うことができる。そのような方法は、多くの標準的実験手引き書、例えばDavis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)に記載されている。
ポリペプチドは融合タンパク質のような修飾形態で発現されてもよいし、分泌シグナルだけでなく追加の異種由来の機能的領域を含むこともできる。例えば、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域をポリペプチドのN末端に付加して、宿主細胞中、精製中、またはその後の操作時および保管時における安定性および残存率を改善することができる。同様に、ペプチド部分をポリペプチドに付加して精製を容易にすることもできる。そのような領域はポリペプチドの最終的な調製の前に除去することができる。なかでも、安定性を改善し、かつ精製を容易にするために、分泌または排出を生じさせるペプチド部分をポリペプチドに付加することは、当分野でよく知られた日常的な技法である。代表的な融合タンパク質は、タンパク質を安定化および精製するのに有用な免疫グロブリン由来の異種領域を含んでなる。
本発明のタンパク質は、良く知られた方法、例えば硫酸アンモニウム沈澱またはエタノール沈澱、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィおよびレクチンクロマトグラフィーにより、組換え細胞培養物から回収および精製することができる。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)を精製に使用する。本発明のポリペプチドとしては:直接単離されるにせよ培養されるにせよ、天然の供給源、例えば体液、組織および細胞から精製された生成物;化学的合成手法の生成物;ならびに、原核生物または真核生物の宿主、例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞から組換え技術によって生産された生成物が挙げられる。組換え生産手法に使用される宿主によって、本発明のポリペプチドはグリコシル化される場合もあればグリコシル化されない場合もある。さらに、本発明のポリペプチドは、場合によっては宿主を介したプロセスの結果として、1番目に修飾メチオニン残基を含むこともある。このように、一般に翻訳開始コドンによってコードされるN末端メチオニンが、すべての真核細胞において翻訳後にいかなるタンパク質からも高効率で除去されることは当分野において良く知られている。ほとんどの原核生物においてもほとんどのタンパク質上のN末端メチオニンが効率的に除去されるが、一部のタンパク質については、N末端メチオニンが共有結合しているアミノ酸の性質に依存して、この原核生物の除去プロセスが無効である。
ポリペプチドおよびフラグメント
本発明は、アイソフォーム3.1核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド、または上記ポリペプチドの一部を含んでなるペプチドもしくはポリペプチドをさらに提供する。最も簡便なレベルでは、アミノ酸配列は市販のペプチド合成機を使用して合成することができる。これは、小さなペプチドおよび大きなポリペプチドのフラグメントを生産するのに特に有用である。そのようなフラグメントは、例えば天然のポリペプチドに対する抗体を生成する際に有用である。
バリアントポリペプチドおよび突然変異ポリペプチド
本発明のポリペプチドの特性を改善または変更するために、タンパク質工学を使用することができる。当業者に周知の組換えDNA技術を使用して、単一または複数のアミノ酸の置換、欠失、付加を含む新規な突然変異タンパク質すなわち「ミューテイン」または融合タンパク質を作出することができる。そのような修飾ポリペプチドは、例えば、増強された活性を示すこともあれば増大した安定性を示すこともある。さらに、該ポリペプチドが、少なくとも特定の精製条件および保存条件において、対応する天然ポリペプチドよりも高い収率で精製され、より良好な溶解度を示す場合もある。
さらに、当業者には当然のことであるが、タンパク質の構造または機能に対して重要な影響を及ぼさずにポリペプチドのアミノ酸配列をある程度変えることができる。そのような配列の違いについて考える場合、タンパク質上には活性を決定する重要な領域があることを覚えておかなければならない。
したがって、本発明は、実質的な生物学的活性を示すか、または以下に議論する部分のようなタンパク質の領域を含むポリペプチドのバリアントをさらに含む。そのような突然変異体は、活性に対する影響がほとんどないように当分野で既知の原則に従って選択された欠失、挿入、逆位、反復、およびタイプ置換を含む。例えば、表現型上サイレントなアミノ酸置換を行う方法に関する手引きは、Bowie,J.U.et al.,1990 Science 247:1306−1310に提供されており、同文献において著者らは、アミノ酸配列の変更に対する寛容性を研究するためには2つの主な手法があることを示している。第1の手法は、突然変異が受容されるかまたは自然淘汰によって拒絶される、進化の過程に依存するものである。第2の手法は、クローニングした遺伝子の特定の部位にアミノ酸の変更を導入するための遺伝子工学と、機能性を維持している配列を同定するための選別または評価とを用いる。
先の文献の著者らが述べているように、これらの研究からタンパク質がアミノ酸置換に驚くほど寛容であることが明らかとなった。著者らはさらに、タンパク質のある特定の部位においてどのアミノ酸変更が許容されそうであるかを示している。例えば、最も内側に埋め込まれるアミノ酸残基には無極性の側鎖が必要であるが、表面にある側鎖の特徴は一般にほとんど保存的ではない。他のそのような表現型上サイレントな置換は、上述のBowie,J.U.の文献および同文献で引用された参照文献に記載されている。保存的置換として一般的に知られているのは、脂肪族アミノ酸であるAla、Val、LeuおよびIleの中で、あるものを別のものに置換すること;ヒドロキシル残基であるSerおよびThrの相互交換、酸性残基であるAspおよびGluの交換、アミド残基であるAsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基であるLysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基であるPhe、Tyrの中での置換である。
したがって、本発明のポリペプチドのフラグメント、誘導体または類縁体は、(i)1以上のアミノ酸残基が、保存的または非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的なアミノ酸残基)で置換されたものであって、かつそのような置換アミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされていてもコードされていなくてもよく、あるいは(ii)1以上のアミノ酸残基が置換基を含むものであるか、あるいは(iii)成熟ポリペプチドが、該ポリペプチドの半減期を延長する化合物(例えばポリエチレングリコール)のような別の化合物と融合しているものであるか、あるいは(iv)付加アミノ酸、例えばIgG Fc融合領域ペプチド、またはリーダー配列もしくは分泌配列、または上記形態のポリペプチドもしくは前駆タンパク質配列の精製のために使用される配列が、上記形態のポリペプチドに融合されたもの、であってよい。そのようなフラグメント、誘導体または類縁体は、本明細書中の教示から当業者の能力範囲内にあると考えられる。
したがって、本発明のポリペプチドは、自然突然変異または人為操作のいずれかに由来する1以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を含むことができる。既述のように、変更は、タンパク質のフォールディングや活性に著しい影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換のような、軽微な性質のものであることが好ましい(表1を参照)。
Figure 2010524434
本発明のタンパク質中の、機能上不可欠なアミノ酸は、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発のような当分野で既知の方法によって同定することができる(Cunningham and Wells 1989 Science 244:1081−1085)。後者の手法は分子内の残基ごとに単一アラニン突然変異を導入する。次いで、得られた突然変異体分子を、結合特性またはin vitroもしくはin vivoでのチャネル活性のような生物学的活性について試験する。
本発明のポリペプチドは単離形態で提供されることが好ましい。組換え生産型の本発明のポリペプチドは、Smith and Johnson,1988 Gene 67:31−40に記載されている一工程方法によって実質的に精製することができる。本発明のポリペプチドは、タンパク質精製の分野において良く知られている方法で、該タンパク質に対して生成された本発明の抗体を使用して、天然供給源または組換え体供給源から精製することもできる。
本発明のさらなるポリペプチドは、上述のポリペプチドに対して少なくとも90%の類似性、より好ましくは少なくとも95%の類似性、さらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%の類似性を有するポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドは、アイソフォーム3.1核酸分子によってコードされるポリペプチドと少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%または95%同一、さらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一であるポリペプチドも含み、またそのようなポリペプチドの一部であって少なくとも30アミノ酸、より好ましくは少なくとも50アミノ酸を有するものも含む。
2つのポリペプチドに関する「類似性(%)」とは、その2つのポリペプチドのアミノ酸配列を、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)および類似性測定用の初期設定を使用して比較することにより得られた類似性スコアを意味する。Bestfitは、2つの配列の間の最も類似性の高いセグメントを見つけるために、Smith and Waterman 1981 Advances in Applied Mathematics 2:482−489の局地的相同性アルゴリズムを使用する。
本明細書中に記載のポリペプチドの参照アミノ酸配列と、少なくとも例えば95%「同一の」アミノ酸配列を有しているポリペプチドとは、該ポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド配列が本発明のポリペプチドの参照アミノ酸の各100アミノ酸当たり最大5個のアミノ酸変更を含みうるという点を除いて、参照配列と同一であることを意味する。言いかえれば、参照アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列中の5%以内のアミノ酸残基を欠失させるかまたは別のアミノ酸で置換してもよいし、参照配列中の全アミノ酸残基の5%以内にあたる数のアミノ酸を参照配列に挿入してもよい。このような参照配列の変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端のまたはカルボキシ末端部位に生じてもよいし、これら末端部位の間の任意の場所に生じてもよく、参照配列の残基の間に個々に、または参照配列内の1つ以上の連続した基として散在してもよい。
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、例えばアイソフォーム3.1核酸分子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)のような既知のコンピュータプログラムを使用して通常どおりに判定することができる。ある特定の配列が本発明の参照配列と例えば95%同一であるどうかを判断するためにBestfitまたは他の任意の配列アラインメントプログラムを使用する場合、当然ながら、同一性の割合(%)が参照アミノ酸配列の全長にわたって計算され、かつ参照配列中のアミノ酸残基総数の5%以内の相同性ギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
抗体
本明細書で使用されるような「抗体」は、完全な免疫グロブリン分子、ならびにそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)、およびFvであって、アイソフォーム3.1のエピトープに結合することができるものを含む。典型的には、少なくとも6個、8個、10個、または12個の連続したアミノ酸が、エピトープの形成に必要である。しかしながら、連続していないアミノ酸を要するエピトープはそれ以上、例えば少なくとも15個、25個、または50個のアミノ酸を必要とする場合がある。アイソフォーム3.1のエピトープに特異的に結合する抗体を治療に使用することもできるし、免疫化学的アッセイ、例えばウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学的アッセイ、免疫沈降、または当分野で既知の他の免疫化学的アッセイにおいて使用することもできる。様々なイムノアッセイを使用して所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合的結合アッセイまたは免疫放射定量アッセイのための多数のプロトコールが当分野において良く知られている。そのようなイムノアッセイは一般に、免疫原と、アイソフォーム3.1免疫原に特異的に結合する抗体との間の複合体形成の測定を伴う。
典型的には、アイソフォーム3.1に特異的に結合する抗体は、免疫化学的アッセイにおいて使用すると他のタンパク質の場合に提供される検出シグナルより少なくとも5倍、10倍または20倍高い検出シグナルを呈する。好ましくは、アイソフォーム3.1に特異的に結合する抗体は、免疫化学的アッセイ中の他のタンパク質、特にKCNH2は検出せずに、溶液からアイソフォーム3.1を免疫沈殿させることができる。
アイソフォーム3.1を使用してマウス、ラットまたはウサギのような哺乳動物を免疫し、ポリクローナル抗体を生産することもできる。必要であれば、アイソフォーム3.1を、ウシ血清アルブミン、チログロブリン、およびキーホールリンペットヘモシニアンのような担体タンパク質にコンジュゲート化することができる。宿主生物種に応じて、免疫学的応答を増大させるために様々なアジュバントを使用することができる。そのようなアジュバントには、限定するものではないが、フロイントアジュバント、鉱物ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、および界面活性物質(例えばリソレシチン、pluronic(R)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアンおよびジニトロフェノール)が挙げられる。ヒトで使用されるアジュバントの中では、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)は特に有用である。
アイソフォーム3.1に特異的に結合するモノクローナル抗体は、連続継代性細胞系による培養下での抗体分子の産生をもたらす任意の技法を使用して調製することができる。これらの技法には、限定するものではないが、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、およびEBV−ハイブリドーマ法が挙げられる。
さらに、「キメラ抗体」を生産するために開発された技法、すなわちマウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に接合して適切な抗原特異性および生物学的活性を備えた分子を得る技法を使用することもできる。モノクローナル抗体およびその他の抗体を「ヒト化」して、該抗体が治療に使用された時に患者が該抗体に対する免疫応答を起こすのを防止することもできる。そのような抗体は、治療に直接使用できるように配列がヒト抗体に非常に類似している場合もあれば、少数の重要な残基の変更が必要な場合もある。げっ歯動物の抗体およびヒトの配列との間の配列の違いは、ヒト配列中の残基と異なる残基を、個々の残基の部位特異的変異誘発によって、または相補性決定領域全体を移植することによって置換することにより、最小限にすることができる。アイソフォーム3.1に特異的に結合する抗体は、部分的に、または完全にヒト化された抗原結合部位を含むことができる。
別例として、一本鎖抗体の生産のために説明された技法を、当分野で既知の方法を用いて、アイソフォーム3.1に特異的に結合する一本鎖抗体を生産するように適合させることもできる。関連する特異性を備えているが別個のイディオタイプ組成を有する抗体を、ランダムなコンビナトリアル免疫グロビン(immunoglobin)ライブラリからチェーン・シャフリング(chain shuffling)によって生成させることもできる。一本鎖抗体は、ハイブリドーマcDNAを鋳型として用いて、PCRのようなDNA増幅方法を使用して構築することもできる。一本鎖抗体は単一特異性でも二重特異性でもよいし、二価でも四価でもよい。四価で二重特異性の一本鎖抗体の構築について教示されている。一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を、手作業または自動のヌクレオチド合成を使用して構築し、標準的なDNA組換え方法を用いてクローニングして発現構築物とし、コード配列を発現させるために細胞に導入することができる。別例として、例えば繊維状ファージ技術を使用して一本鎖抗体を直接生産することもできる。
さらに、アイソフォーム3.1に特異的に結合する抗体を、リンパ球集団におけるin vivo産生を誘発することにより、または免疫グロブリンライブラリもしくは特異性の高い結合試薬のパネルをスクリーニングすることにより、生産することもできる。他のタイプの抗体を構築して本発明の方法で治療的に使用することもできる。免疫グロブリンに由来し、多価で多重特異性を有する結合タンパク質、例えば国際公開公報第94/13804号パンフレットに記載されている「ダイアボディ(diabody)」を調製することもできる。
本発明の抗体は当分野において良く知られた方法によって精製することができる。例えば、抗体を、アイソフォーム3.1が結合しているカラムを通すことによりアフィニティ精製することができる。その後、結合した抗体を、高塩濃度のバッファーを使用してカラムから溶出させることが可能である。
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは特定のDNAまたはRNA配列に相補的なヌクレオチド配列である。細胞内に導入されると、この相補的ヌクレオチドは、細胞によって産生された天然の配列と結合して複合体を形成し、転写または翻訳のいずれかを阻止する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは長さが少なくとも11ヌクレオチドであることが好ましいが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド、またはそれ以上の長さであってもよい。さらに長い配列を使用することもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子をDNA構築物中に含めて提供し、上述のようにして細胞内に導入し、該細胞におけるアイソフォーム3.1遺伝子産物のレベルを減少させることができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または両方の組み合わせであってよい。オリゴヌクレオチドは、手作業または自動合成機によって、1つのヌクレオチドの5’末端を別のヌクレオチドの3’末端にホスホジエステル結合ではないヌクレオチド間結合で共有結合させることにより合成可能であり、前記結合は例えばアルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロアミデート、リン酸エステル、カルバマート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、カルボナート、およびリン酸トリエステルである。
アイソフォーム3.1遺伝子発現の修飾は、アイソフォーム3.1遺伝子の制御領域、5’領域、または調節領域と二重鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することにより達成することができる。転写開始部位、例えば開始部位の−10位〜+10位の間に由来するオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、「三重らせん」の塩基対形成方法を使用して抑制を達成することもできる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子またはシャペロンの結合のために二重らせんが十分な開放状態となる能力の抑制をもたらすので、有用である。三重らせんDNAを使用する治療の進歩については、文献に記載されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写物がリボソームに結合するのを防止することによりmRNAの翻訳を阻止するように設計されてもよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドとアイソフォーム3.1ポリヌクレオチドの相補的配列との間の複合体形成の成功には、正確な相補性は必要ではない。例えば、アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドに正確に相補的な、2、3、4、5個またはそれ以上の一続きの連続ヌクレオチドが、隣接するアイソフォーム3.1ヌクレオチドに相補的でない一続きの連続ヌクレオチドによってそれぞれ隔てられているものを含んでなるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アイソフォーム3.1mRNAを標的とする十分な特異性を提供することができる。好ましくは、一続きの相補的な連続ヌクレオチドはそれぞれ、少なくとも4、5、6、7、8ヌクレオチドまたはそれ以上の長さである。相補的でない介在配列は、好ましくは1、2、3、または4ヌクレオチドの長さである。当業者であれば、ある特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドとある特定のアイソフォーム3.1ポリヌクレオチド配列との間で許容されるミスマッチの程度を決定するために、アンチセンス−センス対について算出される融点を容易に使用することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドにハイブリダイズする能力に影響を与えることなく修飾することができる。これらの修飾はアンチセンス分子の内部にあってもよいし、一方の端部または両端部にあってもよい。例えば、ヌクレオシド間のリン酸結合を、アミノ基と末端のリボースとの間にコレステリル部分または様々な数の炭素系残基を備えたジアミン部分を付加することにより、修飾することができる。修飾塩基および/または修飾糖、例えばリボースの代わりにアラビノース、または3’水酸基もしくは5’リン酸基が置換されている3’、5’置換オリゴヌクレオチドを、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドに使用することもできる。これらの修飾オリゴヌクレオチドは、当分野において良く知られた方法によって調製することができる。
リボザイム
リボザイムは触媒活性を備えたRNA分子である。リボザイムは、当分野で知られているように、RNA配列を切断して遺伝子機能を阻害するために使用することができる。リボザイム作用の機構は、相補的な標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的なハイブリダイゼーションと、その後のエンドヌクレアーゼによる切断を要する。例としては、特定のヌクレオチド配列のエンドヌクレアーゼによる切断を特異的かつ効率的に触媒することができる、人工的に設計されたハンマーヘッドモチーフ型リボザイム分子が挙げられる。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドのコード配列を使用して、アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドから転写されたmRNAに特異的に結合するリボザイムを生成させることができる。他のRNA分子を配列特異性の高い方法でトランスに切断することができるリボザイムを設計および構築する方法が開発されており、当分野で報告されている。例えば、リボザイム内に個別の「ハイブリダイゼーション」領域を設計することにより、該リボザイムの切断活性の標的を特定のRNAに定めることができる。該ハイブリダイゼーション領域は、標的RNAに相補的な配列を含み、従って標的RNAと特異的にハイブリダイズする。
アイソフォーム3.1RNA標的の内部の特定のリボザイム切断部位は、次の配列すなわちGUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位について標的分子を精査することにより同定することができる。同定されたら、該切断部位を含んでいる標的RNAの領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列について、標的を機能不可能としうる二次構造的特徴に関して評価することができる。アイソフォーム3.1RNA標的候補の適合性は、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションへの参入可能性を試験することにより評価することもできる。配列番号3で示されるヌクレオチド配列およびその相補物は、適切なハイブリダイゼーション領域の配列の供給源を提供する。より長い相補配列を使用して、標的に対するハイブリダイゼーション配列の親和性を高めることもできる。標的RNAに相補的な領域を介してハイブリダイズするとすぐにリボザイムの触媒領域が標的を切断することができるように、リボザイムのハイブリダイゼーション領域および切断領域を一体的に関連づけることもできる。
リボザイムをDNA構築物の一部として細胞内に導入することもできる。機械的方法、例えばマイクロインジェクション法、リポソームを介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、またはリン酸カルシウム沈澱を使用して、アイソフォーム3.1の発現を減少させたい細胞の中に、リボザイムを含んだDNA構築物を導入することができる。別例として、細胞がDNA構築物を安定して保持することが望ましい場合は、当分野で知られているように、構築物をプラスミド上に供給して別個の要素として維持してもよいし、細胞のゲノム中に組み込んでもよい。リボザイムをコードするDNA構築物は、細胞内におけるリボザイムの転写を制御するために、転写調節要素、例えばプロモータ要素、エンハンサー要素またはUAS要素、および転写終結シグナルを含むことができる。リボザイムを、リボザイムおよび標的遺伝子の両方が細胞内で誘導された場合に限りmRNAの破壊が生じるような、追加の調節レベルを提供するように、人工的に設計することもできる。
スクリーニング/スクリーニングアッセイ
調節因子
本明細書において使用される調節因子とは、in vitroまたはin vivoでアイソフォーム3.1の機能的活性に影響を及ぼす化合物を指す。調節因子はアイソフォーム3.1ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストであってよく、発現、翻訳後修飾、チャネルタンパク質との直接的相互作用、または他の手段によってアイソフォーム3.1活性に対して影響を及ぼす化合物であってよい。アイソフォーム3.1のアゴニストは、アイソフォーム3.1に結合した時、アイソフォーム3.1の機能的活性を増大または延長させる分子である。アイソフォーム3.1のアゴニストには、アイソフォーム3.1を活性化する、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子または他の任意の分子が挙げられる。アイソフォーム3.1のアンタゴニストは、アイソフォーム3.1に結合した時、アイソフォーム3.1の機能的活性の量または期間を減少させる分子である。アンタゴニストには、アイソフォーム3.1の活性を減少させる、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、小分子または他の任意の分子が挙げられる。
用語「調整する」とは、本明細書中にあるとおり、アイソフォーム3.1ポリペプチドの活性の変化を指す。例えば、調整により、アイソフォーム3.1の機能的活性、結合特性、またはその他の生物学的、機能的、もしくは免疫学的特性の増大または減少を引き起こすことができる。
本明細書中で使用されるように、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、タンパク質またはペプチドと、アゴニスト、抗体またはアンタゴニストとの間の相互作用を指す。この相互作用は、結合する分子によって認識されるタンパク質の特定の構造(すなわち抗原決定基またはエピトープ)の存在によって変わる。例えば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、遊離の標識されたAと抗体とを含む反応物中における、エピトープAを含んでいるポリペプチドの存在、または遊離の標識されていないAの存在は、抗体に結合する標識されたAの量を減らすことになる。
本発明は、神経系疾患(例えば統合失調症)の治療に使用することができる化合物を同定する方法(本明細書中では「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)を提供する。該方法は、アイソフォーム3.1に結合するか、アイソフォーム3.1の生物学的な機能的活性またはその発現に促進作用または阻害作用を有するかのうち少なくともいずれかである、候補対象または試験対象の化合物または作用薬(例えばペプチド、ペプチドミメティクス、小分子または他の分子)の同定、ならびに、次いでこれらの化合物のうちいずれがin vivoアッセイにおいて神経系疾患(例えば統合失調症)に関する症状または疾病に効果を有するかの判定を伴う。
アイソフォーム3.1に結合するか、または、アイソフォーム3.1の機能的活性もしくは発現に促進作用または阻害作用を有するかのうち少なくともいずれかである、候補対象または試験対象の化合物または作用薬は、細胞表面にアイソフォーム3.1を発現する細胞を使用するアッセイ(細胞系アッセイ)、または単離されたアイソフォーム3.1を用いるアッセイ(無細胞アッセイ)のいずれかにおいて同定される。様々なアッセイにおいて、アイソフォーム3.1の多種多様なバリアント(例えば完全長アイソフォーム3.1、アイソフォーム3.1の生物学的活性を有するフラグメント、またはアイソフォーム3.1の全体もしくは一部を含む融合タンパク質)を使用することができる。さらに、アイソフォーム3.1は、任意の適切な哺乳類生物種に由来するものであってよい(例えばヒトまたはサルのアイソフォーム3.1)。アッセイは、試験化合物または既知のアイソフォーム3.1リガンドのアイソフォーム3.1への結合を直接または間接的に計測することを伴う結合アッセイであってよい。アッセイは、アイソフォーム3.1の活性を直接または間接的に計測することを伴う活性アッセイであってもよい。アッセイは、アイソフォーム3.1mRNAまたはアイソフォーム3.1タンパク質の発現を直接または間接的に計測することを伴う発現アッセイであってもよい。様々なスクリーニングアッセイを、神経系疾患(例えば統合失調症)の症状に対する試験化合物の影響を計測することを伴うin vivoアッセイと組み合わせてもよい。
一実施形態では、本発明は、膜結合型(細胞表面に発現される形態)のアイソフォーム3.1に結合するか、または該膜結合型アイソフォーム3.1の機能的活性を調整する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。そのようなアッセイは、完全長アイソフォーム3.1、アイソフォーム3.1の生物学的活性を有するフラグメント、またはアイソフォーム3.1の全体もしくは一部を含む融合タンパク質を使用することができる。より詳細に後述するように、試験化合物は任意の適切な手段によって、例えば従来の化合物ライブラリから得ることができる。試験化合物が膜結合型のアイソフォーム3.1に結合する能力の測定は、例えば、試験化合物を放射性同位元素または酵素標識と接続して、アイソフォーム3.1を発現する細胞への試験化合物の結合を、複合体中の標識化合物の検出によって計測可能なようにすることにより、行うことができる。例えば、125I、35S、14CまたはHで直接または間接的に試験化合物を標識して、放射性放出(radioemmission)の直接計数またはシンチレーション計数によって放射性同位体を検出することができる。あるいは、試験化合物を例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素標識して、適切な基質の生成物への変換を測定することによって酵素標識を検出することができる。
競合的結合方式では、アッセイは、アイソフォーム3.1を発現している細胞を、検出可能な標識を担持しかつアイソフォーム3.1と結合してアッセイ混合物を形成する既知の化合物と接触させることと、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させることと、試験化合物がアイソフォーム3.1を発現している細胞と相互作用する能力を測定することとを含み、試験化合物がアイソフォーム3.1を発現している細胞と相互作用する能力の測定は、試験化合物が既知の化合物よりも優先的にアイソフォーム3.1を発現している細胞に結合する能力を測定することを含む。
別の実施形態では、アッセイは、膜結合型のアイソフォーム3.1(例えば完全長アイソフォーム3.1、アイソフォーム3.1の生物学的活性を有するフラグメント、またはアイソフォーム3.1の全体もしくは一部を含む融合タンパク質)を細胞表面に発現している細胞を試験化合物と接触させることと、試験化合物が膜結合型アイソフォーム3.1の機能的活性を調整(例えば、促進または抑制)する能力を測定することとを含む細胞系アッセイである。試験化合物が膜結合型アイソフォーム3.1の機能的活性を調整する能力の決定は、アイソフォーム3.1の機能的活性を計測するのに適した任意の方法、例えば任意のイオンチャネルまたはその他の起電性の標的タンパク質の活性を計測するのに適した任意の方法(より詳細に後述)によって行うことができる。起電性の標的物の活性は、すべてが所与の標的タンパク質に適しているとは限らないものの、多くの方法で計測することができる。活性の尺度には、イオン濃度の変化、微小生理機能測定条件における変化の計測、電圧の変化の計測または電流の変化の計測がある。
本発明はさらに無細胞アッセイを含んでいる。そのようなアッセイは、ある形態のアイソフォーム3.1(例えば完全長アイソフォーム3.1、アイソフォーム3.1の生物学的活性を有するフラグメント、またはアイソフォーム3.1の全体もしくは一部を含む融合タンパク質)を試験化合物と接触させることと、試験化合物がアイソフォーム3.1に結合する能力を決定することとを含む。上述のように、アイソフォーム3.1への試験化合物の結合は、直接または間接的に測定することができる。一実施形態では、アッセイは、アイソフォーム3.1を、検出可能な標識を担持しかつアイソフォーム3.1と結合してアッセイ混合物を形成する既知の化合物と接触させることと、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させることと、試験化合物がアイソフォーム3.1と相互作用する能力を測定することとを含み、試験化合物がアイソフォーム3.1と相互作用する能力の測定は、試験化合物が既知の化合物よりも優先的にアイソフォーム3.1に結合する能力を測定することを含む。
本発明の無細胞アッセイは、膜結合型のアイソフォーム3.1またはその可溶性フラグメントのうちいずれかを使用するのに適している。膜結合型のポリペプチドを含んでなる無細胞アッセイの場合には、膜結合型のポリペプチドが溶液状態に維持されるように可溶化剤を利用することが望ましい場合がある。そのような可溶化剤の例としては、限定するものではないが、非イオン性界面活性剤、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、トリトン(R)X−100、トリトンX−114、Thesit(R)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホナート(CHAPSO)、またはN−ドデシル=N,N−ジメチル−3アンモニオ−1−プロパンスルホナートが挙げられる。
本発明の上記アッセイ方法の様々な実施形態では、複合体化したタンパク質を、複合体化していないタンパク質のうち一方または両方から分離し易くするため、ならびにアッセイの自動化に対応するために、アイソフォーム3.1(またはアイソフォーム3.1標的分子)を固定化することが望ましい場合がある。アイソフォーム3.1への試験化合物の結合、または候補化合物の存在下および不在下でのアイソフォーム3.1と標的分子との相互作用は、該反応物を入れるのに適した任意の容器において行うことができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心チューブが含まれる。一実施形態では、タンパク質のうち一方または両方をマトリクスに結合させることを可能にするドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−転移酵素(GST)融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・ケミカル(Sigma Chemical))に、またはグルタチオンで誘導体化したマイクロタイタープレートに吸着させることが可能であり、これを次に試験化合物と、または試験化合物および吸着していない標的タンパク質もしくはアイソフォーム3.1のいずれかと組み合わせ、混合物を複合体形成の助けになる条件(例えば塩およびpHに関して生理学的な条件)の下でインキュベートする。インキュベーションに続いて、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄して結合していない構成成分を全て除去し、複合体形成を、例えば上述のようにして直接または間接的に計測する。別例として、複合体をマトリクスから解離させて、標準的技法を使用してアイソフォーム3.1の結合または活性のレベルを測定することもできる。
マトリクス上にタンパク質を固定化するための他の技法も、本発明のスクリーニングアッセイに使用することができる。例えば、アイソフォーム3.1またはその標的分子のいずれかを、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定化することができる。ビオチン化された本発明のポリペプチドまたは標的分子を、当分野でよく知られた技法(例えばビオチン化キット、米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・ケミカルズ(Pierce Chemicals))を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングしたプレート(ピアス・ケミカル)のウェルに固定化することができる。別例として、アイソフォーム3.1または標的分子との反応性を有するが本発明のポリペプチドとその標的分子との結合を妨害しない抗体でプレートのウェルを誘導化し、結合していない標的分子または本発明のポリペプチドを、抗体結合によってウェルに捕捉することもできる。そのような複合体を検知する方法には、GSTで固定化される複合体について上述した方法のほかに、アイソフォーム3.1または標的分子との反応性を有する抗体を用いた複合体の免疫検出、ならびにアイソフォーム3.1または標的分子に結合した酵素活性の検出を利用する酵素結合アッセイが挙げられる。
スクリーニングアッセイはさらにアイソフォーム3.1の発現を観察することを伴う場合もある。例えば、アイソフォーム3.1の発現の調節因子は、細胞を候補化合物と接触させて、該細胞におけるアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現を測定する方法で同定することができる。候補化合物の存在下でのアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現レベルを、候補化合物の不在下でのアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現レベルと比較する。次いで、この比較に基づいて、候補化合物をアイソフォーム3.1の発現の調節因子として同定することができる。例えば、アイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAタンパク質の発現が、候補化合物の存在下において不在下よりも多い(統計的に有意に多い)場合、その候補化合物はアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現の促進剤として同定される。あるいは、アイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現が、候補化合物の存在下において不在下よりも少ない(統計的に有意に少ない)場合、その候補化合物はアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現の阻害剤として同定される。細胞におけるアイソフォーム3.1タンパク質またはmRNAの発現レベルは、下記に述べる方法によって測定することができる。
結合アッセイ
結合アッセイについては、試験化合物は、アイソフォーム3.1の調節チャネル部位またはチャネル細孔の近くに結合する可能性を有し、そのため前記調節部位について生理的モジュレータと競合するか、チャネル細孔を閉鎖するか、またはチャネル細孔を解放状態もしくは閉止状態に保持して正常な生物学的活性を妨害、増強、もしくは変調する、小分子であることが好ましい。そのような小分子の例には、限定するものではないが、小ペプチド分子またはペプチド様小分子、ならびに低分子化合物が挙げられる。本発明のポリペプチドに結合する潜在的なリガンドには、限定するものではないが、既知のアイソフォーム3.1イオンチャネルの天然リガンド、およびその類縁体または誘導体が挙げられる。
結合アッセイにおいて、試験化合物またはアイソフォーム3.1ポリペプチドのいずれかは、検出可能な標識、例えば蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、またはホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼもしくはルシフェラーゼのような酵素標識を含むことができる。その後、アイソフォーム3.1ポリペプチドに結合した試験化合物の検出を、例えば、放射性放出(radioemmission)の直接計数により、シンチレーション計数により、または適切な基質の検出可能な生成物への変換の測定により、行うことができる。別例として、アイソフォーム3.1ポリペプチドへの試験化合物の結合を、該反応物のいずれにも標識を施さずに測定することができる。例えば、試験化合物とアイソフォーム3.1ポリペプチドとの結合を検出するためにマイクロフィジオメータ(microphysiometer)を使用することができる。マイクロフィジオメータ(例えばCytosensor(登録商標))は、光アドレス型電位差測定センサ(LAPS)を使用して、細胞がその環境を酸性化する速度を計測する分析機器である。この酸性化速度の変化を、試験化合物とアイソフォームの3.1との間の相互作用の指標として使用することができる。
試験化合物がアイソフォーム3.1に結合する能力の測定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)のような技術を使用して行うこともできる。BIAは、いずれの反応物も標識せずに、リアルタイムで生体特異的な相互作用を研究するための技術である(例えばBIAcore(登録商標))。光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用することができる。
競合的結合方式では、アッセイは、アイソフォーム3.1と、検出可能な標識を担持し、検出可能な標識に接続され、かつアイソフォーム3.1と結合してアッセイ混合物を形成する既知化合物とを接触させること、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させること、ならびに試験化合物がアイソフォーム3.1と相互作用する能力を測定することを含み、試験化合物がアイソフォーム3.1と相互作用する能力の測定は、試験化合物が既知化合物と比較して優先的にアイソフォーム3.1に結合する能力を測定することからなる。
本発明のさらに別の態様では、アイソフォーム3.1様のポリペプチドをツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおける「釣り餌(bait)タンパク質」として使用し、アイソフォーム3.1と結合または相互作用してアイソフォーム3.1の活性を調整する他のタンパク質を同定することができる。
ツーハイブリッドシステムは、分離可能なDNA結合ドメインと活性化ドメインとで構成される、ほとんどの転写因子のモジュール式性質に基づいている。簡潔に述べれば、該アッセイは2つの異なるDNA構築物を利用する。例えば、一方の構築物では、アイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチドを、既知の転写因子(例えばGAL−4)のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合させることができる。他方の構築物では、未同定のタンパク質(「獲物(prey)」または「試料」)をコードするDNA塩基配列を、前記の既知の転写因子の活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合させることができる。「釣り餌」タンパク質および「獲物」タンパク質がin vivoで相互作用してタンパク質依存性の複合体を形成することができる場合、転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは非常に接近することになる。この接近により、該転写因子に応答性を有する転写調節部位に作動可能なように連結されたレポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写が可能となる。レポーター遺伝子の発現を検出し、機能的な転写因子を含む細胞コロニーを単離して、アイソフォーム3.1と相互作用するタンパク質をコードするDNA塩基配列を得るために使用することができる。
アイソフォーム3.1(もしくはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを固定化して、結合物を反応物のうち一方または両方の非結合物から分離するのを容易にするとともに、アッセイの自動化に対応することが望ましい場合もある。したがって、アイソフォーム3.1様ポリペプチド(もしくはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを固体担体に結合させることができる。適切な固体担体には、限定するものではないが、ガラスまたはプラスチックのスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、またはビーズのような粒子(例えば、限定するものではないがラテックス、ポリスチレンまたはガラスのビーズ)が挙げられる。当分野で既知の任意の方法を用いて、アイソフォーム3.1様ポリペプチド(もしくはポリヌクレオチド)または試験化合物を固体担体に取り付けることができるが、該方法は例えば共有結合および非共有結合、受動的吸着、またはポリペプチド(もしくはポリヌクレオチド)もしくは試験化合物と固体担体とにそれぞれ取り付けられた結合部分の対を使用することを含む。試験化合物は、個々の試験化合物の位置を追跡可能なように、アレイ状の固体担体に結合させることが好ましい。アイソフォーム3.1(またはアイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチド)への試験化合物の結合は、該反応物を入れるのに適した任意の容器の中で行うことができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心チューブが挙げられる。
一実施形態では、アイソフォーム3.1は、アイソフォーム3.1の固体担体との結合を可能にするドメインを含んでなる融合タンパク質である。例えば、グルタチオン−S−転移酵素融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(シグマ・ケミカル、米国ミズーリ州セントルイス所在)またはグルタチオンで誘導体化したマイクロタイタープレートに吸着させて、その後、試験化合物または試験化合物および吸着されていないアイソフォーム3.1と混合し;次いで該混合物を、複合体形成を促す条件の下で(例えば塩およびpH値に関して生理学的条件で)インキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄して、全ての結合していない構成要素を除去する。上述のようにして、反応物の結合を直接または間接的に測定することができる。別例として、複合体を固体担体から解離させてから結合を測定することもできる。
タンパク質またはポリヌクレオチドを固体支持上に固定化するその他の技法を本発明のスクリーニングアッセイに使用することもできる。例えば、アイソフォーム3.1(もしくはアイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用して固定化することができる。ビオチン化されたアイソフォーム3.1(もしくはビオチン化アイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチド)または試験化合物を、当分野でよく知られた技法(例えばビオチン化キット、米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・ケミカルズ(Pierce Chemicals))を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングしたプレート(ピアス・ケミカル)のウェルに固定化することができる。別例として、アイソフォーム3.1、ポリヌクレオチド、または試験化合物に特異的に結合するが、アイソフォーム3.1の活性部位のような所望の結合部位を妨害しない抗体で、プレートのウェルを誘導化することもできる。結合していない標的またはタンパク質を、抗体結合によってウェルに捕捉することもできる。
そのような複合体を検出する方法は、GSTで固定化される複合体について上述した方法の他に、アイソフォーム3.1ポリペプチドまたは試験化合物に特異的に結合する抗体を使用した複合体の免疫検出、アイソフォーム3.1ポリペプチドの活性の検出を利用する酵素結合アッセイ、および非還元条件下でのSDSゲル電気泳動法が挙げられる。
アイソフォーム3.1のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する試験化合物のスクリーニングを、完全な細胞で実施することもできる。アイソフォーム3.1のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む任意の細胞を、細胞アッセイ系に使用することができる。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドは細胞内に生来存在していてもよいし、上述のような技法を使用して導入されてもよい。アイソフォーム3.1またはアイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチドへの試験化合物の結合は、上述のようにして測定される。
機能アッセイ
試験化合物について、アイソフォーム3.1ポリペプチドのアイソフォーム3.1機能活性を増大または減少させる能力に関して試験することができる。例えば、下記の具体的実施例に記載の方法を用いてアイソフォーム3.1の活性を計測することができる。アイソフォーム3.1機能活性を、機能的なイオンチャネル活性を有する完全な細胞を試験化合物と接触させた後で、計測することができる。アイソフォーム3.1活性を少なくとも約10%、好ましくは約50%、より好ましくは約75、90、または100%減少させる試験化合物は、アイソフォーム3.1活性を減少させる可能性を有する作用薬として同定される。アイソフォーム3.1活性を少なくとも約10%、好ましくは約50%、より好ましくは約75、90、または100%増大させる試験化合物は、アイソフォーム3.1活性を増大させる可能性を有する作用薬として同定される。
他のスクリーニング手法は、チャネルの活性化によって引き起こされた細胞外pHの変化を計測する系において、アイソフォーム3.1を発現する細胞(例えばトランスフェクトされたCHO細胞)を使用することを含む。例えば、化合物を、本発明のチャネルポリペプチドを発現する細胞と接触させて、二次伝達物質の応答(例えばシグナル伝達またはpHの変化)を計測してその候補化合物がチャネルを活性化または抑制するかどうか判断することができる。その他のそのようなスクリーニング手法は、ツメガエル(Xenopus)の卵母細胞にアイソフォーム3.1をコードするRNAまたはDNAを導入してチャネルを一時的に発現させることを伴う。その後、この受容卵母細胞をチャネルのリガンドと接触させるか、または他の方法で活性化し、スクリーニングすべき化合物と接触させ、続いて観察される制御シグナルの変調を検出する。他のスクリーニング手法は、チャネルの活性化によって引き起こされた電圧変化を計測する系において、アイソフォーム3.1を発現する細胞(例えばトランスフェクトされたCHO細胞)を使用することを含む。例えば、化合物を、本発明のチャネルポリペプチドを発現する細胞と接触させて、電圧変化を計測してその候補化合物がチャネルを活性化または抑制するかどうか判断することができる。
別のスクリーニング手法は、チャネルがホスホリパーゼCまたはDに関連している細胞においてアイソフォーム3.1を発現させることを伴う。そのような細胞には、内皮細胞、平滑筋細胞、胚性腎臓細胞などがある。ホスホリパーゼ活性の変化からチャネルの活性化の程度を定量化することにより、上述のようにスクリーニングを行うことが可能である。
遺伝子発現
別の実施形態では、アイソフォーム3.1の遺伝子発現を増大または減少させる試験化合物が同定される。本明細書中で使用されるように、用語「ポリヌクレオチドの発現に関連する」とは、ノーザン分析またはリアルタイムPCRによる、アイソフォーム3.1をコードする核酸配列と同一であるかまたは該核酸配列に関連を有する核酸の存在の検出が、試料中のアイソフォーム3.1をコードする核酸の存在を示し、かつその結果としてアイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチド由来の転写物の発現に関連していることを示す。用語「マイクロアレイ」とは、本明細書中で使用されるように、基材、例えば紙、ナイロンメンブレンもしくは他の任意の種類のメンブレン、フィルタ、チップ、スライドガラス、または他の適切な固体支持体の上にアレイ化された一連の別個のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを指す。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドを試験化合物と接触させて、アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドのRNAまたはポリペプチド生成物の発現を測定する。試験化合物の存在下における適切なmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルを、試験化合物の不在下におけるmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルと比較する。その後、この比較に基づいて試験化合物を発現の調節因子として同定することができる。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下において不在下よりも多い場合、その試験化合物はmRNAまたはポリペプチドの発現の促進剤または強化剤として同定される。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下において不在下よりも少ない場合、その試験化合物はmRNAまたはポリペプチドの発現の阻害剤として同定される。
細胞におけるアイソフォーム3.1のmRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、mRNAまたはポリペプチドを検出するための、当分野において良く知られた方法によって測定することができる。定性的方法または定量的方法のいずれを使用することもできる。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドのポリペプチド生成物の存在は、例えば、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティング、および免疫組織化学的方法のような免疫化学的方法を含む当分野で既知の様々な技法を使用して測定することができる。別例として、標識アミノ酸のアイソフォーム3.1への取り込みを検出することにより、in vivoで、細胞培養物中で、またはin vitroの翻訳系において、ポリペプチドの合成を測定することもできる。
そのようなスクリーニングは、無細胞のアッセイ系または完全な細胞のいずれで行うこともできる。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドを発現する任意の細胞を、細胞系アッセイ系で使用することができる。アイソフォーム3.1ポリヌクレオチドは細胞中に生来存在していてもよいし、上述のような技法を使用して導入されてもよい。初代培養物または樹立細胞系のいずれを使用することも可能である。
試験化合物
本発明のスクリーニングアッセイで使用するのに適した試験化合物は、任意の適切な供給源、例えば従来の化合物ライブラリから得ることができる。試験化合物は、当分野で既知のコンビナトリアルライブラリ法における多数の手法、すなわち:生物学的ライブラリ;空間的に位置指定可能な並列の固相または液相ライブラリ;デコンボリューションを要する合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリ法;および親和性クロマトグラフィ選別を使用する合成ライブラリ法のうち任意の手法を用いて得ることができる。生物学的ライブラリ法はペプチドライブラリに限定されるが、他の4つの手法はペプチド、非ペプチドのオリゴマーまたは小分子の化合物ライブラリに適用可能である。分子ライブラリの合成方法の例は当分野に見出すことができる。化合物ライブラリは、溶液として提供されてもよいし、ビーズ、細菌、胞子、プラスミドまたはファージ上に提示されてもよい。
調節因子のモデリング
コンピュータモデリングおよび検索技術により、アイソフォーム3.1の発現または活性を調整することができる化合物の同定、または既に同定済みの化合物の改良が可能である。そのような化合物または組成物を同定済みであれば、活性部位または活性領域を同定する。そのような活性部位は、典型的には、リガンドのアイソフォーム3.1との相互作用ドメインのような、リガンド結合部位が考えられる。活性部位は、当分野で既知の方法を用いて、例えば、ペプチドのアミノ酸配列から、核酸のヌクレオチド配列から、または適切な化合物もしくは組成物の天然リガンドとの複合体に関する研究から、同定することができる。後者の場合、化学的方法またはX線結晶学的方法を用いて、該因子上のどこに複合体化したリガンドが見られるかを知ることにより、活性部位を見出すことができる。
次に、活性部位の三次元の幾何学的構造を決定する。これは、完全な分子構造を決定することが可能な、X線結晶解析を含む既知の方法によって行うことができる。他方、特定の分子内距離を測定するために固相または液相のNMRを使用することができる。構造決定のための他の任意の実験法も、部分的または完全な幾何学的構造を得るために使用することができる。幾何学的構造は、天然または人工の複合体化したリガンドとともに計測することが可能であり、このことにより測定される活性部位の構造の正確さが増大する可能性がある。
不完全な、または正確さが不十分な構造が測定された場合、コンピュータを用いる多数のモデリング方法を使用して、構造を完成させるかまたはその正確さを改善することができる。任意の広く認められたモデリング方法、例えばタンパク質または核酸のような特定の生体高分子に特化したパラメータ化モデル、分子運動の計算に基づいた分子動力学モデル、熱の集合に基づいた統計力学モデル、またはモデルの組み合わせを使用することもできる。
ほとんどのタイプのモデルについては、構成する原子および基の間の力を表す標準的な分子力場が必要であり、物理化学における既知の力場から選択することができる。不完全な、またはあまり正確でない実験上の構造は、これらのモデリング方法によって計算される完全かつより正確な構造に対する制約としての役割を果たすことができる。
最終的に、実験、モデリング、または組み合わせのいずれかによって活性部位の構造を決定したら、化合物をその分子構造についての情報と共に含んでいるデータベースを検索することにより、候補となる調整化合物を同定することができる。そのような検索により、測定した活性部位構造と合致し、かつ活性部位を規定する基と相互作用する構造を有する化合物を捜し出す。そのような検索は手作業でもよいが、コンピュータを利用することが好ましい。この検索から見出された化合物は、アイソフォーム3.1を調整する可能性を有する化合物である。
別例として、これらの方法を使用して、調整作用を有する既知の化合物またはリガンドから改善された調整作用を有する化合物を同定することもできる。既知化合物の組成を修飾し、修飾の構造上の影響を、新しい組成に適用した上述の実験的方法およびコンピュータモデリング方法を使用して、測定することができる。その後、変更した構造を該化合物の活性部位の構造と比較して、適合度または相互作用の改善が得られるかどうかを判断する。このように、側鎖基を変えることなどによって組成を体系的に変化させたものを迅速に評価して、特異性または活性が改善された調整作用を有する化合物またはリガンドの修飾物を得ることができる。
適用
本発明は、神経系疾患(例えば統合失調症)の予防方法および治療方法の両方を提供する。
本発明の調節方法は、細胞を、1以上のアイソフォーム3.1活性を調整する作用薬と接触させることを伴う。活性を調整する作用薬は、本明細書中に記載のような作用薬、例えば核酸もしくはタンパク質、該ポリペプチドの天然に存在する同種リガンド、ペプチド、ペプチドミメティック、または任意の小分子であってよい。一実施形態では、作用薬は、アイソフォーム3.1の1以上の生物学的活性を促進する。別の実施形態では、作用薬は、アイソフォーム3.1の1以上の生物学的活性を抑制する。そのため、本発明は、アイソフォーム3.1またはアイソフォーム3.1シグナル経路内のタンパク質の望ましくない発現または活性を特徴とする疾病または障害に罹患した個体を治療する方法を提供する。一実施形態では、該方法は、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイによって同定されたかもしくは同定可能な任意の作用薬のような作用薬、または、アイソフォーム3.1もしくはアイソフォーム3.1シグナル経路内の任意のタンパク質の発現もしくは活性をアップレギュレートもしくはダウンレギュレートすることができる作用薬の組み合わせを、投与することを伴う。別の実施形態では、該方法は、アイソフォーム3.1もしくはアイソフォーム3.1シグナル経路内のタンパク質の、発現もしくは活性の上昇または望ましくない高発現もしくは高活性、あるいは発現もしくは活性の低下または望ましくない低発現もしくは低活性を補う療法として、アイソフォーム3.1の調節因子を投与することを伴う。
アイソフォーム3.1の活性または発現の促進は、活性または発現が異常に低く、かつ活性の上昇が有益な効果を有すると思われる状況において望ましい。反対に、アイソフォーム3.1の活性または発現の抑制は、アイソフォーム3.1の活性または発現が異常に高く、かつアイソフォーム3.1の活性を低下させることが有益な効果を有すると思われる状況において望ましい。
医薬組成物
本発明はさらに、上記スクリーニングアッセイによって同定される新規な作用薬および本明細書に記載の治療のための該作用薬の使用に関する。
本発明の活性作用薬(本明細書中では「活性化合物」とも呼ばれる)は、投与に適した医薬組成物に組み入れることができる。そのような組成物は典型的には活性作用薬と薬学的に許容可能な担体とを含んでなる。本明細書中で使用されるように、用語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬としての投与が可能である、任意かつ全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図されている。薬学的活性を有する物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当分野において良く知られている。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と混合不可能でない限りは、組成物におけるその使用が企図される。補足的な活性化合物も組成物中に組み入れることができる。
本発明は、アイソフォーム3.1の発現または活性の調節因子(またはアイソフォーム3.1シグナル経路内のタンパク質の活性もしくは発現の調節因子のうち少なくともいずれか)を含んでなる医薬組成物、ならびに、1以上のそのような調節因子および薬学的に許容可能な担体を組み合わせることによりそのような組成物を調製する方法を含む。本発明にはさらに、本発明のスクリーニングアッセイを使用して同定された調節因子を使用説明書とともにパッケージ化して含む医薬組成物も含まれる。該説明書は、アイソフォーム3.1活性のアンタゴニストである調節因子、またはアイソフォーム3.1発現を低下させる調節因子については、神経系疾患(例えば統合失調症)の治療のための該医薬組成物の使用を指示することになろう。アイソフォーム3.1活性のアゴニストであるかまたはアイソフォーム3.1発現を上昇させる調節因子については、説明書は、他の神経系疾患の治療のための該医薬組成物の使用を指示することになろう。
アイソフォーム3.1のアンタゴニストは当分野で一般に知られた方法を用いて生成させることができる。特に、精製されたアイソフォーム3.1を使用して、抗体の生産、またはアイソフォーム3.1に特異的に結合する医薬品を同定するための医薬品ライブラリのスクリーニングを行うことができる。アイソフォーム3.1に対する抗体を、当分野において良く知られた方法を用いて生成させることもできる。そのような抗体には、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリによって生産されるフラグメントが挙げられる。
本発明の別の実施形態では、アイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチド、またはその任意のフラグメントもしくは相補体を、治療目的に使用することができる。1つの態様では、アイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチドの相補体を、mRNAの転写を阻止することが望ましいと思われる状況において使用することができる。特に、アイソフォーム3.1をコードするポリヌクレオチドに相補的な配列で細胞を形質転換することができる。したがって、相補的な分子またはフラグメントは、アイソフォーム3.1活性を調整するか、または遺伝子機能の調節を行うために使用することができる。そのような技術は現在では当分野において良く知られており、センスオリゴヌクレオチドもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはより大きなフラグメントを、アイソフォーム3.1をコードする配列のコード領域または制御領域に沿った様々な位置から設計することができる。
レンチウイルス由来の発現ベクターを、対象とする器官、組織または細胞集団にヌクレオチド配列を送達するために使用することができる。当業者に良く知られた方法を使用して、アイソフォーム3.1をコードする遺伝子のポリヌクレオチドに相補的な核酸配列を発現するベクターを構築することができる。これらの技法については、例えば科学文献に記載されている。
上述の治療方法のうち任意の方法を、そのような治療法を必要としている任意の対象者(好ましくはヒトを含む)に適用することができる。
本発明のさらなる実施形態は、上記に議論された任意の治療効果のための、アイソフォーム3.1を薬学的に許容可能な担体と併せて含有する医薬組成物の投与に関する。そのような医薬組成物は、アイソフォーム3.1、アイソフォーム3.1の抗体、およびアイソフォーム3.1のミメティック、アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を構成することができる。該組成物は、単独で、または、安定化化合物のような少なくとも1つの他の作用薬であって、無菌の生物学的適合性を有する製薬担体、例えば、限定するものではないが生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水に含めて投与可能な作用薬と組み合わせて、投与することができる。該組成物は、単独で、または他の作用薬、医薬品もしくはホルモンと組み合わせて、患者に投与することができる。
本発明の医薬組成物は、該組成物の意図された投与経路と両立可能なように製剤化される。投与経路の例には、腸管外投与、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮的(局所的)、経粘膜、および直腸内投与が挙げられる。腸管外、皮内、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液は、下記成分すなわち:無菌の希釈剤、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えばアセテート、シトラートまたはホスファート、および張度の調節のための物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース、を含むことができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調節することができる。腸管外投与用の調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブル注射筒または複数回投与用バイアルに入れることができる。
注射可能な使用法に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌の注射可能な溶液または分散液を即時調製するための無菌の散剤が挙げられる。静脈内投与については、適切な担体として生理食塩水、静菌水(bacteriostatic water)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合にも、組成物は無菌でなければならず、容易にシリンジ操作が可能である(easy syringability)程度の流動性がなければならない。組成物は製造条件および保存条件の下で安定でなければならず、細菌や真菌のような微生物の汚染を受けないように保存しなければならない。担体は、溶媒または分散媒であって、例えば水、エタノール、薬学的に許容可能な多価アルコールであってグリセロール、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコールのようなもの、およびこれらの適切な混合物を含有するものであってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用により、分散物の場合は必要な粒子径の維持により、また界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖質、マンニトールのような多価アルコール、ソルビトールおよび塩化ナトリウムを組成物中に含めることが望ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる作用薬、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより実現することができる。無菌の注射可能な溶液は、上記に列挙した成分のうち1つまたは該成分の組み合わせを含んだ適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を組み入れ、その後必要に応じてろ過滅菌を行うことにより、調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒と、必要なその他の成分であって上記に列挙した成分由来ものとを含有する無菌のビヒクルに、活性化合物を組み入れることにより調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌の散剤の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、該方法は、有効成分と任意の所望の追加成分との粉末を、予めろ過滅菌した前記成分の溶液から生産する。
経口組成物は一般に不活性の希釈剤または食用の担体を含んでいる。該組成物をゼラチンカプセル剤に封入してもよいし、圧縮して錠剤としてもよい。治療的な経口投与の目的で、活性化合物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物を、口内洗浄液として使用するために流動性担体を使用して調製することも可能であり、この場合は流動性担体中の化合物は経口的に施用され、口内をすすぎ、吐出または嚥下される。
薬学的に混合可能な結合剤、かつ/または補助材料を、組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分すなわち:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel(R)、もしくはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(sterote);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えばスクロースもしくはサッカリン;または着香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料、のうちのいずれか、または同様の性質の化合物を含むことができる。
吸入による投与については、化合物を、エアゾルスプレーの形態で、適切な噴射剤(例えば二酸化炭素のような気体)の入った加圧容器もしくはディスペンサ、または噴霧器から送達する。
経粘膜または経皮的な手段による全身投与も可能である。経粘膜投与または経皮投与については、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は当分野において一般に知られており、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧または坐剤の使用を通じて実現することができる。経皮投与については、活性化合物を、当分野において一般に知られているような軟膏剤、軟膏、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化する。
化合物を、直腸送達のために、(例えばココアバターおよびその他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を用いた)坐剤または停留浣腸剤の形態に調製することもできる。
一実施形態では、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤のように、身体からの急速な消失に対して化合物を保護する担体を用いて調製される。生物分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することもできる。
投与のしやすさおよび用量の均一性のために投与単位形態の経口または非経口組成物を製剤化すると特に有利である。本明細書中で使用されるような投与単位形態とは、治療を受ける対象者についての単位となる用量として適した物理的に個別の単位を指し、それぞれの単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を、必要な製薬担体を伴って含有している。本発明の投与単位形態についての規格は、活性化合物の固有の特性および達成すべき特定の治療効果、ならびにそのような活性化合物を個体の治療のために配合する技術に内在する制限によって決まり、かつこれらに直接的に左右される。
医薬組成物は、投与の説明書と一緒に包装容器、パックまたはディスペンサの中に入れることができる。アイソフォーム3.1活性のアンタゴニスト、アイソフォーム3.1の発現もしくは活性を低減する化合物、またはアイソフォーム3.1シグナル経路内のタンパク質の発現もしくは活性を低減する化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物については、投与の説明書は、神経系疾患(例えば統合失調症)のための組成物の使用を指示することになろう。アイソフォーム3.1活性のアゴニスト、アイソフォーム3.1の発現を増大させる化合物、またはアイソフォーム3.1シグナル経路内のタンパク質の発現もしくは活性を増大させる化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物については、投与の説明書は、他の神経系疾患のための組成物の使用を指示することになろう。
治療上有効な用量の決定
治療上有効な用量の決定は十分に当業者の能力の範囲内にある。治療上有効な用量とは、治療上有効な用量が存在しない状態において生じるアイソフォーム3.1の活性に比べてアイソフォーム3.1の活性を増大または減少させる有効成分の量を指す。任意の化合物について、治療上有効な用量を、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常は、マウス、ラット、ウサギまたはサル)のいずれかにおいて最初に概算することができる。動物モデルは適切な濃度範囲および投与経路を決定するために使用することもできる。その後、そのような情報を用いてヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
治療上の有効性および毒性、例えばED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手法によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物での研究から得られたデータを使用して、ヒトでの使用のための用量範囲を策定する。そのような組成物に含まれる用量は、毒性をほとんど伴わないかまたは全く伴わない、ED50を含む循環血中濃度範囲内にあることが好ましい。用量は、上記の範囲内で、使用される剤形、患者の感受性、および投与経路に依存して変わる。正確な用量は、治療を必要とする対象者に関係する要因に照らして、担当医によって決定されることになる。用量および用法は、十分なレベルの有効成分を提供するように、または所望の結果を維持するように調整される。考慮に入れることができる要因には、疾病状態の重症度、対象者の健康状態、対象者の年齢、体重および性別、食物、投与の時間および頻度、薬物の併用、過敏性反応、ならびに治療法に対する忍容性/応答性が含まれる。長時間作用性の医薬組成物は、その特定の製剤の半減期および消失率に応じて3〜4日ごと、毎週、または2週間に一度投与することができる。
正常な投与量は、投与経路に応じて、0.1マイクログラム〜100,000マイクログラム、最大で約1グラムの総投与量まで様々であってよい。具体的な投与量および送達方法に関する手引きは文献に記載されており、当分野の医師には一般に利用可能である。
当業者は、ヌクレオチドについてはタンパク質またはその阻害剤とは異なる製剤を使用することになろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は特定の細胞、条件、位置などに特異的なものとなる。その試薬が一本鎖抗体である場合、該抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、十分確立された技術、例えば、限定するものではないが、トランスフェリン−ポリカチオンを仲介したDNA移入、裸の核酸またはカプセル封入した核酸を用いたトランスフェクション、リポソームを仲介した細胞融合、DNAでコーティングしたラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」、およびDEAEまたはリン酸カルシウムを仲介したトランスフェクションを用いて、ex vivoまたはin vivoのいずれかで細胞内へ導入することができる。
発現産物がmRNAである場合、試薬はアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムであることが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドを、上述のように、様々な方法によって細胞内に導入することができる。好ましくは、試薬は、アイソフォーム3.1遺伝子の発現またはアイソフォーム3.1の活性を、該試薬が存在しない場合に比べて少なくとも約10%、好ましくは約50%、より好ましくは約75、90または100%低減する。アイソフォーム3.1遺伝子の発現またはアイソフォーム3.1の活性のレベルを減少させるために選択された機構の有効性は、当分野において良く知られた方法、例えばアイソフォーム3.1に特異的なmRNAへのヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR、アイソフォーム3.1の免疫学的検出、またはアイソフォーム3.1活性の計測を用いて、評価することができる。
上述の実施形態のいずれにおいても、本発明の医薬組成物のうち任意のものを他の適切な治療薬と組み合わせて投与することができる。併用療法で使用するのに適した作用薬の選択は、従来の薬学上の原則に従って当業者が行うことができる。治療薬の組み合わせは、相乗的に作用して上述の様々な障害の治療または予防を達成する可能性がある。この手法を使用して、それぞれの作用薬をより低用量とし、その結果として有害な副作用の可能性を低減しながら、治療効果を達成することができる場合がある。上述の治療方法のうち任意の方法を、そのような治療法を必要としている任意の対象者、例えばヒトに適用することができる。
診断法
本発明の一実施形態は、個体が神経精神障害(例えば統合失調症)に罹患する可能性を予測する方法、または神経精神障害(例えば統合失調症)の診断、もしくは神経精神障害(例えば統合失調症)に関連して弱い症状を有する可能性が高いことの診断を支援する方法であって、評価される個体からDNA試料を得るステップと、存在するヌクレオチドについてKCNH2遺伝子の一塩基変異多型(SNP)を測定するステップとを含んでなる方法に関する。SNPに保護的対立遺伝子由来のヌクレオチドが存在することは、その個体が該SNPにリスク対立遺伝子由来のヌクレオチドを有していた場合よりも、該個体が神経精神障害に罹患する可能性は低いこと、または神経精神障害に関連して弱い症状を有する可能性が高いことを示す。反対に、SNPにリスク対立遺伝子由来のヌクレオチドが存在することは、その個体が該SNPに保護的対立遺伝子由来のヌクレオチドを有していた場合よりも、該個体が神経精神障害に罹患する可能性が高いこと、または神経精神障害に関連して強い症状を有する可能性があることを示す。好ましい実施形態では、神経精神障害は統合失調症である。特定の実施形態では、個体は統合失調症を発症するリスクのある個体である。別の実施形態では、個体は、統合失調症に関連した臨床症状を示す。一実施形態では、個体は統合失調症であることが臨床的に診断されている。
SNPは、マーカーM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14、M15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24、M25、M26、M27、M28、M29、M30、M31、M32、M33、M34、M35、M36、M37、M38、M39、M40、M41、M42、またはM43から選択される。
Figure 2010524434
評価すべき遺伝物質は、個体由来の任意の有核細胞から得ることができる。ゲノムDNAのアッセイについては、事実上任意の生体試料(純粋な赤血球以外)が適切である。例えば、好都合な組織試料には全血、精液、唾液、涙液、尿、糞便、汗、皮膚および毛髪が挙げられる。cDNAまたはmRNAのアッセイについては、組織試料は標的とする核酸が発現される器官から入手しなければならない。例えば、中枢神経系由来の細胞(海馬の細胞など)、神経冠由来の細胞、皮膚、心臓、肺および骨格筋が、KCNH2遺伝子のcDNAを得るのに適切な供給源である。神経冠由来の細胞には、例えば、メラノサイトおよびケラチノサイトが含まれる。
本明細書中に記載された方法の多くは、標的試料からのDNAの増幅を必要とする。これは、例えばPCRによって遂行することができる。一般には、「PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification」ed.H.A.Erlich,Freeman Press,NY,NY,1992を参照されたい。
他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅法、自家持続配列複製法(self−sustained sequence replication)および核酸配列ベース増幅法(NASBA)が挙げられる。後者2つの増幅方法は、等温における転写に基づいた等温反応を伴い、一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を、それぞれ約30または100対の1の比率の増幅産物として生産する。
対象とする多型部位を占めるヌクレオチドを、様々な方法で、例えばゲノムDNAのサザン解析;制限酵素消化による直接的突然変異分析;RNAのノーザン解析;変性高速液体クロマトグラフィ(DHPLC);遺伝子の単離および配列決定;対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドと増幅した遺伝子産物とのハイブリダイゼーション;一塩基伸長法(SBE);またはKCNH2タンパク質の分析、によって同定することができる。適切な手法の試料採取については以下に順次議論する。
対立遺伝子特異的プローブ
多型性を分析する対立遺伝子特異的プローブの設計および使用については、例えば、Saiki et al.1986 Nature 324:163−166に記載されている。2個体に由来するそれぞれのセグメントに多型的に異なる型が存在するため、一方の個体に由来する標的DNAのセグメントにハイブリダイズするが、別の個体に由来する対応するセグメントにはハイブリダイズしない、対立遺伝子特異的プローブを設計することができる。ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間でハイブリダイゼーション強度に有意な差があり、かつ好ましくは本質的に二元性の応答であるためプローブは対立遺伝子のうち一方のみにハイブリダイズするように、十分にストリンジェントでなければならない。ハイブリダイゼーションは通常、ストリンジェントな条件下で、例えば1M以下の塩濃度および少なくとも25℃の温度で行なわれる。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mM リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH7.4)および温度25〜30℃の条件、または同等の条件が、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションに適している。同等の条件は、当分野で知られているように、一例として挙げたパラメータのうち1つ以上を変更し、同時に標的ヌクレオチド配列と使用されるプライマーまたはプローブとの間の同一性または類似性を同程度に維持することにより、決定することができる。
一部のプローブは、多型性の部位がプローブの中央の位置(例えば15merでは第7位;16merでは8位または9位のいずれか)と並ぶように標的DNAのセグメントにハイブリダイズするように設計される。このようなプローブの設計により、異なる対立遺伝子型の間のハイブリダイゼーションにおいて良好な識別力が達成される。
対立遺伝子特異的プローブは、一方のプローブが標的配列の基準型に完全に一致し、他方のプローブがバリアント型に完全に一致するプローブ対として使用されることが多い。ひいては、同じ標的配列内の複数の多型性を同時に分析するために、数対のプローブを同一の支持体上に固定化することができる。
タイリングアレイ
多型性を、核酸アレイへのハイブリダイゼーションによって同定することも可能であり、核酸アレイのいくつかの例は国際公開公報第95/11995号パンフレットに記載されている。国際公開公報第95/11995号パンフレットには、あらかじめ特徴解析された多型のバリアント型の検出用に最適化されたサブアレイについても記載されている。そのようなサブアレイは、第1の基準配列の対立遺伝子性のバリアントである第2の基準配列に相補的になるように設計されたプローブを含んでいる。第2のプローブ群は、該プローブが第2の基準配列に相補性を示すこと以外は同じ原則に従って設計される。第2の群(またはさらなる群)を含めると、プローブの長さと同程度の近距離内に複数の突然変異が生じる(例えば9〜21塩基の中に2つ以上の突然変異)と予想される第1の基準配列の短いサブ配列を分析するのに特に有用である。
対立遺伝子特異的プライマー
対立遺伝子特異的プライマーは、標的DNA上の多型と重なる部位にハイブリダイズし、該プライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子型の増幅のみを促す。Gibbs 1989 Nucleic Acid Res 17:2427−2448を参照のこと。このプライマーを、離れた部位にハイブリダイズする別のプライマーと共に使用する。増幅は上記2つのプライマーから始まり、特定の対立遺伝子型が存在することを示す検出可能な生成物が得られる。対照は通常、別のプライマー対を用いて実施され、該プライマー対のうちの一方は多型部位において1塩基のミスマッチを示し、他方は離れた部位に完全な相補性を示す。1塩基のミスマッチにより増幅が妨げられ、検出可能な生成物は形成されない。該方法は、多型と並んだオリゴヌクレオチドの最も3’側の部位にミスマッチが含まれている場合に最も良く機能するが、それはこの部位がプライマーからの伸長を最も不安定化するからである。
直接シークエンス法
本発明の多型の配列の直接的な分析は、ジデオキシチェーンターミネーション法またはマクサム−ギルバート法(「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」3rd edition,Sambrook et al.2001 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)のいずれかを使用して遂行することができる。
変性剤濃度勾配ゲル電気泳動
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して生成された増幅産物を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動の使用によって分析することができる。異なる対立遺伝子を、溶液中のDNAの配列依存的な異なる融解特性および電気泳動上の移動度に基づいて同定することができる(Erlich,ed.1992「PCR Technology,Principles and Applications for DNA Amplification」W.H.Freeman and Co,New York,Chapter 7)。
一本鎖高次構造多型分析
標的配列の対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型分析を使用して区別することが可能であり、該分析は、Orita et al.1989 PNAS USA 86:2766−2770に記載されているように、一本鎖PCR生成物の電気泳動上の移動度の変化によって塩基の違いを識別する。増幅されたPCR生成物を上述のようにして生成させ、加熱またはその他の方法で変性させて、一本鎖の増幅産物を形成することができる。一本鎖の核酸は、リフォールディングする、すなわち塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成する場合がある。一本鎖の増幅産物の異なる電気泳動度は、標的配列の対立遺伝子間の塩基配列の違いと関係する場合がある。
KCNH2の新規かつ霊長類特異的な脳アイソフォーム:認知、海馬の生物学および統合失調症との関連における役割
組織化されたニューロンの活動は、皮質の情報処理にとって重要であり、統合失調症では混乱している。本発明者らは、ニューロンの発火を制御するカリウムチャネルKCNH2の霊長類特異的なアイソフォーム(3.1)を同定した。3kbの上流領域にあるいくつかのSNPは、4つの独立のデータセットにおいて統合失調症に関連づけられる。リスクSNPは、記憶、IQおよび認知処理速度ならびに海馬の構造および生理学に影響を及ぼす。アイソフォーム3.1 mRNAのレベルは、前前頭皮質および海馬ではKCNH2−1Aに匹敵するが、心臓では1000倍以上低い。死後発現分析から、統合失調症の海馬ではKCNH2−1Aに比べてアイソフォーム3.1が2.5倍増大していること、およびリスクSNPとの関連を示す。構造上、アイソフォーム3.1は、緩徐型のチャネル脱活性化に重要なPASドメインのほとんどを欠いている。げっ歯動物の皮質ニューロンにおける電気生理学的特徴解析から、アイソフォーム3.1の過剰発現の結果として、急速に脱活性化するK流および高頻度かつ非順応性の発火パターンが生じることを明らかにする。これらの結果は、皮質の生理学、認知、および精神病における新規なKCNH2チャネルの予想外の役割を明らかにし、精神治療薬の潜在的な新しい標的を提供するものである。
序論
本研究において遺伝学的解析、脳画像解析、および行動解析の組み合わせを使用して、本発明者らは4つの独立した臨床試料中に新規な統合失調症感受性遺伝子(KCNH2カリウムチャネル)を同定した。さらに本発明者らは、リスク対立遺伝子を有する正常な個体の試料中に、認知障害ならびにHFの構造および機能に関する画像解析上の尺度を含むいくつかの中間的表現型との関連も見出した。KCNH2(hERG1とも呼ばれる)は、Genbank登録番号U04270であり、電位依存性カリウムチャネルのエーテルアゴーゴー(ether−a−go−go)関連ファミリーの一員であって(J.W.Warmke and B.Ganetzky 1994 Proc Natl Acad Sci U S A 91:3438)、心筋活動電位の際の膜電位の緩徐な再分極によりQT間隔を調節することにおける役割に関して最もよく知られている(M.C.Sanguinetti and M.Tristani−Firouzi 2006 Nature 440:463)。心筋細胞におけるKCNH2の大規模な特徴解析にもかかわらず、驚くべきことに、ニューロンで行なわれた研究はヒトではもちろんヒト以外の霊長類のニューロンにおいてもほとんどない。しかしながら、KCNH2は、海馬および前頭皮質を含む多くの脳領域で豊富に発現される(L.Guasti et al.2005 J Comp Neurol 491:157;M.J.Saganich et al.2001 J Neurosci 21:4609)。その明瞭な生理学的特徴、すなわち緩徐型の活性化、急速型の不活性化、および緩徐型かつ電位依存性の脱活性化(J.W.Warmke and B.Ganetzky 1994 Proc Natl Acad Sci U S A 91:3438,M.C.Trudeau et al.1995 Science 269:92;P.L.Smith et al.1996 Nature 379:833;J.H.Morais Cabral et al.1998 Cell 95:649)は、KCNH2を、PFCおよびHFにおけるニューロンの発火パターンならびにネットワーク振動の制御における優れた候補としている。モデリング研究から、KCNH2が、スパイク頻度順応にとって、または脳の興奮性ニューロンで見られる通常の発火パターンである一連の誘発活動電位の段階的な終了にとって重要であることが予測されている(N.Chiesa et al.1997 J Physiol 501:313)。いくつかの研究から示されたのは、KCNH2の抑制により、低頻度で順応性のニューロン発火が、多数の複雑な認知機能を促進する持続的なニューロンの活動に必要な発火パターンである(Y.Wang et al.2006 Nat Neurosci 9:534)、高頻度で非順応性のニューロン発火に変換することである(N. Chiesa et al.1997 J Physiol 501:313;T.Sacco et al.2003 J Neurophysiol 90:1817)。
本発明者らが見出したKCNH2との臨床的関連性の分子機構を解明するために、本発明者らは死後のヒト脳中のKCNH2 mRNAの発現を特徴解析した。この特徴解析から、予想外なことに、リスク性配列バリアントの近くに転写開始部位を有する霊長類の脳に特異的な新規アイソフォーム(アイソフォーム3.1)が同定された。注目すべきことに、アイソフォーム3.1の発現は、統合失調症患者の海馬において、さらにKCNH2のリスク対立遺伝子を有する正常な個体においても増大する。これらの結果に促されて、本発明者らは、内因性のアイソフォーム3.1を発現しないげっ歯動物の皮質ニューロンに遺伝子を導入した。アイソフォーム3.1の発現によりhERGチャネルの脱活性化速度が著しく変化し、その結果として高頻度で非順応性の発火パターンが得られた。スパイク頻度のそのような変化は、統合失調症における皮質機能不全の重大な側面であると考えられる神経細胞群(neuronal assemblies)の脱同期化をもたらすとも考えられる(G.Winterer and D.R.Weinberger 2004 Trends Neurosci 27:683)。これらの集中的な結果を合わせると、新規なKCNH2アイソフォームの役割が統合失調症の病因および病態生理に関係付けられ、該アイソフォームが抗精神病薬療法の有望な新しい標的となる。
統合失調症に関連するNOS3/KCNH2領域の同定
統合失調症および他の多くの複雑な病気に関する遺伝的リスクが、大幅なアミノ酸変化および極めて有害なタンパク質突然変異(これらは珍しい型の病気ではやはり生じる場合もある)には関係しないであろうことが次第に明白になってきている(R.E.Straub and D.R.Weinberger 2006 Biol Psychiatry 60:81)。代わりに、感受性遺伝子の分子レベルの影響のほうが、転写物またはタンパク質の調節およびスプライシングに関して鋭敏である可能性がありそうである。したがって、患者の組織の遺伝子発現プロファイルから、候補リスク遺伝子の同定の手掛かりが得られるかもしれない。上記の可能性の予備的根拠は、RGS4(M.E.Talkowski et al.2006 Schizophr Bull 32:203)およびCNP(T.R.Peirce et al.2006 Arch Gen Psychiatry 63:18)の統合失調症との関連から生じたものであり、RGS4およびCNPは、初めは統合失調症患者の死後の脳における発現プロファイルのマイクロアレイ分析から候補遺伝子として同定された(K.Mirnics et al.2001 Mol Psychiatry 6:293)。従って、本発明者らは、マイクロアレイで測定すると多くの統合失調症患者で示差的に発現されるとして最近報告された10個の遺伝子(S.Prabakaran et al.2004 Mol Psychiatry 9:684)を選択し、統合失調症の子孫を有する170組のコーカサス人家族のHapMap(リリース15)から得られたハプロタイプタギングSNP(htSNP)のジェノタイピングを行った。家族ベースの関連分析(N.M.Laird et al.2000 Genet Epidemiol 19(Suppl 1)S36)を実施すると、名目上は有意なシグナルが10個の遺伝子のうち5個に観察された(表2)。特に、NOS3のゲノム領域(7q36.1)にあるSNPは、この病気との最も高い連鎖不平衡(LD)を示した。しかしながら、この領域の陽性のSNPは、NOS3の上流の、反対方向に転写される隣接遺伝子KCNH2の中に位置していた(図5;図11)。比較ゲノムデータベースの調査は、NOS3およびKCNH2のゲノム上での近接性および方向性が哺乳類生物種において高度に保存されていることを示している。
図5(上)を参照すると、単一SNPおよび3−SNPスライディングウィンドウハプロタイプに関する、CBDBシブリングスタディ(Sibling Study)(GC、ダイヤ形)、NIMHGI−C(GI−C、正方形)、NIMHGI−AA(GI−AA、三角形)およびドイツの症例対照研究(G、円形)についての家族ベースの関連分析結果からのp値の逆対数が示されている。p値が0.1未満のマーカーおよびハプロタイプだけが示されている。該領域の物理的地図が提示され、領域内の既知遺伝子を示している。図5(下)を参照すると、370人の血縁関係のない健康なコーカサス人対照者についてジェノタイピングされたマーカーのLD構造が示され、D’として表されている。グラフィックスはnicodemusk@mail.nih.govから利用可能なRパッケージsnp.plotter(A.Luna and K.K.Nicodemus 2007 Bioinformatics 23:774−776)を使用して作出した。
統合失調症のリスク遺伝子としてのKCNH2
NOS3およびKCNH2の一部を含む、過去の組換えが最小限であることを示すハプロタイプブロック(S.B.Gabriel et al.2002 Science 296:2225)が、国際HapMapプロジェクト(The International HapMap Project 2003 Nature 426:789)によってジェノタイピングされた西欧人家族の人々に観察された。このハプロタイプブロックは、NOS3転写開始部位の1.2Kb下流(5’UTRの中)を始点として、この遺伝子の上流21.3Kbに及ぶ(図11)。この上流領域の最初の13.1kbは非コード領域かつ遺伝子間領域であるが、残りの部分はKCNH2の6.9Kbと重なり合う。この領域をタギングするのに必要な3個のhtSNP(S.B.Gabriel et al.2002 Science 296:2225)のうち、rs1036145(M33)が、ハプロタイプブロック全体(全体的なp=0.005)と同じように、295組のコーカサス人家族のコホート(CBDBコホート)において統合失調症患者に過度に伝達(over−transmit)された(p=0.0032)。
これらのデータに基づいて、M33が、原因SNPとの強力なLD状態にあるか、または関連シグナルそのものに関与しているかのうち少なくともいずれかであることが期待された。従って、さらなるdbSNPを、KCNH2の3’末端からNOS3の3’末端まで伸びる領域にわたって、M33付近に集中した範囲に最も注目してジェノタイピングした。48人の統合失調症患者についてM33に隣接する7.2kbの領域を再シークエンスし、まれなSNPまたは未報告のSNPを検出した。本発明者らはさらに、KCNH2のエキソン1〜3およびそのイントロンの境界部(合計10.4kbの配列)についても再シークエンスしたが、コード配列の多型は発見されなかった。11個の新規なSNPを含む合計43個のSNPがCBDBコホートにおいてジェノタイピングされた。6個のSNPは、該SNPを含んでいる3マーカー・ハプロタイプの多くと同じように、統合失調症と有意に関連していた(5個についてはp<0.01)(図5;図12、表3)。上記の有意な関連を有するSNPの大多数は、KCNH2のイントロン2の小さな3kbセグメントに位置する。
図12を参照すると、単一マーカーおよび3マーカーのスライディングウィンドウ解析の結果が、CBDB、NIMHGI−C、NIMHGI−AA、およびRUコホートについて示されている。新規と表示されたSNPは、48人の統合失調症患者由来のDNAを再シークエンスすることによって同定された(実施例1を参照)。図12Aは、FBATによるCBDB家族試料における3マーカーのスライディングウィンドウ解析を示す(CBDBシブリングスタディ 3−SNPスライディングウィンドウハプロタイプ結果(296組の家族)。図12Bは、FBATによるNIMH−C家族試料における3マーカーのスライディングウィンドウ解析を示す(NIMHGI−C 3−SNPスライディングウィンドウハプロタイプ結果(71組の家族)。図12Cは、FBATによるNIMH−AA家族試料における3マーカーのスライディングウィンドウ解析を示す(NIMHGI−AA SNPスライディングウィンドウハプロタイプ結果(51組の家族)。図12Dは、Haplo.statによるドイツの症例対照試料における3マーカーのスライディングウィンドウ解析を示す(ドイツ 症例対照3−SNPスライディングウィンドウハプロタイプ結果)。
その後、これらのマーカーのうちの40個について、NIMHジェネティクス・イニチアシブ・プロジェクト(NIMH Genetics Initiative project)(C.R.Cloninger et al.1998 Am J Med Genet 81:275)に由来する、71組のコーカサス人家族(NIMHGI−C)および51組のアフリカ系アメリカ人家族(NIMHGI−AA)から構成される2つの追加の家族ベースのコホートにおいてジェノタイピングした。家族の数が少ないため検出力は実質的に制限されるが、同じ小さな領域内のSNPおよび/またはハプロタイプは、いずれのデータセットにおいても統合失調症に有意に関連していた(図5;図12、表3)。特に、3つの集団すべてにおいて関連シグナルはKCNH2のイントロン2に局在していたが、いくつかの他の推定上の統合失調症遺伝子で見られたように(R.E.Straub and D.R.Weinberger 2006 Biol Psychiatry 60:81)、有意に関連したSNPはすべてのコホートにおいて同一ではなかった。しかしながら、M9およびM10にA−G、M21およびM22にC−Gを含んでいる2つの共通の重なり合うハプロタイプは、両方のコーカサス人家族のデータセットにおいてリスクに関係していた:NIMHGI−C(M9−M10 全体的p=0.079、ハプロタイプp=0.076;M21−M22 全体的p=0.092、ハプロタイプp=0.082)およびCDBD(M9−M10 全体的p=0.048、ハプロタイプp=0.083;M21−M22 全体的p=0.098、ハプロタイプp=0.10)。さらに、単一SNP分析と一致して、M30の主要対立遺伝子Gを含むハプロタイプは、CBDB試料(全体的p=0.023、ハプロタイプp=0.01)およびNIMHGI−C(全体的p=0.10、ハプロタイプp=0.028)のいずれにおいても統合失調症と陰性の関連を有していたが、NIMHGI−Cの単一SNP分析ではM30と統合失調症との間には関連は観察されなかった。M32−M33−M34のハプロタイプC−A−Gは、CBDBおよびNIMH−GI AA試料のいずれにおいても有意に陽性の関連を有していた(CBDBハプロタイプp=0.008;NIMHGI−AAハプロタイプp=0.044)。興味深いことに、1つのまれなSNP(コーカサス人MAF=0.007)がすべての研究コホート全体で8組の家族において見出され、これらの家族の中の9人の罹患した子供はすべて、ヘテロ接合の親から同一のまれな対立遺伝子を受け継いでいた(図13を参照)。図13を参照すると、このまれな対立遺伝子(T)を有する個体を少なくとも1人含むことが分かった全ての家族が示されている。表記は標準的な家系研究法に従う(黒=罹患/統合失調症、など)。「−/−」遺伝子型の個体はいずれもDNA採取物が入手不可能であった。罹患した全ての子供がまれな対立遺伝子を受け継ぎ、個体が全員コーカサス人であったことに留意されたい。
最後に、陽性の家族ベースの関連シグナルを前提として、本発明者らは、第4の試料、すなわち501人の患者および626人の対照者で構成されるドイツで収集されたコーカサス人の症例対照データセットにおいて関連性の試験を行い、CBDBコホートで見出された6個の有意に関連していたSNP、さらに再シークエンスで見出された新規なSNPについてもタイピングした。単一SNPについてロジスティク回帰を使用し、SNP M20およびM30において、オッズ比がそれぞれ2.99(CI=1.26、7.11)および1.58(CI=1.05、2.38)に相当する有意な関連性が観察された(図5;表3)。したがって、適切な検出力を備えた2つのコーカサス人試料において、本発明者らは、同じ2つのSNP、および同じ対立遺伝子について関連性を確認し、またAA系の家族を含む2つの他の小規模な家族試料における各種ハプロタイプとの関連性について証拠を示す。総合すると、これらの結果はKCNH2の該領域を統合失調症の感受性遺伝子座として同定し、かつKCNH2がこの関連性に関与する遺伝子であることを示唆している。
認知、海馬の構造および機能に対するKCNH2 SNPの影響
この領域内のSNPの変異を受け継ぐことが、脳機能を変化させることにより統合失調症のリスクを増大させるのであれば、そのような遺伝変異は、リスク対立遺伝子を有する個体において、該個体が診断上の症候群全体を現わしていないとしても、統合失調症の中間的な脳の表現型を伴っているはずである(A.Meyer−Lindenberg and D.R.Weinberger 2006 Nat Rev Neurosci 7:818)。注意、記憶およびIQ/処理速度に関連した様々な認知障害が、統合失調症に関連した中間的な表現型として深く関係付けられており、また患者の罹患していない血縁者における相対リスクの増大と関連している(T.D.Cannon et al.2000 Am J Hum Genet 67:369;M.F.Egan et al.2000 Am J Psychiatry 157:1309;M.F.Egan et al.2001 Biol Psychiatry 50:98;T.E.Goldberg et al.2003 Arch Gen Psychiatry 60:889)。これらの認知プロセスを助け、かつ統合失調症の神経病理学に一貫して関与する2つの領域(P.J.Harrison 1999 Brain 122:593,D.R.Weinberger et al.2001 Biol Psychiatry 50:825)、前前頭皮質(PFC)およびHFの内部でのKCNH2の高発現を考慮すると、リスクSNPがこれらの脳領域の生物学的状態に影響を与えるのであれば、そのような認知障害も疾病の状態にかかわらずリスク遺伝子型に関係しているだろうと予想することは合理的である。従って、CBDB研究から最も有意に関連を示したSNP(M30、M31、M33)について、精神障害の履歴のある個体を除外するためにスクリーンングした健康な非血縁対照者の独立した試料において、認知機能の7つの独立した集約尺度(summary measure)に対する該SNPの影響を評価した(Genderson, M.R. et al. Schiz Res(近刊))(表4)。処理速度を評価するモデルにおいては年齢について調整する線形回帰を使用して(処理速度の試験および年齢の相関係数p値=0.0062;性別による平均の差についてのt検定のp値=0.57)、また視覚的記憶を評価するモデルにおいては共変量なしで(性別による平均の差についてのt検定のp値=0.26;年齢による視覚的記憶についての相関係数=0.75)、リスク遺伝子型とIQ/処理速度および視覚的記憶タスクの成績との間に有意な関連が観察された(図6A;表4)。したがって、健康な対照者においても、統合失調症患者で高頻度に観察される同じ対立遺伝子を有する個体は、リスク対立遺伝子を持たない被験者よりも、IQ、視覚的推論および視覚的記憶、ならびに時間制限付き順序付け(timed sequencing)を計測するタスクについて成績が有意に劣っていた。
認知との遺伝的関連は、KCNH2の変異が上記の機能を助ける神経系の生物学的状態に影響を及ぼすことを示唆している。陳述記憶は、少なくともげっ歯動物ではKCNH2が最も豊富に発現される海馬の機能に強く依存する(M.J.Saganich et al.2001 J Neurosci 21:4609)。したがって、上記の関連性は、HF内での記憶処理の生理機能の遺伝的変調を反映するとも考えられ、また海馬の構造的発生のレベルでのより根本的な変化を表わす可能性も考えられる。したがって、本発明者らは、CBDB家族試料およびドイツの症例対照試料において統合失調症に有意に関連した同じSNPが海馬の構造および生理機能の変化に関係し、またさらに、そのような変化が脳内の遺伝子作用の生物学的状態の現われであるならば、リスク対立遺伝子を有する健康な対照者はそのような変化の証拠を示すと予想されるものと仮定した。本発明者らは、慢性病および治療に関係する潜在的交絡因子を回避するために、脳の形態計測および情報処理のレベルでの遺伝的関連性について健康な対照者を使用することにした(A.R.Hariri and D.R.Weinberger 2003 Br Med Bull 65:259)。ボクセル単位形態計測法(VBM)を使用して、健康な対照被験者の試料を、HFに注目して、局所的な脳容積について評価した。FDR補正(α=0.05)した後、脳全体および関心領域(ROI)の両方の分析を使用して、SNP M30、M31およびM33の非主要対立遺伝子(リスク対立遺伝子)を有する個体において海馬構造での有意な容積減少が観察され、かつ相加的な対立遺伝子負荷効果が観察された(図6B;図14〜18;表5〜8)。非リスクSNPに基づいた対照分析は、VBMの変化との関連について一貫して陰性であった(図14〜18、表5〜8)。
異常な認知機能は生理的機能不全を反映するので、本発明者らは、リスク対立遺伝子を有する健康な対照者においても同じSNPがHFの果たす記憶処理の生理機能に影響を及ぼすものと予測した。fMRI応答に対するタスク成績の影響に合わせて制御し、従って情報処理の生理機能に対する遺伝子型の影響を分離するために、遺伝子型の群を認知タスク(正確さおよび反応時間)の成績に一致させた。この一致戦略により、被験者がタスクをどれだけうまく行うかとは無関係に、認知情報が神経系レベルでどのように生理学的に扱われるかに対する遺伝子型の影響を試験することが可能となった。fMRIを使用して、側頭葉記憶タスクの偶発的符号化の際の局所的活性化を評価し(A.R.Hariri et al.2003 J Neurosci 23:6690)、健康な対照被験者においても同様に行った。本発明者らは、正常なリスク保因者におけるHFの有意に高い活性化(FWE補正α=0.05)を観察した(図6C;図14〜18、表5〜8)。このパターンの、記憶情報の非能率的な処理(すなわち一定レベルの成績に対する過度の活動)は、HFにおける記憶処理を補助する皮質微小回路のチューニングがリスク遺伝子型の個体では比較的混乱していることを示唆している。HFにおける同様のパターンの非能率的な記憶処理は、エピソード記憶に影響を及ぼす他の遺伝子について報告されている(例えば、S.Y.Bookheimer et al.2000 N Engl J Med 343:450およびG.Egan et al.2003 Proc Natl Acad Sci USA 100:15241)。
図6Aを参照すると、認知機能の尺度に対する、最も有意性の高い家族ベースのマーカーの遺伝子型の影響が示されている。回帰モデルのP値は2つの自由度をとるF検定に基づく。線形回帰を使用して、認知の尺度とヘテロ接合(G/A)の保因者およびホモ接合(A/A)の保因者との間でG/Gの非リスク保有者に対する差を評価した。各遺伝子型の比較に関するP値が示され、続いて記載の遺伝子型のベータ係数が示されている。有意な主効果(p<0.05)は太字で示されている。図6Bを参照すると、健康な対照保因者の異なるコホートについて、対象外の共変量として灰白質容積(GM)、年齢および性別を用いる共分散モデル分析を使用して、最適化されたボクセル単位形態計測分析(VBM)を実施した。閾値設定した(p=0.05 FDR補正)統計的マップは、リスク対立遺伝子についてホモ接合の被験者(n=17)からヘテロ接合の保因者(n=59)、非保因者(n=63)への、HFのGMにおける相対的な直線的減少を示している。図6Cを参照すると、閾値設定した(p<0.05、FWE補正)統計的tマップ、および左後方海馬(ピーク・クラスターのMNI座標:−34 −25 −15mm)における陳述記憶タスクの符号化状態の間の平均(±1 SEM)血中酸素レベル依存性(BOLD)シグナルの変化(%)であり、M30 SNPのリスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=14)において、ヘテロ接合の保因者(n=37)および非保因者(n=28)に対して活性化の有意な直線的増大が示されている。
図14を参照すると、SNP M30に関する右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−12、−22mm)の遺伝子型による差が、最適化VBMを使用して導き出された。このプロット(図14A)および閾値設定した(p=0.05 FDR補正)統計的tマップ(図14B)は、リスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=17)から、ヘテロ接合の保因者(n=59)、非保因者(n=63)への灰白質容積の直線的減少を示している。説明のために、海馬の灰白質容積の計測値を、平均値センタリングし(mean centered)、対象外の共変量として年齢、性別および灰白質総容積を使用したSPM2でのANCOVA分析において最も有意性の高い右前方海馬のクラスターから抽出した。
図15を参照すると、SNP M31に関する右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9、−24mm)の遺伝子型による差が、最適化VBMを使用して導き出された。このプロット(図15A)および閾値設定した(p=0.05 FDR補正)の統計的tマップ(図15B)は、リスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=16)から、ヘテロ接合の保因者(n=59)、非保因者(n=66)への灰白質容積の直線的減少を示している。説明のために、海馬の灰白質容積の計測値を、平均値センタリングし、対象外の共変量として年齢、性別および灰白質総容積を使用したSPM2でのANCOVA分析において最も有意性の高い右前方海馬のクラスターから抽出した。
図16を参照すると、SNP M33に関する右海馬の灰白質容積(MNI座標:26、−9、−24mm)の遺伝子型による差が、最適化VBMを使用して導き出された。このプロット(図16A)および(p=0.07 FDR補正)の統計的tマップ(図16B)は、リスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=16)から、ヘテロ接合の保因者(n=61)、非保因者(n=64)への灰白質容積の直線的減少を示している。説明のために、海馬の灰白質容積の計測値を、平均値センタリングし、対象外の共変量として年齢、性別および灰白質総容積を使用したSPM2でのANCOVA分析において最も有意性の高い右前方海馬のクラスターから抽出した。
図17を参照すると、SNP M31に関する、陳述記憶タスクの間の海馬の関与の遺伝子型による差が示されている。図17Aは、左後方海馬(ピーク・クラスターのMNI座標:−34 −22 −15mm)における該タスクの符号化状態の間の平均(±1 SEM)血中酸素レベル依存性(BOLD)シグナルの変化(%)を表し、リスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=12)においてヘテロ接合の保因者(n=35)および非保因者(n=30)に対して活性化の有意な直線的増大を示している。閾値設定した(p<0.05、FWE補正)統計的tマップは図17Bに示されている。
図18を参照すると、SNP M33に関する、陳述記憶タスクの間の海馬の関与の遺伝子型による差が示されている。図18Aは、左後方海馬(ピーク・クラスターのMNI座標:−34 −22 −15mm)における該タスクの符号化状態の間の平均(±1 SEM)BOLDシグナルの変化(%)を表し、リスク対立遺伝子のホモ接合の保因者(n=11)ではヘテロ接合の保因者(n=37)および非保因者(n=27)に対して活性化が有意に直線的に増大することを示している。閾値設定した(p<0.05、FWE補正)統計的tマップは図18Bに示されている。
KCNH2 mRNA発現に対する統合失調症およびリスク遺伝子型の影響
ヨーロッパおよび非ヨーロッパの家系の試料を含む5つの独立なデータセット、および精神障害についてスクリーニングした健康な対照者における、遺伝マーカーと統合失調症および関連する脳表現型との関連性は、この病気の神経系の生物学的状態を含む該病気の症状発現に、このゲノム領域が関与することを強く支持している。しかしながら、これらの知見は、リスクの根本的な分子機構を明らかにするものではない。この問題に取り組み始めるために、本発明者らは、ヒト脳における遺伝子発現、および該遺伝子発現と本発明者らによる遺伝的関連性の証拠との関係について調査した。実際に、31例の統合失調症被験者および69例の健康な対照被験者からの死後脳の試料における定量的RT−PCRを使用して、本発明者らは、統合失調症患者のDLPFCにおいてKCNH2−1A発現レベルが有意に低いことを見出した(p=0.008;図7A)。本発明者らは、別の統合失調症の死後脳で以前に報告された(S.Prabakaran et al.2004 Mol Psychiatry 9:684)DLPFCにおけるNOS3発現の増大(p=0.019;図6A)も再現した(表9)。更に、HF内では両方の遺伝子が高まると仮定して、さらに29例の統合失調症被験者および59例の健康な対照被験者の、大部分は重複しているコホートにおいて、この領域における該遺伝子の発現も計測した。ここでもKCNH2−1Aは統合失調症患者において有意に減少していた(p=0.005;図7A)。
ほとんどの統合失調症患者は抗精神病薬を投与されるが、抗精神病薬はKCNH2に結合してその発現に影響を及ぼす可能性がある(S.Kongsamut et al.2002 Eur J Pharmacol 450:37)。いずれかの遺伝子において観察された変化が抗精神薬の影響である可能性について評価するために、63匹のラット(治療群当たり8〜10匹)に、3用量のクロザピンまたはハロペリドールのうちのいずれかを28日間投与した。クロザピンもハロペリドールも、前頭皮質内で計測されたいずれの遺伝子の発現に対しても有意な影響を示さなかった(図19)。しかしながら、有意には達しなかったが、0.08および0.6mg/kg/日のハロペリドールで処理したラットにおいてKCNH2−1Aのわずかな減少が観察された(それぞれp=0.082および0.119)。したがって、観察されたKCNH2−1Aの減少に対する薬物投与の影響を除外することはできない。
図7Aを参照すると、30人の統合失調症患者/62人の健康な対照被験者の海馬内、および大部分が重複している31人の統合失調症患者/69人の健康な対照被験者のDLPFC内における、mRNA発現の差が示されている。発現値はすべて、3つのハウスキーピング遺伝子(B2M、GUSBおよびPBGD)の幾何平均値に対して標準化され(J.Vandesompele et al.2002 Genome Biol 3:RESEARCH0034)、健康な対照者の平均値に対して何倍の差であるとして表されている。独立変数として年齢、pH、RINおよび診断を用い、後進ステップワイズ線形回帰を使用して主効果に関してデータを検定した。p値は最終的な回帰モデルにおける診断の主効果を表わす。図7Bは、マーカー33(M33)のリスク遺伝子型(A保因者)と海馬内でのアイソフォーム3.1の発現(A由来のデータ)との関連を、レイブ(rave)と診断に関して示している。遺伝子型の主効果は、Aと同じ線形回帰モデルリングに従って、ただしコーカサス人のサブセットおよびアフリカ系アメリカ人のサブセットについて別々に、M33を変数としてモデルに含めて測定した。M33 A/Aの個体が少数であるためA/Gの個体を合わせた。A/G保有者とG/G保有者との間では多項式ロジスティク回帰によって測定されるような有意差は観察されなかった。エラーバーはすべて平均値の1SEMを表す。
図19を参照すると、治療群あたり8〜10匹のラットを、3用量のハロペリドール(0.08、0.6および1mg/kg)またはクロザピン(0.5、5および10mg/kg)のうちいずれかで28日間処理した(ビヒクルのみで処理したラットと比較)。NOS3(ABIアッセイRn02132634_s1)およびKCNH2−1A(ABIアッセイRn01442523_m1)の前頭皮質での発現レベルを、2つのハウスキーピング遺伝子(GAPDH、B2M)の幾何平均値に対して標準化した。遺伝子発現に対する抗精神病治療の影響を、従属変数として遺伝子発現を用いた線形回帰によって試験した。ビヒクルのみと2つの治療域等価用量(0.08および0.6mg/kg/日のハロペリドール;0.5および5mg/kg/日のクロザピン)との間の差を、事後LSD法を使用して検定した。いずれの神経弛緩剤治療群とビヒクルのみで処理したラットとの間でも有意差は観察されなかった。ビヒクルのみとの比較で最も大きな差のあった治療群のp値をハロペリドールについて示す。
KCNH2−1Aが臨床試料における遺伝的関連シグナルに物理的に近く、かつ統合失調症患者において示差的に発現することを考慮すると、関連性の分子機構が転写調節に関係することは妥当性があるように思われた。認知分析および画像分析に適用されたのと同じ論理によって、遺伝的リスクがKCNH2−1Aの転写に影響を及ぼすとすると、リスク対立遺伝子を有する個体は、健康であっても、これらの遺伝子について統合失調症患者の遺伝子と類似した発現プロファイル(すなわちレベル低下)を有するはずである。従って本発明者らは、リスク対立遺伝子の保因者である健康な対照者とそうでない健康な対照者との間のKCNH2−1Aの発現の差について試験した。リスク遺伝子型の有意な影響は観察されなかった(KCNH2−1A:p=0.52;表10)。NOS3発現も、リスクSNPとの関連を示さなかった(表10)。重要なのは、最初のマイクロアレイ研究において、NOS3の増大は検出されたにも関わらずKCNH2の示差的発現は検出されなかったこと(Prabakaran,S.et al.2004 Mol Psychiatry 9:684−697;Huffaker,A et al.2006 Proc Natl Acad Sci U S A 103:10098−10103)に注目することである。このことはマイクロアレイ研究で使用された試料セットの全体として大きな平均PMIを反映している可能性もあるが、マイクロアレイによって調査されたKCNH2の領域に関係する可能性が高いようである。HG−U133Aマイクロアレイ(アフィメトリックス(Affymetrix))上に含まれる2組のKCNH2用プローブセットは、該遺伝子の3’−UTRに位置付けられる(図11)。したがって、これらのプローブセットは、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1において高度に保存された3’−UTR構造が特に付与された様々なアイソフォームを識別することはできないであろう。さらに、本明細書中で、アイソフォーム特異的なRT−QPCRを使用して、本発明者らは、アイソフォーム3.1の発現増大を伴うKCNH2−1Aの発現の著しい低減について報告している。したがって、両方のアイソフォームを合わせた検出では、ほとんど、または全く「正味の」差が得られないおそれがある。これは対立形質の不均一性(すなわち、異なる集団においては異なるSNPが病気へのリスクを与える)の存在を示しているかもしれないが、一方で遺伝的リスクの分子の作用がKCNH2−1Aの発現に影響を与えないこと、または転写物のスプライシングもしくは他のアイソフォームの発現のような遺伝子プロセシングのより複雑な局面に関係するかもしれないことを示唆している可能性もある。
ヒト脳中の新規KCNH2アイソフォームの同定
KCNH2イントロン2のサイズが大きいこと、および生物種をこえて高度に保存されているいくつかの領域が存在すること(genome.ucsc.edu)から、リスクSNPの作用は、まだ同定されていないエキソンのスプライシング、またはこのイントロン性の領域内の新規なアイソフォームの発現に関係する可能性もある。10人の統合失調症患者のDLPFC由来のプールした全RNAに5’−RACEを使用し、完全長のKCNH2転写物(KCNH2−1A;NM_00023)のエキソン4から始めることにより、本発明者らは、エキソン3の既知の開始部位の上流1.1Kbを始点とするアイソフォームを生産する、エキソン3の新規な5’延長部を同定した(図5;図11)。ヒトのcDNAライブラリ(ストラタジーン(Stratagene))からさらにクローニングすると、該アイソフォームは内発的に発現され、完全長の遺伝子の下流のエキソンをすべて含んでいることが分かった(KCNH2−1Aのエキソン15まで;図20、表11)。この新規アイソフォーム(アイソフォーム3.1とも呼ばれる)の最も長いORFのin silicoでの(ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.govにおける)予測により、エキソン3の1.1Kbの5’延長部は翻訳されないと思われること、最初のメチオニンは完全長タンパク質とフレームが一致していることが明らかとなった。そのため、アイソフォーム3.1は、完全長KCNH2−1Aの最初の102アミノ酸が失われて、そのかわりに該アイソフォームに特有の6アミノ酸に置き換わっていると予想される。興味深いことに、hERG1aのエキソン1および2によってコードされる102アミノ酸は、チャネル脱活性化の速度を遅くするモチーフであるPASドメインの大部分を構成する(J.H.Morais Cabral et al.1998 Cell 95:649)。アイソフォーム3.1の翻訳および予測されるタンパク質サイズの差は、トランスフェクトされたHEK細胞でウェスタンブロットを使用して確認された(図8C)。免疫沈降法に続くヒトの海馬および前頭皮質でのウェスタンブロットから、トランスフェクトされたHEK細胞のものと同じような分子量のタンパク質のバンドが示された(図8C)。さらに、KCNH2−1Aまたはアイソフォーム3.1のうちいずれかまたは両方をコードする構築物でトランスフェクトされた神経芽細胞腫細胞は、原形質膜上に該タンパク質アイソフォームの重複した発現を示す(図8D)。
アイソフォーム3.1が主として脳で発現される可能性を検討するために、本発明者らは、定量的RT−PCRを使用して、心臓および3つの異なる脳領域を含むいくつかの組織にわたってKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1の量を計測した。さらに、KCNH2の既知のアイソフォームおよび相同体は、集合して独自の電気生理学的特性を備えたヘテロマーのカリウムチャネルを作り出すことが可能であり(L.Guasti et al.2005 J Comp Neurol 491:157)、前記特性はサブユニットの比率および配置によってさらに改変される(S.Wimmers et al.2002 Pflugers Arch 445:423)ので、本発明者らは、アイソフォーム3.1のKCNH2−1Aに対する比率を計測し、この2つの形態がいくつかの脳領域内での発現に関して同程度であることを見出した(図8B;図20、表11)。しかしながら、アイソフォーム3.1は心臓内ではKCNH2−1Aよりも1000倍以上量が少なく、アイソフォーム3.1の役割は主として脳内にあるかもしれないことが示唆された。
図8Aを参照すると、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1について、それぞれKCNH2−1Aのエキソン1の中の順方向プライマー(Ex1)およびアイソフォーム3.1の5’−UTRの中の順方向プライマー(Iso1)、ならびに同じ逆方向プライマーであってKCNH2−1Aのエキソン3(Ex3)および4(Ex4)の中のプライマーを使用して、PCR産物を生成させた(実施例1を参照)。PCRは、ヒトの心臓、海馬および胎児の脳から単離された市販の全RNA(アンビオン(Ambion))から調製したcDNAを使用して実施した。PCR産物は、KCNH2−1Aについてはそれぞれ373bpおよび463bp、アイソフォーム3.1についてはそれぞれ388bpおよび478bpと予想された。Iso1−Ex4レーンの〜1.5kbのバンドは、試料中に存在する少量のスプライシングされていないRNAまたはゲノムDNAに相当する。図8Bを参照すると、TaqMan(R)アッセイ(ABI)を使用して定量的PCRを実施し、KCNH2−1A(Hs00165120_m1)平均値±標準誤差に対するアイソフォーム3.1(アイソフォーム3.1の5’−UTRに対して設計されたカスタムTaqManアッセイ)の相対的なmRNA発現を計測した。発現値は、ヒトの海馬、前前頭皮質、心臓および骨格筋由来の市販の全RNA(アンビオン)をDNAse処理(インビトロジェン(Invitrogen))したものから作製したcDNAにおいて計測した。図8Cを参照すると、死後のヒトの海馬および前頭皮質から抽出したタンパク質を使用してウェスタンブロットの準備がなされた。陽性対照として、CMVプロモータの制御下でKCNH2−1Aまたはアイソフォーム3.1をコードするベクターでHEK細胞をトランスフェクトした。ウェスタンは、KCNH2の細孔部分に対して作製された抗体(サンタクルーズ(Santa Cruz)、N−20)を用いて探査され、従ってアイソフォーム3.1およびKCNH2−1Aを検出するものと予想された。ヒト脳領域から抽出されたタンパク質は2本の別個のバンドを示し、1つはアイソフォーム3.1でトランスフェクトされたHEK細胞と同じ大きさであった。しかしながら、ヒト脳におけるより大きい主要なバンドは、KCNH2−1AでトランスフェクトされたHEKタンパク質の大きさとしては観察されなかった。代わりに〜160kDaのより大きなバンドが生じるが、これはin vivoのタンパク質抽出物由来のKCNH2−1Aについて報告された大きさであり、翻訳後修飾を示唆している(E.M.Jones et al.2004 J Biol Chem 279:44690)。図8Dを参照すると、KCNH2−1Aまたはアイソフォーム3.1を含んでいるベクターでトランスフェクトしたラットの初代神経細胞である。
図20を参照すると、KCNH2−1A(完全長)およびアイソフォーム3.1のPCRを、10種の異なる組織の全RNA抽出物を使用して実施した。完全長のPCR産物は、Ex1−F順方向プライマーとEx3−RおよびEx4−R逆方向プライマーとを使用して生成された(実施例1を参照)。アイソフォーム3.1のPCR産物は、Ex3.1−F順方向プライマーならびに同じEx3−RおよびEx4−R逆方向プライマーを使用して生成された。予想される産物の大きさ:それぞれ373、463、388、478bp。一部の試料のEx3.1−FおよびEx4−RのPCRにおける1547bpのバンドをクローニングして配列決定すると、イントロン3がスプライシングで除かれた配列に相当し、これらの試料中へのDNAの混入を表すことが示唆された。
表11では、定量的RT−PCRを使用して、8つの全RNA単離物におけるKCNH2−1Aと比較したアイソフォーム3.1の相対的な発現量を計測した。試料はすべて、試料に対するDNA混入の影響を防ぐためにcDNA合成に先立ってDNaseで処理した。Ct値はすべて同じ閾値で測定し、試料の発現値はすべて3連で計測した。
最後に、ERGファミリーの遺伝子はいくつかの生物種にわたって配列が適度に保存されているので(J.W.Warmke and B.Ganetzky 1994 Proc Natl Acad Sci U S A 91:3438)、本発明者らは、アイソフォーム3.1が他の哺乳動物に存在すると予想した。しかしながら、同じように5’−RACEを使用しても、マウス脳ではアイソフォーム3.1相同体を検出することができなかった。さらに、in silico分析から、アイソフォーム3.1に特有の1.1Kb領域が霊長類以外では極めて退化していることが明らかとなった(図21)。特に、マウス、ラット、イヌ、およびゼブラフィッシュでは、エキソン3の上流3kb以内にプロモータ様の配列は観察されず、エキソン3とフレームが一致する最も長いORFは開始メチオニンを欠いている(図21)。
図21Aを参照すると、ヒト、アカゲザル、マウスおよびラットのKCNH2−1A(hERG−1A)エキソン3スプライス部位上流の250bpの領域および180bpのエキソン3の、多重アラインメントが示されている。ゲノム配列はUCSCから入手し、ClustalW(ワールドワイドウェブebi.ac.uk/clustalw)を使用してアラインメントした。エキソン3スプライス部位(CAG)は細い破線で囲まれており、その後にエキソン3(太い破線で囲む)が続いているが、いずれも生物種間で高度に保存されている。フレームに一致している開始コドン(ATG)は、ヒトおよびアカゲザルの配列については実線で囲んで示されているが、マウスおよびラットの該当するATGはフレームシフトしている(フレームに一致したコドンは実線で囲んで示されている)。図21Bは、エキソン3とフレームが一致するこの領域の予測ORFおよびKCNH2コード配列の残りの部分の多重アラインメントを示す。ここでも、ヒトおよびアカゲザルの配列は開始メチオニンを示すが、マウスおよびラットの配列には、停止コドンの前に上流のフレームが一致するメチオニンがない。
統合失調症およびリスク遺伝子型の被験者におけるアイソフォーム3.1の高発現
霊長類特異的であり、脳で豊富に発現すること、およびアイソフォーム3.1の第1エキソンの5’側上流にリスクSNPが位置することから、本発明者らは、統合失調症の遺伝的リスクの機構がアイソフォーム3.1の示差的発現を伴うものと仮定した。定量的RT−PCRを使用して、本発明者らは、アイソフォーム3.1の発現が患者のHF内では健康な対照被験者と比べて有意に増大していることを見出した(p=0.012、図7A)。KCNH2−1Aに対するアイソフォーム3.1の比率は、患者における2.5倍の劇増を示した(p=0.003)。さらに、アイソフォーム3.1の高発現レベルは、健康な対照被験者の間でもリスク対立遺伝子に有意に関連していた(図7B)。この傾向は人種または診断に関係なく観察され、薬物または遺伝的背景の層別化という潜在的交絡因子を排除している。これらの結果は、統合失調症との関連の遺伝学的機構がアイソフォーム3.1の転写調節に関与し、かつこのアイソフォームの過剰発現および潜在的生理作用が障害の病因と関係するという結論へと収束する。
電気生理学により明らかとなったアイソフォーム3.1の機能的役割
アイソフォーム3.1の構造分析から、潜在的に特有の生理作用を示唆するいくつかの興味深い特性が明らかとなった。N末端のPASドメイン(aa25〜136)は、hERGの固有の特徴である、KCNH2チャネルの緩徐な脱活性化を保証している(M.C.Sanguinetti and M.Tristani−Firouzi 2006 Nature 440:463)。対照的に、hERGチャネルのN末端の少数のアミノ酸(aa7〜12)が、チャネルの脱活性化を促進している(H.Terlau et al.1997 J Physiol 502:537)。KCNH2−1Aと比較すると、アイソフォーム3.1はN末端の最初の102アミノ酸が6つの新しいアミノ酸に置き換わっており(図9A)、促進シグナルはすべて除去され、PASドメインの大部分が削除されている。この新しいチャネルアイソフォームの生物物理学的特徴を決定するために、本発明者らは、KCNH2−1Aまたはアイソフォーム3.1のいずれかを用いてトランスフェクトされたHEK細胞について全細胞記録(whole−cell recording)を実施した。−60mVに保持し、チャネルを様々な脱分極化ステップ(図9B、上)によって活性化した。以前に報告されているように、KCNH2−1Aは典型的な緩徐な活性化を示した(図9B、中)。アイソフォーム3.1も緩徐に活性化された(図9B、下)。定量分析からは、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1の活性化動態の差は明らかとはならなかった(図9D)。膜電位が−120mVまで過分極化すると、チャネルは不活性状態から急速に回復し、その結果、徐々に脱活性化する大きな「末尾電流」を伴う(図9C、上)。hERGチャネル阻害剤であるE−4031を用いて細胞を処理すると、この電流は完全に阻止され(図9C、上)、この電流がhERGチャネルによって専ら仲介されることが示唆された。対照的に、アイソフォーム3.1でトランスフェクトされた細胞は劇的に低い末尾電流(図9C、下)を示した。E−4031を用いた処理は同様にこの電流を阻止し、該チャネルの性質が確認された。2つのアイソフォームの脱活性化動態をさらに比較するために、膜電位を最初に1秒間で+60mVまで脱分極化し、その後様々な電位差の過分極化ステップとした(図9E、上)。アイソフォーム3.1によって仲介される大きな内向き電流は、KCNH2−1Aによる電流よりもはるかに速くベースラインに向かって減衰した(図9E、中および下)。電流の脱活性化相を単一指数関数曲線にフィッティングして、電位依存的な脱活性化定数(τ)を得た(図9F)。試験したすべての電位ステップ(−70mV−120mV)において、τは、KCNH2−1Aと比較するとアイソフォーム3.1において大幅に低下している。総合すると、アイソフォーム3.1は、劇的に速い脱活性化動態を備えた内向き整流K+電流を仲介する。
図9Aを参照すると、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のドメイン構造の概略図により、最初の先導配列、PASドメイン(またはアイソフォーム3.1の場合は部分的なPASドメイン)、およびKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1の間で同一のアミノ酸配列が示されている。バーの上の数字はアミノ酸の部位である。図9Bは、−60mVのVから、10mVきざみで−100〜+80mVの電位までの電圧ステップ(2秒)と、その後の−120mVへの電圧パルスによって引き起こされた電流を示している。上側パネル:電圧のプロトコール。中央および下側パネル:KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のcDNAでそれぞれトランスフェクトした細胞から得られたトレース。これらのトレースはリーク電流について補正されている。図9Cは、Aと同じプロトコールを使用して、+80mVの保持電位から−120までの試験パルスによって引き起こされた末尾電流に対するE−4031の影響を示している。10μMのE−4031を用いた処理の前後で同じ細胞から記録されたトレースが重ねられている。上側および下側パネルは、それぞれKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のcDNAでトランスフェクトされた細胞から記録されたKCNH2電流を示す。図9Dは、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1の活性化曲線を例証している。図9Eは、+60mVから10mVきざみで−120mV〜−70mVの電位までの電圧ステップによって引き起こされた末尾電流を示している。上側および下側パネルのトレースは、それぞれKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1の末尾電流を表す。図9Fは、様々な再分極化電圧におけるKCNH2電流の脱活性化時定数を示している。−120〜−70mVの間で、KCNH2電流の減衰相を単一指数関数によってフィッティングして脱活性化定数を計算した。データは平均±SEとして示されている。記録された細胞の数は括弧内に示されている。
本発明者らは次に、皮質ニューロンにおけるアイソフォーム3.1の機能的な役割を調べた。げっ歯動物CNSのニューロンはKCNH2−1Aを発現するがアイソフォーム3.1は発現しないことを考慮すると、これらのニューロンに導入されたアイソフォーム3.1はおそらく内在性のKCNH2−1Aと複合体を形成し、その結果、K+電流の脱活性化動態を著しく変化させると思われる。アイソフォーム3.1を、培養した皮質ニューロン内へ播種当日にGFPを用いて、または用いずにトランスフェクトし、NaおよびCa2+電流を阻止するために阻害剤カクテルで灌流した後に10日間培養したニューロンについて、全細胞電圧固定記録を実施した。GFPのみでトランスフェクトされたニューロンでは、図9Eと同様の電圧プロトコールを適用すると一連の末尾電流が引き起こされ、該電流はE−4031により阻止された(図10A)。対照の電流(上)からE−4031処理後の電流(中央)を差し引くと、典型的な緩徐な脱活性化動態を示す全くの「KCNH2−1A仲介型」の電流(下)が生成された(図10A)。対照的に、アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンに同じプロトコールを適用すると、脱活性化が非常に速い、劇的に低い末尾電流が引き起こされた(図10B)。定量的分析から、−100mVの設定電位でτはそれぞれ5.88倍(速い成分)および7.43倍(遅い成分)低下した(図10C)。これらの結果は、内在性のKCNH2−1Aと複合体を形成することによって、アイソフォーム3.1が膜の再分極化動態を変化させ、ニューロンの興奮性の増大をもたらしている可能性を示唆する。この可能性について試すために、本発明者らは、電流固定条件下でのステップ脱分極によって引き起こされる活動電位について調べた。対照ニューロン(トランスフェクトされていない)ならびにGFPでトランスフェクトされたニューロンにおいて、1秒の脱分極により約11回の活動電位が引き起こされた(図10D、上および中央)。アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンでは、同じ脱分極ステップにより、対照ニューロンおよびGFPでトランスフェクトされたニューロンと比較して著しく多いスパイクが誘導された(図10D、下)。平均では、40pAの脱分極化ステップによって引き起こされたスパイク頻度はそれぞれ、対照ニューロンでは8.9±1.3Hz、アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンでは16.6±0.5Hzであった(図10E)。スパイク間隔(ISI)をさらに検討すると、アイソフォーム3.1の発現により順応性の発火パターン(図10D、上)から非順応性の発火パターン(図10D、下)に変換することも明らかとなった。確かに、最初のISIと最後のISIとの比は、対照ニューロンの0.57±0.05からアイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンの0.96±0.02へと増大した(図10F)。この結果は興味深い、というのも、非順応性の発火パターンは作動記憶タスクの間のPFCにおけるニューロンの持続的発火に関与するとされてきたからである(Y. Wang et al. 2006 Nat Neurosci 9:534)。総合すると、これらの結果は、ヒトのPFCにおけるアイソフォーム3.1の発現がニューロンの興奮性を著しく増大させることを示唆し、ニューロンの持続的活動の潜在的な機構を提示している。
図10に関しては、皮質ニューロンをGFP単独で、またはGFPおよびアイソフォーム3.1でトランスフェクトし、10日間培養した。図10Aおよび10Bには、GFPでトランスフェクトされたニューロンおよびアイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンにおけるKCNH2を仲介した末尾電流がそれぞれ示されている。末尾電流は、+80mVのVから10mVきざみで−70〜−120mVの電位への電圧パルス(1秒)によって引き起こされた。E−4031感受性の電流は、E−4031適用前に記録された電流からE−4031適用後に記録された電流を差し引くことにより得られた。図10Cは、様々な再分極化電圧におけるE−4031感受性の電流の脱活性化時定数の片対数プロットを示している。−120〜−100mVの間ではE−4031感受性の電流の減衰を二重指数関数によってフィッティングしたが、−90〜−70mVの経時変化は単一指数関数に従った。アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンの脱活性化定数は、様々な再分極化電圧において対照ニューロンの脱活性化定数よりも一貫して小さい。図10Dは、培養皮質ニューロンの活動電位発火に対するアイソフォーム3.1の過剰発現の影響を示している。長い脱分極化パルス(40pA、1秒)によって反復的な発火が引き起こされた。対照ニューロンおよびGFPでトランスフェクトされたニューロンでは強いスパイク頻度順応が見られるが、アイソフォーム3.1でトランスフェクトされたニューロンは非順応性の発火挙動を示す。図10Eは、様々な脱分極化電流の注入により引き起こされたスパイク頻度を例証する。スパイク頻度は1秒あたりのスパイクの数として定義される。アイソフォーム3.1を発現するニューロンは、30pAの電流注入を最初として顕著に高いスパイク頻度を一貫して示す。図10Fは、スパイク頻度順応に対するアイソフォーム3.1の影響を示している。40pAの脱分極化パルスによって引き起こされる最初のスパイク間隔と最後のスパイク間隔との比によって計測される非順応の程度は、対照ニューロンまたはGFP発現ニューロンよりもアイソフォーム3.1を発現するニューロンにおいて有意に高かった。データは平均±SEとして示されている。記録された細胞の数は括弧内(D)またはカラム内(E)に示されており、星印は有意差を示している(ANOVA、p<0.01)。
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議論
本明細書に記載された知見は、3つの家族ベースのデータセットおよび1つの症例対照データセットを含む、ヨーロッパおよびアフリカ系アメリカ人の家系の4つの独立した遺伝学的コホートにおいて観察された、KCNH2領域内である7q36.1における統合失調症のリスクとの新規な遺伝学的関連を立証する説得力のある証拠を提供するものである。本発明者らの結果は、遺伝子が遺伝学的に複雑な病気のリスクを伝えるという予備的証拠に関して提唱される「3コホート再現規則(3−cohort replication rule)」(K.E.Lohmueller et al.2003 Nat Genet 33:177)を満たしている。すべての試料がKCNH2のイントロン2の小さなセグメント内のSNPに関連性を示した。同様の状況は、統合失調症の有力な候補感受性遺伝子であると思われる他の遺伝子について報告されてきた(P.J.Harrison and D.R.Weinberger 2005 Mol Psychiatry 10:40;P.J.Harrison and A.J.Law 2006 Biol Psychiatry 60:132;D.J.Porteous et al.2006 Biol Psychiatry 60:123;N.M.Williams et al.2005 Schizophr Bull 31:800)。興味深いことに、48人の統合失調症患者における再シークエンスから、新規であるがまれな(〜1%MAF)SNPであるM25が見出された。これらの家系の調査から、すべての発端者がヘテロ接合の親からM25の非主要対立遺伝子を継承したことが見出され、このことは、KCNH2における遺伝的関連性の、まれな対立遺伝子/まれなバリアント仮説の寄与を立証する証拠を示している可能性がある。リスク対立遺伝子は多様であり、様々な転写ドメインおよびその他の調節ドメインに影響を及ぼす可能性はあるが、同様の下流の分子の変化に収束するようである。
すべての臨床試料が小さな領域(<3kb)との関連性を示し、該領域の遺伝的リスクの大部分はM30、M31およびM33によって十分にタギングされるようである。従って、これらのマーカーは、リスク対立遺伝子を担持するが精神病歴のない様々な遺伝的背景の健康な非血縁個体すべてにおいて、認知障害、脳容積の減少、脳活動の変化を含む演繹的に予測される統合失調症関連の中間的な表現型、およびアイソフォーム3.1発現の増大と、最も強い独立した関連性をも示した。すなわち、本発明者らは、この小さな〜3kb領域における遺伝変異と、統合失調症に強く結びついた臨床的事象との関連、および開始部位がこのリスク領域のわずか〜11kb下流にある特定の新規な転写物の選択的発現との関連を示す。本発明者らは、これらの結果が新しい統合失調症感受性遺伝子を同定すること、ならびにこの関連性の機構が、皮質の発生および機能を変化させて統合失調症の臨床的現象に作用するKCNH2の新規な脳選択的転写物の変則的なプロセシングを伴うことを提唱する。
KCNH2アイソフォームによる、ニューロンにおける細胞膜再分極およびスパイク頻度の制御は、皮質の機能および統合失調症の病態生理にとって興味深い意味合いを有する。皮質の情報処理は、皮質回路内の組織化されたニューロン振動に非常に依存している(R.T.Canolty et al.2006 Science 313:1626)。例えば、前前頭皮質(PFC)のニューロンは、作業記憶にとって重要であると考えられている遅延期間中の高頻度の持続的発火活動を示す(Y.Wang et al.2006 Nat Neurosci 9:534)。本発明者らは、ラットの培養皮質ニューロンにおけるアイソフォーム3.1の発現の結果、hERGチャネルが非常に迅速に脱活性化し、発火頻度の著しい増加および順応性から非順応性への発火パターンの転換がもたらされることを見出した。この「持続的」発火パターンは、高次の認知タスクおよび記憶タスクの基礎となる皮質の情報処理にとって重要である可能性があり、正常なヒトの認知処理におけるアイソフォーム3.1の役割を示唆している。しかしながら、統合失調症の脳におけるKCNH2−1Aに対するアイソフォーム3.1の2.5倍の増加が、ニューロンの興奮性を異常に増大させ、かつ正常な振動リズムを混乱させる役目をする可能性もある。そのような持続性の発火の「律動異常」は、微小回路の変則的変調をもたらし、その結果シグナル対ノイズを十分に調節できなくなると推測される(G.Winterer and D.R.Weinberger 2004 Trends Neurosci 27:683)。したがって、統合失調症の脳内でのアイソフォーム3.1の過剰発現およびニューロンの発火に対するその機能的影響は、統合失調症における皮質のシグナル対ノイズ処理の変化における疾患に関連した変化についての現在の仮説と一致している(G.Winterer and D.R.Weinberger 2004 Trends Neurosci 27:683)。
アイソフォーム3.1の発見は、説得力のある治療上の意味を有する。アイソフォーム3.1の独特の構造、非順応性の発火におけるその役割、心臓における低発現、ならびに統合失調症患者および遺伝的リスク保因者の脳における発現上昇からは、アイソフォーム3.1を選択的に阻害しKCNH2は阻害しないことにより、心臓の副作用を誘発することなく統合失調症の脳内の無秩序な発火が修正されるという結論がもたらされる。したがって、アイソフォーム3.1は統合失調症の治療の有望な新規治療ターゲットである。
結論として、本発明者らは、新規な霊長類特異的な脳カリウムチャネルを同定および特徴解析し、統合失調症のリスクとの新規な遺伝関連性をKCNH2の小さな領域(7q36.1)内に特定し、かつこの知見を4つの独立な臨床ベースの試料において確認した。特に3つのSNP(M30、M31およびM33)は、試験したすべての集団において関連性の証拠を示した。本発明者らは、KCNH2の特定の3kbの領域内の多型が統合失調症患者では一貫してより高頻度で生じ、また対立遺伝子の不均一性にもかかわらず、この領域内のリスクSNPの健康な対照保因者は、認知の形質(処理速度および視覚的記憶)ならびに海馬の容積および記憶処理時の生理学的関与において統合失調症様の変化を示す、という観察について報告する。これらの関連性の機構は、独特の電気生理学的特性、霊長類および脳特異性、ならびに発現のリスク遺伝子型依存性を有する、KCNH2の新規なアイソフォーム3.1の遺伝的調節と関係があるように思われる。本発明者らの結果は、統合失調症および関連症状のための新規な治療ターゲットの発見への第一歩に相当する。
遺伝的関連コホート
CBDBシブリングスタディは、統合失調症の遺伝的リスクと関係する神経生物学的形質についての進行中の調査の一部として集められた被験者で構成されている(M.F.Egan et al.2000 Am J Psychiatry 157:1309)。参加者は18〜60歳であり、遺伝的な不均一性を低減するために本研究ではヨーロッパ人の子孫と自認しているコーカサス人だけを分析した。DNAは、252人の発端者、その兄弟311人(ほとんど非罹患)、268人の親、および383人の健康な非血縁対照者から入手可能であった。採取、スクリーニング、および除外基準に関するさらに詳しい情報は以前に説明されたとおりである(M.F.Egan et al.2000 Am J Psychiatry 157:1309)。家族ベースのさらに2つのコホートを、米国国立精神衛生研究所統合失調症に関する遺伝学的構想(National Institutes of Mental Health Genetics Initiative on schizophrenia)(NIMHGI)から加えた(S.V.Faraone et al.1998 Am J Med Genet 81:290)。該コホートは、51組のアフリカ系アメリカ人家族(GI−AA)および71組のコーカサス人家族(GI−C)から構成されるものであった。統合失調症または分裂情動性障害の診断を受けた少なくとも1人の兄弟、および少なくとも1人の親からDNAを入手可能な核家族だけを組み入れた。第4のコホートはドイツ連邦共和国のミュンヘン地域から収集され、501人の統合失調症患者および626人の健康な非血縁対照者で構成されている(K.K.Nicodemus et al.2007 Hum Genet 120:889−906)。ドイツのコホートについての採取、評価、および除外基準に関するさらなる詳細については説明済みである(K.K. Nicodemus et al.2007 Hum Genet 120:889−906)。
候補遺伝子のスクリーニング
統合失調症患者および健康な対照者の間で示差的に発現されるとして以前に報告されたものから10個の候補遺伝子が選択された(S.Prabakaran et al.2004 MoI Psychiatry 9:684)。対象とする遺伝子の一部またはすべてと重なり合うハプロタイプブロックをタギングし、かつあらかじめ設計されたTaqMan SNPアッセイ(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc))があるhtSNPについて、CBDBシブリングスタディの175組の家族(698人のコーカサス人被験者)のスクリーニング試料に関してジェノタイピングした。すべてのSNPを、以前に述べたように5’−エキソヌクレアーゼTaqMan SNPアッセイを使用してジェノタイピングした(K.J.Livak 1999 Genet Anal 14:143)。単一のマーカーおよび全体的なハプロタイプの関連性試験を、家族ベースの関連性試験(FBAT)(S.Horvath et al.2001 Eur J Hum Genet 9:301)を使用して実施し、α=0.05で評価した。
KCNH2のジェノタイピングおよび再シークエンス
KCNH2およびNOS3の65.2kbの領域(第7染色体:150280464−150345679)の中の合計43個のSNPについて遺伝子型を得られた。ポリモルフィック社(Polymorphic Inc.)(米国カリフォルニア州アラミダ所在)により、またインハウスでも、48人の統合失調症患者において、UCSCゲノムデータベース(genome.ucsc.edu)内において生物種間で高度に保存されている、rs1036145に隣接する10.4Kb(第7染色体:150,299,575−150,309,948)およびエキソン3の上流3.1Kb(第7染色体:150,287,750−150,290)を含む合計13.5Kbを再シークエンスした。再シークエンスにより11個の新規なSNPが見出された。SNPは前述同様にTaqMan SNPアッセイを使用して4つのコホートすべてにおいてジェノタイピングされた。最後に、CBDB/NIMH脳コレクション(以下を参照)の116人の個体(34人の統合失調症患者および82人の健康な対照者)においてSNP M33のジェノタイピングを行い、該個体についてはQPCRのためにDLPFCおよび海馬から全RNAも抽出した(以下を参照)。
認知能力の検査
認知能力検査によって、CBDBの家族ベースのコホートに含まれる個体230〜330人についてデータを入手することができた。検査は、統合失調症の患者において著しく影響を受けることが示された様々な特徴、例えばIQ、視覚的記憶および学習記憶、注意持続時間などの評価を目指したタスクを含むものとした(M.F.Egan et al.2001 Biol Psychiatry 50:98)。統合失調症の遺伝的リスクの増加に関連していることが示された(M.F.Egan et al.2004 Proc Natl Acad Sci USA 101:12604;T.E.Goldberg et al.2006 Neuropsychopharmacology 31:2022;J.H.Callicott et al.2005 Proc Natl Acad Sci U S A 102:8627)9つの神経心理学的検査由来の24個の成績スコアの要素分析から、これらの尺度の差異の68%を説明した7つの要素が同定された(Genderson,M.R.et al.Schiz Res(近刊))。これらの7つの要素を、認知タスクの成績(以下を参照)に対する遺伝子型の影響の評価に使用したが、該要素は:言語記憶(Verbal Memory)、Nバック(Nback)、視覚的記憶(Visual Memory)、処理速度(Processing Speed)/IQ、カード分類(Card Sorting)、注意力(Attention)、および数唱(Digit Span)と呼ばれている。各要素に含まれる試験の尺度に関するさらに詳しい情報は表4に提供されている。
統計遺伝学的分析
F−正確確率検定を使用してハーディ−ワインベルク平衡(HWE)を検定した。単一SNPの分析は、核家族における家族ベースの関連性試験(FBAT)(S.Horvath et al.2001 Eur J Hum Genet 9:301)と、非血縁の症例対照の比較におけるSTATAバージョン8.2(米国テキサス州カレッジパーク)を使用したロジスティク回帰とを使用して実施した。ハプロタイプ分析は、家族についてはFBATを使用し、非血縁の症例対照試験ではRパッケージhaplo.stats(D.J.Schaid et al.2002 Am J Hum Genet 70:425)を使用して実施した。検定はすべてシミュレーションで実行され、1000回の反復後のp値を表している。認知能力の中間的な表現型については単に線形回帰を使用して対照者において検定し、7つの標準化された誘導要素スコアに基づくものとした。
定量的リアルタイムPCR(rt−PCR)
ヒト脳組織をCBDB/NIMH脳コレクションの一部として採取した。採取、スクリーニング、および解剖手順に関する詳細は説明済みである(B.K.Lipska et al.2006 Hum Mol Genet 15:1245)。NOS3(Hs00167166_m1)およびKCNH2(KCNH2−1A;Hs00165120_m1)に加えて3つのハウスキーピング遺伝子(GUSB、B2MおよびPBGD)の主要な転写物のためのあらかじめ設計されたTaqMan MGBアッセイ(アプライドバイオシステムズ社)を使用して、HBS被験者のDLPFC(69例が対照;31例が統合失調症)または海馬(59例が対照;29例が統合失調症)から単離された100ngのcDNA等価物における発現を計測した。カスタムTaqMan MGBアッセイは、アイソフォーム3.1については該遺伝子の5’−UTR領域を標的として設計された(F−プライマー:5’−CATGAGAAAAGAATTATATACATTATGTGTATCACAACATC、配列番号18;R−プライマー:5’−GCCTCATTTTTTCCATCTATAAAATGGGAA、配列番号19;プローブ:5’−ACTGTGTACCCCATAAATATGTA、配列番号20)。16人の個体(無作為に選択)由来のcDNAプールを使用して、8点の、1/2系列希釈による標準曲線を作出した。QPCR反応はすべて3連で実施した。
NOS3、KCNH2−1A、およびアイソフォーム3.1アッセイの発現レベルを、GUSB(Hs99999908_m1)、B2M(Hs99999907_m1)、およびPBGD(Hs00609297_m1)の相乗平均に対して標準化した(J.Vandesompele et al.2002 Genome Biol 3:RESEARCH0034)。データは、シャピロ−ウィルクW検定を使用して正規性を検定した。NOS3のqPCRデータは非正規分布し、従ってlog変換されたが、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のqPCRデータは正規分布した。標準化したすべての発現値を、後進ステップワイズ線形回帰を使用して様々な人口統計学的因子および試料の因子の主効果に関して検定した。検定した因子には:RNA integrity number(RIN)、死後脳のpH、死後経過時間(PMI)、死亡時の年齢、死戦状態、死の様態が含まれる。有意な回帰モデル係数を有する変数は、診断に関する最終的なANCOVAモデルに含めた(α=0.05で評価)(表10を参照)。遺伝子型および人種の影響については、人種およびM33を含む別のANCOVAモデルを使用して検定した。
画像化の方法
被験者:本研究における画像化に参加した被験者はすべてコーカサス人であった(人口統計学的データについては表5および6を参照)。該被験者は神経学的問題、精神医学的問題、または物質濫用の問題がないことが明らかにされ、他の医学的問題の経歴または大脳の代謝および血流に関連する内科的治療歴もなかった。全ての遺伝子型群にわたって年齢、性別、IQスコアおよび教育の分布に有意差はなかった。対象とする遺伝子型を備えた被験者について利用可能なすべてのスキャンがこれらの分析に使用された。
構造画像処理:三次元構造的MRIのスキャンを、1.5TのGEスキャナで、124枚の矢状断(0.94×0.94×1.5mmの分解能)を伴うT1強調SPGRパルスシーケンス(TR/TE/NEX24/5/1、フリップ角45度、マトリックスサイズ256×256、FOV 24×24cm)を使用して取得し、既述のようにして(L.Pezawas et al.2004 J Neurosci 24:10099)前処理し、続いてカスタマイズしたテンプレート(J.Ashburner and K.J.Friston 2000 Neuroimage 11:805;C.D.Good et al.2001 Neuroimage 14:21)を使用して、最適化されたVBM法を行った。得られた灰白質画像を、統計処理の前に12mmのガウスカーネルで平滑化した。解析は、SPM2(K.J.Friston et al.1994 Hum Brain Mapp 2:189−210)(ワールドワイドウェブfil.ion.ucl.ac.uk/spm)の一般的線形モデル(General Linear Model)の中のMATLAB7.02(マスワークス(Math Works))を使用して、リナックス・ワークステーション(レッドハット(RedHat))で実施した。本研究で使用されるものと同一のデザイン行列のスペックは、他所に詳細に記載されている(L.Pezawas et al.2004 J Neurosci 24:10099)。簡潔に述べると、灰白質容積に対するKCNH2 SNPの影響を、以下の対象外の共変量すなわち:灰白質総容積、年齢の一次および二次直交多項式、および性別、を含んだ共分散分析モデルの使用により検討した。仮説に基づいて推進される関心領域(ROI)研究方法を用いて、海馬体内の構造における遺伝子型に関連した変化を調査した。灰白質容積の変化を、海馬に対して小容積補正(small−volume correction)した後に片側tコントラストを使用して統計的に評価した。誤検出率(false discovery rate)の推定を使用して多重比較のための補正を行い、確率0.05を有意とみなした。解剖学的な海馬のROIは、WFU Pick atlasソフトウェア(ワールドワイドウェブfmri.wfubmc.edu)を使用して作成した。本発明者らは、関心容積(VOI)SPM2ツールボックスを使用して、最も有意性の高い海馬のクラスターのピークから調整された灰白質容積測定のデータを抽出した。
機能的タスク:fMRIスキャン中に、被験者は、確実に海馬体に関与することが既に報告されている(A.R.Hariri et al.2003 J Neurosci 23:6690)陳述記憶タスクを実施した。パラダイムは、新規で複合的な場面の符号化およびその後の検索で構成されるものとした。4つの符号化ブロックに続いて4つの検索ブロックが、受動的なクロスヘアー固定静止状態と交互に配置されて、合計17ブロックとなった。符号化ブロックの間、被験者は3秒間ずつ連続的に提示される6つのイメージを見て、各イメージが「屋内の」場面を表わすか「屋外」の場面を表わすかを判断した。すべての場面は中立的な感情価の場面であり、標準化されたセット(P.Lang,B.M.,B. Cuthbert,「International Affective Picture System(IAPS):technical manual and affective ratings」(NIMH Center for the Study of Emotion and Attention,University of Florida,Gainesville,FL,1997))に由来するものとした。その後の検索ブロックの間に、被験者は3秒間ずつ連続的に提示される6つのイメージを再び見て、各場面が「新しい」か「古い」かを判断した。各検索ブロックでは、場面の半分は「古い」(すなわち、符号化ブロックの間に提示された)もの、半分は「新しい」(すなわち、符号化ブロックの間に提示されなかった)ものとした。イメージの提示の順序は被験者全体でバランスがとれるようにした。スキャンの際には、すべての被験者は利き手でボタンを押すことにより応答し、正確さおよび反応時間の測定が可能となるようにした。
機能画像の処理:
BOLD fMRIは、グラジエントエコーEPIを使用して、GE Signa 3Tスキャナで実施した(24枚の軸位断、4mm厚、1mmギャップ、TR/TE=2000/28ms、FOV=24cm、マトリックス=64×64)。画像は、SPM99(ワールドワイドウェブfil.ion.ucl.ac.uk/spm)を使用して、これまでに報告されているようにして(A.R.Hariri et al.2003 J Neurosci 23:6690)処理した。簡潔に述べると、画像をスキャン実行の最初の画像に再編成し、アファイン変換および非線形変換(4×5×4基底関数)を使用して標準的定位空間(MNIテンプレート)へと空間的に標準化し、8mmのFWHMガウスフィルタおよび脳全体の全体的平均に対して標準化した比を用いて平滑化した。第1レベル分析では、線形コントラストが計算されて、静止状態をベースラインと仮定して符号化および検索について各ボクセルのt統計パラメータマップを生成させた。これらの統計画像を第2レベルの変量効果モデル(ANOVA)に入力し、遺伝子型群内および群間の有意な活性化を同定した。仮説に基づいた関心領域(ROI)研究方法を使用して、海馬体内の機能的活動の変化に関連する遺伝子型を調査した(P<0.05、小容積および多重比較のために補正、海馬VOI内でFWE)。平均BOLDシグナル変化(%)を、有意なクラスターの中でSPM2のMarsBarツールボックスを用いて抽出した(M.Brett et al.,第8回国際ヒト脳機能マッピング学会議(8th International Conference on Functional Mapping of the Human Brain)(Neuroimage,16,abstract 497,Sendai,Japan, 2002))。
行動上の結果:タスクの符号化部分または検索部分のいずれの際にも、SNPそれぞれについて正確さおよび反応時間に3群間の行動上の違いはなかった。
アイソフォーム3.1のクローニングおよび発現
5’−RACEおよびアイソフォーム3.1のクローニング:5’−RACEシステム(v2.0)を使用して推奨どおりに(インビトロジェン(Invitrogen))5’−RACEを実施した。鋳型cDNAは、10種のヒト細胞株および組織(ストラタジーン(Stratagene))由来の市販の全RNAから作製した。エキソン5内の逆方向プライマー(5’−TGTGGGTTCGCTCCTTTATC)(配列番号21)を第1の遺伝子特異的プライマーとして、続いてエキソン4内のプライマーを最初のPCRに使用した(5’−CATGGCCTCGATGTCGTC)(配列番号22)。ネステッドPCRは、エキソン3内のプライマー(5’−ATGATGACAGCCCCATCCT)(配列番号23)を使用して実施した。hERG−1A(NM_000238)、BC001914、およびアイソフォーム3.1に対応する3つの生成物を、ゲル精製、クローニング、および配列決定した。生成物を、10人の統合失調症対照患者の前前頭皮質から単離およびプールされた全RNAを使用して、再び生成させた(B.K.Lipska et al.2006 Hum Mol Genet 15:1245)。
アイソフォーム3.1の3’末端を決定するために、アイソフォーム3.1の特有の領域内の順方向プライマー(5’−CATACGGGGAGGCAGAAGT)(配列番号24)を使用してエキソン3〜15に及ぶPCR生成物を生産した。生成物はすべてクローニングおよび塩基配列決定によって確認した。
クローニングおよびトランスフェクション:新規なKCNH2アイソフォーム3.1 cDNAは、特異的プライマー(3.1F 5’−CATACGGGGAGGCAGAAGT、配列番号25;Ex15−R CTTCTTGGGGAAGCTCTGG、配列番号26)および高正確性(high fidelity)DNAポリメラーゼを用いたロングPCRによってpZero−Bluntベクター(インビトロジェン)の中にクローニングし、次いでpcDNA3ベクター(インビトロジェン)にサブクローニングした。pCDNA3に入ったヒトKCNH2 cDNAはゲイル エイ.ロバートソン博士(Dr.Gail A.Robertson)から寄贈されたものである。エキソン1および2の欠失とKozak共通配列の付加とを備えたアイソフォーム3.1 cDNAは、高正確性DNAポリメラーゼPfx(インビトロジェン)を用いたロングPCRによって生成させて、pcDNA3にクローニングした。KCNH2、アイソフォーム3.1およびpCDNA3ベクターでそれぞれHEK293細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、1%のプロティナーゼ阻害剤カクテル(シグマ(Sigma))およびホスファターゼ阻害剤(シグマ)を含んだT−PERタンパク質抽出試薬(ピアス・ケミカル(Pierce Chemical))250μlで溶解した。ホモジェネートのタンパク濃度を、BCAタンパク質アッセイ試薬キット(米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・ケミカル)で測定した。すべての試料を、単離溶液で必要とされる特定濃度に希釈し、タンパク質試料ローディングバッファー(インビトロジェン)に含めて95℃で5分間変性処理した。
皮質タンパク質の抽出:ヒトの背外側前前頭皮質組織および海馬組織を組織溶解バッファー(ピアス・ケミカル)でホモジナイズした。ホモジェネートのタンパク濃度を、BCAタンパク質アッセイ試薬キット(米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・ケミカル)で測定した。
免疫沈降:2μgの抗HERG(N−20)抗体(サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology,Inc))を、ヒトの皮質または海馬のタンパク質500μgと混合し、回転式振盪機で4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、20μlのγプロテインGビーズ(インビトロジェン)を添加し、該混合物を回転式振盪機で4℃で1時間インキュベートした。抗原−抗体−プロテインGビーズ複合体を、10,000×gにて4℃で30秒間遠心することにより沈殿させた。ペレットを、洗浄バッファーで5回リンスした。50μlの1×試料バッファーをペレットに添加し、結合したhERGタンパク質を解放するために95℃で10分間加熱した。遊離したhERGタンパク質を、10,000×gで5分間遠心することによりビーズから分離した。hERGタンパク質を含んでいる上清を、同じ抗体を用いてウェスタンブロット解析するために4〜12%の勾配ポリアクリルアミドゲルにロードした。
ウェスタンブロット解析:タンパク質試料を4〜12%の勾配プレキャストミニゲル(インビトロジェン)にロードして、トリスNuPAGE(R)泳動バッファー中にて200Vで3時間泳動した。ゲル中のタンパク質を、10%メタノールを含んだNuPAGEトランスファーバッファー中で、100Vで1.5時間かけてニトロセルロースメンブレンへトランスファーした。メンブレンを、トリス緩衝生理食塩水(TBS)+0.1%Tween(R)−20(TBS−T)に含めた5%スキムミルクでブロッキングし、次にウサギ抗herg1ポリクローナル抗体(1:1,000希釈、ケミコン(Chemicon))とともに4℃で一晩インキュベートした。該ブロットをTBS−Tでリンスし、5%の正常ヤギ血清を含むTBS−T中でペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗ウサギ抗体(1:1,000希釈、サンタクルーズ)とともに2時間インキュベートし、TBS−Tでリンスした。ブロットをECL Plus(登録商標)(アマシャム(Amersham))で発光検出し、コダックBioMax(R)フィルムに露光させた。スキャナを使用してフィルムをデジタル化し、得られたイメージを、NIHimageJを使用して分析した。
免疫組織化学的分析:胎生期18日目のラットから皮質を切開し、Ca2+およびMg2+を含まない0.125%チロシン含有HBSSの中で15分間解離させ、DMEM/10%FBSの中で粉砕し、次にポリ−D−リジンでコーティングされた12ウェルプレート上にカバースリップ1つ当たり5,000個として播種した。細胞を、37℃、5%COおよび湿度95%で、最初は10%FBS/DMEMの中で、1日後に無血清培地Neurobasal(登録商標)+B27に切り替えて、増殖させた。7日後、pcDNA3.0ベクターに含めたKCNH2、アイソフォーム3.1またはベクター単独で皮質ニューロンをトランスフェクトした。その後、トランスフェクトした細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した。切片を、1:200の抗KCNH2(hERG)ウサギ抗体(ケミコンインターナショナル(Chemicon International))で二重標識した。一次抗体を一晩適用し(4℃)、次いで組織をHSPBSでリンスした。使用した二次抗体はAlexa−488ヤギ抗ウサギIgGであり、室温で1時間適用した。その後、組織を再びリンスし、次いで退色防止封入剤で封入した。ツァイス(Zeiss)共焦点顕微鏡(LSM 510)を使用して共焦点画像を得た。
電気生理学的解析
細胞培養および一過性トランスフェクション:KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のcDNAを上述のようにしてクローニングおよびサブクローニングした。HEK293T細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で50%コンフルエントにプレート培養した。プレート播種時に、HEK293T細胞を、Lipofectamine(登録商標)2000(インビトロジェン)を使用して、製造業者のプロトコールを用いてKCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のcDNA構築物でトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を視覚化するために、pEGFP−C1(クロンテック(Clontech))DNAをコトランスフェクトした。2〜4日間トランスフェクトされた細胞を、電気生理学的解析に使用した。胎生期18日目(E18)のラットから分離した皮質ニューロンを、最初にアマクサ(Amaxa)提供の説明書に従ってアイソフォーム3.1およびEGFPのcDNAでヌクレオフェクト(nucleofect)した。該細胞を、35mmディッシュ1枚当たり細胞100万個となるように10%FBS含有DMEMに含めて播種し、次いで翌日に、B27(インビトロジェン)、glutamax(登録商標)I(インビトロジェン)が補充されたNeurobasal培地に移した。11〜15日間増殖させたニューロンを電気生理学的解析に使用した。
細胞培養物タンパク質の抽出:HEK293T細胞を、KCNH2−1Aおよびアイソフォーム3.1のDNA構築物を用いたトランスフェクションの48時間後に、プロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ)およびホスファターゼ阻害剤カクテル(カルビオケム(Calbiochem))が補充されたRIPAバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)で溶解させた。タンパク濃度をブラッドフォード・アッセイ(バイオラッド(Bio−Rad))によって測定した。タンパク質を、上述のようなウェスタンブロット法によって解析した。
電気生理学的記録:カバーグラス上のトランスフェクトされたHEK293T細胞および皮質ニューロンを、倒立顕微鏡(Diaphot、ニコン)のステージ上に取り付けられた小型細胞浴槽に移し、蛍光顕微鏡下でGFP陽性として同定し、137mMのイセチオン酸ナトリウム、4mMのグルコン酸カリウム、1.8mMのCaCl、1mMのMgCl、10mMのHEPES、10mMのグルコースを含んでいる細胞外生理食塩水(NaOHを用いてpH7.4)で表面かん流した。標準的な全細胞記録(whole−cell recording)を室温で実施した。記録用ピペットは、130mMのグルコン酸カリウム、1mMのMgCl、5mMのEGTA、5mMのMgATP、10mMのHEPESおよび0.4mMのNaGTPを含むピペット内液(KOHを用いてpH7.2)で充填され、抵抗は2〜4MΩであった。データをパッチクランプ増幅器(Axopatch 200B)によって収集し、pClamp 9.0ソフトウェア(モレキュラー・ディバイシーズ(Molecular Devices)、米国カリフォルニア州サニーヴェール)で分析した。全細胞法の配置が達成された後、直列抵抗を80〜90%補償し、周期的にモニターした。ほとんどの培養皮質ニューロンは、7〜8MΩ付近(範囲は4〜13MΩ)の直列抵抗を有していた。−50mV未満の静止膜電位を有するか、または膜電位、入力抵抗もしくは活動電位振幅が徐々に変化するごく一部の皮質ニューロンは不健康とみなして廃棄した。pClampから得られた電圧プロトコールを、パッチ・ピペットを介して電圧固定条件下のHEK293T細胞に提供した。チャネルの脱活性化に起因するHEK細胞の「末尾」電流の減衰は、単一指数方程式I(t)=I[exp(−t/τ)]+I(式中、I(t)は時間tにおける電流の合計、Iは最初の振幅、τは脱活性化時定数、Iは不活性化しない残余電流である)によってフィッティングした。皮質ニューロンについては、二重指数方程式を用いてτ1およびτ2を得た。電流固定記録も実施した。脱分極化電流ステップを、複合活動電位を引き起こすために導入した。スパイク頻度(スパイク数/脱分極時間(秒))および順応の程度(最初のスパイク間隔と最後のスパイク間隔との比)の両方を計算した。
本発明について、明瞭性および理解を目的としてかなり詳細に説明してきたが、当業者には当然のことながら、本発明の正確な範囲から逸脱することなく形態および細部に様々な変更を行なうことが可能である。上記に引用されたすべての図面、表および付録、ならびに特許、特許出願および出版物は、参照によって本願に組込まれる。

Claims (23)

  1. 配列番号5のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を含んでなる、単離核酸分子。
  2. 前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)で置換されていることを特徴とする、請求項1に記載の単離核酸分子。
  3. 配列番号3を有するcDNAと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
  4. 前記核酸は配列番号5のアミノ酸配列をコードする、請求項1に記載の単離核酸分子。
  5. 前記核酸は、配列番号5のポリペプチドであって第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)で置換されているポリペプチドをコードする、請求項4に記載の単離核酸分子。
  6. ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で請求項1に記載の核酸分子にハイブリダイズする単離核酸分子であって、ハイブリダイズする前記核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A残基のみまたはT残基のみで構成されるヌクレオチド配列を有する核酸分子にはハイブリダイズしないことを特徴とする、単離核酸分子。
  7. 配列番号5のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、単離ポリペプチド。
  8. 前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)に置き換えられている、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
  9. 前記ポリペプチドは配列番号5のアミノ酸配列を含んでなる、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
  10. 前記ポリペプチドの第1番目のアミノ酸がM S S H S A(配列番号16)またはM F S H S T(配列番号17)に置き換えられている、請求項9に記載の単離ポリペプチド。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離核酸分子をベクターに挿入することを含んでなる、組換えベクターの製造方法。
  12. 請求項11に記載の方法によって生産された組換えベクター。
  13. 請求項12に記載のベクターを宿主細胞に導入することを含んでなる、組換え宿主細胞の製造方法。
  14. 請求項13に記載の方法によって生産された組換え宿主細胞。
  15. 請求項14に記載の宿主細胞を、前記組換えポリペプチドが発現される条件下で培養することを含んでなる、組換えポリペプチドの製造方法。
  16. 請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちのいずれか1つに特異的に結合することができる単離抗体。
  17. ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、
    a)試験化合物を、請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちのいずれか1つと接触させること;および
    b)前記ポリペプチドへの前記試験化合物の結合を検出すること
    からなる方法。
  18. ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、
    a)請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちのいずれか1つの活性を、第1の濃度の試験化合物のもとで、または前記試験化合物の不在下で測定すること、
    b)前記ポリペプチドの活性を、第2の濃度の試験化合物のもとで測定すること、ならびに
    c)条件(a)および(b)の下での前記ポリペプチドの活性を、既知の調節因子の存在下における該ポリペプチドの活性と比較すること
    からなる方法。
  19. 活性は電流である、請求項18に記載の方法。
  20. ヒトの神経系疾患の治療に有用な治療薬のスクリーニング方法であって、
    a)試験化合物を、請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子と接触させること、および
    b)前記ポリヌクレオチドへの前記試験化合物の結合を検出すること
    からなる方法。
  21. ヒトの神経系疾患の治療に有用な医薬組成物の調製方法であって、
    a)請求項7〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドのうちのいずれか1つの調節因子を同定すること、
    b)前記調節因子が前記ヒトの神経系疾患の症状を改善するかどうか測定すること、および
    c)前記調節因子を許容可能な製薬担体と組み合わせること
    からなる方法。
  22. 前記調節因子は小分子、RNA分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、またはリボザイムである、請求項21に記載の方法。
  23. 個体が統合失調症に罹患するか、または統合失調症に関連した症状をより多く有するようになる可能性を予測する方法であって、
    a)評価すべき個体からDNA試料を得ること、および
    b)マーカーM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12、M13、M14、M15、M16、M17、M18、M19、M20、M21、M22、M23、M24、M25、M26、M27、M28、M29、M30、M31、M32、M33、M34、M35、M36、M37、M38、M39、M40、M41、M42、またはM43から選択された一塩基変異多型(SNP)に存在するヌクレオチドを測定すること
    からなり、SNPにリスク対立遺伝子由来のヌクレオチドが存在することは、該個体が、そのSNPに保護的対立遺伝子由来のヌクレオチドを有する個体よりも統合失調症に罹患する可能性が高いか、または統合失調症に関連した症状をより多く有する可能性があることを示すことを特徴とする方法。
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