JP2010509607A - ある領域内のどこで次の大地震が起こるかを予知する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、領域内の応力テンソル場の情報に基づいて、次の大地震が領域内のどこで起こるかを予知する方法であって、せん断ずれを引き起こした応力テンソルを決定する。せん断ずれは、想定断層面に適用されたモール−クーロンずれ基準により、不安定な唯一のものであると仮定し、摩擦係数fの関数として、主応力方向を計算する。それから、モール−クーロンずれ基準により、二つの主応力間の関係を確立する。さらに、既知の方向Svにおける垂直応力σvを決定し、弾性理論により、垂直応力σvと主応力との関係を確立する。次いで、スカラーパラメータの関数として、三つの主応力の式を確立し、主応力の式に基づいて単位体積あたりの弾性変形エネルギーの関数を確立する。最後に、弾性変形エネルギーの関数を最小にするスカラーパラメータ値を決定することにより残りの自由度を除去し、主応力の式に決定されたスカラーパラメータ値を挿入する。
Description
本発明は地震、さらに、大地震よりはるかに数の多い微小地震、を引き起こした応力テンソルを測定する方法に関する。多数の微小地震を利用できる場合、全体の応力テンソル場を求めることができ、とりわけ次の大地震がどこで起こるかを予知するのに使用できる。
弾性体(例えば、地殻)の応力テンソル場は、地殻変動に直接結びついており、さらにすべての現存の断層面上で安定性を与える。地球物理学における重要な一つの役割は、断層に沿ったせん断ずれ、例えば、微小地震(通常マグニチュード2〜5)が担っている。そのようなせん断ずれの観測結果は、断層面の法線方向(2つの角度)と断層面に沿ったせん断ずれの方向(1つの角度)との三つのパラメータによって幾何学的に記述される。断層面の法線ベクトルNとせん断ずれベクトルDとの二つの単位ベクトルによって、それぞれのせん断ずれの観測結果を記述するのが適当である。これらのベクトルは互いに垂直であり、それゆえ三つのパラメータによって与えられる。微小地震に関しては、通常、地震の断層面解(FPS)しか利用できない。これは、二つの単位ベクトルが知られているが、どちらがNで、どちらがDであるかは分からないということを意味する。
何十年もこの問題について議論しており、多くの地震解析においても、せん断ずれの機構と岩石の応力場との関係を議論しているが、断層面解、もしくは断層面方向およびせん断ずれ方向に基づいて、それぞれの地震に関する全応力テンソルを与える従来技術の方法はない。
通常使用される方法は、異なる断層面方位を有する四回以上の地震(裂け目でのせん断ずれ)が同一の応力テンソルに起因しているという仮定を必要とする。さらに、上記の方法は、同一の全応力テンソルを与えるのではなく、主応力方向と、いわゆる形状係数 R=(σ2−σ3)/(σ1−σ3) のみを与える。ここで、σ1、σ2、σ3は未知の主応力であり、すなわち、応力テンソルにおける6パラメータのうち4パラメータのみが決定される。当業者ではなく、この計算に詳しくない人のために、"Angelier and Gougel, 1978, Sur une methode simple de determination des axes principaux des constraintes pour une population de failles, C. r. hebd. Seanc. Acad. Sci. Paris, 288, pp 307-310"と"Gephart and Forsythe, 1982, An improved method for determining the regional stress tensor using earthquake focal mechanism data: application to the San Fernando earthquake sequence, J. Geophys. Res., 89, pp 9305-9320"を参考文献とし、本明細書に援用する。
地殻および/または岩盤における応力テンソル場についてのあらゆる経験は、応力テンソル場はあまりに不均一であるため、異なる断層に対して一定の応力テンソルを仮定するのは正当化できないことを示している。また、上記の従来技術の方法は、断層面方位およびせん断ずれ方向が地震を引き起こす応力テンソルとして最適ではないということを示唆しているのは注意すべきである。断層面方位とせん断ずれ方向とが最適なケースは、重要ではない一つのケースとして片づけられる。これは、当業者には知られているが、当業者でない人は、参考文献として援用する"Gephart, 1985, Principle stress directions and the ambiguity in fault plane identification from focal mechanisms, Bull. Seism. Soc. Am., 75, pp 621- 625"を参照されたい。
本発明は、一つが断層面の法線ベクトルNで、もう一つがせん断ずれベクトルDという二つの単位ベクトルが知られているが、どちらのベクトルがNで、どちらのベクトルがDであるかを必ずしも認識しているとは限らない場合に、断層面に沿ったせん断ずれ(地震または微小地震)を引き起こした応力テンソルを決定するという課題に対して新しい解法を提供する。これらのベクトルは互いに垂直である。本発明に係る方法は、それぞれのせん断ずれ(地震)に関して、全応力テンソル(六つのパラメータ、つまり三つの主応力方向と、それらのそれぞれの主応力)を提供する。上記のように、関連するせん断ずれ方向をもつ二つの想定される断層面が存在することを意味するFPSしか一つの地震について得られない場合は、本発明に係る方法は、また、この二つの断層面のどちらかがせん断ずれ面であるということを示す。多数の微小地震が利用され、それらのFPSが決定されている場合、これは従来技術の手法によるルーチン分析であるが、全応力テンソル場が決定される。
本発明は、課題を以下の主請求項から明らかになる方法によって解決する。他の請求項は本発明の有利な具体例に関するものである。
本発明に係る方法の基本的な説明を提示する。単位法線ベクトルNを有する与えられた断層面と、断層面に存在する単位ベクトルDによって与えられる関連したせん断ずれ方向とから始める。FPSのケースでは、どちらがベクトルNで、どちらがベクトルDであるかは不明の、結果として二つの想定される断層面をもたらす。どちらの断層面が正しい断層面なのかを決定することが不可能ならば、二つの想定される断層面それぞれ対して計算を続けてもよい。それぞれの計算が完了した際に、本発明はどちらかの断層が正しい断層であるかの回答を与える。これは後に本明細書中で説明される。
本発明の第一段階は、応力テンソルとせん断ずれ(N,D)との関係がモール−クーロンずれ基準(Mohr-Coulomb slip criterion)を満たしていると仮定することである。断層面とせん断ずれ方向との他のすべての組み合わせは、このずれ基準により不変であると仮定する。モール−クーロンずれ基準は、知られていると思われる断層面の摩擦係数fの関数として応力テンソルの主応力方向を直接与える。また、ずれ基準は、二つの主応力間の関係を与える。そして、応力テンソルの二つの自由度を決定することが残る。
本発明は、既知の方向Svにおける垂直応力σvが知られており、垂直応力σvはさらに制限基準を与えると仮定する。それは、通常、最も簡単に評価することができる鉛直方向の垂直応力である。
残りの自由度は、主なケースでは、等方性で応力σvを有する基準応力状態に対する単位体積当たりの弾性変形エネルギーの関数を最小化することで除去される。これは、全応力テンソルが決定されることを意味する。6つの基準(3つの主応力方向に加えて、モール−クーロンずれ基準からの主応力のマグニチュードに関する1つの基準と、σvに関する仮定からの1つの基準と、エネルギーの最小化からの1つの基準)は、応力テンソルにおける6つのパラメータを与える。
大部分の用途では、最小化されている変形エネルギーの式において、非等方性の基準応力をも使用する理由が存在する。多くのケースでは、将来の大地震がどちらの機構(NベクトルとDベクトル)を有するかは知られている。そのようなベクトルNrefとベクトルDrefによって定義される与えられた基準機構において、等方性の基準応力状態に関連して計算された変形エネルギーを有する上記の主なケースによれば、新しい代替の基準応力テンソルが、はじめに決定される。この代替の基準テンソルにおいて、σi ref,i=1,2,3を三つの主応力とし、Si ref,i=1,2,3を三つの主応力方向ベクトルとする。スカラーsが、代替の基準テンソルに対する変形エネルギーを最小化することによって決定されると、機構Nref、Drefを有する地震を引き起こしうる不安定性にどれだけ近いかという慎重で、保守的な評価が得られる。
しかしながら、応力テンソルのより可能な評価は、適切な基準機構Nref、Drefの情報があれば、等方性の応力テンソルと非等方性の基準テンソルとの二つの基準に対する変形エネルギーの加重和(weighted sum)を最小化することによって得られる。
主応力と主応力方向とを使用する代わりに、テンソル成分を任意座標系に関係付けることも、かなり複雑になるが可能である。その違いは、本発明の趣旨とは関係はなく、より複雑な計算をもたらすだけの純粋数学である。それゆえ、以下すべての議論は、主応力のケースで行うが、これは基本の断層面上で別の座標系を使用するのと全く等価である。
以下、本発明に係る実施例を、より詳細に説明する。
1.岩石および断層系の材料パラメータ
E =岩石の弾性係数(通常、約90GPa)
ν =岩石のポアソン比(通常、約0.25)
f =断層の摩擦係数(通常、約0.6)
t0=せん断ずれにおける断層強度(通常、1〜2MPa)
E =岩石の弾性係数(通常、約90GPa)
ν =岩石のポアソン比(通常、約0.25)
f =断層の摩擦係数(通常、約0.6)
t0=せん断ずれにおける断層強度(通常、1〜2MPa)
2.断層面およびせん断ずれ方向のパラメータ
z =断層の深さ、表面ではz=0
N =断層面の法線方向における単位ベクトル
D =せん断ずれ方向を与える単位ベクトル、Dは断層面に存在する
ベクトルNとDの方向は、ベクトルN+DがTベクトルの方向に存在し、ベクトルN−DがPベクトルの方向に存在するように定義される。ここで、PおよびTベクトルは、断層面内のせん断ずれと弾性的に同等の、圧力および張力方向の二つの力を持つ双極子である。PおよびT軸なる用語は当業者に知られている。初心者のために、"Aki and Richards, 1980, Quantitative Seismology, Theory and Methods, volume I, W H Freeman and Company, USA"もしくは基本的な地震学の教科書を参考文献として、ここで援用する。
z =断層の深さ、表面ではz=0
N =断層面の法線方向における単位ベクトル
D =せん断ずれ方向を与える単位ベクトル、Dは断層面に存在する
ベクトルNとDの方向は、ベクトルN+DがTベクトルの方向に存在し、ベクトルN−DがPベクトルの方向に存在するように定義される。ここで、PおよびTベクトルは、断層面内のせん断ずれと弾性的に同等の、圧力および張力方向の二つの力を持つ双極子である。PおよびT軸なる用語は当業者に知られている。初心者のために、"Aki and Richards, 1980, Quantitative Seismology, Theory and Methods, volume I, W H Freeman and Company, USA"もしくは基本的な地震学の教科書を参考文献として、ここで援用する。
3.モール−クーロンずれ基準と、モール−クーロンずれ基準から導かれる四つの基準。
モール−クーロンずれ基準は当業者によく知られている。初心者のために、"Jaeger and Cook, 1969, Fundamentals of Rock Mechanics, Chapman and Hall, London"を参考文献としてここで援用する。上記文献は、モール−クーロンずれ基準について優れた記述を提供する。しかしながら、クーロンの原公式は等方性の媒体に関連しているが、本明細書ではあらゆる方位を有する断層面が常に想定されていることに注意すべきである。
モール−クーロンずれ基準は当業者によく知られている。初心者のために、"Jaeger and Cook, 1969, Fundamentals of Rock Mechanics, Chapman and Hall, London"を参考文献としてここで援用する。上記文献は、モール−クーロンずれ基準について優れた記述を提供する。しかしながら、クーロンの原公式は等方性の媒体に関連しているが、本明細書ではあらゆる方位を有する断層面が常に想定されていることに注意すべきである。
モール−クーロンずれ基準MCSは、以下のように(ここでは、断層面に対して)記述できる。
ここで、τはせん断ずれ応力、σnは断層面の垂直応力、pは水圧、t0はσn=pの場合の断層のせん断ずれ強度である。
ここで、水圧pが含まれていることに注意すべきであり、これはJaegerとCookの書籍においても議論されている。
当該断層面がMCSを最大にする断層面内に存在すると仮定し、当該断層面に関して、(JaegerとCookによれば)以下の式をせん断ずれに適用する。
ここでσ1は仮想最大主応力であるが、場合によっては、二番目に大きい主応力であることがわかっている。σ3は最小主応力である。(1)式は主応力のマグニチュードに関する制限基準である。
仮に、
S1=σ1方向の単位ベクトルとし、
S2=σ2方向の単位ベクトルで、σ2は上記(1)式に含まれない主応力とし、
S3=σ3方向の単位ベクトルとする。
S1=σ1方向の単位ベクトルとし、
S2=σ2方向の単位ベクトルで、σ2は上記(1)式に含まれない主応力とし、
S3=σ3方向の単位ベクトルとする。
そこで、S1とS2とは、NとDによって作られる断層面に存在する。また(JaegerとCookによれば)、NとS1との間の角度がβに指定されると、2β=arctan(−1/f)で、かつ90<2β<180となる。そして、DとS1との間の角度αは90−βとなる。これは以下の主応力方向を与える。
ここで、×はベクトル積である。
以上のように、応力テンソルの四つの基準すべてが規定されるが、それらは本発明によれば、モール−クーロンずれ基準から集められる。
4.応力σvおよびその方向
本発明に係る方法は、一つの方向Svにおける垂直応力は既知のものとみなしうることを示唆している。ここで、この垂直応力はσvと指定される。最も一般的なケースは、Svが垂直で、σvは通常、以下の式で仮定することができる。
本発明に係る方法は、一つの方向Svにおける垂直応力は既知のものとみなしうることを示唆している。ここで、この垂直応力はσvと指定される。最も一般的なケースは、Svが垂直で、σvは通常、以下の式で仮定することができる。
仮に、γ1=S1*Sv,γ2=S2*Sv,γ3=S3*Svとする。ここで、S1*SvはベクトルS1とSvのスカラー積である。そして、弾性理論によれば、以下の式が垂直応力σvに適用される。
これは主応力σ1、σ2およびσ3に関する第二の制限基準である。
5.スカラーパラメータの関数としての主応力。
仮に、以下のように仮定する。
仮に、以下のように仮定する。
γ2≠0では、(1)式と(2)式に基づき、かつスカラーパラメータsにより、以下の代替式を立てることができる。
γ2=0では、(2)式はσv=γ1 2σ1+γ3 2σ3となり、
σ1=(σv−γ3 2・σ3)/γ1 2を与える。
σ1=(σv−γ3 2・σ3)/γ1 2を与える。
γ1≠0では、以下のようになる。
γ1=0では、(2)式はσv=σ3であり、以下のようになる。
σ1、σ2およびσ3とは対照的に大きさをもたないので、内容的に特に便利と思われる代替スカラーパラメータは、形状係数R=(σ2−σ3)/(σ1−σ3)であり、以下の式を与える。
また、他のパラメータも考えられる。あらゆるケースにおいて、スカラーは残り(第六)の自由度を表わす。
6.水圧p
本発明に係る方法は、水圧が上記既知のパラメータに関連していることを必要とする。水圧は、直接測ることによって知ることもできるし、断層系が土壌表層と伝導接続しているならば、静水(hydrostatic)と仮定することもできる。あるいは、土壌表層と伝導接続していない断層系では、水圧は、以下の式に従って既知の応力σvと関連付けることができる。
p=σv−Cp
ここで、Cpはσvとは独立した定数であり、以下のように仮定される。
Cp=(2t0/a)+(ρb−ρw)・h・g
ここで、ρbは岩石の密度、ρwは水の密度、hは後述する長さパラメータである。
本発明に係る方法は、水圧が上記既知のパラメータに関連していることを必要とする。水圧は、直接測ることによって知ることもできるし、断層系が土壌表層と伝導接続しているならば、静水(hydrostatic)と仮定することもできる。あるいは、土壌表層と伝導接続していない断層系では、水圧は、以下の式に従って既知の応力σvと関連付けることができる。
p=σv−Cp
ここで、Cpはσvとは独立した定数であり、以下のように仮定される。
Cp=(2t0/a)+(ρb−ρw)・h・g
ここで、ρbは岩石の密度、ρwは水の密度、hは後述する長さパラメータである。
本発明に係る方法の多くの応用において、hの平均のみが必要となる。せん断ずれ方向を有する多数の断層面を利用できれば、当該方法を用いることで間接的にhの平均を推測することができる。一般に、hは岩石の強度とその断層系に依存する。新しい玄武岩では、h=400mが適切な平均値である。一方、例えば花崗岩では、600−1200mの平均値を与える。
7.最後(第六)の自由度の除去
未知のスカラー、例えば、主応力の一つかRは、主なケースでは、等方性で圧力σvを有する応力状態に対する単位体積当たりの弾性変形エネルギーGisoを最小化することによって決定される。
未知のスカラー、例えば、主応力の一つかRは、主なケースでは、等方性で圧力σvを有する応力状態に対する単位体積当たりの弾性変形エネルギーGisoを最小化することによって決定される。
Gisoに関する様々な既知の式が存在する。主応力の関数として、Gisoは以下のように記述できる。
等価的に、Gisoは圧縮とせん断ずれエネルギーとに共通に使用され、以下のように記述される。
ここで、圧縮係数はK=E/(3(1−2ν))、せん断ずれ係数はμ=E/(2(1+ν))である。
それぞれの与えられた使用されたのスカラー値に関して、主応力は上記のように計算でき、Gisoの値が得られる。Gisoを最小化するスカラー値は、系統的探査あるいは分析的解法、例えば、スカラーに関するGisoの微分係数をゼロに設定することで計算される。Gisoを最小化するスカラー値が、σ1よりも大きいσ2をもたらすのであれば、主応力および主応力方向の表示1および2を、派生テンソルにおいて変えなければならない。しかしながら、変える前に、σ1、σ2およびσ3は、Gisoを最小化するスカラー値で計算されねばならない。これは与えられた断層面の完全な応力テンソルと関連するせん断ずれ方向とを与える。
上記のように、領域内の大地震の通常の機構であるNベクトルおよびDベクトルについての推測的な情報(歴史的および/または地質学的)がしばしば利用でき、もし、この基準機構が、ベクトルNrefおよびルDrefで定義されれば、以下の手順が用いられる。
まず、主なケースの方法が、基準機構に適用されて、最小化され非等方性の応力テンソルを提供する変形エネルギーGisoを与える。非等方性の応力テンソルは、主応力σi ref,i=1,2,3と基準主応力方向ベクトルSi ref,i=1,2,3とを有する。その後、非等方性の応力テンソルに対する単位体積当たりの弾性変形エネルギーの関数は、以下のようになる。
ここで、τik(s), i=1,2,3、k=1,2,3は、座標系Si ref,i=1,2,3への座標変換後の応力テンソルσi(s), Si, i=1,2,3の成分であり、νはポアソン比であり、Eは弾性係数であり、sは決定されるスカラーである。そこで、等方性のケースおよび上記の非等方性のケースに対する弾性変形エネルギーの合成は、G=q・Giso+(1−q)・Grefと記述され、qは、0≦q≦1で選定される。
残り(第六)の自由度は、上記合成関数を最小にするスカラーパラメータ値を決定することによって除去される。最終的に、決定されたスカラーパラメータ値は、主応力の式に挿入され、主応力を与え、主応力方向とともに、応力テンソルの六つの要素を構成する。
qの選択に関して、q=1のケースは、領域内の地震のタイプに関する推測的な情報なしで前述の主なケースを与える。当然、これは応力テンソルの最も偏りのない評価である。q=0のケースは、保守的で、慎重であり、その領域の典型的な地震に最も密接に関連している応力テンソルが手に入ることを示唆している。地震の機構NrefおよびルDrefが知られているのならば、0と1との間のq値が最適な評価を与えることが予想される。その値は重要ではないが、q=0.5が適当である。
8.一つ以上の想定される断層面およびせん断ずれ方向が存在するという条件において
微小地震に関して、通常、せん断ずれ方向を伴った二つの想定される断層面が存在する。それらの法線ベクトルおよびせん断ずれベクトルは、それぞれN1、D1およびN2、D2で指定されている。(そうすればN1=D2およびD1=N2)。基本的な方法によれば、二つの選択肢のそれぞれは、別々に分析される。二つの想定される断層面のうち絶対最小値Gを与える一つは、実際の断層面であり、応力テンソルを決定するのに使用される。
微小地震に関して、通常、せん断ずれ方向を伴った二つの想定される断層面が存在する。それらの法線ベクトルおよびせん断ずれベクトルは、それぞれN1、D1およびN2、D2で指定されている。(そうすればN1=D2およびD1=N2)。基本的な方法によれば、二つの選択肢のそれぞれは、別々に分析される。二つの想定される断層面のうち絶対最小値Gを与える一つは、実際の断層面であり、応力テンソルを決定するのに使用される。
しかしながら、等方性の基準テンソルを伴う主なケースでは、応力テンソルを計算するのに使用されるのは常に最も垂直な断層面であるということが分った。従って、本発明に係るもっとも簡易な実施例においては、どのケースが絶対最小値Gを与えるケースかは調査しないが、最も垂直な面が、正しい面として直接選択される。
Claims (8)
- 領域内の数ヶ所における局所応力場の情報で構成される応力テンソル場の情報に基づいて、次の大地震が前記領域内のどこで起こるかを予知する方法であって、該方法は、一方は発生した地震の断層面の法線単位ベクトルN、もう一方は前記断層面に存在するせん断ずれ単位ベクトルDで、必ずしもどちらのベクトルがNかDかを認識しているとは限らない互いに垂直な二つの単位ベクトルの情報に基づいて、マグニチュードとは関係なく小規模の地震も含めた、地震という形でせん断ずれを引き起こした六つの独立要素を有する応力テンソルによって規定された前記局所応力場を決定することからなり、想定される断層面に対して、
前記せん断ずれは、考えられるすべての方位を有する想定断層面に適用されたモール−クーロンずれ基準により、不安定な唯一のものと仮定し、
前記断層面の摩擦係数fを決定し、
前記せん断ずれのモール−クーロンずれ基準により、摩擦係数fの関数として、主応力方向(基準1〜3)を計算し、
モール−クーロンずれ基準により、二つの主応力間の関係(基準4)を確立し、
単位ベクトルによって与えられた既知の方向Svにおける垂直応力σvを決定し、
弾性理論により、前記垂直応力σvと主応力との関係(基準5)を確立し、
前記基準4および5の関係に基づいて、スカラーパラメータの関数として、三つの主応力の式を確立し、
前記主応力の式に基づいて前記垂直応力σvを有する等方性基準応力状態に対する単位体積あたりの弾性変形エネルギーの関数を確立し、
前記弾性変形エネルギーの関数を最小にする前記スカラーパラメータ値を決定することにより残りの自由度(基準6)を除去し、ここで必要な場合に、実断層面が最小弾性変形エネルギーを与えるという事実からどのベクトルがNで、どのベクトルがDかという情報を集めることができ、
前記主応力を与え、前記主応力方向とともに、前記応力テンソルの前記六つの要素を構成する前記それぞれの主応力の式に、前記決定されたスカラーパラメータ値を挿入すること、
を特徴とする方法。 - 前記水圧は、p=σv−Cpにより前記既知の応力σvに関連し、ここで、Cpはσvとは独立した定数であり、Cp=(2t0/a)+(ρb−ρw)・h・gと仮定され、ここで、ρbは岩石の密度、ρwは水の密度、hは材料依存パラメータで岩石の強度およびその断層系に依存し、異種の岩石では値が異なる長さ寸法を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 正しい断層面として、最も垂直な想定される断層面を選択することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
- はじめに、前記領域では標準的で、前記断層面の既知の法線単位ベクトルNrefと既知のせん断ずれ単位ベクトルDrefを有し、基準主応力σi ref,i=1,2,3と基準主応力方向ベクトルSi ref,i=1,2,3とを伴う非等方性応力テンソルを与える地震機構に対して当該方法を適用し、
その後、非等方性応力テンソルに対する単位体積あたりの弾性変形エネルギーの以下の関数を確立し、
そして、等方性のケースおよび前記非等方性のケースに対して前記弾性変形エネルギーGisoの合成をG=q・Giso+(1−q)・Grefとして、0≦q≦1を選定し、ここで、1は請求項1による計算を与え、0は典型的な地震の強度に対してどのくらい近いかについて最も慎重な評価を与えるものであり、
そして、前記合成の関数を最小にする前記スカラーパラメータ値を決定することにより前記残り(第六)の自由度を除去し、
最後に、前記主応力を与え、前記主応力方向とともに、前記応力テンソルの前記六つの要素を構成する前記それぞれの主応力の式に、前記決定されたスカラーパラメータ値を挿入すること、
からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
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