図1は、協同的なコンテンツ拡張サービスにより、ユーザが恩恵を受けるインフラストラクチャを示す。インフラストラクチャは、個人的記録のサービスセンタSC及びネットワークNWを含む。個人的記録のサービスセンタSCは、ネットワークサーバの形式をとり、1つ以上の他のネットワークサービスと協力してもよい。個人的記録のサービスセンタは、以後、単にサービスセンタSCと言及される。様々な移動電話がネットワークNWを介してサービスセンタSCと通信できる。図1は、ユーザA,B,Cにそれぞれ属する3つの移動電話MP1,MP2,MP3を示す。3つの移動電話MP1,MP2,MP3にはそれぞれカメラが備わっている。このことは、ユーザA,B,Cが写真をとる、ビデオを写す又は双方を可能にする。移動電話は一般にマイクロフォンを有し、従って、音のレコーダとして使用されてもよい。即ち、各ユーザA,B,Cは、彼又は彼女の移動電話をそれぞれ利用して、個人的記録をとる。そして個人的記録は、オーディオ情報又はビジュアル情報を有し、それらは写真又はビデオの形式でもよいし、又はそれらの何らかの組み合わせの形式でもよい。
サービスセンタSCは、データベースDB及びコンテンツ拡張部AUGを有する。ユーザは、サービスセンタSCのデータベースDBへ個人的記録をアップロードしてよい。それを行うため、ユーザはサービスセンタSCに加入している必要がある。サービスセンタは、料金従量制(pay-per-use basis)で運営されてもよい(例えばクレジットを保存するプリペイドカードが使用されてもよい。)。クレジットは、ユーザが個人的記録をアップロードした場合に所定の量だけ減らされてもよい。或いは、個人的記録のアップロードは無料でもよい。いずれにせよ、データベースDBは多数の様々なユーザの個人的記録を保存し、ユーザA、ユーザB及びユーザCの個人的記録を含む。
サービスセンタSCは、ユーザAに属する個人的記録のコレクション、ユーザBに属する記録の別のコレクション、及びユーザCに属する記録の更に別のコレクションを維持してもよい。従って、各ユーザは、あたかもコレクションが彼又は彼女のハードディスク上に存在するかのように、データベース中の彼又は彼女の個人的記録のコレクションに対するアクセス及び管理を行ってよい。即ち、サービスセンタSCは、データ損失に備えて保護する大容量保存装置として機能する。
コンテンツ拡張部AUGは、様々なユーザからの様々な個人的記録に基づいて、拡張された表現を生成することができる。拡張された表現は、例えば対象物の3次元モデルであり、異なる角度からその対象物を見た様々な写真に基づいて生成される。別の例として、拡張された表現は、音楽的イベントのサラウンド音響表現であり、異なる場所でなされた様々な音の記録に基づいて作成される。
図1の場合、ユーザA,B,Cは観光地の別々の写真P1,P2,P3をそれぞれ撮影している。ユーザA,B,Cはこれら各自の写真をサービスセンタSCに送信する。ユーザAが、その観光地の拡張表現ERを要求しているとする。ユーザAは、例えば写真P1をサービスセンタSCに送信する一方、そのような要求を起こす。これに応じて、コンテンツ拡張部AUGは、言わば、ユーザAにより撮影された写真P1を、ユーザB,Cによりそれぞれ撮影された写真P2及びP3と組み合わせる。より正確には、コンテンツ拡張部AUGは、上記の写真に基づいて、観光地の拡張表現ERを生成する。サービスセンタSCは、その拡張された表現ERを、リクエストを起こしたユーザAに送信する。サービスセンタSCは、拡張された表現が利用可能であることをユーザB,Cに更に通知し、彼らが望むならば、これらのユーザがその強調表現ERをダウンロードしてよいようにする。
強調された表現を生成するため、コンテンツ拡張部AUGは、相互の相補的な個人的記録を特定する必要がある。このため、コンテンツ拡張部AUGは、いわゆるメタデータを利用してもよい。ある個人的記録に属するメタデータは、その個人的記録を説明するデータである。例えば、個人的記録がなされた場所及び個人的記録がなされた時間を、メタデータが示してもよい。また、メタデータは、個人的記録をとった装置の様々な設定を示してもよい。
例えば、図1に示されている3つの移動電話MP1,MP2,MP3の各々は、考察される移動電話の場所を示すGPS受信機を備えていてもよい。ネトワークNWは、3つの移動電話MP1,MP2,MP3各自の場所の指標を与えてもよい。3つの移動電話MP1,MP2,MP3の各々は、時間を示すクロックを有する。従って、移動電話MP1は写真P1に関連するメタデータを送る際、そのメタデータは、写真P1が撮影された場所及び写真が撮影された時間を示す。メタデータは、写真を撮ったユーザAを識別する指標を含んでもよい。そのような身元の指標は、移動電話MP1に含まれている識別情報(ネットワークNW内で身元を確認するための識別情報)に基づいてもよい。同様に、他の移動電話MP2,MP3は、写真P2,P3に関するメタデータをそれぞれ送信する。
図2は、サービスセンタSCの詳細を示す。データベースDBは短期メモリST及び長期メモリLTを含んでよい。コンテンツ拡張部AUGは、次の機能エンティティを含む:粗選択部CSEL(coarse selection facility)、詳細選択部FSEL(fine selection facility)及びコンテンツ拡張プロセッサAUGP。詳細選択部FSEL及びコンテンツ拡張プロセッサAUGPは、人的介在コンソールHICと共にやりとりを行う。
サービスセンタSCは、図1に示されるコンテンツ拡張部AUG及びデータベースDBに加えて、様々な機能エンティティを有する。これらの機能エンティティは、受信部REC、コンテンツプロセッサPRC、メタデータ生成部GMD、メタデータ処理部MDH及び関連付部ASSを含む。これらの機能エンティティは、データベースDBに保存する個人的記録を準備する役割を演じる。更に、これらの機能エンティティは、コンテンツ拡張部AUGの申し分のない処理に寄与する。そのためには、メタデータ生成部GMDは1つ以上の補助データベースXDBとやりとりを行い、補助データベースは、必ずしもサービスセンタSCの一部を形成する必要はない。これについては以下で更に説明される。サービスセンタSCは、以下の機能エンティティを有する:リクエスト処理部RQH及び配信部DLV。
上記のどの機能エンティティも、ソフトウエアにより、ハードウエアにより又はソフトウエア及びハードウエアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、これらの機能エンティティの各々は、プロセッサを適切にプログラミングすることで実現されてもよい。そのようなソフトウエア形式でえ実現する場合、ソフトウエアモジュールは、特定の機能エンティティに属する特定の処理をプロセッサが実行することを引き起こす。別の例として、上記の機能エンティティの各々は、専用回路の形式で実現されてもよい。これはハードウエア形式の実現例になる。混合形態は、1つ以上の専用回路に加えてソフトウエアモジュールを含む。
図3Aは、入力メッセージを受信した際にサービスセンタSCが行う様々なステップを示す。入力メッセージIMは、例えば、図1に示されている3つの移動電話MP1,MP2,MP3の何れかから発してよい。入力メッセージIMは、ユーザがサービスセンタSCに送った個人的記録に関連する。従って、入力メッセージIMは記録コンテンツCRを有する。更に入力メッセージIMは以下の要素を含んでもよい:記録コンテンツに属するメタデータMD、ユーザ識別子UID及びサービスのリクエストRQ。サービスのリクエストRQは、例えば、ユーザが個人的記録のコレクションに個人的記録を追加することを希望していることを示し、そのコレクションはそのユーザに属するものである。特に、サービスのリクエストは、その個人的記録のコンテンツ拡張バージョンをユーザが受け取ることを希望していることを示す。
ステップS1では、受信部RECは、特定のフォーマットの入力メッセージを構文的に分析する。これを行う場合、受信部RECは、入力メッセージIMに含まれている要素各々を分離する。例えば、記録コンテンツCR、曽於記録コンテンツに属するメタデータMD、ユーザの身元UID及びサービスリクエストRQを、受信部RECは抽出する。受信部RECは更に入力メッセージに含まれているメタデータMDを構文的に分析し、例えばメタデータMDのフォーマットを整え直す。サービスセンタSCは或る特定の共通のメタデータフォーマットを使用し、全てのメタデータがそのフォーマットに投じられるようにしてもよい。受信部RECが入力メッセージIMから抽出したメタデータは、以後、「受信メタデータ」と言及される。
ステップS2では、コンテンツプロセッサPRCが様々な目的で記録コンテンツCRを処理する。例えば、コンテンツプロセッサPRCは、品質の向上を図るため、記録コンテンツCR内のノイズを抑制してもよい。コンテンツプロセッサPRCは、信号の規格化処理を実行し、様々な個人的記録の間で基準の統一を図ってもよい。従って、コンテンツプロセッサPRCは、品質の改善されたバージョンの記録コンテンツCRである処理済み記録コンテンツCPを提供する。或いは、コンテンツプロセッサPRCは、事実上、不活性化されてもよい。その場合、処理済み記録コンテンツCPは、記録コンテンツCRに相当する。
ステップS3では、メタデータ生成部GMDは、必要に応じて、補足的なメタデータMDXを生成する。補足的なメタデータMDXは、受信メタデータMDを補足する1つ以上の要素を有する。メタデータ生成部GMDは、1つ以上のマルチメディアコンテンツ分析アルゴリズムを実行することで、処理済み記録コンテンツCPに基づいて補足的なメタデータMDXを生成してもよい。マルチメディアコンテンツ分析アルゴリズムは、一般的には、マルチメディアコンテンツから1つ以上の記述子を抽出する。記述子は、マルチメディアコンテンツを表し、例えば、統計的なパターン認識により取得されてもよい。
メタデータ生成部GMDは、受信メタデータMDに基づいて、補足的なメタデータMDXを生成してもよい。メタデータ生成部GMDは、受信メタデータMD中の1つ以上の要素を含む問い合わせ(クエリ)を用意してもよい。メタデータ生成部GMDは、そのクエリををサーチエンジンに送り、サーチエンジンは1つ以上の補助データベースXDBに問い合わせを行う。メタデータ生成部GMDはサーチエンジンを含んでもよく、1つ以上の補助データベースXDBに直接的に問い合わせてもよい。問い合わせに対する応答(クエリレスポンス)は、補足的なメタデータMDXを構築する1つ以上の要素を含む可能性がある。
以下、受信メタデータに基づいて、補足的なメタデータを生成する例を説明する。例えば、記録コンテンツCRが、エッフェル塔のような野外の観光地の写真に関連するとする。受信メタデータMDは、写真が撮られた時点を特定する時間指標と、写真が撮られた場所を地理的な座標形式で特定する場所指標とを有するものとする。メタデータ生成部GMDは、場所指標及び時間指標がそれぞれ指定する地理的座標及び時間に基づいて、希少データベースに問い合わせを行うことができる。従ってメタデータ生成部GMDは、写真が撮られた照明条件及び天気を確認(証明)できる。この例の場合、メタデータ生成部GMDが生成する補足的なメタデータMDXは、これらの条件を指定する。写真が撮られた際の天気及び証明条件の情報は、コンテンツ拡張部AUGにとって特に有用である。メタデータ生成部GMDは、時間及び場所を指定する問い合わせを行うことで、他のデータベースから別のコンテンツ情報を導出できる。
以下、受信メタデータに基づいて、補足的なメタデータを生成する別の例を説明する。記録コンテンツCRが、コンサートホールでの公演中にとられた写真に関連するとする。更に、受信メタデータMDは、上記の場合と同様に、場所指標及び時間指標を含むとする。メタデータ生成部GMDは、場所指標が指定する地理的座標を使って、地理的データベースDBに問い合わせを行う。その地理的データベースDBは詳細な地図に関連し、人工的な建造物や自然物を地理的座標のゾーンに関連付ける。従ってメタデータ生成部GMDは、その写真がコンサートホールで撮られたことを証明できる。
メタデータ生成部GMDは、コンサートホールのウェブサイトで利用可能な、コンサートのスケジュールを更に問い合わせてもよい。これにより、メタデータ生成部GMDは、写真が撮られた時に行われていた特定のコンサートを証明できる。メタデータ生成部GMDは、講演に参加しているアーティストであり且つ撮られた写真に写っている可能性の高いアーティストの名前を証明できる。従ってこの例の場合、メタデータ生成部GMDが生成する補足的なメタデータMDXは、以下の要素を指定する:コンサートホール名、コンサート名、演じるアーティスト等。
メタデータ生成部GMDは、ユーザが補足的なメタデータを提供するように、サービスセンタSCがユーザに要求することさえ引き起こしてよい。この目的のため、サービスセンタSCは問い合わせメッセージ(クエリメッセージ)をユーザに送信してよい。例えば、上記の例の場合、問い合わせメッセージは、コンサートホール内で写真が撮られた座席の番号に関連してもよい。サービスセンタSCは、この問い合わせメッセージを、例えば、写真を撮った装置に送信してもよい。これは、ユーザが記録コンテンツCRをサービスセンタSCに送った直後に実行可能であり、速やかなフィードバックがなされるようにする。問い合わせメッセージを受信すると、装置は、ユーザに対して彼又は彼女の座席番号を入力するよう促す。装置は、この情報をサービスセンタSCに自動的に送信するように構築され、サービスセンタは、座席番号の情報をメタデータ生成部GMDに送る。
ステップS4では、メタデータ処理部MDHは、受信メタデータMDとメタデータ処理部MDHが用意した補足的なメタデータMDX(存在する場合)とを組み合わせる。この組み合わせ処理はサービスメタデータMDSを構築し、これをコンテンツ拡張部AUGは後述の方法で使用する。メタデータ処理部MDHは、受信メタデータMD及び補足的なメタデータMDXを解析し、一切矛盾のないことを確認する。メタデータ処理部MDHは、欠落している1つ以上の要素を確認し、メタデータ生成部GMDがそれらの要素を用意することを引き起こす。即ち、メタデータ処理部MDHは、サービスメタデータMDSが十分に完全で矛盾のないことを確実にする。
ステップS5では、リクエスト処理部RQHが、記録識別子RIDを処理済み記録コンテンツCPに割り当てる。記録識別子RIDは、サービスセンタSCの中で、処理された記録コンテンツCPを一意に区別する。記録識別子RIDは、ユーザ識別子UIDを含み、その後にシリアル番号が続く。ステップS6では、関連付部ASSが様々な要素を互いに関連付け、様々な要素は:記録識別子RID、処理された記録コンテンツCP及びサービスメタデータMDSである。これらの要素は、データベースDBに保存される個人的記録レコードRRを構築する。
ステップS7においてリクエスト処理部RQHは、個人的記録レコードRRが、データベースDBに保存されることを引き超す。より具体的には、コンテンツ拡張部AUGが処理済み記録コンテンツCPを相対的に短期間の間に使用しがちであるか否かに依存して、データベースDBの短期メモリST内に、長期メモリLT内に又は双方のメモリ内に、個人的記録レコードRRが保存される。例えば、処理された記録コンテンツCPが、行われているスポーツイベントの短いビデオに関連するとする。この短いビデオは、撮影されたばかりであり、例えばフットボールの試合でのゴールのようなスポーツイベントの特別なハイライトに関連するかもしれない。スポーツインベントに参加している他のユーザが、スポーツイベントの別の短いビデオ及び写真をサービスセンタSCに送ることが予想される。これらの1人以上のユーザが、スポーツイベントの行われている間又はその後間もなく、彼又は彼女の個人的記録のコンテンツ拡張バージョンをリクエストすることも予想される。従って、リクエスト処理部RQHは、スポーツイベントに関連する個人的記録レコードが、短期メモリSTに保存されるようにする。これは、スポーツイベントに関連するビデオ、写真その他の個人的記録の様々なものを、コンテンツ拡張部AUGが速やかに抽出できるようにし、1つ以上の拡張された個人的記録を生成するようにする。
リクエスト処理部RQHは、例えばサービスメタデータMDSに基づいて、データベースDBの短期メモリSTに又は長期メモリLTに個人的記録レコードRRを保存することを決定する。上述したように、サービスメタデータMDSは、個人的記録レコードRRが生活上の出来事(例えば、スポーツイベント、コンサート、結婚式等のような出来事)に関連しているか否かを示す。個人的記録レコードRRが生活上の出来事に関連する場合、概してリクエスト処理部RQHは、データベースDBの短期メモリSTに個人的記録が保存されることを引き起こす。
リクエスト処理部RQHは、ある個人的記録レコードの各々を組織的に保存するよう決定し、その個人的記録レコードは、短期メモリに関する以下の2つの基準を満たす。第1は、個人的記録レコードが、最近記録されたコンテンツを有することである。即ち、ユーザである彼又は彼女が個人的記録をとった直後に、ユーザが個人的記録をサービスセンタSCに送っていることである。第2は、サービスリクエストRQが、入力メッセージIMの中で個人的記録を伴い、サービスリクエストRQは、その個人的記録のコンテンツ拡張バージョンをユーザが受け取ることを希望しているのを示すことである。
図3BはサービスセンタSCが実行する様々なステップを示し、これらのステップは、入力メッセージ中のサービスリクエストRQが、個人的記録のコンテンツ拡張バージョンを受信することをユーザが希望している場合に行われる。入力メッセージIMは、拡張されることを要する記録コンテンツCRを含み、この場合、入力メッセージは図3Aを参照しながら説明されたように処理される。
或いは、記録コンテンツCRはサービスセンタSCに前もって送られ、その記録コンテンツCRは、図3Aを参照しながら説明したように既に処理されているようにしてもよい。その場合、入力メッセージIMは、拡張される記録コンテンツCRを指すリファレンスを単に含んでもよい。記録識別子RIDは、上述したように、サービスセンタSC内で使用されるリファレンスを形成する。記録識別子RIDは、拡張される必要のある記録コンテンツCRに加えて、ユーザのコンテンツに属するサービスメタデータMDSを識別し、そのコンテンツは、データベースDB内で特定の個人的記録に含まれるもの全てである。
リクエスト処理部RQHは、サービスのリクエストRQから1つ以上のパラメータPARを導出し、そのパラメータは、コンテンツ拡張部AUGが考慮すべきものである。例えば、1つ以上のパラメータPARは、ユーザ(彼又は彼女)が写真撮影した対象物の3次元モデルを受信することをユーザが希望していることを示すかもしれない。別の例として1つ以上のパラメータPARは、ユーザ(彼又は彼女)が写真撮影した対象物の全景(パノラマ写真)を受信することをユーザが希望していることを示すかもしれない。更に別の例は音楽イベントの音楽的記録に関し、1つ以上のパラメータPARは、ユーザ(彼又は彼女)がとった記録のサラウンド音響バージョンを受信することをユーザが希望していることを示すかもしれない。更に別の例として1つ以上のパラメータPARは、ユーザ(彼又は彼女)がとった記録のノイズのないバージョンを受信することをユーザが希望していることを示すかもしれない。ユーザが除去したい背景雑音が、記録の中に比較的多く存在しているかもしれない。
上述の1つ以上のパラメータPARは対話式に設定されてもよいことに留意すべきである。即ち、ユーザは彼又は彼女の個人的記録をサービスセンタSCに単に送り、具体的な詳細情報を与えずに、コンテンツ拡張バージョンの受信を彼又は彼女が希望していることを明確にする。これに応答して、サービスセンタSCは、利用可能な様々なコンテンツ拡張の選択肢があることを示すメニューメッセージを提供する。そしてユーザは1つ以上の選択肢を選び、選ばれたものはサービスセンタSCに通知される。同様な方法でサービスセンタSCはユーザが更に詳細な情報を指定するように要求してもよい。
ステップS8では、粗選択部CSELが、記録識別子RIDに基づいて、個人的記録レコードの粗選択CSRRを行う。上述したように、記録識別子RIDは、ユーザが拡張を希望する記録コンテンツCRを識別する。この記録コンテンツCRは特定の個人的記録レコードRRに含まれ、そのレコードは、上述したように記録コンテンツCRに属するサービスメタデータMDSを更に有する。ユーザが拡張を希望する記録コンテンツCRを含む特定の個人的記録レコードRRは、以後、「リファレンス個人的記録レコードRR」と言及する。
粗選択部CSEは、データベースDB内で、ある記録コンテンツを含む個人的記録レコードを探し、該ある記録コンテンツは、リファレンス個人的記録レコードRRの記録コンテンツCRを補足するものである。この探索(サーチ)はサービスメタデータに基づいて行われ、サービスメタデータは、データベースDB内の個人的記録レコードに含まれている。粗選択部CSELは或る個人的記録レコードを特定し、そのレコードのサービスメタデータは、リファレンス個人的記録レコードRRのサービスメタデータMDSと類似するものである。1つ以上のパラメータPARは、リクエスト処理部RQHがサービスのリクエストRQから導出したものであり、似ている1つ以上の特定のサービスメタデータ要素を指定する。この場合、他のメタデータ要素は事実上無視される。別の例の場合には、粗選択部CSELは全てのメタデータ要素を考慮してもよい。
例えば、リファレンス個人的記録レコードRR中のサービスメタデータMDSが、そのレコードの記録コンテンツCRは、特定の日の特定のコンサートホールにおける特定の講演に関連することを示していたとする。例えば、対象の特定の公演に関する3次元表現のような記録コンテンツCRの拡張バージョンを、ユーザが取得しようとしていたとする。この場合、粗選択部CSELは、同じ特定の日の同じ特定のコンサートホールにおける同じ特定の公演に関する個人的記録レコードを識別する。
一般に、粗選択部CSELは、関連するサービスメタデータ要素に基づいて、相補的な個人的記録レコードを識別する(探す)。「個人的記録レコード内の関連するサービスメタデータ要素は、リファレンス個人的記録レコードRR内の関連するサービスメタデータ要素に一致するか?」を確認する。一致する場合、個人的記録レコード内の記録コンテンツは、ユーザが拡張することを希望している記録コンテンツCRと相補的である可能性がある。そのような相補的な記録コンテンツは、コンテンツ拡張プロセッサAUGPにおけるコンテンツ拡張処理に有益である可能性がある。従って、個人的記録レコードの粗選択物CSRRは或るコレクションであり、そのコレクションは、リファレンス個人的記録レコードRRと、補足的になる可能性のある個人的記録レコードとを含む。
ステップS9では、詳細選択部FSELが個人的記録レコードRPの詳細な選択を行い、詳細な選択物は、個人的記録レコードの粗選択物CSRRの一部分(部分集合)である。このため、詳細選択部FSELは、粗選択物中の個人的記録レコード各々の記録コンテンツを分析し、その記録コンテンツと、ユーザが拡張を希望している記録コンテンツCRとが十分に合致するか否かを判定する。この分析は、記録コンテンツCR中の所謂「特徴点」を判別することを含んでよい。
詳細選択部FSELは、これらの特徴点を自動的に識別する適切にプログラムされたプロセッサを含んでもよい。ユーザが拡張を希望する記録コンテンツCRの特徴点と、個人的記録の粗選択物CSRR中の他の記録コンテンツ各々の特徴点とを、そのプロセッサは以後比較する。プロセッサは、記録コンテンツCRが十分に合致する特徴点を有する個人的記録のみを自動的に維持する。記録コンテンツCRが画像である場合、詳細選択部FSELは所謂「コンピュータ視覚技術」を使用し、その技術は、特徴点に基づく画像照合処理を含む。オーディオの場合、詳細選択部FSELは所謂「音響解析技術」を使用し、その技術は、時間又は周波数領域の分析に基づく音声照合処理を含む。この場合、特徴点は、スペクトル係数、ピッチ係数等の形式をとる。
詳細選択部FSELは、人的介在コンソールHICを介して人の介在を可能にする。人の介在は、十分に合致する記録コンテンツを発見する際、詳細選択部FSELを支援できる。例えば、ある人が、画像を視覚的に検査し、比較的短期間の間にその画像中の1つ以上の初期特徴点を特定する。その後に、適切にプログラムされたプロセッサは、それらの初期特徴点に基づいて一致度を計算し、その画像が維持されるべきか否かを判定できる。同様な方法がオーディオ記録の場合に使用されてもよい。一般に、そのような人的支援を伴う自動選択は、完全に自動的に選択する場合よりも、間違いが少ない。
適切にプログラムされたプロセッサが、個人的記録レコードの初期の詳細選択を一旦行うと、人的介在もまた有用になる。ある人が、初期の詳細選択物中の記録コンテンツ各々を確認し、コンテンツ拡張プロセッサAUGPにおけるコンテンツ拡張処理に対して、記録コンテンツが有益であるか否かを判別できるようにする。従って、初期の詳細選択物中の有益でないものを排除することで、その人は、個人的記録の精選FSRRを行うことができる。人的介在を行う人は、例えば、記録コンテンツの一部分を排除することで、1つ以上の個人的記録レコードを編集してもよい。編集は、記録コンテンツの1つ以上の特徴を修正することを含んでよく、例えば、画像の輝度や色を調整することや、オーディオ記録の音量を調整すること等を含んでもよい。編集は、更に、例えばノイズ抑制のような信号処理を含んでもよい。適切な編集ソフトウエアが、そのような人的介在を支援してもよい。
ステップS10では、コンテンツ拡張プロセッサAUGPが、個人的記録レコードの精選FSRRに基づいて、コンテンツ拡張表現CAを用意する。拡張プロセッサAUGPは、1つ以上のパラメータPARを考慮し、そのパラメータは、リクエスト処理部RQHがサービスリクエストRQから導出したものである。人的介在コンソールHICを介して、1つ以上のコンテンツ拡張パラメータを、人が指定してもよい。
コンテンツ拡張プロセッサAUGPが使用してよいコンテンツ拡張法及び技法は、多数存在する。例えば、拡張されることになる記録コンテンツCRが、対象物の2次元画像であったとする。この場合、コンテンツ拡張プロセッサAUGPは、別の角度から同じ対象物を表現する補足的な2次元画像に基づいて、3次元モデルを構築する。3次元モデルの構築は、一般に、2次元画像各々の特徴点を照合することを含む。
別の例として、コンテンツ拡張プロセッサAUGPは、いわゆる2次元半空間モデルを構築し、このモデルは、対象物の2次元画像に奥行き情報を追加したものである。このようなモデルは、僅かに異なる数個の角度から対象物を見た比較的少数の画像と共に構築できる。そのようなモデルの構築方法は或る方法と同様であり、その方法は、左目及び右目からのそれぞれの情報に基づいて、人間の脳が奥行きの感じを生み出す方法である。モデルは、画像に関連する所謂「深度図」(depth map)の形式で表現されてもよい。深度図は、奥行きの感じを生み出すように、異なる表示を視聴者に投影できる特殊なディスプレイで画像を表現できるようにする。そのような特殊な装置は、例えばレンズ系(lenticular-based)である。
更に別の例として、記録コンテンツCRがオーディオ情報をなすものとする。様々な場所の様々なユーザは、特定の音楽的場面の異なる個人的記録をとる。粗選択部CSEL及び詳細選択部FSELは、データベースDBに存在するかもしれないこれらの様々な個人的記録を特定する。この場合において、個人的記録の精選FSRRは、複数のマイクロフォンによるオーディオ場面の記録を構築する。個人的記録の精選物FSRRの中のサービスメタデータは、相対的なマイクロフォンの場所を示す(或るマイクロフォンが他のマイクロフォンに対して何処にあるかを示す)。
コンテンツ拡張プロセッサAUGPは、所望の結果に依存して、様々な方法及び技法を使用できる。例えば、コンテンツ拡張プロセッサAUGPは、背景雑音を抑制し、会話認識用の特定のスピーカを見出し、或いは個々の音源を互いに分離することができる。最後に言及した技法は、ブラインド音源分離(blind source separation)と呼ばれることもしばしばある。更に別の例として、コンテンツ拡張プロセッサAUGPは、サラウンド音響効果を創作することができ、或いは複数の視聴者に対して仮想的な聴覚映像(acoustic image)さえ創作できる。これらの例全ては、音源の特定及び分離を含む。従って、相対的なマイクロフォンの場所の情報(サービスメタデータに含まれている情報)は、コンテンツ拡張プロセッサAUGPにとって有用である。
ステップS11では、配信部DLVがリターンメッセージRMを或るユーザに送信し、サービスリクエストRQを伴う入力メッセージIMは、そのユーザから発信されている。このため、配信部DLVは、リクエスト処理部RQHからユーザ識別子UIDを受信する。リターンメッセージRMは、コンテンツ拡張表現CAが準備できたことをユーザに通知する。リターンメッセージRMは、コンテンツ拡張表現CAを含んでいてもよい。リターンメッセージRMは、コンテンツ拡張表現CAに至るリンクを含んでいてもよい。例えば、コンテンツ拡張プロセッサAUGPがコンテンツ拡張表現CAを生成すると、コンテンツ拡張表現CAが、サービスセンタSCのデータベースDBに保存されてもよい。リターンメッセージRM中に存在するリンクは、コンテンツ拡張表現CAが保存されているデータベースDB内のアドレスを指定する。
リターンメッセージRM又は同様なメッセージは、他ユーザに送られてもよく、該他ユーザの記録コンテンツは、個人的記録の精選物FSRRに含まれている。即ち、リターンメッセージRMは、コンテンツ拡張表現CAに寄与したユーザ全員に送られてもよい。そのようなサービスは、個人的記録をサービスセンタSCに送るように、ユーザを刺激するであろう。
<むすび>
図面を参照しながらなされた詳細な説明は、特許請求の範囲で規定される特徴及び本発明の単なる例示に過ぎない。本発明は、多種多様な方法で実現可能である。これを明らかにするため、いくつかの代替例を概説する。
個人的記録のための本発明によるサービスセンタを実現する方法は多数存在する。図2に示される個人的記録のサービスセンタSCは、一例に過ぎない。サービスセンタは、様々な機能エンティティを含む。これらの機能エンティティの1つ以上が或るサーバに存在し、1つ以上の別の機能要素が別のサーバに存在してもよい。即ち、サービスセンタSCを構築する機能エンティティは、ネットワークを通じて分散していてもよい。サービスセンタは、データベース内で個人的記録を必ずしも組織的に保存しなくてよい。個人的記録のコンテンツ拡張バージョンを取得する目的で、ユーザは、個人的なデータベースストレージを要求せずに、個人的記録を単に送ってもよい。
個人的記録のサービスセンタは、暗号化−解読部を備え、ユーザとの安全な通信を行ってもよい。ユーザ(彼又は彼女)の個人的記録の全部又は一部のプライバシ及びセキュリティを保護することを、ユーザは望むかもしれない。例えば、個人的記録が私的な出来事に関連し、比較的小規模のサークルの人々のためだけに意図されているかもしれない。そのような個人的記録を安全な形式でサービスセンタSCに送ることとは別に、ユーザは、その個人的記録のサービスセンタ内での利用を制限することを希望するかもしれない。このため、サービスセンタはアクセス管理部を備えてもよく、アクセス管理部は、その個人的記録が、例えばコンテンツ拡張に使用されることを選択的に許可する。この機能部は、個人的記録の利用を含むサービスが、小規模のそのサークルの人達の中の誰かから要求された者であるか否かを検査し、その人達は、個人的記録を排他的に共有することをユーザが希望している人々である。これらの人々でなかった場合、アクセス管理部はその個人的記録が利用されることを妨げる。
ハードウエア、ソフトウエア又は双方を用いて上記の機能を実現する様々な方法が存在する。この点に関し、図面は非常に概略的なものにすぎず、各々は本発明の1つの可能な例を表しているに過ぎない。即ち、図面は異なる機能を異なるブロックで示しているが、ハードウエア又はソフトウエアの1つの要素が、いくつもの機能を実行してよいことを排除するものではない。ハードウエア、ソフトウエア又は双方で組み立てられた物が或る機能を実行することを排除するものでもない。
ここでなされる諸注意は、図面を参照しながらなされる説明が、本発明を限定するものではなく、例示するものであることを示す。添付の特許請求の範囲に包含される代替例は数多く存在する。特許請求の範囲におけるどの参照符号も(もし存在すれば)、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきでない。「有する(comprising)」という用語は、請求項に列挙されたもの以外の他の要素やステップが存在することを排除しない。要素やステップに先行する「ある」又は「或る」という用語は、そのような要素やステップが複数個存在することを排除するものではない。