JP2010280570A - 微小医療材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】微小医療材料を生体内に埋入或いは血液中に投与した場合に、生体内での異物反応を抑制し、血液中での半減期を長くし、医薬などの物質を持続的に放出するための処理を施した微小医療材料を提供する。
【解決手段】生体内に適用される微小医療材料であって、ApoA-1のN末端欠損体で医療材料本体が表面被覆された微小医療材料。
【選択図】図1
【解決手段】生体内に適用される微小医療材料であって、ApoA-1のN末端欠損体で医療材料本体が表面被覆された微小医療材料。
【選択図】図1
Description
本発明は、微小医療材料に関する。
apoA-1はHDL上に主に存在する蛋白質であり、細胞から搬出される脂質の受け皿となり、HDLの新生反応を担うことが知られている。
apoA-1は片方の側面が親水性、他方が疎水性のアミノ酸が多い両親媒性αヘリックスから構成され、脂質依存的な構造変化を起こすことが知られている。
apoA-1は脳血管障害やメタボリック症候群の遺伝的リスクの検出(特許文献1,2)、癌の分子マーカーなどの応用が知られている(特許文献3〜5)
本発明は、微小医療材料を生体内に埋入或いは血液中に投与した場合に、生体内での異物反応を抑制し、血液中での半減期を長くし、医薬などの物質を持続的に放出するための処理を施した微小医療材料を提供することを目的とする。
本発明者等は、単独で投与した場合に免疫反応を惹起し得る微小医療材料について、種々の被覆材料を検討した結果、apoA-1のN末端欠失体により微小医療材料を被覆することにより、分散性が向上し、血中安定性が向上することを見出した。
本発明は、以下の微小医療材料を提供するものである。
項1. 生体内に適用される微小医療材料であって、ApoA-1のN末端欠損体で医療材料本体が表面被覆された微小医療材料。
項2. 表面被覆される微小医療材料本体が金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソームもしくは薬物含有粒子である項1に記載の微小医療材料。
項3. 金属ナノ粒子が、マグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、金ナノロッドからなる群から選ばれるいずれかである項2に記載の微小医療材料。
項4. ApoA-1のN末端欠損体で表面被覆された金属ナノ粒子の粒径が20〜200nmである、項1〜3のいずれかに記載の微小医療材料。
項5. 微小医療材料が脂質で被覆され、該脂質をApoA-1のN末端欠損体が表面被覆する、項1〜4のいずれかに記載の微小医療材料。
項6. 前記脂質が不飽和脂肪酸である、項5に記載の微小医療材料。
項7. ApoA-1のN末端欠損体に、tatペプチド、葉酸、TNFαからなる群から選ばれる少なくとも1種を結合させることを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の微小医療材料。
項1. 生体内に適用される微小医療材料であって、ApoA-1のN末端欠損体で医療材料本体が表面被覆された微小医療材料。
項2. 表面被覆される微小医療材料本体が金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソームもしくは薬物含有粒子である項1に記載の微小医療材料。
項3. 金属ナノ粒子が、マグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、金ナノロッドからなる群から選ばれるいずれかである項2に記載の微小医療材料。
項4. ApoA-1のN末端欠損体で表面被覆された金属ナノ粒子の粒径が20〜200nmである、項1〜3のいずれかに記載の微小医療材料。
項5. 微小医療材料が脂質で被覆され、該脂質をApoA-1のN末端欠損体が表面被覆する、項1〜4のいずれかに記載の微小医療材料。
項6. 前記脂質が不飽和脂肪酸である、項5に記載の微小医療材料。
項7. ApoA-1のN末端欠損体に、tatペプチド、葉酸、TNFαからなる群から選ばれる少なくとも1種を結合させることを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の微小医療材料。
本発明の医療材料は、血液中での安定性と分散性が向上し、血中での免疫反応も抑制できるため、長期間血液中にとどまることができる。また、生体内の特定部位に集積した場合にも、生体適合性が向上しているため、医療材料として好ましいものとなる。
本発明の医療材料が磁性粒子の場合には、交流磁場をかけることで粒子を加熱することができ、癌の温熱療法にも利用できる。
本発明の微小医療材料は、水中での分散性が低いものであれば特に限定されず、例えば、金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、薬物含有粒子などが挙げられる。金属ナノ粒子としては、金ナノ粒子、鉄ナノ粒子などの金属単体のナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子などの金属酸化物ナノ粒子、金ナノシェルなどのコア−シェル型ナノ粒子、L10-FePtナノ粒子(同じiCeMSの高野グループで合成されています)などの多種金属型ナノ粒子などが挙げられる。
金属ナノ粒子のサイズは、平均粒子径が15-200nm程度、好ましくは20-150nm程度、より好ましくは20〜70nm程度である。この範囲の粒子径であれば、細網内皮系に取り込まれることなく毛細血管等の生体組織を通過することができ、血液中での長い半減期を実現できる。
なお、本発明の微小医療材料の粒子径は、例えば光散乱法などの常法に従い測定することができる。
本発明に用いるカーボンナノチューブとしては、直径0.7nm〜100nmであり、かつアスペクト比が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは50以上のカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブの製造法は特に限定されるものではなく、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD法)、および触媒化学気相成長法(CCVD法)などに代表されるカーボンナノチューブの製造法として公知の方法を利用できる。
リポソームとしては、リン脂質を主要な構成要素とした公知のリポソームを広く使用することができ、内部又は脂質膜に種々の物質を複合化したものが含まれる。リポソームの平均粒径は10nm〜500nm程度であり、好ましくは50nm〜300nm程度である。ここで、平均粒径は、粒度分布計(ゼータ電位を利用したもの)で測定して求めることができる。
薬物含有粒子は、薬物を徐々に放出することができる粒子を広く包含し、例えばセラミクスなどの無機物、ポリマーなどの有機物などをマトリクスとし、そこに薬物が含まれるものであれば特に限定されず、特に薬物を徐々に放出する徐放性を有する粒子が好ましく使用できる。
本発明の微小医療材料が磁性粒子を含む場合、磁場による発熱効果を有するものが好ましく使用できる。この場合、例えば磁性粒子の粒子径をコントロールすることにより、癌組織などの特定の部位に粒子を集積させることができる。この場合、癌の温熱療法を実施することができる。
本発明の微小医療材料は、生体適合性ポリマーにより被覆されている。ポリマー被覆層は、粒子の凝集を防止することができる。このようなポリマーとしては、キトサン、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸などのアミノ酸ポリマー、ポリシアル酸、ポリラクチド、ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー、あるいはこれらのポリマーを構成するモノマーの共重合体が挙げられ、ポリアミノ酸が生体適合性と生分解性の観点から好ましい。
本発明の微小医療材料において、脂質層、ApoA-1のN末端欠損体の層は非常に薄いものが含まれるため、ApoA-1のN末端欠損体に被覆前の微小医療材料と被覆後の医療材料のサイズの下限は変わらない。例えばApoA-1のN末端欠損体で被覆後の金属ナノ粒子のサイズは、平均粒子径が15-200nm程度、好ましくは20-150nm程度、より好ましくは40〜130nm程度、特に70〜100nm程度である。また、ApoA-1のN末端欠損体で被覆後のカーボンナノチューブは、直径0.7nm〜100nmであり、かつアスペクト比が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは50以上である。さらに、ApoA-1のN末端欠損体で被覆後のリポソームの平均粒径は10nm〜500nm程度であり、好ましくは50nm〜300nm程度である。
本発明で使用するApoA-1のN末端欠損体は、ApoA-1のN末端の球状ドメインを欠損したものである。例えばヒトApoA-1の塩基配列、アミノ酸配列はデータベース名NCBI、Accession番号NG012021、に登録されている。本発明では、ヒトApoA-1のN末端欠損体により被覆することが望ましいが、ヒト以外の哺乳動物のApoA-1のN末端欠損体を用いることもできる。ヒトApoA-1タンパク質は、243個のアミノ酸からなり、この1位から43位のアミノ酸が欠失したものが、本発明の「ApoA-1のN末端欠損体」に包含される。換言すると、ヒトApoA-1のタンパク質の44位から243位のアミノ酸は、本発明のN末端欠損体に含まれる。
本発明で使用するApoA-1のN末端欠損体は、単独で水に溶解させた場合、図1に示すようにリング状の構造を取る。ApoA-1は脂質の存在下では同様なリング状の構造を取り得るが、単独では別の結晶構造を取る。ApoA-1のN末端欠損体が脂質の非存在下で燐議場の構造を取ることは、Borhaniらにより初めて見出されたものである(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997, 94, 12291-12296)。
本発明のApoA-1のN末端欠損体には、さらに他の生理活性物質を結合することができる。例えば細胞内に物質を導入することが可能なペプチド、葉酸、TNFα、特定組織へ物質を集積させるペプチドなどが挙げられる。細胞内に物質を導入することが可能なペプチドとしては、TATペプチド、penetratin、オクタアルギニンなどが挙げられる。
ApoA-1のN末端欠損体は、リポソームなどの表面が疎水性の場合には直接混合して容易に被覆できるが、例えば金属粒子などの場合には、先にリン脂質で被覆した後ApoA-1のN末端欠損体を被覆するのが望ましい。
本発明において、磁性粒子を含む本発明の微小医療材料を用いる場合、交流磁場をかけることで、微小医療材料が集積した部位を温熱療法に必要な程度(例えば41℃以上、好ましくは42〜43℃)に上昇させることができる。磁性粒子を41〜43℃に加熱するために必要な交流磁場としては20 Oe 程度以上、好ましくは50〜200 Oe程度である。
本発明の微小医療材料は、薬学的に許容できる成分をさらに含んでいてもよい。このような成分として、殺菌剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、グリシン、アラニン等の通常のL一型アミノ酸、グルコース、マンノース等の単糖類、ショ糖、マルトース等の二糖類、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール類、デキストラン等の多糖類などを挙げることができる。また、殺菌剤としては、ベンザルコニウム塩、クロルヘキシジン塩、パラオキシ安息香酸エステル類等を挙げることができる。緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、あるいはこれらの塩等を挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類等を挙げることができる。キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸等が例示される。その他、アセチルトリプトファンナトリウム、カプリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。なお、pH値についてはpH調整試薬によりpH6-8程度の範囲に調整することが好ましい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 ApoA-IのN末端欠損変異体(△ApoA-I)およびTATペプチド融合△ApoA-I (△ApoA-I-TAT)の作製
全長ApoA-I cDNAを鋳型とし、5’-taagaaggagatatacatatgctaaagctccttgacaac-3’ (sense strand)と5’-aattaaccctcactaaaggg-3’ (anti-sense strand)をプライマーとして用いてpolemerase chain reaction (PCR)を行い、5’末端側にNde I制限酵素サイト、3’末端側にPst I制限酵素サイトを有するApoA-IのN末端欠損体(△apoA-I)のcDNAを得た。この△ApoA-I cDNAをpCOLD I大腸菌発現ベクター(TAKARA BIO社製)にクローニングした。
全長ApoA-I cDNAを鋳型とし、5’-taagaaggagatatacatatgctaaagctccttgacaac-3’ (sense strand)と5’-aattaaccctcactaaaggg-3’ (anti-sense strand)をプライマーとして用いてpolemerase chain reaction (PCR)を行い、5’末端側にNde I制限酵素サイト、3’末端側にPst I制限酵素サイトを有するApoA-IのN末端欠損体(△apoA-I)のcDNAを得た。この△ApoA-I cDNAをpCOLD I大腸菌発現ベクター(TAKARA BIO社製)にクローニングした。
TATペプチドと終止コドンを含む5’-ctagatatggccgtaaaaaacgtcgtcagcgtcgtcgttgat-3’ (sense strand)と5’-ctagatcaacgacgacgctgacgacgttttttacggccatat-3’ (anti-sense strand)で二重鎖DNAを形成させ、pCOLD Iベクターのマルチクローニングサイト内のXba I制限酵素サイトに挿入した。△ApoA-I cDNAを含むpCOLD Iベクターを鋳型とし、5’-taagaaggagatataggtaccctaaagctccttgacaac-3’と5’-tacatactgcagctgggtgttgagcttctt-3’をプライマーとしてPCRを行い、△ApoA-I cDNAの3’末端の終止コドンを除去すると共にPst I制限酵素サイトを導入した。この△ApoA-I cDNAをTAT配列を挿入したpCOLD Iベクターにクローニングし、TATペプチド融合△ApoA-I (△ApoA-I-TAT) cDNAを得た。
上記の各種大腸菌発現ベクターでOrigami2大腸菌を形質転換し、定法に従って培養した。大腸菌からの各種タンパク質の精製は、ニッケルキレートレジンを用いて行った。
実施例2 △ApoA-I-TATで被覆したマグネタイトの作製
戸田工業株式会社より購入したマグネタイト(一次粒子径10 nm)水分散液をオレイン酸ナトリウム水溶液と混合し、80°Cで30分静置した。その後反応液をPD-10脱塩カラム(GE Healthcare社製)に通塔した。溶出液を2000×gで5分遠心し、沈殿物を除去した。オレイン酸処理マグネタイトの水分散液を、コール酸ナトリウムで可溶化したパルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)と混合し、室温で2時間静置した。その後反応液を脱イオン水に対して透析した。POPC処理マグネタイト水分散液に4M尿素水溶液で可溶化した△ApoA-I-TATを添加し、室温で終夜静置した。その後、△ApoA-I-TAT処理マグネタイト水分散液を等張リン酸緩衝液(PBS, pH 7.4)に対して透析し、△apoA-I-TAT被覆マグネタイト(△ApoTAT-mag)を得た。同様の操作により、全長ApoA-I被覆マグネタイト(Apo-mag)、△apoA-I被覆マグネタイト(△apo-mag)を得た。これらのタンパク質を添加せずに同じ操作を行ったマグネタイト(mag)も得た。
戸田工業株式会社より購入したマグネタイト(一次粒子径10 nm)水分散液をオレイン酸ナトリウム水溶液と混合し、80°Cで30分静置した。その後反応液をPD-10脱塩カラム(GE Healthcare社製)に通塔した。溶出液を2000×gで5分遠心し、沈殿物を除去した。オレイン酸処理マグネタイトの水分散液を、コール酸ナトリウムで可溶化したパルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)と混合し、室温で2時間静置した。その後反応液を脱イオン水に対して透析した。POPC処理マグネタイト水分散液に4M尿素水溶液で可溶化した△ApoA-I-TATを添加し、室温で終夜静置した。その後、△ApoA-I-TAT処理マグネタイト水分散液を等張リン酸緩衝液(PBS, pH 7.4)に対して透析し、△apoA-I-TAT被覆マグネタイト(△ApoTAT-mag)を得た。同様の操作により、全長ApoA-I被覆マグネタイト(Apo-mag)、△apoA-I被覆マグネタイト(△apo-mag)を得た。これらのタンパク質を添加せずに同じ操作を行ったマグネタイト(mag)も得た。
実施例3 △ApoTAT-magの動的光散乱測定
動的光散乱測定により、△ApoTAT-magの平均粒子径を求めた。図2に示すとおり、PBS (pH 7.4)中における△ApoTAT-magおよび△Apo-magの平均粒子径は88.7 nm、97.2 nmとなった。
動的光散乱測定により、△ApoTAT-magの平均粒子径を求めた。図2に示すとおり、PBS (pH 7.4)中における△ApoTAT-magおよび△Apo-magの平均粒子径は88.7 nm、97.2 nmとなった。
実施例4 △ApoTAT-magで処理したヒト癌細胞の光学顕微鏡観察
ヒト肺癌細胞株A549の培養液に、マグネタイト換算で90 μg/mlとなるように△ApoTAT-mag, △Apo-mag, Apo-mag, あるいはmagを添加した。そのまま37°Cで24時間培養した後、細胞を0.8% BSAを含むPBSで洗浄し、位相差顕微鏡で観察した(図3)。同時に、△ApoTAT-mag, △Apo-mag, Apo-mag, あるいはmagを細胞のない細胞培養液中で37°C、24時間静置した時の結果も示す。この結果、細胞のない条件下で、magは多量の沈殿物を与え、Apo-magでも多少の沈殿物を与えた。これに対して、△ApoTAT-magあるいは△Apo-magでは、沈殿物は確認できなかった。これらの結果から、N末端43アミノ酸残基を欠損させたApoA-Iが、マグネタイトの水分散剤として有用であることが明らかとなった。
ヒト肺癌細胞株A549の培養液に、マグネタイト換算で90 μg/mlとなるように△ApoTAT-mag, △Apo-mag, Apo-mag, あるいはmagを添加した。そのまま37°Cで24時間培養した後、細胞を0.8% BSAを含むPBSで洗浄し、位相差顕微鏡で観察した(図3)。同時に、△ApoTAT-mag, △Apo-mag, Apo-mag, あるいはmagを細胞のない細胞培養液中で37°C、24時間静置した時の結果も示す。この結果、細胞のない条件下で、magは多量の沈殿物を与え、Apo-magでも多少の沈殿物を与えた。これに対して、△ApoTAT-magあるいは△Apo-magでは、沈殿物は確認できなかった。これらの結果から、N末端43アミノ酸残基を欠損させたApoA-Iが、マグネタイトの水分散剤として有用であることが明らかとなった。
一方、細胞存在下では、△ApoTAT-mag処理時にA549細胞が茶色を呈しており、マグネタイトが細胞内へ取り込まれたことが示唆された。△Apo-mag処理細胞と比較するとその差は明らかである。また、magおよびApo-mag処理細胞は、ドット状に茶色に呈色しているが、これは上で述べたように、マグネタイトの沈殿物が細胞表面に付着したものと考えられる。この結果から、△Apo-A-I-TATは、△ApoA-Iの水分散剤機能を保持したまま、TATペプチドの機能をマグネタイトに付与できることが示された。
実施例5 △ApoTAT-magで処理したヒト癌細胞内の鉄イオンの定量
前述の通りA549細胞を△ApoTAT-magで24時間処理し、洗浄した後、1% Triton-Xを含むPBSで細胞を溶解した。この細胞溶解液に濃塩酸を添加してマグネタイトを鉄イオンとして溶解した。中和後、0.1%アスコルビン酸で鉄(II)イオンへ還元し、0.5%フェナントロリンと錯形成させた。この溶液の510 nmの吸光度を測定し、鉄(II)イオンを定量した。△ApoTAT-mag未処理細胞を用いて得られる鉄(II)イオン量を差し引き、マグネタイト由来の鉄(II)イオンとした。図4に示すとおり、△ApoTAT-magは△Apo-magに比べて、約5倍のマグネタイトを癌細胞内へ送達できることが分かった。
前述の通りA549細胞を△ApoTAT-magで24時間処理し、洗浄した後、1% Triton-Xを含むPBSで細胞を溶解した。この細胞溶解液に濃塩酸を添加してマグネタイトを鉄イオンとして溶解した。中和後、0.1%アスコルビン酸で鉄(II)イオンへ還元し、0.5%フェナントロリンと錯形成させた。この溶液の510 nmの吸光度を測定し、鉄(II)イオンを定量した。△ApoTAT-mag未処理細胞を用いて得られる鉄(II)イオン量を差し引き、マグネタイト由来の鉄(II)イオンとした。図4に示すとおり、△ApoTAT-magは△Apo-magに比べて、約5倍のマグネタイトを癌細胞内へ送達できることが分かった。
実施例6 △ApoTAT-magの短期細胞毒性
実施例5で得られる細胞溶解液のタンパク質濃度は、細胞数に相当する。Lowry法によってタンパク質定量を行った結果、△ApoTAT-magおよび△Apo-mag処理時のタンパク質濃度は、未処理時のそれと変わらなかった(図5)。従って、△ApoTAT-magおよび△Apo-magいずれも短期細胞毒性は示さないことが分かった。
実施例5で得られる細胞溶解液のタンパク質濃度は、細胞数に相当する。Lowry法によってタンパク質定量を行った結果、△ApoTAT-magおよび△Apo-mag処理時のタンパク質濃度は、未処理時のそれと変わらなかった(図5)。従って、△ApoTAT-magおよび△Apo-magいずれも短期細胞毒性は示さないことが分かった。
Claims (7)
- 生体内に適用される微小医療材料であって、ApoA-1のN末端欠損体で医療材料本体が表面被覆された微小医療材料。
- 表面被覆される微小医療材料本体が金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソームもしくは薬物含有粒子である請求項1に記載の微小医療材料。
- 金属ナノ粒子が、マグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、金ナノロッドからなる群から選ばれるいずれかである請求項2に記載の微小医療材料。
- ApoA-1のN末端欠損体で表面被覆された金属ナノ粒子の粒径が20〜200nmである、請求項1〜3のいずれかに記載の微小医療材料。
- 微小医療材料が脂質で被覆され、該脂質をApoA-1のN末端欠損体が表面被覆する、請求項1〜4のいずれかに記載の微小医療材料。
- 前記脂質が不飽和脂肪酸である、請求項5に記載の微小医療材料。
- ApoA-1のN末端欠損体に、tatペプチド、葉酸、TNFαからなる群から選ばれる少なくとも1種を結合させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微小医療材料。
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WO2016104690A1 (ja) * | 2014-12-25 | 2016-06-30 | 国立大学法人京都大学 | 高密度リポタンパク質およびその細胞親和性ペプチドを融合した高密度リポタンパク質の点眼による後眼部薬物デリバリー |
WO2017222042A1 (ja) * | 2016-06-24 | 2017-12-28 | 国立大学法人京都大学 | 眼用医薬組成物 |
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US11129900B2 (en) | 2014-12-25 | 2021-09-28 | Kyoto University | Cytophilic peptide-fused high-density lipoprotein, and delivery of drug to posterior segment of eye by ocular installation of said fusion |
WO2017222042A1 (ja) * | 2016-06-24 | 2017-12-28 | 国立大学法人京都大学 | 眼用医薬組成物 |
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