JP2010274102A - 花粉防止用マスク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 平均繊維径1μm〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された平均繊維径1nm〜1000nm、好ましくは100nm〜800nmのナノファイバー不織布層とを備え、前記ナノファイバー不織布層の坪量が0.005g/m2〜0.500g/m2であることを特徴とする花粉防止用マスクによって達成される。
【選択図】 図1
Description
この方法は、1nm〜数10μmオーダーの不織布を作製できるという特徴を有している。この方法によって製造されるファイバーの径は細く、その集積体である不織布は気孔率が大きいため、各種用途への幅広い応用が考えられている。不織布は、内部構造・表面構造が微細であるために、比表面積が大きく、例えば吸着材等としての用途に優れた特性を発揮する。本発明者は、電界紡糸法に関する研究を持続して行っており、その一部を特許出願している(特許文献1)。
一方、現在の日本ではスギ花粉による花粉症に苦しむ者が非常に多くなってきている。花粉症を抑制するには、花粉との接触を避けることが勧められ、この方法の一つとしてマスクがある。電界紡糸法により製造された不織布をマスクに応用することにより、細菌やウイルスとの接触を避ける技術が開発されている(特許文献2)。
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナノファイバー不織布を備えた花粉防止用マスクを提供することである。
こうして、上記課題を解決する発明に係る花粉防止用マスクは、平均繊維径1μm〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された平均繊維径1nm〜1000nm、好ましくは100nm〜800nmのナノファイバー不織布層とを備え、前記ナノファイバー不織布層の坪量が0.005g/m2〜0.500g/m2であることを特徴とする。このとき、通気度が100cc/cm2・sec以上であることが好ましい。
花粉症とは、I型アレルギーに分類される疾患の一つであり、花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされる。特徴的な症状として、反復するくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどが見られる。現在の日本ではスギ花粉によるものが多いが、外国では世界各国で特異な花粉による花粉症が知られている。例えば、日本・中国ではスギ花粉・ヒノキ花粉などが、イギリスではイネ科植物の花粉などが、北米ではブタクサ花粉などが、それぞれ花粉症を起こすことが知られている。
本発明の花粉防止用マスクは、上記いずれの花粉に対しても良好に防止効果を備えている。
1.ナノファイバーシートの調製
<実施例1〜実施例7> 不織布+PVAナノファイバーの調製(1)
PVA(重合度3,500)1.80gと15w/w%エタノール(エタノール(日本アルコール販売株式会社99度以上1級発酵)、質量比エタノール:水=15:85)28.20gをサンプル瓶に加え、密閉し加温しながら振動攪拌し、完全に溶解させることにより、PVA濃度が6質量%のPVA溶解液を得た。このPVA溶解液は実施例1〜実施例7の原液として共通して使用した。
<実施例8〜実施例14> 不織布+PVAナノファイバーの調製(2)
PVA(重合度500)1.80gと15w/w%エタノール(エタノール(日本アルコール販売株式会社99度以上1級発酵)、質量比エタノール:水=15:85)28.20gをサンプル瓶に加え、密閉し加温しながら振動攪拌し、完全に溶解させることにより、PVA濃度が6質量%のPVA溶解液を得た。このPVA溶解液は実施例8〜実施例14の原液として共通して使用した。
<実施例15及び実施例16> 不織布+PVAナノファイバーの調製(3)
PVA(重合度500)1.20gと15w/w%エタノール(エタノール(日本アルコール販売株式会社99度以上1級発酵)、質量比エタノール:水=15:85)28.80gをサンプル瓶に加え、密閉し加温しながら振動攪拌し、完全に溶解させることにより、PVA濃度が4質量%のPVA溶解液を得た。このPVA溶解液は実施例15及び実施例16の原液として共通して使用した。
PVA溶解液をシリンジ(武蔵エンジニアリング株式会社製クリアシリンジ PSY−30E)へ注入し、シリンジの先に18Gの針(星盛堂医療器工業株式会社製)をつけ、シリンジ内の気泡を完全に追い出し、電界紡糸装置((株)フューエンス製「エスプレイヤー2100H」)へシリンジをセットした。この装置は上方から下方へ向かってナノファイバーを吹き付ける構造で、シリンジの先端は地上に向かってセットされている。シリンジの先端にプラス電極をシリンジ真下にあるナノファイバー捕集部(以下、捕集部)にマイナス電極を接続し数万Vの高電圧をかけながらシリンジポンプによりPVA溶解液を押し出すと、シリンジの先端から捕集部に向かって放出されたPVA溶解液は落下しながらナノファイバーとなり、捕集部に積層する。捕集部は可動式コンベアーになっており、コンベアーを稼動させることによりナノファイバー吹きつけ位置を移動することができる。
<比較例1>
実施例1〜実施例16で使用したナノファイバー積層前の不織布を比較例1とした。
<比較例2>
市販マスクA(興和株式会社製「クリーンラインコーワ三次元マスク」)の本体よりフィルター部2層目を切離し、アイロンで皺を伸ばしたものを比較例2とした。
<比較例3>
市販マスクB(リブ・ラボラトリーズ株式会社製「FSC/F−95A 抗ウイルスマスク」)の本体よりフィルター部2層目を切離し、アイロンで皺を伸ばしたものを比較例3とした。
比較例1〜比較例3の顕微鏡写真図を図17〜図19に示した。
実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例3で得られた試験片を一般織物試験方法のA法(フラジール形法:JIS-L-1096により規定される)により測定した。実施例1〜実施例16については空気が吸入される側にナノファイバーが付着していない面を接触させた。測定結果を表3に示した。
ボーケン法(JSIF A 030-2004)を用い花粉通過性試験をおこなった。
ガラス製のホルダーにガラスフィルターと黒色の濾紙をセットし、その上に実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例3で得られた試験片をのせた。実施例1〜実施例16については、ナノファイバーが付着していない面を上側にしてのせた。スギ花粉(0.05g)を試験片の表面に均一に付着させた。吸引ポンプで12L/min(直径約2mm)で1分間吸引した後、濾紙の質量を測定し、下記式により花粉捕集効率を算出した。測定結果を表3に示した。なお、その他の花粉(ヒノキ花粉、ブタクサ花粉、イネ花粉)についても、同様の花粉捕集効率であった。このことは、実施例1〜実施例16のフィルターが、花粉程度の大きさに対しては、充分な通過阻止作用を示すことを示している。
式1:花粉通過量(g)=吸引後濾紙質量(g)−吸引前濾紙質量(g)
式2:花粉通過率(%)=花粉通過量(g)/吸引前付着花粉質量(g)×100
式3:花粉捕集効率(%)=100%−花粉通過率(%)
実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例3で得られたシートについて、電子顕微鏡((株)テクネックス工房製「Tiny−SEM510」)で観察しながら繊維径を測定した。1つのシートにつきランダムに選んだ50本の繊維の繊維径を測定し、平均値を算出した。測定結果を表3に示した。実施例1〜実施例7、実施例8〜14、実施例15〜16はそれぞれ坪量が異なるだけであったため、平均繊維径は同一であった。
ナノファイバー積層前の不織布を実施例1〜実施例16のそれぞれについて8枚ずつ用意し、電子天秤にて重量を測定した。実施例1〜実施例16の捕集部移動速度に従ってナノファイバーを積層後、積層前同様に電子天秤にて重量を測定した。積層後の重量から積層前の重量を差し引き、それぞれ8枚分の平均値を算出したものをそれぞれのナノファイバー坪量とした。測定結果を表3に示した。なお、比較例1には不織布の重量を記載した。
(試験用マスクの作製)
既存のマスクをベースに、そのフィルター部に実施例1〜実施例16に示した「不織布+PVAナノファイバー」および比較例1〜比較例3をいずれか1枚搭載したマスクを作製し、それぞれのマスクの装着性について評価試験をおこなった。ベースのマスクにはユニ・チャーム株式会社の超立体マスクかぜ・花粉用(やや大きめサイズ)を使用した。まず超立体マスクのフィルター部不織布(以下フィルター部)を縁ぎりぎりまで切り抜いた。超立体マスクは鼻の中心に支柱があるが、この支柱は残し、左右それぞれ対称の形になるようフィルター部を切り抜いた。これをベースマスクとした。実施例1〜実施例16に示した「不織布+PVAナノファイバー」および比較例1〜比較例3をそれぞれフィルター部より一回り大きいサイズに切り抜き、ベースマスクへ外側より接着剤で貼り付けた。
これらを試験用マスクとした。
装着試験の方法は、まず被験者10名(男性5名:20代2人、30代1人、40代1人、50代1人、女性5名:20代2人、30代2人、40代1人)に上記で作製した試験用マスクを、どれがどのマスクか分からないよう番号をランダムにつけ、渡した。被験者は受け取ったマスクを1番から順番に装着して1時間経過ごとに次のマスクへ交換して行った。全部で19枚あるので、1日に6枚および7枚ずつ3日間に渡って試験を行った。1時間経つ前に息苦しさを感じマスクを取り外したくなった場合は、その時点でマスクを取り外して、その時間を記録し、次のマスクへ交換した。この息苦しさを感じてマスクを取り外してしまうまでの時間を「マスク連続装着可能時間」とした。また、マスクを取り外してから次のマスクを装着する前に一度呼吸を整え、呼吸を正常に戻す行為をいれた。この時間を「呼吸調整時間」とし、呼吸が正常に戻ったと感じた時点の時間を記録させた。このような方法で試験用マスク1〜10を装着し終わった後、全員の評価結果の平均値を算出した。結果を表4に示した。
一方、実施例8、9、比較例2および比較例3のマスクでは、数分経過した時点から息苦しさを感じ始めた人が多く、マスクを取り外して通常の呼吸を取り戻すのに数分間を必要とした。
以上の結果より、実施例1〜実施例7、実施例10〜実施例16を取り入れたマスクは市販マスク(比較例2および比較例3)よりも呼吸のしやすさの面で遥かに優れており、マスクに使用した場合に非常に有効であるとわかった。
花粉症を有する者10名(男性4名:20代2人、40代1人、50代1人、女性6名:20代2人、30代2人、40代2人)に対して、上記7で作製した実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例3を1枚ずつ組み込んだマスクに上記7同様の方法で番号をランダムにつけて渡した。比較例2については比較用マスクとして分かるように渡した。被験者にはそれぞれのマスクを1日1枚、出社時(家を出てから会社に着くまで)の間装着してもらった。装着日は3月16日〜4月15日の間で予め花粉飛散量が多いと予想された日を選択し装着してもらった。装着の順番はまず比較用マスクを1番目に装着し、次からは被験者がランダムに選択したものを装着した。出社後マスクを外し、その時点での花粉症の状態を比較用マスクと比較して評価させた。当試験では通気性は評価対象としていない。評価は5段階とし、それぞれ、5:比較用マスクよりくしゃみや鼻水が遥かに出なかった、4:比較用マスクよりくしゃみや鼻水がやや出なかった、3:比較用マスクとほぼ同等の効果を感じた、2:比較用マスクよりくしゃみや鼻水が多く出た、1:比較用マスクよりくしゃみや鼻水が多く出て、且つマスクとしての効果を感じなかった、とした。このような方法で試験マスク1〜16および比較用マスクを装着し終わった後、全員の評価結果の平均値を算出した。結果を表5に示した。
以上の効果確認試験の結果は花粉捕集効率(%)と相関があると考えられた。すなわち、花粉捕集効率が大きいものほど、花粉症の予防効果が高いことを示している。日本ではスギ花粉に対する花粉症がほとんどであるため、他の花粉については評価が行えなかったが、本実施形態の花粉防止用マスクは、ヒノキ花粉・ブタクサ花粉の花粉透過率も同様に小さいことから、スギ花粉以外の花粉に対する花粉症にも適用できることがわかった。
(1)織布の利用による花粉防止用マスクの製造
「1.ナノファイバーシートの調製」に使用した不織布に代えて、玉川衛材株式会社製 ガーゼマスクのガーゼ(織布)を支持体として、電界紡糸法によりナノファイバーシートを作製できるか否かを確認した。「1.ナノファイバーシートの調製」で使用したPVA溶解液を用い、実施例1〜実施例7と同じ電界紡糸条件およびナノファイバー捕集部移動速度にて、支持体のみガーゼに代えてシートを作製した。その結果、ガーゼにおいても、実施例1〜実施例16と同様の花粉防止用マスクを製造できることがわかった。代表写真として、実施例2、実施例4、実施例5の条件でガーゼに電界紡糸した際の電顕写真図をそれぞれ図20〜図23に示した。
「1.ナノファイバーシートの調製」のPVAに代えて、ポリ乳酸、ツェイン、ゼラチンを材料として使用し、電界紡糸法により実施例1〜実施例16と同様の実施形態のナノファイバーシートを作製できるか否かを確認した。
<ポリ乳酸ナノファイバーシートの作製>
ポリ乳酸(三井化学株式会社製「レイシア(R)H-900」)1.0gと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(ナカライテスク株式会社製)9.0gをサンプル瓶に加え、密閉し常温(20℃−30℃)にて1晩(約10時間以上)振動攪拌し、完全に溶解させることにより、ポリ乳酸濃度が10質量%のポリ乳酸溶解液を得た。このポリ乳酸溶解液を用い、実施例1〜実施例16と同じ電界紡糸条件およびナノファイバー捕集部移動速度にて不織布の上に電界紡糸したところ、いずれにおいても、実施例1〜実施例16と同様の花粉防止用マスクを製造できることがわかった。代表例として、実施例4の条件にて紡糸した際の電顕写真図を図24に示した。
ゼラチン(太陽化学株式会社製「ネオソフトGE−388」)0.3gと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(ナカライテスク株式会社製)9.7gをサンプル瓶に加え、密閉し常温(20℃−30℃)にて1晩(約10時間以上)振動攪拌し、完全に溶解させることにより、ゼラチン濃度が3質量%のゼラチン溶解液を得た。このゼラチン溶解液を用い、実施例1〜実施例16と同じ電界紡糸条件およびナノファイバー捕集部移動速度にて不織布の上に電界紡糸したところ、いずれにおいても、実施例1〜実施例16と同様の花粉防止用マスクを製造できることがわかった。代表例として、実施例4の条件にて紡糸した際の電顕写真図を図25に示した。
ツェイン(小林香料株式会社製「小林ツェインDP」)0.5gと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(ナカライテスク株式会社製)9.5gをサンプル瓶に加え、密閉し常温(20℃−30℃)にて1晩(約10時間以上)振動攪拌し、完全に溶解させることにより、ツェイン濃度が5質量%のツェイン溶解液を得た。このツェイン溶解液を用い、実施例1〜実施例16と同じ電界紡糸条件およびナノファイバー捕集部移動速度にて不織布の上に電界紡糸したところ、いずれにおいても、実施例1〜実施例16と同様の花粉防止用マスクを製造できることがわかった。代表例として、実施例4の条件にて紡糸した際の電顕写真図を図26に示した。
また、このとき「1.ナノファイバーシートの調製」に使用した不織布に代えて、「川本産業株式会社製 医療ガーゼ(織布)」を使用した場合でも、実施例1〜実施例16と同様の花粉防止用マスクを製造できることがわかった。
このように本実施形態によれば、従来には実験対象ともならないほど少ない坪量のナノファイバーを不織布層または織布層の上面に形成させることで、息苦しさがなく、かつ花粉防止効果が充分な花粉防止用マスクを提供できた。このマスクを用いることにより、花粉症の時期も快適に過ごすことができた。
Claims (2)
- 平均繊維径1μm〜100μmのマイクロファイバー不織布または織布層と、この不織布または織布層に積層された平均繊維径1nm〜1000nmのナノファイバー不織布層とを備え、前記ナノファイバー不織布層の坪量が0.005g/m2〜0.500g/m2であることを特徴とする花粉防止用マスク。
- 通気度が100cc/cm2・sec以上であることを特徴とする請求項1に記載の花粉防止用マスク。
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A912 | Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board |
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