JP2010272346A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃料電池内部に浸入した水分によるフラッディングを抑制でき、連続して安定した発電が可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】 酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物を、セパレータを介して上下に複数積層してなる燃料電池であって、積層した複数の電極・電解質一体化物のうち、最下部の電極・電解質一体化物よりも下に、前記セパレータと平面視での面積が同等の排水機構を有することを特徴とする燃料電池により、前記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主に燃料となる水素中に含まれる水分によるフラッディングを抑制でき、連続して安定した発電が可能な燃料電池に関するものである。
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である電池には、より一層の小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、このリチウムイオン二次電池は、一部のコードレス機器に対しては、十分な連続使用時間を保証することができないという問題がある。
このような問題の解決に向けて、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)などの燃料電池の開発が進められている。燃料電池は、燃料および酸素の供給を行えば連続的に使用することが可能である。そして、正極と、負極と、電解質としての固体高分子電解質とからなる電極・電解質一体化物(以下、「MEA」という場合がある。)を備え、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に水素を用いるPEFCは、リチウムイオン二次電池よりもエネルギー密度が高い電池として注目されている。
一般的なPEFCでは、MEAが複数積層されて構成されており、各MEAは、酸素流路(酸化剤流路)を形成した正極側セパレータと燃料流路を形成した負極側セパレータとの2種類のセパレータで挟持された状態で積層されている。そして、PEFCの酸素流路および燃料流路のそれぞれにガス(酸素および燃料となる水素)が供給され、電気化学反応を起こすことにより発電する。
ところが、PEFCでは、通常、燃料が加湿された状態で供給されるが、燃料中の水分が電池内部で結露し、こうして生じた浸入水によって電極表面が閉塞されるフラッディングが生じて、急激な出力低下を起こす虞があった。このようなことから、前記の浸入水によって生じる電極表面の閉塞を抑制することが求められる。
このような要求に応えるため、燃料電池内に浸入した水を排出する試みが検討されており、例えば、MEA間のセパレータに排水用の溝を形成したり、MEA外に排水部を設けたり、複雑な構成の除湿機構を設けたりするなど、様々な提案がなされている(特許文献1〜7参照)。
特開2002−343382号公報 特開2004−327058号公報 特開2006−19116号公報 特開2006−351323号公報 特許第3753013号公報 特開2004−327059号公報 特許第3519987号公報
しかしながら、セパレータに排水用の複雑なパターンを形成すると、高コストになるだけでなく、セパレータの強度が低下することが問題とされている。また、MEAとは別に排水部を設けると燃料電池全体の体積が大幅に増加するため、エネルギー密度の低下という問題が生じてしまう。更に、複雑な除湿機構を設けると高コストになるという問題がある。
このようなことから、燃料電池の高コスト化(それに伴う燃料電池の生産性の低下)や体積増加に伴うエネルギー密度の低下を回避しつつ、燃料電池内に浸入する水を良好に排出して、燃料電池の連続して安定した発電を可能とする技術の開発が求められる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池内部に浸入した水分によるフラッディングを抑制でき、連続して安定した発電が可能な燃料電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の燃料電池は、酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物を、セパレータを介して上下に複数積層してなる燃料電池であって、積層した複数の電極・電解質一体化物のうち、最下部の電極・電解質一体化物よりも下に、前記セパレータと平面視での面積が同等の排水機構を有することを特徴とするものである。
本発明の燃料電池では、燃料ガス中に含まれ、燃料電池内で結露して生じた浸入水が、重力の影響によってMEA積層群の最下部に溜まりやすいことに着目し、その最下部のMEAよりも下に浸入水を燃料電池系外へ排出するための排水機構を設置することで、浸入水を各MEAまで到達し難くしてフラッディングを抑制し、連続して安定した発電を可能とした。
しかも、排水機構は、各MEA間に配置されるセパレータと平面視での面積が同等で、MEA積層群と積層することが容易であることから、燃料電池の製造も容易で、また簡易な構成であるため、燃料電池の高コスト化(それに伴う生産性の低下)や無用な体積増加も抑えることができる。
本発明によれば、燃料電池内部に浸入した水分によるフラッディングを抑制でき、連続して安定した発電が可能な燃料電池を提供することができる。
本発明の燃料電池の一例の概略を表す斜視図である。 図1の燃料電池の一例を表す要部分解図である。 図1の燃料電池の一例を表す要部断面図である。 図1の燃料電池の一例の、図3とは別の部分の断面図である。 本発明の燃料電池に係るセパレータの一例の概略図で、(a)は負極拡散層に配置される側の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は正極拡散層に配置される側の平面図である。 本発明の燃料電池に係る電極・電解質一体化物における正極触媒層、固体高分子電解質膜および負極触媒層の積層体の一例の概略図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明の燃料電池に係る電極・電解質一体化物における正極拡散層の一例の概略図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明の燃料電池に係る電極・電解質一体化物における負極拡散層の一例の概略図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明の燃料電池に係る排水機構の一例の概略図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの一例を表す模式図である。 本発明の燃料電池と、水素消費装置との一体化物の一例の概略を表す斜視図である。 本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの他の例を表す模式図である。 本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの他の例を表す模式図である。 実施例1および比較例1の燃料電池における定電圧運転試験結果を表すグラフである。
本発明の燃料電池の一例の概略を表す斜視図を図1に示す。図1に示す燃料電池100は、複数のMEA20が、セパレータ10を介して上下に積層されている。また、積層されたMEA20群における最下部のMEAより下には、排水機構60が配置されている。そして、MEA20群と排水機構60との積層体の両端がエンドプレート70、70で挟持され、ボルトとナットで固定されている。また、図1における80は燃料供給口、90は燃料排出口である。燃料供給口80から燃料が燃料電池内に導入され、各MEA20の負極に供給されて発電に利用される。そして、各MEA20で消費されなかった燃料が、燃料排出口90から、燃料電池外に排出される。
また、各MEA20内に導入された燃料中に含まれている浸入水は、排水機構60を通じて燃料排出口90から燃料電池外へ排出される。
本発明の燃料電池は、酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有するMEAを複数有し、これらがセパレータを介して上下に積層されており、更に、これら積層されたMEA群における最下部のMEAよりも下に、前記の機能を有する排水機構が設けられていればよく、燃料電池の各構成要素の詳細については特に制限はないが、以下に、本発明の燃料電池の好ましい態様について、詳細に説明する。
図2に、図1の燃料電池の一例の要部分解図を、図3に、図1の燃料電池の一例の要部断面図を、それぞれ示す。図中、20aは、上から、負極触媒層(図3中、24)、固体高分子電解質膜(図3中、23)、正極触媒層(図3中、22)の順に積層された積層体であり、その上側には負極拡散層25が配置され、下側には正極拡散層21が配置されてMEAを構成している。MEAの上下には、セパレータ10、10が配置されている。なお、図3は断面図であるが、各構成要素の燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドにより形成される燃料の流路の理解を容易にする目的で、上側のセパレータ10の上端、および下側のセパレータ10の下端以外については、背面部分を省略している。
セパレータ10、10には、燃料供給マニホールド11および燃料排出マニホールド12が形成されている。セパレータ10、10は平面視での形状が四角形で、それぞれが1枚で構成されている。そして、燃料供給マニホールド11が、四角形を構成する4辺のうちの1辺の近傍に形成されており、燃料排出マニホールド12が、前記1辺と対向する1辺の近傍に形成されている。
また、セパレータ10、10は、その片面に、溝状の酸素流路13が複数形成されており、他面が平板状である。セパレータ10、10の酸素流路13は、燃料供給マニホールド11および燃料排出マニホールド12が近傍に形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐように、互いに平行または略平行に形成されている。
更に、積層体20aに係る正極触媒層、固体高分子電解質および負極触媒層にも、セパレータ10、10の燃料供給マニホールド11に相当する位置に燃料供給マニホールドが、燃料排出マニホールド12に相当する位置に燃料排出マニホールドが、それぞれ形成されている。
また、正極拡散層21は、下側のセパレータ10における酸素流路13形成部の全面を覆うように配置されている。そして、正極拡散層21における、セパレータ10の酸素流路13と平行または略平行な2辺の外側には、燃料ガスの流入を抑制するための正極ガスシール30が配置されており、正極ガスシール30の、セパレータ10、10の燃料供給マニホールド11に相当する位置に燃料供給マニホールドが、燃料排出マニホールド12に相当する位置に燃料排出マニホールドが、それぞれ形成されている。
更に、負極拡散層25は、上側のセパレータ10の平板面と接しており、その外周外側に、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシール40が配置されている。そして、負極ガスシール40の、セパレータ10、10の燃料供給マニホールド11に相当する位置に燃料供給マニホールドが、燃料排出マニホールド12に相当する位置に燃料排出マニホールドが、それぞれ形成されている。
図2および図3では、酸素を含む空気の流れを点線矢印で、燃料ガスの流れを実線矢印で示している。燃料供給マニホールド11から導入された燃料は、負極拡散層25を通って負極触媒層24に供給される。そして、発電反応に関与せず消費されなかった燃料は、負極拡散層25を通って燃料排出マニホールド12から外部へ排出される。
また、セパレータ10、10の有する酸素流路13は、平面視で、四角形のセパレータの対向する2辺を直線的に繋ぐように形成されており、その両端部が、セパレータの側面において開口している。そのため、例えば、燃料電池の側面(セパレータ10における酸素流路13が開口している側の側面)からファンなどを用いて酸素を含む空気を送ることで、酸素流路13内へ空気が導入される。そして、酸素流路13内に導入された空気(酸素)が、MEAの正極拡散層21を通じて正極触媒層22に供給される。また、発電反応に関与せず、消費されなかった酸素、および空気中の酸素以外の成分は、燃料電池の側面(空気を送り込んだ側面とは反対側の側面)における酸素流路13の開口端から外部に排出される。
なお、詳しくは後述するが、負極に係る負極拡散層は、撥水処理をした多孔質炭素シートのように、その内部を燃料が流通可能な材料で構成されることが一般的である。そのため、本発明の燃料電池では、燃料供給マニホールドから導入された燃料は、負極拡散層内の孔を経て負極触媒層に供給され、消費されなかった燃料は、負極拡散層内の孔を経て燃料排出マニホールドから外部へ排出される。よって、図2や図3に示すように、隣り合うMEA間に介在させるセパレータには、酸素流路のみを形成すればよく、燃料流路を形成する必要はないことから、セパレータを1枚で構成でき、また、セパレータ自体を薄くすることが可能である。従って、本発明の燃料電池は、このようなセパレータを備えていることが好ましく、これにより、よりコンパクトな構造とすることができる。
なお、図2および図3に示す燃料電池では、酸素流路13を通過する空気が冷却媒体としても作用する。そのため、酸素流路13が冷却媒体流路を兼ねているため、セパレータに別途冷却媒体流路を形成する必要がないことから、セパレータを1枚の層で構成し、片面を平面状としてセパレータを薄くしても、冷却媒体による冷却が可能である。
図4に、図1の燃料電池の別の要部の断面図を示す。図4に示す断面図は、排水機構60と、燃料排出マニホールドとを含む部分を示している。なお、図4も、図3と同様に、各構成要素の燃料排出マニホールドにより形成される燃料の流路の理解を容易にする目的で、セパレータ10の上端以外については、背面部分を省略しており、また、燃料排出口90を簡略化して示している。
図4では、積層体20aの下側に正極拡散層21が配置され、更にその下側にセパレータ10が配置されている。また、積層体20aの上側には負極拡散層25が配置されており、更にその上側にもセパレータ10が配置されている。そして、正極拡散層21と積層体20aと負極拡散層25とでMEAを構成している。このMEAが、積層されたMEA群における最下部のMEAに該当する。そして、MEAの正極拡散層21の下側に配置されたセパレータ10の更に下側には、各MEAから生じた電力を外部へ取り出すための集電板50、およびガスシールと絶縁とを行うためのゴムシート52を挟んで排水機構60が配置されている。51は集電板の外側に配置されたガスシールである。なお、ゴムシート52は、排水機構60とエンドプレート70との間にも配置されている。
排水機構60は、例えば、燃料に含まれ、燃料電池内で結露することで生じた浸入水を、燃料供給口90側へ流すための水通過層60aを有しており、また、水通過層60aの外周外側に、ガスの出入りを抑制するためのガスシール60bを有している。そして、ガスシール60bの、セパレータ10の燃料供給マニホールドに相当する位置に燃料供給マニホールドが、燃料排出マニホールド12に相当する位置に燃料排出マニホールドが、それぞれ形成されている。
図4では、燃料ガスの流れを実線矢印で示しているが、燃料電池内で結露して生じた浸入水は、燃料ガスの流れに伴って排水機構60の水通過層60aを通過して燃料排出マニホールドに達し、発電反応に関与せず消費されずに、セパレータやMEAの燃料排出マニホールドにより形成された燃料排出流路を通過してきた燃料と共に燃料排出口90から外部に排出される。このように、本発明の燃料電池では、燃料ガスに伴って浸入した水を効率よく燃料電池外に排出できるため、これら浸入水によるフラッディングを効果的に抑制できる。
なお、排水機構60の有する水通過層60aは、負極に係る負極拡散層と同じ構造であることが好ましく、具体的には、負極拡散層と同様に、撥水処理をした多孔質炭素シートなどの、その内部を燃料および水が流通可能な材料で構成されることが好ましい。このような構造の水通過層を備えることで、別途水通過用の溝などを形成する必要がなく、簡易な構成の排水機構とすることができる。また、排水機構の圧力損失がMEAより低ければ、浸入水がない場合にMEA全体に燃料が行き渡らず、発電効率が低下する虞があるが、水通過層が負極拡散層と同じ構造である場合には、排水機構が、発電部に当たるMEAと同等の圧力損失を有するようになるため、浸入水がない場合にもMEA全体に燃料が良好に行き渡るようにでき、発電効率も高く維持することができる。
なお、図2から図4では、上から、負極、固体高分子電解質膜、正極の順に積層されたMEAを有する燃料電池の例を示しているが、本発明の燃料電池では、上から、正極、固体高分子電解質膜、負極の順に積層された構成のMEAを有していてもよい。
また、排水機構は、積層されたMEA群における最下部のMEAよりも下に配置すればよく、例えば、積層されたMEA群の上面および下面には集電板を配置することが通常であるため、排水機構と、前記最下部のMEAとの間に集電板(更には、ガスシールと絶縁とを目的としたゴムシートなど)が介在していてもよい。また、例えば、図4に示すように、上から、負極、固体高分子電解質膜、正極の順に積層したMEAを有する燃料電池の場合には、最下部のMEAの正極に酸素を良好に供給するために、酸素流路を設けたセパレータを、前記最下部のMEAの下に配置することが好ましい。よって、この場合には、排水機構と、前記最下部のMEAとの間には、図4に示すように、セパレータおよび集電板(更にはゴムシート)が介在していてもよい。他方、上から、正極、固体高分子電解質膜、負極の順に積層したMEAを有する燃料電池の場合には、最下部のMEAの下にセパレータを配置しなくてもよい。よって、このような構成の燃料電池の場合には、排水機構と前記最下部のMEAとの間には、例えば集電板(更にはゴムシート)のみが介在するような構成としてもよく、また、集電板を積層したMEA群の上面および下面以外の位置に配置するような場合には、排水機構と前記最下部のMEAとが直接接していてもよい。
図2から図4に示すセパレータ10の詳細を図5に示す。図5の(a)は酸素流路13が形成されていない面側の平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図、(c)は酸素流路13が形成されている面側の平面図である。
セパレータ10では、燃料供給マニホールド11および燃料排出マニホールド12は、平面視で四角形を構成する4辺のうちの対向する2辺の近傍に、それぞれ配置する。セパレータの燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを前記のような配置とし、MEAの正極、負極および固体高分子電解質膜、並びに排水機構に形成する燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを、セパレータの燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドに相当する位置に形成することで、負極における燃料が良好に流通する領域、すなわち、燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとで挟まれた領域をより大きくとることができ、発電に良好に関与できる電極面積をより大きくすることが可能となって、より効率的な発電が達成できる。
また、セパレータ10の片面は平面状であり[図5(a)]、他面[図5(c)]には、前記の通り、平面視で四角形を構成する4辺のうちの、燃料供給マニホールド11および燃料排出マニホールド12が形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐ複数の酸素流路13が、互いに平行または略平行に形成されている。酸素流路13は、溝状であり、隣り合う酸素流路間には、リブ14が存在している。なお、(c)では、酸素流路13とリブ14とを識別しやすくするために、酸素流路13を、ドットを入れて示している。セパレータに係る酸素流路における「互いに平行または略平行」とは、基本的には、各酸素流路は互いに平行に形成されるが、多少平行からずれている場合であっても、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、許容される意味である。
セパレータにおける酸素流路方向の長さ[図5(a)および(c)中、縦方向の長さ]は、電極面積を十分に確保する観点から、10mm以上であることが好ましい。また、前記の通り、酸素流路を通過する空気は、酸素(酸化剤)の供給源となる他、冷却媒体としても機能させることができるが、セパレータにおける酸素流路方向の長さが長すぎると、燃料電池の発電時における発熱を、酸素流路を通過する空気によって十分に冷却できない虞がある。そのため、セパレータにおける酸素流路方向の長さは、100mm以下であることが好ましい。
セパレータにおける燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとの間の距離(最短の距離。燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとの間の距離について、以下同じ。)は、電極面積を十分に確保する観点から、10mm以上であることが好ましい。また、燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとの間が長すぎると、燃料流路が長くなって、燃料流通の圧損が大きくなることがある。そのため、セパレータにおける燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとの間の距離は、300mm以下であることが好ましい。
セパレータにおける燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドの幅[図5(a)および(c)中、横方向の長さ]は、燃料流通時の圧損を小さくするためには、ガスシール性を確保できる範囲でできる限り大きくすることが好ましい。
なお、燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドは、平面視で四角形のセパレータの、4辺のうちの対向する2辺の近傍にそれぞれ設けるが、具体的には、燃料供給マニホールドは、図5(a)および(c)中で、ガスシール性を確保できる範囲で、左側の縦の辺からの距離ができる限り短くなるように配置することが好ましい。また、燃料排出マニホールドも、図5(a)および(c)中で、ガスシール性を確保できる範囲で、右側の縦の辺からの距離ができる限り短くなるようにすることが好ましい。
本発明の燃料電池において、MEAの有する正極、負極および固体高分子電解質膜、並びに排水機構に形成する燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドは、セパレータの燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドの存在位置に相当する箇所に配置する。これにより、セパレータ、MEAおよび排水機構の燃料供給マニホールドが重なり、また、セパレータ、MEAおよび排水機構の燃料排出マニホールドが重なることで、燃料電池の厚み方向(セパレータ、MEAおよび排水機構の積層方向)に燃料流路が形成される。
なお、MEAの有する正極、負極および固体高分子電解質膜の燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールド、セパレータの燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールド、並びに排水機構の燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドの形成位置の決定に当たっては、後述する正極ガスシール、負極ガスシール、および排水機構におけるガスシールの幅を考慮することが好ましい。
セパレータにおいて、酸素流路の幅[図5(b)および(c)中、横方向の長さ]は、空気の流通をより良好にする観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、セパレータの強度低下を抑制する観点から、5mm以下とすることが好ましい。
酸素流路の高さ(溝の高さ)は、空気の流通をより良好にする観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、セパレータの厚みの増大を抑制する観点から、5mm以下とすることが好ましい。
酸素流路間のリブの幅[図5(b)および(c)中、横方向の長さ]は、セパレータの強度低下を抑制する観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、酸素流路での空気の流通を良好にする観点から、5mm以下とすることが好ましい。
酸素流路部分の最薄部の厚み(酸素流路の底部から他面までの長さ)は、セパレータの強度を確保して、割れ、ゆがみなどを防止する観点から、0.2mm以上とすることが好ましく、また、セパレータの厚みの増大を抑制する観点から、5mm以下であることが好ましい。
セパレータの材質としては、電子伝導性および耐食性の高いものであれば特に制限は無いが、例えば、黒鉛、カーボンと樹脂との混練物、ステンレス鋼、ステンレス鋼に金や白金をメッキしたもの、チタン、チタンに金や白金をメッキしたもの、ステンレス鋼−銅クラッド、ステンレス鋼−銅クラッドに金や白金をメッキしたものなどが好適である。
図2から図4に示す正極触媒層、固体高分子電解質膜および負極触媒層の積層体20aの詳細を図6に示す。図6の(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。
燃料電池において、MEAを構成する正極触媒層と、固体高分子電解質膜と、負極触媒層とは、図6に示すように平面視で同一形状であることが好ましい。これにより、正極触媒層と固体高分子電解質膜と負極触媒層とで構成される積層体の全面で厚みを均一にできるため、正負極の拡散層および正負極のガスシールを介したセパレータ(MEAの両面に配置される2枚のセパレータ)による締め付けが均一になり、ガス漏れがより良好に抑制できるようになる。また、MEAの製造時において、固体高分子電解質膜を挟んで正極触媒層と負極触媒層との位置を精度よく決定する必要もなくなるため、MEAの製造、ひいては燃料電池の製造がより容易となり、その生産性を高めることができる。
燃料電池の有するMEAに係る正極触媒層は、正極拡散層を介して拡散してきた酸素を還元する機能を有している。正極触媒層としては、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有しており、また、必要に応じて、樹脂などのバインダを更に含有していてもよい。
正極触媒層の含有する触媒としては、酸素を還元できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金微粒子が挙げられる。また、前記触媒は、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素と白金との合金で構成される微粒子などであってもよい。
触媒の担体である炭素粉末としては、例えば、BET比表面積が10〜2000m/gであり、平均粒子径が20〜100nmのカーボンブラックなどが用いられる。炭素粉末への前記触媒の担持は、例えば、コロイド法などで行うことができる。
前記炭素粉末と前記触媒との含有比率としては、例えば、炭素粉末100質量部に対して、触媒が5〜400質量部であることが好ましい。このような含有比率であれば、十分な触媒活性を有する正極触媒層が構成できるからである。また、例えば、炭素粉末上に触媒を析出させる方法(例えば、コロイド法)で触媒担持炭素粉末が作製される場合には、炭素粉末と触媒とが前記の含有比率であれば、触媒の径が大きくなりすぎず、十分な触媒活性が得られるからである。
正極触媒層に含まれるプロトン伝導性材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができる。ポリパーフルオロスルホン酸樹脂としては、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。
正極触媒層におけるプロトン伝導性材料の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、2〜200質量部であることが好ましい。プロトン伝導性材料が前記の量で含有されていれば、正極触媒層において十分なプロトン伝導性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
正極触媒層に係るバインダとしては、特に制限はないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体などの非フッ素樹脂などが用いることができる。
正極触媒層におけるバインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。バインダが前記の量で含有されていれば、正極触媒層について十分な結着性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
正極触媒層の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。
負極触媒層は、負極拡散層を介して拡散してきた水素などの燃料を酸化する機能を有している。負極触媒層は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有しており、また、必要に応じて、樹脂などのバインダを更に含有していてもよい。
負極触媒層に係る触媒は、水素などの燃料を酸化できれば特に制限はなく、例えば、正極触媒層に係る触媒として例示した前記の各触媒を用いることができる。負極触媒層に係る前記炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダについても、正極触媒層に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダとして例示した前記の各材料を用いることができる。
負極触媒層の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。
固体高分子電解質膜は、プロトンを輸送可能であり、かつ電子伝導性は示さない材料で構成された膜であれば、特に制限はない。固体高分子電解質膜を構成し得る材料としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなども、固体高分子電解質膜の材料として用いることができる。
固体高分子電解質膜の厚みは、5〜150μmであることが好ましい。
なお、図4に示すゴムシート52は、その平面形状を、例えば、図6の(a)に示す積層体20aと同じ形状とすることができる。よって、ゴムシート52には、例えば、セパレータの燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドに相当する位置に、燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを形成することが好ましい。
図2から図4に示す正極拡散層および正極ガスシールの詳細を図7に示す。図7の(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。正極拡散層21は、前記の通り、セパレータの酸素流路の形成部全面を覆うように配置される。
正極拡散層21における、セパレータの酸素流路と平行または略平行な2辺[図7(a)中、縦の2辺]の外側には、燃料ガスの流出を抑制するための正極ガスシール30が配置され、燃料供給マニホールド31および燃料排出マニホールド32が、正極ガスシール30に形成されていることが好ましい。前記のように正極ガスシールを配置した場合、セパレータの酸素流路の開口端に相当する位置に正極ガスシールが存在しないため、固体高分子電解質膜の、燃料による圧力や水分によって生じ得る膨張収縮の応力を緩和することができる。
なお、正極拡散層21と正極ガスシール30との界面の位置は、セパレータの酸素流路の形成部よりも外側(燃料供給マニホールド側および燃料排出マニホールド側)に相当する位置とすることが好ましい。前記の界面がセパレータの酸素流路に相当する位置や、酸素流路と、これに隣り合う酸素流路との間に相当するリブの位置に存在していた場合、ガスシール性が低下する虞がある。
正極ガスシールの幅[図7(a)中、aやbの長さ]は、ガスシール性をより良好にする観点からは、0.5mm以上であることが好ましく、また、電極面積のロスを低減する観点からは、5mm以下であることが好ましい。
正極拡散層の厚みは、100〜1000μmであることが好ましい。また、正極ガスシールの厚みは、50〜1000μmであることが好ましい。
なお、図4に示す集電板50およびガスシール51からなる層は、その平面形状を、例えば、図7の(a)に示す正極拡散層21およびガスシール30からなる層と同じ形状とすることができる。すなわち、図7の(a)における正極拡散層21を集電板50に置き換え、ガスシール30をガスシール51に置き換えた形状とすることができる。よって、平面視で、集電体50の対向する両端に配置されるガスシール51、51には、それぞれ、例えばセパレータの燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドに相当する位置に、燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを形成することが好ましい。
図2から図4に示す負極拡散層および負極ガスシールの詳細を図8に示す。図8の(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。燃料電池においては、負極拡散層25が、セパレータの平面(酸素流路が形成されている面と反対の面)と接するようにセパレータが配置される。
本発明の燃料電池では、図8に示すように、平面視で四角形の負極拡散層25の外周外側に、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシール40を配置し、負極拡散層25の前記四角形を構成する4辺のうちの1辺[図8(a)中、左側の縦の辺]と負極ガスシール40とで燃料供給マニホールド41を形成し、かつ、負極拡散層25の前記1辺に対向する1辺[図8(a)中右側の縦の辺]と負極ガスシール40とで燃料排出マニホールド42を形成することが好ましい。
前記の通り、負極拡散層25は、その内部に、燃料ガスが流通可能な孔を有する材料で構成することが一般的であるが、負極拡散層25、負極ガスシール40、燃料供給マニホールド41および燃料排出マニホールド42を前記のように配置することで、負極拡散層25の全体に、燃料供給マニホールド41から燃料排出マニホールド42へ向かう燃料流路が形成されることになり、例えば、負極内に水分量の多い燃料が供給されたり、発電に伴って水が生成したりしても、これらを良好に排出することができるようになる。
なお、負極拡散層25には、図8(a)に示すように、燃料流路を形成しなくてもよく、これにより、全面がセパレータと接することになるため、電気的な接触抵抗を最小限に抑えることが可能となる。
負極ガスシールの幅[図8(a)中、cやdの長さ]は、ガスシール性をより良好にする観点からは、0.5mm以上であることが好ましく、また、電極面積のロスを低減する観点からは、5mm以下であることが好ましい。
負極拡散層の厚みは、100〜1000μmであることが好ましい。また、負極ガスシールの厚みは、50〜1000μmであることが好ましい。
正極拡散層および負極拡散層は、多孔性の電子導電性材料で構成され、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが用いられる。なお、正極拡散層および負極拡散層の触媒層側には、更なる撥水性向上および触媒層との接触向上を目的として、フッ素樹脂粒子(PTFE樹脂粒子など)を含む炭素粉末のペーストを塗布してもよい。
正極ガスシールおよび負極ガスシールの材質には、燃料電池分野などにおいてシール材として公知の各種材料、例えば、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、PTFEフィルム、ポリイミドフィルムなどを用いることができる。
図4に示す排水機構の詳細を図9に示す。図9の(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。排水機構60は、前記の通り、積層されたMEA群のうち、最下部のMEAよりも下に配置される。
図9に示すように、排水機構60は、平面視で四角形の水通過層60aの外周外側に、ガスの出入りを抑制するためのガスシール60bを配置し、水通過層60aの前記四角形を構成する4辺のうちの1辺[図9(a)中、左側の縦の辺]とガスシール60bとで燃料供給マニホールド61を形成し、かつ、水通過層60aの前記1辺に対向する1辺[図9(a)中右側の縦の辺]とガスシール60bとで燃料排出マニホールド62を形成することが好ましい。そして、水通過層60aは、MEAの有する負極拡散層と同じ構造を有していることが好ましい。すなわち、排水機構60は、MEAの有する負極拡散層および負極ガスシールにより構成される層と同じ構造を有していることが好ましい。排水機構60をこのような構造とすることで、前記の通り、排水機構60が発電部に当たるMEAと同等の圧力損失を有するようになるため、燃料電池の発電効率を高く維持することができる。
よって、排水機構に係る水通過層は、負極拡散層と同様に、多孔性の電子導電性材料で構成されていることが好ましく、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが好ましく用いられる。このような材料で水通過層を構成することで、層の内部を水(燃料電池内の浸入水)が良好に通過できるため、別途水通過用の溝などを形成する必要がない。なお、水通過層の表面には、更なる撥水性向上を目的として、フッ素樹脂粒子(PTFE樹脂粒子など)を含む炭素粉末のペーストを塗布してもよい。
水通過層の厚みは、負極拡散層と同様に、100〜1000μmであることが好ましい。
水通過層の外周外側に配置されるガスシールには、負極ガスシールと同様に、燃料電池分野などにおいてシール材として公知の各種材料、例えば、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、PTFEフィルム、ポリイミドフィルムなどを用いることができる。
水通過層の外周外側に配置されるガスシールの幅[図9(a)中、eやfの長さ]は、負極ガスシールと同様に、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。また、水通過層の外周外側に配置されるガスシールの厚みも、負極ガスシールと同様に、50〜1000μmであることが好ましい。
なお、排水機構は、MEA間に介在させるセパレータと、平面視での面積が同等であり、これにより、排水機構を含む燃料電池の生産を容易とするが、ここでいう「平面視での面積が同等」とは、実質的に同じであればよく、排水機構やセパレータを含む燃料電池の各層を積層するにあたり、詳細な位置合わせが必要になるなど、積層に支障が出ない程度のサイズのズレは許容する趣旨であるが、具体的には、セパレータの面積に対して、排水機構の面積が95〜105%程度であればよい。
図4に示す集電体50とガスシール51からなる層におけるガスシール51の材質には、負極ガスシールや正極ガスシールと同様に、燃料電池分野などにおいてシール材として公知の各種材料、例えば、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、PTFEフィルム、ポリイミドフィルムなどを用いることができる。また、図4に示すゴムシート52の材質には、シリコンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを用いることができる。
なお、本発明の燃料電池では、燃料電池を構成するMEAにおいて、正極と負極とを、例えば、抵抗およびスイッチを介してリード体などで接続するなどして、導通可能なように構成していることが好ましい。このような構成のMEAを有する燃料電池では、燃料電池による発電の終了時に、前記のスイッチを入れるなどしてMEAに係る正極と負極とを短絡させて、燃料電池内に残留する水素などの燃料を消費することができる。そのため、燃料電池による発電の終了時に燃料電池内に残留する燃料による燃料電池の劣化を抑制することができる。
燃料電池に係るMEAにおいて、正極と負極とを、前記のように抵抗を介して導通可能なように構成する場合、かかる抵抗としては、例えば、本発明の燃料電池を有するシステム(燃料電池発電システム)において、燃料電池の停止後、MEAの正極−負極間の電圧が0.1V以下となるのに要する時間が1分以内となるような抵抗値を有するものを用いればよく、抵抗を用いなくても、このような時間でMEAの正極−負極間の電圧を前記のように下げることができるのであれば、抵抗を用いずにスイッチのみを介してリード体などで接続して、導通可能としてもよい。
図10に、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの一例を概略的に示す。図10中、100は燃料電池(本発明の燃料電池)で、600は燃料電池100へ燃料である水素を供給するための水素供給源である。水素供給源600は、水素発生物質604を収容した水素発生容器603と、水602を収容した水容器601とを有している水素製造装置である。水容器601からポンプ201を用い配管501、502を通じて水602を水素発生容器603に供給すると、水素発生物質604と水602との反応によって水素が発生し、この水素が、配管503、水トラップ(凝縮水分離器)801、配管504、505、506を通じて燃料電池100へ供給される。
101は送風ファンであり、燃料電池100の正極への空気の供給、水素消費装置900への空気の供給および燃料電池100の冷却のためのものである。また、図10中の矢印は、送風ファン101により送られる空気の流れの方向を示している(後記の図12および図13においても、同じである。)。図10に示すように、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムは、送風ファン101を有していることが好ましい。
図10に示す燃料電池発電システムは、燃料電池100内のガスをシステム外に排出するための排気手段を有しており、排気手段は、燃料電池100内のガスを燃料電池100外に間欠的に排出するためのパージバルブ310と、燃料電池100から排出されたガス中の水素を消費するための水素消費装置900とを備えている。
図10に示す燃料電池発電システムに係る排気手段は、配管507、圧力センサ400、パージバルブ310、配管509、水容器601、配管510、水素消費装置900、配管514により構成されている。
図10に示す燃料電池発電システムでは、燃料電池100による発電に伴って、燃料電池100の負極側にガス(発電に関与しなかった残留水素および発電の際に正極側から拡散してくる不純ガスを含むガス)などが蓄積し、また、燃料電池100内の浸入水が排水機構によって配管507側へ排出されるが、これらのガスや浸入水によって燃料電池100内および配管507内の圧力がある程度高まった時点で、パージバルブ310によって前記のガスや浸入水を配管509側に排出できる。このように、パージバルブ310の作用によって、燃料電池100内のガスや浸入水を間欠的に燃料電池100外に排出できるため、例えば、水素供給源から供給する水素のうち、発電に必要な量を上回る分を低減しても、浸入水を良好に排出でき、ガス中に含まれる水素量を減らすことができる。
なお、図10に示すシステムでは、圧力センサ400を備えており、この圧力センサ400によって配管507内の圧力を測定しながら、適時パージバルブ310を開いて、燃料電池500のガスや浸入水を配管509側へ排出できる。このように、燃料電池発電システムでは、燃料電池100の負極側の圧力を圧力センサ400で測定し、これにより得られた圧力情報に基づいて、パージバルブ310の開閉動作を制御することが好ましい。パージバルブは、燃料電池内の負極の圧力と外部の圧力(例えば大気圧)との差圧が5〜300kPaに達した段階で開閉動作を行うように制御されることが望ましい。差圧が5kPa未満で開く場合は、圧力差が小さすぎて水を排出する能力が低下し、差圧が300kPaを超えるまで開かない場合は、内圧が高くなりすぎてMEAを破損する虞が生じる。
前記のような構成とすることで、燃料電池内の圧力情報を測定しながら適性に発電を行うことができるため、圧力が高くなりすぎて燃料電池から水素が漏れ出たり、燃料電池が破裂したりすることを抑制できる。また、燃料電池の出力状態と圧力情報とを考慮して、出力を適正に維持できるように発電させることも可能となる。
図10に示すシステムでは、燃料電池100から排出されたガスや水(浸入水)は、配管509から、水素供給源600の水容器601へ導入される。水容器601は、水トラップとしても作用するため、燃料電池100から排出された水が水容器601で回収される。このように、燃料電池発電システムでは、燃料電池から排出されたガス中に含まれる水(浸入水)を回収するために、水トラップなどの水回収手段を、パージバルブと水素消費装置との間に備えていることが好ましい。このような構成とすることで、燃料電池から排出されたガスから水を除去した上で、前記ガスを水素消費装置に供給できるため、水素消費装置内で水が溜まることによる水素消費効率の低下を抑制することができ、より効率的な水素除去が可能となる。
また、燃料電池発電システムでは、水回収手段により回収した燃料電池内の水(浸入水)を、水素発生物質との反応(すなわち、水素の製造)に利用することが好ましい。図10のシステムでは、水素供給源600の水容器601が水回収手段を兼ねているため、燃料電池100から排出された水を、水素製造用の水として利用することができる。このような構成とすることで、システムをコンパクトにすることができると共に、エネルギーの利用率を高めることができる。
図10に示すシステムでは、水容器601によって水(浸入水)が除去されたガス(燃料電池100から排出されたガス)が、配管510を通じて水素消費装置900に導入される。図10の水素消費装置900はMEAを有しており(図示しない)、燃料電池100の有するMEAによる発電と同じ機構によって、ガス中の水素を消費する。水素消費装置900に連結されている配管514は外気と接しており、水素消費装置900によって水素が除去されたガスは、配管514を通じてシステム外に排出される。なお、図10に示すシステムでは、配管514の出口が、送風ファン101からの送風が当たるように配置しているため、水素消費装置で処理しきれずに僅かに水素が残留していても、希釈しつつシステム外に排出することができる。
なお、燃料電池では、一般に、発電が停止している際に、燃料電池内の正極に空気、負極に水素がそれぞれ貯留した状態が長時間継続すると、劣化が生じる。この原因は定かではないが、この場合、電圧が発電時よりも高い状態で維持されるために、正負極の炭素や触媒が酸化するためではないかと推測される。よって、燃料電池発電システムでは、発電の終了時に、燃料電池内への水素の侵入を防止できるように構成されていたり、燃料電池内に残留する水素を除去できるように構成されていたりすることが好ましい。
図10に示すシステムでは、水素供給源600からの水素を燃料電池へ導入するための配管504と配管505との間に三方形弁302が設けられており、この三方形弁302は配管511とも接続しており、更に、この配管511は、水容器601と水素消費装置900との間に設置された配管510に接続している。そのため、燃料電池100の発電終了時に、三方形弁302を作動させて、水素供給源600からの水素を、燃料電池100に送らずに、配管511、510を通じて水素消費装置900に直接供給し、処理することができる。これにより、図10に示すシステムでは、燃料電池100による発電の終了時に、燃料電池100内への水素の侵入を防止して、かかる水素による燃料電池100の劣化を抑制することができる。
また、図10に示すシステムでは、水素供給源600の水容器601と水素発生容器603とを接続する配管501、502に三方形弁301が接続されており、この三方形弁301は、配管512とも接続されている。更に、配管512は、三方形弁303を介して、水素供給源600から燃料電池100へ水素を供給するための配管505および配管506とも接続されている。そのため、燃料電池100の発電終了時に、三方形弁301、303を作動させ、更にパージバルブ310を作動させて、水容器601内の水を配管512および配管506を通じて、燃料電池100内に供給できる。これにより、図10に示すシステムでは、燃料電池100による発電の終了時において、燃料電池100内に残留している水素を水で置換することができるため、かかる水素が燃料電池100内に残留することによる燃料電池100の劣化も抑制できる。
また、前記のように、燃料電池100による発電の終了時において、燃料電池100内に水を貯留することができるため、燃料電池100の有するMEA中の固体高分子電解質膜を湿潤状態に保つことが可能となる。一般に、固体高分子形燃料電池では、長時間停止していると、固体高分子電解質膜が乾燥してしまうが、このような状態となると、再起動時に発電による自己湿潤が必要となり、出力の立ち上がりに時間を要するようになる。しかしながら、図10に示すシステムでは、前記の通り、燃料電池100による発電の終了時に、燃料電池100内を水で満たすことができるため、固体高分子電解質膜の乾燥を防いで、再起動時に初期から高い出力を発揮することが可能となる。
更に、図10に示すシステムでは、発電の終了時に燃料電池100内に供給する水を、水素供給源600の水容器601から供給できるため、別途水容器などを備える必要がなく、コンパクトなシステムとすることができる。また、発電の終了時に燃料電池内に供給する水は、前記水回収手段(水トラップ)から直接供給してもよい。
本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムにおいて、燃料電池に水素を供給するための水素供給源としては、図10に示すように、水素発生物質と水との反応により発生する水素を供給する機構を有する水素製造装置であることが好ましい。
図10に示すシステムに係る水素製造装置(水素供給源)600は、前記の通り、水素発生容器603と水容器601とを有している。水素発生容器603は水素発生物質604を収容しており、ここに水容器601から水602を供給し、水素発生容器603内で水素発生物質604と水602とを反応させて水素を製造する。水素発生容器603で発生した水素は、配管503、504、505、506からなる燃料流路を経て燃料電池100に供給される。
水容器601から水素発生容器603に水を供給するための配管501、502には、水供給ポンプ201が設けられている。なお、水容器601に収容する水は、中性の水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液など、少なくとも水を含む液体であればよく、使用する水素発生物質との反応性などに応じて好適なものを選択すればよい。
水素発生容器603および水容器602は脱着式とすることもできる。これにより、水素発生容器603内の水素発生物質が消費されつくしたり、水容器602内の水がなくなったりした場合に、これらを取り外し、水素発生物質が充填された水素発生容器603や水が充填された水容器602を新たに取り付けることで、再び水素製造を行うことが可能となる。
水素発生容器603に収容される水素発生物質としては、特に制限はないが、水と120℃以下の低温で反応して水素を発生し得るものが望ましい。例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属;アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびマグネシウムより選ばれる1種以上の元素を50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する合金;金属水素化物;などが好適に使用できる。
なお、前記の金属や合金からなる水素発生物質は、表面に酸化皮膜を形成して安定化する。このため、反応性を高めるためには、水素発生物質の粒径をできるだけ小さくし、反応面積を大きくすることが好ましい。例えば、水素発生物質粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、粒子形状は、反応効率を高めるためにフレークであることが好ましい。粒径が小さすぎると、嵩密度が小さくなり、充填密度が低下するだけでなく、取り扱いが困難になるため、水素発生物質の粒径は、0.1μm以上とすることが好ましい。
平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱法などを用いることができる。具体的には、水などの液相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法である。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックHRA」などを用いることができる。
また、水素発生物質として用い得る金属水素化物としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。これらの金属水素化物は、アルカリ水溶液中では比較的安定であるが、触媒が存在する場合、速やかに水と反応して水素を発生することができる。触媒としては例えばPt、Niなどの金属や酸などを用いることができる。
水素発生物質は、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記の水素発生物質は、水との反応性を高めるため、水と混合された状態で加熱してもよく、加熱された水を供給してもよい。
また、前記の水素発生物質を、水と反応して発熱する発熱物質(水素発生物質以外の物質)と共に用いることにより、低温(例えば5℃程度)の水を供給しても、前記発熱物質の発熱によって反応系内の温度を高めて、迅速な水素発生が可能となる。
水と反応して発熱する発熱物質は、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなど、水との反応により水酸化物となるか、または、水和することにより発熱するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、塩化物、硫酸化合物などを例示することができる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムなどの金属水素化物などのように水との反応により水素を生成するものは、前記の通り、水素発生物質として使用することが可能であるが、前記の金属や合金を水素発生物質として使用する場合の発熱物質としても用いることができる。
特に、水素発生物質として、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびマグネシウムの中の1種以上の元素を主体とする合金を使用する場合には、前記発熱物質を併用することが好ましい。他方、水素発生物質として前記の金属水素化物を用いる場合には、前記発熱物質を併用しなくても、比較的良好な速度で水素を製造できるが、発熱物質を併用して、更に水素発生速度を高めてもよい。
水素発生容器603は、水素を発生させる水素発生物質を収納可能であれば、その材質や形状は特に限定されないが、水の供給口や水素の導出口以外から水や水素が漏れない材質や形状が好ましい。具体的な容器の材質としては、水および水素を透過しにくく、かつ120℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、角柱状、円柱状などが採用できる。
水容器601については特に制限はなく、例えば、従来の水素製造装置に使用されているものと同様の水を収容するタンクなどが採用できる。
水容器601中の水が、配管501、502を通じて水素発生容器603に供給されることで、水素発生容器603内の水素発生物質と反応して水素を発生するが、水素発生容器603内に存在する未反応の水が、発生した水素中に混入し、これらの混合物が配管503などからなる燃料流路を通じて燃料電池100に流入する場合がある。
よって、水素製造装置(水素供給源)600には、燃料電池に水素を供給する燃料流路の途中に、凝縮水分離器(水トラップ)801を設けることが好ましい。図10に示すように、水素発生容器603から排出される水素ガスは、配管503を通って凝縮水分離器801に導入される。この間、水素ガスに含まれる水分は、配管503内で冷却され凝縮水となる。凝縮水は、重力によって凝縮水分離器801の下部に落下するため、水素ガスを水と分離することができる。分離された水素ガスは、配管504などを通じて燃料電池100に供給される。
また、図10に示すように、凝縮水分離器801と水容器601とを水回収用配管513で連結すれば、凝縮水分離器801で分離した水を水容器601に回収することができる。分離した水を回収することにより、水素発生のために供給する水の効率的な利用が可能となり、水容器601をよりコンパクトにすることができる。なお、凝縮水分離器801と水容器601とを連結する水回収用配管513には、図10に示すように、水を送り出すためのポンプ202を設置してもよい。
燃料電池発電システムに係る水素消費装置は、システム内の水素を消費して除去できるものであれば特に制限はないが、例えば、MEAを有し、燃料電池に係るMEAによる発電と同じ機構により水素を消費する装置や、水素を酸化し得る触媒を有する装置などが挙げられる。
燃料電池に係るMEAによる発電と同じ機構により水素を消費する装置としては、具体的には、図2から図4に示した燃料電池を構成するMEAのように、正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層および負極拡散層が順次積層されており、正極と負極とが、例えば、スイッチおよび抵抗を介して導通可能なように接続されている構成のMEAを有する水素消費装置が挙げられる。
水素消費装置のMEAに係る正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層および負極拡散層については、燃料電池のMEAに係る正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層および負極拡散層として、先に記載したものと同じものが使用できる。
前記の水素消費装置の場合、ガス中の水素を消費する必要が生じたときに、正極と負極との接続部におけるスイッチを入れ、MEAの正極−負極間を導通させることで、ガス中の水素を消費できる。これにより、燃料電池内から排気され、システム外に排出する必要のあるガス中の水素や、燃料電池による発電の終了時に、水素供給源から燃料電池内に侵入する水素を、完全に無くすか、またはそれらの水素量を大幅に低減することができる。
なお、前記のMEAを有する水素消費装置において、MEAの正極と負極とを抵抗を介して接続する場合、かかる抵抗としては、例えば、水素消費装置内に水素が導入されてから、MEAの正極−負極間の電圧が0.1V以下となるのに要する時間が1分以内となるような抵抗値を有するものを用いればよい。また、抵抗を用いなくても、このような時間でMEAの正極−負極間の電圧を前記のように下げることができるのであれば、MEAの正極と負極とは、抵抗を用いずにスイッチのみを介してリード体などで接続して、導通可能としてもよい。
なお、水素消費装置は、前記の通り、燃料電池と同様にMEAを備えているため、例えば、燃料電池に複数のMEAを有するもの(スタック)を使用し、その一部のMEA(例えば、1つ、2つ、3つなど)を水素消費装置として使用する形態で、燃料電池と水素消費装置とを一体化した構成とすることもできる。
図10に示す燃料電池発電システムでは、燃料電池100と水素消費装置900との一体化物を備えているが、図11に、前記一体化物の一例を模式的に表す斜視図を示している。図11に示す一体化物では、セパレータ10を介して積層された複数のMEA20のうち、下側部分が燃料電池100を構成し、上側部分が水素消費装置900を構成している。81はガス供給口であり、例えば図10中の配管510と接続される。また、91はガス排出口であり、例えば図10中の配管514と接続される。
燃料電池と水素消費装置との一体化物を用いて燃料電池発電システムを構成することで、前記システムの小型化がより容易となる。この場合、水素消費装置として使用するMEAと発電用に使用するMEAとは接続せず、また、水素消費装置で水素を除去したガスを効率よくシステム外に排気でき、かつ効率よく発電できるように、水素消費装置として使用するMEAと発電用に使用するMEAとは、互いに内部のガスが行き来できないように構成する。
図12に、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの他の例の概略図を示す。図12に示す燃料電池発電システムは、水素供給源600からの水素を燃料電池100に供給するための配管505および配管506と接続された三方形弁303に、更に外気を取り込むための配管515が接続されている。そして、燃料電池100による発電の終了時に、三方形弁303を作動させることによって、配管515を通じて燃料電池100の燃料供給口から、その内部に空気を取り込むことができるように構成している。また、図示していないが、燃料電池100内のMEAは、前記のように、正極と負極とが導通可能なように構成されており、燃料電池100内に空気を取り込むと共に、正極と負極とを短絡させて、燃料電池100内に残留している水素を消費できる。
図12に示す燃料電池発電システムでは、前記の燃料電池100の燃料供給口から、その内部に空気を取り込むことによる作用と、燃料電池100のMEAの正極と負極とを短絡させることによる作用とによって、燃料電池による発電の終了時に、燃料電池内に残留する水素による燃料電池の劣化を抑制することができる。
図13に、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムの他の例の概略図を示す。図13に示す燃料電池発電システムは、水素を酸化し得る触媒を有する水素消費装置900を備えた例である。水素消費装置900は、送風ファン101から送られる空気を取り込むことのできる位置に配されており、小さなスペースで効率よく水素を消費できるように構成されている。そのため、図13に示す構成の燃料電池発電システムによっても、その小型化が容易である。
水素を酸化し得る触媒を有する水素消費装置としては、例えば、前記触媒を含有するフィルター、筒状などの外装体に前記触媒を充填したもの、などが例示できる。なお、水素を酸化し得る触媒としては、例えば、MEAの負極触媒層における触媒として先に例示した各種触媒などを用いることができる。
なお、これまで、図1〜図13を用いて本発明の燃料電池および本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムを説明したが、図1〜図13は、本発明の燃料電池、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システム、および該システムに使用可能な構成要素の一部を示したものに過ぎず、本発明の燃料電池や、本発明の燃料電池を用いた燃料電池発電システムは、これらの図面に示すもの、またはこれらの図面に示す構成要素を有するものに限定される訳ではない。
以上の通り、本発明の燃料電池であれば、連続して安定した発電が可能である。また、本発明の燃料電池では、先に示した好適な構成を採用することで、燃料電池自体、および燃料電池発電システムの小型化も容易である。よって、本発明の燃料電池は、パソコン、携帯電話などのコードレス機器といった高機能のポータブル型電子機器の電源用途を始めとして、従来の燃料電池が使用されている各種用途に好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
図1に示すものと同様の構造の燃料電池を作製した。正極触媒層、固体高分子電解質膜、および負極触媒層の積層体には、図6に示す構成のものを用いた。固体高分子電解質膜23には、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)112」を用いた。Pt担持カーボン(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、5質量%濃度のNafion溶液(Aldrich社製)とを所定量で混合し、これをポリテトラフルオロエチレンシートの片面に塗布し、乾燥させた。前記の固体高分子電解質膜の両面に、前記のポリテトラフルオロエチレンシートを、Pt担持カーボンとNafion溶液との混合物の塗布面が固体高分子電解質膜側となるように重ねてホットプレスを行い、正極触媒雄、固体高分子電解質膜および負極触媒層の積層体を得た。その後、前記積層体を、外形が24mm×85.5mmとなるように切り出した。
SGLカーボン社製の「GDL10DC」(厚み470μm)を24mm×71.5mmのサイズに切り出して正極拡散層に用いた。また、正極ガスシールには、24mm×7mmのシリコンゴムシート(厚み0.3mm)を2枚用意し、いずれにも20mm×3mmの穴(燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールド)を形成した。
負極ガスシールには、正極ガスシールと同じシリコンゴムシートを用い、サイズを24mm×85.5mmとし、かつ、負極拡散層を挿入すると共に燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを構成するための、20mm×81.5mmのサイズの穴を形成した。負極拡散層には、正極拡散層に用いたものと同じ材料を使用し、20mm×75.5mmのサイズに切り出して用いた。
前記の積層体、正極拡散層、正極ガスシール、負極拡散層および負極ガスシールを、図2に示す順序および配置で積層したMEAを12個作製した。
セパレータには、カーボン製(最も厚い部分の厚みが2mm)で、図5に示す構成のものを用いた。外形は24mm×85.5mmとし、燃料供給マニホールド11および燃料排出マニホールド12のサイズは20mm×3mmとした。酸素流路(冷却媒体流路を兼ねた酸素流路)13は、幅1.5mm、深さ1.5mmとし、酸素流路間のリブ14の幅は1mmとした。
排水機構のガスシールには、負極ガスシールと同じシリコンゴムシートを、負極ガスシールと同じサイズに切り出し、更に水通過層を挿入すると共に燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドを構成するための、20mm×81.5mmのサイズの穴を形成した。また、排水機構の水通過層には、負極拡散層と同じ材料を、負極拡散層と同じサイズに切り出して用いた。そして、水通過層とガスシールとを、図9に示すように配置して排水機構を作製した。
前記12個のMEAを、前記のセパレータを酸素流路形成面側が正極拡散層側となるようにして各MEA間に介在させつつ重ね、更に最下部となるMEAよりも下に排水機構を重ね、これらの上下を2枚のエンドプレート(アルミニウム製で、サイズが38mm×90mm)で挟持し、ボルトおよびナットを用いて固定して、図1に示す構造の燃料電池を作製した。
比較例1
排水機構を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして燃料電池を作製した。
実施例1および比較例1の燃料電池に、燃料供給口から90℃で100%(相対湿度)に加湿した水素を供給し、室温で定電圧(7.5V)運転を行った。なお、この際、正極には、ブロアを用いて大気を供給した。
前記の定電圧運転試験時における経過時間に対する出力の変化を図14に示す。図14から、比較例1の燃料電池では、運転開始から20分ほどで出力の急激な低下が認められるが、実施例1の燃料電池では、このような急激な出力低下が解消できており、60分以上にわたって安定に発電できている。これは、実施例1の燃料電池では、排水機構の作用によって、燃料電池内の浸入水を効果的に排出できたことにより、フラッディングが解消されたためであると考えられる。
10 セパレータ
11 燃料供給マニホールド
12 燃料排出マニホールド
13 酸素流路
20 電極・電解質一体化物(MEA)
60 排水機構
60a 水通過層
60b ガスシール
100 燃料電池

Claims (9)

  1. 酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物を、セパレータを介して上下に複数積層してなる燃料電池であって、
    積層した複数の電極・電解質一体化物のうち、最下部の電極・電解質一体化物よりも下に、前記セパレータと平面視での面積が同等の排水機構を有することを特徴とする燃料電池。
  2. 電極・電解質一体化物、および排水機構の形状が平面視で四角形であり、
    隣り合う2つの電極・電解質一体化物間に配置されるセパレータは、平面視での形状が四角形であり、かつ1枚で構成されており、
    電極・電解質一体化物の有する正極、負極および固体高分子電解質膜、前記セパレータ、および前記排水機構のそれぞれには、四角形を形成する4辺のうちの1辺の近傍に燃料供給マニホールドが、前記1辺と対向する他辺の近傍に燃料排出マニホールドが形成されており、
    前記セパレータの一面には、前記燃料供給マニホールドと前記燃料排出マニホールドとが形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐ複数の酸素流路が、互いに平行または略平行に形成されており、かつ前記セパレータの他面が平面状であり、
    前記セパレータは、酸素流路を有する面が電極・電解質一体化物の正極と接し、前記平面状の他面が、前記セパレータを介して前記電極・電解質一体化物と隣り合う電極・電解質一体化物の負極と接している請求項1に記載の燃料電池。
  3. 電極・電解質一体化物の負極は負極拡散層を有しており、前記負極拡散層がセパレータと接している請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 負極拡散層は、平面視で四角形であり、負極拡散層の外周外側に、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシールが配置されており、負極拡散層の前記四角形を構成する4辺のうちの1辺と前記負極ガスシールとで燃料供給マニホールドが形成され、かつ、負極拡散層の前記1辺に対向する1辺と前記負極ガスシールとで燃料排出マニホールドが形成されている請求項3に記載の燃料電池。
  5. 排水機構は、平面視で四角形で、かつ電極・電解質一体化物の有する負極拡散層と同じ構造の水通過層と、該水通過層の外周外側に配置された、燃料ガスの流出を抑制するためのガスシールとを有しており、水通過層の前記四角形を構成する4辺のうちの1辺と前記ガスシールとで燃料供給マニホールドが形成され、かつ、水通過層の前記1辺に対向する1辺と前記ガスシールとで燃料排出マニホールドが形成されている請求項4に記載の燃料電池。
  6. 電極・電解質一体化物の正極は、正極拡散層を有しており、前記正極拡散層が、セパレータの酸素流路全面を覆う箇所に配置されている請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池。
  7. 正極拡散層は、平面視で四角形であり、正極拡散層における、セパレータの有する酸素流路と平行または略平行な2辺の外側に、燃料ガスの流出を抑制するための正極ガスシールが配置されており、前記正極ガスシールに燃料供給マニホールドおよび燃料排出マニホールドが形成されている請求項6に記載の燃料電池。
  8. セパレータの酸素流路が冷却媒体流路を兼ねている請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池。
  9. 電極・電解質一体化物の有する正極触媒層と、負極触媒層と、固体高分子電解質とが、平面視で同じ形状である請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池。
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