JP2010270608A - チタン合金製構造部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高面圧で使用されるチタン合金製構造部材の摺動部にステライトを肉盛りする技術を提供することにより、チタン合金製構造部材の高面圧下での耐摩耗性を飛躍的に改善すること。
【解決手段】摺動部を有するチタン合金製構造部材であって、摺動部は、炭素を含む鉄系合金層がチタン合金母材に形成され、その上にステライト層が形成されたものである。
【選択図】図2
【解決手段】摺動部を有するチタン合金製構造部材であって、摺動部は、炭素を含む鉄系合金層がチタン合金母材に形成され、その上にステライト層が形成されたものである。
【選択図】図2
Description
本発明は、エンジンへ用いられるチタン合金製構造部材およびその製造方法に関する。
エンジンに用いられるロッカーアームの材料として、ロッカーアームの軽量化の観点から、チタン合金が用いられることがある。一般的に、チタン合金は、チタンやその他の金属と摺動させると、鉄鋼材料やコバルト合金に比べて凝着磨耗を引き起こしやすく、焼き付き限界が低い。これに対して、チタン部品表面の摺動性改善技術として、Cr3C2とTiまたはTi合金からなる肉盛り材を母材との混合が生じるように溶融させ、肉盛り硬化する方法がある(特許文献1参照)。また、β相チタン合金となる原料成分中に0.2〜5重量%の炭素を含有させて溶融・凝固させる方法が挙げられる(特許文献2参照)。さらに、高密度エネルギー源を用いた局所溶融合金化処理により、共析型β安定化元素を3.5重量%以上かつ40重量%以下含有する硬さの高いβ相を出現させる方法も提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、従来の技術においては、いずれも表面にチタン成分が存在しているため、チタンの特性である焼き付き性の悪さや耐摩耗性の低さを飛躍的に改善させることは困難であると考えられる。特許文献2には、W2C粉末やCr3C2粉末とチタン粉末からなる混合粉末をチタン合金表面に肉盛りすることにより、特定の摺動試験条件においてステライトNo.6と同等の結果を得た例が示されている。そこで、発明者らは、Cr3C2粉末とチタン合金粉末との混合粉末を肉盛りしたプレートを用意し、ロッカーアームの相手材を模擬した鉄鋼材との往復摺動試験を行った。その結果、混合粉末を肉盛りしたピンの焼き付き限界面圧は0.84GPa未満と低いことがわかった。
エンジンに用いられるロッカーアームには、1.6GPa程度の高面圧下で使用しても、摺動特性が良好であることが求められる場合がある。そして、1.6GPa程度の高面圧下において、豊富な耐久実績のあるのがステライトである。しかしながら、一般的に、母材であるチタン合金にステライトを直接肉盛りすることは困難であり、その接合強度は低い。このため、チタン合金製ロッカーアームの実用化には、ロッカーアームの摺動部にステライトを肉盛りできる技術が強く望まれていた。
したがって、本発明は、高面圧で使用されるチタン合金製構造部材の摺動部にステライトを肉盛りする技術を提供することにより、チタン合金製構造部材の高面圧下での耐摩耗性を飛躍的に改善することを目的とする。
本発明は、摺動部を有するチタン合金製構造部材であって、摺動部は、炭素を含む鉄系合金層がチタン合金母材に形成され、その上にステライト層が形成されたものであることを特徴とする。本発明のチタン合金製構造部材では、鉄系合金層上に鉄との接合性に優れたステライト層が形成されているため、摺動部にステライトが強固に接合されている。このため、チタン合金製構造部材の高面圧下での耐摩耗性を飛躍的に改善できる。なお、本発明のチタン合金製構造部材では、チタン合金母材と鉄系合金層との界面が曲面または球面であることが好ましい。チタン合金母材と鉄系合金層との界面が曲面または球面であると、接合面積が大きくなるため、接合強度をより向上させることができる。
また、本発明は、上記チタン合金製構造部材の製造方法であって、摩擦圧接によって炭素を含む鉄系合金層をチタン合金母材に形成し、肉盛り溶接によって鉄系合金層にステライト層を形成することを特徴とする。本発明の製造方法によれば、摩擦圧接によって鉄系合金層とチタン合金母材とが強固に接合され、肉盛り溶接によって鉄系合金層とステライト層とが強固に接合されるから、チタン−鉄系合金−ステライトが強固に接合した3層構造を持つ高面圧摺動に強いチタン合金製構造部材が得られる。
加えて、摩擦圧接は、チタン合金母材と鉄系合金層との界面を曲面または球面とすることができる。また、チタン合金母材と鉄系合金層との界面を加熱してTiCを生成させると、接合強度がさらに向上する。本発明のチタン合金製構造部材をロッカーアームに適用する場合、ロッカーアームの動作時にはロッカーシャフト側の界面により多くの引張り応力がはたらくため、さらに好ましくは、ロッカーシャフト側の鉄系合金層を焼き入れ強化するとよい。すなわち、上記加熱を高周波加熱コイルを用いて行い、高周波加熱コイルを、チタン合金母材と鉄系合金層との界面のうちのロッカーシャフト側に配置することが好ましい。これにより、摺動部のみを加熱することができ、鉄系合金層を焼き入れ強化することができる。さらに、チタン合金製構造部材の表面にあるチタン合金母材と鉄系合金層との界面、および/または鉄系合金層とステライト層との界面に対し、ショットピーニング処理を行うことが好ましい。ショットピーニング処理を行うと、圧縮残留応力が界面に付与されるため、チタン合金製構造部材の疲労強度を改善することができる。
本発明によると、チタン合金製構造部材の摺動部に強固にステライト層を接合できる。これにより、チタン合金製構造部材の高面圧下での耐摩耗性を飛躍的に改善できる。
本発明のチタン合金製構造部材の製造方法の一例を以下に説明する。図1に、本発明のチタン合金製構造部材の製造工程の概略を示す。まず、Ti合金からなる母材の高面圧側摺動部に対し、炭素を含む鉄系合金を摩擦圧接により接合を行う。焼鈍後、摺動面の機械加工を行う。次に、摺動面に接合した鉄系合金層上にステライトをTIG(Tungsten Inert Gas Welding)溶接により肉盛りし、ステライトの加工を行うとともに製品形状に成形する。そして、摺動部全体に高周波焼入れを行った後、焼戻しを行い、最終的な仕上げ加工を行う。さらに、摺動面上のチタン合金と鉄系合金層との接合界面およびその周辺に対してショットピーニングを行い、仕上げる。
(摩擦圧接工程)
摩擦圧接工程では、鉄系合金のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金のブランク材を押し付けて摩擦熱を発生させ、所望のタイミングで回転を停止し、高面圧で押し付けることにより拡散接合を行う。摩擦圧接後、材料の熱膨張係数差やマルテンサイト変態に伴う体積膨張に起因する接合界面での剥離を防ぐため、炉を用いて徐冷を行う(焼鈍)。
摩擦圧接工程では、鉄系合金のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金のブランク材を押し付けて摩擦熱を発生させ、所望のタイミングで回転を停止し、高面圧で押し付けることにより拡散接合を行う。摩擦圧接後、材料の熱膨張係数差やマルテンサイト変態に伴う体積膨張に起因する接合界面での剥離を防ぐため、炉を用いて徐冷を行う(焼鈍)。
(ステライト肉盛り工程)
ステライト肉盛り工程の概略を図2(a)〜(c)に示す。摩擦圧接工程後、ワークである鉄系合金部分を切断し(図2(a))、表面を平滑にするために機械加工を行う(図2(b))。次に、TIG溶接により、鉄系合金層表面に対してステライトの肉盛溶接を行う(図2(c))。ステライトの融点は1235〜1320℃であるが、チタン合金のβ変態点は約800℃であるため、軟質なβ−Ti相の生成を避ける場合は、チタン合金部分が800℃を超えないように入熱時間を設定するとよい。なお、ステライトの肉盛溶接は数回に分けて行ってもよく、例えば、溶接位置をずらして3回連続で行ってもよい。なお、肉盛溶接後、所望の形状にステライトを加工するとともに、ロッカーアーム等の製品形状に成形する。
ステライト肉盛り工程の概略を図2(a)〜(c)に示す。摩擦圧接工程後、ワークである鉄系合金部分を切断し(図2(a))、表面を平滑にするために機械加工を行う(図2(b))。次に、TIG溶接により、鉄系合金層表面に対してステライトの肉盛溶接を行う(図2(c))。ステライトの融点は1235〜1320℃であるが、チタン合金のβ変態点は約800℃であるため、軟質なβ−Ti相の生成を避ける場合は、チタン合金部分が800℃を超えないように入熱時間を設定するとよい。なお、ステライトの肉盛溶接は数回に分けて行ってもよく、例えば、溶接位置をずらして3回連続で行ってもよい。なお、肉盛溶接後、所望の形状にステライトを加工するとともに、ロッカーアーム等の製品形状に成形する。
(高周波焼入工程)
次に、高周波焼入工程について述べる。高周波焼入工程では、高周波加熱コイルをチタン合金製構造部材の鉄系合金層側に配置して高周波焼入れを行い、焼戻しを行う。高周波焼入れは、チタン合金と鉄系合金層との界面にTiCが十分に生成する条件で行えばよい。高周波焼入れを行うことにより、チタン合金と鉄系合金層との界面にTiCが生成するため、界面の接合強度を向上できる。なお、本発明のチタン合金製構造部材をロッカーアームに適用する場合、図3に示すように、高周波加熱コイルをチタン合金母材と鉄系合金層との界面のうちのロッカーシャフト側に配置して高周波焼入れを行い、焼戻しを行う。さらに、高周波焼入工程により、鉄系合金層の焼入れ強化が行われる。チタン合金製構造部材を室温まで冷却した後、最終的な仕上げ加工を行う。
次に、高周波焼入工程について述べる。高周波焼入工程では、高周波加熱コイルをチタン合金製構造部材の鉄系合金層側に配置して高周波焼入れを行い、焼戻しを行う。高周波焼入れは、チタン合金と鉄系合金層との界面にTiCが十分に生成する条件で行えばよい。高周波焼入れを行うことにより、チタン合金と鉄系合金層との界面にTiCが生成するため、界面の接合強度を向上できる。なお、本発明のチタン合金製構造部材をロッカーアームに適用する場合、図3に示すように、高周波加熱コイルをチタン合金母材と鉄系合金層との界面のうちのロッカーシャフト側に配置して高周波焼入れを行い、焼戻しを行う。さらに、高周波焼入工程により、鉄系合金層の焼入れ強化が行われる。チタン合金製構造部材を室温まで冷却した後、最終的な仕上げ加工を行う。
(ショットピーニング工程)
本発明のチタン合金製構造部材からなるロッカーアームをエンジンに用いた場合、チタン合金と鉄系合金層との接合界面付近には引張応力がかかる。そこで、ロッカーアームの疲労強度を向上させるため、ショットピーニングによりチタン合金と鉄系合金層との接合界面およびその周辺に圧縮応力を付与するとよい。
本発明のチタン合金製構造部材からなるロッカーアームをエンジンに用いた場合、チタン合金と鉄系合金層との接合界面付近には引張応力がかかる。そこで、ロッカーアームの疲労強度を向上させるため、ショットピーニングによりチタン合金と鉄系合金層との接合界面およびその周辺に圧縮応力を付与するとよい。
1)摩擦圧接条件の設定
本実施例では、鉄系合金(SCM440)のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金(SP700)のブランク材を押し付けて摩擦圧接を行った。なお、本実施例では鉄系合金としてSCM440を用いたが、炭素を含んでいる他の鉄系合金を用いてもよい。また、チタン合金として、SP700以外のチタン合金を用いてもよい。図4に摩擦圧接の流れの一例を示す。図4に示すように、摩擦圧接では、予熱圧力P0、摩擦圧力P1、アプセット(押し付け)圧力P2、摩擦寄り代U1、予熱時間t0、アプセット(押し付け)時間t2、主軸回転数Nを設定した。ここで、特にパラメータP1、P2、U1は接合強度への影響が大きい。このため、P1、P2、U1を変化させて作製した試験片を用意し、各試験片の接合強度試験を行い、P1、P2、U1の最適値の検討を行った。なお、他のパラメータについては、それぞれ、P0=350MPa、t0=0sec、t2=2sec、N=2400rpmと一定にした。接合強度試験は、図5に示すように鉄系合金に荷重をかけて行い、接合部に剥離が生じたときの荷重を接合強度とした。図6に摩擦圧接条件と接合強度との関係を示す。図6からわかるように、P1=350MPa、P2=700MPa、U1=2mmにおいて最も高い接合強度が得られ、接合不良発生率が少ないことがわかった。このため、本実施例においては、摩擦圧接条件としてこれらの値を採用した。なお、上記パラメータは、P0=200〜400MPa、P1=250〜500MPa、P2=500〜800MPaの範囲で設定可能であり、所望の接合強度に応じて他のパラメータを変化させてもよい。
本実施例では、鉄系合金(SCM440)のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金(SP700)のブランク材を押し付けて摩擦圧接を行った。なお、本実施例では鉄系合金としてSCM440を用いたが、炭素を含んでいる他の鉄系合金を用いてもよい。また、チタン合金として、SP700以外のチタン合金を用いてもよい。図4に摩擦圧接の流れの一例を示す。図4に示すように、摩擦圧接では、予熱圧力P0、摩擦圧力P1、アプセット(押し付け)圧力P2、摩擦寄り代U1、予熱時間t0、アプセット(押し付け)時間t2、主軸回転数Nを設定した。ここで、特にパラメータP1、P2、U1は接合強度への影響が大きい。このため、P1、P2、U1を変化させて作製した試験片を用意し、各試験片の接合強度試験を行い、P1、P2、U1の最適値の検討を行った。なお、他のパラメータについては、それぞれ、P0=350MPa、t0=0sec、t2=2sec、N=2400rpmと一定にした。接合強度試験は、図5に示すように鉄系合金に荷重をかけて行い、接合部に剥離が生じたときの荷重を接合強度とした。図6に摩擦圧接条件と接合強度との関係を示す。図6からわかるように、P1=350MPa、P2=700MPa、U1=2mmにおいて最も高い接合強度が得られ、接合不良発生率が少ないことがわかった。このため、本実施例においては、摩擦圧接条件としてこれらの値を採用した。なお、上記パラメータは、P0=200〜400MPa、P1=250〜500MPa、P2=500〜800MPaの範囲で設定可能であり、所望の接合強度に応じて他のパラメータを変化させてもよい。
2)ロッカーアームの評価
以下、本発明のチタン合金製構造部材の例としてロッカーアームを作製した場合を説明する。まず、鉄系合金(SCM440)のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金(SP700)のブランク材を押し付けて摩擦圧接を行い、200℃の炉を用いて徐冷を行った。摩擦圧接条件は上記の通りである。摩擦圧接後、ワークである鉄系合金部分を切断し、表面を平滑にするために機械加工を行った。次に、TIG溶接により鉄系合金層表面にステライトの肉盛溶接を行い、肉盛りしたステライトを加工するとともに、ロッカーアーム形状に成形を行った。そして、図3に示すように、コイルをロッカーアームの鉄系合金層に対向配置し、摺動部の高周波焼入れを行った。本実施例では、出力を9kVに設定し、6.7秒間加熱を行い、220℃において2時間焼戻しを行った後、油中で室温まで冷却した。ロッカーアームを室温まで冷却した後、チタン合金と鉄系合金層との接合界面付近にショットピーニングを施した。ショットピーニング条件は、ショット粒:高速度鋼(粒径約80μm)、投射時間:10sec、投射圧:0.5MPaとした。以上の方法により、本発明例であるロッカーアーム(試験片No.1)を作製した。また、比較例として、チタン合金にステライトを直接接合した試験片No.2〜4を作製した。試験片No.2は肉盛り溶接、試験片No.3はTiろうによるろう付け、試験片No.4はHIP(Hot Isostatic Pressing)処理による拡散接合により、チタン合金にステライトを直接接合した。これらの試験片に対して、チタン合金と接合材との接合強度試験を行った。この結果を表1に示す。なお、接合強度試験は、ステライト部分に対しせん断荷重を与え、破断時の荷重と接合面積から各々の接合強度を求めた。
以下、本発明のチタン合金製構造部材の例としてロッカーアームを作製した場合を説明する。まず、鉄系合金(SCM440)のピンを回転させた状態で、鉄系合金にチタン合金(SP700)のブランク材を押し付けて摩擦圧接を行い、200℃の炉を用いて徐冷を行った。摩擦圧接条件は上記の通りである。摩擦圧接後、ワークである鉄系合金部分を切断し、表面を平滑にするために機械加工を行った。次に、TIG溶接により鉄系合金層表面にステライトの肉盛溶接を行い、肉盛りしたステライトを加工するとともに、ロッカーアーム形状に成形を行った。そして、図3に示すように、コイルをロッカーアームの鉄系合金層に対向配置し、摺動部の高周波焼入れを行った。本実施例では、出力を9kVに設定し、6.7秒間加熱を行い、220℃において2時間焼戻しを行った後、油中で室温まで冷却した。ロッカーアームを室温まで冷却した後、チタン合金と鉄系合金層との接合界面付近にショットピーニングを施した。ショットピーニング条件は、ショット粒:高速度鋼(粒径約80μm)、投射時間:10sec、投射圧:0.5MPaとした。以上の方法により、本発明例であるロッカーアーム(試験片No.1)を作製した。また、比較例として、チタン合金にステライトを直接接合した試験片No.2〜4を作製した。試験片No.2は肉盛り溶接、試験片No.3はTiろうによるろう付け、試験片No.4はHIP(Hot Isostatic Pressing)処理による拡散接合により、チタン合金にステライトを直接接合した。これらの試験片に対して、チタン合金と接合材との接合強度試験を行った。この結果を表1に示す。なお、接合強度試験は、ステライト部分に対しせん断荷重を与え、破断時の荷重と接合面積から各々の接合強度を求めた。
接合強度試験において、試験片No.1ではチタン合金と鉄系合金層との接合界面が剥離し、試験片No.2〜4では、いずれもチタン合金とステライト層との接合界面が剥離した。チタン合金にステライトを直接接合した試験片No.2〜4(比較例)においては、いずれも接合強度の下限値が50MPaと低い値を示し、ロッカーアームとして必要な接合強度には不十分であった。一方、試験片No.1(本発明例)では、チタン合金と鉄系合金層との接合強度の下限値は300MPaと高い値を示した。通常、鉄系合金とステライトとの接合強度も約300MPa以上の値を示す。したがって、本発明のチタン合金製構造部材をロッカーアームとして使用した場合、その接合強度に問題がないことが確認できた。
次に、ロッカーアームとしての耐久性を検証するため、上記と同様な方法でロッカーアーム(試験片No.5)を作製し、疲労試験を行った。また、接合部に対する高周波焼入れの効果、接合界面およびその周辺へのショットピーニングの効果を確認するため、比較として、高周波焼入れおよびショットピーニングを施していないロッカーアーム(試験片No.6)、高周波焼入れを行い、ショットピーニングを行っていないロッカーアーム(試験片No.7)も用意した。図7に疲労試験の概要を示す。ロッカーアームの相手材を模擬した鉄鋼材を用い、鉄鋼材にロッカーアームの摺動面を載置した。試験条件は、応力比:0.1、周波数:10Hz、室温に設定した。カムによるリフト荷重を想定し、摺動面とは反対側から繰返し圧縮荷重をかけ、ロッカーアームの最弱部であるチタン合金と鉄系合金層との接合界面の疲労強度について測定を行った。その結果、高周波焼入れおよびショットピーニングを施していない試験片No.6では、その疲労強度は約770MPaであった。これに対し、高周波焼入れを行うことにより接合界面での元素の拡散を促進させた試験片No.7では、約20%疲労強度が向上し、約900MPaであった。さらに、高周波焼入れを行い、ショットピーニングにより圧縮残留応力を付与した試験片No.5では、試験片No.6と比べ、その疲労強度は約45%向上し、1100MPaであった。これらより、高周波焼入れによりロッカーアームの疲労強度が向上することがわかり、さらにショットピーニングを施すことにより、ロッカーアームの疲労強度をより向上できるとわかった。
以上より、本発明のチタン合金製構造部材の製造方法によると、チタン−鉄系合金−ステライトの3層構造を持ち、接合強度の良好なチタン合金製構造部材が得られることがわかった。また、本発明によると、摺動特性が良好なステライトを表面に用いているため、チタン合金製構造部材の高面圧下での耐摩耗性を飛躍的に改善できる。
Claims (7)
- 摺動部を有するチタン合金製構造部材であって、
前記摺動部は、炭素を含む鉄系合金層がチタン合金母材に形成され、その上にステライト層が形成されたものであることを特徴とするチタン合金製構造部材。 - 前記チタン合金母材と前記鉄系合金層との界面が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のチタン合金製構造部材。
- 前記チタン合金母材と前記鉄系合金層との界面が球面であることを特徴とする請求項1に記載のチタン合金製構造部材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のチタン合金製構造部材の製造方法であって、
摩擦圧接によって炭素を含む鉄系合金層をチタン合金母材に形成し、
肉盛り溶接によって前記鉄系合金層にステライト層を形成することを特徴とするチタン合金製構造部材の製造方法。 - 前記チタン合金母材と前記鉄系合金層との界面を加熱しTiCを生成させることを特徴とする請求項4に記載のチタン合金製構造部材の製造方法。
- 前記チタン合金製構造部材はロッカーアームであり、
前記加熱を高周波加熱コイルを用いて行い、
前記高周波加熱コイルを、前記チタン合金母材と前記鉄系合金層との界面のうちのロッカーシャフト側に配置することを特徴とする請求項5に記載のチタン合金製構造部材の製造方法。 - 前記チタン合金製構造部材の表面にある前記チタン合金母材と前記鉄系合金層との界面、および/または前記鉄系合金層と前記ステライト層との界面に対し、ショットピーニング処理を行うことを特徴とする請求項4に記載のチタン合金製構造部材の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2009120899A JP2010270608A (ja) | 2009-05-19 | 2009-05-19 | チタン合金製構造部材およびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110847996A (zh) * | 2019-10-14 | 2020-02-28 | 中国北方发动机研究所(天津) | 一种发动机用轻质钛合金复合材料摇臂 |
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2009
- 2009-05-19 JP JP2009120899A patent/JP2010270608A/ja active Pending
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