JP2010270351A - 陽極酸化皮膜の着色方法及び着色部材 - Google Patents

陽極酸化皮膜の着色方法及び着色部材 Download PDF

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Abstract

【課題】所望の着色濃度の変化を有するグラデーション着色部を容易に、しかも確実に形成可能な陽極酸化皮膜の着色方法と着色部材を提供することを課題とする。
【解決手段】基材13の表面に、少なくとも表面に多数の微細な孔33を有する陽極酸化皮膜32を形成する陽極酸化工程と、染料34を含有する染色液に陽極酸化皮膜32を接触させることで陽極酸化皮膜32を染色する染色工程と、染色工程後に多数の微細な孔を封じる封孔工程とを有する陽極酸化皮膜の着色方法であり、陽極酸化工程で、陽極酸化皮膜32の厚みを陽極酸化皮膜32の位置に応じて変化させて形成する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、陽極酸化皮膜を着色する方法と、基材表面の陽極酸化皮膜が着色されている着色部材とに関するものである。
従来、アルミニウムなどの金属表面に二色以上の色や模様を表現し、その境界をぼかす加飾方法が多数存在する。
例えば、ベース色上にスプレー塗装あるいは印刷で色を重ねてぼかし(グラデーション)を表現する加飾方法が知られている。アルミニウムなどにスプレー塗装をすることにより色の度合いを連続階調に表現する手法では、細部にわたるインキ拡散が可能な専用のスプレー塗装具を用いるものがある。また、印刷によってぼかしを表現するため、印刷原版を介して印刷するものもある。スプレー塗装或いは印刷による加飾方法では、ベース色上にインキを重ねて硬化させるため、塗装面に凸凹を生じる。そのためぼかし部分で表面が荒れ、光沢が不均一になっていた。
また、インクジェット印刷によるグラデーション着色の方法として、下記特許文献1では、未封孔のアルマイト皮膜を有する筒状のワークを回転させ、ワーク内面に温風ノズル、電気ヒーター等の加熱部を挿入して均一に加熱し、ワーク表面に染色インクの液滴を吐着して染色していた。ワークを複数回回転させて染料インクの液滴を複数回に分けて吐着して染色することで、濃淡模様、グラデーション模様等の継ぎ目の無い連続模様あるいは多色模様等を表現していた。
しかし、特許文献1では、インクジェット印刷によりグラデーション状に印刷するため、塗装面に凸凹を生じて表面が荒れ、光沢が不均一となっていた。更に、印刷または塗装によるグラデーション状に着色することで、ワークの金属調をなくしてしまっていた。従って、インクジェット印刷によりグラデーション状に着色する方法は、金属調を好む外装には不向きな方法であった。
また、電解着色によりアルマイト皮膜をグラデーション状に着色する方法として、下記特許文献2が知られている。アルマイト皮膜の多数の微細な孔を改質して孔中に金属塩を析出させる着色方法であり、第1操作でアルマイト皮膜を形成し、第2操作でアルマイト皮膜の微細な孔を改質し、第3操作で電解着色によりアルマイト皮膜の微細な孔に金属塩を析出させて着色していた。
ここでは、第2操作において、処理液とアルミニウム系部材との接触時間を位置に応じて変化させることで、アルマイト皮膜の微細な孔の改質度を位置に応じて異ならせ、これにより金属塩を析出させる位置を変化させて連続的に色調を変化させていた。
特許文献2では、第2操作でワークを引き上げることでアルマイト皮膜の微細な孔を改質して、第3操作でグラデーション状に着色することを可能にしており、金属調は失われない。しかし、電解着色は、電解によりアルマイト皮膜の微細な孔に金属を析出するものであり、色調がブロンズ、ブラウン、ブラック、グレー、ブルーのような金属色に限られていた。有機染料、顔料等の着色剤のようにカラーバリエーションに富んだ着色はできなかった。
下記特許文献3では、アルマイト皮膜を形成し、染色工程でアルマイト皮膜の微細な多数の孔に染料を収容して染色し、脱色工程でアルマイト皮膜の一部を脱色剤溶液に浸漬したり、脱色剤溶液を付着させることで脱色していた。脱色工程で脱色剤溶液に浸漬する場合は、脱色剤溶液とワークとを相対的に上下動させたり、脱色剤溶液の液面を波立たせることで脱色程度を調整していた。脱色工程で脱色剤溶液を付着させる場合は、脱色剤溶液を吹付けて脱色程度を調整していた。そして、脱色程度を調整することで、染色度合いを連続階調にしたグラデーション部を形成していた。
即ち、特許文献3では、アルマイ卜皮膜を一旦染色した後、脱色剤で色を落としていくことでグラデーション状に着色していた。この方法は、特許文献1、2とは違い、金属調を失うことなく、且つ、カラーバリエーションに富んだ着色が可能な方法であった。
しかしながら、脱色工程では、ワークの脱色部を脱色液に浸漬して引き上げる上下動作を繰り返すことで脱色を行うため、上下動した際に液面を揺らさないことが要求されることが記載されているが(段落番号0032等)、上下動を繰り返しながらも液面を揺らさないようにする手段の記載はない。また、波面が揺れても安定して上下する波であれば安定したぼかしを生成できることが記載されているが(段落番号0037等)、安定した波面が得られる条件の記載はない。
さらに、増粘剤、ゲル化剤を添加することによって、ワークぼかし部に増粘剤を付着させて脱色剤を付着させることで脱色を安定させることが記載されているが(段落番号0039等)、逆に脱色ムラを生じ易いという問題があった。
なぜならば、増粘剤の付着程度が位置により変わることが明らかであり、それにより、脱色割合が位置により変わるからである。また、増粘剤により脱色剤の飛散を防止できるとされているが、完全には防止できないため、脱色したくない位置でも多少の脱色が生じてしまう。しかも、増粘剤をワーク表面に付着することにより、脱着した染料が脱色槽に拡散することなく、増粘剤による膜に滞留し易い。そのため、脱着した染料がワーク表面に再付着する割合が高くなり、位置による色むらを生じることになる。
一般的に脱色剤により脱色された染料は、再度、表面に吸着されるため、脱色と染着とは同時に起きている。そのため、脱色槽が染料で汚れてくると、脱色割合が落ちる。安定した脱色割合を保つためには、常に脱色槽を新鮮にしておく必要がある。また、後工程で増粘剤の膜を取り除く工程も必要となる。
特開2007−276853号公報 特開2003−277990号公報 特開2007‐39757号公報
この発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、所望の着色濃度の変化を有するグラデーション着色部を容易に、しかも確実に形成可能な陽極酸化皮膜の着色方法を提供することを課題とし、また、そのようなグラデーション着色部を備えた着色部材を提供することを他の課題とする。
上記課題を解決するこの発明の陽極酸化皮膜の着色方法は、基材の表面に、少なくとも表面に多数の微細な孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化工程と、染料を含有する染色液に前記陽極酸化皮膜を接触させることで該陽極酸化皮膜を染色する染色工程と、該染色工程後に前記多数の微細な孔を封じる封孔工程とを有する陽極酸化皮膜の着色方法において、前記陽極酸化工程で、前記陽極酸化皮膜の厚みを該陽極酸化皮膜の位置に応じて変化させて形成することを特徴とする。
また、上記他の課題を解決するこの発明の着色部材は、基材と、該基材の表面に形成されて、少なくとも表面に多数の微細な孔を有する陽極酸化皮膜とを備え、前記多数の微細な孔に染料が入り込んた状態で封じらることで着色された着色部材において、前記陽極酸化皮膜の厚みが該陽極酸化皮膜の位置に応じて徐々に変化し、前記多数の微細な孔に前記陽極酸化皮膜の厚みに応じて前記染料が入り込むことで、前記陽極酸化皮膜に着色濃度の変化を有するグラデーション着色部が形成されていることを特徴とする。
この発明の陽極酸化皮膜の着色方法によれば、陽極酸化皮膜の位置に応じて陽極酸化皮膜の厚みを変化させて形成し、この陽極酸化皮膜を染色するので、陽極酸化皮膜の厚みに応じて着色濃度を変化させることができる。ここでは、例えば、陽極酸化皮膜の多数の微細な孔の長さや密度が陽極酸化皮膜の厚みに応じて変化することで、染色により多数の微細な孔に入り込む染料の量が陽極酸化皮膜の厚みに応じて変化することなどにより、着色濃度が変化する。その結果、陽極酸化皮膜の位置に応じた着色濃度に染色することができ、陽極酸化皮膜の厚みを種々調整することで、種々の着色模様を容易且つ確実に形成することが可能である。
また、この発明の着色部材によれば、陽極酸化皮膜の厚みが位置に応じて徐々に変化し、多数の微細な孔に陽極酸化皮膜の厚みに応じて染料が入り込むことで着色されているので、陽極酸化皮膜の厚みに応じて着色濃度を徐々に変化させることができる。そのため、陽極酸化皮膜の厚みを調整することで、種々の着色濃度の変化を有するグラデーション着色部を実現できる。
この発明の実施の形態1の着色部材の作製工程を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1の電解装置を示す概略断面図である。 この発明の実施の形態1において得られた陽極酸化皮膜の位置に対する厚みの変化を示すグラフである。 この発明の実施の形態1の陽極酸化皮膜の着色方法の概略を示す図であり、(a)は陽極酸化皮膜の染色処理前を示し、(b)は染色処理後を示し、(c)は封孔処理後を示す。 この発明の実施の形態1において得られる陽極酸化皮膜の膜厚と着色濃度との関係を示すグラフである。 この発明の実施の形態2の着色部材の作製工程を示すフローチャートである。
以下、この発明の実施の形態について具体例と共に説明する。
(発明の実施の形態1)
実施の形態1に係る陽極酸化皮膜の着色方法では、カメラ、パソコン、携帯電話のような携帯機器の外装部材等、各種の部材の表面に、ぼかしのような模様、即ち、着色濃度が表面の位置に応じて徐々に変化するグラデーション着色部を形成し、着色部材を作製する。
ここでは、図1に示すように、素材を準備し(S11)、素材に機械的前処理を施し(S12)、化学的前処理を施す(S13)ことで、着色対象となる基材を準備する準備工程を行う。その後、基材の少なくとも表面に、多数の微細な孔を有する構造を備えた陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程を行い(S14)、次いで、陽極酸化皮膜を染色する染色処理工程を行い(S15)、次いで、陽極酸化皮膜の多数の微細な孔を封じる封孔処理工程を行う(S16)ことで、基材を着色する。
まず、ステップS11で準備する素材は、表面に陽極酸化皮膜を形成可能な金属材料、例えば、陽極酸化することでアルマイトからなる陽極酸化皮膜を形成可能なアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、所望の着色部材としての形状に形成されているものである。
アルミニウム又はアルミニウム合金の種類は、板・形材・箔・管・棒・線,鍛造品などの展伸材と、鋳物・ダイカストなどの鋳物材の2種類に分類できる。−般的に純度の高い合金ほど緻密で透明な陽極酸化皮膜が得られ、耐食性、光輝性、装飾性を良好にでき、また、染色への適応性も良い。
この実施の形態では、プレス成型品の装飾に好適な展伸材の中でも耐食性、成形性、陽極処理性、光輝性、染色性が良い純アルミ系A1050を使用し、所定形状にプレス成形し、アルカリ電解水洗浄装置ファインマシーン(カタオカ株式会社製)で、pH9−9.5のアルカリ水中で12分間洗浄して用いた。
ステップS12では、得られた素材に機械的前処理を施す。素材には、プレス、切断等の加工時の加工歪や製造、運搬時の傷、或いは圧延、押出し、鋳造時に生じる表面層の金属学的組織変質等が存在する。これらを着色により完全に隠蔽することは難しいため、機械的前処理を行う。
機械的前処理の方法としては、鏡面仕上げを行うバフ研磨、切削加工、バレル研磨などが挙げられる。目的の着色部材に筋模様を付す場合には、グラインダーバフ研磨、ベルトサンダー、スチールウール研磨などが挙げられる。表面を粗化する場合には、サンドプラスト、液体ホーニングなどが挙げられる。
この実施の形態では、液体ホーニングにより表面の粗化を行った。使用した装置はプラスチシグマシーンLV−1200(株式会社サンポー社製)で、使用したガラスビーズはガラスビーズJ−100(ポツターズ・バロティーニ社製)であった。
ステップS13では、機械的前処理後の素材に化学的前処理を施す。化学的前処理としては、脱脂処理、光沢化処理が挙げられる。
素材の表面は、プレス、圧延などの加工時に付着した油脂類や汚れや雛型剤残りによる酸化皮膜などで覆われている。これらを取り除くために脱脂処理を行う。脱脂処理としては、硫酸、硝酸、有機酸による酸性法、弱アルカリ、強アルカリによるアルカリ法、電解法、有機溶剤法などが挙げられる。この実施の形態では、アルカリ法を使用した。使用した薬品は、ケイクリン6(日本表面化学株式会社製)で、濃度を50g/Lとし、温度50℃で浸漬時間5分として行った。
光沢化処理としては、電気化学的に溶解と酸化とを行うことで光揮面を得る電解研磨、化学的な溶解を促進及び抑制することにより平滑面を得る化学研磨などが挙げられる。本実施の形態では、化学研磨を行った。使用した薬品は、アルグロスSR(奥野製薬工業株式会社製)で、原液を使用し、浴温100℃、処理時間40秒とした。
陽極酸化処理工程S14では、ステップS11乃至ステップS13で準備した着色対象の基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する。陽極酸化皮膜の形成は、電解質溶液の浴中に基材を浸漬し、基材を陽極として負極との間に通電し、陽極酸化により基材表面に皮膜を形成することで行う。
電解質溶液としては、硫酸、シュウ酸、、クロム酸、ホウ酸、有機酸等の水溶液などを使用する。アルミニウムの場合、染色に適した陽極酸化皮膜を得るためには硫酸水溶液を用いて硫酸アルマイトを形成するのが好適である。この実施の形態では、硫酸アルマイトからなる陽極酸化皮膜を形成した。
陽極酸化皮膜の形成は、例えば図2に示すような電解装置10を用いて行うことができる。この電解装置10は、間接温度調節槽16により温度調整される電解槽14と、基材13を電解槽14に浸漬可能に支持する支持装置11と、電解槽14に浸漬されたカーボン電極15と、基材13を陽極とすると共にカーボン電極15を陰極として直流電圧を印加する整流器12とを備える。ここでは、電解槽14には硫酸水溶液からなる電解質溶液が収容されており、硫酸溶液中で基材13のアルミニウムを陽極にして水の電気分解を行い、基材13で発生した酸素がアルミニウムと反応して酸化アルミニウムを生成させることで、陽極酸化皮膜を形成するようになっている。
支持装置11には、サーボモータ、ステッピングモータ、DCモータ等の駆動機構が内蔵されており、駆動機構により上下動される軸11aの先端の支持具11bに基材13が支持され、染色槽14に対して所望の速度で引き上げ及び引き下げ可能となっている。この支持装置11では、プログラムにより基材13の位置と上下動速度とを設定可能に構成されている。シーケンスプログラムの内容は、予め設定されたグラデーション着色部の着色濃度の勾配、即ち位置と染色濃度の関係に合致するようにすればよい。
この実施形態において、電解装置10を用いて基材13の表面に硫酸アルマイトからなる陽極酸化皮膜を形成するには、電解槽14の硫酸濃度を180g/L、浴温度20℃とし、始めに基材13の着色すべき領域全体を電解槽14に浸漬して、基材13を陽極として電流密度2A/dmで通電を開始し、通電開始10分後から、支持装置11により3mm/分の−定速度で引き上げることで行った。
この引き上げ速度は、特に限定されるものではなく、基材13を電解槽14から徐々に引き上げる速度を変化させれば、得られる陽極酸化皮膜の厚みの変化を種々に調整することが可能である。基材13の引き上げ速度は、例えば0.1mm/分以上10mm/分以下の範囲で設定することが可能であり、引き上げ速度を変化させる場合にも、このような範囲で変化させれば、適度な厚みの陽極酸化皮膜を形成することができる。
この電解により陽極酸化皮膜が15〜25nmに成長すると、表面に開口した無数の微細な孔が発生し、10nm程度の孔径の微細な孔が無数に点在する陽極酸化皮膜が形成される。そして、基材13とカーボン電極15とに所定の電圧を印加しつつ基材13を電解槽14中から徐々に引き上げることで、位置に応じて厚みが変化すると共に表面に多数の微細な孔が開口した陽極酸化皮膜が形成される。
このようにして形成する陽極酸化皮膜は、例えば厚さを0.1μm以上50μm以下の範囲内で変化させるのが好適である。過剰に薄い場合、微細な孔が十分に形成されず、後述する染色時に十分な染色を行い難く、一方、過剰に厚いと、陽極酸化皮膜の形成に手間を要すると共に染色しても厚みに応じた着色濃度の変化を形成し難いからである。
この実施形態の条件で一定速度で引き上げた場合、例えば図3に示すような膜厚分布を有する陽極酸化皮膜が得られる。この図から明らかなように、陽極酸化皮膜の形成時に引き上げ速度を一定とすることで、略一定勾配の膜厚分布が得られる。
図4(a)に、陽極酸化処理工程S14で得られた陽極酸化皮膜を模式的に示す。図中では、理解容易の目的で、陽極酸化皮膜32と基材22の他の部位との間を直線で示しているが、明確な直線的な界面が存在しなくてもよい。ここでは、基材13の表面に形成された陽極酸化皮膜32の厚みが略一定勾配で変化していると共に、陽極酸化皮膜32に多数の微細な孔33が形成されている。
次に、染色処理工程S15では、基材13表面の陽極酸化皮膜32の染色処理を行う。この染色処理では、陽極酸化皮膜31の位置によって染色液に浸漬している時間に実質的に違いがないように、陽極酸化皮膜31の着色すべき領域全体を染色槽の染色液に浸漬することで染色を行う。染色液としては、酸性、金属錯塩型酸性、酸性媒染などの染料を用いる。
この実施の形態では、酸性染料を使用し、陽極酸化皮膜32の多数の微細な孔33内に染料が十分に入り込むように、基材13の陽極酸化皮膜32の着色すべき領域を染色液に浸漬させることで行った。具体的には、TACピンクZK−8001(奥野製薬工業株式会社製)からなる染料を、濃度1g/Lの水溶液とし、温度調整浴により50℃の温度に保ちつつ、10分間浸漬することで行った。
染色時に陽極酸化皮膜32の着色すべき領域を染色液に浸漬させた場合の膜厚と染色濃度の関係を図5に示す。図5から明らかなように、陽極酸化皮膜32の膜厚と染色濃度とは略直線的な関係が得られる。図中、Y値が大きい程、着色濃度が薄いことを示している。そのため、上述のように陽極酸化皮膜32の厚みが、陽極酸化皮膜32の位置に応じて変化していることで、陽極酸化皮膜32の位置に応じて着色濃度が変化するように染色することが可能である。
この実施の形態では、図4(a)に示すように陽極酸化皮膜32の厚みを略一定勾配で変化させて形成されているため、染色工程S15で図4(b)のように多数の微細な孔33内に染料34が入り込むことで、陽極酸化皮膜32の位置に応じて略一定勾配で着色濃度が変化した状態で着色される。
その後、染色槽24から引き上げられた基材22の表面を水洗し、染色処理工程S14を終了する。
封孔処理工程S16では、図4(c)に示すように、多数の微細な孔33を表面側で封じる水和処理と称される処理を行う。水和処理としては、水蒸気法、沸騰水法、酢酸ニッケル法、クロム酸法などが挙げられる。陽極酸化皮膜32が結晶水を含んだ水和物35の構造に変化することにより体積膨張し、水和物35により微細な孔33が塞がれる。この実施の形態では、沸騰水法を用いた。使用した薬品はトップシールE−110(奥野製薬工業株式会社製)、濃度3ml/L、浴温度95℃、処理時間15分間とした。
封孔処理後、基材22を取り出し、湯洗、乾燥を行うことで、着色部材の作製を完了した。
この実施の形態により得られた着色部材は、陽極酸化皮膜32の厚みが陽極酸化皮膜32の位置に応じて徐々に変化し、多数の微細な孔33に陽極酸化皮膜32の厚みに応じて染料が入り込むことで、陽極酸化皮膜32に着色濃度の変化を有するグラデーション着色部が形成されたものであった。
なお、上記実施の形態では、この発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記では、ピンク系の染料を使用した例について説明したが、染料の色は何ら限定されない。
また、上記では、陽極酸化皮膜32に着色濃度が略一定勾配で変化するグラデーション着色部を形成したが、着色濃度の変化は任意に設定可能である。その場合、上記のように陽極酸化皮膜32を形成する際、電解槽14から一定の引き上げ速度で引き上げる代わりに、例えば電解装置10のプログラム等により、所望の着色濃度の変化に対応して引き上げ速度を変化させるようにし、陽極酸化皮膜32の膜厚を位置に応じて変化させればよい。
更に、上記では、陽極酸化皮膜の着色すべき領域全体を一つの染色槽の染色液に浸漬する1工程で染色を行ったが、特に限定されるものではなく、例えば、染色工程を、第1染料を含有する第1染色液に陽極酸化皮膜を接触させる第1染色工程と、第2染料を含有する第2染色液に第1染色工程により染色した前記酸化皮膜を接触させる第2染色工程とにより分けて、複数の染色工程により行うことも可能である。その場合、第1染色工程と第2染色工程で、染色液を異ならせることも可能である。
具体的には、複数の染色工程のうちの一部の染色工程において、基材を浸漬させる際の染色液中への引き下げ速度や引き上げ速度を調整することで、染色液に陽極酸化皮膜を接触させる接触時間を陽極酸化皮膜の位置に応じて異ならせ、最後に行う染色工程において、陽極酸化皮膜の位置によって染色液に浸漬している時間に実質的に違いがないように、陽極酸化皮膜の着色すべき領域全体を染色槽の染色液に浸漬することも可能である。
このようにすれば、陽極酸化皮膜の着色すべき領域に、先の染色工程により得られる着色濃度の変化と、後の染色工程により得られる着色濃度の変化とが形成され、二次元的なグラデーション等のデザインを実現可能である。
以上のような陽極酸化皮膜32の染色方法によれば、陽極酸化皮膜32の位置に応じて陽極酸化皮膜32の厚みを変化させて形成し、この陽極酸化皮膜32を染色するので、陽極酸化皮膜32の厚みに応じて着色濃度を変化させることができる。
この理由は必ずしも明確ではないが、例えば、陽極酸化皮膜32の多数の微細な孔33の長さや密度が陽極酸化皮膜32の厚みに応じて変化することで、染色により多数の微細な孔33に入り込む染料の量が陽極酸化皮膜32の厚みに応じて変化し、これにより着色濃度が変化すると推定できる。
その結果、陽極酸化皮膜32の位置に応じた着色濃度に染色することができ、陽極酸化皮膜33の厚みを種々調整することで、種々の着色模様を容易且つ確実に形成することが可能である。
また、この染色方法では、染色工程で、陽極酸化皮膜32の位置によって染色液に浸漬している時間に実質的に違いがないようにして、陽極酸化皮膜32の着色すべき領域全体を染色するので、染色工程で複雑な調整を行うことなく、陽極酸化皮膜32の位置に応じて着色濃度を変化させることができ、染色工程を容易に行うことができる。
更に、この染色方法では、電解質溶液中に基材13を浸漬して、基材13とカーボン電極15とに所定電圧を印加しつつ基材13を電解質溶液中から徐々に引き上げることで、陽極酸化皮膜32の厚みを位置に応じて変化させるので、基材13を引き上げる速度を変化することで容易に陽極酸化皮膜32の厚みを変化させることができ、位置に応じて厚みが変化する陽極酸化皮膜32の作製が容易である。
そして、このようにして得られた着色部材によれば、陽極酸化皮膜32の厚みが位置に応じて徐々に変化し、多数の微細な孔33に陽極酸化皮膜32の厚みに応じて染料が入り込むことで着色されているので、確実に陽極酸化皮膜32の厚みに応じて着色濃度を徐々に変化させることができる。そのため、陽極酸化皮膜32の厚みを調整することで、種々の着色濃度の変化を有するグラデーション着色部を実現することが可能である。
(発明の実施の形態2)
図6は、この実施の形態2の陽極酸化皮膜の染色方法に用いる電解装置を示す。
この実施の形態2では、陽極酸化処理工程S15において図6のような電解装置10を用いる他は、全て実施の形態1と同様に、陽極酸化皮膜32を着色して着色部材を作製する。
図6の電解装置10は、電解槽14の底部に散気管17が配置されている。そして、基材13の表面に陽極酸化皮膜32を形成する期間中、常時、空気を電解槽14中に散気して分極を防止するようになっている。
このような電解装置10を用いても、実施の形態1と同様に陽極酸化皮膜32を形成することができ、得られた陽極酸化皮膜32を実施の形態1と同様にして染色することで、グラデーション着色部を有する着色部材を形成することができる。
但し、散気管17による散気を行うため、硫酸ミストが基材13の引き上げ時に表面に付着してシミ状になり易く、これを防止するために散気を適度に抑制するのが好ましい。
このような実施の形態2であっても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることが可能である。
10 電解装置
11 支持装置
13 基材
14 電解槽
15 カーボン電極
32 陽極酸化皮膜
33 微細な孔
34 染料
35 水和物

Claims (9)

  1. 基材の表面に、少なくとも表面に多数の微細な孔を有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化工程と、染料を含有する染色液に前記陽極酸化皮膜を接触させることで該陽極酸化皮膜を染色する染色工程と、該染色工程後に前記多数の微細な孔を封じる封孔工程とを有する陽極酸化皮膜の着色方法において、
    前記陽極酸化工程で、前記陽極酸化皮膜の厚みを該陽極酸化皮膜の位置に応じて変化させて形成することを特徴とする陽極酸化皮膜の着色方法。
  2. 前記染色工程では、前記陽極酸化皮膜の位置によって前記染色液に浸漬している時間に実質的に違いがないようにして、前記陽極酸化皮膜の着色すべき領域全体を染色することを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化皮膜の着色方法。
  3. 前記陽極酸化工程では、電解質溶液中に前記基材を浸漬して、前記基材と陰極とに所定電圧を印加しつつ前記基材を前記電解質溶液中から徐々に引き上げることで、前記陽極酸化皮膜の厚みを該陽極酸化皮膜の位置に応じて変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の陽極酸化皮膜の着色方法。
  4. 前記基材を前記電解質溶液中から徐々に引き上げる速度を変化させることで、前記陽極酸化皮膜の厚みを変化させることを特徴とする請求項3に記載の陽極酸化皮膜の着色方法。
  5. 前記速度は、0.1mm/分以上10mm/分以下の範囲で変化させることを特徴とする請求項4に記載の陽極酸化皮膜の着色方法。
  6. 基材と、該基材の表面に形成されて、少なくとも表面に多数の微細な孔を有する陽極酸化皮膜とを備え、前記多数の微細な孔に染料が入り込んた状態で封じらることで着色された着色部材において、
    前記陽極酸化皮膜の厚みが該陽極酸化皮膜の位置に応じて徐々に変化し、前記多数の微細な孔に前記陽極酸化皮膜の厚みに応じて前記染料が入り込むことで、前記陽極酸化皮膜に着色濃度の変化を有するグラデーション着色部が形成されていることを特徴とする着色部材。
  7. 前記陽極酸化皮膜は、アルミニウムの陽極酸化皮膜であることを特徴とする請求項6に記載の着色部材。
  8. 前記陽極酸化皮膜は、厚さを0.1μm以上50μm以下の範囲で変化させたことを特徴とする請求項6又は7に記載の着色部材。
  9. 携帯機器の外装部材であることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一つに記載の着色部材。
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