JP2010268963A - 耳用治療器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】低侵襲で蝸牛の機能低下の不都合を生ずることなく細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療する。
【解決手段】外耳内または中耳内に配置され、細胞懸濁液または成長因子液Aを収容する弾性を有するリザーバ2と、該リザーバ2内部に一端が開口し、他端がリザーバ2外部に配置され、リザーバ2内の細胞懸濁液または成長因子液Aをリザーバ2外部に放出させる放出管3と、該放出管3の貫通孔3cを閉塞状態に保持し、該放出管3が正円窓を介して蝸牛内に挿入されたときに、蝸牛内のリンパ液によって分解されて放出管3の貫通孔3cを開放する生分解性材料からなる弁部材4とを備える耳用治療器具1を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、耳用治療器具に関するものである。
従来、感音性難聴の次世代治療法の1つとして、幹細胞や前駆細胞の内耳蝸牛への注入による細胞治療が期待されている(例えば、非特許文献1参照。)。
中川隆之、外2名、「内耳への神経管細胞移植」、[online]、2004年3月25日、日本炎症・再生医学会、[2009年4月3日検索]、インターネット、<URL:http://www.jstage.jst.go.jp/article/jsir/24/5/24_562/_article/-char/ja> Fate of embryonic stem cells transplanted into the deafened mammalian cochlea. Coleman B, Hardman J, Coco A, Epp S, de Silva M, Crook J, Shepherd R Cell Transplant. 2006;15(5):369-380
しかしながら、細胞を蝸牛内に注入するための方法および装置は未だ開発されていない。動物実験レベルでは側頭骨にドリルで穿孔して鼓室を開放し、鼓室に露出している蝸牛の正円窓に先の微細なガラス管やポリウレタンおよびポリイミドのカニューレを挿入し、このカニューレに接続されたチューブを介してシリンジによって圧力をかけて細胞を注入する方法が知られている。
この方法は、側頭骨に穿孔するので侵襲が高く、ヒトに適用するには感染症や蝸牛の損傷の可能性があり好ましくない。また、シリンジによって圧力をかける場合、蝸牛に加わる圧力が過大となり、蝸牛の機能低下を生ずる不都合が考えられる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、低侵襲で蝸牛の機能低下の不都合を生ずることなく細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療することができる耳用治療器具を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、外耳内または中耳内に配置され、細胞懸濁液または成長因子液を収容する弾性を有するリザーバと、該リザーバ内部に一端が開口し、他端が前記リザーバ外部に配置され、前記リザーバ内の細胞懸濁液または成長因子液をリザーバ外部に放出させる放出管と、該放出管の貫通孔を閉塞状態に保持し、該放出管が正円窓を介して蝸牛内に挿入されたときに、蝸牛内のリンパ液によって分解されて放出管の貫通孔を開放する生分解性材料または水溶性材料からなる弁部材とを備える耳用治療器具を提供する。
本発明によれば、リザーバに取り付けた放出管によって正円窓を貫通し、リザーバを外耳内または中耳内に留置すると、蝸牛内のリンパ液によって生分解性材料または水溶性材料からなる弁部材が分解あるいは溶解して放出管の貫通孔を開放する。これにより、弾性材料からなるリザーバの弾性による内圧によってリザーバ内から細胞懸濁液または成長因子液が押し出され、蝸牛内に徐放されていく。リザーバは外耳内または中耳内に収容される程度の小さいものであるため内圧を十分に低く抑えることができ、また、シリンジで押し込む場合のような手動操作による圧力変動もないので、蝸牛に与える負荷を抑制することができる。その結果、低侵襲で蝸牛の機能低下の不都合を生ずることなく細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療することができる。
上記発明においては、前記放出管のリザーバ外部の端部が正円窓を貫通可能な尖鋭な形状に形成されていてもよい。
このようにすることで、放出管を正円窓側に向けてリザーバを外耳内または中耳内に収容すると、放出管の尖鋭な形状の端部によって正円窓を貫通することができ、設置を容易にすることができる。
また、上記発明においては、前記弁部材が、前記放出管のリザーバ外部の端部に固定され、正円窓を貫通可能な尖鋭な形状に形成されていてもよい。
このようにすることで、放出管の先端に設けた弁部材を正円窓側に向けてリザーバを外耳内または中耳内に収容すると、尖鋭な形状の弁部材によって正円窓を貫通することができ、設置を容易にすることができる。弁部材は、蝸牛内に配置されるとリンパ液によって分解または溶解して放出管の貫通孔を開放するので、細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療することができる。
本発明によれば、低侵襲で蝸牛の機能低下の不都合を生ずることなく細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る耳用治療器具を示す縦断面図である。 図1の耳用治療器具に備えられた放出管の先端部形状を示す縦断面図であり(a)先端部の蝸牛内への挿入前の状態、(b)挿入直後の状態、(c)内部の細胞懸濁液あるいは成長因子液の吐出状態を説明する縦断面図である。 図1の耳用治療器具の患者への装着手順を説明する図である。 図1の耳用治療器具の第1の変形例を示す縦断面図であり(a)細胞懸濁液あるいは成長因子液を注入する作業を説明する部分的な縦断面図、(b)放出管の貫通孔が閉塞された状態を示す縦断面図である。 図2の耳用治療器具の第2の変形例を示す部分的な縦断面図である。
本発明の一実施形態に係る耳用治療器具1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る耳用治療器具1は、図1に示されるように、弾性材料(例えば、天然ゴム、シリコンゴム)からなる略球形のリザーバ2と、該リザーバ2を貫通して、リザーバ2の内外にそれぞれ開口端3a,3bを配置した放出管3と、該放出管3を開閉する弁部材4とを備えている。
リザーバ2内には、神経幹細胞や前駆細胞等の細胞を含む細胞懸濁液または成長因子液Aが封入され、それによってリザーバ2が膨張した状態に設定されている。リザーバ2は、患者の外耳内または中耳内に配置可能な十分に小さい外径寸法を有している。
細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの封入によって膨張させられたリザーバ2は、その弾性復元力によって収縮する方向に付勢されており、内部の細胞件濁液あるいは成長因子液Aを加圧している。その圧力は、リザーバ2が小さく収縮した状態においても蝸牛内に封入されているリンパ液の圧力より若干高くなるように設定されている。
放出管3は、図1に示されるように、リザーバ2内に収容されている細胞懸濁液または成長因子液Aの通過を許容する内径寸法の貫通孔3cを有している。放出管3は、リザーバ2を貫通する貫通部2aにおいてリザーバ2に、例えば、接着剤Bにより接着されている。これにより、リザーバ2から放出管3が外れないように固定されている。
放出管3のリザーバ2の外側に配置される開口端3bは、長手方向に対して所定の角度をなした尖鋭な形状を有している。これにより、放出管3の先端を患者の正円窓に押し付けるだけで、正円窓を貫通して蝸牛内部に放出管3の開口端3bを配置することができるようになっている。
弁部材4は、蝸牛内のリンパ液Cと接触すると、リンパ液Cの作用によって溶解する生分解性の材料、例えば、コラーゲン、ゼラチン、オブラート、澱粉等によって構成され、図2(a)〜(c)に示されるように、放出管3の貫通孔3cを閉塞するように、放出管3の長手方向の途中位置に隔壁状に配置されている。この弁部材4は、リザーバ2内の細胞懸濁液あるいは成長因子液Aによっては分解せず、かつ、蝸牛内のリンパ液Cによって分解される材料であることが好ましい。
しかしながら、リザーバ2内の細胞懸濁液あるいは成長因子液Aによって分解される材質からなるものであっても、本実施形態に係る耳用治療器具1を患者の外耳内あるいは中耳内に設置する作業期間中にわたっては分解されずに保持されて、一時的に放出管3の貫通孔3cを閉塞状態に維持することができるものであればよい。また、弁部材4を生分解性の材質からなるものとしたが、これに代えて、水溶性の材質からなるものを採用してもよい。
このように構成された本実施形態に係る耳用治療器具1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る耳用治療器具1を用いて患者の感音性難聴等の疾患を治療するには、図2(a)および図3に示されるように、棒Dの先端に一時的な接着剤等によってリザーバ2を取り付けて、リザーバ2に設けられた放出管3を前方に向けて患者の外耳Fから中耳G内に挿入していく。図中符号Hは鼓膜である。
そして、リザーバ2および放出管3が患者の外耳Fあるいは中耳G内に挿入された時点で、リザーバ2の前方に配置されている放出管3の先端が中耳Gと内耳Jとの境界に配置されている正円窓Eに接触する。そこで、さらに棒Dに力を加えて放出管3の先端を正円窓Eに押し付ける。
放出管3の先端は鋭利な形状に形成されているので、正円窓Eに押し付けられると、その押圧力によって正円窓Eを貫通し、蝸牛(図示略)内に配置される。
放出管3には弁部材4が設けられているので、リザーバ2の挿入作業の準備期間、挿入作業期間および先端による正円窓Eの貫通作業の期間にわたって、閉塞状態に維持され、内部の細胞懸濁液あるいは成長因子液Aが外部に漏出されないように保持されている。
そして、放出管3の先端が蝸牛内に挿入されると、図2(b)に示されるように、蝸牛内に充満しているリンパ液Cが放出管3の先端から内部に流入して、放出管を閉塞している弁部材4に接触する。弁部材4は生分解性の材料によって構成されているので、リンパ液Cの接触によって経時的に分解される。これにより、図2(c)に示されるように、放出管3の貫通孔3cが開放され、リザーバ2内部の細胞懸濁液あるいは成長因子液Aが放出管3を介して、その開口端3bから放出される。
リザーバ2は弾性材料からなっていて、細胞懸濁液あるいは成長因子液Aを注入することによって膨張させられているので、収縮する方向に常時弾性復元力が作用する。そして、その弾性復元力による細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの圧力が蝸牛内のリンパ液Cの圧力よりも若干高くなるように設定されているので、リザーバ2内の細胞懸濁液あるいは成長因子Aはその圧力差によって、リザーバ2外部の放出管3の開口端3bから吐出させられる。
リザーバ2の弾性復元力による圧力は、蝸牛内の圧力に対して若干高く設定されており、しかも、放出管3の内径が微細に構成されているので、リザーバ2内に貯留されている細胞懸濁液あるいは成長因子液Aが急激に蝸牛内に流入してしまうことがなく、蝸牛内の急激な圧力上昇が防止される。また、リザーバ2内に貯留されている細胞懸濁液あるいは成長因子液Aは、蝸牛内に徐々に放出されて、長時間にわたってゆっくりと供給され続ける。
このように、本実施形態に係る耳用治療器具1によれば、従来のようにシリンジ等により注入するのではなく、リザーバ2の弾性復元力によって細胞懸濁液あるいは成長因子液Aを蝸牛内の鼓室階に供給するので、供給の圧力変動が少なく、かつ、過大な圧力が鼓室階内にかからないので、蝸牛に与える負荷を抑制することができる。また、患者の側頭骨に穿孔する必要がなく、正円窓Eを介して簡易に細胞懸濁液あるいは成長因子液Aを供給することができる。その結果、低侵襲で蝸牛の機能低下の不都合を生ずることなく細胞を蝸牛内に供給して感音性難聴を治療することができるという利点がある。
なお、本実施形態においては、弁部材4として放出管3の貫通孔3cを閉塞する位置に隔壁状に配置されたものを例示したが、これに代えて、図4(a)に示されるように、リザーバ2の外から中側に向かう方向への細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの流入を許容し、図4(b)に示されるように、リザーバ2内から外側に向かう方向への細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの流出を禁止する逆止弁により構成されていてもよい。この弁部材4も生分解材料または水溶性材料によって構成されている。
このようにすることで、放出管3に接続したシリンジ内に細胞懸濁液あるいは成長因子液Aを収容して、シリンジによって加圧することにより、逆止弁からなる弁部材4が開放されて、細胞懸濁液あるいは成長因子液Aがリザーバ2内に供給される。そして、この後に、放出管3からシリンジを切り離すことにより、逆止弁からなる弁部材4が放出管3の貫通孔3cを閉塞し、細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの外部への吐出が一時的に制限される。
その後、この耳用治療器具1を外耳Fまたは中耳G内に挿入して、放出管3を正円窓Eに刺すことにより、上記と同様にして弁部材4が分解され、リザーバ2内の細胞懸濁液あるいは成長因子液Aを蝸牛内に徐々に供給することができる。
また、本実施形態においては、図5に示されるように、生分解性材料あるいは水溶性材料によって構成した栓部材5によって、放出管3の外側の開口端3bを閉塞し、該栓部材5が鋭利な形状をしていてもよい。このようにすることで、栓部材5によって正円窓Eを貫通した後、栓部材5が分解あるいは溶解することによって、放出管3を介した細胞懸濁液あるいは成長因子液Aの吐出を可能とすることができる。
A 細胞懸濁液または成長因子液
C リンパ液
F 外耳
G 中耳
1 耳用治療器具
2 リザーバ
3 放出管
3c 貫通孔
4 弁部材

Claims (3)

  1. 外耳内または中耳内に配置され、細胞懸濁液または成長因子液を収容する弾性を有するリザーバと、
    該リザーバ内部に一端が開口し、他端が前記リザーバ外部に配置され、前記リザーバ内の細胞懸濁液または成長因子液をリザーバ外部に放出させる放出管と、
    該放出管の貫通孔を閉塞状態に保持し、該放出管が正円窓を介して蝸牛内に挿入されたときに、蝸牛内のリンパ液によって分解されて放出管の貫通孔を開放する生分解性材料または水溶性材料からなる弁部材とを備える耳用治療器具。
  2. 前記放出管のリザーバ外部の端部が正円窓を貫通可能な尖鋭な形状に形成されている請求項1に記載の耳用治療器具。
  3. 前記弁部材が、前記放出管のリザーバ外部の端部に固定され、正円窓を貫通可能な尖鋭な形状に形成されている請求項1に記載の耳用治療器具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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