JP2010255107A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Si、Mnを含有する鋼板を母材とし、耐食性および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板に対して連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、SiおよびMnを含有する高強度鋼板を母材とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車、家電、建材等の分野において、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板、中でも溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が広範に使用されている。また、自動車の燃費向上および自動車の衝突安全性向上の観点から、車体材料の高強度化によって薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しかつ高強度化する要望が高まっている。そのために高強度鋼板の自動車への適用が促進されている。
一般的に、溶融亜鉛めっき鋼板は、スラブを熱間圧延や冷間圧延した薄鋼板を母材として用い、母材鋼板を連続式溶融亜鉛めっきライン(以下、CGLと称す)の焼鈍炉にて再結晶焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を行い製造される。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合は、溶融亜鉛めっき処理の後、さらに合金化処理を行い製造される。
ここで、CGLの焼鈍炉の加熱炉タイプとしては、DFF型(直火型)、NOF型(無酸化型)、オールラジアントチューブ型等があるが、近年では、操業のし易さやピックアップが発生しにくい等により低コストで高品質なめっき鋼板を製造できるなどの理由からオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLの建設が増加している。しかしながら、DFF型(直火型)、NOF型(無酸化型)と異なり、オールラジアントチューブ型の加熱炉は焼鈍直前に酸化工程がないため、Si、Mn等の易酸化性元素を含有する鋼板についてはめっき性確保の点で不利である。
Si、Mnを多量に含む高強度鋼板を母材とした溶融めっき鋼板の製造方法として、特許文献1および特許文献2には、還元炉における加熱温度を水蒸気分圧で表される式で規定し露点を上げることで、地鉄表層を内部酸化させる技術が開示されている。しかしながら、露点を制御するエリアが炉内全体を前提としたものであるため、露点の制御が困難であり安定操業が困難である。また、不安定な露点制御のもとでの合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造は、下地鋼板に形成される内部酸化物の分布状態にバラツキが認められ、鋼板の長手方向や幅方向でめっき濡れ性ムラや合金化ムラなどの欠陥が発生する懸念がある。
また、特許文献3には、酸化性ガスであるHOやOだけでなく、CO濃度も同時に規定することで、めっき直前の地鉄表層を内部酸化させ外部酸化を抑制してめっき外観を改善する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1および2と同様に、特許文献3においても、内部酸化物の存在により加工時に割れが発生しやすくなり、耐めっき剥離性が劣化する。また、耐食性の劣化も認められる。さらにCOは炉内汚染や鋼板表面への浸炭などが起こり機械特性が変化するなどの問題が懸念される。
さらに、最近では、加工の厳しい箇所への高強度溶融亜鉛めっき鋼板、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の適用が進んでおり、高加工時の耐めっき剥離特性が重要視されるようになっている。具体的にはめっき鋼板に90°超えの曲げ加工を行いより鋭角に曲げたときや衝撃が加わり鋼板が加工を受けた場合の、加工部のめっき剥離の抑制が要求される。
このような特性を満たすためには、鋼中に多量にSiを添加し所望の鋼板組織を確保するだけでなく、高加工時の割れなどの起点になる可能性があるめっき層直下の地鉄表層の組織、構造のより高度な制御が求められる。しかしながら従来技術ではそのような制御は困難であり、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLでSi含有高強度鋼板を母材として高加工時の耐めっき剥離特性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができなかった。
特開2004−323970号公報 特開2004−315960号公報 特開2006−233333号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、Si、Mnを含有する鋼板を母材とし、めっき外観、耐食性および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
従来は、めっき性を改善する目的で積極的に鋼板の内部を酸化させていた。しかし、同時に、耐食性や加工性が劣化する。そこで、本発明者らは、従来の考えにとらわれない新たな方法で課題を解決する方法を検討した。その結果、焼鈍工程の雰囲気と温度を適切に制御することで、めっき層直下の鋼板表層部において内部酸化の形成を抑制し、優れためっき外観と、より高い耐食性と高加工時の良好な耐めっき剥離性が得られることを知見した。具体的には、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上となるように制御して焼鈍、溶融亜鉛めっき処理を行う。焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上とすることで、鋼板と雰囲気の界面の酸素ポテンシャルを低下させ、内部酸化を形成させずに、Si、Mnなどの選択的表面拡散、酸化(以後、表面濃化と呼ぶ)を抑制する。
このように雰囲気中の水素濃度を制御することにより、内部酸化を形成させず、表面濃化を極力抑制し、不めっきのない、めっき外観、耐食性および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることになる。なお、めっき外観に優れるとは、不めっきや合金化ムラが認められない外観を有することを言う。
そして、以上の方法により得られる高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき層の直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部において、Fe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる1種以上(Feのみを除く)の酸化物の形成が抑制され、その形成量は合計で片面あたり0.060g/m以下に抑制される。これにより、めっき外観に優れ、耐食性が著しく向上し、地鉄表層における曲げ加工時の割れ防止を実現させ、高加工時の耐めっき剥離性に優れることになる。
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、鋼板に連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上とすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記鋼板は、成分組成として、質量%で、さらに、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、溶融亜鉛めっき処理後、さらに、450℃以上600℃以下の温度に鋼板を加熱して合金化処理を施し、亜鉛めっき層のFe含有量を7〜15質量%の範囲にすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]に記載のいずれかの製造方法により製造され、亜鉛めっき層直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部に生成したFe、Si、Mn、Al、P、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる1種以上の酸化物が、片面あたり0.060g/m以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
なお、本発明において、高強度とは、引張強度TSが340MPa以上である。また、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき処理後合金化処理を施さないめっき鋼板(以下、GIと称することもある)、合金化処理を施すめっき鋼板(以下、GAと称することもある)のいずれも含むものである。
本発明によれば、めっき外観、耐食性および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、鋼成分組成の各元素の含有量、めっき層成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
先ず、本発明で最も重要な要件である、めっき層直下の下地鋼板表面の構造を決定する焼鈍雰囲気条件について説明する。
鋼中に多量のSiおよびMnが添加された高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、耐食性及び高加工時の耐めっき剥離性を満足させるためには、腐食や高加工時の割れなどの起点となる可能性があるめっき層直下の地鉄表層の内部酸化を極力少なくすることが求められる。
SiやMnの内部酸化を促進させることによりめっき性を向上させることは可能ではあるが、これは逆に耐食性や加工性の劣化をもたらすことになってしまう。このため、SiやMnの内部酸化を促進させる方法以外で、良好なめっき性を維持しつつ、内部酸化を抑制して耐食性、加工性を向上させる必要がある。検討した結果、本発明では、めっき性を確保するために焼鈍工程において酸素ポテンシャルを低下させ易酸化性元素であるSiやMn等の地鉄表層部における活量を低下させる。そして、これらの元素の外部酸化を抑制し、結果的にめっき性を改善する。そして、地鉄表層部に形成する内部酸化も抑制され、耐食性及び高加工性が改善することになる。
このような効果は、連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域で水素濃度:20vol%以上となるように制御することにより得られる。焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度が20vol%以上となるように制御することにより、鋼板と雰囲気の界面の酸素ポテンシャルを低下させ、内部酸化を形成させずに、Si、Mnなどの選択的表面拡散、酸化(以後、表面濃化と呼ぶ)を抑制する。そして、不めっきのない、より高い耐食性と高加工時の良好な耐めっき剥離性が得られることになる。
水素濃度を制御する温度域を750℃以上とした理由は以下の通りである。750℃を下回る温度域では、不めっき発生、耐食性の劣化、耐めっき剥離性の劣化等が問題になる程度の表面濃化や内部酸化は、起こらない。よって、本発明の効果が発現する温度域である750℃以上とする。
水素濃度を20vol%以上に制御する温度域の上限は特に設けないが、900℃超えの場合、本発明の効果に何ら問題はないが、焼鈍炉内設備(ロールなど)の酸化による劣化、及びコスト増大の観点から、不利となる。したがって、900℃以下が好ましい。
水素濃度を20vol%以上とした理由は以下の通りである。表面濃化の抑制効果が認められるのが水素濃度が20vol%以上である。水素濃度の上限は特に設けないが、75vol%超えは効果が飽和し、コスト的に不利となるため、75vol%以下が望ましい。なお、焼鈍炉内の気体成分は、水素ガス以外には窒素ガスと不可避不純物気体からなる。本発明効果を損するものでなければ他の気体成分を含有してもよい。
次いで、本発明の対象とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の鋼成分組成について説明する。
C:0.01〜0.18%
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで加工性を向上させる。そのためには0.01%以上必要である。一方、0.18%を超えると溶接性が劣化する。したがって、C量は0.01%以上0.18%以下とする。
Si:0.02〜2.0%
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素であり、本発明の目的とする強度を得るためには0.02%以上が必要である。Siが0.02%未満では本発明の適用範囲とする強度が得られず、高加工時の耐めっき剥離性についても特に問題とならない。一方、2.0%を超えると高加工時の耐めっき剥離性の改善が困難となってくる。したがって、Si量は0.02%以上2.0%以下とする。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、3.0%を超えると溶接性やめっき密着性の確保、強度と延性のバランスの確保が困難になる。したがって、Mn量は1.0%以上3.0%以下とする。
Al:0.001〜1.0%
Alは溶鋼の脱酸を目的に添加されるが、その含有量が0.001%未満の場合、その目的が達成されない。溶鋼の脱酸の効果は0.001%以上で得られる。一方、1.0%を超えるとコストアップになる。したがって、Al量は0.001%以上1.0%以下とする。
P:0.005〜0.060%以下
Pは不可避的に含有される元素のひとつであり、0.005%未満にするためには、コストの増大が懸念されるため、0.005%以上とする。一方、Pが0.060%を超えて含有されると溶接性が劣化する。さらに、表面品質が劣化する。また、合金化処理を施さない時にはめっき密着性が劣化し、合金化処理時には合金化処理温度を上昇しないと所望の合金化度とすることができない。また所望の合金化度とするために合金化処理温度を上昇させると延性が劣化すると同時に合金化めっき皮膜の密着性が劣化するため、所望の合金化度と、良好な延性、合金化めっき皮膜を両立させることができない。したがって、P量は0.005%以上0.060%以下とする。
S≦0.01%
Sは不可避的に含有される元素のひとつである。下限は規定しないが、多量に含有されると溶接性が劣化するため0.01%以下とする。
なお、強度と延性のバランスを制御するため、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を必要に応じて添加してもよい。
これらの元素を添加する場合における適正添加量の限定理由は以下の通りである。
B:0.001〜0.005%
Bは0.001%未満では焼き入れ促進効果が得られにくい。一方、0.005%超えではめっき密着性が劣化する。よって、含有する場合、B量は0.001%以上0.005%以下とする。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは0.005%未満では強度調整の効果やMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、0.05%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Nb量は0.005%以上0.05%以下とする。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは0.005%未満では強度調整の効果が得られにくい。一方、0.05%超えではめっき密着性の劣化を招く。よって、含有する場合、Ti量は0.005%以上0.05%以下とする。
Cr:0.001〜1.0%
Crは0.001%未満では焼き入れ性効果が得られにくい。一方、1.0%超えではCrが表面濃化するため、めっき密着性や溶接性が劣化する。よって、含有する場合、Cr量は0.001%以上1.0%以下とする。
Mo:0.05〜1.0%
Moは0.05%未満では強度調整の効果やNb、またはNiやCuとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Mo量は0.05%以上1.0%以下とする。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは0.05%未満では残留γ相形成促進効果やNiやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Cu量は0.05%以上1.0%以下とする。
Ni:0.05〜1.0%
Niは0.05%未満では残留γ相形成促進効果やCuとMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Ni量は0.05%以上1.0%以下とする。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法とその限定理由について説明する。
上記化学成分を有する鋼を熱間圧延した後、冷間圧延し鋼板とし、次いで、連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を行う。なお、この時、本発明においては、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上とする。これは本発明において、最も重要な要件である。
熱間圧延
通常、行われる条件にて行うことができる。
酸洗
熱間圧延後は酸洗処理を行うのが好ましい。酸洗工程で表面に生成した黒皮スケールを除去し、しかる後冷間圧延する。なお、酸洗条件は特に限定しない。
冷間圧延
40%以上80%以下の圧下率で行うことが好ましい。圧下率が40%未満では再結晶温度が低温化するため、機械特性が劣化しやすい。一方、圧下率が80%超えでは高強度鋼板であるため、圧延コストがアップするだけでなく、焼鈍時の表面濃化が増加するため、めっき特性が劣化する場合がある。
冷間圧延した鋼板に対して、焼鈍した後溶融亜鉛めっき処理を施す。
焼鈍炉では、前段の加熱帯で鋼板を所定温度まで加熱する加熱工程を行い、後段の均熱帯で所定温度に所定時間保持する均熱工程を行う。
そして、上述したように、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上となるように制御して焼鈍、溶融亜鉛めっき処理を行う。
なお、焼鈍炉内の750℃未満の温度域における水素濃度が1vol%未満では還元による活性化効果が得られず耐めっき剥離性が劣化する場合がある。上限は特に規定しないが、20vol%未満で十分である。
溶融亜鉛めっき処理は、常法で行うことができる。
次いで、必要に応じて合金化処理を行う。
溶融亜鉛めっき処理に引き続き合金化処理を行うときは、溶融亜鉛めっき処理をしたのち、450℃以上600℃以下に鋼板を加熱して合金化処理を施し、めっき層のFe含有量が7〜15%になるように行うのが好ましい。7%未満では合金化ムラが発生したりやフレーキング性が劣化する。一方、15%超えは耐めっき剥離性が劣化する。
以上により、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する。20g/m未満では耐食性の確保が困難になる。一方、120g/mを超えると耐めっき剥離性が劣化する。
そして、以下のように、めっき層直下の下地鋼板表面の構造に特徴を有することになる。
亜鉛めっき層の直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部では、Fe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる1種以上の酸化物の形成が合計で片面あたり0.060g/m以下に抑制される。
鋼中にSi及び多量のMnが添加された溶融亜鉛めっき鋼板において、耐食性および高加工時の耐めっき剥離性を満足させるためには、腐食や高加工時の割れなどの起点になる可能性があるめっき層直下の地鉄表層の内部酸化を極力少なくすることが求められる。そこで、本発明では、まず、めっき性を確保するために焼鈍工程において酸素ポテンシャルを低下させることで易酸化性元素であるSiやMn等の地鉄表層部における活量を低下させる。そして、これらの元素の外部酸化を抑制し、結果的にめっき性を改善する。さらに、地鉄表層部に形成する内部酸化も抑制され、耐食性及び高加工性が改善することになる。このような効果は、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部に、Fe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物の形成量を合計で0.060g/m以下に抑制することで認められる。酸化物形成量の合計(以下、内部酸化量と称す)が0.060g/m超えでは、耐食性及び高加工性が劣化する。また、内部酸化量を0.0001g/m未満に抑制しても、耐食性及び高加工性向上効果は飽和するため、内部酸化量の下限は0.0001g/mが好ましい。
さらに、上記に加え、本発明では、耐めっき剥離性を向上させるために、Si、Mn系複合酸化物が成長する地鉄組織は軟質で加工性に富むフェライト相が好ましい。
以下、本発明を、実施例に基いて具体的に説明する。
表1に示す鋼組成からなる熱延鋼板を酸洗し、黒皮スケール除去した後、表2に示す条件にて冷間圧延し、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。
Figure 2010255107
次いで、上記で得た冷延鋼板を、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLに装入した。CGLでは、表2に示す通り、焼鈍炉内750℃以上の温度域の水素濃度を表2に示すように制御して通板し、焼鈍したのち、460℃のAl含有Zn浴にて溶融亜鉛めっき処理を施した。焼鈍炉内750℃未満の温度域の水素濃度は10vol%を基本とした。
なお、雰囲気の気体成分は窒素と水素および不可避不純物気体からなり、水素濃度の制御は、窒素ガス中へ導入する水素ガス量をガスバルブで調整することでいった。露点は−35℃を基本とした。
また、GAは0.14%Al含有Zn浴を、GIは0.18%Al含有Zn浴を用いた。付着量はガスワイピングにより調節し、GAは合金化処理した。
以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GAおよびGI)に対して、外観性(めっき外観)、耐食性、高加工時の耐めっき剥離性、加工性を調査した。また、めっき層直下の100μmまでの地鉄鋼板表層部に存在する酸化物の量(内部酸化量)を測定した。測定方法および評価基準を下記に示す。
<外観性>
外観性は、不めっきや合金化ムラなどの外観不良が無い場合は外観良好(記号○)、ある場合は外観不良(記号×)と判定した。
<耐食性>
寸法70mm×150mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、JIS Z 2371(2000年)に基づく塩水噴霧試験を3日間行い、腐食生成物をクロム酸(濃度200g/L、80℃)を用いて1分間洗浄除去し、片面あたりの試験前後のめっき腐食減量(g/m・日)を重量法にて測定し、下記基準で評価した。
○(良好):20g/m・日未満
×(不良):20g/m・日以上
<耐めっき剥離性>
高加工時の耐めっき剥離性は、GAでは、90°を超えて鋭角に曲げたときの曲げ加工部のめっき剥離の抑制が要求される。本実施例では120°曲げした加工部にセロハンテープを押し付けて剥離物をセロハンテープに転移させ、セロハンテープ上の剥離物量をZnカウント数として蛍光X線法で求めた。なお、この時のマスク径は30mm、蛍光X線の加速電圧は50kV、加速電流は50mA、測定時間は20秒である。下記の基準に照らして、ランク1、2のものを耐めっき剥離性が良好(記号○)、3以上のものを耐めっき剥離性が不良(記号×)と評価した。
蛍光X線Znカウント数 ランク
0−500未満:1(良)
500以上−1000未満:2
1000以上−2000未満:3
2000以上−3000未満:4
3000以上:5(劣)
GIでは、衝撃試験時の耐めっき剥離性が要求される。ボールインパクト試験を行い、加工部をテープ剥離し、めっき層の剥離有無を目視判定した。ボールインパクト条件は、ボール重量1000g、落下高さ100cmである。
○:めっき層の剥離無し
×:めっき層が剥離
<加工性>
加工性は、試料から圧延方向に対して90°方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/min一定で引張試験を行い、引張り強度(TS/MPa)と伸び(El%)を測定し、TSが650MPa未満の場合は、TS×El≧22000のものを良好、TS×El<22000のものを不良とした。TSが650MPa以上900MPaの場合は、TS×El≧20000のものを良好、TS×El<20000のものを不良とした。TSが900MPa以上の場合は、TS×El≧18000のものを良好、TS×El<18000のものを不良とした。
<めっき層直下100μmまでの領域における内部酸化量>
内部酸化量は、「インパルス炉溶融−赤外線吸収法」により測定した。ただし、素材(すなわち焼鈍を施す前の高強度鋼板)に含まれる酸素量を差し引く必要があるので、本発明では、連続焼鈍後の高強度鋼板の両面の表層部を100μm以上研磨して鋼中酸素濃度を測定し、その測定値を素材に含まれる酸素量OHとし、また、連続焼鈍後の高強度鋼板の板厚方向全体での鋼中酸素濃度を測定して、その測定値を内部酸化後の酸素量OIとした。このようにして得られた高強度鋼板の内部酸化後の酸素量OIと、素材に含まれる酸素量OHとを用いて、OIとOHの差(=OI−OH)を算出し、さらに片面単位面積(すなわち1m)当たりの量に換算した値(g/m)を内部酸化量とした。
以上により得られた結果を製造条件と併せて表2に示す。
Figure 2010255107
表2から明らかなように、本発明法で製造されたGI、GA(本発明例)は、Si、Mn等の易酸化性元素を多量に含有する高強度鋼板であるにもかかわらず、耐食性、加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、めっき外観も良好である。
一方、比較例では、めっき外観、耐食性、加工性、高加工時の耐めっき剥離性のいずれか一つ以上が劣る。
表3に示す鋼組成からなる熱延鋼板を酸洗し、黒皮スケール除去した後、表4に示す条件にて冷間圧延し、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。
Figure 2010255107
次いで、上記で得た冷延鋼板を、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLに装入した。CGLでは、表4に示す通り、焼鈍炉内の600℃以上の温度域の水素濃度を表4に示すように制御して通板し、焼鈍したのち、460℃のAl含有Zn浴にて溶融亜鉛めっき処理を施した。焼鈍炉内600℃未満の温度域の水素濃度は10vol%を標準とした。
なお、雰囲気の気体成分は窒素と水素および不可避不純物気体からなり、水素濃度の制御は、窒素ガス中へ導入する水素ガス量をガスバルブで調整することで行った。露点は−35℃を標準とした。
また、GAは0.14%Al含有Zn浴を、GIは0.18%Al含有Zn浴を用いた。付着量はガスワイピングにより調節し、GAは合金化処理した。
以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GAおよびGI)に対して、外観性(めっき外観)、耐食性、高加工時の耐めっき剥離性、加工性を調査した。また、めっき層直下の100μmまでの地鉄鋼板表層部に存在する酸化物の量(内部酸化量)を測定した。測定方法および評価基準を下記に示す。
<外観性>
外観性は、不めっきや合金化ムラなどの外観不良が無い場合は外観良好(記号○)、ある場合は外観不良(記号×)と判定した。
<耐食性>
寸法70mm×150mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、JIS Z 2371(2000年)に基づく塩水噴霧試験を3日間行い、腐食生成物をクロム酸(濃度200g/L、80℃)を用いて1分間洗浄除去し、片面あたりの試験前後のめっき腐食減量(g/m・日)を重量法にて測定し、下記基準で評価した。
○(良好):20g/m・日未満
×(不良):20g/m・日以上
<耐めっき剥離性>
高加工時の耐めっき剥離性は、GAでは、90°を超えて鋭角に曲げたときの曲げ加工部のめっき剥離の抑制が要求される。本実施例では120°曲げした加工部にセロハンテープを押し付けて剥離物をセロハンテープに転移させ、セロハンテープ上の剥離物量をZnカウント数として蛍光X線法で求めた。なお、この時のマスク径は30mm、蛍光X線の加速電圧は50kV、加速電流は50mA、測定時間は20秒である。下記の基準に照らして、ランク1、2のものを耐めっき剥離性が良好(記号○)、3以上のものを耐めっき剥離性が不良(記号×)と評価した。
蛍光X線Znカウント数 ランク
0−500未満:1(良)
500以上−1000未満:2
1000以上−2000未満:3
2000以上−3000未満:4
3000以上:5(劣)
GIでは、衝撃試験時の耐めっき剥離性が要求される。ボールインパクト試験を行い、加工部をテープ剥離し、めっき層の剥離有無を目視判定した。ボールインパクト条件は、ボール重量1000g、落下高さ100cmである。
○:めっき層の剥離無し
×:めっき層が剥離
<加工性>
加工性は、試料から圧延方向に対して90°方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/min一定で引張試験を行い、引張り強度(TS/MPa)と伸び(El%)を測定し、TSが650MPa未満の場合は、TS×El≧22000のものを良好、TS×El<22000のものを不良とした。TSが650MPa以上900MPaの場合は、TS×El≧20000のものを良好、TS×El<20000のものを不良とした。TSが900MPa以上の場合は、TS×El≧18000のものを良好、TS×El<18000のものを不良とした。
<めっき層直下100μmまでの領域における内部酸化量>
内部酸化量は、「インパルス炉溶融−赤外線吸収法」により測定した。ただし、素材(すなわち焼鈍を施す前の高強度鋼板)に含まれる酸素量を差し引く必要があるので、本発明では、連続焼鈍後の高強度鋼板の両面の表層部を100μm以上研磨して鋼中酸素濃度を測定し、その測定値を素材に含まれる酸素量OHとし、また、連続焼鈍後の高強度鋼板の板厚方向全体での鋼中酸素濃度を測定して、その測定値を内部酸化後の酸素量OIとした。このようにして得られた高強度鋼板の内部酸化後の酸素量OIと、素材に含まれる酸素量OHとを用いて、OIとOHの差(=OI−OH)を算出し、さらに片面単位面積(すなわち1m)当たりの量に換算した値(g/m)を内部酸化量とした。
以上により得られた結果を製造条件と併せて表4に示す。
Figure 2010255107
表4から明らかなように、本発明法で製造されたGI、GA(本発明例)は、Si、Mn等の易酸化性元素を多量に含有する高強度鋼板であるにもかかわらず、耐食性、加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、めっき外観も良好である。
一方、比較例では、めっき外観、耐食性、加工性、高加工時の耐めっき剥離性のいずれか一つ以上が劣る。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき外観、耐食性、加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、自動車の車体そのものを軽量化かつ高強度化するための表面処理鋼板として利用することができる。また、自動車以外にも、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板として、家電、建材の分野等、広範な分野で適用できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、鋼板に連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、焼鈍炉内温度:750℃以上の温度域を水素濃度:20vol%以上とすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼板は、成分組成として、質量%で、さらに、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 溶融亜鉛めっき処理後、さらに、450℃以上600℃以下の温度に鋼板を加熱して合金化処理を施し、亜鉛めっき層のFe含有量を7〜15質量%の範囲にすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3に記載のいずれかの製造方法により製造され、亜鉛めっき層直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部に生成したFe、Si、Mn、Al、P、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる1種以上の酸化物が、片面あたり0.060g/m以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
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JP2008156734A (ja) * 2006-12-26 2008-07-10 Jfe Steel Kk 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

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