JP2010249006A - ディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】高温下でもプランジャの供給用周溝等に潤滑油等の黒色炭化物が生じにくく、高温加熱が必要な低質燃料油を使用できるディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプを提供する。
【解決手段】この燃料噴射ポンプは、円筒状のバレル3と、バレルの摺動孔2内で往復移動して燃料を圧送する円柱状のプランジャ4とを有する。バレルの内周面には、潤滑油の供給孔9に連通する供給用周溝7が設けられる。供給用周溝には、潤滑油をバレル外に排出する排出経路25が連通している。供給用周溝に対し、排出経路が連通する位置と、供給孔が連通する位置は、互いに反対側である。供給用周溝に入った潤滑油は供給用周溝の全周を巡って淀まず、十分にバレルを冷却するので、黒色炭化物が生じにくい。
【選択図】図1
【解決手段】この燃料噴射ポンプは、円筒状のバレル3と、バレルの摺動孔2内で往復移動して燃料を圧送する円柱状のプランジャ4とを有する。バレルの内周面には、潤滑油の供給孔9に連通する供給用周溝7が設けられる。供給用周溝には、潤滑油をバレル外に排出する排出経路25が連通している。供給用周溝に対し、排出経路が連通する位置と、供給孔が連通する位置は、互いに反対側である。供給用周溝に入った潤滑油は供給用周溝の全周を巡って淀まず、十分にバレルを冷却するので、黒色炭化物が生じにくい。
【選択図】図1
Description
本発明は、ディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプに係り、特に高温になってもプランジャとバレルの隙間(以下、クリアランスと称する)に潤滑油等の黒色炭化物が生じにくく、これら両部材間でスチックが発生しにくいため、高温加熱が必要な低質燃料油を使用することができるディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプに関するものである。
従来の燃料噴射ポンプの一般的な構造を図6及び図7を参照して説明する。
図6に示すように、燃料噴射ポンプは、円筒状のケーシング1と、ケーシング1の孔内に取り付けられ、内部に摺動孔2が形成された円筒状のバレル3と、バレル3の摺動孔2内に設けられた円柱状のプランジャ4とを備えており、基本的にはプランジャ4の軸を中心とする軸対象の形状・構造の装置である。また図示はしないが、プランジャ4は、エンジンのカム軸の作用で動作するポペットに操作され、バレル3の摺動孔2内を燃焼に適したタイミングで上下動するようになっており、上昇時に摺動孔2内の燃料を加圧して送り出すことができる。
図6に示すように、燃料噴射ポンプは、円筒状のケーシング1と、ケーシング1の孔内に取り付けられ、内部に摺動孔2が形成された円筒状のバレル3と、バレル3の摺動孔2内に設けられた円柱状のプランジャ4とを備えており、基本的にはプランジャ4の軸を中心とする軸対象の形状・構造の装置である。また図示はしないが、プランジャ4は、エンジンのカム軸の作用で動作するポペットに操作され、バレル3の摺動孔2内を燃焼に適したタイミングで上下動するようになっており、上昇時に摺動孔2内の燃料を加圧して送り出すことができる。
図6に示すように、ケーシング1には燃料供給孔5があり、ここから燃料油FOがケーシング1内部に入る。バレル3には燃料油FOを内部の摺動孔2に導く燃料油FOポートが設けてある。プランジャ4の上端がこの燃料油FOポートの開口の上端を通過後、燃料油FOはバレル3内でプランジャ4に押し上げられて、図示しない吐出孔からエンジンの燃焼室側に送られる。
またプランジャ4とバレル3の摺動部を潤滑するための潤滑油LOは、図6に示すようにケーシング1の供給孔6を介して外部から内部に供給される。このバレル3には、図6及び図7に示すように、摺動孔2の内周面に供給用周溝7が形成されており、さらに図7に示すように、この供給用周溝7の一部には、その溝幅を拡大するように、バレル3の中心軸と直交する切断面で見た場合に三日月形状となるような溝8が形成されている。そして、バレル3の周壁内には、前述したケーシング1の供給孔6に連通する供給孔9が設けられており、このバレル3の供給孔9が、三日月形の溝8を介して供給用周溝7に連通している。なお、図6に示すように、バレル3の供給孔9の一部は、加工の都合上、バレル3の下端面に開口しているが、この開口はねじ式の閉止栓10によって閉止されている。以上のような供給系の構造によれば、ケーシング1の供給孔6から供給された潤滑油LOは、バレル3の供給孔9から三日月形の溝8を経て供給用周溝7に入り、さらにプランジャ4とバレル3の摺動部に供給されていく。
また、図6に示すように、バレル3の摺動孔2の内周面において、供給用周溝7の上方の位置には、クリアランスに供給された潤滑油LOを外部に排出するための排出用周溝11が形成されており、この排出用周溝11にはバレル3及びケーシング1に形成された各排出孔11,12が連通している。
以上の構成によれば、プランジャ4とバレル3の摺動部に供給された潤滑油LOの一部と、プランジャ4上部から漏れてくる燃料油FOの一部は、バレル3の摺動孔2の内面に形成された排出用周溝11と、これに連通して設けられた排出孔12を経由し、ケーシング1の排出孔13から外部に排出される。
下記特許文献1には、大略上述のような構造を備えたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプの一例が開示されており、特に同文献では、バレルを焼き嵌め等により取り付けた場合に、バレルの下部側の内径が縮小してプランジャの潤滑性が悪くなる問題を解決するため、燃料噴射用の溝部であるリードを上端部と側面部に備えたプランジャにおいて、側面部のリードの下部に繋がる環状溝を設け、これによって燃料圧送時に環状溝に噴射圧力が加わるようにし、バレルの下部側の内径が押し広げられてプランジャの潤滑性が保持されるようにしている。
前述した従来のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、バレル3とプランジャ4の摺動部における潤滑油LOの供給は概ね次のような作用で行なわれていた。
バレル3とプランジャ4の摺動部は概ね直径差10μm程度のクリアランスを有しており、このクリアランスには、前述したように、バレル3が上下動する際、バレル3とプランジャ4の摺動部が損耗しないように潤滑油LOが供給されている。
バレル3とプランジャ4の摺動部は概ね直径差10μm程度のクリアランスを有しており、このクリアランスには、前述したように、バレル3が上下動する際、バレル3とプランジャ4の摺動部が損耗しないように潤滑油LOが供給されている。
図6において、ケーシング1の供給孔から潤滑油LOが供給され、これがバレル3内部の供給孔9から三日月形の溝8を経てバレル3の内周面の供給用周溝7に入る。ここからクリアランスを通過して、一部はバレル3の下端面の隙間より排出される。他方では、一部は供給用周溝7より上側のクリアランスを通過してバレル3の内周面に形成された排出用周溝11に達する。ここで潤滑油LOは、バレル3の周壁内に形成された排出孔12を通過してケーシング1の排出孔13より排出される。なお燃料油FOの一部もプランジャ4の上部のクリアランスを介して排出用周溝11に達し、潤滑油LOと同じ経路で排出される。
ところが、ディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、近年以下に説明するような問題が生じていることを本願発明者は認識している。
発電用又は舶用のディーゼルエンジンに使用される燃料は一般的に重油であるが、この中でもC重油が世界的に最も多く使用されている。C重油は従来でも80℃から120℃程度に加熱してエンジンに供給していた。理由は、加熱して粘度を下げることにより、燃焼室内で燃料噴射弁から噴射させた際、燃料を霧化させやすくするためである。
発電用又は舶用のディーゼルエンジンに使用される燃料は一般的に重油であるが、この中でもC重油が世界的に最も多く使用されている。C重油は従来でも80℃から120℃程度に加熱してエンジンに供給していた。理由は、加熱して粘度を下げることにより、燃焼室内で燃料噴射弁から噴射させた際、燃料を霧化させやすくするためである。
ところが、近年燃料価格の上昇に伴い、経済的な理由から使用に供される燃料の低質化の傾向がさらに進んでおり、その低質化に伴う燃料の品質の最も大きな変化は粘度の上昇である。これに伴い、粘度のより高い燃料を燃料噴射弁で噴射して燃焼させるために、燃料の加熱温度はさらに上昇しており、最近では約150℃程度にまで達している。このような高温の燃料を供給される燃料噴射ポンプでは、内部の各部品の使用時の温度も相応に上昇している。
その結果、燃料噴射ポンプに供給される潤滑油が短期間に炭化したとされる例が増加しており、本願発明者の知見によれば、主として図6において潤滑油LOの供給用周溝7で何らかの炭化物が発生し、またクリアランスにも炭化物が堆積し、プランジャ4の固渋又はバレル3とのスチック(金属接触により一部がかじること)が発生している。
本願発明者は、このような不具合の原因について、さらなる検討・研究を行なった。
図8〜図10は、低質の燃料を高温で使用し、上述したような不具合が発生したディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプのバレルを実際に分解・切断して原因の究明を行なった際の写真を示している。これらの写真では、円筒形のバレルの供給用周溝が見えるように、当該バレルを、中心軸線を含む切断面で中心軸線と平行に2つに切断している。
図8〜図10は、低質の燃料を高温で使用し、上述したような不具合が発生したディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプのバレルを実際に分解・切断して原因の究明を行なった際の写真を示している。これらの写真では、円筒形のバレルの供給用周溝が見えるように、当該バレルを、中心軸線を含む切断面で中心軸線と平行に2つに切断している。
図8は、バレルの供給用周溝7を示す写真であって、特に図6の構造において、供給孔9が開口している三日月形の溝8が設けられている側を示している。この写真から分かるように、バレル3の供給孔9が開口している三日月形の溝8付近に黒色炭化物が多く付着している。図9は、図7に示す切断片とは反対側の半部の写真であり、バレル3の供給孔9が開口している側とは反対側である供給用周溝7の写真であり、ここに付着している黒色炭化物は図8に比べて少ない。また、図10は、図8で示した切断片において、バレル3の供給孔9にドリルを挿入して供給用周溝7内まで挿通させた状態を示したものである。このドリルの外径は供給孔の内径よりも直径で0.2mm小さいので、供給孔9の内面に黒色炭化物が堆積しているとしても0.2mm以下であり、非常に少ないことが分かる。
本願発明者は、以上のような不具合状況の発見から、低質の燃料を高温で使用したディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおける不具合発生の原因を次のように考えるに至った。すなわち、図6において、バレル3の供給用周溝7に達した潤滑油LOは上下のクリアランスを通過して排出されることとなっている。しかし、クリアランスの直径隙間はプランジャ4が燃料油FOを高圧で押し出せるようにするため、必要最小限となっている。従って、この供給用周溝7を通過する潤滑油LOの流量は微量であり、供給用周溝7内では潤滑油LOは淀んだ状態となっている。このため、近年の燃料油加熱温度の上昇に伴い当該部分の温度が上昇して、潤滑油LOの炭化温度に達し、この淀んだ潤滑油LOが早期に炭化していると考えられる。
さらに、図10に示すように黒色炭化物がバレル3の供給孔9内ではほとんど発生せず、供給用周溝7内に多く堆積していることから、この黒色炭化物は潤滑油LOだけが炭化したものではなく、潤滑油LOと、クリアランスを流れ落ちてきて供給用周溝7に入った燃料油FOが混合し、これが供給用周溝7で炭化したものではないかと考えられる。
本発明は、本願発明者の上述した新規な知見を元としてなされたものであり、上述した従来の問題点を解決するべく、高温下でもプランジャの供給用周溝やプランジャとバレルのクリアランスに潤滑油等の黒色炭化物が生じにくく、これら両部材間でスチックが発生しにくいため、高温加熱が必要な低質燃料油を使用することができるディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプを提供することを目的としている。
請求項1に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプは、
燃料ポートから摺動孔の内部に燃料が供給される円筒状のバレルと、前記バレルの前記摺動孔内で往復移動可能であり上昇時に前記摺動孔内の燃料を加圧して前記バレルの外に送り出す円柱状のプランジャとを有し、
前記バレルには、潤滑油の供給孔と、前記摺動孔の内周面に形成されて前記供給孔が連通する供給用周溝とが設けられ、前記供給用周溝に供給された潤滑油を前記摺動孔の内周面と前記プランジャの外周面との間に供給するディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記供給用周溝内にある潤滑油を前記バレルの外に排出するための排出経路を前記供給用周溝に連通させて前記バレルに形成したことを特徴としている。
燃料ポートから摺動孔の内部に燃料が供給される円筒状のバレルと、前記バレルの前記摺動孔内で往復移動可能であり上昇時に前記摺動孔内の燃料を加圧して前記バレルの外に送り出す円柱状のプランジャとを有し、
前記バレルには、潤滑油の供給孔と、前記摺動孔の内周面に形成されて前記供給孔が連通する供給用周溝とが設けられ、前記供給用周溝に供給された潤滑油を前記摺動孔の内周面と前記プランジャの外周面との間に供給するディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記供給用周溝内にある潤滑油を前記バレルの外に排出するための排出経路を前記供給用周溝に連通させて前記バレルに形成したことを特徴としている。
請求項2に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプは、請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と平行な前記バレルの軸方向に沿って形成され、前記バレルの下端面に開放されたことを特徴としている。
前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と平行な前記バレルの軸方向に沿って形成され、前記バレルの下端面に開放されたことを特徴としている。
請求項3に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプは、請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と直交する前記バレルの半径方向に沿って形成され、前記バレルの外周面に開放されたことを特徴としている。
前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と直交する前記バレルの半径方向に沿って形成され、前記バレルの外周面に開放されたことを特徴としている。
請求項4に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプは、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記排出経路が前記供給用周溝に連通している位置と、前記供給孔が前記供給用周溝に連通している位置が、前記供給用周溝に関して互いに反対側であることを特徴としている。
前記排出経路が前記供給用周溝に連通している位置と、前記供給孔が前記供給用周溝に連通している位置が、前記供給用周溝に関して互いに反対側であることを特徴としている。
請求項5に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプは、請求項4記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記排出経路から排出される潤滑油の流量を所定の流量に設定するために所定の内径の貫通孔が形成された流量制御素子を、前記排出経路に着脱可能に設けたことを特徴としている。
前記排出経路から排出される潤滑油の流量を所定の流量に設定するために所定の内径の貫通孔が形成された流量制御素子を、前記排出経路に着脱可能に設けたことを特徴としている。
請求項1に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、供給孔からバレルの供給用周溝内に入った潤滑油は、供給用周溝の内部を通過し、供給用周溝に連通したバレルの排出経路から外部に排出される。すなわち、潤滑油及びこれと混合した燃料は供給用周溝内に淀むことなく流通するので、供給用周溝内で高温のために潤滑油乃至燃料が炭化する不都合は発生しにくくなる。また、供給用周溝を通過する潤滑油の流量が増加するが、潤滑油の供給温度は燃料油より低いので、これによってバレル3の温度が低下し、潤滑油乃至燃料油の炭化を防止できる。
請求項2に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、供給用周溝内にある潤滑油及びこれと混合した燃料油が、バレルの軸方向に沿ってバレルの周壁内に形成された排出経路を経て、バレルの周壁の下端面から排出されることにより、請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによる効果が達成される。
請求項3に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、供給用周溝内にある潤滑油及びこれと混合した燃料油が、バレルの半径方向に沿ってバレルの周壁内に形成された排出経路を経て、バレルの周壁の外周面から排出されることにより、請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによる効果が達成される。
請求項4に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによる効果において、排出経路が供給用周溝に連通している位置と、供給孔が供給用周溝に連通している位置が、供給用周溝に関して互いに反対側であるため、供給孔から供給用周溝内に供給された潤滑油は、供給用周溝の全周を巡って反対側の排出経路から出て行くので、供給用周溝内で淀むことがなく確実に流通する。このため、高温のために供給用周溝内で潤滑油乃至燃料油が炭化する不都合は一層発生しにくくなる。また、燃料油よりも温度が低い潤滑油が供給用周溝の全周を巡るのでバレルの冷却が一層促進され、潤滑油乃至燃料油の炭化の防止が一層確実になる。
請求項5に記載されたディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによれば、請求項4記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプによる効果において、必要な内径の貫通孔を備える流量制御素子を選択して潤滑油の排出経路に取り付けることができるので、排出経路から排出される潤滑油の流量を任意に設定して、潤滑油による冷却効果を所望の状態にすることができる。従って、燃料油の粘度により変わる燃料油の加熱温度に対応して、適当な流量制御素子を選択して排出経路に取り付けることで、必要・最適な冷却効果を得ることができる。例えば、相対的に低質な燃料油であるために、これを相対的に高温で加熱して供給することが必要な場合には、貫通孔の内径がより大きい流量制御素子を選択して潤滑油の流量をより増大させ、より高い冷却効果を得るようにすることができる。
1.第1実施形態(図1乃至図3)
第1実施形態のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ(以下、単に燃料噴射ポンプと称する。)の構造及び作用を図1乃至図3を参照して説明する。
まず、本例の燃料噴射ポンプの構造を説明する。
図1に示すように、燃料噴射ポンプは、図示しないディーゼルエンジンの本体に取り付けられる円筒状のケーシング1と、ケーシング1の孔1a内に取り付けられ、内部に断面円形の摺動孔2が形成された円筒状のバレル3と、バレル3の摺動孔2内に設けられた円柱状のプランジャ4とを備えており、基本的にはプランジャ4の軸を中心とする軸対象の形状・構造の装置である。バレル3とケーシング1は隙間嵌めとなっており、図1では4か所のOリング20でシールされ、燃料油FO及び潤滑油LOが漏れないようになっている。また図示はしないが、プランジャ4は、エンジンのカム軸の作用で動作するポペットに操作され、バレル3の摺動孔2内を燃焼に適したタイミングで上下動するようになっており、上昇時に摺動孔2内の燃料油FOを加圧して送り出すことができる。
第1実施形態のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ(以下、単に燃料噴射ポンプと称する。)の構造及び作用を図1乃至図3を参照して説明する。
まず、本例の燃料噴射ポンプの構造を説明する。
図1に示すように、燃料噴射ポンプは、図示しないディーゼルエンジンの本体に取り付けられる円筒状のケーシング1と、ケーシング1の孔1a内に取り付けられ、内部に断面円形の摺動孔2が形成された円筒状のバレル3と、バレル3の摺動孔2内に設けられた円柱状のプランジャ4とを備えており、基本的にはプランジャ4の軸を中心とする軸対象の形状・構造の装置である。バレル3とケーシング1は隙間嵌めとなっており、図1では4か所のOリング20でシールされ、燃料油FO及び潤滑油LOが漏れないようになっている。また図示はしないが、プランジャ4は、エンジンのカム軸の作用で動作するポペットに操作され、バレル3の摺動孔2内を燃焼に適したタイミングで上下動するようになっており、上昇時に摺動孔2内の燃料油FOを加圧して送り出すことができる。
図1及び図2に示すように、ケーシング1には燃料油FO供給孔5があり、ここから燃料油FOがケーシング1内部に入る。バレル3には燃料油FOを内部の摺動孔2に導く燃料油ポート15が設けてある。プランジャ4の上端がこの燃料油ポート15の開口の上端を通過後、燃料油FOはバレル3内でプランジャ4に押し上げられて、図1においてバレル3上部の左側にある吐出孔16から図示しないエンジンの燃焼室側に送られる。なお、この吐出孔16の出口側にはばね式のバルブである等圧弁17が設けてあり、プランジャ4で昇圧された燃料油FOの圧力が所定の圧力以上となったときに弁が開いて燃焼室側に燃料油FOが送られるようになっている。また図1においてバレル3上部の右側には同様の構成で逆向きに配された等圧弁17を介して燃料油FOが摺動室側に戻るようになっており、この等圧弁の作動圧力よりもエンジン燃焼室側の燃料油FOの圧力が所定の圧力より低下しないように構成されている。
なお、燃料油FOは、予めその粘度に応じた必要な温度に加熱されてディーゼルエンジンに供給される。
なお、燃料油FOは、予めその粘度に応じた必要な温度に加熱されてディーゼルエンジンに供給される。
図1及び図2に示すように、プランジャ4上部の外周部には溝部21が形成されており、この溝部21の上下方向の幅は、プランジャ4の周方向の位置(回転角度)によって異なるように形成されている。プランジャ4による燃料油FOの圧送は、プランジャ4上端がバレル3の燃料油ポート15の開口の上端を通過するときに開始され、プランジャ4の溝部21が燃料油ポート15の開口に達するときに終了する。従ってプランジャ4がバレル3の中で回転して回転角度を変化させ、燃料油ポート15の開口に対する溝部21の周方向の位置を変化させることにより、プランジャ4が上昇して燃料油FOを圧送する時間を変更することができ、この機能により燃料噴射ポンプの吐出流量の制御を行なうことができる。
図示はしないが、燃料噴射ポンプには、プランジャ4の回転角度を変化させるためのリング状の部品であるコントロールスリーブと、コントロールスリーブを回転させる棒状の部品であるコントロールラックが設けられており、これらの両部品はそれぞれ歯車と同様の歯を有して噛み合っている。そして、コントロールラックはエンジン側のコントロールラック位置調整機構によりその位置を制御され、これによってコントロールラックが直線運動することにより、コントロールスリーブの回転角度が変化し、燃料噴射ポンプの吐出流量が制御される。
図1及び図2に示すように、プランジャ4とバレル3の摺動部を潤滑するための潤滑油LOは、ケーシング1の供給孔6を介して外部から内部に供給される。このバレル3には、摺動孔2の内周面に供給用周溝7が形成されており、さらに図3に示すように、この供給用周溝7の一部には、その溝幅を拡大するように、バレル3の中心軸と直交する切断面で見た場合に三日月形状となるような溝8が形成されている。そして、バレル3の周壁内には、前述したケーシング1の供給孔6に連通する供給孔9が設けられており、このバレル3の供給孔9が、三日月形の溝8を介して供給用周溝7に連通している。なお、バレル3の供給孔9の一部は、加工の都合上、バレル3の下端面に開口しているが、この開口はねじ式の閉止栓10によって閉止されている。以上のような供給系の構造によれば、ケーシング1の供給孔6から供給された潤滑油LOは、バレル3の供給孔9から三日月形の溝8を経て供給用周溝7に入り、さらにプランジャ4とバレル3の摺動部に供給されていく。
また、図1に示すように、バレル3の摺動孔2の内周面において、供給用周溝7の上方の位置には、クリアランスに供給された潤滑油LOを外部に排出するための排出用周溝11が形成されており、この排出用周溝11にはバレル3及びケーシング1に形成された各排出孔12,13が連通している。
次に、図2及び図3に示すように、本例の燃料噴射ポンプでは、バレル3の内周面に形成された供給用周溝7の周方向に関して、バレル3に形成された潤滑油LOの供給孔9が供給用周溝7に連通している位置とは反対側の位置に、供給用周溝7の潤滑油LOをバレル3外に排出するための排出経路25が、供給側と同様の三日月形の溝8を介して供給用周溝7に連通して形成されている。この排出経路25は、プランジャ4が往復移動する方向、すなわちバレル3の軸方向に沿ってバレル3の周壁内に形成され、バレル3の下端面に開放されている。このように、バレル3の供給用周溝7に連通して形成された潤滑油LOの供給孔9と排出経路25は、図3に示すように供給用周溝7に関して互いに180°反対側の位置関係となるように構成されている。
前述したように、バレル3に形成された潤滑油LOの排出経路25はバレル3の下端面に開放されているが、この開放孔には、排出経路25から排出される潤滑油LOの流量を所定の流量に設定するために所定の内径の貫通孔(オリフィス)を形成された流量制御素子26が着脱可能に取り付けられている。なお、詳細は図示しないが、流量制御素子26の貫通孔から流出した潤滑油LOはディーゼルエンジンの下方に設けられた図示しないオイルパンに戻り、再び循環して供給されるようになっている。
次に、本例の燃料噴射ポンプの作用を説明する。
ディーゼルエンジンの駆動時、ケーシング1の供給孔6から潤滑油LOが供給される。潤滑油LOの供給圧は通常6kg/cm2 程度であり、その温度は65℃程度である。この潤滑油LOが、バレル3の内部の供給孔9から三日月形の溝8を経てバレル3の内周面の供給用周溝7に入り、さらに供給位置付近に滞留することなく流動し、供給用周溝7の全周に行き渡る。
ディーゼルエンジンの駆動時、ケーシング1の供給孔6から潤滑油LOが供給される。潤滑油LOの供給圧は通常6kg/cm2 程度であり、その温度は65℃程度である。この潤滑油LOが、バレル3の内部の供給孔9から三日月形の溝8を経てバレル3の内周面の供給用周溝7に入り、さらに供給位置付近に滞留することなく流動し、供給用周溝7の全周に行き渡る。
すなわち、本例の燃料噴射ポンプによれば、排出経路25が供給用周溝7に連通している位置と、供給孔9が供給用周溝7に連通している位置とが、供給用周溝7に関して互いに反対側とされているため、供給孔9から供給用周溝7内に供給された潤滑油LOは、供給用周溝7の全周を巡って反対側の排出経路25から出て行くので、供給用周溝7内で淀むことがなく確実に流通・移動する。
このため、バレル3内の特定の位置に滞留している潤滑油LOが、加熱された燃料油FOによって高温化したバレル3等の部材からの熱を受けて、当該位置で変質するおそれは少なく、供給用周溝7内で潤滑油LO乃至燃料油FOが炭化する不都合は発生しにくくなる。
また、燃料油FOよりも温度が低い潤滑油LOが供給用周溝7の全周を巡るので、バレル3の冷却が一層促進され、潤滑油LO乃至燃料油FOの炭化の防止が一層確実になる。
潤滑油LOは、この供給用周溝7から下方のクリアランスを通過して、一部はバレル3の下端面の隙間から排出される。また一部は、供給用周溝7より上方のクリアランスを通過し、バレル3の内周面に形成された排出用周溝11に達し、バレル3に形成された排出孔12を通過してケーシング1の排出孔13から排出される。なお燃料油FOの一部もプランジャ4の上部のクリアランスを介して排出用周溝11に達し、潤滑油LOと同じ経路で排出される。
また、本例の燃料噴射ポンプによれば、貫通孔の内径が様々である複数種類の流量制御素子26を用意しておき、使用される燃料油FOの粘度によって変わる燃料油FOの加熱温度に対応して、この中から必要に応じて選択して潤滑油LOの排出経路25に取り付け、冷却性能を調整することができる。例えば、相対的に低質な燃料油FOを使用する場合には、燃料油FOの加熱温度は相対的に高くなり、潤滑油LOに期待される冷却性能も高くなるので、その場合には、貫通孔の内径がより大きい流量制御素子26を選択して潤滑油LOの流量をより増大させ、より高い冷却効果を得られるようにすればよい。
2.第2実施形態(図4)
第2実施形態の燃料噴射ポンプの構造及び作用を図4を参照して説明する。ここで、第1実施形態と同様の構成部分については、第1実施形態の説明における参照符号と同一の参照符号を図4に付し、第1実施形態に関する明細書及び図面の記載を援用して説明を省略するものとする。
第2実施形態の燃料噴射ポンプの構造及び作用を図4を参照して説明する。ここで、第1実施形態と同様の構成部分については、第1実施形態の説明における参照符号と同一の参照符号を図4に付し、第1実施形態に関する明細書及び図面の記載を援用して説明を省略するものとする。
本例の燃料噴射ポンプは、バレル3の内周面に、前述した供給用周溝7が所定間隔をおいて2つ形成されている。2つの供給用周溝7は、バレル3の周壁内に形成された共通の供給孔9によって連通しており、またバレル3の周壁内に形成された共通の排出経路25によって連通している。供給孔9と排出経路25は、それぞれ三日月形の溝8,8を介して各供給用周溝7,7と連通している。
本例によれば、潤滑油LOの流量をより多量に設定することができ、潤滑油LOの滞留による黒色炭化物の生成がより効果的に抑制され、また2つの供給用周溝7,7によって潤滑油LOとバレル3との接触面積が増えるため、燃料噴射ポンプに対する冷却効果もより高くなる。
3.第3実施形態(図5)
第3実施形態の燃料噴射ポンプの構造及び作用を図5を参照して説明する。ここで、第1実施形態と同様の構成部分については、第1実施形態の説明における参照符号と同一の参照符号を図5に付し、第1実施形態に関する明細書及び図面の記載を援用して説明を省略するものとする。
第3実施形態の燃料噴射ポンプの構造及び作用を図5を参照して説明する。ここで、第1実施形態と同様の構成部分については、第1実施形態の説明における参照符号と同一の参照符号を図5に付し、第1実施形態に関する明細書及び図面の記載を援用して説明を省略するものとする。
第1実施形態では、前記供給用周溝7に連通する前記排出経路25は軸方向に形成されてバレル3の下端面に開口していたが、本例の燃料噴射ポンプでは、前記供給用周溝7内に連通する排出経路30が、プランジャ4が往復移動する方向と直交するバレル3の半径方向に沿って形成されており、バレル3の外周面に開放されている。
本例によっても、第1実施形態と同様の効果が得られるが、さらにバレル3の周壁に形成する排出経路30の寸法が短くて済み、第1実施形態に比べて少ないコストで加工が行なえるという効果がある。
以上説明したように、本発明の各実施形態の燃料噴射ポンプによれば、従来高温度に加熱することが必要であり、そのために潤滑油等が黒色炭化物化してしまうために使用することが困難であった低質燃料油を使用可能とすることができる。従って開発途上国など燃料油の品質が先進国程良質でない地域の燃料油、或いは従来は使用困難としてエンジン用燃料油としては使用されなかった燃料油の使用が可能となり、ひいては世界的な燃料油の逼迫状況の緩和に大きく貢献することができる。
このように本発明の対象として有効な重油としては、例えばISOの燃料油基準におけるRMx380以上の動粘度の重油、又はCIMACのx380以上の動粘度の重油が該当する。このような重油であると、外気温にもよるが、通常120〜150℃程度に加熱しないとディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプで使用することができないが、このような高温に加熱した重油を供給すると従来のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプでは前述したように黒色炭化物による問題が発生する場合があった。しかしながら、本発明によればこのような問題は起こらない。
1…ケーシング
2…摺動孔
3…バレル
4…プランジャ
6…ケーシングに設けられた潤滑油の供給孔
7…供給用周溝
9…バレルに設けられた潤滑油の供給孔
12…バレルに設けられた潤滑油の排出孔
13…ケーシングに設けられた潤滑油の排出孔
25,30…排出経路
26…流量制御素子
2…摺動孔
3…バレル
4…プランジャ
6…ケーシングに設けられた潤滑油の供給孔
7…供給用周溝
9…バレルに設けられた潤滑油の供給孔
12…バレルに設けられた潤滑油の排出孔
13…ケーシングに設けられた潤滑油の排出孔
25,30…排出経路
26…流量制御素子
Claims (5)
- 燃料ポートから摺動孔の内部に燃料が供給される円筒状のバレルと、前記バレルの前記摺動孔内で往復移動可能であり上昇時に前記摺動孔内の燃料を加圧して前記バレルの外に送り出す円柱状のプランジャとを有し、
前記バレルには、潤滑油の供給孔と、前記摺動孔の内周面に形成されて前記供給孔が連通する供給用周溝とが設けられ、前記供給用周溝に供給された潤滑油を前記摺動孔の内周面と前記プランジャの外周面との間に供給するディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプにおいて、
前記供給用周溝内にある潤滑油を前記バレルの外に排出するための排出経路を前記供給用周溝に連通させて前記バレルに形成したことを特徴とするディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ。 - 前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と平行な前記バレルの軸方向に沿って形成され、前記バレルの下端面に開放されたことを特徴とする請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ。
- 前記排出経路は、前記プランジャが往復移動する方向と直交する前記バレルの半径方向に沿って形成され、前記バレルの外周面に開放されたことを特徴とする請求項1記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ。
- 前記排出経路が前記供給用周溝に連通している位置と、前記供給孔が前記供給用周溝に連通している位置が、前記供給用周溝に関して互いに反対側であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ。
- 前記排出経路から排出される潤滑油の流量を所定の流量に設定するために所定の内径の貫通孔が形成された流量制御素子を、前記排出経路に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項4記載のディーゼルエンジン用燃料噴射ポンプ。
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- 2009-04-15 JP JP2009099107A patent/JP2010249006A/ja active Pending
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