JP2010236080A - 金イオン吸着剤と金イオン吸着方法並びに金の回収剤と金の回収方法 - Google Patents

金イオン吸着剤と金イオン吸着方法並びに金の回収剤と金の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】廃棄された電気・電子部品等から金を低コストで効率的に回収することができ、しかも環境に配慮した金イオン吸着剤と金イオン吸着方法並びに金の回収剤と金の回収方法を提供する。
【解決手段】杉を原料とする木材チップからなることとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、金イオン吸着剤と金イオン吸着方法並びに金の回収剤と金の回収方法に関するものである。
金を含む廃製品などは、物理的な分別や粉砕過程を経て、王水、塩酸、硝酸、シアンなどの溶液に溶解される。この溶解液から金を回収するため、現在、電解還元方法、イオン交換樹脂、活性炭やリグニン誘導体などによる吸着法、溶媒抽出法などが利用されている。しかし、電解還元法は電力の使用が不可欠である上、希薄溶液では電界効率が低く、エネルギーロスが大きい。また、イオン交換樹脂による吸着法は、イオン交換樹脂と金が強固に吸着しているため、脱着が困難あるいは多量の溶離液を必要とする他、樹脂が高価なため処理費が高くなる。活性炭による吸着法では、吸着された金の溶離が困難であることから、活性炭を焼却して金を回収する必要があり、多量の二酸化炭素を発生させる原因となる(例えば、非特許文献1参照)。リグニン誘導体による吸着法(例えば、特許文献1参照)は、杉等の木粉からリグニンを抽出して得られるリグニン誘導体を用いるものであるが、リグニン抽出工程において多量のトルエンや濃硫酸が必要になるだけなく廃液処理の問題もあり、コストアップや環境保全の問題がある。また、溶媒抽出法においても、劇物トルエン等を使用するため廃液処理が問題となり、リグニン誘導体による吸着法と同様、コストアップや環境保全の問題がある。
このように、従来は、電力の使用や樹脂製造・廃棄など二酸化炭素排出増加を招くプロセスが多く、また、廃液処理に係る環境負荷が大きく、地球温暖化防止や持続的社会構築に取り組む我が国にとって大きな課題である。
特開2005−305329号公報 芝田隼次、奥田晃彦 「貴金属のリサイクル技術」資源と素材 118,1−8(2002)
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、廃棄された電気・電子部品等から金を低コストで効率的に回収することができ、しかも環境に配慮した金イオン吸着剤と金イオン吸着方法並びに金の回収剤と金の回収方法を提供することを課題としている。
本発明は以下のことを特徴としている。
第1には、本発明の金イオン吸着剤は、杉を原料とする木材チップからなることを特徴とする。
第2には、上記第1の発明において、粒径1mm以下の木材チップであることを特徴とする。
第3には、上記第1の発明において、粒径800μm以下の木材チップであることを特徴とする。
第4には、上記第1の発明において、粒径150μm以下の木材チップであることを特徴とする。
第5には、本発明の金イオン吸着方法は、上記第1から第4のいずれかの金イオン吸着剤を金イオン含有溶液に添加することにより金イオンを前記金イオン吸着剤に吸着させることを特徴とする。
第6には、本発明の金の回収剤は、金イオン含有溶液に添加して金を析出させる金の回収剤であって、前記回収剤が、杉を原料とする木材チップであるか、または、前記木材チップの溶出成分を含む水溶液であることを特徴とする。
第7には、上記第6の発明において、粒径1mm以下の木材チップであることを特徴とする。
第8には、上記第6の発明において、粒径800μm以下の木材チップであることを特徴とする。
第9には、上記第6の発明において、粒径150μm以下の木材チップであることを特徴とする。
第10には、上記第6の発明において、木材チップの溶出成分を含む水溶液は放射線を照射したものであることを特徴とする。
第11には、本発明の金の回収方法は、上記第6から第10のいずれかの金の回収剤を金イオン含有溶液に添加することにより金を析出させ、析出した金を回収することを特徴とする。
本発明によれば、杉を利用して、産業界から廃棄された電気・電子部品等から微量の金を低コストで効率的にしかも選択的に、吸着ないし還元して分離、回収することができる。原料として用いる杉は、日本の森林等で容易に入手できる他、自然由来であることから安全性が高く、また杉を吸着剤や回収剤とするまでの前処理が物理的工程のみであることから、廃薬品等は一切発生せず、さらに吸着ないし還元処理中は電力等のエネルギーがほとんど不要である。すなわち、杉を利用した本発明は、吸着剤や回収剤の製造、使用、廃棄のすべての工程においてほぼ完全なカーボンニュートラルな分離回収技術である。これに加えて、金その他の金属(白金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、すず等)を溶解する溶液に前処理した杉を投入するだけで金イオンを吸着ないし還元できることから、金の分離回収に際して従来法に比べて特殊な技能や経験が不要であり、誰でも安全かつ容易に取り扱うことができる。
また、本発明は水に溶出した杉細片成分を利用して金イオンを還元し金金属を析出させることが可能であり、さらに放射線を照射した前記杉細片成分を利用することにより、単分散化したナノメートルサイズの金金属粒子を得ることも可能である。
金イオン吸着剤および金の回収剤の製造方法と金の分離回収プロセスの概略図である。 杉細片に対する金(III)吸着量の時間変化を示すグラフである。 各種金属イオンに対する杉細片の吸着率を示すグラフである。 杉細片の粒径と金の吸着率の関係を示すグラフである。 粒径180−300μmの杉細片の吸着率を示すグラフである。 実施例5において紫色の溶液を24時間静置した後、析出した金を透過型電子顕微鏡で観察した写真である。 実施例5において紫色の溶液を1週間静置した後、析出した金を透過型電子顕微鏡で観察した写真である。 実施例5において杉細片の溶出成分を確認した結果である。(a)はγ線照射なしの溶液から得られたクロマトグラムであり、(b)は40kGyのγ線照射した溶液から得られたクロマトグラムである。
本発明の金イオン吸着剤および金の回収剤は、杉を原料とする木材チップからなる。本発明における「杉」は、スギ科スギ属に属するスギである。上記特許文献1の方法は、杉を原料として用いることが開示されているが、この方法はフェノールや濃硫酸等を用いて杉等の木粉に所定の処理を施すことによって得たリグニン誘導体を吸着剤としているのに対し、本発明は、杉の木材チップ、つまり、杉材それ自体に特別な処理を施すことなしに吸着剤ないし回収剤として用いている点で異なる。本発明は、杉材を物理的に粉砕して得られた杉細片等の木材チップを、金その他の金属(例えば、白金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、すず等)の溶解する王水やシアン等の溶液に投入するだけで、金イオンのみを選択的に吸着、還元し、溶液中の他の金属イオン等から分離回収することができる。すなわち、特許文献1の方法にみられる、廃液が発生するようなリグニン抽出工程(化学的前処理工程)を経ずに吸着剤ないし回収剤を製造することができるのである。さらに本発明の吸着剤および回収剤の使用においては、吸着後の金の一部をエネルギーの投入なしに還元して金属の金として析出することができるなど従来技術には見られない特筆すべき能力を有する。
本発明者は、以上のような金イオンの吸着や還元作用は杉の形態が大きく影響し、特に杉の木材チップ(粉砕品)が有効であることを見出した。このような金イオンの吸着や還元作用は杉の木材チップの表面積をも影響していると考えられるが、本発明者は粒径に着目し、なかでも粒径1mm以下の杉の微粉が金イオン含有溶液(金溶解溶液)中の金イオンを効果的に吸着し、還元させることを見出した。粒径が1mmを超えると、金イオンの吸着能や還元作用の程度が小さくなり好ましくない。杉の木材チップの粒径の下限値は特に設定されないが、実際上、杉の微粉化(細片化)には限界があり、また、ある程度小さくすれば吸着や還元の効果はほとんど向上しないことから、例えば、100μmとすることができる。上記効果を奏するための好適な粒径の上限値は800μmであり、なかでも150μmが好ましい。本発明では、杉を所定の大きさにするために、例えば、粉砕機等を用いて杉を細片化して木材チップ(細片)とし、ふるい(JIS Z8801)で選別している。なお、木材チップの形状は特に限定されるものではなく、粒子状であってもよい。
本発明が「杉」に限定している理由は、容易に入手できる上、杉から木製品の製造過程で大量に発生する杉おがくずを利用でき、環境保全に有効であること、杉以外の木材の効果が不明であること等による。
以下、金イオン吸着剤および金の回収剤の製造方法と金の分離回収プロセスについて、図1を参照しながら説明する。
図1(a)は、金イオン吸着剤と金の回収剤の製造方法を模式的に示している。原料として、伐採した杉から木製品への製材・加工の過程において発生した杉おがくずを用い、これを粉砕機等で所定の大きさ、例えば、粒径1mm以下に細片化して杉細片を得る。
図1(b)は、図1(a)で得た杉細片の使用した金の分離回収プロセスを示している。まず、金を含む電子・電気機器等の廃製品(半導体や回路基板等)を粉砕し、酸またはアルカリ溶液に溶解する。例えば、王水、塩酸、硝酸、硫酸、シアン等の溶液に溶解する。半導体や回路基板等の廃製品は、一般的には金以外にも各種の金属、例えば、白金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、すず等を含んでいるため、前記溶液中には、金以外にも各種の金属がイオンとして溶解している。溶液中の金イオンの濃度は、例えば、1M以下になるように調整されることが考慮されるが、これに限定されるものではない。
次にこの溶液に杉細片を投入する。溶液温度は、その温度が高いほど金イオンの吸着量や還元量が増えて所要時間も短縮できるが、過剰な加温はコストがかかるため、最適温度は5℃〜60℃である。また、処理中、振とうすることによって所要時間を短縮することができる。
本実施形態では、溶液に杉細片を投入後、溶液を30℃に加温して1時間〜2日程度振とうすることが考慮されるが、これに限定されるものではなく、1週間程度振とうしてもよい。溶液のpHが低いほど吸着、還元が進むが、廃棄される電子・電気機器から貴金属等を回収する処理条件は取扱業者により異なるので、7未満もしくは10を超えるpHが処理に適切なpH範囲である。
所定時間振とうすると金イオンが選択的に杉細片に付着し、金が溶液中に析出する。振とう終了後、金イオンが付着した杉細片と析出した金をフィルター等を用いて固液分離により溶液から取り出して回収する。金イオンが付着した杉細片からの金の回収は、金イオンが付着した杉細片を焼却処理して杉細片を焼却することにより金を回収する。この焼却処理においては、その焼却熱を前工程である溶液の加温に再利用することができる。固液分離した分離液中には杉細片に吸着もしくは還元されていない金イオンが残存している場合もあり、この残存する金イオンを回収するために、再度、杉細片を分離液に投入して金イオンを杉細片に吸着ないし還元して金を析出させるようにしてもよいし、杉細片を投入せずに分離液を所定時間、例えば、1日〜1週間程度静置するようにしてもよい。分離液を静置すると分離液中の金イオンが還元して析出する。これは前記溶液に投入した杉細片の成分が溶出して分離液中に含むこととなり、この成分が分離液中の金イオンの還元に作用していると考えられる。
本実施形態は、上記したように、杉細片を金イオン含有溶液に投入して杉細片それ自体もしくは杉細片の溶出成分により金イオンを還元して金金属を析出させているが、杉細片の溶出成分に放射線を照射することで、より粒径の小さな粒子、例えば、1nm〜200nmの範囲の金ナノ粒子を単分散化した状態で得ることも可能である。具体的には次の手順で金ナノ粒子を得る。
まず、杉細片を水に投入し攪拌して杉細片の成分を水に溶出させた後、γ線、電子線、エックス線等の放射線を線量5〜200kGyの範囲、好ましくは5〜100kGyの範囲、より好ましくは10〜40kGyの範囲で照射する。次いでフィルター等を用いて固液分離により杉細片を取り除き、ろ液を金イオン含有溶液に投入することにより、金イオン含有溶液中にナノメートルサイズの金金属を析出させることができる。具体的には、粒径が1nm〜200nmの範囲のナノ粒子であるが、なかでも5nm〜100nmの範囲、特に10nm〜30nmの範囲のナノ粒子を析出させることができる。金イオン含有溶液中に析出した金金属は1週間静置しても凝集せずに、単分散化している状態が観察される。凝集した状態では金ナノ粒子の優れた性質が発揮できない場合があるが、本実施形態では単分散な粒子(一次粒子)の状態で金ナノ粒子が得られるので、その金ナノ粒子のもつ特性を安定化させることができ、さまざまな分野での応用が期待される。
なお、上記手順では、杉細片とその溶出成分を含む水に放射線照射した後、固液分離し、ろ液を金イオン含有溶液に添加しているが、固液分離せずに、放射線照射後の、杉細片とその抄出成分を含む水を金イオン含有溶液に添加してもよい。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
<実施例1>
杉を粉砕機にて粒径1mm以下の大きさに細片化した杉細片を20mg準備した。
次いで、杉細片20mgを260mg/Lの金(III)イオンを含む0.5M塩酸水溶液5mLに投入して、杉細片の浸漬時間に対する金イオンの吸着量変化を調べた。その結果を図2に示す。図2の縦軸は吸着量(mol/kg)であり、横軸は杉細片の浸漬時間(h)である。この吸着量は、塩酸水溶液中の金イオン濃度を原子吸光光度計で測定することにより算出した。
図2の結果から、時間と共に吸着量が増え、およそ20時間後に一旦吸着平衡に達したことがわかる。しかし、その後も測定を継続すると、時間と共に吸着量が急激に増加していることがグラフから読み取れる。視覚的にはこの時間帯から、溶液中に金属の金が析出していることが観察される。すなわち、杉細片に吸着していた金イオンが還元されて金属の金として溶液中に析出したため、吸着平衡が崩れ、これにより溶液中に存在する金イオンが新たに杉細片に吸着され、見かけ上吸着量が増加したことが明らかになった。
<実施例2>
杉を粉砕機にて粒径1mm以下の大きさに細片化した杉細片を20mg準備した。
次いで、各0.5mMのAu(III)、Pt(IV)、Pd(II)、Sn(IV)、Fe(III)、Co(II)、Zn(II)、Ni(II)、Cu(II)を含む塩酸水溶液5mLと20mg杉細片をバイアル瓶に入れ、30℃で30時間振とう後、塩酸水溶液中の各種金属イオン濃度を原子吸光光度計で測定することにより、各種金属イオンの杉細片への吸着率を求めた。その結果を図3に示す。図3の縦軸は吸着率(%)であり、横軸は塩酸濃度(mol/L)である。この吸着率は、吸着後還元されて金属の金として溶液中に析出した量も含まれる。
図3の結果から、金イオンは塩酸濃度が0.1〜6.0(mol/L)の範囲において、全量が杉細片に吸着ないし還元されて析出したことがわかる。また、塩酸濃度3.0(mol/L)において白金が25%程度、すずが15%程度吸着されるが、酸濃度をコントロールすることにより、金イオンをこれらの金属イオンから容易に分離することができる。
<実施例3>
粉砕機で細片化した杉細片をふるい分けし、各分画から採取した20mg杉細片を、初期濃度400mg/Lまたは200mg/Lの金水溶液(塩酸濃度1.0M)5mLの入ったバイアル瓶に入れ、30℃で4時間、8時間、12時間、24時間、48時間振とう後(400mg/Lの金水溶液の振とう時間については8時間、24時間、48時間のみ)、フィルターで金イオンの吸着した杉細片及び析出した金を分離し、溶液中の金(III)イオン濃度を原子吸光光度計で測定して、金イオンの吸着率(還元により析出した金の量を含む)を調べた。
その結果を図4に示す。図4の縦軸は吸着率(%)であり、横軸は杉細片の粒径である。
図4の結果より、粒径が小さく振とう時間が長いほど、また金の初期濃度が低いほど吸着率が増えることがわかる。初期濃度200mg/Lの金水溶液において48時間振とう後の粒径800μm以下の吸着率は60%を超え、粒径150μm以下では吸着率がほぼ100%になるなど、優れた吸着能を有することが確認できた。また初期濃度400mg/Lの金水溶液においても48時間振とう後の粒径150μm以下の吸着率は50%を超えており、優れた吸着能を有することが確認できた。
杉細片の1g重量あたりの最大吸着/還元量を調べたところ、塩酸濃度0.5及び1.0Mにおいて、それぞれ122.2mg、98.5mgであった。この値は、イオン交換樹脂またはキレート樹脂1gあたりの最大吸着量100〜200mgや活性炭1gあたりの最大吸着量2000mgと比較して最大で1/16程度であるが、金に対する優れた吸着/還元選択性を有すること、杉細片の原料が自然由来であること、焼却処理しても二酸化炭素排出量が増加しないこと、約1,000円/kg程度である樹脂に比べて非常に低コストであること、取り扱いが容易であること、吸着のみならず金を析出させることができること等を考慮すれば、例えば、杉細片の使用量を5倍にしても何ら問題はなく、非常にメリットが多い技術である。
<実施例4>
粉砕機で細片化し、ふるい分けした粒径180−300μmの杉細片20mgを、初期濃度400mg/Lの金水溶液(塩酸濃度1.0M)5mLの入った各バイアル瓶に入れ、30℃で2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間振とう後、孔径7μmのフィルターで各溶液から金イオンの吸着した杉細片及び析出した金を分離し、溶液中の金(III)イオン濃度を原子吸光光度計で測定して、金イオンの吸着率(還元により析出した金の量を含む)を調べた。
その結果を図5(a)に示す。図5(a)の縦軸は吸着率(%)であり、横軸は攪拌時間(h)である。
図5(a)の結果より、24時間攪拌までは吸着率は15−25%で推移したが、48時間後になると急激に吸着率が高くなり、24時間後からの24時間の間に金の還元が急激に進んでいることが分かる。この現象は、24時間後以降になって初めて、溶液中金属金の析出が肉眼で観察されることと合致する。また、この結果は、図2において約40時間から吸着量が急激の増加している結果とも一致している。
次に、杉細片および析出した金をフィルターで分離した各溶液を、攪拌時間を含め96時間室温及び30℃で静置した後、再びフィルターでこして溶液中の金濃度を測定し、金イオンの吸着率(最初の攪拌により吸着/還元した吸着量を含む。攪拌、初回フィルター処理後、溶液中に杉細片は存在しないので、攪拌、初回フィルター処理後の吸着率増加はすべて還元による)を調べた。その結果を図5(b)に示す。図5(b)の縦軸は吸着率(%)であり、横軸は攪拌時間を含めた経過時間(h)である。
図5(b)の結果より、杉細片が存在しなくても金イオンの還元が起こることがわかる。例えば、24時間攪拌後25%程度であった吸着率は静置するだけで96時間後には室温で約60%、30℃で約65%となった。この結果は、金を含む酸水溶液に杉細片を投入すれば、杉細片自体による吸着/還元のみならず、溶出した杉細片成分でも金の還元が起こることを示している。
<実施例5>
杉細片による金イオンの還元により金が金属として生成することを利用して、より粒径の小さいナノ粒子の生成を試みた。
実験は、バイアル瓶に粒径300μm以下の杉細片0.2gと5mLの純水に入れ攪拌した後、γ線照射10kGyを照射した。次いで、フィルターで杉細片を分離し、残存する溶液0.9mLを、5mMのAu(III)を含む溶液0.1mLに入れて攪拌したところ、1分後には溶液が紫色に変化した。これは析出した金ナノ粒子の光吸収により溶液が紫色に観察されるものである。この紫色の溶液を24時間及び1週間静置したのち、析出した金を透過型電子顕微鏡で観察した。その結果を図6(24時間静置)、図7(1週間静置)に示す。図6に示すように、24時間静置後の溶液中に粒径20nm程度の金金属が生成していることが分かった。また、図7に示すように、静置1週間経過しても金金属の粒径に変化は見られず、時間経過とともに粒子が凝集することはなかった。
さらに、同様の実験をγ線照射なしで実施したところ、一旦溶液は紫色に変化するものの、時間経過とともに溶液は褐色となり、粒子が凝集して大きくなっていることが肉眼で観察された。
次に、純粋中に溶け出したどのような成分が金イオンのナノ粒子化に関与しているのかを明らかにするため、1gの杉細片を10mLの純水に入れ数時間振とう後、フィルターで杉細片を分離した。2本のバイアル瓶に濾過後の溶液を2mLずつ入れ、そのうち1本に40kGyのγ線照射を行った。次に、照射なしも含め、各バイアル瓶に1mLのジクロロメタンを入れて振とうして、2層が分離するまで静置し、ジクロロメタン層をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)で解析した。
その結果を図8に示す。(a)は照射なし、(b)は40kGyのγ線照射の溶液から得られたクロマトグラムである。いずれも場合も、溶出時間28−43分の範囲でピークが確認された。
照射なしのクロマトグラムの定性解析を行った結果、
など、エーテル基(−O−)やケトン基(−C(O)−)で修飾された芳香族化合物及び脂肪族化合物が溶液中に含まれていることが分かった。
これに対して、照射された溶液からは40kGyの場合、
などの芳香族化合物に水酸化基、エーテル基、ケトン基が修飾した化合物の他に、プロピオン酸やペンタデカン酸、ヘキサデカン酸及び同修飾化合物、不飽和酸等が検出された。

Claims (11)

  1. 杉を原料とする木材チップからなることを特徴とする金イオン吸着剤。
  2. 粒径1mm以下の木材チップであることを特徴とする請求項1に記載の金イオン吸着剤。
  3. 粒径800μm以下の木材チップであることを特徴とする請求項1に記載の金イオン吸着剤。
  4. 粒径150μm以下の木材チップであることを特徴とする請求項1に記載の金イオン吸着剤。
  5. 請求項1から4のいずれかの金イオン吸着剤を金イオン含有溶液に添加することにより金イオンを前記金イオン吸着剤に吸着させることを特徴とする金イオン吸着方法。
  6. 金イオン含有溶液に添加して金を析出させる金の回収剤であって、前記回収剤が、杉を原料とする木材チップであるか、または、前記木材チップの溶出成分であることを特徴とする金の回収剤。
  7. 粒径1mm以下の木材チップであることを特徴とする請求項6に記載の金の回収剤。
  8. 粒径800μm以下の木材チップであることを特徴とする請求項6に記載の金の回収剤。
  9. 粒径150μm以下の木材チップであることを特徴とする請求項6に記載の金の回収剤。
  10. 木材チップの溶出成分は放射線を照射したものであることを特徴とする請求項6に記載の金の回収剤。
  11. 請求項6から10のいずれかの金の回収剤を金イオン含有溶液に添加することにより金を析出させ、析出した金を回収することを特徴とする金の回収方法。
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