JP2010233313A - 巻線方法および巻線機 - Google Patents
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Abstract
【課題】、電機子コアの電磁鋼鈑の積層厚さのバラツキや、電機子コアに巻装するワイヤの延びに影響されることなく、ワイヤの絶縁被覆を剥離する部分を、常に巻終わり部の所定の位置に形成できる巻線方法を提供する。
【解決手段】電機子コア22の積層厚さを変数とし、電機子コア22に所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する演算式をあらかじめ用意する。巻線される電機子コア22について、前記演算式を用いて予定の巻数巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する。算出されたワイヤ24の巻装長さを参照し、測定されたワイヤ24の長さに基づいてワイヤ24の絶縁被覆を剥離する位置を決定する。
【選択図】 図1
【解決手段】電機子コア22の積層厚さを変数とし、電機子コア22に所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する演算式をあらかじめ用意する。巻線される電機子コア22について、前記演算式を用いて予定の巻数巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する。算出されたワイヤ24の巻装長さを参照し、測定されたワイヤ24の長さに基づいてワイヤ24の絶縁被覆を剥離する位置を決定する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、外表面が絶縁被覆によって覆われたワイヤを電機子の鉄心に巻装してコイルを形成する巻線方法、およびその巻線方法を採用した巻線機に関する。
ブラシレスモータは、省エネルギー、静音、長寿命といった優れた特性を備えており、家電製品やOA機器を含めて多くの分野で使用されている。このブラシレスモータのうち中型以上のモータとして、複数の電機子を円弧状に並べて固定子(ステータ)を形成し、この固定子の内側にエアギャップを介してロータを配置したものがある。
上述した複数の電機子を円弧状に並べて固定子を形成するブラシレスモータでは、T字型の電磁鋼板が複数枚積層された略矩形状の電機子コアにワイヤを巻装して電機子を作製している。そして、複数の電機子を円弧状に配列すると共に、それぞれの電機子に巻装されたワイヤの巻始め部と巻終り部の絶縁被膜を剥離し、隣接する電機子のワイヤの剥離部分を合わせてロウ付けにより接合して固定子を形成している。
このような構造のブラシレスモータでは、それぞれの電機子のワイヤの巻始め部および巻終り部に形成された剥離部分の位置がずれると、ワイヤの端部を切断する際に剥離部分が短くなったり剥離されない部分が生じ、他の電機子の巻始め部および巻終わり部と電気的に接合できない場合が生じる。これを防止するため、常にワイヤの巻始め部および巻終り部の所定の位置に剥離部分を形成する必要がある。
ワイヤの巻終り部の所定の位置に剥離部分を形成する方法として、特許文献1に記載された方法がある。すなわち特許文献1では、巻線の途中で、形成されたコイルの寸法を測定し、測定結果に応じて剥離手段または巻枠を移動させることにより、剥離部分が正しい位置に形成されるように調整している。
特許文献1に記載された剥離位置の調整方法は、偏平な箔線を三角形状の巻枠に巻回して作製するコイルについては有効であるが、巻枠の大きさにバラツキがある場合やワイヤの延びが生じる場合は考慮されていない。
上述したブラシレスモータのように電機子コアに細いワイヤを巻装してコイルを作製するものでは、電機子コアの積層厚さにバラツキがあり、またテンシュナによってワイヤに過大な力が加えられた場合にワイヤが延びる場合がある。従って、このような電磁鋼板が複数枚積層された電機子コアに細いワイヤを巻装して電機子を作製する場合には、特許文献1に記載の剥離位置の調整方法は十分な効果を発揮できない。
この発明は上述した従来の問題点を解消するもので、電機子コアの積層厚さのバラツキやワイヤの延びに影響されることなく、常にワイヤの巻終わり部の所定の位置に剥離部分を形成できる巻線方法および巻線機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためにこの発明にかかる巻線方法は、外表面が絶縁被覆によって覆われた導電性のワイヤを電磁鋼板が複数枚積層された電機子コアに巻装してコイルを形成する巻線方法であって、電機子コアの積層厚さと、電機子コアに所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの長さとの関係を表す演算式もしくはグラフを用意するステップと、巻線される電機子コアについて積層厚さを測定するステップと、測定された積層厚さに基づき、演算式もしくはグラフを用いて予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さを算出するステップと、電機子コアに巻回されるワイヤの長さを測定するステップと、算出されたワイヤの長さを参照し、測定されたワイヤの長さに基づいてワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定するステップとを有することを特徴とする。
またこの発明にかかる巻線機は、外表面が絶縁被覆によって覆われたワイヤを電磁鋼板が複数枚積層された電機子コアに巻装してコイルを形成する巻線機であって、電機子コアにワイヤを巻回する巻線手段と、電機子コアの積層厚さを測定する積層厚測定手段と、電機子コアに巻回されるワイヤの長さを測定するワイヤ長測定手段と、ワイヤの絶縁被覆を剥離する剥離手段と、積層厚測定手段およびワイヤ長測定手段の出力信号に基づいて、巻線手段および剥離手段の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、積層厚測定手段で測定された積層厚さに基づき、あらかじめ用意された演算式もしくはグラフを用いて算出された、予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さを参照し、ワイヤ長測定手段によって測定されたワイヤの長さに基づいてワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定することを特徴とする。
この発明にかかる巻線方法および巻線機では、演算式もしくはグラフを用いて算出した、電機子コアに予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さを参照し、かつ巻線中の電機子コアについてワイヤの長さを測定し、その結果に基づいて絶縁被膜を剥離する位置を決定している。結果として、電機子コアの積層厚さにバラツキがある場合や、テンションによりワイヤが延びた場合でも、ワイヤの剥離部分を、常に巻終わり部の同じ位置に形成することができる。
実施の形態1.
この発明にかかる巻線方法および巻線機について説明する前に、複数の電機子を円弧状に並べて形成したブラシレスモータの固定子と、この発明の巻線方法の対象となる電機子について、簡単に構造を説明する。図5は、複数の電機子を円弧状に並べて形成したブラシレスモータの固定子を軸方向から見た図である。図6(a)および(b)は、固定子を構成する電機子の平面図および正面図である。
この発明にかかる巻線方法および巻線機について説明する前に、複数の電機子を円弧状に並べて形成したブラシレスモータの固定子と、この発明の巻線方法の対象となる電機子について、簡単に構造を説明する。図5は、複数の電機子を円弧状に並べて形成したブラシレスモータの固定子を軸方向から見た図である。図6(a)および(b)は、固定子を構成する電機子の平面図および正面図である。
図5に示すように、固定子20は9個の電機子21a〜21iを円筒状にならべて形成されている。図6にそのうちの一つの電機子21aの構成を示す。電機子21aは、T字型の電磁鋼板が複数枚積層された略矩形状の電機子コア22に、積層方向の上下からインシュレータ23が挿入され、さらにその上から絶縁被覆で覆われた導電性のワイヤ(具体的には銅線)24が巻装されたものである。ワイヤ24の巻始め部と巻終わり部の所定の位置に、絶縁被膜を剥離した部分25aが設けられている。
そして図5に示すように、例えば電機子21aに巻装されたワイヤ24の巻終わり部は、自身のインシュレータ23の角部26aに巻きつけられてから、隣の電機子21bのインシュレータ23の角部26bに巻きつられ、さらにその隣の電機子21cのインシュレータ23の角部26cに巻きつけられる。また、電機子21bに巻装されたワイヤ24の巻終わり部は、自身のインシュレータ23の角部26bに巻きつけられてから隣の電機子21cのインシュレータ23の角部26cに巻きつけられる。そして、電機子21cに巻装されたワイヤ24の巻終わり部は、自身のインシュレータ23の角部26cに巻きつけられる。そして3つの電機子21a、21bおよび21cの巻終わり部のワイヤ24の剥離部分25a、25bおよび25cの位置を合わせ、図示しない端子を取付けてロウ付けにより接合する。
図5には示していないが、ワイヤの巻始め部や他の電機子のワイヤの巻始め部、巻終わり部も、上述と同様の方法でワイヤ24の剥離部分の位置を合わせ、端子およびリード線を取付けてロウ付けにより接合している。なお、以降の説明では、電機子21a〜21iを総称して電機子21と呼ぶ。また剥離部分25a〜25cを総称して剥離部分25と呼ぶ。
次に、この発明にかかる巻線方法を採用した巻線機について説明する。図1に、この発明の実施の形態にかかる巻線機の全体構成を示す。巻線機1は、架台2、ワイヤボビン3、テンショナ4、剥離ユニット5、ワイヤ引き出しユニット6、スピンドル部7、カットユニット8、投入搬送装置9、排出搬送装置10およびコントローラ11を備えている。
巻線機1の主要部であるテンショナ4、剥離ユニット5、スピンドル部7およびカットユニット8は架台2上に載置され、また架台2の外側にワイヤボビン3が設置されている。ワイヤボビン4から引き出されたワイヤ24はテンショナ4を通過し、テンショナ4によってワイヤ24に適正なテンションが付与される。
テンショナ4に隣接して剥離ユニット5が設置されており、テンショナ4でテンションが付与されたワイヤ24は剥離ユニット5を通過する。剥離ユニット5の上部にはレーザマーカ51が設置されており、このレーザマーカ51によってワイヤ24の絶縁被覆が剥離される。
剥離ユニット5の出口側にはワイヤ引き出しユニット6が配置されている。ワイヤ引き出しユニット6はプーリ61とノズル62で構成され、プーリ61で90度方向が変えられ、ノズル62を通過したワイヤ24は、スピンドル部7で電機子コア22に巻装される。
スピンドル部7は、電機子コア22を把持するチャック(図示せず)を備えている。またスピンドル部7は、後述するサーボモータ71の力がプーリを介して伝達されることによって回転し、その回転速度および回転角度は、内蔵されたエンコーダ72の出力信号により精密に制御される。スピンドル部7の近辺にはカットユニット8が配置され、スピンドル部7によって電機子コア22にワイヤ24が巻装された後、カットユニット8によってワイヤ24が切断される。
スピンドル部7を挟んで両側に投入搬送装置9と排出搬送装置10が設けられている。図示しないが、架台2の上方には、投入搬送装置9からスピンドル部7へ電機子コア22を搬送する搬送ハンドと、スピンドル部7で巻線が終了した電機子コア22を排出搬送装置10へ搬送する搬送ハンドが設置されている。
排出搬送装置10に隣接してコントローラ11が取り付けられている。コントローラ11には、後述する制御部111およびメモリ112が内蔵されており、それ以外に、運転の条件を入力する入力部113と運転の状況を表示する表示部114が設けられている。
図2は、テンショナ4の具体的な構成を示したものである。ワイヤボビン3から供給されたワイヤ24は、アイレットガイド40を通過した後、ガイドローラ41a、41b、41cおよび41dで方向が変更された後、アイレットガイド46を通過して剥離ユニット5に供給される。
ガイドローラ41aの上流側にはフェルトパッド47が設けられており、ワイヤ24は、フェルトパッド47によりクリーニングされる。
ガイドローラ41bには、図示しないカップリングを介してエンコーダ42が接続されており、ガイドローラ41bの回転数を検出する。ガイドローラ41bの回転数は、そこを通過するワイヤ24の長さに対応しているため、エンコーダ42で検出された回転数によってワイヤ24の移動量を測定することができる。エンコーダ42で検出されたガイドローラ41bの回転数のデータは、コントローラ11に入力される。
ガイドローラ41cにはプーリ43aが固着されており、このプーリ43aはタイミングベルト44を介してプーリ43bと連結されている。またプーリ43bはパウダーブレーキ45の軸に固着されており、パウダーブレーキ45によりワイヤ24に適正なテンションが与えられる。
図3は投入搬送装置9の具体的な構成を示したものである。投入搬送装置9は、電機子コア22を搬送するベルト91を備えている。このベルト91は回転軸92に移動可能に取付けられている。一方、ベース板93に支持されたモータ取付板94にモータ95が取り付けられている。ベルト91の回転軸92にはプーリ96が固着され、またモータ95の出力軸にはプーリ97が固着され、プーリ96と97はタイミングベルト98を介して連結されている。
ベルト91の下流側には電機子コア22の位置決め板99が取付けられ、またベルト91を挟んで、位置決め板99に対向する位置に測長センサ12が取付けられている。この測長センサ12は、電機子コア22の積層厚さを測定するもので、非接触のレーザ変位計でも接触式の変位計(たとえばシリンダのロッドの移動量をMR素子によって検出するもの)でもよい。測長センサ12で検出された電機子コア22の積層厚さのデータはコントローラ11に入力される。
図4に巻線機1の制御系の構成を示す。巻線機1の動作を制御するコントローラ11は、前述したように制御部111、メモリ112、入力部113および表示部114を含む。制御部111には、測長センサ12から電機子コア22の厚みのデータが入力され、テンショナ4のエンコーダ42から回転数に関するデータが入力され、スピンドル部7に内蔵されたエンコーダ72からスピンドル部7の回転数および回転角度に関するデータが入力される。
一方、制御部111は、スピンドル部7のサーボモータ71の制御信号、レーザマーカ51の制御信号、カットユニット8の制御信号、および投入搬送装置9のベルト駆動用モータ95の制御信号を出力する。
制御部111は、スピンドル部7のエンコーダ72の出力信号に基づいて、サーボモータ71の回転を制御することにより、スピンドル部7の回転速度と回転角度を調整する。なお、コントローラ11のメモリ112には、これらの制御信号を作成するのに必要なデータがあらかじめ記憶されている。
なお上述した巻線機1の構成において、スピンドル部7はこの発明の巻線手段として、測長センサ12はこの発明の積層厚測定手段として、エンコーダ24はこの発明のワイヤ長測定手段として、剥離ユニット5はこの発明の剥離手段として、コントローラ11はこの発明の制御手段としての機能をそれぞれ発揮する。
次に、前述した図1〜図4を参照して、電機子コア22の搬送から巻線までの手順を説明する。電磁鋼板が複数枚積層された電機子コア22に積層方向上下からインシュレータ23を挿入したものが投入搬送装置9のベルト91上に置かれる。
図3に示すように、制御部111の制御信号によってモータ95が回転し、電機子コア22はベルト91上を矢印で示す方向に搬送される。電機子コア22が位置決め板99と対向する位置に移動した時にモータ95の回転が停止する。この位置で測長センサ12により電機子コア22の積層厚さが測定される。測長センサ12から出力された厚さのデータはコントローラ11の制御部111に入力され、コントローラ111はこの測定値に応じた演算処理を行う。演算処理の内容については後に詳述する。
測長センサ12で積層厚さが測定された後、電機子コア22は、図示しない搬送ハンドによりスピンドル部7に搬送される。電機子コア22はスピンドル部7で把持されて巻線動作に移行する。図2に示すように、ワイヤボビン3から供給されたワイヤ24は、テンショナ4のアイレットガイド40に案内されてフェルトパッド47を通過し、ガイドローラ41a,41b,41cおよび41dに案内されながら適正なテンションが付与された状態でテンショナ4を通過し、剥離ユニット5に移送される。
図4に示すように、ワイヤ24が剥離ユニット5を通過する際、制御部111からの制御信号に基づき、レーザマーカ51によってワイヤ24の絶縁被膜が剥離されて、ワイヤ24の巻終わり部および次の電機子21のワイヤ24の巻始め部に剥離部分25が形成される。図1に示すように、剥離ユニット5を通過したワイヤ24は、プーリ61で方向を変え、ノズル62を通過して、図示しないスピンドル部7の端末クリップに把持される。
スピンドル部7に把持された電機子コア22は、サーボモータ71によってスピンドル部7が回転することによりワイヤ24が巻装される。
最後にスピンドル部7が回転し、ワイヤ24が巻終わり部の剥離部分25を残してカットユニット8により切断され、電機子21の作製が終了する。巻線後の電機子21は、図示しない搬送ハンドにより排出搬送装置10に搬送され、巻線機1から排出される。
次に、ワイヤ24の絶縁被覆を剥離する位置を決める際の処理について説明する。前述したようにワイヤ24の剥離部分25は、剥離ユニット5の上部に設けられたレーザマーカ51によって絶縁被覆を加熱して剥離することにより形成される。この剥離部分25の位置がずれていると、カットユニット8にてワイヤの端部が切断される際に、剥離部分25が短くなったり剥離されない部分が生じて、他の電機子のワイヤの巻始め部および巻終わり部との電気的な接合が行えなくなる。
その原因は、電機子コア22の積層厚さのバラツキにより、もしくはテンシュナ4によってワイヤに過大なテンションが加えられてワイヤが延びることによって、剥離部分25が当初設定した位置からずれることによる。
この発明では、以下に示す第1の処理方法により、さらには第2の処理方法によって、積層厚さのバラツキやワイヤの延びによって生じる、ワイヤの剥離部分の位置ずれを修正している。
<第1の処理方法>
あらかじめ電機子コア22の積層厚さと、電機子コア22にワイヤ24を所定の回数だけ巻回するのに必要な長さとの関係について演算式を求め、その演算式をデータ化してコントローラ11のメモリ112に記憶しておく。そして電機子コア22にワイヤを巻回する都度、電機子コア22の積層厚さを測定し、上述の演算式を用いて、予定の巻数(すなわち最終の巻数)巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する。そして、巻線を行っている電機子コア22のワイヤの長さを測定し、算出したワイヤの長さを参照してワイヤ24の剥離部分の位置を決定する。
あらかじめ電機子コア22の積層厚さと、電機子コア22にワイヤ24を所定の回数だけ巻回するのに必要な長さとの関係について演算式を求め、その演算式をデータ化してコントローラ11のメモリ112に記憶しておく。そして電機子コア22にワイヤを巻回する都度、電機子コア22の積層厚さを測定し、上述の演算式を用いて、予定の巻数(すなわち最終の巻数)巻回するのに必要なワイヤ24の長さを算出する。そして、巻線を行っている電機子コア22のワイヤの長さを測定し、算出したワイヤの長さを参照してワイヤ24の剥離部分の位置を決定する。
以下、第1の処理方法について具体的に説明する。まず電機子コア22の積層厚さを変数として、その電機子コア22に所定の回数ワイヤ24を巻回するのに必要な長さを算出する演算式を作成する。演算式を作成する際には、積層によって一度の巻回に必要なワイヤの長さが、巻数が増えるに従って大きくなることを考慮して仮の演算式を作成し、この仮の演算式による算出結果と実験の結果とを照合することにより、演算式の係数を求める。このようにして求めた演算式のデータを、あらかじめコントローラ11のメモリ112に記憶しておく。
電機子コア22に巻線する際、制御部111は、投入搬送装置9のベルト91により搬送される電機子コア22が位置決め部99に到達した時にモータ95を止める。測長センサ12で測定された電機子コア22の積層厚さのデータは制御部111に入力される。制御部111は、メモリ112から演算式を読み出し、測定された積層厚さのデータに基いて、予定された巻数に必要なワイヤ24の長さを算出する。
制御部111は、テンショナ4のエンコーダ42で測定されたワイヤの長さを、演算式に基いて算出したワイヤの長さと比較しながら、ワイヤ24の絶縁被覆を剥離する位置を決定する。
制御部111は、スピンドル部7のエンコーダ72の出力信号に基づいてサーボモータ71の回転速度および回転角度を調整することによってワイヤ24の移動を制御する。そして制御部111は、図4に示すように、ワイヤ24の剥離位置がレーザマーカ51からのレーザ光の照射位置に到達したときに、ワイヤ24の移動スピードを遅くすると共にレーザマーカ51に指示してレーザ光を照射して、絶縁被膜を剥離する。
このように第1の処理方法によれば、演算式を用いて電機子コア22の積層厚さに対応したワイヤの巻装長さが算出され、ワイヤ24の剥離部分の位置は、算出されたワイヤ24の巻装長さを参照して決定される。結果として、ワイヤ24の剥離部分は、電機子コア22の積層厚さのバラツキに影響されることなく、常にワイヤ24の巻終わり部の所定の位置に形成される。
なお、上述の処理方法では、電機子コアにワイヤを所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの長さを、メモリに記憶された演算式を用いて算出したが、これに限定されない。例えば、実験により、電機子コアの積層厚さを変化させたときに、ワイヤを所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの長さを測定してグラフ上にプロットし、プロットした値に近似する直線または曲線を作成して、積層厚さとワイヤの長さの関係をデータ化すれば、演算式を用いた場合と同様の算出が可能となる。
<第2の処理方法>
次に、第2の処理方法について説明する。テンショナ4の調整不足により必要以上に大きいテンションがワイヤ24に加えられた場合、ワイヤ24は伸びる。上述した第1の処理方法は、テンションによってワイヤ24が延びることを考慮していないため、そのような場合には、剥離部分を正確な位置に形成することができない。第2の処理方法では、ワイヤ24の延びによって生じる剥離部分の位置ずれを修正している。
次に、第2の処理方法について説明する。テンショナ4の調整不足により必要以上に大きいテンションがワイヤ24に加えられた場合、ワイヤ24は伸びる。上述した第1の処理方法は、テンションによってワイヤ24が延びることを考慮していないため、そのような場合には、剥離部分を正確な位置に形成することができない。第2の処理方法では、ワイヤ24の延びによって生じる剥離部分の位置ずれを修正している。
このために第2の処理方法では、第1の処理方法の処理に加えて以下の処理を行っている。すなわちメモリ112に記憶された演算式を用いて、予定の回数より少ない所定の回数だけ電機子コア22にワイヤ24を巻回するのに必要なワイヤ24の長さAを算出する。また同じ所定の回数だけ電機子コア22にワイヤ24を巻回したときのワイヤ24の長さBを測定する。そして算出したワイヤの長さAと測定したワイヤの長さBを比較して、テンションによって生じるワイヤの延びの比率を求める。この比率に基づいて、第1の処理方法で算出したワイヤ24の長さを修正すると共に、この長さに合わせてワイヤ24の巻終わり部に形成する剥離部分の位置を修正する。
以下、第2の処理方法について具体的に説明する。制御部111は、メモリ112に記憶された演算式を用いて、予定の巻数より少ない所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの長さAを算出する。例えば、最終の巻数が50回であるとすると、50回よりも少ない45回巻回するのに必要なワイヤの長さを算出する。
合わせて制御部111は、スピンドル部7のエンコーダ72の出力信号に基づいて、上記所定の回数だけ電機子コア22にワイヤ24が巻回されたことを検知したとき、テンショナ4のエンコーダ42の出力に基づいて、所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤ24の長さBを測定する。そして算出したワイヤの長さAと測定したワイヤの長さBの比を求めることにより、テンションにより生じたワイヤの延びの比率を求める。
次に、制御部111は、演算式を用いて算出した、予定の巻数巻回するのに必要なワイヤ24の長さを上述した延びの比率で割ることにより、電機子コア22に予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さCが求まる。制御部111は、テンショナ4のエンコーダ42で測定したワイヤの長さCに基づいて剥離部分25の位置を決定する。
このように、テンションによる延びがない場合の所定の巻数に必要なワイヤの長さAと、実際に延びが生じた場合の所定の巻数に必要なワイヤの長さBとの比率に基いて、ワイヤの巻終わり部に形成する剥離部分の位置を修正することにより、剥離部分を常に巻き終わり部の同じ位置に形成できる。
なお、上述した実施の形態では、絶縁部分の剥離にレーザマーカ51を用いたが、他の剥離手段を用いても、同様の効果が得られる。ただし、レーザマーカを用いた場合、レーザマーカ51を固定し、ワイヤ24を移動させながらレーザ光によって絶縁被覆の剥離を行うことができるため、剥離ユニット5をボールネジやモータを使用して移動させる必要がなく、巻線機をコンパクトかつ安価に製造することができる。
以上説明したようにこの発明の巻線方法によれば、電機子コア22にロッド違いによる積層厚さのバラツキがある場合や、テンションによりワイヤ24が延びた場合でも、ワイヤ24の剥離部分25を巻終わり部の常に同じ位置に形成できる。
なお、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思考に基づいて各種の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、この発明の巻線方法を、丸線を用いた巻線機に採用した場合について説明したが、この発明は、その他各種の断面形状のワイヤによってコイルを形成する巻線機にも適用できる。
この発明の巻線方法は、各種の断面形状のワイヤによってコイルを形成する巻線機に適用できるものであり、またスピンドル巻線機のみならず、フライヤ式巻線機にも適用できるものである。
1 巻線機
2 架台
3 ワイヤボビン
4 テンショナ
5 剥離ユニット
6 ワイヤ引き出しユニット
7 スピンドル部
8 カットユニット
9 投入搬送装置
10 排出搬送装置
11 コントローラ
12 測長センサ
22 電機子コア
24 ワイヤ
42、72エンコーダ
51 レーザマーカ
71 サーボモータ
111 制御部
112 メモリ
2 架台
3 ワイヤボビン
4 テンショナ
5 剥離ユニット
6 ワイヤ引き出しユニット
7 スピンドル部
8 カットユニット
9 投入搬送装置
10 排出搬送装置
11 コントローラ
12 測長センサ
22 電機子コア
24 ワイヤ
42、72エンコーダ
51 レーザマーカ
71 サーボモータ
111 制御部
112 メモリ
Claims (8)
- 外表面が絶縁被覆によって覆われた導電性のワイヤを電磁鋼板が複数枚積層された電機子コアに巻装してコイルを形成する巻線方法であって、
前記電機子コアの積層厚さと、前記電機子コアに所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの長さとの関係を表す演算式もしくはグラフを用意するステップと、
巻線される前記電機子コアについて積層厚さを測定するステップと、
測定された前記積層厚さに基づき、前記演算式もしくはグラフを用いて予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さを算出するステップと、
前記電機子コアに巻回されるワイヤの長さを測定するステップと、
前記算出されたワイヤの長さを参照し、前記測定されたワイヤの長さに基づいて前記ワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定するステップと、を有することを特徴とする巻線方法。 - 前記演算式もしくはグラフを用いて、前記予定の巻数より少ない所定の回数だけ巻回するのに必要なワイヤの第1の長さを算出するステップと、
巻線される前記電機子コアについて、前記所定の回数だけ巻回されたときのワイヤの第2の長さを測定するステップと、
前記第1の長さと前記第2の長さとを比較するステップと、をさらに有し、
前記ワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定する際に、前記算出された予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さに加え、前記の第1の長さと第2の長さとの比較結果を参照することを特徴とする、請求項1に記載の巻線方法。 - 用意された前記演算式もしくはグラフを、データ化してメモリに記憶しておくことを特徴とする、請求項1または2に記載の巻線方法。
- ワイヤの絶縁皮膜の剥離は、移動中のワイヤにレーザ光を照射することにより行うことを特徴とする、請求項1乃至3に記載の巻線方法。
- 外表面が絶縁被覆によって覆われたワイヤを電磁鋼板が複数枚積層された電機子コアに巻装してコイルを形成する巻線機であって、
前記電機子コアにワイヤを巻回する巻線手段と、
前記電機子コアの積層厚さを測定する積層厚測定手段と、
前記電機子コアに巻回されるワイヤの長さを測定するワイヤ長測定手段と、
前記ワイヤの絶縁被覆を剥離する剥離手段と、
前記積層厚測定手段および前記ワイヤ長測定手段の出力信号に基づいて、前記巻線手段および剥離手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記積層厚測定手段で測定された積層厚さに基づき、あらかじめ用意された演算式もしくはグラフを用いて算出された、予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さを参照し、前記ワイヤ長測定手段によって測定されたワイヤの長さに基づいて前記ワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定することを特徴とする巻線機。 - 前記制御手段は、
前記演算式もしくはグラフを用いて算出された、前記電機子コアに予定の巻数より少ない所定の回数だけ巻回されたときのワイヤの第1の長さと、巻線される前記電機子コアについて前記ワイヤ長測定手段で測定された、前記所定の回数ワイヤが巻回されたときのワイヤの第2の長さとを比較すると共に、
前記算出された予定の巻数巻回するのに必要なワイヤの長さに加え、前記第1の長さと第2の長さとの比較結果を参照して、前記ワイヤの絶縁被覆を剥離する位置を決定することを特徴とする、請求項5に記載の巻線機。 - データ化された前記演算式もしくはグラフを記憶するメモリをさらに備えることを特徴とする、請求項5または6に記載の巻線機。
- 前記剥離手段として、移動中のワイヤにレーザ光を照射することにより絶縁被覆を剥離する手段を用いることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の巻線機。
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JP2009076783A JP2010233313A (ja) | 2009-03-26 | 2009-03-26 | 巻線方法および巻線機 |
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JP2018152980A (ja) * | 2017-03-13 | 2018-09-27 | 三菱電機株式会社 | 巻線装置及びステータの製造方法 |
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