JP2010229519A - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、Cuの微細析出物によって強度上昇を図ることができ、高周波での鉄損が低く、Cu含有鋼特有の表面欠陥が抑制された無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:2%以上4%以下、Ni:2%以下、Cu:1%超3%以下ならびに、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.001%以上0.1%以下の範囲内で含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、上記スラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高速で回転するモータのロータ用鉄心の素材として好適な無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。特に、本発明は、回転時の応力または加減速時の応力変動に耐え、優れた強度特性および磁気特性が要求される、磁石埋め込み型モータ(IPMモータ)や突極型表面磁石モータ(突極型SRMモータ)のロータ用鉄心の素材として好適な無方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
地球温暖化ガスを削減するため、自動車や家電製品などの分野では消費エネルギーの少ない新製品開発が必要である。例えば、自動車分野では、低燃費化するためガソリンエンジンとモータとのハイブリッド駆動自動車(HEV)あるいはモータ駆動の電気自動車がある。また、家電製品分野では、年間電気消費量の少ない高効率エアコンや冷蔵庫などがある。それらの共通した技術はモータであり、モータの高効率化が重要な技術となっている。モータ高効率化の過程において、モータの駆動システムは高度化し、さまざまな回転駆動制御が可能になっている。すなわち、駆動電源の周波数制御により、可変速運転、商用周波数以上での高速運転を可能としたモータが増加してきている。
このような高速回転機の実現には、高速回転に耐え得る構造のロータを開発する必要がある。一般に、ロータに作用する遠心力は回転半径に比例し、回転速度の二乗に比例する。このため高速回転で運転する際には、そのロータに作用する力が例えば500MPaを超える場合もある。したがって、ロータには降伏強度の高い材料が必要となる。さらに、ロータ高速回転運転中には、外部からの振動や頻繁な加減速といった繰り返し応力が発生する場合も想定されるので、ロータ材料には、単に降伏強度が高いだけでなく疲労強度が高いことも必要とされる。疲労強度を高める手段としては引張強度を高めることが最も有効であることから、高速回転するロータの材料には高い降伏強度と高い引張強度とが必要であると言い換えることができる。
通常、モータロータには、積層した無方向性電磁鋼板が使用されるが、上記のような高速回転するモータでは所要の強度を満足できない場合がある。その際にはロータ材料として高強度の鋳鋼などが用いられている。しかしながら、モータロータは回転時に磁気的性質を利用するものであるから、その材料としては上述のように機械特性とともに磁気特性に優れていることが要求される。すなわち、一体物の鋳鋼製ロータでは、渦電流損が非常に大きくなるのでモータの効率が低下してしまうという問題があるのである。また、IPMモータの場合はそのロータでの損失による発熱で磁石特性が劣化するという問題も生じる。
このように、上記のような高速回転するモータのロータ鉄心材料としては、機械的には高い強度を有し、かつ磁気的には高周波低鉄損を有するものでなければならない。鋼板の強度を高める手段として、冷延鋼板の分野では一般に、固溶強化、析出強化、細粒化強化、変態強化などの方法が用いられるが、高い強度および高周波低鉄損という優れた磁気特性は一般に相反する関係にあり、これらを同時に満足させることは極めて困難であった。
このような問題を解決するため、最近では、高い抗張力を有する無方向性電磁鋼板についてのいくつかの提案がなされてきている。例えば特許文献1では、Si含有量を3.5〜7.0%と高め、これに固溶硬化の大きい元素を添加し、抗張力を高める方法が提案されている。特許文献2では、通常の無方向性電磁鋼板に2.0%以上4.0%未満のSiを含有させると同時に、Nb、Zrの1種または2種、もしくはTi、Vの1種または2種の炭窒化物を活用し、さらには熱間圧延条件および仕上げ焼鈍条件を制御することにより、機械特性および磁気特性を兼備した降伏強度の高い無方向性電磁鋼板を製造する方法が提案されている。特許文献3では、鋼材内部に直径1.0μm以下のCuからなる金属相を含有させることにより、抗張力を高める方法が提案されている。特許文献4では微細なCu析出相を分散させることにより、特許文献5および特許文献6ではCu析出相とTi,Nbを含む炭窒化物相とを分散させることにより、それぞれ抗張力を高める方法が提案されている。
特開昭60−238421号公報 特開平6−330255号公報 特開2004−84053号公報 特開2004−300535号公報 特開2005−344156号公報 特開2007−31754号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明により得られる鋼板は非常に脆いため、冷間圧延時に破断しやすく歩留まりが非常に低いという問題がある。
上記特許文献2に記載された発明では、仕上げ焼鈍温度が低いために、鋼板の結晶粒径が非常に小さく、鉄損が非常に劣るという問題がある。
上記特許文献3〜6に記載された発明では、上記問題は解決されるが、Cu含有鋼特有の表面欠陥が発生し、製品の歩留まりを低下させる場合がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、Cuの微細析出物によって強度上昇を図ることができ、高周波での鉄損が低く、Cu含有鋼特有の表面欠陥が抑制された無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者らは、Cu含有鋼特有の表面欠陥を抑制するために鋭意研究を積み重ねた結果、スラブを熱間圧延に供する際のスラブ加熱条件を適正化することにより、良好な強度特性および磁気特性を兼備し、さらに良好な表面性状を有する無方向性電磁鋼板が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:2%以上4%以下、Ni:2%以下、Cu:1%超3%以下ならびに、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.001%以上0.1%以下の範囲内で含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、上記スラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
なお、ここで規定する温度はスラブ表面温度である。
本発明によれば、鋼板の鋼組成と製造条件を適正に制御することにより、強度が高く、磁気特性および表面性状が良好な無方向性電磁鋼板を得ることができる。このような本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法を用いることにより、運転中に変形や破壊が生じることなく安定して使用可能なモータロータに好適な無方向性電磁鋼板を提供することが可能となる。
本発明においては、高周波での鉄損が低く強度が高く、さらにCu含有鋼特有の表面欠陥が抑制された無方向性電磁鋼板を製造することが可能である。このような無方向性電磁鋼板を用いて製造した鉄心が高速回転するモータロータに組み込まれれば、モータ効率が高くなることはもちろん、運転中に変形や破壊することなく長期間にわたり安定して使用可能となる。このような省エネルギー効果により地球環境に負荷の少ない未来社会創造に貢献できる。
実施例における試番5、6および16の酸洗後の熱間圧延鋼板の表面外観写真である。
以下、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について詳細に説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:2%以上4%以下、Ni:2%以下、Cu:1%超3%以下ならびに、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.001%以上0.1%以下の範囲内で含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、上記スラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱することを特徴とするものである。
なお、各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。
本発明によれば、鋼板の鋼組成と製造条件を適正に制御することにより、特にスラブを熱間圧延に供する際のスラブ加熱条件を適正に制御することにより、良好な強度特性および磁気特性を兼備し、さらに良好な表面性状を有する無方向性電磁鋼板を得ることができる。
以下、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法におけるスラブの鋼組成および各工程について説明する。
1.鋼組成
(1)C
Cは鋼板の強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、C含有量が0.02%を超えるとセメンタイト、εカーバイドなどの炭化物が析出し、磁気特性劣化が顕著になる場合がある。したがって、C含有量は0.02%以下とする。また、より一層の磁気特性向上、特に鉄損を向上させるにはC含有量の上限を0.005%にするのが好ましい。一方、Ti,Nb,V,Zrなどの炭化物生成元素を0.01%以上含有させて析出強化を図る場合には、C含有量を0.005%〜0.02%に制御することが好ましい。
(2)Si
Siは鋼板の強度を高め、磁気特性を改善するには有効な元素であるが、本発明のようにCuを含有することを必須とする鋼板においては、熱間圧延によりCu溶融脆化割れを引き起こし表面性状が劣化する可能性がある。Si含有量が1%超では熱間圧延鋼板の表面性状が劣化して製品歩留まりが低下する場合がある。したがって、Si含有量は1%以下とする。さらに表面欠陥を抑制するには、Si含有量を0.2%以下にするのが好ましい。なお、Siは不可避的不純物として含有される元素であるが、その含有量は低いほど好ましいので、その下限は特に限定する必要はない。
(3)Mn
Mnは不可避的不純物であり、添加する必要はない。しかしながら、Mnは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効であるので積極的に含有させてもよい。その効果を得るには0.1%以上含有させることが好ましい。一方、Mn含有量が1%を超えると原料コストが大きくなる場合がある。したがって、Mn含有量は1%以下に限定する。
(4)P
Pは不可避的不純物であり、添加する必要はない。しかしながら、Pは固溶強化により鋼板の強度を高めるのに有効な元素であるので含有させてもよい。その効果を得るには0.03%以上含有させることが好ましい。一方、P含有量が0.2%を超えると鋼板の靱性が劣化し、熱間圧延鋼板が破断するおそれがある。したがって、P含有量は0.2%以下に限定する。
(5)S
Sは不可避的不純物であり、添加する必要はない。S含有量が0.03%を超えると粗大なMn、Cu含有硫化物が形成され、鋼の靭性が劣化し、冷間圧延時に破断するおそれがある。したがって、S含有量は0.03%以下に限定する。また、磁気特性を改善するには、S含有量を0.006%以下とすることが好ましい。
(6)Al
Alは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。本発明では同様の効果を有するSiの含有量を低減しているのでAlを積極的に添加する必要がある。しかしながら、Al含有量が4%を超えると飽和磁束密度が著しく低下し、鉄心性能が劣化する可能性がある。一方、高周波の鉄損低減にはAlを2%以上含有させることが必要である。したがって、Al含有量は2%以上4%以下に限定する。さらに好ましくは、2.5%以上3.5%以下である。
(7)Ni
Niは、鋼板の表面欠陥を防止するのに有効である。しかしながら、本発明においては、スラブ加熱条件を管理することにより、表面欠陥を抑制しているため、従来のように相当量のNiを含有させる必要はない。一方、Niは固溶強化により鋼板の強度を高めるのに有効でもあるので添加しても構わない。しかしながら、Niは高価な元素であるので、製造コストの観点からその含有量を2%以下とする。
(8)Cu
Cuは本発明において必須の元素である。Cu析出物が非常に微細である場合には、磁気特性をほとんど劣化させることなく、強度特性を向上させる効果がある。しかしながら、Cu含有量が1%以下ではCu析出による強度上昇が十分得られない可能性がある。一方、Cu含有量が増加するにつれて時効硬化量は大きくなるが、3%を超えると仕上げ焼鈍時にCu析出物が不均一に分散して時効熱処理後の強度が低下し、また鋼板の磁束密度も低下する場合がある。したがって、Cu含有量は1%超3%以下に限定する。
(9)Ti、Nb、VおよびZr
Ti、Nb、VおよびZrは、炭化物などの析出物を形成して強度を向上させる作用を有する。上記作用による効果を得るために、Ti、Nb、VおよびZrの合計含有量を0.001%以上とする。一方、Ti、Nb、VおよびZrの合計含有量が0.1%を超えると、上記析出物が粗大化し磁気特性が劣化する場合がある。したがって、Ti、Nb、VおよびZrの合計含有量は0.001%以上0.1%以下とする。好ましくは、0.01%以上0.1%以下である。
本発明においては、鋼組成が、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.001%以上0.1%以下、好ましくは0.01%以上0.1%以下含有するのであるが、強度向上を確実に図るには、Ti、Nb、VまたはZrのいずれか一つの元素の含有量を単独で0.001%以上とすることが好ましく、0.01%以上とすることがさらに好ましい。
2.熱間圧延工程
本発明においては、上記鋼組成を有するスラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱する。なお、上述のように、ここで規定する温度はスラブ表面温度である。
本発明においては、スラブを熱間圧延に供する際のスラブ加熱処理におけるスラブ表面温度および昇温速度の条件を適切にすることが重要である。
スラブを熱間圧延に供する際のスラブ表面温度が1120℃未満では、スラブ加熱時に生成した酸化スケールが剥離しにくくなり、スケール押し込みによる表面疵が発生しやすくなる。一方、スラブを熱間圧延に供する際のスラブ表面温度が1240℃超では、溶融Cuに起因する脆化により表面割れ疵が発生しやすくなる。また、800℃以上の温度域における昇温速度が100℃/h未満の場合にも、同様にして表面割れ疵が発生しやすくなる。したがって、スラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱することとする。
スラブ加熱条件によって溶融Cuに起因する脆化により表面割れが発生する理由は次のように推察される。すなわち、スラブ加熱の昇温速度が遅い場合には、スラブ表層の酸化の進行に伴い、溶融Cu相がスケールと鋼との界面に凝集して熱間圧延時に表面割れを誘発するのに対し、昇温速度が速い場合には、溶融Cu相がスケール中に取り込まれて点々と分散し、スケールと鋼との界面に殆ど存在しなくなり、その結果、熱間圧延時の表面割れが抑制されると推察される。
なお、800℃以上の温度域における昇温速度は速いほど好ましいので、昇温速度の上限は特に規定する必要はない。スラブ内の温度分布均一化の観点からは、800℃以上の温度域における昇温速度を800℃/h以下とすることが好ましい。
また、800℃未満の温度域においてはスケールが殆ど成長しないので、当該温度域における昇温速度は溶融Cuに起因する脆化に影響を及ぼさない。したがって、800℃未満の温度域における昇温速度は特に規定する必要はない。
スラブを加熱する加熱炉内雰囲気の水蒸気濃度は、10%以上30%以下とすることが好ましい。
スラブ加熱後の熱間圧延としては一般的な方法を用いることができる。熱間圧延での仕上げ温度、巻取り温度等の条件は、スラブの鋼組成、目的とする鋼板の板厚などにより適宜選択するものとする。なお、熱間圧延鋼板の靱性を向上させるには、巻取り温度を550℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延鋼板は、通常、熱間圧延の際に鋼板表面に生成したスケールを酸洗により除去してから冷間圧延に供される。
3.冷間圧延工程
本発明においては、上記熱間圧延工程により得られる熱間圧延鋼板に冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする。
本工程は、熱間圧延鋼板に中間焼鈍をはさんだ二回以上の冷間圧延を施す工程であってもよい。中間焼鈍は、必ずしも必須ではないが、中間焼鈍を行うことにより鋼板の延性が向上し冷間圧延での破断が少なくなるという利点を有する。
中間焼鈍での焼鈍温度等の条件は、後述する熱延板焼鈍と同様にすることが好ましい。
4.仕上げ焼鈍工程
本発明においては、上記冷間圧延工程により得られる冷間圧延鋼板に仕上げ焼鈍を施す。
本発明においては、仕上げ焼鈍後に時効熱処理を施すことにより強度を高めることができるが、時効熱処理後の強度特性および磁気特性をさらに改善するためには、仕上げ焼鈍条件を適正に制御することが好ましい。
仕上げ焼鈍温度は、900℃以上1100℃以下とすることが好ましい。仕上げ焼鈍温度が上記範囲未満では、再結晶粒成長が不十分となり磁気特性が著しく劣化する可能性がある。一方、仕上げ焼鈍温度が上記範囲を超えると、鋼板の粒径が著しく粗大化し、時効熱処理後のCu析出物が不均一に分散し、強度が低下する場合がある。より一層の鉄損低減には仕上げ焼鈍温度が高ければ高いほどよく、950℃以上とすることがより好ましい。
5.熱延板焼鈍工程
本発明において熱延板焼鈍工程は必須ではないが、冷間圧延の能率を高めることを可能とするのに有用な工程であるので、適宜採用してもよい。熱延板焼鈍を施す場合には、上述した鋼組成を有する熱間圧延鋼板に、600℃以上900℃以下の温度で10秒間以上保持する熱延板焼鈍を施すことが好ましい。熱延板焼鈍を施す場合における酸洗は、熱延板焼鈍前または熱延板焼鈍後のいずれに行ってもよい。
熱延板焼鈍での焼鈍温度は、600℃以上900℃以下とすることが好ましい。焼鈍温度が上記範囲未満であると、かえって鋼板の強度が高くなり、冷間圧延が困難となる場合がある。一方、焼鈍温度が上記範囲を超えても、Cuの固溶・再析出が起こり、鋼板の強度が高くなり、冷間圧延が困難となる可能性がある。さらに好ましい焼鈍温度は、650℃以上850℃以下である。
また、上記焼鈍温度での保持時間は10秒間以上とすることが好ましい。保持時間が上記範囲未満の場合、熱間圧延鋼板の強度が高くなり、冷間圧延が困難となる場合がある。保持時間は2時間以上がより好ましい。一方、保持時間の上限は特に限定されないが、経済性の観点から48時間以下にすることが望ましい。
6.その他の工程
本発明においては、上記仕上げ焼鈍工程後に、一般的な方法にしたがって、有機成分のみ、無機成分のみ、あるいは有機無機複合体からなる絶縁皮膜を鋼板表面に塗布するコーティング工程を行ってもよい。また、コーティング工程は、加熱・加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施す工程であってもよい。接着能を発揮するコーティング材料としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはメラミン樹脂などを用いることができる。
また、本発明においては、仕上げ焼鈍後に時効熱処理を施すことにより高強度の無方向性電磁鋼板を製造することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明する。
表1に示す鋼組成のスラブ(サイズ:厚さ30mm、幅70mm、長さ100mm)を表2に示すスラブ加熱条件で加熱し、高圧水によるデスケーリングを施したのちに、厚さ2.0mmまで熱間圧延し、600℃から徐冷して熱間圧延鋼板を得た。得られた熱間圧延鋼板について、伸び率1%の調質圧延を施して酸洗により脱スケールし、鋼板表面を目視にて観察して疵の有無を調査した。下記の表2に表面性状の評価結果を示す。
また、上記鋼板を、厚さ0.35mmまで冷間圧延し、得られた冷間圧延鋼板を1000℃で仕上げ焼鈍した。
このようにして得られた鋼板から55mm角の単板磁気試験片を採取し、480℃で2時間の時効熱処理を行った後、鉄損W10/400および磁束密度B50を測定した。それらの磁気特性は、圧延方向およびその直角方向についての平均値とした。さらに、時効熱処理前の鋼板から圧延方向にJIS13B号の引張試験片を採取し、上記同様の時効熱処理後にJIS−Z−2241に規定の引張試験を行い、降伏強度YSおよび引張強度TSを測定した。結果、試験した全ての鋼板の鉄損は20〜25W/kg、磁束密度は1.57〜1.60T、降伏強度は680〜770MPa、引張強度は780〜870MPaの範囲にあり、優れた磁気特性と強度特性を兼ね備えていることを確認した。
本発明で規定する鋼組成およびスラブ加熱条件を充足する試番2、3、7、8、13、14および17〜21は、強度および磁気特性に優れることはもちろんのこと、鋼板の表面性状が良好であった。一方、本発明で規定するスラブ加熱条件を充足しない試番1、4〜6および9〜12、ならびに、本発明で規定する鋼組成を充足しない試番15および16は、強度および磁気特性に優れるものの表面疵が多数発生した。
図1(a)〜(c)にそれぞれ試番5、6および16の酸洗後の熱間圧延鋼板の表面欠陥の発生状況を示す。試番5では溶融Cuに起因する脆化による表面欠陥が認められた。試番6,16ではスケール押し込みによる表面欠陥が認められた。このように鋼組成とスラブ加熱条件を適切に組み合わせずに製造すると鋼板の表面性状が著しく劣化した。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.02%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.2%以下、S:0.03%以下、Al:2%以上4%以下、Ni:2%以下、Cu:1%超3%以下ならびに、Ti、Nb、VおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.001%以上0.1%以下の範囲内で含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記スラブを熱間圧延に供するに際して、800℃以上の温度域における昇温速度を100℃/h以上として1120℃以上1240℃以下まで加熱することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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