JP2010229437A - 表面処理鋼板および樹脂被覆鋼板の製造方法 - Google Patents

表面処理鋼板および樹脂被覆鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Crを用いず、湿潤樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理鋼板を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】鋼板の少なくとも片面に、Tiを含むイオンと、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属を含むイオンを含有する水溶液中で、陽極と鋼板の間に陰イオン交換膜を設置して鋼板に陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面にプラスチックフィルムなどをラミネートする、または樹脂を含有する塗料を塗装することにより樹脂が被覆された後、主に缶などの容器に用いられる表面処理鋼板、特に、高温湿潤環境下において被覆された樹脂との密着性(以後、湿潤樹脂密着性と呼ぶ)に優れた表面処理鋼板の製造方法および樹脂被覆鋼板の製造方法に関する。
飲料缶、食品缶、ペール缶や18リットル缶などの各種金属缶には、錫めっき鋼板やティンフリー鋼板と呼ばれる電解クロム酸処理鋼板などの金属板が用いられている。なかでも、ティンフリー鋼板は、6価Crを含むめっき浴中で鋼板を電解処理することにより製造され、塗料など樹脂に対して優れた湿潤樹脂密着性を有していることに特長がある。
近年、環境に対する意識の高まりから、世界的に6価Crの使用が規制される方向に向かっており、6価Crのめっき浴を用いて製造されるティンフリー鋼板に対してもその代替材が求められている。例えば、特許文献1には、タングステン酸溶液中で電解処理が施された容器用鋼板が開示されている。また、特許文献2には、表面にリン酸塩層が形成された容器用表面処理鋼板が開示されている。さらに、特許文献3には、Sn、Niの1種以上を含む表面処理層の上にタンニン酸または酢酸の1種以上およびTiまたはZrまたはそれらの化合物の1種以上を含んだフェノール構造を有する樹脂皮膜が形成された容器用鋼板が提案されている。さらにまた、特許文献4には、リン酸イオンを含有しない、Ti、O、Fを主成分とする無機表面処理層と有機表面処理層が形成されている表面処理金属材料が提案されている。
一方、各種金属缶は、従来より、ティンフリー鋼板などの金属板に塗装を施した後に、缶体に加工して製造されていたが、近年、製造に伴う廃棄物の抑制のために、塗装に代わってプラスチックフィルムなどの樹脂を被覆した樹脂被覆金属板を缶体に加工する方法が多用されるようになっている。この樹脂被覆金属板には、樹脂が金属板に強く密着していることが必要であり、特に飲料缶や食品缶として用いられる樹脂被覆金属板には、内容物の充填後にレトルト殺菌工程を経る場合があるため、高温の湿潤環境下でも樹脂が剥離することのない強い湿潤樹脂密着性が要求される。
特開2004-285380号公報 特開2001-220685号公報 特開2002-355921号公報 特開2006-009046号公報
しかしながら、特許文献1に記載のタングステン酸溶液中で電解処理が施された容器用鋼板、特許文献2に記載の表面にリン酸塩層が形成された容器用表面処理鋼板を用いた樹脂被覆鋼板、特許文献3に記載のフェノール構造を有する樹脂皮膜が形成された容器用鋼板、特許文献4に記載のTi、O、Fを主成分とする無機表面処理層と有機表面処理層が形成されている表面処理金属材料では、いずれもレトルト雰囲気における湿潤樹脂密着性が不十分である。
本発明は、Crを用いず、湿潤樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理鋼板を安定して製造する方法および樹脂被服鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、Crを用いず、湿潤樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理鋼板の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、Tiを含むイオンと、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnなどの金属を含むイオンを含有する水溶液中で、陽極と鋼板の間に陰イオン交換膜を設置して鋼板に陰極電解処理を施すことにより極めて優れた湿潤樹脂密着性を有する表面処理鋼板を安定して製造できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、鋼板の少なくとも片面に、Tiを含むイオンと、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属を含むイオンを含有する水溶液中で、陽極と鋼板の間に陰イオン交換膜を設置して鋼板に陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法を提供する。
本発明の表面処理鋼板の製造方法では、Tiが0.008〜0.07モル/L(L:リットル)であり、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属がTiに対する合計のモル比で0.01〜10含まれる水溶液中で陰極電解処理を施すことが好ましい。
また、陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成する前に、前記密着性皮膜を形成する鋼板面に、Ni層、Sn層、Fe-Ni合金層、Fe-Sn合金層およびFe-Ni-Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1種の耐食性皮膜を形成することが好ましい。
本発明は、また、本発明の製造方法により製造された表面処理鋼板の密着性皮膜の表面に、樹脂を被覆することを特徴とする樹脂被覆鋼板の製造方法を提供する。
本発明により、Crを用いず、湿潤樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理鋼板を安定して製造できるようになった。本発明の製造方法で製造された表面処理鋼板では、樹脂を被覆して樹脂被覆鋼板とし、缶や缶蓋に加工してレトルト雰囲気に暴露しても、樹脂の剥離が生じることは全くない。また、陰極電解処理前に、Ni層、Sn層、Fe-Ni合金層、Fe-Sn合金層、Fe-Ni-Sn合金層などの耐食性皮膜を設けた表面処理鋼板は、引っかき傷などの樹脂の欠落部においても、素地であるFeの溶出が著しく少なく、耐食性にも極めて優れている。
pH変動と密着性皮膜のTi量減少率との関係を示す図である。 180°ピール試験を説明する図である。
1)陰極電解処理
鋼板表面に、Tiを含むイオンを含有し、さらにFe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属を含むイオンを含有する水溶液中で陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成すると、極めて優れた湿潤樹脂密着性を有する表面処理鋼板を製造できる。この原因は、現在のところ明らかではないが、Tiを含む皮膜中にFe、Co、Ni、V、Cu、Mn、Znなどの金属元素が取り込まれることにより、緻密で、表面の凹凸が均一に分布した密着性皮膜が形成されるためと考えられる。
このとき、Tiが0.008〜0.07モル/L、好ましくは0.02〜0.05モル/Lであり、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属がTiに対する合計のモル比で0.01〜10、好ましくは0.1〜2.5含まれる水溶液を用いることが、より緻密で、表面の凹凸がより均一に分布した密着性皮膜を形成し、より優れた湿潤樹脂密着性を得る上で好ましい。
こうした水溶液中で陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成して連続的に表面処理鋼板を製造すると、処理時間の経過とともに皮膜のTi量が除々に減少し、湿潤樹脂密着性の低下を招く場合がある。また、上記した水溶液中での陰極電解処理による密着性皮膜形成のメカニズムは、陰極側において水素発生による界面pHの上昇に伴い、水溶液中におけるTi酸化物の溶解度が小さくなった結果、水溶液中に溶解できなくなったTi酸化物が鋼板(陰極)表面に沈殿析出し、密着性皮膜を形成するものである。したがって、安定した密着性皮膜の付着量(Ti量)を確保するには、水溶液自体のpH変動は小さい方が望ましい。
密着性皮膜のTi量の経時変化を抑制するための検討を行ったところ、図1に示すように、水溶液のpH変動を0.2以下にすれば密着性皮膜のTi量減少量を20%以下に抑制でき、湿潤樹脂密着性の低下を招くことがほとんどないことが明らかになった。このようにpH変動を0.2以下にするには、陽イオンを透過しない陰イオン交換膜を陽極と鋼板の間に設置して、陽極を隔離した形で陰極電解処理を施すことが効果的であり、少なくとも7日間にわたって密着性皮膜のTi量がほとんど減少することなく、湿潤樹脂密着性に優れた表面処理鋼板を安定して製造できるようになる。なお、このpH変動は、Fe、Co、Ni、V、Cu、Mn、Znなどの金属イオンが陽極側で電解酸化され、価数が増したイオンが急激に増加した結果、Tiを含む水酸化物イオンやフッ化物イオン、Fe、Co、Ni、V、Cu、Mn、Znなどの金属イオンの配位状態が変化したことに起因していると考えられる。
密着性皮膜のTi量として片面あたり3〜200mg/m2とすることが好ましい。これは、Ti量が3mg/m2以上200mg/m2以下で湿潤樹脂密着性改善の効果が十分に得られ、200mg/m2を超えるとさらなる湿潤樹脂密着性の向上が望めず、コスト高となるためである。ここで、密着性皮膜のTi量の測定は、蛍光X線による表面分析により行うことができる。
Tiを含むイオンを含有する水溶液としては、フルオロチタン酸イオンを含む水溶液、またはフルオロチタン酸イオンおよびフッ素塩を含む水溶液が好適である。フルオロチタン酸イオンを与える化合物としては、フッ化チタン酸、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウムなどを用いることができる。フッ素塩としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化銀、フッ化錫などを用いることができる。特に、フッ化チタン酸カリウムを含む水溶液中で、あるいはフッ化チタン酸カリウムおよびフッ化ナトリウムを含む水溶液中で、鋼板に陰極電解処理を施す方法は、効率良く均質な密着性皮膜を形成することが可能であり好適である。
また、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnを含むイオンを与える化合物としては、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸コバルト、塩化コバルト、硫酸ニッケル、硫酸銅、酸化硫酸バナジウム、硫酸亜鉛、硫酸マンガンなどを用いることができる。
Tiが0.008〜0.07モル/L、好ましくは0.02〜0.05モル/Lとし、Co、Fe、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属の量を合計でTiに対してモル比で0.01〜10、好ましくは0.1〜2.5とするには、水溶液中のTiと金属の質量比を調整すればよい。
なお、陰極電解処理においては、電流密度を5〜20A/dm2とすることが好ましい。
2)耐食性皮膜の形成
陰極電解処理により密着性皮膜を形成する鋼板面に、予めNi層、Sn層、Fe-Ni合金層、Fe-Sn合金層、Fe-Ni-Sn合金層などの耐食性皮膜を形成すると、この耐食性皮膜は下地鋼板と強固に結合されているため、樹脂被覆鋼板とされた後に引っ掻きなどで部分的に樹脂が欠落した場合でも、鋼板に優れた耐食性を付与できる。この耐食性皮膜は、Ni層、Sn層、Fe-Ni合金層、Fe-Sn合金層、Fe-Ni-Sn合金層の単層であっても、これらの層を多層にしたものであってもよく、構成される金属元素に応じた公知の方法で形成できる。
3)樹脂被覆鋼板(ラミネート鋼板)の製法
本発明の表面処理鋼板の製造方法で製造された表面処理鋼板の密着性皮膜の表面に、樹脂を被覆して樹脂被覆鋼板を製造することができる。
本発明で製造された表面処理鋼板に被覆する樹脂としては、特に限定はなく、各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリルエステル共重合体、アイオノンマー等のオレフィン系樹脂フィルム、またはポリブチレンテレフタラート等のポリエステルフィルム、もしくはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムの未延伸または二軸延伸したものであってもよい。積層の際に接着剤を用いる場合は、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性オレフィン樹脂系接着剤、コポリアミド系接着剤、コポリエステル系接着剤(厚さ:0.1〜5.0μm)等が好ましく用いられる。さらに熱硬化性塗料を、厚み0.05〜2μmの範囲で表面処理鋼板側、あるいはフィルム側に塗布し、これを接着剤としてもよい。
さらに、フェノールエポキシ、アミノ-エポキシ等の変性エポキシ塗料、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体けん化物、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、エポキシ変性-、エポキシアミノ変性-、エポキシフェノール変性-ビニル塗料または変性ビニル塗料、アクリル塗料、スチレン-ブタジェン系共重合体等の合成ゴム系塗料等の熱可塑性または熱硬化性塗料の単独または2種以上の組み合わせであってもよい。
樹脂被覆層の厚みは3〜50μm、特に5〜40μmの範囲にすることが望ましい。厚みが上記範囲を下回ると耐食性が不十分となり、厚みが上記範囲を上回ると加工性の点で問題が生じやすいためである。
樹脂を被覆するには任意の手段で行うことができる。例えば、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、二軸延伸フィルム熱接着法等により行うことができる。押出コート法の場合、表面処理鋼板の上に樹脂を溶融状態で押出コートして、熱接着させることにより製造することができる。すなわち、樹脂を押出機で溶融混練した後、T-ダイから薄膜状に押し出し、押し出された溶融樹脂膜を表面処理鋼板と共に一対のラミネートロール間に通して冷却下に押圧一体化させ、次いで急冷する。多層の樹脂被覆層を押出コートする場合には、各層用の押出機を複数使用し、各押出機からの樹脂流を多重多層ダイ内で合流させ、以後は単層樹脂の場合と同様に押出コートを行えばよい。また、一対のラミネートロール間に垂直に表面処理鋼板を通し、その両側に溶融樹脂ウエッブを供給することにより、表面処理鋼板両面に樹脂を被覆させることができる。
こうした樹脂被覆鋼板は、側面継ぎ目を有するスリーピース缶やシームレス缶(ツーピース缶)に適用することができる。また、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋にも適用することができる。
ティンフリー鋼板(TFS)の製造のために使用される冷間圧延ままの低炭素鋼の冷延鋼板(板厚0.2mm)の両面に、表1に示すめっき浴a、bを用いて、次のA〜Dの方法により金属層を形成する。
A:冷延鋼板を700℃程度で焼鈍して、伸び率1.5%の調質圧延を行った後、アルカリ電解脱脂し、硫酸酸洗を施した後、めっき浴aを用いてNiめっき処理を施しNi層からなる耐食性皮膜を形成する。
B:冷延鋼板をアルカリ電解脱脂し、めっき浴aを用いてNiめっき処理を施した後、10 vol%H2+90 vol%N2雰囲気中で、700℃程度で焼鈍して、Niめっきを拡散浸透させた後、伸び率1.5%の調質圧延を行い、Fe-Ni合金層からなる耐食性皮膜を形成する。
C:冷延鋼板をアルカリ電解脱脂し、めっき浴aを用いてNiめっきを施した後、10 vol%H2+90 vol%N2雰囲気中で、700℃程度で焼鈍して、Niめっきを拡散浸透させ、伸び率1.5%の調質圧延を行った後、脱脂、酸洗し、めっき浴bを用いてSnめっき処理を施し、錫の融点以上に加熱保持する加熱溶融処理を施す。この処理により、Fe-Ni-Sn合金層とこの上層のSn層からなる耐食性皮膜を形成する。
D:冷延鋼板をアルカリ電解脱脂し、条件Aと同様に焼鈍、調質圧延した後、めっき浴bを用いてSnめっきを施した後、錫の融点以上に加熱保持する加熱溶融処理を施す。この処理により、Fe-Sn合金層とこの上層のSn層からなる耐食性皮膜を形成する。
C、Dの処理において、加熱溶融処理によりSnめっきの一部は合金化する。合金化せず残存した純Sn量については、耐食性皮膜中のNi量、Sn量と共に表3に示す。
鋼板両面に形成された耐食性皮膜上に、表2、3に示す陰極電解処理の条件で陰極電解処理を施し、乾燥して密着性皮膜を形成して、表2、3に示す表面処理鋼板No.1〜18を作製する。表面処理鋼板No.1、12では、密着性皮膜にCo、Fe、Ni、V、Cu、MnおよびZnが含有されていない。表面処理鋼板No.18では、耐食性皮膜が形成されていない。表面処理鋼板No.5、8、14、17では、陰イオン交換膜を設置せずに陰極電解処理が施されている。なお、陰イオン交換膜にはアストム(株)製のネオセプタシリーズのC1イオン型であるAMXを用いる。
そして、密着性皮膜のTi量は、蛍光X線分析法により、それぞれ予め付着量を化学分析して求めた検量板と比較して求める。また、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnの付着量についてはTiと同様の蛍光X線分析法、ならびに化学分析、オージェ電子分光分析および二次イオン質量分析から適宜測定方法を選択して求め、密着性皮膜に含有されるTiに対するCo、Fe、Ni、V、Cu、MnおよびZnの質量比を評価する。
また、7日間にわたって連続的に陰極電解処理したときの、pH変動と密着性皮膜のTi量減少率を求め、製造の安定性を調査する。
次に、これらの表面処理鋼板No.1〜18の両面に、延伸倍率3.1×3.1、厚さ25μm、共重合比12モル%、融点224℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタラートフィルムを用い、フィルムの二軸配向度(BO値)が150になるようなラミネート条件、すなわち鋼板の送り速度:40m/min、ゴムロールのニップ長:17mm、圧着後水冷までの時間:1secでラミネートして、ラミネート鋼板を作製する。ここで、ニップ長とは、ゴムロールと鋼板が接する部分の搬送方向の長さのことである。そして、作製したラミネート鋼板について、下記の湿潤樹脂密着性および耐食性の評価を行う。
湿潤樹脂密着性:温度130℃、相対湿度100%のレトルト雰囲気に25min間保持したのち、この雰囲気における180°ピール試験により湿潤樹脂密着性の評価を行う。180°ピール試験とは、図2の(a)に示すようなフィルム2を残して鋼板1の一部3を切り取った試験片(サイズ:30mm×100mm、表裏の二面をそれぞれn=1とし、各ラミネート鋼板についてn=2となる)を用い、図2の(b)に示すように、試験片の一端に重り4(100g)を付けてフィルム2側に180°折り返して30min間放置して行うフィルム剥離試験のことである。そして、図2の(c)に示す剥離長5を測定して評価し、各ラミネート鋼板について表裏二面の剥離長(n=2)の平均を求める。剥離長5は小さいほど、湿潤樹脂密着性が良好であるといえるが、剥離長5が10mm未満であれば、本発明の目的とする優れた湿潤樹脂密着性が得られていると評価する。
耐食性:ラミネート鋼板のラミネート面にカッターナイフを用い鋼板素地に達するカットを交差して施し、1.5質量%NaCl水溶液と1.5質量%クエン酸水溶液を同量ずつ混合した試験液80mlに浸漬し、55℃で9日間放置して、カット部の耐食性(表裏の二面をそれぞれn=1とし、各ラミネート鋼板についてn=2となる)を次のように評価し、○であれば耐食性が良好であるとする。
○:n=2とも腐食なし
×:n=2の1以上において腐食あり
結果を表4に示す。本発明例である表面処理鋼板No.2〜4、6、7、9〜11、13、15、16は、いずれも本発明の組成の水溶液中で陰極電解処理を施す時のpH変動が0.2以下であるために密着性皮膜のTi量減少率が小さく、製造の安定性に優れているとともに、湿潤樹脂密着性や耐食性にも優れている。これに対し、比較例である表面処理鋼板No.5、8、14、15は、陰極電解処理時のpH変動が0.2を超えるために密着性皮膜のTi量減少率が大きく、製造の安定性に劣っている。また、比較例である表面処理鋼板No.1、12は、陰極電解処理時の水溶液の組成が本発明外であるため、湿潤樹脂密着性に劣っている。なお、本発明例である表面処理鋼板No.18は、製造の安定性や湿潤樹脂密着性には問題ないが、耐食性皮膜がないため耐食性に劣っている。また、本発明における陰イオン交換膜によるpH変動の制御は、特に水溶液にFeを含む場合に効果的である。
Figure 2010229437
Figure 2010229437
Figure 2010229437
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1 鋼板
2 フィルム
3 鋼板の切り取った部位
4 重り
5 剥離長

Claims (4)

  1. 鋼板の少なくとも片面に、Tiを含むイオンと、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属を含むイオンを含有する水溶液中で、陽極と鋼板の間に陰イオン交換膜を設置して鋼板に陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
  2. Tiが0.008〜0.07モル/Lであり、Fe、Co、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種の金属がTiに対する合計のモル比で0.01〜10含まれる水溶液中で陰極電解処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  3. 陰極電解処理を施して密着性皮膜を形成する前に、前記密着性皮膜を形成する鋼板面に、Ni層、Sn層、Fe-Ni合金層、Fe-Sn合金層およびFe-Ni-Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1種の耐食性皮膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の表面処理鋼板の製造方法により製造された表面処理鋼板の密着性皮膜の表面に、樹脂を被覆することを特徴とする樹脂被覆鋼板の製造方法。
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