JP2010223675A - 鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法 - Google Patents

鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長編成時であってもリアルタイム挙動模擬の演算負荷が軽減された鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法を提供する。
【解決手段】編成状態の鉄道車両の挙動を模擬する挙動模擬装置1を、実車台上試験装置10と、編成中において実車100に連結される第1の仮想車両の挙動をリアルタイムで演算するリアルタイム車両挙動模擬手段33と、編成中において第1の仮想車両に連結される第2の仮想車両の挙動を予め演算する静的車両挙動模擬手段と、実車台上試験装置に搭載された実車に連結され、リアルタイム車両挙動模擬手段が演算した第1の仮想車両の連結部における挙動を再現するとともに、実車側からの入力を検出する車体間運動模擬装置20とを備え、リアルタイム車両挙動模擬手段は、車体間運動模擬装置から取得した実車からの入力、及び、静的車両挙動模擬手段が演算した第2の仮想車両の挙動を用いて演算を行う構成とする。
【選択図】図10

Description

本発明は、鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法に関し、特に、編成車両中で走行中の任意車両の挙動を実車台上試験によって模擬するものに関する。
従来より編成状態で走行している複数の車両のうち任意車両の挙動を計算機を用いた運動シミュレーションによって解析することが提案されている。この場合において、計算結果の妥当性を検証するためには、実車を走行させた際のデータとの比較検証が必要となる。
しかし、鉄道車両用の試験専用線はほとんど存在しないことから、このような実車試験は多くの場合営業線を用いて行わざるを得ず、クリティカルな条件下の試験は行うことが難しく、試験条件が限定されたものとなるため、検証が不十分となるおそれがある。
一方、実車両を用いて軌道からの入力を模した加振等が可能なベンチ車両試験台を用いることも知られている。ベンチ車両試験台は、例えば、レールを回転円盤に置き換えて、その上に前後方向に拘束した車両を載せて走行状態を模擬するものである。
このようなベンチ車両試験台においては、単車状態での実車両の運動特性評価は可能であるが、編成状態で走行中の運動特性については把握することが困難である。
これに対して、本願発明の発明者は、ソフトウェアによるシミュレータと、評価対象のハードウェアとを組み合わせてリアルタイムシミュレーションを実行するHILS(Hardware In the Loop Simulation)システムを構築し、より実走行に近い試験環境の実現を図ることを提案している。
このHILSシステムは、ベンチ車両試験台を用いて編成車両を含めて実走行を忠実に再現することを狙いとしたものであり、台上に設置した実車両に対して前後に連結される仮想車両の運動をシミュレーションし、シミュレーション結果をベンチ車両試験台に設けられた車体間運動模擬装置と連動させるものである。HILSシステムを用いた場合、対象物の少なくとも一部を実物で扱うため、実物部分のモデル化やその検証にかかるコスト、工数が軽減される。また、複数の試作品を開発、テストする場合には、実物を必要数用意すればよい。
従来、例えば非特許文献1には、車両試験台に搭載された実車の両端部に、リアルタイムシミュレータによって演算される仮想車両からの入力を再現する車体間運動模擬装置を設けたHILSシステムが記載されている。
「鉄道車両研究へのHILSシステムの応用」佐々木君章著 鉄道総研報告Vol.20,No.6 2006年6月 財団法人鉄道総合技術研究所刊
上述したHILSシステムにおいては、車体間運動模擬装置の駆動を行うため、少なくとも仮想編成中で実車に直接連結される仮想車両の挙動をリアルタイムでシミュレートする必要があるが、編成長が長い場合、編成全体についてリアルタイムシミュレーションを実行すると分散処理を実行する各ノードの演算負荷や各ノード間の通信負荷が過大となるため現実的ではない。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、長編成時であってもリアルタイム挙動模擬の演算負荷が軽減された鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法を提供することである。
上記の課題を解決するため、本発明の鉄道車両の挙動模擬装置は、編成状態の鉄道車両の挙動を模擬する挙動模擬装置であって、予め準備された軌道データに応じて加振可能な軌条輪上に実車を設置して走行状態を再現する実車台上試験装置と、前記編成中において前記実車に連結される第1の仮想車両の挙動をリアルタイムで演算するリアルタイム車両挙動模擬手段と、前記編成中において前記第1の仮想車両に連結される第2の仮想車両の挙動を予め演算する静的車両挙動模擬手段と、前記実車台上試験装置に搭載された前記実車に連結され、前記リアルタイム車両挙動模擬手段が演算した第1の仮想車両の連結部における挙動を再現するとともに、前記実車側からの入力を検出する車体間運動模擬装置とを備え、前記リアルタイム車両挙動模擬手段は、前記車体間運動模擬装置から取得した前記実車からの入力、及び、前記静的車両挙動模擬手段が演算した前記第2の仮想車両の挙動を用いて演算を行うことを特徴とする。
また、本発明の鉄道車両の挙動模擬方法は、編成状態の鉄道車両の挙動を模擬する挙動模擬方法であって、予め準備された軌道データに応じて加振可能な軌条輪上に実車を設置して走行状態を再現する実車台上試験ステップと、前記実車台上試験ステップと同時に実行され前記編成中において前記実車に連結される第1の仮想車両の挙動をリアルタイムで演算するリアルタイム車両挙動模擬ステップと、前記編成中において前記第1の仮想車両に連結される第2の仮想車両の挙動を、前記実車台上試験ステップ及び前記リアルタイム車両挙動模擬ステップに先立って演算する静的車両挙動演算ステップと、前記実車台上試験ステップと同時に実行され、前記リアルタイム車両挙動模擬ステップにおいて求められる前記第1の仮想車両の連結部における挙動を再現して前記実車に入力するとともに前記実車からの入力を検出する車体間運動模擬ステップとを備え、前記リアルタイム車両挙動模擬ステップにおいて、前記車体間運動模擬ステップにおいて検出された前記実車からの入力、及び、前記静的車両挙動模擬ステップにおいて演算された前記第2の仮想車両の挙動を用いて演算を行うことを特徴とする鉄道車両の挙動模擬方法である。
上述した本発明によれば、実車の挙動との相関関係が深い第1の仮想車両の挙動のみをリアルタイムで演算し、第2の仮想車両の挙動として予め静的解法で求めたものを用いることによって、比較的軽い演算負荷及びノード間通信負荷によって長編成の挙動をより実走行に近い環境で模擬可能なHILSシステムを構築することができる。
以上のように、本発明によれば、長編成時であってもリアルタイム挙動模擬の演算負荷が軽減された鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法を提供することができる。
本発明を適用した鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法の実施の形態におけるHILS構成を示す図である。 実施の形態におけるモデルとライブラリの構成を示す図である。 実施の形態の輪軸の例における構造体ブロックの基本構造を示す図である。 実施の形態の軸バネの例における機能ブロックの基本構造を示す図である。 実施の形態における車両運動モデル(1両モデル)を示す図である。 実施の形態における集約ブロックを用いて分散化した車両運動モデルを示す図である。 実施の形態における集約ブロックの基本構造を示す図である。 本実施の形態における鉄道車両の挙動模擬装置のシステム構成を示す模式図である。 実施の形態におけるHILS編成時の実車両の挙動を示すグラフである。 長編成の場合におけるHILS構成を示す模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の挙動模擬装置及び挙動模擬方法について説明する。
本実施の形態は、HILS(Hardware In the Loop Simulation)により鉄道車両編成の各車両の挙動を模擬するものである。
図1は、本実施の形態におけるHILS構成を示す図である。
本実施の形態においては、例えば、進行方向前方側から1,2,3・・M号車を有するM両編成の挙動を模擬する。そして、編成中のN号車として試験台に搭載された実車を用いて挙動模擬を行い、仮想1号車から仮想N−1号車、及び、仮想N+1号車から仮想M号車は、車両運動モデルを用いたシミュレーションによって挙動を演算する。
また、仮想車両のシミュレーションにおいては、全ての仮想車両をリアルタイムで演算すると演算負荷がきわめて高くなることから、N号車に直接連結された仮想N−1号車、及び、仮想N+1号車の挙動のみリアルタイムで演算し、その他の車両の挙動は、図示しない静的挙動模擬手段を用いた既存の静的シミュレーションによって予め演算したものを用いるようにしている。
以下、本実施の形態におけるHILS用車両運動モデルの構築について説明する。
車両運動シミュレーションをリアルタイムに実行するには大きな演算能力が必要であり、現状の演算能力では1つのCPUによって1両モデルの運動計算を負荷するのは困難である。そこで、本実施の形態においては、複数のシミュレータを相互に広帯域の光ケーブルでリンクすることによって、計算負荷を分散する構成を採用した。
このような分散された構成を適用するためには、1両モデルが車体、台車、及び、輪軸といった単位に容易に分割できることが要求される。また、空気バネ、ダンパといった要素部品についても個別に分割しライブラリ化することで、より多くの車両部品を組み合わせた検証が容易に実現できる。
そこで、本実施の形態においては、上述した分割された各要素を、それぞれが入出力機能と動特性を持つシミュレーションプログラム(以下、ブロックと称する)として分割、管理する構成をとっている。
図2は、実施の形態におけるモデルとライブラリの構成を示す図である。
図2に示すように、モデル化の対象となる車両100は、車体110、1位台車枠121、2位台車枠122、輪軸131〜134等を有し、車体110と各台車枠121,122との間、及び、各台車枠121,122と各輪軸131〜134との間には、複数のバネ、ダンパ要素が設けられている。
また、ライブラリは、これらの車体、ダンパ、台車枠、輪軸等の要素ごとにそれぞれ設けられている。
また、本実施の形態において、HILS用車両モデル構築の要件を満たし、またシミュレータとして使用するハードウェア側の対応状況を考慮して、ブロックダイアグラム形式によるプログラミングを特徴とするMatlab/Simulinkを用いて車両運動モデルを構築した。
Matlab/Simulinkの特徴として、出力信号に対する演算内容をブロック線図で記述することができ、処理機能別にユーザが自由にブロック単位でまとめることが可能なことがあげられる。また、C言語プログラムの自動生成が可能であり、シミュレータへのモデル実装が容易である。
本実施の形態において、車両モデルをブロック単位で構成するにあたり、機能別に以下のような種別を設定した。
(1)構造体ブロック
構造体とは、車体、台車枠、輪軸といった、質量及び慣性モーメントを持ち、各着力点から並進力及び回転モーメントを受ける要素を示すものとする。構造体ブロック内は、外部にある各機能ブロックから発生した力を各構造体の重心に対する並進力、モーメントに変換する6×6の係数行列(以下、「影響度行列」と称する)、力から質点の加速度を算出する質量ゲインブロック、積分器、重心の変位及び速度から寸法情報に基づいて各着力点の変位及び速度を算出する12×12の係数行列(以下、「着点変換行列」と称する)等を有して構成されている。
図3は、輪軸の例における構造体ブロックの基本構造を示す図である。
(2)機能ブロック
機能ブロックは、バネ、ダンパ等の構造体どうしを結合し、変位・速度入力に対して内力を発生する要素をブロック化したものである。
図4は、軸バネの例における機能ブロックの基本構造を示す図である。図4に示すように、ブロック内は、剛性行列、減衰行列などを有して構成されている。
なお、車輪とレールとの間で発生するクリープ力もこの機能ブロックに含まれる。
(3)外乱ブロック
外乱ブロックは、遠心力、重力復元力など構造体ブロックに対して外力として作用する要素をブロック化したものである。
車両の運動モデルは以上説明したブロックの組み合わせによって構成され、6自由度の変位(x,y,z,φ,θ,ψ)、速度ベクトル(dx/dt,dy/dt,dz/dt,dφ/dt,dθ/dt,dψ/dt)と、6方向の並進力(Fx,Fy,Fz)、モーメント(Mx,My,Mz)ベクトルが各モデル内を流れることになる。
本実施の形態では、HILS用車両モデルの一例として、在来線試験車両を対象としたものを用いる。このモデルにおいて、各部のバネ、ダンパは、従来シミュレーションモデルで使用されてきた線形モデルにより構成している。
図5は、車両運動モデル(1両モデル)を示す図である。
また、図5において使用している自由度の記号を表1に示す。自由度は、実車両の動きを忠実に再現するために、車体6自由度、台車枠6自由度、輪軸3自由度で構成している。
Figure 2010223675
車両100は、レールに相当する軌条輪上に設置され、車体110は前後方向に対して地上側に固定された後述する車体間運動模擬装置20に連結器を介して固定される。
このような車両100のモデルは、車体、台車枠、輪軸の各構造体ブロックに対して、バネ、ダンパ、クリープ力の各機能ブロック及び重力復元力の外乱ブロックを接続して構成されている。
上述した車両モデルを用いて車両挙動をシミュレートした場合、シミュレータ内を例えば256ベクトルが流れることになり、HILSシステム内でリアルタイムシミュレーションを行う場合には演算負荷が極めて大きいものになってしまう。
これに対し、車両モデルを例えば車体と台車とで分割し、分散処理を図る場合であっても、車体と台車をそれぞれシミュレートするシミュレータ(ノード)間の通信負荷が大きなものとなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、以下説明する集約ブロックを用いて、ノード間でやりとりされるベクトルの集約化を行い、演算負荷及びノード間通信負荷の軽減を図っている。
図6は、集約ブロックを用いて分散化した車両運動モデルを示す図である。
図7は、集約ブロックの基本構造を示す図である。
第1集約ブロック201は、車体110の下部に設けられる1位車体支持装置111と、1位台車枠121との間で伝達される各ベクトルの集約化を行うものである。
第2集約ブロック202は、車体110の下部に設けられる2位車体支持装置112と、2位台車枠122との間で伝達される各ベクトルの集約化を行うものである。
これらの集約ブロックは、本発明にいう情報集約手段及び情報配信手段として機能する。情報集約手段及び情報配信手段の機能は、後述する第1〜第3シミュレータ31〜33に適宜割り当てられる。
図7に示すように、集約ブロック201,202は、車体支持装置111,112に設けられた機能要素である左右動ダンパ1、左右動ダンパ2、ヨーダンパ1、ヨーダンパ2、空気バネ1、空気バネ2、牽引装置等のバネ力、ダンパ力と、6×6の影響度行列とを用いて、台車枠121,122の重心に作用する並進力及びモーメントを演算する。
また、集約ブロック201,202は、台車枠121,122の重心の変位及び速度と、12×12の着点変換行列を用いて、上述した各バネ、ダンパの着点変位及び速度を演算する。
その結果、図6に示すように、本実施の形態においては、集約ブロックから台車枠重心伝達される台車枠重心への並進力、モーメントが6ベクトル、台車枠重心から集約ブロックに伝達される台車枠重心の変位、速度が12ベクトルとなって、1つの台車あたり18ベクトル、1車両あたり36ベクトルまで各ノード間でやりとりされる情報を集約することが可能となった。
図8は、挙動模擬装置のシステム構成を示す模式図である。なお、図8においては、実車よりも仮想編成の進行方向前方側の構成のみを図示するが、実車の後方側にも実質的に同様の構成が設けられる。
挙動模擬装置1は、車両100が設置される台上試験装置10、車両100の連結部(妻部)に連結される車体間運動模擬装置20、第1シミュレータ31、第2シミュレータ32、第3シミュレータ33、コンソールPC40、ハブ50等を備えて構成されている。
台上試験装置10は、車両100の軌道上における走行状態を実車を用いて模擬する装置である。台上試験装置10は、車両100の輪軸131〜134がそれぞれ載せられる軌条輪を備えている。この軌条輪は、車両の走行速度に応じた速度で回転されるとともに、例えば実際の営業線におけるデータを採取して生成され予め蓄積された軌道不整データに基づいて、上下、左右、ロール方向にそれぞれ加振可能となっている。
また、台上試験装置10には、配電盤11、軌道データサーバ12が設けられている。
配電盤11は、台上試験装置10を駆動する各種アクチュエータに供給させる電力を統括的に制御するものである。
軌道データサーバ12は、軌道不整データを蓄積したデータベース、シェアードメモリ等の記憶手段、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータを含む入出力インターフェイス等を備えている。
車体間運動模擬装置(車体間運動模擬装置)20は、連結部における進行方向前側車両の車体妻面の挙動を模擬する装置である。
車体間運動模擬装置20は、車両100の連結部に連結される連結部を備えている。この連結部は、固定設置された基部に対してリンク機構等によって変位可能に支持され、車両100に対して、連結器や車体間ヨーダンパ等を用いて、実車両による編成の連結部と同様に連結されている。
車体間運動模擬装置20は、第3シミュレータ33がリアルタイムで演算した仮想車両の車体挙動に基づいて、仮想車両の連結部の変位及び速度を再現するように、複数のアクチュエータによって駆動される。これによって、車両100は、あたかも実車による編成中に配置された場合と同様の入力を受ける。
また、車体間運動模擬装置20は、車両100から連結部に入力される並進力及びモーメントを検出するセンサを備えている。
また、車体間運動模擬装置20は、装置を統括的に制御するコントローラ21を備えている。コントローラ21は、CPU等の情報処理装置、シェアードメモリ等の記憶装置、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータを含む入出力インターフェイス等を備えている。
第1シミュレータ31、第2シミュレータ32、第3シミュレータ33は、それぞれ1位台車、2位台車、車体の分散モデルを実時間で演算する分散型のリアルタイムシミュレータである。これらはそれぞれCPU等の情報処理装置、メインメモリ及びシェアードメモリ等の記憶装置等を備えている。
これらの第1シミュレータ31、第2シミュレータ32、第3シミュレータ33は、それぞれ分散化された車両運動モデルを演算するノードとして機能する。
コンソールPC40は、オペレータが挙動模擬装置1の操作を入力する入力卓として機能する。
ハブ50は、上述した軌道データサーバ12、車体間運動模擬装置20のコントローラ21、第1〜第3シミュレータ31〜33、コンソールPC40等を、広帯域通信が可能なイーサネット(富士ゼロックス株式会社の登録商標)によって接続し、相互に通信可能とするものである。
以下、上述した本実施の形態の効果について説明する。
図9は、HILS編成時の実車両の挙動を示すグラフである。
この場合、仮想編成は2両編成であって、その後尾車両である2号車を実車を用いて模擬している。また、軌道不整データとして実際の在来線の営業線で取得したデータを用い、この軌道上を走行速度130km/hで走行する場合の車両挙動模擬を行っている。
図9において、各グラフの縦軸は上段から車体ロール角、車体ヨー角、通り不整をそれぞれ示し、横軸は時間を示している。また、HILSを用いた2両編成のデータを実線で示し、実車のみの単車でのデータを破線で示している。
図9に示すように、本実施の形態によれば、実車が編成中に組み込まれたことによる単車状態との挙動の差が散見され、単車条件とは異なった編成中特有の車両挙動を模擬可能であることがわかる。
次に、このHILSシステムを用いて3両編成以上の仮想編成の車両挙動を模擬する方法について説明する。
例えば新幹線の16両編成のうち、任意の1両として実車を用い、その他の15両全てをリアルタイムシミュレーションによって挙動模擬することは、演算負荷やノード間の通信負荷の観点から、現状では仮想車両1両あたり3台のシミュレータが必要となり、高コストとなる。
そこで、本実施の形態においては、実車両(N号車)の直前、直後のN−1号車及びN+1号車のみを、上述したリアルタイムシミュレータを用いてリアルタイムにシミュレートし、その前後の車両(1号車からN−2号車、及び、N+2号車からM号車(後尾車))については、予め静的解法によって求めた車両模擬データを用いている。
図10は、長編成の場合におけるHILS構成を示す模式図である。
この場合、先ず1号車からM号車までの編成全体について、静的シミュレーションによって予め車両挙動を模擬し、その履歴を蓄積しておく。
そして、このような静的解法によって求めたN−2号車のN−1号車側連結部の挙動、及び、N+2号車のN+1号車側連結部の挙動を、それぞれN−1号車及びN+1号車の車体挙動を演算するリアルタイムシミュレータに与え、上述したようなHILSによる挙動模擬を行う。
以上説明したように、本実施の形態によれば、鉄道車両の運動モデルを車体支持装置と台車枠との間で分散化し、各ノード間でやりとりされる情報を台車枠重心への並進力及びモーメントに集約し、台車枠重心の変位及び速度を元に複数の車体支持装置の取付部に関する変位及び速度をそれぞれ演算する集約ブロックを設けたことによって、車体モデル及び台車モデルをそれぞれ演算する各ノードの演算負荷を軽減するとともに、これらの各ノード間の通信負荷も軽減できる。
また、実車の前後に連結される一部の仮想車両のみリアルタイムシミュレーションによって車両挙動を模擬し、さらにその前後に連結される仮想車両の挙動は予め静的解法で演算したものを用いることによって、長編成の場合であっても演算負荷及びノード間通信負荷を軽減できる。
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記した実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
(1)車両運動モデルの詳細な構成や、分散化する場合の分割位置や個数は上述した実施の形態に限定されず、適宜変更することができる。
(2)車両挙動模擬装置の詳細な構成は適宜変更することができる。例えば、車体間運動模擬装置は、リンク機構を用いたものに限らず、例えば6軸モーションベースを有するもの等、適宜変更することができる。
(3)本実施の形態の構成においては、実車を1両用い、その前後各1両の仮想車両をリアルタイムシミュレーションしているが、装置の能力に余裕があれば、例えば2両以上の実車をハードウェアとしてHILSシステムに組み込んだり、実車の前後の複数車両をリアルタイムシミュレーションによって挙動模擬するようにしてもよい。また、編成中において実車を用いる箇所も実施の形態のような中間車両に限定されず、例えば先頭車や後尾車を実車によって模擬するようにしてもよい。
(4)本実施の形態においては、リアルタイムシミュレータを構成する各ノードを広帯域の光ファイバーチャンネルによって接続しているが、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、複数のCPU及びこれに連結されたメインメモリを、広帯域の信号をカバーする上り下り専用レーンを有するポイント・トゥ・ポイント型リンクによって連結したハイパートランスポート(AMD社の商標)等を用いてもよい。
1 挙動模擬装置 10 台上試験装置
11 配電盤 12 軌道データサーバ
20 車体間運動模擬装置 21 コントローラ
31 第1シミュレータ 32 第2シミュレータ
33 第3シミュレータ 40 コンソールPC
50 ハブ 100 車両
110 車体 111 1位車体支持装置
112 2位車体支持装置 121 1位台車枠
122 2位台車枠 131〜134 輪軸
201 第1集約ブロック 202 第2集約ブロック

Claims (2)

  1. 編成状態の鉄道車両の挙動を模擬する挙動模擬装置であって、
    予め準備された軌道データに応じて加振可能な軌条輪上に実車を設置して走行状態を再現する実車台上試験装置と、
    前記編成中において前記実車に連結される第1の仮想車両の挙動をリアルタイムで演算するリアルタイム車両挙動模擬手段と、
    前記編成中において前記第1の仮想車両に連結される第2の仮想車両の挙動を予め演算する静的車両挙動模擬手段と、
    前記実車台上試験装置に搭載された前記実車に連結され、前記リアルタイム車両挙動模擬手段が演算した第1の仮想車両の連結部における挙動を再現するとともに、前記実車側からの入力を検出する車体間運動模擬装置とを備え、
    前記リアルタイム車両挙動模擬手段は、前記車体間運動模擬装置から取得した前記実車からの入力、及び、前記静的車両挙動模擬手段が演算した前記第2の仮想車両の挙動を用いて演算を行うこと
    を特徴とする鉄道車両の挙動模擬装置。
  2. 編成状態の鉄道車両の挙動を模擬する挙動模擬方法であって、
    予め準備された軌道データに応じて加振可能な軌条輪上に実車を設置して走行状態を再現する実車台上試験ステップと、
    前記実車台上試験ステップと同時に実行され前記編成中において前記実車に連結される第1の仮想車両の挙動をリアルタイムで演算するリアルタイム車両挙動模擬ステップと、
    前記編成中において前記第1の仮想車両に連結される第2の仮想車両の挙動を、前記実車台上試験ステップ及び前記リアルタイム車両挙動模擬ステップに先立って演算する静的車両挙動演算ステップと、
    前記実車台上試験ステップと同時に実行され、前記リアルタイム車両挙動模擬ステップにおいて求められる前記第1の仮想車両の連結部における挙動を再現して前記実車に入力するとともに前記実車からの入力を検出する車体間運動模擬ステップとを備え、
    前記リアルタイム車両挙動模擬ステップにおいて、前記車体間運動模擬ステップにおいて検出された前記実車からの入力、及び、前記静的車両挙動模擬ステップにおいて演算された前記第2の仮想車両の挙動を用いて演算を行うこと
    を特徴とする鉄道車両の挙動模擬方法。
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