JP2010195628A - 金属酸化物構造体及びその製造方法、並びに発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成され、発光素子、高感度のセンサー、などとして有用な金属酸化物構造体及びその製造方法、並びに発光素子の提供。
【解決手段】本発明の金属酸化物構造体の製造方法は、サファイア基板上に金属酢酸塩水和物を含む層を形成する層形成工程と、前記金属酢酸塩水和物を含む層を不溶化処理する不溶化処理工程と、前記不溶化処理された層が形成されたサファイア基板を、金属イオンと、NH イオンとを含む反応溶液に浸漬させて、金属酸化物を主成分とする棒状結晶を成長させる成長工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、発光素子、高感度なセンサー等に好適に用いられる金属酸化物構造体、及び該金属酸化物構造体の製造方法、並びに該金属酸化物構造体を備える発光素子に関する。
従来より、基板上にウィスカー状乃至針状の金属酸化物結晶を立設した構造体について種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、一定方位への規則的な結晶配向構造を有する金属含有材料を含む結晶面を有する基板(例えば、c面サファイア基板)を、金属酸化物が析出可能な反応溶液中に浸漬させて該金属含有材料を含む結晶面に金属酸化物結晶を析出させる方法が提案されている。この方法によれば、針状及び棒状のいずれかの形状を有する金属酸化物構造体を効率よく製造することができる。
しかし、前記特許文献1では、種晶粒子、即ち結晶成長のスタートとなる核が存在しないため、細径の棒状結晶を得ることはできず、また、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない(高密度になっていない)。一方で、種晶粒子層(中間層(テンプレート層))を、酸化亜鉛のゾルゲル膜を400℃等の温度で熱処理して形成したとしても、基板上に得られる棒状結晶の配向性は低下してしまう(棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない)。
また、非特許文献1には、フッ素ドープされた酸化スズがコーティングされたガラス基板に、金属酢酸塩水和物を含む塗布液を塗布し、65℃、24時間の加熱処理により脱水して中間層(テンプレート層)を形成した後、酸化亜鉛からなる棒状結晶を形成する方法が提案されている。この方法によれば、従来よりも低い温度での加熱により、中間層(テンプレート層)を形成することができ、耐熱性の低い基板にも適用できる。
しかし、前記非特許文献1では、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない。
また、非特許文献1及び非特許文献2には、フッ素ドープされた酸化スズがコーティングされたガラス基板に、金属酢酸塩水和物を含む塗布液を塗布し、常圧下、1時間の紫外線露光により脱水して中間層(テンプレート層)を形成した後、酸化亜鉛からなる棒状結晶を形成する方法が提案されている。
しかし、前記非特許文献2の方法では、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない。
また、非特許文献3には、有機金属気相成長法により酸化亜鉛層を形成する方法が提案されている。
しかし、前記非特許文献3の方法では、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない。
また、非特許文献4には、電気化学的析出により酸化亜鉛層を形成する方法が提案されている。
しかし、前記非特許文献4の方法では、電気を必要とする上に、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない。
また、非特許文献5及び6には、電気化学的析出によりZn1−xMgO層を形成する方法が提案されている。
しかし、前記非特許文献5及び6の方法では、電気を必要とする上に、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を得ることができない。
したがって、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体、及び該金属酸化物構造体を効率よく製造する方法は、未だ提供されていないのが現状である。
特開2006−96591号公報
X.L. Hu, Y. Masuda, T. Ohji and K. Kato, Journal of Colloid and Interface Science. 325, 459−463 (2008). X.L. Hu, Y. Masuda, T. Ohji and K. Kato, Langmuir, 24, 7614−7617 (2008). C. R. Gorla et al., Journal of Applied Physics. 85, 2595−2602 (1999). M. Izaki, Journal of The Electrochemical Society, 146, 4517−4521 (1999). H. Ishizaki and N. Yamada, Electrochemical and Solid−State Letters, 9, C178−C180 (2006). H. Ishizaki and H Maeda, "Electrochemical Fabrication of Zn1−xMgxO Films from an Aqueous Solution Containing Magnesium Nitrate and Zinc Sulfate"Zinc Oxide and Related Materials−2007MRS Proceedings Volume 1035E (Electronic content only − No book published) 1035−L05−25.
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成され、発光素子、高感度のセンサー、などとして有用な金属酸化物構造体及びその製造方法、並びに発光素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、ウェットプロセスにより金属酸化物構造体を効率よく、低コストで製造することができる金属酸化物構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、サファイア基板上に金属酢酸塩水和物を含む層を形成し、前記金属酢酸塩水和物を含む層を不溶化処理し、前記不溶化処理された層が形成されたサファイア基板を反応溶液に浸漬させることにより、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成された金属酸化物構造体を製造することができることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> サファイア基板上に金属酢酸塩水和物を含む層を形成する層形成工程と、前記金属酢酸塩水和物を含む層を不溶化処理する不溶化処理工程と、前記不溶化処理された層が形成されたサファイア基板を、金属イオンと、NH イオンとを含む反応溶液に浸漬させて、金属酸化物を主成分とする棒状結晶を成長させる成長工程と、を含むことを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法である。
<2> 不溶化処理が、加熱処理である前記<1>に記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
<3> 加熱処理において、加熱温度が30℃〜300℃であり、加熱時間が30秒間〜30時間である前記<1>から<2>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
<4> 金属酢酸塩水和物が、酢酸亜鉛二水和物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
<5> 成長工程後に、金属酸化物構造体を加熱する成長後加熱工程をさらに含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法により製造される金属酸化物構造体であって、サファイア基板と、該サファイア基板上に立設した棒状結晶と、を備え、前記棒状結晶の長軸が前記サファイア基板面と直交する垂線に対して±5°の範囲内に配向し、前記棒状結晶の短軸の平均直径が500nm以下であることを特徴とする金属酸化物構造体である。
<7> サファイア基板と棒状結晶との間に形成された、金属酢酸塩を含む中間層をさらに備える前記<6>に記載の金属酸化物構造体である。
<8> 棒状結晶がウルツ鉱型結晶構造であり、前記棒状結晶の長軸方向と、サファイア基板のc軸方向とが略同方向である前記<7>に記載の金属酸化物構造体である。
<9> 棒状結晶が、ロッド状、ウィスカー状、及びファイバー状のいずれかである前記<6>から<8>のいずれかに記載の金属酸化物構造体である。
<10> 前記<6>から<9>のいずれかに記載の金属酸化物構造体を備えることを特徴とする発光素子である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、棒状結晶が基板上に高配向且つ高密度で形成され、発光素子、高感度のセンサー、などとして有用な金属酸化物構造体及びその製造方法、並びに発光素子を提供することができる。
図1Aは、実施例1で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(上面図)である(その1)。 図1Bは、実施例1で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(上面図)である(その2)。 図1Cは、実施例1で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(断面図)である(その1)。 図1Dは、実施例1で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(断面図)である(その2)。 図2は、比較例1で作製した金属酸化物構造体のSEM写真である。 図3は、比較例2で作製した金属酸化物構造体のSEM写真である。 図4は、比較例3で作製した金属酸化物構造体のSEM写真である。 図5Aは、比較例4で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(上面図)である。 図5Bは、比較例4で作製した金属酸化物構造体のSEM写真(断面図)である。 図6Aは、金属酸化物構造体の蛍光発光強度を示すグラフである(その1)。 図6Bは、金属酸化物構造体の蛍光発光強度を示すグラフである(その2)。
(金属酸化物構造体)
本発明の金属酸化物構造体は、サファイア基板と、該サファイア基板上に立設した棒状結晶とを有し、更に必要に応じてその他の構成を有する。
−サファイア基板−
前記サファイア基板としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、などが挙げられ、前記構造としては、例えば単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
前記サファイア基板の材料としては、単結晶のサファイアである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、c面サファイア、a面サファイア、r面サファイア、などが挙げられる。
−棒状結晶−
前記棒状結晶は、サファイア基板上に立設しており、該棒状結晶がサファイア基板面に対し略直交する方向に立設されている。また、前記サファイア基板がc面サファイアである場合、前記棒状結晶の長軸方向と、前記サファイア基板のc軸方向とが略同一方向であることが好ましい。
ここで、前記サファイア基板がc面サファイアである場合、前記棒状結晶がサファイア基板面に対し略直交する方向に立設されているとは、前記棒状結晶の長軸がサファイア基板面と直交する垂線に対して±5°、好ましくは、±1.5°の範囲内に配向することを意味する。
なお、前記棒状結晶の長軸とサファイア基板面と直交する垂線とがなす角度が変化すると、後述する蛍光発光強度も変化することが確認されている。
ここで、前記棒状結晶が、サファイア基板上に立設していることは、例えば、サファイア基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより確認することができる。
また、前記棒状結晶の長軸がサファイア基板面と直交する垂線に対して±5°、好ましくは、±1.5°の範囲内に配向することは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた基板と棒状結晶の界面付近の断面像から、棒状結晶の長軸と基板面と直交する垂線とがなす角を測定することにより確認することができる。
前記棒状結晶としては、金属酸化物を主成分とする限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸化亜鉛(ZnO)からなる棒状結晶が好ましい。前記棒状結晶は、前記棒状結晶の一部を構成する主成分以外に、主成分でない共存物が含まれていてもよい。例えば、前記棒状結晶の主成分が酸化亜鉛(後述するウルツ鉱型結晶構造)で、前記共存物が前記主成分の結晶構造とは異なる他の結晶構造を有するものであってもよい。
前記金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、MgO、Al、In、SiO、SnO、TiO、チタン酸バリウム、SrTiO、PZT、YBCO(YBaCu7−x)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、YAG(YAl12又は3Y・5Al)やここに記載した複合酸化物や固溶体、例えば、ITO(In/SnO)、Zn1−xMgO、などが挙げられる。中でも、高表面積の金属酸化物を得られる、あるいは安全上の問題として人体に与える影響もないという点で、酸化亜鉛(ZnO)が特に好ましい。
前記棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)としては、500nm以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜490nmが好ましい。
前記棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)が500nmを超えると、成長反応を終えたときに最終的に得られるロッドが太くなり、最終的な金属酸化物層の表面積が低下し、センサーとして用いる場合の感度が低下してしまうことがある。
ここで、前記棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、得られた画像からノギス等で計測したり、画像解析装置などを用いて測定することができる。観察においては、サファイア基板をつけたまま観察してもよいし、サファイア基板から剥離させた状態で観察してもよい。
前記棒状結晶の長軸方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmがより好ましい。
前記棒状結晶の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ロッド状、ウィスカー状、及びファイバー状のいずれかであることが好ましい。
前記棒状結晶の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウルツ鉱型結晶構造が好ましい。前記ウルツ鉱型結晶構造とは、陰イオンと陽イオンが1:1で結合してできるイオン結晶にみられる結晶構造のひとつである。前記ウルツ鉱型結晶構造は、棒状結晶がZnOである場合のみならず、棒状結晶がZnOに金属をドープした組成、例えばZn1−XMgOである場合においても、とり得る構造である。前記棒状結晶の構造が前記ウルツ鉱型結晶構造であるか否かは、例えば、X線回折測定により測定することができる。
前記棒状結晶の密度としては、サファイア基板1μm当り10本以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20本以上が好ましく、30本以上がより好ましく、40本以上が特に好ましい。
前記棒状結晶の密度が、サファイア基板1μm当り10本より少ないと、最終的な金属酸化物層の表面積が低下し、センサーとして用いる場合の感度が低下してしまうことがあり、また、発光素子として用いる場合の発光強度が低下してしまうことがある。
ここで、前記棒状結晶の密度は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、得られた画像(上面図)から画像解析装置などを用いて測定することができる。
前記サファイア基板に棒状結晶を析出(成長)させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基板を棒状結晶が析出可能な反応溶液中に浸漬させて棒状結晶を析出させる水溶液中での結晶成長法が、高価な設備を必要とせず、低コスト、低温プロセスである点で好ましい。なお、棒状結晶の成長方法については、金属酸化物構造体の製造方法において説明する。
−その他の構成−
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中間層(テンプレート層)、などが挙げられる。
−−中間層(テンプレート層)−−
前記中間層(テンプレート層)としては、金属酢酸塩を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属酢酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸亜鉛などが挙げられる。本発明の金属酸化物構造体は、製造工程においては、前記金属酢酸塩を含む中間層(テンプレート層)が形成されているが、中間層(テンプレート層)の全部乃至一部は、棒状結晶を析出(成長)させる際に、非特許文献2にも記載のある下記式1に示す加水分解反応などにより、金属酢酸塩が分解して、金属酸化物となる。ここで形成された金属酸化物は、棒状結晶の一部となって区別がつかないこともあるし、区別できるときもある。
(式1)
Zn(CHCOO)(無水)+2OH→ZnO+2CHCOO+H
前記中間層(テンプレート層)の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜800nmが好ましく、5nm〜400nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記中間層(テンプレート層)の厚みが、1nm未満であると、結晶成長過程において中間層が全て溶解してしまうことがあり、800nmを超えると、結晶成長はできても、成長させた結晶の配向が乱れてしまうことがある。
ここで、前記中間層(テンプレート層)の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した後に、その厚みを計測することにより測定することができる。但し、中間層(テンプレート層)が薄くて、汎用的な走査型電子顕微鏡(SEM)や標準的な透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では、その厚みを計測することができないことがあり、その場合は、高分解能の透過型電子顕微鏡などにより計測する。
前記中間層(テンプレート層)をサファイア基板面に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酢酸塩水和物を溶媒中に溶解させてなる塗布液をサファイア基板面に塗布し、加熱処理等の不溶化処理を行う方法、などが挙げられる。
(金属酸化物構造体の製造方法)
本発明の金属酸化物構造体の製造方法は、層形成工程と、不溶化処理工程と、成長工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、成長後加熱工程などのその他の工程を含んでなる。
<層形成工程>
前記層形成工程は、サファイア基板上に金属酢酸塩水和物を含む層を形成する工程である。
前記層の形成は、例えば、金属酢酸塩水和物を含む塗布液を塗布することなどにより行われる。
前記塗布液は、金属酢酸塩水和物を含み、溶媒、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記金属酢酸塩水和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸亜鉛二水和物などが挙げられる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無水エタノール、無水メタノール、2−メトキシエタノール、などが挙げられる。中でも、無水エタノールが、取り扱いやすい点で、好ましい。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法、などが挙げられる。
前記塗布液の塗布量は、その塗布液の固形分によって変わるが、固形分の膜厚で800nm以下となる塗布量が好ましく、5nm〜400nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
<不溶化処理工程>
前記不溶化処理工程は、前記金属酢酸塩水和物を含む層を不溶化処理する工程である。
前記不溶化処理としては、前記金属酢酸塩水和物を含む層を後述する反応溶液に対して不溶化させる処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱処理が挙げられる。 前記層中に含まれる金属酢酸塩水和物は、前記不溶化処理を行わないと、例えば、下記式2に示すように、後述する反応溶液に対して溶解してしまう。
(式2)
Zn(CHCOO)・2HO→Zn2++2CHCOO+2H
しかし、前記不溶化処理を行うことにより、前記層中に含まれる金属酢酸塩水和物が脱水されて無水金属酢酸塩となり、後述する反応溶液に対して溶解度が低下する。
例えば、酢酸亜鉛層は、水和物の脱水により、前記反応溶液に対して溶解度が低下し、前記反応液中で少しは溶けたとしても、完全になくならないうちに、酸化亜鉛層を形成する。このように、水和物の脱水に伴い、前記反応溶液に対して完全に不溶化されることのみならず、前記反応溶液に対して溶解度が低下することについても、「不溶化」の範囲に含まれるものとする。
<<加熱処理>>
前記加熱処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブンによる加熱などが挙げられる。
前記加熱処理の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、35℃〜300℃が好ましく、40℃〜150℃がより好ましく、45℃〜110℃が特に好ましい。
前記加熱処理の加熱温度が35℃未満であると、金属酢酸塩水和物中の水和水が脱水しないことがあり、300℃を超えると、基板が変形してしまうことがある。
前記加熱処理の加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30秒間〜30時間が好ましく、10分間〜28時間がより好ましく、20分間〜24時間が特に好ましい。
前記加熱処理の加熱時間が30秒間未満であると、金属酢酸塩水和物中の水和水が脱水しないことがあり、30時間を超えると、不溶化処理はできても表面構造が粗くなり、起伏の大きな凹凸が形成されることがある。
また、前記不溶化処理は、加熱処理でなくても、結果的に熱を発生させる処理であって、金属酢酸塩水和物から水和物の全部もしくは一部を除去する効果のある処理であればよい。
<成長工程>
前記成長工程は、前記不溶化処理された層が形成されたサファイア基板を、金属イオンと、NH イオンとを含む反応溶液に浸漬させて、金属酸化物を主成分とする棒状結晶を成長させる工程である。
前記金属イオンにおける金属は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Znが好ましい。
前記反応溶液は、棒状結晶が析出可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、金属酸化物源、錯化剤、溶媒、pH調整剤などを含有してなる。
前記金属酸化物源としては、基板に析出させる棒状結晶の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛(ZnO)を成長させる場合には、Zn又はその塩、Znの水酸化物、Znの水和物、などが挙げられる。
前記Znの塩としては、例えばZnの硫酸塩(例えばZnSO・7HO等)、Znの硝酸塩(例えばZn(NO等)、Znの塩化物(例えばZnCl等)、Znの酢酸塩(例えばZn(CHCOO)等)などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、などが挙げられる。
前記錯化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、などが挙げられる。
前記反応溶液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8.0〜12.5が好ましく、9.0〜12.0がより好ましい。該反応溶液のpHは、pH調整剤を用いて調整される。該pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、NaOH、KOH、NHOH、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
前記反応溶液の温度は、40℃〜95℃が好ましく、50℃〜85℃がより好ましい。
前記サファイア基板の浸漬は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、結晶成長面(層を形成した面)が下側となるように浸漬することが好ましい。
<成長後加熱工程>
前記成長後加熱工程は、成長工程後に、金属酸化物構造体を加熱する工程である。
前記成長後加熱工程の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、250℃〜800℃が好ましく、300℃〜700℃がより好ましく、350℃〜600℃が特に好ましい。
前記成長後加熱工程の加熱温度が250℃未満であると、金属酸化物の結晶性が向上しなかったり、酸素欠陥等が残存することがあり、800℃を超えると、基板が変形してしまうことがある。
前記成長後加熱工程の加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5分間〜24時間が好ましく、10分間〜12時間がより好ましく、30分間〜6時間が特に好ましい。
前記成長後加熱工程の加熱時間が5分間未満であると、金属酸化物の結晶性が向上しなかったり、酸素欠陥等が残存することがあり、24時間を超えると、基板が変形してしまうことがある。
本発明の金属酸化物構造体の製造方法は、「1ポット」で行うことができる。これは、錯形成剤(NHCl)を用いた系であるので、結晶成長させる前に合わせたpHの値が、結晶成長中も、結晶成長終了後もほとんどpH値が変化しない。このようにpH変化がほとんどない場合には、そのまま「1ポット」でロッド状、ウィスカー状、又はファイバー状の棒状結晶を効率よく作製することができる。
−用途−
本発明の金属酸化物構造体は、基板上に棒状結晶が略垂直に配列されており、例えば、絶縁体、導電体、固体電解質、蛍光表示管、EL素子、セラミックコンデンサー、アクチュエーター、レーザー発振素子、冷陰極素子、強誘電体メモリー、圧電体、サーミスター、バリスタ、超伝導体、プリント基板等の電子材料、電磁波シールド材、光誘電体、光スィッチ、光センサー、太陽電池、光波長変換素子、光吸収フィルター等の光素子、温度センサー、ガスセンサー等のセンサー、バイオ診断材料、表面修飾剤、表面保護剤、反射防止剤、抗菌、防汚効果等を目的とする表面改質剤、気相及び液相の少なくともいずれかの相における触媒、又はその担体などに使用することができる。
これらの中でも、棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)が500nm以下の細い棒状結晶を基板上に立設でき、表面積を大きくして、高感度化を図れることから、以下に説明するセンサーとして好適に用いられる。
前記センサーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガスセンサーが好ましい。
前記ガスセンサーにおけるセンシング方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気抵抗を利用する方法、光学的センシング、重量、通りぬけたガス濃度を分析する方法、などが挙げられる。中でも、電気抵抗を利用する方法が好ましい。
前記電気抵抗を利用する方法の測定原理は、温度条件を特定した検出雰囲気下において、金属酸化物構造体の電気抵抗の変動を測定するものである。この雰囲気内にガス検知器を設置し作動させると、ガスの分子が金属酸化物構造体表面に吸着され、電気抵抗を変化させる。一般に電気抵抗の変動幅は、検出ガスの濃度又は含有量により決定される。
(発光素子)
本発明の発光素子は、本発明の前記金属酸化物構造体を備え、該金属酸化物構造体における棒状結晶部分が発光部となる。
前記発光素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、「棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)」、「棒状結晶の長軸の平均長さ」、及び「棒状結晶の長軸と基板面と直交する垂線とがなす角」は、以下のようにして測定した。
<棒状結晶の短軸の平均直径(平均短径)の測定>
走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた像から、ランダムに選択した50個の棒状結晶について、そのサイズを計測することによって平均短径を算出した。測定した部分は、その棒状結晶の中で最も太い部分の長さを計測した。
<棒状結晶の長軸の平均長さの測定>
走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた像から、ランダムに選択した50個の棒状結晶について、そのサイズを計測することによって長軸の平均長さを算出した。測定した部分は、その棒状結晶の両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測した。
なお、ZnO棒状結晶の平均長さと、表1中に記載されている棒状結晶層の膜厚とは、一致していない。これは、中間層から生じたZnO層が存在したり、棒状結晶が基板に対して斜めになったりしているためである。ZnO棒状結晶が基板に対して完全に垂直で、かつ、中間層から生じたZnO層が存在しない(見えない)場合にのみ、ZnO棒状結晶の平均長さと、表1中に記載されている棒状結晶層の膜厚が一致する。
<棒状結晶の長軸と基板面と直交する垂線とがなす角>
走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた基板と棒状結晶の界面付近の断面像から、棒状結晶の長軸と基板面と直交する垂線とがなす角を測定した。
(実施例1)
−金属酸化物構造体の作製−
酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO、99%)(和光純薬工業株式会社製)を無水エタノール(和光純薬工業株式会社製)に溶解させて、0.01Mの塗布液を作製した。該作製した塗布液を、c面サファイア基板(京セラ(株)製)の上に、スピンコーター(ミカサ(株)製)を用いて、該スピンコーターの回転数を1,000rpm、塗布時間30秒間で塗布を行った。その後、室温にて12時間静置乾燥し、オーブンを用いて、65℃で24時間加熱処理し、中間層(テンプレート層)が形成されたc面サファイア基板を得た。
次に、金属酸化物源としてのZnSO・7HOを水中に[Zn2+]が0.02Mとなるように1時間撹拌して溶解した。この溶液中に錯化剤としてのNHClをR=[NH ]/[Zn2+]=30となるように30分間撹拌して、[Zn2+]が0.02Mである母液を調製した。
次に、得られた母液に水及びNaOH水溶液を[Zn2+]が0.01M、pH=11.0となるように添加し、ZnO結晶成長用溶液を調製した。
次に、ZnO結晶成長用溶液中に、前記中間層(テンプレート層)が形成されたc面サファイア基板を前記中間層(テンプレート層)が下向きとなるように入れて60℃とし、この60℃を維持しつつ24時間オーブン中で静置し、ZnO結晶を成長させた(成長工程)。その後、基板を取り出し、乾燥させた。
乾燥後の金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製S−4300)により観察し、X線回折装置(XRD、RINT−2000、株式会社リガク社製)によりX線回折測定を行った結果、c面サファイア基板上にZnO棒状結晶が立設されていることを確認し、c面サファイア基板面の垂線とZnO棒状結晶の長軸とのなす角度が±5°以内であることを確認できた(図1A〜図1D)。
また、得られたZnO棒状結晶の平均短径は、118nm、平均長さは、4.2μmであった。
−蛍光発光強度測定−
作製された金属酸化物構造体に対し、蛍光分光測定装置SPEX Fluorolog
−3(HORIBA)を用いて、波長325nmの光用いて照射することにより励起させ、金属酸化物構造体の各波長における蛍光発光強度を測定した。結果を図6A、図6B、及び表1に示す。
(実施例2)
実施例1で得られた金属酸化物構造体を、さらに、空気中で500℃1時間焼成した以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察し、X線回折装置(XRD、RINT−2000、株式会社リガク製)によりX線回折測定を行った結果、c面サファイア基板上にZnO棒状結晶が立設されていることを確認し、c面サファイア基板面の垂線とZnO棒状結晶の長軸とのなす角度が±5°以内であることも確認できた。
また、得られたZnO棒状結晶の平均短径は、109nm、平均長さは、4.2μmであった。
また、実施例2で作製された金属酸化物構造体について、蛍光発光強度測定を行った。
結果を図6A、図6B、及び表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、ZnO結晶成長用溶液中に、中間層(テンプレート層)が形成されたc面サファイア基板を入れる代わりに、ZnO結晶成長用溶液中に、中間層(テンプレート層)が形成されていないc面サファイア基板そのものを入れた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察した結果、c面サファイア基板上にZnO棒状結晶が立設されていないことが分かった(図2)。
また、比較例1で作製された金属酸化物構造体について、蛍光発光強度測定を行った。
結果を図6A、図6B、及び表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、ZnO結晶成長用溶液中に、中間層(テンプレート層)が形成されたc面サファイア基板を入れる代わりに、ZnO結晶成長用溶液中に、中間層(テンプレート層)が形成されていないSiO層付きSi(100)基板そのものを入れた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察した結果、SiO層付きSi(100)基板上にZnO棒状結晶が立設されていないことが分かった(図3)。
(比較例3)
実施例1において、c面サファイア基板(京セラ(株)製)の代わりに、SiO層付きSi(100)基板を用い、また、実施例1において、室温にて静置乾燥し、65℃で24時間加熱処理する代わりに、65℃での24時間の加熱処理を行わずに、室温での静置乾燥のみを行った以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察した結果、SiO層付きSi(100)基板上にZnO棒状結晶が立設されていないことが分かった(図4)。
(比較例4)
実施例1において、c面サファイア基板(京セラ(株)製)の代わりに、SiO層付きSi(100)基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察し、X線回折装置(XRD、RINT−2000、株式会社リガク製)によりX線回折測定を行った結果、SiO層付きSi(100)基板上にZnO棒状結晶が立設されていることがわかった。また、SiO層付きSi(100)基板面の垂線とZnO棒状結晶の長軸とのなす角度が±5°以内でないことが分かった(図5A及び図5B)。なお、ZnO棒状結晶と基板との間に形成されている層は、酢酸亜鉛層が酸化亜鉛粒子に変化した層であると考えられる。
また、得られたZnO棒状結晶の平均短径は、213nm、平均長さは、5.31μmであった。
また、比較例4で作製された金属酸化物構造体について、蛍光発光強度測定を行った。
結果を図6A、図6B、及び表1に示す。
(比較例5)
実施例1において、室温にて静置乾燥し、65℃で24時間加熱処理する代わりに、65℃での24時間の加熱処理を行わずに、室温での静置乾燥のみを行った以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物構造体を作製した。
作製した金属酸化物構造体を電解放出型走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製)により観察し、X線回折装置(XRD、RINT−2000、株式会社リガク製)によりX線回折測定を行った結果、比較例1と同様な結果となった。つまり、c面サファイア基板上にZnO棒状結晶が少量析出したのみで立設した状態とはならず、c面サファイア基板面の垂線とZnO棒状結晶の長軸とのなす角度が±5°以内でないことが分かった。
次に、実施例1〜2及び比較例1〜5の製造条件、及び測定結果をまとめて表1に示す。
なお、表1における「棒状結晶層の膜厚」は、以下のようにして測定した。
<<棒状結晶層の膜厚の測定方法>>
走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた断面像から、ランダムに選択した10箇所の厚みを計測することによって長軸の平均長さを算出した。測定値は、断面SEM像において、基板表面と棒状結晶層の最表面の間を、基板表面に対する垂線と平行になる直線で結んだ部分の長さを計測した。
なお、前記棒状結晶層は、中間層(テンプレート層)の全部乃至一部が、棒状結晶を析出(成長)させる際に、金属酢酸塩が分解して、棒状結晶の一部となる場合は、棒状結晶の一部となった部分も含む。即ち、中間層から生じたZnOと、その上に形成したZnO棒状結晶とを合わせた層である。一方で、金属酢酸塩が加水分解反応などにより分解して、金属酸化物となった層が棒状結晶と区別できる場合にも、これらの層の厚みを合わせた層を前記棒状結晶層としている。
表1において、「ピーク強度比」は、式I/(I+I)×100により算出される。但し、Iは、340以上420nm未満の波長(図6A)における最大ピーク強度を表し、Iは、420nm〜720nmの波長(図6B)における最大ピーク強度を表す。なお、図6Bにおいて、620nm〜720nmの波長におけるピークは、金属酸化物構造体サンプルに基づくピークではないので、このピークを最大ピークとはしていない。
また、「厚み4.2μm相当の強度比」は、式I/(I+I)×100により算出された強度比を棒状結晶層の膜厚4.2μm相当に換算した値である。例えば、実施例1及び2では、棒状結晶層の膜厚が4.2μmであるので、ピーク強度比そのものの値(それぞれ、3.9、25.8)であり、比較例4では、4.2×4.2/7.1により算出された値(2.5)である。
なお、上記「ピーク強度比」の値は、棒状結晶層の膜厚の増加に伴い増加する値であり、棒状結晶層の膜厚が同じである金属酸化物サンプルにおいては、「ピーク強度比」の値が大きい金属酸化物サンプルの方が、単結晶に近い(欠陥が少ない)とされている。
以上より、実施例1及び2の「厚み4.2μm相当の強度比」は、比較例4の「厚み4.2μm相当の強度比」よりも大きいので、実施例1及び2は、比較例4よりも、欠陥のない単結晶に近い結晶である(欠陥が少ない結晶である)ことが分かった。
本発明の金属酸化物構造体は、例えば、絶縁体、導電体、固体電解質、蛍光表示管、EL素子、セラミックコンデンサー、アクチュエーター、レーザー発振素子、冷陰極素子、強誘電体メモリー、圧電体、サーミスター、バリスタ、超伝導体、プリント基板等の電子材料、電磁波シールド材、光誘電体、光スィッチ、光センサー、太陽電池、光波長変換素子、光吸収フィルター等の光素子、温度センサー、ガスセンサー等のセンサー、バイオ診断材料、表面修飾剤、表面保護剤、反射防止剤、抗菌、防汚効果等を目的とする表面改質剤、気相及び液相の少なくともいずれかの相における触媒、又はその担体などに使用することができ、特にガスセンサーの用途に好適に用いられる。

Claims (10)

  1. サファイア基板上に金属酢酸塩水和物を含む層を形成する層形成工程と、
    前記金属酢酸塩水和物を含む層を不溶化処理する不溶化処理工程と、
    前記不溶化処理された層が形成されたサファイア基板を、金属イオンと、NH イオンとを含む反応溶液に浸漬させて、金属酸化物を主成分とする棒状結晶を成長させる成長工程と、を含むことを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法。
  2. 不溶化処理が、加熱処理である請求項1に記載の金属酸化物構造体の製造方法。
  3. 加熱処理において、加熱温度が30℃〜300℃であり、加熱時間が30秒間〜30時間である請求項1から2のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法。
  4. 金属酢酸塩水和物が、酢酸亜鉛二水和物である請求項1から3のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法。
  5. 成長工程後に、金属酸化物構造体を加熱する成長後加熱工程をさらに含む請求項1から4のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の金属酸化物構造体の製造方法により製造される金属酸化物構造体であって、
    サファイア基板と、該サファイア基板上に立設した棒状結晶と、を備え、
    前記棒状結晶の長軸が前記サファイア基板面と直交する垂線に対して±5°の範囲内に配向し、
    前記棒状結晶の短軸の平均直径が500nm以下であることを特徴とする金属酸化物構造体。
  7. サファイア基板と棒状結晶との間に形成された、金属酢酸塩を含む中間層をさらに備える請求項6に記載の金属酸化物構造体。
  8. 棒状結晶がウルツ鉱型結晶構造であり、前記棒状結晶の長軸方向と、サファイア基板のc軸方向とが略同方向である請求項7に記載の金属酸化物構造体。
  9. 棒状結晶が、ロッド状、ウィスカー状、及びファイバー状のいずれかである請求項6から8のいずれかに記載の金属酸化物構造体。
  10. 請求項6から9のいずれかに記載の金属酸化物構造体を備えることを特徴とする発光素子。
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