JP2010194742A - 液体吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】上凸変位駆動方式の液体吐出装置における応力に起因したマイクロクラックが抑制され、耐久性に優れた液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出装置3Aは、圧電素子1Aが上部電極40側に凸変位駆動する素子であり、圧電体30の上部電極40側の面に、液体貯留室61の内壁面位置W又はその近傍、若しくは液体貯留室61の内壁面位置Wより外側の領域に溝部31が形成されている。上部電極がリング状電極の場合には、圧電体の上部電極側の面に、リング状の上部電極の内端面位置又はその近傍に溝部が形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体が貯留される液体貯留室及び液体貯留室から外部に液体が吐出される液体吐出口を有する液体貯留吐出部材上に、振動板を介して、下部電極と圧電体と上部電極とを順次備えた圧電素子が形成された液体吐出装置に関するものである。
電界印加強度の増減に伴って伸縮する圧電性を有する圧電体と、この圧電体に対して電界を印加する電極とを備えた圧電素子が、インクジェット式記録ヘッド等の液体吐出装置に搭載されるアクチュエータ等として使用されている。圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系等のペロブスカイト型酸化物が知られている。
液体吐出装置としては、図9に示すように、液体が貯留される液体貯留室261と液体吐出口262とを有する液体貯留吐出部材260上に、振動板250を介して、基板210と下部電極220と圧電体230と円状等の中心部に開口部のない上部電極240とを順次備えた圧電素子201が形成された液体吐出装置202が知られている。また、図10に示すように、液体貯留吐出部材260上に、同様の構成でリング状の上部電極270を備えた圧電素子203が形成された液体吐出装置204が知られている。
圧電素子の駆動方式としては、圧電素子が液体貯留室側に凸変位して液体を押出して吐出する駆動方式(下凸変位駆動方式)と、いったん圧電素子が上部電極側に凸変位した後、無変位のフラット状態に戻ることで、液体を押出して吐出する駆動方式(上凸変位駆動方式)とがある。
液体吐出装置202では、圧電体の自発分極軸方向と電界印加方向に応じて、下凸変位駆動あるいは上凸変位駆動となる。いずれの駆動方式においても、液体吐出装置202では、圧電素子が圧電変形する際には、圧電素子の周縁部は液体貯留吐出部材に拘束され、圧電素子の中央部が若干撓んだ状態となる。この状態では、圧電体の液体貯留室の壁面位置又はその近傍に応力がかかりやすい。図9中、符号261Wが液体貯留室の内壁面を示し、符号Wが液体貯留室の壁面位置を示している。
図11に、下凸変位駆動方式及び上凸変位駆動方式の液体吐出装置202における圧電体への応力のかかり具合を矢印で示す(図11では圧電体の変位を誇張して図示してある。)。いずれの方式においても、圧縮応力がかかる方にマイクロクラックが入りやすい傾向がある。すなわち、矢印で示した部分の中でも、下凸変位駆動方式では特に下側部分、上凸変位駆動方式では特に上側部分に、マイクロクラックが入りやすい傾向がある。
下凸変位駆動方式で圧電素子のマイクロクラックが入りやすい側には振動板が形成されているので、マイクロクラックが発生したとしても、そこから圧電体に水分が浸入することは振動板によって防げる。これに対して、上凸変位駆動方式で圧電素子のマイクロクラックが入りやすい側には圧電体が露出しているため、マイクロクラックが発生すれば、そこから圧電体に水分が浸入して、圧電体を劣化させてしまう。
液体吐出装置204は通常、上凸変位駆動方式となる。液体吐出装置204では、リング状の上部電極の内端面位置又はその近傍に応力がかかりやすい。図10中、符号270Eがリング状の上部電極の内端面を示し、符号Eがリング状の上部電極の内端面位置を示している。
図12に、液体吐出装置204における圧電体への応力のかかり具合を矢印で示してある(図12では圧電体の変位を誇張して図示してある。)。上凸変位駆動方式の液体吐出装置202と同様に、圧縮応力がかかる方にマイクロクラックが入りやすい傾向があるので、矢印で示した部分の中でも特に上側部分にマイクロクラックが入りやすい傾向がある。上部電極がリング状である上凸変位駆動方式の液体吐出装置204においても、上凸変位駆動方式の液体吐出装置202と同様、圧電素子のマイクロクラックが入りやすい側には圧電体が露出しているため、マイクロクラックが発生すれば、そこから圧電体に水分が浸入して、圧電体を劣化させてしまう。
上凸変位駆動方式の液体吐出装置におけるマイクロクラックからの水分浸入の問題は、特に高湿度環境下の駆動において起こりやすい。
特許文献1には、圧電体膜に少なくとも1つの溝部が設けられており、かつ、その溝部内に絶縁体が充填された圧電素子が開示されている(請求項1、図3等)。
特許文献1の段落0010には、かかる構成の圧電素子では、圧電体膜が、絶縁体が充填された溝部によって複数に分離されているため、振動板の変位時に圧電体膜に生じる応力が緩和され、これにより振動板の変位量を大きくすることができるとともに、圧電体膜の割れや剥がれを防止することができることが記載されている。また、溝部には絶縁体が充填されているため、この部分によって上部電極と下部電極との間の放電が抑制されることが記載されている。
特許文献2には、圧電素子側をエラストマー材料で直接被ったことを特徴とするインクジェットヘッドが開示されている(請求項1、図5等)。特許文献2の段落0022には、かかる構成では、圧電素子に浸入する水分をほぼ零にすることができ、水分による圧電素子の絶縁破壊を阻止することができることが記載されている。
いずれの文献にも、上凸変位駆動方式の液体吐出装置における上記応力に起因したマイクロクラックを抑制するという課題については記載がなく、これに対する解決手段は記載されていない。
特開2007-281286号公報 特開2007-276184号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上凸変位駆動方式の液体吐出装置における応力に起因したマイクロクラックが抑制され、耐久性に優れた液体吐出装置を提供することを目的とするものである。
本発明の第1の液体吐出装置は、液体が貯留される液体貯留室及び該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口を有する液体貯留吐出部材上に、振動板を介して、下部電極と圧電体と上部電極とを順次備えた圧電素子が形成された液体吐出装置において、
前記圧電素子は、前記圧電体が前記上部電極側に凸変位駆動する素子であり、
前記圧電体の前記上部電極側の面には、前記液体貯留室の内壁面位置又はその近傍、若しくは前記液体貯留室の内壁面位置より外側の領域に溝部が形成されており、該溝部より内側の領域に前記上部電極が形成されていることを特徴とするものである。
本明細書において、「液体貯留室の内壁面位置又はその近傍、若しくは液体貯留室の内壁面位置より外側の領域に溝部が形成されている」とは、溝部の少なくとも一部がかかる位置にあることを意味するものとする。
また、「内壁面位置の近傍」は、内壁面位置から0.10mm以内の領域と定義する。通常の液体吐出装置では、液体貯留室の内壁面位置より外側の領域は0.10mm以内であり、内壁面位置の近傍に含まれる。液体貯留室の内壁面位置より外側の領域が0.10mm超の場合も、0.10mmを大幅に超えることは稀であり、せいぜい1.0mm程度である。
本発明の第2の液体吐出装置は、液体が貯留される液体貯留室及び該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口を有する液体貯留吐出部材上に、振動板を介して、下部電極と圧電体とリング状の上部電極とを順次備えた圧電素子が形成された液体吐出装置において、
前記圧電素子は、前記圧電体が前記上部電極側に凸変位駆動する素子であり、
前記圧電体の前記上部電極側の面には、前記リング状の上部電極の内端面位置又はその近傍に溝部が形成されていることを特徴とするものである。
本明細書において、「リング状の上部電極の内端面位置又はその近傍に溝部が形成されている」とは、溝部の少なくとも一部がかかる位置にあることを意味するものとする。
また、「リング状の上部電極の内端面位置の近傍」は、リング状の上部電極の内端面位置から0.1mm以内の領域と定義する。
本発明の第1,第2の液体吐出装置において、前記溝部の内部の少なくとも一部に樹脂材が充填されていることが好ましく、前記溝部の内部全体に樹脂材が充填されていることがより好ましく、前記樹脂材は前記溝部の外部に突出していることが特に好ましい。
前記樹脂材の40℃における水蒸気透過率が1000g/m・day以下であることが好ましい。
本明細書において、「樹脂材の水蒸気透過率」は以下の方法により測定するものとする。樹脂材と同一組成を有する樹脂フィルムを用意する。もしくは樹脂材をポリイミドフィルムやPETフィルムなどの汎用的なフィルムの上に塗布・乾燥した積層フィルムを用意してもよい。水蒸気透過率は試験規格としてASTM F1249(赤外線センサを用いる水蒸気透過度試験方法)に準拠するモコン法により測定する。試験法はJIS K7129B法に準拠し、試験機はMOCON社製水蒸気透過試験機PERMATRANを用いる。モコン法は、測定したいフィルムを透過する水蒸気を赤外線センサで測定する方法である。
上記樹脂フィルムを一対のO−リングにて挟み込み、片面側の雰囲気を40℃相対湿度100%の高湿雰囲気とし、逆面側に透過してくる水蒸気量を定量測定する。フィルムの透過面積は50cmとする。水蒸気透過量の値としては逆面側に透過してきた水蒸気量が安定して一定値になったときの値を採用する。
上記積層フィルムを用いる場合には、ベースフィルム単体の水蒸気透過量b、積層(2層)フィルムの水蒸気透過量aとしたとき、塗布した樹脂層単体の水蒸気透過量cは1/c=1/a−1/bの式より求めることができる。
水蒸気透過量はフィルム厚みと反比例の関係にあるため、厚み補正を行うことで、実際の使用樹脂厚の水蒸気透過率を算出することができる。
本発明によれば、上凸変位駆動方式の液体吐出装置における応力に起因したマイクロクラックが抑制され、耐久性に優れた液体吐出装置を提供することができる。
本発明によれば、40℃相対湿度85%の高温高湿環境下における耐久性が良好な液体吐出装置を提供することができる。
本発明に係る第1実施形態のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造を示す断面図 図1の設計変更例を示す図 図1の設計変更例を示す図 本発明に係る第2実施形態のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造を示す断面図 図4の設計変更例を示す図 図4の設計変更例を示す図 インクジェット式記録装置の構成例を示す図 図7のインクジェット式記録装置の部分上面図 従来の液体吐出装置の構造を示す断面図 従来の液体吐出装置の構造を示す断面図 従来の課題を説明するための図 従来の課題を説明するための図
「インクジェット式記録ヘッドの第1実施形態」
図1を参照して、本発明に係る第1実施形態のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図1はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
圧電素子1Aは、基板10上に、下部電極20と圧電体30と上部電極40とが順次積層された素子であり、圧電体30に対して下部電極20と上部電極40とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
下部電極20及び圧電体30は基板10の略全面に形成されており、この上に上部電極40がパターン形成されている。本実施形態において、上部電極40は中心部に開口部のない円形状パターンで、後記する溝部31より内側の領域に形成されている。
圧電体30はパターン形成されても構わない。圧電体30は、互いに分離した複数の凸部からなるパターンで形成することで、個々の凸部の伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
基板10としては特に制限なく、シリコン,酸化シリコン,ステンレス(SUS),イットリウム安定化ジルコニア(YSZ),アルミナ,サファイヤ,SiC,及びSrTiO等の基板が挙げられる。基材10としては、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極20の組成は特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極40の組成は特に制限なく、下部電極20で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極20と上部電極40の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
圧電アクチュエータ2Aは、圧電素子1Aの基板10の裏面に、圧電体30の伸縮により振動する振動板50が取り付けられたものである。圧電アクチュエータ2Aには、圧電素子1の駆動を制御する駆動回路等の制御手段(図示略)も備えられている。
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)3Aは、概略、圧電アクチュエータ2Aの裏面に、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)61及びインク室61から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)62を有するインクノズル(液体貯留吐出部材)60が取り付けられたものである。インクジェット式記録ヘッド3Aでは、圧電素子1Aに印加する電界強度を増減させて圧電素子1Aを伸縮させ、これによってインク室61からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
基板10とは独立した部材の振動板50及びインクノズル60を取り付ける代わりに、基板10の一部を振動板50及びインクノズル60に加工してもよい。例えば、基板10がSOI基板等の積層基板からなる場合には、基板10を裏面側からエッチングしてインク室61を形成し、基板自体の加工により振動板50とインクノズル60とを形成することができる。
圧電体30の形態としては特に制限なく、単結晶、バルクセラミックス、及び膜が挙げられる。圧電素子1Aの薄型化・小型化、生産性等を考慮すれば、圧電体30の形態としては膜が好ましく、厚み10nm〜100μmの薄膜がより好ましく、厚み100nm〜20μmの薄膜が特に好ましい。
圧電体30の成膜方法は特に制限されず、スパッタ法、プラズマCVD法、MOCVD法、及びPLD法等の気相法;ゾルゲル法及び有機金属分解法等の液相法;及びエアロゾルデポジション法等が挙げられる。
圧電体30の組成は特に制限されず、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物からなる(不可避不純物を含んでいてもよい)ことが好ましい。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
電気特性がより良好となることから、上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、Mg,Ca,Sr,Ba,Bi,Nb,Ta,W,及びLn(=ランタニド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLu))等の金属イオンを、1種又は2種以上含むものであることが好ましい。
本実施形態において、圧電素子1Aは、圧電体30が上部電極40側に凸変位駆動する素子である。
通常の駆動では、下部電極20がグランド電極とされ、上部電極40がアドレス電極とされる。圧電体30の電界無印加時の自発分極軸方向、及び電界印加方向を調整することで、凸変位駆動の圧電素子1Aが得られる。
具体的には、圧電体30の電界無印加時の自発分極軸を、基板側がマイナス/上部電極側がプラスとし、上部電極40にプラス電圧を印加することで、電圧印加時に圧電体30に対して引張応力がかかり、圧電体30は上部電極40側に凸変位する。
例えば、PZT系等の膜を通常のスパッタ法により成膜した場合、成膜終了時の自発分極軸は通常、基板側がプラス/上部電極側がマイナスとなる。したがって、凸変位駆動とするには、分極反転処理が必要である。分極反転処理については、特開2006-203190号公報等を参照されたい。
圧電体30の上部電極40側の面には、インク室61の内壁面位置W又はその近傍(内壁面位置Wより0.1mm以内の領域)、若しくはインク室61の内壁面位置Wより外側の領域に溝部31が形成されている。図中、符号61Wはインク室の内壁面を示している。
通常のインクジェット式記録ヘッドでは、インク室61の内壁面位置Wより外側の領域は0.1mm以内であり、内壁面位置Wの近傍に含まれる。インク室61の内壁面位置Wより外側の領域が0.10mm超の場合も、0.10mmを大幅に超えることは稀であり、せいぜい1.0mm程度である。
溝部31の中心位置は、インク室61の内壁面位置Wに近い方が好ましく、インク室61の内壁面位置Wにあることが最も好ましい。図1では、溝部31の中心位置がインク室61の内壁面位置Wにある場合について図示してある。
インク室61の内壁面位置Wは圧電体30の上部電極40側への凸変位が起こる末端部分であり、この位置とその近傍には応力がかかりやすい(図11右図を参照)。
本実施形態では、圧電体30に対して応力がかかりやすいインク室61の内壁面位置W又はその近傍、若しくはインク室61の内壁面位置Wより外側の領域に溝部31を設ける構成としているので、溝部31によって応力が緩和され、上凸変位駆動方式における応力に起因したマイクロクラックを抑制することができる。
本実施形態において、溝部31は上部電極40の外周に沿って、リング状に形成されている。上部電極40の外周に沿って、互いに離間した複数の溝部31を設ける構成としてもよく、溝部31の形成パターンは任意である。
溝部31の断面形状は特に制限されず、断面視V字状の場合について図示してある。溝部31の形状は、半円状、ディンプル状、及び矩形状など任意である。
溝部31の深さ及び幅は特に制限されない。溝部31は圧電体30の底面まで到達しても構わない。ただし、溝部31が深くなりすぎると、溝部31から圧電体30に水分が浸入しやすくなるため、溝部31の深さは圧電体30の厚みの50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、15%以下が特に好ましい。
溝部31の加工方法は特に制限されず、ドライエッチング等が挙げられる。
本実施形態の圧電素子1A及びインクジェット式記録ヘッド3Aは、以上のように構成されている。本実施形態によれば、上凸変位駆動方式のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)における応力に起因したマイクロクラックが抑制され、耐久性に優れたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)3Aを提供することができる。本実施形態によれば、40℃相対湿度85%の高温高湿環境下における耐久性が良好なインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)3Aを提供することができる。
「第1実施形態の設計変更」
図2に示す圧電素子1B,圧電アクチュエータ2B,インクジェット式記録ヘッド3B、及び図3に示す圧電素子1C,圧電アクチュエータ2C,インクジェット式記録ヘッド3Cは、第1実施形態の設計変更例である。
図2に示す例では、溝部31の内部全体に樹脂材32が充填されている。図3に示す例では、溝部31の内部全体に樹脂材32が充填されており、さらに樹脂材32は溝部31の外部に突出している。溝部31の内部の少なくとも一部に樹脂材32を充填することにより、溝部31から圧電体30に水分が浸入することを抑制することができる。
溝部31から圧電体30に水分が浸入することを良好に抑制できることから、樹脂材32の40℃における水蒸気透過率が1000g/m・day以下であることが好ましく、100g/m・day以下であることがより好ましく、10g/m・day以下であることが特に好ましい。樹脂材32の最大厚みが厚くなる程、水分バリア性が高くなり、好ましい。
樹脂材32の組成は特に制限されず、エポキシ系、アクリル系、及びシリコーン系等が挙げられる。エポキシ系は水分バリア性が高く、好ましい。ただし、エポキシ系は硬度が高いため、素子によっては圧電変位を阻害する可能性がある。シリコーン系はエポキシ系及びアクリル系に比較して水分バリア性が低い傾向にある。水分バリア性と硬度のバランスから、アクリル系が最も好ましい。
溝部31への樹脂材32の充填方法としては、ディスペンス法等が挙げられる。
第1実施形態において、溝部31が深くなりすぎると、圧電体30に水分が浸入しやすくなるため、溝部31の深さは圧電体30の厚みの50%以下が好ましいことを述べた。樹脂材32を充填する図2及び図3に示す例では、溝部31から圧電体30に水分が浸入することを良好に抑制できるので、溝部31の深さは任意であり、圧電体31の底面に到達しても構わない。
図2及び図3に示す設計変更では、第1実施形態よりも、40℃相対湿度85%の高温高湿環境下における耐久性がより良好なインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)3B,3Cを提供することができる。
「インクジェット式記録ヘッドの第2実施形態」
図4を参照して、本発明に係る第2実施形態のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図4はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。第1実施形態と同じ構成要素については同じ参照符号を付して、説明は省略する。
圧電素子4Aは、基板10上に、下部電極20と圧電体70と上部電極80とが順次積層された素子であり、圧電体70に対して下部電極20と上部電極80とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
下部電極20及び圧電体70は基板10の略全面に形成されており、この上に上部電極80がパターン形成されている。本実施形態において、上部電極80は中心部に開口部のあるリング状パターンで形成されている。
圧電アクチュエータ5Aは、圧電素子4Aの基板10の裏面に振動板50が取り付けられたものである。インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)6Aは、概略、圧電アクチュエータ5Aの裏面に、インクノズル(液体貯留吐出部材)60が取り付けられたものである。
本実施形態において、圧電素子4Aは、圧電体70が上部電極80側に凸変位駆動する素子である。
通常の駆動では、下部電極20がグランド電極とされ、上部電極80がアドレス電極とされる。圧電体70の電界無印加時の自発分極軸方向、及び電界印加方向を調整することで、凸変位駆動の圧電素子4Aが得られる。
具体的には、圧電体70の電界無印加時の自発分極軸を基板側がプラス/上部電極側がマイナスとし、上部電極80にマイナス電圧を印加することで、電圧印加時に、圧電体70においてリング状の上部電極80の形成領域には圧縮応力がかかると共に、リング状の上部電極80より内側の領域には引張応力がかかり、圧電体70においてリング状の上部電極80より内側の部分が上部電極80側に凸変位する。
例えば、PZT系等の膜を通常のスパッタ法により成膜した場合、成膜終了時の自発分極軸は通常、基板側がプラス/上部電極側がマイナスとなる。したがって、本実施形態では、分極反転処理をすることなく、凸変位駆動を実施できる。
本実施形態において、圧電体70の上部電極80側の面には、リング状の上部電極80の内端面位置E又はその近傍(リング状の上部電極80の内端面位置Eより0.1mm以内の領域)に溝部71が形成されている。溝部71はリング状の上部電極80より内側の領域に形成されることが好ましい。図中、符号80Eはリング状の上部電極80の内端面を示している。
溝部71は、リング状の上部電極80の内端面位置Eに近い方が好ましく、リング状の上部電極80の内端面80Eに連接されることが最も好ましい。図4には、溝部71がリング状の上部電極80の内端面80Eに連接している場合について図示してある。
リング状の上部電極80の内端面位置Eは、圧電体70の上部電極80側への凸変位が起こる末端部分であり(図12を参照)、また圧電体70に引張応力がかかる部分と圧縮応力がかかる部分との境界であり、この位置とその近傍には応力がかかりやすい。
本実施形態では、圧電体30に対して応力がかかりやすいリング状の上部電極80の内端面位置E又はその近傍に溝部71を設ける構成としているので、溝部71によって応力が緩和され、上凸変位駆動方式における応力に起因したマイクロクラックを抑制することができる。
本実施形態では上記2つの要因による応力がかかるので、第1実施形態よりかかる応力は大きい。したがって、溝部を設けて応力を緩和する本発明の構成は、特にリング状の上部電極を備えたインクジェット式記録ヘッドに有効である。
本実施形態において、溝部71は上部電極80の内周に沿って、リング状に形成されている。上部電極80の内外周に沿って、互いに離間した複数の溝部71を設ける構成としてもよく、溝部71の形成パターンは任意である。
溝部71の断面形状は特に制限されず、断面視V字状の場合について図示してある。溝部71の形状は、半円状、ディンプル状、及び矩形状など任意である。
溝部71の深さ及び幅は特に制限されない。本実施形態では、圧電体70が上部電極80側に凸変位する範囲に溝部71が形成されているので、溝部71の深さ及び幅は、上記応力緩和の効果が良好に発現し、圧電変位を阻害しない範囲で設計される。溝部71の深さは圧電体70の厚みの50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、15%以下が特に好ましい。
溝部71の加工方法は特に制限されず、ドライエッチング等が挙げられる。
本実施形態の圧電素子4A及びインクジェット式記録ヘッド6Aは、以上のように構成されている。本実施形態によれば、上凸変位駆動方式のインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)における応力に起因したマイクロクラックが抑制され、耐久性に優れたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)6Aを提供することができる。本実施形態によれば、40℃相対湿度85%の高温高湿環境下における耐久性が良好なインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)6Aを提供することができる。
「第2実施形態の設計変更」
図5に示す圧電素子4B,圧電アクチュエータ5B,インクジェット式記録ヘッド6B、及び図6に示す圧電素子4C,圧電アクチュエータ5C,インクジェット式記録ヘッド6Cは、第2実施形態の設計変更例である。
図5に示す例では、溝部71の内部全体に樹脂材72が充填されている。図6に示す例では、溝部71の内部全体に樹脂材72が充填されており、さらに樹脂材72は溝部71の外部に突出している。溝部71の内部の少なくとも一部に樹脂材72を充填することにより、溝部71から圧電体70に水分が浸入することを抑制することができる。樹脂材72の40℃における水蒸気透過率、組成、及び溝部71への樹脂材72の充填方法等は、図2,図3の樹脂材32と同様である。
図5及び図6に示す設計変更では、第2実施形態よりも、40℃相対湿度85%の高温高湿環境下における耐久性がより良好なインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)6B,6Cを提供することができる。
「インクジェット式記録装置」
図7及び図8を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3A〜3C、6A〜6Cのうちいずれかを備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図7は装置全体図であり、図8は部分上面図である。
図示するインクジェット式記録装置100は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という)102K,102C,102M,102Yを有する印字部102と、各ヘッド102K,102C,102M,102Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部102のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部102による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とから概略構成されている。
印字部102をなすヘッド102K,102C,102M,102Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3A〜3C、6A〜6Cのうちいずれかである。
デカール処理部120では、巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130により記録紙116に熱が与えられて、デカール処理が実施される。
ロール紙を使用する装置では、図7のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
デカール処理され、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)となるよう構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示略)が形成されている。ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図示略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図7上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図7の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
印字部102は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図8を参照)。各印字ヘッド102K,102C,102M,102Yは、インクジェット式記録装置100が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の送り方向に沿って上流側から、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド102K,102C,102M,102Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各ヘッド102K,102C,102M,102Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が記録される。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして得られたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット式記録装置100では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示略)が設けられている。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(比較例1−1)
成膜基板として、Siウエハ上に30nm厚のTi密着層と150nm厚のPt下部電極とが順次積層された電極付き基板を用意した。次いで、Pb1.3Zr0.52Ti0.48のターゲットを用い、RFスパッタリング装置により、5μm厚のPZT圧電体膜を成膜した。成膜条件は以下の通りとした。
基板温度:525℃、
ターゲット印加電圧:2.5W/cm
基板−ターゲット間距離:60mm、
真空度:0.5Pa、
成膜ガス:Ar/O混合ガス(O分圧1.3モル%)。
圧電体膜の成膜後に、特開2006-203190号公報に記載の分極反転処理を実施した。
次に、通常のフォトリソグラフィ法により上部電極をパターン形成した。上部電極は、50nm厚のTi層と200nm厚のPt層との積層構造とした。上部電極のパターンは、1000μmφの円形状パターンとした。
その後、基板の裏面側をリアクティブイオンエッチングしてインク室を形成し、基板自体の加工により振動板とインク室及びインク吐出口を有するオープンプール構造のインクノズルとを形成した。振動板の厚みは10μm程度、インク室の厚みは500μm程度、インク室の幅は300μmとした。
得られたサンプルに対して、温度40℃相対湿度85%条件下において、印加電圧−50kV/cm,周波数10kHzの条件で台形波を入射させ、誘電正接が20%に達した時の駆動サイクルの測定を行ったところ、耐久寿命は約30億サイクルであり、実用上の目安となる100億サイクルを下回る耐久性であった。
(実施例1−1)
比較例1のインクジェット式記録ヘッドに対して、図1に示したように、RIE(反応性イオンエッチング)により、上記上部電極の外側の領域に断面視V字状の溝部を形成した。溝部の中心位置がインク室の内壁面位置となるように溝部を形成した。溝部は深さ約1.0μm/幅50μmとした。ドライエッチングは、あらかじめ上部電極上に形成する溝部と同一パターンの開口部を有するレジストマスクをフォトリソグラフィ法により形成してから、実施した。ドライエッチング条件を以下に示す。
ドライエッチングガス:BCl/Cl混合ガス(塩素系ガス)、
ガス流量:BCl/Cl=30sccm/30sccm、
RF周波数:13.56MHz、
RFパワー:800W、
圧力:4.0Pa、
基板温度:30℃。
得られたサンプルについて比較例1−1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は約300億サイクルであり、実用上の目安となる100億サイクルを上回る耐久性が得られた。
(実施例1−2)
実施例1−1のインクジェット式記録ヘッドに対してさらに、図2に示したように、溝部の内部全体にエポキシ樹脂を2次元オートディスペンサを使用して充填した後、120℃1時間の熱処理を実施して樹脂を硬化させた。樹脂材の最大厚みは、溝部の深さに対応し、約1.0μmであった。1.0μmのエポキシ樹脂フィルムを作製して40℃における水蒸気透過率を測定したところ、100g/m・dayであった。
得られたサンプルについて比較例1−1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は450億サイクル以上であり、実施例1−1よりも高い耐久性が得られた。
(実施例1−3)
実施例1−1のインクジェット式記録ヘッドに対してさらに、図2に示したように、溝部の内部全体にアクリル系樹脂を2次元オートディスペンサを使用して充填した後、常温2時間の硬化処理を実施した。樹脂材の最大厚みは、溝部の深さに対応し、約1.0μmであった。1.0μmのアクリル系樹脂フィルムを作製して40℃における水蒸気透過率を測定したところ、700g/m・dayであった。
得られたサンプルについて比較例1−1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は400億サイクル以上であり、実施例1−1よりも高い耐久性が得られた。
(比較例2−1)
成膜基板として、Siウエハ上に30nm厚のTi密着層と150nm厚のPt下部電極とが順次積層された電極付き基板を用意した。次いで、Pb1.3Zr0.52Ti0.48のターゲットを用い、RFスパッタリング装置により、5μm厚のPZT圧電体膜を成膜した。成膜条件は以下の通りとした。
基板温度:525℃、
ターゲット印加電圧:2.5W/cm
基板−ターゲット間距離:60mm、
真空度:0.5Pa、
成膜ガス:Ar/O混合ガス(O分圧1.3モル%)。
次に、通常のフォトリソグラフィ法により上部電極をパターン形成した。上部電極は、50nm厚のTi層と200nm厚のPt層との積層構造とした。上部電極のパターンは、外径直径1000μmφ、内径直径800μmφのリング状パターンとした。
その後、基板の裏面側をリアクティブイオンエッチングしてインク室を形成し、基板自体の加工により振動板とインク室及びインク吐出口を有するオープンプール構造のインクノズルとを形成した。振動板の厚みは10μm程度、インク室の厚みは500μm程度、インク室の幅は300μmとした。
得られたサンプルに対して、温度40℃相対湿度85%条件下において、印加電圧−50kV/cm,周波数10kHzの条件で台形波を入射させ、誘電正接が20%に達した時の駆動サイクルの測定を行ったところ、耐久寿命は約30億サイクルであり、実用上の目安となる100億サイクルを下回る耐久性であった。
(実施例2−1)
比較例1のインクジェット式記録ヘッドに対して、図4に示したように、ドライエッチングにより、上記リング状の上部電極より内側の領域に、上部電極の内端面に連接するように断面視V字状の溝部を形成した。溝部は深さ約1.0μm/幅50μmとした。ドライエッチング条件は実施例1−1と同様とした。
得られたサンプルについて比較例1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は約300億サイクルであり、実用上の目安となる100億サイクルを上回る耐久性が得られた。
(実施例2−2)
実施例1のインクジェット式記録ヘッドに対してさらに、図5に示したように、溝部の内部全体にエポキシ樹脂を2次元オートディスペンサを使用して充填した後、120℃1時間の熱処理を実施して樹脂を硬化させた。樹脂材の最大厚みは、溝部の深さに対応し、約1.0μmであった。1.0μmのエポキシ樹脂フィルムを作製して40℃における水蒸気透過率を測定したところ、100g/m・dayであった。
得られたサンプルについて比較例1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は450億サイクル以上であり、実施例1よりも高い耐久性が得られた。
(実施例2−3)
実施例2−1のインクジェット式記録ヘッドに対してさらに、図2に示したように、溝部の内部全体にアクリル系樹脂を2次元オートディスペンサを使用して充填した後、常温2時間の硬化処理を実施した。樹脂材の最大厚みは、溝部の深さに対応し、約1.0μmであった。1.0μmのアクリル系樹脂フィルムを作製して40℃における水蒸気透過率を測定したところ、700g/m・dayであった。
得られたサンプルについて比較例2−1と同様の評価を実施したところ、耐久寿命は400億サイクル以上であり、実施例2−1よりも高い耐久性が得られた。
本発明の液体吐出装置は、インクジェット式記録ヘッド及びマイクロポンプ等に好ましく適用できる。
1A、1B、1C、4A、4B、4C 圧電素子
3A、3B、3C、6A、6B、6C インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
10 基板
20 下部電極
30、70 圧電体
31、71 溝部
32、72 樹脂材
40、80 上部電極
50 振動板
60 インクノズル(液体貯留吐出部材)
61 インク室(液体貯留室)
62 インク吐出口(液体吐出口)
61W インク室(液体貯留室)の内壁面
80E リング状の上部電極の内端面
W インク室(液体貯留室)の内壁面位置
E リング状の上部電極の内端面位置
100 インクジェット式記録装置
102K,102C,102M,102Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)

Claims (6)

  1. 液体が貯留される液体貯留室及び該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口を有する液体貯留吐出部材上に、振動板を介して、下部電極と圧電体と上部電極とを順次備えた圧電素子が形成された液体吐出装置において、
    前記圧電素子は、前記圧電体が前記上部電極側に凸変位駆動する素子であり、
    前記圧電体の前記上部電極側の面には、前記液体貯留室の内壁面位置又はその近傍、若しくは前記液体貯留室の内壁面位置より外側の領域に溝部が形成されており、該溝部より内側の領域に前記上部電極が形成されていることを特徴とする液体吐出装置。
  2. 液体が貯留される液体貯留室及び該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口を有する液体貯留吐出部材上に、振動板を介して、下部電極と圧電体とリング状の上部電極とを順次備えた圧電素子が形成された液体吐出装置において、
    前記圧電素子は、前記圧電体が前記上部電極側に凸変位駆動する素子であり、
    前記圧電体の前記上部電極側の面には、前記リング状の上部電極の内端面位置又はその近傍に溝部が形成されていることを特徴とする液体吐出装置。
  3. 前記溝部の内部の少なくとも一部に樹脂材が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記溝部の内部全体に樹脂材が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記樹脂材は前記溝部の外部に突出していることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 前記樹脂材の40℃における水蒸気透過率が1000g/m・day以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の液体吐出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012114391A (ja) * 2010-11-29 2012-06-14 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックス
JP2012148495A (ja) * 2011-01-19 2012-08-09 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びに圧電素子
JP2013128075A (ja) * 2011-12-19 2013-06-27 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
JP2015136871A (ja) * 2014-01-23 2015-07-30 ブラザー工業株式会社 液体吐出装置、及び、液体吐出装置の製造方法

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