JP2010189419A - 硫酸アバカビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法 - Google Patents

硫酸アバカビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】体内での分解から硫酸アバカビル等の活性剤を保護する方法及び硫酸アバカビルを放出することを制御する方法を提供する。
【解決手段】ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビル等の活性剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビル等の活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への硫酸アバカビル等の活性剤の送達方法もまた、提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からレ硫酸アバカビルを保護する方法もまた提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から硫酸アバカビルを放出することを制御する方法もまた提供される。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、硫酸アバカビルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに硫酸アバカビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
硫酸アバカビルは、HIVの治療で用いられる逆転写酵素抑性剤である周知の薬剤−炭素環2’−デオキシグアノシンヌクレオシド類似体である。その化学名は、(1S,4R)−4−[2−アミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−9H−プリン−9−イル]−2−シクロペンテン−1−メタノールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(硫酸アバカビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、硫酸アバカビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアバカビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
硫酸アバカビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む、硫酸アバカビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への硫酸アバカビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、硫酸アバカビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)硫酸アバカビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、硫酸アバカビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、硫酸アバカビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、硫酸アバカビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
硫酸アバカビルは、米国特許第5,034,394号および5,089,500号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーが必要とされる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できることが好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、硫酸アバカビルが、そのアルコール基、または、その代わりとしてそのアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−硫酸アバカビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への硫酸アバカビルの送達方法もまた、提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から硫酸アバカビルを保護する方法もまた提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から硫酸アバカビルをを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アバレリックスが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アバレリックスが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアバレリックスを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アバレリックスを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアバレリックスが放出することを制御する方法であって、
アバレリックスを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバレリックスの送達方法。
[請求項22] アバレリックスが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アバレリックスが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アバレリックスを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アバレリックスに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアバレリックスの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アバレリックスは、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬として作用する、前立腺癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N−メチル−L−チロシル−D−アスパラジニル−L−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリル−D−アラニンアミドである。アバレリックスは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アバレリックス)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アバレリックスを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアバレリックスを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アバレリックスは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む、アバレリックスを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアバレリックスの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アバレリックスは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アバレリックスは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アバレリックスをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アバレリックスおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アバレリックスを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アバレリックスの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアバレリックスを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アバレリックスが、その遊離アルコール基を介して、または、その代わりとしてそのアミノ基の1つを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アバレリックス共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバレリックスの送達方法もまた、提供される。アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアバレリックスを保護する方法もまた提供される。アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアバレリックスを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアカルボースと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アカルボースが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アカルボースが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアカルボースを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アカルボースを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアカルボースが放出することを制御する方法であって、
アカルボースを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアカルボースと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアカルボースの送達方法。
[請求項22] アカルボースが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アカルボースが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アカルボースを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アカルボースに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアカルボースの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アカルボースは、タイプII糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、O−4,6−ジデオキシ−4−[[[1S−(1アルファ,4アルファ,5ベータ,6アルファ)]−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−アルファ−D−グルコピラノシル−(1−4)−O−アルファ−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコースである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アカルボース)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アカルボースを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアカルボースを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアカルボースとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アカルボースは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アカルボースをポリペプチドに共有結合することを含む、アカルボースを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアカルボースの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アカルボースは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アカルボースは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アカルボースは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アカルボースは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アカルボースは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アカルボースをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アカルボースおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アカルボースを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アカルボースの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アカルボースは、米国特許第4,904,769号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアカルボースを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アカルボースが、遊離ヒドロキシル基の何れかを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アカルボース共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアカルボースとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアカルボースとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアカルボースの送達方法もまた、提供される。アカルボースをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアカルボースを保護する方法もまた提供される。アカルボースをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアカルボースを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アセトアミノフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アセトアミノフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアセトアミノフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アセトアミノフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアセトアミノフェンが放出することを制御する方法であって、
アセトアミノフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアセトアミノフェンの送達方法。
[請求項22] アセトアミノフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アセトアミノフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アセトアミノフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アセトアミノフェンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアセトアミノフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アセトアミノフェンは、軽度の疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−アセチル−p−アミノフェノールである。アセトアミノフェンは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アセトアミノフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アセトアミノフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアセトアミノフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アセトアミノフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アセトアミノフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、アセトアミノフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアセトアミノフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アセトアミノフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アセトアミノフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アセトアミノフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アセトアミノフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アセトアミノフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アセトアミノフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アセトアミノフェンが、そのヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アセトアミノフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アセトアミノフェンおよびコデインが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アセトアミノフェンおよびコデインが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアセトアミノフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アセトアミノフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアセトアミノフェンが放出することを制御する方法であって、
アセトアミノフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアセトアミノフェンの送達方法。
[請求項22] アセトアミノフェンおよびコデインが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アセトアミノフェンおよびコデインが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アセトアミノフェンおよびコデインを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アセトアミノフェンおよびコデインに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアセトアミノフェンおよびコデインの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アセトアミノフェンは、軽度の疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−アセチル−p−アミノフェノールである。それはしばしば、コデインと組み合せて用いられ、その化学名は、7,8−ジデヒドロ−4,5−α−エポキシ−3−メトキシ−17−メチルメホルニナン−6α−オールである。両方とも、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アセトアミノフェンおよびコデイン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アセトアミノフェンおよびコデインを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアセトアミノフェンおよびコデインを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンおよびコデインとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アセトアミノフェンおよびコデインは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アセトアミノフェンおよびコデインをポリペプチドに共有結合することを含む、アセトアミノフェンおよびコデインを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアセトアミノフェンおよびコデインの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アセトアミノフェンおよびコデインは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンおよびコデインは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アセトアミノフェンおよびコデインは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンおよびコデインは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセトアミノフェンおよびコデインは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アセトアミノフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アセトアミノフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アセトアミノフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アセトアミノフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アセトアミノフェンおよびコデインが、そのヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アセトアミノフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセトアミノフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアセトアミノフェンの送達方法もまた、提供される。アセトアミノフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアセトアミノフェンを保護する方法もまた提供される。アセトアミノフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアセトアミノフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] プロポキシフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] プロポキシフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してプロポキシフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、プロポキシフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からプロポキシフェンが放出することを制御する方法であって、
プロポキシフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのプロポキシフェンの送達方法。
[請求項22] プロポキシフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] プロポキシフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

プロポキシフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、プロポキシフェンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにプロポキシフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
プロポキシフェンは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。それは軽い麻薬性鎮痛薬である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(プロポキシフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、プロポキシフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたプロポキシフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
プロポキシフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、プロポキシフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、プロポキシフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのプロポキシフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、プロポキシフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、プロポキシフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、プロポキシフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、プロポキシフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、プロポキシフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)プロポキシフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、プロポキシフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、プロポキシフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、プロポキシフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、プロポキシフェンが、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素原子および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物の短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−プロポキシフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したプロポキシフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのプロポキシフェンの送達方法もまた、提供される。プロポキシフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からプロポキシフェンを保護する方法もまた提供される。プロポキシフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からプロポキシフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アセチルサリチル酸が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アセチルサリチル酸が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアセチルサリチル酸を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アセチルサリチル酸を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアセチルサリチル酸が放出することを制御する方法であって、
アセチルサリチル酸を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアセチルサリチル酸の送達方法。
[請求項22] アセチルサリチル酸が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アセチルサリチル酸が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アセチルサリチル酸を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アセチルサリチル酸に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアセチルサリチル酸の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アセチルサリチル酸は、軽度の疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アセチルサリチル酸)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アセチルサリチル酸を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアセチルサリチル酸を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アセチルサリチル酸は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アセチルサリチル酸をポリペプチドに共有結合することを含む、アセチルサリチル酸を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアセチルサリチル酸の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アセチルサリチル酸は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセチルサリチル酸は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アセチルサリチル酸は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセチルサリチル酸は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アセチルサリチル酸は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アセチルサリチル酸をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アセチルサリチル酸および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アセチルサリチル酸を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アセチルサリチル酸の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アセチルサリチル酸が、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アセチルサリチル酸共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアセチルサリチル酸とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアセチルサリチル酸の送達方法もまた、提供される。アセチルサリチル酸をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアセチルサリチル酸を保護する方法もまた提供される。アセチルサリチル酸をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアセチルサリチル酸を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアシトレチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アシトレチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アシトレチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアシトレチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アシトレチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアシトレチンが放出することを制御する方法であって、
アシトレチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアシトレチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアシトレチンの送達方法。
[請求項22] アシトレチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アシトレチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アシトレチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アシトレチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアシトレチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アシトレチンは、乾癬の治療で用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(all-E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナテトラエン酸である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アシトレチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アシトレチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアシトレチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシトレチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アシトレチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アシトレチンをポリペプチドに共有結合することを含む、アシトレチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアシトレチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アシトレチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシトレチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アシトレチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシトレチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシトレチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アシトレチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アシトレチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アシトレチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アシトレチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアシトレチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アシトレチンが、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アシトレチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシトレチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシトレチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアシトレチンの送達方法もまた、提供される。アシトレチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアシトレチンを保護する方法もまた提供される。アシトレチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアシトレチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 活性化タンパク質Cが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 活性化タンパク質Cが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して活性化タンパク質Cを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、活性化タンパク質Cを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から活性化タンパク質Cが放出することを制御する方法であって、
活性化タンパク質Cを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への活性化タンパク質Cの送達方法。
[請求項22] 活性化タンパク質Cが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 活性化タンパク質Cが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

活性化タンパク質Cを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、活性化タンパク質Cに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに活性化タンパク質Cの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
活性化タンパク質Cは、凝血の処理で用いられる周知の薬剤である。その構造は周知であり、それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(活性化タンパク質C)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、活性化タンパク質Cを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された活性化タンパク質Cを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
活性化タンパク質Cは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、活性化タンパク質Cをポリペプチドに共有結合することを含む、活性化タンパク質Cを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への活性化タンパク質Cの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、活性化タンパク質Cは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、活性化タンパク質Cは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、活性化タンパク質Cは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、活性化タンパク質Cは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、活性化タンパク質Cは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)活性化タンパク質Cをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、活性化タンパク質Cおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、活性化タンパク質Cを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、活性化タンパク質Cの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性化タンパク質Cがペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−活性化タンパク質C共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性化タンパク質Cとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への活性化タンパク質Cの送達方法もまた、提供される。活性化タンパク質Cをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から活性化タンパク質Cを保護する方法もまた提供される。活性化タンパク質Cをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から活性化タンパク質Cを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアシクロビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アシクロビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アシクロビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアシクロビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アシクロビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアシクロビルが放出することを制御する方法であって、
アシクロビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアシクロビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアシクロビルの送達方法。
[請求項22] アシクロビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アシクロビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アシクロビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アシクロビルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアシクロビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アシクロビルは、単純ヘルペスウイルスの治療で用いられる抗ウイルス薬である周知の薬剤である。アシクロビルは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その化学名は、2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]−6H−プリン−6−オンである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アシクロビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アシクロビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアシクロビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシクロビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アシクロビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、アシクロビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアシクロビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アシクロビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシクロビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アシクロビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシクロビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アシクロビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アシクロビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アシクロビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アシクロビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アシクロビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアシクロビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アシクロビルがヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アシクロビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシクロビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアシクロビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアシクロビルの送達方法もまた、提供される。アシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアシクロビルを保護する方法もまた提供される。アシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアシクロビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アデフォビルジピボキシルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アデフォビルジピボキシルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアデフォビルジピボキシルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アデフォビルジピボキシルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアデフォビルジピボキシルが放出することを制御する方法であって、
アデフォビルジピボキシルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアデフォビルジピボキシルの送達方法。
[請求項22] アデフォビルジピボキシルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アデフォビルジピボキシルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アデフォビルジピボキシルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アデフォビルジピボキシルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアデフォビルジピボキシルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アデフォビルジピボキシルは、AIDSの治療で用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[[[2−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)エトキシ]メチル]ホスフィニリデン]ビス(オキシメチレン)−2,2−ジメチルプロピオン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アデフォビルジピボキシル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アデフォビルジピボキシルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアデフォビルジピボキシルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アデフォビルジピボキシルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アデフォビルジピボキシルをポリペプチドに共有結合することを含む、アデフォビルジピボキシルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアデフォビルジピボキシルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アデフォビルジピボキシルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデフォビルジピボキシルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アデフォビルジピボキシルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデフォビルジピボキシルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデフォビルジピボキシルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アデフォビルジピボキシルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アデフォビルジピボキシルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アデフォビルジピボキシルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アデフォビルジピボキシルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アデフォビルジピボキシルは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アデフォビルジピボキシルがアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アデフォビルジピボキシル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデフォビルジピボキシルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアデフォビルジピボキシルの送達方法もまた、提供される。アデフォビルジピボキシルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアデフォビルジピボキシルを保護する方法もまた提供される。アデフォビルジピボキシルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアデフォビルジピボキシルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアデノシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アデノシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アデノシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアデノシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アデノシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアデノシンが放出することを制御する方法であって、
アデノシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアデノシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアデノシンの送達方法。
[請求項22] アデノシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アデノシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アデノシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アデノシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアデノシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アデノシンは、冠拡張薬として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、9−アルファ−D−リボフラノシル−9H−プリン−6−アミンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アデノシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アデノシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアデノシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデノシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アデノシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アデノシンをポリペプチドに共有結合することを含む、アデノシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアデノシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アデノシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデノシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アデノシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデノシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アデノシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アデノシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アデノシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アデノシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アデノシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アデノシンは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアデノシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アデノシンがリボースヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アデノシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデノシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアデノシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアデノシンの送達方法もまた、提供される。アデノシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアデノシンを保護する方法もまた提供される。アデノシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアデノシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 副腎皮質刺激ホルモンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 副腎皮質刺激ホルモンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して副腎皮質刺激ホルモンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、副腎皮質刺激ホルモンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から副腎皮質刺激ホルモンが放出することを制御する方法であって、
副腎皮質刺激ホルモンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への副腎皮質刺激ホルモンの送達方法。
[請求項22] 副腎皮質刺激ホルモンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 副腎皮質刺激ホルモンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

副腎皮質刺激ホルモンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、副腎皮質刺激ホルモンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに副腎皮質刺激ホルモンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
副腎皮質刺激ホルモンは、アジソン病の診断、および副腎皮質の機能性が測定される他の状態に有用である周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(副腎皮質刺激ホルモン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、副腎皮質刺激ホルモンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された副腎皮質刺激ホルモンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
副腎皮質刺激ホルモンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、副腎皮質刺激ホルモンをポリペプチドに共有結合することを含む、副腎皮質刺激ホルモンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への副腎皮質刺激ホルモンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、副腎皮質刺激ホルモンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、副腎皮質刺激ホルモンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、副腎皮質刺激ホルモンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、副腎皮質刺激ホルモンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、副腎皮質刺激ホルモンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)副腎皮質刺激ホルモンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、副腎皮質刺激ホルモンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、副腎皮質刺激ホルモンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、副腎皮質刺激ホルモンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、副腎皮質刺激ホルモンがアミド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−副腎皮質刺激ホルモン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した副腎皮質刺激ホルモンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への副腎皮質刺激ホルモンの送達方法もまた、提供される。副腎皮質刺激ホルモンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から副腎皮質刺激ホルモンを保護する方法もまた提供される。副腎皮質刺激ホルモンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から副腎皮質刺激ホルモンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルブテロールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アルブテロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アルブテロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアルブテロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルブテロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアルブテロールが放出することを制御する方法であって、
アルブテロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルブテロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルブテロールの送達方法。
[請求項22] アルブテロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アルブテロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アルブテロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アルブテロールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアルブテロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アルブテロールは、可逆閉塞性気道疾患を有する患者の気管支痙攣の症候の処置に有用である周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アルブテロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アルブテロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアルブテロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルブテロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アルブテロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アルブテロールをポリペプチドに共有結合することを含む、アルブテロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアルブテロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アルブテロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルブテロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アルブテロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルブテロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルブテロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アルブテロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アルブテロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アルブテロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アルブテロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアルブテロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アルブテロールがヒドロキシル基の1つを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アルブテロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルブテロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルブテロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルブテロールの送達方法もまた、提供される。アルブテロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアルブテロールを保護する方法もまた提供される。アルブテロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアルブテロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アレンドロネートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アレンドロネートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアレンドロネートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アレンドロネートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアレンドロネートが放出することを制御する方法であって、
アレンドロネートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアレンドロネートの送達方法。
[請求項22] アレンドロネートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アレンドロネートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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アレンドロネートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アレンドロネートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアレンドロネートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アレンドロネートは、ヒトの骨粗鬆症の抑制のために用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン)ビスホスホン酸である。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アレンドロネート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アレンドロネートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアレンドロネートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アレンドロネートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アレンドロネートをポリペプチドに共有結合することを含む、アレンドロネートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアレンドロネートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アレンドロネートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アレンドロネートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アレンドロネートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アレンドロネートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アレンドロネートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アレンドロネートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アレンドロネートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アレンドロネートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アレンドロネートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アレンドロネートは、米国特許第4,621,077号、5,358,941号、5,681,950号、5,804,570号、5,849,726号、6,008,207号、および6,090,410号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アレンドロネートがヒドロキシルまたはホスフェート基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アレンドロネート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアレンドロネートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアレンドロネートの送達方法もまた、提供される。アレンドロネートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアレンドロネートを保護する方法もまた提供される。アレンドロネートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアレンドロネートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアロプリナールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アロプリナールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アロプリナールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアロプリナールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アロプリナールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアロプリナールが放出することを制御する方法であって、
アロプリナールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアロプリナールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアロプリナールの送達方法。
[請求項22] アロプリナールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アロプリナールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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アロプリナールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アロプリナール(allopurinal)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアロプリナールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アロプリナールは、痛風および選択された高尿酸血症の治療に用いられるキサンチンオキシダーゼの阻害剤である周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アロプリナール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アロプリナールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアロプリナールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアロプリナールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アロプリナールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アロプリナールをポリペプチドに共有結合することを含む、アロプリナールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアロプリナールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アロプリナールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アロプリナールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アロプリナールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アロプリナールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アロプリナールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アロプリナールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アロプリナールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アロプリナールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アロプリナールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアロプリナールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アロプリナールがその−NH基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アロプリナール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアロプリナールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアロプリナールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアロプリナールの送達方法もまた、提供される。アロプリナールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアロプリナールを保護する方法もまた提供される。アロプリナールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアロプリナールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アルファ1プロテイナーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アルファ1プロテイナーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアルファ1プロテイナーゼ阻害剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアルファ1プロテイナーゼ阻害剤が放出することを制御する方法であって、
アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルファ1プロテイナーゼ阻害剤の送達方法。
[請求項22] アルファ1プロテイナーゼ阻害剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アルファ1プロテイナーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアルファ1プロテイナーゼ阻害剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、気腫の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、当業者に周知の方法を用いて、ヒトの血液から単離される天然生成物である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アルファ1プロテイナーゼ阻害剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアルファ1プロテイナーゼ阻害剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアルファ1プロテイナーゼ阻害剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アルファ1プロテイナーゼ阻害剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アルファ1プロテイナーゼ阻害剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルファ1プロテイナーゼ阻害剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルファ1プロテイナーゼ阻害剤の送達方法もまた、提供される。アルファ1プロテイナーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアルファ1プロテイナーゼ阻害剤を保護する方法もまた提供される。アルファ1プロテイナーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアルファ1プロテイナーゼ阻害剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アルプラザロムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アルプラザロムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアルプラザロムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルプラザロムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアルプラザロムが放出することを制御する方法であって、
アルプラザロムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルプラザロムの送達方法。
[請求項22] アルプラザロムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アルプラザロムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アルプラザロムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アルプラザロムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアルプラザロムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アルプラザロムは、不安障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アルプラザロム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アルプラザロムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアルプラザロムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アルプラザロムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アルプラザロムをポリペプチドに共有結合することを含む、アルプラザロムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアルプラザロムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アルプラザロムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプラザロムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アルプラザロムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプラザロムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプラザロムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アルプラザロムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アルプラザロムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アルプラザロムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アルプラザロムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明において、アルプラザロムは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アルプラザロムがzzzzzzzを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アルプラザロム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプラザロムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルプラザロムの送達方法もまた、提供される。アルプラザロムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアルプラザロムを保護する方法もまた提供される。アルプラザロムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアルプラザロムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アルプロスタジルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アルプロスタジルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアルプロスタジルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルプロスタジルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアルプロスタジルが放出することを制御する方法であって、
アルプロスタジルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルプロスタジルの送達方法。
[請求項22] アルプロスタジルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アルプロスタジルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
アルプロスタジルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アルプロスタジルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアルプロスタジルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アルプロスタジルは、男性の勃起障害の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(11アルファ,13E,15S)−11,15−ジヒドロキシ−9−オキソプロスト−13−エン−1−酸である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アルプロスタジル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アルプロスタジルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアルプロスタジルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アルプロスタジルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アルプロスタジルをポリペプチドに共有結合することを含む、アルプロスタジルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアルプロスタジルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アルプロスタジルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプロスタジルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アルプロスタジルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプロスタジルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルプロスタジルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アルプロスタジルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アルプロスタジルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アルプロスタジルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アルプロスタジルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アルプロスタジルは、米国特許第5,741,523号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アルプロスタジルがカルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アルプロスタジル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルプロスタジルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルプロスタジルの送達方法もまた、提供される。アルプロスタジルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアルプロスタジルを保護する方法もまた提供される。アルプロスタジルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアルプロスタジルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アルチニクリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アルチニクリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアルチニクリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アルチニクリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアルチニクリンが放出することを制御する方法であって、
アルチニクリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルチニクリンの送達方法。
[請求項22] アルチニクリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アルチニクリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アルチニクリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アルチニクリン(altinicline)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアルチニクリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アルチニクリンは、パーキンソン病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、3−エチニル−5−[(2S)−1−メチル−2−ピロリジニル]ピリジンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アルチニクリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アルチニクリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアルチニクリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アルチニクリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アルチニクリンをポリペプチドに共有結合することを含む、アルチニクリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアルチニクリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アルチニクリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルチニクリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アルチニクリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルチニクリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アルチニクリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アルチニクリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アルチニクリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アルチニクリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アルチニクリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アルチニクリンは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アルチニクリンは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アルチニクリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアルチニクリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアルチニクリンの送達方法もまた、提供される。アルチニクリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアルチニクリンを保護する方法もまた提供される。アルチニクリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアルチニクリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミホスチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アミホスチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アミホスチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアミホスチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アミホスチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアミホスチンが放出することを制御する方法であって、
アミホスチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミホスチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミホスチンの送達方法。
[請求項22] アミホスチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アミホスチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アミホスチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アミホスチン(amifostine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアミホスチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アミホスチンは、頭および頚部の癌の、術後放射線療法を受ける患者の中〜重症の口腔乾燥症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[(3−アミノプロピル)アミノ]エタンチオール二水素ホスフェートである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アミホスチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アミホスチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアミホスチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミホスチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アミホスチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アミホスチンをポリペプチドに共有結合することを含む、アミホスチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアミホスチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アミホスチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミホスチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アミホスチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミホスチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミホスチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アミホスチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アミホスチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アミホスチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アミホスチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アミホスチンは、米国特許第5,424,471号、5,591,731号、および5,994,409号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアミホスチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アミホスチンは、ホスフェート基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アミホスチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミホスチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミホスチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミホスチンの送達方法もまた、提供される。アミホスチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアミホスチンを保護する方法もまた提供される。アミホスチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアミホスチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミオダロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アミオダロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アミオダロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアミオダロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アミオダロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアミオダロンが放出することを制御する方法であって、
アミオダロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミオダロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミオダロンの送達方法。
[請求項22] アミオダロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アミオダロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アミオダロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アミオダロンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアミオダロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アミオダロンは、心臓不整脈の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(2−ブチル−3−ベンゾフラニル)[4−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]−3,5−ジヨードフェニル]メタノンである。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アミオダロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アミオダロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアミオダロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミオダロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アミオダロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アミオダロンをポリペプチドに共有結合することを含む、アミオダロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアミオダロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アミオダロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミオダロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アミオダロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミオダロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミオダロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アミオダロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アミオダロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アミオダロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アミオダロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアミオダロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アミオダロンは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アミオダロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミオダロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミオダロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミオダロンの送達方法もまた、提供される。アミオダロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアミオダロンを保護する方法もまた提供される。アミオダロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアミオダロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アミトリプチリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アミトリプチリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアミトリプチリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アミトリプチリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアミトリプチリンが放出することを制御する方法であって、
アミトリプチリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミトリプチリンの送達方法。
[請求項22] アミトリプチリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アミトリプチリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アミトリプチリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アミトリプチリンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアミトリプチリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アミトリプチリンは、うつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アミトリプチリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アミトリプチリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアミトリプチリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アミトリプチリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アミトリプチリンをポリペプチドに共有結合することを含む、アミトリプチリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアミトリプチリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アミトリプチリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミトリプチリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アミトリプチリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミトリプチリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アミトリプチリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アミトリプチリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アミトリプチリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アミトリプチリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アミトリプチリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アミトリプチリンは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アミトリプチリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアミトリプチリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアミトリプチリンの送達方法もまた、提供される。アミトリプチリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアミトリプチリンを保護する方法もまた提供される。アミトリプチリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアミトリプチリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アムロジピンベシレートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アムロジピンベシレートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアムロジピンベシレートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アムロジピンベシレートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアムロジピンベシレートが放出することを制御する方法であって、
アムロジピンベシレートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアムロジピンベシレートの送達方法。
[請求項22] アムロジピンベシレートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アムロジピンベシレートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アムロジピンベシレートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アムロジピンベシレートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアムロジピンベシレートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アムロジピンベシレートは、心筋梗塞および発作(stroke)の治療および予防に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチル−3,5−ピリジンジカルボン酸,3−エチル5−メチルエステルモノベンゼンスルホネートである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アムロジピンベシレート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アムロジピンベシレートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアムロジピンベシレートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アムロジピンベシレートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アムロジピンベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む、アムロジピンベシレートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアムロジピンベシレートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アムロジピンベシレートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アムロジピンベシレートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アムロジピンベシレートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アムロジピンベシレートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アムロジピンベシレートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アムロジピンベシレートは、米国特許第4,572,909号および4,879,303号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アムロジピンベシレートは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アムロジピンベシレート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアムロジピンベシレートの送達方法もまた、提供される。アムロジピンベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアムロジピンベシレートを保護する方法もまた提供される。アムロジピンベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアムロジピンベシレートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルが放出することを制御する方法であって、
アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルの送達方法。
[請求項22] アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アムロジピンベシレート(amlodipine besylate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアムロジピンベシレートおよびベナゼプリル(benazepril)の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アムロジピンベシレートは、心筋梗塞および発作(stroke)の治療および予防に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチル−3,5−ピリジンジカルボン酸,3−エチル5−メチルエステルモノベンゼンスルホネートである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
ベナゼプリルは、化学名が[S−(R,R)]−3−[[1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]アミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンザゼピン−1−酢酸である。それは市販されているか、または当業者によって製造され得る。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アムロジピンベシレートおよびベナゼプリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アムロジピンベシレートは、米国特許第4,572,909号および4,879,303号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アムロジピンベシレートは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。ベナゼプリルは、そのカルボン酸を介して結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アムロジピンベシレートおよびベナゼプリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルの送達方法もまた、提供される。アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを保護する方法もまた提供される。アムロジピンベシレートおよびベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアムロジピンベシレートおよびベナゼプリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アモキシシリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アモキシシリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアモキシシリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アモキシシリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアモキシシリンが放出することを制御する方法であって、
アモキシシリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアモキシシリンの送達方法。
[請求項22] アモキシシリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アモキシシリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アモキシシリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アモキシシリン(amoxicillin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアモキシシリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アモキシシリンは、細菌感染の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アモキシシリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アモキシシリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアモキシシリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アモキシシリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アモキシシリンをポリペプチドに共有結合することを含む、アモキシシリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアモキシシリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アモキシシリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アモキシシリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アモキシシリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アモキシシリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アモキシシリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アモキシシリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アモキシシリンは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アモキシシリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアモキシシリンの送達方法もまた、提供される。アモキシシリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアモキシシリンを保護する方法もまた提供される。アモキシシリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアモキシシリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アモキシシリンおよびクラブラネートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アモキシシリンおよびクラブラネートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアモキシシリンおよびクラブラネートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アモキシシリンおよびクラブラネートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアモキシシリンおよびクラブラネートが放出することを制御する方法であって、
アモキシシリンおよびクラブラネートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアモキシシリンおよびクラブラネートの送達方法。
[請求項22] アモキシシリンおよびクラブラネートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アモキシシリンおよびクラブラネートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アモキシシリンおよびクラブラネートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アモキシシリン(amoxicillin)およびクラブラネート(clavulanate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアモキシシリンおよびクラブラネートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アモキシシリンおよびクラブラネートは、細菌感染の治療に用いられる周知の薬剤である。各々が、市販されており、かつ当業者によって製造され得る。アモキシシリンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
クラブラネートの構造は、(Z)−(2R,5R)−3−(2−ヒドロキシエチリデン)−7−オキソ−4−オキサ−1−アザビシクロ[3.2.0]−ヘプタン−2−カルボキシレートである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アモキシシリンおよびクラブラネート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アモキシシリンおよびクラブラネートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアモキシシリンおよびクラブラネートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アモキシシリンおよびクラブラネートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アモキシシリンおよびクラブラネートをポリペプチドに共有結合することを含む、アモキシシリンおよびクラブラネートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアモキシシリンおよびクラブラネートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アモキシシリンおよびクラブラネートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンおよびクラブラネートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アモキシシリンおよびクラブラネートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンおよびクラブラネートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アモキシシリンおよびクラブラネートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アモキシシリンおよびクラブラネートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アモキシシリンおよびクラブラネートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アモキシシリンおよびクラブラネートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アモキシシリンおよびクラブラネートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アモキシシリンおよびクラブラネートは、米国特許第yyyyy号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アモキシシリンおよびクラブラネートは、各々、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アモキシシリンおよびクラブラネート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアモキシシリンおよびクラブラネートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアモキシシリンおよびクラブラネートの送達方法もまた、提供される。アモキシシリンおよびクラブラネートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアモキシシリンおよびクラブラネートを保護する方法もまた提供される。アモキシシリンおよびクラブラネートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアモキシシリンおよびクラブラネートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アンプレナビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アンプレナビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアンプレナビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アンプレナビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアンプレナビルが放出することを制御する方法であって、
アンプレナビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアンプレナビルの送達方法。
[請求項22] アンプレナビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アンプレナビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アンプレナビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アンプレナビル(amprenavir)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアンプレナビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アンプレナビル、プロテイナーゼ阻害剤は、HIV感染の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[3S−3R(1R,2S)]]−[3−[[(4−アミノフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]カルバミン酸テトラヒドロ−3−フラニルエステルである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アンプレナビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アンプレナビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアンプレナビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アンプレナビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アンプレナビルをポリペプチドに共有結合することを含む、アンプレナビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアンプレナビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アンプレナビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンプレナビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アンプレナビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンプレナビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンプレナビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アンプレナビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アンプレナビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アンプレナビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アンプレナビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アンプレナビルは、米国特許第5,585,397号、5,646,180号、および5,723,490号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アンプレナビルは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アンプレナビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンプレナビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアンプレナビルの送達方法もまた、提供される。アンプレナビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアンプレナビルを保護する方法もまた提供される。アンプレナビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアンプレナビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナグレリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アナグレリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アナグレリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアナグレリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アナグレリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアナグレリドが放出することを制御する方法であって、
アナグレリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナグレリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナグレリドの送達方法。
[請求項22] アナグレリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アナグレリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アナグレリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アナグレリド(anagrelide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアナグレリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アナグレリドは、血小板減少剤(platelet reducing drug)として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、6,7−ジクロロ−1,5−ジヒドロイミダゾ[2,1−b]キナゾリン−2(3H)−オンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アナグレリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アナグレリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアナグレリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナグレリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アナグレリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アナグレリドをポリペプチドに共有結合することを含む、アナグレリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアナグレリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アナグレリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナグレリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アナグレリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナグレリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナグレリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アナグレリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アナグレリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アナグレリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アナグレリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アナグレリドは、GB1418822号(1975年)(1972年に出願された米国特許出願第223,723号に基づいている)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアナグレリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アナグレリドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アナグレリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナグレリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナグレリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナグレリドの送達方法もまた、提供される。アナグレリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアナグレリドを保護する方法もまた提供される。アナグレリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアナグレリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナリチドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アナリチドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アナリチドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアナリチドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アナリチドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアナリチドが放出することを制御する方法であって、
アナリチドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナリチドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナリチドの送達方法。
[請求項22] アナリチドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アナリチドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アナリチドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アナリチド(anaritide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアナリチドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アナリチドは、乏尿性急性腎不全(oliguric acute renal failure)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−L−アルギニル−8−L−メチオニン−21a−L−フェニルアラニン−21b−L−アルギニン−21c−L−チロシン−アトリオペプチン−21である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アナリチド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アナリチドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアナリチドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナリチドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アナリチドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アナリチドをポリペプチドに共有結合することを含む、アナリチドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアナリチドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アナリチドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナリチドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アナリチドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナリチドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナリチドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アナリチドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アナリチドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アナリチドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アナリチドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアナリチドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アナリチドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アナリチド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナリチドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナリチドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナリチドの送達方法もまた、提供される。アナリチドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアナリチドを保護する方法もまた提供される。アナリチドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアナリチドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アナストロゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アナストロゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアナストロゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アナストロゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアナストロゾールが放出することを制御する方法であって、
アナストロゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナストロゾールの送達方法。
[請求項22] アナストロゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アナストロゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アナストロゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アナストロゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアナストロゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アナストロゾールは、乳癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、アルファ,アルファ,アルファ’,アルファ’−テトラメチル−5−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1,3−ベンゼンジアセトニトリルである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アナストロゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アナストロゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアナストロゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アナストロゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アナストロゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、アナストロゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアナストロゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アナストロゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナストロゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アナストロゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナストロゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アナストロゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アナストロゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アナストロゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アナストロゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アナストロゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アナストロゾールは、EP296749B号(1994年)、優先権GB14013(1987年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アナストロゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアナストロゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアナストロゾールの送達方法もまた、提供される。アナストロゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアナストロゾールを保護する方法もまた提供される。アナストロゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアナストロゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアンチセンスオリゴヌクレオチドが放出することを制御する方法であって、
アンチセンスオリゴヌクレオチドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達方法。
[請求項22] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、目的のタンパク質を製造するmRNAに相補的なRNAから作製された化合物のクラスである。それらの有用性は、主に遺伝子治療に対してである。個々の使用には、炎症性腸疾患()の治療のための使用などがある。それらは、化学RNA合成によって、あるいは、目的の遺伝子のアンチセンス方向(antisense orientation)を含有する遺伝子構造(gene construct)を使用することおよび目的のRNAを単離することによって製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アンチセンスオリゴヌクレオチド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドをポリペプチドに共有結合することを含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アンチセンスオリゴヌクレオチドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アンチセンスオリゴヌクレオチドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボースヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アンチセンスオリゴヌクレオチド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアンチセンスオリゴヌクレオチドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達方法もまた、提供される。アンチセンスオリゴヌクレオチドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアンチセンスオリゴヌクレオチドを保護する方法もまた提供される。アンチセンスオリゴヌクレオチドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアンチセンスオリゴヌクレオチドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アリピプラゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アリピプラゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアリピプラゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アリピプラゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアリピプラゾールが放出することを制御する方法であって、
アリピプラゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアリピプラゾールの送達方法。
[請求項22] アリピプラゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。

アリピプラゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アリピプラゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアリピプラゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アリピプラゾールは、急性精神病の患者の陽性および陰性の症候の両方を減少させるのに用いられる。その化学名は、7−[4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419

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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アリピプラゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アリピプラゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアリピプラゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アリピプラゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アリピプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、アリピプラゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアリピプラゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アリピプラゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アリピプラゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アリピプラゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アリピプラゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アリピプラゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アリピプラゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アリピプラゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アリピプラゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アリピプラゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アリピプラゾールは、EP367141B号(1996年)(優先権日本特許第276953号(1988年))の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アリピプラゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアリピプラゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアリピプラゾールの送達方法もまた、提供される。アリピプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアリピプラゾールを保護する方法もまた提供される。アリピプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアリピプラゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアステミゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アステミゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アステミゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアステミゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アステミゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアステミゾールが放出することを制御する方法であって、
アステミゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアステミゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアステミゾールの送達方法。
[請求項22] アステミゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アステミゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アステミゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アステミゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアステミゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アステミゾールは、季節アレルギー性鼻炎および慢性突発性じんま疹(chronic idiopathic urticara)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−[1−[2−(4−メトキシフェニル)エチル]−4−ピペリジニル]−1H−ベンズイミダゾール−2−アミンである。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アステミゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アステミゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアステミゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアステミゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アステミゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アステミゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、アステミゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアステミゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アステミゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アステミゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アステミゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アステミゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アステミゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アステミゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アステミゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アステミゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アステミゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアステミゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アステミゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアステミゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアステミゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアステミゾールの送達方法もまた、提供される。アステミゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアステミゾールを保護する方法もまた提供される。アステミゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアステミゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアテノロールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アテノロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アテノロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアテノロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アテノロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアテノロールが放出することを制御する方法であって、
アテノロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアテノロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアテノロールの送達方法。
[請求項22] アテノロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アテノロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アテノロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アテノロールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアテノロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アテノロールは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)またはタイプ1糖尿病を有する患者の高血圧または慢性安定性狭心症(chronic stable angina pectoris)の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アテノロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アテノロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアテノロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアテノロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アテノロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む、アテノロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアテノロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アテノロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アテノロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アテノロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アテノロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アテノロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アテノロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アテノロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アテノロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アテノロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアテノロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アテノロールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アテノロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアテノロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアテノロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアテノロールの送達方法もまた、提供される。アテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアテノロールを保護する方法もまた提供される。アテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアテノロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アトルバスタチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アトルバスタチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアトルバスタチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アトルバスタチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアトルバスタチンが放出することを制御する方法であって、
アトルバスタチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアトルバスタチンの送達方法。
[請求項22] アトルバスタチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アトルバスタチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アトルバスタチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アトルバスタチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアトルバスタチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アトルバスタチンは、高コレステロールの治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(ベータR,デルタR)−2−(4−フルオロフェニル)−ベータ,デルタ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アトルバスタチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アトルバスタチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアトルバスタチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アトルバスタチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アトルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、アトルバスタチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアトルバスタチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アトルバスタチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトルバスタチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アトルバスタチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトルバスタチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトルバスタチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アトルバスタチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アトルバスタチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アトルバスタチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アトルバスタチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アトルバスタチンは、米国特許第4,681,893号、5,273,995号、5,686,104号、および5,969,156号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アトルバスタチンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アトルバスタチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトルバスタチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアトルバスタチンの送達方法もまた、提供される。アトルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアトルバスタチンを保護する方法もまた提供される。アトルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアトルバスタチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアトバクオンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アトバクオンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アトバクオンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアトバクオンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アトバクオンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアトバクオンが放出することを制御する方法であって、
アトバクオンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアトバクオンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアトバクオンの送達方法。
[請求項22] アトバクオンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アトバクオンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アトバクオンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アトバクオン(atovaquone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアトバクオンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アトバクオンは、ニューモシスチス・カリニ肺炎の予防に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[トランス−4−(4−クロロフェニル)シクロヘキシル]−3−ヒドロキシ−1,4−ナフタレンジオンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アトバクオン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アトバクオンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアトバクオンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトバクオンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アトバクオンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アトバクオンをポリペプチドに共有結合することを含む、アトバクオンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアトバクオンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アトバクオンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトバクオンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アトバクオンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトバクオンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アトバクオンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アトバクオンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アトバクオンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アトバクオンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アトバクオンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アトバクオンは、米国特許第4,981,874号および5,053,432号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアトバクオンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アトバクオンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アトバクオン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトバクオンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアトバクオンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアトバクオンの送達方法もまた、提供される。アトバクオンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアトバクオンを保護する方法もまた提供される。アトバクオンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアトバクオンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバシマイブと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アバシマイブが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アバシマイブが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアバシマイブを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アバシマイブを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアバシマイブが放出することを制御する方法であって、
アバシマイブを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバシマイブと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバシマイブの送達方法。
[請求項22] アバシマイブが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アバシマイブが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アバシマイブを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アバシマイブ(avasimibe)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアバシマイブの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アバシマイブは、高脂質血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−[[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノキシ]スルホニル]−2,4,6−トリス(1−メチルエチル)ベンゼンアセトアミドである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アバシマイブ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アバシマイブを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアバシマイブを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバシマイブとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アバシマイブは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アバシマイブをポリペプチドに共有結合することを含む、アバシマイブを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアバシマイブの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アバシマイブは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバシマイブは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アバシマイブは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバシマイブは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバシマイブは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アバシマイブをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アバシマイブおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アバシマイブを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アバシマイブの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アバシマイブは、WO94/26702 1994(優先権US 62515(1993年))の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアバシマイブを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アバシマイブは、スルフェート基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アバシマイブ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバシマイブとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバシマイブとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバシマイブの送達方法もまた、提供される。アバシマイブをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアバシマイブを保護する方法もまた提供される。アバシマイブをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアバシマイブを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アザチオプレンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アザチオプレンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアザチオプレンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アザチオプレンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアザチオプレンが放出することを制御する方法であって、
アザチオプレンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアザチオプレンの送達方法。
[請求項22] アザチオプレンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アザチオプレンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アザチオプレンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アザチオプレンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアザチオプレンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アザチオプレンは、移植器官拒絶の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アザチオプレン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アザチオプレンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアザチオプレンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アザチオプレンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アザチオプレンをポリペプチドに共有結合することを含む、アザチオプレンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアザチオプレンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アザチオプレンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アザチオプレンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アザチオプレンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アザチオプレンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アザチオプレンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アザチオプレンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アザチオプレンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アザチオプレンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アザチオプレンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アザチオプレンは、ニトレート基を介して、または、その代わりとして、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アザチオプレン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアザチオプレンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアザチオプレンの送達方法もまた、提供される。アザチオプレンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアザチオプレンを保護する方法もまた提供される。アザチオプレンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアザチオプレンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アゼラスチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アゼラスチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアゼラスチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アゼラスチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアゼラスチンが放出することを制御する方法であって、
アゼラスチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアゼラスチンの送達方法。
[請求項22] アゼラスチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アゼラスチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アゼラスチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アゼラスチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアゼラスチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アゼラスチンは、アレルギー性結膜炎による目の掻痒の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[(4−クロロフェニル)メチル]−2−(ヘキサヒドロ−1−メチル−1H−アゼピン−4−イル)−1(2H)−フタルアジノンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アゼラスチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アゼラスチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアゼラスチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アゼラスチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アゼラスチンをポリペプチドに共有結合することを含む、アゼラスチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアゼラスチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アゼラスチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アゼラスチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アゼラスチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アゼラスチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アゼラスチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アゼラスチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アゼラスチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アゼラスチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アゼラスチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アゼラスチンは、米国特許第5,164,194号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アゼラスチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアゼラスチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアゼラスチンの送達方法もまた、提供される。アゼラスチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアゼラスチンを保護する方法もまた提供される。アゼラスチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアゼラスチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アジトロマイシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アジトロマイシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアジトロマイシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アジトロマイシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアジトロマイシンが放出することを制御する方法であって、
アジトロマイシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアジトロマイシンの送達方法。
[請求項22] アジトロマイシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アジトロマイシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アジトロマイシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アジトロマイシン(azithromycin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアジトロマイシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
アジトロマイシンは、細菌感染の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−13−[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−アルファ−1−リボヘキソピラノシル)オキシ]−2−エチル−3,4,10−トリヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,ヘプタメチル−11−[[3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)ベータ−D−キシロ−ヘキソピラノシル]オキシ]−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−15−オンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルバミドへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アジトロマイシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アジトロマイシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアジトロマイシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アジトロマイシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アジトロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、アジトロマイシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアジトロマイシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アジトロマイシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アジトロマイシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アジトロマイシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アジトロマイシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アジトロマイシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アジトロマイシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アジトロマイシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アジトロマイシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アジトロマイシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
アジトロマイシンは、GB2094293B号(1985年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アジトロマイシンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アジトロマイシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアジトロマイシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアジトロマイシンの送達方法もまた、提供される。アジトロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアジトロマイシンを保護する方法もまた提供される。アジトロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアジトロマイシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したバクロフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] バクロフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] バクロフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してバクロフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、バクロフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からバクロフェンが放出することを制御する方法であって、
バクロフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したバクロフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのバクロフェンの送達方法。
[請求項22] バクロフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] バクロフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

バクロフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、バクロフェン(baclofen)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにバクロフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
バクロフェンは、痙縮の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(バクロフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、バクロフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたバクロフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したバクロフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
バクロフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、バクロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、バクロフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのバクロフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、バクロフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、バクロフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、バクロフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、バクロフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、バクロフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)バクロフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、バクロフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、バクロフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、バクロフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したバクロフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、バクロフェンは、カルボン酸基またはアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−バクロフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したバクロフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したバクロフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのバクロフェンの送達方法もまた、提供される。バクロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からバクロフェンを保護する方法もまた提供される。バクロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からバクロフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ベフロキサトンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ベフロキサトンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してベフロキサトンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ベフロキサトンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からベフロキサトンが放出することを制御する方法であって、
ベフロキサトンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベフロキサトンの送達方法。
[請求項22] ベフロキサトンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ベフロキサトンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ベフロキサトンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ベフロキサトン(befloxatone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにベフロキサトンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ベフロキサトンは、喫煙中止の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(R)−5−(メトキシメチル)−3−[4−[(R)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブトキシ)フェニル]−2−オキサゾリジノンである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ベフロキサトン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ベフロキサトンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたベフロキサトンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ベフロキサトンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ベフロキサトンをポリペプチドに共有結合することを含む、ベフロキサトンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのベフロキサトンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ベフロキサトンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベフロキサトンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ベフロキサトンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベフロキサトンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベフロキサトンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ベフロキサトンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ベフロキサトンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ベフロキサトンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ベフロキサトンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ベフロキサトンは、EP424244B号(1995年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ベフロキサトンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ベフロキサトン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベフロキサトンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベフロキサトンの送達方法もまた、提供される。ベフロキサトンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からベフロキサトンを保護する方法もまた提供される。ベフロキサトンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からベフロキサトンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ベナゼプリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ベナゼプリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してベナゼプリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ベナゼプリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からベナゼプリルが放出することを制御する方法であって、
ベナゼプリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベナゼプリルの送達方法。
[請求項22] ベナゼプリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ベナゼプリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ベナゼプリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ベナゼプリルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにベナゼプリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ベナゼプリルは、化学名が[S−(R,R)]−3−[[1−(エトキシカルボニル)−3−[フェニルプロピル]アミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸である。それは市販されているか、または当業者によって製造され得る。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ベナゼプリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ベナゼプリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたベナゼプリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ベナゼプリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、ベナゼプリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのベナゼプリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ベナゼプリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベナゼプリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ベナゼプリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベナゼプリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベナゼプリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ベナゼプリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ベナゼプリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ベナゼプリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ベナゼプリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ベナゼプリルは、米国特許第4,410,520号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ベナゼプリルは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ベナゼプリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベナゼプリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベナゼプリルの送達方法もまた、提供される。ベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からベナゼプリルを保護する方法もまた提供される。ベナゼプリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からベナゼプリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ベンズトロピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] メシル酸ベンズトロピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] メシル酸ベンズトロピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してメシル酸ベンズトロピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、メシル酸ベンズトロピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からメシル酸ベンズトロピンが放出することを制御する方法であって、
メシル酸ベンズトロピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ベンズトロピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのメシル酸ベンズトロピンの送達方法。
[請求項22] メシル酸ベンズトロピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] メシル酸ベンズトロピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

メシル酸ベンズトロピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、メシル酸ベンズトロピン(benzatropine mesylate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにメシル酸ベンズトロピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
メシル酸ベンズトロピンは、パーキンソン症候群の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(メシル酸ベンズトロピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、メシル酸ベンズトロピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたメシル酸ベンズトロピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ベンズトロピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
メシル酸ベンズトロピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、メシル酸ベンズトロピンをポリペプチドに共有結合することを含む、メシル酸ベンズトロピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのメシル酸ベンズトロピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、メシル酸ベンズトロピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ベンズトロピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、メシル酸ベンズトロピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ベンズトロピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ベンズトロピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)メシル酸ベンズトロピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、メシル酸ベンズトロピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、メシル酸ベンズトロピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、メシル酸ベンズトロピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したメシル酸ベンズトロピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、メシル酸ベンズトロピンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−メシル酸ベンズトロピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ベタメタゾンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ベタメタゾンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してベタメタゾンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ベタメタゾンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からベタメタゾンが放出することを制御する方法であって、
ベタメタゾンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベタメタゾンの送達方法。
[請求項22] ベタメタゾンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ベタメタゾンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ベタメタゾンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ベタメタゾン(betamethasone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにベタメタゾンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ベタメタゾンは、主に抗炎症剤または免疫抑制剤(immunosuppressant agent)としてパーキンソン症候群の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ベタメタゾン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ベタメタゾンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたベタメタゾンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ベタメタゾンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ベタメタゾンをポリペプチドに共有結合することを含む、ベタメタゾンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのベタメタゾンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ベタメタゾンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベタメタゾンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ベタメタゾンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベタメタゾンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ベタメタゾンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ベタメタゾンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ベタメタゾンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ベタメタゾンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ベタメタゾンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ベタメタゾンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ベタメタゾン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したベタメタゾンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのベタメタゾンの送達方法もまた、提供される。ベタメタゾンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からベタメタゾンを保護する方法もまた提供される。ベタメタゾンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からベタメタゾンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したビカルタミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ビカルタミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ビカルタミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してビカルタミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ビカルタミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からビカルタミドが放出することを制御する方法であって、
ビカルタミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したビカルタミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのビカルタミドの送達方法。
[請求項22] ビカルタミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ビカルタミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ビカルタミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ビカルタミド(bicalutamide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにビカルタミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ビカルタミドは、LHRHと組み合せて、局所進行非転移性前立腺癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(+,−)−N−[4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[(4−フルオロフェニル)スルホニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパンアミドである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ビカルタミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ビカルタミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたビカルタミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビカルタミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ビカルタミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ビカルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む、ビカルタミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのビカルタミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ビカルタミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビカルタミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ビカルタミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビカルタミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビカルタミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ビカルタミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ビカルタミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ビカルタミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ビカルタミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ビカルタミドは、米国特許第4,472,382号、4,636,505号、および5,389,613号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したビカルタミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ビカルタミドは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。LHRHもまた同じポリペプチドに結合して、2つの医薬を組み合せて提供することができる。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ビカルタミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビカルタミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビカルタミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのビカルタミドの送達方法もまた、提供される。ビカルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からビカルタミドを保護する方法もまた提供される。ビカルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からビカルタミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドが放出することを制御する方法であって、
ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドの送達方法。
[請求項22] ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、……の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、……である。その構造は、以下の通りである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、米国特許第yyyyy号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドは、zzzzzzzを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを保護する方法もまた提供される。ビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からビソプロロールおよびヒドロクロロチアジドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したボセンタンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ボセンタンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ボセンタンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してボセンタンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ボセンタンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からボセンタンが放出することを制御する方法であって、
ボセンタンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したボセンタンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのボセンタンの送達方法。
[請求項22] ボセンタンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ボセンタンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ボセンタンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ボセンタン(bosentan)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにボセンタンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ボセンタンは、肺高血圧症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−(1,1−ジメチルエチル)−N−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−(2−メトキシフェノキシ)[2,2’−ビピリミジン]−4−イル]ベンゼンスルホンアミドである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ボセンタン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ボセンタンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたボセンタンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したボセンタンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ボセンタンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ボセンタンをポリペプチドに共有結合することを含む、ボセンタンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのボセンタンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ボセンタンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ボセンタンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ボセンタンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ボセンタンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ボセンタンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ボセンタンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ボセンタンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ボセンタンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ボセンタンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ボセンタンは、EP 526708A号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したボセンタンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ボセンタンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ボセンタン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したボセンタンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したボセンタンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのボセンタンの送達方法もまた、提供される。ボセンタンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からボセンタンを保護する方法もまた提供される。ボセンタンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からボセンタンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ブロモクリプチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ブロモクリプチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してブロモクリプチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ブロモクリプチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からブロモクリプチンが放出することを制御する方法であって、
ブロモクリプチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブロモクリプチンの送達方法。
[請求項22] ブロモクリプチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ブロモクリプチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ブロモクリプチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ブロモクリプチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにブロモクリプチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ブロモクリプチンは、乳汁漏出症、性機能低下症、および不育症と共にまたは無しに、無月経などの高プロラクチン血症に関連した機能障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ブロモクリプチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ブロモクリプチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたブロモクリプチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ブロモクリプチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ブロモクリプチンをポリペプチドに共有結合することを含む、ブロモクリプチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのブロモクリプチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ブロモクリプチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブロモクリプチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ブロモクリプチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブロモクリプチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブロモクリプチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ブロモクリプチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ブロモクリプチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ブロモクリプチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ブロモクリプチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ブロモクリプチンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。あるいは、それは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ブロモクリプチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブロモクリプチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブロモクリプチンの送達方法もまた、提供される。ブロモクリプチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からブロモクリプチンを保護する方法もまた提供される。ブロモクリプチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からブロモクリプチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブプロピオンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ブプロピオンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ブプロピオンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してブプロピオンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ブプロピオンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からブプロピオンが放出することを制御する方法であって、
ブプロピオンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブプロピオンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブプロピオンの送達方法。
[請求項22] ブプロピオンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ブプロピオンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ブプロピオンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ブプロピオンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにブプロピオンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ブプロピオンは、喫煙中止療法およびうつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(3−クロロフェニル)−2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−1−プロパノンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ブプロピオン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ブプロピオンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたブプロピオンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブプロピオンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ブプロピオンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ブプロピオンをポリペプチドに共有結合することを含む、ブプロピオンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのブプロピオンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ブプロピオンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブプロピオンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ブプロピオンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブプロピオンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブプロピオンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ブプロピオンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ブプロピオンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ブプロピオンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ブプロピオンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ブプロピオンは、米国特許第5,358,970号、5,427,798号、5,731,000号、5,763,493号、および再発行特許第33,994号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したブプロピオンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ブプロピオンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。あるいは、それは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ブプロピオン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブプロピオンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブプロピオンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブプロピオンの送達方法もまた、提供される。ブプロピオンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からブプロピオンを保護する方法もまた提供される。ブプロピオンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からブプロピオンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブスピロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ブスピロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ブスピロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してブスピロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ブスピロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からブスピロンが放出することを制御する方法であって、
ブスピロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブスピロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブスピロンの送達方法。
[請求項22] ブスピロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ブスピロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ブスピロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ブスピロン(buspirone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにブスピロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ブスピロンは、アトピー性皮膚炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、8−[4−[4−(2−ピリミジニル)−1−ピペラジニル]ブチル]−8−アザスピロ[4,5]デカン−7,9−ジオンヒドロクロリドである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ブスピロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ブスピロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたブスピロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブスピロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ブスピロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ブスピロンをポリペプチドに共有結合することを含む、ブスピロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのブスピロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ブスピロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブスピロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ブスピロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブスピロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブスピロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ブスピロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ブスピロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ブスピロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ブスピロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ブスピロンは、米国特許第4,182,763号および5,015,646号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したブスピロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ブスピロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブスピロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブスピロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブスピロンの送達方法もまた、提供される。ブスピロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からブスピロンを保護する方法もまた提供される。ブスピロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からブスピロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブトルファノールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ブトルファノールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ブトルファノールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してブトルファノールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ブトルファノールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からブトルファノールが放出することを制御する方法であって、
ブトルファノールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したブトルファノールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブトルファノールの送達方法。
[請求項22] ブトルファノールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ブトルファノールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ブトルファノールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ブトルファノール(butorphanol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにブトルファノールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ブトルファノールは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ブトルファノール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ブトルファノールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたブトルファノールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブトルファノールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ブトルファノールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ブトルファノールをポリペプチドに共有結合することを含む、ブトルファノールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのブトルファノールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ブトルファノールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブトルファノールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ブトルファノールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブトルファノールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ブトルファノールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ブトルファノールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ブトルファノールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ブトルファノールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ブトルファノールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したブトルファノールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ブトルファノールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ブトルファノール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブトルファノールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したブトルファノールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのブトルファノールの送達方法もまた、提供される。ブトルファノールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からブトルファノールを保護する方法もまた提供される。ブトルファノールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からブトルファノールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カベルゴリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カベルゴリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカベルゴリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カベルゴリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカベルゴリンが放出することを制御する方法であって、
カベルゴリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカベルゴリンの送達方法。
[請求項22] カベルゴリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カベルゴリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カベルゴリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カベルゴリン(cabergoline)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカベルゴリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カベルゴリンは、パーキンソン病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(8ベータ)−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N−[(エチルアミノ)カルボニル]−6−(2−プロペニル)エルゴリン−8−カルボキサミドである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カベルゴリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カベルゴリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカベルゴリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カベルゴリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カベルゴリンをポリペプチドに共有結合することを含む、カベルゴリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカベルゴリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カベルゴリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カベルゴリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カベルゴリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カベルゴリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カベルゴリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カベルゴリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カベルゴリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カベルゴリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カベルゴリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カベルゴリンは、米国特許第4,526,892号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カベルゴリンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。あるいは、それは、リンカーを介してポリペプチドに共有結合されてもよい。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カベルゴリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカベルゴリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカベルゴリンの送達方法もまた、提供される。カベルゴリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカベルゴリンを保護する方法もまた提供される。カベルゴリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカベルゴリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカフェインと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カフェインが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カフェインが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカフェインを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カフェインを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカフェインが放出することを制御する方法であって、
カフェインを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカフェインと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカフェインの送達方法。
[請求項22] カフェインが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カフェインが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カフェインを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カフェインに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカフェインの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カフェインは、新生児無呼吸の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カフェイン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カフェインを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカフェインを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカフェインとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カフェインは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カフェインをポリペプチドに共有結合することを含む、カフェインを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカフェインの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カフェインは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カフェインは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カフェインは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カフェインは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カフェインは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カフェインをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カフェインおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カフェインを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カフェインの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカフェインを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カフェイン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカフェインとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカフェインとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカフェインの送達方法もまた、提供される。カフェインをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカフェインを保護する方法もまた提供される。カフェインをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカフェインを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カルシトリオールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カルシトリオールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカルシトリオールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カルシトリオールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカルシトリオールが放出することを制御する方法であって、
カルシトリオールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルシトリオールの送達方法。
[請求項22] カルシトリオールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カルシトリオールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
カルシトリオールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カルシトリオール(calcitriol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカルシトリオールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カルシトリオールは、低カルシウム血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カルシトリオール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カルシトリオールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカルシトリオールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カルシトリオールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カルシトリオールをポリペプチドに共有結合することを含む、カルシトリオールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカルシトリオールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カルシトリオールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルシトリオールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カルシトリオールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルシトリオールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルシトリオールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カルシトリオールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カルシトリオールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カルシトリオールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カルシトリオールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カルシトリオールは、米国特許第4,308,264号および6,051,567号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カルシトリオールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カルシトリオール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルシトリオールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルシトリオールの送達方法もまた、提供される。カルシトリオールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカルシトリオールを保護する方法もまた提供される。カルシトリオールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカルシトリオールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カンデサルタンシレキシチルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カンデサルタンシレキシチルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカンデサルタンシレキシチルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カンデサルタンシレキシチルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカンデサルタンシレキシチルが放出することを制御する方法であって、
カンデサルタンシレキシチルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカンデサルタンシレキシチルの送達方法。
[請求項22] カンデサルタンシレキシチルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カンデサルタンシレキシチルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

カンデサルタンシレキシチルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カンデサルタンシレキシチル(candesartan cilexitil)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカンデサルタンシレキシチルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カンデサルタンシレキシチルは、心不全の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1−H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸1−[[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ]エチルエステルである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カンデサルタンシレキシチル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カンデサルタンシレキシチルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカンデサルタンシレキシチルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カンデサルタンシレキシチルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カンデサルタンシレキシチルをポリペプチドに共有結合することを含む、カンデサルタンシレキシチルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカンデサルタンシレキシチルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カンデサルタンシレキシチルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンデサルタンシレキシチルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カンデサルタンシレキシチルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンデサルタンシレキシチルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンデサルタンシレキシチルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カンデサルタンシレキシチルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カンデサルタンシレキシチルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カンデサルタンシレキシチルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カンデサルタンシレキシチルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カンデサルタンシレキシチルは、米国特許第5,196,444号、5,534,534号、5,703,110号および5,705,517号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カンデサルタンシレキシチル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンデサルタンシレキシチルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカンデサルタンシレキシチルの送達方法もまた、提供される。カンデサルタンシレキシチルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカンデサルタンシレキシチルを保護する方法もまた提供される。カンデサルタンシレキシチルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカンデサルタンシレキシチルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カンドキサトリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カンドキサトリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカンドキサトリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カンドキサトリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカンドキサトリルが放出することを制御する方法であって、
カンドキサトリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカンドキサトリルの送達方法。
[請求項22] カンドキサトリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カンドキサトリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カンドキサトリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カンドキサトリル(candoxatril)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカンドキサトリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カンドキサトリルは、心不全および高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[[[1−[3−[(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル]オキシ]−2−[(2−メトキシエトキシ)メチル]−3−オキソプロピル]シクロペンチル] カルボニル]アミノ]−シクロヘキサンカルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カンドキサトリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カンドキサトリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカンドキサトリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カンドキサトリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カンドキサトリルをポリペプチドに共有結合することを含む、カンドキサトリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカンドキサトリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カンドキサトリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンドキサトリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カンドキサトリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンドキサトリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カンドキサトリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カンドキサトリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カンドキサトリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カンドキサトリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カンドキサトリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カンドキサトリルは、EP274234B(1991年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カンドキサトリルは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カンドキサトリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカンドキサトリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカンドキサトリルの送達方法もまた、提供される。カンドキサトリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカンドキサトリルを保護する方法もまた提供される。カンドキサトリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカンドキサトリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカペシタビンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カペシタビンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カペシタビンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカペシタビンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カペシタビンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカペシタビンが放出することを制御する方法であって、
カペシタビンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカペシタビンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカペシタビンの送達方法。
[請求項22] カペシタビンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カペシタビンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カペシタビンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カペシタビン(capecitabine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカペシタビンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カペシタビンは、結腸癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、ペンチル1−(5−デオキシ−ベータ−D−リボフラノシル)−5−フルオロ−1,2−ジヒドロ−2−オキソ−4−ピリミジンカルバメートである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カペシタビン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カペシタビンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカペシタビンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカペシタビンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カペシタビンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カペシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む、カペシタビンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカペシタビンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カペシタビンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カペシタビンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カペシタビンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カペシタビンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カペシタビンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カペシタビンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カペシタビンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カペシタビンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カペシタビンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カペシタビンは、米国特許第4,966,891号および5,472,949号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカペシタビンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カペシタビンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カペシタビン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカペシタビンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカペシタビンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカペシタビンの送達方法もまた、提供される。カペシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカペシタビンを保護する方法もまた提供される。カペシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカペシタビンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカプトプリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カプトプリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カプトプリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカプトプリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カプトプリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカプトプリルが放出することを制御する方法であって、
カプトプリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカプトプリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカプトプリルの送達方法。
[請求項22] カプトプリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カプトプリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
カプトプリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カプトプリルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカプトプリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カプトプリルは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(3−メルカプト−2−メチル−1−オキソプロピル)−L−プロリンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カプトプリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カプトプリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカプトプリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカプトプリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カプトプリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カプトプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、カプトプリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカプトプリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カプトプリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カプトプリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カプトプリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カプトプリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カプトプリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カプトプリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カプトプリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カプトプリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カプトプリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カプトプリルは、米国特許第5,238,924号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカプトプリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カプトプリルは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カプトプリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカプトプリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカプトプリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカプトプリルの送達方法もまた、提供される。カプトプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカプトプリルを保護する方法もまた提供される。カプトプリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカプトプリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カルバマゼピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カルバマゼピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカルバマゼピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カルバマゼピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカルバマゼピンが放出することを制御する方法であって、
カルバマゼピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルバマゼピンの送達方法。
[請求項22] カルバマゼピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カルバマゼピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カルバマゼピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カルバマゼピンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカルバマゼピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カルバマゼピンは、癲癇の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カルバマゼピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カルバマゼピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカルバマゼピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カルバマゼピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カルバマゼピンをポリペプチドに共有結合することを含む、カルバマゼピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカルバマゼピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カルバマゼピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルバマゼピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カルバマゼピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルバマゼピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルバマゼピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カルバマゼピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カルバマゼピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カルバマゼピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カルバマゼピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カルバマゼピンは、米国特許第5,284,662号および再発行特許第34,990号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カルバマゼピンは、アミド基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カルバマゼピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルバマゼピンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルバマゼピンの送達方法もまた、提供される。カルバマゼピンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカルバマゼピンを保護する方法もまた提供される。カルバマゼピンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカルバマゼピンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カルビドパおよびレボドパが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カルビドパおよびレボドパが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカルビドパおよびレボドパを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カルビドパおよびレボドパを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカルビドパおよびレボドパが放出することを制御する方法であって、
カルビドパおよびレボドパを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルビドパおよびレボドパの送達方法。
[請求項22] カルビドパおよびレボドパが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カルビドパおよびレボドパが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カルビドパおよびレボドパを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カルビドパ(carbidopa)およびレボドパ(levodopa)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカルビドパおよびレボドパの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カルビドパおよびレボドパは、パーキンソン病の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。 カルビドパの構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
レボドパの構造は、以下の通りである。
1.
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カルビドパおよびレボドパ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カルビドパおよびレボドパを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカルビドパおよびレボドパを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カルビドパおよびレボドパは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カルビドパおよびレボドパをポリペプチドに共有結合することを含む、カルビドパおよびレボドパを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカルビドパおよびレボドパの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カルビドパおよびレボドパは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルビドパおよびレボドパは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カルビドパおよびレボドパは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルビドパおよびレボドパは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルビドパおよびレボドパは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カルビドパおよびレボドパをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カルビドパおよびレボドパおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カルビドパおよびレボドパを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カルビドパおよびレボドパの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カルビドパおよびレボドパは、各々、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カルビドパおよびレボドパ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルビドパおよびレボドパとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルビドパおよびレボドパの送達方法もまた、提供される。カルビドパおよびレボドパをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカルビドパおよびレボドパを保護する方法もまた提供される。カルビドパおよびレボドパをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカルビドパおよびレボドパを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カルボプラチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カルボプラチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカルボプラチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カルボプラチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカルボプラチンが放出することを制御する方法であって、
カルボプラチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルボプラチンの送達方法。
[請求項22] カルボプラチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カルボプラチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カルボプラチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カルボプラチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカルボプラチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カルボプラチンは、卵巣癌の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カルボプラチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カルボプラチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカルボプラチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カルボプラチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カルボプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む、カルボプラチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカルボプラチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カルボプラチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルボプラチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カルボプラチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルボプラチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルボプラチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カルボプラチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カルボプラチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カルボプラチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カルボプラチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カルボプラチンは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カルボプラチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルボプラチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルボプラチンの送達方法もまた、提供される。カルボプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカルボプラチンを保護する方法もまた提供される。カルボプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカルボプラチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カリソプロドールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カリソプロドールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカリソプロドールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カリソプロドールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカリソプロドールが放出することを制御する方法であって、
カリソプロドールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカリソプロドールの送達方法。
[請求項22] カリソプロドールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カリソプロドールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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カリソプロドールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カリソプロドール(carisoprodol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカリソプロドールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カリソプロドールは、骨格筋痙攣の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カリソプロドール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カリソプロドールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカリソプロドールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カリソプロドールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カリソプロドールをポリペプチドに共有結合することを含む、カリソプロドールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカリソプロドールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カリソプロドールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カリソプロドールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カリソプロドールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カリソプロドールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カリソプロドールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カリソプロドールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カリソプロドールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カリソプロドールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カリソプロドールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カリソプロドールは、アミド基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カリソプロドール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカリソプロドールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカリソプロドールの送達方法もまた、提供される。カリソプロドールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカリソプロドールを保護する方法もまた提供される。カリソプロドールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカリソプロドールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルベジロールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カルベジロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カルベジロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカルベジロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カルベジロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカルベジロールが放出することを制御する方法であって、
カルベジロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカルベジロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルベジロールの送達方法。
[請求項22] カルベジロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カルベジロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
カルベジロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カルベジロールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカルベジロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カルベジロールは、心不全の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(9H−カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(2−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノールである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カルベジロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カルベジロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカルベジロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルベジロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カルベジロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カルベジロールをポリペプチドに共有結合することを含む、カルベジロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカルベジロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カルベジロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルベジロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カルベジロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルベジロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カルベジロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カルベジロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カルベジロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カルベジロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カルベジロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カルベジロールは、米国特許第4,503,067号、5,760,069号、および5,902,821号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカルベジロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カルベジロールは、ヒドロジル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カルベジロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルベジロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカルベジロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカルベジロールの送達方法もまた、提供される。カルベジロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカルベジロールを保護する方法もまた提供される。カルベジロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカルベジロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] カスポファンジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] カスポファンジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してカスポファンジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、カスポファンジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からカスポファンジンが放出することを制御する方法であって、
カスポファンジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカスポファンジンの送達方法。
[請求項22] カスポファンジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] カスポファンジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
カスポファンジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、カスポファンジン(caspofungin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにカスポファンジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
カスポファンジンは、細菌感染および真菌症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−[(4R,5S)−5−[(2−アミノエチル)アミノ]−N2−(10,12−ジメチル−1−オキソテトラデシル)−4−ヒドロキシ−L−オルニチン]−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−L−オルニチン]ニューモカンジンB0である。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(カスポファンジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、カスポファンジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたカスポファンジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
カスポファンジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、カスポファンジンをポリペプチドに共有結合することを含む、カスポファンジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのカスポファンジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、カスポファンジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カスポファンジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、カスポファンジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カスポファンジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、カスポファンジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)カスポファンジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、カスポファンジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、カスポファンジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、カスポファンジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
カスポファンジンは、米国特許出願第32847号(1993年)に基づいた、WO94/21677号(1994年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、カスポファンジンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−カスポファンジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したカスポファンジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのカスポファンジンの送達方法もまた、提供される。カスポファンジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からカスポファンジンを保護する方法もまた提供される。カスポファンジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からカスポファンジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファクロルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セファクロルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セファクロルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセファクロルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セファクロルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセファクロルが放出することを制御する方法であって、
セファクロルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファクロルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファクロルの送達方法。
[請求項22] セファクロルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セファクロルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セファクロルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セファクロルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセファクロルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セファクロルは、気管支炎の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セファクロル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セファクロルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセファクロルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファクロルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セファクロルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セファクロルをポリペプチドに共有結合することを含む、セファクロルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセファクロルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セファクロルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファクロルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セファクロルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファクロルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファクロルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セファクロルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セファクロルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セファクロルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セファクロルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセファクロルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セファクロルは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セファクロル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファクロルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファクロルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファクロルの送達方法もまた、提供される。セファクロルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセファクロルを保護する方法もまた提供される。セファクロルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセファクロルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セファドロキシルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セファドロキシルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセファドロキシルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セファドロキシルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセファドロキシルが放出することを制御する方法であって、
セファドロキシルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファドロキシルの送達方法。
[請求項22] セファドロキシルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セファドロキシルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セファドロキシルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セファドロキシルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセファドロキシルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セファドロキシルは、細菌感染の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セファドロキシル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セファドロキシルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセファドロキシルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セファドロキシルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セファドロキシルをポリペプチドに共有結合することを含む、セファドロキシルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセファドロキシルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セファドロキシルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファドロキシルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セファドロキシルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファドロキシルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファドロキシルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セファドロキシルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セファドロキシルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セファドロキシルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セファドロキシルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セファドロキシルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セファドロキシル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファドロキシルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファドロキシルの送達方法もまた、提供される。セファドロキシルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセファドロキシルを保護する方法もまた提供される。セファドロキシルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセファドロキシルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファゾリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セファゾリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セファゾリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセファゾリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セファゾリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセファゾリンが放出することを制御する方法であって、
セファゾリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファゾリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファゾリンの送達方法。
[請求項22] セファゾリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セファゾリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セファゾリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セファゾリンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセファゾリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セファゾリンは、気道感染症、尿路感染症、皮膚および皮膚組織感染症、胆路感染症、骨および関節感染症、性器感染症、敗血症、および感受性細菌に起因する心内膜炎の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セファゾリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セファゾリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセファゾリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファゾリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セファゾリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セファゾリンをポリペプチドに共有結合することを含む、セファゾリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセファゾリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セファゾリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファゾリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セファゾリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファゾリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファゾリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セファゾリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セファゾリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セファゾリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セファゾリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセファゾリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セファゾリンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セファゾリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファゾリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファゾリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファゾリンの送達方法もまた、提供される。セファゾリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセファゾリンを保護する方法もまた提供される。セファゾリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセファゾリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフジニルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフジニルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフジニルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフジニルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフジニルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフジニルが放出することを制御する方法であって、
セフジニルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフジニルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフジニルの送達方法。
[請求項22] セフジニルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフジニルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
セフジニルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフジニルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフジニルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフジニルは、急性上顎洞炎の治療、慢性気管支炎、咽頭炎、扁桃炎、市中肺炎および細菌性皮膚感染症、の再燃の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(Z)]]−7−[[(2−アミノ−4−チアゾリル)(ヒドロキシイミノ)アセチル]アミノ]−3−エテニル−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフジニル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフジニルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフジニルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフジニルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフジニルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフジニルをポリペプチドに共有結合することを含む、セフジニルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフジニルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフジニルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフジニルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフジニルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフジニルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフジニルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフジニルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフジニルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフジニルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフジニルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフジニルは、米国特許出願第428,970号(1982年)に基づいたEP 105459B(1989年)と、EP 304019B(1995年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフジニルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフジニルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフジニル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフジニルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフジニルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフジニルの送達方法もまた、提供される。セフジニルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフジニルを保護する方法もまた提供される。セフジニルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフジニルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフィキシムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフィキシムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフィキシムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフィキシムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフィキシムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフィキシムが放出することを制御する方法であって、
セフィキシムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフィキシムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフィキシムの送達方法。
[請求項22] セフィキシムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフィキシムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフィキシムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフィキシムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフィキシムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフィキシムは、気道感染症、淋疾、胆路感染症および小児中耳炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(Z)]]−7−[[(2−アミノ−4−チアゾリル)(カルボキシメトキシ)イミノ]アセチル]アミノ]−3−エテニル−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフィキシム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフィキシムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフィキシムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフィキシムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフィキシムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフィキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、セフィキシムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフィキシムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフィキシムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフィキシムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフィキシムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフィキシムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフィキシムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフィキシムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフィキシムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフィキシムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフィキシムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフィキシムは、EP 30360B(1987年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフィキシムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフィキシムは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフィキシム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフィキシムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフィキシムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフィキシムの送達方法もまた、提供される。セフィキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフィキシムを保護する方法もまた提供される。セフィキシムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフィキシムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤が放出することを制御する方法であって、
ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤の送達方法。
[請求項22] ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
本発明のノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、注意欠陥多動性障害(ADHA)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[2S−(2アルファ,3アルファ,5アルファ)]−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,5−ジメチル−2−モルホリノールヒドロクロリドである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明のノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、EP 426416B(1994年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤は、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤の送達方法もまた、提供される。ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を保護する方法もまた提供される。ノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からノルアドレナリンおよびドーパミン再アップテイク阻害剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフォタキシムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフォタキシムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフォタキシムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフォタキシムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフォタキシムが放出することを制御する方法であって、
セフォタキシムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォタキシムの送達方法。
[請求項22] セフォタキシムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフォタキシムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフォタキシムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフォタキシムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフォタキシムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフォタキシムは、重篤な骨および関節感染症、重篤な腹腔内および婦人科感染症(腹膜炎、子宮内膜炎、骨盤内炎症性疾患、骨盤蜂巣炎など)、髄膜炎および他のCNS感染症、重篤な下気道感染症(肺炎など)、菌血症/敗血症、重篤な皮膚および皮膚組織感染症、感受性細菌(susceptible bacteria)に起因する重篤な尿路感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その化学名は、(6R,7R)−7−[2−(2−アミノ−4−チアゾリル)グリオキシルアミド]−8−オキソ−3−ビニル−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸,7(Z)−[O−(カルボキシメチル)オキシム]である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフォタキシム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフォタキシムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフォタキシムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフォタキシムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフォタキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、セフォタキシムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフォタキシムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフォタキシムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォタキシムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフォタキシムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォタキシムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォタキシムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフォタキシムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフォタキシムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフォタキシムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフォタキシムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフォタキシムは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフォタキシム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォタキシムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォタキシムの送達方法もまた、提供される。セフォタキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフォタキシムを保護する方法もまた提供される。セフォタキシムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフォタキシムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォテタンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフォテタンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフォテタンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフォテタンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフォテタンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフォテタンが放出することを制御する方法であって、
セフォテタンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォテタンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォテタンの送達方法。
[請求項22] セフォテタンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフォテタンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
セフォタキシムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフォテタンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフォテタンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフォテタンは、敗血症、泌尿生殖器、胆道および気道感染症の治療、および術後創感染症の予防に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−(6アルファ,7アルファ)]−7−[[[4−(2−アミノ−1−カルボキシ−2−オキソエチリデン)−1,3−ジチエタン−2−イル]カルボニル]アミノ]−7−メトキシ−3−[[(1−メチル−1H−テトラゾル−5−イル)チオ]メチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフォテタン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフォテタンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフォテタンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォテタンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフォテタンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフォテタンをポリペプチドに共有結合することを含む、セフォテタンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフォテタンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフォテタンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォテタンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフォテタンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォテタンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォテタンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフォテタンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフォテタンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフォテタンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフォテタンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフォテタンは、GB1604739号(1981年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフォテタンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフォテタンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフォテタン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォテタンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォテタンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォテタンの送達方法もまた、提供される。セフォテタンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフォテタンを保護する方法もまた提供される。セフォテタンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフォテタンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフォキシチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフォキシチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフォキシチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフォキシチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフォキシチンが放出することを制御する方法であって、
セフォキシチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォキシチンの送達方法。
[請求項22] セフォキシチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフォキシチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフォキシチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフォキシチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフォキシチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフォキシチンは、下気道、皮膚および皮膚組織、骨および関節、および尿路の重篤な感染症、敗血症、婦人科感染症(子宮内膜炎、骨盤蜂巣炎、および骨盤内炎症性疾患など)、および感受性細菌(susceptible bacteria)に起因する腹腔内感染症(腹膜炎および腹腔内膿瘍など)の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフォキシチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフォキシチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフォキシチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフォキシチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフォキシチンをポリペプチドに共有結合することを含む、セフォキシチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフォキシチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフォキシチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォキシチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフォキシチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォキシチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフォキシチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフォキシチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフォキシチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフォキシチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフォキシチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフォキシチンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフォキシチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフォキシチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフォキシチンの送達方法もまた、提供される。セフォキシチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフォキシチンを保護する方法もまた提供される。セフォキシチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフォキシチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフポドキシムプロキセチルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフポドキシムプロキセチルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフポドキシムプロキセチルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフポドキシムプロキセチルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフポドキシムプロキセチルが放出することを制御する方法であって、
セフポドキシムプロキセチルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフポドキシムプロキセチルの送達方法。
[請求項22] セフポドキシムプロキセチルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフポドキシムプロキセチルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフポドキシムプロキセチルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフポドキシムプロキセチルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフポドキシムプロキセチルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフポドキシムプロキセチルは、上および下気道、皮膚および尿路および性行為感染症の軽〜中程度の感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(Z)]]−7−[[(2−アミノ−4−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]−3−(メトキシメチル)−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸1−[[(1−メチルエトキシ)カルボニル]オキシ]エチルエステルである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフポドキシムプロキセチル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフポドキシムプロキセチルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフポドキシムプロキセチルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフポドキシムプロキセチルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフポドキシムプロキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む、セフポドキシムプロキセチルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフポドキシムプロキセチルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフポドキシムプロキセチルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフポドキシムプロキセチルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフポドキシムプロキセチルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフポドキシムプロキセチルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフポドキシムプロキセチルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフポドキシムプロキセチルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフポドキシムプロキセチルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフポドキシムプロキセチルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフポドキシムプロキセチルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフポドキシムプロキセチルは、EP49118B号(1986年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフポドキシムプロキセチルは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフポドキシムプロキセチル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフポドキシムプロキセチルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフポドキシムプロキセチルの送達方法もまた、提供される。セフポドキシムプロキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフポドキシムプロキセチルを保護する方法もまた提供される。セフポドキシムプロキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフポドキシムプロキセチルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフプロジルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフプロジルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフプロジルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフプロジルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフプロジルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフプロジルが放出することを制御する方法であって、
セフプロジルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフプロジルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフプロジルの送達方法。
[請求項22] セフプロジルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフプロジルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフプロジルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフプロジルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフプロジルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフプロジルは、上気道感染症、中耳炎、慢性気管支炎の急性増悪、および皮膚感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(R)]]−7−[[アミノ(4−ヒドロキシフェニル)アセチル]アミノ−8−オキソ−3−(1−プロペニル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフプロジル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフプロジルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフプロジルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフプロジルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフプロジルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフプロジルをポリペプチドに共有結合することを含む、セフプロジルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフプロジルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフプロジルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフプロジルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフプロジルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフプロジルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフプロジルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフプロジルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフプロジルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフプロジルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフプロジルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフプロジルは、米国特許出願第461833号(1983年)に基づいた、GB2135305B号(1987年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフプロジルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフプロジルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフプロジル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフプロジルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフプロジルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフプロジルの送達方法もまた、提供される。セフプロジルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフプロジルを保護する方法もまた提供される。セフプロジルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフプロジルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフタジジムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフタジジムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフタジジムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフタジジムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフタジジムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフタジジムが放出することを制御する方法であって、
セフタジジムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフタジジムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフタジジムの送達方法。
[請求項22] セフタジジムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフタジジムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

セフプロジルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフタジジムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフタジジムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフタジジムは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフタジジム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフタジジムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフタジジムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフタジジムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフタジジムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフタジジムをポリペプチドに共有結合することを含む、セフタジジムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフタジジムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフタジジムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフタジジムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフタジジムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフタジジムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフタジジムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフタジジムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフタジジムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフタジジムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフタジジムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフタジジムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフタジジムは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフタジジム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフタジジムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフタジジムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフタジジムの送達方法もまた、提供される。セフタジジムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフタジジムを保護する方法もまた提供される。セフタジジムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフタジジムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフチブテンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフチブテンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフチブテンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフチブテンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフチブテンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフチブテンが放出することを制御する方法であって、
セフチブテンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフチブテンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフチブテンの送達方法。
[請求項22] セフチブテンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフチブテンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
セフチブテンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフチブテンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフチブテンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフチブテンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(Z)]]−7−[[2−(2−アミノ−4−チアゾリル)−4−カルボキシ−1−オキソ−2−ブテニル]アミノ]−8−オキソ5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフチブテン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフチブテンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフチブテンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフチブテンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフチブテンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフチブテンをポリペプチドに共有結合することを含む、セフチブテンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフチブテンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフチブテンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフチブテンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフチブテンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフチブテンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフチブテンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフチブテンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフチブテンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフチブテンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフチブテンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフチブテンは、EP136721B号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフチブテンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフチブテンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフチブテン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフチブテンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフチブテンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフチブテンの送達方法もまた、提供される。セフチブテンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフチブテンを保護する方法もまた提供される。セフチブテンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフチブテンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した胆汁酸輸送阻害剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 胆汁酸輸送阻害剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 胆汁酸輸送阻害剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して胆汁酸輸送阻害剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、胆汁酸輸送阻害剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から胆汁酸輸送阻害剤が放出することを制御する方法であって、
胆汁酸輸送阻害剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した胆汁酸輸送阻害剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への胆汁酸輸送阻害剤の送達方法。
[請求項22] 胆汁酸輸送阻害剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 胆汁酸輸送阻害剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
胆汁酸輸送阻害剤を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、胆汁酸輸送阻害剤(bile acid transport inhibitor)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに胆汁酸輸送阻害剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
本発明の胆汁酸輸送阻害剤は、高コレステロール血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(3R,5R)−rel−3−ブチル−3−エチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−7,8−ジメトキシ−5−フェニル−1,4−ベンゾチアゼピン1,1−ジオキシドである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(本発明の胆汁酸輸送阻害剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、本発明の胆汁酸輸送阻害剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された本発明の胆汁酸輸送阻害剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した本発明の胆汁酸輸送阻害剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
本発明の胆汁酸輸送阻害剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、本発明の胆汁酸輸送阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、本発明の胆汁酸輸送阻害剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への本発明の胆汁酸輸送阻害剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、胆汁酸輸送阻害剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、胆汁酸輸送阻害剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、胆汁酸輸送阻害剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、胆汁酸輸送阻害剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、胆汁酸輸送阻害剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)本発明の胆汁酸輸送阻害剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、本発明の胆汁酸輸送阻害剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、本発明の胆汁酸輸送阻害剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、胆汁酸輸送阻害剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の胆汁酸輸送阻害剤は、米国特許出願第288527号(1994年)に基づいた、WO96/5188号(1996年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した本発明の胆汁酸輸送阻害剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−胆汁酸輸送阻害剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した胆汁酸輸送阻害剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した胆汁酸輸送阻害剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への胆汁酸輸送阻害剤の送達方法もまた、提供される。胆汁酸輸送阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解から胆汁酸輸送阻害剤を保護する方法もまた提供される。胆汁酸輸送阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物から胆汁酸輸送阻害剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフロキシムアキセチルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフロキシムアキセチルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフロキシムアキセチルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフロキシムアキセチルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフロキシムアキセチルが放出することを制御する方法であって、
セフロキシムアキセチルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフロキシムアキセチルの送達方法。
[請求項22] セフロキシムアキセチルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフロキシムアキセチルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

セフロキシムアキセチルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフロキシムアキセチルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフロキシムアキセチルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフロキシムアキセチルは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[6R−[6アルファ,7ベータ(Z)]]−3−[[(アミノカルボニル)オキシ]メチル]−7−[[2−フラニル(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸,1−(アセチルオキシ)エチルエステルである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフロキシムアキセチル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフロキシムアキセチルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフロキシムアキセチルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフロキシムアキセチルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフロキシムアキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む、セフロキシムアキセチルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフロキシムアキセチルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフロキシムアキセチルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムアキセチルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフロキシムアキセチルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムアキセチルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムアキセチルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフロキシムアキセチルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフロキシムアキセチルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフロキシムアキセチルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフロキシムアキセチルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セフロキシムアキセチルは、GB1571683号(1980年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフロキシムアキセチルは、アミド基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフロキシムアキセチル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムアキセチルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフロキシムアキセチルの送達方法もまた、提供される。セフロキシムアキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフロキシムアキセチルを保護する方法もまた提供される。セフロキシムアキセチルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフロキシムアキセチルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セフロキシムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セフロキシムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセフロキシムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セフロキシムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセフロキシムが放出することを制御する方法であって、
セフロキシムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフロキシムの送達方法。
[請求項22] セフロキシムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セフロキシムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セフロキシムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セフロキシムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセフロキシムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セフロキシムは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セフロキシム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セフロキシムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセフロキシムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セフロキシムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セフロキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、セフロキシムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセフロキシムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セフロキシムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セフロキシムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セフロキシムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セフロキシムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セフロキシムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セフロキシムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セフロキシムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセフロキシムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セフロキシムは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セフロキシム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセフロキシムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセフロキシムの送達方法もまた、提供される。セフロキシムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセフロキシムを保護する方法もまた提供される。セフロキシムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセフロキシムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセレコキシブと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セレコキシブが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セレコキシブが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセレコキシブを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セレコキシブを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセレコキシブが放出することを制御する方法であって、
セレコキシブを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセレコキシブと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセレコキシブの送達方法。
[請求項22] セレコキシブが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セレコキシブが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
セレコキシブを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セレコキシブ(celecoxib)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセレコキシブの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セレコキシブは、変形性関節症および慢性関節リウマチの治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミドである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セレコキシブ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セレコキシブを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセレコキシブを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセレコキシブとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セレコキシブは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セレコキシブをポリペプチドに共有結合することを含む、セレコキシブを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセレコキシブの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セレコキシブは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セレコキシブは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セレコキシブは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セレコキシブは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セレコキシブは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セレコキシブをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セレコキシブおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セレコキシブを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セレコキシブの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セレコキシブは、米国特許第5,466,823号、5,563,165号、5,760,068号および5,972,986号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセレコキシブを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セレコキシブ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセレコキシブとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセレコキシブとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセレコキシブの送達方法もまた、提供される。セレコキシブをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセレコキシブを保護する方法もまた提供される。セレコキシブをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセレコキシブを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファレキシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セファレキシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セファレキシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセファレキシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セファレキシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセファレキシンが放出することを制御する方法であって、
セファレキシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセファレキシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファレキシンの送達方法。
[請求項22] セファレキシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セファレキシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セファレキシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セファレキシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセファレキシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セファレキシンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セファレキシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セファレキシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセファレキシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファレキシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セファレキシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セファレキシンをポリペプチドに共有結合することを含む、セファレキシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセファレキシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セファレキシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファレキシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セファレキシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファレキシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セファレキシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セファレキシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セファレキシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セファレキシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セファレキシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセファレキシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セファレキシンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セファレキシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファレキシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセファレキシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセファレキシンの送達方法もまた、提供される。セファレキシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセファレキシンを保護する方法もまた提供される。セファレキシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセファレキシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セリバスタチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セリバスタチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセリバスタチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セリバスタチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセリバスタチンが放出することを制御する方法であって、
セリバスタチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセリバスタチンの送達方法。
[請求項22] セリバスタチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セリバスタチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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セリバスタチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セリバスタチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセリバスタチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
セリバスタチンは、コレステロール血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[S−[R,S−(E)]]−7−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−2,6−ビス(1−メチルエチル)−3−ピリジニル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸である。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セリバスタチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セリバスタチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセリバスタチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セリバスタチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セリバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、セリバスタチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセリバスタチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セリバスタチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セリバスタチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セリバスタチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セリバスタチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セリバスタチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セリバスタチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セリバスタチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セリバスタチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セリバスタチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セリバスタチンは、米国特許第5,177,080号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セリバスタチンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セリバスタチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセリバスタチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセリバスタチンの送達方法もまた、提供される。セリバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセリバスタチンを保護する方法もまた提供される。セリバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセリバスタチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセチリジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] セチリジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] セチリジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してセチリジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、セチリジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からセチリジンが放出することを制御する方法であって、
セチリジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したセチリジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセチリジンの送達方法。
[請求項22] セチリジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] セチリジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

セチリジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、セチリジンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにセチリジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
セチリジンは、アレルギー性鼻炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(セチリジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、セチリジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたセチリジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセチリジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
セチリジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、セチリジンをポリペプチドに共有結合することを含む、セチリジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのセチリジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、セチリジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セチリジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、セチリジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セチリジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、セチリジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)セチリジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、セチリジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、セチリジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、セチリジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
セチリジンは、米国特許第4,525,358号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したセチリジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、セチリジンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−セチリジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸およびN−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセチリジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したセチリジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのセチリジンの送達方法もまた、提供される。セチリジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からセチリジンを保護する方法もまた提供される。セチリジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からセチリジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロルアゼペートデポットが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロルアゼペートデポットが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロルアゼペートデポットを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロルアゼペートデポットを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロルアゼペートデポットが放出することを制御する方法であって、
クロルアゼペートデポットを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルアゼペートデポットの送達方法。
[請求項22] クロルアゼペートデポットが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロルアゼペートデポットが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロラゼペートデポットを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロルアゼペートデポット(chlorazepate depot)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロルアゼペートデポットの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロルアゼペートデポットは、不安疾患の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロルアゼペートデポット)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロルアゼペートデポットを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロルアゼペートデポットを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロルアゼペートデポットは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロルアゼペートデポットをポリペプチドに共有結合することを含む、クロルアゼペートデポットを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロルアゼペートデポットの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロルアゼペートデポットは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルアゼペートデポットは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロルアゼペートデポットは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルアゼペートデポットは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルアゼペートデポットは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロルアゼペートデポットをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロルアゼペートデポットおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロルアゼペートデポットを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロルアゼペートデポットの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クロルアゼペートデポットは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロルアゼペートデポット共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルアゼペートデポットとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルアゼペートデポットの送達方法もまた、提供される。クロルアゼペートデポットをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロルアゼペートデポットを保護する方法もまた提供される。クロルアゼペートデポットをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロルアゼペートデポットを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロルジアゼポキシドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロルジアゼポキシドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロルジアゼポキシドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロルジアゼポキシドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロルジアゼポキシドが放出することを制御する方法であって、
クロルジアゼポキシドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルジアゼポキシドの送達方法。
[請求項22] クロルジアゼポキシドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロルジアゼポキシドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロルジアゼポキシドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロルジアゼポキシドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロルジアゼポキシドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロルジアゼポキシドは、不安および緊張の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロルジアゼポキシド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロルジアゼポキシドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロルジアゼポキシドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロルジアゼポキシドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロルジアゼポキシドをポリペプチドに共有結合することを含む、クロルジアゼポキシドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロルジアゼポキシドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロルジアゼポキシドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルジアゼポキシドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロルジアゼポキシドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルジアゼポキシドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルジアゼポキシドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロルジアゼポキシドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロルジアゼポキシドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロルジアゼポキシドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロルジアゼポキシドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クロルジアゼポキシドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロルジアゼポキシド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルジアゼポキシドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルジアゼポキシドの送達方法もまた、提供される。クロルジアゼポキシドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロルジアゼポキシドを保護する方法もまた提供される。クロルジアゼポキシドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロルジアゼポキシドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクレソニドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シクレソニドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シクレソニドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシクレソニドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シクレソニドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシクレソニドが放出することを制御する方法であって、
シクレソニドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクレソニドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクレソニドの送達方法。
[請求項22] シクレソニドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シクレソニドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シクレソニドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シクレソニド(ciclesonide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシクレソニドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シクレソニドは、喘息の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[11ベータ,16アルファ(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シクレソニド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シクレソニドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシクレソニドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクレソニドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シクレソニドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シクレソニドをポリペプチドに共有結合することを含む、シクレソニドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシクレソニドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シクレソニドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクレソニドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シクレソニドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクレソニドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクレソニドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シクレソニドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シクレソニドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シクレソニドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シクレソニドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シクレソニドは、米国特許出願第578942号(1990年)に基づいた、GB2247680B号(1994年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシクレソニドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シクレソニドは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シクレソニド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクレソニドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクレソニドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクレソニドの送達方法もまた、提供される。シクレソニドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシクレソニドを保護する方法もまた提供される。シクレソニドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシクレソニドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシランセトロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シランセトロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シランセトロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシランセトロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シランセトロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシランセトロンが放出することを制御する方法であって、
シランセトロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシランセトロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシランセトロンの送達方法。
[請求項22] シランセトロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シランセトロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シランセトロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シランセトロン(cilansetron)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシランセトロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シランセトロンは、過敏性腸症候群の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(R)−5,6,9,10−テトラヒドロ−10−[(2−メチル−1H−イミダゾル−1−イル)メチル]−4H−ピリド[3,2,1−jk]カルバゾール−11(8H)−オンである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シランセトロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シランセトロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシランセトロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシランセトロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シランセトロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シランセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、シランセトロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシランセトロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シランセトロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シランセトロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シランセトロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シランセトロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シランセトロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シランセトロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シランセトロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シランセトロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シランセトロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シランセトロンは、EP297651号(1989年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシランセトロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シランセトロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシランセトロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシランセトロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシランセトロンの送達方法もまた、提供される。シランセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシランセトロンを保護する方法もまた提供される。シランセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシランセトロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シラスタチンおよびイミペネムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シラスタチンおよびイミペネムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシラスタチンおよびイミペネムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シラスタチンおよびイミペネムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシラスタチンおよびイミペネムが放出することを制御する方法であって、
シラスタチンおよびイミペネムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシラスタチンおよびイミペネムの送達方法。
[請求項22] シラスタチンおよびイミペネムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シラスタチンおよびイミペネムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シラスタチンおよびイミペネムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シラスタチンおよびイミペネムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシラスタチンおよびイミペネムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シラスタチンおよびイミペネムは、細菌感染症の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。シラスタチンは抗菌性活性を有さないが、イミペネムの有効性を増大させる。各々は、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。イミペネムの構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シラスタチンおよびイミペネム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シラスタチンおよびイミペネムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシラスタチンおよびイミペネムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シラスタチンおよびイミペネムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シラスタチンおよびイミペネムをポリペプチドに共有結合することを含む、シラスタチンおよびイミペネムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシラスタチンおよびイミペネムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シラスタチンおよびイミペネムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シラスタチンおよびイミペネムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シラスタチンおよびイミペネムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シラスタチンおよびイミペネムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シラスタチンおよびイミペネムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シラスタチンおよびイミペネムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シラスタチンおよびイミペネムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シラスタチンおよびイミペネムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シラスタチンおよびイミペネムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イミペネムは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。シラスタチンは、遊離アルコール、酸、またはアミン基の何れかを介して、あるいはリンカーを介して共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シラスタチンおよびイミペネム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシラスタチンおよびイミペネムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシラスタチンおよびイミペネムの送達方法もまた、提供される。シラスタチンおよびイミペネムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシラスタチンおよびイミペネムを保護する方法もまた提供される。シラスタチンおよびイミペネムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシラスタチンおよびイミペネムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシロミラストと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シロミラストが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シロミラストが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシロミラストを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シロミラストを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシロミラストが放出することを制御する方法であって、
シロミラストを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシロミラストと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシロミラストの送達方法。
[請求項22] シロミラストが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シロミラストが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シロミラストを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シロミラスト(cilomilast)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシロミラストの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シロミラストは、喘息の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサンカルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シロミラスト)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シロミラストを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシロミラストを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシロミラストとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シロミラストは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シロミラストをポリペプチドに共有結合することを含む、シロミラストを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシロミラストの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シロミラストは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シロミラストは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シロミラストは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シロミラストは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シロミラストは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シロミラストをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シロミラストおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シロミラストを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シロミラストの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シロミラストは、優先権米国特許出願第862030号(1992年)に基づいた、WO93/19749号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシロミラストを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シロミラストは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シロミラスト共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシロミラストとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシロミラストとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシロミラストの送達方法もまた、提供される。シロミラストをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシロミラストを保護する方法もまた提供される。シロミラストをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシロミラストを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシメチジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シメチジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シメチジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシメチジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シメチジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシメチジンが放出することを制御する方法であって、
シメチジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシメチジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシメチジンの送達方法。
[請求項22] シメチジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シメチジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シメチジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シメチジンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシメチジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シメチジンは、十二指腸潰瘍の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シメチジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シメチジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシメチジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシメチジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シメチジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シメチジンをポリペプチドに共有結合することを含む、シメチジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシメチジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シメチジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シメチジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シメチジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シメチジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シメチジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シメチジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シメチジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シメチジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シメチジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシメチジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シメチジンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シメチジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシメチジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシメチジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシメチジンの送達方法もまた、提供される。シメチジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシメチジンを保護する方法もまた提供される。シメチジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシメチジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シプロフロキサシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シプロフロキサシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシプロフロキサシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シプロフロキサシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシプロフロキサシンが放出することを制御する方法であって、
シプロフロキサシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシプロフロキサシンの送達方法。
[請求項22] シプロフロキサシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シプロフロキサシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シプロフロキサシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シプロフロキサシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシプロフロキサシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シプロフロキサシンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−7−(1−ピペラジニル)−3−キノリンカルボン酸である。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シプロフロキサシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シプロフロキサシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシプロフロキサシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シプロフロキサシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シプロフロキサシンをポリペプチドに共有結合することを含む、シプロフロキサシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシプロフロキサシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シプロフロキサシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シプロフロキサシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シプロフロキサシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シプロフロキサシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シプロフロキサシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シプロフロキサシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シプロフロキサシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シプロフロキサシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シプロフロキサシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シプロフロキサシンは、米国特許第4,670,444号および第5,286,754号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シプロフロキサシンは、カルボン酸を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シプロフロキサシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシプロフロキサシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシプロフロキサシンの送達方法もまた、提供される。シプロフロキサシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシプロフロキサシンを保護する方法もまた提供される。シプロフロキサシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシプロフロキサシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシサプリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シサプリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シサプリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシサプリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シサプリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシサプリドが放出することを制御する方法であって、
シサプリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシサプリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシサプリドの送達方法。
[請求項22] シサプリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シサプリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シサプリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シサプリドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシサプリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シサプリドは、消化管運動疾患(gastrointestinal motility disease)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、シス−4−アミノ−5−クロロ−N−[1−[3−(4−フルオロフェノキシ)プロピル]−3−メトキシ−4−ピペリジニル]−2−メトキシベンズアミドである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シサプリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シサプリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシサプリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサプリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シサプリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シサプリドをポリペプチドに共有結合することを含む、シサプリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシサプリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シサプリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサプリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シサプリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサプリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサプリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シサプリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シサプリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シサプリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シサプリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シサプリドは、米国特許第4,962,115号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシサプリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シサプリドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シサプリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサプリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサプリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシサプリドの送達方法もまた、提供される。シサプリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシサプリドを保護する方法もまた提供される。シサプリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシサプリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シサトラキュリウムベシレートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シサトラキュリウムベシレートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシサトラキュリウムベシレートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シサトラキュリウムベシレートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシサトラキュリウムベシレートが放出することを制御する方法であって、
シサトラキュリウムベシレートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシサトラキュリウムベシレートの送達方法。
[請求項22] シサトラキュリウムベシレートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シサトラキュリウムベシレートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シサトラキュリウムベシレートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シサトラキュリウムベシレート(cisatracurium besylate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシサトラキュリウムベシレートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シサトラキュリウムベシレートは、手術中において神経筋接合部遮断薬(neuromuscular blocker)として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[1R−[1アルファ,2アルファ(1’R,2’R)]]−2,2’−[1,5−ペンタンジイルビス[オキシ(3−オキソ−3,1−プロパンジイル)]]ビス[1−[(3,4−ジメトキシフェニル)メチル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシ−2−メチル−イソキノリニウムである。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シサトラキュリウムベシレート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シサトラキュリウムベシレートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシサトラキュリウムベシレートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シサトラキュリウムベシレートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シサトラキュリウムベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む、シサトラキュリウムベシレートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシサトラキュリウムベシレートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シサトラキュリウムベシレートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサトラキュリウムベシレートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シサトラキュリウムベシレートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサトラキュリウムベシレートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シサトラキュリウムベシレートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シサトラキュリウムベシレートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シサトラキュリウムベシレートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シサトラキュリウムベシレートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シサトラキュリウムベシレートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シサトラキュリウムベシレートは、米国特許第5,453,510号およびWO92/965(1992年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。

本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シサトラキュリウムベシレート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシサトラキュリウムベシレートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシサトラキュリウムベシレートの送達方法もまた、提供される。シサトラキュリウムベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシサトラキュリウムベシレートを保護する方法もまた提供される。シサトラキュリウムベシレートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシサトラキュリウムベシレートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシスプラチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シスプラチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シスプラチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシスプラチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シスプラチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシスプラチンが放出することを制御する方法であって、
シスプラチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシスプラチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシスプラチンの送達方法。
[請求項22] シスプラチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シスプラチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シスプラチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シスプラチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシスプラチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シスプラチンは、膀胱癌および卵巣癌の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シスプラチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シスプラチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシスプラチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシスプラチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シスプラチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シスプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む、シスプラチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシスプラチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シスプラチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シスプラチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シスプラチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シスプラチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シスプラチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シスプラチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シスプラチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シスプラチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シスプラチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シスプラチンは、米国特許第5,562,925号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシスプラチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シスプラチンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シスプラチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシスプラチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシスプラチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシスプラチンの送達方法もまた、提供される。シスプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシスプラチンを保護する方法もまた提供される。シスプラチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシスプラチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシタロプラムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シタロプラムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シタロプラムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシタロプラムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シタロプラムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシタロプラムが放出することを制御する方法であって、
シタロプラムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシタロプラムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシタロプラムの送達方法。
[請求項22] シタロプラムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シタロプラムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

シタロプラムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シタロプラムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシタロプラムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シタロプラムは、うつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロ−5−イソベンゾフランカルボニトリルである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シタロプラム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シタロプラムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシタロプラムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシタロプラムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シタロプラムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シタロプラムをポリペプチドに共有結合することを含む、シタロプラムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシタロプラムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シタロプラムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シタロプラムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シタロプラムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シタロプラムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シタロプラムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シタロプラムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シタロプラムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シタロプラムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シタロプラムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
シタロプラムは、GB1526331号(1978年)、GB1486号(1976年)、およびEP171943B号(1988年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシタロプラムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シタロプラム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシタロプラムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシタロプラムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシタロプラムの送達方法もまた、提供される。シタロプラムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシタロプラムを保護する方法もまた提供される。シタロプラムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシタロプラムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クラリスロマイシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クラリスロマイシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクラリスロマイシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クラリスロマイシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクラリスロマイシンが放出することを制御する方法であって、
クラリスロマイシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクラリスロマイシンの送達方法。
[請求項22] クラリスロマイシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クラリスロマイシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クラリスロマイシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クラリスロマイシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクラリスロマイシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クラリスロマイシンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、6−O−メチルエリトロマイシンである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クラリスロマイシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クラリスロマイシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクラリスロマイシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クラリスロマイシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、クラリスロマイシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクラリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クラリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クラリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クラリスロマイシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クラリスロマイシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クラリスロマイシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クラリスロマイシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クラリスロマイシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クラリスロマイシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クラリスロマイシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
クラリスロマイシンは、EP41355B号(1983年)およびEP293885B号(1993年)、および米国特許出願第58499号(1987年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クラリスロマイシンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クラリスロマイシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクラリスロマイシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクラリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。クラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクラリスロマイシンを保護する方法もまた提供される。クラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクラリスロマイシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロミプラミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロミプラミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロミプラミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロミプラミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロミプラミンが放出することを制御する方法であって、
クロミプラミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロミプラミンの送達方法。
[請求項22] クロミプラミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロミプラミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロミプラミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロミプラミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロミプラミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロミプラミンは、強迫性障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロミプラミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロミプラミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロミプラミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロミプラミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、クロミプラミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロミプラミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロミプラミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロミプラミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロミプラミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロミプラミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロミプラミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロミプラミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロミプラミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロミプラミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロミプラミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロミプラミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロミプラミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロミプラミンの送達方法もまた、提供される。クロミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロミプラミンを保護する方法もまた提供される。クロミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロミプラミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロナゼパムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロナゼパムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロナゼパムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロナゼパムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロナゼパムが放出することを制御する方法であって、
クロナゼパムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロナゼパムの送達方法。
[請求項22] クロナゼパムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロナゼパムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロナゼパムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロナゼパムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロナゼパムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロナゼパムは、癲癇の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロナゼパム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロナゼパムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロナゼパムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロナゼパムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロナゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む、クロナゼパムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロナゼパムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロナゼパムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロナゼパムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロナゼパムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロナゼパムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロナゼパムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロナゼパムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロナゼパムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロナゼパムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロナゼパムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クロナゼパムは、アミノ基またはニトロ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロナゼパム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロナゼパムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロナゼパムの送達方法もまた、提供される。クロナゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロナゼパムを保護する方法もまた提供される。クロナゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロナゼパムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロニジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロニジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロニジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロニジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロニジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロニジンが放出することを制御する方法であって、
クロニジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロニジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロニジンの送達方法。
[請求項22] クロニジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロニジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロニジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロニジンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロニジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロニジンは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロニジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロニジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロニジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロニジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロニジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロニジンをポリペプチドに共有結合することを含む、クロニジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロニジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロニジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロニジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロニジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロニジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロニジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロニジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロニジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロニジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロニジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロニジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クロニジンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロニジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロニジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロニジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロニジンの送達方法もまた、提供される。クロニジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロニジンを保護する方法もまた提供される。クロニジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロニジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロピドグレルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロピドグレルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロピドグレルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロピドグレルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロピドグレルが放出することを制御する方法であって、
クロピドグレルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロピドグレルの送達方法。
[請求項22] クロピドグレルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロピドグレルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロピドグレルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロピドグレル(clopidgrel)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロピドグレルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロピドグレルは、血栓症および発作(stroke)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−アルファ−(2−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5(4H)−酢酸メチルエステルサルフェート(1:1)である。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロピドグレル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロピドグレルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロピドグレルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロピドグレルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロピドグレルをポリペプチドに共有結合することを含む、クロピドグレルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロピドグレルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロピドグレルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロピドグレルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロピドグレルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロピドグレルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロピドグレルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロピドグレルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロピドグレルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロピドグレルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロピドグレルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
クロピドグレルは、米国特許第4,529,596号、4,847,265号、および5,576,328号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロピドグレル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロピドグレルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロピドグレルの送達方法もまた、提供される。クロピドグレルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロピドグレルを保護する方法もまた提供される。クロピドグレルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロピドグレルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ナトリウムチャネルブロッカーが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ナトリウムチャネルブロッカーが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してナトリウムチャネルブロッカーを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ナトリウムチャネルブロッカーを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からナトリウムチャネルブロッカーが放出することを制御する方法であって、
ナトリウムチャネルブロッカーを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのナトリウムチャネルブロッカーの送達方法。
[請求項22] ナトリウムチャネルブロッカーが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ナトリウムチャネルブロッカーが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ナトリウムチャネルブロッカーを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ナトリウムチャネルブロッカーに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにナトリウムチャネルブロッカーの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
本発明のナトリウムチャネルブロッカーは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(5R)−5−(2,3−ジクロロフェニル)−6−(フルオロメチル)−2,4−ピリミジンジアミンである。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ナトリウムチャネルブロッカー)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ナトリウムチャネルブロッカーを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたナトリウムチャネルブロッカーを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ナトリウムチャネルブロッカーは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ナトリウムチャネルブロッカーをポリペプチドに共有結合することを含む、ナトリウムチャネルブロッカーを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのナトリウムチャネルブロッカーの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ナトリウムチャネルブロッカーは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ナトリウムチャネルブロッカーをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ナトリウムチャネルブロッカーおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ナトリウムチャネルブロッカーを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ナトリウムチャネルブロッカーの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ナトリウムチャネルブロッカーは、WO97/9317号(1997年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ナトリウムチャネルブロッカーは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ナトリウムチャネルブロッカー共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したナトリウムチャネルブロッカーとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのナトリウムチャネルブロッカーの送達方法もまた、提供される。ナトリウムチャネルブロッカーをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からナトリウムチャネルブロッカーを保護する方法もまた提供される。ナトリウムチャネルブロッカーをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からナトリウムチャネルブロッカーを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して硫酸アバカビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、硫酸アバカビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から硫酸アバカビルが放出することを制御する方法であって、
硫酸アバカビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への硫酸アバカビルの送達方法。
[請求項22] 硫酸アバカビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

硫酸アバカビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、硫酸アバカビルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに硫酸アバカビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
硫酸アバカビルは、HIVの治療で用いられる逆転写酵素抑性剤である周知の薬剤−炭素環2’−デオキシグアノシンヌクレオシド類似体である。その化学名は、(1S,4R)−4−[2−アミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−9H−プリン−9−イル]−2−シクロペンテン−1−メタノールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(硫酸アバカビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、硫酸アバカビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアバカビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
硫酸アバカビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む、硫酸アバカビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への硫酸アバカビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、硫酸アバカビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、硫酸アバカビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)硫酸アバカビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、硫酸アバカビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、硫酸アバカビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、硫酸アバカビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
硫酸アバカビルは、米国特許第5,034,394号および5,089,500号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、硫酸アバカビルが、そのアルコール基、または、その代わりとしてそのアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−硫酸アバカビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への硫酸アバカビルの送達方法もまた、提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から硫酸アバカビルを保護する方法もまた提供される。硫酸アバカビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から硫酸アバカビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] アバレリックスが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] アバレリックスが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してアバレリックスを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、アバレリックスを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からアバレリックスが放出することを制御する方法であって、
アバレリックスを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバレリックスの送達方法。
[請求項22] アバレリックスが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] アバレリックスが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

アバレリックスを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、アバレリックスに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにアバレリックスの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
アバレリックスは、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬として作用する、前立腺癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N−メチル−L−チロシル−D−アスパラジニル−L−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリル−D−アラニンアミドである。アバレリックスは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(アバレリックス)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、アバレリックスを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたアバレリックスを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
アバレリックスは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む、アバレリックスを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのアバレリックスの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、アバレリックスは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、アバレリックスは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、アバレリックスは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)アバレリックスをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、アバレリックスおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、アバレリックスを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、アバレリックスの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したアバレリックスを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、アバレリックスが、その遊離アルコール基を介して、または、その代わりとしてそのアミノ基の1つを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−アバレリックス共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したアバレリックスとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのアバレリックスの送達方法もまた、提供される。アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からアバレリックスを保護する方法もまた提供される。アバレリックスをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からアバレリックスを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロルフェニラミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロルフェニラミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロルフェニラミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロルフェニラミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロルフェニラミンが放出することを制御する方法であって、
クロルフェニラミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルフェニラミンの送達方法。
[請求項22] クロルフェニラミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロルフェニラミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

クロルフェニラミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロルフェニラミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロルフェニラミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロルフェニラミンは、鼻づまりの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロルフェニラミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロルフェニラミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロルフェニラミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロルフェニラミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロルフェニラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、クロルフェニラミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロルフェニラミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロルフェニラミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルフェニラミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロルフェニラミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルフェニラミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロルフェニラミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロルフェニラミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロルフェニラミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロルフェニラミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロルフェニラミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロルフェニラミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロルフェニラミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロルフェニラミンの送達方法もまた、提供される。クロルフェニラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロルフェニラミンを保護する方法もまた提供される。クロルフェニラミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロルフェニラミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロザピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] クロザピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] クロザピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してクロザピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、クロザピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からクロザピンが放出することを制御する方法であって、
クロザピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したクロザピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロザピンの送達方法。
[請求項22] クロザピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] クロザピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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クロザピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、クロザピンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにクロザピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
クロザピンは、精神病性障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は、以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(クロザピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、クロザピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたクロザピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロザピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
クロザピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、クロザピンをポリペプチドに共有結合することを含む、クロザピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのクロザピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、クロザピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロザピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、クロザピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロザピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、クロザピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)クロザピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、クロザピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、クロザピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、クロザピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したクロザピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、クロザピンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−クロザピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸およびN−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロザピンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したクロザピンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのクロザピンの送達方法もまた、提供される。クロザピンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からクロザピンを保護する方法もまた提供される。クロザピンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からクロザピンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコレスチポールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] コレスチポールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] コレスチポールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してコレスチポールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、コレスチポールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からコレスチポールが放出することを制御する方法であって、
コレスチポールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコレスチポールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコレスチポールの送達方法。
[請求項22] コレスチポールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] コレスチポールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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コレスチポールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、コレスチポールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにコレスチポールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
コレスチポールは、高コレステロール血症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。塩酸コレスチポールは、5個のアミン窒素のうち約1個が塩化物でプロトン付加された第二および第三アミンを含有する、ジエチレントリアミンおよび1−クロロ−2,3−エポキシプロパンのコポリマーである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(コレスチポール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、コレスチポールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたコレスチポールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコレスチポールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
コレスチポールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、コレスチポールをポリペプチドに共有結合することを含む、コレスチポールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのコレスチポールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、コレスチポールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コレスチポールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、コレスチポールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コレスチポールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コレスチポールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)コレスチポールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、コレスチポールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、コレスチポールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、コレスチポールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したコレスチポールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、コレスチポールは、そのアミノ基の1つを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−コレスチポール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコレスチポールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコレスチポールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコレスチポールの送達方法もまた、提供される。コレスチポールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からコレスチポールを保護する方法もまた提供される。コレスチポールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からコレスチポールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコニバプタンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] コニバプタンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] コニバプタンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してコニバプタンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、コニバプタンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からコニバプタンが放出することを制御する方法であって、
コニバプタンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコニバプタンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコニバプタンの送達方法。
[請求項22] コニバプタンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] コニバプタンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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コニバプタンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、コニバプタン(conivaptan)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにコニバプタンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
コニバプタンは、うっ血性心不全および低ナトリウム血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−[1,1’−ビフェニル]−2−イル−4−[(4,5−ジヒドロ−2−メチルイミダゾ[4,5−d][1]ベンズアゼピン−6(1H)−イル)カルボニル]−ベンズアミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(コニバプタン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、コニバプタンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたコニバプタンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコニバプタンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
コニバプタンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、コニバプタンをポリペプチドに共有結合することを含む、コニバプタンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのコニバプタンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、コニバプタンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コニバプタンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、コニバプタンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コニバプタンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コニバプタンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)コニバプタンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、コニバプタンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、コニバプタンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、コニバプタンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
コニバプタンは、EP709386A号(1996年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したコニバプタンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−コニバプタン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコニバプタンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコニバプタンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコニバプタンの送達方法もまた、提供される。コニバプタンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からコニバプタンを保護する方法もまた提供される。コニバプタンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からコニバプタンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シクロベンザプリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シクロベンザプリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシクロベンザプリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シクロベンザプリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシクロベンザプリンが放出することを制御する方法であって、
シクロベンザプリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロベンザプリンの送達方法。
[請求項22] シクロベンザプリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シクロベンザプリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
シクロベンザプリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシクロベンザプリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シクロベンザプリンは、筋痙攣の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、3−(5H−ジベンゾ[a,b]シクロヘプテン−5−イリデン)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミンである。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シクロベンザプリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シクロベンザプリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシクロベンザプリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シクロベンザプリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シクロベンザプリンをポリペプチドに共有結合することを含む、シクロベンザプリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシクロベンザプリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シクロベンザプリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロベンザプリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シクロベンザプリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロベンザプリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロベンザプリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シクロベンザプリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シクロベンザプリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シクロベンザプリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シクロベンザプリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シクロベンザプリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロベンザプリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロベンザプリンの送達方法もまた、提供される。シクロベンザプリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシクロベンザプリンを保護する方法もまた提供される。シクロベンザプリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシクロベンザプリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シクロホスファミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シクロホスファミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシクロホスファミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シクロホスファミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシクロホスファミドが放出することを制御する方法であって、
シクロホスファミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロホスファミドの送達方法。
[請求項22] シクロホスファミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シクロホスファミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
シクロホスファミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合
発明の分野
本発明は、シクロホスファミドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシクロホスファミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シクロホスファミドは、骨髄増殖症候群およびリンパ増殖症候群および充実性悪性腫瘍(solid malignancies)の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シクロホスファミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シクロホスファミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシクロホスファミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シクロホスファミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シクロホスファミドをポリペプチドに共有結合することを含む、シクロホスファミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシクロホスファミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シクロホスファミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロホスファミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シクロホスファミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロホスファミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロホスファミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シクロホスファミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シクロホスファミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シクロホスファミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シクロホスファミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シクロホスファミドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シクロホスファミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロホスファミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロホスファミドの送達方法もまた、提供される。シクロホスファミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシクロホスファミドを保護する方法もまた提供される。シクロホスファミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシクロホスファミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] シクロスポリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] シクロスポリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してシクロスポリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、シクロスポリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からシクロスポリンが放出することを制御する方法であって、
シクロスポリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロスポリンの送達方法。
[請求項22] シクロスポリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] シクロスポリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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シクロスポリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、シクロスポリンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにシクロスポリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
シクロスポリンは、腎臓、肝臓または心臓の異系同種植皮(allografts)の拒絶の予防治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(シクロスポリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、シクロスポリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたシクロスポリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
シクロスポリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、シクロスポリンをポリペプチドに共有結合することを含む、シクロスポリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのシクロスポリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、シクロスポリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロスポリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、シクロスポリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロスポリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、シクロスポリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)シクロスポリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、シクロスポリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、シクロスポリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、シクロスポリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、シクロスポリンは、ヒドロキシル基、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−シクロスポリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したシクロスポリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのシクロスポリンの送達方法もまた、提供される。シクロスポリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からシクロスポリンを保護する方法もまた提供される。シクロスポリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からシクロスポリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したダルテパリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ダルテパリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ダルテパリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してダルテパリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ダルテパリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からダルテパリンが放出することを制御する方法であって、
ダルテパリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したダルテパリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのダルテパリンの送達方法。
[請求項22] ダルテパリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ダルテパリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ダルテパリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ダルテパリンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにダルテパリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ダルテパリン(ヘパリンとしても周知である)は、アスピリン併用療法(concurrent aspirin therapy)を受ける不安定狭心症およびnon−Q波心筋梗塞を有する患者の凝血の形成による、虚血性合併症(ischemic complications)の予防治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される天然産物である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ダルテパリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ダルテパリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたダルテパリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダルテパリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ダルテパリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ダルテパリンをポリペプチドに共有結合することを含む、ダルテパリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのダルテパリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ダルテパリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダルテパリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ダルテパリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダルテパリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダルテパリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ダルテパリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ダルテパリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ダルテパリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ダルテパリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ダルテパリンは、EP14184B号(1989年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したダルテパリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ダルテパリンは、何れかの遊離ヒドロキシル、アミノ、またはカルボキシル基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ダルテパリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダルテパリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダルテパリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのダルテパリンの送達方法もまた、提供される。ダルテパリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からダルテパリンを保護する方法もまた提供される。ダルテパリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からダルテパリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したダピタントと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ダピタントが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ダピタントが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してダピタントを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ダピタントを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からダピタントが放出することを制御する方法であって、
ダピタントを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したダピタントと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのダピタントの送達方法。
[請求項22] ダピタントが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ダピタントが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ダピタントを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ダピタント(dapitant)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにダピタントの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ダピタントは、喘息の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[3aS−[2(R),3aアルファ,4ベータ,7aアルファ]]−オクタヒドロ−4−(2−メトキシフェニル)−2−[2−(2−メトキシフェニル)−1−オキソプロピル]−7,7−ジフェニル−1H−イソインドール−4−オールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ダピタント)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ダピタントを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたダピタントを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダピタントとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ダピタントは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ダピタントをポリペプチドに共有結合することを含む、ダピタントを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのダピタントの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ダピタントは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダピタントは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ダピタントは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダピタントは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ダピタントは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ダピタントをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ダピタントおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ダピタントを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ダピタントの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ダピタントは、WO93/21155号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したダピタントを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ダピタントは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ダピタント共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダピタントとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したダピタントとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのダピタントの送達方法もまた、提供される。ダピタントをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からダピタントを保護する方法もまた提供される。ダピタントをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からダピタントを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デスモプレシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デスモプレシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデスモプレシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デスモプレシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデスモプレシンが放出することを制御する方法であって、
デスモプレシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデスモプレシンの送達方法。
[請求項22] デスモプレシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デスモプレシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
デスモプレシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デスモプレシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデスモプレシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デスモプレシンは、尿失禁の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(3−メルカプトプロパン酸)−8−D−アルギニン−バソプレシンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デスモプレシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デスモプレシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデスモプレシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デスモプレシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デスモプレシンをポリペプチドに共有結合することを含む、デスモプレシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデスモプレシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デスモプレシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デスモプレシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デスモプレシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デスモプレシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デスモプレシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デスモプレシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デスモプレシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デスモプレシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デスモプレシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
デスモプレシンは、米国特許第5,047,398号、5,500,413号、5,674,850号、および5,763,407号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、デスモプレシンは、アミノ基とのアミド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デスモプレシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデスモプレシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデスモプレシンの送達方法もまた、提供される。デスモプレシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデスモプレシンを保護する方法もまた提供される。デスモプレシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデスモプレシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールが放出することを制御する方法であって、
デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールの送達方法。
[請求項22] デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デソゲストレル(desogestrel)およびエチニルエストラジオール(ethinyl estradiol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。
デソゲストレルの化学名は、(17アルファ)−13−エチル−11−メチレン−18,19−ジノルプレグン−4−エン−20−イン−17−オールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
エチニルエストラジオールの化学名は、(17アルファ)−19−ノルプレグナ−1,2,5(10)−トリエン−20−イン−3,17−ジオールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デソゲストレルおよびエチニルエストラジオール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールをポリペプチドに共有結合することを含む、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
デソゲストレルは、GB1455270号(1976年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、それらのヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デソゲストレルおよびエチニルエストラジオール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールの送達方法もまた、提供される。デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを保護する方法もまた提供される。デソゲストレルおよびエチニルエストラジオールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デキストロアンフェタミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デキストロアンフェタミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデキストロアンフェタミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デキストロアンフェタミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデキストロアンフェタミンが放出することを制御する方法であって、
デキストロアンフェタミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデキストロアンフェタミンの送達方法。
[請求項22] デキストロアンフェタミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デキストロアンフェタミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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デキストロアンフェタミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デキストロアンフェタミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデキストロアンフェタミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デキストロアンフェタミンは、ナルコレプシーおよび注意欠陥多動性障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デキストロアンフェタミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デキストロアンフェタミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデキストロアンフェタミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デキストロアンフェタミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デキストロアンフェタミンをポリペプチドに共有結合することを含む、デキストロアンフェタミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデキストロアンフェタミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デキストロアンフェタミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロアンフェタミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デキストロアンフェタミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロアンフェタミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロアンフェタミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デキストロアンフェタミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デキストロアンフェタミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デキストロアンフェタミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デキストロアンフェタミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、デキストロアンフェタミンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デキストロアンフェタミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロアンフェタミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデキストロアンフェタミンの送達方法もまた、提供される。デキストロアンフェタミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデキストロアンフェタミンを保護する方法もまた提供される。デキストロアンフェタミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデキストロアンフェタミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デキストロメトルファンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デキストロメトルファンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデキストロメトルファンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デキストロメトルファンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデキストロメトルファンが放出することを制御する方法であって、
デキストロメトルファンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデキストロメトルファンの送達方法。
[請求項22] デキストロメトルファンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デキストロメトルファンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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デキストロメトルファンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デキストロメトルファン(dextromethorphan)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデキストロメトルファンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デキストロメトルファンは、咳の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デキストロメトルファン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デキストロメトルファンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデキストロメトルファンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デキストロメトルファンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デキストロメトルファンをポリペプチドに共有結合することを含む、デキストロメトルファンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデキストロメトルファンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デキストロメトルファンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロメトルファンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デキストロメトルファンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロメトルファンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デキストロメトルファンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デキストロメトルファンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デキストロメトルファンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デキストロメトルファンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デキストロメトルファンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デキストロメトルファン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデキストロメトルファンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデキストロメトルファンの送達方法もまた、提供される。デキストロメトルファンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデキストロメトルファンを保護する方法もまた提供される。デキストロメトルファンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデキストロメトルファンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジアゼパムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジアゼパムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジアゼパムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジアゼパムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジアゼパムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジアゼパムが放出することを制御する方法であって、
ジアゼパムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジアゼパムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジアゼパムの送達方法。
[請求項22] ジアゼパムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジアゼパムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジアゼパムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジアゼパムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジアゼパムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジアゼパムは、不安の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジアゼパム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジアゼパムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジアゼパムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジアゼパムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジアゼパムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジアゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む、ジアゼパムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジアゼパムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジアゼパムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジアゼパムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジアゼパムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジアゼパムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジアゼパムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジアゼパムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジアゼパムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジアゼパムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジアゼパムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジアゼパムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジアゼパム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジアゼパムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジアゼパムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジアゼパムの送達方法もまた、提供される。ジアゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジアゼパムを保護する方法もまた提供される。ジアゼパムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジアゼパムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] コリン作動性チャネルモデュレータが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] コリン作動性チャネルモデュレータが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してコリン作動性チャネルモデュレータを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、コリン作動性チャネルモデュレータを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からコリン作動性チャネルモデュレータが放出することを制御する方法であって、
コリン作動性チャネルモデュレータを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコリン作動性チャネルモデュレータの送達方法。
[請求項22] コリン作動性チャネルモデュレータが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] コリン作動性チャネルモデュレータが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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コリン作動性チャネルモデュレータを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、コリン作動性チャネルモデュレータ(cholinergic channel modulator)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにコリン作動性チャネルモデュレータの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
コリン作動性チャネルモデュレータは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(R)−2−クロロ−5−(2−アゼチジニルメトキシ)ピリジンである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(コリン作動性チャネルモデュレータ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、コリン作動性チャネルモデュレータを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたコリン作動性チャネルモデュレータを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
コリン作動性チャネルモデュレータは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、コリン作動性チャネルモデュレータをポリペプチドに共有結合することを含む、コリン作動性チャネルモデュレータを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのコリン作動性チャネルモデュレータの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、コリン作動性チャネルモデュレータは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コリン作動性チャネルモデュレータは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、コリン作動性チャネルモデュレータは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コリン作動性チャネルモデュレータは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、コリン作動性チャネルモデュレータは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)コリン作動性チャネルモデュレータをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、コリン作動性チャネルモデュレータおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、コリン作動性チャネルモデュレータを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、コリン作動性チャネルモデュレータの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
コリン作動性チャネルモデュレータは、優先権米国特許出願第474873号に基づく、WO96/40682(1996年)の主題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、コリン作動性チャネルモデュレータは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−コリン作動性チャネルモデュレータ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したコリン作動性チャネルモデュレータとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのコリン作動性チャネルモデュレータの送達方法もまた、提供される。コリン作動性チャネルモデュレータをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からコリン作動性チャネルモデュレータを保護する方法もまた提供される。コリン作動性チャネルモデュレータをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からコリン作動性チャネルモデュレータを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジクロフェナクが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジクロフェナクが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジクロフェナクを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジクロフェナクを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジクロフェナクが放出することを制御する方法であって、
ジクロフェナクを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジクロフェナクの送達方法。
[請求項22] ジクロフェナクが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジクロフェナクが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジクロフェナクを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジクロフェナクに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジクロフェナクの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジクロフェナクは、急性および慢性関節リウマチの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その化学名は、カリウム(o−(2,6−ジクロロアニリノ)−フェニル)アセテートである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジクロフェナク)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジクロフェナクを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジクロフェナクを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジクロフェナクは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジクロフェナクをポリペプチドに共有結合することを含む、ジクロフェナクを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジクロフェナクの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジクロフェナクは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジクロフェナクは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジクロフェナクをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジクロフェナクおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジクロフェナクを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジクロフェナクの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジクロフェナクは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジクロフェナク共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジクロフェナクの送達方法もまた、提供される。ジクロフェナクをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジクロフェナクを保護する方法もまた提供される。ジクロフェナクをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジクロフェナクを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジクロフェナクおよびミソプロストールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジクロフェナクおよびミソプロストールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジクロフェナクおよびミソプロストールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジクロフェナクおよびミソプロストールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジクロフェナクおよびミソプロストールが放出することを制御する方法であって、
ジクロフェナクおよびミソプロストールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジクロフェナクおよびミソプロストールの送達方法。
[請求項22] ジクロフェナクおよびミソプロストールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジクロフェナクおよびミソプロストールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジクロフェナクおよびミソプロストールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジクロフェナクおよびミソプロストールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジクロフェナクおよびミソプロストールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジクロフェナクおよびミソプロストールは、疼痛および炎症の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
ジクロフェナクの化学名は、カリウム(o−(2,6−ジクロロアニリノ)−フェニル)アセテートである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
ミソプロストールの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419

本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジクロフェナクおよびミソプロストール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジクロフェナクおよびミソプロストールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジクロフェナクおよびミソプロストールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジクロフェナクおよびミソプロストールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジクロフェナクおよびミソプロストールをポリペプチドに共有結合することを含む、ジクロフェナクおよびミソプロストールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジクロフェナクおよびミソプロストールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジクロフェナクおよびミソプロストールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジクロフェナクおよびミソプロストールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジクロフェナクおよびミソプロストールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジクロフェナクおよびミソプロストールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジクロフェナクおよびミソプロストールは、それぞれ、カルボン酸基およびアルコール基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジクロフェナクおよびミソプロストール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジクロフェナクおよびミソプロストールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジクロフェナクおよびミソプロストールの送達方法もまた、提供される。ジクロフェナクおよびミソプロストールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジクロフェナクおよびミソプロストールを保護する方法もまた提供される。ジクロフェナクおよびミソプロストールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジクロフェナクおよびミソプロストールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジシクロミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジシクロミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジシクロミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジシクロミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジシクロミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジシクロミンが放出することを制御する方法であって、
ジシクロミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジシクロミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジシクロミンの送達方法。
[請求項22] ジシクロミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジシクロミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジシクロミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジシクロミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジシクロミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジシクロミンは、過敏性腸症候群などのGI運動性の機能障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジシクロミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジシクロミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジシクロミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジシクロミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジシクロミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジシクロミンをポリペプチドに共有結合することを含む、ジシクロミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジシクロミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジシクロミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジシクロミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジシクロミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジシクロミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジシクロミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジシクロミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジシクロミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジシクロミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジシクロミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジシクロミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジシクロミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジシクロミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジシクロミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジシクロミンの送達方法もまた、提供される。ジシクロミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジシクロミンを保護する方法もまた提供される。ジシクロミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジシクロミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジダノシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジダノシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジダノシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジダノシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジダノシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジダノシンが放出することを制御する方法であって、
ジダノシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジダノシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジダノシンの送達方法。
[請求項22] ジダノシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジダノシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ジダノシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジダノシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジダノシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジダノシンは、HIVの治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2’,3’−ジデオキシイノシンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジダノシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジダノシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジダノシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジダノシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジダノシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジダノシンをポリペプチドに共有結合することを含む、ジダノシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジダノシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジダノシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジダノシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジダノシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジダノシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジダノシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジダノシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジダノシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジダノシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジダノシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ジダノシンは、米国特許第4,861,759号および5,616,566号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジダノシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジダノシンは、リボースアルコール基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジダノシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジダノシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジダノシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジダノシンの送達方法もまた、提供される。ジダノシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジダノシンを保護する方法もまた提供される。ジダノシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジダノシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジゴキシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジゴキシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジゴキシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジゴキシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジゴキシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジゴキシンが放出することを制御する方法であって、
ジゴキシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジゴキシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジゴキシンの送達方法。
[請求項22] ジゴキシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジゴキシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジゴキシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジゴキシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジゴキシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジゴキシンは、ジギタリス剤投与および寛解維持療法の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジゴキシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジゴキシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジゴキシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジゴキシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジゴキシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジゴキシンをポリペプチドに共有結合することを含む、ジゴキシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジゴキシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジゴキシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジゴキシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジゴキシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジゴキシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジゴキシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジゴキシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジゴキシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジゴキシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジゴキシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジゴキシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジゴキシンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジゴキシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジゴキシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジゴキシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジゴキシンの送達方法もまた、提供される。ジゴキシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジゴキシンを保護する方法もまた提供される。ジゴキシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジゴキシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジルチアゼムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジルチアゼムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジルチアゼムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジルチアゼムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジルチアゼムが放出することを制御する方法であって、
ジルチアゼムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジルチアゼムの送達方法。
[請求項22] ジルチアゼムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジルチアゼムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジルチアゼムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジルチアゼムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジルチアゼムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジルチアゼムは、高血圧およびアンギナの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジルチアゼム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジルチアゼムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジルチアゼムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジルチアゼムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジルチアゼムをポリペプチドに共有結合することを含む、ジルチアゼムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジルチアゼムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジルチアゼムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジルチアゼムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジルチアゼムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジルチアゼムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジルチアゼムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジルチアゼムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジルチアゼムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジルチアゼムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジルチアゼムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ジルチアゼムは、米国特許第5,529,791号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジルチアゼム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジルチアゼムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジルチアゼムの送達方法もまた、提供される。ジルチアゼムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジルチアゼムを保護する方法もまた提供される。ジルチアゼムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジルチアゼムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジピリダモールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジピリダモールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジピリダモールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジピリダモールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジピリダモールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジピリダモールが放出することを制御する方法であって、
ジピリダモールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジピリダモールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジピリダモールの送達方法。
[請求項22] ジピリダモールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジピリダモールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジピリダモールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジピリダモールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジピリダモールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジピリダモールは、心臓弁置換の術後血栓塞栓症の合併症の予防においてクマリン抗凝血薬に対する補助薬として用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジピリダモール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジピリダモールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジピリダモールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジピリダモールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジピリダモールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジピリダモールをポリペプチドに共有結合することを含む、ジピリダモールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジピリダモールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジピリダモールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジピリダモールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジピリダモールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジピリダモールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジピリダモールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジピリダモールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジピリダモールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジピリダモールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジピリダモールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジピリダモールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジピリダモールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジピリダモール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸およびN−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジピリダモールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジピリダモールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジピリダモールの送達方法もまた、提供される。ジピリダモールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジピリダモールを保護する方法もまた提供される。ジピリダモールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジピリダモールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ジバルプロエックスが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ジバルプロエックスが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してジバルプロエックスを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ジバルプロエックスを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からジバルプロエックスが放出することを制御する方法であって、
ジバルプロエックスを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジバルプロエックスの送達方法。
[請求項22] ジバルプロエックスが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ジバルプロエックスが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ジバルプロエックスを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ジバルプロエックス(divalproex)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにジバルプロエックスの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ジバルプロエックスは、癲癇、偏頭痛、精神分裂病およびうつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−プロピルペンタン酸である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ジバルプロエックス)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ジバルプロエックスを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたジバルプロエックスを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ジバルプロエックスは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ジバルプロエックスをポリペプチドに共有結合することを含む、ジバルプロエックスを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのジバルプロエックスの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ジバルプロエックスは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジバルプロエックスは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ジバルプロエックスは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジバルプロエックスは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ジバルプロエックスは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ジバルプロエックスをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ジバルプロエックスおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ジバルプロエックスを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ジバルプロエックスの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ジバルプロエックスは、米国特許第4,988,731号および5,212,326号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ジバルプロエックスは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ジバルプロエックス共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したジバルプロエックスとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのジバルプロエックスの送達方法もまた、提供される。ジバルプロエックスをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からジバルプロエックスを保護する方法もまた提供される。ジバルプロエックスをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からジバルプロエックスを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] D−メチルフェニデートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] D−メチルフェニデートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してD−メチルフェニデートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、D−メチルフェニデートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からD−メチルフェニデートが放出することを制御する方法であって、
D−メチルフェニデートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのD−メチルフェニデートの送達方法。
[請求項22] D−メチルフェニデートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] D−メチルフェニデートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
D−メチルフェニデートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、D−メチルフェニデートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにD−メチルフェニデートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
D−メチルフェニデートは、注意欠陥障害の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(アルファR,2R)−アルファ−フェニル−2−ピペリジン酢酸メチルエステルである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(D−メチルフェニデート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、D−メチルフェニデートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたD−メチルフェニデートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
D−メチルフェニデートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、D−メチルフェニデートをポリペプチドに共有結合することを含む、D−メチルフェニデートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのD−メチルフェニデートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、D−メチルフェニデートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、D−メチルフェニデートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、D−メチルフェニデートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、D−メチルフェニデートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、D−メチルフェニデートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)D−メチルフェニデートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、D−メチルフェニデートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、D−メチルフェニデートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、D−メチルフェニデートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
D−メチルフェニデートは、米国特許第2,507,631号(1950年)および、米国特許出願第937684号(1997年)に基づいた、WO99/16439号(1999年)の課題であり(それぞれ、本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、D−メチルフェニデートは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−D−メチルフェニデート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したD−メチルフェニデートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのD−メチルフェニデートの送達方法もまた、提供される。D−メチルフェニデートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からD−メチルフェニデートを保護する方法もまた提供される。D−メチルフェニデートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からD−メチルフェニデートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] メシル酸ドラセトロムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] メシル酸ドラセトロムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してメシル酸ドラセトロムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、メシル酸ドラセトロムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からメシル酸ドラセトロムが放出することを制御する方法であって、
メシル酸ドラセトロムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのメシル酸ドラセトロムの送達方法。
[請求項22] メシル酸ドラセトロムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] メシル酸ドラセトロムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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メシル酸ドラセトロムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、メシル酸ドラセトロム(dolasetrom mesylate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにメシル酸ドラセトロムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
メシル酸ドラセトロムは、化学療法に関連した悪心および嘔吐の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1H−インドール−3−カルボン酸トランス−オクタヒドロ−3−オキソ−2,6−メタノ−2H−キノリジン−8−イルエステルである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(メシル酸ドラセトロム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、メシル酸ドラセトロムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたメシル酸ドラセトロムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
メシル酸ドラセトロムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、メシル酸ドラセトロムをポリペプチドに共有結合することを含む、メシル酸ドラセトロムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのメシル酸ドラセトロムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、メシル酸ドラセトロムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ドラセトロムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、メシル酸ドラセトロムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ドラセトロムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、メシル酸ドラセトロムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)メシル酸ドラセトロムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、メシル酸ドラセトロムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、メシル酸ドラセトロムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、メシル酸ドラセトロムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
メシル酸ドラセトロムは、米国特許第4,906,775号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−メシル酸ドラセトロム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したメシル酸ドラセトロムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのメシル酸ドラセトロムの送達方法もまた、提供される。メシル酸ドラセトロムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からメシル酸ドラセトロムを保護する方法もまた提供される。メシル酸ドラセトロムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からメシル酸ドラセトロムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドネペジルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ドネペジルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ドネペジルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してドネペジルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ドネペジルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からドネペジルが放出することを制御する方法であって、
ドネペジルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドネペジルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドネペジルの送達方法。
[請求項22] ドネペジルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ドネペジルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ドネペジルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ドネペジルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにドネペジルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ドネペジルは、アルツハイマーおよび注意欠陥障害の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]メチル]−1H−インデン−1−オンである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ドネペジル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ドネペジルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたドネペジルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドネペジルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ドネペジルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ドネペジルをポリペプチドに共有結合することを含む、ドネペジルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのドネペジルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ドネペジルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドネペジルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ドネペジルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドネペジルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドネペジルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ドネペジルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ドネペジルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ドネペジルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ドネペジルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ドネペジルは、米国特許第4,895,841号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したドネペジルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ドネペジル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドネペジルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドネペジルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドネペジルの送達方法もまた、提供される。ドネペジルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からドネペジルを保護する方法もまた提供される。ドネペジルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からドネペジルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドパミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ドパミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ドパミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してドパミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ドパミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からドパミンが放出することを制御する方法であって、
ドパミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドパミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドパミンの送達方法。
[請求項22] ドパミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ドパミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ドパミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ドパミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにドパミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ドパミンは、十分な液量置換後(fluid volume replacement)に持続するショックの治療において補助薬として心拍出量、血圧、および尿流を増大させるために用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ドパミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ドパミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたドパミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドパミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ドパミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ドパミンをポリペプチドに共有結合することを含む、ドパミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのドパミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ドパミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドパミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ドパミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドパミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドパミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ドパミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ドパミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ドパミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ドパミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したドパミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ドパミンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ドパミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドパミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドパミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドパミンの送達方法もまた、提供される。ドパミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からドパミンを保護する方法もまた提供される。ドパミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からドパミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ドキサゾシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ドキサゾシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してドキサゾシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ドキサゾシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からドキサゾシンが放出することを制御する方法であって、
ドキサゾシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドキサゾシンの送達方法。
[請求項22] ドキサゾシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ドキサゾシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ドキサゾシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ドキサゾシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにドキサゾシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ドキサゾシンは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−キナゾリニル)−4−[(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)カルボニル]ピペリジンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ドキサゾシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ドキサゾシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたドキサゾシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ドキサゾシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ドキサゾシンをポリペプチドに共有結合することを含む、ドキサゾシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのドキサゾシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ドキサゾシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキサゾシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ドキサゾシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキサゾシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキサゾシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ドキサゾシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ドキサゾシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ドキサゾシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ドキサゾシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ドキサゾシンは、GB 2007656B号(1982年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ドキサゾシンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ドキサゾシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキサゾシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドキサゾシンの送達方法もまた、提供される。ドキサゾシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からドキサゾシンを保護する方法もまた提供される。ドキサゾシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からドキサゾシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ドキソルビシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ドキソルビシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してドキソルビシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ドキソルビシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からドキソルビシンが放出することを制御する方法であって、
ドキソルビシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドキソルビシンの送達方法。
[請求項22] ドキソルビシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ドキソルビシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ドキソルビシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ドキソルビシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにドキソルビシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ドキソルビシンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ドキソルビシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ドキソルビシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたドキソルビシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ドキソルビシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ドキソルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む、ドキソルビシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのドキソルビシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ドキソルビシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキソルビシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ドキソルビシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキソルビシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ドキソルビシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ドキソルビシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ドキソルビシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ドキソルビシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ドキソルビシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ドキソルビシンは、米国特許第4,837,028号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ドキソルビシンは、アルコール基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ドキソルビシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したドキソルビシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのドキソルビシンの送達方法もまた、提供される。ドキソルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からドキソルビシンを保護する方法もまた提供される。ドキソルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からドキソルビシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デュロキセチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デュロキセチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデュロキセチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デュロキセチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデュロキセチンが放出することを制御する方法であって、
デュロキセチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデュロキセチンの送達方法。
[請求項22] デュロキセチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デュロキセチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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デュロキセチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デュロキセチン(duloxetine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデュロキセチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デュロキセチンは、うつ症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−N−メチル−ガンマ−(1−ナフタレニルオキシ)−2−チオフェネプロパンアミンである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デュロキセチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デュロキセチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデュロキセチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デュロキセチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デュロキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む、デュロキセチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデュロキセチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デュロキセチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュロキセチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デュロキセチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュロキセチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュロキセチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デュロキセチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デュロキセチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デュロキセチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デュロキセチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
デュロキセチンは、273658B号(1990年)、優先権米国特許出願第945122号(1986年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、デュロキセチンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デュロキセチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュロキセチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデュロキセチンの送達方法もまた、提供される。デュロキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデュロキセチンを保護する方法もまた提供される。デュロキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデュロキセチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデュタステリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] デュタステリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] デュタステリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してデュタステリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、デュタステリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からデュタステリドが放出することを制御する方法であって、
デュタステリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したデュタステリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデュタステリドの送達方法。
[請求項22] デュタステリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] デュタステリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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デュタステリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、デュタステリド(dutasteride)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにデュタステリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
デュタステリドは、良性前立腺肥大症および脱毛症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(4aR,4bS,6aS,7S,9aS,9bS,11aR)−N−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−2,4a,4b,5,6,6a,7,8,9,9a,9b,10,11,11a−テトラデカヒドロ−4a,6a−ジメチル−2−オキソ−1H−インデノ[5,4−f]キノリン−7−カルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(デュタステリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、デュタステリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたデュタステリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュタステリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
デュタステリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、デュタステリドをポリペプチドに共有結合することを含む、デュタステリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのデュタステリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、デュタステリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュタステリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、デュタステリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュタステリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、デュタステリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)デュタステリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、デュタステリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、デュタステリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、デュタステリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
デュタステリドは、WO95/7927号(1995年)、優先権米国特許出願第123280号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したデュタステリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、デュタステリドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−デュタステリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュタステリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したデュタステリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのデュタステリドの送達方法もまた、提供される。デュタステリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からデュタステリドを保護する方法もまた提供される。デュタステリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からデュタステリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエカドトリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エカドトリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エカドトリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエカドトリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エカドトリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエカドトリルが放出することを制御する方法であって、
エカドトリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエカドトリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエカドトリルの送達方法。
[請求項22] エカドトリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エカドトリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
エカドトリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エカドトリル(ecadotril)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエカドトリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
エカドトリルは、高血圧、心不全および肝硬変の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−N−[2−[(アセチルチオ)メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]グリシンフェニルメチルエステルである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エカドトリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エカドトリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエカドトリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエカドトリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エカドトリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エカドトリルをポリペプチドに共有結合することを含む、エカドトリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエカドトリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エカドトリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エカドトリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エカドトリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エカドトリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エカドトリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エカドトリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エカドトリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エカドトリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エカドトリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エカドトリルは、EP318377B号(1993年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエカドトリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エカドトリルは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エカドトリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエカドトリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエカドトリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエカドトリルの送達方法もまた、提供される。エカドトリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエカドトリルを保護する方法もまた提供される。エカドトリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエカドトリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエコピパムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エコピパムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エコピパムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエコピパムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エコピパムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエコピパムが放出することを制御する方法であって、
エコピパムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエコピパムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエコピパムの送達方法。
[請求項22] エコピパムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エコピパムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって
,
エコピパムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
制御される、請求項21に記載の方法。
発明の分野
本発明は、エコピパム(ecopipam)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエコピパムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
エコピパムは、肥満症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(6aS,13bR)−11−クロロ−6,6a,7,8,9,13b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5H−ベンゾ[d]ナフト[2,1−b]アゼピン−12−オールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エコピパム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エコピパムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエコピパムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエコピパムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エコピパムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エコピパムをポリペプチドに共有結合することを含む、エコピパムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエコピパムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エコピパムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エコピパムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エコピパムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エコピパムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エコピパムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エコピパムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エコピパムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エコピパムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エコピパムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エコピパムは、EP254737A号(1990年)、優先権米国特許出願第820471号(1986年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエコピパムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エコピパムは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エコピパム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエコピパムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエコピパムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエコピパムの送達方法もまた、提供される。エコピパムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエコピパムを保護する方法もまた提供される。エコピパムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエコピパムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエドデキンアルファと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エドデキンアルファが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。

エドデキンアルファを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エドデキンアルファ(インターロイキン−12)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエドデキンアルファの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
インターロイキン−12は、食細胞や、樹枝状細胞、皮膚のランゲルハンス細胞およびB細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞によって産生されたヘテロ二量体サイトカイン(heterodimeric cytokine)である。インターロイキン−12の産生は、T細胞非依存経路またはT細胞依存経路(後者はCD40リガンド−CD40相互作用によって媒介される)の細菌、細胞内病原体、菌類、ウイルス、あるいはそれらの生成物によって誘導される。インターロイキン−12は、感染後に急速に産生され、Tおよびナチュラルキラー細胞によって、インターフェロンガンマのプロ炎症性サイトカイン誘導産生(proinflammatory cytokine eliciting production)として作用し、食細胞を活性化する。インターロイキン−12の産生は、正および負のフィ−ドバック機構によって厳密に調節される。インターロイキン−12およびインターロイキン−12誘発インターフェロンガンマが、抗原に応答して早期のT細胞の膨張の間に存在している場合、T−ヘルパータイプ1細胞の形成が促進され、T−ヘルパータイプ2細胞の形成が抑制される。従って、インターロイキン−12はまた、T−ヘルパータイプ1の分化を促進する強力な免疫調節サイトカイン(immunoregulatory cytokine)であり、細菌、細胞内寄生体、菌類、および特定のウイルスによる感染へのT−ヘルパータイプ1依存抵抗性に役立つ。T−ヘルパータイプ2細胞の応答を抑制することによって、インターロイキン−12はアレルギー反応に対する抑制的な効果を有する。T−ヘルパータイプ1の応答を促進することによって、それは、いくつかの器官特異的自己免疫疾患の原因である免疫病理学に関与する。HIVおよびはしかなど、永久あるいは一時的な免疫抑制を誘発するウイルスが、一部は、インターロイキン−12の産生を抑えることによって、作用することがある。いくつかの伝染病への抵抗性をそれが増強することができるので、および、予防接種の補助薬として作用することができるので、また、その強力なin vivo抗腫瘍効果のために、インターロイキン−12は現在、癌の患者およびHIV感染患者の医療実験中であり、それは、他の疾患の治療に使用することが検討されている。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エドデキンアルファ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エドデキンアルファを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエドデキンアルファを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエドデキンアルファとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エドデキンアルファは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エドデキンアルファをポリペプチドに共有結合することを含む、エドデキンアルファを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエドデキンアルファの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エドデキンアルファは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エドデキンアルファは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エドデキンアルファは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エドデキンアルファは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エドデキンアルファは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エドデキンアルファをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エドデキンアルファおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エドデキンアルファを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エドデキンアルファの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエドデキンアルファを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エドデキンアルファは、何れかの遊離アルコール、アミンまたは酸基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エドデキンアルファ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエファビレンツと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エファビレンツが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エファビレンツが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエファビレンツを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エファビレンツを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエファビレンツが放出することを制御する方法であって、
エファビレンツを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエファビレンツと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエファビレンツの送達方法。
[請求項22] エファビレンツが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エファビレンツが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エファビレンツを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エファビレンツ(efavirenz)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエファビレンツの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エファビレンツは、HIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−6−クロロ−4−(シクロプロピルエチニル)−1,4−ジヒドロ−4−(トリフルオロメチル)−2H−3,1−ベンゾキサジン−2−オンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エファビレンツ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エファビレンツを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエファビレンツを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエファビレンツとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エファビレンツは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エファビレンツをポリペプチドに共有結合することを含む、エファビレンツを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエファビレンツの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エファビレンツは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エファビレンツは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エファビレンツは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エファビレンツは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エファビレンツは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エファビレンツをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エファビレンツおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エファビレンツを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エファビレンツの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エファビレンツは、米国特許第5,519,021号、5,663,169号および5,811,423号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエファビレンツを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エファビレンツは、アミノ基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エファビレンツ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエファビレンツとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエファビレンツとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエファビレンツの送達方法もまた、提供される。エファビレンツをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエファビレンツを保護する方法もまた提供される。エファビレンツをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエファビレンツを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ケトリド抗生剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ケトリド抗生剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してケトリド抗生剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトリド抗生剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からケトリド抗生剤が放出することを制御する方法であって、
ケトリド抗生剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトリド抗生剤の送達方法。
[請求項22] ケトリド抗生剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ケトリド抗生剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ケトリド抗生剤に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにケトリド抗生剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
本発明のケトリド抗生剤は、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(3aS,4R,7R,9R,10R,11R,13R,15R,15aR)−4−エチルオクタヒドロ−3a,7,9,11,13,15−ヘキサメチル−11−[[3−(3−キノリニル)−2−プロペニル]オキシ]−10−[[3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−ベータ−D−キシロ−ヘキソピラノシル]オキシ]−2H−オキサシクロテトラデシノ[4,3−d]オキサゾール−2,6,8,14(1H,7H,9H)−テトロンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ケトリド抗生剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ケトリド抗生剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたケトリド抗生剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ケトリド抗生剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ケトリド抗生剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトリド抗生剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのケトリド抗生剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ケトリド抗生剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトリド抗生剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ケトリド抗生剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトリド抗生剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトリド抗生剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ケトリド抗生剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ケトリド抗生剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ケトリド抗生剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ケトリド抗生剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ケトリド抗生剤は、WO98/9978号(1998年)、優先権米国特許出願第707776号(1996年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ケトリド抗生剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトリド抗生剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトリド抗生剤の送達方法もまた、提供される。ケトリド抗生剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からケトリド抗生剤を保護する方法もまた提供される。ケトリド抗生剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からケトリド抗生剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエミビリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エミビリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エミビリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエミビリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エミビリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエミビリンが放出することを制御する方法であって、
エミビリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエミビリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエミビリンの送達方法。
[請求項22] エミビリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エミビリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エミビリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エミビリン(emivirine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエミビリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エミビリンは、HIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(エトキシメチル)−5−(1−メチルエチル)−6−(フェニルメチル)−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エミビリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エミビリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエミビリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエミビリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エミビリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エミビリンをポリペプチドに共有結合することを含む、エミビリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエミビリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エミビリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エミビリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エミビリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エミビリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エミビリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エミビリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エミビリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エミビリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エミビリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エミビリンは、EP420763B号(1999年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエミビリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エミビリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエミビリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエミビリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエミビリンの送達方法もまた、提供される。エミビリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエミビリンを保護する方法もまた提供される。エミビリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエミビリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エナラプリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エナラプリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエナラプリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エナラプリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエナラプリルが放出することを制御する方法であって、
エナラプリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエナラプリルの送達方法。
[請求項22] エナラプリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エナラプリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エナラプリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エナラプリル(enalapril)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエナラプリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エナラプリルは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−1−[N−[1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]−L−アラニル]−L−プロリンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エナラプリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エナラプリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエナラプリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エナラプリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エナラプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、エナラプリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエナラプリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エナラプリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エナラプリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エナラプリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エナラプリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エナラプリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エナラプリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エナラプリルは、EP12401号(1984年)、優先権米国特許出願第968249号(1978年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエナラプリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エナラプリルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エナラプリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエナラプリルの送達方法もまた、提供される。エナラプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエナラプリルを保護する方法もまた提供される。エナラプリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエナラプリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドが放出することを制御する方法であって、
エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドの送達方法。
[請求項22] エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、高血圧の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。
エナラプリルの化学名は、(S)−1−[N−[1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]−L−アラニル]−L−プロリンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
ヒドロクロロチアジドの化学構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エナラプリルおよびヒドロクロロチアジド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エナラプリルは、EP12401号(1984年)、優先権米国特許出願第968249号(1978年)、および米国特許第4,374,829号および4,472,380号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エナラプリルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合され、ヒドロクロロチアジドは、そのアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エナラプリルおよびヒドロクロロチアジド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを保護する方法もまた提供される。エナラプリルおよびヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエナラプリルおよびヒドロクロロチアジドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エニルウラシルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エニルウラシルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエニルウラシルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エニルウラシルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエニルウラシルが放出することを制御する方法であって、
エニルウラシルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエニルウラシルの送達方法。
[請求項22] エニルウラシルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エニルウラシルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エニルウラシルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エニルウラシル(eniluracil)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエニルウラシルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エニルウラシルは、膵性および結腸癌の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5−エチニル−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エニルウラシル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エニルウラシルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエニルウラシルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エニルウラシルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エニルウラシルをポリペプチドに共有結合することを含む、エニルウラシルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエニルウラシルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エニルウラシルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エニルウラシルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エニルウラシルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エニルウラシルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エニルウラシルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エニルウラシルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エニルウラシルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エニルウラシルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エニルウラシルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エニルウラシルは、WO92/1452号(1992年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エニルウラシルは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エニルウラシル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエニルウラシルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエニルウラシルの送達方法もまた、提供される。エニルウラシルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエニルウラシルを保護する方法もまた提供される。エニルウラシルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエニルウラシルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エノキサパリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エノキサパリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエノキサパリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エノキサパリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエノキサパリンが放出することを制御する方法であって、
エノキサパリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエノキサパリンの送達方法。
[請求項22] エノキサパリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エノキサパリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エノキサパリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エノキサパリン(enoxaparin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエノキサパリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エノキサパリンは、血栓症および心筋梗塞の治療に用いられる周知の薬剤である。それは低分子量のヘパリンであり、米国特許第4,486,420号、4,692,435号、および5,389,619号に記載されている(本願にその内容を援用する。)。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エノキサパリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エノキサパリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエノキサパリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エノキサパリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エノキサパリンをポリペプチドに共有結合することを含む、エノキサパリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエノキサパリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エノキサパリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エノキサパリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エノキサパリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エノキサパリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エノキサパリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エノキサパリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エノキサパリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エノキサパリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エノキサパリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エノキサパリンは、何れかの遊離アルコール、アミンまたは酸基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エノキサパリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエノキサパリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエノキサパリンの送達方法もまた、提供される。エノキサパリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエノキサパリンを保護する方法もまた提供される。エノキサパリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエノキサパリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエポエチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エポエチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エポエチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエポエチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エポエチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエポエチンが放出することを制御する方法であって、
エポエチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエポエチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエポエチンの送達方法。
[請求項22] エポエチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エポエチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エポエチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エポエチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエポエチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エポエチンは、貧血の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−165−エリスロポエチン(ヒトクローンラムダHEPOFL13タンパク質部分)グリコフォームアルファである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エポエチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エポエチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエポエチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエポエチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エポエチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エポエチンをポリペプチドに共有結合することを含む、エポエチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエポエチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エポエチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エポエチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エポエチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エポエチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エポエチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エポエチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エポエチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エポエチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エポエチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エポエチンは、EP148605B号(1990年)、優先権米国特許出願第561024号(1983年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエポエチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エポエチンは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エポエチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエポエチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエポエチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエポエチンの送達方法もまた、提供される。エポエチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエポエチンを保護する方法もまた提供される。エポエチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエポエチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エプチフィバチドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エプチフィバチドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエプチフィバチドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エプチフィバチドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエプチフィバチドが放出することを制御する方法であって、
エプチフィバチドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエプチフィバチドの送達方法。
[請求項22] エプチフィバチドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エプチフィバチドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エプチフィバチドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エプチフィバチド(eptifibatide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエプチフィバチドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エプチフィバチドは、血栓症、アンギナ、心筋梗塞および再狭窄(restenosis)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N6−(アミノイミノメチル)−N2−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−L−リシルグリシル−L−アルファ−アスパルチル−L−トリプトフィル−L−プロリル−L−システインアミド環状(1−6)−ジスルフィドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エプチフィバチド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エプチフィバチドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエプチフィバチドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エプチフィバチドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エプチフィバチドをポリペプチドに共有結合することを含む、エプチフィバチドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエプチフィバチドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エプチフィバチドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エプチフィバチドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エプチフィバチドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エプチフィバチドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エプチフィバチドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エプチフィバチドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エプチフィバチドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エプチフィバチドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エプチフィバチドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エプチフィバチドは、米国特許第5,686,570号、5,756,451号および5,807,825号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エプチフィバチドは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エプチフィバチド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエプチフィバチドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエプチフィバチドの送達方法もまた、提供される。エプチフィバチドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエプチフィバチドを保護する方法もまた提供される。エプチフィバチドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエプチフィバチドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エルゴタミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エルゴタミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエルゴタミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エルゴタミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエルゴタミンが放出することを制御する方法であって、
エルゴタミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエルゴタミンの送達方法。
[請求項22] エルゴタミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エルゴタミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エルゴタミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エルゴタミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエルゴタミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エルゴタミンは、偏頭痛の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エルゴタミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エルゴタミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエルゴタミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エルゴタミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エルゴタミンをポリペプチドに共有結合することを含む、エルゴタミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエルゴタミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エルゴタミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エルゴタミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エルゴタミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エルゴタミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エルゴタミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エルゴタミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エルゴタミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エルゴタミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エルゴタミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エルゴタミンは、アルコールまたはアミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エルゴタミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエルゴタミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエルゴタミンの送達方法もまた、提供される。エルゴタミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエルゴタミンを保護する方法もまた提供される。エルゴタミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエルゴタミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エリスロマイシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エリスロマイシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエリスロマイシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エリスロマイシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエリスロマイシンが放出することを制御する方法であって、
エリスロマイシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエリスロマイシンの送達方法。
[請求項22] エリスロマイシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エリスロマイシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エリスロマイシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エリスロマイシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエリスロマイシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エリスロマイシンは、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(3R,4S,5S,6R,7R,9R,11R,12R,13S,14R)−4−((2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−a−L−リボ−ヘキソピラノシル)−オキシ)−14−エチル−7,12,13−トリヒドロキシ−3,5,7,9,11,13−ヘキサメチル−6−((3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−b−D−キシロ−ヘキソピラノシル)オキシ)オキサシクロテトラデカン−2,10−ジオンである。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エリスロマイシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エリスロマイシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエリスロマイシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エリスロマイシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、エリスロマイシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エリスロマイシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エリスロマイシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エリスロマイシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エリスロマイシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エリスロマイシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エリスロマイシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エリスロマイシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。

アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エリスロマイシンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エリスロマイシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエリスロマイシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。エリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエリスロマイシンを保護する方法もまた提供される。エリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエリスロマイシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] AGE架橋切断剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] AGE架橋切断剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してAGE架橋切断剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、AGE架橋切断剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からAGE架橋切断剤が放出することを制御する方法であって、
AGE架橋切断剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのAGE架橋切断剤の送達方法。
[請求項22] AGE架橋切断剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] AGE架橋切断剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、前進性グリコシル化終末産物(advanced glycosylation endproduct)(AGE)架橋切断剤(crosslink breaker)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにAGE架橋切断剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
本発明のAGE架橋切断剤は、糖尿病および心血管性疾患(cardiovascular disease)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4,5−ジメチル−3−(2−オキソ−2−フェニルエチル)チアゾリウムである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(AGE架橋切断剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、AGE架橋切断剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたAGE架橋切断剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
AGE架橋切断剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、AGE架橋切断剤をポリペプチドに共有結合することを含む、AGE架橋切断剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのAGE架橋切断剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、AGE架橋切断剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、AGE架橋切断剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、AGE架橋切断剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、AGE架橋切断剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、AGE架橋切断剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)AGE架橋切断剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、AGE架橋切断剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、AGE架橋切断剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、AGE架橋切断剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
AGE架橋切断剤は、WO96/22095号(1996年)、優先権米国特許出願第375155号(1995年)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−AGE架橋切断剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つが、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したAGE架橋切断剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのAGE架橋切断剤の送達方法もまた、提供される。AGE架橋切断剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からAGE架橋切断剤を保護する方法もまた提供される。AGE架橋切断剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からAGE架橋切断剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エサテノロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エサテノロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエサテノロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エサテノロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエサテノロールが放出することを制御する方法であって、
エサテノロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエサテノロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエサテノロールの送達方法。
[請求項22] エサテノロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エサテノロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エサテノロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エサテノロール(esatenolol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエサテノロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エサテノロールは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(S)−4−[2−ヒドロキシ−3−[(1−メチルエチル)アミノ]プロポキシ]ベンゼンアセタミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エサテノロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エサテノロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエサテノロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエサテノロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エサテノロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エサテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む、エサテノロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエサテノロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エサテノロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エサテノロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エサテノロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エサテノロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エサテノロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エサテノロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エサテノロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エサテノロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エサテノロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エサテノロールは、GB1285035号(1972)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエサテノロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エサテノロールは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エサテノロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエサテノロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエサテノロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエサテノロールの送達方法もまた、提供される。エサテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエサテノロールを保護する方法もまた提供される。エサテノロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエサテノロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンが放出することを制御する方法であって、
エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンの送達方法。
[請求項22] エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、ホルモン置換療法に一緒に用いられる周知の薬剤である。エステル化エストロゲンは、妊婦の尿中に排出されたタイプである、エストロゲン性物質、主にエストロンの硫酸エステルのナトリウム塩の混合物である。硫酸ナトリウムエストロン(estrone sodium sulfate)は、エステル化エストロゲン中の主な活性成分である。エステル化エストロゲンは、天然供給源から誘導されてもよく、および/または合成によって調製されてもよい。エストロンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
メチルテストステロンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンをポリペプチドに共有結合することを含む、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンは、それらのヒドロキシ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンの送達方法もまた、提供される。エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを保護する方法もまた提供される。エステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエステル化エストロゲンおよびメチルテストステロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 共役エストロゲンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 共役エストロゲンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して共役エストロゲンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、共役エストロゲンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から共役エストロゲンが放出することを制御する方法であって、
共役エストロゲンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への共役エストロゲンの送達方法。
[請求項22] 共役エストロゲンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 共役エストロゲンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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共役エストロゲンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、共役エストロゲンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに共役エストロゲンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
女性において、経口共役エストロゲンUSPおよび合成共役エストロゲンAは、更年期に関連した中程度〜重度の血管運動の徴候(vasomotor symptoms)の処理のために用いられる。共役エストロゲンUSPは、全てまたは一部がウマの尿から誘導されたエストロンおよびエキリンの水溶性硫酸エステルのナトリウム塩を含有する混合物であるか、またはエストロンおよびエキリンから合成によって調製されてもよい。共役エストロゲンUSPはまた、17α−ジヒドロエキリン、17α−エストラジオール、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、δ8,9−ジヒドロエストロン、および17β−エストラジオールなど、妊婦によって排出されたタイプの共役エストロゲン性物質を含有する。共役エストロゲンUSPは、52.5〜61.5%の硫酸エストロンナトリウム(sodium estrone sulfate)および22.5〜30.5%の硫酸エキリンナトリウム(sodium equilin sulfate)を含有する。共役エストロゲンは、硫酸ナトリウム共役として、13.5〜19.5%の17α−ジヒドロエキリン、2.5〜9.5%の17α−エストラジオール、および0.5〜4%の17β−ジヒドロエキリンを含有する。それらは、天然供給源から入手可能である。エストロンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(共役エストロゲン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、共役エストロゲンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された共役エストロゲンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
共役エストロゲンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、共役エストロゲンをポリペプチドに共有結合することを含む、共役エストロゲンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への共役エストロゲンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、共役エストロゲンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、共役エストロゲンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)共役エストロゲンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、共役エストロゲンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、共役エストロゲンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、共役エストロゲンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、共役エストロゲンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−共役エストロゲン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への共役エストロゲンの送達方法もまた、提供される。共役エストロゲンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から共役エストロゲンを保護する方法もまた提供される。共役エストロゲンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から共役エストロゲンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンが放出することを制御する方法であって、
共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンの送達方法。
[請求項22] 共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
女性において、経口共役エストロゲンUSPおよび合成共役エストロゲンAは、更年期に関連した中程度〜重度の血管運動の徴候(vasomotor symptoms)の処理のために用いられる。共役エストロゲンUSPは、全てまたは一部がウマの尿から誘導されたエストロンおよびエキリンの水溶性硫酸エステルのナトリウム塩を含有する混合物であるか、またはエストロンおよびエキリンから合成によって調製されてもよい。共役エストロゲンUSPはまた、17α−ジヒドロエキリン、17α−エストラジオール、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、δ8,9−ジヒドロエストロン、および17β−エストラジオールなど、妊婦によって排出されたタイプの共役エストロゲン性物質を含有する。共役エストロゲンUSPは、52.5〜61.5%の硫酸エストロンナトリウム(sodium estrone sulfate)および22.5〜30.5%の硫酸エキリンナトリウム(sodium equilin sulfate)を含有する。共役エストロゲンは、硫酸ナトリウム共役として、13.5〜19.5%の17α−ジヒドロエキリン、2.5〜9.5%の17α−エストラジオール、および0.5〜4%の17β−ジヒドロエキリンを含有する。それらは、天然供給源から入手可能である。エストロンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
酢酸メドロキシプロゲステロンは合成プロゲスチンである。酢酸メドロキシプロゲステロンは、6α−メチル基および17α−アセテート基の付加によって構造上異なる17α−ヒドロキシプロゲステロンの誘導体である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンをポリペプチドに共有結合することを含む、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンの送達方法もまた、提供される。共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを保護する方法もまた提供される。共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から共役エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエストロピペートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エストロピペートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エストロピペートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエストロピペートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エストロピペートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエストロピペートが放出することを制御する方法であって、
エストロピペートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエストロピペートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエストロピペートの送達方法。
[請求項22] エストロピペートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エストロピペートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エストロピペートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エストロピペートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエストロピペートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エストロピペートは、ホルモン置換療法に用いられる周知の薬剤である。エストロピペートは、スルフェートとして安定化され、且つピペラジンで安定化されたエストロンである。ステロイド核の環Aの3−ヒドロキシ位置でのエストロンとスルフェートとの共役により、水溶性誘導体を形成する。薬理学的に不活性のピペラジン部分が緩衝剤として作用して硫酸エストロンの安定性および一様な効能を増大させる。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エストロピペート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エストロピペートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエストロピペートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエストロピペートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エストロピペートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エストロピペートをポリペプチドに共有結合することを含む、エストロピペートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエストロピペートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エストロピペートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エストロピペートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エストロピペートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エストロピペートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エストロピペートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エストロピペートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エストロピペートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エストロピペートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エストロピペートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエストロピペートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エストロピペートは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エストロピペート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエストロピペートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエストロピペートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエストロピペートの送達方法もまた、提供される。エストロピペートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエストロピペートを保護する方法もまた提供される。エストロピペートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエストロピペートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エタネルセプトが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エタネルセプトが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエタネルセプトを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エタネルセプトを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエタネルセプトが放出することを制御する方法であって、
エタネルセプトを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエタネルセプトの送達方法。
[請求項22] エタネルセプトが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エタネルセプトが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エタネルセプトを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エタネルセプトに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエタネルセプトの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エタネルセプトは、関節炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、236−467−免疫グロブリンG1(ヒト γ1−鎖Fcフラグメント)との、1−235−癌壊死因子受容体(ヒト)融合タンパク質である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エタネルセプト)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エタネルセプトを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエタネルセプトを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エタネルセプトは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エタネルセプトをポリペプチドに共有結合することを含む、エタネルセプトを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエタネルセプトの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エタネルセプトは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エタネルセプトは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エタネルセプトは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エタネルセプトは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エタネルセプトは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エタネルセプトをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エタネルセプトおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エタネルセプトを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エタネルセプトの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
エタネルセプトは、優先権US出願第403241号(1989)に基づいた、EP418014B号(1995)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エタネルセプトは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エタネルセプト共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエタネルセプトとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエタネルセプトの送達方法もまた、提供される。エタネルセプトをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエタネルセプトを保護する方法もまた提供される。エタネルセプトをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエタネルセプトを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。エチニルエストラジオールの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
ノルエチンドロンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤が放出することを制御する方法であって、
ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤の送達方法。
[請求項22] ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、高血圧および心不全の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[S−(R,R)]−ヘキサヒドロ−6−[(2−メルカプト−1−オキソ−3−フェニルプロピル)アミノ]−2,2−ジメチル−7−オキソ−1H−アゼピンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、優先権US出願第884664号(1992)に基づいた、EP599444B号(1998)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤の送達方法もまた、提供される。ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を保護する方法もまた提供される。ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ACE/中性エンドペプチダーゼ阻害剤を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびエチノジオールジアセテートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびレボノルゲストレルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28が放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28の送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28は、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28の送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロン28を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルエチンドロンアセテートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルが放出することを制御する方法であって、
エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルの送達方法。
[請求項22] エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、避妊薬として一緒に用いられる周知の薬剤である。各々、天然供給源から単離可能であるか、または、その代わりとして当業者によって合成される。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エチニルエストラジオールおよびノルゲストレル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エチニルエストラジオールおよびノルゲストレル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルの送達方法もまた、提供される。エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを保護する方法もまた提供される。エチニルエストラジオールおよびノルゲストレルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエチニルエストラジオールおよびノルゲストレルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] エキセンジン−4が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] エキセンジン−4が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してエキセンジン−4を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、エキセンジン−4を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からエキセンジン−4が放出することを制御する方法であって、
エキセンジン−4を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエキセンジン−4の送達方法。
[請求項22] エキセンジン−4が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] エキセンジン−4が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

エキセンジン−4を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、エキセンジン−4(exendin−4)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにエキセンジン−4の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
エキセンジン−4は、糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、アメリカドクトカゲ(Gila monster lizard)の唾液分泌物から単離されたペプチドの合成種(synthetic form)である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(エキセンジン−4)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、エキセンジン−4を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたエキセンジン−4を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
エキセンジン−4は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、エキセンジン−4をポリペプチドに共有結合することを含む、エキセンジン−4を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのエキセンジン−4の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、エキセンジン−4は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エキセンジン−4は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、エキセンジン−4は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エキセンジン−4は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、エキセンジン−4は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)エキセンジン−4をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、エキセンジン−4および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、エキセンジン−4を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、エキセンジン−4の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、エキセンジン−4は、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−エキセンジン−4共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したエキセンジン−4とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのエキセンジン−4の送達方法もまた、提供される。エキセンジン−4をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からエキセンジン−4を保護する方法もまた提供される。エキセンジン−4をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からエキセンジン−4を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ファムシクロビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ファムシクロビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してファムシクロビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ファムシクロビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からファムシクロビルが放出することを制御する方法であって、
ファムシクロビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのファムシクロビルの送達方法。
[請求項22] ファムシクロビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ファムシクロビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ファムシクロビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ファムシクロビル(famciclovir)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにファムシクロビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ファムシクロビルは、ウイルス感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル]−1,3−プロパンジオールジアセテートである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ファムシクロビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ファムシクロビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたファムシクロビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ファムシクロビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ファムシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、ファムシクロビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのファムシクロビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ファムシクロビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファムシクロビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ファムシクロビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファムシクロビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファムシクロビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ファムシクロビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ファムシクロビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ファムシクロビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ファムシクロビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ファムシクロビルは、EP182024B号(1991)および米国特許第5,246,937号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ファムシクロビルは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ファムシクロビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファムシクロビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのファムシクロビルの送達方法もまた、提供される。ファムシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からファムシクロビルを保護する方法もまた提供される。ファムシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からファムシクロビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したファモチジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ファモチジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ファモチジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してファモチジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ファモチジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からファモチジンが放出することを制御する方法であって、
ファモチジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したファモチジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのファモチジンの送達方法。
[請求項22] ファモチジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ファモチジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ファモチジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ファモチジン(famotidine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにファモチジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ファモチジンは、潰瘍および胸やけの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ファモチジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ファモチジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたファモチジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファモチジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ファモチジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ファモチジンをポリペプチドに共有結合することを含む、ファモチジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのファモチジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ファモチジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファモチジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ファモチジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファモチジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ファモチジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ファモチジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ファモチジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ファモチジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ファモチジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したファモチジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ファモチジンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ファモチジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファモチジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したファモチジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのファモチジンの送達方法もまた、提供される。ファモチジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からファモチジンを保護する方法もまた提供される。ファモチジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からファモチジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェロジピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フェロジピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フェロジピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフェロジピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フェロジピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフェロジピンが放出することを制御する方法であって、
フェロジピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェロジピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェロジピンの送達方法。
[請求項22] フェロジピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フェロジピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フェロジピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フェロジピン(felodipine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフェロジピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フェロジピンは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−(2,3−ジクロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−3,5−ピリジンジカルボン酸エチルメチルエステルである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フェロジピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フェロジピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフェロジピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェロジピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フェロジピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フェロジピンをポリペプチドに共有結合することを含む、フェロジピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフェロジピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フェロジピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェロジピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フェロジピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェロジピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェロジピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フェロジピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フェロジピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フェロジピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フェロジピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フェロジピンは、米国特許第4,264,611号および同第4,803,081号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフェロジピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フェロジピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェロジピンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェロジピンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェロジピンの送達方法もまた、提供される。フェロジピンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフェロジピンを保護する方法もまた提供される。フェロジピンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフェロジピンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フェノフィブレートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フェノフィブレートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフェノフィブレートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フェノフィブレートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフェノフィブレートが放出することを制御する方法であって、
フェノフィブレートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェノフィブレートの送達方法。
[請求項22] フェノフィブレートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フェノフィブレートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フェノフィブレートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フェノフィブレートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフェノフィブレートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フェノフィブレートは、高脂質血症(hyperlipiemia)の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチルプロパン酸1−メチルエチルエステルである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フェノフィブレート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フェノフィブレートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフェノフィブレートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フェノフィブレートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フェノフィブレートをポリペプチドに共有結合することを含む、フェノフィブレートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフェノフィブレートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フェノフィブレートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェノフィブレートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フェノフィブレートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェノフィブレートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェノフィブレートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フェノフィブレートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フェノフィブレートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フェノフィブレートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フェノフィブレートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フェノフィブレートは、米国特許第4,895,726号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フェノフィブレート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェノフィブレートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェノフィブレートの送達方法もまた、提供される。フェノフィブレートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフェノフィブレートを保護する方法もまた提供される。フェノフィブレートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフェノフィブレートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フェンレチニドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フェンレチニドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフェンレチニドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フェンレチニドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフェンレチニドが放出することを制御する方法であって、
フェンレチニドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェンレチニドの送達方法。
[請求項22] フェンレチニドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フェンレチニドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フェンレチニドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フェンレチニドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフェンレチニドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フェンレチニドは、癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フェンレチニド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フェンレチニドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフェンレチニドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フェンレチニドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フェンレチニドをポリペプチドに共有結合することを含む、フェンレチニドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフェンレチニドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フェンレチニドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンレチニドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フェンレチニドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンレチニドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンレチニドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フェンレチニドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フェンレチニドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フェンレチニドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フェンレチニドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フェンレチニドは、優先権US出願第628177号(1975)に基づいたGB1543824号(1979)、米国特許第4,323,581号(1982)、および同第4,665,098号(1987)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フェンレチニドは、ヒドロキシルを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フェンレチニド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンレチニドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェンレチニドの送達方法もまた、提供される。フェンレチニドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフェンレチニドを保護する方法もまた提供される。フェンレチニドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフェンレチニドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェンタニルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フェンタニルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フェンタニルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフェンタニルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フェンタニルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフェンタニルが放出することを制御する方法であって、
フェンタニルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェンタニルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェンタニルの送達方法。
[請求項22] フェンタニルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フェンタニルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フェンタニルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フェンタニルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフェンタニルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フェンタニルは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フェンタニル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フェンタニルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフェンタニルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンタニルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フェンタニルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フェンタニルをポリペプチドに共有結合することを含む、フェンタニルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフェンタニルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フェンタニルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンタニルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フェンタニルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンタニルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェンタニルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フェンタニルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フェンタニルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フェンタニルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フェンタニルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフェンタニルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フェンタニル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンタニルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェンタニルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェンタニルの送達方法もまた、提供される。フェンタニルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフェンタニルを保護する方法もまた提供される。フェンタニルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフェンタニルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フェキソフェナジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フェキソフェナジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフェキソフェナジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フェキソフェナジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフェキソフェナジンが放出することを制御する方法であって、
フェキソフェナジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェキソフェナジンの送達方法。
[請求項22] フェキソフェナジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フェキソフェナジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フェキソフェナジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フェキソフェナジン(fexofenadine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフェキソフェナジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フェキソフェナジンは、季節アレルギー性鼻炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[1−ヒドロキシ−4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル]ブチル]−アルファ,アルファ−ジメチルベンゼン酢酸である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フェキソフェナジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フェキソフェナジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフェキソフェナジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フェキソフェナジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フェキソフェナジンをポリペプチドに共有結合することを含む、フェキソフェナジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフェキソフェナジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フェキソフェナジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェキソフェナジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フェキソフェナジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェキソフェナジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フェキソフェナジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フェキソフェナジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フェキソフェナジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フェキソフェナジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フェキソフェナジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フェキソフェナジンは、米国特許第4,254,129号、同第5,578,610号、同第5,855,912号、同第5,932,247号、および同第6,037,353号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フェキソフェナジンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フェキソフェナジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフェキソフェナジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフェキソフェナジンの送達方法もまた、提供される。フェキソフェナジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフェキソフェナジンを保護する方法もまた提供される。フェキソフェナジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフェキソフェナジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フィルグラスチムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フィルグラスチムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフィルグラスチムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フィルグラスチムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフィルグラスチムが放出することを制御する方法であって、
フィルグラスチムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフィルグラスチムの送達方法。
[請求項22] フィルグラスチムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フィルグラスチムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フィルグラスチムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フィルグラスチムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフィルグラスチムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フィルグラスチムは、癌、HIV感染症、肺炎、白血球減少症および皮膚潰瘍の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−L−メチオニル−コロニー−刺激因子(ヒトクローン1034)である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フィルグラスチム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フィルグラスチムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフィルグラスチムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フィルグラスチムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フィルグラスチムをポリペプチドに共有結合することを含む、フィルグラスチムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフィルグラスチムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フィルグラスチムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィルグラスチムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フィルグラスチムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィルグラスチムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィルグラスチムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フィルグラスチムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フィルグラスチムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フィルグラスチムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フィルグラスチムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フィルグラスチムは、優先権出願US768959号(1985)に基づいた、EP237545B号(1991)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フィルグラスチムは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フィルグラスチム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィルグラスチムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフィルグラスチムの送達方法もまた、提供される。フィルグラスチムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフィルグラスチムを保護する方法もまた提供される。フィルグラスチムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフィルグラスチムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフィナステリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フィナステリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フィナステリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフィナステリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フィナステリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフィナステリドが放出することを制御する方法であって、
フィナステリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフィナステリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフィナステリドの送達方法。
[請求項22] フィナステリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フィナステリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フィナステリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フィナステリドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフィナステリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フィナステリドは、癌、良性前立腺肥大症、脱毛症および■瘡の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(5α,17β)−N−(1,1−ジメチルエチル)−3−オキソ−4−アザアンドロスト−1−エン−17−カルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フィナステリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フィナステリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフィナステリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィナステリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フィナステリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フィナステリドをポリペプチドに共有結合することを含む、フィナステリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフィナステリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フィナステリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィナステリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フィナステリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィナステリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フィナステリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フィナステリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フィナステリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フィナステリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フィナステリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フィナステリドは、米国特許第5,377,584号、同第4,760,071号、同第5,547,957号、同第5,571,817号、および同第5,886,184号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフィナステリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フィナステリドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フィナステリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィナステリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフィナステリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフィナステリドの送達方法もまた、提供される。フィナステリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフィナステリドを保護する方法もまた提供される。フィナステリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフィナステリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 酢酸フレカイニドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 酢酸フレカイニドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して酢酸フレカイニドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、酢酸フレカイニドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から酢酸フレカイニドが放出することを制御する方法であって、
酢酸フレカイニドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への酢酸フレカイニドの送達方法。
[請求項22] 酢酸フレカイニドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 酢酸フレカイニドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

酢酸フレカイニドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、酢酸フレカイニドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに酢酸フレカイニドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
酢酸フレカイニドは、不整脈の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N−(2−ピペリジニルメチル)−2,5−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンズアミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(酢酸フレカイニド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、酢酸フレカイニドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された酢酸フレカイニドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
酢酸フレカイニドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、酢酸フレカイニドをポリペプチドに共有結合することを含む、酢酸フレカイニドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への酢酸フレカイニドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、酢酸フレカイニドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸フレカイニドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、酢酸フレカイニドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸フレカイニドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸フレカイニドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)酢酸フレカイニドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、酢酸フレカイニドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、酢酸フレカイニドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、酢酸フレカイニドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
酢酸フレカイニドは、米国特許第4,642,384号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、酢酸フレカイニドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−酢酸フレカイニド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸フレカイニドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への酢酸フレカイニドの送達方法もまた、提供される。酢酸フレカイニドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から酢酸フレカイニドを保護する方法もまた提供される。酢酸フレカイニドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から酢酸フレカイニドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルコナゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルコナゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルコナゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルコナゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルコナゾールが放出することを制御する方法であって、
フルコナゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルコナゾールの送達方法。
[請求項22] フルコナゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルコナゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルコナゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルコナゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルコナゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルコナゾールは、真菌症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、α−(2,4−ジフルオロフェニル)−α−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルコナゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルコナゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルコナゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルコナゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、フルコナゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルコナゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルコナゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルコナゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルコナゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルコナゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルコナゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルコナゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルコナゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルコナゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルコナゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フルコナゾールは、米国特許第4,404,216号および同第4,416,682号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フルコナゾールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルコナゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルコナゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルコナゾールの送達方法もまた、提供される。フルコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルコナゾールを保護する方法もまた提供される。フルコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルコナゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルドロコルチゾンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルドロコルチゾンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルドロコルチゾンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルドロコルチゾンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルドロコルチゾンが放出することを制御する方法であって、
フルドロコルチゾンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルドロコルチゾンの送達方法。
[請求項22] フルドロコルチゾンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルドロコルチゾンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルドロコルチゾンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルドロコルチゾンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルドロコルチゾンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルドロコルチゾンは、癲癇の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5,5−ジフェニル−3−[(ホスホノオキシ)メチル]−2,4−イミダゾリジンジオンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルドロコルチゾン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルドロコルチゾンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルドロコルチゾンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルドロコルチゾンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルドロコルチゾンをポリペプチドに共有結合することを含む、フルドロコルチゾンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルドロコルチゾンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルドロコルチゾンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルドロコルチゾンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルドロコルチゾンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルドロコルチゾンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルドロコルチゾンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルドロコルチゾンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルドロコルチゾンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルドロコルチゾンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルドロコルチゾンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フルドロコルチゾンは、米国特許第4,260,769号(1981)、および優先権出願US356948号(1989)に基づいたEP473687B号(1996)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フルドロコルチゾンは、ホスフェート基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルドロコルチゾン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルドロコルチゾンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルドロコルチゾンの送達方法もまた、提供される。フルドロコルチゾンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルドロコルチゾンを保護する方法もまた提供される。フルドロコルチゾンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルドロコルチゾンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルマゼニルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルマゼニルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルマゼニルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルマゼニルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルマゼニルが放出することを制御する方法であって、
フルマゼニルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルマゼニルの送達方法。
[請求項22] フルマゼニルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルマゼニルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルマゼニルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルマゼニルに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルマゼニルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルマゼニルは、うつ病および肝疾患の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、8−フルオロ−5,6−ジヒドロ−5−メチル−6−オキソ−4H−イミダゾ[1,5−a][1,4]ベンゾジアゼピン−3−カルボン酸エチルエステルである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルマゼニル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルマゼニルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルマゼニルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルマゼニルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルマゼニルをポリペプチドに共有結合することを含む、フルマゼニルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルマゼニルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルマゼニルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルマゼニルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルマゼニルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルマゼニルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルマゼニルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルマゼニルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルマゼニルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルマゼニルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルマゼニルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フルマゼニルは、米国特許第4,316,839号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルマゼニル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルマゼニルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルマゼニルの送達方法もまた、提供される。フルマゼニルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルマゼニルを保護する方法もまた提供される。フルマゼニルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルマゼニルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルオキセチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルオキセチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルオキセチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルオキセチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルオキセチンが放出することを制御する方法であって、
フルオキセチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルオキセチンの送達方法。
[請求項22] フルオキセチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルオキセチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルオキセチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルオキセチン(fluoxetine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルオキセチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルオキセチンは、うつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(N−メチル3−(p−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルプロピルアミンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルオキセチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルオキセチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルオキセチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルオキセチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルオキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む、フルオキセチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルオキセチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルオキセチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルオキセチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルオキセチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルオキセチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルオキセチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルオキセチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルオキセチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルオキセチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルオキセチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フルオキセチンは、米国特許第4,329,356号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フルオキセチンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルオキセチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルオキセチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルオキセチンの送達方法もまた、提供される。フルオキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルオキセチンを保護する方法もまた提供される。フルオキセチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルオキセチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルタミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルタミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルタミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルタミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルタミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルタミドが放出することを制御する方法であって、
フルタミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルタミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルタミドの送達方法。
[請求項22] フルタミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルタミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルタミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルタミドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルタミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルタミドは、前立腺癌の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルタミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルタミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルタミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルタミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルタミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む、フルタミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルタミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルタミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルタミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルタミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルタミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルタミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルタミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルタミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルタミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルタミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルタミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フルタミドは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルタミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルタミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルタミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルタミドの送達方法もまた、提供される。フルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルタミドを保護する方法もまた提供される。フルタミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルタミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フルバスタチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フルバスタチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフルバスタチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フルバスタチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフルバスタチンが放出することを制御する方法であって、
フルバスタチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルバスタチンの送達方法。
[請求項22] フルバスタチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フルバスタチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

フルバスタチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フルバスタチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフルバスタチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
フルバスタチンは、高脂肪血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(3R,5S,6E)−レル−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドル−2−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フルバスタチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フルバスタチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフルバスタチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フルバスタチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、フルバスタチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフルバスタチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フルバスタチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルバスタチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フルバスタチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルバスタチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フルバスタチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フルバスタチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フルバスタチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フルバスタチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フルバスタチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フルバスタチンは、米国特許第5,354,772号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フルバスタチンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フルバスタチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフルバスタチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフルバスタチンの送達方法もまた、提供される。フルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフルバスタチンを保護する方法もまた提供される。フルバスタチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフルバスタチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] マレイン酸フルボキサミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] マレイン酸フルボキサミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してマレイン酸フルボキサミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、マレイン酸フルボキサミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からマレイン酸フルボキサミンが放出することを制御する方法であって、
マレイン酸フルボキサミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのマレイン酸フルボキサミンの送達方法。
[請求項22] マレイン酸フルボキサミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] マレイン酸フルボキサミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

マレイン酸フルボキサミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、マレイン酸フルボキサミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにマレイン酸フルボキサミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
マレイン酸フルボキサミンは、うつ病および不安の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5−メトキシ−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ペンタノン(E)−O−(2−アミノエチル)オキシムである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(マレイン酸フルボキサミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、マレイン酸フルボキサミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたマレイン酸フルボキサミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
マレイン酸フルボキサミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、マレイン酸フルボキサミンをポリペプチドに共有結合することを含む、マレイン酸フルボキサミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのマレイン酸フルボキサミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、マレイン酸フルボキサミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、マレイン酸フルボキサミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、マレイン酸フルボキサミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、マレイン酸フルボキサミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、マレイン酸フルボキサミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)マレイン酸フルボキサミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、マレイン酸フルボキサミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、マレイン酸フルボキサミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、マレイン酸フルボキサミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
マレイン酸フルボキサミンは、GB1535226号(1978)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、マレイン酸フルボキサミンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−マレイン酸フルボキサミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したマレイン酸フルボキサミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのマレイン酸フルボキサミンの送達方法もまた、提供される。マレイン酸フルボキサミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からマレイン酸フルボキサミンを保護する方法もまた提供される。マレイン酸フルボキサミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からマレイン酸フルボキサミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フォリトロピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フォリトロピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフォリトロピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フォリトロピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフォリトロピンが放出することを制御する方法であって、
フォリトロピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフォリトロピンの送達方法。
[請求項22] フォリトロピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フォリトロピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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フォリトロピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フォリトロピン(follitropin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフォリトロピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
フォリトロピンは、不妊症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、卵胞刺激ホルモン(ヒトα−サブユニット還元)と、卵胞刺激ホルモン(ヒトβ−サブユニット還元)との複合体である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フォリトロピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フォリトロピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフォリトロピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フォリトロピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フォリトロピンをポリペプチドに共有結合することを含む、フォリトロピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフォリトロピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フォリトロピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォリトロピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フォリトロピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォリトロピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォリトロピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フォリトロピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フォリトロピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フォリトロピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フォリトロピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フォリトロピンは、WO95/19991号(1995)および米国特許第4,589,402号、同第5,270,057号、および同第5,767,251号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フォリトロピンは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フォリトロピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォリトロピンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフォリトロピンの送達方法もまた、提供される。フォリトロピンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフォリトロピンを保護する方法もまた提供される。フォリトロピンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフォリトロピンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したホルモテロールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ホルモテロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ホルモテロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してホルモテロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ホルモテロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からホルモテロールが放出することを制御する方法であって、
ホルモテロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したホルモテロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのホルモテロールの送達方法。
[請求項22] ホルモテロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ホルモテロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ホルモテロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ホルモテロール(formoterol)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにホルモテロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ホルモテロールは、喘息の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、レル−N−[2−ヒドロキシ−5−[(1R)−1−ヒドロキシ−2−[[(1R)−2−(4−メトキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ホルモテロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ホルモテロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたホルモテロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホルモテロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ホルモテロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ホルモテロールをポリペプチドに共有結合することを含む、ホルモテロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのホルモテロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ホルモテロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホルモテロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ホルモテロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホルモテロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホルモテロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ホルモテロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ホルモテロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ホルモテロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ホルモテロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ホルモテロールは、GB1415256号(1975)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したホルモテロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ホルモテロールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ホルモテロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホルモテロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホルモテロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのホルモテロールの送達方法もまた、提供される。ホルモテロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からホルモテロールを保護する方法もまた提供される。ホルモテロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からホルモテロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フォシノプリルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フォシノプリルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフォシノプリルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フォシノプリルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフォシノプリルが放出することを制御する方法であって、
フォシノプリルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフォシノプリルの送達方法。
[請求項22] フォシノプリルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フォシノプリルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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フォシノプリルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フォシノプリル(fosinopril)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフォシノプリルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
フォシノプリルは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[1[S(R)],2α,4β]−4−シクロヘキシル−1−[[[2−メチル−1−(1−オキソプロポキシ)プロポキシ](4−フェニルブチル)ホスフィニル]アセチル]−L−プロリンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フォシノプリル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フォシノプリルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフォシノプリルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フォシノプリルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フォシノプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、フォシノプリルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフォシノプリルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フォシノプリルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォシノプリルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フォシノプリルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォシノプリルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フォシノプリルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フォシノプリルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フォシノプリルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フォシノプリルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フォシノプリルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
フォシノプリルは、米国特許第4,337,201号、同第4,384,123号、および同第5,006,344号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フォシノプリルは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フォシノプリル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフォシノプリルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフォシノプリルの送達方法もまた、提供される。フォシノプリルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフォシノプリルを保護する方法もまた提供される。フォシノプリルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフォシノプリルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ホスフェニトインが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ホスフェニトインが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してホスフェニトインを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ホスフェニトインを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からホスフェニトインが放出することを制御する方法であって、
ホスフェニトインを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのホスフェニトインの送達方法。
[請求項22] ホスフェニトインが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ホスフェニトインが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ホスフェニトインを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ホスフェニトイン(fosphenytoin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにホスフェニトインの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ホスフェニトインは、癲癇の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5,5−ジフェニル−3−[(ホスホノオキシ)メチル]−2,4−イミダゾリジンジオンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ホスフェニトイン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ホスフェニトインを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたホスフェニトインを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ホスフェニトインは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ホスフェニトインをポリペプチドに共有結合することを含む、ホスフェニトインを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのホスフェニトインの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ホスフェニトインは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホスフェニトインは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ホスフェニトインは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホスフェニトインは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ホスフェニトインは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ホスフェニトインをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ホスフェニトインおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ホスフェニトインを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ホスフェニトインの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ホスフェニトインは、米国特許第4,260,769号および同第4,925,860号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ホスフェニトインは、ホスフェートおよびアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ホスフェニトイン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したホスフェニトインとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのホスフェニトインの送達方法もまた、提供される。ホスフェニトインをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からホスフェニトインを保護する方法もまた提供される。ホスフェニトインをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からホスフェニトインを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフロセミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] フロセミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] フロセミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してフロセミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、フロセミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からフロセミドが放出することを制御する方法であって、
フロセミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したフロセミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフロセミドの送達方法。
[請求項22] フロセミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] フロセミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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フロセミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、フロセミドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにフロセミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
フロセミドは、浮腫および高血圧症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(フロセミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、フロセミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたフロセミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフロセミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
フロセミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、フロセミドをポリペプチドに共有結合することを含む、フロセミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのフロセミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、フロセミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フロセミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、フロセミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フロセミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、フロセミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)フロセミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、フロセミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、フロセミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、フロセミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したフロセミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、フロセミドは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−フロセミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフロセミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したフロセミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのフロセミドの送達方法もまた、提供される。フロセミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からフロセミドを保護する方法もまた提供される。フロセミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からフロセミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガバペンチンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガバペンチンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガバペンチンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガバペンチンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガバペンチンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガバペンチンが放出することを制御する方法であって、
ガバペンチンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガバペンチンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガバペンチンの送達方法。
[請求項22] ガバペンチンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガバペンチンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ガバペンチンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガバペンチンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガバペンチンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガバペンチンは、癲癇およびうつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガバペンチン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガバペンチンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガバペンチンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガバペンチンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガバペンチンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガバペンチンをポリペプチドに共有結合することを含む、ガバペンチンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガバペンチンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガバペンチンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガバペンチンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガバペンチンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガバペンチンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガバペンチンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガバペンチンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガバペンチンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガバペンチンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガバペンチンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガバペンチンは、米国特許第4,087,544号、同第4,894,476号、同第5,084,479号、および同第6,054,482号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガバペンチンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガバペンチンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガバペンチン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガバペンチンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガバペンチンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガバペンチンの送達方法もまた、提供される。ガバペンチンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガバペンチンを保護する方法もまた提供される。ガバペンチンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガバペンチンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドジアミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガドジアミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガドジアミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガドジアミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガドジアミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガドジアミドが放出することを制御する方法であって、
ガドジアミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドジアミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドジアミドの送達方法。
[請求項22] ガドジアミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガドジアミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ガドジアミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガドジアミドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガドジアミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガドジアミドは、MRIの診断薬として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[5,8−ビス(カルボキシメチル)−11−[2−(メチルアミノ)−2−オキソエチル]−3−オキソ−2,5,8,11−テトラアザトリデカン−13−オアト(3−)]ガドリニウムである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガドジアミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガドジアミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガドジアミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドジアミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガドジアミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガドジアミドをポリペプチドに共有結合することを含む、ガドジアミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガドジアミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガドジアミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドジアミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガドジアミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドジアミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドジアミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガドジアミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガドジアミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガドジアミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガドジアミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガドジアミドは、米国特許第4,687,659号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガドジアミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガドジアミドは、アミノまたはヒドロキシ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガドジアミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドジアミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドジアミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドジアミドの送達方法もまた、提供される。ガドジアミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガドジアミドを保護する方法もまた提供される。ガドジアミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガドジアミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガドペンテト酸ジメグルミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガドペンテト酸ジメグルミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガドペンテト酸ジメグルミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガドペンテト酸ジメグルミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガドペンテト酸ジメグルミンが放出することを制御する方法であって、
ガドペンテト酸ジメグルミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドペンテト酸ジメグルミンの送達方法。
[請求項22] ガドペンテト酸ジメグルミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガドペンテト酸ジメグルミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ガドペンテト酸ジメグルミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガドペンテト酸ジメグルミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガドペンテト酸ジメグルミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガドペンテト酸ジメグルミンは、脳スキャンの画像形成のために用いられる周知の薬剤である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガドペンテト酸ジメグルミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガドペンテト酸ジメグルミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガドペンテト酸ジメグルミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガドペンテト酸ジメグルミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガドペンテト酸ジメグルミンをポリペプチドに共有結合することを含む、ガドペンテト酸ジメグルミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガドペンテト酸ジメグルミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガドペンテト酸ジメグルミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドペンテト酸ジメグルミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガドペンテト酸ジメグルミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドペンテト酸ジメグルミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドペンテト酸ジメグルミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガドペンテト酸ジメグルミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガドペンテト酸ジメグルミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガドペンテト酸ジメグルミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガドペンテト酸ジメグルミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガドペンテト酸ジメグルミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドペンテト酸ジメグルミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドペンテト酸ジメグルミンの送達方法もまた、提供される。ガドペンテト酸ジメグルミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガドペンテト酸ジメグルミンを保護する方法もまた提供される。ガドペンテト酸ジメグルミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガドペンテト酸ジメグルミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドテリドールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガドテリドールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガドテリドールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガドテリドールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガドテリドールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガドテリドールが放出することを制御する方法であって、
ガドテリドールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガドテリドールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドテリドールの送達方法。
[請求項22] ガドテリドールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガドテリドールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ガドテリドールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガドテリドールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガドテリドールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガドテリドールは、画像診断の造影試薬として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(+,−)−[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリアセタート(3−)]ガドリニウムである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガドテリドール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガドテリドールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガドテリドールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドテリドールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガドテリドールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガドテリドールをポリペプチドに共有結合することを含む、ガドテリドールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガドテリドールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガドテリドールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドテリドールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガドテリドールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドテリドールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガドテリドールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガドテリドールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガドテリドールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガドテリドールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガドテリドールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガドテリドールは、米国特許第4,885,363号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガドテリドールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガドテリドールが、ヒドロキシルまたはアミノ基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガドテリドール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドテリドールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガドテリドールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガドテリドールの送達方法もまた、提供される。ガドテリドールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガドテリドールを保護する方法もまた提供される。ガドテリドールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガドテリドールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガナキソロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガナキソロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガナキソロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガナキソロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガナキソロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガナキソロンが放出することを制御する方法であって、
ガナキソロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガナキソロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガナキソロンの送達方法。
[請求項22] ガナキソロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガナキソロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ガナキソロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガナキソロン(ganaxolone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガナキソロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガナキソロンは、癲癇および偏頭痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(3α,5α)−3−ヒドロキシ−3−メチル−プレグナン−20−オンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガナキソロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガナキソロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガナキソロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガナキソロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガナキソロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガナキソロンをポリペプチドに共有結合することを含む、ガナキソロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガナキソロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガナキソロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガナキソロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガナキソロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガナキソロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガナキソロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガナキソロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガナキソロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガナキソロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガナキソロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガナキソロンは、DE2162555A(1972)、優先権US出願745216号(1991)に基づいたWO93/3732号(1993)、優先権US出願759512号(1991)に基づいたWO93/5786号(1993)、優先権US出願68378号(1993)に基づいたWO94/27608号(1994)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガナキソロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガナキソロンが、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガナキソロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガナキソロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガナキソロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガナキソロンの送達方法もまた、提供される。ガナキソロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガナキソロンを保護する方法もまた提供される。ガナキソロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガナキソロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガンシクロビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガンシクロビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガンシクロビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガンシクロビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガンシクロビルが放出することを制御する方法であって、
ガンシクロビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガンシクロビルの送達方法。
[請求項22] ガンシクロビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガンシクロビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ガンシクロビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガンシクロビル(ganciclovir)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガンシクロビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガンシクロビルは、後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する患者など、免疫不全患者のサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガンシクロビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガンシクロビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガンシクロビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ガンシクロビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガンシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、ガンシクロビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガンシクロビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガンシクロビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガンシクロビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガンシクロビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガンシクロビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガンシクロビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガンシクロビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガンシクロビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガンシクロビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガンシクロビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガンシクロビルは、米国特許第4,355,032号、同第4,423,050号、同第4,507,305号および同第4,642,346号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガンシクロビルが、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガンシクロビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガンシクロビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガンシクロビルの送達方法もまた、提供される。ガンシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガンシクロビルを保護する方法もまた提供される。ガンシクロビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガンシクロビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガストリン17免疫原と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ガストリン17免疫原が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ガストリン17免疫原が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してガストリン17免疫原を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ガストリン17免疫原を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からガストリン17免疫原が放出することを制御する方法であって、
ガストリン17免疫原を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したガストリン17免疫原と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガストリン17免疫原の送達方法。
[請求項22] ガストリン17免疫原が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ガストリン17免疫原が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ガントフィバンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ガントフィバン(gantofiban)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにガントフィバンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ガントフィバンは、血栓症およびアンギナの治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[[(5R)−3−[4−[イミノ[(メトキシカルボニル)アミノ]メチル]フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]−1−ピペラジン酢酸エチルエステル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート(1:1である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ガントフィバン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ガントフィバンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたガントフィバンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガントフィバンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ガストリン17免疫原をポリペプチドに共有結合することを含む、ガストリン17免疫原を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのガストリン17免疫原の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ガストリン17免疫原は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガストリン17免疫原は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ガストリン17免疫原は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガストリン17免疫原は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ガストリン17免疫原は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ガストリン17免疫原をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ガストリン17免疫原および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ガストリン17免疫原を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ガストリン17免疫原の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ガストリン17免疫原は、米国特許第5622702号、同第5785970号、同第5607676号、および同第5609870号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したガストリン17免疫原を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ガストリン17免疫原が、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ガストリン17免疫原共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガストリン17免疫原とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したガストリン17免疫原とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのガストリン17免疫原の送達方法もまた、提供される。ガストリン17免疫原をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からガストリン17免疫原を保護する方法もまた提供される。ガストリン17免疫原をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からガストリン17免疫原を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ゲムシタビンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ゲムシタビンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してゲムシタビンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ゲムシタビンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からゲムシタビンが放出することを制御する方法であって、
ゲムシタビンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲムシタビンの送達方法。
[請求項22] ゲムシタビンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ゲムシタビンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ゲムシタビンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ゲムシタビンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにゲムシタビンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ゲムシタビンは、――の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、――である。その構造は以下の通りである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ゲムシタビン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ゲムシタビンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたゲムシタビンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ゲムシタビンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ゲムシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む、ゲムシタビンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのゲムシタビンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ゲムシタビンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムシタビンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ゲムシタビンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムシタビンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムシタビンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ゲムシタビンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ゲムシタビンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ゲムシタビンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ゲムシタビンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ゲムシタビンは、米国特許第yyyyy号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ゲムシタビンが、zzzzzzzを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ゲムシタビン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムシタビンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲムシタビンの送達方法もまた、提供される。ゲムシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からゲムシタビンを保護する方法もまた提供される。ゲムシタビンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からゲムシタビンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ゲムフィブロジルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ゲムフィブロジルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してゲムフィブロジルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ゲムフィブロジルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からゲムフィブロジルが放出することを制御する方法であって、
ゲムフィブロジルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲムフィブロジルの送達方法。
[請求項22] ゲムフィブロジルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ゲムフィブロジルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ゲムフィブロジルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにゲムフィブロジルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ゲムフィブロジルは、高脂肪血症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5−(2,5−ジメチルフェノキシ)−2,2−ジメチルペンタン酸である。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ゲムフィブロジル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ゲムフィブロジルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたゲムフィブロジルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ゲムフィブロジルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ゲムフィブロジルをポリペプチドに共有結合することを含む、ゲムフィブロジルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのゲムフィブロジルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ゲムフィブロジルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムフィブロジルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ゲムフィブロジルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムフィブロジルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲムフィブロジルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ゲムフィブロジルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ゲムフィブロジルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ゲムフィブロジルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ゲムフィブロジルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ゲムフィブロジルは、優先権US出願第73046号(1968)に基づいた、GB1225575号(1971)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ゲムフィブロジルが、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ゲムフィブロジル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲムフィブロジルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲムフィブロジルの送達方法もまた、提供される。ゲムフィブロジルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からゲムフィブロジルを保護する方法もまた提供される。ゲムフィブロジルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からゲムフィブロジルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ゲンタマイシンアイソトンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ゲンタマイシンアイソトンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してゲンタマイシンアイソトンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ゲンタマイシンアイソトンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からゲンタマイシンアイソトンが放出することを制御する方法であって、
ゲンタマイシンアイソトンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲンタマイシンアイソトンの送達方法。
[請求項22] ゲンタマイシンアイソトンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ゲンタマイシンアイソトンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

ゲンタマイシンアイソトンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ゲンタマイシンアイソトン(gentamicin isoton)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにゲンタマイシンアイソトンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ゲンタマイシンアイソトンは、細菌感染症および筋ジストロフィの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ゲンタマイシンアイソトン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ゲンタマイシンアイソトンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたゲンタマイシンアイソトンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ゲンタマイシンアイソトンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ゲンタマイシンアイソトンをポリペプチドに共有結合することを含む、ゲンタマイシンアイソトンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのゲンタマイシンアイソトンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ゲンタマイシンアイソトンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲンタマイシンアイソトンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ゲンタマイシンアイソトンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲンタマイシンアイソトンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲンタマイシンアイソトンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ゲンタマイシンアイソトンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ゲンタマイシンアイソトンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ゲンタマイシンアイソトンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ゲンタマイシンアイソトンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ゲンタマイシンアイソトンが、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ゲンタマイシンアイソトン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲンタマイシンアイソトンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲンタマイシンアイソトンの送達方法もまた、提供される。ゲンタマイシンアイソトンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からゲンタマイシンアイソトンを保護する方法もまた提供される。ゲンタマイシンアイソトンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からゲンタマイシンアイソトンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲピロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ゲピロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ゲピロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してゲピロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ゲピロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からゲピロンが放出することを制御する方法であって、
ゲピロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したゲピロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲピロンの送達方法。
[請求項22] ゲピロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ゲピロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ゲピロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ゲピロン(gepirone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにゲピロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ゲピロンは、不安およびうつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4,4−ジメチル−1−[4−[4−(2−ピリミジニル)−1−ピペラジニル]ブチル]−2,6−ピペリジンジオンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ゲピロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ゲピロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたゲピロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲピロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ゲピロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ゲピロンをポリペプチドに共有結合することを含む、ゲピロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのゲピロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ゲピロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲピロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ゲピロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲピロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ゲピロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ゲピロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ゲピロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ゲピロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ゲピロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ゲピロンは、優先権US出願第334688号(1981)に基づいた、GB2114122B号(1985)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したゲピロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ゲピロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲピロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したゲピロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのゲピロンの送達方法もまた、提供される。ゲピロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からゲピロンを保護する方法もまた提供される。ゲピロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からゲピロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 酢酸グラチラマーが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 酢酸グラチラマーが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して酢酸グラチラマーを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、酢酸グラチラマーを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から酢酸グラチラマーが放出することを制御する方法であって、
酢酸グラチラマーを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への酢酸グラチラマーの送達方法。
[請求項22] 酢酸グラチラマーが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 酢酸グラチラマーが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

酢酸グラチラマートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、酢酸グラチラマー(glatiramer acetate)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに酢酸グラチラマーの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
酢酸グラチラマーは、多発性硬化症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、L−アラニン、L−リシン、およびL−チロシンを有するL−グルタミン酸ポリマー、アセテートである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(酢酸グラチラマー)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、酢酸グラチラマーを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された酢酸グラチラマーを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
酢酸グラチラマーは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、酢酸グラチラマーをポリペプチドに共有結合することを含む、酢酸グラチラマーを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への酢酸グラチラマーの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、酢酸グラチラマーは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸グラチラマーは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、酢酸グラチラマーは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸グラチラマーは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、酢酸グラチラマーは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)酢酸グラチラマーをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、酢酸グラチラマーおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、酢酸グラチラマーを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、酢酸グラチラマーの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
酢酸グラチラマーは、米国特許第6,054,430号および同第5,981,589号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、酢酸グラチラマーは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−酢酸グラチラマー共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した酢酸グラチラマーとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への酢酸グラチラマーの送達方法もまた、提供される。酢酸グラチラマーをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から酢酸グラチラマーを保護する方法もまた提供される。酢酸グラチラマーをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から酢酸グラチラマーを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリメピリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] グリメピリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] グリメピリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してグリメピリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、グリメピリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からグリメピリドが放出することを制御する方法であって、
グリメピリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリメピリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリメピリドの送達方法。
[請求項22] グリメピリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] グリメピリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
グリメピリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、グリメピリド(glimepiride)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにグリメピリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
グリメピリドは、糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、トランス−3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(グリメピリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、グリメピリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたグリメピリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリメピリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
グリメピリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、グリメピリドをポリペプチドに共有結合することを含む、グリメピリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのグリメピリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、グリメピリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリメピリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、グリメピリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリメピリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリメピリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)グリメピリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、グリメピリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、グリメピリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、グリメピリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
グリメピリドは、米国特許第4,379,785号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したグリメピリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とすれる。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、グリメピリドは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−グリメピリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸およびN−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリメピリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリメピリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリメピリドの送達方法もまた、提供される。グリメピリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からグリメピリドを保護する方法もまた提供される。グリメピリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からグリメピリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリピジドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] グリピジドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] グリピジドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してグリピジドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、グリピジドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からグリピジドが放出することを制御する方法であって、
グリピジドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリピジドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリピジドの送達方法。
[請求項22] グリピジドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] グリピジドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。

グリピジドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、グリピジド(glipizide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにグリピジドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
グリピジドは、糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(グリピジド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、グリピジドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたグリピジドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリピジドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
グリピジドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、グリピジドをポリペプチドに共有結合することを含む、グリピジドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのグリピジドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、グリピジドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリピジドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、グリピジドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリピジドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリピジドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)グリピジドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、グリピジドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、グリピジドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、グリピジドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したグリピジドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、グリピジドは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−グリピジド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリピジドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリピジドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリピジドの送達方法もまた、提供される。グリピジドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からグリピジドを保護する方法もまた提供される。グリピジドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からグリピジドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグルカゴンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] グルカゴンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] グルカゴンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してグルカゴンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、グルカゴンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からグルカゴンが放出することを制御する方法であって、
グルカゴンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグルカゴンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグルカゴンの送達方法。
[請求項22] グルカゴンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] グルカゴンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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グルカゴンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、グルカゴンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにグルカゴンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
グルカゴンは、糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、好ましくは組み換えDNA技術を用いて、単離または合成され得る天然ペプチドである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(グルカゴン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、グルカゴンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたグルカゴンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグルカゴンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
グルカゴンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、グルカゴンをポリペプチドに共有結合することを含む、グルカゴンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのグルカゴンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、グルカゴンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グルカゴンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、グルカゴンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グルカゴンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グルカゴンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)グルカゴンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、グルカゴンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、グルカゴンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、グルカゴンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したグルカゴンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、グルカゴンは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−グルカゴン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグルカゴンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグルカゴンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグルカゴンの送達方法もまた、提供される。グルカゴンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からグルカゴンを保護する方法もまた提供される。グルカゴンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からグルカゴンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリブリドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] グリブリドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] グリブリドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してグリブリドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、グリブリドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からグリブリドが放出することを制御する方法であって、
グリブリドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグリブリドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリブリドの送達方法。
[請求項22] グリブリドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] グリブリドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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グリブリドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、グリブリド(glyburide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにグリブリドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
グリブリドは、糖尿病の治療に用いられるスルホニル尿素抗糖尿病薬である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(グリブリド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、グリブリドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたグリブリドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリブリドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
グリブリドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、グリブリドをポリペプチドに共有結合することを含む、グリブリドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのグリブリドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、グリブリドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリブリドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、グリブリドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリブリドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グリブリドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)グリブリドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、グリブリドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、グリブリドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、グリブリドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したグリブリドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、グリブリドは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−グリブリド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリブリドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグリブリドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグリブリドの送達方法もまた、提供される。グリブリドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からグリブリドを保護する方法もまた提供される。グリブリドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からグリブリドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] グラニセトロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] グラニセトロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してグラニセトロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、グラニセトロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からグラニセトロンが放出することを制御する方法であって、
グラニセトロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグラニセトロンの送達方法。
[請求項22] グラニセトロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] グラニセトロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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グラニセトロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、グラニセトロンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにグラニセトロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
グラニセトロンは、癌の患者の悪心および嘔吐の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、エンド−1−メチル−N−(9−メチル−9−アザビシクロ[3,3,1]ノン−3−イル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(グラニセトロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、グラニセトロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたグラニセトロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
グラニセトロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、グラニセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、グラニセトロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのグラニセトロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、グラニセトロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グラニセトロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、グラニセトロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グラニセトロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、グラニセトロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)グラニセトロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、グラニセトロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、グラニセトロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、グラニセトロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
グラニセトロンは、米国特許第4,886,808号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、グラニセトロンは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−グラニセトロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したグラニセトロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのグラニセトロンの送達方法もまた、提供される。グラニセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からグラニセトロンを保護する方法もまた提供される。グラニセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からグラニセトロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したハロペリダールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ハロペリダールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ハロペリダールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してハロペリダールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ハロペリダールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からハロペリダールが放出することを制御する方法であって、
ハロペリダールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したハロペリダールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのハロペリダールの送達方法。
[請求項22] ハロペリダールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ハロペリダールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ハロペリダールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ハロペリダール(haloperidal)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにハロペリダールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ハロペリダールは、精神病性障害の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、市販されており、かつ当業者によって、公開された合成法を用いて容易に製造される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ハロペリダール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ハロペリダールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたハロペリダールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したハロペリダールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ハロペリダールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ハロペリダールをポリペプチドに共有結合することを含む、ハロペリダールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのハロペリダールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ハロペリダールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ハロペリダールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ハロペリダールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ハロペリダールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ハロペリダールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ハロペリダールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ハロペリダールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ハロペリダールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ハロペリダールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したハロペリダールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ハロペリダールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ハロペリダール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したハロペリダールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したハロペリダールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのハロペリダールの送達方法もまた、提供される。ハロペリダールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からハロペリダールを保護する方法もまた提供される。ハロペリダールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からハロペリダールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合
したキノロン抗生物質と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] キノロン抗生物質が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] キノロン抗生物質が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してキノロン抗生物質を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、キノロン抗生物質を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からキノロン抗生物質が放出することを制御する方法であって、
キノロン抗生物質を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したキノロン抗生物質と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのキノロン抗生物質の送達方法。
[請求項22] キノロン抗生物質が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] キノロン抗生物質が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
キノロン抗生物質を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、キノロン抗生物質に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにキノロン抗生物質の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
キノロン抗生物質は、細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、1−シクロプロピル−8−(ジフルオロメトキシ)−7−[(1R)−2,3−ジヒドロ−1−メチル−1H−イソインドル−5−イル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸モノメタンスルホネートである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(キノロン抗生物質)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、キノロン抗生物質を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたキノロン抗生物質を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したキノロン抗生物質とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
キノロン抗生物質は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、キノロン抗生物質をポリペプチドに共有結合することを含む、キノロン抗生物質を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのキノロン抗生物質の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、キノロン抗生物質は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、キノロン抗生物質は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、キノロン抗生物質は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、キノロン抗生物質は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、キノロン抗生物質は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)キノロン抗生物質をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、キノロン抗生物質および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、キノロン抗生物質を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、キノロン抗生物質の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
キノロン抗生物質は、EP882725A1号(1998)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したキノロン抗生物質を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、キノロン抗生物質は、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−キノロン抗生物質共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したキノロン抗生物質とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したキノロン抗生物質とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのキノロン抗生物質の送達方法もまた、提供される。キノロン抗生物質をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からキノロン抗生物質を保護する方法もまた提供される。キノロン抗生物質をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からキノロン抗生物質を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してヒドロクロロチアジドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からヒドロクロロチアジドが放出することを制御する方法であって、
ヒドロクロロチアジドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロクロロチアジドの送達方法。
[請求項22] ヒドロクロロチアジドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ヒドロクロロチアジドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ヒドロクロロチアジドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ヒドロクロロチアジドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにヒドロクロロチアジドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ヒドロクロロチアジドは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。ヒドロクロロチアジドの化学構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ヒドロクロロチアジド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ヒドロクロロチアジドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたヒドロクロロチアジドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロクロロチアジドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ヒドロクロロチアジドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ヒドロクロロチアジドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ヒドロクロロチアジドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ヒドロクロロチアジドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ヒドロクロロチアジドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ヒドロクロロチアジドは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ヒドロクロロチアジド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロクロロチアジドの送達方法もまた、提供される。ヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からヒドロクロロチアジドを保護する方法もまた提供される。ヒドロクロロチアジドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からヒドロクロロチアジドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンが放出することを制御する方法であって、
ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンの送達方法。
[請求項22] ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、浮腫および高血圧の治療に一緒に用いられる周知の薬剤である。トリアムテレンの化学構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
その化学名は、――である。ヒドロクロロチアジドの化学構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンをポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンは、各々のアミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンの送達方法もまた、提供される。ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを保護する方法もまた提供される。ヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からヒドロクロロチアジドおよびトリアムテレンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ヒドロモルホンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ヒドロモルホンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してヒドロモルホンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロモルホンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からヒドロモルホンが放出することを制御する方法であって、
ヒドロモルホンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロモルホンの送達方法。
[請求項22] ヒドロモルホンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ヒドロモルホンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ヒドロモルホンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ヒドロモルホン(hydromorphone)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにヒドロモルホンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ヒドロモルホンは、咳および疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ヒドロモルホン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ヒドロモルホンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたヒドロモルホンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ヒドロモルホンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ヒドロモルホンをポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロモルホンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのヒドロモルホンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ヒドロモルホンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロモルホンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ヒドロモルホンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロモルホンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロモルホンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ヒドロモルホンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ヒドロモルホンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ヒドロモルホンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ヒドロモルホンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ヒドロモルホンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ヒドロモルホン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロモルホンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロモルホンの送達方法もまた、提供される。ヒドロモルホンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からヒドロモルホンを保護する方法もまた提供される。ヒドロモルホンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からヒドロモルホンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ヒドロキシクロロキノンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ヒドロキシクロロキノンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してヒドロキシクロロキノンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロキシクロロキノンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からヒドロキシクロロキノンが放出することを制御する方法であって、
ヒドロキシクロロキノンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロキシクロロキノンの送達方法。
[請求項22] ヒドロキシクロロキノンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ヒドロキシクロロキノンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ヒドロキシクロロキノンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ヒドロキシクロロキノンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにヒドロキシクロロキノンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ヒドロキシクロロキノンは、マラリアの治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ヒドロキシクロロキノン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ヒドロキシクロロキノンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたヒドロキシクロロキノンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ヒドロキシクロロキノンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ヒドロキシクロロキノンをポリペプチドに共有結合することを含む、ヒドロキシクロロキノンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのヒドロキシクロロキノンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ヒドロキシクロロキノンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロキシクロロキノンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ヒドロキシクロロキノンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロキシクロロキノンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒドロキシクロロキノンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ヒドロキシクロロキノンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ヒドロキシクロロキノンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ヒドロキシクロロキノンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ヒドロキシクロロキノンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ヒドロキシクロロキノンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ヒドロキシクロロキノン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒドロキシクロロキノンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒドロキシクロロキノンの送達方法もまた、提供される。ヒドロキシクロロキノンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からヒドロキシクロロキノンを保護する方法もまた提供される。ヒドロキシクロロキノンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からヒドロキシクロロキノンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イブプロフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イブプロフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイブプロフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イブプロフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイブプロフェンが放出することを制御する方法であって、
イブプロフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイブプロフェンの送達方法。
[請求項22] イブプロフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イブプロフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
イブプロフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イブプロフェンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイブプロフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
イブプロフェンは、疼痛および関節炎の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イブプロフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イブプロフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイブプロフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イブプロフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イブプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、イブプロフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイブプロフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イブプロフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イブプロフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イブプロフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イブプロフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イブプロフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イブプロフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イブプロフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イブプロフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イブプロフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イブプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イブプロフェンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イブプロフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイブプロフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイブプロフェンの送達方法もまた、提供される。イブプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイブプロフェンを保護する方法もまた提供される。イブプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイブプロフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイダルビシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イダルビシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イダルビシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイダルビシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イダルビシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイダルビシンが放出することを制御する方法であって、
イダルビシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイダルビシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイダルビシンの送達方法。
[請求項22] イダルビシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イダルビシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イダルビシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イダルビシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイダルビシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
イダルビシンは、癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(7S,9S)−9−アセチル−7−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,9,11−トリヒドロキシ−5,12−ナフタセンジオンである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イダルビシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イダルビシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイダルビシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイダルビシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イダルビシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イダルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む、イダルビシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイダルビシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イダルビシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イダルビシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イダルビシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イダルビシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イダルビシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イダルビシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イダルビシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イダルビシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イダルビシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イダルビシンは、GB1467383号(1977)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイダルビシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イダルビシン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イダルビシンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イダルビシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイダルビシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイダルビシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイダルビシンの送達方法もまた、提供される。イダルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイダルビシンを保護する方法もまた提供される。イダルビシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイダルビシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイロデカキンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イロデカキンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イロデカキンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイロデカキンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イロデカキンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイロデカキンが放出することを制御する方法であって、
イロデカキンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイロデカキンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイロデカキンの送達方法。
[請求項22] イロデカキンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イロデカキンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イロデカキンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イロデカキン(ilodecakin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイロデカキンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
イロデカキンは、肝炎、自己免疫疾患およびHIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、インターロイキン10であり、それは、天然供給源から単離可能であると共に、当業者によって合成可能である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イロデカキン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イロデカキンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイロデカキンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイロデカキンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イロデカキンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イロデカキンをポリペプチドに共有結合することを含む、イロデカキンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイロデカキンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イロデカキンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イロデカキンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イロデカキンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イロデカキンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イロデカキンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イロデカキンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イロデカキンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イロデカキンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イロデカキンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイロデカキンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イロデカキン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イロデカキンは、−を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イロデカキン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイロデカキンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイロデカキンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイロデカキンの送達方法もまた、提供される。イロデカキンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイロデカキンを保護する方法もまた提供される。イロデカキンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイロデカキンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イミグルセラーゼが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イミグルセラーゼが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイミグルセラーゼを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イミグルセラーゼを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイミグルセラーゼが放出することを制御する方法であって、
イミグルセラーゼを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイミグルセラーゼの送達方法。
[請求項22] イミグルセラーゼが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イミグルセラーゼが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イミグルセラーゼを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イミグルセラーゼ(imiglucerase)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイミグルセラーゼの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
イミグルセラーゼは、ゴーシェー病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、グルコシル−(ヒト胎盤イソ酵素タンパク質部分)495−L−ヒスチジン−セラミダーゼである。それは、組み換えグルコセレブロシダーゼ酵素である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イミグルセラーゼ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イミグルセラーゼを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイミグルセラーゼを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イミグルセラーゼは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イミグルセラーゼをポリペプチドに共有結合することを含む、イミグルセラーゼを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイミグルセラーゼの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イミグルセラーゼは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミグルセラーゼは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イミグルセラーゼは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミグルセラーゼは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミグルセラーゼは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イミグルセラーゼをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イミグルセラーゼおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イミグルセラーゼを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イミグルセラーゼの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イミグルセラーゼは、優先権US出願第289589号(1988)に基づいた、EP401362B号(1996)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イミグルセラーゼ 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イミグルセラーゼは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イミグルセラーゼ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミグルセラーゼとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイミグルセラーゼの送達方法もまた、提供される。イミグルセラーゼをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイミグルセラーゼを保護する方法もまた提供される。イミグルセラーゼをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイミグルセラーゼを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイミプラミンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イミプラミンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イミプラミンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイミプラミンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イミプラミンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイミプラミンが放出することを制御する方法であって、
イミプラミンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイミプラミンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイミプラミンの送達方法。
[請求項22] イミプラミンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イミプラミンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
イミプラミンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イミプラミンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイミプラミンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
イミプラミンは、うつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イミプラミン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イミプラミンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイミプラミンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミプラミンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イミプラミンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、イミプラミンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイミプラミンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イミプラミンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミプラミンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イミプラミンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミプラミンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イミプラミンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イミプラミンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イミプラミンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イミプラミンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イミプラミンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイミプラミンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イミプラミン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イミプラミン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミプラミンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイミプラミンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイミプラミンの送達方法もまた、提供される。イミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイミプラミンを保護する方法もまた提供される。イミプラミンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイミプラミンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインジナビルと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] インジナビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] インジナビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してインジナビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、インジナビルを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からインジナビルが放出することを制御する方法であって、
インジナビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインジナビルと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインジナビルの送達方法。
[請求項22] インジナビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] インジナビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
インジナビルを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、インジナビル(indinavir)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにインジナビルの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
インジナビルは、HIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2,3,5−トリデオキシ−N−[(1S,2R)−2,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−1H−インデン−1−イル]−5−[(2S)−2−[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル]−4−(3−ピリジニルメチル)−1−ピペラジニル]−2−(フェニルメチル)−D−エリトロ−ペントンアミドである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(インジナビル)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、インジナビルを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたインジナビルを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインジナビルとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
インジナビルは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、インジナビルをポリペプチドに共有結合することを含む、インジナビルを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのインジナビルの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、インジナビルは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インジナビルは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、インジナビルは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インジナビルは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インジナビルは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)インジナビルをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、インジナビルおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、インジナビルを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、インジナビルの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
インジナビルは、優先権米国出願第789508号(1991)に基づいた、EP541168B号(1998)、および米国特許第5,413,999号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したインジナビルを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 インジナビル 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、インジナビルは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−インジナビル共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインジナビルとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインジナビルとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインジナビルの送達方法もまた、提供される。インジナビルをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からインジナビルを保護する方法もまた提供される。インジナビルをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からインジナビルを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] インフリキシマブが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] インフリキシマブが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してインフリキシマブを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、インフリキシマブを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からインフリキシマブが放出することを制御する方法であって、
インフリキシマブを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインフリキシマブの送達方法。
[請求項22] インフリキシマブが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] インフリキシマブが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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インフリキシマブを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、インフリキシマブ(infliximab)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにインフリキシマブの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
インフリキシマブは、関節炎およびHIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、単クローン性抗体標的癌壊死α因子である。その化学名は、免疫グロブリンG,抗(ヒト癌壊死因子)(ヒト−マウス単クローンcA2 H鎖)と、ヒト−マウス単クローンcA2 L鎖とのジスルフィドの、二量体である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(インフリキシマブ)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、インフリキシマブを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたインフリキシマブを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
インフリキシマブは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、インフリキシマブをポリペプチドに共有結合することを含む、インフリキシマブを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのインフリキシマブの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、インフリキシマブは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インフリキシマブは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、インフリキシマブは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インフリキシマブは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インフリキシマブは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)インフリキシマブをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、インフリキシマブおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、インフリキシマブを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、インフリキシマブの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
インフリキシマブは、米国特許第yyyyy号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 インフリキシマブ 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、インフリキシマブは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−インフリキシマブ共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインフリキシマブとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインフリキシマブの送達方法もまた、提供される。インフリキシマブをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からインフリキシマブを保護する方法もまた提供される。インフリキシマブをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からインフリキシマブを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ヒトインスリンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ヒトインスリンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してヒトインスリンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ヒトインスリンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からヒトインスリンが放出することを制御する方法であって、
ヒトインスリンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒトインスリンの送達方法。
[請求項22] ヒトインスリンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ヒトインスリンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ヒトインスリンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ヒトインスリンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにヒトインスリンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
ヒトインスリンは、糖尿病の治療に用いられる周知の薬剤である。ヒトインスリンは、ヒト膵臓のベータ細胞によって分泌された内因性インスリンと構造上同じである生合成または半合成タンパク質である。内因性ヒトインスリンと構造上同じであるが、市販のヒトインスリンはヒトの膵臓から抽出されるのでなく、遺伝改良された大腸菌または出芽酵母の培養から生合成によって、または豚インスリンのペプチド転移反応によって半合成により調製される。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ヒトインスリン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ヒトインスリンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたヒトインスリンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ヒトインスリンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ヒトインスリンをポリペプチドに共有結合することを含む、ヒトインスリンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのヒトインスリンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ヒトインスリンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒトインスリンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ヒトインスリンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒトインスリンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ヒトインスリンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ヒトインスリンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ヒトインスリンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ヒトインスリンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ヒトインスリンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ヒトインスリンは、米国特許第5,474,978号および同第5,514,646号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ヒトインスリン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ヒトインスリンは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ヒトインスリン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したヒトインスリンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのヒトインスリンの送達方法もまた、提供される。ヒトインスリンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からヒトインスリンを保護する方法もまた提供される。ヒトインスリンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からヒトインスリンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] インターフェロンアルファコン−1が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] インターフェロンアルファコン−1が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してインターフェロンアルファコン−1を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、インターフェロンアルファコン−1を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からインターフェロンアルファコン−1が放出することを制御する方法であって、
インターフェロンアルファコン−1を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターフェロンアルファコン−1の送達方法。
[請求項22] インターフェロンアルファコン−1が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] インターフェロンアルファコン−1が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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インターフェロンアルファコン−1を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、インターフェロンアルファコン−1に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにインターフェロンアルファコン−1の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合せる利点を有する。
発明の背景
インターフェロンアルファコン−1は、ウイルス感染症および癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、インターフェロンアルファ1(ヒトリンパ芽球の還元),N−L−メチオニル−22−L−arg−76−L−ala−78−L−asp−79−L−glu−86−L−tyr−90−L−tyr−156−L−thr−157−L−asn−158−L−leuである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(インターフェロンアルファコン−1)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、インターフェロンアルファコン−1を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたインターフェロンアルファコン−1を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
インターフェロンアルファコン−1は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、インターフェロンアルファコン−1をポリペプチドに共有結合することを含む、インターフェロンアルファコン−1を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのインターフェロンアルファコン−1の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、インターフェロンアルファコン−1は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンアルファコン−1は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、インターフェロンアルファコン−1は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンアルファコン−1は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンアルファコン−1は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)インターフェロンアルファコン−1をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、インターフェロンアルファコン−1および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、インターフェロンアルファコン−1を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、インターフェロンアルファコン−1の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
インターフェロンアルファコン−1は、優先権米国出願第375494号(1982)に基づいたEP422697B号(1994)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 インターフェロンアルファコン−1 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、インターフェロンアルファコン−1は、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−インターフェロンアルファコン−1共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンアルファコン−1とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターフェロンアルファコン−1の送達方法もまた、提供される。インターフェロンアルファコン−1をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からインターフェロンアルファコン−1を保護する方法もまた提供される。インターフェロンアルファコン−1をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からインターフェロンアルファコン−1を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] インターフェロンベータ−1aが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] インターフェロンベータ−1aが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してインターフェロンベータ−1aを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、インターフェロンベータ−1aを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からインターフェロンベータ−1aが放出することを制御する方法であって、
インターフェロンベータ−1aを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターフェロンベータ−1aの送達方法。
[請求項22] インターフェロンベータ−1aが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] インターフェロンベータ−1aが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
インターフェロンベータ−1aを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、インターフェロンベータ−1aに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにインターフェロンベータ−1aの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
インターフェロンベータ−1aは、多発性硬化症、ウイルス感染症および癌の治療に用いられる周知の薬剤である。それは、145258−61−3ヒト線維芽細胞タンパク質部分74899−73−3プレ−(ヒト線維芽細胞タンパク質部分の還元)74899−71−1ヒト線維芽細胞タンパク質部分の還元、である。ビオゲン(Biogen)は、組み換え技術によるインターフェロンベータの製造についてEP41313号に認可された。前記特許は、組み換えDNA分子、トランスフォームド宿主の他、組み換えインターフェロンベータタンパク質の製造方法について記載している。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(インターフェロンベータ−1a)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、インターフェロンベータ−1aを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたインターフェロンベータ−1aを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
インターフェロンベータ−1aは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、インターフェロンベータ−1aをポリペプチドに共有結合することを含む、インターフェロンベータ−1aを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのインターフェロンベータ−1aの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、インターフェロンベータ−1aは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンベータ−1aは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、インターフェロンベータ−1aは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンベータ−1aは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターフェロンベータ−1aは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)インターフェロンベータ−1aをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、インターフェロンベータ−1aおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、インターフェロンベータ−1aを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、インターフェロンベータ−1aの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 インターフェロンベータ−1a 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、インターフェロンベータ−1aは、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−インターフェロンベータ−1a共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターフェロンベータ−1aとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターフェロンベータ−1aの送達方法もまた、提供される。インターフェロンベータ−1aをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からインターフェロンベータ−1aを保護する方法もまた提供される。インターフェロンベータ−1aをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からインターフェロンベータ−1aを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2と、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] インターロイキン−2が、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] インターロイキン−2が、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してインターロイキン−2を前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、インターロイキン−2を分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からインターロイキン−2が放出することを制御する方法であって、
インターロイキン−2を前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2と、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターロイキン−2の送達方法。
[請求項22] インターロイキン−2が、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] インターロイキン−2が、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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インターロイキン−2を含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、インターロイキン−2に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにインターロイキン−2の保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
インターロイキン−2は、腎細胞癌の治療に用いられる周知の薬剤である。IL−2は、TおよびB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および胸腺細胞の繁殖、分化、および漸増を促進する。IL−2はまた、リンパ球のサブセットの細胞溶解活動および後続の、免疫系と悪性細胞との間の相互作用を引き起こす。IL−2は、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞および腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)細胞を刺激することができる。LAK細胞(患者のリンパ球から誘導され、IL−2中で培養される)は、NK細胞に抵抗性である細胞を溶解することができる。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(インターロイキン−2)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、インターロイキン−2を本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたインターロイキン−2を含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2とを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
インターロイキン−2は、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、インターロイキン−2をポリペプチドに共有結合することを含む、インターロイキン−2を分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのインターロイキン−2の送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、インターロイキン−2は、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターロイキン−2は、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、インターロイキン−2は、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターロイキン−2は、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、インターロイキン−2は、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)インターロイキン−2をアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、インターロイキン−2および第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、インターロイキン−2を安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、インターロイキン−2の放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 インターロイキン−2 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、インターロイキン−2は、ペプチド結合を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−インターロイキン−2共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2とを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したインターロイキン−2とを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのインターロイキン−2の送達方法もまた、提供される。インターロイキン−2をポリペプチドに共有結合することを含む、分解からインターロイキン−2を保護する方法もまた提供される。インターロイキン−2をポリペプチドに共有結合することを含む組成物からインターロイキン−2を放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イオジキサノールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イオジキサノールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイオジキサノールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イオジキサノールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイオジキサノールが放出することを制御する方法であって、
イオジキサノールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオジキサノールの送達方法。
[請求項22] イオジキサノールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イオジキサノールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イオジキサノールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イオジキサノールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイオジキサノールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イオジキサノールは、医学用画像用の造影剤として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5,5’−[(2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル)ビス(アセチルアミノ)]ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼンジカルボキサミド]である。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イオジキサノール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イオジキサノールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイオジキサノールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イオジキサノールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イオジキサノールをポリペプチドに共有結合することを含む、イオジキサノールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイオジキサノールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イオジキサノールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオジキサノールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イオジキサノールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオジキサノールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオジキサノールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イオジキサノールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イオジキサノールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イオジキサノールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イオジキサノールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イオジキサノールは、米国特許第5,349,085号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イオジキサノール 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イオジキサノールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イオジキサノール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオジキサノールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオジキサノールの送達方法もまた、提供される。イオジキサノールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイオジキサノールを保護する方法もまた提供される。イオジキサノールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイオジキサノールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオプロミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イオプロミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イオプロミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイオプロミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イオプロミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイオプロミドが放出することを制御する方法であって、
イオプロミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオプロミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオプロミドの送達方法。
[請求項22] イオプロミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イオプロミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イオプロミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イオプロミドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイオプロミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イオプロミドは、X線造影剤として用いられる周知の薬剤である。その化学名は、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−[(2−メトキシアセチル)アミノ]−N−メチル−1,3−ベンゼンジカルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イオプロミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イオプロミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイオプロミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオプロミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イオプロミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イオプロミドをポリペプチドに共有結合することを含む、イオプロミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイオプロミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イオプロミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオプロミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イオプロミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオプロミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオプロミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イオプロミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イオプロミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イオプロミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イオプロミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イオプロミドは、米国特許第4,364,921号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイオプロミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イオプロミド 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イオプロミドは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イオプロミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオプロミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオプロミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオプロミドの送達方法もまた、提供される。イオプロミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイオプロミドを保護する方法もまた提供される。イオプロミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイオプロミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イオキサグレートが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イオキサグレートが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイオキサグレートを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イオキサグレートを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイオキサグレートが放出することを制御する方法であって、
イオキサグレートを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオキサグレートの送達方法。
[請求項22] イオキサグレートが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イオキサグレートが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
イオキサグレートを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イオキサグレートに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイオキサグレートの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イオキサグレートは、放射線不透過性造影助剤として用いられる周知の薬剤である。それは通常、イオキサグレートメグルミンとイオキサグレートナトリウムとの組合せとして用いられる。両単位体は、ポリペプチド担体に結合されることが出来る。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イオキサグレート)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イオキサグレートを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイオキサグレートを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イオキサグレートは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イオキサグレートをポリペプチドに共有結合することを含む、イオキサグレートを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイオキサグレートの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イオキサグレートは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオキサグレートは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イオキサグレートは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオキサグレートは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イオキサグレートは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イオキサグレートをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イオキサグレートおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イオキサグレートを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イオキサグレートの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イオキサグレート 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イオキサグレートは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イオキサグレート共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイオキサグレートとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイオキサグレートの送達方法もまた、提供される。イオキサグレートをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイオキサグレートを保護する方法もまた提供される。イオキサグレートをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイオキサグレートを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イプラトロピウムが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イプラトロピウムが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイプラトロピウムを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イプラトロピウムを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイプラトロピウムが放出することを制御する方法であって、
イプラトロピウムを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイプラトロピウムの送達方法。
[請求項22] イプラトロピウムが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イプラトロピウムが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イプラトロピウムを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イプラトロピウムに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイプラトロピウムの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イプラトロピウムは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に伴う可逆性気管支痙攣の長期的対症療法のための気管支拡張薬として用いられる。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イプラトロピウム)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イプラトロピウムを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイプラトロピウムを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イプラトロピウムは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イプラトロピウムをポリペプチドに共有結合することを含む、イプラトロピウムを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイプラトロピウムの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イプラトロピウムは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イプラトロピウムは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イプラトロピウムは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イプラトロピウムは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イプラトロピウムは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イプラトロピウムをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イプラトロピウムおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イプラトロピウムを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イプラトロピウムの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イプラトロピウム 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イプラトロピウムは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イプラトロピウム共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイプラトロピウムとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイプラトロピウムの送達方法もまた、提供される。イプラトロピウムをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイプラトロピウムを保護する方法もまた提供される。イプラトロピウムをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイプラトロピウムを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イルベサルタンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イルベサルタンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイルベサルタンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イルベサルタンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイルベサルタンが放出することを制御する方法であって、
イルベサルタンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイルベサルタンの送達方法。
[請求項22] イルベサルタンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イルベサルタンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イルベサルタンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イルベサルタン(irbesartan)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイルベサルタンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イルベサルタンは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−ブチル−3−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1,3−ジアザスピロ[4.4]ノン−1−エン−4−オンである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イルベサルタン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イルベサルタンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイルベサルタンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イルベサルタンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イルベサルタンをポリペプチドに共有結合することを含む、イルベサルタンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイルベサルタンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イルベサルタンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イルベサルタンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イルベサルタンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イルベサルタンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イルベサルタンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イルベサルタンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イルベサルタンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イルベサルタンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イルベサルタンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イルベサルタンは、米国特許第5,270,317号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イルベサルタン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イルベサルタン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイルベサルタンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイルベサルタンの送達方法もまた、提供される。イルベサルタンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイルベサルタンを保護する方法もまた提供される。イルベサルタンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイルベサルタンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイリノテカンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イリノテカンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イリノテカンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイリノテカンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イリノテカンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイリノテカンが放出することを制御する方法であって、
イリノテカンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイリノテカンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイリノテカンの送達方法。
[請求項22] イリノテカンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イリノテカンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イリノテカンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イリノテカンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイリノテカンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イリノテカンは、癌の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、[1,4’−ビピペリジン]−1’−カルボン酸(S)−4,11−ジエチル−3,4,12,14−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−3,14−ジオキソ−1H−ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−9−イルエステルである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イリノテカン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イリノテカンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイリノテカンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイリノテカンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イリノテカンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イリノテカンをポリペプチドに共有結合することを含む、イリノテカンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイリノテカンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イリノテカンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イリノテカンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イリノテカンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イリノテカンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イリノテカンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イリノテカンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イリノテカンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イリノテカンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イリノテカンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イリノテカンは、米国特許第4,604,463号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイリノテカンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イリノテカン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イリノテカンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イリノテカン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイリノテカンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイリノテカンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイリノテカンの送達方法もまた、提供される。イリノテカンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイリノテカンを保護する方法もまた提供される。イリノテカンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイリノテカンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] 二硝酸イソソルビドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] 二硝酸イソソルビドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存して二硝酸イソソルビドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、二硝酸イソソルビドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物から二硝酸イソソルビドが放出することを制御する方法であって、
二硝酸イソソルビドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への二硝酸イソソルビドの送達方法。
[請求項22] 二硝酸イソソルビドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] 二硝酸イソソルビドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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二硝酸イソソルビドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、二硝酸イソソルビドに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびに二硝酸イソソルビドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
二硝酸イソソルビドは、アンギナの治療に用いられる周知の薬剤である。それは、有機硝酸塩からなり、亜硝酸塩は、亜硝酸または硝酸のエステル、主に亜硝酸アミルである。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(二硝酸イソソルビド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、二硝酸イソソルビドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入された二硝酸イソソルビドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
二硝酸イソソルビドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、二硝酸イソソルビドをポリペプチドに共有結合することを含む、二硝酸イソソルビドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者への二硝酸イソソルビドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、二硝酸イソソルビドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、二硝酸イソソルビドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、二硝酸イソソルビドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、二硝酸イソソルビドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、二硝酸イソソルビドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)二硝酸イソソルビドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、二硝酸イソソルビドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、二硝酸イソソルビドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、二硝酸イソソルビドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 二硝酸イソソルビド 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、二硝酸イソソルビドは、亜硝酸塩基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−二硝酸イソソルビド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。


要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した二硝酸イソソルビドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者への二硝酸イソソルビドの送達方法もまた、提供される。二硝酸イソソルビドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解から二硝酸イソソルビドを保護する方法もまた提供される。二硝酸イソソルビドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物から二硝酸イソソルビドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イソトレチノインが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イソトレチノインが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイソトレチノインを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イソトレチノインを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイソトレチノインが放出することを制御する方法であって、
イソトレチノインを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイソトレチノインの送達方法。
[請求項22] イソトレチノインが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イソトレチノインが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
イソトレチノインを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イソトレチノイン(isotretinoin)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイソトレチノインの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イソトレチノインは、■瘡の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イソトレチノイン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イソトレチノインを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイソトレチノインを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イソトレチノインは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イソトレチノインをポリペプチドに共有結合することを含む、イソトレチノインを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイソトレチノインの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イソトレチノインは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イソトレチノインは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イソトレチノインは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イソトレチノインは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イソトレチノインは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イソトレチノインをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イソトレチノインおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イソトレチノインを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イソトレチノインの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イソトレチノイン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イソトレチノインは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イソトレチノイン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイソトレチノインとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイソトレチノインの送達方法もまた、提供される。イソトレチノインをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイソトレチノインを保護する方法もまた提供される。イソトレチノインをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイソトレチノインを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイスラジピンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イスラジピンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イスラジピンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイスラジピンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イスラジピンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイスラジピンが放出することを制御する方法であって、
イスラジピンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイスラジピンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイスラジピンの送達方法。
[請求項22] イスラジピンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イスラジピンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
イスラジピンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イスラジピン(isradipine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイスラジピンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イスラジピンは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−(4−ベンゾフラザニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−3,5−ピリジンジカルボン酸メチル1−メチルエチルエステルである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イスラジピン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イスラジピンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイスラジピンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイスラジピンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イスラジピンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イスラジピンをポリペプチドに共有結合することを含む、イスラジピンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイスラジピンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イスラジピンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イスラジピンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イスラジピンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イスラジピンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イスラジピンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イスラジピンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イスラジピンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イスラジピンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イスラジピンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イスラジピンは、EP150B(1981)およびUK2037766B号(1983)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイスラジピンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イスラジピン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イスラジピン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイスラジピンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイスラジピンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイスラジピンの送達方法もまた、提供される。イスラジピンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイスラジピンを保護する方法もまた提供される。イスラジピンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイスラジピンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイタセトロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イタセトロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イタセトロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイタセトロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イタセトロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイタセトロンが放出することを制御する方法であって、
イタセトロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイタセトロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイタセトロンの送達方法。
[請求項22] イタセトロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イタセトロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イタセトロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イタセトロン(itasetron)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイタセトロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イタセトロンは、嘔吐(emesis)および不安の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、エンド−2,3−ジヒドロ−N−(8−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)−2−オキソ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イタセトロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イタセトロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイタセトロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイタセトロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イタセトロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イタセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、イタセトロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイタセトロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イタセトロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イタセトロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イタセトロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イタセトロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イタセトロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イタセトロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イタセトロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イタセトロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イタセトロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イタセトロンは、EP309423B(1994)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイタセトロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イタセトロン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、イタセトロンは、アミン基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イタセトロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイタセトロンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイタセトロンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイタセトロンの送達方法もまた、提供される。イタセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイタセトロンを保護する方法もまた提供される。イタセトロンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイタセトロンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] イトラコナゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] イトラコナゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してイトラコナゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、イトラコナゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からイトラコナゾールが放出することを制御する方法であって、
イトラコナゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイトラコナゾールの送達方法。
[請求項22] イトラコナゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] イトラコナゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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イトラコナゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、イトラコナゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにイトラコナゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
イトラコナゾールは、真菌症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、4−[4−[4−[4−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ]フェニル]−1−ピペラジニル]フェニル]−2,4−ジヒドロ−2−(1−メチルプロピル)−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(イトラコナゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、イトラコナゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたイトラコナゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
イトラコナゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、イトラコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、イトラコナゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのイトラコナゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、イトラコナゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イトラコナゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、イトラコナゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イトラコナゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、イトラコナゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)イトラコナゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、イトラコナゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、イトラコナゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、イトラコナゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
イトラコナゾールは、米国特許第4,267,179号、同第4,727,064号、および同第5,707,975号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 イトラコナゾール 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−イトラコナゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したイトラコナゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのイトラコナゾールの送達方法もまた、提供される。イトラコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からイトラコナゾールを保護する方法もまた提供される。イトラコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からイトラコナゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ケトコナゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ケトコナゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してケトコナゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトコナゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からケトコナゾールが放出することを制御する方法であって、
ケトコナゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトコナゾールの送達方法。
[請求項22] ケトコナゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ケトコナゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ケトコナゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ケトコナゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにケトコナゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ケトコナゾールは、ブラストミセス症、カンジダ感染症(すなわち、口腔咽頭カンジダ症および/または食道カンジダ症、外陰腟カンジダ症、カンジダ尿症、慢性皮膚粘膜カンジダ症)、クロモミコーシス(黒色分芽菌症)、コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、およびパラコクシジオイデス症の治療に用いられる。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ケトコナゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ケトコナゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたケトコナゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ケトコナゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ケトコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、ケトコナゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのケトコナゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ケトコナゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトコナゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ケトコナゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトコナゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトコナゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ケトコナゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ケトコナゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ケトコナゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ケトコナゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ケトコナゾール 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ケトコナゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトコナゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトコナゾールの送達方法もまた、提供される。ケトコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からケトコナゾールを保護する方法もまた提供される。ケトコナゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からケトコナゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ケトプロフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ケトプロフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してケトプロフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトプロフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からケトプロフェンが放出することを制御する方法であって、
ケトプロフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトプロフェンの送達方法。
[請求項22] ケトプロフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ケトプロフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ケトプロフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ケトプロフェンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにケトプロフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ケトプロフェンは、関節炎および疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ケトプロフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ケトプロフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたケトプロフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ケトプロフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ケトプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、ケトプロフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのケトプロフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ケトプロフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトプロフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ケトプロフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトプロフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトプロフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ケトプロフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ケトプロフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ケトプロフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ケトプロフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ケトプロフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ケトプロフェンは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ケトプロフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトプロフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトプロフェンの送達方法もまた、提供される。ケトプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からケトプロフェンを保護する方法もまた提供される。ケトプロフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からケトプロフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトロラクと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ケトロラクが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ケトロラクが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してケトロラクを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトロラクを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からケトロラクが放出することを制御する方法であって、
ケトロラクを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトロラクと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトロラクの送達方法。
[請求項22] ケトロラクが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ケトロラクが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ケトロラクを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ケトロラク(ketorolac)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにケトロラクの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ケトロラクは、疼痛の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(+,−)−5−ベンゾイル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−1−カルボン酸である。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ケトロラク)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ケトロラクを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたケトロラクを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトロラクとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ケトロラクは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ケトロラクをポリペプチドに共有結合することを含む、ケトロラクを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのケトロラクの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ケトロラクは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトロラクは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ケトロラクは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトロラクは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトロラクは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ケトロラクをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ケトロラクおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ケトロラクを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ケトロラクの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ケトロラクは、優先権米国出願第704909号(1976)に基づいた、GB1554057号(1979)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したケトロラクを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ケトロラク 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ケトロラクは、カルボン酸基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ケトロラク共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトロラクとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトロラクとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトロラクの送達方法もまた、提供される。ケトロラクをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からケトロラクを保護する方法もまた提供される。ケトロラクをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からケトロラクを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトチフェンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ケトチフェンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ケトチフェンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してケトチフェンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ケトチフェンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からケトチフェンが放出することを制御する方法であって、
ケトチフェンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したケトチフェンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトチフェンの送達方法。
[請求項22] ケトチフェンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ケトチフェンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ケトチフェンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ケトチフェンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにケトチフェンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ケトチフェンは、アレルギー性結膜炎の治療に用いられる周知の薬剤である。
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ケトチフェン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ケトチフェンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたケトチフェンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトチフェンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ケトチフェンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ケトチフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、ケトチフェンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのケトチフェンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ケトチフェンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトチフェンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ケトチフェンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトチフェンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ケトチフェンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ケトチフェンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ケトチフェンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ケトチフェンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ケトチフェンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したケトチフェンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ケトチフェン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ケトチフェンは、ヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸基を介して、または、その代わりとしてアーティフィシャルリンカーを介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ケトチフェン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトチフェンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したケトチフェンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのケトチフェンの送達方法もまた、提供される。ケトチフェンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からケトチフェンを保護する方法もまた提供される。ケトチフェンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からケトチフェンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラベタロールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ラベタロールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ラベタロールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してラベタロールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ラベタロールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からラベタロールが放出することを制御する方法であって、
ラベタロールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラベタロールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラベタロールの送達方法。
[請求項22] ラベタロールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ラベタロールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ラベタロールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ラベタロールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにラベタロールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ラベタロールは、高血圧の治療に用いられる周知の薬剤である。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ラベタロール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ラベタロールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたラベタロールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラベタロールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ラベタロールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ラベタロールをポリペプチドに共有結合することを含む、ラベタロールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのラベタロールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ラベタロールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラベタロールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ラベタロールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラベタロールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラベタロールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ラベタロールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ラベタロールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ラベタロールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ラベタロールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したラベタロールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ラベタロール 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ラベタロールは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ラベタロール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラベタロールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラベタロールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラベタロールの送達方法もまた、提供される。ラベタロールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からラベタロールを保護する方法もまた提供される。ラベタロールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からラベタロールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ラミブジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ラミブジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してラミブジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ラミブジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からラミブジンが放出することを制御する方法であって、
ラミブジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラミブジンの送達方法。
[請求項22] ラミブジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ラミブジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ラミブジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ラミブジン(lamivudine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにラミブジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ラミブジンは、肝炎、ウイルス感染症およびHIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(2R−シス)−4−アミノ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]−2(1H)−ピリミジノンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ラミブジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ラミブジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたラミブジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ラミブジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ラミブジンをポリペプチドに共有結合することを含む、ラミブジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのラミブジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ラミブジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ラミブジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ラミブジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ラミブジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ラミブジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ラミブジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ラミブジンは、米国特許第5,047,407号および同第5,905,082号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したラミブジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ラミブジン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ラミブジンは、ヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ラミブジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラミブジンの送達方法もまた、提供される。ラミブジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からラミブジンを保護する方法もまた提供される。ラミブジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からラミブジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ラミブジンおよびジドブジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ラミブジンおよびジドブジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してラミブジンおよびジドブジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ラミブジンおよびジドブジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からラミブジンおよびジドブジンが放出することを制御する方法であって、
ラミブジンおよびジドブジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラミブジンおよびジドブジンの送達方法。
[請求項22] ラミブジンおよびジドブジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ラミブジンおよびジドブジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ラミブジンおよびジドブジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ラミブジンおよびジドブジンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにラミブジンおよびジドブジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ラミブジンは、肝炎、ウイルス感染症およびHIV感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、(2R−シス)−4−アミノ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]−2(1H)−ピリミジノンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
ジドブジンは、化学名3’−アジド−3’−デオキシチミジンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ラミブジンおよびジドブジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ラミブジンおよびジドブジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたラミブジンおよびジドブジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ラミブジンおよびジドブジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ラミブジンおよびジドブジンをポリペプチドに共有結合することを含む、ラミブジンおよびジドブジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのラミブジンおよびジドブジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ラミブジンおよびジドブジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンおよびジドブジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ラミブジンおよびジドブジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンおよびジドブジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラミブジンおよびジドブジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ラミブジンおよびジドブジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ラミブジンおよびジドブジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ラミブジンおよびジドブジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ラミブジンおよびジドブジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ラミブジンは、米国特許第5,047,407号および同第5,905,082号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。ジドブジンは、EP196185B号(1989)に論じられている。その組合せが、以下の米国特許(本願にその内容を援用する。)、第4,724,232号、同第4,818,538号、同第4,828,838号、同第4,833,130号、同第4,837,208号および同第6,113,920号に論じられている。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ラミブジンおよびジドブジン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ラミブジンおよびジドブジンは、各々のヒドロキシル基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ラミブジンおよびジドブジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラミブジンおよびジドブジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラミブジンおよびジドブジンの送達方法もまた、提供される。ラミブジンおよびジドブジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からラミブジンおよびジドブジンを保護する方法もまた提供される。ラミブジンおよびジドブジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からラミブジンおよびジドブジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラモトリジンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ラモトリジンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ラモトリジンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してラモトリジンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ラモトリジンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からラモトリジンが放出することを制御する方法であって、
ラモトリジンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したラモトリジンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラモトリジンの送達方法。
[請求項22] ラモトリジンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ラモトリジンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ラモトリジンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ラモトリジン(lamotrigine)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにラモトリジンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ラモトリジンは、癲癇、精神病およびうつ病の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン−3,5−ジアミンである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ラモトリジン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ラモトリジンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたラモトリジンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラモトリジンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ラモトリジンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ラモトリジンをポリペプチドに共有結合することを含む、ラモトリジンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのラモトリジンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ラモトリジンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラモトリジンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ラモトリジンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラモトリジンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ラモトリジンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ラモトリジンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ラモトリジンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ラモトリジンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ラモトリジンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ラモトリジンは、米国特許第4,602,017号および同第5,698,226号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したラモトリジンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ラモトリジン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ラモトリジンは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ラモトリジン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラモトリジンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したラモトリジンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのラモトリジンの送達方法もまた、提供される。ラモトリジンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からラモトリジンを保護する方法もまた提供される。ラモトリジンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からラモトリジンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ランソプラゾールが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ランソプラゾールが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してランソプラゾールを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ランソプラゾールを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からランソプラゾールが放出することを制御する方法であって、
ランソプラゾールを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのランソプラゾールの送達方法。
[請求項22] ランソプラゾールが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ランソプラゾールが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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ランソプラゾールを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ランソプラゾールに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにランソプラゾールの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ランソプラゾールは、潰瘍および細菌感染症の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ランソプラゾール)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ランソプラゾールを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたランソプラゾールを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ランソプラゾールは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ランソプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、ランソプラゾールを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのランソプラゾールの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ランソプラゾールは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾールは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ランソプラゾールは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾールは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾールは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ランソプラゾールをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ランソプラゾールおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ランソプラゾールを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ランソプラゾールの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
ランソプラゾールは、米国特許第4628098号、同第4689333号、同第5026560号、同第5045321号、同第5093132号および同第5433959号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ランソプラゾール 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ランソプラゾールは、アミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ランソプラゾール共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾールとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのランソプラゾールの送達方法もまた、提供される。ランソプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からランソプラゾールを保護する方法もまた提供される。ランソプラゾールをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からランソプラゾールを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンが放出することを制御する方法であって、
ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの送達方法。
[請求項22] ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンに共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、十二指腸潰瘍の治療に一緒に用いられる。ランソプラゾールの化学名は、2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールである。その構造は以下の通りである。
Figure 2010189419

アモキシシリンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419

クラリスロマイシンの構造は以下の通りである。
Figure 2010189419
本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンは、ヒドロキシルおよび/またはアミノ基を介してポリペプチドに共有結合される。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンの送達方法もまた、提供される。ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを保護する方法もまた提供される。ランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からランソプラゾール、アモキシシリンおよびクラリスロマイシンを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したレフルノミドと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] レフルノミドが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] レフルノミドが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してレフルノミドを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、レフルノミドを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からレフルノミドが放出することを制御する方法であって、
レフルノミドを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したレフルノミドと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのレフルノミドの送達方法。
[請求項22] レフルノミドが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] レフルノミドが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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レフルノミドを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、レフルノミド(leflunomide)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにレフルノミドの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
レフルノミドは、慢性関節リウマチの治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、5−メチル−N−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−イソキサゾールカルボキサミドである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(レフルノミド)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、レフルノミドを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたレフルノミドを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したレフルノミドとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
レフルノミドは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、レフルノミドをポリペプチドに共有結合することを含む、レフルノミドを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのレフルノミドの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、レフルノミドは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レフルノミドは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、レフルノミドは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レフルノミドは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レフルノミドは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)レフルノミドをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、レフルノミドおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、レフルノミドを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、レフルノミドの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
レフルノミドは、米国特許第5679709号の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したレフルノミドを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 レフルノミド 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−レフルノミド共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

要約
ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したレフルノミドとを含む組成物。ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したレフルノミドとを含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのレフルノミドの送達方法もまた、提供される。レフルノミドをポリペプチドに共有結合することを含む、分解からレフルノミドを保護する方法もまた提供される。レフルノミドをポリペプチドに共有結合することを含む組成物からレフルノミドを放出することを制御する方法もまた提供される。

特許請求の範囲
[請求項1] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したレソピトロンと、を含む薬剤組成物。
[請求項2] 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項3] 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項4] 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項5] 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項6] 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項7] 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項8] レソピトロンが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項9] マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項10] 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
[請求項11] 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項12] 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
[請求項13] 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項14] 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項15] 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項16] 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項17] レソピトロンが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項18] 前記ポリペプチドが、pHに依存してレソピトロンを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
[請求項19] 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、レソピトロンを分解から保護する方法。
[請求項20] ポリペプチドを含む組成物からレソピトロンが放出することを制御する方法であって、
レソピトロンを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
[請求項21] ポリペプチドと、
前記ポリペプチドに共有結合したレソピトロンと、
を含む組成物を患者に投与することを含む、患者へのレソピトロンの送達方法。
[請求項22] レソピトロンが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項23] レソピトロンが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項24] 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
[請求項25] 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
,
レソピトロンを含有する新規な薬剤化合物および同化合物の製造ならびに使用方法
発明の分野
本発明は、レソピトロン(lesopitron)に共有結合するのが好ましいポリペプチドを含む新規な薬剤化合物、ならびにレソピトロンの保護および投与方法に関する。CARRIERWAVETM分子類似体(CMA)と称される、この新規な化合物は、よく研究され、かつ製薬市場の周知の部門を占める、周知の有効な薬剤を超える利点を有し、その薬剤の有効性を損なわずにそれを前記薬剤の有用性を増強する担体化合物と組み合わせる利点を有する。
発明の背景
レソピトロンは、不安の治療に用いられる周知の薬剤である。その化学名は、2−[4−[4−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)ブチル]−1−ピペラジニル]ピリミジンジヒドロクロリドである。その構造は以下の通りである。
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本発明の新規な薬剤化合物は、以下の目標、すなわち、初期化合物の化学的安定性の増大、経口投与製品の放出プロフィールの変更、増強された消化または吸収、特定の組織/細胞タイプに標的を定めた送達、不在の場合の経口剤(oral dosage form)の供給、の1つ以上を達成するのに有用である。新規な薬剤化合物は、以下、すなわち、別の活性薬剤、補助剤、または抑性剤、の1つ以上を含有してもよい。
活性剤送達系はしばしば、生理活性剤(活性剤)の、適切な標的への有効な送達のために重要である。これらの系の重要性は、患者のコンプライアンスおよび活性剤の安定性を考慮に入れる場合、増大する。例えば、活性剤が注射または別の侵襲治療の代わりに経口投与される場合、患者のコンプライアンスを著しく増大させることが期待される。胃中での保存性または生存を長くするなど活性剤の安定性を増大させることは投薬の再現性(dosage reproducibility)を確実にし、恐らく、必要とされる投薬の数をも低減し、患者のコンプライアンスを向上させることができる。
経口投与された活性剤の吸収はしばしば、過酷な酸性の胃環境、GI路の強力な消化酵素、細胞膜の透過性、脂質二重層にわたる輸送によって妨げられる。レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)または胆汁酸などの補助剤を混入することにより、細胞膜の透過性を増強する。プロテノイドマイクロスフェア、リポソームまたは多糖を用いるマイクロカプセル封入活性剤は、活性剤の酵素分解を減じるのに有効であった。酵素抑制補助剤もまた、酵素分解を妨ぐために用いた。腸溶性コーティングを胃中の薬剤の防護剤として用いた。
活性剤の送達系もまた、活性剤の放出を制御する能力を提供する。例えば、ダイアゼパムをグルタミン酸およびアスパラギン酸のコポリマーと配合することにより、活性剤の持続性放出を可能にする。別の実施例として、乳酸およびグルタル酸のコポリマーを用いてヒト成長ホルモンの時間放出を提供する。広範囲の薬剤が、ジカルボン酸、改質アミノ酸または熱縮合アミノ酸のアミド中で活性剤をマイクロカプセル封入することによって持続性放出を提供するとされている。緩慢な放出を行う添加剤もまた、錠剤調合物中の多くの配列の活性剤と混合されてもよい。
これらの技術の各々が、高い安定性および時間放出の性質を活性剤物質に付与する。残念なことに、これらの技術はいくつかの欠点がある。しばしば、活性剤の混入は、マイクロカプセル封入母材中への拡散性に依存しており、それは定量的ではないことがあり、投薬の再現性を損なうことがある。さらに、カプセル薬は、活性剤の水溶解性に高度に依存している、母材からの拡散に左右される。逆に、水溶性マイクロスフェアが非常に膨張し、都合悪く、破裂して活性剤を放出することがあり、持続性放出に利用可能な活性剤がほとんどないことがある。さらに、いくつかの技術において、活性剤の放出に必要とされる分解プロセスの制御が信頼性に欠ける。例えば、腸溶性コート活性剤はpHに依存して活性剤を放出し、それ故に、放出の速度を制御するのが難しい。
以前は、活性剤を結合することができる側基としてポリペプチドのアミノ酸側鎖が使用されていた。これらの技術は典型的には、アミノ酸側基と活性剤との間のスペーサー基の使用を必要とする。医薬送達系のこのクラスのペプチド−医薬共役は、医薬の放出について血流中の酵素に依存し、それ故に、経口投与に用いられない。注射用または皮下に適用される(subcutaneous)薬剤の時間および標的放出には、ヒドロキシプロピルスペーサーを介した、ノルエチンドロン(norethindrone)の、ポリグルタミン酸のガンマカルボキシレートへの結合、ペプチドスペーサーを介した、窒素マスタードの、ポリグルタミンカルバミドへの結合、などがある。デキサメタゾンは、スペーサー基なしにポリアスパラギン酸のベータカルボキシレートに直接に共有結合している。このプロドラッグ調合物は、薬剤が大腸に存在する細菌性加水分解酵素によって放出される結腸特異的(colon−specific)医薬送達系として設計された。そして次に、放出されたデキサメタゾン活性剤は、大腸の疾患を治療するように標的に向けられるが、血流に吸収されることを意図されなかった。さらに別の技術は、医薬の共有結合の利点とリポソームの形成を組み合せるが、そこにおいて、活性成分がペプチドリンカーによって高規則化脂質膜(HARとして周知である)に結合されている。従って、活性成分をポリペプチド側基に結合するという概念と経口投与によって血流中にその標的を定めた送達と一体化する医薬送達系はこれまで報告されていない。
活性剤送達系の分子量、分子の大きさおよび粒度を制御することも重要である。可変的な分子量は、予想できない拡散速度および薬物速度論を有する。細菌酵素によって結腸内でのみ消化される、ナプロキセン結合デキストランの場合のように、高分子量担体は、ゆっくりと、または遅れて消化される。高分子量のマイクロスフェアは通常、水不安定活性成分において問題のある高水分率を有する。粒度は、HARの適用におけるように、注射用医薬において問題になるだけではなく、腸の刷子縁膜を通しての吸収が5ミクロン未満に制限される。
発明の概要
本発明は、活性剤(レソピトロン)の、ペプチドまたはアミノ酸のポリマーへの共有結合を提供する。本発明は、レソピトロンを本中で担体ペプチドと称される、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端に、またはアミノ酸側鎖に直接に共有結合することによって、上記の技術から区別される。特定の適用において、ポリペプチドは、立体配座の保護によって、主に胃中で、活性剤を安定化する。これらの適用において、活性剤の送達は、一部は、担体ペプチドの変性の速度論によって制御される。上部腸管に入った時、担体ペプチドのペプチド結合を選択的に加水分解することによって、固有酵素(indigenous enzyme)が、体による吸収のための活性成分を放出する。この酵素作用は、二次持続性放出機構を導入する。
あるいは、本発明は、ポリペプチドによってマイクロカプセル封入されたレソピトロンを含む薬剤組成物を提供する。
本発明は、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合したレソピトロンとを含む組成物を提供する。ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーであるのが好ましい。
レソピトロンは、ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合しているのが好ましい。好ましい実施態様において、活性剤は、カルボン酸であり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アミンであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのC末端に共有結合している。さらに別の好ましい実施態様において、活性剤は、アルコールであり、ポリペプチドのN末端に共有結合している。
本発明の組成物はまた、マイクロカプセル封入剤、補助剤および薬学上許容可能な賦形剤の1つ以上を含有することができる。マイクロカプセル封入剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩から選択されてもよい。補助剤が組成物に含有されるとき、補助剤は、腸の輸送担体(intestinal transporter)を活性化するのが好ましい。
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、静脈内製剤または経口懸濁剤の形であるのが好ましい。活性剤は、ポリペプチドを活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される。別の実施態様において、ポリペプチドは、pHに依存して組成物から活性剤を放出することができる。
本発明はまた、レソピトロンをポリペプチドに共有結合することを含む、レソピトロンを分解から保護する方法を提供する。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物を患者に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の動物である患者へのレソピトロンの送達方法もまた、提供される。好ましい実施態様において、レソピトロンは、酵素触媒作用による放出によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レソピトロンは、酵素触媒作用による放出の薬物速度論に基づいて時間に依存して放出される。別の好ましい実施態様において、前記組成物は、マイクロカプセル封入剤を含み、レソピトロンは、マイクロカプセル封入剤の溶解によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レソピトロンは、ポリペプチドの、pHに依存した変性(unfolding)によって組成物から放出される。別の好ましい実施態様において、レソピトロンは、持続性放出として組成物から放出される。さらに別の好ましい実施態様において、前記組成物は、ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、組成物からの補助剤の放出がポリペプチドによって制御される。補助剤は、活性成分の二相性放出のために担体ペプチド−医薬共役(carrier peptide−drug conjugate)中にマイクロカプセル封入されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと前記ポリペプチドに共有結合した活性剤とを含む組成物の調製方法を提供する。前記方法は、
(a)レソピトロンをアミノ酸の側鎖に結合して活性剤/アミノ酸錯体を形成する工程と、
(b)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を活性剤/アミノ酸錯体から形成する工程と、
(c)活性剤/アミノ酸錯体N−カルボキシ無水物(NCA)を重合させる工程と、を含む。
好ましい実施態様において、工程(a)および(b)は、第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される。工程(a)および(b)が第2の活性剤を有する工程(c)の前に繰り返される時、レソピトロンおよび第2の活性剤を工程(c)において共重合させることができる。別の好ましい実施態様において、アミノ酸はグルタミン酸であり、活性剤は、ポリペプチドを加水分解した時にダイマーとしてグルタミン酸から放出され、そこにおいて、活性剤が、同時に起こる分子内アミノ交換反応によってグルタミン酸から放出される。別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アスパラギン酸、アルギニン、アスパラギン、システイン、リシン、トレオニン、およびセリンからなる群から選択されたアミノ酸と取り替え、そこにおいて、活性剤をアミノ酸の側鎖に結合して、アミド、チオエステル、エステル、エーテル、ウレタン、カーボネート、無水物またはカルバメートを形成する。さらに別の好ましい実施態様において、グルタミン酸を、アミン、アルコール、スルフヒドリル、アミド、尿素、または酸官能価を含む側基を有する合成アミノ酸と取り替える。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例証的であるが、本発明を限定するものではないことは理解されるはずである。他の活性薬剤への本発明の一般的な適用は、2000年8月22日に出願された米国特許出願第09/642,820号(その内容を本願に援用する。)に記載されている。
発明の詳細な説明
本発明は、活性剤の送達にいくつかの利点を提供する。第一に、本発明は、レソピトロンを安定化し、胃中でのその消化を妨ぐことができる。さらに、薬理学的な効果を、レソピトロンの放出の遅延によって延長することができる。さらに、活性剤を組み合せて相乗効果を生み出すことができる。同様に、腸管内での活性剤の吸収を増強することができる。本発明はまた、活性剤を特定の作用部位に標的を定めた送達を可能にする。
レソピトロンは、EP382637A号(1990)の課題であり(本願にその内容を援用する。)、それは、その医薬の製造方法について記載している。
本発明の組成物は、ポリペプチドに共有結合したレソピトロンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)オリゴペプチド、(ii)20の天然アミノ酸の1つのホモポリマー、(iii)2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマー、(iv)合成アミノ酸のホモポリマー、(v)2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーまたは(vi)1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマー、である。
タンパク質、オリゴペプチドおよびポリペプチドは、一次、二次、および三次構造を有するアミノ酸のポリマーである。タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖の局在立体配座であり、螺旋、ひだシート、湾曲(turns)からなる。タンパク質のアミノ酸配列および鎖の立体配座の構造的制約が、分子の空間配置を決定する。二次構造の折りたたみおよび側鎖の空間配置は、三次構造を構成する。
タンパク質は、タンパク質および溶剤分子の隣接する原子間の対応する力学が原因で、折れたたむ。タンパク質の折りたたみ(folding)および変性(unfolding)の熱力学は、特定のモデルに依存するタンパク質の特定の状態の自由エネルギーによって規定される。タンパク質の折りたたみのプロセスは、とりわけ、疎水性コア中へのアミノ酸残基の充填を伴う。タンパク質核中のアミノ酸側鎖は、それらがアミノ酸結晶中で占めるのと同じ容積を占める。従って、折りたたまれたタンパク質の内部は、油滴よりも結晶の固体に似ており、そのように、タンパク質の安定性に寄与する力を決定するための最も良いモデルは、固体参照状態である。
タンパク質の折りたたみの熱力学に寄与する主要な力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用、配置エントロピーおよび疎水性効果である。タンパク質安定性を考えると、疎水性効果は、無極性基をタンパク質内部から除去し、それらを水に暴露するエネルギー結果である。アミノ酸加水分解のエネルギーを固体参照状態のタンパク質の変性と比較すると、疎水性効果が主要な力である。水素結合は、タンパク質の折りたたみプロセスの間に形成され、分子内結合が、水との水素結合を犠牲にして形成される。水分子は、充填疎水性タンパク質核から「押し出される」。これらすべての力が結合し、折りたたみタンパク質の全安定性に寄与し、そこにおいて、理想的な充填が生じる度合が、タンパク質の相対安定度の度合を決定する。最大充填の結果は、溶剤からの最大遮蔽を有する残基または疎水性コアの中心を作り出すことである。
親油性医薬がペプチドの疎水性コアに存在する可能性が高いので、前記医薬が放出される前に、ペプチドを変性するエネルギーを必要とする。前記変性プロセスは、アミノ酸を水和するかまたはタンパク質の融解温度を達成することによって疎水性効果を克服することを必要とする。水和熱はタンパク質の不安定化である。典型的には、タンパク質の折りたたみ状態は、変性状態よりも5〜15kcal/モルだけ有利である。それにもかかわらず、中性のpHおよび室温で変性するタンパク質は、化学試薬を必要とする。実際、タンパク質の部分的な変性はしばしば、不可逆的な化学的または立体配座プロセスの開始前に観察される。さらに、タンパク質の立体配座は概して、有害な化学反応の速度および程度を制御する。
タンパク質による活性剤の立体配座保護は、タンパク質の折りたたみ状態の安定性、および前記活性剤剤の分解に結びついた熱力学に依存する。前記活性剤の分解に必要な条件は、タンパク質の変性の条件と異なっているのがよい。
アミノ酸の選択は、所望の物理的性質に依存する。例えば、バルクの増大または親油性が望ましい場合、担体ポリペプチドは、以下に記載された表のアミノ酸中で濃縮される。他方において、極性アミノ酸を、ポリペプチドの親水性を増大させるように選択することができる。
アミノ酸のイオン化を、pH制御されたペプチドの変性のために選択することができる。アスパラギン酸、グルタミン酸およびチロシンは胃内で中性の電荷を保持するが、腸内に入る時にイオン化する。逆に、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのような、塩基性アミノ酸は胃内でイオン化し、アルカリ環境中で中性である。
芳香族残基間のπ−π相互作用、プロリンの付加によるペプチド鎖のねじれ、ジスルフィドの架橋および水素結合などの他の因子は全て、所与の適用のために最適なアミノ酸配列を選択するために用いることができる。線状配列の順序は、これらの相互作用を最大にするのに影響を及ぼすことがあり、ポリペプチドの二次および三次構造を誘導するのに重要である。
さらに、反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、セリン、トレオニンおよびシステイン)が、多数の活性剤または補助剤を同じ担体ペプチドに結合するために混入されてもよい。2つ以上の活性剤の間の相乗効果が望ましい場合、これは特に有用である。
上に記載したように、担体化合物の可変的な分子量は、活性剤放出の速度論に大きな効果を有することがある。結果として、低分子量の活性剤送達系が好ましい。本発明の利点は、ポリペプチドの鎖長および分子量を、所望の立体配座の保護レベルに依存して最適化することができるということである。この性質を、一次放出機構の速度論に相応して最適化すことができる。従って、本発明の別の利点は、長い放出時間が、担体ポリペプチドの分子量を増大させることによって得られるということである。本発明の別の著しい利点は、活性剤放出の速度論が主に、担体ペプチドと活性剤との間の鍵結合の酵素加水分解によって制御されるということである。
デキストランは、結腸特異的医薬送達のために医薬の共有結合の高分子担体として考えられている唯一の周知の多糖である。一般的に、全医薬−デキストラン共役の重量の1/10までしか医薬を配合できなかった。前述の通り、多糖は、主に結腸内で消化され、医薬の吸収は主に結腸に限られている。デキストランと比較したとき、本発明は、2つの主な利点を有する。第一に、ペプチドは、腸管腔(intestinal lumen)に見出されるかまたは刷子縁膜と結合したいくつかのアミノペプチダーゼのいずれか1つによって加水分解され、そのため、活性剤の放出および後続の吸収が空腸または回腸で起こる。第二に、担体分子の分子量を制御することができ、従って、活性剤の配合をも制御することができる。
実施例として、以下の表は、親油性アミノ酸(1個の水分子よりも少ない)および選択された鎮痛剤およびビタミンの分子量を記載する。


アミノ酸 分子量 活性剤 分子量
グリシン 57 アセトアミノフェン 151
アラニン 71 ビタミンB 169
(ピロキシジン)
バリン 99 ビタミンC 176
(アスコルビン酸)
ロイシン 113 アスピリン 180
イソロイシン 113 レソピトロン 206
フェニルアラニン 147 レチノイン酸 300
チロシン 163 ビタミンB 376
(リボフラビン)
ビタミンD 397
ビタミンE 431
(トコフェロール)
胃の中にわたる立体配座の保護が、オリゴペプチドへの共有結合の容易さに基づいて選択された、選択された活性剤に重要であるため、親油性アミノ酸が好ましい。18をアミノ酸の分子量から引き、ポリペプチド中へのそれらの縮合を考慮する。例えば、アスピリンに結合したグリシン(分子量=588)のデカマーは、750の全分子量を有し、アスピリンは、活性剤送達組成物の全重量の24%に相当するか、またはデキストランの最大医薬配合量の2倍を超える量に相当する。これは、デカグルタミン酸の側基に結合したそれらの活性剤について、N−またはC−末端の適用に対してのみであり、例えば、180の分子量を有する医薬はおそらく58%の配合量を有することがあるが、これは、全く実際的なわけではないことがある。
活性剤のアルコール、アミンまたはカルボン酸基が、オリゴペプチドまたはポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合していてもよい。結合位置は、ある程度官能基の選択に依存する。例えば、活性医薬がカルボン酸(例えば、アスピリン)である場合、オリゴペプチドのN末端が好ましい結合点である。活性剤がアミン(例えば、アンピシリン)である場合、C末端が、安定したペプチド結合活性剤を達成するために好ましい結合点である。C−およびN−末端の両実施例において、ペプチドは、本質的に、新規のペプチド結合を形成する1つのモノマー単位によって伸長される。活性剤がアルコールである場合、C−またはN−末端のどちらかが、安定した組成物を達成するために好ましい結合点である。アルコール、ノルエチンドロンがポリ(ヒドロキシプロピルグルタミン)に共有結合した上記の実施例におけるように、アルコールを、ホスゲンでアルキルクロロホルメートに変換することができる。次いで、本発明は、ペプチド担体のN末端とこの鍵中間体との反応に関する。活性成分を、腸のペプチダーゼによってペプチド担体から放出することができる。
アルコールをグルタミン酸のガンマカルボキシレートに選択的に結合することができ、次いで、この共役をペプチド担体のC末端に共有結合することができる。グルタミン酸−医薬共役はダイマーであると考えられるので、この生成物は、図4に示すように、グルタミン酸部分がペプチドと医薬との間でスペーサーの働きをするペプチド担体のC末端に2つのモノマー単位を付加する。鍵ペプチド結合の腸の酵素加水分解が、ペプチド担体からグルタミン酸−医薬部分を放出する。次に、グルタミン酸残基の、新たに形成された遊離アミンは、分子内アミノ交換反応を経て、それによって、図5に示すように、活性剤を放出し、同時にピログルタミン酸が形成される。あるいは、グルタミン酸−医薬ダイマーを、グルタミン酸N−カルボキシ無水物のガンマエステルに変換することができる。次に、この中間体を、図4に示すように、何れかの適切な開始剤を用いて、上に記載したように、重合させることができる。この重合の生成物は、多数の側基に結合した活性成分を有するポリグルタミン酸である。従って、担体ペプチドの最大医薬配合量を達成することができる。さらに、他のアミノ酸−NCAをガンマエステルグルタミン酸NCAと共重合させて特定の性質を医薬送達系に付与することができる。
本発明はまた、官能性側鎖を含有する他のポリペプチドに対して同じ作用機構を付与する方法を提供する。実施例には、ポリリシン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリセリン、ポリシステイン、ポリチロシン、ポリトレオニンおよびポリグルタミンなどがあるがそれらに限定されない。前記機構は、グルタミン酸−医薬ダイマーを末端とする、側基上のスペーサーまたはリンカーによってこれらのポリペプチドに翻訳できると好ましい。この担体ペプチド−医薬共役は、医薬部分の一次放出がペプチダーゼに依存し、エステラーゼに依存しないという事実によって先行技術から区別される。あるいは、活性剤を側基に直接に結合することができ、そこにおいて、消化管中の特定の他の固有酵素が放出に作用する。
活性剤は、周知の技術を用いて、ポリペプチドのN末端、C末端または側鎖に共有結合されてもよい。有機化合物の、ペプチドのN−末端タイプへの結合の実施例には、ナフチル酢酸の、LH−RHへの結合、クマリン酸の、オピオイドペプチドへの結合、1,3−ジアルキル−3−アシルトリアゼンの、テトラガストリンおよびペンタガストリンへの結合などがあるがそれらに制限されない。別の実施例として、ペプチド結合ビオチンおよびペプチド結合アクリジンを形成する周知の技術がある。
本発明において、活性剤は、リンカーを介してポリペプチドに共有結合される。このリンカーは、2〜6個の炭素および1個以上の官能基(アミン、アミド、アルコール、または酸など)を含有する小分子であってもよく、あるいは、アミノ酸または炭水化物のどちらかの短鎖からなってもよい。
ポリペプチド担体を、従来の技術を用いて調製することができる。好ましい技術は、アミノ酸N−カルボキシ無水物の混合物の共重合である。あるいは、特定の配列が望ましい場合、固体状態の自動化ペプチドシンセサイザを用いることができる。
安定剤を組成物に添加することにより、ポリペプチドをさらに安定化する可能性を有する。糖、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)および塩などの安定剤が、タンパク質の変性を妨ぐことが示された。本発明の別の実施態様において、活性剤の予備一次放出は、多糖、アミノ酸錯体、PEGまたは塩中で担体ポリペプチド−活性剤共役をマイクロカプセル封入することによって与えられる。
親水性化合物が特殊輸送担体によって腸の上皮を通して効率的に吸収されるという証拠がある。全膜輸送系は本質的に非対称的であり、因子に非対称的に応答する。従って、膜輸送系の励起が何らかの種類の特殊補助剤を必要とし、活性剤の局在化送達をもたらすことを予想することができる。輸送された基質(transported substrate)の物理的性質によって分類される7つの周知の腸の輸送系がある。それらには、アミノ酸、オリゴペプチド、ブドウ糖、モノカルボン酸、ホスフェート、胆汁酸、p−糖タンパク質輸送系があり、各々、それ自体に対応した輸送機構を有する。前記機構は、ヒドロニウムイオン、ナトリウムイオン、結合部位または他の因子に依存する場合がある。本発明はまた、活性剤の吸収を容易にする腸の上皮輸送系の機構に標的を定めることを可能にする。
本発明の実施態様において、前記組成物は、活性剤の生物学的利用率を増強するために1つ以上の補助剤を含有する。補助剤を添加することは、添加しなければ不十分に吸収される活性剤を用いるとき、特に好ましい。適した補助剤には、例えば、管腔中にアミノペプチダーゼ−Nの触媒領域を放出するために効力がある酵素であるパパイン、BBM中の酵素を活性化するグリコレコグナイザ、およびペプチドに結合されてペプチドの吸収を増強する胆汁酸、などがある。
好ましくは、得られたペプチド−レソピトロン共役を、適した賦形剤を用いて錠剤の中に調合し、湿潤造粒するか、または乾燥圧縮することができる。
本発明の組成物は、本質的に、酸およびアミンからのアミドの形成であり、以下の実施例によって調製することができる。
酸/N−末端結合
酸生物活性剤を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミンペプチド担体で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(OPC)または透析を用いて精製した。
アミン/C−末端結合
ペプチド担体を、窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却することができる。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、アミン生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
アルコール/N−末端結合
以下の実施例において、アルコールとトリホスゲンとを配合することにより、クロロホルメートを製造し、それは、ペプチドのN−末端と反応した時、カルバメートを製造する。これによって、アルコール生物活性剤を、窒素下、乾燥DMF中でトリホスゲンを用いて処理することができる。次に、適切に保護されたペプチド担体をゆっくり添加し、前記溶液を数時間、室温で攪拌した。次いで、生成物をエーテル中に沈殿させる。未精製生成物を適切に脱保護し、GPCを用いて精製する。
他の溶剤、活性化剤、助触媒および塩基を用いることができる。他の溶剤の実施例には、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどのエーテルまたはクロロホルムなどの塩素化溶剤などがある。他の活性化剤の実施例には、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは塩化チオニルなどがある。別の助触媒の実施例は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。塩基の実施例には、ピロリジノピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどがある。
γ−アルキルグルタメートの調製
30より多い異なったγ−アルキルグルタメートがあり、それらのいずれか1つは、選り抜きの医薬アルコールに適している場合がある。例えば、グルタミン酸、アルコールおよび濃塩酸の懸濁液を調製し、数時間、加熱することができる。γ−アルキルグルタメート生成物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、乾燥させ、熱水から再結晶化させた。
γ−アルキルグルタメート/C−末端結合
ペプチド担体を窒素下でDMF中に溶解し、0℃に冷却した。次に、前記溶液をジイソプロピルカルボジイミドおよびヒドロキシベンゾトリアゾールで処理し、その後に、γ−アルキルグルタメート生物活性剤で処理することができる。次いで、反応物を室温で数時間、撹拌し、尿素副生成物を濾過して除去し、生成物をエーテル中に沈殿させ、GPCまたは透析を用いて精製した。
γ−アルキルグルタメート−NCAの調製
γ−アルキルグルタメートを乾燥THF中で懸濁することができ、そこにおいて、トリホスゲンを添加し、混合物が均一になるまで、混合物を窒素雰囲気下で還流した。前記溶液を、ヘプタン中に流し込んでNCA生成物を沈殿させることができ、それを濾過し、乾燥させ、適した溶剤から再結晶化させる。
ポリ[γ−アルキルグルタメート]の調製
γ−アルキルグルタメート−NCAを乾燥DMF中に溶解することができ、そこにおいて、前記溶液が粘性になるまで(通常、一晩)、第一アミンの触媒量を前記溶液に添加することができる。前記溶液を水中に流し込み、濾過することによって、生成物を溶液から単離することができる。生成物を、GPCまたは透析を用いて精製することができる。
特定の実施態様に対して上記に具体的に説明し記載したにもかかわらず、本発明は、示した詳細に限定されることを意図しない。むしろ、様々な改良を、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲および等価物の範囲内で詳細に行うことができる。

Claims (25)

  1. ポリペプチドと、前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルと、を含む薬剤組成物。
  2. 前記ポリペプチドがオリゴペプチドである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  3. 前記ポリペプチドが、天然アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  4. 前記ポリペプチドが、2つ以上の天然アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  5. 前記ポリペプチドが、合成アミノ酸のホモポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  6. 前記ポリペプチドが、2つ以上の合成アミノ酸のヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  7. 前記ポリペプチドが、1つ以上の天然アミノ酸と1つ以上の合成アミノ酸とのヘテロポリマーである、請求項1に記載の薬剤組成物。
  8. 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドの側鎖、N末端またはC末端に共有結合している、請求項1に記載の薬剤組成物。
  9. マイクロカプセル封入剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
  10. 前記マイクロカプセル封入剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸、糖および塩からなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤組成物。
  11. 補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
  12. 前記補助剤が腸の輸送担体を活性化する、請求項11に記載の薬剤組成物。
  13. 薬学上許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
  14. 摂取可能な錠剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
  15. 静脈内製剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
  16. 経口懸濁剤の形である、請求項1に記載の薬剤組成物。
  17. 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドを前記活性剤の周りに折りたたむことによって立体配座で保護される、請求項1に記載の薬剤組成物。
  18. 前記ポリペプチドが、pHに依存して硫酸アバカビルを前記薬剤組成物から放出することができる、請求項1に記載の薬剤組成物。
  19. 前記活性剤をポリペプチドに共有結合することを含む、硫酸アバカビルを分解から保護する方法。
  20. ポリペプチドを含む組成物から硫酸アバカビルが放出することを制御する方法であって、
    硫酸アバカビルを前記ポリペプチドに共有結合することを含む、方法。
  21. ポリペプチドと、前記ポリペプチドに共有結合した硫酸アバカビルと、を含む組成物を患者に投与することを含む、患者への硫酸アバカビルの送達方法。
  22. 硫酸アバカビルが、酵素触媒作用による放出によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
  23. 硫酸アバカビルが、前記ポリペプチドの、pHに依存した変性によって前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
  24. 前記活性剤が、持続性放出として前記組成物から放出される、請求項21に記載の方法。
  25. 前記組成物が、前記ポリペプチドに共有結合した補助剤をさらに含み、前記補助剤の、前記組成物からの放出が前記ポリペプチドによって制御される、請求項21に記載の方法。
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