JP2010186927A - 有機発光素子及びディスプレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】発光効率が良好な有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極2と陰極5と、陽極2と陰極5とに挟持され少なくとも正孔注入層3を有する有機化合物層と、から構成され、正孔注入層3に、下記一般式(1)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物が含まれることを特徴とする、有機発光素子。
Figure 2010186927

(式(1)において、R1乃至R4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。また互いに隣接するR1が結合して環状構造を形成してもよい。nは、1以上8以下の整数を表す。)
【選択図】図1

Description

本発明は、有機発光素子及びディスプレイに関する。
有機発光素子において、発光効率、発光色の色純度や寿命等の性能を向上することを目的として、数多くの材料開発や素子開発が行なわれている。
そしてこれまでに電荷注入性及び電荷輸送特性を向上させるために、多数の機能性化合物が提案されてきた。中でも、チオフェン構造を有する化合物は、以前より、正孔注入層用材料として提案され、有機発光素子に使用されてきた。
ここでチオフェン構造を有する化合物として、チオフェン骨格及びイミダゾール骨格を有する化合物(以下、チオフェン−イミダゾール化合物という)が合成され、評価がなされている(非特許文献1乃至3参照)。しかし、これら非特許文献1乃至3においては当該化合物の有機発光素子への応用例は示されていない。
一方、特許文献1にはチオフェン構造を有するヘテロ五員環化合物が示されているが、チオフェン骨格及びイミダゾール骨格を有する化合物ではなく、またこれら化合物を正孔注入層に含めた応用例は示されていない。
また特許文献2にはイミダゾール化合物を有機発光素子の発光材料として使用した例が示されている。しかし、このイミダゾール化合物を正孔注入層に含めた例は示されていない。
以上のように、チオフェン−イミダゾール化合物を有機発光素子、特に、正孔注入層に含ませて使用した先行技術はない。また有機発光素子の更なる特性改良のために新規な正孔注入材料を開発することは重要である。
特開2001−335776号公報 特開2007−243101号公報
本発明の目的は、発光効率が良好な有機発光素子を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、正孔注入層に特定の構造を有するチオフェン−イミダゾール化合物が含まれる有機発光素子が、優れた正孔注入特性を有することを見出した。
即ち、本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、
該陽極と該陰極とに挟持され少なくとも正孔注入層を有する有機化合物層と、から構成され、
該正孔注入層に、下記一般式(1)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物が含まれることを特徴とする、有機発光素子。
Figure 2010186927
(式(1)において、R1乃至R4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。また互いに隣接するR1が結合して環状構造を形成してもよい。nは、1以上8以下の整数を表す。)
本発明によれば、発光効率が良好な有機発光素子を提供することができる。
本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。 本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。 本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。 本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。 本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。 電極層からプロトン互変異性体を含む層へ正電荷が移動する様子を示す模式図である。 本発明の有機発光素子と駆動手段とを備える表示装置の一構成例を模式的に示す平面模式図である。 図7の表示装置に配置されている1つの画素を構成する回路を示す回路図である。 本発明の表示装置の一実施形態を示す断面模式図である。 図7の表示装置をパネルモジュール化した構成例を示す模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極とに挟持され少なくとも正孔注入層を有する有機化合物層と、から構成される。
以下、図面を参照しながら本発明の有機発光素子について説明する。
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に、陽極2、正孔注入層3、電子注入層4及び陰極5がこの順に積層されている。図1の有機発光素子10は、正孔注入性及び電子注入性のいずれかを備える発光性の有機化合物と、電子注入性のみ又は正孔注入性のみを備える有機化合物とを組み合わせて使用する場合に有用である。また、有機発光素子10は、正孔注入層3又は電子注入層4が発光層を兼ねている。
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、図1の有機発光素子10において、正孔注入層3と電子注入層4との間に発光層6を挿入したものである。図2の有機発光素子20は、キャリア注入と発光の機能を分離したものであり、正孔注入性、電子注入性、発光性の各特性を有した有機化合物を適宜組み合わせて使用することができる。このため、極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の有機化合物が使用することができるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層6にキャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて、有機発光素子20の発光効率の向上を図ることも可能になる。
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子20において、発光層6と電子注入層4との間に電子輸送層7を挿入したものである。電子輸送層7を挿入することにより電子輸送性が改善されるため低電圧化に効果的である。
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子40は、図3の有機発光素子30において、正孔注入層3と発光層6との間に正孔輸送層8を挿入したものである。正孔輸送層8を挿入することにより正孔輸送性が改善されるため低電圧化により効果的である。
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図2の有機発光素子20において、発光層6と電子注入層4との間に正孔/エキシトンブロッキング層9を挿入したものである。正孔/エキシトンブロッキング層9を設けることにより正孔あるいは励起子が発光層6から陰極5側に抜けることが抑制されるため、発光効率の向上に効果的な構成である。
ただし、図1乃至図5で示される素子構成は、あくまでも基本的な素子構成を示すものであり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極層と有機化合物層との界面に絶縁性層、接着層あるいは干渉層を設ける、正孔注入層3又は正孔輸送層8がイオン化ポテンシャルの異なる二つの層から構成される等多様な層構成をとることができる。
本発明の有機発光素子は、正孔注入層3に、下記一般式(1)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物が含まれる。
Figure 2010186927
式(1)において、R1乃至R4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。
1乃至R4で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
1乃至R4で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、m−ターフェニル基、p−ターフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基等が挙げられる。
1乃至R4で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
1乃至R4で表されるアラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアラルキル基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等のアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基、m−ターフェニル基、p−ターフェニル基等の芳香族基、フルオレニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フルオランテニル基、ピレニル基等の縮合多環芳香族基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
また化合物の安定性、溶解性、成膜性の改良を目的として、互いに隣接するR1が結合して、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ジオキサン環、ジオキソラン環等の環状構造を形成してもよい。
一方、R2及びR3は、好ましくは、アルキル基又はアリール基である。R2及びR3の位置にアルキル基又はアリール基を有することにより、化合物の安定性が良好となる。R2及びR3は、より好ましくは、アリール基である。R4は、好ましくは、水素原子である。R4が水素原子である場合は、プロトン互変異性体の生成が起こり正孔注入特性をより良好にすることができる。
式(1)において、nは、1以上8以下の整数を表す。より良好な正孔注入特性をもつために、好ましくは、2以上8以下の整数である。
式(1)に示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、チオフェン骨格を有しているので、正孔注入特性が良好である。
式(1)に示されるチオフェン−イミダゾール化合物のうち、好ましくは、下記一般式(2)で示される化合物である。
Figure 2010186927
式(2)において、R11及びR14は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。R11及びR14で表されるアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアラルキル基、並びに上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアラルキル基がさらに有してもよい置換基の具体例は、式(1)中のR1乃至R4で表される置換基の具体例と同様である。
また化合物の安定性、溶解性、成膜性の改良を目的として、互いに隣接するR11が結合して、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ジオキサン環、ジオキソラン環等の環状構造を形成してもよい。
一方、R14は、好ましくは、水素原子である。R14が水素原子である場合は、プロトン互変異性体の生成が起こり正孔注入特性をより良好にすることができる。
式(2)において、R15及びR16は、それぞれ置換あるいは無置換のアルキル基又は置換あるいは無置換のアルコキシ基を表す。
15及びR16で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数が1以上8以下のアルキル基である。炭素数が1以上8以下のアルキル基とすることにより化合物自体の溶媒可溶性及び成膜性が良好になるからである。
15及びR16で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。好ましくは、炭素数が1以上8以下のアルコキシ基である。炭素数が1以上8以下のアルコキシ基とすることにより化合物自体の溶媒可溶性及び成膜性が良好になるからである。
上記アルキル基及びアルコキシ基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基、m−ターフェニル基、p−ターフェニル基等の芳香族基、フルオレニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フルオランテニル基、ピレニル基等の縮合多環芳香族基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
式(2)において、p及びqは、それぞれ1乃至4の整数を表す。
式(2)において、nは、1以上8以下の整数を表す。より良好な正孔注入特性をもつために、好ましくは、2以上8以下の整数である。
式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、非特許文献1等に示される公知の合成法を組み合わせて合成することができる。
ところで式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、その構造的特徴から、有機発光素子の、特に、正孔注入材料への応用が可能である。
ここで式(1)及び(2)のチオフェン−イミダゾール化合物の構造的特徴として、下記に示すようにプロトン互変異性体の生成が可能であること、プロトン互変異性体の生成に伴い共鳴構造の拡張が起こることが考えられる。
Figure 2010186927
上記のようにプロトン互変異性化が発生すると、分子内又は分子間において比較的速い速度でプロトンが移動し、遷移状態においてイオン性構造を形成することが考えられる。このとき分子内及び分子間において電荷の偏りが発生する。このプロトン互変異性化が、電極層上に積層された有機化合物層内で発生すると、電極層からプロトン互変異性体を含む層への電荷の注入の障壁を低くすることができるので、正孔注入性を向上させることができる。
図6は、電極層からプロトン互変異性体を含む層へ正電荷が移動する様子を示す模式図である。
図6において、αH+は、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物がプロトン互変異性化する際に瞬間的に遊離又は移動するプロトンを表す。また図6において、α-は、プロトンの遊離に伴い瞬間的に負電荷を有しているチオフェン−イミダゾール化合物の陰イオンを表す。尚、図6において、電極層はITO電極である。
式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、上述したプロトン互変異性化により、分子内に含まれるプロトンの解離が比較的容易に行われる。このときプロトンの解離により生じたイオン性の構造物は負電荷を有するため、当該構造物が電極層から注入される正孔を引きつける作用をもたらす。従って、電荷注入性を向上させることができる。
また式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、チオフェン骨格やイミダゾール骨格といった高い極性を有する構造を分子内に備えている。このため、特に、高極性溶媒に対する親和性が良好である。このことは正孔注入層を塗布法で成膜する際の利点の一つとなる。
特に、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物を含む正孔注入層上に、さらに正孔輸送層、発光層等を塗布法により形成する場合、材料の極性が各層で最適になるように使い分けることが望ましい。材料の極性の最適化を行うことにより、各層を塗布法で形成する際に、下地層を構成する材料の溶け出しを抑制することができると共に、各層の塗り分けが容易になるからである。例えば、正孔注入層の構成材料(チオフェン−イミダゾール化合物)をアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒等の高極性溶媒に溶解したものを塗布成膜する。そして正孔注入層上に設けられる層(発光層等)については、層を構成する材料をトルエン、p−キシレン等の低極性溶媒で溶解したものを塗布成膜する。このとき正孔注入層の構成材料は低極性溶媒には難溶であり、正孔層上に設けられる層を構成する材料は高極性溶媒には難溶である。このため、塗布法による多積層化が容易となる。
次に、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物の具体例を以下に挙げる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
Figure 2010186927
本発明の有機発光素子において、正孔注入層は、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物のみで構成されていてもよい。また正孔注入層は、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物と、芳香族アミン類等のドナー性化合物、導電性高分子等とが混合されている層であってもよい。式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物を他の化合物と混合して使用する場合、その混合比は、正孔注入層の全体量に対して0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
本発明の有機発光素子は、構成材料として、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物の他に、公知の正孔輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物等も一緒に使用することもできる。
正孔輸送性化合物として、トリアリールアミン化合物、カルバゾール化合物、テトラアリールシラン化合物、エナミン化合物、トリフェニレン化合物等が挙げられる。
発光性化合物として、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、ピレン化合物、イリジウム錯体、白金錯体、アルミキノリノール錯体等が挙げられる。
電子輸送性化合物として、オキサジアゾール化合物、シロール化合物、ピリジン化合物、フェナントロリン化合物、トリアジン化合物、トリアゾール化合物、アルミキノリノール錯体等が挙げられる。
陽極2の構成材料としてはできるだけ仕事関数が大きなものがよい。例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体又は、これらの金属単体を複数組み合わせた合金が挙げられる。また、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の導電性金属酸化物を使用することもできる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。
一方、陰極5の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体、これら金属単体を複数組み合わせた合金、これら金属単体の塩等を使用することができる。また、酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。陰極は一層で構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。
本発明の有機発光素子に使用される基板1は、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、合成ポリマーシート等の透明性基板が使用される。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
尚、作製した素子に対して酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の高分子膜又は光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
本発明の有機発光素子は、最終的に保護層で覆われていることが好ましい。保護層の素材としては水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属単体、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、SiNx、SiOxy等の窒化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも一種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
次に、本発明の有機発光素子の製造方法について説明する。式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物を含有する正孔注入層は、真空蒸着法又は塗布法により成膜することができる。他の有機化合物層についても同様である。
ここで塗布法とは、適当な溶剤に成膜する材料を溶解させることで塗布液を調製し、この塗布液を目的部位に塗布することにより薄膜を形成する方法である。塗布液を塗布する方法としては、スピンコート法、スリットコーター法、印刷法、インクジェット法、デイスペンス法、スプレー法等が挙げられる。
式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物は、有機溶媒、特に、極性溶媒への溶解性に優れると共に、成膜性も優れているため、湿式塗布法で成膜すると、成膜された薄膜は良好な成膜性を示す。
式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物が含まれる正孔注入層の膜厚は、10μmより薄く、好ましくは、0.5μm以下であり、より好ましくは、5nm乃至500nmである。
本発明の有機発光素子を構成する正孔注入層以外の有機化合物層として、例えば、正孔輸送層、発光層、正孔/エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を設けてもよい。これらの層の膜厚は、それぞれ5μmより薄く、好ましくは、1μm以下であり、より好ましくは、0.5nm以上500nm以下である。
また塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することも可能である。
上記結着樹脂としては広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えばポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。また、上述した樹脂はホモポリマーであってもよいし共重合体ポリマーであってもよい。さらに使用する結着性樹脂は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合したものを使用してもよい。
保護層を設ける場合、当該保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
次に、本発明の有機発光素子を製造する際に使用される塗料組成物(塗布液)について説明する。この塗料組成物は、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物を少なくとも一種を含有する。この塗料組成物を用いると、有機発光素子の有機化合物層、特に、電荷注入層又は電荷輸送層を塗布法により形成することが可能となるので、比較的安価で大面積の有機発光素子を容易に作製できる。
当該塗料組成物に含まれる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が挙げられる。
また上記塗料組成物を調製する際に、式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物の他に、公知の正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物等を含んでいてもよい。この場合、塗料組成物に含まれる式(1)及び(2)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物の含有量は、塗料組成物全体に対して、好ましくは、0.05質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは、0.1質量%以上5質量%である。
本発明の有機発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率や色純度を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・電極層(ITO層)・有機化合物層の屈折率を制御する、基板・電極層・有機化合物層の膜厚を制御すること等を行う。こうすることにより、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能になる。また、開口率を向上させる目的で陽極2側から発光を取り出す、いわゆる、トップエミッション方式であってもよいし、光学干渉によって色純度を調整するキャビティー構造を使用してもよい。
次に、本発明の表示装置について説明する。本発明の表示装置は、本発明の有機発光素子を備えるものである。以下、図面を参照しながら、アクティブマトリクス方式の表示装置を例にとって、本発明の表示装置を詳細に説明する。
図7は、本発明の有機発光素子と駆動手段とを備える画像表示装置の一構成例を模式的に示す平面模式図である。図7の表示装置70には、走査信号ドライバー71、情報信号ドライバー72、電流供給源73が配置され、それぞれゲート選択線G、情報信号線I又は電流供給線Cに接続される。ゲート選択線Gと情報信号線Iとの交点には図9に示す画素回路が配置される。走査信号ドライバー71は、ゲート選択線G1、G2、G3・・・Gnを順次選択し、これに同期して情報信号ドライバー72から画像信号が印加される。
次に、画素の動作について説明する。図8は、図7の表示装置に配置されている1つの画素を構成する回路を示す回路図である。図8の画素回路80においては、ゲート選択線Gに選択信号が印加されると、第一の薄膜トランジスタ(TFT1)81がONになり、コンデンサー(Cadd)82に画像信号が供給され、第二の薄膜トランジスタ(TFT2)83のゲート電圧を決定する。有機発光素子84には第二の薄膜トランジスタ83のゲート電圧に応じて電流供給線Cより電流が供給される。第二の薄膜トランジスタ83のゲート電位は、第一の薄膜トランジスタ81が次に走査選択されるまでコンデンサー82に保持されるため、有機発光素子84には次の走査が行われるまで電流が流れつづける。これにより1フレーム期間中、常に、有機発光素子84を発光させることが可能となる。
図9は、本発明の表示装置の一実施形態を示す断面模式図である。図9において、表示装置900の製造工程の一例を示しながら、表示装置900の構造の詳細を以下に説明する。ガラス等の基板901上に、基板901の上部に作られる部材(TFT又は有機化合物層)を保護するための防湿膜902がコートされる。この防湿膜902の構成材料であるコート材には、酸化ケイ素又は酸化ケイ素と窒化ケイ素との複合体等が用いられる。次に、スパッタリングによりCr等の金属を成膜し、所定の回路形状にパターニングしてゲート電極903を形成する。続いて、酸化シリコン等をプラズマCVD法又は触媒化学気相成長法(cat−CVD法)等により成膜し、パターニングしてゲート絶縁膜904を形成する。次に、プラズマCVD法等により(場合によっては290℃以上の温度でアニールして)シリコン膜を成膜し、回路形状に従ってパターニングして半導体層905を形成する。
さらに、上記半導体層905上にドレイン電極906とソース電極907とをそれぞれ設けてTFT素子を作製することにより、図8に示される画素回路80を形成する。次に、該TFT素子の上部に絶縁膜908を形成した後、コンタクトホール(スルーホール)909を介して、金属からなる有機発光素子用の下部電極(陽極910)をソース電極907に電気接続するように形成する。
この陽極910上に多層あるいは単層の有機化合物層911と、陰極912とを順次積層することで表示装置を得ることができる。尚、大気中の水分、酸素等から有機発光素子を保護するために、好ましくは、第一の保護層913や第二の保護層914を設ける。本発明の縮合多環芳香族化合物を使用する表示装置を駆動することにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
尚、本発明の表示装置は、スイッチング素子に特に限定はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型等でも容易に応用することができる。
本発明の表示装置は、例えば、テレビやPC用の表示装置、あるいは画像を表示する部分を有する機器であれば如何なる実施形態も問わない。例えば、本発明の表示装置が搭載される携帯型表示装置であってもよい。あるいはデジタルカメラ等の電子撮像装置や携帯電話の表示部に本発明の表示装置を使用することができる。
図10は、図7の表示装置をパネルモジュール化した構成例を示す模式図である。図10のパネルモジュール100は、図7に示される表示装置70に加え、インターフェースドライバ101と、ゲートドライバ102と、ソースドライバ103と、を筐体104で一体化したものである。尚、図10のパネルモジュール100において、図示はしていないが、接続端子等の外部機器との接続に必要な部品(インターフェース)が筐体104に内蔵されている。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1]
チオフェン−2,5−ジカルボキシアルデヒドの合成
Figure 2010186927
反応容器に以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン:2.78g(24mmol)
チオフェン:1.68g(20mmol)
ヘキサン:6ml
次に、室温下で反応混合物を撹拌しながら、n−ブチルリチウムヘキサン溶液16.6ml(24mmol)を反応混合物中に加えたところ、白色の懸濁が生じた(以下、この反応溶液を白色懸濁液という。)。次に、この白色懸濁液を40℃から還流温度に昇温させることで反応を完結させた。次に、白色懸濁液中にTHF24mlを加えた後、白色懸濁液を−40℃まで冷却した。次に、DMF4.18ml(54mmol)を10分間かけて白色懸濁液中に添加した。次に、白色懸濁液の温度を徐々に室温まで昇温させた後、室温下で30分間白色懸濁液の攪拌を続けた。次に、30%塩酸40gと蒸留水340mlとを混合して希塩酸を調製した後、この希塩酸を−20℃乃至−5℃の範囲に冷却し強く撹拌させた状態で、当該白色懸濁液を希塩酸中に注ぎいれた。次に、水層のpHが6になるまで飽和NaHCO3溶液をゆっくり加えた。次に、有機層を分液・抽出した。このとき水層についてはEt2O10mlを加えた分液操作を7回行うことで水層に含まれている有機成分を抽出した。次に、抽出した有機層を合わせて硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物となる結晶を1.76g(粗収率63%)得た。尚、この結晶について1H−NMR測定を行ったところ純度が良好であることがわかった。次に、この結晶の一部についてTHF/Et2O混合溶液(混合比=4:1)を用いて再結晶を行ったところ白色結晶を得た。
この白色結晶について融点、1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
mp:110−114℃
1H−NMR(200MHz,CDCl3);δ 10.02(s,2H),7.84(s,2H)
MS(EI):m/z=140(M+
[合成例2]
例示化合物No.4の合成
Figure 2010186927
反応容器に以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
チオフェン−2,5−ジカルボキシアルデヒド:180mg(1.3mmol)
ベンジル:567mg(2.6mmol)
酢酸アンモニウム:3.2g(40mmol)
酢酸:26ml
次に、反応溶液を還流させながら16時間攪拌した。次に、反応溶液を氷水中に注いだときに生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄し、次いで飽和炭酸ナトリウム溶液、水で順次洗浄を行ったところ緑色/茶色の固体を0.622g得た。次に、この緑色/茶色の固体を、1−ブタノールで再結晶することにより、例示化合物No.4を淡緑色固体として0.408g(収率60%)得た。
得られた結晶について融点、1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
mp:331−332℃
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6);δ 12.85(s,2H),7.64(s,2H),7.53−7.41(m,12H),7.38(t,2H),7.30(t,4H),7.22(t,2H)
MS(ESI):m/z=519[M−H]-,521[M+H]+
[合成例3]
例示化合物No.4の合成(別法)
予めマグネチックスターラー回転子が仕込まれている10mlのマイクロウエーブ反応装置のバイアル中に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
ベンジル:105mg(0.5mmol)
チオフェン−2,5−ジカルボキシアルデヒド:35mg(0.25mmol)
酢酸アンモニウム:385mg(5.0mmol)
酢酸:3ml
次に、バイオテージ社製マイクロウエーブ反応装置(製品名:イニシエーター)を用いて、反応溶液を180℃に加熱しこの温度で5分間反応を行った。次に、反応容器を40℃まで急冷した。次に、この反応溶液を0℃に冷却した濃アンモニア水中に滴下した後、生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄した後空気中で乾燥することで、暗黄色固体の粗生成物を122mg得た。次に、この粗生成物を1−ブタノールで再結晶を行うことにより、例示化合物No.4の高純度サンプルを66mg(収率51%)得た。
[合成例4]
例示化合物No.5の合成
Figure 2010186927
予めマグネチックスターラー回転子が仕込まれている10mlのマイクロウエーブ反応装置のバイアル中に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
1−フェニル−1,2−プロパンジオン:75mg(0.5mmol)
チオフェン−2,5−ジカルボキシアルデヒド:35mg(0.25mmol)
酢酸アンモニウム:385mg(5.0mmol)
酢酸:3ml
次に、合成例3で使用したマイクロウエーブ反応装置を用いて、反応溶液を180℃に加熱しこの温度で5分間反応を行い、次に、反応容器を40℃まで急冷した。次に、この反応溶液を0℃に冷却した濃アンモニア水中に滴下した後、生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄した後空気中で乾燥することで、黄緑色固体の粗生成物を103mg得た。次に、この粗生成物をジクロロメタン/メタノール混合溶媒(混合比=1:1)で再結晶を行うことにより、例示化合物No.5の高純度サンプルを42mg(収率42%)得た。
得られた結晶について1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,Acetone−d6);δ 11.55(s,2H),7.2−7.8(m,12H),2.45(s,2H)
MS(ESI):m/z=395[M−H]-,397[M+H]+
HRMS:m/z=396.1403(relative intensity),396.1403(calculated for C24204S)
[合成例5]
例示化合物No.13の合成
Figure 2010186927
予めマグネチックスターラー回転子が仕込まれている30mlのマイクロウエーブ反応装置のバイアル中に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
4,4’−ジメトキシベンジル:1.35g(5mmol)
チオフェン−2,5−ジカルボキシアルデヒド:0.35g(2.5mmol)
酢酸アンモニウム:3.85g(50mmol)
酢酸:20ml
次に、合成例3で使用したマイクロウエーブ反応装置を用いて、反応溶液を180℃に加熱しこの温度で5分間反応を行った。次に、反応容器を40℃まで急冷した。次に、この反応溶液(茶褐色懸濁液)を0℃に冷却した濃アンモニア水中に滴下した後、生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄した後空気中で乾燥することで、暗黄色固体の粗生成物を1.58g(2.46mmol,粗収率98.6%)得た。次に、この粗生成物のうち100mgを取り出し、熱n−ブタノールに溶解させた後濾過した。次に、この濾液を減圧濃縮した後、5%メタノール/ジクロロメタンで処理することで得られた固体成分を濾取することにより、例示化合物No.13を淡黄緑色の固体として20mg得た。得られた固体は、そのまま次の工程(合成例6)で使用した。
また得られた結晶について融点、1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
Mp:180−190℃(分解)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6);δ 12.65(s,2H),7.6(s,2H),7.3−7.5(m,8H),7.0(d,4H),6.85(d,4H),3.75(d,12H)
MS(ESI):[M+H]+=641,[M−H]-=639
[合成例6]
5,5’−ジホルミル−2,2’−ビチオフェンの合成
Figure 2010186927
反応容器に以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン
脱水エーテル:100ml
次に、反応容器をドライアイス/アセトンバスに浸して反応混合物を−70℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.4Mのn−ヘキサン溶液)7.07mlを滴下した。次に、−70℃の温度条件を保ちながら反応混合物を5分間攪拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド3mlを添加した。次に、−70℃の温度条件を保ちながら反応混合物をさらに60分間攪拌した後、ドライアイス/アセトンバスを取り除き、反応混合物(白色懸濁液)を徐々に室温まで戻した。次に、塩酸20gと水200mlとを混合して希塩酸を調製した。次に、この希塩酸を0℃に冷却し激しく撹拌しながら、反応混合物を注ぎ入れた。反応混合物の注ぎ入れが完了してから30分後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を水層のpHが6になるまで加えた。次に、有機層を分液・抽出した。このとき水層についてはEt2O50mlを加えた分液操作を3回行うことで水層に含まれている有機成分を抽出した。抽出した有機層を合わせて硫酸マグネシウムで脱水を行った後、溶媒を減圧留去することにより粗生成物を得た。次に、この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により、5,5’−ジホルミル−2,2’−ビチオフェンの結晶を得た。得られた固体は、そのまま次の工程(合成例7、8)で使用した。
また得られた結晶について1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3);δ 9.92(s,2H),7.72(d,2H),7.42(d,2H)
LRMS(EI),m/z=222(M+
HRMS:m/z=221.9801(relative intensity),221.9804(calculated for C10622
[合成例7]
例示化合物No.18の合成
Figure 2010186927
予めマグネチックスターラー回転子が仕込まれている10mlのマイクロウエーブ反応装置のバイアル中に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
ベンジル:84mg(0.4mmol)
5,5’−ジホルミル−2,2’−ビチオフェン:45mg(0.2mmol)
酢酸アンモニウム:308mg(4.0mmol)
酢酸:3ml
次に、合成例3で使用したマイクロウエーブ反応装置を用いて、反応溶液を180℃に加熱しこの温度で5分間反応を行った。次に、反応容器を40℃まで急冷した。次に、この反応溶液を0℃に冷却した濃アンモニア水中に滴下した後、生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄した後空気中で乾燥することで、黄緑色固体の粗生成物を100mg(0.166mmol,粗収率83%)得た。次に、この粗生成物のうち40mgを取り出し、5%メタノール/ジクロロメタンで再結晶を行うことで得られた固体成分を濾取することにより、例示化合物No.18の高純度サンプルを得た。
得られた結晶について融点、1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
Mp:366−368℃(with decomposition)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6);δ 12.85(s,2H),7.9(m,2H),7.8−7.2(m,22H)
MS(ESI):[M+H]+=603,[M−H]-=601.
[合成例8]
例示化合物No.21の合成
Figure 2010186927
予めマグネチックスターラー回転子が仕込まれている10mlのマイクロウエーブ反応装置のバイアル中に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
4,4’−ジメトキシベンジル:108mg(0.4mmol)
5,5’−ジホルミル−2,2’−ビチオフェン:45mg(0.2mmol)
酢酸アンモニウム:308mg(4.0mmol)
酢酸:3ml
次に、合成例3で使用したマイクロウエーブ反応装置を用いて、反応溶液を180℃に加熱しこの温度で5分間反応を行った。次に、反応容器を40℃まで急冷した。次に、この反応溶液(赤茶色溶液)を0℃に冷却した濃アンモニア水中に滴下した後、生成した固体成分を濾取した。次に、この固体成分を水で洗浄した後空気中で乾燥することで、黄緑色固体の粗生成物を143mg得た。次に、この粗生成物のうち40mgを取り出し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:CH3OH/CH2Cl2、CH3OHの混合比を5%乃至60%の範囲内で適宜調整)で精製を行うことにより、精製された例示化合物No.21を23mg得た。
得られた結晶について融点、1H−NMR及びMSを測定した。結果を以下に示す。
Mp:>360℃(with decomposition)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ 12.7(s,2H),7.6(d,4H),7.3−7.5(m,8H),7.0(d,4H),6.85(d,4H),3.75(d,12H)
MS(EI):m/z=722(M+
HRMS:m/z=722.2034(relative intensity),722.2016(calculated for C4234442
上記合成例で得られたチオフェン−イミダゾール化合物のHOMO、LUMOのエネルギーレベルについて、以下に示すように評価した。結果を表1に示す。
(1)HOMOエネルギーレベル
Powerlab ML160型測定器を用いて、電気化学的測定法により測定した。測定は、具体的には、窒素置換DMF中で、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(0.1M)を電解質として使用して実施した。一方、ボルタモグラムは、ガラス状炭素(2mm径)作用電極、白金ワイヤー対極及び銀ワイヤー参照電極を用いた3電極系で測定した。測定は、具体的には、50mV/sの掃引速度で実施した。
(2)光学的バンドギャップ
UV−Visスペクトルは、DMF溶液中で測定した。そして記録されたスペクトルの吸収端の波長から光学的バンドギャップを算出した。尚、この光学的バンドギャップは、HOMO−LUMO間のエネルギーギャップに相当する。
(3)LUMOエネルギーレベル
下記に示される計算式により計算した。
[LUMOエネルギーレベル]=[HOMOエネルギーレベル]+[光学的バンドギャップ]
Figure 2010186927
表1より、陽極の構成材料がITOである場合に、陽極に接する正孔注入層として最適なHOMOレベルを有しており、塗布法による成膜特性が特に良好である材料は例示化合物No.13及びNo.21であった。そこで、例示化合物No.13又はNo.21を構成材料として含む発光素子を作製した。
<実施例1>
図2に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
ガラス基板(基板1)上に、スパッタ法により、酸化錫インジウム(ITO)を成膜し陽極2を形成した。このとき陽極2の膜厚を100nmとした。次に、陽極2が形成されている基板を洗剤、蒸留水で順次洗浄した。次に、この基板をアセトン、イソプロパノールで順次超音波洗浄を行った後、UV−オゾン洗浄を10分間行った。以上の工程で処理した基板を透明導電性支持基板として以下の工程に使用した。
次に、例示化合物No.13とメチルエチルケトンとを混合し、濃度5mg/mlのメチルエチルケトン溶液を調製した後、0.2μmのフィルターでろ過することにより第一の塗布液を作製した。
次に、スピンコーティング法により陽極2上に正孔注入層3となる薄膜を成膜した。具体的には、先程作製した第一の塗布液を陽極2上に滴下し、透明導電性支持基板を回転数1000rpmで回転することにより薄膜を作製した。次に、透明導電性支持基板を、145℃で10分間加熱することにより正孔注入層3を形成した。このとき正孔注入層3の膜厚は40nmであった。また、この成膜工程により例示化合物No.13の成膜性が良好であることが示された。
次に、下記に示す試薬、溶媒を混合し第二の塗布液を調製した。尚、塗布液を調製する際には、下記に示す試薬、溶媒を混合した混合溶液を0.2μmのフィルターでろ過する処理を行った。
下記に示される正孔輸送性発光ポリマーP1:2mg
Figure 2010186927
下記に示される電子輸送性発光ポリマーP2:8mg
Figure 2010186927
クロロベンゼン:1ml
次に、スピンコーティング法により正孔注入層3上に発光層6となる薄膜を製膜した。具体的には、先程作製した第二の塗布液を正孔注入層3上に滴下し、透明導電性支持基板を回転数1000rpmで回転することにより発光層3となる薄膜を作製した。このとき発光層6の膜厚は73nmであった。
次に、真空蒸着法により、発光層6上に、フッ化リチウムを成膜し電子注入層4を形成した。このとき電子輸送層4の膜厚を1.0nmとした。次に、真空蒸着法により、電子輸送層4上に、アルミニウムを成膜し陰極5を形成した。このとき陰極5の膜厚を100nmとした。以上により有機発光素子を得た。
得られた素子について発光特性を評価した。その結果、発光開始電圧は6Vであり、最大輝度は27cd/m2であった。尚、発光開始電圧とは、輝度1cd/m2の発光を観測した時の電圧をいうものである。
<実施例2>
図2に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
まず実施例1と同様の方法で透明導電性支持基板を作製した。
次に、例示化合物No.21とメチルエチルケトンとを混合し、濃度5mg/mlのメチルエチルケトン溶液を調製した後、0.2μmのフィルターでろ過することにより第一の塗布液を作製した。
次に、スピンコーティング法により陽極2上に正孔注入層3となる薄膜を成膜した。具体的には、先程作製した第一の塗布液を陽極2上に滴下し、透明導電性支持基板を回転数1000rpmで回転することにより薄膜を作製した。次に、透明導電性支持基板を、145℃で10分間加熱することにより正孔注入層3を形成した。このとき正孔注入層3の膜厚は27nmであった。また、この成膜工程により例示化合物No.21の成膜性が良好であることが示された。
次に、下記に示す試薬、溶媒を混合し第二の塗布液を調製した。尚、塗布液を調製する際には、下記に示す試薬、溶媒を混合した混合溶液を0.2μmのフィルターでろ過する処理を行った。
正孔輸送性発光ポリマーP1:2mg
電子輸送性発光ポリマーP2:8mg
p−キシレン:1ml
次に、スピンコーティング法により正孔注入層3上に発光層6となる薄膜を製膜した。具体的には、先程作製した第二の塗布液を正孔注入層3上に滴下し、透明導電性支持基板を回転数1000rpmで回転することにより発光層6となる薄膜を作製した。このとき発光層6の膜厚は68nmであった。
次に、真空蒸着法により、発光層6上に、フッ化リチウムを成膜し電子注入層4を形成した。このとき電子輸送層4の膜厚を1.0nmとした。次に、真空蒸着法により、電子輸送層4上に、アルミニウムを成膜し陰極5を形成した。このとき陰極5の膜厚を100nmとした。以上により有機発光素子を得た。
得られた素子について、実施例1と同様の方法で評価した。その結果、発光開始電圧は5Vであり、最大輝度は281cd/m2であった。
以上の説明より、本発明の有機発光素子は表示装置、ディスプレイ等の構成デバイスとして利用することができる。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 電子注入層
5 陰極
6 発光層
7 電子輸送層
8 正孔輸送層
9 正孔/エキシトンブロッキング層
10,20,30,40,50,84 有機発光素子
70,900 表示装置
71 走査信号ドライバー
72 情報信号ドライバー
73 電流供給源
74,80 画素回路
81 第一の薄膜トランジスタ(TFT)
82 コンデンサー(Cadd
83 第二の薄膜トランジスタ(TFT)
901 基板
902 防湿層
903 ゲート電極
904 ゲート絶縁膜
905 半導体膜
906 ドレイン電極
907 ソース電極
908 TFT素子
909 絶縁膜
910 コンタクトホール(スルーホール)
911 陽極
912 有機層
913 陰極
914 第一の保護層
915 第二の保護層
100 パネルモジュール
101 インターフェースドライバ
102 ケースドライバ
103 ソースドライバ
104 筐体

Claims (7)

  1. 陽極と陰極と、
    該陽極と該陰極とに挟持され少なくとも正孔注入層を有する有機化合物層と、から構成され、
    該正孔注入層に、下記一般式(1)で示されるチオフェン−イミダゾール化合物が含まれることを特徴とする、有機発光素子。
    Figure 2010186927
    (式(1)において、R1乃至R4は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。また互いに隣接するR1が結合して環状構造を形成してもよい。nは、1以上8以下の整数を表す。)
  2. 前記チオフェン−イミダゾール化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
    Figure 2010186927
    (式(2)において、R11及びR14は、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルコキシ基又は置換あるいは無置換のアラルキル基を表す。また互いに隣接するR11が結合して環状構造を形成してもよい。R15及びR16は、それぞれ置換あるいは無置換のアルキル基又は置換あるいは無置換のアルコキシ基を表す。p及びqは、それぞれ1乃至4の整数を表す。nは、1以上8以下の整数を表す。)
  3. 前記nが2以上8以下の整数であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機発光素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光素子と、該有機発光素子を駆動するための駆動手段とを有することを特徴とする、表示装置。
  5. 請求項4に記載の表示装置と、外部機器とのインターフェースとを備えることを特徴とする、ディスプレイ。
  6. 請求項5に記載されるディスプレイを搭載することを特徴とする、携帯型表示装置。
  7. 請求項5に記載されるディスプレイを搭載することを特徴とする、電子撮像装置。
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