次に、この発明の実施の形態について、電力会社の配電設備による環境負荷を評価する場合を例として説明する。
(実施の形態1)
この実施の形態による設備の環境負荷評価システム(以下、単に「環境負荷評価システム」という)を図1に示す。図1の環境負荷評価システムは、評価装置10と、評価装置10によるアクセスが可能な記憶装置20とを備えている。
記憶装置20は、電力会社に必要とするデータや、環境負荷評価に必要とする各種のデータを、データベースとして記憶している。
記憶装置20が記憶するデータベースであり電力会社に必要とするデータベースには、需要家に請求する電気料金を記録した電気料金データベース(DB)、設備データベース(DB)、消費電力量実績データベース(DB)がある。電気料金データベースには、需要家が電力会社と契約した際の契約番号や、需要家が使用した月単位の電力量、この電力量に対応する電気料金などが記録されている。設備データベースには、電力会社が管理する電柱や電線の太さや種類のようなデータが、配電設備の設置地点などと共に記録されている。消費電力量実績データベースには、日別、月別、年別、地域別などで実際に消費された電力量が記録されている。
環境負荷評価に必要とする各種のデータを記録したデータベースには、消費電力量実績データベース(DB)がある。消費電力量実績データベースは日毎のデータであり、その日の最高気温と消費電力量とが記録されている。この消費電力量実績データベースの一例を図2に示す。この消費電力量実績データベースでは、年度別の各月における日毎の最高気温と消費電力量とが、配電系統毎に記録されている。なお、最高気温は、気象庁などの気象予測機関から得られ、かつ、各配電設備の設置点から至近の気象予測機関で得られたデータである。また、各配電系統の日毎の消費電力量は、電柱での使用電力量と損出電力との合計を表すデータであり、電気料金データベースや設備データベースから得られる。
記憶装置20が記憶するデータには、CO2排出原単位データベース(DB)がある。CO2排出原単位データベースには、1kWhの使用電力量に対して、発生したCO2の量であるCO2排出原単位が年度毎に記録されている。CO2排出原単位データベースの一例を図3に示す。このCO2排出原単位データベースには、該当する年度の使用電力量と、CO2排出量とが記録され、さらに、これらの値を用いて算出されたCO2排出原単位が記録されている。CO2排出原単位は、各年度に、電力会社が公表しているデータである。
評価装置10は、設備の環境負荷評価を行うコンピュータであり、表示部11、操作部12、処理部13、記憶部14およびインターフェース15を備えている。
表示部11は、設備のリスク評価に必要とするデータや、リスク評価の結果等を表示するLCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置である。操作部12は、マウスやキーボードなどのような、担当者によって操作される装置である。操作部12の操作により、リスク評価を開始するための指示などが入力される。インターフェース15は、処理部13を記憶装置20に接続して、記憶装置20に対するアクセスを可能にする。記憶部14は、コンピュータに必要とする各種のプログラムや、設備のリスク評価を行うためのプログラムをあらかじめ記憶している。
処理部13は、記憶部14に記憶されている各種のプログラムを実行する。処理部13が実行するプログラムには、CO2算出処理がある。排出換算量算出処理は、配電設備が供給する電力量に相当するCO2の量(以下、「CO2排出換算量」という)を、各種の最新のデータを基にして算出する。
ここで、処理部13による配電設備のCO2排出換算量を求める算出原理について説明する。CO2排出換算量は、消費電力量(kWh)とCO2排出原単位(kg―CO2/kWh)とから算出される。この実施の形態では、過去の電力使用量から、ベイズの定理を用いて、将来のCO2排出換算量を予測する。処理部13により、CO2排出換算量は、配電設備の各電柱単位に算出され、電柱の区間単位あるいは配電線のフィーダー単位などで得られる。消費電力量は、日単位、月単位、年度単位などの期間で算出され、需要家の使用電力量と配電設備とで消費される損失電力量の合計で求められる。
例えば、1日当たりの使用電力量および損失電力量が、図4に示すように、フィーダーFAの各電柱に対して得られている。ここで、「〇幹1号」等の各電柱の使用電力量は、その電柱から供給を受けている、すべての需要家の使用電力量の合計値で、電気料金データベースなどを用いて算出される。また、各電柱の損失電力量は、電柱間に敷設された電線の抵抗で消費される電力量を表し、設備データベースなどから算出される。図4に示す配電設備の場合、「〇幹1号」の、1日当たりの消費電力量S1は、使用電力量をW1とし、損失電力量をL1とすると、
により求められる。
次に、CO2排出原単位(kg―CO2/kWh)が、例えば、値αとして得られているものとする。CO2排出原単位は、消費電力量1キロワット時当たりのCO2排出量を表し、発電方法、使用燃料などによって決まり、各電力会社が実績を公表している値である。「〇幹1号」の、1日当たりCO2排出換算量H1は、
により求められる。また、「〇号」〜「△号」までといった、電柱の区間単位で、各電柱の排出換算量を合計することにより、区間の排出換算量を求めたり、各電柱の排出換算量を合計することにより、フィーダー単位の排出換算量を求めることができる。
ところで、最新の実績データがある場合、処理部13は、ベイズの定理を用いて、将来のCO2排出換算量を予測する。消費電力量の増減に影響を与える要因には、積算月、平日/休日別、気温などの外的要因や、需要家の新増設、廃止等による契約電力の増減などがある。
そこで、例えば、各年度について、電柱番号毎に、過去の消費電力量実績データが、図5のように記録されているものとする。データ中の最高気温は、該当電柱が設置されている至近の気象官署で観測された気温を用い、気象庁ホームページなどから、日最高気温、月最高気温および年度最高気温を得ることができる。なお、CO2排出換算量の予測に際して最高気温を用いているが、その他の気象データ、例えば、最低気温、平均気温、湿度などを用いてもよい。また、データ中の消費電力量は、前述の方法により算出され、日単位、月単位、年度単位の期間で合計される。
過去の消費電力量実績データでは、データ区分(曜日、気温、消費電力量区分)毎に発生確率を求め、ベイズの定理を用いることにより、最新のデータから発生確率を更新し、将来の排出換算量を予測することが可能である。ベイズの定理とは、ある事象が発生する確率(事前確率)を、調査、実験等の結果から得られる情報に基づいて、事前確率を修正(事後確率)していく方法を示す定理である。二つの事象A、Bについて、事象Bを条件とする事象Aの確率は、
によって算出される。この式で、
と定義し、事象Bによって事象Aの事前確率が事後確率に修正される。
つまり、処理部13は、CO2排出換算量を求める算出原理によって、ベイズの定理を用いて発生確率を更新し、最新の発生確率を用いて消費電力量を算出し、この消費電力量を用いてCO2排出換算量を算出する。以下では、CO2排出換算量の算出について詳しく説明する。
処理部13が行うCO2算出処理を図6〜図9に示す。処理部13は、図6に示すCO2算出処理を開始すると、評価対象である配電系統や、CO2の排出量を換算する期間などを入力するための入力画面を表示する(ステップS1)。ステップS1で期間などが入力されると、処理部13は、図7に示すCO2の排出換算量算出処理を行う(ステップS2)。処理部13は、排出換算量算出処理を開始すると、ステップS1で入力された期間に該当する消費電力量実績データを、記憶装置20に記憶されている消費電力量実績データベースから読み出す(ステップSA1)。ステップSA1で読み出される消費電力量実績データの具体例を図10に示す。このデータは、ステップS1で入力された配電系統の「○幹1号」におけるデータであり、かつ、ステップS1で入力された期間「○年度4月」、「△年度4月」、「□年度4月」の消費電力量実績を表している。
ステップSA1の後、処理部13は、発生確率を求めるための、図8に示すデータ範囲設定処理を行い(ステップSA2)、ステップSA1で読み出した各データを振り分ける。
処理部13は、データ範囲設定処理を開始すると、消費電力量実績データから平日分のデータ(以下、「平日データ」という)を選択する(ステップSB1)。ステップSB1の後、処理部13は、選択した平日データを用いて、最高気温の最大値、最小値および平均値を算出する(ステップSB2)。そして、処理部13は、最高気温の平均値を境界として、最高気温の各データを、
a.最高気温の最小値以上〜最高気温の平均値以下
b.最高気温の平均値超過〜最高気温の最大値
の二つの区分に分ける(ステップSB3)。
ステップSB3が終了すると、処理部13は、1つの区分を選択する(ステップSB4)。この後、処理部13は、選択した区分の各データを用いて、消費電力量の最大値、最小値および平均値を算出する(ステップSB5)。そして、処理部13は、消費電力量の平均値を境界として、消費電力量の各データを、
c.消費電力量の最小値以上〜消費電力量の平均値以下
d.消費電力量の平均値超過〜消費電力量の最大値
の二つの区分に分ける(ステップSB6)。
ステップSB6が終了すると、処理部13は、ステップSB3で分けた区分中で、未処理の区分があるかどうかを判断する(ステップSB7)。ステップSB7で未処理の区分(上記bの区分)があると、処理部13は、未処理の区分を選択して、処理をステップSB5に戻す。もし、ステップSB7で未処理の区分がなければ、処理部13は、未処理の休日データがあるかどうかを判断する(ステップSB8)。なお、休日データは、土曜日、日曜日、祝日および振替休日における消費電力量のデータである。ステップSB8で未処理の休日データがあると、処理部13は、この休日データを選択して、処理をステップSB2に戻す。また、ステップSB8で休日データの処理が終了していると、処理部13は、データ範囲設定処理を終了して、ステップSA2を終える。
こうしたデータ範囲設定処理により、具体例(図10)に示す消費電力量実績データを用いる場合、図11に示すデータ範囲のデータが得られる。平日データについて、最高気温の最小値は10.06℃、平均値は19.06℃、最大値は27.50℃であるので、最高気温の「最小値10.06℃以上〜平均値19.06℃以下」と最高気温の「平均値19.06℃超過〜最大値27.05℃以下」の区分に2分割する。さらに、例えば最高気温が、「最小値10.06℃以上〜平均値19.06℃以下」のデータについて、消費電力量の最小値は67.0、平均値は85.7、最大値は110.0となり、このデータを「最小値以上67.0〜平均値85.7以下」、「平均値85.7超過〜最大値110.0」の区分に2分割する。なお、図11では、平日データであって、「平均値19.06℃超過〜最大値27.05℃以下」の消費電力量のデータ範囲と、休日データであって、「平均値20.14℃超過〜最大値28.90℃以下」の消費電力量のデータ範囲との記載を省略している。
このように、ステップSA2によれば、最高気温のデータ範囲は4通りに区分され、消費電力量のデータ範囲は8通りに区分される。
ステップSA2が終了すると、処理部13は、このステップで設定した各データ範囲に対して、ステップSA1で読み出した消費電力量実績データの各データを振り分けて、発生頻度を算出する(ステップSA3)。具体例(図10)の場合、平日データの個数が61個であり、休日データの個数が29個である。これらのデータを最高気温のデータ範囲で分け、さらに、最高気温の各データ範囲にあるデータを、消費電力量のデータ範囲で分けたものを図12に示す。例えば、最高気温のデータ範囲が10.06℃以上19.06℃以下である場合、61個の平日データのうち30個がこのデータ範囲に該当する。
ステップSA3が終了すると、処理部13は、発生頻度から発生確率を算出する(ステップSA4)。ステップSA4で、処理部13は、例えば平日データの場合、平日データの個数と、最高気温の各データ範囲に該当するデータの個数との比により、発生確率を算出する。具体例の場合、図13に示すように、例えばデータ範囲が最高気温の「最小値10.06℃以上〜平均値19.06℃以下」であるとき、平日データの個数が61個であり、「最小値10.06℃以上〜平均値19.06℃以下」に該当するデータの個数が30個であるので、処理部13は、これらの比30/61により、発生確率0.49を算出する。
ステップSA4が終了すると、処理部13は消費電力量のデータ範囲について、各データ範囲に該当する消費電力量の平均値を算出する(ステップSA5)。具体例の場合、消費電力量の平均値は図14に示すとおりになる。
ステップSA5が終了すると、処理部13は、ステップS1で入力された所定期間の日消費電力量の予測値を算出する(ステップSA6)。ステップSA6で、処理部13は、最大期待値利得の原理により、所定期間の日消費電力量の予測値を算出する。ステップSA6で用いられる最大期待利得の原理は、行動決定を行う際に用いられる方法であって、各行動に伴う結果利得の期待値を計算し、その値が最大となるような行動を選択する手法である(参考文献:森田優三・久次智雄著「新統計概論 改訂版」日本評論社)。つまり、これは、ある事象毎の利得にその発生確率を乗じ、その総和によって求められる。
具体例の場合、「〇幹1号 4月 平日」の日消費電力量予測値を、処理部13は次の式を用いて算出する。
また、「〇幹1号 4月 休日」の日消費電力量予測値を、処理部13は次の式を用いて算出する。
ステップSA6が終了すると、処理部13は、記憶装置20から最新のCO2排出原単位を読み出し(ステップSA7)、CO2の日排出換算量予測値を算出する(ステップSA8)。具体的には、数5式および数6式の算出結果を用いる場合、処理部13は、次の式を用いて、「〇幹1号 4月 平日」の日排出換算量予測値を算出する。
また、処理部13は、次の式を用いて、「〇幹1号 4月 休日」の日排出換算量予測値を算出する。
こうして、処理部13は、ステップSA6〜SA8により、電柱番号毎に、かつ、平日および休日別に、1日当たりのCO2排出換算量を予測する。なお、CO2排出原単位は、平日・休日ともに同一データを使用する。
ステップSA8が終了すると、処理部13はステップS2の排出換算量算出処理を終了する。排出換算量算出処理が終了すると、処理部13は、消費電力量実績データベースを参照して、最新の実績データの有無を判断する(ステップS3)。最新の実績データがある場合、処理部13は、このデータを読み出し(ステップS4)、図9に示す更新処理を行う(ステップS5)。この更新処理で、処理部13は、ベイズの定理を用い、最新の実績データで消費電力量を更新する。以下では、4月の日消費電力量予測値を求める場合を算出例として説明する。処理部13は、
過去の4月実績において、「〇幹1号」の、平日最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」の事象をA
最新の4月実績において、「〇幹1号」の、平日最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」の事象をB
とする。つまり、過去の4月実績で平日最高気温が「10.60以上19.06以下」の範囲、消費電力量が「67.0以上85.7以下」の範囲を所定のデータ範囲としている。また、事象Aおよび事象Bは過去実績でもある。
処理部13は、更新処理を開始すると、最高気温の区分から、1つのデータ範囲を選択する(ステップSC1)。具体例の場合には、処理部13は、平日の最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」のデータ範囲を選択する。この後、処理部13は、選択したデータ範囲での、事象の事前確率を算出する(ステップSC2)。具体例の場合には、処理部13は、平日の最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」である場合の発生確率を、次の式を用いて算出する。
ステップSSC1が終了すると、処理部13は、ステップSC1で選択したデータ範囲を除く、残りのデータ範囲での、事象の事前確率を算出する(ステップSC3)。具体例の場合には、処理部13は、平日の最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「85.7超過110.0以下」である場合の発生確率を次の式を用いて算出する。
この後、処理部13は、選択したデータ範囲について、過去実績のうち、最新実績による事象の確率を算出する(ステップSC4)。具体例の場合には、処理部13は、過去実績で、平日の最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」のうち、最新実績で、最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」となる確率を次の式を用いて算出する。
この後、処理部13は、残りのデータ範囲について、過去実績のうち、最新実績による事象の確率を算出する(ステップSC5)。具体例の場合には、処理部13は、過去実績で、平日の最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「85.7超過110.0以下」のうち、最新実績で、最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量「67.0以上85.7以下」となる確率を次の式を用いて算出する。
ステップSC5が終了すると、処理部13は、先に述べたベイズの定理、つまり次の式を用い、
により事前確率を修正した確率、つまり事後確率を算出する(ステップSC6)。具体例の場合には、処理部13は、次の式を用いて、事後確率を算出する。
なお、最新実績の最大値および最小値が、データ範囲を逸脱する場合は、適宜、データ範囲を変更する。例えば、過去実績の消費電力量のデータ範囲を、「67.0以上85.7以下」と「85.7超過110.0以下」に区分しているが、最新実績が、最小値65.0、最大値120.0などとなる場合には、データ範囲を、「65.0上85.7以下」と「85.7超過120.0以下」に変更して、発生確率を計算する。
ステップSC6が終了すると、処理部13は、最高気温の欄に未選択のデータ範囲があるかどうかを判断する(ステップSC7)。未選択のデータ範囲があると、処理部13は、最高気温の欄から、残りのデータ範囲を選択して処理をステップS2に戻す。また、ステップSC7で未選択の区分がなければ、処理部13は更新処理を終了し、ステップS5を終える。
こうした更新処理により、例えば図15に示すように、平日の更新された発生確率(事後確率)を得ることができる。例えば、最高気温が、「10.60以上19.06以下」、消費電力量が、「67.0以上85.7以下」のデータ範囲では、値0.57の発生確率(事前確率)が値0.54の発生確率(事後確率)に更新されている。なお、図15では、休日のデータは省略している。
ステップS5が終了すると、処理部13は、更新された発生確率を用いて、平日および休日の日消費電力予測値を算出する(ステップS6)。具体例の場合には、処理部13は、例えば平日の日消費電力量予測値を、以下のように算出する。
ステップS6が終了すると、処理部13は、記憶装置20のCO2排出原単位データベースから最新のCO2排出原単位を読み出す(ステップS7)。この後、処理部13は、読み出したCO2排出原単位を用いて、平日および休日の日排出換算量予測値を算出する(ステップS8)。具体例の場合には、処理部13は、例えば平日の日排出換算量予測値を、以下のように算出する。
ステップS8が終了するか、また、ステップS3で最新の実績データがないと、処理部13は、CO2算出処理を終了する。
次にこの実施の形態の環境負荷評価システムを利用した環境負荷評価方法について説明する。担当者は、操作部12を操作して、環境負荷評価システムを立ち上げると、評価装置10は、CO2算出処理を開始し、評価対象や期間等を入力するための入力画面を表示する。担当者が操作部12を操作して、CO2の排出量を計算する期間などを入力すると、評価装置10は、平日および休日の日排出換算量予測値を算出し、表示部11に表示して、CO2算出処理を終了する。
こうして、この実施の形態によれば、最新の実績データを用いて発生確率を更新し、消費電力量を予測するので、CO2の正確な日排出換算量予測値を算出することができる。この結果、CO2の正確な日排出換算量予測値を基にして、配電設備が与える環境負荷の低減を可能にする。また、この実施の形態によれば、最新データが得られる都度、日排出換算量予測値を更新することが可能となる。さらに、この実施の形態では、CO2の日排出換算量を算出する具体例を示したが、同様の方法により、月排出換算量や、年排出換算量を算出することも可能である。
(実施の形態2)
実施の形態1では、データ項目として、「平日/休日」、「最高気温」を設定し、発生確率を算出したが、この実施の形態では、データ項目として、「最低気温」、「湿度」、「積雪量」、「日照時間」などの気象データを加える。これらの気象データは、気象庁ホームページなどから容易に取得可能である。さらに、政府が公表している「景気動向指数」や「住宅着工戸数」など、各年度の景気動向を示す指標などを加えてもよい。使用するデータ項目が多いほど、また、消費電力量の変動に与える影響が大きいものほど、より詳細に、かつ正確に発生確率を算出することができる。
このために、この実施の形態では、図16に示す環境負荷評価システムを用いる。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態では、記憶装置20が記憶するデータに項目データベース(DB)がある。項目データベース(DB)には、CO2排出換算量を算出する際に対象とするデータ項目の一覧が記録されている。項目データベースの一例を図17に示す。この項目データベースには、最高気温、湿度、景気動向指数などの対象データ項目が記録されている。
記憶装置20が記憶するデータに消費電力量データベース(DB)がある。消費電力量データベースには、各年度の項目データの値と、各年度の消費電力量が記録されている。消費電力量データベースの一例を図18に示す。この消費電力量データベースには、項目データベースに記録されている項目データの各年度の値と、各年度の消費電力量の実績とが記録されている。
この実施の形態では、処理部13は、データ項目の選択機能を持ち、この機能を利用して、CO2排出換算量を求める際に必要とする消費電力量に対する影響度を算出する。
ここで、処理部13による影響度の算出原理について説明する。データ項目が消費電力量へ与える影響度を算出する方法として、与えられたデータから、最小2乗法(参考文献:「森田優三・久次智雄著『新統計概論 改訂版』日本評論社」)を用いて回帰直線を求めることにより、データ項目と消費電力量の相関関係を得る方法を用いる。
最小2乗法とは、以下のとおりである。2変数x、yの間に、
で示される関係があるものとする。変数xに対する変数yの変化が多少とも規則的な形で起こる場合、この一次方程式で表される直線(回帰直線)がよく当てはまることが知られている。しかし、得られるデータは、必ずしも直線上になるわけではなく、この回帰直線に対して、多少のばらつきを示すのが一般的である。この得られたデータに最もよく当てはまる回帰直線を求める方法に、最小2乗法がある。最小2乗法は、得られたデータと直線との、y軸方向の距離dの2乗和が最小になるように、直線を求めるものである。最小2乗法は、図19に示すように、得られたデータD1〜D4と直線Lとの、y軸方向の距離d1〜d4の和が最小になるように、直線Lを求める。この方法では、回帰直線の方程式を、
とすると、回帰直線からの偏差の2乗和は、
となり、このDが最小となる値a、bを求める。値aは数18式の切片を表す回帰母数であり、値bは数18式の傾きを表す回帰母数である。なお、数19式では、距離dは、例えば図19の距離d1〜d4のそれぞれを表している。回帰直線の値a、bは、次の連立方程式から求められる。
なお、数20式の中で、値Nは、得られたデータx、yの個数を表す。
こうした最小2乗法を用いた算出原理により、処理部13は、消費電力量に対する影響度を算出する影響度算出処理を行う。この影響度算出処理を図20に示す。処理部13は、影響度算出処理を開始すると、データ項目を選択するための選択画面を表示する(ステップS21)。ステップS21で、処理部13は、記憶装置20に記憶している項目データベースを用いて、選択画面を表示する。この後、処理部13は、ステップS21で選択されたデータ項目の中から1つを選択し(ステップS22)、選択したデータ項目に該当する各年度のデータ項目の値と、各年度の消費電力量とを記憶装置20の消費電力量データベースから読み出す(ステップS23)。この後、処理部13は、ステップS23で読み出された値から、最小2乗法を用いて回帰直線を算出する(ステップS24)。ステップS23が終了すると、処理部13は、回帰直線が未算出である対象データ項目があるかどうかを判断する(ステップS25)。ステップS25で、未算出のデータ項目があると、処理部13は、次のデータ項目を選択して、処理をステップS23に戻す。
ステップS22〜ステップS25により、すべてのデータ項目における回帰直線が算出される。例えば、CO2の日排出換算量を算出する場合、対象となるデータ項目が次の3項目であると、
a.最高気温
b.湿度
c.景気動向指数
処理部13は、図21に示す対象データ項目および消費電力量のデータ、つまり、「〇幹1号」電柱の「〇年度〜□年度 4月」のデータを得る。そして、対象データ項目が項目aの最高気温である場合、最高気温の値と消費電力量の値とは図22(a)に示すようになり、これらの関係は、最高気温をx軸とし、消費電力量をy軸とすれば、図22(b)に示す状態となる。処理部13は図22(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数22式の演算結果を最小2乗法の数20式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
同じように、処理部13は図22(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数24式の演算結果を最小2乗法の数21式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
この後、処理部13は、数23式と数25式とを連立方程式とし、
この連立方程式を解くと、次の解を得る。
さらに、処理部13は、この解から次の回帰直線を得る。
この回帰直線が最高気温と消費電力量との関係を表す式であり、この直線を図23に示す。
対象データ項目が項目bの湿度である場合、湿度の値と消費電力量の値とは図24(a)に示すようになり、これらの関係は、湿度をx軸とし、消費電力量をy軸とすれば、図24(b)に示す状態となる。処理部13は図24(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数29式の演算結果を最小2乗法の数20式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
同じように、処理部13は図24(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数31式の演算結果を最小2乗法の数21式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
この後、処理部13は、数30式と数32式とを連立方程式とし、
この連立方程式を解くと、次の解を得る。
さらに、処理部13は、この解から次の回帰直線を得る。
この回帰直線が湿度と消費電力量との関係を表す式であり、この直線を図25に示す。
対象データ項目が項目cの景気動向指数である場合、景気動向指数の値と消費電力量の値とは図26(a)に示すようになり、これらの関係は、景気動向指数をx軸とし、消費電力量をy軸とすれば、図26(b)に示す状態となる。処理部13は図26(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数36式の演算結果を最小2乗法の数20式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
同じように、処理部13は図26(a)の座標データを利用して、次の演算を行う。
数38式の演算結果を最小2乗法の数21式に当てはめて、処理部13は次の式を得る。
この後、処理部13は、数37式と数39式とを連立方程式とし、
この連立方程式を解くと、次の解を得る。
さらに、処理部13は、この解から次の回帰直線を得る。
この回帰直線が景気動向指数と消費電力量との関係を表す式であり、この直線を図27に示す。
このように、具体例では、ステップS22〜ステップS25により、項目a〜項目cについて、図28(a)に示すように、三つの回帰直線を得ている。
先のステップS25で、回帰直線が未算出である対象データ項目がなければ、処理部13は、算出した回帰直線の傾きについて、
を算出する(ステップS26)。具体例では、図28(b)に示すように、三つの傾きの絶対値を算出する。この後、処理部13は、回帰直線の傾きの絶対値が大きい順に、消費電力量への影響度の順位を決定する(ステップS27)。具体例では、図28(c)に示す順位になる。ステップS27が終了すると、処理部13は影響度算出処理を終える。
このように、処理部13は影響度算出処理を行う。具体例では、影響度の上位順に2項目を選択すると、選択項目は「最高気温」と「景気動向指数」となり、この2項目を用いて、消費電力量の発生確率を、より正確かつ迅速に算出することができる。この回帰直線の傾きは、対象データの変化に対する消費電力量の変化の割合を示しており、消費電力量への影響度を表すことになる。つまり、傾きが大きいほど、対象データのわずかな変化で、消費電力量がより大きく変化することを意味している。したがって、影響度算出処理により、消費電力量への影響度の大きいデータ項目を選択することで、消費電力量の発生確率を、より正確かつ迅速に算出することができる。
このように、この実施の形態によれば、消費電力量発生確率を算出する際に、消費電力量の変動に影響を与える対象データ項目の階層構造を考え、各階層の発生確率を乗じることにより、全体の発生確率を求めるものである。さらに、例えば図29(a)に示すように、階層を追加・削除したり、あるいは、より影響度の大きい階層を選択することによって、より正確かつ迅速に発生確率を算出することができる。先に述べた具体例では、図29(b)に示すように第1階層が「最高気温」であり、第2階層が「景気動向指数」である。これに、例えば図29(c)に示すように、第3階層に「湿度」を追加したり、例えば図29(d)に示すように、第2階層を、より影響度の大きい項目、例えば「住宅着工戸数」に変更することによって、より詳細にかつ正確に、消費電力量の発生確率を算出することができる。また、この実施の形態では、最新データが得られる都度、影響度を更新することが可能となる。
(実施の形態3)
この実施の形態では、実施の形態1で説明した算出原理により、配電設備のCO2排出換算量を求める際に、処理部13は各電柱の損失電力量を次のようにして算出する。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1および実施の形態2と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
例えば、配電設備が図30に示すような状態である場合、「〇幹2号」の損失電力量は、「〇幹2号」から見て電源側(電力の潮流方向と逆向き)の隣接柱間の電線、この場合、「〇幹1号」〜「〇幹2号」間の電線で消費される電力量と定義する。「〇幹1号」〜「〇幹2号」の電線の損失電力量L(kWh)は、次の電気回路の公式
により算出される。なお、数44式では、値Iは電線の負荷電流(A)、値Rは電線の抵抗(Ω/m)、値Dは電線の亘長(m)、値Tは電力量の積算時間(h)、値Pは「〇2号幹」〜末端柱の合計負荷(kW)、値Vは電線の線間電圧(kV)を表し、力率は1とする。ここで、積算時間T(h)における、「〇2号幹」〜末端柱の合計使用電力量W(kWh)の単位時間あたりの平均値をP´(kW)とすると、
から、
である。したがって、「〇2号幹」の損失電力量Lは、
により求めることができる。例えば、設備データベース、電気料金データベースなどから、次のデータd1〜データd3が得られているものとする。
データd1.〇幹2号〜末端の〇月〇日の日使用電力量W:100kWh
線間電圧V:6.6kV
電力量の積算時間T:24h
データd2.〇幹1号〜〇幹2号間の電線抵抗R:1.0×10
−3Ω/m
データd3.〇幹1号〜〇幹2号間の電線亘長D:50m
したがって、「〇2号幹」の損失電力量Lは、
により求めることができる。
こうして該当電柱の損失電力量を求め、その電柱の需要家の使用電力量と合計することにより、電柱毎に消費電力量を算出することができる。
このように、この実施の形態により、該当電柱の損失電力量を求め、その電柱の需要家の使用電力量と合計することにより、電柱毎に消費電力量を算出することができる。
(実施の形態4)
この実施の形態では消費電力量を補正する。つまり、先に述べた各実施の形態では、消費電力量は、電気料金データベースなどから得られた過去の実績から、将来の消費電力量の発生確率を求める場合について説明したが、将来の消費電力量は、過去の実績に対し、需要家の新増設や撤去等により、変動するのが一般的である。したがって、この実施の形態では、処理部13は、得られた過去の消費電力量実績を、需要家の契約電力の増減率によって、現在の消費電力量に補正する。
このために、この実施の形態では、図31に示す環境負荷評価システムを用いる。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1および実施の形態2と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。実施の形態4による環境負荷評価システムでは、記憶装置20は、電力会社に必要とするデータベースとして、契約データベース(DB)を記憶している。契約データベースには、需要家が電力会社と契約した際の契約番号、需要家に関する住所等の情報、契約種別などが記録されている。
処理部13は、需要家の契約電力の増減率によって、現在の消費電力量を補正するための補正処理を行う。この補正処理は、先にのべたステップS4の後で行われる。つまり、ステップS5の更新処理は、補正処理が行われた実績データを用いる。この補正処理を図32に示す。処理部13は、補正処理を開始すると、全需要家の契約電力を調べる(ステップS41)。ステップS41で、処理部13は、契約データベースなどを用いて、電柱番号毎に、該当電柱から供給している全需要家の契約電力を得ることができる。なお、電力会社によって契約種別や契約方式は異なるが、一般住宅など、契約方式が、契約電力によらない従量制の場合は、供給戸数に1戸あたりの負荷(例えば4kW/戸など)を乗じることにより算出する。
ステップS41が終了すると、処理部13は、全需要家の契約電力から、契約電力増減率を算出する(ステップS42)。例えば、「〇幹1号」から供給している需要家の契約電力について、図33に示すとおり、過去3年間の4月実績が得られているものとする。そして、処理部13は、現在(□年度)と比較して契約電力増減率を算出する。
ステップS42が終了すると、処理部13は、算出した契約電力増減率を用いて、電気料金データベースなどから得られた過去の消費電力量の実績を補正する(ステップS43)。例えば、前述した「〇幹1号 〇年度〜□年度 4月 消費電力量実績」において、「〇年度4月1日(土)」の消費電力量35kWhは、契約電力増減率を用いると、以下のとおりに補正される。
また、「△年度4月1日(日)」の消費電力量46kWhは、契約電力増減率を用いると、以下のとおりに補正される。
ステップS43が終了すると、処理部13は補正処理を終了する。
このように、この実施の形態により、電力需要の増減率で過去の全データを補正し、補正後の消費電力量を用いて発生確率を求め、将来の消費電力量を予測することにより、電力需要の変化に応じたCO2排出換算量を算出することができる。
(実施の形態5)
この実施の形態では、配電設備が環境に与える影響を評価する際に、CO2算出処理を用いて算出したCO2排出換算量と共に、環境経営指数を利用して配電設備のコストも評価する。
このために、この実施の形態では、図34に示す環境負荷評価システムを用いる。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1および実施の形態2と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。実施の形態5による環境負荷評価システムでは、記憶装置20は、電力会社に必要とするデータベースとして、工事データベース(DB)と要員データベース(DB)と人件費データベース(DB)とを用いている。工事データベースには、電力会社が過去に行った工事や、これから着工予定の工事に関する工事期間、建設コストや使用資材等が記録されている。要員データベースには、電力会社が行う巡視等の業務に必要とする要員が業務毎に記録されている。人件費データベースには、電力会社や関連する会社の要員の人件費が要員毎に記録されている。
ここで、処理部13による配電設備の環境経営指数の算出原理について説明する。配電設備の環境経営指数は、次の式によって算出される。
この数51式中の「コスト環境指数」は、
によって算出され、「設備利用環境指数」は、
によって算出される。数51式によって算出される環境経営指数は、いかに低コストかつ高利用率で、CO2排出換算量を低く抑えているかを評価する指標である。そして、環境経営指数が小さいほど、低コストかつ高利用率で、環境に対する影響が小さい配電設備という評価が行える。数51式〜数53式により、環境経営指数ではCO2排出換算量の2乗が大きな要素となる。しかし、環境経営指数として、コスト、設備利用率およびCO2排出換算量の、三つの値を用いたものであれば、数51式に限定されることはない。
こうした環境経営指数は具体的に次のようにして算出される。例えば、図35に示すように、「○幹2号」の電柱に対して、新設設備を設ける場合がある。この場合、新設設備の建設コストをA(円)、「〇幹2号」のCO2の年排出換算量をB(t)、「〇幹2号」の設備利用率をC(%)とする。なお、建設コストは、工事データベースなどから得ることができる。また、CO2の年排出換算量は、実施の形態1で説明したCO2算出処理により求めることができる。これらの値を数52式に用いると、
として、コスト環境指数が算出される。
また、「〇幹2号」の設備利用率は、「〇幹2号」から見て電源側(電力の潮流方向と逆向き)の隣接柱間の電線(この場合、「〇幹1号」〜「〇幹2号」間の電線)の電線送電容量に対する、「〇幹2号」〜末端までの契約電力で表し、設備データベースおよび契約データベースなどから求めることができる。これらの値を数53式に用いると、
として、設備利用環境指数が算出される。
この後、数54式の算出結果と、数55式の算出結果とを数51式に用いると、
として、環境経営指数が算出される。
次に、各事例における環境経営指数の算出について説明する。まず、配電設備を新規に建設する場合、処理部13は、図36に示す環境経営指数算出処理を行う。処理部13は、環境経営指数算出処理を開始すると、環境経営指数の算出対象である配電設備を指定するための入力画面を表示する(ステップS61)。ステップS61により、算出対象として配電設備の電柱やフィーダーなどが指定される。ステップS61の後、処理部13は、記憶装置20を参照して、算出対象に関連するデータを収集する(ステップS62)。この後、処理部13は、算出対象について、収集したデータからCO2の年排出換算量を算出する(ステップS63)。ステップS63で、処理部13は、先に述べたCO2算出処理を用いて、CO2の年排出換算量を算出する。
ステップS63が終了すると、処理部13は算出対象の環境経営指数を算出する(ステップS64)。具体的に、ステップS61での算出対象が配電設備であり、この配電設備が例えば図37に示すものである場合、「〇幹2−1号」の新規建設における、「〇幹2号」の環境経営指数算出は次の通りである。ステップS62およびステップS63で次のデータd11〜データd14が得られているものとする。
データd11.「〇幹2号」〜「〇幹2−1号」 新設設備建設コスト:100万円
データd12.「〇幹1号」〜「〇幹2号」間 電線送電容量:4.0MW
データd13.「〇幹2号」〜末端 契約電力:3.5MW
データd14.「〇幹2号」 CO2の年排出換算量:10t
処理部13は、これらのデータを数52式および数53に適用する。これにより、処理部13は、
の計算結果を得る。この後、処理部13は、数57式の計算結果を数51式に適用し、
の計算結果を得る。こうして、ステップS64により環境経営指数が得られる。
また、ステップS61での算出対象がフィーダーであり、このフィーダーが例えば図38に示すものである場合、フィーダーFAの環境経営指数算出は次の通りである。ステップS62およびステップS63で次のデータd21〜データd30が得られているものとする。
データd21.「〇〇営業所」 全体の電柱本数:1万本
データd22.「〇〇営業所」 巡視要員数 :10人
データd23.「〇〇営業所」 運転要員数 :3人
データd24.フィーダーFAの電柱本数:100本
データd25.人件費単価:1万円/人・日
データd26.巡視本数20本/日
データd27.巡視回数:2回/本・年
データd28.フィーダーFAの送電容量:5.0MW
データd29.フィーダーFAの契約電力:4.0MW
データd30.フィーダーFAのCO2年排出換算量:100t
なお、データd11〜データd27は、設備データベース、要員データベースおよび人件費単価データベースなどから得られる。また、配電系統の維持・運用に関わるコストは、該当設備の巡視要員数、運転要員数および人件費単価により、巡視コストおよび運転コストを求め、その合計により、維持・運用コストを算出する。また、該当設備の巡視要員数および運転要員数は、該当営業所の全電柱に対する該当設備の電柱本数比により求める。さらに、データd28およびデータd29は、設備データベースおよび契約データベースなどから得られる。
処理部13は、これらのデータから次の式により、フィーダーFAの年間巡視コストを求める。
したがって、処理部13は、フィーダーFAの年間巡視コストを次の式により算出する。
次に、処理部13は、フィーダーFAの年間運転コストを算出するために、フィーダーFAの運転要員数およびフィーダーFAの運転日数を求める。
したがって、処理部13は、フィーダーFAの年間運転コストを次の式から求める。
以上の結果から、処理部13は、次の式により、フィーダーFAの年間の維持・運用コストを算出する。
この後、処理部13は、数63式の計算結果、データd28、データd29およびデータ30を数52式および数53に適用する。これにより、処理部13は、
の計算結果を得る。この後、処理部13は、数64の計算結果を数51式に適用し、
の計算結果を得る。こうして、処理部13は、ステップS64により環境経営指数を得る。
処理部13は、ステップS64を終了すると、環境経営指数算出処理を終える。
このように、この実施の形態により、配電設備の建設や維持・運用に関わるコスト、設備利用率およびCO2排出換算量から、電柱単位、フィーダー単位、あるいは営業所全体の環境経営指数を求めることができる。そして、配電設備が環境に与える影響を評価する際に、CO2排出換算量と共に環境経営指数を用いて配電設備のコストを評価することを可能にする。
(実施の形態6)
この実施の形態では、先の実施の形態で求めた環境経営指数を用いることによって、配電設備が環境へ与える影響を定量的に評価し、最適な、建設および維持・運用方法を自動選択する。
ここで、配電設備の建設および維持・運用をするための、最適な方法の原理について説明する。需要家からの電気使用申込みに伴う配電設備の建設時には、既設の配電設備から需要家までの距離が最短となるルートを検討したり、需要家の負荷に応じて、電線径の小さい電線を使用することなどにより、コスト低減を図っている。しかし、電線径が小さいほど、その電線の損失電力量は大きくなり、消費電力量を増大させ、そのことが、CO2排出換算量の増加に影響を与える。したがって、配電設備の環境負荷マネジメントを行うためには、コストおよび設備利用率と環境影響との両面から、配電設備を定量的に評価し、最適な建設ルート、使用材料を求める必要がある。
そこで、例えば、図39に示すように、1案、2案および3案がある建設ルートに対して、各案の環境経営指数を算出し、環境経営指数が最も小さい案を、最適ルートとして選択する。このために、各案について、敷設する電線の太さ毎に、各電柱でのCO2の排出換算量を求め、各フィーダー単位に合計する。この後、各案について、電線の太さ毎に、各フィーダーの環境経営指数を算出する。そして、環境経営指数が最も小さい案および電線太さを、最適な建設ルートおよび最適な電線として判定する。こうすることによって、建設ルートおよび電線の最適化を図ることが可能になり、さらに、敷設する電線の電線径毎に環境経営指数を求めることにより、最適な電線径を選択することも可能となる。
最適な建設ルートおよび最適な電線を判定するために、処理部13は、図40および図41に示す最適化処理を行う。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1、実施の形態2および実施の形態5と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。処理部13は、最適化処理を開始すると、建設ルートなどを入力するための入力画面を表示する(ステップS81)。具体的には、例えば図42に示すように、建設ルートの1案、2案および3案が入力される。図42は、需要家からの電気使用申込みに対して、申込み地点の至近エリアに供給しているフィーダーFAとフィーダーFBがあり、建設ルートが1案から3案まである、という状態を表している。簡潔に説明するため、この例では、フィーダーFAの末端柱は「A幹3号」、フィーダーFBの末端柱は「B幹2号」とする。また、変電所〜「A幹1号」および変電所〜「B幹2号」間の電力損失の影響はないものとする。
ステップS81の後、処理部13は、建設ルートに関連するデータを収集する(ステップS82)。つまり、ステップS82で、処理部13は、設備データベース、契約データベース、電気料金データベース、工事データベースおよびCO2排出原単位データベースを用いて、設備データ、契約データ、電気料金データ、工事データ、CO2排出原単位を得る。具体例では、処理部13は、ステップS82で、設備データベースから次の設備データを得る。
データ41.A幹1号〜3号 電線太さ:200mm2
データ42.B幹1号〜2号 電線太さ:200mm2
データ43.電線太さ25mm2 :送電容量1.0MW、電線抵抗1.0×10−3Ω/m
データ44.電線太さ58mm2 :送電容量2.0MW、電線抵抗0.5×10−3Ω/m
データ45.電線太さ200mm2:送電容量5.0MW、電線抵抗0.1×10−3Ω/m
データ46.各電柱間の亘長:50m
また、処理部13は、ステップS82で、契約データベースから次の契約データを得る。
データ47.A幹2号 合計契約電力 :1.5MW
データ48.A幹3号 合計契約電力 :1.0MW
データ49.B幹2号 合計契約電力 :2.0MW
データ50.申込みの需要家 契約電力:1.0MW
また、処理部13は、ステップS82で、電気料金データベースから次の電気料金データを得る。
データ51.A幹2号 合計年使用電力量 :50MWh
データ52.A幹3号 合計年使用電力量 :40MWh
データ53.B幹2号 合計年使用電力量 :80MWh
データ54.申込みの需要家 年計画使用電力量:30MWh
また、処理部13は、ステップS82で、工事データベースから次の工事データを得る。
データ55.電線太さ25mm2 :建設コスト0.1万円/m
データ56.電線太さ58mm2 :建設コスト0.2万円/m
データ57.電線太さ200mm2:建設コスト0.5万円/m
また、処理部13は、ステップS82で、建設ルートの各案について、次の亘長データを得る。
データ58.1案:50m
データ59.2案:45m
データ60.3案:40m
さらに、処理部13は、ステップS82で、次のCO2排出原単位データを得る。
データ61.CO2排出原単位:0.6kg―CO2/kWhとする。
ステップS82が終了すると、処理部13は、ステップS81で入力された建設ルートの案の中から1つを選択し(ステップS83)、電線の太さを選択する(ステップS84)。この後、処理部13は、各電柱のCO2排出換算量を算出する(ステップS85)。ステップS83で、処理部13は、先の実施の形態で述べた方法により、CO2排出換算量を算出する。この後、処理部13は、フィーダー別のCO2排出換算量を算出する(ステップS86)。ステップS86が終了すると、処理部13は、未選択の電線の太さがあるかどうかを判断する(ステップS87)。もし、未選択の太さがあると、別の電線の太さを選択して処理をステップS85に戻す。ステップS87で未選択の太さがなければ、処理部13は、未選択の建設ルートがあるかどうかを判断する(ステップS88)。もし、未選択の建設ルートがあると、別の建設ルートを選択して処理をステップS84に戻す。
これらの一連のステップS83〜ステップS88により、処理部13は、各建設ルートの案について、敷設する電線の太さ毎に、各電柱のCO2排出換算量を求め、各フィーダー単位に合計する。具体例の場合、処理部13は次の計算を行い、算出結果を得る。建設ルートが1案であり、敷設する電線太さが25mm
2(「A幹2号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、使用電力量Wは50MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹2号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、使用電力量Wは、40MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹3号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹3号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「新設柱」であるとき、つまり、電柱が電気使用申し込みの需要家の付近に新設するものであるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」のCO2排出換算量Hは、
となる。なお、「A幹1号」については、変電所〜「A幹1号」の電力損失はないものとしているため、CO2排出換算量は算出の対象外である。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、使用電力量Wは、80MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「B幹2号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「B幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
「フィーダーFB」においては、算出対象は、「B幹2号」のみであるため、「フィーダーFB」のCO2排出換算量Hは、
となる。
建設ルートが1案であり、敷設する電線太さが58mm
2(「A幹2号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹3号」の排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「新設柱」であるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」の排出換算量Hは、
となる。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「B幹2号」の排出換算量Hは、
となる。
この算出結果から、「フィーダーFB」のCO2排出換算量Hは、
となる。
建設ルートが2案であり、敷設する電線太さが25mm
2(「A幹3号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、使用電力量Wは、50MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹2号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、使用電力量Wは、40MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹3号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹3号」の排出換算量Hは、
となる。
電柱が「新設柱」であるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」のCO2排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」の排出換算量Hは、
となる。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、使用電力量Wは、80MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「B幹2号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「B幹2号」のCO2排出換算量Hは、
である。
以上の結果から、「フィーダーFB」のCO2排出換算量Hは、
となる。
敷設する電線太さが58mm
2(「A幹3号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹3号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「新設柱」であるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」のCO2排出換算量Hは、
となる。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「B幹2号」のCO2排出換算量Hは、
となる。
この算出結果から、「フィーダーFB」のCO2排出換算量Hは、
となる。
建設ルートが3案であり、敷設する電線太さが25mm
2(「B幹2号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、使用電力量Wは、50MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹2号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹2号」の排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、使用電力量Wは、40MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「A幹3号」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「A幹3号」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」の排出換算量Hは、
となる。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、使用電力量Wは、80MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、B幹2号の消費電力量Sは、
となる。これにより、「B幹2号」の排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「新設柱」であるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFB」の排出換算量Hは、
となる。
敷設する電線太さが58mm
2(「B幹2号」〜「新設柱」間)である場合、電柱が「フィーダーFA」の「A幹2号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹2号」の排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「A幹3号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「A幹3号」の排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFA」の排出換算量Hは、
となる。
一方、電柱が「フィーダーFB」の「B幹2号」であるとき、敷設する電線太さが25mm
2の場合と同様にして、「B幹2号」の排出換算量Hは、
となる。
また、電柱が「新設柱」であるとき、使用電力量Wは、30MWhであるので、損失電力量Lは、
となる。したがって、「新設柱」の消費電力量Sは、
となる。これにより、「新設柱」のCO2排出換算量Hは、
となる。
以上の結果から、「フィーダーFB」のCO2排出換算量Hは、
となる。
こうして、一連のステップS83〜ステップS88により、建設ルートの各案について、敷設する電線の太さ毎に、各電柱CO2排出換算量を求め、各フィーダー単位に合計すると、各算出結果からCO2排出換算量データを生成する(ステップS89)。具体例では、処理部13は、図43に示すCO2排出換算量データを生成する。このデータでは、建設ルートの1案、2案および3案で電線太さが25mm2および58mm2である場合の各CO2排出換算量が、フィーダー単位で合計されている。
ステップS89が終了すると、処理部13は、CO2排出換算量データの各CO2排出換算量について、環境経営指数を算出する(ステップS90)。ステップS90で、先に述べた数51式、数52式および数53式、つまり、
を用いて環境経営指数を算出する。なお、ここで、フィーダーの設備利用率は、各電柱の設備利用率に各亘長を乗じ、その総和をフィーダー全亘長で除すことにより算出したフィーダー平均設備利用率を用いる。
ステップS90について、具体例の場合に、処理部13は次の計算を行う。建設ルートが1案である場合、敷設する電線太さが25mm
2(「A幹2号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」について、コスト環境指数は、
となる。また、設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は、
により求められる。
また、「フィーダーFB」については、次のとおりである。つまり、「フィーダーFB」は、工事が発生しないため、環境経営指数は、0とする。
敷設する電線太さが58mm
2(「A幹2号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」について、コスト環境指数は、
となる。また、設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は、
により求められる。
また、「フィーダーFB」については次のとおりである。つまり、「フィーダーFB」は、工事が発生しないため、環境経営指数は、0とする。
建設ルートが2案である場合、敷設する電線太さが25mm
2(「A幹3号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」について、コスト環境指数は、
となる。また、設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は
により求められる。
また、「フィーダーFB」については、次のとおりである。つまり、「フィーダーFB」は、工事が発生しないため、環境経営指数は、0とする。
敷設する電線太さが58mm
2(「A幹3号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」について、コスト環境指数は、
となる。また、設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は、
により求められる。
また、「フィーダーFB」については次のとおりである。つまり、「フィーダーFB」は、工事が発生しないため、「環境経営指数」は、0とする。
建設ルートが3案である場合、敷設する電線太さが25mm2(「B幹2号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」については次のとおりである。つまり、「フィーダーFA」は、工事が発生しないため、「環境経営指数」は、0とする。
また、「フィーダーFB」について、コスト環境指数は、
となる。設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は
により求められる。
敷設する電線太さが58mm2(「B幹2号」〜「新設柱」間)であるとき、「フィーダーFA」については、次のとおりである。つまり、「フィーダーFA」は、工事が発生しないため、環境経営指数は、0とする。
また、「フィーダーFB」について、コスト環境指数は、
となる。設備利用環境指数は、
となる。したがって、「フィーダーFA」の環境経営指数は、
により求められる。
こうして、ステップS90により、処理部13は、建設ルートの各案について、電線の太さ毎に、各フィーダーの環境経営指数を算出する。この後、処理部13は、算出結果から環境経営指数データを生成する(ステップS91)。具体例では、処理部13は、図44に示す環境経営指数データを生成する。このデータでは、ステップS89で生成したCO2排出換算量データの各フィーダーの値について、環境経営指数が算出されている。ステップS91が終了すると、処理部13は、環境経営指数データの中から、環境経営指数が最も小さい建設ルートの案を選択する(ステップS92)。具体例では、処理部13は、図44に示す環境経営指数データの中から、環境経営指数が最も小さい案として、環境経営指数が0.013である、建設ルートの3案を選択し、この場合、電線太さが25mm2となる。
ステップS92が終了すると、処理部13は、選択結果を出力する(ステップS93)。具体例の場合には、「最適な建設ルートおよび敷設する電線の最適な太さは、3案で、電線太さ25mm2である。」そして、「B幹2号から電線の太さ25mm2を用いて敷設する」等の内容を示すデータが出力され、また、表示される。つまり、選択結果は、例えば電力会社が保有する、配電系統図の表示画面や設計画面などに表示される。ステップS93が終了すると、処理部13は、最適化処理を終了する。
こうして、この実施の形態により、環境への影響を示す指標であるCO2排出換算量に対して、コスト、設備利用率を考慮した環境経営指数を用いることによって、配電設備の環境影響度を定量的に評価できる。さらに、最適な建設方法が自動選択され、表示されることにより、担当者は、容易かつ効率的に、環境負荷低減マネジメントを考慮した設計を行うことが可能となる。また、この実施の形態では、配電設備の建設における環境経営指数の最適化の例を示したが、先の実施の形態で説明したように、配電設備の維持・運用における、フィーダー毎の環境経営指数の算出も可能である。そして、その結果を用いて、環境経営指数が最小となるように、フィーダー間で系統変更をすることにより、最適化を図ることも可能である。