JP2010173094A - レリーフ印刷版原版用レリーフ印刷層の製造方法、及びそれにより得られるレリーフ形成層 - Google Patents

レリーフ印刷版原版用レリーフ印刷層の製造方法、及びそれにより得られるレリーフ形成層 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザー彫刻に供するレリーフ印刷版原版の作製に際し、膜欠陥の発生が抑制され面状性及び膜強度に優れ、ハンドリング性が良好なレリーフ形成層を得ることができるレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法及びその方法により得られたハンドリング性及び面状性に優れたレリーフ形成層を提供する。
【解決手段】(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成層用塗布液を硬質表面に塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する塗布工程と、
形成されたレリーフ形成層用塗布液層を、前記(A)バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱して乾燥する乾燥工程、とを含むレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の製造方法、及び該製造方法により得られるレリーフ形成層に関する。
支持体表面積に積層された感光性樹脂層に凹凸を形成して印刷版を形成する方法としては、感光性組成物を用いて形成したレリーフ形成層に、原画フィルムを介して紫外光により露光し、画像部分を選択的に硬化させて、未硬化部を現像液により除去する方法、いわゆる「アナログ製版」がよく知られている。
レリーフ印刷版は、凹凸を有するレリーフ層を有する凸版印刷版であり、このような凹凸を有するレリーフ層は、主成分として、例えば、合成ゴムのようなエラストマー性ポリマー、熱可塑性樹脂などの樹脂、或いは、樹脂と可塑剤との混合物を含有する感光性組成物を含有するレリーフ形成層をパターニングし、凹凸を形成することにより得られる。このようなレリーフ印刷版うち、軟質なレリーフ層を有するものをフレキソ版と称することがある。
レリーフ印刷版をアナログ製版により作製する場合、一般に銀塩材料を用いた原画フィルムを必要とするため、原画フィルムの製造時間及びコストを要する。更に、原画フィルムの現像に化学的な処理が必要で、かつ現像廃液の処理をも必要とすることから、更に簡易な版の作製方法、例えば、原画フィルムを用いない方法、現像処理を必要としない方法などが検討されている。
近年は、原画フィルムを必要とせず、走査露光によりレリーフ形成層の製版を行う方法が検討されている。
原画フィルムを必要としない手法として、レリーフ形成層上に画像マスクを形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたレリーフ印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。これらの原版の製版方法によれば、画像データに基づいたレーザー照射によりマスク層要素から原画フィルムと同様の機能を有する画像マスクが形成されるため、「マスクCTP方式」と称されており、原画フィルムは必要ではないが、その後の製版処理は、画像マスクを介して紫外光で露光し、未硬化部を現像除去する工程であり、現像処理を必要とする点でなお改良の余地がある。
現像工程を必要としない製版方法として、レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、或いは、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、なども可能である。
このような、所定の厚みを有するレリーフ形成層を形成する方法としては、通常、レリーフ形成層の膜を形成する主成分である樹脂を溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを支持体、或いは、仮支持体などの硬質表面に塗布して塗布液層を形成し、これを温風乾燥により乾燥して製膜し、レリーフ形成層を得るものであるが、乾燥後の膜強度が弱く、膜が伸張或いは変形する、膜の表面が傷つき易い等、ハンドリング性に問題があった。
以上のように、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層を形成するに際して、ハンドリング性に優れ、膜欠陥の発生が抑制されたレリーフ形成層の製造方法は、未だ提供されていないのが現状である。
特許第2773847号公報 特開平9−171247号公報
本発明は以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、レーザー彫刻に供するレリーフ印刷版原版の作製に際し、膜欠陥の発生が抑制され面状性及び膜強度に優れ、ハンドリング性が良好なレリーフ形成層を得ることができるレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法及びその方法により得られたハンドリング性及び面状性に優れたレリーフ形成層を提供することにある。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成層用塗布液を支持体表面に塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する塗布工程と、形成されたレリーフ形成層用塗布液層を、前記(A)バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱して乾燥する乾燥工程、とを含むレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
<2> 前記乾燥工程における第2の溶媒の蒸気量が、前記乾燥工程に付されるレリーフ形成層用塗布液層の到達温度における第2の溶媒の飽和蒸気量の25%以上100%未満である請求項1記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
<3> 前記乾燥工程における第2の溶媒の蒸気量が、前記塗布工程の後、乾燥工程に付される際のレリーフ形成層用塗布液層の温度における第2の溶媒の飽和蒸気量の40%以上95%以下である<1>又は<2>記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
<4> 前記乾燥工程における加熱条件が、レリーフ形成層用塗布液層の到達温度が30℃以上200℃以下の範囲となる加熱条件である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
<5> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法により得られるレリーフ形成層。
<6> 乾燥後の膜厚が0.3mm〜3.0mmである<5>記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
<7> 乾燥後の膜厚が0.5mm〜2.0mmである<5>又は<6>記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
<8> さらに(C)700〜1300nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤を含有する<5>〜<7>のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
<9> 700〜1300nmのレーザーで彫刻可能である<5>〜<8>のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
本発明によれば、レーザー彫刻に供するレリーフ印刷版原版の作製に際し、膜欠陥の発生が抑制され面状性及び膜強度に優れ、ハンドリング性が良好なレリーフ形成層を得ることができるレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法及びその方法により得られたハンドリング性及び面状性に優れたレリーフ形成層を提供することにある。
本発明の製造方法に適用しうる乾燥装置の構成の一態様を示す概略図である。
以下、本発明のレーザー彫刻に適するレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法、及び該製造方法により得られるレリーフ印刷版の製造方法について詳細に説明する。
本発明のレリーフ形成層の製造方法は、(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成層用塗布液を支持体表面に塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する塗布工程と、形成されたレリーフ形成層用塗布液層を、前記(A)バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱して乾燥する乾燥工程、とを含み、必要に応じて他の工程を含んでもよい。
<塗布工程>
塗布工程は、(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成層用塗布液を支持体表面に塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する工程である。ここで、支持体とは、レリーフ形成層を、レリーフ印刷版原版を構成する支持体上に形成する場合には、その支持体を指し、支持体を用いないレリーフ形成層を得る場合には、例えば、搬送ベルトの如き仮支持体等の、レリーフ形成層用塗布液層が形成される硬質表面を有する被塗布物を指すものである。
本発明の製造方法を適用しうるレリーフ形成層用塗布液は、(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含み、所望により、(C)赤外線吸収剤或いは他の添加剤を含むレーザー彫刻用樹脂組成物である。塗布液の処方については、後に詳述する。
(A)バインダーポリマーは、レーザー彫刻用樹脂組成物に含有される主成分であり、通常は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどを、目的に応じて用いる。
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光或いは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。
また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。
更に、レーザー彫刻用樹脂組成物を、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に適用する場合であれば、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点からは、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。
加えて、例えば、加熱や露光により硬化させ、強度を向上させる目的に使用する場合には、バインダーポリマーとして、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーが選択される。
このように、レーザー彫刻用樹脂組成物の適用用途に応じた物性を考慮し、目的に応じたバインダーポリマーを選択し、当該バインダーポリマーの1種を、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における好ましいバインダーポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタンなどが挙げられる。
(B)第1の溶媒
本発明に用いられる前記第1の溶媒は、選択した前記バインダーポリマーを25℃で30質量%以上溶解する溶媒であることが好ましく、25℃で40質量%以上溶解する溶媒であることがより好ましい。溶媒として、バインダーポリマーの溶解性を30質量%以上であるものを選択することで、乾燥が必要な溶剤量を適切に保つことができ、良質な膜を得るための乾燥時間がより短くなり、生産性が向上するため好ましい。
好ましい第1の溶媒としては、併用する(A)バインダーポリマーに依存する部分が大きいが、特に水、エタノール、メタノール、プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルアセテート、乳酸エチル、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、及びメチルイソブチルケトンからなる群より選択されるもの、或いは、これらの溶剤を適宜組み合わせてなる溶媒が好ましく用いられる。
以下に、本発明において好ましい(A)バインダーポリマーと(B)第1の溶媒との組合せを、(A)バインダーポリマーとしてポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタンを用いた場合について挙げるが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
(A)バインダーポリマーとしてポリビニルアルコールを用いた場合の好ましい(B)第1の溶媒の例:水、水+エタノール、水+メタノール、水+イソプロパノール、水+1−メトキシー2−プロパノール。
(A)バインダーポリマーとしてポリビニルブチラールを用いた場合の好ましい(B)第1の溶媒の例:メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシー2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、乳酸エチル、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン。
(A)バインダーポリマーとしてポリウレタンを用いた場合の好ましい(B)第1の溶媒の例:アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシー2−プロパノール、メチルイソブチルケトン。
ここには、(A)バインダーポリマーと(B)第1の溶媒の代表的な組合せを挙げたが、25℃における溶解性を確認することにより、塗布液に使用される(A)バインダーポリマーに対する適切な(B)第1の溶媒を容易に選択することができる。
<溶解性の確認試験法>
テフロン(登録商標)製の攪拌バネを取り付けた三口フラスコにポリマーと溶媒を秤量し、温度70℃2hr、攪拌速度100rpmで攪拌により溶解の限界量を確認した。溶解の有無は、この溶液を25℃まで降温した際に析出する固形物の有無を目視観察することで確認した。
レリーフ形成層用塗布液は、(A)バインダーポリマー及び必要に応じて用いられる他の添加物を(B)第1の溶媒に溶解し、攪拌することで調整される。
塗布液の調製は、常温(25℃)で行ってもよく、40〜90℃程度に加熱しながら行ってもよい。
塗布液における固形分濃度は30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。この固形分濃度である場合、塗布液中の第1の溶媒の含有量が適切となり、乾燥工程を効率よく行うことができる。
調整されたレリーフ形成層用塗布液は、通常、レリーフ印刷版原版の支持体上に塗布される。また、支持体を有さないレリーフ形成層を得る場合には、仮支持体上に塗布される。
支持体等の硬質な表面にレリーフ形成層用塗布液を塗布する方法としては、硬質材料の表面に任意の厚みの均一な塗膜が形成できれば特に制限はなく、例えば、特公昭58−4589号、特開昭59−123568号等に記載されているコーティングロッドを用いる方法や、特開平4−244265号等に記載されているエクストルージョン型コーターを用いる方法、あるいは特公平1−57629号に記載されているスライドビードコーターを用いる方法等を用いることができる。
本実施形態におけるレリーフ形成層用塗布液層の乾燥後の塗布膜厚は、レーザー彫刻適性やハンドリング性の観点から、0.3mm〜3.0mmであることが好ましく、0.5mm〜2.0mmの範囲にあることがより好ましい。
このようにしてレリーフ形成層用塗布液層が形成されたのち、この塗布液層は乾燥工程に付される。
<乾燥工程>
乾燥工程は、前記塗布工程において形成されたレリーフ形成層用塗布液層を、(A)バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱して乾燥して、レリーフ形成層を得る工程である。
本発明では、乾燥工程で、第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱することにより、乾燥中における塗布液層の温度のバラツキを抑制して、溶剤を良好に除去することができる。そのメカニズムは、塗布液層へ第2の溶媒の蒸気を吸収させて塗布液層内の自由体積を増加させ、その結果発現する残留溶剤の膜内拡散速度の増加により、塗布液層中の溶剤の除去を大幅に促進するというものである。この方法によれば、塗布液層への多量な熱供給を必要とせず、通常の熱風乾燥よりも塗布液層の温度を低温かつ短時間で乾燥させることができるので、塗布液層中の温度のバラツキが抑制され、塗布液層中における溶剤のバラツキに起因する膜厚の不均一化、溶媒の局所的な蒸散による膜面状性の低下などを抑制することができる。その結果、乾燥後のレリーフ形成層は、膜欠陥の発生が抑制され面状性に優れた被膜となりハンドリング性が良好となる。さらに、膜内の均一性が維持されるためにレーザー彫刻感度バラツキを抑制することができるという副次的効果も得られる。
−第2の溶媒−
ここで蒸気雰囲気を形成するのに用いられる第2の溶媒は、レリーフ形成層用塗布液に含まれるバインダーポリマーの物性に応じて選択され、使用されるバインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒であって、乾燥工程中で蒸気として存在できれば任意に選択することができる。バインダーポリマーの25℃における溶解量が1質量%を超えるものを用いる場合には、乾燥工程において乾燥ゾーン内の存在する溶媒蒸気によりレリーフ形成層の膜が溶解してしまい、良質な膜面状が得られず好ましくない。
バインダーポリマーに応じた第2の溶媒もまた、溶解法という簡易な試験により容易に選択することができる。
先に、本発明に係るレリーフ形成層用塗布液用いられるに好ましいバインダーポリマーとして挙げたポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタンそれぞれについて、好ましい第2の溶媒を詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
(A)バインダーポリマーとしてポリビニルアルコールを用いた場合の好ましい第2の溶媒の例:メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシー2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、乳酸エチル、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン
(A)バインダーポリマーとしてポリビニルブチラールを用いた場合の好ましい第2の溶媒の例:水、水+エタノール、水+メタノール、水+イソプロパノール、水+1−メトキシー2−プロパノールメタノール、トルエン、ヘキサン、キシレン
(A)バインダーポリマーとしてポリウレタンを用いた場合の好ましい第2の溶媒の例:水、水+エタノール、水+メタノール、水+イソプロパノール、水+1−メトキシ−2−プロパノールメタノール、トルエン、ヘキサン、キシレン
ここには、(A)バインダーポリマーと第2の溶媒の代表的な組合せを挙げたが、25℃における溶解性を確認することにより、塗布液に使用される(A)バインダーポリマーに対する適切な第2の溶媒を容易に選択することができる。溶解性の確認方法については、第1の溶媒の選択に関する箇所で挙げた方法と同様の方法を適用することができる。
以下、図面に従って、レリーフ形成層用塗布液層の乾燥方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。なお、本実施形態においては、フレキソ印刷用レリーフ形成層の製造装置において、レリーフ形成層に含まれる第1の溶媒を蒸発乾燥させるための乾燥装置を例に挙げて説明するが、レリーフ印刷版原版の製造の他の工程における乾燥方法及び装置に適用可能である。
図1は、本発明の製造方法に適用しうる乾燥装置10の構成の一態様を示す概略図である。図1に示されるように、乾燥装置10は、ウエブ12の搬送方向に沿って形成された乾燥ボックス20を備え、その両端にはフレキソ印刷用レリーフ形成層が出入りするスリット状の開口が形成されている。乾燥ボックス20は、防爆及び断熱構造を有する。
乾燥ボックス20の内部には、下流側に箱状のチャンバー24が配置され、チャンバー24の両端にはレリーフ形成層が出入りするスリット状の開口が形成されている。チャンバー24及び乾燥ボックス20の内部には、レリーフ形成層用塗布液層が上面に形成されたウエブ12を搬送する複数の搬送ローラ22・・・がそれぞれ設けられている。
このように、乾燥ボックス20内部は、主に、チャンバー24内に第2の溶媒の蒸気雰囲気を形成して乾燥させる蒸気雰囲気乾燥部14と、チャンバーの外側にウエブ12に熱風をあてて熱風乾燥させる熱風乾燥部16、18とから構成されている。なお、図1において、ウエブ12の搬送方向は矢印Aで示す。
チャンバー24の外側の熱風乾燥部16、18には、熱風をウエブ12に吹き付ける複数のノズル26・・・が配置されている。これにより、乾燥熱風乾燥部16、18は、ウエブ12に熱風をあてて乾燥できるようになっている。なお、ノズル26の個数や設置場所については、図1の例に限定されない。
蒸気雰囲気乾燥部14のチャンバー24の内部には、搬送ローラの上方にウエブ12に、第2の溶媒を含有する加熱エアを噴出する複数のノズル28・・・が配置されている(溶媒蒸気生成手段)。これにより、チャンバー24内に、第2の溶媒の蒸気雰囲気を形成し加熱することで、ウエブ12上に塗布された第1の溶媒を含むフレキソ印刷用レリーフ形成層に含まれる第1の溶媒を乾燥除去できる。なお、蒸気雰囲気乾燥部14における第2の溶媒の蒸気量は、第2の溶媒を含有する加熱エアの供給口32よりの供給量、加熱条件、及び、排出口34よりの排出量等を調製することで適切な条件に維持される。
この乾燥工程における加熱条件としては、レリーフ形成層用塗布液層の到達温度が30℃以上200℃以下の範囲となる加熱条件であることが好ましい。レリーフ形成層用塗布液層の到達温度とは、乾燥工程の全過程においてレリーフ形成層用塗布液層が到達する最高温度を指し、安立計器株式会社製THERMO PRINTER AP−310型に表面温度測定センサー U−279E−00−DO−1を接続し、レリーフ形成層用塗布液層の表面温度を測定した値を用いるものとする。
到達温度を上記範囲とすることで、第1の溶媒の乾燥除去が効率よく行われ、形成されるレリーフ層が加熱により損傷を受ける懸念もない。
また、チャンバー24内の第2の溶媒の蒸気量は、ウエブ12上に結露しない量に設定されることが好ましい。
具体的には、前記塗布工程で、レリーフ形成層用塗布液層が形成された支持体を搬送して、乾燥工程に付すためのチャンバー24内におけるレリーフ形成層用塗布液層の到達温度における第2の溶媒の飽和蒸気量の25%以上100%未満であることが好ましく、より好ましくは、40%以上95%以下の範囲の蒸気量である。チャンバー24、即ち、乾燥工程におけるレリーフ形成層用塗布液層の到達温度の測定法は、記述の通りである。
塗布工程の後、加熱工程におけるレリーフ形成層用塗布液層の到達温度は、予め乾燥工程を実施して、当該塗布液層の到達温度を測定して、その温度に応じた蒸気量に制御することが好ましい。なお、レリーフ形成層用塗布液の処方、即ち、使用するポリマーや溶剤により想定される到達温度の温度範囲を想定し、この温度範囲を基準として蒸気量を決定してもよい。
また、上記の第2の溶媒が有機溶剤である場合、有機溶剤を爆発限界下限以下、又は爆発限界上限以上の濃度で使用することが好ましく、爆発限界上限以上の濃度で使用することがより好ましい。また、安全上、乾燥装置20内の全体は、窒素雰囲気であることが好ましい。
これにより、チャンバー24内において、第2の溶媒の蒸気雰囲気によってレリーフ形成層の自由体積が増加し、レリーフ印刷版原版用レリーフ形成層中に残留していた第1の溶媒の拡散速度が上昇する。また、高温の溶媒蒸気を含有することによる総エンタルピーの増加との相乗効果により、第1の溶媒の乾燥除去が高効率で行える。
なお、乾燥工程におけるチャンバー24内の、第2の溶媒の蒸気量の測定は、接触燃焼式センサー、半導体式センサー、及び、熱線形半導体式センサー等の測定装置を使用することにより行うことができる。
チャンバー38内の蒸気量は、例えば、蒸気量を増加させる場合には、加熱装置から液体状態の溶媒が入った圧力釜に与える熱量を増加させることで発生させる蒸気量を増やしたり、あるいは、蒸気希釈用の空気の量を減らしたりすればよく、また、蒸気量を減少させる場合には、前述の反対の操作、即ち、加熱装置から液体状態の溶媒が入った圧力釜に与える熱量を減少させたり、あるいは、蒸気希釈用の空気の量を増加させたりすればよく、これらの手段によりチャンバー24内の蒸気量を適宜、制御することができる。
蒸気量の制御は、チャンバー24内に設けられた図示されない測定装置(例えば、蒸気量測定センサー)による測定結果を圧力釜加熱装置や、蒸気希釈用ファンにフィードバックすることで自動的に行うこともできる。
また、乾燥ボックス20には、チャンバー24の両端に形成された開口部外側にエアカーテン形成手段30、30がそれぞれ設けられている。エアカーテン形成手段30、30は、図示しないフィルタ等で塵や異物が除去された清浄エアをウエブ12の巾方向に流せるようになっている。
これにより、清浄エアでチャンバー24の両端の開口部にエアカーテンを形成でき、チャンバー24内の溶媒蒸気が外側に漏れたり、外側から空気が侵入したりするのを阻止できる。また、清浄エアを巾方向に流すので、膜表面にムラを生じさせたり、損傷させたりする不具合も少なくできる。
以上のように、(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒とを含有するレリーフ形成用塗布液を塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する塗布工程と、前記第1の溶媒と異なる、第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱する乾燥工程、とを含むことで、製造プロセスで、乾燥後の膜強度が強く、ハンドリング性に優れ、面状が良好なレリーフ形成層が得られる。
以下に、本発明の製造方法を適用しうるレリーフ形成層の組成について詳述する。
本発明の製造方法を適用しうるレリーフ形成層塗布液には、(A)バインダーポリマー、これを溶解して塗布液を調製するために必要な(B)第1の溶媒を含有する。また、レーザー彫刻感度を向上する目的で、(C)700〜1300nmに吸収を有する赤外線吸収剤(以下、適宜、赤外線吸収剤と称する)を含むことが好ましい。
さらに、レリーフ形成層内に架橋構造を形成するための重合性基、架橋性基を有する化合物、彫刻感度向上のための種々の添加剤などを含むことができる。
これらの成分を含むレリーフ形成層を、近赤外レーザーを使用したレーザー彫刻する場合、(1)(C)赤外線吸収剤による光吸収 → (2)(C)赤外線吸収剤による光熱変換 → (3)赤外線吸収剤から近傍に存在する(A)バインダーポリマー及び/又は(重合性、架橋性モノマーの架橋物(重合物)への熱伝達 → (4)バインダーポリマー及び/又は重合性、架橋性モノマーの架橋物(重合物)の熱分解 → (5)分解した(B)バインダーポリマー及び/又は重合性、架橋性モノマーの架橋物(重合物)の消散や飛散、という5つの過程から構成されると考えられる。
以下、本発明に係るレリーフ形成層用塗布液の必須成分である(A)バインダーポリマー、更には、任意成分である(C)赤外線吸収剤(700nm〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤)、重合開始剤等について、説明する。
<(A)バインダーポリマー>
本発明に用いるレリーフ形成層は、(A)バインダーポリマーを含有する。バインダーポリマーは、一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、レリーフ形成版原版を印刷版原版に用いる際は、レーザー彫刻性、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが必要である。
バインダーポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレアポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光或いは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報〔0038〕に記載されているものが好ましく挙げられる。また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。特開2008−163081号公報〔0039〕〜〔0040〕に詳述されている。更に、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報〔0041〕に詳述されているものを使用することができる。
また、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸ユニットからなるポリエステルを好ましく用いることができる。このようなポリエステルとしては、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。
さらに、ヒドロキシエチレン単位を含むポリマーを好ましく用いることもできる。ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体が好ましく用いられる。
PVA誘導体の例として、ヒドロキシエチレン単位の水酸基の少なくとも一部をカルボキシル基等の酸基に変性した酸変性PVA、当該水酸基の一部を(メタ)アクリロイル基に変性した変性PVA、当該水酸基の少なくとも一部をアミノ基に変性した変性PVA、当該水酸基の少なくとも一部にエチレングリコールやプロピレングリコール及びこれらの複量体を導入した変性PVA、ポリビニルアルコールをアルデヒド類で処理することによって得られるポリビニルアセタール等が挙げられる。これらの中でも、特にポリビニルアセタールが好ましく用いられる。アセタール処理に用いるアルデヒド類としては、アセトアルデヒド 、ブチルアルデヒドは、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。特に、ポリビニルブチラールは好ましく用いられるPVA誘導体である。
加えて、加熱や露光により硬化させ、強度を向上させる目的に使用する場合には、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーが好ましく用いられる。
このようなポリマーとして、主鎖に炭素−炭素不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
側鎖に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーとしては、前記の本発明で適用可能なバインダーポリマーの骨格に、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のような炭素−炭素不飽和結合を側鎖に導入することで得られる。バインダーポリマー側鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入する方法は、重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構造単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を高分子反応させて導入する方法など、公知の方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中への不飽和結合、重合性基の導入量を制御することができる。
このように、レリーフ印刷版の適用用途に応じた物性を考慮し、目的に応じたバインダーポリマーを選択し、当該バインダーポリマーの1種を、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明におけるバインダーポリマーの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、0.5万〜50万が好ましい。重量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、水など溶媒に溶解しやすくレリーフ形成層を調製するのに好都合である。バインダーポリマーの重量平均分子量は、より好ましくは1万〜40万、特に好ましくは1.5万〜30万である。
バインダーポリマーの総含有量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の固形分全質量に対し、5質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜75質量%が好ましく、20質量%〜65質量%がより好ましい。
例えば、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物をレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した場合、バインダーポリマーの含有量を15質量%以上とすることで、得られたレリーフ印刷版を印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、また、75質量%以下とすることで、他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版をフレキソ印刷版とした際においても印刷版として使用するに足る柔軟性を得ることができる。
<(C)赤外線吸収剤>
本発明に係るレリーフ形成層用塗布液は、(C)赤外線吸収剤を含有することが好ましい。赤外線吸収剤は、レーザーの光を吸収し発熱する光熱変換剤としての機能を有することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。ゆえに、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
波長700nm〜1300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合には、本発明におけるレリーフ形成層は、700nm〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有することが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、具体的には、700nm〜1300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落〔0124〕〜〔0137〕に記載の染料を挙げることができる。
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
本発明に適用しうるカーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
この比表面積は好ましくは、少なくとも250、特に好ましくは少なくとも500m/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであってよい。カーボンブラックは、好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるバインダーの混合物も当然に、使用され得る。
約1500m/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjenblack(登録商標)EC300J、Ketjenblack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全質量の0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05質量%〜10質量%、特に好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲である。
<エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物>
本発明においては、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、これを形成するために、レリーフ形成層用塗布液には、エチレン性不飽和結合をする重合性化合物(以下、単に「重合性化合物」と称する場合がある。)を含有することが好ましい。
ここで用いうる重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。
以下、重合性化合物として用いられる、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、同結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーについて説明する。
本発明に係るレリーフ形成層は、膜中に架橋構造を有することが必要であることから、多官能モノマーが好ましく使用される。これらの多官能モノマーの分子量は、200〜2,000であることが好ましい。
単官能モノマー及び多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
本発明においては、重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有する重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有する重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又はチオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び−C−SO−から選択される少なくとも1つのユニットであることが好ましい。
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1個〜10個が好ましく、1個〜5個がより好ましく、1個〜2個が更に好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2個〜10個が好ましく、2個〜6個がより好ましく、2個〜4個が更に好ましい。
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、好ましくは120〜3000であり、より好ましくは120〜1500である。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
彫刻感度の観点からは、含硫黄多官能モノマー単独で用いる、若しくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様が好ましく、より好ましくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様である。
本発明に係るレリーフ形成層においては、含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物を用いることにより、膜物性、例えば、脆性、柔軟性などを調整することもできる。
また、レリーフ形成層中の含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、不揮発性成分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
なお、含硫黄多官能モノマーと他の重合性化合物とを併用する場合、全重合性化合物中の含硫黄多官能モノマーの量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
<重合開始剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落〔0074〕〜〔0118〕に挙げれている化合物を好ましく用いることができる。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
(c)有機過酸化物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
(l)アゾ系化合物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明における重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
重合開始剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。
<その他添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)好ましく用いられる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、彫刻感度向上のための添加剤として、ニトロセルロースや高熱伝導性物質、を加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
また、共増感剤を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度を更に向上させることができる。
更に、組成物の製造中或いは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料若しくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
更に、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
[レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版]
本発明に係るレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、本発明の製造方法によりえら得た本発明のレリーフ形成層を有する。レリーフ形成層は、後述する支持体上に設けられることが好ましい。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、光又は熱により硬化された状態のものをいう。該印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、本発明の製造方法により形成された、バインダーポリマー及び好ましくは赤外線吸収剤を含有する層であり、光及び熱の少なくとも一方により硬化する層、即ち、架橋性を有する層であることが好ましい。
本発明のレリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させ、次いでレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成することでレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
なお、レリーフ形成層は、レリーフ形成層用塗布液を用い、これを本発明の製造方法によりシート状或いはスリーブ状に成形することで形成することができる。
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に使用しうる支持体について説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET、PBT、PAN)やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
<接着層>
レリーフ形成層と支持体の間には、両層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用しうる材料は、レリーフ形成層が架橋された後において接着力を強固にするものであればよく、レリーフ形成層が架橋される前も接着力が強固であることが好ましい。ここで、接着力とは支持体/接着層間及び接着層/レリーフ形成層間の接着力の両者を意味する。
支持体/接着層間の接着力は、支持体/接着層/レリーフ形成層からなる積層体から接着層及びレリーフ形成層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上又は剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上又は剥離不能であることがより好ましい。
接着層/レリーフ形成層の接着力は、接着層/レリーフ形成層から接着層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上又は剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上又は剥離不能であることがより好ましい。
接着層に使用しうる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層は、レーザー彫刻後レリーフが造形される部分(レリーフ層)となり、そのレリーフ層表面はインキ着肉部として機能する。架橋後のレリーフ形成層は架橋により強化されているので、レリーフ形成層表面に印刷に影響を及ぼすほどの傷や凹みが発生することはほとんどない。しかし、架橋前のレリーフ形成層は強度が不足している場合が多く、表面に傷や凹みが入りやすい。かかる観点からは、レリーフ形成層表面への傷・凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。
保護フィルムは、薄すぎると傷・凹み防止の効果が得られず、厚すぎると取り扱いが不便になり、コスト高にもなる。よって、保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
保護フィルムは、印刷版の保護フィルムとして公知の材質、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はプレーンでもよいし、マット化されていてもよい。
レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60モル%〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
レリーフ形成層(及びスリップコート層)/保護フィルムから保護フィルムを200mm/分の速度で剥離する時、1cm当たりの剥離力が5〜200mN/cmであることが好ましく、10〜150mN/cmが更に好ましい。5mN/cm以上であれば、作業中に保護フィルムが剥離することなく作業でき、200mN/cm以下であれば無理なく保護フィルムを剥離することができる。
このようにして得られた本発明のレリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版は、常法にしたがってレーザー彫刻され、均一で耐刷性に優れやレリーフ層を有するレリーフ印刷版となり、多数枚の印刷に供される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
レリーフ形成層用塗布液の調製
撹拌ヘラ及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、バインダーポリマーとしてデンカブチラール#3000−2(ポリビニルブチラール、分子量9.0万、電気化学工業(株)製)49.65質量部、第1の溶媒としてエタノール66質量部を入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しバインダーポリマーを溶解した。ついで、モノマーとして下記に示す構造のM−1を15質量部、ブレンマーLMA(メタクリル酸n−ドデシル:日油株式会社製)を33質量部、重合開始剤としてパーブチルZ(t−ブチルパーオキソベンゾエート:日油株式会社製)を1.6質量部、光熱変換剤として、旭#80(N‐220、旭カーボン社製のカーボンブラック)0.75質量部を添加して30分間撹拌して、流動性のあるレリーフ形成層前駆体を得た。
なお、デンカブチラール#3000−2のエタノールに対する溶解量は55質量%であった。
Figure 2010173094
得られたレリーフ形成層前駆体を図1に示す装置を用いて乾燥し、ウエブ12から剥離することで、レリーフ形成層を得た。以下に、蒸気雰囲気乾燥部30での乾燥条件を記す。
(蒸気雰囲気乾燥部30の乾燥条件)
・アルミニウムウエブの搬送速度:0.4m/分
・チャンバー38の設置ゾーン:全長22mの乾燥ボックス36の開口から2m〜20mのゾーン
・第2の溶媒を含む加熱エアの温度:80℃
乾燥風量:10N m/min
・80℃の加熱エア中に含まれる溶媒蒸気量/飽和蒸気量:92%
・第2の溶媒蒸気を含む加熱エアの風量:25Nm3/min
・第2溶媒蒸気の種類:水
なお、ここでN(ノルマル)とは、上記風量が0℃、1atmにおける数値を示すことを意味する)
上記乾燥条件における乾燥中のレリーフ形成層の到達温度(表1には、「膜の到達温度」と記載する)を、安立計器株式会社製THERMO PRINTER AP−310型に表面温度測定センサー U−279E−00−DO−1を接続したもので測定したところ、いずれも80℃であった。
(レリーフ形成層の引っ張り強度の測定方法)
前記のようにして乾燥工程を経て得られたレリーフ形成層(厚さ0.9mm)をJIS K 6251 3号に規定されるダンベルを用いて打ち抜き、バネばかり(max1000g)を打ち抜いたレリーフ形成層の片側先端に引っ掛け、もう一方の片側先端を手で引っ張り、レリーフ層が破断した時のバネばかりの荷重の値を次式に挿入して求めた。4N/cm以上であれば製造プロセス上のハンドリングで問題ないレベルと言える。
(シート強度[N/cm])=
(破断時の荷重[kg]×9.8[m/s])/0.5[cm]
(膜厚均一性の測定方法)
得られたフレキソレリーフ形成層の10×10cmに切り出し、マイクロメーターを用いて任意の箇所の膜厚をn20で測定し、それをもとにEXCEL上で標準偏差(σ)を算出し、以下の基準で評価した。なお○及び△は、実用上問題のないレベルである。
○:標準偏差(σ)が30μm未満
△:標準偏差(σ)が30μm以上50μm未満
×:標準偏差(σ)が50μm以上
〔実施例2〜9〕
バインダー、第1の溶媒、第2の溶媒の種類、第2の溶媒の飽和蒸気量及び第2の溶媒の蒸気量の、80℃における第2の溶媒の飽和蒸気量に対する割合を表1記載の条件に変えた以外は実施例1と同様にして実施例2〜9のレリーフ形成層を得た。
〔比較例1、2〕
また、実施例1の乾燥工程において、第2の溶媒による蒸気雰囲気を形成せず、同条件で熱風乾燥のみ行った他は実施例1と同様にして比較例1とした。また、実施例1の乾燥工程において、第2の溶媒である水に代えて、バインダーポリマーを1質量%以上溶解するメチルエチルケトンを溶媒として蒸気雰囲気を形成した他は、実施例1と同様にして比較例2とした。
実施例2〜9、比較例1、2で得られたレリーフ形成層についても、実施例1と同様にしてレリーフ形成層の引っ張り強度、膜面状の測定を行った。
結果を下記表1に併記した。
Figure 2010173094
表1から分かるように、(A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成用樹脂溶液を塗布して、レリーフ形成用樹脂溶液層を形成する塗布工程と、前記バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下となる溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱する乾燥工程を経る本発明によれば、比較例に比べ、乾燥後の膜強度が強く、製造プロセスにおけるハンドリング性に優れ、面状が良好なレリーフ形成層が得られる。また、実施例1〜6と実施例7〜9との対比により、第2の溶媒の蒸気量を適切な範囲とすることで、面状性が一層向上することがわかる。

Claims (9)

  1. (A)バインダーポリマーと、(B)第1の溶媒を含むレリーフ形成層用塗布液を支持体に塗布して、レリーフ形成層用塗布液層を形成する塗布工程と、
    形成されたレリーフ形成層用塗布液層を、前記(A)バインダーポリマーの溶解度が25℃で1質量%以下である溶媒から選択される第2の溶媒の蒸気雰囲気下で加熱して乾燥する乾燥工程、とを含むレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
  2. 前記乾燥工程における第2の溶媒の蒸気量が、前記乾燥工程に付されるレリーフ形成層用塗布液層の到達温度における第2の溶媒の飽和蒸気量の25%以上100%未満である請求項1記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
  3. 前記乾燥工程における第2の溶媒の蒸気量が、前記塗布工程の後、乾燥工程に付される際のレリーフ形成層用塗布液層の温度における第2の溶媒の飽和蒸気量の40%以上95%以下である請求項1又は請求項2記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
  4. 前記乾燥工程における加熱条件が、レリーフ形成層用塗布液層の到達温度が30℃以上200℃以下の範囲となる加熱条件である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層の製造方法により得られるレリーフ形成層。
  6. 乾燥後の膜厚が0.3mm〜3.0mmである請求項5記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
  7. 乾燥後の膜厚が0.5mm〜2.0mmである請求項5又は請求項6記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
  8. さらに(C)700〜1300nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤を含有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
  9. 700〜1300nmのレーザーで彫刻可能である請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のレリーフ印刷版原版用レリーフ形成層。
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