JP2010163529A - 燃料添加剤 - Google Patents

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多市 黒田
Hisashi Matsubayashi
久 松林
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    • C10PETROLEUM, GAS OR COKE INDUSTRIES; TECHNICAL GASES CONTAINING CARBON MONOXIDE; FUELS; LUBRICANTS; PEAT
    • C10LFUELS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NATURAL GAS; SYNTHETIC NATURAL GAS OBTAINED BY PROCESSES NOT COVERED BY SUBCLASSES C10G, C10K; LIQUEFIED PETROLEUM GAS; ADDING MATERIALS TO FUELS OR FIRES TO REDUCE SMOKE OR UNDESIRABLE DEPOSITS OR TO FACILITATE SOOT REMOVAL; FIRELIGHTERS
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    • C10L10/02Use of additives to fuels or fires for particular purposes for reducing smoke development

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Abstract

【課題】フェロセン及び/又はフェロセン誘導体が添加剤や燃料中で容易に安定溶解することができ、燃焼促進効果を有意に発揮し得る高機能化燃料添加剤を提供すること。
【解決手段】燃料添加剤は、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、を含有する。フェロセン系成分とレシチンを含む固体状成分と、上記有機塩系成分を含む液体状成分とに区分され、 固体状成分を1〜20質量%、液体状成分を80〜99質量%の割合で含有する。
燃料中において、フェロセン系成分の濃度が1〜50ppm、レシチンの濃度が0.01〜400ppm、有機硝酸塩の濃度が1〜4200ppm及び/又は上記有機バリウム塩の濃度がBa換算で0.15〜630ppmとなるように使用される。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェロセン系成分を含有する燃料添加剤に係り、更に詳細には、レシチンと所定の有機塩系成分を更に含み、優れた燃焼促進、煤塵減少、NOx低減、及び黒煙・白煙低減などを実現し得る燃料添加剤に関する。
フェロセンとその誘導体は、各種液体燃料用の添加剤として従来から使用されている。例えば、特許文献1には、フェロセン及びその誘導体と、それを溶解する液体有機キャリヤーである芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤及び/又は石油系溶剤とから成る燃料添加剤組成物の存在下における液体炭化水素の改良燃焼方法が記載されている。
また、特許文献2には、ディーゼルエンジンのコンディショニング方法として、燃料に20〜30ppmのフェロセンを添加することで、燃焼室中の炭素含有付着物が除去され、運行距離当たりの燃料消費が5%程減少することが示されている。
更に、特許文献3には、重質残留油から成る内燃機関用燃料油に対する添加剤として、フェロセンとその誘導体とを他の添加物質を配合することなく、直接燃料に1〜100ppm添加してエンジンとその付属機器の炭素質付着物を減少させる方法が提案されている。
特開平2−132188号公報 米国特許第4389220号明細書 特許第3599337号明細書
しかし、これらの発明に使用されているフェロセン及びフェロセン誘導体は、芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤及び石油系溶剤への溶解度が非常に低いという欠点を有している。
フェロセンは一般に固体状であり、特に固体状フェロセンを溶解させるには、固体の大きさにも依存するが、かなりの攪拌力と時間を必要とする。僅かな添加量でも簡単には溶けず、燃料に添加する前に予め溶解しなければ内燃機関にトラブルが発生するため、攪拌機付き溶解タンクで溶剤に溶かしてから燃料に添加しているのが現状である。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体が添加剤や燃料中で容易に安定溶解することができ、燃焼促進効果を有意に発揮し得る高機能化燃料添加剤を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体をレシチンと併用するとともに、有機硝酸塩や有機バリウム塩などを加えることにより、安定溶解性と優れた燃焼促進効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の燃料添加剤は、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、を含有することを特徴とする。
また、本発明の燃料添加剤の好適形態は、上記フェロセン系成分とレシチンを含む固体状成分と、上記有機塩系成分を含む液体状成分とに区分され、
上記固体状成分を
1〜20質量%、上記液体状成分を80〜99質量%の割合で含有することを特徴とする。
更に、本発明の燃料添加剤の他の好適形態は、上記固体状成分が、78〜99質量%の上記フェロセン系成分と、0.9〜20質量%のレシチンと、0.1〜2質量%の水分から成り、
上記液体状成分が、20〜60質量%の有機硝酸塩及び/又は10〜30質量%のBa濃度が30質量%である有機バリウム塩と、10〜90質量%の有機溶媒から成ることを特徴とする。
また、本発明の他の燃料添加剤は、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、有機溶媒を含有する液体状燃料添加剤であって、
上記フェロセン系成分を0.5〜5質量%、上記レシチンを1〜40質量%、上記有機塩系成分を25〜70質量%、上記有機溶媒を残部質量%の割合で含有することを特徴とする。
更にまた、本発明の燃料添加剤の更に他の好適形態は、燃料中において、上記フェロセン系成分の濃度が1〜50ppm、上記レシチンの濃度が0.01〜400ppm、上記有機硝酸塩の濃度が1〜4200ppm及び/又は上記Ba濃度が30質量%である有機バリウム塩の濃度が0.5〜2100ppmとなるように使用されることを特徴する。
本発明によれば、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体をレシチンと併用するとともに、有機硝酸塩や有機バリウム塩などを加えることとしたため、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体が添加剤や燃料中で容易に安定溶解することができ、燃焼促進効果を有意に発揮し得る高機能化燃料添加剤を提供することができる。
以下、本発明の燃料添加剤につき詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、本発明の燃料添加剤は、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、を含有する。
また、通常は、フェロセン系成分とレシチンは固体状の形態をとって固体状成分の構成要素となり、有機塩系成分は液体状の形態をとって液体状成分の構成要素となる。
[燃料添加剤の構成成分]
以下、本発明の燃料添加剤の構成成分について説明する。
(1)フェロセン及びフェロセン誘導体
フェロセンは、正式にはビス(シクロペンタジエニル)鉄といい、またジシクロペンタジエニル鉄とも称される。本発明で用いるフェロセン誘導体は、ジシクロペンタジエニル環にアルキル基等の置換基を有する構造の化合物であり、例えばエチルフェロセン、ブチルフェロセン、アセチルフェロセン、2,2−ビスーエチルフェロセニルプロパン等を挙げることができる。
フェロセンとその誘導体(以下、「フェロセン類」ともいう。)の製造方法は、例えば、米国特許第2650756号明細書、米国特許第2769828号明細書、米国特許第2834796号明細書、米国特許第2898360号明細書、米国特許第3035968号明細書、米国特許第3238158号明細書、米国特許第3437634号明細書等に開示されている。
本発明において、フェロセン系成分は、微粉末状、粗粒子状、ペレット状等の固体であっても、液体であってもよく、本発明の燃料添加剤の形態によって適宜に選択することができる。それについては後に詳述する。
フェロセン系成分を含有することで、本発明の燃料添加剤は、燃焼促進作用、煤塵減少作用、NOx低減作用等を発揮することができる。
特に、内燃機関であるディーゼルエンジンでは、この燃焼促進作用により、弁、ピストンリング及び燃焼室への付着物の形成を抑制するクリーニング効果が見られる。この付着物は、エンジンの出力を低下させ、また付着した部品の磨耗を増大させるので、付着物の形成を抑制することは、ディーゼルエンジンの安定運転を実現するものである。
更に、燃焼促進、煤塵減少、NOx低減等の燃焼改質による燃焼時の過剰な空気の抑制により、数%のレベルでの燃料消費量の削減が実現できる。
(2)レシチン
レシチンは、グリセロリン脂質及びスフィンゴリン脂質を主成分とする動植物リン脂質である。
各種の植物油、例えば大豆油、菜種油、米ぬか油、パーム油、ヒマワリ油、ヤシ油、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、アマニ油、サフラワー油及びオリーブ油等の精製工程で得られる。通常、植物油を1〜50%含んでおり、この植物油の含有量や、植物油中の飽和酸と不飽和酸との比率に応じて、常温で液体と固体のものが存在する。また、近年は、油分抽出・真空乾燥することによって、液体レシチンから粉末レシチンが製造されている。
本発明において、レシチンは、通常、微粉末状等の固体であるが、液体であってもよく、意図する燃料添加剤の形態に応じて適宜に選択することができる。これについては後に詳述する。
(3)有機硝酸塩
有機硝酸塩としては、硝酸2−エチルヘキシル、硝酸アミル、硝酸イソアミル、硝酸ブチル、硝酸イソブチル、硝酸第一ヘキシル、硝酸第二ヘキシル、硝酸シクロヘキシル、硝酸オクチル、硝酸ヘプチル、硝酸−2−エトキシエチル、硝酸イソプロピル、及び2,2−ジニトロプロパン等を挙げることができ、これらは一般的にセタン価向上剤として使用される原料である。
合成方法はアルコールと硝酸とのエステル化である。2,2−ジニトロプロパンは一般的には2−ニトロプロパンの硝酸による硝化で製造される。
(4)有機バリウム塩
有機バリウム塩としては、石油スルホン酸バリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリウム、並びに脂肪酸バリウム塩としてのアマニ油脂肪酸バリウム、ヤシ油脂肪酸バリウム、オレイン酸バリウム及びナフテン酸バリウム等がある。
なお、有機バリウム塩におけるBa濃度は適宜変更できるが、燃料添加剤としては安価で高濃度のバリウム塩が望ましいので、過塩基性バリウム(高塩基性バリウムとも称される。)が多く使用されている。
本発明では、Ba濃度が30%の有機バリウム塩を好ましく使用できるが、通常、過塩基性バリウムは高粘度状態であるため、一部溶剤を含ませて流動性を維持している。
過塩基性バリウムの一般的な製造方法は、以下の通りである。
まず、油溶性スルホン酸、油溶性カルボン酸及びこれらの金属塩及びアミノ塩等の油溶性分散剤と、鉱物潤滑油や合成潤滑油等の非揮発性溶剤と、石油ナフサ、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等のプロセス溶媒と、水との混合物を調製する。
次いで、この混合物に合計必要量の約55〜90%の塩基性バリウム化合物のアルコール溶液(脂肪族1価アルコール、3ないし4の炭素原子を有するエーテルアルコール等)を加える。そして、加温状態(75〜95℃)を維持しながら、得られた混合物に炭酸ガス(CO)を通じる。この炭酸化された混合物に、上記必要量の残量の塩基性バリウム化合物のアルコール溶液を加えて揮発性物質を除去する。そして、炭酸化して過塩基性バリウムを得る。
[燃料添加剤の形態]
本発明の燃料添加剤は、固体状ないしは液体状の形態をとることができるが、具体的には、固体と液体の混合系、及び液体系の形態をとることができる。
(1)固体と液体の混合系
(i)固体状成分
上述のように、本発明において、固体状成分はフェロセン系成分とレシチンを含むが、78〜99%のフェロセン系成分と、0.9〜20%のレシチンと、0.1〜2%の水分を含むことが好ましい。
レシチンの含有量が0.9%未満では、フェロセン系成分が燃料に溶解し難いことがあり、レシチンを20%を超えて含有させても、フェロセン系成分の溶解性を向上する機能が飽和する。
フェロセン系成分は、常温において固体の形態であることが好ましく、例えば、微粉末状、粗粒子状及びペレット状などの形態を挙げることができる。この場合、その粒径は0.1mm〜15mmであることが好ましく、より好ましくは0.5mm〜5mmである。
フェロセンの粒径が0.5mm未満では、飛散のために作業性に劣ることがあり、15mmを超えると、解膠性が低下して溶解性が下がる可能性がある。
一方、レシチンも、常温において固体状、具体的には粉末状の形態であることが好ましく、粒子径が1mm以下の微粉末状の形態をとることが更に好ましい。このような微粉末状形態であれば、フェロセン系成分との混合がより均一になり、造粒に便利である。
また、かかる粉末状レシチンは吸湿性が高く、少量の水分を混合することで造粒に適する粘着性を生じるが、水分が0.1%未満では、十分な粘着性が生じない可能性があり、2%を超えると、水分が過剰となり粉末状フェロセン系成分と粉末状レシチンが塊状化するおそれがある。
(ii)液体状成分
上述のように、本発明において、液体状成分は有機塩系成分、即ち有機硝酸塩及び有機バリウム塩の少なくとも一方を含むが、有機硝酸塩を20〜60%及び/又は有機バリウム塩(Ba濃度30%もの)を10〜30%、有機溶媒を10〜90%の割合で含有することが好ましい。
有機硝酸塩を単独使用する場合、その含有量が20%未満では、燃焼促進、煤塵減少及び白煙減少効果の低下を生じることがあり、60%を超えると、その効果は飽和に達するので、経済的にも好ましくない。また、有機バリウム塩(Ba濃度30%もの)を単独使用する場合、その含有量が10%未満では、燃焼促進、煤塵減少、NOx減少及び黒煙減少効果の低下を生じることがあり、30%を超えると、その効果も有機硝酸塩と同様に頭打ちになる。
有機溶媒の含有量が10%未満では、高粘度によって燃料添加剤としてのハンドリング性が低下したり、高濃度によって燃料油に注入する場合の注入ポンプの制御が煩わしくなることがあり、90%を超えると、有効成分量が低過ぎて本来の目的である燃焼促進、煤塵減少、及び黒煙・白煙低減などの効果が低減することがある。
なお、有機溶媒としては、トルエンやアルコールなどの各種極性溶媒、植物油及び鉱物油を使用できるが、取扱い性やコストの観点からは、鉱物油を用いることが好ましい。
この場合、鉱物油としては、炭化水素系の重油、軽油及び灯油等を例示できる。例えば、船舶用の大型ディーゼルエンジン等の燃料として用いられるC重油に対しては、A重油、B重油、軽油、灯油等を好ましく用いることができ、更に好ましくはA重油を用いることができる。
また、有機バリウム塩としては、通常、炭酸根と有機酸と有機溶媒を含むものが市販されており、本発明では、Ba濃度が30%のものを好適に使用することができるが、このような有機バリウム塩としては、上記液体状成分において、BaがBa換算で3〜9%となるように含まれていれば十分であり、必ずしもBa濃度30%である有機バリウム塩を使用する必要はない。
本発明の燃料添加剤において、上述の固体状成分と液体状成分とは、固体状成分を1〜20%、液体状成分を80〜99%の割合で含まれることが好ましい。
固体状成分が1%未満では、フェロセンの持つ燃焼促進効果が得られないことがあり、20%を超えると、それ以上の効果が期待できず、また、高価になるので好ましくない。また、液体状成分が80%未満では、固体状成分との相乗効果が得られ難いことがあり、99%を超えると、液体状成分の機能に近くなり且つ固体状成分との相乗効果が得られ難いことがある。
なお、本発明の燃料添加剤において、上述の固体状成分と液体状成分とは常時混合状態で共存させておく必要はなく、使用時において両成分を混合してもよい。
例えば、本発明の燃料添加剤を船舶の内燃機関やプラントのボイラーなどに使用する場合、燃料又は鉱物油入りサービスタンクに、上記固体状成分と上記液体状成分(この場合、鉱物油を省略することも可能である)を投入し溶解させて使用することができる。また、燃料又は鉱物油入りサービスタンクに固体状成分を溶解させ、その配管ラインに上記液体状成分(この場合、鉱物油を省略することも可能である)をポンプ注入して使用することも可能である。
(2)液体系(液体状燃料添加剤)
上述の固体状成分と液体状成分は、現場操業条件などに応じてその混合割合を現場で任意に変更できるのに対し、この液体状燃料添加剤(液体系)は、有効成分割合を最も代表的な割合で混合溶解した一液タイプであり、しかも安定な分散状態ないしは溶解状態を維持し、運搬や取扱い性に優れるものである。
詳細には、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、有機溶媒を含み液体状をなす燃料添加剤とすることができる。
この場合、フェロセン系成分の含有量は0.5〜5%、レシチンの含有量は1〜40%、有機塩系成分の含有量は25〜70%、鉱物油などの有機溶媒の含有量は残部%とすればよい。レシチンが1%未満では、フェロセン系成分が有機溶媒、特に鉱物油に溶解し難いことがあり、レシチンを40%超で含有させても、鉱物油に対するフェロセン系成分の溶解性向上効果が飽和する。
なお、この液体状燃料添加剤において、フェロセン系成分、レシチン、有機溶媒及び鉱物油の材質や性状は、上述の固体と液体との混合系の場合と同様であるので、その説明を省略する。
[構成成分の効能]
本発明の燃料添加剤における各種構成成分の効能の詳細は必ずしも明らかではないが、現時点では、以下のようなものであると思われる。
(1)レシチンの効能
本発明において、レシチンは主に次の効能を有する。
(i)燃料に対するフェロセン類(フェロセン系成分)の溶解性及び溶解度の向上。
(ii)燃料油中のスラッジの分散。
(iii)粒子状(固体状)成分の製造における造粒時のバインダー機能。
(iv)粒子状(固体状)成分の燃料又は溶媒への投入時における解膠機能。
(v)液体状燃料添加剤におけるフェロセン類の鉱物油に対する溶解性の向上。
以下、上記の各効能について説明する。
(i)燃料に対するフェロセン類の溶解性及び溶解度の向上
上述のようにフェロセン類は、各種燃料に対する溶解性及び溶解度が低いという欠点を有している。
ここで「燃料」としては、ディーゼルエンジン、油燃焼炉及びボイラー装置等の燃料油として用いられるA重油、灯油や軽油等の軽質油、重質油、重質残渣油、潤滑油、廃油及びこれらの混合油、更にこれらのエマルション燃料、また石炭等の固体燃料等を挙げることができるが、形状が気体以外の燃料であればこれらに限定されるものではない。
例えば、フェロセン単独の場合、ベンゼン、トルエン及びキシレン以外の芳香族系溶剤や、脂肪族系溶剤等の石油系溶剤への溶解度は非常に低く、20℃において最大3%濃度までしか溶解しない。また、長期的に安定な溶液のフェロセン濃度は、せいぜい2.5%程度である。重油等の燃料にフェロセンを溶解した場合も同様である。
しかし、所定量のレシチンを添加することによって、フェロセンを5%濃度まで溶解することが可能となり、その溶液の安定性は幅広い温度域で良好となる。
A重油に対するフェロセン最大溶解度とレシチン添加量との関係を表1に示す。
Figure 2010163529
このように溶解促進作用を有するレシチンの添加により、各種燃焼設備の燃料又は燃料添加剤自体にフェロセン類を容易に溶解させて安定な溶液を得ることができるので、燃焼機関にフェロセン類を均一な微粒子状で噴霧することが可能となる。その結果、フェロセン類の持つ効能を十分に発揮させることができるようになる。
なお、レシチンは親油性部分と親水性部分を有するため、界面活性剤として働くことが知られているが、本発明では、レシチンの親油性部分の働きにより溶解性等が向上するものと考えられる。即ち、燃料にフェロセン類とレシチンを溶解すると、フェロセン類の表面にレシチンの親油性部分の一部が速やかに吸着し、それ以外の親油性部分がフェロセン類の表面で親油性を増強することによって、燃料油への溶解性及び溶解度の向上に寄与すると考えられる。
これらの効能は、親油性の強い非イオン系界面活性剤などの他の界面活性剤には見られず、レシチン固有の特異的なものである。
(ii)燃料油中のスラッジの分散機能。
この機能は、上述のフェロセン類の溶解促進機能とは異なり、レシチン自体が燃料添加剤として働き、ディーゼルエンジンを始めとする燃焼設備の長期安定運転に寄与するものである。
スラッジは、特に重質系の燃料油中に存在する不溶物であり、沈降しやすいためにストレーナーの閉塞トラブルや燃焼不良の原因となるものである。その発生は、原油の精製過程における熱処理や、接触分解、熱分解等によって、釜残油中に残存する炭化水素が、酸化、重合、縮合されて水素分の少ない高分子の炭化水素に変化することに起因する。
上述の変化は、炭化水素→マルテン→アスファルテン→カーベン→カーボイド→カーボンの順に起こり、これらの高分子は、最初は巨大な分子のコロイドとして重油中に存在する。該コロイドは、カーベンやカーボイド等のC/H比の極めて高い炭化水素を核としてその周りをいくらかのアスファルテンが囲み、さらにその周りを順次C/H比の低い高分子炭化水素が覆うものと考えられる。
このようなコロイド粒子として重油中に存在するアスファルト性物質は、安定したコロイド状で分散して浮遊していれば、沈殿することはなく、ストレ−ナの閉塞や燃焼不良等の問題を起こすことはない。しかし、このコロイド粒子は極性を持ち、吸着性がある。そのため、加熱、異種の油等との混合、長時間の貯蔵などにより平衡状態が崩れると、コロイド粒子同士が次々に結合や会合を行い、大きな粒子の集合体(ミセルコロイド)となり、沈殿してスラッジが形成される。
具体的には、上記コロイド粒子を有する重油に軽質分が加えられた場合、コロイド表層部の高分子炭化水素やマルテンは溶解されるが、アスファルテンやカーボイド等は不飽和であり、極性を有するために、互いに結合して巨大なアスファルテン粒子が析出し、スラッジが形成される。また、熱が加えられた場合、コロイド表層部は溶解し、更に温度上昇により粘度が低下することで粒子運動が盛んになり、アスファルテン同士が衝突する機会が多くなることで結合・会合してスラッジが形成される。
レシチンは、これらのカーボンやアスファルテン質等のスラッジの結合や会合内に浸透及び吸着し、界面活性剤として働くことによって、その分散力でスラッジを細分化する機能を有する。また、この機能により異種燃料の混合や加熱によるコロイド粒子の結合等を防ぐことでスラッジの析出沈殿を防止する効果をも有する。
(iii)粒子状成分の製造における造粒時のバインダー機能。
上述のように、粒子状成分(固体状成分)を造粒する際にレシチンは少量の水分と混合されることで造粒に適する粘着性を生じ、バインダーとしての役割を担う。
(iv)粒子状成分の解膠作用。
粒子状成分に含まれるレシチンは、燃料添加剤を燃料に投入した際に粒子を砕けやすくする解膠作用を有する。砕かれた添加剤は、更にレシチンの溶解性向上作用により非常に溶解しやすくなる。
(v)液体状燃料添加剤におけるフェロセン類の鉱物油に対する溶解性の向上。
フェロセン類は、鉱物油に対する溶解度が非常に低く、約2.5%の濃度までしか溶解しない。しかし、所定量のレシチンを添加することによって、フェロセンを5%の濃度まで溶解することが可能となり、その溶液の安定性は幅広い温度域で良好となる。
(2)有機硝酸塩の効能
有機硝酸塩はセタン価向上剤として使用されるが、その効能には、デイ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を下げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火までの時間)を改善し未燃分の減少させる効果等がある。
硝酸アルキル(硝酸第一ヘキシル)を例にとると、以下のように、硝酸アルキル(硝酸第一ヘキシル)は、まず前炎段階で二酸化窒素(NO)とアルコキシ基(RO)に分解(自己分解)する。
RONO→RO・+ NO
二酸化窒素(NO)は、燃料油分子中の水素を奪って連鎖反応を開始させるアルキル基(R)と亜硝酸(HNO)を生成する。
RH+NO→R・+HNO
そして、亜硝酸(HNO)は酸素と反応してHO基を生じ、二酸化窒素(NO)を反応系内に戻す。
HNO+O→HO・+NO
亜硝酸はまた、高温にて分解して非常に反応性の高いOH基を生成する。
HNO→OH・+NO
生成したアルキル基(R)及びアルコキシ基(RO)は容易に次の反応に進み、酸化生成物や遊離基を生成する。
過酸化物がセタン価向上剤として上述のデイ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を下げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火までの時間)を改善し未燃分の減少させる作機能等があるのは、アルコキシ基が迅速に生成されるからである。
硝酸アルキルの炭化水素の部分が重要な役目を演ずるのは、アルコキシ基の分解の容易さを別にしても、分子中のNOの部分と炭化水素の部分の間にかなりの相互反応が起こっているためと推定される(石油製品添加剤 桜井俊雄編著67〜69頁参照)。
(3)有機バリウム塩の効能
有機バリウム塩は燃焼促進剤として使用されている。その効能は以下の通りである。
(i)環状化阻止機能
有機バリウム塩のバリウムは非常に電子密度が高く、炭素、水素が環状化する上で立体障害となるため、未燃カーボンの基本体がベンゼンを形成するのを阻止する。
(ii)酸化バリウム(BaO)の酸素逓伝体(Oxygen Carrier)としての機能
有機バリウム塩は燃焼中に際しBaOとなり、下記の反応により活性酸素を放ち、この酸素が炭素と水素の完全燃焼に役立つ。即ち、酸化触媒作用を持つ金属化合物、特に、有機バリウム塩を添加することにより、煤塵の主体をなす未燃カーボンの量を大幅に減少させることができる。また、合わせてNOxの低減の効果を有する。
火炎外層域での酸化触媒作用(酸素の逓伝作用)の反応式
C+BaO+O→BaO+1/2O+C→ BaO+CO
また、有機金属塩、特に有機バリウム塩は、非常に活性に富み、燃料油のスラッジに対して優れた分散効果を有し、ストレージタンクやサービスタンク内でのスラッジの沈降を防止し、燃料配管、加熱器及びストレーナー等でのスラッジの付着、閉塞を防止する。
[燃料添加剤の用量]
(フェロセン系成分、レシチン、有機硝酸塩及び有機バリウム塩の燃料中での濃度)
本発明の燃料添加剤は、船舶や発電設備等で使用されるディーゼルエンジン、油燃焼炉及びボイラー装置等に用いる各種燃料において、フェロセン系成分の濃度が1〜50ppm、レシチンの濃度が0.01〜400ppm、有機硝酸塩1〜4200ppm及び/又は有機バリウム塩はBa換算で0.15〜630ppm(Ba濃度30%の有機バリウム塩については0.5〜2100ppm)となるように添加して使用することが好ましい。
更に詳しくは、通常は、フェロセン系成分の濃度について、油燃焼炉及びボイラー装置では1〜10ppm、ディーゼルエンジンでは10〜50ppmとなるように連続注入して用いることが好ましい。
但し、燃焼機関の状態によっては、目的とする燃焼促進作用、煤塵減少作用、NOx低減、黒煙・白煙低減作用等を大幅に改善させようとする場合に、この連続注入量の数〜数十倍量を一時的に短時間注入することができる。
上記レシチンの濃度は、燃料油及び燃料添加剤自体に対し、フェロセン系成分を容易に安定的に溶解させるのに有利な濃度であり、特に重質系の燃料油では、更にスラッジを分散させるのに有利な濃度で、燃焼設備の長期安定運転に寄与することができる。
上述のように、有機塩系成分については、船舶や発電設備等で使用されるディーゼルエンジン油燃焼炉及びボイラー装置等に用いる各種燃料において、有機硝酸塩が1〜4200ppm若しくは有機バリウム塩(Ba濃度30%)が0.5〜2100ppm、又は有機硝酸塩が1〜4200ppmで且つ有機バリウム塩(Ba濃度30%)が0.5〜2100ppmとなるように添加して使用することが好ましい。
有機塩系成分の一方のみを使用する場合、有機硝酸塩の添加量が1ppm未満か又は有機バリウム塩の添加量(Ba濃度30%)が0.5ppm未満では、燃焼促進効果が殆ど得られず、有機硝酸塩を4200ppm超か又は有機バリウム塩(Ba濃度30%)を2100ppm超添加しても燃焼促進効果は頭打ちとなる。
有機塩系成分のより好ましい添加量は、有機硝酸塩が200〜2000ppm及び/又は有機バリウム塩(Ba濃度30%)が100〜1000ppmである。
特に、ディーゼルエンジン起動時に頻繁に観られる煤塵に起因する黒煙対策には、有機バリウム塩1000ppm以上が有効であり、また、潤滑油に起因すると思われる白煙対策には、有機硝酸塩2000ppm以上が有効である。
これらの対策には超高添加量を必要とするため、30分から1時間程度の一時的な対応策が効果的であり、有機塩系成分を燃料等で溶解させずに配管ラインにポンプで直接注入して、タンクへのフェロセン・レシチン系の燃料添加剤の投入と併用する。
有機硝酸塩はセタン価向上剤として使用されるが、船舶や発電設備等で使用されるディーゼルエンジン油燃焼炉及びボイラー装置等に用いる各種燃料において、その効能は、デイ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を下げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火までの時間)を改善し未燃分の減少させる効果などとして現れる。
一方、有機バリウム塩は燃焼中に際しBaOとなり、上述の反応により活性酸素を放出し、この酸素が炭素と水素の完全燃焼に役立つ。即ち、酸化触媒(燃焼促進)機能を発揮して、煤塵の主体をなす未燃カーボンの量を大幅に減少させることができる。また、燃料油中のスラッジ分散効果をも併有する。
本発明は、スラッジ分散効果を有するレシチンを用いることにより、フェロセン類の燃料油及び燃料添加剤中への安定な高濃度溶解を実現するものであり、フェロセン類自体が有する燃焼促進効果を十分に発揮させることができる。
また、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩を添加することにより、有機硝酸塩によるデイ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を下げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火までの時間)を改善して未燃分の減少させる効果、つまり燃焼初期の未燃分を減少する効果を得ることができる。更に、有機バリウム塩も酸化触媒として機能し、煤塵の主体をなす未燃カーボンの減少及びスラッジ分散効果を発揮する。
このように、本発明においては、フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩成分とを併用することによる相乗効果が得られ、各成分の持つ効能以上の燃焼促進、煤塵減少及びNOx低減等の利点が強化されたものと推察する。
船舶等での長期連続運転に際してはコスト面も考慮する必要があり、一般にフェロセン系成分と有機塩系成分の経済コストが比較的高いため、各種燃料に対してフェロセン系成分の添加量が低い場合は有機塩系燃焼促進剤の添加量を高く、逆にフェロセン系成分の添加量が高い場合は有機塩系燃焼促進剤の添加量を低い状態で使用するのがより好ましい。
例えば、フェロセン系成分が1〜10ppmの低添加量の場合、有機硝酸塩を200ppm以上及び/又は有機バリウム塩(Ba濃度30%)を100ppm以上で使用するのが経済的である。
また、フェロセン類が25〜50ppm以上の場合、有機硝酸塩を1〜200ppm及び/又は有機バリウム塩(Ba濃度30%)を0.5〜100ppmで使用するのが経済的である。
有機塩系成分の添加量が1000ppm以上の超高添加量は、上述の一時的な対策時に採用される。即ち、ディーゼルエンジン起動時によく観られる煤塵に起因する黒煙対策には有機バリウム塩(Ba濃度30%)1000ppm以上が有効であり、また潤滑油に起因すると思われる白煙対策には有機硝酸塩2000ppm以上が有効である。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、各種特性の評価は下記の要領で行った。
[フェロセンの溶解性試験による評価]
(参考例1〜4(固体状成分)及び比較例1)
燃料油としてのA重油(硫黄分=0.09%、粘度=2.8cst(50℃))200gに対し、20℃、60rpmで攪拌しながらフェロセンを添加し、フェロセン濃度が3%に至るまでの溶解速度を秒数で評価した。
次いで、更にフェロセンを添加して安定な溶解液を最大濃度で作製し、室温に静置して1週間後の状態で安定性を評価した。各例の配合とともに、得られた結果を表2に示す。
Figure 2010163529
表2より、参考例1〜4の固体状成分は、比較例1と比較して、フェロセン濃度が3%に至るまでの溶解速度が極めて速いことが分かる。
また、安定な溶解液の濃度について、比較例1が3%で不溶物が多い状態であるのに対し、参考例1〜4では3.5〜5.0%の濃度が可能となった。更に、参考例1〜4の1週間後の安定性評価は○〜◎の結果となった。このように本発明の燃料添加剤に用いる固体状成分は、フェロセンの溶解速度、溶解濃度及び安定性評価の全ての面において優れていることが分かる。
(実施例1〜8及び比較例2)
表3に示すように、実施例1〜4については、有機塩系成分を含む液体状成分を25〜60%と、参考例1又は参考例4の固体状成分を0.65〜5%と、A重油を39〜72%とを混合溶解させて、試料を調製した。
また、実施例5〜8(液体状燃料添加剤)については、A重油を28.5〜66%と、有機塩系成分を含む液体状成分を25〜70%と、液状レシチンを1〜20%混合し、更にフェロセンを0.5〜5%加え、試料を調製した。
20℃、60rpmで攪拌しながら、A重油にフェロセンが完全に溶解するまでの溶解速度を秒数で評価した。得られた溶解液を室温にて静置して1週間後の状態で安定性を評価した。試験は200gスケールで行った。得られた結果を表3に併記する。
Figure 2010163529
表3より、本発明に属する実施例1〜8は、比較例2と比較して、燃料添加剤の調製時において、A重油に対し所定量のフェロセンが完全溶解に至るまでの溶解速度が極めて速いことが分かる。また、1週間後の安定性評価は○〜◎の結果となった。このように本発明の燃料添加剤は、フェロセンの溶解速度、溶解濃度及び安定性評価の全ての面において極めて優れていることが認められた。
[スラッジ分散効果]
表2及び表3に記載の参考例、実施例及び比較例の試料を用いてスラッジ分散試験を行った。
試験は日本船主協会法に準じて行った。試験結果を表4に示す。
操作手順
(1)C重油0.1gを試験管に採り、これにノルマルヘプタン20mlを加えた。これに実施例1〜8及び比較例2の液体燃料添加剤を0.02ml(1/1000)添加した。固体状成分の参考例1〜4及び比較例1は0.02g添加した。
(2)試験管に栓をして完全に混ざるまで20回以上強く振盪した。
(3)これを室温で静置し、経過時間毎の分散状態を、次の基準によって判定した。
判定基準
A…完全に分散し沈殿のないもの。
B…分散はしているが沈殿のあるもの。
沈殿量の少ないものから順に、B1、B2、B3とする。
C…分散しないもの(ほとんど沈殿しているもの)。
Figure 2010163529
表4より、本発明の燃料添加剤に用いる固体状成分(参考例1〜4)、及び本発明に属する燃料添加剤(実施例1〜8)は、比較例1、2及び無添加の場合と比較して極めて優れたスラッジ分散効果を有することが分かる。
レシチンを含有しない比較例1、2では全く効果が見られず、無添加のC重油と同じであった。なお、レシチンの効果は、概ね添加量に比例した結果であった。
[燃焼速度の測定]
本発明の範囲に属する燃料添加剤(実施例1〜8)及び比較例2の燃料添加剤を添加した燃料油(C重油…上記スラッジ分散効果の評価に用いたものと同じ)10mgを示差熱天秤TG/DTA6300(セイコーインスツメンツ株式会社製)を用いて、昇温速度100℃/分にて500℃まで加熱燃焼させ(残炭生成終了点での質量をm1とする)、500℃で保持した時の生成残炭(95%燃えきり点の質量をm2とする)の質量減少曲線から、TG(熱重量分析)残炭燃焼速度定数を算出した。供給空気量は100ml/分とした。算出方法には次式(I)を用いた。※1、※2
TG残炭燃焼速度定数=A×T×In(m1/m2)/τ・・・(I)
A :定数
T :温度
m1:残炭生成終了点での質量
m2:95%燃えきり点の質量
τ :(m2−m1)時間
※1 柴山ら、日本機械学会論文集、34(260)、769(1968)
※2 候ら、日本機械学会論文集、54(507)3301(1988)
試験結果を表5に示す。
Figure 2010163529
表5より、本発明に属する燃料添加剤(実施例1〜8)の1000ppm添加は、比較例2の燃料添加剤の1000ppm添加と比較して高いTG残炭燃焼速度定数(相対速度定数)を実現することが分かる。
また、実施例1〜8の添加剤を1000ppm添加すると、比較例2の添加剤を2000ppm添加するよりも高いTG残炭燃焼速度定数(相対速度定数)が得られた。
これは、レシチンのフェロセンに対する溶解度の向上とスラッジ分散効果との相乗効果と、更に有機硝酸塩、有機バリウム塩による燃焼促進の相乗効果であると推察できる。
レシチンを含有しない比較例2では、フェロセンは添加剤液中で不安定であるので燃料油中でも溶解が不十分と考えられる。
また、比較例2では、スラッジ分散効果、有機硝酸塩、有機バリウム塩による燃焼促進の相乗効果もないため、フェロセンの相対含有量が同じ実施例1と比較(実施例1と比較例2とはフェロセン濃度が2.4%、2.5%とほぼ同じ)や、実施例2〜8と比較しても効果が劣ったと思われる。
[可視化燃焼試験装置(OCA:Optic Combustion Analyzer)による燃焼試験]
(実施例1a〜8a、及び比較例2a)
OCA燃焼試験装置において、燃焼室内に気体燃料と酸素、窒素の混合ガスを充填して燃焼させ容器内を高温、高圧の雰囲気とする。次に、内部の温度が下って行き内部圧力も下って所定の圧力になった時点で、燃料を噴霧して燃焼させる。
その時点の酸素濃度は空気に近いように21vol%の設定になっている。その燃焼火炎の観察は、高速ビデオカメラで(2000コマ/秒)による可視化撮影、光センサーによる工学測定、容器内の圧力履歴から熱発生率などから多角的、総合的に燃焼性が評価される。
その中で光センサーによる工学測定では、着火遅れの時間(燃料を噴射し始めてから着火するまでの時間)と、後燃えの時間(燃料を噴霧し終わってから燃え終わるまでの時間)の合計タイムの短い方が燃焼性が良好であると言える。
なお、OCA燃焼試験装置は、岡山大学工学部、(株)栄和技研及び(株)商船三井技術研究所の3者共同開発に係るもので、これを使用した。
また、試験時の容器内圧力は1.8MPaとし、燃料油としては、A:380cStのC重油と、B:超低粘度低硫黄燃料油を使用した。燃料油の性状を表6に示す。
なお、実施例1a〜8a及び比較例2aは、表3に示した実施例1〜8、比較例2の燃料添加剤を燃料油に対し、全て1/200(0.5%)で用いて試験を実施したものである。この試験における燃料油中の燃料添加剤の各有効成分の配合割合を表7に示す。
Figure 2010163529
Figure 2010163529
Figure 2010163529
表8より、比較例2aのフェロセンのみでも、2種類の燃料油のみに対して着火遅れ及び後燃えの時間が短縮されており、無添加油に対する優位差が認められた。しかし、フェロセンにレシチン及び有機硝酸塩(硝酸第一ヘキシル)を添加した実施例1a及び5aでは、比較例2aに比べ顕著な燃焼促進効果が得られた。また、フェロセンにレシチン及び有機バリウム塩を添加した実施例2aも同様に燃焼促進効果が得られた。
更に、上記4成分を添加した実施例3a、4a及び6aはフェロセンの含有量が少ないが、フェロセン濃度が比較的高い実施例1a及び2aに匹敵する効果が得られた。これは、有機硝酸塩(硝酸第一ヘキシル)と有機バリウム塩の相乗効果で燃焼促進効果が増進されたものである。実施例7a及び8aはフェロセン及びレシチンの濃度が高く、また、有機硝酸塩(硝酸第一ヘキシル)、有機バリウム塩を適量添加しているので極めて良好な燃焼促進効果が得られた。
総合的に勘案すると、有機硝酸塩の添加は着火遅れ時間の向上に、一方、有機バリウム塩の添加は後燃えの向上に寄与しているようにも窺えるが、4成分の混合によって、総合的且つ相乗的に燃焼効率が向上したものであると推測される。
以上の結果は、2種類の燃料油での燃焼試験であるが、高密度の高粘度油(燃料油A)及びデイ―ゼルエンジンの燃焼不良を生じやすい高密度の低粘度低硫黄燃料油(燃料油B)とも十分な燃焼促進効果の改善が得られている。
[ディーゼルエンジンによる実機試験]
実施例1の固体状成分と液体状成分(有機塩系成分)との組み合わせに係る燃料添加剤、実施例6の液体状燃料添加剤、及び比較例2の燃料添加剤を用いて、ディーゼルエンジンを備えた下記の仕様の貨物船で実機試験を行った。
実機試験は、実施例1に記載の混合割合になるよう攪拌機付溶解タンク内で、固体状成分9kgと有機塩系成分75kgをA重油216Kgに溶解させて行った。
実施例6と比較例2は、予め表3の配合でA重油に溶解させた液体状燃料添加剤であるため、攪拌機付溶解タンク内にそのまま投入した。更に、実施例1と実施例6と比較例2の添加剤を、該溶解タンクから注入ポンプで燃料(C重油)ラインに1/1000添加で注入した。
各添加剤について1ヶ月(30日)ごと交互に6ヶ月に亘って上記の方法で添加を行い(各燃料添加剤について、1ヶ月間×2回)、燃料消費量及び熱交換機の汚れ具合を目視観察して比較した。その後、水洗浄を行い汚れの除去性を比較した。得られた結果を表9に示す。なお、試験に供した貨物船と燃料油の性状は下記の通りである。
貨物船の仕様
総トン数 :160,000トン
載貨重量トン数 :300,500トン
連続最大出力 :21,300KW×74rpm
シリンダー数 :10個
ターボ過給機の回転数 :10,000rpm
燃料消費量 :90,000L/day(無添加時)
燃料油(C重油)の一般性状
密度(15℃):0.984
粘度(50℃):401cst
硫黄分(%):3.61
残留炭素分(%):13.4
アスファルテン(%):8.98
Figure 2010163529
表9に示した結果は、実船での試験結果であり、燃料消費量は風、潮の流れ、出力の相違等によって影響を受けるが、それぞれの項目について2回の試験とも同様の結果となったので、本評価は正しいものと判断できる。
本発明に属する固体状成分と液体状成分(有機塩系成分)との組み合わせに係る燃料添加剤(実施例1)、及び液体状燃料添加剤(実施例6)では、比較例2と比較して燃料消費量が少ない結果となった。
これは、レシチンがフェロセンの溶解性及び溶解度を向上させ、更にレシチン自体のスラッジ分散効果により、微細で安定した燃料噴霧が実現され、また、有機硝酸塩と有機バリウム塩を加えることで燃焼促進作用が向上したため、総合的且つ相乗的に燃焼効率が向上したものである。熱交換機の汚れも比較例2の場合に比べて清浄であり、簡単な水洗で除去できるという優位性がみられた。
その裏付けとして、実施例1の燃料添加剤を溶解タンク内に溶解させた場合、投入後、速やかに崩壊分散して約10分で完全に溶解し、また試験中も溶解タンク内には全く沈殿物・浮遊物は観られないことが確認された。また、実施例6と比較例2の燃料添加剤は予め溶解してあったが、実施例6の試験終了後の溶解タンク内は全く沈殿・浮遊物が観られないのに対して、比較例2では溶解タンク内で再度攪拌中も一部浮遊物が観られ、試験終了後の溶解タンク内にはフェロセン不溶解分の沈殿・浮遊物が観られた。

Claims (5)

  1. フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、を含有することを特徴とする燃料添加剤。
  2. 上記フェロセン系成分とレシチンを含む固体状成分と、上記有機塩系成分を含む液体状成分とに区分され、
    上記固体状成分を1〜20質量%、上記液体状成分を80〜99質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の燃料添加剤。
  3. 上記固体状成分が、78〜99質量%の上記フェロセン系成分と、0.9〜20質量%のレシチンと、0.1〜2質量%の水分から成り、
    上記液体状成分が、20〜60質量%の有機硝酸塩及び/又は10〜30質量%のBa濃度が30質量%である有機バリウム塩と、10〜90質量%の有機溶媒から成ることを特徴とする請求項2に記載の燃料添加剤。
  4. フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、有機溶媒を含有する液体状燃料添加剤であって、
    上記フェロセン系成分を0.5〜5質量%、上記レシチンを1〜40質量%、上記有機塩系成分を25〜70質量%、上記有機溶媒を残部質量%の割合で含有することを特徴とする液体状燃料添加剤。
  5. 燃料中において、上記フェロセン系成分の濃度が1〜50ppm、上記レシチンの濃度が0.01〜400ppm、上記有機硝酸塩の濃度が1〜4200ppm及び/又は上記Ba濃度が30質量%である有機バリウム塩の濃度が0.5〜2100ppmとなるように使用されることを特徴する請求項1〜4のいずれかの項に記載の燃料添加剤。
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