以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。同図は、第1実施形態に係るドアガード1が開放位置にある場合を示す斜視図である。
ドアガード1は、ドア100(扉部材と言うこともある)側に設けられたアーム装置10と、ドアフレーム200(枠体と言うこともある)側に設けられた係合装置20と、から構成されている。
アーム装置10は、アーム部材12と、アームベース16とから更に構成されている。アーム部材12はアームベース16に軸支され、ドア10の開閉方向(同図の矢印A又はB方向)に回動可能とされている。
アーム部材12は、鉄等の金属製又はアルミニウム合金等の非鉄金属製でできており、概略U字形状の部材である。このアーム部材12は、U字形状の内側に係合溝13が形成され、U字形状の端部側には一対の係合片14、14(第1係合片14A及び第2係合片14B)が形成されている。一対の係合片14、14の間隔は、少なくとも係合片14を形成している部材の板厚よりも広くなっていることが好ましい。なお、本実施形態では、係合片14はU字形状の開口端部側に2つ設ける構造としたが、後で説明する係合装置20(若しくはドアフレーム200)の一部と係合し、所定の力によるドア100の開扉を阻止できるものであれば、これに限定されるものではない。例えば、U字形状のアーム部材12の開口端部側に複数の係合片を設けても好ましく、また、少なくとも係合片14の板厚よりも幅が広い1つの係合片を設けるようにしても好ましい。
係合溝13は、係合片14側に近い方に開口部13aが形成され、さらに開口部13aと連続して、開口部13aよりも溝幅が狭い誘導溝13bが、アーム部材12の先端近傍まで延在するように形成されている。また、誘導溝13bの端部近傍には係止溝13cが設けられている。詳細は後で説明するが、係合装置20がアーム部材12方向に回転されると、併合装置20のヘッド22aは、初めに開口部13aと係合し、その後ドア100を開扉するのに伴ってアーム部材12の誘導溝13bと係合しながら、誘導溝13bに沿って相対的に移動し、係止溝13cまで移動した所で停止されることによりドア100のそれ以上の開扉が規制される。
また、アーム部材12は、係合片14の根元近傍の側面にスライド溝12dが形成されている。このスライド溝12dは、係合片14の先端から根元側までの所定の範囲(本実施形態では、約2cm)に設けられた長穴形状の溝であり、後で説明するアームベース16の軸ピン17がこのスライド溝12dと摺動可能に係合することにより、アーム部材12はスライド溝12dに沿って係合装置20方向にスライドできるようになっている。
アームベース16は、鉄等の金属製又はアルミニウム合金等の非鉄金属製でできており、対向する一対の側壁16a、16aを有する概略コの字形状の部材である。このアームベース16は、複数のボルト600(本実施形態では、3つ)によりドア100に固定されている。また、アームベース16の一対の側壁16a、16aには、アーム部材12のスライド溝12dと略対向する位置に穴部16bが設けられ、その穴部16bに軸ピン17が挿設されている。この軸ピン17は、穴部16b及びスライド溝12dに挿通し、対向する一対のスライド溝12d、12dの対向面側でCリング18等により係止されている。したがって、アーム部材12は、アームベース16に対して、スライド溝12dに沿って係合装置20方向にスライドすることができるようになっている。なお、この軸ピン17とスライド溝12dの相対移動によってアーム部材12をスライドする機構をスライド機構30と言う。
次に、係合装置20は、キャッチ22と、キャッチベース24とから構成されている。キャッチ22はキャッチベース24に軸支され、アーム装置10方向(同図の矢印C又はD方向)に回動可能とされている。
キャッチ22は、鉄等の金属製又はアルミニウム合金等の非鉄金属製でできており、概略柱状部材である。このキャッチ22は、アーム装置10方向に回動した際、アーム装置10側に位置する端部に傘状のヘッド部22aを有し、他端側の端部近傍に穴部(図示省略)が形成されている。
キャッチベース24は、鉄等の金属製又はアルミニウム合金等の非鉄金属製でできており、概略L字型形状の部材である。このキャッチベース24は、底面24aから対向する一対のJ型アーム24b、24bが伸び、J型アーム24bのJ字状に曲がっている先端側には、キャッチ22と組み合わせた時に、キャッチ22の穴部(図示省略)に対向する位置に穴部24cが形成されている。また、底面24aに立設されたJ型アーム24aの根元近傍には固定穴24dが形成され、ボルト25等でドアフレーム200に固定されている。
キャッチベース24の穴部24cとキャッチ22の穴部(図示省略)を同心状態に組み合わせ、軸ピン26を挿通することで、キャッチ22はキャッチベース24に対して回動可能に軸支される。なお、軸ピン26は、キャッチ22の他端側(挿通方向と反対側)でCリング(図示省略)等により固定されている。
また、J型アーム24bのJ字状に曲がっている先端側には係合板24eが設けられている。前述した、アーム部材12が係合装置20方向にスライドした場合に、アーム部材12の係合片14は、この係合板24eの少なくとも一部と係合するようになっている。
<ドアの開扉規制動作>
次に、ドアガード1によりドア100の開扉を規制する規制動作について説明する。図2は、ドアガード1が規制位置にある場合を示す斜視図であり、図3は、ドアガード1が係止位置にある場合の斜視図である。
まず、ドアガード1によりドア100の開扉を規制する場合、アーム部材12とキャッチ22をお互いの方向に回転させて、開扉可能位置U(図1参照)から開扉規制位置L(図2参照)まで移動させる必要がある。具体的には、ドア100が完全に閉まっている状態において、初めにキャッチ22をアーム装置10方向(図1に示される矢印C方向)に、開扉可能位置Uから約180度回動して倒す。次にアーム部材12を係合装置20方向(図1に示される矢印A方向)に、開扉可能位置Uから約90度回動して倒すと、キャッチ22のヘッド部22aはアーム部材12の開口部13aと係合できる状態となる。なお、本実施形態では、この開扉規制位置Lにおいて、ヘッド部22aと開口部13aは、まだ係合しておらず、この後、ドア100を開扉(図2に示す矢印E方向に移動)することによって、ヘッド部22aは、開口部13aから誘導溝13bに係合しながら、誘導溝13bに沿って案内され、係止溝13c(後述する扉係止位置S)で停止する。ヘッド部22aが係止溝13cに到達すると、ヘッド部22aは、アーム部材12の先端方向にそれ以上移動できなくなる。つまり、ドア100をそれ以上開くことができない状態になる。
勿論、アーム部材12とキャッチ22の回転させる順序は、本実施形態に限定されるものではなく、先にアーム部材12を係合装置20方向に回動させ、その後キャッチ22をアーム装置10方向に回転させて、アーム部材12とキャッチ22を係合するようにしても良い。
次に、図2に示される状態からドア100を開扉する(ドア100を矢印E方向に開く)と、アーム装置10はドア100とともに係合装置20に対して矢印E方向に回動する。アーム装置10の回動によって、キャッチ22のヘッド部22aは開口部13aに対して相対的に移動し、開口部13aから誘導溝13bに案内される(図1参照)。
ドア100をさらに開扉すると、ヘッド部22aは誘導溝13bと係合しながら、係止溝13cまで案内される(図3参照)。係止溝13cは、端部がR形状になっており(図1参照)、ヘッド部22aがこの係止溝13cの端部に当接するようになっている。これにより、ヘッド部22aは、それ以上アーム部材12先端方向への移動が規制される。つまり、ドア100を開扉して、ヘッド部22aがこの係止溝13c(係止位置S)まで導入されると、それ以上、ドア100を開扉することができない状態となる。このヘッド部22aが停止される位置を扉係止位置Sという。
<ドアのロック動作>
次に、図4を用いて、ドアガード1によりドア100の開扉を阻止するロック動作について説明する。同図(a)は、図1と同様に、ドアガード1が開扉可能位置Uにある場合を示す斜視図であり、(b)は、ドアガード1がロック位置Rにある場合を示す斜視図である。
ここで、開扉可能位置Uについて改めて定義する。本明細書で言う開扉可能位置Uは、ドア100が完全に閉まっている状態において、アーム部材12が係合装置20(若しくはドアフレーム200)と係合していない状態であり、ドア100は、ドアフレーム200に対して開放自在にされている状態である。
アーム装置10及び係合装置20が開扉可能位置Uにある状態(図4(a)参照)から、軸ピン17に対してスライド溝12dをスライドさせることにより、アーム部材12を係合装置20方向(矢印G方向)にスライドさせることができる(なお本実施形態では、係合装置20は、開扉可能位置Uになくても構わない)。
その後、アーム部材12の係合片14がキャッチベース24の係合板24eの位置まで達すると、アーム部材12は、キャッチベース24の係合板24eに係合しながらスライドし、所定の位置で係合片14に形成されている段形状の当接部14aと係合板24eの端部が当接し、それ以上アーム部材12が係合装置20方向にスライドできないようになっている。この係合片14の当接部14aと係合板24eの端部が当接している位置をロック位置Rという(図4(b)参照)。
ロック位置Rでは、係合片14と係合板24eは、略密着した状態で係合しているので、ドア100を開扉しようとすると、係合片14は係合板24eに移動を阻止され、ドア100を開放することができない。したがって、ロック位置Rでは、ドア100は全く開扉できない状態になっている。
したがって、通常ドアノブ(図示省略)に設けられているドア鍵(図示省略)によりドアを施錠しなくても、アーム部材12を係合装置20方向にスライドするだけで、容易にドア100の開扉を阻止することができる。また、反対にアーム部材12を係合装置20と反対方向にスライドさせて、アーム部材12を開扉可能位置Uにすることでロックを容易に解除することができる。
換言すると、本実施形態に係るドアガード1は、アーム部材12をロック位置Rまでスライドさせるという僅か1工程でドア100を開扉できない状態にすることができ、いわゆる一般的なドアの開扉を所定の位置で制限するドアガードとしての機能と、ドアが全く開かないように完全にロックするというロック機能の2つの機能を共通の部材(アーム装置10及び係合装置20)により実現することができる。
また、ドア100の外にいる人と対話するため、又は部屋内の空気の入れ替える等のためドア100を僅かに開けたい場合には、前述したようにアーム部材12とキャッチ22を開扉規制位置Lにすることによって、ドア100が一定以上開放しないように制限することができる。
なお、当接部14aと係合板24eの間に所定の隙間を設け、その隙間の分だけ、係合板24eに対して係合片14が回動できるようにしても好ましい。この場合、部屋内の住人は、僅かに開扉したドア100の隙間から外の様子を見ることができる。
ドアガード1は、ドアフレーム200(枠体)又はドアフレーム200の開口を開閉するように軸支されたドア100(扉部材)に支持されたアーム装置10と、アーム装置10が支持されているドアフレーム200又はドア100の相手側となるドア100又はドアフレーム200に回動可能に支持された係合装置20とを備えている。また、アーム装置10は回動可能且つスライド可能に設けられたアーム部材12と、アーム部材12を係合装置20に近接又は離反させる方向にスライドさせるスライド機構30(軸ピン17とスライド溝12dから構成されるアーム部材12のスライド機構)を更に備えている。これにより、スライド機構30によってスライドしたアーム部材12は、係合装置20に係合し、ドア100の開閉を阻止することができる。
また、アーム部材12は、係合装置20方向に突出する一対の係合片14、14を有している。したがって、アーム部材12がスライドし、一対の係合片14、14が係合装置20の係合板24eに係合することにより、大きな力によりドア100が開放される場合でも、ドア100の開放を確実に阻止することができる。
また、一対の係合片14、14は、少なくとも第1係合片14Aと、第2係合片14Bの2つの係合片を備えている。また、第1係合片14Aと第2係合片14Bの間隔が第1係合片14A又は第2係合片14Bを構成している板厚よりも広くなるように構成されている。したがって、1つの係合片でドア100を押さえるよりも、一定間隔離れた2つの係合片により、ドア100を押さえることができ、ドア100の開放を確実に阻止することができる。
また、アーム部材12は、略U字形状に形成され、第1係合片14A及び第2係合片14Bは、U字開口端部に形成されているので、一定間隔離れた2つの係合片により、ドア100を押さえることができ、ドア100の開放を確実に阻止することができる。
また、アーム部材12は、アーム部材12の先端方向に延在するように設けられる係合溝13を備え、係合溝13は、キャッチ22のヘッド部22aが挿入される開口部13aと、ドア100を開放する場合に、ヘッド部22aと係合しながらヘッド部22aを、ドア100の開放を規制する位置まで誘導する誘導溝13bと、を有している。したがって、ヘッド部22aは、開口部13a及び誘導溝13bによって、滑らかに誘導され、ドア100を所定の開放位置で係止することができる。
また、アーム装置10のアーム部材12は、少なくともドア100の開扉を可能とする開扉可能位置Uと、ドア100の開扉を規制する開扉規制位置Lとの間で回動可能とされ、係合装置20のキャッチ22は、アーム部材12が開扉可能位置Uにあるときにアーム装置10方向に回動することによってアーム部材12に係合し、ドア100を開扉する場合に、アーム部材12とキャッチ22が係合した状態で所定の扉係止位置Sで係止することによって、ドア100のそれ以上の開扉を規制する。また、ドア100が閉じている状態において、アーム部材12が開扉可能位置Uにある場合に、アーム部材12は、スライド機構30により係合装置20方向の扉ロック位置Rまでスライドされるとともに、アーム部材12は、扉ロック位置Rにおいて、相手側となるドア100又はドアフレーム200の少なくとも一部と係合して、ドア100の開扉を阻止する。したがって、同一のアーム部材12で、ドア100を少し開放し、所定の位置で固定することができ、また、アーム部材12をスライドするだけで、ドア100の開放を完全に阻止することができる。
次に、図5を用いて第2実施形態に係るドアガード2について説明する。
同図(a)は、第2実施形態に係るドアガード2がロック位置Rにある場合の斜視図であり、同図(b)は、同ドアガード2のアーム部材12が固定状態にある場合の斜視図である。
ドアガード2は、アーム部材12にストッパー片12fが設けられており、ロック位置Rにおいて、キャッチ22を約180°回動すると、アーム部材12のストッパー片12fとキャッチ22の係合溝22bが係合するようになっている。これにより、アーム部材12が開放方向(係合装置20と反対方向)にスライドするのを防止する機構(ストッパー装置40又はスライド抑制機構と言うことがある)を備えているところに特徴がある。
なお、アーム装置10、係合装置20の各装置に関し、同様の機能、形状を有する部材については、第1実施形態と同じ符号を付し、詳細な説明等は省略する。
アーム装置12は、一対の係合片14、14近傍にストッパー片12f、12fを備えている。この一対のストッパー片12f、12fは、2つの係合片14、14から対向するように立設された片状部材であり、キャッチ22をアーム装置10方向に回転させた時に、キャッチ22の係合溝22bと係合できる位置に設けられている。
<ストッパー動作>
まず、開扉可能位置U(図1参照)において、スライド機構30によりアーム部材12を係合装置20方向にスライドし、図5(a)に示されるロック位置Rまで移動させる。
次に、キャッチ22をアーム部材12方向に約180°回動して倒し、キャッチ22に形成されている係合溝22bが一対のストッパー片12f、12fの隙間に係合するようにする。
この状態において、アーム部材12を開扉可能位置方向へスライドさせようとしても、ヘッド部22aの傘状部分が一対のストッパー片12f、12fと当接するので、アーム部材12は、開扉可能位置方向(係合装置20と反対方向)には容易にスライドできない状態となっている。
したがって、ドア100に振動を与えたり、他の不正な手段によりロック位置Rにあるアーム部材12を開扉可能位置Uまでスライドさせようとしても、アーム部材12は、ストッパー片12fとキャッチ22が当接してロック状態にあるので、スライドを防止することができる。
上述したように、対向して配設される一対のストッパー片12f、12fと、その対向するストッパー片12f、12fの隙間に係合する係合溝22bとの係合機構により構成されるストッパー装置40(スライド抑制機構)により、ロック状態にあるアーム部材12のスライドを阻止することができる。
また、第1実施形態に示すアーム装置にラッチ手段50を設け、アーム部材を所定の位置でラッチできるようにしても良い。
図6(a)は、図1に示される矢視I方向(係合片14方向)から見た、第3実施形態に係るアーム装置310の一部を拡大した斜視図である。同図において、ラッチ手段50の説明に直接関わらない部材や装置については図示及び番号を省略し、同一の形状、機能、用途の部材や装置については同一の番号を付している。また、アームベース316の一部を破断面(斜線部)として表している。
アーム装置310は、アーム部材312と、アームベース316から構成されている。
アーム部材312の側面には、スライド溝313が長手方向に形成されている。スライド溝313には、長穴313aが形成されるとともに、長穴313aの両端に第1水平ラッチ凹部52と、第2水平ラッチ凹部54(図7参照)が形成されている。また、スライド溝313の上下方向には、それぞれ垂直ラッチ凹部56が形成されている。垂直ラッチ凹部56は、概略四角形状の凹部となっている。
第1水平ラッチ凹部52及び第2水平ラッチ凹部54は、長穴313aの長手方向の両端部近傍から第1水平ラッチ凹部52及び第2水平ラッチ凹部54に向かって傾斜する(スロープ状になっている)斜面52A及び斜面54Aにより接続されている。また、垂直ラッチ凹部56の凹部側壁には、アーム部材312の側面から垂直ラッチ凹部56の中心方向になだらかに傾斜する斜面56Aが設けられている。
アームベース316の側壁316aには、ラッチ部材70(詳細は後述)が収容されるラッチ部材収容部316bが設けられている。ラッチ部材収容部316bの上面は開口しており、ラッチ部材70を挿入できるようになっている。
また、側壁316aのアーム部材312と対向する面には、ラッチ部材70を挿入した場合に、ラッチ部材70に設けられているラッチ凸部72を側壁316aから表出するための角孔316cが設けられている(図6(c)参照)。なお、第1実施形態と同様に、側壁316aには、穴部316dが設けられ、ピン17が挿通されるようになっている。
ラッチ部材70は、図6(b)に示されるように、樹脂製で、断面が概略コの字状の部材である。ラッチ部材70は、一方の端部側に2つのラッチ凸部72、72が平行に設けられ、2つのラッチ凸部72、72の反対側となる面に、付勢部材収容部74が形成されている。付勢部材収容部74には、圧縮バネなどの付勢部材80の一部が収容される。ラッチ部材70には、ラッチ部材70を側壁316aのラッチ部材収容部316bに収容した場合に、側壁316aの穴部316dに対応する位置に穴部76が設けられている。つまり、ラッチ部材70を側壁316aのラッチ部材収容部316bに収容した場合に、側壁316aの穴部316dとラッチ部材70の穴部76とが略同心状態となって、貫通し、ピン17を挿通できるようになっている。したがって、ラッチ部材70は、ピン17により係止されているため、ラッチ部材収容部316bから抜けなくなっている。
2つのラッチ凸部72、72は、概略四角形の突起であり、ラッチ部材70の穴部76の両脇に略平行に設けられている。更に、2つのラッチ凸部72、72の間隔は、上述した2つの垂直ラッチ凹部56、56の間隔と同じになっている。したがって、詳細は後述するが、アーム部材312をA方向に90°回転させた場合に、2つのラッチ凸部72、72は、2つの垂直ラッチ凹部56、56に嵌合して係止する(ラッチする)ようになっている。
また、ラッチ部材70のラッチ凸部72の周囲は、ラッチ凸部72の凸上面から根元方向に広がるように斜面72Aが形成されている。これにより、詳細は後述するが、アーム部材312が第1水平ラッチ凹部52、第2水平ラッチ凹部54、垂直ラッチ凹部56にある状態(ラッチ状態)から、抜けだす場合に、ラッチ凸部72の斜面72Aは、斜面52A、斜面54A、斜面56Aに沿って上昇するので、第1水平ラッチ凹部52、第2水平ラッチ凹部54、垂直ラッチ凹部56を略一定の軽い力で乗り越えることができる。
同図(b)に示されるように、側壁316aのラッチ部材収容部316bに、付勢部材80とともにラッチ部材70を挿入すると、ラッチ部材70は、ラッチ部材収容部316bの所定の位置まで収容される。また、付勢部材80によって、ラッチ部材70は、ラッチ凸部72側に向かって付勢される。これにより、側壁316aのラッチ部材挿入溝316bにラッチ部材70を挿入することによって、ラッチ凸部72を側壁316aから表出するようにすることができる。
上述のように、ラッチ部材70をバネ等の付勢部材80によって、ラッチ凸部72側に付勢するようにしているので、ラッチ凸部72は、弾性を有するように、ラッチ部材収容部316bに収容される方向又は突出する方向(ラッチ凸部72の前後方向)に移動することができる。したがって、例えば、アーム部材312を回転させてラッチ凸部72を垂直ラッチ凹部56に係合させる場合には、アーム部材312が回転途中では、ラッチ凸部72はラッチ部材収容部316b内に押し込まれ、アーム部材312が90°回転した位置では、ラッチ凸部72は、付勢部材80に押されて突出する。これにより、操作者は、アーム部材312の回転中は、回転負荷をあまり感じずに回転を行うことができ、アーム部材312が所定の位置に回転した場合には、ラッチ凸部72がカチッと飛び出してくる感じが伝わり、小気味よい感触を得ることができる。また、付勢部材80は、ラッチ部材70を側壁316aのラッチ部材収容部316bに押し付けることによって、ラッチ部材70を係止する役割も果たす。
上述した、第1水平ラッチ凹部52、第2水平ラッチ凹部54、垂直ラッチ凹部56及びラッチ凸部72によるアーム部材312のラッチ構造をラッチ手段50と言う。
なお、本実施形態では、ラッチ部材70を別部材として、ラッチ部材70を側壁316aに収容することにより、ラッチ凸部72を側壁316aから表出するようにしたが、勿論これに限定されるものではない。例えば、側壁316aにラッチ凸部72を直接形成してもよく、別部材のラッチ凸部72を側壁316aに組み付けるようにしてもよい。この場合、ラッチ凸部72に付勢部材80のような弾性を設けるようにすることが望ましい。
<ラッチ動作>
次に、図7(a)〜(c)を用いて、ラッチ手段50によるラッチ動作について説明する。
図7(a)は、アーム部材312が長穴313aに沿って矢印G方向又はH方向のいずれにもスライドできる状態を示している。
まず、アーム部材312によりドア100をロックする場合には、アーム部材312を図7(a)に示される矢印G方向にスライドさせる。アーム部材312が矢印G方向に移動すると、紙面左側のラッチ凸部72は第2水平ラッチ凹部54の斜面54Aに沿って矢印G方向に移動するとともに、斜面54Aの高低差分だけ付勢部材80によって底面方向(紙面奥方向)に押し出される。これにより、ラッチ凸部72は、第2水平ラッチ凹部54と係合し、操作者は、カチッと言うラッチ感覚を得ることができる(同図(b)参照)。
次に、アーム部材312によるドア100のロックを解除する(ラッチ凸部72を第2水平ラッチ凹部54によるラッチ位置から脱出させる)場合には、アーム部材312を同図(b)の状態から同図(a)に示される矢印H方向にスライドさせる。同図(b)の状態からアーム部材312を矢印H方向にスライドさせると、紙面左側のラッチ凸部72の斜面72Aは、第2水平ラッチ凹部54の斜面54Aと当接する。アーム部材312に更に力を加えてスライドすると、ラッチ凸部72は斜面54Aに沿って上昇する。この時、斜面54Aから受ける押圧力が付勢部材80の付勢力に打ち勝ち、ラッチ凸部72は、ラッチ部材収容部316bに収容される方向に、斜面54Aの高低差に沿って次第に押し込まれる。換言すると、第2水平ラッチ凹部54に係止されているラッチ凸部72は、ラッチ凸部72の斜面72Aが第2水平ラッチ凹部54の斜面54Aに沿って、押し込まれながら上昇するので、斜面54Aから受ける押圧力を略一定にして移動することができ、第2水平ラッチ凹部54から脱出する際に、大きな力を必要とせずにスライドをスムーズに行うことができる。
更に、アーム部材312を矢印H方向にスライドすると、紙面右側のラッチ凸部72は第1水平ラッチ凹部52の斜面52Aに沿って矢印H方向に移動するとともに、斜面52Aの高低差分だけ付勢部材80によって底面方向に次第に押し出される。これにより、ラッチ凸部72は、第1水平ラッチ凹部52と係合し、操作者は、前述したロック時と同様にカチッと言うラッチ感覚を得ることができる(同図(c)参照)。
次に、アーム部材312をロック解除位置からスライドする場合(ラッチ凸部72を第1水平ラッチ凹部52によるラッチ位置から脱出させる場合)には、前述と同様に、アーム部材312を同図(c)の状態から同図(a)に示される矢印G方向にスライドさせる。同図(c)の状態からアーム部材312を矢印G方向にスライドさせると、紙面右側のラッチ凸部72の斜面72Aは、第1水平ラッチ凹部52の斜面52Aと当接する。アーム部材312に更に力を加えてスライドすると、ラッチ凸部72は斜面52Aに沿って上昇する。この時、斜面52Aから受ける押圧力が付勢部材80の付勢力に打ち勝ち、ラッチ凸部72は、ラッチ部材収容部316bに収容される方向に、斜面52Aに沿って次第に押し込まれる。換言すると、第1水平ラッチ凹部52に係止されているラッチ凸部72は、ラッチ凸部72の斜面72Aが第1水平ラッチ凹部52の斜面52Aに沿って、押し込まれながら上昇するので、斜面52Aから受ける押圧力を略一定にして移動することができ、第1水平ラッチ凹部52から脱出する際に、大きな力を必要とせずにスライドをスムーズに行うことができる。
上述の説明でも分かるように、ラッチ凸部72には斜面72A、第1水平ラッチ凹部52には斜面52A、第2水平ラッチ凹部54には斜面54Aを有しており、アーム部材312をスライドした場合に、まず、各斜面が当接するようになっているので、ラッチ凸部72は、各ラッチ凹部52、54を乗り越え易くなり、アーム部材312を滑らかにラッチし、ラッチ位置から解除することができる。
次に、図8を用いて、アーム部材312を回動させて使用する場合、いわゆるドアガードとして用いる場合について説明する。
まず、同図(a)に示される状態から、アーム部材312を矢印A方向に回動すると、側壁316aのラッチ凸部72は、アーム部材312の垂直ラッチ凹部56に嵌合する。前述と同様に、垂直ラッチ凹部56には斜面56Aが設けられているため、ラッチ凸部72の斜面72Aが垂直ラッチ凹部56の斜面56Aと当接して移動するとともに、ラッチ凸部72は、斜面56Aの押圧力によってラッチ部材収容部316bの内部に、斜面56Aに沿って次第に押し込まれる。したがって、アーム部材312は、同図(a)に示される状態から、ドアガード状態に滑らかに移動できるようになっている。なお、同図(b)の状態から同図(a)の状態に戻す場合には、前述と反対の動作を行えば良いので、詳細な説明は省略する。なお、ラッチ凸部72をラッチ位置から脱出する場合には、ラッチ凸部72の斜面72Aは、垂直ラッチ凹部56の斜面56Aと当接して、斜面56Aに沿って、ラッチ凸部72が収容方向に移動するので、操作者は一定のちからで滑らかにアーム部材312を回動することができる。
なお、アーム部材312を回動する場合に、アーム部材312の一部(例えば、R部312A)がアームベース316に擦らないように、アームベース316のR部312A(図8(a)に示される斜線部分)と擦る範囲に逃げ溝(図示省略)を設けておくことが好ましい。
具体的には、アーム部材312は、スライド可能にされていると共に、通常のドアガードとして使用する場合には回動できるようになっているので、アーム部材312のR部312Aがアームベース316の底面と擦ってしまうことがある。この場合、R部312Aの板厚となる面がアームベース316の面と擦るので、回動抵抗が大きくなる。そこで、アームベース316のアーム部材312のR部312Aと擦る部分に逃げ溝(図示省略)を設けることにより、アーム部材312のR部312Aがアームベースと接触しなくなり、又は接触面積を小さくすることができ、アーム部材312の回動を滑らかに行うことができる。
したがって、上述のように、第3実施形態に係る、ドアガードのアーム装置310は、ラッチ手段50が設けられているので、アーム部材312は、所定のラッチ位置に滑らかに移動できるとともに、所定の位置に確実に移動したことを確認できるラッチ感覚を得ることができる。
また、ラッチ手段50の第1水平ラッチ凹部52、第2水平ラッチ凹部54、垂直ラッチ凹部56及びラッチ凸部72には、それぞれ斜面52A、54A、56A及び斜面72Aが設けられているので、アーム部材312は、容易にラッチ位置まで移動できるとともに、ラッチ位置から脱出できるようになっている。
また、ラッチ部材70は、付勢部材80によって、側壁316aから外側に突出するように付勢されているので、アーム部材312を所定のラッチ位置から一定の力で容易にスライドすることができるとともに、より小気味いいラッチ感覚を得ることができる。