JP2010143950A - ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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正彦 峯村
Noriyoshi Ogawa
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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れたポリカーボネート樹脂材料を提供すること、及びそれを感光層用バインダー樹脂に用いた耐摩耗性及びその持続性が格段に改善された電子写真感光体を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂に、ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であって且つ水酸基を0.2〜10重量%含むシリコーン・アクリル共重合体を、好ましくは該ポリカーボネート樹脂全量に対し0.05〜2重量%配合してポリカーボネート樹脂組成物とし、これを電子写真感光体の電荷輸送層用バインダー樹脂として用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定のシリコーン・アクリル共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物、及びそれを感光層用バインダー樹脂に用いた電子写真感光体に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、光学特性及び機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックとして様々な分野に使用されている。特に特殊な仕様例として、複写機、レーザービームプリンタ(以下、LBPと略称)、ファックス等に使用されている電子写真感光体の感光層用バインダー樹脂としての応用が挙げられる。
現在は、感光層として電荷発生層と電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体が主流であり、アルミニウムやステンレス鋼製の円筒またはアルミ蒸着ポリエステル製の円筒やベルトなどの金属基材上に、ポリカーボネート樹脂と電荷発生剤や電荷輸送剤を溶かした溶液を、湿式成形することで作成される。
上記積層型電子写真感光体において最外層の電荷輸送層は、トナー、紙、帯電ローラー、クリーニングブレードなどに接触するため、特に耐摩耗性が要求される。従来、耐摩耗性を向上させる手段としてシリコーン共重合アクリル樹脂を添加剤として加える手法が報告されている(特許文献1参照)。
しかしながら、これらのシリコーン共重合アクリル樹脂は、特に非ハロゲン系溶媒中でポリカーボネート樹脂と相溶性が悪く、添加量によっては塗工溶液が白濁したり、電荷輸送層自体が白濁したりする場合があった。さらに耐摩耗性についても、使用開始初期にしか発揮されないなど、改善の余地があった。
特開昭61−219049号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、耐摩耗性に優れたポリカーボネート樹脂材料を提供すること、及びそれを感光層用バインダー樹脂に用い、耐摩耗性及びその持続性が格段に改善された電子写真感光体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべき事に感光層用バインダー樹脂として、水酸基残基を有する特定のシリコーン・アクリル共重合体を少量添加したポリカーボネート樹脂組成物を用いた電子写真感光体は、従来のバインダー樹脂を用いた電子写真感光体に比べ、耐摩耗性が向上するとともに、さらに耐摩耗性能が長時間持続する効果があることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すポリカーボネート樹脂組成物およびそれを用いた電子写真感光体に関するものである。
1)ポリカーボネート樹脂と、ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であって且つ水酸基を0.2〜10重量%含むシリコーン・アクリル共重合体とを含有する、ポリカーボネート樹脂組成物。
2)前記シリコーン・アクリル共重合体が、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であることを特徴とする、1)記載のポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2010143950
(上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Xは下記一般式(2)で表される基から選ばれる基を表す。nは2〜1000の整数を表す。)
Figure 2010143950
(上記一般式(2)中、mは1〜3の整数を表す。)
Figure 2010143950
(上記一般式(3)中、R2〜R4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Yは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の環状アルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、及びグリシジル基からなる群から選ばれる基を表す。ただし、使用する一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマー全体の中に、Yに少なくとも炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するモノマーを含む。)
3)前記オルガノポリシロキサン化合物が、下記一般式(4)で表されるラジカル重合性シリコーンマクロモノマーである、2)記載のポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2010143950
(上記一般式(4)中、R5は水素原子又はメチル基、R6は酸素原子により中断されても良い炭素原子数1〜12の2価の炭化水素基、R7はメチル基又はトリメチルシロキシ基、R8は炭素原子数1〜4の1価の炭化水素基をそれぞれ表す。aは2〜1000の整数、bは1〜3の整数をそれぞれ表す。)
4)前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーが、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸―2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、及びアクリル酸グリシジルからなる群から選択されるモノマーであることを特徴とする、2)又は3)記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5)前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーが、少なくともメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6)前記シリコーン・アクリル共重合体の重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのポリスチレン換算で2万〜10万である、1)〜5)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7)前記シリコーン・アクリル共重合体がポリカーボネート樹脂全量に対し0.05〜2重量%含有されていることを特徴とする、1)〜6)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8)前記ポリカーボネート樹脂が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、及び1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオールからなる群から選択されるビスフェノール類から誘導されたものである、1)〜7)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
9)前記ポリカーボネート樹脂の極限粘度が0.3〜2dl/gである、1)〜8)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
10)導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として1)〜9)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いることを特徴とする、電子写真感光体。
11)前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型感光層であって、前記ポリカーボネート樹脂組成物が該電荷輸送層に使用されることを特徴とする、10)記載の電子写真感光体。
本発明のシリコーン・アクリル共重合体を含有するポリカーボネート樹脂組成物は、成形物の摩擦係数が低く耐摩耗性に優れるため、電子写真感光体の感光層用バインダー樹脂として使用した場合、電子写真感光体の耐久性を向上させ、長寿命の電子写真感光体を提供することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を主体とし、これにシリコーン・アクリル共重合体が少量配合されたものである。
1.シリコーン・アクリル共重合体
本発明で用いられるシリコーン・アクリル共重合体は、ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であって所定量の水酸基を含むものである。
(1)水酸基
本発明のシリコーン・アクリル共重合体に含まれる水酸基は、該共重合体全量に対し0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。シリコーン・アクリル共重合体に含まれる水酸基の量が少なすぎるとポリカーボネートとの相溶性が低下し、多すぎると本発明の電子写真感光体の摩擦係数が大きくなる。シリコーン・アクリル共重合体に水酸基を導入する方法としては、共重合体製造時に水酸基を有するモノマーを用いることが好ましい。
(2)ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマー
本発明で用いられるラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーは、ラジカル重合性基(不飽和炭化水素基)を有するオルガノシロキサン化合物であれば特に制限されないが、好ましくは下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物が挙げられる。
Figure 2010143950
上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基等が挙げられる。nは2〜1000、好ましくは3〜200の整数を表す。
上記一般式(1)中、Xは下記一般式(2)で表される基から選ばれる基を表す。ここで一般式(2)中、mは1〜3の整数を表す。
Figure 2010143950
前記オルガノポリシロキサン化合物の好ましい例としては、下記一般式(4)で表されるラジカル重合性シリコーンマクロモノマーが挙げられる。
Figure 2010143950
上記一般式(4)中、R5は水素原子又はメチル基である。R6は酸素原子により中断されても良い炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素数1〜3の2価の炭化水素基を表し、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基である。R7はメチル基又はトリメチルシロキシ基である。R8は炭素原子数1〜4の1価の炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、n−ブチル基を表す。aは2〜1000、より好ましくは3〜200の整数を表す。bは1〜3の整数を表す。
ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーとして、上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物を用いた場合、側鎖にオルガノポリシロキサン基を有するシリコーングラフトアクリル樹脂が得られる。
本発明のシリコーン・アクリル共重合体としては、かかるシリコーングラフトアクリル樹脂以外にも、主鎖にオルガノシロキサン基が導入されたものを用いることもできる。このような主鎖にオルガノシロキサン基を導入するために用いられるシリコーンモノマーとしては、両末端にメタクリル基やビニル基を有する変性シリコーン等が挙げられる。
(3)(メタ)アクリル系モノマー
本発明で用いられる(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であれば特に制限されないが、好ましくは下記一般式(3)で表されるものである。
Figure 2010143950
上記一般式(3)中、R2〜R4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。
上記一般式(3)中、Yは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の環状アルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、及びグリシジル基からなる群から選ばれる基を表す。
炭素数1〜20のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n―ブチル基等が挙げられる。炭素数4〜20の環状アルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12の環状アルキル基であり、より好ましくはシクロヘキシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。炭素数2〜5のアルケニル基としては、好ましくはビニル基、メタクリル基等が挙げられる。
ただし本発明においては、シリコーン・アクリル共重合体に使用される一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマー全体の中に、少なくともYに炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するモノマーを含むことが好ましい。これにより、所定量の水酸基を含むシリコーン・アクリル共重合体を得ることができる。
本発明で使用される(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル等が例示される。
これらのうち、より好ましい(メタ)アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸―2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、及びアクリル酸グリシジルからなる群から選択されるモノマーが挙げられる。
さらに、前記(メタ)アクリル系モノマーのうちYに炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するモノマーとして、少なくともメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群から選択される1種以上のモノマーを使用することが好ましい。これにより、所定量の水酸基をシリコーン・アクリル共重合体に導入することができる。
本発明のシリコーン・アクリル共重合体に使用される(メタ)アクリル系モノマー全量に対するYに炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するモノマーの割合は特に限定されず、結果として本発明のシリコーン・アクリル共重合体に含まれる水酸基が該共重合体全量に対し0.2〜10重量%の範囲となるように、適宜調整することができるが、好ましくは使用される(メタ)アクリル系モノマー全量に対し、1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
(4)その他のモノマー
本発明で用いられるシリコーン・アクリル共重合体には、上記ポリオルガノシロキサン化合物と(メタ)アクリル系モノマー以外に、他のビニル系モノマーが少量含まれていても良い。
他のビニル系モノマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が例示される。
かかる他のモノマーの、シリコーン・アクリル共重合体に用いるモノマー全量に対する割合は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、好ましくは1〜
90重量%である。
(5)シリコーン・アクリル共重合体
上述したラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる本発明のシリコーン・アクリル共重合体として、好ましくは上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、上記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーとからなるシリコーングラフトアクリル樹脂が挙げられる。
シリコーン・アクリル共重合体に用いるモノマー全量に対するシリコーンモノマーの割合は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜20重量%である。また、(メタ)アクリル系モノマーの割合は、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは80〜98重量%である。また、シリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーの相互の比率としては、好ましくはシリコーンモノマー:(メタ)アクリル系モノマー=1:99〜50:50である。シリコーンモノマーの割合が少なすぎると耐摩耗性が低下し、多すぎるとポリカーボネートとの相溶性が低下する場合がある。
また、前記シリコーン・アクリル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略)のポリスチレン換算で2万〜10万、好ましくは2万〜7万である。シリコーン・アクリル共重合体の平均分子量が低すぎると本発明の電子写真感光体表面から摩擦により脱落しやすく、高すぎるとポリカーボネートとの相溶性が低下する場合がある。
(5)シリコーン・アクリル共重合体の製造方法
本発明のシリコーン・アクリル共重合体の製造方法は公知の方法、例えば溶剤中に、ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマー、(メタ)アクリルモノマー及びラジカル重合開始剤を加温下に同時に滴下するなどの方法を採用することができる。
ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、およびこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒等が挙げられる。また、使用する溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
好ましい反応条件としては、反応温度(滴下温度)は使用する溶剤により異なるが50〜120℃、滴下後の熟成時間は1〜10時間であるが、これらに限定されず、公知の方法を採用することができる。
2.ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に使用されるポリカーボネート樹脂は、例えばビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
ポリカーボネート樹脂の製造に使用される原料ビスフェノールとしては、具体的には1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノ−ルA;BPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノ−ルZ;BPZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチチルフェノール)、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルジフェニルランダム共重合シロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンなどが例示される。これらは、2種類以上併用して用いてもよい。また、これらの中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオールから選ばれることが好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンから選ばれることが好ましい。
一方、炭酸エステル形成性化合物としては、例えばホスゲン、トリホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
ホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、前記ビスフェノール類とホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられ、また溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン触媒やベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が用いられる。さらに、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール、トリスフェノールエタンなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
一方、エステル交換法においては、前記ビスフェノール類とビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは133Pa以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜24時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、公知の成形方法、押出成形、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、湿式成形等で成形可能である。本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形材料として用いる場合は、機械的強度と成形の容易さから、ポリカーボネート樹脂の極限粘度が0.3〜2dl/gの範囲であることが好ましい。極限粘度が0.3dl/g未満では成形品の強度が十分でなく、2dl/gを超えると成形が困難になる。
極限粘度は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃におけるハギンズ定数0.45として、ウベローデ粘度計で測定可能で、Mark-Houwink-Sakurada式により、極限粘度=1.23×10-4(分子量)0.830を用いて粘度分子量を計算することができる。
3.ポリカーボネート樹脂組成物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上述した本発明のポリカーボネート樹脂とシリコーン・アクリル共重合体とを含んでなるものである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が耐摩耗性を良好に保持する範囲として、前記シリコーン・アクリル共重合体をポリカーボネート樹脂全量に対して、0.05〜2重量%含むことが好ましく、さらには0.1〜1重量%含むことが好ましい。0.05重量%未満では耐摩耗性が十分でなく、2重量%を超えると相溶性が悪くなり、相分離による耐摩耗性の低下や白濁が強くなる場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その効果を保持する範囲で、他の合成樹脂、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を任意にブレンドすることが可能である。その場合、配合される他の合成樹脂の割合は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、好ましくは本発明のポリカーボネート樹脂組成物全量に対し1〜50重量%である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、各種紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤等を所望に応じて添加することも可能である。
4.電子写真感光体
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、電子写真感光体のバインダー樹脂として好適に使用することができる。
本発明の電子写真感光体は導電性支持体上に単一層の感光層を有するものでも、機能分離した積層型のものにも使用可能であるが、電荷輸送物質を保持するバインダー樹脂の特性が十分発揮しやすい積層型の電子写真感光体の電荷輸送層に用いることが好ましい。
本発明の導電性支持体とは、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料や、又、表面にアルミニウム、パラジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂、紙等が使用される。
本発明の電荷発生層は公知の方法により、導電性支持体上に形成される。電荷発生物質としては、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環式キノリン系、インジゴイド系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、メチン系等の有機顔料が使用できる。これらの電荷発生物質は、その微粒子をポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、各種セルロース等のバインダー樹脂に分散させた形で使用される。
本発明の電荷輸送層は、電荷発生層上に公知の方法を用いて、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に、電荷輸送物質を分散させる事により形成される。電荷輸送物質としては、例えば、ポリテトラシアノエチレン;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物;ジニトロアントラセン等のニトロ化合物;無水コハク酸;無水マレイン酸;ジブロモ無水マレイン酸;トリフェニルメタン系化合物;2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物;1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物;4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)―N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン等のアミン誘導体;1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の共役不飽和化合物;4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物;縮合多環式化合物等が挙げられる。上記電荷輸送物質は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて、電荷輸送物質等と混合した後、溶液流延法、キャスト法、スプレー法、浸漬塗布法(ディップ法)等の公知湿式成形で電子写真感光体を形成することが可能である。湿式成形で成形された電子写真感光体が十分な膜強度を得るためにはポリカーボネート樹脂が極限粘度0.3〜2dl/g、とくに0.4〜1.5dl/gであることが好ましい。
前記湿式成形に使用される溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、モノクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン系有機溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルセロソルブ等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等の非ハロゲン系有機溶媒が挙げられる。
本発明では、これらの溶媒を単独または2種以上を併用して使用することが可能である。溶媒に本ポリカーボネート樹脂組成物を溶解して、電荷輸送層を形成する際は、1〜30重量%の範囲樹脂溶液を作成して用いることが好ましい。
電荷輸送物質とポリカーボネート樹脂組成物との混合比は、10:1〜1:10の範囲内が好ましい。この電荷輸送層の厚さは、2〜100μm、好ましくは5〜40μmが好適である。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、特に断らない限り、以下に記す「%」は「重量%」を意味する。
なお、以下の実施例において、シリコーンマクロモノマー以外の(メタ)アクリルモノマーは和光純薬株式会社製の試薬を使用した。また、合成例1〜6で得られたシリコーン・アクリル共重合体の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名「HLC−8220GPC」を使用してTHF溶媒、RI検出器にて測定)で求めた。また、合成例1−1〜1−6で得られたシリコーン・アクリル共重合体のシロキサン量は、用いたラジカル重合性シリコーンマクロモノマー量から算出、合成例1−1〜1−3のOH量はJIS−K−0070記載の水酸基価測定方法による水酸基価測定と、105℃、3時間加熱後の残存樹脂分量とから算出、合成例1−4〜1−6のOH量は使用したモノマーからの計算値とした。
<シリコーン・アクリル共重合体の合成>
(合成例1−1;シリコーン・アクリル共重合体SA−1の合成)
攪拌機、冷却器及び温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、トルエン600gを仕込み、窒素ガスを通しながら80〜90℃の温度で、下式(5)で表されるラジカル重合性シリコーンマクロモノマー60g、メチルメタクリレート240g、ブチルメタクリレート60g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5gの混合液を2時間かけて滴下した。
Figure 2010143950
更に、80〜90℃の温度で5時間重合反応を行った後、室温まで冷却し、樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;15質量%、OH量;1.3%)のトルエン溶液(SA−1)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約30,000であった。
(合成例1−2;シリコーン・アクリル共重合体SA−2の合成)
合成例1−1で使用したラジカル重合性シリコーンマクロモノマーを20g、メチルメタクリレートを240g、ブチルメタクリレートを60g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを80g使用した他は、合成例1−1と全く同様にして、樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;5質量%、OH量;2.6%)のトルエン溶液(SA−2)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約61,000であった。
(合成例1−3;シリコーン・アクリル共重合体SA−3の合成)
合成例1−1で使用したラジカル重合性シリコーンマクロモノマーを、下記式(6)で示される化合物に代え且つ120g使用すると共に、メチルメタクリレートを220g、ブチルメタクリレートを40g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを20g使用した他は、合成例1−1と全く同様にして、樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;30質量%、OH量;0.65%)のトルエン溶液(SA−3)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約25,000であった。
Figure 2010143950
(合成例1−4;シリコーン・アクリル共重合体SA−4の合成)
合成例1−1で使用したトルエンの代わりにイソプロピルアルコール(IPA)を600g、ラジカル重合性シリコーンマクロモノマーを60g、メチルメタクリレートを80g、アクリル酸を80g、N,N−ジメチルアクリルアミドを180g使用した他は、合成例1−1と全く同様にして、樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;15質量%、OH量;0%)のIPA溶液(SA−4)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約42,000であった。
(合成例1−5;シリコーン・アクリル共重合体SA−5の合成)
合成例1−1で使用したトルエンの代わりにメチルエチルケトンを600g、ラジカル重合性シリコーンマクロモノマーを80g、メチルメタクリレートを270g、メチルアクリレートを40g使用した他は、合成例1−1と全く同様にして、樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;20質量%、OH量;0%)のメチルエチルケトン溶液(SA−5)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約45,000であった。
(合成例1−6;シリコーン・アクリル共重合体SA−6の合成)
攪拌機、冷却器及び温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、トルエン600gおよび合成例1−1で使用したラジカル重合性シリコーンマクロモノマー200gを仕込み、窒素ガスを通しながら、80〜90℃の温度で2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5gを滴下した後3時間攪拌し、メチルメタクリレート140g、ブチルメタクリレート30g、2−エチルヘキシルアクリレート30g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.5gの混合液を2時間かけて滴下した。
更に、80〜90℃の温度で5時間重合反応を行った後、室温まで冷却し樹脂分40質量%(樹脂中のシロキサン;50質量%、OH量;0%)のトルエン溶液(SA−6)を得た。溶液を105℃で乾燥し得られた透明固体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約55,000であった。
<ポリカーボネート樹脂の合成>
(合成例2−1;ポリカーボネート樹脂PC−1の合成)
5w/w%の水酸化ナトリウム水溶液1100mlに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下「BPZ」と略称:田岡化学工業株式会社製)107.2g(0.40mol)とハイドロサルファイト0.1gを溶解した。これにメチレンクロライド500mlを加えて撹拌しつつ、15℃に保ちながら、ついでホスゲン60gを60分で吹き込んだ。
ホスゲン吹き込み終了後、分子量調節剤としてp−t−ブチルフェノール(以下「PTBP」と略称:大日本インキ化学工業株式会社製)1.67gを加え激しく撹拌して、反応液を乳化させ、乳化後、0.4mlのトリエチルアミンを加え、20〜25℃にて約1時間撹拌し、重合させた。
重合終了後、反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、先液(水相)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去して白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、110℃、24時間乾燥して、重合体粉末を得た。
この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃におけるハギンズ定数0.45の極限粘度は0.47dl/gであった。得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂(以下、PC−1と略称)であることが確認された。
(合成例2−2;ポリカーボネート樹脂PC−2の合成)
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(以下「BPE」と略称:本州化学工業株式会社製)85.6g(0.40mol)を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.50dl/g:以下、PC−2と略称)を得た。
(合成例2−3;ポリカーボネート樹脂PC−3の合成)
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下「DMBPZ」と略称:本州化学工業株式会社製)59.2g(0.20mol)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「BPA」と略称:三井化学株式会社製)45.6g(0.20mol)を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.48dl/g:以下、PC−3と略称)を得た。
(合成例2−4;ポリカーボネート樹脂PC−4の合成)
BPZの代わりに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(以下「BPF」と略称:本州化学工業株式会社製)40g(0.20mol)とBPA45.6g(0.20mol)を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.50dl/g:以下、PC−4と略称)を得た。
(合成例2−5;ポリカーボネート樹脂PC−5の合成)
BPZの代わりに、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール(以下「BP」と略称:本州化学工業株式会社製)37.2g(0.20mol)とBPA45.6g(0.20mol)を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.52dl/g:以下、PC−5と略称)を得た。
(合成例2−6;ポリカーボネート樹脂PC−6の合成)
BPZの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下「BPC」と略称:本州化学工業株式会社製)51.2g(0.20mol)とBPA45.6g(0.20mol)を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.50dl/g:以下、PC−6と略称)を得た。
(合成例2−7;ポリカーボネート樹脂PC−7の合成)
BPZの代わりに、BPC20.5g(0.08mol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(以下「BPAP」と略称:本州化学工業株式会社製)11.6g(0.04mol)、BPA63.8g(0.28mol)、を用いた以外は合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.50dl/g:以下、PC−7と略称)を得た。
(合成例2−8;ポリカーボネート樹脂PC−8の合成)
PTBPを0.82gに変更した以外は、合成例2−1と同様に重合を行って、ポリカーボネート(極限粘度0.74dl/g:以下、PC−8と略称)を得た。
<実施例1>
N,N’−ビス(3−メチルフェニル)―N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(以下「TPD型CT剤」と略す:SYNTEC社製)65gをテトラヒドロフラン360gに溶解した溶液に、PC−1ポリカーボネート樹脂70gにSA−1を0.21g添加した樹脂組成物を溶解し、電荷輸送剤塗工液を作成した。得られた樹脂溶液の白濁の有無を目視で観察した。
次に、電荷輸送剤塗工液をガラス板上に、5×15cmのキャストフィルムを作成し、風乾後100℃、8時間乾燥し、厚さ約20μmのフィルム成形物を得た。得られたフィルム成形物の静摩擦係数を新東科学株式会社製ミューズ94iIIで測定、評価した。さらに、そのフィルム成形物に対して、市販のウレタンゴム製感光体クリーニングブレード(バンドー化学株式会社製)の小片(30mm×20mm×2mm)を100g荷重で、500回往復、10mm/秒の速度で摩擦摩耗試験機(新東科学工業株式会社製HHS2000)で摩擦試験を行ったあと、表面の静摩擦係数を同様に測定、評価した。
次に、あらかじめテトラヒドロフランで電荷輸送層を除去した市販LBP感光体(セイコーエプソン株式会社製LPA3ETC4)に、前記電荷輸送剤塗工液を浸漬法で塗布し、風乾後100℃、8時間乾燥し、厚さ約25μmの電荷輸送層を設けて、積層型電子写真感光体(以下「OPC」と略称)を作製した。
作成したOPCの重量をあらかじめ測定し、市販LBP(LBP−8400;セイコーエプソン株式会社製)に装着し、OA用再生紙(LBP−190R−A4B;十千万(株)製)を用いて、全面黒印刷にて2枚連続印刷し、初期画質評価として2枚目の黒色印刷部の濃淡や白抜けの有無を目視にて確認した。さらに5000枚全面黒印刷後のOPC重量を測定し、OPC摩耗量を推定した。
これらの各種評価結果を表1に示す。
<実施例2>
SA−1の代わりに、SA−2を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例3>
SA−1の代わりに、SA−3を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例4>
PC−1の代わりに、PC−2を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例5>
PC−1の代わりに、PC−3を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例6>
PC−1の代わりに、PC−4を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例7>
PC−1の代わりに、PC−5を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例8>
PC−1の代わりに、PC−6を用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例9>
PC−1を、PC−7に変更し、SA−1を0.64g用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例10>
PC−1を、PC−8に変更し、SA−1を0.09g用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
SA−1を用いなかった以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例2>
SA−1を0.03gに用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例3>
SA−1を1.79gに用いた以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例4>
SA−1をSA−4に変更した以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例5>
SA−1をSA−5に変更した以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例6>
SA−1をSA−6に変更した以外は、実施例1と同様にキャストフィルムとOPCを作成し、物性を測定した。結果を表1に示す。
<評価方法>
上記実施例及び比較例において、各種物性の評価方法は以下の通りである。
1)溶液相溶性:各溶媒に、シリコーン・アクリル共重合体とポリカーボネート樹脂を溶解した溶液の濁り具合を50ccのガラスフラスコで目視にて判定した。
○:白濁発生せず。
△:わずかに白濁が認められるが、透過光は確認出来る。
×:白濁強。透過光確認出来ず。
2)初期摩擦係数:電荷輸送剤塗工液のキャストフィルムおよび感光体表面の静摩擦係数を新東科学株式会社製ミューズ94iIIで測定、評価した。
3)ブレード摩擦後摩擦係数:ポリカーボネート樹脂組成物のキャストフィルムおよび感光体表面を、市販のウレタンゴム製感光体クリーニングブレード(バンドー化学株式会社製)の小片(30mm×20mm×2mm)を100g荷重で、500回往復、10mm/秒の速度で摩擦摩耗試験機(新東科学工業株式会社製HHS2000)で摩擦試験を行ったあと、表面の静摩擦係数を新東科学株式会社製ミューズ94iIIで測定、評価した。
4)感光体耐摩耗性評価:市販の感光体ドラムの表面を溶解し、市販の電荷輸送剤を含んだ本発明の実施例の樹脂組成物で新たに感光体ドラムを作成し、市販のレーザービームプリンタに装着後、A4再生紙5002枚全面黒印刷後の感光体摩耗量を測定した。
5)初期画質評価:市販の感光体ドラムの表面を溶解し、市販の電荷輸送剤を含んだ本発明の実施例の樹脂組成物で新たに感光体ドラムを作成し、市販のレーザービームプリンタに装着後、A4再生紙全面黒印刷連続2枚印刷後の、2枚目の黒色印刷部の濃淡や白抜けの有無を目視にて確認した。
○:濃淡、白抜け確認出来ず。
×:濃淡、白抜け発生。
Figure 2010143950
本発明のシリコーン・アクリル共重合体を含有するポリカーボネート樹脂組成物は、成形物の摩擦係数が低く耐摩耗性に優れるため、電子写真感光体の感光層用バインダー樹脂として使用した場合、電子写真感光体の耐久性を向上させ、長寿命の電子写真感光体を提供することができる。

Claims (11)

  1. ポリカーボネート樹脂と、ラジカル重合性基を有するシリコーンモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であって且つ水酸基を0.2〜10重量%含むシリコーン・アクリル共重合体とを含有する、ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記シリコーン・アクリル共重合体が、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であることを特徴とする、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2010143950
    (上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Xは下記一般式(2)で表される基から選ばれる基を表す。nは2〜1000の整数を表す。)
    Figure 2010143950
    (上記一般式(2)中、mは1〜3の整数を表す。)
    Figure 2010143950
    (上記一般式(3)中、R2〜R4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Yは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の環状アルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、及びグリシジル基からなる群から選ばれる基を表す。ただし、使用する一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマー全体の中に、Yに少なくとも炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を有するモノマーを含む。)
  3. 前記オルガノポリシロキサン化合物が、下記一般式(4)で表されるラジカル重合性シリコーンマクロモノマーである、請求項2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2010143950
    (上記一般式(4)中、R5は水素原子又はメチル基、R6は酸素原子により中断されても良い炭素原子数1〜12の2価の炭化水素基、R7はメチル基又はトリメチルシロキシ基、R8は炭素原子数1〜4の1価の炭化水素基をそれぞれ表す。aは2〜1000の整数、bは1〜3の整数をそれぞれ表す。)
  4. 前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーが、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸―2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、及びアクリル酸グリシジルからなる群から選択されるモノマーであることを特徴とする、請求項2又は3記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル系モノマーが、少なくともメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群から選択される1種以上のモノマーを含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記シリコーン・アクリル共重合体の重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのポリスチレン換算で2万〜10万である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記シリコーン・アクリル共重合体がポリカーボネート樹脂全量に対し0.05〜2重量%含有されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記ポリカーボネート樹脂が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、及び1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオールからなる群から選択されるビスフェノール類から誘導されたものである、請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 前記ポリカーボネート樹脂の極限粘度が0.3〜2dl/gである、請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  10. 導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いることを特徴とする、電子写真感光体。
  11. 前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型感光層であって、前記ポリカーボネート樹脂組成物が該電荷輸送層に使用されることを特徴とする、請求項10記載の電子写真感光体。
JP2008319208A 2008-12-16 2008-12-16 ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた電子写真感光体 Pending JP2010143950A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014137560A (ja) * 2013-01-18 2014-07-28 Canon Inc 電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
JP2014137561A (ja) * 2013-01-18 2014-07-28 Canon Inc 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
KR102517820B1 (ko) * 2022-09-19 2023-04-06 주식회사 프리즘머트리얼스 고속프린터용 토너

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