本出願は、1996年3月8日提出のノーマン F.クラスナー(Norman F.Krasner)による米国特許出願第08/612582号の一部継続出願である。
本出願はまた、同じ発明者ノーマン F.クラスナーによる1995年10月9日提出の「Low Power,Sensitive Pseudorange Measurement Apparatus and Method for Global Positioning Satellites Systems」という名称の仮特許出願第60/005318号にも関係し、ここにこの仮出願の出願日の利益を主張するものである。
本発明は、移動性のまたは遠隔にある物体の位置を計算する装置および方法に関する。これらは、遠隔ハードウェアが、非常に低い受信信号レベルで動作し、かつ位置情報を正確に測定できる能力を有し、消費電力が非常に低くなるような方法で実施される。すなわち、電力消費が減少する一方で、受信器の感度および精度が向上する。これは、安定な周波数通信信号を遠隔ユニットが受信し、これを使用することによって可能となる。これは、図1Aに示すような遠隔受信機能を実装し、別に設置された基地局10から遠隔または移動GPSユニット20に衛星暦情報を送信することによって可能となる。
擬似距離を使用して、遠隔ユニットの地理的位置を計算するのには異なる多くの方法があることに留意されたい。以下に3つの例をあげる。
1.方法1:衛星データ・メッセージを基地局10から遠隔20に再送信することによって、遠隔ユニット20が、擬似距離の測定値にこの情報を結合してその位置を計算する。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5365450号を参照されたい。遠隔ユニット20は一般に、遠隔ユニット20の内部で位置計算を実行する。
2.方法2:遠隔ユニット20が、GPS信号を受信することによって、当技術分野で一般に実施されている通常の方法で衛星エフェメリス・データを集める。一般に1〜2時間の間有効であるこのデータを擬似距離の測定値に結合し、一般に遠隔ユニット内で位置計算を遂行する。
3.方法3:遠隔ユニット20が、通信リンク16を介して擬似距離を基地局10に送信し、基地局は、この情報を衛星エフェメリス・データと結合して位置計算を遂行する。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5225842号を参照されたい。
方法1および3では、基地局10および遠隔ユニット20が、問題の全ての衛星をともに見ることができ、互いが、GPS擬似乱数コードの繰返しレートに関連した時間の曖昧性を解決するのに十分に近い距離に配置されることを仮定している。この条件は、基地局10と遠隔ユニット20の間の距離が、光速の1/2にPN繰返し周期(1ミリ秒)を乗じたものであるとき、すなわち約150kmであるときに満足される。
本発明を説明するため、方法3を利用して位置計算を遂行するものとする。しかし、この明細書を再検討すれば、本発明のさまざまな態様および実施形態を、前記の3つの方法のいずれとでも、またはその他の方法とでも使用することができることを当業者は理解するであろう。例えば方法1の変形形態において、衛星エフェメリスを表すデータなどの衛星データ情報を、基地局が遠隔ユニットに送信してもよく、バッファリングされたGPS信号から本発明に基づいて計算された擬似距離とこの衛星データ情報を結合して、遠隔ユニットの緯度および経度(多くの場合さらに高度)を得てもよい。遠隔ユニットから受信する位置情報を緯度および経度に限定してもよいし、または、遠隔ユニットの緯度、経度、高度、速度および方角を含む広範囲の情報としてもよいことも理解されよう。さらに、本発明の局部発振器の補正および/または電力管理態様を、方法1のこの変形形態に利用することもできる。さらに、衛星暦情報を、遠隔ユニット20に送信し、遠隔ユニット20がこれを本発明の態様に基づいて利用するようにしてもよい。
方法3において基地局10は、図1Aに示すデータ通信リンク16を介して送信されるメッセージを通じて遠隔ユニット20に測定を実行するよう指示する。一般に、遠隔ユニット20に指示を与える基地局10からのメッセージがさらに、視野の中にある特定の衛星の識別または、その他の初期設定データを指定してもよい。基地局10は、このメッセージに含めて(または事前に)、衛星データ情報の形態の衛星暦情報を送信してもよい。この衛星暦情報は一般に、GPS衛星群の全ての衛星の時刻ごとの大まかな位置の記述を含んでいる。米国特許第4445118号には、衛星暦データに含めることができるデータのいくつかが記載されている。遠隔ユニット20の部分である別個のモデム22がこのメッセージを受け取り、低電力マイクロプロセッサ26に結合されたメモリ30がこれを記憶する。次いで、この衛星暦情報を使用して、視野の中にある衛星のドップラー情報を導き出すことができる。このドップラー情報の導出については後にさらに説明する。この暦データは最長1カ月間有効である。マイクロプロセッサ26は、遠隔ユニットの処理部材32〜48とモデム22の間のデータ情報転送を処理し、以下の議論で明らかにする遠隔受信器20内部の電力管理機能を制御する。擬似距離の計算および/またはその他のGPS計算の実行時、または、代替の電源が使用可能なときを除いて、マイクロプロセッサ26は通常、遠隔ユニット20の全てまたはほとんどのハードウェアを低電力状態、すなわちパワー・ダウン状態にセットする。しかしモデムの受信器部分は、少くとも周期的にオン(フル・パワー状態まで)にされ、遠隔ユニットの位置の決定を促すコマンドが基地局10から遠隔ユニットに送信されたか否かを判定する。
遠隔ユニットの視野の中にある衛星のドップラー情報を導き出すのにこの衛星暦情報を使用すると、遠隔ユニット20がこのドップラー情報を探索する必要がなくなり、これによって、その処理時間が10分の1未満に減少する。ドップラー情報の使用によってさらに、GPS移動ユニット20が、GPS信号のサンプルをより高速に処理することが可能となり、これによって、位置情報を計算するためにプロセッサ32がフル・パワーを受け取らなければならない時間が短縮される傾向がみられる。これだけで、遠隔ユニット20によって消費される電力が減り、かつ感度が向上する。GPSメッセージ内のデータのエポックを含む追加の情報を遠隔ユニット20に送信してもよい。
受信データ・リンク信号は精密搬送周波数を利用することができる。遠隔ユニット受信器20は、後に説明する図6に示すように自動周波数制御(AFC)ループを使用して、この搬送波にロックし、これによってさらに、(例えば、GPS信号の取得に使用するGPS局部発振器の出力周波数を補正することによって)遠隔ユニット受信器自体の基準発振器を較正することができる。メッセージ伝送時間を10ミリ秒、受信信号対雑音比を20デシベルとすると、AFCを介した周波数測定が、10Hzまたはこれより優れた精度で実施可能となる。これは一般に、本発明の必要条件を満たしてあまりあるものであろう。この特徴は、従来法または本発明の高速畳込み法を使用して実行される位置計算の精度をも強化する。この特徴については後にさらに詳細に説明する。
本発明の一実施形態では、通信リンク16は、双方向ページャ・システムなどの市販の狭帯域無線周波通信媒体である。このシステムは、遠隔ユニット20と基地局10の間で伝送されるデータ量が比較的小さい実施形態に使用することができる。ドップラー(衛星暦データの代替)およびその他のデータ(例えば視野の中にある衛星の識別などの初期設定データ)の送信に必要なデータ量は比較的小さく、同様に、位置情報(例えば擬似距離)に必要なデータ量も比較的小さい。したがって、狭帯域システムがこの実施形態に適当である。GPS衛星群の全ての衛星のおおよその位置を記述するのに必要なデータ量を狭帯域通信システムで効率的に送信できるように、衛星暦データを圧縮してもよい。短時間に大量のデータを送信する必要があるシステムでは、より高帯域の無線周波通信媒体が必要となることがある。これらのより高帯域のシステムが、圧縮していない衛星暦データを送信する実施形態に必要となることがある。
衛星暦情報は、長期間(例えば一般に1カ月間)良好な精度を維持するので、圧縮していない衛星暦情報を送信するときでも、狭帯域システムの使用が効率的でありえることを理解されたい。したがって、この情報を月に1度送信し、GPS移動ユニット(例えば、フラッシュEEPROMメモリ)に記憶し、1カ月間それを使用してもよい。この場合には一般に、この情報は、衛星暦データを受け取った日付を指示するタイム・スタンプとともに記憶される。遠隔ユニットは次いで、位置情報の提供を指示するコマンドを受け取ったときに、衛星暦データが古くなっていないかどうかを判定し、これに応じて基地局から送信された暦データを受け取ったり、または受け取らなかったりする。データが古くなっていない(例えば、その暦データが、そのタイム・スタンプの指示から判断して1カ月または他の所定の期間に達していない)場合には、記憶してあったデータを使用することができ、「新しい」衛星暦データを受け取る必要はなく、このようなデータの自動送信は無視される。代替として、衛星暦データを送信した遠隔ユニット、およびそれぞれの遠隔ユニットに対して衛星暦データを最後に送信した日付を指示するタイムスタンプのリストを基地局が保持することによって、衛星暦データを送信するべきか否かを基地局が判定してもよい。この場合基地局は、特定の遠隔ユニットに記憶された最後の衛星暦データの古さに基づいて、位置決定コマンドを送信する際に衛星暦データも送信するか否かを判定する。特定の遠隔ユニットの暦データが古くなっていない(例えば1カ月がたっていない)場合には、暦データを付けずに位置決定コマンドのみを基地局から遠隔ユニットに送信する。暦データが古くなっている場合には、現在の衛星暦データを遠隔ユニットに送信する。
遠隔ユニット20が衛星暦情報とともにGPS処理コマンドを(例えば基地局10から)受信した後(または、局所的に記憶された衛星暦データが使用可能であると遠隔ユニット20が判定した後)、マイクロプロセッサ26は、バッテリ/電力レギュレータおよび電源スイッチ回路36(および制御電力線21a、21b、21c、21d)を介して、RF−IF変換器42、アナログ−ディジタル変換器44およびディジタル・スナップショット・メモリ46を活動化し、これらの構成要素にフル・パワーを提供する。これによって、アンテナ40を介して受信されたGPS衛星からの信号がIF周波にダウンコンバートされ、続いてディジタル化される。次いで、一般に100ミリ秒から1秒の持続時間に対応するこのようなデータ・セットがスナップショット・メモリ46に記憶される。感度を向上させるほうが電力の節約よりも重要である状況では、(感度をよくするために)メモリ46により多くのデータを記憶し、電力の節約が感度よりも重要である状況では、記憶するデータを減らすといったように、マイクロプロセッサ26は記憶するデータの量を制御することができる。一般に、GPS信号が部分的に妨害されるときには感度がより重要となり、電源を豊富に使用可能なとき(例えばカー・バッテリの使用)には、電力を節約する重要性は低くなる。このデータを記憶するメモリ46のアドレス指定は、フィールド・プログラム可能ゲート・アレイ集積回路48によって制御される。後にさらに論じるように、GPS信号のダウンコンバートは、局部発振器信号39を変換器42に供給する周波数シンセサイザ38を使用して実施される。
この期間中(視野の中にある衛星からのディジタル化されたGPS信号をスナップショット・メモリ46に記入している間)は、DSPマイクロプロセッサ32を低消費電力状態に維持することができることに留意されたい。RF−IF変換器42およびアナログ−ディジタル変換器44は一般に、擬似距離計算に必要なデータを収集し記憶するのに十分な短時間の間のみオンにされる。データ収集が完了した後、制御電力線21bおよび21cを介して、これらの変換器がオフにされるか、または、供給電力が低減される(ただしメモリ46はフル・パワーを受け取り続ける)。したがって実際の擬似距離計算中の消費電力の増大には寄与しない。次いで、擬似距離計算が実行される。一実施形態ではこれに、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)社のTMS32OC3O集積回路などの汎用プログラム可能ディジタル信号処理IC32(DSP)を使用する。このDSP32はこの計算の実行前に、制御電力線21eを介して、マイクロプロセッサ26および回路36によって活動化電力状態に置かれる。
このDSP32は、カスタムメイドの専門ディジタル信号処理ICと比べると、汎用プログラム可能DSPである点が、いくつかの遠隔ユニットGPSユニットで使用されるその他のDSPとは異なる。さらにDSP32では、局所的に生成された基準信号と受信信号との間の多数の相関演算を高速に実行することによって擬似距離の非常に高速な計算を可能とする高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを使用することができる。受信した各GPS信号のエポックの探索を完了するのには一般に、2046回の相関演算が必要である。高速フーリエ変換アルゴリズムによって、このような位置の全てを同時かつ並列に探索することが可能となり、これによって、必要な計算プロセスが、従来の方法に比べて10〜100倍も高速になる。
視野の中にある各衛星の擬似距離の計算が完了した後、DSP32は、本発明の一実施形態において、相互接続バス33を介してマイクロプロセッサ26にこの情報を送信する。このとき、マイクロプロセッサ26は、バッテリ/電力レギュレータ回路36に適当な制御信号を送ることによってDSP32およびメモリ46を再び低消費電力状態に置くことができる。最終的な位置計算のため、マイクロプロセッサ26は次いで、モデム22を利用し、データ・リンク16を介して擬似距離データを基地局10に送信する。擬似距離データに加えて、バッファ46への最初のデータ収集からデータ・リンク16を介したデータの送信までの経過時間を指示する時間タグを同時に基地局10に送信してもよい。この時間タグによって、データ収集の時点におけるGPS衛星位置の計算が可能となるので、時間タグは、基地局の位置計算性能を向上させる。代替の方法として、前記方法1に従ってDSP32が、遠隔ユニットの位置(例えば緯度および経度、または緯度、経度および高度)を計算し、このデータを、マイクロプロセッサ26に送信し、同様にこのデータを、モデム22を介して基地局10に中継するようにしてもよい。この場合、DSPが、衛星データ・メッセージを受信してからバッファのデータ収集が開始されるまでの経過時間を維持することによって位置計算が容易になる。これによって、データ収集の時点におけるGPS衛星の位置計算が可能となるので、遠隔ユニットの位置計算性能が改善される。
図1Aに示すように一実施形態では、モデム22が別個のアンテナ24を利用し、データ・リンク16を介してメッセージを送受信する。モデム22は、アンテナ24に交互に結合される通信受信器および通信発信器を含むことを理解されたい。同様に基地局10も、別個のアンテナ14を使用してデータ・リンク・メッセージを送受信することができ、これによって、基地局10のGPSアンテナ12を介してGPS信号を連続的に受信することが可能となる。
一般的な例では、ディジタル・スナップショット・メモリ46に記憶されたデータの量、およびDSPまたは複数のDSPの速度に応じて、DSP32での位置計算が数秒以下で済むことが期待される。
基地局10からの位置計算コマンドが頻繁でなければ、遠隔ユニット20の高電力消費回路の活動化は短時間でよいことは以上の議論から明らかである。少くとも多くの状況において、このようなコマンドによって遠隔機器が高電力消費状態に活動化されるのは、その時間のたかだか約1%に過ぎないことが予想される。
そしてこれによって、バッテリの動作時間はそうしない場合の100倍も長くなる。電力管理操作の実施に必要なプログラム・コマンドは、EEPROM28またはその他の適当な記憶媒体に記憶される。この電力管理戦略を、異なる電力利用度状況に適合可能なものにすることができる。例えば、主電源が使用可能なときには、位置の決定を継続して実施することができる。
先に指摘したように、ディジタル・スナップショット・メモリ46は比較的長い時間に対応するレコードを取り込む。高速畳込み法を使用したこの大きなデータ・ブロックの効率的な処理は、(例えば、建物、樹木などによる部分的な妨害のために受信状態が悪いときなどに)低い受信レベルの信号を処理できる本発明の能力に寄与する。視野の中の全てのGPS衛星の擬似距離は、バッファリングされたこの同じデータを使用して計算される。これによって、(都市の妨害条件などの)信号振幅が急速に変化する状況において、連続トラッキングGPS受信器に関して性能が向上する。
図1Bに示したわずかに異なる実施態様は、マイクロプロセッサ26およびその周辺装置(RAM30およびEEPROM28)を使用せず、その機能を、より複雑なFPGA(フィールド・プログラム可能ゲート・アレイ)49に含まれた追加の回路で置き換える。図1Bに示した遠隔ユニットの構造および動作は、1996年3月8日に提出されたノーマン F.クラスナーによる米国特許出願第08/612669号、特許第5663734号に、より詳細に記載されている。この出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。図1Bの遠隔ユニットはDSP32aを使用し、図7に示すような電力管理方法に従って、異なる構成要素を選択的にオンにしたり、またはこれらへの供給電力を減らしたりする。
図1Cに、本発明に基づくGPS移動ユニットの他の実施形態を示す。このユニットは、図1Aおよび図1Bに示したGPS移動ユニットの構成要素の多くを含む。
図1Cは、GPS移動ユニットが、感度を電力節約とトレードオフする本発明の機能を示す図である。本明細書で説明したように、メモリ46に記憶するGPS信号の量を増やすことによってGPS移動ユニットの感度を向上させることができる。これは、より多くのGPS信号を収集し、ディジタル化して、メモリ46に記憶することによって実施される。このバッファリングの増大によって電力消費も増大するが、GPS移動ユニットの感度は向上する。図1Cに示した遠隔ユニットの構造および動作は、1996年3月8日提出の前掲米国特許出願第08/612669号に、より詳細に記載されている。
GPS移動ユニットのRF−IF周波数変換器およびディジタル化システムの代表的な例を図2Aおよび図2Bに示す。図2Aおよび図2Bに示したこれらの例の構造および動作は、1996年3月8日提出の前掲米国特許出願第08/612669号に、より詳細に記載されている。
DSP32で実施されるGPS信号処理の詳細は、図3の流れ図、ならびに図4A、図4B、図4C、図4D、および図4Eに参照することで理解することができる。以下に説明する信号処理を実行する機械コードまたはその他の適当なコードがEPROM34に記憶されることは当業者には明白である。その他の不揮発性記憶装置を使用してもよい。以下では、図2AのI/Qサンプリングを使用するものとし、スナップショット・メモリ46は、2.048MHzの2つのディジタル・データ・チャネルを含むものとする。この処理の目的は、局所的に生成された波形に関して受信波形のタイミングを決定することにある。さらに、高い感度を達成するため、このような波形の非常に長い部分を処理する。これは一般に、100ミリ秒から1秒である。この信号処理で使用するドップラー情報は、記憶されていた衛星暦データから導き出されたドップラー情報でも、または最近送信された衛星暦データから導き出されたドップラー情報でもよいことを理解されたい(位置コマンドとともに遠隔ユニットに直接に送信されたドップラー情報を使用することもできる。この場合は、遠隔ユニット内でドップラー情報を導き出す必要がなくなる)。衛星暦データからのドップラー情報の導出については、図8との関連で本明細書でさらに説明する。図3、および図4Aないし図4Eに示した信号処理に関しては、1996年3月8日提出の前掲米国特許出願第08/612669号に、より詳細に記載されている。
図3、および図4Aないし図4Eに示した前述の信号処理の概要を次に説明する。視野の中の1つまたは複数のGPS衛星からのGPS信号を、遠隔GPSユニット上のアンテナを使用して遠隔GPSユニットが受信する。これらの信号はディジタル化されて、遠隔GPSユニット内のバッファに記憶される。これらの信号を記憶した後、一実施形態では、プロセッサが前処理、高速畳込み処理および後処理操作を実施する。これらの処理操作には以下のものが含まれる。
a)GPS信号に含まれる擬似乱数(PN)コードの複数のフレーム周期に持続時間が等しい一連のブロックに記憶したデータを分解する。
b)各ブロックに対して前処理段階を実行する。前処理段階では、1つのPNフレームと等しい持続時間を有する連続するデータ・サブブロックをコヒーレントに加算することによって、擬似乱数コード周期の持続時間に長さが等しい圧縮されたデータ・ブロックを生成させる。この加算段階は、対応するサンプル番号のサブブロックどうしを加算することを意味する。
c)圧縮された各ブロックに対して、整合フィルタリング操作を実行する。この操作では、高速畳込み手法を利用して、データ・ブロックに含まれる受信したPNコードと局所的に生成されたPN基準信号(例えば処理中のGPS衛星の擬似乱数列)との間の相対的なタイミングを決定する。
d)前記整合フィルタリング操作から生成された積に絶対値2乗演算を実行することによって擬似距離を決定し、これを後処理する。後処理では、絶対値2乗データ・ブロックを加算して全てのブロックの絶対値2乗データを単一のデータ・ブロックに結合することによって、1つのピークを生成させる。
e)前記単一のデータブロックのピークの位置をディジタル補間法を使用して高い精度で見つけ出す。この位置は、データ・ブロックの始まりから前記ピークまでの距離であり、これが、処理中の擬似乱数列に対応するGPS衛星の擬似距離を表す。
バッファリングされたGPS信号の処理に使用される高速畳込み手法は一般に、高速フーリエ変換(FFT)であり、畳込みの結果は、圧縮ブロックの順変換と事前に記憶した擬似乱数列の順変換表現の積を計算して第1の結果を生成し、次いで、第1の結果の逆変換を実行して結果を回復することによって生成される。また、ドップラーで誘導された時間遅延および局部発振器で誘導された時間誤差の効果は、高速フーリエ変換の順変換操作と逆変換操作の間に、サンプル番号ごとの位相がそのブロックに必要な遅延補償と一致するように調整された、複素指数関数を圧縮ブロックの順FFTに乗算する操作を挿入することによって、各圧縮データ・ブロックごとに補償される。
前述の実施形態では、各衛星からのGPS信号の処理は、並列にではなく、時間軸にそって逐次的に実施される。代替実施形態では、視野の中にある全ての衛星からのGPS信号を時間並列的な方法で一度に処理する。
本明細書では、基地局10は、問題の全ての衛星の共通視野を有し、C/A PNコードの繰返し周期に関連した曖昧性を回避するために、遠隔ユニット20に十分に近いと仮定する。90マイルの距離はこの基準を満たす。さらに、基地局10はGPS受信器を有し、視野の中の全ての衛星を連続的に高い精度で追跡できるような良好な地理的位置にあると仮定する。
記載した基地局10のいくつかの実施形態では、GPS移動ユニットの緯度および経度などの位置情報を計算するために、基地局のコンピュータなどのデータ処理構成要素が使用されるが、それぞれの基地局10が単に、GPS移動ユニットからの擬似距離など受信した情報を、緯度および経度の計算を実際に実行する1つまたはいくつかの中央局(central location)に中継するだけでもよいことを理解されたい。この方法では、データ処理ユニットおよび関連構成要素をそれぞれの中継基地局から排除することによって、これらの中継基地局のコストおよび複雑さを低減させることができる。この場合中央局は、受信器(例えば電気通信受信器)、ならびにデータ処理ユニットおよび関連構成要素を含むことになろう。さらにある実施形態では、ドップラー情報または衛星暦データを衛星から遠隔ユニットに送信し、これによって送信セル内に基地局をエミュレートして、基地局を仮想基地局とすることもできる。
図5Aおよび図5Bに、本発明に基づく基地局の2つの実施形態を示す。図5Aに示した基地局では、GPS受信器501がGPSアンテナ501aを介してGPS信号を受信する。GPS受信器501は従来のGPS受信器でよく、一般にGPS信号を基準として調時された時間基準信号、およびGPS衛星群の全ての衛星の衛星暦データを供給する。GPS受信器501が、視野の中の衛星に関するドップラー情報を供給してもよい。このGPS受信器501は、調整された局部発振器505に結合される。この局部発振器は時間基準信号510を受け取り、この基準信号に位相ロックする。この調整された局部発振器505は、変調器506に提供される出力を有する。変調器506はさらに、衛星暦データ(または、GPS移動ユニットの視野の中にある各衛星のドップラー・データ情報信号)および/またはその他の衛星データ情報信号511を受け取る。変調器506は、衛星暦データ(またはドップラー・データ)および/またはその他の衛星データ情報で、局部発振器505から受け取った局部発振器信号を変調し、変調された信号513を発信器503に供給する。衛星暦情報などの衛星データ情報を発信器のアンテナ503aを介してGPS移動ユニットに送信するのに、データ処理ユニット502が発信器503の動作を制御できるよう、発信器503は、相互接続514を介してデータ処理ユニット502に結合される。このようにしてGPS移動ユニットは、GPS受信器501が受信した衛星暦情報、および図6に示すようなGPS移動ユニット内の局部発振器の較正に使用できる高精度の局部発振器搬送波信号を受け取ることができる。位置決定コマンドの送信のたびに、基地局が、現在の衛星暦データを自動的に遠隔ユニットに送信するようにしてもよいことを理解されたい。これの代わりに、基地局が、前述のとおりに、遠隔ユニットに記憶された衛星暦データが古くなっているか否かを判定し、遠隔ユニットに記憶されているデータが古くなっている場合にのみ現在の暦データを送信するようにしてもよい。高帯域通信システム(例えばセルラ電話システム)を通信リンクに使用している場合には、前者の方法のほうが好ましい。狭帯域通信システムを使用している場合には後者の方法のほうが好ましい。
図5Aに示した基地局はさらに、遠隔ユニットまたはGPS移動ユニットから通信アンテナ504aを介して通信信号を受信するように結合された受信器504を含む。アンテナ504aを、送信器のアンテナ503aと同一のアンテナとし、単一のアンテナが、従来の方法で発信器および受信器の両方のアンテナの働きをするようにするようにしてもよいことを理解されたい。受信器504は、データ処理ユニット502に結合される。データ処理ユニット502は、従来型のコンピュータ・システムでよい。処理ユニット502はさらに、ドップラー・データ情報および/またはその他の衛星データ情報をGPS受信器501から受け取る相互接続512を含むことができる。この情報を、移動ユニットから受信器504を介して受信した擬似距離情報またはその他の情報の処理に利用することができる。このデータ処理ユニット502はディスプレイ装置508に結合される。ディスプレイ装置508は従来型のCRTでよい。データ処理ユニット502はさらに、ディスプレイ508に地図を表示するのに使用するGIS(地理情報システム)ソフトウェア(例えば米カリフォルニア州サンタクララのストラテジック・マッピング社(Strategic Mapping,Inc.)のAtlas GIS)を含む大容量記憶装置507に結合される。ディスプレイ地図を使用すると、表示された地図に対応させてGPS移動ユニットの位置をディスプレイ上に示すことができる。
図5Bに示す代替の基地局は、図5Aに示した構成要素の多くを含む。しかし図5Bの基地局は、衛星暦データ、あるいはドップラー・データ情報および/またはその他の衛星データ情報をGPS受信器から得ることはせず、代わりに、電気通信リンクまたは無線リンクから従来の方法で得た衛星暦データ、あるいはドップラー・データ情報および/またはその他の衛星データ情報の発信源552を含んでいる。例えば、インターネット上のサーバ・サイトからこの情報を得ることができる。このドップラー情報および/または衛星情報は、相互接続553を介して変調器506に送られる。図5Bに示した変調器506のもう一方の入力は、セシウム標準局部発振器などの基準品質の局部発振器からの発振器出力信号である。この基準局部発振器551は精密搬送周波数を供給する。この精密搬送周波数は、ドップラー・データ情報および/またはその他の衛星データ情報で変調され、次いで、発信器503を介してGPS移動ユニットに送信される。
前の議論では、衛星データ伝送および周波数基準情報の全ての機能を統合する基地局を示したが、実際の状況のほとんどでは、これは、セルラ・システムまたはページング・システムなどの商用通信システムを使用して部分的に実行することができる。例えば、ほとんどのディジタル・セルラ・システムは、信号の送信に非常に安定な局部発振器を利用する。この場合、基地局は、ブロック501または552に衛星データを収集し、従来の有線モデムを使用して、このようなセルラ・システムを介してこのデータを送るだけでよい。精密周波数基準の送信を含む実際の変調機能は、セル・サイトの発信器によって実行される。この方法によれば、特別なRF回路の必要ない非常に低コストの基地局が可能となる。同様に、遠隔ユニットと基地局の間のリンク上で、セルラ・システムが、ブロック504の受信および復調機能を提供し、基地局は、通常の回線を介してこのようなデータを受信するモデムを利用するだけでよくなる。
搬送周波数が非常に安定である限り、データ信号の伝送周波数およびフォーマットは重要ではないということは本発明の重要な特徴である。多数の周波数チャネルを利用して多数のユーザにサービスを提供するセルラ・システムでは一般にそうであるように、この搬送周波数は、送信のたびに異なってもよいことに留意されたい。いくつかの場合には、搬送周波数は1回の呼の間に変化してもよい。例えば、いくつかのディジタル・セルラ・システムでは周波数ホッピングが利用される。遠隔受信器が、安定した伝送周波数に周波数ロックする限り、本発明は、このような信号を利用することができる。
図6Aに、本発明のGPS移動ユニットの一実施形態を示す。この実施形態は、図1Aに示したアンテナ24と同様の通信チャネル・アンテナ601を介して受信した精密搬送周波数信号を利用する。アンテナ601は、図1Aのモデム22と同様のモデム602に結合され、モデム602は、自動周波数制御回路603に結合される。この自動周波数制御回路は、(セルラ電話のセル・サイト発信器であるか、またはこれを含むとみなされる)本発明の一実施形態に基づいて本明細書に記載された基地局から送信された精密搬送周波数信号にロックする。自動周波数制御回路603は、一般に、精密搬送周波数に周波数ロックされる出力604を提供する。この信号604は、比較器605によって、相互接続608を介したGPS局部発振器606の出力と比較される。比較器605によって実施された比較の結果は、訂正信号としてGPS局部発振器606に供給される誤り訂正信号610となる。このようにして、周波数シンセサイザ609は、較正されたより高品質の局部発信信号を相互接続612を介してGPSダウンコンバータ614に供給する。GPS局部発振器606および周波数シンセサイザ609は、GPSアンテナ613を介して受信したGPS信号を取得するダウンコンバータに入力されるGPSクロック信号を供給する1つの局部発振器とみなすことができることを理解されたい。本明細書で使用する「較正された」、「較正する」、または「較正」という言葉は、(局部発振器内での誤りの測定から導き出された基準信号を使用して)局部発振器を測定し、これを補正するシステム、または(例えば、通信受信器からの局部発振器信号を、GPS信号のダウンコンバート/取得に使用するGPSクロック信号を生成する周波数シンセサイザ回路に供給することによって)局部発振器信号を安定化するシステムについて言う。相互接続612を介して供給される信号は、図1Aの相互接続39によって変換器42に供給される局部発振器信号と同様であり、変換器42は、GPS信号を受信するGPSアンテナ613に結合されたGPSダウンコンバータ614と同様であることを理解されたい。
代替実施形態では、通信受信器のAFCユニットによって供給される信号604が、適当な周波数で周波数シンセサイザ609の基準として働くLOとなる。この場合、GPS局部発振器は必要なくなり(このため図6Aではオプションとして示されている)、GPS局部発振器からの信号607の代わりにこの信号604が、シンセサイザ609に直接に供給される。このようにして、正確で安定な局部発振器クロック信号が、GPSアンテナを介して受信したGPS信号を取得するGPSダウンコンバータに供給される。
他の代替実施形態では、比較器605によって実施された比較の結果を、誤り訂正信号として相互接続610aを介して図1Aに示したDSPチップ32と同様のDSP部品620に出力する。この場合、誤り訂正信号610は、周波数シンセサイザ609に間接的にも供給されない。位相ロック・ループ、または周波数ロック・ループ、またはブロック位相推定器を含む従来のいくつかの手法を使用して自動周波数制御回路を実施してもよい。
図6Bに、本発明の移動ユニット内にGPS信号を取得する(例えば、ダウンコンバートする)のに使用するGPS局部発振器を較正するGPS移動ユニットの他の実施形態を示す。この方法は、通信受信器の受信回路から安定な周波を導き出すものである。ディジタル・セルラ信号、PCS信号などの多くの通信信号は、0.1ppmまで安定な搬送周波数を有する。このような信号の受信器は、その動作の一部として、受信器の搬送波に適用される位相ロック手順を提供し、これによって、このような搬送波を除去し、搬送波に乗せられたディジタル・データを復調することが可能となる。この位相ロック手順は通常、そのプロセスの一部として安定な局部発振器を生成し、次いでこの局部発振器を利用して、GPS受信器の局部発振器を別々に安定させる。これによって、この受信器の高価な構成要素が不要になる。
通信受信器640が受信した通信信号は、どのチャネルに受信器を同調させたかによって、複数の可能な搬送周波数のうちの1つを有することができる。受信器の第1段(変換器642)はこの入力信号を、単一のIF周波数、例えば140MHzにダウンコンバートする。このダウンコンバートは、ダウンコンバータ642に発振器信号入力を供給する発振器VCO1 643によって制御される。VCO1の出力は、発振器VCO1 643およびVCO2 647に入力を供給する周波数シンセサイザ644によって制御される。ミクサ646は、発振器647からの入力発振器信号によって制御される第2段のRF−IFダウンコンバータを形成する。通信受信器の次の段(コスタス・ループ復調器648および温度補償電圧制御発振器(TCVCXO)645)は、位相ロック回路である。この回路の目的は、入力信号の搬送周波数に位相ロックさせる局部発振器信号を構築することである。位相偏移キーイングされた信号に対して、この回路を実現する当技術分野で周知の一般的な回路は、コスタス・ループ(Costas Loop)である(例えばガードナー(Gardner)著「Phaselock Techniques」第2版、John Wiley & Sons,(1979)を参照されたい)。図6Bにおいて、コスタス・ループは、基準周波発生器TCVCXO645の出力をIF信号の搬送周波数に位相および周波数アライメントさせる周波数補正電圧をTCVCXO645に供給する。
GPS受信器部分650のGPSダウンコンバータ652とともに使用される周波数シンセサイザ654に(TCVCXO645からの)VCO出力645aを基準周波数として供給することができる。このようにして、この周波数シンセサイザは、受信された通信信号の周波数安定度と同じ周波数安定度を有する、このGPSシステムに使用する局部発振器(VCO3 653およびVCO4 655)への入力を生成する。発振器653は、RF−IFダウンコンバートの第1段を制御し、発振器655は、RF−IFダウンコンバートの第2段を制御する。ミクサ656は、第2段のRF−IFダウンコンバータを形成する。このコンバータは、ダウンコンバータ652から第1の中間周波を受信し、ディジタイザ回路(バッファおよびGPSプロセッサとともにブロック657として示されている)に第2の中間周波を供給する。
たとえ受信する通信信号の周波数が受信のたびに変化しても、その信号が、異なる周波数チャネルに割り当てられる場合は、前記方法を適用することができることに留意されたい。
前記方法の代替方法を図6Cに示す。ここでは、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ(DDS)集積回路677に、やはりデジタル回路として実装されるコスタス・ループ679からディジタル・チューニング・ワードが供給される。GPS受信器の局部発振器を安定させるためにこのチューニング・ワードを、GPS受信器の一部分である周波数シンセサイザ689にも供給することができる。この場合、この周波数シンセサイザはさらに、その周波数の精度調整を可能とするため、DDS689bを利用することができる。周波数の精度調整はDDSの本来の機能である。
例えば、DDSは通信受信器内にあるが、DDSのLO出力はGPSシステムに供給する方法など、前記方法の代替となる複合的方法もある。一般的な方法は、このシステムによって提供される局部発振器を安定させるために、通信受信器内の周波数ロック回路または位相ロック回路に同調電圧または局部発振器信号を生成させ、これを、GPS受信器上の周波数シンセサイザ回路に供給するものである。
受信器640および670の位相ロック回路の全体または一部を、アナログ手段の代わりにディジタル信号処理手段を介して実施してもよいことに留意されたい。この場合、これらの回路への入力は、A/D変換器を介してディジタル化され、これらのブロックの回路機能は、ハードワイヤード・ディジタル信号処理部品またはプログラム可能ディジタル信号処理部品(すなわちプログラム可能DSP)を使用して構築される。
図7に、本発明の一実施形態に基づく具体的な電力管理シーケンスを示す。電力を低減させる方法には、当技術分野で周知の多くの方法があることを理解されたい。これらの方法には、クロックされる同期構成要素に供給するクロックを遅くする方法、特定の構成要素への電力供給を遮断するか、または構成要素の特定の回路をオフにする方法などがある。位相ロック・ループおよび発振回路には、スタートアップ時間および安定化時間が必要であり、したがって設計者が、これらの構成要素を、完全にはパワー・ダウンさせない(または全くパワー・ダウンさせない)ようにしてもよいことを理解されたい。図7に示す例は、システムのさまざまな構成要素を初期化し、これらを低電力状態に置く段階701から開始される。定期的に、または所定の期間が経過した後、モデム22の通信受信器がフル・パワーに戻され、コマンドが基地局10から送信されているか否かが判定される。これは、段階703で実施される。段階705で、位置情報を求める要求を基地局から受信した場合、モデム22は段階707で、電力管理回路に警報を出す。この時点で、モデム22の通信受信器を、所定の期間オフにするか、または後に再び定期的にオンにされるまでオフにすることができる。これを段階709に示す。この時点で通信受信器をオフにせず、フル・パワーの状態に維持してもよいことを理解されたい。次いで段階711で、電力管理回路が、変換器42およびアナログ−ディジタル変換器44をパワー・アップして、移動ユニットのGPS受信器部分をフル・パワーに復帰させる。周波数発振器38もパワー・ダウンしている場合は、この時点でこの構成要素をフル・パワーに復帰させ、安定させるためにある時間放置する。次いで段階713で、構成要素38、42、および44を含むGPS受信器がGPS信号を受信する。このGPS信号は、メモリ46にバッファリングされる。このメモリも、GPS受信器が段階711でフル・パワーに復帰したときにフル・パワーに戻されている。スナップショット情報の収集が完了した後、段階717でGPS受信器は低電力状態に戻される。これは一般に、変換器42および44への供給電力を低減する一方で、メモリ46をフル・パワーに維持することを含む。次いで段階719で、処理システムをフル・パワーに復帰させる。一実施形態ではこれに、DSPチップ32にフル・パワーを供給することが含まれる。ただし、図1Cに示した実施形態の場合のようにDSPチップ32も電力管理機能を提供する場合には、DSPチップ32aは一般に段階707でフル・パワーに戻されることを理解されたい。マイクロプロセッサ26が電力管理機能を実施する図1Aに示した実施形態では、DSPチップ32などの処理システムは段階719でフル・パワーに戻される。段階721でGPS信号が、図3に示した方法などの本発明の方法に基づいて処理される。GPS信号の処理が完了した後、段階723に示すように、処理システムは低電力状態に置かれる(ただし、処理システムが前述のように電力管理を制御していない場合に限る)。次いで段階725で、モデム22の通信発信器がフル・パワーに戻される。これは段階727で、処理済みのGPS信号を応答として基地局10に送信するためである。擬似距離情報または緯度および経度情報などの処理済みのGPS信号の送信が完了した後、通信発信器が段階729で低電力状態に戻され、電力管理システムは段階731で、所定の期間など、ある遅延時間の間待機する。この遅延時間が経過した後、基地局から要求が送信されているか否かを判定するために、モデム22の通信受信器はフル・パワーに戻される。
図8に、本発明に基づいて遠隔ユニットに送信された衛星暦データから視野の中にある衛星のドップラー情報を導き出す方法を示す。段階801で遠隔ユニットが衛星暦データを受信し、このデータを、遠隔ユニット内(例えばフラッシュEEPROM)に記憶する。任意選択として、本明細書中で説明したように、暦データの古さを後に判定するために、遠隔ユニットがこのデータに、現在の日付および時刻をスタンプするようにしてもよい。
段階803で、遠隔ユニットが、おおよその時刻および遠隔ユニットのおおよその位置を決定する。おおよその時刻および位置を衛星暦データとともに使用して、段階805で、遠隔ユニットが、視野の中にある全ての衛星のドップラーを決定する。遠隔ユニットは、位置決定コマンドを基地局から受信するときに、視野の中にある衛星の識別も受信し、この識別を使用して、暦データ、ならびに段階803で決定したおおよその時刻および位置から、これらの衛星に対してのみドップラーを計算する。暦データは、GPS衛星から送信された信号の中に特定の形態で供給されるが、この情報が、通信リンクを介してその形態のまま供給される必要はない。例えば、さまざまな送信量の精度を低下させることによって、このデータを圧縮することができる。精度の低下によって、ドップラーの精度が低下することもあるが、このような精度の低下は、GPS受信器の許容される誤り収支の範囲内にあることもある。これに代わって、例えば、衛星の位置データを、球面調和関数などの一組の曲線に合わせる方法など、暦データを他の表現とするほうが好ましいことがある。この方法によれば、GPS受信器が、供給された暦データからドップラー情報をより簡単に計算できることがある。
適当な間隔(例えば1秒)をあけた時刻に、遠隔ユニットから問題の衛星までの距離を計算することによって、おおよそのドップラー情報を計算することができる。これは、供給された暦データ、および(例えば、セルラ電話システムの位置が固定されたセル・サイトに基づいた)おおよそのユーザ位置を利用して実施される。これらの距離の差が距離レートである。これを、光速で除すると、秒/秒(またはナノ秒/秒などの他の適当な単位セット)を単位としたドップラー情報が得られる。
本発明の方法および装置をGPS衛星との関連で説明してきたが、これらの教示は、擬似衛星(pseudolite)または、衛星と擬似衛星の組合わせを利用する測位システムにも等しく適用可能であることを理解されたい。擬似衛星は、一般にGPS時刻と同期したLバンド搬送波信号上に変調された(GPS信号と同様の)PNコードを同時送信する地上発信器である。遠隔受信器が識別できるように、各発信器には固有のPNコードが割り当てられる。擬似衛星は、トンネル、鉱山、建物、またはその他の周囲を囲まれた領域など、軌道を周回する衛星からのGPS信号を利用できない可能性のある状況において有用である。本明細書で使用する「衛星」という用語は、擬似衛星、または擬似衛星の等価物を含むことを企図したものであり、本明細書で使用するGPS信号という用語は、擬似衛星または擬似衛星の等価物からのGPS信号類似信号を含むことを企図したものである。
先の議論では、米国の全世界測位衛星(GPS)システムへの適用に関して本発明を説明してきた。しかし、これらの方法は、同様の衛星測位システム、特にロシアのGlonassシステムにも等しく適用可能であることは明らかである。Glonassシステムは、異なる衛星からの放射を区別するのに、異なる擬似乱数コードを利用するのではなく、わずかに異なる搬送周波数を利用する点がおもに、GPSシステムとは異なる。この状況では、新しい衛星の放射を処理するときに、データの前処理に別の指数乗数を使用する点を除いて、前述の回路およびアルゴリズムは実質的に全て適用可能である。追加の処理操作を一切必要とせずに、この操作を、図3のボックス108のドップラー補正操作と結合することができる。この状況で必要なPNコードは1つだけであり、したがってブロック106は必要なくなる。本明細書で使用する「GPS」という用語には、ロシアのGlonassシステムを含むこのような代替衛星測位システムが含まれる。
図1A、図1B、および図1Cには、デジタル信号を処理する複数の論理ブロック(例えば図1Aの46、32、34、26、30、28)が示されているが、これらのブロックのいくつかまたは全てを、回路のDSP部分のプログラム可能性を維持しつつ、単一の集積回路上に統合してもよいことを理解されたい。このような実施態様は、電力が非常に低い用途およびコストに敏感な用途で重要となることがある。
ドップラー情報の導出に遠隔ユニットで衛星暦データを使用する本発明のさまざまな態様、およびGPS信号の取得に使用するGPS局部発振器の出力の較正に精密搬送周波数信号を使用する本発明のさまざまな態様を、参照によって本明細書に組み込まれる1996年5月23日提出のノーマン F.クラスナーによる米国特許出願第08/652833号に記載されているもののようなアーキテクチャを有するGPS移動ユニットに使用することができることを理解されたい。
DSPプロセッサのプログラム可能性を保持しながら処理全体の速度を向上させるために、図3の操作の1つまたはいくつかを、ハードワイヤード論理回路が実行するようにしてもよいことを理解されたい。例えば、ブロック108のドップラー補正機能を、ディジタル・スナップショット・メモリ46とDSP IC32の間に配置した専用ハードウェアで実行するようにしてもよい。このような場合、図3のその他の全てのソフトウェア機能を、DSPプロセッサによって実行してもよい。より大きな処理パワーを得るために、1つの遠隔ユニットにいくつかのDSPを使用してもよい。GPSデータ信号の複数のフレーム・セットを収集(サンプリング)し、各フレーム・セットの収集の合間の時間を利用して、図3に示したように各セットを処理することができることを理解されたい。
以上の明細では、特定の例示的な実施形態に関して本発明を説明してきた。しかし、添付の請求の範囲に記載した本発明のより幅広い趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に、さまざまな修正および変更を実施できることは明らかである。したがって本明細書および図面を限定するためのものと考えるべきではなく、例示のためのものであると考えるべきである。