JP2010138319A - コークス炉煙道内部の作業用断熱ボックス及び煙道補修時の中断方法 - Google Patents

コークス炉煙道内部の作業用断熱ボックス及び煙道補修時の中断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大型の断熱ボックスを挿入してコークス炉の煙道内で作業を行う場合にも、炉温が低下することを防ぐ。
【解決手段】コークス炉1の煙道6の内部の補修時、コークス炉1の煙道6に設ける開口部6aから煙道6の内部に挿入される作業用の断熱ボックス21である。煙道6の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口21aが、また、煙道6に設けた開口部6aに面して入り口21bが、それぞれ設けられている。煙道6の上流に面する箇所には開閉可能な窓21dが設けられている。
【効果】断熱ボックス内で補修を実施しない中断時にも、排ガスが断熱ボックス内にも流通して通気抵抗を減らすことができ、排ガス流量(燃料ガス流量+燃焼用エアー流量)が増加し、燃料ガスを停止及び炉温低下を招くことなく操業を継続することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、コークス炉の煙道内部を補修する際に使用する作業用断熱ボックスと、この作業用断熱ボックスを使用して煙道内を補修する際の中断方法に関するものである。
コークス炉は、炭化室に装入した石炭を、隣接する燃焼室からの熱で間接加熱して高炉で使用するコークスを製造している。燃焼室では、主に高炉ガスとコークス炉ガスの混合ガス、あるいはコークス炉ガス単独を空気と混合させて燃焼させ、燃焼後の排気ガスは煙道に導かれて大気に放出される。以下、前記混合ガスあるいはコークス炉ガス単独のガスを「燃料ガス」と言う。また、燃料ガスと混合させる空気を「燃焼用エアー」と、また前記排気ガスを「燃焼排ガス」又は「排ガス」と言う。
前記コークス炉におけるガスの流れ等を、図7により詳細に説明する。
コークス炉1への燃料ガス2及び燃焼用エアー3の導入、およびコークス炉1からの燃焼排ガス4の放出は、煙突5のドラフト力(吸引効果)によって行われる。
煙突5のドラフト力が最大の場合、燃料ガス等の流量は、一般には、通常の操業に必要な流量の150%程度である。従って、燃料ガス等の流量を調整するために、通常は煙道6にドラフト計7を設置し、燃料制御用ドラフト圧(以下、「煙道ドラフト圧」と言う。)を測定している。
このドラフト計7で測定される煙道ドラフト圧は、煙道6に設置したコークス炉煙道バタフライ弁8(以下、単に「煙道バタフライ弁」と言う。)の開閉度調整によって制御され、操業変動等に対応している。
煙道ドラフト圧と燃焼排ガスの体積流量との関係の一例を図8に示す。この関係は、コークス炉の燃焼室構造等により決定されるので、事前に煙道ドラフト圧と燃焼排ガスの体積流量の関係を把握した上で、煙道バタフライ弁を開度調整して煙道ドラフト圧を制御し、コークス炉における燃焼を制御する。
しかしながら、何らかの理由で煙道ドラフト圧が低くなり、煙道バタフライ弁の開度を調整しても必要な煙道ドラフト圧に制御できない場合は、燃料ガス量や燃焼排ガス量が減少する。燃料ガス量や燃焼排ガス量が減少すると、コークス炉の加熱能力が低下して、コークスの製造能力が低下したり、コークス品質が劣化する等、コークス炉操業上問題となる。
ところで、長期間稼動したコークス炉には、煙道バタフライ弁の稼働範囲に堆積物が溜まって、煙道ドラフト圧の制御不良が発生する場合がある。
煙道バタフライ弁8の下流側に設置された煙道大ダンパー9(図7参照)は、通常は開放されており、コークス炉の燃焼(燃料ガスの供給)を一時的に停止する場合に煙道6を全閉し、冷気(燃焼用エアー)が流入してコークス炉の温度を低下するのを防止する。
この煙道大ダンパーも長期間のコークス炉稼動によって、大ダンパー本体の腐食や変形、大ダンパーのガイドレールの腐食や変形が発生し、大ダンパーの全閉動作不良が発生する。
その為、長期間稼動したコークス炉では、燃焼排ガス用の煙道内部で、煙道バタフライ弁の調整を阻害する堆積物の除去作業や、煙道大ダンパーの更新工事をする機会が増加している。
しかしながら、排ガスの酸素濃度は10%以下、温度は200℃以上であり、煙道内を5m/秒以上の流速で流れているので、作業者が特別な安全対策を行わずに作業をできる環境ではない。
従って、作業者が、煙道内での作業を安全に行うには、燃料ガスの供給を停止して煙道内の温度を下げる必要があったので、コークス窯出し停止による生産量の減少や、温度変動による炉体の損傷という問題が生じていた。
そこで、燃料ガスの供給を停止しなくても、作業者が煙道内で安全に作業ができるように、出願人は、煙道6の一部を開口し、開口部6aから煙道6の内部に作業用断熱ボックス11を挿入し、その内部で作業を行う方法を、特許文献1で提案した(図9参照)。
特開2006−188608号公報
この方法は、煙道6に挿入した断熱ボックス11の内部で作業を行うことで、作業者12に直接排ガス4が当たることを防ぎ、かつ開口部6aから外気13が流れ込むため、作業者12の周辺温度を下げ、酸欠の危険性を低減させる効果がある。これらの改善により、燃料ガスを停止することなく、煙道の内部に、作業者が作業する環境を確保することができるようになる。
特許文献1で例示するような、煙道の堆積物を除去する作業であれば、あまり大きな断熱ボックスを必要とすることはない。また、作業に要する時間は数時間で、一日で完了する程度であった。
しかしながら、前記煙道バタフライ弁の補修又は更新や、煙道大ダンパーのガイドレールの補修又は更新などの大規模工事を行う場合は、前記堆積物の除去作業と比較すると、作業員数の増加や作業範囲の拡大に伴って、大型の断熱ボックスが必要になる。さらに、作業も一日では完了せず数日を要する工事となり、作業を行なう昼間の時間帯と作業を行なわない夜間の時間帯を交互に有する状況となる。
ところで、煙道内に断熱ボックスを設置することに伴い、煙道ドラフト圧が低下するが、その要因は、(1)煙道開口部から断熱ボックスを通じて煙道内に流入する冷気(外気)の影響と、(2)煙道に挿入する断熱ボックス自体の通気抵抗の2点に大別できる。
このうちの要因(1)の、煙道開口部から断熱ボックスを通じて煙道内部に外気が侵入するというのは、換言すれば、コークス炉の燃焼排ガスに加えて、外気も煙突のドラフト力によって煙道内に吸引され、煙突から排出されていることである。
従って、外気の侵入分、コークス炉内で燃焼する燃料ガス・燃焼用エアーを吸引するドラフト力(煙道ドラフト圧が指標)が低下して、コークス炉内に導入できる燃料ガス量と燃焼用エアー量が減少し、燃焼排ガスの体積流量が減少する(図8参照)。
次に、要因(2)の、煙道に断熱ボックスを挿入するということは、排ガスが通過できる煙道内の断面積が減少することであり、煙道内部の排ガスの通気抵抗となることである。
特許文献1では、要因(1)についてのみ記載され、要因(2)については記載されていない。これは、特許文献1で使用される断熱ボックスが、上述したようにあまり大きいものではなかったので、問題が顕在化しなかったからである。
しかしながら、断熱ボックスが大きくなると、煙道ドラフト圧の低下に関して要因(2)を無視することができなくなる。さらに、上記した作業形態の差異を考えると、作業を行なう昼間の時間帯では、要因(1)(2)ともに問題になる。
その状況を図9に示すが、煙道6に開口部6aを開けていれば、外気13の流入によって燃料ガス量と燃焼用エアー量(=燃焼排ガス量)が減少するだけでなく、断熱ボックス11による通気抵抗によっても燃料ガス量と燃焼用エアー量が減少する。
一方、作業を行なわない夜間の時間帯は、作業環境を確保するために煙道の開口部から断熱ボックスを通じて煙道内に外気を流入させる必要が無いので、煙道の開口部の扉を閉止することができ、要因(1)について影響を及ぼすことはない。
しかしながら、断熱ボックスが存在する限り、要因(2)の影響を避けることができず、断熱ボックスが大きいほどその影響が大きくなる。
煙道内のガス流れ方向の垂直断面を上流側から投影した場合に、断熱ボックスの煙道断面に占める面積比率が煙道断面に対して大きくなると、断熱ボックス自体の通気抵抗の為、炉温維持に必要なだけの燃料ガス量を流すことが困難となり、炉温低下を招く。その結果として、断熱ボックスが大きくなると、特許文献1で提案した方法を実施することが困難になる。
図10は、排ガス吸引力と煙道内を流れるガスの最大流量の関係を示した図である。断熱ボックスの大きさが小さく、ガス流れ方向の垂直断面を上流側から投影した場合に、断熱ボックスの煙道断面に占める面積比率が煙道断面に対して小さい場合(図10のロ)は排ガス吸引力を十分に保つことができる。従って、煙道バタフライ弁を全開とすれば通常操業時以上の燃料ガスを流すことができるので(図10の破線)、通常操業時の燃料ガス流量に調整することは可能である。
一方、断熱ボックスの大きさが大きく、ガス流れ方向の垂直断面を上流側から投影した場合に、断熱ボックスの煙道断面に占める面積比率が煙道断面に対して大きい場合(図10のイ)は、排ガス吸引力を十分に保つことができない。従って、煙道バタフライ弁を全開としても通常操業時まで燃料ガスを流すことができない。
煙道内の煙道バタフライ弁補修又は更新や、煙道大ダンパーのガイドレールの補修又は更新を行う場合、補修作業工程が長期となる。また、大型の断熱ボックスが必要になるので、断熱ボックスの設置・撤去に時間がかかる。
そのため、1日の補修作業終了後も断熱ボックスを煙道から撤去せず、煙道に設けた開口部を全閉として煙道内に流入する外気を遮断することのみを実施するのが、作業時間短縮の面から有効である。
しかしながら、煙道に設けた開口部を閉じても、煙道のガス流れ方向の垂直断面を上流側から投影した場合に、断熱ボックスが煙道断面に占める面積比率が一定値以上(図10のロ→イ)になると、抵抗が大きくなって煙道ドラフト圧が低下する。
煙道ドラフト圧が低下すると、排ガス流量(燃料ガス流量+燃焼用エアー流量)が通常操業の必要量を満足しなくなるため(図10参照)、燃料ガス流量が低下することでコークス炉の炉温が低下し、コークス乾留時間が長くなってコークス生産量に影響する。
従って、特許文献1の方法では、大型の断熱ボックスの使用時には、夜間等の作業中断時は断熱ボックスを煙道から引き出して燃料ガスを通常時以上に流通させ、昼間の作業時の燃料ガス量低下によって低下した炉温を復帰(熱補償)させる方法を採らざるを得なかった。
しかしながら、煙道への断熱ボックスの挿入、引き出しを繰り返す場合、その都度、断熱ボックスの組立てや解体が必要になって時間がかかり、長期間の作業を行おうとした場合、作業を実施する時間が限られてしまうという不具合があった。
本発明が解決しようとする問題点は、大型の断熱ボックスを挿入してコークス炉の煙道内で作業を行う場合には、挿入した断熱ボックスが抵抗となって煙道ドラフト圧が下がり、燃料ガス流量が低下するという点である。
煙道に開口を設けて断熱ボックスを挿入すると、煙突ドラフト力の低下や煙道内抵抗の増加による煙道ドラフト圧の低下によって燃料ガス流量が低下し、炉温の低下を招く。さらに作業時間外に断熱ボックスを煙道から取り出すと、次の作業時、作業ボックスを煙道に挿入して組み立てるのに多大な時間がかかり、煙道内での補修作業時間が制限される。
そこで、本発明のコークス炉煙道内部の作業用断熱ボックスは、
大型の断熱ボックスを挿入してコークス炉の煙道内で作業を行う場合にも、炉温が低下することを防ぐために、
コークス炉煙道内部の補修時、コークス炉煙道に設ける開口から煙道内部に挿入される作業用の断熱ボックスであって、
煙道の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口が、また、煙道に設けた開口に面して入り口が、それぞれ設けられていると共に、煙道の上流に面する箇所には開閉可能な窓が設けられていることを最も主要な特徴としている。
本発明のコークス炉煙道内部の作業用断熱ボックスを使用して、煙道内で作業を行う場合には、煙道の上流に面する箇所に設けた窓は閉じておくことで、作業者に排ガスが直接あたらないようにする。
一方、断熱ボックス内で補修を実施しない中断時には、煙道の上流に面する箇所に設置した窓を開放し、排ガスを断熱ボックス内にも流通させて通気抵抗を減らすことで排ガス流量(燃料ガス流量+燃焼用エアー流量)を増加させて熱補償を行う。
この場合、断熱ボックスの、煙道に設けた開口に面して設けられた入り口に開閉可能な扉を設け、この扉を閉めておけば、煙道内の排ガス流量増加(燃料ガスと燃焼用エアーの供給量の増加)を図ることができるので望ましい。
本発明のコークス炉煙道内部の作業用断熱ボックスの、煙道の上流に面する箇所に設置する窓の面積は、断熱ボックスの大きさ(煙道の横断面方向の断面積)と煙道の横断面積に合わせて調整する。また、この窓は排ガスを流通させることを目的としているので、煙道の上流に対して垂直に、もしくはそれに近い状態で面していることが望ましい。
本発明は、断熱ボックスの、煙道の上流に面する箇所に開閉可能な窓を設けているので、断熱ボックス内で補修を実施しない中断時には、前記窓を開放すれば、排ガスが断熱ボックス内にも流通して通気抵抗を減らすことができる。従って、排ガス流量(燃料ガス流量+燃焼用エアー流量)が増加し、燃料ガスの停止や、炉温低下を招くことなく操業を継続することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を用いて詳細に説明する。
図1は作業中断中の本発明の断熱ボックスを煙道の上方から見た図である。図1中の21は煙道6に挿入した本発明の作業用断熱ボックスであり、煙道6の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口21aが設けられている。
断熱ボックス21を煙道6に挿入する際には、煙道6に開口部6aを設ける必要がある。しかしながら、開口部6aの大きさにより、煙道6のドラフトによる吸引効果により外気が煙道6内に引き込まれて煙道ドラフト圧が低下し、燃焼排ガスの体積流量が減少する(図8参照)。
従って、開口部6aの面積はできるだけ小さくするほうが良い。必要であれば、断熱ボックス21の、開口部6aに面して設けた入り口21bに、金属製の扉21cを設置し、開口後に開口面積を調整したり、外気の流入を完全に遮断できるようにしておくことが望ましい。
また、断熱ボックス21も、煙道6内を流れる燃焼排ガスの抵抗となる為、できるだけ小さな体積とするほうが良い。特に煙道6の横断面方向の断熱ボックス21の断面積が、煙道6の横断面積に対して50%以上となった時には、煙道バタフライ弁を全開しても煙道ドラフト圧を調整できなくなるまで低下し、図2に示すように、燃焼排ガス流量が減少する。
従って、本発明では、断熱ボックス21の、煙道6の上流に面する箇所には開閉可能な窓21dを設けることとしている。この窓21dの大きさa×b(図3参照)は、図1(a)に示すように、窓21dを開けた場合に、断熱ボックス21の前記断面積が、煙道6の横断面積の50%以下となるような大きさにしておく。
そして、断熱ボックス21の前記断面積が煙道6の横断面積に対して50%を超えた場合には、作業の中断時に、図1(a)のように前記窓21dを開けると共に、煙道6の開口部6aを全閉とし、断熱ボックス21の内部に排ガスを流通させる。
また、作業の中断時には、煙道バタフライ弁を全開とし、図4に示すように、燃料ガス流量を通常の操業時の燃料ガス流量よりも多くすることで炉温の維持をはかる。
なお、作業者が断熱ボックス21内に入っている時は、煙道6の開口部6aを開けて外気を断熱ボックス21内に流入させる一方、断熱ボックス21の窓21dは閉め、酸素濃度が低い高温の排ガスが作業環境に流れ込むのを防止する。なお、図1中の21daは窓21dの開閉を行う扉である。
作業中は断熱ボックス21による抵抗及び外気の影響により煙道ドラフト圧が低下するので、煙道バタフライ弁は全開とし、可能な限り最大ドラフト力で燃料ガスと燃焼用エアーをコークス炉内へ投入するようにしておく。
なお、図1(a)に示す中断状態から、作業を開始する場合は、図1(b)に示すように、扉21cを開けた後に、煙道6の外から例えば鉄棒22で窓21dの扉21daを閉めるようにする。
コークス炉煙道内で煙道と煙突の縁の切り繋ぎを行う大ダンパーの工事を行う為に、煙道に開口を開けた。開口面積は外気の流入を減らすために1m2とした。開口時の外気流入により、煙道の最大ドラフト圧は−430Paから−380Paまで低下した(図5中の白抜き矢印a)。
煙道に設けた開口部の面積が小さいので、大型の断熱ボックスを一体で挿入することができないため、断熱ボックスを13分割したものを事前に作成し、図6に示すように、煙道6の内部で開口部6aの入り口側から組み立てた。なお、前記13分割した各部品は、内部で溶接することで接合し、ステンレス製の断熱ボックス21とした。また、断熱ボックスに設ける窓は、開けた際に排ガスが流通しやすくする為に、できる限り排ガス流通方向と垂直に当たるような向きとした。
組立て後の断熱ボックスの煙道の横断面方向の断面積は3.5m2である。組立て終了後、外気の流入の影響もあり、通常大気レベルの酸素濃度、CO濃度50ppm以下、気温40℃以下に保つことが可能である。
但し、煙道ドラフト圧は断熱ボックスを挿入していない場合でも、外気の影響により前記のように−380Paまで下がっている。更に、今回実施の断熱ボックスの断面積の割合は煙道の横断面積に対して57%となっていたので、煙道バタフライ弁を全開としても煙道ドラフト圧の制御が不可能となり、−180Paまで低下してしまった(図5中のプロットb)。
更に、断熱ボックスの前記断面積が煙道の横断面積に対して53%以上となった場合には、煙道の開口部を金属製の扉で閉めたとしても煙道ドラフト圧が通常操業で必要な−270Pa(図5参照)より弱くなる。
今回実施のように断熱ボックスの前記断面積が煙道の横断面積に対して57%までになると、煙道に設けた開口部を閉めていたとしても−220Paまで煙道ドラフト圧は下がってしまう。但し、断熱ボックスに、図3のa×bが800mm×800mmの面積の金属製の窓を設けていたので、作業中断時にはこの窓を開け、煙道の開口部を全閉とすることで煙道ドラフト圧を−300Paまで調整できる。
つまり、昼間、煙道内で行う補修作業中は、煙道ドラフト圧が炉温維持に必要な−270Paより弱いためにコークス炉の炉温保持に必要な燃料ガス量を投入することはできない。
しかしながら、夜間の煙道内補修作業中断時には、煙道の開口部を全閉して外気流入を遮断し、 かつ断熱ボックスに設置した窓を開放することで、炉温維持に必要な−270Paより強い−300Paの煙道ドラフト圧を確保でき、昼間に不足した燃料ガス量を補填できる(図4参照)。
なお、断熱ボックスに窓を設置しない場合は、作業時間外の中断時に断熱ボックスを煙道より取り出す必要がある。その場合、上記の例では、断熱ボックスの溶接部を切断してもとの13個に分割するため、これらの取り出しに約6時間程度かかる上に、作業前に断熱ボックスを組み立てるのに約10時間かかってしまう。従って、煙道内での補修作業を長期間継続するのは困難である。
本発明の断熱ボックスを使用してコークス炉の煙道を補修する場合の、熱補償の方法を整理すると、(1)断熱ボックスが煙道内に占める面積比率が50%未満の場合と、(2)断熱ボックスが煙道内に占める断面積の比率が50%以上の場合に分けることができる。
まず、(1)の場合は、作業中断時に煙道の開口部を全閉として煙道ドラフト圧を通常必要なレベルである−270Paより強くすることで、燃料ガス供給量を増加させて熱補償を行う。
(2)の場合は、作業中断時に煙道の開口部を全閉とし、 かつ断熱ボックスに設置した窓を開放することで、煙道内の断熱ボックスの占める断面積を50%以上として煙道ドラフト圧を通常必要なレベルである−270Paより強くすることで、燃料ガス供給量を増加させて熱補償を行う。
上記(1)(2)の方法では、作業時間と作業中断時間の設定は、作業中のコークス炉の炉温低下と、作業中断時の熱補償による炉温復帰 を見ながら調整する。作業中断時の断熱ボックスの断面積が比較的大きく、熱補償として投入できる燃料ガス量が比較的少ない場合には、コークス炉の炉温が低下する作業時間を少なくする必要がある。
1日当たりの作業時間を約6時間とし、作業中は断熱ボックスの金属製の窓を開けることができないことも有り、その間は燃料ガス流量が83%までしか流せなかった。一方で工事を行っていない残り18時間は煙道の開口部を閉じ、その上で断熱ボックスの窓を開けておくことで、断熱ボックスが煙道の横断面に占める断面積比率が46%となるようにした。
これにより煙道ドラフト圧を通常時である−270Pa、及びそれ以上にまで調整することができ、通常時より燃料ガスを多く流せるようになった。そして、燃料ガス流量を通常操業時より6%増加させることで工事期間中の熱補償を行った。
大ダンパーの更新工事は10日以上費やしたので、作業終了後は断熱ボックスの窓を開け、煙道の開口部を閉じることにより、煙道ドラフト圧を十分に保持し、燃料ガス流量を通常操業時に対して増加させることで対応した。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
本発明は、コークス炉の煙道内部の補修に限らず、同様の煙道内部の補修作業にも利用できる。
(a)は作業中断時の本発明の断熱ボックスを煙道の上方から見た図、(b)は中断状態から、作業を開始する場合に窓を閉める態様を説明する図である。 断熱ボックスの断面積を変えた時の排ガスの体積流量を示した図である。 断熱ボックスを排ガス流入方向から見た図である。 断熱ボックスを煙道に挿入して作業を行っている期間中の1日の燃料ガス流量と煙道ドラフト圧の推移を示した図である。 断熱ボックスの断面積を変えた時の煙道ドラフト圧の一例を示した図である。 13に分割した断熱ボックスの組立て概要をコークス炉煙道の上方から順を追って見た図である。 コークス炉におけるガスの流れ等を説明する図である。 煙道ドラフト圧と燃焼排ガスの体積流量との関係の一例を示した図である。 煙道内に挿入した断熱ボックス内で補修作業を行っている状態を説明する図である。 排ガス吸引力と煙道内を流れるガスの最大流量の関係を示した図である。
符号の説明
1 コークス炉
2 燃料ガス
3 燃焼用エアー
4 燃焼排ガス
5 煙突
6 煙道
6a 開口部
7 ドラフト計
8 煙道バタフライ弁
9 煙道大ダンパー
11 断熱ボックス
12 作業者
13 外気
21 断熱ボックス
21a 流入防止用開口
21b 入り口
21c 扉
21d 窓

Claims (4)

  1. コークス炉煙道内部の補修時、コークス炉煙道に設ける開口部から煙道内部に挿入される作業用の断熱ボックスであって、
    煙道の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口が、また、煙道に設けた開口部に面して入り口が、それぞれ設けられていると共に、煙道の上流に面する箇所には開閉可能な窓が設けられていることを特徴とするコークス炉煙道内部の作業用断熱ボックス。
  2. 作業用断熱ボックスの、煙道に設けた開口部に面して設けられた前記入り口に、開閉可能な扉を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコークス炉煙道内部の作業用断熱ボックス。
  3. コークス炉煙道内に請求項1又は2に記載の断熱ボックスを設置して煙道内を補修する際の中断方法であって、
    断熱ボックス内で補修を実施しない中断時には、断熱ボックスの、煙道の上流に面する箇所に設置した前記窓を開けておくことを特徴とするコークス炉煙道内補修時の中断方法。
  4. 煙道に設けた開口部に面して設けられた入り口の前記扉を閉めておくことを特徴とする請求項3に記載のコークス炉煙道内補修時の中断方法。
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