JP2010128383A - 表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明な表示板に印刷された画像を、簡単に且つ高画質に表示する。
【解決手段】透明な表示板の表面に、光散乱微粒子を分散させた透明インクで画像を印刷しておく。表示板の端面から表示板の内部に光を入射すると、表示板の表面で反射を繰り返しながら、光が内部を伝播して、透明インクによって画像が印刷された部分を光らせる。ここで、透明インクによる画像の上に、光散乱微粒子を含まない透明樹脂によるクリア層を設けることにより、表示板の最表面を平滑に形成しておく。こうすれば、透明インクの端部から透過した光をクリア層の表面で内部に反射させることができるので、画像のぎらつきを回避することが可能となる。
【選択図】図8

Description

本発明は、透明な表示板に文字や図形などの画像を表示する表示装置に関する。
透明な表示板上に文字や図形などを形成しておき、光を用いて、これら画像を表示する技術は、種々の技術が提案されている。その多くのものは、表示板の背面側から光を照射することで、表示板に形成された文字や図形を浮き上がらせて表示しようとする技術である。
これに対して、透明な表示板の表面に略三角形断面の溝を掘って図形を描いておき、表示板の側面から表示板内に光を導入することによって、文字や図形を浮き上がらせて表示しようとする技術も提案されている(特許文献1)。
このような提案されている技術によれば、透明な表示板の側面から光を導入するために、背面から光を照射する方法に較べて表示部分を薄くすることが可能であり、また、いわゆる液晶画面を用いる方法に較べて遙かに簡単に文字や、図形、画像などを表示することが可能である。
特許第3864342号公報
しかし、提案されている技術では、表示板の表面に溝を掘って図形を描いておく必要があり、このような図形を描くことはそれほど容易ではない。そこで、本願の発明者は、光を散乱させる微粒子を含んだ透明なインクを用いて、透明な表示板の表面に画像を印刷し、表示板の側面から光を導入することによって画像を表示する技術を開発して、既に出願済みである。かかる出願中の技術を用いれば、透明なインクで画像を印刷するだけでよいので、より簡単に画像を表示させることができる。もっとも、この技術によって表示した画像は、観察する方向によっては、画像がぎらついた感じに見えてしまう場合があり、より高画質な画像を表示するために、更なる改良が望まれている。
この発明は、上述した課題に対応してなされたものであり、透明な表示板に印刷された画像を、簡単に且つ高画質に表示可能な技術の提供を目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の表示装置は次の構成を採用した。すなわち、
所定の画像を表示する表示装置であって、
光を散乱させる微粒子を含んだ透明インクによって、前記所定の画像が透明な板状部材の表面に印刷された表示板と、
前記表示板の端面から該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
を備え、
前記表示板は、前記透明インクによって印刷された前記画像の上に、前記光を散乱させる微粒子を含まない透明樹脂によるクリア層が設けられることによって、最表面が平滑に形成された表示板であることを要旨とする。
このような本発明の表示装置においては、透明な板状部材である表示板の表面に、表示しようとする画像を、透明なインクを用いて予め印刷しておく。画像は、透明な表示板の上に透明インクで印刷されているので、そのままではほとんど画像は目立たない。画像を表示しようとする際には、表示板の端面から表示板の内部に光を入射する。すると、入射された光は、表示板の表面で反射を繰り返しながら内部を伝播していき、透明インクによって画像が印刷された部分に到達する。透明インクには光を散乱させる微粒子(光散乱微粒子)が分散されているので、光があたると、透明インクで印刷された画像が光って表示されることになる。
ここで、画像が印刷された表示板の表面を微視的に観察すると、透明インクが塗布された部分と、透明インクが塗布される前の板状部材の表面がそのまま現れている部分とが存在している。そして、詳細なメカニズムについては後述するが、表示板の内部を伝播してきた光が透明インクの端部に入射すると、その光の一部が、透明インク内から外部に透過してくる。その結果、画像を観察する方向によっては透明インクの端部が強く光り、その結果として画像がぎらついて見えてしまうことがある。ところが、本発明の表示装置では、このような端部を透明樹脂によるクリア層で埋めることによって、最表面が平滑に形成されているので、透明インクの端部から透過してきた光も、平滑に形成された最表面で再び内部に向けて反射される。このため、透明インクの端部を透過した光が観察者の目に入ることはなく、画像がぎらついて見えることを確実に回避することができる。もちろん、透明インク内の微粒子で散乱された光の大部分は最表面を透過するので、透明インクで印刷した画像が光っている様子を明確に認識することが可能である。
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板に表示しようとする画像を、次のようにして印刷しても良い。すなわち、透明インクによるインク滴を表示板の表面に吐出して、インク滴が吐出された密度の濃淡によって表現された画像を印刷することとしてもよい。
インク滴を吐出するとともに、インク滴が吐出された密度の濃淡によって画像を表現する技術を用いれば、極めて高画質な画像を印刷することができるが、その一方で、この技術を用いて透明インクによる画像を印刷すると、画像のぎらつきが発生し易い傾向がある。従って、このような方法で印刷した画像の上に、透明樹脂によるクリア層を設けることとすれば、高画質でありながら、ぎらつきのない画像を光らせて表示することが可能となる。
また、上述した本発明の表示装置においては、画像を印刷するために用いた透明インクと同じ材質であるが、より流動性が高く、光を散乱させる微粒子を含まない透明インク用いて、クリア層を形成するようにしてもよい。
こうすれば、透明インクで形成された部分と、クリア層とで光の屈折率を一致させることができるので、これらの境界面の部分で光が反射することを回避することができる。透明インクとクリア層との境界面は、表示板の表面に対して平行ではないから、境界面で反射した光は表示板内を伝播することができず、その分だけ光が減衰してしまう。しかし、透明インクで形成された部分と、クリア層とで光の屈折率を一致させておけば、光の減衰を回避することが可能となる。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.画像の表示原理:
C.ぎらつきの発生メカニズム:
D.ぎらつき発生の回避方法:
E.変形例:
A.装置構成 :
図1は、本実施例の表示装置100の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、本実施例の表示装置100は、大きくは、画像が表示される表示板110と、表示板110が立設されるベース部120とから構成されている。表示板110は、アクリル板やガラス板などの透明な板状部材によって形成されており、表示板110の表面には、表示しようとする画像112が透明インクによって印刷されている。後述するように透明インクには光を散乱させる微粒子(光散乱微粒子)が僅かに混入されているが、透明な表示板110の上に透明インクによる画像112が形成されているだけなので、注意深く観察しない限り、表示板110の表面に画像112が印刷されていることには気が付かないようになっている。
尚、本実施例では、表示板110も、透明インクも、何れも無色透明であるものとして説明するが、表示板110の表面に透明インクで印刷された画像が目立たなければ、必ずしも無色透明である必要はない。例えば、表示板110が僅かに色を帯びている場合は、同じ色を僅かに帯びた透明インクを用いて印刷された画像は目立たない。従って、透明インクが僅かに色を帯びていた場合でも、その色が表示板110と同じ系統の色であれば、本実施例の透明インクとして好適に用いることができる。もちろん、透明インクが無色透明であれば、表示板110がどのような色を帯びていている場合でも、好適に用いることが可能である。
このような表示板110を、ベース部120の上面に設けられた溝に装着する。後述するように、溝の底部には発光ダイオード(以下、LED)などの複数の発光体が設けられており、表示板110をベース部120に装着すると、表示板110の端面が、複数の発光体と向き合うようになっている。そして、ベース部120に設けられた操作スイッチ122を操作して発光体を点灯させると、表示板110の表面に透明インクによって印刷された画像112の部分のみが光るようになる。その結果、点灯前は、図1(a)に示されるように、単なる透明な板にしか見えなかった表示板110が、点灯後は、図1(b)に示すように、透明インクで印刷した画像112が光って浮き上がることとなり、たいへん効果的に画像112を表示することが可能となる。表示板110の表面に透明インクで印刷された画像112が、浮き上がるように光って表示されるメカニズムについては後述する。
図2は、本実施例の表示装置100で用いられているベース部120の大まかな構造を示した説明図である。尚、図2では、理解の便宜を図って、ベース部120の一部を破った状態で表示してある。また、ベース部120に装着される表示板110も一部を表示してある。
図2に示されているように、ベース部120は、大まかには直方体の形状となっている。頂面のほぼ中央には、表示板110が装着される溝124が形成されており、溝124の底部には、複数の発光ダイオード(以下、LED126)が一列に設けられている。表示板110は、図中に矢印で示したように、ベース部120の上方から溝124に装着される。
図3は、ベース部120の溝124に装着された表示板110と、溝124内に一列に設けられたLED126との位置関係を概念的に示した断面図である。図示されるように、ベース部120の溝124に表示板110を装着すると、表示板110の端面が、一列に配列されたLED126と向かい合うようになっている。このため、表示板110をベース部120に装着した状態で、LED126を点灯させると、LED126から放射された光が、端面から表示板110の内部に入射され、そして表示板110の中を伝播した後、以下に説明するメカニズムによって、透明インクで印刷された画像112を光らせる。その結果、LED126の点灯前には、単なる透明な板のように見えていた表示板110に、画像112が浮かび上がるようにして表示されることになる。
尚、ここでは、LED126は、白色の光を放射する白色LEDであるものとして説明するが、これに限らずどのようなLEDを用いても良い。あるいは、異なる色の光を放射する種々のLEDを混在させて用いることもできる。更には、LEDに限らず、豆電球など、他の発光体を用いてもよい。
B.画像の表示原理 :
図4は、透明な表示板110の表面に透明インクで印刷された画像112が、LED126を点灯することで浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。前述したように、表示板110をベース部120の溝124に装着すると、表示板110の端面が、溝の底部に設けられたLED126と向かい合う位置にくる。その状態でLED126を点灯させると、LED126から放射された光が、表示板110の端面から内部に入射されて、表示板110の内部を進行する。図4(a)には、LED126からの光が、表示板110の端面から入射して、表示板110の内部を進行する様子が示されている。このようにして端面から入射された光の大部分は、表示板110の表面と浅い角度で交差する。このように浅い角度で表示板110の表面に達した光は、表面から表示板110の外部に透過することなく、全ての光が表面で反射して、再び表示板110の内部を進行する。そして反対側の表面に浅い角度で達した後、反対側の表面で全ての光が反射して、再び表示板110の内部を進行する。LED126から放射された光の大部分は、こうして表示板110の表面で反射を繰り返しながら、表示板110の内部を伝播していく。このような現象は、光の屈折の一態様として現れる現象であり、「完全反射」と呼ばれることがある。本実施例の表示装置100では、この完全反射と呼ばれる現象を利用して透明な表示板110の内部で光を伝播させて、透明インクで印刷された画像112を浮かび上がらせている。そこで、完全反射と呼ばれる現象について、簡単に説明しておく。
図4(b)は、光が屈折する様子を概念的に示した説明図である。光の屈折は、屈折率の異なる2つの媒質の境界面を光が通過しようとするときに生じる現象であり、「スネルの法則」としてまとめられている。ここで屈折率とは、媒質中での光の通り易さに関連する物性値である。スネルの法則によれば、ある屈折率の媒質中を進行している光が、異なる屈折率を有する媒質との境界面に達すると、一部の光は境界面で反射し、残りの光は境界面を通過して異なる屈折率の媒質中を進行する。このとき、境界面で反射する光は、境界面に光が入射する角度(入射角θi )と境界面から光が反射する角度(反射角θr )とが等しくなる方向に反射する。ここで、入射角θi は、通常、境界面から法線を立てて、法線と境界面に入射する光(入射光)の進行方向との間の角度によって表され、反射角θr は、境界面の法線と境界面で反射した光(反射光)の進行方向とのなす角度によって表されている。
また、異なる屈折率の媒質中を進行する光(透過光)の進行方向は、上流側の媒質の屈折率をn1 、下流側の媒質の屈折率をn2 とし、下流側の媒質中を進行する透過光の角度(透過角度θt )とすると、下流側の媒質中を、
n1 ・sinθi =n2 ・sinθt
を満足するような透過角度θt の方向に進行する。ここで、透過角度θt は、屈折率の異なる媒質間の境界面の法線と、透過光の進行方向との間の角度によって表されている。図4(b)には、このようなスネルの法則に従って、入射光の一部が反射するとともに、残りの光が透過光として、異なる媒質中を進行する様子が概念的に示されている。例えば、アクリル樹脂の板の中を進行している光が板の表面に達すると、スネルの法則によって、表面部分で進行方向が曲げられた後に、空気中を進行することになる。ここで、アクリル樹脂の屈折率は約1.5、空気の屈折率は約1.0であり、屈折率の高い媒質から低い媒質中に侵入する場合に相当するから、空気中に入った透過光は、境界面(すなわち、アクリル樹脂の表面)に近付く方向に進行方向が曲げられて、空気中を進行することになる。また逆に、空気中を進行する光がアクリル樹脂内に侵入する場合のように、屈折率の低い媒質から高い媒質中に侵入する場合は、境界面から離れる方向に、光の進行方向が曲げられることになる。
上述したスネルの法則から、屈折率の高い媒質中を進行していた光が屈折率の低い媒質との境界に達した場合には、全ての光が反射するような特別な条件が存在していることが分かる。すなわち、上述したように、屈折率の高い媒質から低い媒質中に光が進行する場合、下流側の媒質中を進行する光は、入射してきた方向に対して、若干、境界面の側に進行方向が曲げられる。従って、境界面に入射する光の角度を次第に寝かせて(入射角θi を大きくして)いくと、境界面の向こう側に透過した光の向きは、スネルの法則によって境界面に近付く方向に曲げられるので、ある入射角θi に達した時点で透過光の進行方向が境界面と平行になってしまう。このような状態は、下流側の媒質中に光が侵入できない状態である。更に、この入射角θi よりも寝かせて(大きな角度入射角θi で)境界面に光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまうことを意味している。図4(c)には、このような状態が概念的に示されている。また、このような状態(透過光の進行方向が境界面と平行になる状態)となる入射角θi は、臨界角θc と呼ばれている。
これに対して、屈折率の低い媒質中から屈折率の高い媒質中に光が進行しようとする場合には、境界面を透過した光は、スネルの法則によって境界面から遠ざかる方向に曲げられる。このため、透過光の進行方向が境界面と平行になる状態は起こり得ず、臨界角θc は存在しない。
以上に説明したように、屈折率の高い媒質中から低い媒質中に光が出ようとする場合には、臨界角θc を考えることができ、境界面に対して臨界角θc よりも大きな角度で(すなわち、境界面に対して寝かせて)光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまい、屈折率の低い媒質中に出ていくことができなくなる。本明細書中では、このような条件を、「完全反射の条件」と呼ぶことにする。ちなみに、アクリル樹脂(屈折率は約1.5)内から空気(屈折率は約1.0)中に光が出ようとする場合には、臨界角θc は約42度となる。
本実施例の表示装置100では、上述した完全反射の条件を利用することにより、LED126からの光を、表示板110の表面に画像112が印刷された部分まで効率よく導いて、画像112のインク層114を光らせている。すなわち、表示板110は、アクリル樹脂あるいはガラスなどの透明材料によって形成されているが、これらの材料は何れも、空気よりは屈折率が大きな媒質である。また、薄い表示板110の端面から光を入射すると、入射された光の大部分は、表示板110の表面に対して浅い角度で(大きな入射角で)進行する。結局、端面から入射した光の中で、表示板110の表面に対して臨界角θc よりも大きな入射角で入射した光については完全反射の条件が成り立ち、その結果、端面から入射した光の多くは表示板110の表面で反射を繰り返しながら、表示板110の内部を進行していくことになる。
図4(a)では、透明な表示板110の端面から入射した光が、表示板110の表面で反射を繰り返しながら内部を進行していく様子が、太い破線あるいは太い一点鎖線の矢印によって表されている。尚、端面の近傍では、臨界角θc よりも小さな角度で(すなわち、表面に対して垂直に近い方向から)、表示板110の表面に入射する光も存在する。図4(a)中に細い二点差線で示した矢印は、臨界角θc よりも小さな角度で、表示板110の表面に入射する光を例示したものである。このような光については、完全反射の条件が成り立たないので、光の一部は表示板110の表面を透過して空気中に進行し、残りの光は表示板110の内部に反射する。反射した光は表示板110の内部を通過して反対側の表面に達するが、反対側の表面でも完全反射の条件は成り立っていないので、この表面でも一部の光は空気中に進行し、残りの光は反射して再び表示板110の内部を通過する。完全反射の条件を満たさない光は、こうしたことを繰り返しながら減衰するため、端面から少し進行するまでにほとんど消滅してしまう。そして、それより先の領域では、完全反射の条件を満たした光のみが、表示板110の内部を進行することになる。
尚、表示板110の端面から入射した光のうち、完全反射の条件を満たさない光が消滅するまでの範囲では、光の一部が外部に透過してくるので、表示板110が淡く光って見えることになる。そこで、ベース部120の溝124の深さは、表示板110の端面付近に現れるこのような部分を隠すことができる深さに設定されている。こうすれば、表示板110に印刷された画像112を光らせて表示したときに、その光が供給されている箇所を分からない様にすることができるので、透明な板の中から画像が浮き上がってきたかのような印象を、より強く与えることが可能となる。
こうして表示板110の内部を進行した光は、やがて表示板110の表面に画像112が印刷された部分(透明インクによるインク層114が形成された領域)に到達する。インク層114の材質は、表示板110の材質とは違うので、屈折率も完全には一致していないが、表示板110と空気との違いに比べれば、表示板110とインク層114とでは、屈折率が大きく異なることはない(実際には、表示板110の屈折率よりも若干大きく、例えば表示板110がアクリル樹脂で形成されている場合であれば、アクリルの屈折率である約1.5に対して、1.6程度の屈折率であることが望ましい)。このため、表示板110とインク層114との境界面に達した光は、ほとんど進行方向を曲げられることなく、そのまま境界面を通過して、インク層114の内部を進行する。
ここで、画像の印刷には、僅かに微粒子(光散乱微粒子114p)が分散された透明インクが用いられており、表示板110の表面に形成されたインク層114にも、僅かに光散乱微粒子114pが分散した状態となっている。このため、インク層114内を進行する光の一部は、光散乱微粒子114pに衝突して周囲に散乱される。インク層114には、光散乱微粒子114pが均一に分散しているため、透明インクで印刷された画像全体が明るく光って表示されることになる。また、以上の説明から明らかなように、透明インク内に光散乱微粒子を分散させる濃度を上げれば、透明インクで印刷された画像を、より明るく光らせることも可能となる。図4(a)には、インク層114を進行する光が、光散乱微粒子114pに衝突して散乱する様子が、太い破線の矢印、あるいは太い一点鎖線の矢印によって表示されている。
一方、光散乱微粒子114pに衝突しなかった光は、そのままインク層114の内部を進行して、インク層114の表面に到達する。上述したように、インク層114の屈折率と表示板110の屈折率とはほぼ同じであるから、インク層114の表面でも完全反射の条件が成立する。このため、インク層114の表面に到達した光は、表面で完全反射した後、インク層114の内部を進行し、更に、表示板110の中へと戻っていく。図4(a)には、インク層114の表面で完全反射した後、再び表示板110の中へと光が戻っていく様子が、細い破線の矢印によって表示されている。
尚、表示板110の表面に透明インクによる画像112を印刷する場合に限らず、透明インクによる画像112を印刷した透明シートを、表示板110の表面に貼り付けた場合にも、同様の現象によって、画像を光らせることができる。すなわち、透明シートの屈折率は、表示板110の屈折率とほぼ同じであるから、表示板110の内部を進行する光にとっては、透明シートも表示板110も、大きな違いはない。このため、透明シートが貼り付けられている部分に到達すると、そのまま直進して、透明シートの表面に到達し、表面に透明インクによる画像が印刷されていれば、上述した原理によって画像を光らせることができる。
本実施例の表示装置100は、透明な表示板110の表面に形成されたインク層114の光散乱微粒子114pを光らせることによって、画像112を表示している。LED126から放射された光が表示板110の内部を伝播していても、そのことは見えないから、観察者にはあたかも画像自体が光を発しているように見える。しかも、LED126を点灯させていない場合は、表示板110は、注意深く観察しない限り、単なる透明な板にしか見えないから、透明な板の中から光って画像が浮き上がってきたような、たいへんに印象深い表示を行うことが可能となるのである。
ここで、このようにして表示した画像は、観察する角度によって、画像がぎらついて見えてしまうことがあった。こうした傾向は、光らせる画像112の画質を向上させるために、印刷する画像112の解像度を高くした場合に顕著となる。例えば、いわゆるインクジェットプリンタなどでは、微細なインク滴を吐出することによって、写真と比較し得るほどの高画質の画像を印刷することが可能となっている。そこで、この方式を採用して、表示板110の表面に微細なインク滴を吐出することによって画像112を印刷すると、画像にぎらつきが発生して、逆に画質を損ねてしまいかねない場合があった。そこで、このような現象が生じるメカニズムを究明した結果、画像のぎらつきを効果的に抑制可能な方法が見出された。以下では、この点について詳しく説明する。
C.ぎらつきの発生メカニズム :
図5は、透明インクで印刷された画像がぎらついて見えることがある理由を示した説明図である。図5では、表示板110の表面に透明インクによるインク層114が形成されている様子が拡大して示されている。表示板110の表面に塗布された直後の透明インクの端面は、インクの表面張力によって曲面形状となっている。このため、透明インクが固まった後のインク層114の端部も、ほぼ曲面形状となる。すなわち、実際のインク層114は、図5に示すように、ほぼ平面とみなして良い部分(頂面部)の周囲に、ほぼ曲面形状の部分(端部)が形成されたような形状となっている。
インク層114が、実際にはこのような形状となっているため、表示板110の内部からインク層114内に侵入した光は、大きく3つに分類されることになる。すなわち、インク層114内の光散乱微粒子114pに衝突して周囲に散乱する光と、光散乱微粒子114pに衝突することなくインク層114を進行して頂面部の表面に到達する光と、同じくインク層114を進行して端部の表面に到達する光の3つに分類することができる。図5では、光散乱微粒子114pに衝突する光を太い実線の矢印で表し、頂面部の表面に到達する光を細い破線の矢印で表し、端部の表面に到達する光を太い一点鎖線の矢印によって表している。
インク層114に到達する光は、表示板110の表面で完全反射を繰り返しながら進行してきた光であり、インク層114の頂面部は、表示板110の表面とほぼ平行と考えることができるから、頂面部ではほぼ完全反射の条件が成り立つ。従ってインク層114の頂面部では、図5中に細い破線の矢印で示したように完全反射して、インク層114の内部を進行して、再び表示板110へと戻っていく。
これに対してインク層114の端部では、表示板110の表面に対してインク層114の表面が大きく傾いているので、完全反射の条件が成り立たない。このため、インク層114の端部に到達した光の一部は反射し、残りの光は、図5中に太い一点鎖線の矢印で示したように、端部の表面で屈折して進行方向を変えた後、空気中を直進していく。このような光は、光散乱微粒子114pで周囲に散乱した光(図中に太い破線で示す光)とは異なり、端部の表面で屈折した角度で決まる一定方向に、空気中を直進するため、観察者の目に入ると眩しく感じることになる。
表示板110の表面に透明インクで印刷される画像は、実際には、図5に示すように、頂面部および端部から構成される小さなインク層114が、無数に集まって形成されている。このため、表示板110に表示された画像をある角度から観察すると、各インク層114の端部からの光が目に入って眩しく感じられ、その結果、ぎらついた画像に見えてしまうのだと考えられる。
図6は、大きさの異なるインク層114について、頂面部に相当する部分、および端部に相当する部分を概念的に示した説明図である。図6(a)から、図6(b)、図6(c)と、次第にインク層114の面積が大きくなるに従って、インク層114全体の面積に対する端部の比率が大きくなっている。一般に高画質の画像を印刷しようとすると、画像を高解像度化することが通常であり、それに伴って、個々のインク層114の大きさは小さくなっていく。その結果、全体にインク層114の全体に占める端部の割合が高くなり、画像のぎらつきが発生し易くなる。特に、微細なインク滴を吐出することによって画像を印刷するプリンタ(いわゆるインクジェットプリンタ)を用いれば、写真と同じ程度に高画質な画像を印刷することが可能であるが、微細なインク滴を吐出する関係上、インク層114の面積も小さくなるので、画像のぎらつきが発生し易くなる。このため、表示される画像の画質を大きく損ねる結果となり易い。
図7は、表示板110の表面に透明インクで印刷された画像の一部を拡大した様子を概念的に示した説明図である。図中に破線で示した小さな矩形は画素を表している。これら画素の中に、透明インクによるインク層114が形成される画素を適切な分布で発生させることによって、画像が印刷されている。このように小さなインク層114を形成して印刷された画像では、図6を用いて前述したようにインク層114の端部の割合が多くなるため、画像を観察する方向によってぎらつきが発生し易くなる。そこで、本実施例の表示装置100では、このような画像のぎらつきを回避するために、次のような方法を採用している。
D.ぎらつき発生の回避方法 :
図8は、本実施例の表示装置100では、ぎらつきの発生を回避可能な理由を示した説明図である。図示されるように、本実施例では、透明な表示板110の表面に、光散乱微粒子114pを含んだ透明インクによるインク層114が形成され、その上に、透明樹脂によるクリア層116が形成されて、表示板110の最表面(クリア層116の上面)は平滑に形成されている。このため、表示板110の内部を伝播してきた光は、インク層114が形成されている部分に到達すると、そのままインク層114の内部を進行する。そして、インク層114内に分散している光散乱微粒子114pに衝突すると、周囲に散乱してその部分を光らせる。図8には、表示板110の内部を伝播してきた後、インク層114内の光散乱微粒子114pによって周囲に散乱する光が、破線の矢印によって表されている。
一方、インク層114とクリア層116とは、さほど屈折率が違わないので、光散乱微粒子114pと衝突することなくインク層114を通過した光は、クリア層116との境界面に達すると、ほとんど反射することなく境界面を通過して、クリア層116の上面に到達する。クリア層116と空気とでは屈折率は大きく異なっており、しかもクリア層116の上面は平滑に形成されているので、ほぼ完全反射の条件が成り立つ。その結果、クリア層116の表面で完全反射して、再び表示板110へと戻っていく。図8には、表示板110の内部を伝播してきた後、インク層114を通り抜けてクリア層116の上面で反射する光が、一点鎖線の矢印によって表されている。
本実施例の表示装置100では、表示板110の表面に透明インクによる画像を形成した後、その上から透明樹脂によるクリア層116を形成して、表示板110の最表面(クリア層116の上面)を平滑に形成しており、このため、上述したメカニズムによって、インク層114の端部から透過した光が、観察者の目に入ることがない。表示板110上に表示された画像がぎらついて見えることを、効果的に回避することが可能となる。
尚、クリア層116を形成するに際しては、インク層114を形成する透明インクと同じ材質であるが、光散乱微粒子114pを含まない透明インクを用いて形成することが望ましい。例えば、光散乱微粒子114pを含む透明インクによる画像を印刷した後に、光散乱微粒子114pを含まない透明インクを用いて印刷するか、もしくはスプレーなどで画像の上から塗布することによって、クリア層116を形成すればよい。
インク層114を構成する材質と、クリア層116を構成する材質とで屈折率が異なっていると、インク層114とクリア層116との境界面の部分で反射する光が発生する。そして、インク層114とクリア層116との境界面は、表示板110の表面に対して平行ではないから、境界面で反射した光は完全反射の条件を満足しないので、結局、その光の分だけ減衰してしまう。これに対して、インク層114を形成する透明インクと同じ材質であるが、光散乱微粒子114pを含まない透明インクを用いてクリア層116を形成しておけば、インク層114の部分とクリア層116の部分とで屈折率が同じとなり、これらの境界面では、光の反射が発生しない。その結果、表示板110内を伝播する光の減衰を抑制することが可能となる。
また、表示板110の表面に、透明インクによるインク層114が一定の密度以上で形成される場合には、次のような方法によって実質的にクリア層116を形成することも可能である。すなわち、紫外線などを照射することによって硬化する性質を有する透明なインク(以下、UVインクという)を、透明インクとして使用し、光散乱微粒子114pを含んだUVインクによる画像を、表示板110の表面に印刷した後、紫外線などを照射することによってインク層114を形成している場合には、UVインクによる画像を印刷した後、ある程度の時間が経過してから、紫外線などを照射するようにしてもよい。こうすれば、硬化する前のUVインクが、隣のUVインクと表面張力によって結合して、その結果、端部が減少する。そして、端部がある程度まで減少した段階で、紫外線などを照射してUVインクを硬化させる。こうすれば、インク層114の端部の割合が低い画像を印刷することができるので、画像を光らせた時に、ぎらつきが発生することを回避することが可能となる。
あるいは、溶媒が揮発することによって硬化するタイプの透明インクを用いて画像を印刷する場合には、透明インクの粘度を、隣のインクと結合し得る程度に僅かに低下させてもよい。こうすれば、表示板110の表面に塗布された透明インクが硬化する前に、隣の透明インクと結合して端部が減少するので、インク層114の端部の割合が低い画像を印刷することができる。その結果、画像を光らせた時に、ぎらつきが発生することを回避することが可能となる。
E.変形例 :
上述した実施例では、白黒画像(単色画像)を表示する場合について説明した。しかし、表示装置100では、カラー画像を表示することも可能であり、カラー画像を表示した場合でも、画像を観察する角度によって、画像がぎらついて見えることがある。このような場合でも、上述した方法で画像を印刷することで、画像のぎらつきを回避して高画質な画像を表示することが可能である。以下では、このような変形例について簡単に説明する。
図9は、カラー画像を表示可能な変形例の表示板110を示した説明図である。周知のようにカラー画像は、R(赤)色の画像、G(緑)色の画像、B(青)色の画像を重ねることによって表示することが可能である。また、カラー画像を、R色の画像、G色の画像、B色の画像に分解することは、「分版」と呼ばれることがある。そこで先ず初めに、表示しようとするカラー画像を、R色の画像、G色の画像、B色の画像に分版する。そして、R色の画像はR用の表示板110Rに、G色の画像はG用の表示板110Gに、B色の画像はB用の表示板110Bに、それぞれ透明インクを用いて印刷しておく。
こうして形成したR用の表示板110R、G用の表示板110G、B用の表示板110Bを重ね合わせて、1枚の表示板110を構成する。また、表示板110を重ね合わせた時に表示板110の表面同士が接触しないように、表示板110の表面には小さな突起118が形成されている。この突起118は、透明インクを印刷することによって形成しても良いし、表示板110の表面に小さな部材を接着することによって形成しても良い。
こうして3つの表示板110R,110G,110Bを重ねて構成した表示板110を、ベース部120の上面に設けられた溝に装着する。図10は、カラー画像を表示可能な変形例のベース部120の溝に表示板110が装着されている様子を示した説明図である。図10では、ベース部120を、側方(表示板110の表面に沿った方向)から見た様子が示されている。図示されているように、変形例では、ベース部120の溝124の底部には、赤色の光を発する赤色LED126Rと、緑色の光を発する緑色LED126Gと、青色の光を発する青色LED126Bとが、一列に設けられている。そして、表示板110が装着された時に、赤色LED126Rには、R用の表示板110Rの端面が向かい合う位置となり、緑色LED126Gには、G用の表示板110Gの端面が向かい合い、そして、青色LED126Bには、B用の表示板110Bの端面が向かい合うように構成されている。従って、赤色LED126Rを点灯すれば、赤色の光がR用の表示板110Rの内部に入射され、表示板110Rの表面に透明インクで印刷された画像(分版されたR画像)を赤色に浮き上がらせる。同様に、緑色LED126Gを点灯すれば、G用の表示板110Gに印刷されたG画像が緑色に浮き上がり、青色LED126Bを点灯すれば、B用の表示板110Bに印刷されたB画像が青色に浮き上がる。その結果、これらR画像、G画像、B画像が合成されて、透明な表示板110にカラー画像が表示されることになる。
また、G用の表示板110Gの表面およびB用の表示板110Bの表面には、それぞれ小さな突起118が設けられているので、表示板110R、表示板110G、表示板110Bの表面同士が接触しないようになっている。このため、ある表示板110の内部を伝播する光が隣の表示板110の内部に侵入して、隣の画像を光らせることが回避されている。例えばR用の表示板110Rの中を伝播するR色の光が、隣のG用の表示板110Gの中に侵入すると、本来はG色に光らせるべきG画像をR色の光らせてしまうので、本来の色彩でカラー画像を表示することができなくなってしまう。G色の光やB色の光についても同様なことがあてはまる。この点、変形例の表示装置100では、小さな突起118によって、表示板110R、表示板110G、表示板110Bの間に隙間を確保することによって、こうした問題の発生を回避している。
このような変形例の表示装置100においても、高画質なカラー画像を表示するために、透明インクで印刷する画像を高解像度化すると、画像のぎらつきが発生し得る。しかし、図8を用いて前述したように、透明インクで印刷された画像の上から、透明樹脂によるクリア層116を形成して最表面を平滑に形成しておくことで、ギラツキの発生を回避することが可能となる。例えば、R用の表示板110Rに印刷されたR画像の上に、クリア層116を形成すれば、R画像を構成するインク層114の端部がR色にぎらつくことを回避することができる。同様に、G用の表示板110Gに印刷されたG画像の上にクリア層116を形成し、B用の表示板110Bに印刷されたB画像の上にクリア層116を形成すれば、G画像を構成するインク層114の端部や、B画像を構成するインク層114の端部が、それぞれG色またはB色にぎらつくことを回避することができる。その結果、図11に例示したように、表示板110全体として、ギラツキのない良好なカラー画像を浮かび上がらせて表示することが可能となる。
以上、本発明について各種の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
本実施例の表示装置100の大まかな構成を示した説明図である。 本実施例のベース部120の大まかな構造を示した説明図である。 ベース部120に表示板110が装着された様子を示す断面図である。 透明な表示板110の表面に透明インクで印刷された画像112が浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。 画像を表示したときに、透明インクで印刷された画像がぎらついて見えることがある理由を示した説明図である。 大きさの異なるインク層114について頂面部に相当する部分および端部に相当する部分を対比して示した説明図である。 透明インクで画像が印刷された表示板110の表面の一部を拡大した様子を概念的に示した説明図である。 ぎらつきの発生を回避可能な理由を示した説明図である。 カラー画像を表示可能な変形例の表示板110を示した説明図である。 カラー画像を表示可能な変形例のベース部120に表示板110が装着された様子を示す説明図である。 変形例の表示装置100でカラー画像を表示した様子を例示する説明図である。
符号の説明
100…表示装置、 110…表示板、 110B…表示板、
112…画像、 114…インク層、 114p…光散乱微粒子、
116…クリア層、 118…突起、 120…ベース部、
122…操作スイッチ、 124…溝、 126…LED

Claims (2)

  1. 所定の画像を表示する表示装置であって、
    光を散乱させる微粒子を含んだ透明インクによって、前記所定の画像が透明な板状部材の表面に印刷された表示板と、
    前記表示板の端面から該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
    を備え、
    前記表示板は、前記透明インクによって印刷された前記画像の上に、前記光を散乱させる微粒子を含まない透明樹脂によるクリア層が設けられることによって、最表面が平滑に形成された表示板である表示装置。
  2. 請求項1に記載の表示装置であって、
    前記表示板は、前記透明インクによるインク滴が表面に吐出されるとともに、該インク滴が吐出された密度の濃淡によって表現された前記画像が印刷されている表示板である表示装置。
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JP2015196379A (ja) * 2014-03-31 2015-11-09 ゼロックス コーポレイションXerox Corporation 透光性表面層を有する回転部材を用いた透明材料を吐出するプリントヘッドにおける不動作インクジェット検出システム

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