JP2010122208A - ゲル充填配列体の製造方法およびバイオチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のキャピラリを束ねたキャピラリ配列体の各キャピラリ中にゲルが充填されたゲル充填配列体の製造方法であって、複数のキャピラリをそれらの長手方向が一致するように集束して固定する工程と、各キャピラリの一端から該キャピラリ中に、重合によりゲルとなるゲル前駆体溶液を充填する工程と、ゲル前駆体溶液を充填した各キャピラリの少なくとも一端を開放した状態で、該ゲル前駆体溶液を重合してゲルを形成する工程とを含むゲル充填配列体の製造方法。また、該ゲル充填配列体を用いたバイオチップの製造方法。
【選択図】なし
Description
一端を密封した中空繊維の開放端側を、減圧雰囲気の系内でゲル前駆体溶液に浸漬し、次いで該系内に気体を封入して該系内を減圧雰囲気から常圧以上の加圧雰囲気とすることにより、前記中空繊維の中空部に前記ゲル前駆体溶液を充填する。その後、充填されたゲル前駆体溶液を加熱することにより中空繊維の中空部内でゲル化させる。
また、ゲルに空洞が形成される原因として、中空繊維内のゲル前駆体溶液から、該中空繊維を経て、該中空繊維を固定するウレタン樹脂へと水分が移行して蒸発してしまうことが挙げられる。そこで、特許文献2には、ゲル前駆体溶液の充填前に予め中空繊維内に水を充填して該水で中空繊維配列体を飽和させ、水を排出した後に、ゲル前駆体溶液を充填して重合する方法が示されている。
また、本発明は、歩留に優れたバイオチップの製造方法を提供する。
また、本発明は、歩留に優れたバイオチップの製造方法を提供することができる。
本発明のゲル充填配列体の製造方法は、複数のキャピラリを束ねたキャピラリ配列体の各キャピラリ中にゲルが充填されたゲル充填配列体の製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする方法である。
工程(1):複数のキャピラリをそれらの長手方向が一致するように集束して固定する工程。
工程(2):各キャピラリの一端から該キャピラリ中に、重合によりゲルとなるゲル前駆体溶液を充填する工程。
工程(3):ゲル前駆体溶液を充填した各キャピラリの少なくとも一端を開放した状態で、該ゲル前駆体溶液を重合してゲルを形成する工程。
キャピラリ配列体10は、図1に示すように、複数のキャピラリ12が、それらの長手方向が一致するように束ねられており、それらのキャピラリ12が樹脂固定部14により固定されている。
有機材料としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系材料、ポリアクリロニトリル等のアクリル系材料、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系材料、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系材料、ポリビニルアルコール系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリウレタン系材料、フェノール系材料、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系材料、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系材料等が挙げられる。また、キャピラリ12にはカーボンブラック等の黒色顔料が含有されていてもよい。
キャピラリ12を束ねる形態は特に限定されないが、キャピラリ12の軸に直行する断面が正方形または長方形(図1参照)となるように、各キャピラリ12が規則的に配列されていることが好ましい。「規則的に」とは、一定の大きさの中に含まれるキャピラリ12の本数が一定となるよう順序よく配列させることをいう。
接着剤としては、例えば、ニッポラン4276、コロネート4403(登録商標、日本ポリウレタン工業(株)製)等のポリウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等が挙げられる。
工程(1)では、複数のキャピラリ12を、それらの長手方向が一致するように集束して固定する。これによりキャピラリ配列体10が得られる。
複数のキャピラリ12を集束する方法としては、例えば、複数本のキャピラリ12を1列に束ねて1層のシートとなるように固定し、該シートをさらに複数層に積層して固定することで、所望の本数のキャピラリ12からなるキャピラリ配列体とする方法が挙げられる。前記シートを形成するキャピラリ12の本数、および該シートの積層枚数は特に限定されない。
また、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を、それらの孔が一致するように重ねあわせ、それら各孔にキャピラリを通過させた後、2枚の多孔板の間隔を開き、2枚の多孔板間のキャピラリ周辺に硬化性樹脂原料を充満させ硬化させる方法(特開2001−133453号公報参照)により得られる配列体であってもよい。
また、隣接するキャピラリの外表面を相互に融着することによって得られる配列体であってもよい。
ゲル前駆体溶液とは、架橋構造を形成してゲル化をもたらす化学物質を含む溶液をいう。例えば、単量体、多官能性単量体、重合開始剤、および水等を含む溶液である。また、アガロース、アルギン酸ナトリウム等の多糖類、ゼラチン等のタンパク質等を用いることもできる。
多官能性単量体としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
生体関連物質としては、核酸(DNA、RNA等)、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖、脂質、抗体、さらには化学結合、物理結合等の相互作用により対象の生体関連物質を検出しうる有機化合物、無機化合物等が挙げられる。これらは、生細胞からの抽出、化学合成等により調製したものであってもよく、市販品であってもよい。
不飽和官能基は、国際公開第02/062817号パンフレットに記載の方法等により導入することができる。
生体関連物質の共重合率が10μmol%以上であれば、得られるゲル充填配列体を用いた検出、測定の効率および精度がより向上する。また、生体関連物質の共重合率が10000μmol%以下であれば、ゲル内での検体の拡散性がより向上する。
重合装置30は、図3に示すように、真空容器32と、真空容器32内でキャピラリ配列体10を保持する支持手段34と、キャピラリ配列体10の各キャピラリ12に対応するウエルを有するウエルプレート50を昇降させる昇降台36と、各キャピラリ12の位置をウエルプレート50の各ウエルに対応するように位置決めする位置決め手段38と、真空容器32内を減圧する真空ポンプ40とを有している。また、重合装置30は、真空容器32内を加熱する加熱手段(図示せず)を有している。
支持手段34は、キャピラリ配列体10を安定に保持できるものであればよく、例えば、キャピラリ配列体10の樹脂固定部14を保持するもの等が挙げられる。
昇降台36は、その上に載置したウエルプレート50を所望の距離だけ昇降させることができるものであれば特に限定されず、空気圧または油圧により昇降させることができるものが好ましい。
位置決め手段38は、各キャピラリ12の一端12a(ウエルプレート50側の先端)を、ウエルプレート50の各ウエルに対応するように位置決めできるものであればよく、支持手段34に連結され、各キャピラリ12を一定の間隔を開けて固定することができるプレート等が使用できる。
また、各キャピラリ12にゲル前駆体溶液を充填する前には、各キャピラリ12を水で飽和させておくことが好ましい。水で飽和するとは、キャピラリ12の材料が持っている細孔を水で予め埋めておくことである。これにより、キャピラリ12中に充填したゲル前駆体溶液からキャピラリ12を介して樹脂固定部14へと水分が移動して蒸発することを抑制できるため、得られるゲルに空洞が形成されることを低減することが容易になる。
常圧に戻す方法は、真空容器32内に窒素ガス等の気体を流入させる方法であってもよく、真空容器32に設置された扉を開く方法であってもよく、真空容器32に常圧に戻すためのリーク弁を設けておき、該リーク弁を開く方法であってもよい。
水による飽和の終了後、再び真空ポンプ40により真空容器32内を減圧することにより、キャピラリ12中に充填されていた水をウエルプレート50の各ウエルへと排出し、昇降台36を降下させてウエルプレート50を取り出す。
まず、各キャピラリ12に対応するウエルにゲル前駆体溶液が分注されたウエルプレート50を昇降台36上に載置する。そして、真空ポンプ40により真空容器32内を減圧した後、昇降台36を上昇させ、各キャピラリ12の一端12aをウエルプレート50の各ウエル内のゲル前駆体溶液中に浸漬する(図3)。真空ポンプ40により減圧する前には、水充填時と同様に、窒素置換を行っておくことが好ましい。窒素置換を行っておくことにより、工程(3)においてゲル前駆体溶液の重合阻害因子となる酸素を低減することができる。
真空容器32内を常圧に戻す方法は、水充填時と同様に、真空容器32内に窒素ガス等の気体を流入させる方法であってもよく、真空容器32に設置された扉を開く方法であってもよく、真空容器32に常圧に戻すためのリーク弁を設けておき、該リーク弁を開く方法であってもよい。
また、ゲル前駆体溶液の充填は、常圧下で各キャピラリ12の一端12aをウエルのゲル前駆体溶液に浸漬した後に、真空容器32内を加圧することにより行ってもよい。
本発明では、工程(2)において、各キャピラリ12の他端12bを封止した状態でゲル前駆体溶液の充填を行い、工程(3)において、各キャピラリ12の他端12b側の封止部分を切り離して両端を開放した状態で重合を行うことが好ましい。
本発明の製造方法により得られるゲル充填配列体は、糖鎖の分離解析、光学分割、遺伝子配列解析等に用いるキャピラリーゲル電気泳動等の用途に適用することができる。また、後述するように、ゲル充填配列体を薄片化することで、DNAマイクロアレイ等のバイオチップとして使用することもできる。
これに対し、本発明の製造方法では、一端12aを開放した状態で重合することで、キャピラリ12内が負圧となったとき、ゲルおよびまだ重合していないゲル前駆体溶液が、キャピラリ12内の負圧に応じてキャピラリ12の奥へと移動して該負圧を相殺するため、気泡の発生による空洞の形成が抑えられていると考えられる。
例えば、重合装置30を用いずにゲル前駆体溶液を各キャピラリ12中に充填してもよい。具体的には、微細な針を有するシリンジにゲル前駆体溶液を吸引し、各キャピラリ12の中空部に該針を差し込んでゲル前駆体溶液を充填してもよい。また、キャピラリ12の他端12bを封止せず、デシケーター内でキャピラリ12の一端12aを該ゲル前駆体溶液に浸漬し、デシケーター内を減圧することによりゲル前駆体溶液を充填する方法であってもよい。
本発明のバイオチップの製造方法は、前述の製造方法により得られたゲル充填配列体を、キャピラリの長手方向と交叉する方向に切断する工程(以下、「工程(4)」という。)を含む方法である。
図2に、ゲル充填配列体の一例として、樹脂固定部14で固定されていないキャピラリ12部分を取り除いたゲル充填配列体20を示す。以下、本発明のバイオチップの製造方法の実施形態の一例として、ゲル充填配列体20を用いる方法について説明する。
ゲル充填配列体20の切断は、ミクロトーム、レーザー等により行うことができる。
バイオチップ22の厚みは、5mm以下であることが好ましく、50μm〜1mmであることがより好ましい。
(製造例1)ゲル前駆体溶液の製造
N,N−ジメチルアクリルアミド(3.42部)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.38部)、グリセリン(47.5部)および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(0.1部)を、水(48.6部)に溶解してゲル前駆体溶液Iを調製した。
三菱エンジニアリングプラスチック(株)製のポリカーボネートを溶融紡糸して得た長さ60cmの非多孔質中空繊維(内径180μm、外径280μm、キャピラリ12)228本を、12×19に配列させ、外枠治具で囲い、該外枠治具に2液室温硬化型ウレタン樹脂(ニッポラン4276、コロネート4403(登録商標、日本ポリウレタン工業(株)製))を注入して硬化させることで、長手方向の中央部分を2液室温硬化型ウレタン樹脂で固めて中空繊維配列体(キャピラリ配列体10)を作製した。該中空繊維配列体の228本の各中空繊維の一端(一端12a)を開放したままに維持し、他端(他端12b)を2液室温硬化型ウレタン樹脂で封止した。
さらに、中空繊維配列体の各中空繊維を、長さ35cmとなるように切り揃え、図1に示すような形状の中空繊維配列体とした。
中空繊維配列体の各中空繊維の一端(一端12a)側部分は、それら一端が、昇降台36上に載置された384ウエルプレート(384個のウエルを有するプレート、ウエルプレート50)の各ウエル(228個のウエル)に一対一で差し込まれるように配置されている。
重合後、真空容器32からゲル充填中空繊維配列体Aを取り出し、氷水で冷却した。その後、ミクロトーム装置により、該ゲル充填中空繊維配列体Aから厚み250μmの薄片体300枚を切り出した。
実施例2は、実施例1と同様の実験を繰り返し、再現性を見たものである。結果を図5に示す。
実施例1と同じ方法でゲル充填中空繊維配列体Bを得て、ミクロトーム装置により、該ゲル充填中空配列体Bから厚み250μmの薄片体300枚を切り出した。
中空繊維配列体の各中空繊維の中空部にゲル前駆体溶液を充填した後、昇降台36を降下させず、各中空繊維の一端(一端12a)をウエル内のゲル前駆体溶液Iに浸漬したまま重合させた以外は、実施例1と同様にしてゲル充填中空繊維配列体Cを得て、ミクロトーム装置により、該ゲル充填中空配列体Cから厚み250μmの薄片体300枚を切り出した。
比較例2は、比較例1と同様の実験を繰り返し、再現性を見たものである。結果を図6に示す。
比較例1と同じ方法でゲル充填中空繊維配列体Dを得て、ミクロトーム装置により、該ゲル充填中空配列体Dから厚み250μmの薄片体300枚を切り出した。
実施例および比較例で得られた薄片体について、該薄片体の228箇所のゲルスポットの形状を顕微鏡(E200 キヤノン(株)製)を用いて観察し、それらゲルスポットに空洞がある薄片体の数をカウントした。
実施例1および2の薄片体についての結果を図5、比較例1および2についての結果を図6に示す。尚、図5および図6における升目中の各数値は、300枚の薄片体においてその位置のゲルスポットに空洞が確認された枚数を表している。例えば、実施例1(図5(A))では、配列位置(H,18)のゲルスポットに空洞ができた薄片体が4枚あったことを示している。
一方、図6(A)、(B)に示すように、各中空繊維の一端をゲル前駆体溶液中に浸漬したまま重合を行った比較例1および2では、ゲルスポットに空洞が形成された薄片体の数が実施例に比べて非常に多かった。
以上の結果から、中空繊維(キャピラリ)の一端から該中空繊維中にゲル前駆体溶液を充填した後に、該一端を開放した状態で重合を行うことにより、中空繊維内のゲルに空洞が形成されることを飛躍的に低減できることが確認された。
実施例1と同じ製造方法で、300枚の薄片体の切り出し、得られた薄片体で1箇所でもゲルスポットに空洞があるものは不良品とし、300枚中の良品の割合を歩留%として求めた(歩留%=良品枚数/300枚×100)。また、これをさらに4回繰り返し、良品の割合を合計5回求めた。
各中空繊維の一端(一端12a)をウエル内のゲル前駆体溶液Iから離して開放した状態とするまでは実施例1と同様に行った。次に、その中空繊維配列体を支持手段34から取り外して横置きにし、他端12b側のウレタン樹脂で封止した部分を切り離し、中空繊維配列体の各中空繊維の両端が開放された状態とした。その後、該中空繊維配列体を横置きにしたまま、実施例1と同じ条件で重合を行ってゲル充填中空繊維配列体E(ゲル充填配列体)を得て、ミクロトーム装置により、該ゲル充填中空配列体Eから厚み250μmの薄片体300枚を切り出した。得られた300枚の薄片体について、実施例3と同様にして良品の割合を求めた。また、これをさらに4回繰り返し、良品の割合を合計5回求めた。
比較例1と同じ製造方法を用いた以外は、実施例3と同様にして良品の割合を5回求めた。
実施例3、4及び比較例3において5回ずつ(N=1〜5)良品の割合を求めた結果を表1に示す。
一方、中空繊維の両端が共に開放されていない状態で重合した比較例3では、歩留%が低く、不良品が多くできた。
Claims (3)
- 複数のキャピラリを束ねたキャピラリ配列体の各キャピラリ中にゲルが充填されたゲル充填配列体の製造方法であって、
複数のキャピラリをそれらの長手方向が一致するように集束して固定する工程(1)と、
各キャピラリの一端から該キャピラリ中に、重合によりゲルとなるゲル前駆体溶液を充填する工程(2)と、
ゲル前駆体溶液を充填した各キャピラリの少なくとも一端を開放した状態で、該ゲル前駆体溶液を重合してゲルを形成する工程(3)とを含むことを特徴とするゲル充填配列体の製造方法。 - 前記工程(2)において、減圧雰囲気下で前記各キャピラリの前記一端を前記ゲル前駆体溶液に浸漬した後、常圧に戻して該ゲル前駆体溶液を前記各キャピラリ中に充填する、請求項1に記載のゲル充填配列体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により得られたゲル充填配列体を、前記キャピラリの長手方向と交叉する方向に切断する工程を含むバイオチップの製造方法。
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