JP2010116338A - 同一抗原に特異的に結合する複数の抗体の混合物もしくは複数の抗原結合部位を有する抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】低用量でも高い中和活性を有する抗体医薬を提供すること。
【解決手段】本発明は、同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体を含む組成物を提供する。本発明はまた、同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗原結合部位を有する抗体を提供する。本発明はまた、これらの組成物または抗体を含む医薬を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、同一の抗原(例えば、タンパク質またはペプチド)中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の抗体の混合物またはそのような複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の抗原結合部位を有する抗体に関する。
特に、本発明は、同一のヒト腫瘍壊死因子(TNF−α)中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の抗体の混合物またはそのような複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の抗原結合部位を有する抗体に関する。
現在、医薬品として承認されている抗体医薬の大部分は、その投与量が1日当たり数mg〜数100mgと非常に多くかつ高価である。抗体医薬品以外のバイオ医薬品の多くが、1日当たり数十μg〜1mgの投薬量であるのと比較すると、抗体医薬品の一日に必要な投与量はその約10倍から1000倍と大幅な開きがある。したがって、現在の抗体医療においては、単位重量当たりの生物活性をいかに高めるかが大きな課題である。
また、抗体医薬品の製造に関しても、品目が増え必要生産量が大幅に増加しており、生産設備は世界的に不足状態にある。これらの状況からも、より少ない用量で効果を発揮するより中和能に優れた抗体、および/またはより高い生物活性を有するモノクローナル抗体が望まれている。
これまで、ポテリジェント抗体技術(非特許文献1)など多くの研究者がその課題に取り組んできた。Glassyらは、生体内ではモノクローナルな抗体で炎症や免疫反応がコントロールされているのではなく、ポリクローナルな抗体でコントロールされていることに着目し、将来のガン療法として、抗体によるカクテル療法を提案している(非特許文献2)。しかし、Glassyらの提案している抗体カクテル療法は、細胞膜上にあるような非遊離の抗原を標的としたものであり、かつ、当該抗体の抗原に対する直接的な阻害作用ではなくエフェクター細胞などを介した2次的な活性増強を意図している。
Hellstromらは、ヒトのメラノーマ細胞において、膜抗原(p97)上の異なったエピトープに対する2種類の抗体を介した細胞障害活性の相乗効果を報告している(非特許文献3)。このような相乗効果は、げっ歯類でも報告されており(非特許文献4および5)、これらはいずれも同一の細胞膜抗原に複数種の抗体が結合することによる補体活性の顕著な亢進であると考えられている。即ち、これらは、複数種の抗体による標的機能の直接的な阻害の増強ではない。
一方、破傷風毒素(MW=約15万)に対するエピトープの異なる抗体を用いて、当該毒素によるマウスでの致死例の減少を評価した報告がある(非特許文献6)。破傷風毒素は、毒性発現にいたる複数のステップがあり(非特許文献7)、それぞれのステップで異なった機能ドメインが役割を果たしている。上記の評価した抗体は、それら異なった機能ドメインの抗体であったことを考えると、in vivoでの相乗効果は、それら異なった機能をそれぞれ阻害したことに由来すると考えられる。
腫瘍壊死因子(TNF−α:Tumor Necrosis Factor α)は、多くの腫瘍細胞に対して極めて強い抗腫瘍作用を発揮するサイトカインであり(非特許文献8)、悪液質誘発因子として同定されたカケクチンと同一物質である。現在では、抗腫瘍作用以外にも、視床下部、多核白血球、血管内皮細胞、骨や脂肪組織などのあらゆる組織や細胞において多彩な作用を示すことが知られている。その他、抗ウイルス作用、抗寄生虫作用等も報告されている。また、関節リウマチやクローン病などの免疫・炎症性疾患の病態形成に重要な役割を果たしていることが知られている。
TNF−αは、157個のアミノ酸からなり、主として活性化マクロファージにより産生され、細胞膜表面のTNFレセプターに結合して、炎症を起こした細胞の細胞死(アポトーシス)を誘発、炎症を収束させると考えられている。
現在すでに治療薬として抗TNF−α抗体がクローン病や関節リウマチの患者に使用されている。日本国内でも、2002年にはキメラ抗体であるレミケード(一般名:インフリキシマブ)が臨床で使用されるようになり(非特許文献9)、また2008年6月には、TNF−αの完全ヒト抗体(ヒュミラ:一般名;アドリムマブ)が医薬品として販売されている(非特許文献10)。
TNF−αの特性としては一般的に下記のようなものが知られている。
(1)TNF−αの作用
(a)血管内皮細胞の障害
TNF−αにより、好中球が活性化されると、産生されるエラスターゼが血管内皮細胞を障害し、血管内皮の透過性が亢進する。血漿が血管外に漏出し、血液が濃縮し微小循環障害が起こる。即ち、微小循環障害は、組織の虚血の原因となり臓器の機能不全につながる。
(b)微小血栓の形成
TNF−αにより、血管内皮細胞が活性化されると抗凝固因子の発現が低下し、線溶系因子の活性が低下する。そのため、微小血栓が形成される。
(c)ミトコンドリアの障害
TNF−αは、血管内皮細胞のミトコンドリアを障害する。神経細胞のミトコンドリアが障害を受けると、興奮性アミノ酸が増加し、二次的神経細胞障害が起こる。また、細胞膜の透過性(permeability)保持機能が消失し、Ca2+が細胞内に流入して、急性の神経細胞壊死が起こる。
(d)アポトーシスの誘導
TNF−αは、TNF受容体(TNFR)を介して、ミトコンドリアの透過性(permeability)転換を促進する。ミトコンドリア内膜の透過性亢進により、ミトコンドリアの膜間スペースからチトクロームCが放出され、カスパーゼカスケードを刺激しアポトーシスを誘導する。
(2)疾患との関係
(a)関節リウマチ
TNF−αはIL−6と並んで、関節リウマチにおける関節破壊などの病態形成に中心的な役割を果たしている。マウスでのコラーゲン関節炎モデルは、ヒト関節炎と類似しているといわれているが、そのモデルにおいてTNF−αを投与すると疾患の増悪が認められている。臨床においてもインフリキシマブやアダリムマブなどTNF−αを標的としたモノクローナル抗体が用いられ効果が認められている(非特許文献11)。
(b)クローン病
クローン病患者においては、血清、糞便においてTNF−αの増加および粘膜固有層において産生亢進あるいは産生細胞の増加が見られ、TNF−αに対する阻害剤がクローン病に有効であろうと考えられ、インフリキシマブが開発されている(非特許文献12)。
(c)糖尿病・高脂血症
TNF−αは、TNF受容体(TNFR)を介した肥満に関与していることが報告されている(非特許文献13)。肥満者は、非肥満者より血中へのTNF−αの分泌量が増加しており、インシュリン抵抗性を引き起こす可能性があること。TNF−αは、インシュリン依存性の細胞内へのグルコース取り込みを抑制し、糖尿病の発症に関連すること。また、TNF−αは、リポ蛋白リパーゼの活性を抑制し、高脂血症をきたすことなどが知られている。
(d)敗血症
敗血症とは細菌感染などにより全身的な炎症が引き起こされた状態で、細菌がもつエンドトキシンが、マクロファージを活性化しTNF−αやIL−1などのサイトカイン産生を亢進させる(非特許文献14)。その際、TNF−αは、感染の拡大を防ぐ働きを有するが、一方、全身的なTNF−αへの暴露は、末梢血管拡張による急激な血圧低下や播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こす。
(e)骨粗鬆症
骨では常に破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が行われており、正常な状態ではこれらのバランスが保たれていることから見かけ上では骨の大きさは変化していない。しかし骨代謝に異常が生じ、この平衡が骨吸収側に傾くと骨量が減少し、骨粗鬆症に陥る。そのような中、TNF−αは骨吸収を促進するサイトカインの一つとして知られている(非特許文献15)
したがって、過剰発現したTNF−αに結合し、その生物学的活性を喪失させることが、TNF−αが原因となって引き起こされる様々な病気に対する治療戦略上、有用であると考えられる。
現在、臨床で使用されている抗TNF−α抗体については、関節リウマチの疾患に対する1回の投与量で見た場合、インフリキシマブで150mg/50kg、アドリムマブで40−80mg/ヒトであり(非特許文献9および10)、まだまだそれらの臨床用量は非常に高く、安全性、医療費などの面からも大きな課題といえる。
TNF−αは様々な炎症性・免疫疾患の病態形成に重要な役割を果たしており、それらの疾患の治療は長期にわたる可能性が高い。これらのことを考慮すると、現状の抗TNF−α抗体医薬品の用量レベルでは、治療期間中の暴露量も莫大なものとなり、やはり安全性、医療費などの面で大きな課題が存在する。
設楽研也、他.,ポテリジェント抗体技術とその応用、細胞工学 26巻:278-281, 2007 Glassy,M.C., et al.,Requirements for human antibody cocktails for oncology. Expert Opin. Biol. Ther., 5: 1333-137, 2005 Hellstrom, I., et al., Monoclonal antibodies to two determinats of melanoma-antigen p97 act synergistically in complement-dependent cytotoxicity. J. Immunology 127: 157-160, 1981 Elliott, E.V., et al., Synergistic cytotoxic effects of antibodies directed against different cell surface determinats. Immunology 34: 405-409, 1978 Howard, J.C., et al., Monoclonal anti-rat MHC (H-1) alloantibodies. Curr. Top. Microbiol. Immunol. 81: 54-60, 1978 Ziegler-Heitbrock, H.W., et al., Protection of mice against tetanus toxin by combination of two human monoclonal antibodies recognizing distinct epitopes on the toxin molecule. Hybridoma, 5: 21-31, 1986 Montecucco, C., et al., Tetanus and botulism neurotoxins: a new group of zinc proteases. TIBS, 18: 324-327, 1993 Fiers, W., Tumor necrosis factor characterization at the molecular, and cellular and in vivo level. FEBS Lett., 285:199-212, 1991. 田辺三菱製薬株式会社、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤 レミケード点滴静注用100、インフリキシマブ(遺伝子組換え)製剤添付文書、2007年11月改訂 アボットジャパン株式会社、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤 ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mL、皮下注射用アダリムマブ(遺伝子組換え)製剤添付文書、2008年6月改訂 Chang,J., et al., Novel therapies for rheumatoid arthritis. Pathophysiology, 12:217-225, 2005 杉田尚久、インフリキシマブ(レミケード)−抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤−の免疫・炎症性疾患に対する薬効薬理、日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn),121: 57-64, 2003 Uysal, K., T., et al., Functional analysis of tumor necrosis factor(TNF) receptors in TNF-α−mediated insulin resistance in genetic obesity. Endocrinology, 139: 4832-4838,1998 Waage,A., et al., Association between tumour necrosis factor in serum and fetal outcome in patients with meningococcal disease. Lancet, 1:355-357, 1987 Kobayashi, K., et al., Tumor necrosis factor αstimulate osteoclast differentiation by a mechanism independent of the ODF/RANKL-RANK Interaction., J.Exp.Med.,191: 275-285, 2000
上記のような状況下で、低用量でも高い中和活性を有する抗体医薬が求められている。
本発明者らは、同一抗原(例えば、TNF−α)中の複数の異なる抗原決定基(エピトープ)をそれぞれ特異的に認識する複数のモノクローナル抗体の組合せを使って、個々のモノクローナル抗体を単独で用いる場合より、顕著に高い中和能を示すことができることを見出した。
即ち、本発明は、以下の組成物、抗体、医薬、これらの使用、および治療方法を提供する。
(1)同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体を含む組成物。
(1a)同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体の混合物。
(2)上記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である、上記(1)に記載の組成物。
(2a)上記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である(但し、GM−CSFを除く)、上記(1)に記載の組成物。
(3)上記抗原がサイトカインである、上記(2)に記載の組成物。
(4)上記サイトカインが腫瘍壊死因子(TNF−α)である、上記(3)に記載の組成物。
(5)上記抗体がモノクローナル抗体である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)上記モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、上記(5)に記載の組成物。
(7)同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗原結合部位を有する抗体。
(8)上記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である、上記(7)に記載の抗体。
(8a)上記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である(但し、GM−CSFを除く)、上記(7)に記載の抗体。
(9)上記抗原がサイトカインである、上記(8)に記載の抗体。
(10)上記サイトカインが腫瘍壊死因子(TNF−α)である、上記(9)に記載の抗体。
(11)上記複数の異なる抗原結合部位をそれぞれ含む部分が、リンカーにより互いに結合されている、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の抗体。
(12)上記(7)〜(11)のいずれかに記載の抗体を含む組成物。
(13)上記(1)〜(6)、上記(12)のいずれかに記載の組成物からなる医薬。
(14)TNF−αが関与する疾患を治療するための上記(13)に記載の医薬。
(15)上記疾患が、関節リウマチ、クローン病、糖尿病・高脂血症、敗血症、または骨粗鬆症である、上記(14)に記載の医薬。
(16)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物、上記(7)〜(11)のいずれかに記載の抗体、または、上記(12)に記載の組成物の、医薬としての使用。
(17)上記(4)に記載の組成物、上記(10)に記載の抗体、または上記(14)に記載の医薬の、TNF−αが関与する疾患に罹患しているか、または罹患している疑いのある患者の治療薬としての使用。
(18)上記疾患が、関節リウマチ、クローン病、糖尿病・高脂血症、敗血症、または骨粗鬆症である、上記(17)に記載の使用。
(19)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物、上記(7)〜(11)のいずれかに記載の抗体、または、上記(12)に記載の組成物を、患者に投与する工程を含む、疾患の治療方法。
(20)上記(4)に記載の組成物、上記(10)に記載の抗体、または上記(14)に記載の医薬を、TNF−αが関与する疾患に罹患しているか、または罹患している疑いのある患者に投与する工程を含む、TNF−αが関与する疾患の治療方法。
(21)上記疾患が、関節リウマチ、クローン病、糖尿病・高脂血症、敗血症、または骨粗鬆症である、上記(20)に記載の方法。
本発明の抗体または抗体の混合物は、生物活性が高く、安全性、医療費などの面から医薬品として顕著な有用性を有する。本発明によれば、従来よりも低用量での抗体医薬を使用した疾患の治療が可能となる。
本発明に係る抗TNF−α抗体を含有する医薬は、TNF−αが原因となって引き起こされる様々な疾病、例えば、関節リウマチ、クローン病、糖尿病、敗血症、骨粗しょう症などの疾患の予防ないし治療薬として非常に少量で有効であると考えられ、安全性の面および医療費の面でこれまでの治療薬に比べよりいっそうの有用性がある。
本発明に係る、同一抗原中の異なる複数のエピトープを認識する複数の可変領域(または抗原結合部位)を同一分子内に有する抗体、即ち、二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体も、従来の当該抗原に対するモノクローナル抗体をそれぞれ単独で使用する場合と比較して、顕著に高い中和活性を示しうる。
1.本発明の抗体の混合物または組成物
本発明は、1つの実施形態において、同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体を含む組成物またはそのような抗体の混合物を提供する。
本発明に関して、「抗原」は、好ましくは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である。とりわけ、本発明に関して好ましい抗原は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。「ペプチド」としては、典型的には、アミノ酸数が、数個(例えば、3個、4個、5個)〜数十個(例えば、10個、20個、30個、40個)のアミノ酸配列からなるものが挙げられる。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」には、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカンなどの複合タンパク質も含まれ、それらの例としては、例えば、サイトカイン(ケモカインも含む)、細胞表面抗原、レセプター、トキシン等が挙げられる。本発明において使用される抗原としては、TNF−α、特にヒトTNF−αが好ましい。
一般に、抗体は、4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖であってジスルフィド結合によって相互接続されている。各H鎖は、H鎖可変部領域(「HCVR」または「VH」と称す場合がある)とH鎖不変部領域(H鎖不変部領域は3つのドメインからなり、それぞれ「CH1」、「CH2」、「CH3」と称す場合がある)からなる。各L鎖は、L鎖可変部領域(「LCVR」または「VL」と称す場合がある)とL鎖不変部領域(L鎖不変部領域は1つのドメインからなり、「CL」と称す場合がある)からなる。
特にHCVRおよびLCVRは、抗体の結合特異性に関与する点で重要である。抗体はLCVR及びHCVRのアミノ酸残基を主に通じて標的抗原と相互作用するので、可変部領域内のアミノ酸配列は可変部領域の外にある配列よりも個々の抗体間の違いが大きい。HCVR及びLCVRは、より一定に保たれたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。HCVR及びLCVRは、それぞれ3つのCDRおよび4つのFRからなり、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列している。
本明細書中、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を有する1つ又は複数の抗体のフラグメントを指す。そのフラグメントには、抗原に特異的に結合する最小限のアミノ酸配列を有するペプチド(本明細書中、「抗原結合部位」ともいう。)が含まれる。したがって、「抗原結合部分」を「抗原結合部位を含む部分」ということもある。また。抗体の可変部領域および/または相補性決定領域を有する一本鎖抗体(scFV)も抗原結合部分に含まれるものとする。
本発明に関し、単に「抗体」という場合、2本の重鎖(H鎖)および2本の軽鎖(L鎖)からなるもののみならず、上記のような「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)も含むものとする。
すなわち、本発明の抗体は、完全長の抗体若しくはその抗原結合部分、又は完全長でない部分的な抗体であってもよく、可変部領域や、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列をもとにすれば、当該技術分野における周知の技術によって、抗原に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る組換えヒトモノクローナル抗体、モノクローナル抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体も含む)又はその抗原結合部分を複数種類組み合わせてもよい。
本明細書中、「同一抗原」または「同一の抗原」という用語は、複数の抗体(すなわち、正味で複数の抗原結合部位を有する)または複数の抗原結合部位を有する1つの抗体について、それら複数の抗原結合部位が結合する相手として、一つの抗原を対象とするという意味で用いられる。本発明においては、特に、その1つの抗原の中に複数の異なるエピトープが存在し、複数の抗体(すなわち、正味で複数の抗原結合部位を有する)または複数の抗原結合部位を有する1つの抗体のそれぞれの抗原結合部位がそれらの複数の異なるエピトープに結合することを意味する。
ここで、「エピトープ」または「抗原決定基(antigenic determinant)」とは、抗体が認識して結合する抗原の特定の構造単位のことをいう。エピトープは、通常、例えば、6〜10個のアミノ酸や5〜8個の単糖の配列等からなる。エピトープは抗原性のための最小単位であり、通常、1つの抗原には複数のエピトープが含まれている。抗体は病原微生物や高分子物質などと結合する際、その全体を認識するわけではなく、エピトープを認識して結合する。
本発明に関して「同一の抗原」という場合、例えば、異なるヒト(例えば、異なる患者)由来の同一サイトカイン(例えば、ヒトTNF−α)は、同一抗原と考える。リコンビナントの技術で得られたrTNF−αも糖鎖の違いはあるが同一と考える。当然ながら、ヒトTNF−αとヒトINF−γとは同一の抗原とは言えない。
本明細書中、抗体が抗原に「特異的に結合する」とは、抗体が所定の抗原を認識してそれに結合すること言う。典型的には、抗体は少なくとも約1×10-7(M)の親和性で結合し、所定の抗原に対しては、前記所定の抗原又は関係の近い抗原以外の非特異的な抗原(例えばBSA、カゼイン)に対するその結合親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で結合する。
本発明の抗体の特異的に結合する抗原との解離定数(Kd値)は、好ましくは1×10-7M以下、より好ましくは1×10-8M以下、1×10-9M以下、さらに好ましくは1×10-10(M)以下である。抗体と抗原との解離定数を測定するには、公知の方法を用いることができる。例えば、チップ上に固定化した抗原を用いてBIACORE3000(登録商標)のような蛋白質相互作用解析装置により測定することができる。
「抗原の活性を中和し得る抗体」とは、抗原に結合することによってその抗原の生物学的活性を阻害する抗体を指すものとする。本明細書で使用される、「阻害効果」、「阻害」、「阻害し得る」、「抑制」等々の用語は、源が何であれ、ターゲットとなる抗原に起因する生物活性を約5〜100%低減させる抗体の活性を称する。好ましくは、治療投与のためには、例えばTNF−αの観察される生物活性の低減は、約50〜100%の範囲にある。
TNF−αの生物活性の低減は、例えば、TNF-αに感受性な培養細胞を用いて評価することが出来る。具体的には、マウスのL929細胞を用いTNF−αによる細胞毒性の程度を評価することによりTNF−αの生物活性の低減を測定できる(Seckinger, P., et al., J. Exp. Med., 167, 1511-1516, 1988)。
なお、抗体作製の手法としては、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ等の実験動物を利用して常法によりポリクローナル抗体や、モノクローナル抗体を取得することができる。あるいは、このようにして得られる抗体は用いた動物種に特徴的な配列を有しているので、そのままヒトに投与するとヒト免疫系により異物として認識され、ヒト抗動物抗体応答が起こる(即ち、抗体の抗体を作ってしまう)ことがあることを考慮して、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体を使用することもできる。完全ヒト抗体は、抗体医薬として人体に投与したとしても、免疫原性を有さず、免疫反応は見られないものと考えられる。
あるいは、既に周知の供給業者から市販されている抗体を使用することができる。
2.本発明に係る二重特異性抗体または多重特異性抗体
本発明は、別の1つの実施形態において、同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗原結合部位を有する抗体(本明細書中、「二重特異性抗体」または「多重特異性抗体」と呼ぶことがある。)を提供する。
以下、本発明に係る、抗原の2種以上の異なるエピトープを認識する機能を有する二重特異性抗体、または多重特異性抗体について説明する。
一般に、「二重特異性抗体」とは、1つの抗体分子が、2つの異なるエピトープを認識する可変領域を有するものを指すが、本発明について「二重特異性抗体」という場合は、特に、同一抗原中の2つの異なるエピトープを認識する可変領域を同一抗体分子内に保有している抗体のことを指す。同様に、本発明について「多重特異性抗体」という場合は、同一抗原を認識しながら、同一抗体分子内に3個以上の異なるエピトープを認識・結合する機能(または可変領域)を有する抗体を指すものとする。
一般に、二重特異性抗体(または多重特異性抗体)にも、IgG型、knobs-into-holes変異、diabody型、一本鎖diabody(scDb)型、diabody-Fc型など種々の形態が報告されている。また、これらの作成法に関しても多くの方法が紹介されている(Marvin, J.S. et al., Acta. Pharmacol. Sin, 26:649-58, 2005; Nitta, T. et al., Lancet, 335:369-371, 1990; Chengbin, W. et al., Nature Biotechnology, 25, 1290-97, 2007)。本発明の二重特異性抗体または多重特異性抗体も、これらの方法を使用して作製することができる。
より具体的には、例えば、異なる2つの抗体を産生するハイブリドーマを細胞融合させ、二重特性抗体産生ハイブリドーマを得る方法(USP4,474,893)、遺伝子工学的または化学的に2種類の抗体または抗原結合部分をペプチド性リンカーで結合する方法、およびポリアルキレン、ホリアルケニレン、ポリオキシアルキレンまたは多糖類から選択される合成または天然に存在するポリマー用いて分子間架橋をする方法(特表2002−517515)などがある。特に最近は、H鎖の可変領域(VH)とL鎖の可変領域(VL)をペプチドリンカーで結合させた一本鎖抗体(scFv)が考案され、この技術を更に応用したdiabody型二重特異性抗体(特開2004−242638)、さらにFc部分を結合させた、diabody-Fc型などの技術が存在するが(熊谷泉他, 抗体ドメインの積み木細工による高機能化と医薬への展開. 抗体医薬の最前線(シーエムシー出版): 3-13, 2007)、これらの方法を用いることによって、二重特異性(または多重特異性)を有する抗体を作製することができる。
本発明の二重特異性抗体または多重特異性抗体が結合する抗原としては、既に本発明の抗体の組成物または混合物について説明したものと同様である。また、「特異的に結合」、「抗原の活性を中和」、「阻害効果」、「阻害」、「阻害し得る」、「抑制」等々の用語の使用法についても既に本発明の抗体の組成物または混合物について説明したものと同様である。
3.本発明に係る抗体を含有する医薬組成物
本発明は、さらに別の実施形態において、同一抗原の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体を含有する医薬を提供する。本発明はまた、同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗原結合部位を有する抗体を含有する医薬を提供する。これらの医薬(または医薬組成物)は、医薬として許容される(または薬学的に許容可能な)担体を含んでいても良い。
好ましくは、本発明の医薬は、TNF−αが関与する疾患を治療するためのものである。
本明細書で使用される「TNF−αが関与する疾患」という用語は、その疾患にかかっている被験対象が過剰なTNF−αを発現していることが、その疾患の病態病理の原因であり、又はその疾患を悪化させる一因である、ということが示され、又はそうであると考えられる疾病を意味するものとする。このようなTNF−αの過剰な産生により引き起こされる疾病としては、(a)関節リウマチ、(b)クローン病、(c)骨粗鬆症、(d)敗血症などを例示することができる。
本明細書で使用される「医薬品として許容される(または薬学的に許容可能な)担体」には、生理学的に適合可能な任意の、または全ての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
医薬品として許容される担体の例には、水、塩類溶液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種または複数、並びにこれらの組合せが含まれる。注射剤などとして使用される場合、pH調節剤や等張剤、例えば糖や、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。医薬品として許容される担体には、さらに、湿潤剤や乳化剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤など、抗体又は抗体部分の保存性または有効性を増大させる少量の補助物質を含めることができる。
本発明の組成物は、様々な剤型にすることができる。そのような組成物には、例えば、溶液(例えば注射可能であり輸液可能な溶液)や分散液、懸濁液、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、トローチ、ピル、粉末、リポソーム、坐剤など、液体、半固体、固体の剤型が含まれる。好ましい形は、意図される投与形態および治療の適用例により異なる。一般に好ましい組成物は、他の抗体でヒトを受動免疫化するために使用されるものと同様の組成物など、注射可能または輸液可能な溶液の形にあるものである。好ましい投与形態は、非経口的なもの(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内から)である。好ましい実施形態では、抗体は、静脈輸液、または静脈注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
本発明の抗体もしくは抗体部分の組合せ、または二重特異性抗体・多重特異性抗体は、非経口投与に適する医薬品組成物に組み込むことができる。抗体又は抗体部分は、単独種類を使用し製剤化する場合には、0.1〜250mg/mLの抗体を含有する注射可能な製剤として調製することが好ましい。一方、複数種類の抗体を混合して製剤化する場合には、0.001〜100mg/mLの抗体を含有する注射可能な製剤として調製することが好ましい。なお、その複数種類の抗体の混合割合は、適宜設定することができる。
注射可能な製剤は、有効成分を液体に溶解したものまたは有効成分を凍結乾燥させたものを、フリントまたはアンバーバイアル、アンプル、またはプレフィルドシリンジに入れたもので構成することができる。緩衝剤は、pH4.0〜8.0(最適な場合、pH6.0〜7.5)のL−ヒスチジン(1〜50mM)、最適な場合は5〜10mMのL−ヒスチジンにすることができる。その他の適切な緩衝剤には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。濃度0〜300mMの溶液(液体剤型に関しては、最適な場合、150mM)の浸透圧を変えるために、塩化ナトリウムを使用することができる。凍結乾燥させた剤型には、凍結保護物質、主に0〜10%(最適な場合、0.5〜5.0%)のスクロースを含めることができる。その他の適切な凍結保護物質にはマンニトール、トレハロースおよびラクトースが含まれる。凍結乾燥させた剤型には、増量剤、主に1〜10%のマンニトール(最適な場合、2〜4%)を含めることができる。液体および凍結乾燥させた剤型の両方には、安定剤、主に1〜50mML(最適な場合、5〜10mM)のL−メチオニンを使用することができる。その他の適切な安定剤にはグリシン、アルギニンおよびポリソルベート80等が含まれ、0〜0.05%(最適な場合、0.005〜0.01%)のポリソルベート80を含めることができる。他の界面活性剤には、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
本医薬組成物は、一般に、製造および貯蔵の条件下で無菌または安定でなければならない。この組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適するその他のオーダーされた構造として、処方することができる。無菌の注射可能な溶液は、必要とされる量の活性化合物(すなわち抗体又は抗体部分)を、必要な場合には上述の成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に混ぜ、その後、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、活性化合物を、基本的な分散媒および上記列挙したものから必要とされるその他の成分を含有する無菌ビークル(vehicle)に混ぜることによって、分散液を調製する。無菌の注射可能な溶液を用時調製するための無菌粉末製剤の場合、好ましい調製方法は、前に述べたその滅菌濾過溶液の凍結真空乾燥および噴霧乾燥であり、それによって、活性成分の粉末に加え、前に述べた任意の他の所望の成分を含んだ組成物が得られる。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、また、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、その組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩やゼラチンを含めることによって行うことができる。
医薬組成物には、補助的な活性化合物も組み入れることができる。ある実施形態では、本発明の複数種類の組合せからなる抗体又は抗原結合部分は、例えば、TNF−αが原因となる疾患を治療するのに有用な1種または複数の他の治療薬と一緒に処方し、またはそのような他治療薬と同時に投与する。例えば、本発明の抗TNF−α抗体又は抗体部分は、他の標的に結合する1つまたは複数の他の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体、または細胞表面分子に結合する抗体)と一緒に処方し、またはそのような他の抗体と同時に投与することができる。そのような組合せによる療法は、投与された治療薬のより低い用量を有利に利用することができ、したがって、様々な単一療法に伴う可能性ある毒性または合併症が回避される。
特に、本発明の抗TNF−αモノクローナル抗体を複数種類同時に投与する場合、もしくは二重特異性抗体などを使用する場合などには、単独種類を使用する場合と比較して格段に高い細胞増殖阻害活性(中和活性)を有するので、治療薬全体としてより低い用量で投与することが可能となる。
本発明に係る抗TNF−α抗体又はその抗原結合部分のコンビネーションは、TNF−αに対して、従来の抗TNF−α抗体より高い中和能をもつので、TNF−αが関与する疾患(TNF−αが原因となって引き起こされる様々な疾病)の治療薬として有用である。TNF−αが原因となって引き起こされる疾患は、TNF−α活性の阻害によってその疾患の症状および/または進行が緩和されることが予測される疾患である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
1.hGM−CSFに対する完全ヒト抗体産生細胞クローンの分離
図1は、抗体産生細胞クローンの分離までのフローチャートである。
血清中の抗hGM−CSF抗体が高値であるヒトの血液からBリンパ球を分離し、その後EBVに感染させ増殖してきた細胞を抗体産生細胞ライブラリーとした。
抗体産生細胞ライブラリーは96wellプレートに播種し、およそ3〜4週間の培養後、培養上清中の抗hGM−CSF抗体の1stスクリーニングを行った。スクリーニングはリコンビナントhGM−CSFをコートした96wellプレートを用いて、ELISA法により行った。得られた抗体陽性細胞集団は新たな96wellプレートに播種した。3〜4週間培養した後に抗hGM−CSF抗体の2ndスクリーニングを行った。得られた抗体陽性細胞集団は新たな96wellプレートに限界希釈で播種した。3〜5週間培養した後に、抗hGM−CSF抗体の3rdスクリーニングを行った。得られた抗体陽性細胞集団は限界希釈による培養とスクリーニングを行い、well当たり1個まきのプレートから抗体陽性細胞を得た。
2.抗体アイソタイプおよびサブクラスの確認
分離した3種類の抗体(EV1007、EV1018、EV1019)産生細胞クローンについて産生する抗体のアイソタイプおよびサブクラスをそれぞれ確認した(表1)。確認の方法はスクリーニングと同様のELISA法を利用し、2次抗体としてそれぞれのアイソタイプおよびサブクラスに特異的な抗体を使用した。サンプルはクローン分離後の細胞培養上清を用いた。
表1に、新たに得られた3種類の抗hGM−CSFモノクローナル抗体、及び国際公開第07/049472号パンフレットにおいてJ158 4Cとして報告したモノクローナル抗体(以下、EV1003と称す)について、抗体名及びサブクラスをそれぞれ示す。
3.抗体産生細胞からの抗体遺伝子のクローニング
得られた抗体産生細胞からの抗体遺伝子のクローニングを行った。抗体産生細胞からtotal−RNAを抽出し、Oligo−dT primerとReverse
Transcriptaseを用いcDNA合成を行った。
合成したcDNAをテンプレートとしてPCR法による抗体遺伝子の増幅を行った。PCRに使用するprimerは抗体遺伝子シークエンスのデータベースをもとに、5´末端側は転写開始点を含むように、3´末端側は転写終結点を含むように設計した。
4.抗体遺伝子の塩基配列に基づく抗体のアミノ酸配列の決定
得られた3種類の抗体遺伝子(H鎖・L鎖)のcDNAクローンをプラスミドベクターに挿入し、ABIシークエンサーにより3種類の抗体遺伝子(H鎖・L鎖)の塩基配列を確認した。得られた塩基配列より、3種類の抗体の各H鎖およびL鎖のアミノ酸配列を決定した。
また、これら新規の3種類(EV1007、EV1018、EV1019)の抗体及びEV1003の相補性決定領域(CDR)の解析には、Kabatの方法を用いた(文献:www.bioinf.org.uk: Dr.andrew C.R. Martin's Group, Antibodies: General Information参照)。これら4種の抗hGM−CSF抗体のそれぞれのCDRを配列番号1〜24に示す。具体的にはEV1018のL鎖CDR1,L鎖CDR2,L鎖CDR3、H鎖CDR1,H鎖CDR2,およびH鎖CDR3をそれぞれ配列番号1〜6、EV1019のL鎖CDR1,L鎖CDR2,L鎖CDR3、H鎖CDR1,H鎖CDR2,およびH鎖CDR3をそれぞれ配列番号7〜12、EV1007のL鎖CDR1,L鎖CDR2,L鎖CDR3、H鎖CDR1,H鎖CDR2,およびH鎖CDR3をそれぞれ配列番号13〜18、EV1003のL鎖CDR1,L鎖CDR2,L鎖CDR3、H鎖CDR1,H鎖CDR2,およびH鎖CDR3をそれぞれ配列番号19〜24に示す。
5.得られた抗体遺伝子が抗hGM−CSF抗体をコードしていることの確認
得られた3種類の抗体遺伝子(H鎖・L鎖)について、各cDNAクローンをそれぞれ発現ベクターに挿入した。各抗体のH鎖およびL鎖を挿入した発現ベクターを
293T細胞に導入し、一過性での抗体発現の確認を行った。
遺伝子導入(transfection)はリポフェクタミン(invitrogen)とプラス試薬(invitrogen)による方法を採用した。
抗hGM−CSF抗体の発現は遺伝子導入から2日後の293T細胞の培養上清を採取し、ELISAによるヒトIgG抗体の検出および抗hGM−CSF抗体の検出を行い確認した。
6.CHO抗体安定発現株の獲得
抗hGM−CSF抗体発現が確認できた発現ベクターをCHO細胞に遺伝子導入し、抗体を安定して発現するCHO細胞クローンの分離を行った。遺伝子導入は上述の293T細胞の場合と同様の方法を採用した。遺伝子導入から2日後のCHO細胞を96wellプレートに播種し、適切なセレクションマーカーの存在下で培養した。およそ2週間培養後、培養上清中の抗hGM−CSF抗体のスクリーニングを行った。スクリーニングはELISA法により行った。得られた抗体発現CHO細胞は96wellプレートに well当たり1個まきで播種した。1個まきのwellから増殖したCHO細胞の抗体発現を確認し、抗hGM−CSF抗体安定発現CHO細胞クローンを得た。
7.抗体精製
抗hGM−CSF抗体の精製は抗体安定発現CHO細胞クローンを無血清培地を用いて培養した上清を回収し、ProteinAを用いたアフィニティー精製で行った。カラムはHiTrap rProtein A FF(Amersham)のプレパックカラムを使用し、精製条件はカラムメーカーの推奨条件とした。精製後の抗体については、ELISAによる抗hGM−CSF抗体の確認と、SDS−PAGEによる約50kDaの抗体H鎖と約25kDaの抗体L鎖の確認を行った。
8.抗hGM−CSF抗体のアフィニティー解析
抗hGM−CSF抗体のアフィニティー解析は、ビアコアシステム(登録商標)を用いて行った(図2)。
方法はProteinGをセンサーチップに固定化し、ProteinG固定化表面に抗体を添加して捕捉させる。続いて、抗体が捕捉されているセンサーチップ表面に抗原を添加して相互作用を測定するものである。抗体は精製抗体、抗原にはリコンビナントhGM−CSFを用いた。
抗hGM−CSF抗体のアフィニティー(親和性)の評価としては、yeast hGM−CSF(Leukine)およびE.coli hGM−CSF(Peprotech)に対しての解離定数(KD(M))を求めた。結果を(表2)に示す。
Leukineに対しては、EV1007が1.2×10-9(M)、EV1018が2.3×10-10(M)、EV1019が3.6×10-10(M)であった。更に以前取得したEV1003においては2.3×10-10(M)であった。
また、Peprotechに対しては、それぞれEV1007が9.3×10-10(M)、EV1018が1.5×10-10(M)、EV1019が1.5×10-10(M)であった。更に、EV1003に関しては、9.5×10-11(M)であり、いずれもhGM−CSFに対して非常に高い親和性があることが確認された。
9.抗GM−CSF抗体による末梢血樹状細胞の増殖抑制効果
7×107の単核球よりBlood Dendritic Cell Isolation Kit II Human(Miltenyi Biotec)を用いて、5×105の樹状細胞(dendritic cell:以下、DCと略す。)を回収した。このDCには、plasmacytoid DCとmyeloid DCが含まれている。
得られたDCをRPMI1640+10%FCSにリコンビナントGM−CSF(Peprotech)(1ng/mL)、TNF−α(10ng/mL)、および抗GM−CSF抗体(1μg/mL)を添加した培養液に浮遊し、96well平底プレートに2×104/well播いて10日間培養した。
なお、コントロールとして、GM−CSFに対するポリクローナル抗体(anti GM−CSFpAbs)(1μg/mL)及びCMVに対するヒトのモノクローナル抗体(hIgG)(1μg/mL)を用いた。
培養結果を図3に示す。
図3から、EV1003、EV1018及びEV1019の各抗体を添加したwellでは、DCのGM−CSF依存性増殖が抑制されたことが判る。一方、EV1007はDCのGM−CSF依存性増殖を抑制しなかった。また、anti GM−CSF pAbsではDCのGM−CSF依存性増殖が抑制されたが、hIgGでは増殖抑制は認められなかった。
以上より、EV1003、EV1018及びEV1019は、いずれも単独でDCの増殖を抑制することが確認された。
10.抗GM−CSF抗体のTF−1細胞を用いた中和活性評価
図4及び図5は、精製した3種類の抗hGM−CSF抗体(EV1007、EV1018、EV1019)及び以前取得したEV1003について、GM−CSF依存的な増殖が認められることが知られているTF−1細胞を用い、これら抗体の中和活性を調べたものである。
TF−1細胞に精製抗体とリコンビナントhGM−CSFをプレインキュベートしたものを添加して培養し、約2日後の生細胞数をカウントした。抗体に中和活性があれば、添加したGM−CSFを中和し、TF−1細胞の増殖を抑えることができる。
図4は、各々yeast GM−CSF(Leukine)によって、及び図5は、E.coli GM−CSF(Peprotech)によって刺激されるTF−1細胞の増殖が、各種抗体などの添加によって抑制される程度(中和活性)をそれぞれ評価したものである。
各種hGM−CSF抗体は単体で用い、コントロールとして上記9.の増殖抑制効果と同じanti GM−CSF pAbs及びhIgGを用いた。
各被験物質は、2μg/mL〜31pg/mLの濃度範囲で4倍ずつ段階的に希釈し、それぞれの濃度について評価した。使用したhGM−CSF濃度は、いずれの場合も0.5ng/mLで、約40時間培養後のTF−1細胞の生細胞数の変化を調べた。生細胞のカウントはCell Counting Kit(同仁)を使用し、発色(A450/ref. A595)の強さで評価した。
図4及び図5において、縦軸は、31pg/mLのhIgGを添加した場合でのTF−1細胞の生細胞数を100%とし、同じ条件でGM−CSFを添加しなかった場合のTF−1細胞の生細胞数を0%としたときの百分率で示したものである。使用した抗体及びコントロールサンプルについては図の下に示し、それらの添加濃度は図の右側にそれぞれ示した。
TF−1細胞の増殖誘導に、yeast GM−CSF(Leukine)0.5ng/mLを用い、各種抗体単体の中和活性を評価した結果を(図4)に示す。陰性対照としてのhIgGでは、2μg/mLの高濃度で非特異的な増殖抑制を認めたが、それ以下のいずれの濃度でも細胞増殖抑制は認められなかった。GM−CSFに対するポリクローナル抗体(anti GM−CSF pAbs)では、125ng/mL以上で抗体用量依存的に細胞増殖抑制が認められた。
精製したモノクローナル抗体においては、EV1003では、31ng/mLでコントロール(hIgG)の約60%まで抑制して明確な増殖抑制が認められ、さらにその濃度以上では抗体濃度依存的な細胞増殖抑制が認められた。EV1018は0.5ng/mL以上で、EV1019は2ng/mL以上で、コントロール(hIgG)の約50%まで抑制して顕著な細胞増殖抑制が認められ、EV1018及びEV1019はhGM−CSFに対して非常に強い中和活性があることが確認された。また、EV1007において、TF−1細胞の増殖抑制が明らかに認められたのは、0.5μg/mL以上のみで、中和活性が非常に低いことが判った。
一方、TF−1細胞の増殖誘導にE.coli GM−CSF(Peprotech) 0.5ng/mLを用い、各種抗体単体での中和活性を評価した結果を(図5)に示す。この結果においても、陰性対照としてのhIgGでは、2μg/mLの高濃度で非特異的な増殖抑制を認めたが、それ以下のいずれの濃度でも明らかな細胞増殖抑制は認められなかった。GM−CSFに対するポリクローナル抗体(anti GM−CSF pAbs)では、31ng/mL以上で抗体用量依存的に細胞増殖抑制が認められた。
精製したモノクローナル抗体については、EV1003では、31ng/mL以上で抗体濃度依存的に明らかな細胞増殖抑制が認められた。EV1018は0.5ng/mL以上で、EV1019は2ng/mL以上で、コントロール(hIgG)の約50%以下まで抑制して顕著な細胞増殖抑制が認められ、これらの抗体はhGM−CSFに対する中和活性が非常に強いことが確認された。
また、EV1007においては、TF−1細胞の明確な増殖抑制が認められたのは、0.5μg/mL以上のみで、EV1018及びEV1019の抗体と比較して中和活性が非常に低いことが明らかになった。
図6及び図7は、各種hGM−CSF抗体及びhIgGのうちから2種類を選択して混合した混合抗体について中和活性を評価した結果である。
これら各図の下の部分にも記載したように、各種hGM−CSF抗体及びhIgGの中から用いた混合抗体の組み合わせは、下記表3に示す5種類である。
各被験物質は、4μg/mL〜62pg/mLの濃度範囲で4倍ずつ段階的に希釈し、それぞれ同じ濃度の抗体溶液を2種類混合した混合抗体(終濃度は図6及び7中に示した値)について評価した。生細胞のカウントはCell Counting Kit(同仁)を使用し、発色(A450/ref. A595)の強さで評価した。
図6及び図7においても、縦軸は、31pg/mLのhIgGを添加した場合でのTF−1細胞の生細胞数を100%とし、同じ条件でGM−CSFを添加しなかった場合のTF−1細胞の生細胞数を0%としたときの百分率で示したものである。よって、コントロールは図4及び図5に示した31pg/mLのhIgGであり、図6及び図7には図示していない。使用した抗体の組み合わせについては、図の下に示し、それらの添加濃度は図の右側にそれぞれ示した。
これらの組み合わせの中で、特に、上記Mix−2:EV1003+EV1007、Mix−3:EV1003+EV1018及びMix−4:EV1003+EV1019の抗体の組み合わせでは、各抗体単独の場合に比べ中和活性が顕著に向上していることが認められた。例えば、図6のMix−4:EV1003+EV1019では、それぞれ8ng/mL(約55pM)混合で細胞増殖が約10%にまで抑制されており、図4に示した同濃度の抗体単独での増殖抑制効果がEV1003では0%、EV1019では約50%であったことに比較すると、非常に顕著な中和活性が認められた。
また、EV1007は、単独では中和活性が非常に弱いにもかかわらず、Mix−2:EV1003+EV1007の組み合わせでは、図6及び図7のいずれの場合においても、これらの抗体がそれぞれ8ng/mL(約55pM)以上で、細胞増殖がコントロール(hIgG)の約10%もしくはそれ以下まで抑制されていた。
特に図7に示されるように、E.coli GM−CFS(Peprotech)を用いてTF−1細胞増殖を誘導した場合、Mix−2、Mix−3及びMix−4の混合抗体においては、各抗体濃度が31ng/mL混合以上で、TF−1細胞の増殖がほとんど完全に抑制されており、これらの混合抗体は非常に強力な中和活性を有していたことが示された。
一方、Mix−5:EV1018+EV1019においても、Mix−2〜4ほどの明らかな相乗効果とはいえないが、図4及び図5において各抗体をそれぞれ単独で使用した場合と異なり、細胞増殖抑制率が濃度依存的により亢進しているのが認められた。
なお、抗体の混合効果が顕著でないMix5:EV1018+EV1019のケースでは、それら単体使用時の中和活性の用量曲線(中和活性のパターン)が似通っていること、及び、両者のCDRのアミノ酸配列に相同性が見られることなどの特徴がみられた。従って、顕著な混合効果を得るための抗体の選別には、中和活性パターン、CDRの相同性、及び抗体が結合する抗原の部位などが指標になる可能が考えられる。
図4及び図5が示すように、4種類の抗体(EV1003、EV1007、EV1018及びEV1019)のうち単独で最も強い中和活性が認められるのは2μg/mLの濃度のEV1003であるが、そのような高濃度でもその細胞増殖はコントロールの約20%は残存している。しかし、Mix−2、Mix−3及びMix−4の混合抗体においては、それぞれ31〜125ng/mL以上の混合で、TF−1細胞の増殖がほぼ完全に抑えられている。このことから考えても、これらの3種の混合抗体(Mix−2、Mix−3及びMix−4)は、非常に顕著な中和活性があるといえる。
なお、GM−CSF抗体であるEV1003と、GM−CSFとは異なる抗原(CMV)に反応する抗CMV抗体であるhIgGとの混合抗体Mix−1については、Mix2〜5のような抗体の混合による顕著な中和活性の亢進は、認められなかった。
以上より、精製された3種類の抗体のうち2種類のGM−CSF抗体(EV1018及びEV1019)は、夫々単独及び混合抗体として非常に高い中和活性を有することが判った。また、これら3種類の抗体及びEV1003のうち、2種類を組み合わせた混合抗体では、単独での各抗体の中和活性を足し合わせた効果以上の、格段に高い中和活性を有する組み合わせがあることが判った。
このようにして得られた抗hGM−CSF抗体又はその抗原結合部分は、様々な疾病の原因となるhGM−CSFに特異的に結合し、その生物活性を喪失(中和)させ、従来の抗hGM−CSF抗体より(hGM−CSFに対して)さらに優れた中和能を発揮することができる。また、ヒトのモノクローナル抗体である為、免疫原性を有さず、免疫反応も見られない。
また、このようなモノクローナル抗体(好ましくはヒトのモノクローナル抗体)又はその抗原結合部分を複数種類同時に使用することにより、単独で使用する場合と比較して格段に高い細胞増殖阻害活性(中和活性)を発揮することが可能である。このことはGM−CSFに対するモノクローナル抗体についてだけでなく、更に、各種癌、免疫疾患、および感染症など抗体による治療が有効な分野において、ターゲットとなる同一の抗原に特異的なモノクローナル抗体においても、それらに対する抗体またはその抗原結合部分を複数種類同時に使用することにより、単独で使用する場合と比較して格段に高い治療効果を発揮することが期待できる。
以上の性質より、抗hGM−CSF抗体又はその抗原結合部分は、例えば、喘息、アトピー、花粉症などのアレルギー疾患、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、関節リウマチ、その他、hGM−CSFによって引き起こされる病的状態の予防ないし治療薬として、少量で有用であると考えられる。
また、GM−CSFに対するモノクローナル抗体のみならず、TNF−αやVEGFのような各種サイトカインに対するモノクローナル抗体、及びCD20、CD33やEGFリセプターのような細胞表面の各種抗原に対するモノクローナル抗体、更には各種ウイルスや細菌に対するモノクローナル抗体などのように、治療に用いられる可能性のあるあらゆるモノクローナル抗体全般について応用可能であり、ある種の抗原に特異性を有するモノクローナル抗体を複数種類含む医薬組成物は、投薬量の大幅削減のみならず更に画期的な治療効果を与える可能性が考えられる。
11.L929細胞でのTNF−αの誘導による細胞毒性の中和活性
ヒト組換えTNF−α(rhTNF−α)は、18〜24時間のインキュベーション期間後にマウスL929細胞に細胞毒性を生起する。それぞれ異なるエピトープに結合する2つの抗ヒトTNF−α抗体、NF2(マウス抗hTNF−αモノクローナル抗体(abcam社))およびNF7(マウス抗hTNF−αモノクローナル抗体(abcam社))について、それぞれ単独とコントロール抗体とを混合して用いた場合と、2つの抗体(NF2およびNF7)を混合して用いた場合とについて、L929細胞でのTNF−α誘導細胞毒性の中和能を評価した。コントロール抗体としては、HCMVに対するマウスモノクローナル抗体(mIgG)を使用した。
(手順)
(1)2×105 細胞/mlのL929細胞懸濁液(10%FCS含有RPMI培地)を調製し、100μl/ウェルで96−ウェルプレートに播種した。
(2)5%CO2中、37℃で一晩培養した後、100μlの2%FCS含有RPMI培地に交換した。
(3)別の96ウェルプレートに2倍希釈系列で抗体溶液(2%FCS含有RPMI培地)を調整した。そこに2%FCS含有RPMI培地で調整したhrTNF−α溶液を加え、37℃で2時間、プレーインキュベーションした。
(4)上記の抗体−TNF−α混合液50μlをL929細胞に添加した。さらに、アクチノマイシンD溶液を50μ/ウェルで添加した。TNF−αおよびアクチノマイシンDの最終濃度はそれぞれ1ng/ml、および、1μg/mlとした。
(5)5%CO2中、37℃で20時間培養後、培地100μlを除き、10μlのWST−1溶液(Cell Counting Kit、同人)を各ウェルに添加した。
(6)37℃で4時間呈色反応した後、450−595nmを測定した。各試料について曲線をプロットし、TNF−αを添加しない場合を100%増殖とし、標準的方法により、IC50を決定した。
(結果)
図8および下記の表4に示すように、NF2またはNF7をコントロール抗体と混合して使用した場合に比べて、NF2およびNF7を併用した場合は、IC50値において顕著な低下(改善)が観察された。なお、コントロール抗体の添加は、NF2抗体またはHF7抗体の中和活性には全く影響しないことは確認できている(図9)。
この結果は、同一抗原の異なるエピトープに対する複数の抗体を使用することにより、それらの抗体を単独で使用する場合と比べて、その中和活性を顕著に高められること、それゆえ単独使用の場合に比べて低用量でも高い効果が得られることを示す。
本発明の抗体または抗体の混合物は、生物活性が高く、安全性、医療費などの面から医薬品として顕著な有用性を有する。本発明によれば、従来よりも低用量での抗体医薬を使用した疾患の治療が可能となる。
本発明に係る抗TNF−α抗体を含有する医薬は、TNF−αが原因となって引き起こされる様々な疾病、例えば、関節リウマチ、クローン病、糖尿病、敗血症、骨粗しょう症などの疾患の予防ないし治療薬として非常に少量で有効であると考えられ、安全性の面および医療費の面でこれまでの治療薬に比べよりいっそうの有用性がある。
抗hGM−CSF抗体を産生する抗体産生細胞クローン分離の手順をフローチャートで表した図である。 抗hGM−CSF抗体のアフィニティー解析手順を表した概略図である。 GM−CSF存在下で樹状細胞の細胞増殖に与える各種抗GM−CSF抗体の影響を評価したものである。 Yeast GM−CSF(Leukine)存在下でTF−1細胞の細胞増殖に対する各種抗GM−CSF抗体の影響を評価したものである。 E.coli GM−CSF(Peprotech)存在下でTF−1細胞の細胞増殖に対する各種抗GM−CSF抗体の影響を評価したものである。 Yeast GM−CSF(Leukine)存在下でTF−1細胞の細胞増殖に対する各種抗GM−CSF抗体の混合抗体の影響を評価したものである。 E.coli GM−CSF(Peprotech)存在下でTF−1細胞の細胞増殖に対する各種抗GM−CSF抗体の混合抗体の影響を評価したものである。 TNF−αにより誘導されるL929細胞への細胞毒性に対し、抗TNF-α抗体とコントロール抗体を混合した場合、および2つの抗TNF-α抗体同士を併用した場合の中和活性を評価したものである。 TNF−αにより誘導されるL929細胞への細胞毒性に対し、TNF-α抗体およびそれらにコントロール抗体を混合した場合の中和活性を評価したものである。

Claims (15)

  1. 同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗体を含む組成物。
  2. 前記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記抗原がサイトカインである、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記サイトカインが腫瘍壊死因子(TNF−α)である、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 前記モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項5に記載の組成物。
  7. 同一抗原中の複数の異なるエピトープにそれぞれ特異的に結合する複数の異なる抗原結合部位を有する抗体。
  8. 前記抗原が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、脂質、核酸、または低分子化合物である、請求項7に記載の抗体。
  9. 前記抗原がサイトカインである、請求項8に記載の抗体。
  10. 前記サイトカインが腫瘍壊死因子(TNF−α)である、請求項9に記載の抗体。
  11. 前記複数の異なる抗原結合部位をそれぞれ含む部分が、リンカーにより互いに結合されている、請求項7〜10のいずれかに記載の抗体。
  12. 請求項7〜11のいずれかに記載の抗体を含む組成物。
  13. 請求項1〜6、請求項12のいずれかに記載の組成物からなる医薬。
  14. TNF−αが関与する疾患を治療するための請求項13に記載の医薬。
  15. 前記疾患が、関節リウマチ、クローン病、糖尿病・高脂血症、敗血症、または骨粗鬆症である、請求項14に記載の医薬。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022532812A (ja) * 2018-08-16 2022-07-20 カンタージア アクチエボラーグ 抗il1rap抗体組成物

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