JP2010113987A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的高い光電変換効率を有しつつ、酸化亜鉛が電解質組成物に溶解しにくく、且つ増感色素が分解しにくい色素増感型太陽電池を提供することにある。
【解決手段】 電極間に配され電解質組成物を含む電解質層と、前記電極の一方の内側に配された酸化亜鉛層と、該酸化亜鉛層に担持された増感色素とが備えられている色素増感型太陽電池であって、前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されている色素増感型太陽電池を提供する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
近年、色素増感型太陽電池は、クリーンエネルギー源である太陽電池の中でも比較的低コストで製造できることから注目されている。
従来、色素増感型太陽電池としては、例えば、電極間に配され電解質組成物を含む電解質層と、電極の一方の内側に配された酸化亜鉛層と、該酸化亜鉛層に担持された増感色素とが備えられているものが知られている。斯かる色素増感型太陽電池は、電気化学的な酸化還元反応を利用して酸化亜鉛でなる酸化亜鉛層を形成できるため、作製時に高温での焼成を必ずしも必要とせず、比較的耐熱性が低いプラスチック等であっても基板として用いることができ、プラスチック等の可とう性を利用した変形可能な色素増感型太陽電池になり得るとして各種のものが提案されている。
この種の色素増感型太陽電池においては、ハロゲンイオンの塩及びハロゲン分子を配合することで生成し得るレドックス対と有機溶媒とが電解質組成物の成分として一般的に用いられており、例えば色素増感型太陽電池としては、ハロゲンイオンの塩としてテトラプロピルアンモニウムアイオダイド、ハロゲン分子としてヨウ素分子(I2)、有機溶媒としてアセトニトリルが電解質組成物に配合されたものが提案されている(特許文献1)。
特開2008−59956号公報
しかしながら、斯かる色素増感型太陽電池では、酸化亜鉛で形成された酸化亜鉛層がハロゲンイオンやハロゲン分子によって劣化を受けて、酸化亜鉛が電解質組成物に溶解しやすく、しかも酸化亜鉛層に担持されている増感色素がハロゲンイオンやハロゲン分子によって分解されやすいという問題がある。従って、斯かる色素増感型太陽電池は、酸化亜鉛層に用いられた酸化亜鉛が電解質組成物に溶解したり、酸化亜鉛層に担持されている増感色素が分解したりすることにより、時間が経つにつれて光エネルギーから電気エネルギーへの光電変換効率が低下しやすい。
そこで、本発明は、上記の問題点等に鑑み、比較的高い光電変換効率を有しつつ、酸化亜鉛層に含まれる酸化亜鉛が電解質組成物に溶解しにくく、且つ酸化亜鉛層に担持された増感色素が分解しにくい色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決すべく、電極間に配され電解質組成物を含む電解質層と、前記電極の一方の内側に配された酸化亜鉛層と、該酸化亜鉛層に担持された増感色素とが備えられている色素増感型太陽電池であって、前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されていることを特徴とする色素増感型太陽電池を提供する。
斯かる構成からなる色素増感型太陽電池は、前記電解質組成物に含まれているピロリジニウム塩のカチオンがピロリジニウムカチオンであるため、その電荷がより非局在化していることから、前記電解質組成物中のアニオンとカチオンとのイオン間の静電相互作用が比較的弱くなり、前記電解質組成物がより低粘度となることにより、前記電解質組成物のイオン伝導度がより高くなり得る。また、0.1モル濃度相当量以上となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩を配合し、0.02モル濃度相当量以上となるヨウ素分子を配合して調製されているため、ヨウ化物イオンとヨウ素分子との反応によって、色素増感型太陽電池として機能し得る量の三ヨウ化物イオンが生じ、該三ヨウ化物イオンと前記ヨウ化物イオンとが前記電解質組成物においてレドックス対として十分に機能し得る。しかも、前記電解質組成物は、0.3モル濃度相当量以下となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩が配合され、0.06モル濃度相当量以下となるヨウ素分子が配合されて調製されているため、酸化亜鉛や増感色素が前記三ヨウ化物イオンや前記ヨウ素分子による劣化を受けにくくなり得る。
また、本発明では、前記ヨウ化物塩が、第四級アンモニウムアイオダイド、トリアルキルイミダゾリウムアイオダイド、又はピロリジニウムアイオダイドであることが好ましい。第四級アンモニウムアイオダイド、トリアルキルイミダゾリウムアイオダイド、又はピロリジニウムアイオダイドが、前記電解質組成物に含まれているピロリジニウム塩に溶解しやすいため、前記ヨウ化物塩が前記電解質組成物のなかで析出物となりにくく、前記ヨウ化物塩が前記電解質組成物中に安定的に配合され得るという利点がある。
また、本発明では、前記ピロリジニウム塩がN,N−ジアルキルピロリジニウム塩であることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池は、前記電解質組成物に配合されたピロリジニウム塩により、前記電解質組成物のイオン伝導度がより高くなり得る。また、前記電解質組成物に配合されたヨウ化物イオンとヨウ素分子との反応によって三ヨウ化物イオンが生じ、該三ヨウ化物イオンと前記ヨウ化物イオンとが前記電解質組成物においてレドックス対として十分に機能し得る。しかも、前記三ヨウ化物イオンや前記ヨウ素分子の量が比較的少ないことにより、酸化亜鉛層に含まれる酸化亜鉛や酸化亜鉛層に担持された増感色素が劣化を受けにくくなり得る。従って、本発明の色素増感型太陽電池は、比較的高い光電変換効率を有しつつ、酸化亜鉛が電解質組成物に溶解しにくく、且つ増感色素が分解しにくいものとなり得るという効果を奏する。
本発明の色素増感型太陽電池は、電極間に配され電解質組成物を含む電解質層と、前記電極の一方の内側に配された白金層と、前記電極の他方の内側に配された酸化亜鉛層と、該酸化亜鉛層に担持された増感色素とが備えられている色素増感型太陽電池であって、前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩(ヨウ素塩)と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されている。
以下に、本発明の好ましい実施の形態について添付図面に基づき説明する。図1は、本実施形態における色素増感型太陽電池の断面図である。
本実施形態に於ける色素増感型太陽電池1は、図1に示すように、電極2間に配され電解質組成物を含む電解質層6と、前記電極2の一方の内側に配された酸化亜鉛層4とが備えられている。詳しくは、基板5に前記電極2が積層された電極板が、電極2を内側として互いに対向するように一対備えられ、電解質組成物を含む電解質層6が前記電極2間に備えられている。
前記電極板は、一方が負の電極板、他方が正の電極板とされてなる。また、少なくとも一方の電極板(通常負の電極板)は、透明基板と透明電極とにより透明に形成されている。
前記正の電極板には、白金がスパッタ蒸着等により前記電極2に積層されてなる白金層9が形成されている。前記正の電極板は、前記白金層9が内側となるように備えられている。
前記電解質層6には、電解質組成物が充填されているとともに、負電極側に酸化亜鉛層4が形成されている。前記酸化亜鉛層4は、酸化亜鉛の微粒子などが層状に配列され、増感色素が担持されることにより形成されてなる。
なお、本実施形態に於ける色素増感型太陽電池1は、互いに対向するように配された基板5と該基板5間に配された電解質組成物を含む電解質層6とでセルが形成され、該電解質組成物及び該セルが封止剤3によって封止されている。詳しくは、該セルが、図1に示すようにセル用封止剤3bによって封止され、更に、前記電解質層6においては、基板間の電解質周りの隙間に電解質用封止剤3aを充填することにより電解質組成物が封止されている。
また、前記電極2にはそれぞれ導線8が電気的に接続され、該導線8を通じて色素増感型太陽電池1が放電し得るようになっている。
続いて、前記電解質組成物について詳しく説明する。
前記電解質層6に充填されている前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含む前記ヨウ化物塩と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されている。即ち、前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と前記ヨウ化物塩と前記ヨウ素分子とが混合されて調製されている。詳しくは、前記電解質組成物は、前記電解質組成物に対してそのヨウ化物イオンが0.1〜0.3モル濃度となるように前記ヨウ化物塩を配合し、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度となるように前記ヨウ素分子を配合することにより調製されている。
なお、前記電解質組成物に前記ヨウ化物塩及び前記ヨウ素分子が配合された後、前記ヨウ化物塩及び前記ヨウ素分子は、可逆反応により三ヨウ化物イオンを生じ得るため、前記電解質組成物におけるヨウ化物イオンの濃度は、0.1〜0.3モル濃度範囲以外になり得る。また、前記電解質組成物におけるヨウ素分子の濃度は0.02〜0.06モル濃度範囲以外になり得る。
前記電解質組成物に含まれているピロリジニウム塩のカチオンがピロリジニウムカチオンであるため、その電荷がより非局在化していることから、前記電解質組成物中のアニオンとカチオンとのイオン間の静電相互作用が比較的弱くなり、前記電解質組成物がより低粘度となることにより、前記電解質組成物のイオン伝導度がより高くなり得る。従って、本実施形態の色素増感型態様電池1は、比較的高い光電変換効率を有し得る。
前記ピロリジニウム塩は、ピロリジニウムカチオンとアニオンとの塩であり、20℃程度の常温において液状を示す塩である。前記ピロリジニウム塩は、いわゆるイオン性液体といわれているものである。
詳しくは、前記ピロリジニウム塩は、ヨウ化物イオンを含まないものである。即ち、前記ピロリジニウム塩は、ピロリジニウムアイオダイドを除くものであり、ピロリジニウムアイオダイドを含まない。
前記ピロリジニウムカチオンとしては、好ましくは、下記式(1)で示されるN,N−ジアルキルピロリジニウムカチオンが挙げられる。前記N,N−ジアルキルピロリジニウムカチオンであることにより、電解質組成物の粘性がより低くなり、また、前記ヨウ化物塩又はヨウ素分子がより前記電解質組成物に溶解しやすくなり得るという利点がある。
Figure 2010113987
前記N,N−ジアルキルピロリジニウムカチオンとしては、好ましくは、下記式(2)で示される1−メチル−1−アルキルピロリジニウムカチオンが挙げられる。前記1−メチル−1−アルキルピロリジニウムカチオンであることにより、電解質組成物の粘性がさらに低くなり、また、前記ヨウ化物塩又はヨウ素分子がさらに前記電解質組成物に溶解しやすくなり得るという利点がある。
Figure 2010113987
前記1−メチル−1−アルキルピロリジニウムカチオンとしては、好ましくは、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンが挙げられる。前記1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンであることにより、電解質組成物の粘性がさらに低くなり、また、前記ヨウ化物塩又はヨウ素分子がさらに前記電解質組成物に溶解しやすくなり得るという利点がある。
前記ピロリジニウム塩のアニオンとしては、塩化物イオン(Cl-)、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3)、テトラフルオロボレート(BF4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート[P(C2533]、ジシアナミド[(NC)2-]、トリシアノメタニド[(NC)3-]、チオシアネート(SCN-)、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
前記ピロリジニウム塩のアニオンとしては、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。
詳しくは、前記ピロリジニウム塩としては、下記式(3)で示される1−メチル−1−アルキルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、下記式(4)で示される1−メチル−1−アルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
Figure 2010113987
Figure 2010113987
前記ピロリジニウム塩としては、より好ましくは、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。
前記電解質組成物は、0.3モル濃度相当量以下となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩を配合し、0.06モル濃度相当量以下となるヨウ素分子を配合することにより調製されているため、前記ヨウ化物イオンと前記ヨウ素分子との可逆反応によって生じ得る三ヨウ化物イオンの濃度が比較的小さくなり得る。また、ヨウ素分子の濃度も比較的小さくなり得る。よって、前記酸化亜鉛層4に含まれている酸化亜鉛や前記酸化亜鉛層4に担持された増感色素が三ヨウ化物イオンやヨウ素分子などによる劣化を受けにくくなり得る。従って、前記酸化亜鉛層4に含まれている酸化亜鉛が前記電解質組成物に溶解しにくく、しかも、前記酸化亜鉛層4に担持されている増感色素が分解しにくくなり得る。
また、前記電解質組成物は、0.1モル濃度相当量以上となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩を配合し、0.02モル濃度相当量以上となるヨウ素分子を配合することにより調製されているため、ヨウ化物イオンとヨウ素分子との反応によって生じる三ヨウ化物イオンの濃度、及びヨウ化物イオンの濃度が前記電解質組成物においてレドックス対として機能できる程度にまで十分なものとなり得る。従って、色素増感型太陽電池としての光電変換効率が十分なものとなる。
前記ヨウ化物塩は、ヨウ化物イオン(I-)を含む塩であれば特に限定されないが、第四級アンモニウムアイオダイド、トリアルキルイミダゾリウムアイオダイド、又はピロリジニウムアイオダイドであることが好ましい。即ち、前記電解質組成物は、第四級アンモニウムアイオダイド、トリアルキルイミダゾリウムアイオダイド、又はピロリジニウムアイオダイドを配合して調製されていることが好ましい。
前記第四級アンモニウムアイオダイドとしては、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムアイオダイドが挙げられる。前記テトラアルキルアンモニウムアイオダイドは、前記ピロリジニウム塩に溶解しやすく、ヨウ化物イオンが前記ピロリジニウム塩に、より安定的に配合され得るという利点がある。
前記テトラアルキルアンモニウムアイオダイドとしては、好ましくは、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドが挙げられる。前記テトラプロピルアンモニウムアイオダイドは、前記ピロリジニウム塩に溶解しやすく、ヨウ化物イオンが前記ピロリジニウム塩にさらに安定的に配合され得るという利点がある。また、色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させ得るという点でも前記テトラプロピルアンモニウムアイオダイドが好ましい。
前記トリアルキルイミダゾリウムアイオダイドとしては、好ましくは、下記式(5)に示す1,2,3,−トリアルキルイミダゾリウムアイオダイドが挙げられる。前記1,2,3,−トリアルキルイミダゾリウムアイオダイドは、前記ピロリジニウム塩に溶解しやすく、そのヨウ化物イオンがより前記ピロリジニウム塩に安定的に配合され得るという利点がある。
Figure 2010113987
また、前記トリアルキルイミダゾリウムアイオダイドとしては、好ましくは、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムアイオダイド等が挙げられる。
前記ピロリジニウムアイオダイドとしては、例えば、N,N−ジアルキルピロリジニウムアイオダイドが挙げられる。前記N,N−ジアルキルピロリジニウムアイオダイドは、前記ピロリジニウム塩に溶解しやすく、ヨウ化物イオンがより前記ピロリジニウム塩に安定的に配合され得るという利点がある。
前記ピロリジニウムアイオダイドは、ピロリジニウムカチオンとヨウ化物イオンとの塩であり、このピロリジニウムカチオンとしては、前記ピロリジニウム塩を構成するカチオンが挙げられる。
具体的には、前記ピロリジニウムアイオダイドとしては、1,1−ジメチルピロリジニウムアイオダイド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムアイオダイド等が挙げられる。
前記電解質組成物としては、ピロリジニウム塩を配合し、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されているものであれば、特に限定されるものではないが、前記ヨウ化物塩及びヨウ素分子がより安定的に溶解し得るという点で、前記ピロリジニウム塩が80重量%以上含まれているものが好ましく、90重量%以上含まれているものがより好ましい。
具体的には、前記電解質組成物としては、前記ピロリジニウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドとの塩であるピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドを前記電解質組成物に対して80重量%以上となるように配合して調製されているものがより好ましく、90重量%以上となるように配合して調製されているものがさらに好ましい。又は、前記ピロリジニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとの塩であるピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを80重量%以上となるように配合して調製されているものがより好ましく、90重量%以上となるように配合して調製されているものがさらに好ましい。
より具体的には、前記電解質組成物としては、前記1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドを80重量%以上となるように配合して調製されているものが好ましく、90重量%以上となるように配合して調製されているものがより好ましい。または、前記1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを80重量%以上となるように配合して調製されているものが好ましく、90重量%以上となるように配合して調製されているものがより好ましい。
前記電解質組成物に含まれ得るカチオンとしては、他に、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−プロピル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等のジアルキルイミダゾリウムカチオンが挙げられる。
前記電解質組成物に含まれ得るアニオンとしては、他に、例えば、臭化物イオン、ハイドロゲンサルフェート(HSO4 -)、テトラクロロ鉄(III)酸イオン(FeCl4 -)等が挙げられる。
前記酸化亜鉛層4は、酸化亜鉛(ZnO)で形成されてなる。前記酸化亜鉛層4は、電析等により調製が可能であり、一般的に、透明性を有する薄層として形成させやすいものである。
前記酸化亜鉛層4における酸化亜鉛の形態としては、例えば、微粒子状、表面および内部に微細な多数の空隙を有する膜状などが挙げられる。
前記酸化亜鉛層4の層厚は、特に限定されるものではないが、透過性を良好にできる、又は光電変換効率を良好にできるなどの点で、0.5〜50μm程度であることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。また、前記電解質組成物が前記酸化亜鉛層4の内部に十分浸透できるという点で、酸化亜鉛層4空隙率は10〜80%であることが好ましい。なお、該空隙率は、層重量および層厚を測定し、酸化亜鉛の比重で除することにより算出するものである。
微粒子状の酸化亜鉛で形成されてなる前記酸化亜鉛層4においては、酸化亜鉛の微粒子は、適当な平均粒径、例えば1〜100nm程度の平均粒径を有する微粒子として存在し得る。また、前記酸化亜鉛層4においては、粒径の異なる粒子が存在し得る。なお、前記平均粒径は、試料表面に大きさのわかった分子やイオンを吸着させて、その量から試料の比表面積を測定するBET法を利用して測定した平均粒径である。
膜状の酸化亜鉛で形成されてなる前記酸化亜鉛層4においては、比表面積が、2〜200m2/g程度であることが好ましい。なお、該比表面積は上記BET法により測定するものである。
前記酸化亜鉛層4に担持されている増感色素としては、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウムビピリジウム錯体、キサンテン系色素、メロシアニン色素、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。また、これら以外に有機色素である商品名「D102」、「D131」、「D149」(三菱製紙社製)などの物質が挙げられる。
前記基板5としては、樹脂基板、ガラス基板等を挙げることができる。
前記樹脂基板の原料樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。
前記基板5の厚さは、0.025〜10mmであることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。
前記電極2は、基板5の内側表面の略全面に、導電材を積層することにより形成されている。前記電極2の厚さは、100〜3000nmであることが好ましく、100〜650nmであることがより好ましい。
前記導電材としては、特に限定されるものではないが、例えば、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズ、金、白金等の透明の導電材が挙げられ、その他には、カーボン、導電性ポリマー等が挙げられる。
前記電極2が前記基板5に積層されてなる前記電極板としては、具体的には、95%酸化インジウムと5%酸化スズとの化合物(ITO)を透明ガラス板に蒸着したITOガラス基板や、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)を透明ガラス板に蒸着したFTOガラス基板などが挙げられる。
前記封止剤3の原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、フォスファーゼン系樹脂等が挙げられる。前記封止剤3の原料としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
また、前記電解質組成物を封止するための電解質用封止剤3aの原料と前記セルを封止するためのセル用封止剤3bとの原料は、同じ原料であっても良く、又、異なる原料であっても良い。
前記硬化セル用封止剤3bの層の厚さは、最も薄い部分で1〜30mmであることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましい。
次に、本実施形態の色素増感型太陽電池の製造方法を説明する。
本実施形態の色素増感型太陽電池は、上述した原料、材料等を用いて従来公知の一般的な方法によって製造できる。具体的には、本実施形態の色素増感型太陽電池の製造方法のうち、前記半導体層4の作製及び前記セルの封止としては、例えば、以下の方法を採用することができる。
前記電極板の電極2上に前記酸化亜鉛層4を形成する方法としては、特に限定されず、種々の公知の方法が挙げられる。具体的には、電気化学的な酸化還元反応を利用して成膜する方法、スクリーン印刷法やインクジェット法などにより酸化亜鉛微粒子を含有するペーストを前記電極板の電極2上に塗布した後焼成する方法、ゾル−ゲル法による方法などが挙げられる。
ここで、前記酸化亜鉛層4の作製において、電気化学的な酸化還元反応を利用して成膜する方法についてさらに詳しく説明する。
電気化学的な酸化還元反応により酸化亜鉛層4を形成するには、前記電極板の存在下、亜鉛塩を含む電解質中で電解析出を実施して酸化亜鉛薄膜を電極板表面に形成させる方法を例示することができる。
より詳しくは、前記酸化亜鉛層4を形成させる電解析出は、前記電極板の存在下、亜鉛塩を含む電解浴中で行う。亜鉛塩は、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硝酸亜鉛、過塩素酸亜鉛などを用いることができる。亜鉛塩を用いる場合の対極としては、亜鉛、金、白金、銀などを用いることができる。この電解析出は、前記酸化亜鉛層4に酸化亜鉛の規則的薄膜構造を形成させ得る。
次に、前記酸化亜鉛層4の作製において、酸化亜鉛の微粒子を含有するペーストを前記電極板の電極2上に塗布した後、焼成する方法についてさらに詳しく説明する。なお、この方法では、通常、焼成温度に耐え得る耐熱性を有する基板が用いられる。
まず、前記酸化亜鉛層4を形成させるためのペーストを調整する。前記ペーストは、酸化亜鉛の微粒子と分散媒とを混合することにより調製できる。前記分散媒としては、水または有機溶媒を用いることができる。
前記ペーストの塗布は、従来から塗布加工に際し慣用されているドクターブレード法、スキージ法、ローラ法、ディッブ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法などの方法を採用して行うことができる。また、汎用機によるスピン法やスプレー法を採用してもよく、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷のような湿式印刷を採用してもよい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択することができる。
前記ペーストを塗設した後は、前記基板がガラスなどの耐熱性を有するものでなる場合、常法による乾燥および焼成を実施して前記酸化亜鉛層4を形成させることができる。なお、乾燥と焼成とは、同時に実施してもよく、別工程で行なってもよい。前記焼成は、100〜500℃で5〜200分間実施することが好ましい。
なお、前記酸化亜鉛層4に前記増感色素を担持させる方法としては、例えば基板上に形成された前記酸化亜鉛層4を、前記増感色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。前記増感色素の溶液の溶媒には、前記増感色素を溶解させるものを用いることができ、例えばエタノール、ターシャリーブタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類、水などが挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることができる。用いる前記増感色素および溶媒の種類は適宜調整することができる。
続いて、前記セルの封止について説明する。前記セル用封止剤3bによるセルの封止は、キャスティング(レジンキャスト)、ディッピング、塗装等によって実施できる。
具体的には、前記セルの封止は、成形型中にセルが沈まない程度の硬さに調整されたセル用封止剤を所定量(満量ではない)注入し、充填されたセル用封止剤上にセルを載置し、更に、その上からセル封止剤を注入して硬化させることによって実施できる。また、成形体へのセル用封止剤3bの注入には、真空注型法、重力注型法等を採用することができる。
尚、斯かるセルの封止は、前記セルが封止された成形体から前記導線8がそれぞれ露出するように、具体的には、前記成形体の表面側の層であるセル用封止剤3bの硬化した硬化セル用封止剤3b層から前記導線8がそれぞれ露出するようにして実施できる。
本発明は、上記例示の色素増感型太陽電池に限定されるものではない。
また、一般の色素増感型太陽電池において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
環状ポリオレフィン樹脂の基板(65mm×50mm×2mm)の片面に、インジウム−スズ複合酸化物の電極を厚さ150nmでスパッタ蒸着した後、更に白金を厚さ50nmでスパッタ蒸着して白金層を形成させ、正の電極を作製した。
環状ポリオレフィン樹脂の基板(65mm×50mm×2mm)の片面に、インジウム−スズ複合酸化物の電極を厚さ150nmでスパッタ蒸着した後、更に酸化亜鉛(ZnO)を電解析出により積層して酸化亜鉛層を形成させた。続いてアセトニトリル・ターシャリーブチルアルコール(1:1)混合液に有機系色素(三菱製紙社製 商品名「D102」)を0.5mM溶解させた溶液を作製し、酸化亜鉛層を25℃、1時間浸漬させて担持させ、負の電極を作製した。
別途、電解質組成物として、ヨウ素(I2)が0.04モル濃度となるように、且つテトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)が0.2モル濃度となるように、これらを1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(比重1.35)に溶解させた1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液を調製した。
作製した電極板の電極が内側となるように配した一対の電極板間に上述の電解質組成物を注入後、電解液用アクリレート系UV硬化型封止剤で封止し、65mm×65mm×4mmの色素増感型太陽電池セルを作製した。
(実施例2)
電解質組成物として、ヨウ素(I2)が0.02モル濃度となるように、且つテトラプロピルアンモニウムアイオダイドが0.1モル濃度となるように溶解させた1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例1)
電解質組成物として、ヨウ素(I2)が0.4モル濃度となるように、且つテトラプロピルアンモニウムアイオダイドが0.5モル濃度となるように溶解させた1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
<評価1(亜鉛溶解量)>
実施例1及び比較例1の色素増感型太陽電池セルを85℃の条件下で、312時間静置し、その後セルを回収した。試験後のセルを開封し、電解液を全量抽出して、電解液に含まれる亜鉛の量をICP(誘導結合プラズマ)も用いて測定した。
実施例1及び比較例1について上記評価1を実施した結果を図2に示す。
図2に示すように、実施例1では比較例1におけるよりも溶解した亜鉛の量が少ないことが認識できる。
<評価2(増感色素)>
実施例2及び比較例1の色素増感型太陽電池セルを85℃の条件下で、168時間静置し、その後セルを回収した。試験後のセルを開封し、酸化亜鉛層が形成されている電極について、酸化亜鉛層に担持されている増感色素に関わる吸光度について分光光度計を用いて測定した。別途、試験開始前の吸光度を同様にして測定した。
実施例2及び比較例1について上記評価2を実施した結果(吸収スペクトル)を図3のそれぞれ図3(a)、図3(b)に示す。
図3に示すように、実施例2では比較例1におけるよりも増感色素の分解(変色化)が抑制されることが認識できる。
<評価3(電池特性)>
実施例、実施例2及び比較例1の色素増感型太陽電池セル擬似太陽光に暴露し、光電変換効率、短絡電流、開放電圧、曲性因子などの電池特性を測定した。その結果を表1に示す。
・光電変換効率の測定機器の詳細
ソーラーシミュレータ:「ソーラーシミュレータESS-150XIL」(2kw、キセノン)
照射強度測定器 :ソーラーシミュレータ用「回析格子型分光放射計 LS-100」
I-Vカーブトレーサー :太陽電池評価装置 「I-Vカーブトレーサー MP-160」
(全て、英弘精機社製)
・光電変換効率の測定の詳細
ソーラーシミュレータについては、基準光量100mW/cm2、AM-1.5の条件で光源の照射強度を調整した。各サンプルについて、I-Vカーブトレーサーを用いてJIS C8913に基づき、電池特性を測定した(有効太陽電池面積:12.25cm2)。
Figure 2010113987
一実施形態における色素増感型太陽電池の断面図。 溶解亜鉛量を示す図。 酸化亜鉛層における吸収スペクトルを示す図。
符号の説明
1 色素増感型太陽電池
2 電極
3 封止剤
4 酸化亜鉛層
5 基板
6 電解質層

Claims (3)

  1. 電極間に配され電解質組成物を含む電解質層と、前記電極の一方の内側に配された酸化亜鉛層と、該酸化亜鉛層に担持された増感色素とが備えられている色素増感型太陽電池であって、
    前記電解質組成物は、ピロリジニウム塩と、前記電解質組成物に対して0.1〜0.3モル濃度相当量となるヨウ化物イオンを含むヨウ化物塩と、前記電解質組成物に対して0.02〜0.06モル濃度相当量となるヨウ素分子とを配合することにより調製されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 前記ヨウ化物塩が第四級アンモニウムアイオダイド、トリアルキルイミダゾリウムアイオダイド、又はピロリジニウムアイオダイドである請求項1記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記ピロリジニウム塩がN,N−ジアルキルピロリジニウム塩である請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池。
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